以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1~図3は、本発明に係る培養液収容容器の第1実施形態を示している。本実施形態の培養液収容容器A1は、第1壁体1および第2壁体2を備えている。詳細は後述するが、培養液収容容器A1は、内容物としての培養液を収容可能な容器であり、培養細胞の灌流培養において用いるのに適する。
第1壁体1および第2壁体2は、各々、略シート状とされており、図中上下方向(第1方向)において互いに対向している。ここで、「略シート状」とは、一定厚さの平板に限定されるものではなく、例えば必要に応じて液体の注入排出口や厚さが変化させられる部位を含む構成でもよい。ただし、培養液収容容器A1において、第1壁体1および第2壁体2によって密閉状の容器が形成される。
第1壁体1は、例えば成形型を用いて成形された成形品である。図3、図4に示すように、第1壁体1は、環状の第1厚肉部11と、第1薄肉部12とを有する。第1厚肉部11は、相対的に厚さが大きい部位であり、本実施形態において概略長矩形環状とされている。第1厚肉部11は、適度な厚さを有する。第1厚肉部11の厚さは、例えば1~3mm程度である。詳細は後述するが、第1厚肉部11の下端は第2壁体2に当接しており、当該当接部位において第2壁体2と接合されている。
第1薄肉部12は、相対的に厚さが小さい部位であり、他の部位に比べて厚さが小さくされている。第1薄肉部12は、第1厚肉部11に囲まれた内側領域の略全域に設けられている。本実施形態において、第1薄肉部12は概略長矩形状とされている。第1薄肉部12は、第1内面12aを有する。第1内面12aは、第1薄肉部12の厚さ方向の片側を向いており、第2壁体2に対向する。第1薄肉部12の厚さは、例えば0.2~0.3mm程度である。本実施形態において、この第1薄肉部12は、ガス透過性を有する。
なお、「第1薄肉部12が第1厚肉部11の内側領域の略全域に設けられる」とは、第1厚肉部11の内側領域において意図的に厚さの異なる部位を設ける構成は含まない。その一方、例えば第1厚肉部11から第1薄肉部12につながる部位において徐々に厚さが変化する領域を設ける構成であってもよい。この場合、当該徐々に厚さが変化する領域の厚さ方向(図中上下方向)における投影面積は、第1薄肉部12の投影面積よりも小さくされる。なお、後述の第2壁体2において第2薄肉部22が第2厚肉部21の内側領域の略全領域に設けられる点についても、第1薄肉部12に関してここで説明したのと同様である。また、後述の各実施形態において、第1薄肉部12(第2薄肉部22)が第1厚肉部11(第2厚肉部21)の内側領域の略全域に設けられる点についても、ここで説明したのと同様である。
詳細は後述するが、培養液収容容器A1には内部空間Sが形成される(図3参照)。内部空間Sは、上下方向視(第1方向視)における第1厚肉部11の内側領域において、第1壁体1の第1内面12aおよび第2壁体2(第2内面22a)により囲まれた閉鎖状の空間である。
本実施形態において、図3、図4に示すように、第1壁体1には、流路15および流路16が形成されている。流路15および流路16は、各々、内部空間Sと外部とに連通しており、培養液収容容器A1における内容物の注入や排出に用いられる。本実施形態において、より具体的には、第1厚肉部11の上面には筒状部13および筒状部14が形成されている。流路15は、筒状部13の貫通孔と第1厚肉部11に形成された溝とによって構成される。流路16は、筒状部14の貫通孔と第1厚肉部11に形成された溝によって構成される。流路15および流路16それぞれの端部は、第1厚肉部11の内周縁にまで達する。本実施形態では、第1厚肉部11の長手方向における一方の端部において、3つの筒状部13(流路15)が間隔を隔てて設けられる。また、第1厚肉部11の長手方向における他方の端部において、1つの筒状部14(流路16)が設けられる。
図3、図4に示すように、第1薄肉部12の適所には、柱状突起121が設けられている。柱状突起121は、第1薄肉部12の第1内面12aから第2壁体2に向けて突出する。本実施形態において、2つの柱状突起121が互いに離間する位置に設けられている。これら柱状突起121は、略長矩形状をなす第1薄肉部12の短手方向において、いずれも略中央に位置する。また、第1薄肉部12の長手方向において、2つの柱状突起121それぞれと両端部との距離、および相互間の距離が略均等とされている。詳細は後述するが、柱状突起121の先端は第2壁体2の第2薄肉部22に当接しており、当該当接部位において第2壁体2と接合されている。
上記構成の第1壁体1は、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。第1壁体1を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。詳細は後述するが第1壁体1と、内容物(培養液)との接触を考慮すると、第1壁体1の構成材料としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第1壁体1の硬さについては、例えばゴム硬度が20度~40度程度であるのが好ましい。
第2壁体2は、例えば成形型を用いて成形された成形品である。図3に示すように、本実施形態において、第2壁体2は、環状の第2厚肉部21と、第2薄肉部22とを有する。第2厚肉部21は、相対的に厚さが大きい部位であり、本実施形態において概略長矩形環状とされている。第2厚肉部21は、適度な厚さを有する。第2厚肉部21の厚さは、例えば1~3mm程度である。第2厚肉部21は、上下方向視(厚さ方向視)において第1壁体1の第1厚肉部11と略重なっており、第2厚肉部21と第1厚肉部11とが互いに接合される。
第2薄肉部22は、相対的に厚さが小さい部位であり、第2厚肉部21に比べて厚さが小さくされている。第2薄肉部22は、第2厚肉部21に囲まれた内側領域の略全域に設けられている。本実施形態において、第2薄肉部22は概略長矩形状とされている。第2薄肉部22は、第2内面22aを有する。第2内面22aは、第2薄肉部22の厚さ方向の片側を向いており、第1壁体1に対向する。第2薄肉部22の厚さは、例えば0.4~0.6mm程度である。本実施形態において、液体はこの第2薄肉部22を透過せず、ガス透過は僅かである。
第2壁体2は、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。第2壁体2を構成する材料としては、上記第1壁体1の場合と同様に、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。第2壁体2の構成材料としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。以下の説明において、第2壁体2が第1壁体1と同じ材料(シリコーンゴム)によって構成される場合について主に説明する。
第2壁体2の第2厚肉部21と第1壁体1の第1厚肉部11とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。また、第2壁体2の第2薄肉部22と第1壁体1の柱状突起121とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。シリコーンゴム製の第1壁体1および第2壁体2の接合は、例えばプラズマ接合により行う。プラズマ接合において、第2壁体2(第2厚肉部21と第2薄肉部22の当接部位)および第1壁体1(第1厚肉部11と柱状突起121)をプラズマ処理し、互いに重ね合わせて押圧する。これにより、シリコーンゴムからなる第2壁体2および第1壁体1は、互いの当接部位が貼り合わされた状態となって、強固に接合される。
図3に示すように、培養液収容容器A1の内部に形成された内部空間Sは、上下方向視(第1方向視)における第1厚肉部11の内側領域において、第1壁体1の第1内面12aおよび第2壁体2の第2内面22aにより囲まれた閉鎖状の空間である。本実施形態において、第1壁体1(第1薄肉部12)の第1内面12aと第2壁体2(第2薄肉部22)の第2内面22aとは、培養液収容容器A1の内部(内部空間S)に液体を注入しない状態(自然状態)において、互いに離間している。
上記構成の培養液収容容器A1には、内容物としての培養液(液体)が収容される。第1壁体1および第2壁体2は、弾力性を有する材料によって構成されており、第1薄肉部12および第2薄肉部22を有する。培養液収容容器A1に培養液を収容する際、当該培養液を加圧注入することで第1薄肉部12および第2薄肉部22が延伸し、内部空間Sの容積が、内容物を注入していない状態から増加する。図3において、第1薄肉部12および第2薄肉部22が延伸した状態を仮想線で表す。なお、培養液収容容器A1への培養液の注入は、例えば流路16を通じて行う。培養液の注入時に、各流路15は封止されている。培養液の注入後に、流路16が封止される。
次に、本実施形態の作用について説明する。
培養液収容容器A1は、例えば細胞培養状態を維持しながら培養液の交換(いわゆる灌流培養)を行う際に使用される。灌流培養において、培養液収容容器A1は、培養容器へ新鮮な培養液を供給するための供給用バッグとして使用することができる。図3を参照して説明したように、培養液収容容器A1は、培養液の注入によって第1薄肉部12および第2薄肉部22が延伸(変形)し、内部空間Sの容積が増加(変化)する。このように内部空間Sの容積が変化可能であれば、気相を残さず培養液を満たしやすい。また、培養液の注入排出によって内部空間Sに液を満たしたまま容積が変化可能であり、排出の際に気相が接して液流が止まることがない。即ち、培養液収容容器A1を吊り下げたり、培養容器よりも高い位置に配置する必要がなく、使い勝手が向上する。
本実施形態では、第1壁体1の第1薄肉部12に加え、第2壁体2についても第2薄肉部22を具備する。第1薄肉部12および第2薄肉部22は、培養液収容容器A1への培養液の注入時にそれぞれが延伸可能である。このような構成によれば、培養液の使用用量が多い場合にも、より柔軟に対応可能である。
第1壁体1は、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。内部空間Sと外部とに連通する流路15,16は、第1壁体1に形成されている。このような構成によれば、例えば本実施形態と異なり付属する別部品のスパウトを流路として用いる構成と比べて、流路周辺部からの培養液(液体)の漏洩を適切に防止することができる。
本実施形態では、内部空間Sに培養液(液体)を注入しない状態において、第1壁体1(第1薄肉部12)の第1内面12aと第2壁体2(第2薄肉部22)の第2内面22aとは、互いに離間している。このような構成によれば、内部空間Sに培養液を注入する前に薄肉部どうし(第1薄肉部12および第2薄肉部22)が密着するのを防止することができる。
第1薄肉部12には、第2壁体2に向けて柱状突起121が設けられている。柱状突起121は第2壁体2に向けて突出する。柱状突起121は第2壁体2(第2薄肉部22)に当接し、当該当接部位において第2壁体2と接合されている。このような構成によれば、第1薄肉部12の平面サイズが比較的大きい場合においても、内部空間Sに培養液を注入しないときに第1薄肉部12と第2壁体2(第2薄肉部22)とが離間する状態を適切に維持することができる。したがって、培養液注入前における薄肉部どうし(第1薄肉部12および第2薄肉部22)の密着をより確実に防止することができる。
また、第1薄肉部12に設けられた柱状突起121が第2壁体2(第2薄肉部22)に接合された構成に、内部空間Sへの培養液の注入時に第1薄肉部12や第2薄肉部22が過度に延伸するのを防止することができる。第1薄肉部12や第2薄肉部22の平面サイズが比較的大きい場合、培養液注入時に部位によって延伸状態に偏りが生じ易く、中央付近では外側に大きく膨らむ傾向がある。これに対し、適所に柱状突起121を設けることで、第1薄肉部12や第2薄肉部22の延伸状態の偏りが防止され、培養液注入時の培養液収容容器A1の形態が安定する。
なお、本実施形態では第1薄肉部12(第1壁体1)に柱状突起121に設ける場合を例に挙げて説明したが、これと異なり、第2薄肉部22(第2壁体2)に柱状突起を設けてもよい。第2薄肉部22に柱状突起を設ける場合、当該柱状突起は第2薄肉部22から第1薄肉部12(第1壁体1)に向けて突出して第1薄肉部12に当接し、当該当接部位が互いに接合される。
培養液収容容器A1において、第1壁体1および第2壁体2の当接部位は、プラズマ接合によって貼り合わされている。このような構成によれば、第1壁体1や第2壁体2の構成材料がシリコーンゴムであっても、互いの接合強度が適切に維持される。
図5は、上記した培養液収容容器A1を備えて構成された灌流培養システムの一例を示している。同図に示した灌流培養システムB1は、2つの培養液収容容器A1と、3つの接続路4と、3つの培養容器5と、3つの接続路6と、ポンプ手段7と、を備える。図中左側の培養液収容容器A1は、新鮮な培養液が充填収容されており、培養容器5の新鮮な培養液を供給するための供給用バッグである。接続路4は、供給用バッグである培養液収容容器A1と培養容器5との間をつなぐ流体流路であり、例えば可撓性を有するチューブにより構成される。接続路4の一端(図中左端)は、3つの流路15のいずれかを介して培養液収容容器A1の内部空間Sに連通可能である。接続路4の他端(図中右端)は、培養容器5の内部に連通可能である。
図中右側の培養液収容容器A1は、培養容器5から排出される培養液を回収するための回収用バッグである。接続路6は、培養容器5と回収用バッグである培養液収容容器A1との間をつなぐ流体流路であり、例えば可撓性を有するチューブにより構成される。接続路6の一端(図中左端)は、培養容器5の内部に連通可能である。接続路6の他端(図中左端)は、3つの流路15のいずれかを介して培養液収容容器A1の内部空間Sに連通可能である。
培養容器5には、培養細胞と培養液が収容されている。ポンプ手段7は、例えば接続路6の途中に設けられる。ポンプ手段7は、図中左側の培養液収容容器A1(供給用バッグ)内の培養液を培養容器5側に送り出すものである。
灌流培養システムB1を用いて灌流培養を行う際、図中左側の培養液収容容器A1(供給用バッグ)から送出される培養液は、接続路4を介して培養容器5に供給される。培養容器5の内部にある培養液は、接続路6側へ排出され、当該接続路6を介して図中右側の培養液収容容器A1(回収用バッグ)に回収される。これにより、人手を介することなく培養容器5の内部の培養液を交換することが可能である。培養容器5として閉鎖系のものを用いれば、閉鎖状態のまま培養液交換作業を行うことができ、コンタミネーションのリスクを回避することができる。また、培養液収容容器A1の内部空間Sは、複数の流路15および複数の接続路4の各々を介して、複数の培養容器5に連通可能である。したがって、1つの培養液収容容器A1を用いて複数の培養容器5についての培養液交換が可能である。
なお、図示した灌流培養システムB1においてポンプ手段7は接続路6に設けられるが、当該ポンプ手段7を接続路4に設けてもよい。また、培養容器5への培養液の供給量が所望となるように、接続路4あるいは接続路6の途中に培養液の流量を調整するための流量調整手段(図示略)を設けてもよい。
図6~図9は、本発明に係る培養液収容容器の第2実施形態を示している。これらの図に示した培養液収容容器A2は、主に第1壁体1や第2壁体2に形成される流路の構成が上記した培養液収容容器A1と異なっている。なお、図6以降の図面においては、上記実施形態と同一または類似の要素には同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
培養液収容容器A2において、第1壁体1には、流路15のみが形成されている。第1厚肉部11の上面には筒状部13が形成されており、流路15は、筒状部13の貫通孔と第1厚肉部11に形成された溝とによって構成される。本実施形態では、第1厚肉部11の長手方向における一方側の端部(図6、図7における左端部)において、1つの筒状部13(流路15)が設けられる。
第1薄肉部12における長手方向の他方の端部(図6、図7における右端部)は他の部位と区画された形状とされており、接続用凹部122が形成されている。接続用凹部122は、後述する接続部材40の凸部41が挿し込まれる部分である。
図6、図7に示すように、第2壁体2の第2厚肉部21には、流路211が形成されている。流路211は、内部空間Sと外部とに連通しており、例えば培養液収容容器A1における内容物の排出に用いられる。より具体的には、流路211は、第2厚肉部21の適所に形成された開口によって構成されており、上下方向視において第1壁体1の接続用凹部122と重なる。
培養液収容容器A2において、第1壁体1および第2壁体2は、培養液収容容器A1と同様に弾力性を有する材料によって一体的に形成される。
本実施形態の培養液収容容器A2は、例えば灌流培養を行う際に使用される。灌流培養において、培養液収容容器A2は、培養液の供給用バッグや回収用バッグとして使用することができる。図8、図9は、培養液収容容器A2と培養容器(図示略)とをつなぐための接続部材40が培養液収容容器A2に取り付けられた状態を示す。接続部材40は、凸部41および複数の接続路42を有する。凸部41は、培養液収容容器A2の流路211ないし接続用凹部122に嵌入されている。凸部41(接続部材40)は、流路211から培養液収容容器A2の内容物が漏洩しない状態で第2厚肉部21に接合されている。複数の接続路42は、接続部材40の内部に形成された貫通路であり、互いに分離している。複数の接続路42は、それぞれ培養液収容容器A2の内部空間Sに連通可能である。また、複数の接続路42は、図示しない複数の培養容器に各別に連通可能である。これにより、培養液収容容器A2内の培養液を上記複数の培養容器に並行して供給可能である。本実施形態と異なり、2枚の樹脂フィルムにスパウトが挟まれて接合される一般的な薬液用バッグの構成では、接続先(培養容器)が増えると多数の別部品のスパウトが必要になり、コストがかかると同時にバラツキのリスクも高くなる。これに対し本実施形態によれば、別部品を必要とせず、シンプルにかつ強固に接合できる。
培養液収容容器A2の内部空間Sへの培養液の収容は、例えば流路15を通じて行う。第1壁体1および第2壁体2は、弾力性を有する材料によって構成されており、第1薄肉部12および第2薄肉部22を有する。培養液収容容器A2に培養液を収容する際、当該培養液を加圧注入することで第1薄肉部12および第2薄肉部22が延伸(変形)し、内部空間Sの容積が、培養液を注入していない状態から増加(変化)する。このような構成によれば、気相を残さず培養液を満たしやすい。また、培養液の注入排出によって内部空間Sに液を満たしたまま容積が変化可能であり、排出の際に気相が接して液流が止まることがない。即ち、培養液収容容器A2を吊り下げたり、培養容器よりも高い位置に配置する必要がなく、使い勝手が向上する。
その他にも、本実施形態の培養液収容容器A2において、上記の培養液収容容器A1と同様の作用効果を奏する。
図10、図11は、本発明に係る培養液収容容器の第3実施形態を示している。本実施形態の培養液収容容器A3は、第1壁体1および第2壁体2を備えるが、これらの具体的構成が上記実施形態と異なっている。詳細は後述するが、培養液収容容器A3は、培養細胞および培養液を収容し、細胞を培養するための培養容器として用いるのに適する。
第1壁体1は、第1厚肉部11および第1薄肉部12を有する。第1厚肉部11は、概略長矩形環状とされている。また、本実施形態において、第1厚肉部11は、長矩形を構成する2つの長辺に相当する部分の中央どうしを短手方向につなぐ中間部分を有する。第1厚肉部11の厚さは、上記の培養液収容容器A1における第1厚肉部11の厚さよりも大きい。
第1薄肉部12は、第1厚肉部11に囲まれた内側領域の略全域に設けられている。本実施形態において、第1薄肉部12は概円形状とされており、第1厚肉部11の上記中間部分を挟んだ両側に2つの第1薄肉部12が互いに離間して配置される。また、内部空間Sについても、第1厚肉部11の上記中間部分を挟んだ両側の2箇所に分離して形成されている。第1薄肉部12の厚さは、例えば0.2~0.3mm程度である。第1薄肉部12は、必要に応じてガス透過性を有する。第1薄肉部12は、厚さを薄く均一にすることでガスが透過可能となる。また、第1薄肉部12は、必要に応じて透明とされる。第1薄肉部12は、厚さを薄く、かつ表面を平滑にすることで透明となる。
図11に示すように、第1厚肉部11には、流路15および流路16が形成されている。流路15および流路16は、各々、内部空間Sと外部とに連通しており、培養液収容容器A3における内容物の注入や排出に用いられる。流路15および流路16は、第1厚肉部11の内部の適所に形成された貫通路によって構成されており、第1厚肉部11の外側面に通じて端部が開口している。流路15および流路16は、2箇所の内部空間Sそれぞれに対応して対をなして、2つずつ設けられる。
第2壁体2は、上下方向視(厚さ方向視)において第1壁体1と略重なっており、主に主板部23により構成される。主板部23は、略一様な厚さのシート状である。主板部23は、第2内面23aを有する。第2内面23aは、主板部23の厚さ方向の片側を向いており、第1壁体1に対向する。主板部23の厚さは、上記の培養液収容容器A1における第2厚肉部21の厚さと同等以上である。
主板部23の第2内面23a(第1壁体1の第1薄肉部12を向く部分)には、複数の凹部231が形成されている。複数の凹部231は、第2内面23aにおいて第1壁体1の第1薄肉部12と対向する領域に形成される。図12に示すように、複数の凹部231は、第2内面23aの面内方向に沿って縦横に配列されている。
複数の凹部231は、培養細胞を収容するための凹みである。好ましくは、凹部231には、スフェロイドが収容される。スフェロイドは、細胞を3次元的に培養した細胞凝集塊であり、例えば生体触媒を用いて生化学反応を行う装置において作製される。
第1壁体1および第2壁体2は、それぞれ、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。第1壁体1および第2壁体2を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。第1壁体1や第2壁体2と、内容物(培養細胞や培養液)との接触を考慮すると、第1壁体1および第2壁体2の構成材料としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第1壁体1の硬さについては、例えばゴム硬度が20度~40度程度、第2壁体2の硬さについては、例えばゴム硬度が40度~70度程度であるのが好ましい。
第2壁体2の主板部23と第1壁体1の第1厚肉部11とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。シリコーンゴム製の第1壁体1および第2壁体2の接合は、例えばプラズマ接合により行う。プラズマ接合において、第2壁体2(主板部23の当接部位)および第1壁体1(第1厚肉部11)をプラズマ処理し、互いに重ね合わせて押圧する。これにより、シリコーンゴムからなる第2壁体2および第1壁体1は、互いの当接部位が貼り合わされた状態となって、強固に接合される。
図11に示すように、培養液収容容器A3の内部に形成された内部空間Sは、上下方向視(第1方向視)における第1厚肉部11の内側領域において、第1壁体1の第1内面12aおよび第2壁体2の第2内面23aにより囲まれた閉鎖状の空間である。本実施形態において、第1壁体1(第1薄肉部12)の第1内面12aと第2壁体2(主板部23)の第2内面23aとは、培養液収容容器A3の内部(内部空間S)に液体を注入しない状態(自然状態)において、互いに離間している。
次に、本実施形態の作用について説明する。
培養液収容容器A3は、例えば細胞培養状態を維持しながら培養液の交換(灌流培養)を行う際に使用される。培養液収容容器A3は、灌流培養において細胞培養を行うための培養容器として使用することができる。
培養液収容容器A3の内部には多数の細胞と培養液が懸濁状態で注入されており、複数の凹部231それぞれにスフェロイドが形成される。灌流培養を行う際、例えば接続路を介して供給用バッグ(いずれも図示略)と培養液収容容器A3とをつなぎ、流路15を通じて当該接続路と内部空間Sとを連通可能とする。また、他の接続路(図示略)を介して培養液収容容器A3と回収用バッグ(図示略)とをつなぎ、流路16を通じて内部空間Sと当該他の接続路とを連通状態とする。そして、例えばポンプ手段(図示略)によって上記供給用バッグから新鮮な培養液が送出され、上記接続路を介して培養液収容容器A3に供給される。培養液収容容器A3の内部空間Sにある培養液は、上記他の接続路側へ排出され、当該他の接続路を介して上記回収用バッグに回収される。培養液収容容器A3での培養液の供給、排出のスピードは、スフェロイドが浮遊しない程度に抑える。このように本実施形態によれば、培養液収容容器A3を閉鎖系の培養容器として使用することができ、人手を介することなく培養液収容容器A3の培養液を交換することが可能である。したがって、培養液収容容器A3を用いて灌流培養を行うに際し、コンタミネーションのリスクを回避することができる。
第2壁体2の第2内面23aには複数の凹部231が設けられており、これら凹部231それぞれにスフェロイドが形成される。このような構成によれば、灌流培養を行う際にスフェロイドが不当に移動することは防止され、安定してスフェロイドを培養することができる。また、培養液収容容器A3によれば、上記のように閉鎖系での灌流培養が可能である。このため、例えば従来の開放系の容器では培養液交換時の蓋の開閉によってスフェロイドが浮遊するおそれがあったが、そのような不都合を回避することができる。
第1壁体1および第2壁体2がシリコーンゴムからなる培養液収容容器A3は、耐熱性や耐薬品性に優れる。また、シリコーンゴム製の培養液収容容器A3は、オートクレーブ処理(滅菌処理)が可能であり、培養容器として細胞培養に適した良好な状態で使用することができる。さらに、培養液収容容器A3において、第1壁体1および第2壁体2の当接部位は、プラズマ接合によって貼り合わされている。このような構成によれば、シリコーンゴム製の第1壁体1および第2壁体2の互いの接合強度が適切に維持される。
第1薄肉部12がガス透過性を有する構成によれば、培養液収容容器A3の内部(内部空間S)について、当該培養液収容容器A3の外部との通気状態が確保される。したがって、培養液収容容器A3の内容物について外部と通気状態での培養を行うことができる。このような構成の培養液収容容器A3は、例えば所定の雰囲気ガス(例えばCO2ガス等)と接触させて培養を行う場合に好適に用いることができる。また、第1薄肉部12が透明である構成によれば、外部から培養液収容容器A3の内部空間Sの目視による観察が可能である。
図13、図14は、本発明に係る培養液収容容器の第4実施形態を示している。本実施形態の培養液収容容器A4は、培養液収容容器A3と類似するが、主に第1壁体1の構成が上記した培養液収容容器A3と異なっている。培養液収容容器A4は、培養細胞および培養液を収容し、細胞を培養するための培養容器として用いるのに適する。
第1壁体1は、第1厚肉部11および第1薄肉部12を有する。第1厚肉部11は、概円環状とされている。第1薄肉部12は、第1厚肉部11に囲まれた内側領域の略全域に設けられている。本実施形態において、第1薄肉部12は概円形状とされている。第1薄肉部12の厚さは、例えば0.2~0.3mm程度である。第1薄肉部12は、必要に応じてガス透過性を有する。また、第1薄肉部12は、必要に応じて透明とされる。
図14に示すように、第1厚肉部11には、流路15および流路16が形成されている。流路15および流路16は、各々、内部空間Sと外部とに連通しており、培養液収容容器A4における内容物の注入や排出に用いられる。第1厚肉部11の内周部には、上下方向に延びる筒状部13および筒状部14が互いに離間して形成されている。流路15は、筒状部13の貫通孔によって構成され、流路16は、筒状部14の貫通孔によって構成される。
第2壁体2は、上下方向視(厚さ方向視)において第1壁体1と略重なっており、略円形状である。第2壁体2は、主に主板部23により構成される。主板部23は、略一様な厚さのシート状である。主板部23は、第2内面23aを有する。第2内面23aは、主板部23の厚さ方向の片側を向いており、第1壁体1に対向する。主板部23の厚さは、上記の培養液収容容器A3における主板部23の厚さと同程度である。
主板部23の第2内面23aには、複数の凹部231が形成されている。複数の凹部231は、第2内面23aにおいて第1壁体1の第1薄肉部12と対向する領域に形成される。複数の凹部231は、第2内面23aの面内方向に沿って縦横に配列される。複数の凹部231は、培養細胞を収容するための凹みである。好ましくは、凹部231には、スフェロイド(細胞凝集塊)が収容される。
第1壁体1は、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。第1壁体1を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。第1壁体1の構成材料としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第1壁体1の硬さについては、例えばゴム硬度が20度~40度程度であるのが好ましい。本実施形態において、第2壁体2は、例えばポリスチレンなどの硬質な合成樹脂材料によって構成される。
第2壁体2の主板部23と第1壁体1の第1厚肉部11とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。シリコーンゴム製の第1壁体1と硬質合成樹脂製の第2壁体2との接合は、例えばプラズマ接合により行う。プラズマ接合において、第2壁体2(主板部23の当接部位)および第1壁体1(第1厚肉部11)をプラズマ処理し、互いに重ね合わせて押圧する。これにより、シリコーンゴム製の第1壁体1と硬質合成樹脂製の第2壁体2とは、互いの当接部位が貼り合わされた状態となって、強固に接合される。
図14に示すように、培養液収容容器A4の内部に形成された内部空間Sは、上下方向視(第1方向視)における第1厚肉部11の内側領域において、第1壁体1の第1内面12aおよび第2壁体2の第2内面23aにより囲まれた閉鎖状の空間である。本実施形態において、第1壁体1(第1薄肉部12)の第1内面12aと第2壁体2(主板部23)の第2内面23aとは、培養液収容容器A4の内部(内部空間S)に液体を注入しない状態(自然状態)において、互いに離間している。
培養液収容容器A4は、例えば細胞培養状態を維持しながら培養液の交換(灌流培養)を行う際に使用される。培養液収容容器A4は、灌流培養において細胞培養を行うための培養容器として使用することができる。
培養液収容容器A4の内部には多数の細胞と培養液が懸濁状態で注入されており、複数の凹部231それぞれにスフェロイドが形成される。灌流培養を行う際、例えば接続路を介して供給用バッグ(いずれも図示略)と培養液収容容器A4とをつなぎ、流路15を通じて当該接続路と内部空間Sとを連通可能とする。また、他の接続路(図示略)を介して培養液収容容器A4と回収用バッグ(図示略)とをつなぎ、流路16を通じて内部空間Sと当該他の接続路とを連通状態とする。そして、例えばポンプ手段(図示略)によって上記供給用バッグから新鮮な培養液が送出され、上記接続路を介して培養液収容容器A4に供給される。培養液収容容器A4の内部空間Sにある培養液は、上記他の接続路側へ排出され、当該他の接続路を介して上記回収用バッグに回収される。培養液収容容器A4での培養液の供給、排出のスピードは、スフェロイドが浮遊しない程度に抑える。このように本実施形態によれば、培養液収容容器A4を閉鎖系の培養容器として使用することができ、人手を介することなく培養液収容容器A4の培養液を交換することが可能である。したがって、培養液収容容器A4を用いて灌流培養を行うに際し、コンタミネーションのリスクを回避することができる。
第2壁体2の第2内面23aには複数の凹部231が設けられており、これら凹部231それぞれにスフェロイドが形成される。このような構成によれば、灌流培養を行う際にスフェロイドが不当に移動することは防止され、安定してスフェロイドを培養することができる。また、培養液収容容器A4によれば、上記のように閉鎖系での灌流培養が可能である。このため、例えば従来の開放系の容器では培養液交換時の蓋の開閉によってスフェロイドが浮遊するおそれがあったが、そのような不都合を回避することができる。
その他にも、本実施形態の培養液収容容器A4において、上記の培養液収容容器A3と同様の作用効果を奏する。
図15、図16は、本発明に係る培養液収容容器の第5実施形態を示している。本実施形態の培養液収容容器A5は、上記した培養液収容容器A3,A4と同様に第1壁体1(第1厚肉部11および第1薄肉部12)および第2壁体2(主板部23)を備えるが、これらの具体的構成が培養液収容容器A3,A4と異なっている。培養液収容容器A5は、培養細胞および培養液を収容し、細胞を培養するための培養容器として用いるのに適する。
第1厚肉部11は、概略長矩形環状とされている。第1薄肉部12は、第1厚肉部11に囲まれた内側領域の略全域に設けられている。本実施形態において、第1薄肉部12は概円形状とされている。第1薄肉部12の厚さは、例えば0.2~0.3mm程度である。第1薄肉部12は、必要に応じてガス透過性を有する。
図16に示すように、第2壁体2は、上下方向視(厚さ方向視)において第1壁体1と略重なっており、略長矩形状である。第2壁体2は、主に主板部23により構成される。主板部23は、外側部232および内側部233を含む。外側部232は、第1壁体1の第1厚肉部11と当接する部分である。内側部233は、外側部232の内側に位置する。内側部233は、外側部232よりも少し厚さが小さくされており、第2内面233aを有する。第2内面233aは、内側部233(主板部23)の厚さ方向の片側を向いており、第1壁体1に対向する。
内側部233の第2内面233aには、凹部234が形成されている。凹部234は、第2内面233aにおいて第1壁体1の第1薄肉部12と対向する領域に形成される。凹部234は、略一定の深さを有し、内側部233の大半の領域に形成される。凹部234は、培養細胞を収容するための凹みである。好ましくは、凹部234には、細胞シートが収容される。細胞シートは、例えば細胞とコラーゲン、ゼラチンなどのバイオポリマーにより作製される。
主板部23の外側部232(第2壁体2)には、流路235および流路236が形成されている。流路235および流路236は、各々、内部空間Sと外部とに連通しており、培養液収容容器A5における内容物の注入や排出に用いられる。流路235および流路236は、外側部232の内部の適所に形成された貫通路によって構成されており、外側部232(主板部23)の外側面に通じて端部が開口している。
第1壁体1および第2壁体2は、それぞれ、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。第1壁体1および第2壁体2を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。第1壁体1や第2壁体2と、内容物(培養細胞や培養液)との接触を考慮すると、第1壁体1および第2壁体2の構成材料としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第1壁体1の硬さについては、例えばゴム硬度が20度~40度程度、第2壁体2の硬さについては、例えばゴム硬度が40度~70度程度であるのが好ましい。
第2壁体2の主板部23(外側部232)と第1壁体1の第1厚肉部11とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。シリコーンゴム製の第1壁体1および第2壁体2の接合は、例えばプラズマ接合により行う。プラズマ接合において、第2壁体2(主板部23の当接部位)および第1壁体1(第1厚肉部11)をプラズマ処理し、互いに重ね合わせて押圧する。これにより、シリコーンゴムからなる第2壁体2および第1壁体1は、互いの当接部位が貼り合わされた状態となって、強固に接合される。
図16に示すように、培養液収容容器A5の内部に形成された内部空間Sは、上下方向視(第1方向視)における第1厚肉部11の内側領域において、第1壁体1の第1内面12aおよび第2壁体2の第2内面233aにより囲まれた閉鎖状の空間である。本実施形態において、第1壁体1(第1薄肉部12)の第1内面12aと第2壁体2(主板部23)の第2内面233aとは、培養液収容容器A5の内部(内部空間S)に液体を注入しない状態(自然状態)において、互いに離間している。
培養液収容容器A5は、例えば細胞培養状態を維持しながら培養液の交換(灌流培養)を行う際に使用される。培養液収容容器A5は、灌流培養において細胞培養を行うための培養容器として使用することができる。
灌流培養に先立ち、培養液収容容器A5内の凹部234に細胞シートを配置する。流路235を介して、細胞と細胞を支持するコラーゲン、ゼラチンなどのバイオポリマーを内部空間Sに注入し、加熱、紫外線、γ線照射、添加物などの手段によってゲル化する。これにより、内部空間S(主に凹部234内)に細胞シートCSが形成される。なお、第1薄肉部12の上部にフラットな押さえ板(図示略)を配置し、第1薄肉部12の上方への膨らみを防止してもよい。
灌流培養を行う際、例えば接続路を介して供給用バッグ(いずれも図示略)と培養液収容容器A5とをつなぎ、流路235を通じて当該接続路と内部空間Sとを連通可能とする。また、他の接続路(図示略)を介して培養液収容容器A5と回収用バッグ(図示略)とをつなぎ、流路236を通じて内部空間Sと当該他の接続路とを連通状態とする。そして、例えばポンプ手段(図示略)によって上記供給用バッグから新鮮な培養液が送出され、上記接続路を介して培養液収容容器A5に供給される。培養液収容容器A5の内部空間Sにある培養液は、上記他の接続路側へ排出され、当該他の接続路を介して上記回収用バッグに回収される。なお、図16において仮想線で示すように、培養液収容容器A5への培養液の供給によって第1薄肉部12が延伸して上方に膨らみ、内部空間Sの容積が増加するとともに細胞シートの培養に十分な量の培養液で満たされる。
本実施形態によれば、培養液収容容器A5を閉鎖系の培養容器として使用することができ、人手を介することなく培養液収容容器A5の培養液を交換することが可能である。したがって、培養液収容容器A5を用いて灌流培養を行うに際し、コンタミネーションのリスクを回避することができる。
その他にも、本実施形態の培養液収容容器A5において、上記の培養液収容容器A3と同様の作用効果を奏する。
図17~図20は、本発明に係る培養液収容容器の第6実施形態を示している。本実施形態の培養液収容容器A6は、上記した培養液収容容器A5と同様に第1壁体1(第1厚肉部11および第1薄肉部12)および第2壁体2(主板部23)を備えるが、これらの具体的構成が培養液収容容器A5と異なっている。培養液収容容器A6は、培養細胞および培養液を収容し、細胞を培養するための培養容器として用いるのに適する。
培養液収容容器A6においては、上記の培養液収容容器A5と比べて、第1壁体1および第2壁体2の上下の位置が反転している。即ち、培養液収容容器A6を使用する状態においては、第1壁体1が下側に配置され、第2壁体2が上側に配置される。
第1厚肉部11は、概円環状とされている。第1薄肉部12は、第1厚肉部11に囲まれた内側領域の略全域に設けられている。本実施形態において、第1薄肉部12は概円形状とされている。第1薄肉部12の厚さは、例えば0.2~0.3mm程度である。第1薄肉部12は、必要に応じてガス透過性を有する。また、第1薄肉部12は、必要に応じて透明とされる。
図18に示すように、第2壁体2は、上下方向視(厚さ方向視)において第1壁体1と略重なっており、略円形状である。第2壁体2は、主に主板部23により構成される。主板部23は、外側部232および内側部233を含む。外側部232は、第1壁体1の第1厚肉部11と当接する部分である。内側部233は、外側部232の内側に位置する。内側部233は、外側部232よりも極端に厚さが小さくされており、第2内面233aを有する。第2内面233aは、内側部233(主板部23)の厚さ方向の片側を向いており、第1壁体1に対向する。内側部233は、必要に応じてガス透過性を有する。また、内側部233は、必要に応じて透明とされる。
内側部233には、凹部234が形成されている。凹部234は、第2内面233aを含んでおり、第1壁体1の第1薄肉部12と対向する領域に形成される。凹部234は、略一定の深さを有し、内側部233の略全域に形成される。凹部234は、培養細胞を収容するための凹みである。好ましくは、凹部234には、細胞シートが収容される。
主板部23の外側部232(第2壁体2)には、流路235および流路236が形成されている。流路235および流路236は、各々、内部空間Sと外部とに連通可能であり、培養液収容容器A6における内容物の注入や排出に用いられる。流路235および流路236は、外側部232の内部の適所に形成された貫通路によって構成されており、外側部232(主板部23)の外側面に通じて端部が開口している。
本実施形態において、第2壁体2には、注入流路26および排出流路27が形成されている。注入流路26および排出流路27は、各々、凹部234と外部とに連通しており、液体の注入および排出に用いられる。外側部232の内周寄りには、筒状部24および筒状部25が互いに離間して形成されている。筒状部24および筒状部25は、外側部232の上面から上方に延びる。注入流路26は、筒状部24の貫通孔によって構成され、排出流路27は、筒状部25の貫通孔によって構成される。注入流路26および排出流路27それぞれの下端は、凹部234の底面において開口する。
第1壁体1および第2壁体2は、それぞれ、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。第1壁体1および第2壁体2を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。第1壁体1や第2壁体2と、内容物(培養細胞や培養液)との接触を考慮すると、第1壁体1および第2壁体2の構成材料としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第1壁体1の硬さについては、例えばゴム硬度が20度~40度程度、第2壁体2の硬さについては、例えばゴム硬度が40度~70度程度であるのが好ましい。
第2壁体2の主板部23(外側部232)と第1壁体1の第1厚肉部11とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。シリコーンゴム製の第1壁体1および第2壁体2の接合は、例えばプラズマ接合により行う。プラズマ接合において、第2壁体2(主板部23の当接部位)および第1壁体1(第1厚肉部11)をプラズマ処理し、互いに重ね合わせて押圧する。これにより、シリコーンゴムからなる第2壁体2および第1壁体1は、互いの当接部位が貼り合わされた状態となって、強固に接合される。
図18に示すように、培養液収容容器A6の内部に形成された内部空間Sは、上下方向視(第1方向視)における第1厚肉部11の内側領域において、第1壁体1の第1内面12aおよび第2壁体2の第2内面233aないし第2内面232aにより囲まれた閉鎖状の空間である。本実施形態において、第1壁体1(第1薄肉部12)の第1内面12aと第2壁体2(主板部23)の第2内面233a,232aとは、培養液収容容器A6の内部(内部空間S)に液体を注入しない状態(自然状態)において、互いに離間している。
本実施形態において、外側部232の内周寄りには、第2内面232aから下方に突出する円環状の突起237が設けられている。突起237は、培養液収容容器A6の内部に液体を注入しない状態(自然状態)において、第1薄肉部12に当接している。
培養液収容容器A6は、例えば細胞培養状態を維持しながら培養液の交換(灌流培養)を行う際に使用される。培養液収容容器A6は、灌流培養において細胞培養を行うための培養容器として使用することができる。
灌流培養に先立ち、培養液収容容器A6内の凹部234に細胞シートを配置する。注入流路26を介して、細胞と細胞を支持するコラーゲン、ゼラチンなどのバイオポリマーを内部空間Sに注入し、加熱、紫外線、γ線照射、添加物などの手段によってゲル化する。これにより、図19に示すように、内部空間S(主に凹部234内)に細胞シートCSが形成される。なお、細胞シートCSの形成時には、例えば第1薄肉部12の下部に押さえ板P(仮想線で表す)を配置し、第1薄肉部12の下方への膨らみを防止するのが好ましい。これにより、凹部234に注入されたポリマーは突起237により堰き止められ、流路235および流路236側に当該ポリマーが入り込むことは防止される。
灌流培養を行う際、例えば接続路を介して供給用バッグ(いずれも図示略)と培養液収容容器A6とをつなぎ、流路235を通じて当該接続路と内部空間Sとを連通可能とする。また、他の接続路(図示略)を介して培養液収容容器A6と回収用バッグ(図示略)とをつなぎ、流路236を通じて内部空間Sと当該他の接続路とを連通状態とする。図19に示した押さえ板Pは除去しておく。そして、例えばポンプ手段(図示略)によって上記供給用バッグから新鮮な培養液が送出され、上記接続路および流路235を介して培養液収容容器A6内に供給される。図20に示すように、培養液の供給によって第1薄肉部12が延伸して下方に膨らみ、細胞シートCSは自重によって第1薄肉部12の第1内面12a上に載る。これにより培養液収容容器A6の内部空間Sの容積は増加する。当該内部空間Sにある培養液は、流路236を介して上記他の接続路側へ排出され、当該他の接続路を介して上記回収用バッグに回収される。
本実施形態によれば、培養液収容容器A6を閉鎖系の培養容器として使用することができ、人手を介することなく培養液収容容器A6の培養液を交換することが可能である。したがって、培養液収容容器A6を用いて灌流培養を行うに際し、コンタミネーションのリスクを回避することができる。
細胞シートCSが収容される凹部234には、ポリマーの注入および排出を行う注入流路26および排出流路27が連通している。その一方、培養液収容容器A6の内部空間Sへの培養液の注入および排出は、流路235および流路236を介して行う。このように培養液の注入や排出をポリマーの注入・排出用の注入流路26および排出流路27と、培養液の注入や排出を行う流路235および流路236とを区別することによって、注入流路26や排出流路27に残存するポリマーが固形化(細胞シート化)した場合でも、灌流培養の際に流路235および流路236を通じた培養液の注入や排出が阻害されることはない。
その他にも、本実施形態の培養液収容容器A6において、上記の培養液収容容器A3と同様の作用効果を奏する。
図21、図22は、本発明に係る培養液収容容器の第7実施形態を示している。本実施形態の培養液収容容器A7は、第1壁体1および第2壁体2の他に中間壁体3を具備しており、かかる点が上記の培養液収容容器A3~A6と大きく異なる。培養液収容容器A7は、培養細胞および培養液を収容し、細胞を培養するための培養容器として用いるのに適する。
第1壁体1は、第1厚肉部11および第1薄肉部12を有する。第1厚肉部11は、概円環状とされている。第1薄肉部12は、第1厚肉部11に囲まれた内側領域の略全域に設けられている。本実施形態において、第1薄肉部12は概円形状とされている。第1薄肉部12の厚さは、例えば0.2~0.3mm程度である。第1薄肉部12は、必要に応じてガス透過性を有する。また、第1薄肉部12は、必要に応じて透明とされる。
図22に示すように、第1厚肉部11には、流路17が形成されている。流路17は、内部空間Sと外部とに連通しており、例えば培養液収容容器A7における内容物の注入に用いられる。第1厚肉部11の外周寄りには、筒状部13が形成されている。筒状部13は、第1厚肉部11の上面から上方に延びる。流路17は、筒状部13の貫通孔と第1厚肉部11に形成された溝とによって構成される。
本実施形態において、第1厚肉部11には、流路18が形成されている。流路18は、後述する流路238を介して内部空間Sと、外部と、に連通しており、例えば培養液収容容器A7における内容物の排出に用いられる。流路18は、第1厚肉部11の適所において上下方向に貫通する貫通孔によって構成される。
第2壁体2は、上下方向視(厚さ方向視)において第1壁体1と略重なっており、略円形状である。第2壁体2は、主に主板部23により構成される。主板部23は、外側部232および内側部233を含む。外側部232は、第1壁体1の第1厚肉部11と当接する部分である。内側部233は、外側部232の内側に位置する。内側部233は、外側部232よりも極端に厚さが小さくされており、第2内面233aを有する。第2内面233aは、内側部233(主板部23)の厚さ方向の片側を向いており、第1壁体1に対向する。内側部233は、必要に応じてガス透過性を有する。また、内側部233は、必要に応じて透明とされる。
本実施形態において、主板部23の外側部232(第2壁体2)には、流路238が形成されている。流路238は、内部空間Sと、流路18を介して外部と、に連通しており、例えば培養液収容容器A7における内容物の排出に用いられる。流路238は、外側部232の内部の適所に形成された貫通路によって構成されている。
中間壁体3は、第1壁体1と第2壁体2との間に介在している。より具体的には、中間壁体3は、略一定厚さの円板状である。主板部23の外側部232の内周寄りには段部239が形成されており、中間壁体3の外周側の部位が当該段部239に嵌っている。中間壁体3において第1壁体1と対向する表面31と、外側部232の外周寄りの部位の上面とは、略面一状である。第1壁体1の第1厚肉部11は、上下方向視(厚さ方向視)において中間壁体3の外周側の部位および外側部232と重なっている。
本実施形態において、培養液収容容器A7の内部空間Sは、中間壁体3によって区画されている。内部空間Sは、中間壁体3に対して第1壁体1側の第1内部空間S1と、中間壁体3に対して第2壁体2側の第2内部空間S2と、を含む。第1厚肉部11(第1壁体1)に形成された流路17は、第1内部空間S1に連通しており、本発明で言う第1内部空間側流路の一例に相当する。主板部23の外側部232(第2壁体2)に形成された流路238および第1厚肉部11に形成された流路18は、第2内部空間S2に連通しており、本発明で言う第2内部空間側流路の一例に相当する。
中間壁体3の表面31には、複数の凹部32が形成されている。複数の凹部32は、表面31において第1壁体1の第1薄肉部12と対向する領域に形成される。図23に示すように、複数の凹部32は、中間壁体3の表面31の面内方向に沿って縦横に配列されている。
図22に示すように、複数の凹部32は、各々、第2壁体2側に向かうに横断面の面積が小さくなるようにテーパ状とされている。そして、凹部32の底部には、貫通孔33が形成されている。好ましくは、複数の凹部32には、スフェロイド(細胞凝集塊)が収容される。そして、各貫通孔33の断面サイズは、当該スフェロイドのサイズよりも小さくされる。この貫通孔33を介して、第1内部空間S1と第2内部空間S2との間で液体が通過し得る。貫通孔33は、本発明で言う液体通過部の一例に相当する。
第1壁体1、第2壁体2および中間壁体3は、それぞれ、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。第1壁体1、第2壁体2および中間壁体3を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。第1壁体1、第2壁体2や中間壁体3と、内容物(培養細胞や培養液)との接触を考慮すると、第1壁体1、第2壁体2および中間壁体3の構成材料としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第1壁体1の硬さについては、例えばゴム硬度が20度~40度程度、第2壁体2および中間壁体3の硬さについては、例えばゴム硬度が40度~70度程度であるのが好ましい。
第2壁体2の主板部23(外側部232)と第1壁体1の第1厚肉部11とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。シリコーンゴム製の第1壁体1および第2壁体2の接合は、例えばプラズマ接合により行う。プラズマ接合において、第2壁体2(主板部23の当接部位)および第1壁体1(第1厚肉部11)をプラズマ処理し、互いに重ね合わせて押圧する。これにより、シリコーンゴムからなる第2壁体2および第1壁体1は、互いの当接部位が貼り合わされた状態となって、強固に接合される。
培養液収容容器A7は、例えば細胞培養状態を維持しながら培養液の交換(灌流培養)を行う際に使用される。培養液収容容器A7は、灌流培養において細胞培養を行うための培養容器として使用することができる。
培養液収容容器A7の内部には多数の細胞と培養液が懸濁状態で注入されており、複数の凹部32それぞれにスフェロイドが形成される。灌流培養を行う際、例えば接続路を介して供給用バッグ(いずれも図示略)と培養液収容容器A7とをつなぎ、流路17を通じて当該接続路と第1内部空間S1とを連通可能とする。また、他の接続路(図示略)を介して培養液収容容器A7と回収用バッグ(図示略)とをつなぎ、流路238および流路18を通じて第2内部空間S2と当該他の接続路とを連通状態とする。そして、例えばポンプ手段(図示略)によって上記供給用バッグから新鮮な培養液が送出され、上記接続路を介して培養液収容容器A7に供給される。具体的には、培養液収容容器A7の第1内部空間S1に新鮮な培養液が供給される。供給された培養液は、中間壁体3の凹部32および貫通孔33を通過して第2内部空間S2へ送出される。第2内部空間S2にある培養液は、上記他の接続路側へ排出され、当該他の接続路を介して上記回収用バッグに回収される。培養液収容容器A7での培養液の供給、排出のスピードは、スフェロイドが浮遊しない程度に抑える。このように本実施形態によれば、培養液収容容器A7を閉鎖系の培養容器として使用することができ、人手を介することなく培養液収容容器A7の培養液を交換することが可能である。したがって、培養液収容容器A7を用いて灌流培養を行うに際し、コンタミネーションのリスクを回避することができる。
中間壁体3の表面31には複数の凹部32が設けられており、これら凹部32それぞれにスフェロイドが形成される。このような構成によれば、灌流培養を行う際にスフェロイドが不当に移動することは防止され、安定してスフェロイドを培養することができる。また、培養液収容容器A7によれば、上記のように閉鎖系での灌流培養が可能である。このため、例えば従来の開放系の容器では培養液交換時の蓋の開閉によってスフェロイドが浮遊するおそれがあったが、そのような不都合を回避することができる。
凹部32の底部には、貫通孔33が形成されている。灌流培養の際、第1内部空間S1に供給される新鮮な培養液は、凹部32に収容されたスフェロイドの周囲を流れ、貫通孔33を介して第2内部空間S2側に流れ込む。このような構成によれば、供給された培養液がスフェロイド(培養細胞)に接触しやすくなり、細胞培養の効率が向上する。
その他にも、本実施形態の培養液収容容器A7において、上記の培養液収容容器A3と同様の作用効果を奏する。
図24は、中間壁体3の変形例を示している。同図に示した中間壁体3においては、複数の凹部32と多孔膜34とが形成されている。本変形例において、複数の凹部32は有底状であり、中間壁体3の表面31の面内方向において縦横に配列されている。多孔膜34は、細孔が形成された領域であり、液体の通過が可能である。多孔膜34は、複数の凹部32の形成領域とは異なる適所に設けられている。多孔膜34は、本発明で言う液体通過部の一例に相当する。このような構成によっても、培養液収容容器A7と同様にして灌流培養を行うことができる。
図25、図26は、本発明に係る培養液収容容器の第8実施形態を示している。本実施形態の培養液収容容器A8は、培養液収容容器A7と同様に中間壁体3を具備するが、その中間壁体3の具体的構成が大きく異なっており、それに伴い種々の変更が施されている。培養液収容容器A8は、培養細胞および培養液を収容し、細胞を培養するための培養容器として用いるのに適する。
第1壁体1は、第1厚肉部11および第1薄肉部12を有する。第1厚肉部11は、概略長矩形環状とされている。第1薄肉部12は、第1厚肉部11に囲まれた内側領域の略全域に設けられている。本実施形態において、第1薄肉部12は概円形状とされている。第1薄肉部12の厚さは、例えば0.4~0.6mm程度である。本実施形態において、液体はこの第1薄肉部12を透過せず、ガス透過は僅かである。
図26に示すように、第1厚肉部11には、流路17が形成されている。流路17は、内部空間S(第1内部空間S1)と外部とに連通しており、例えばガスの注入に用いられる。第1厚肉部11の外周寄りには、筒状部13が形成されている。筒状部13は、第1厚肉部11の上面から上方に延びる。流路17は、筒状部13の貫通孔と第1厚肉部11に形成された溝とによって構成される。
第2壁体2は、上下方向視(厚さ方向視)において第1壁体1と略重なっており、略長矩形状である。第2壁体2は、主に主板部23により構成される。主板部23は、外側部232および内側部233を含む。外側部232は、第1壁体1の第1厚肉部11と当接する部分である。内側部233は、外側部232の内側に位置する。内側部233は、外側部232よりも厚さが小さくされており、第2内面233aを有する。第2内面233aは、内側部233(主板部23)の厚さ方向の片側を向いており、第1壁体1に対向する。
第2内面233aは、細胞を培養するための平坦な細胞培養面である。この細胞培養面(第2内面233a)には、必要に応じて細胞接着性を向上させるための表面処理が適宜施される。当該表面処理としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理(親水化処理)による表面改質、あるいは適宜の表面改質の後、コラーゲンなどの細胞支持層を付与することなどを挙げることができる。
本実施形態において、主板部23の外側部232(第2壁体2)には、流路281および流路282が形成されている。流路281および流路282は、各々、内部空間S(第2内部空間S2)と外部とに連通しており、培養液収容容器A8における内容物の注入や排出に用いられる。流路281および流路282は、外側部232の内部の適所に形成された貫通路によって構成されており、外側部232(主板部23)の外側面に通じて端部が開口している。
中間壁体3は、第1壁体1と第2壁体2との間に介在している。より具体的には、中間壁体3は、中間厚肉部35および中間薄肉部36を有する。中間厚肉部35は、略円環状とされている。中間薄肉部36は、中間厚肉部35の内側に位置して当該内側を塞いでいる。中間薄肉部36は、中間厚肉部35よりも極端に厚さが小さくされており、ガス透過性を有する。
主板部23の外側部232の内周寄りには段部239が形成されており、中間厚肉部35が当該段部239に嵌っている。中間厚肉部35において第1壁体1と対向する面と、外側部232の外周寄りの部位の上面とは、略面一状である。第1壁体1の第1厚肉部11は、上下方向視(厚さ方向視)において中間厚肉部35および外側部232と重なっている。
本実施形態において、培養液収容容器A8の内部空間Sは、中間壁体3によって区画されている。内部空間Sは、中間壁体3に対して第1壁体1側の第1内部空間S1と、中間壁体3に対して第2壁体2側の第2内部空間S2と、を含む。第1厚肉部11(第1壁体1)に形成された流路17は、第1内部空間S1に連通しており、本発明で言う第1内部空間側流路の一例に相当する。主板部23の外側部232(第2壁体2)に形成された流路281および流路282は、第2内部空間S2に連通しており、本発明で言う第2内部空間側流路の一例に相当する。また、中間壁体3においてガス透過性を有する中間厚肉部35は、第1内部空間S1および第2内部空間S2のいずれにも接しており、本発明で言うガス透過部の一例に相当する。
第1壁体1、第2壁体2および中間壁体3は、それぞれ、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。第1壁体1、第2壁体2および中間壁体3を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。第1壁体1、第2壁体2や中間壁体3と、内容物(培養細胞や培養液)との接触を考慮すると、第1壁体1、第2壁体2および中間壁体3の構成材料としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、第1壁体1の硬さについては、例えばゴム硬度が20度~40度程度、第2壁体2および中間壁体3の硬さについては、例えばゴム硬度が40度~70度程度であるのが好ましい。
第2壁体2の主板部23(外側部232)と第1壁体1の第1厚肉部11とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。シリコーンゴム製の第1壁体1および第2壁体2の接合は、例えばプラズマ接合により行う。プラズマ接合において、第2壁体2(主板部23の当接部位)および第1壁体1(第1厚肉部11)をプラズマ処理し、互いに重ね合わせて押圧する。これにより、シリコーンゴムからなる第2壁体2および第1壁体1は、互いの当接部位が貼り合わされた状態となって、強固に接合される。
培養液収容容器A8は、例えば細胞培養状態を維持しながら培養液の交換(灌流培養)を行う際に使用される。培養液収容容器A8は、灌流培養において細胞培養を行うための培養容器として使用することができる。
培養液収容容器A8の第2内部空間S2には培養細胞と培養液が注入される。灌流培養を行う際、例えば接続路を介して供給用バッグ(いずれも図示略)と培養液収容容器A8とをつなぎ、流路281を通じて当該接続路と第2内部空間S2とを連通可能とする。また、他の接続路(図示略)を介して培養液収容容器A8と回収用バッグ(図示略)とをつなぎ、流路282を通じて第2内部空間S2と当該他の接続路とを連通状態とする。そして、例えばポンプ手段(図示略)によって上記供給用バッグから新鮮な培養液が送出され、上記接続路を介して培養液収容容器A8に供給される。培養液収容容器A8の第2内部空間S2にある培養液は、上記他の接続路側へ排出され、当該他の接続路を介して上記回収用バッグに回収される。このように本実施形態によれば、培養液収容容器A8を閉鎖系の培養容器として使用することができ、人手を介することなく培養液収容容器A8の培養液を交換することが可能である。したがって、培養液収容容器A8を用いて灌流培養を行うに際し、コンタミネーションのリスクを回避することができる。
培養液収容容器A8において、灌流培養に先立ち、流路17を介して第1内部空間S1に所定のガス(例えばCO2濃度5%の調整ガス)を注入し、流路17を封止する。ここで、第1内部空間S1を大気圧より高圧状態とすることで、図27において仮想線で示すように、弾力性を有する材料からなる第1薄肉部12が延伸して上方に膨らみ、第1内部空間S1の容積が増加する。中間壁体3の中間薄肉部36は、第1内部空間S1および第2内部空間S2の双方に接しており、ガス透過性を有する。このような構成によれば、例えば第1内部空間S1にあるガスが中間薄肉部36を介して第2内部空間S2にある培養液に取り込まれることで、当該培養液のPH値を調整することが可能である。
第2内部空間S2にある細胞は、時間が経過すると細胞培養面(第2内面233a)に接着し、灌流培養が可能になる。第2内面233aに上記した細胞接着性を向上させるための表面処理が施されていると、細胞がより確実に細胞培養面に接着する。したがって、このような構成は、培養液収容容器A8内において細胞培養を適切に進行させる上で好ましい。
また、このような細胞接着性を高めるための表面処理は、必要に応じて例えば上記の培養液収容容器A7において施してもよい。なお、例えば培養液収容容器A6等において、必要に応じて第2内面233aに細胞剥離性を高めるための表面処理を施してもよい。
その他にも、本実施形態の培養液収容容器A8において、上記の培養液収容容器A3と同様の作用効果を奏する。
図28は、本発明の参考例に係る培養液収容容器を示している。本参考例の培養液収容容器A9は、培養液収容容器A8の第1壁体1、第2壁体2および中間壁体3にそれぞれ対応する上部板81、下部板82および中部板83を備えるが、これら部材の具体的構成が培養液収容容器A8と異なっている。培養液収容容器A9は、培養細胞および培養液を収容し、細胞を培養するための培養容器として用いるのに適する。
上部板81は、全体として略一定厚さの平板状とされており、適度な厚さを有する。上部板81の厚さは、例えば1~3mm程度である。上部板81には、ガス流路812が形成されている。ガス流路812は、後述する上部空間S3と外部とに連通しており、ガスの注入に用いられる。上部板81の外周寄りには、筒状部811が形成されている。筒状部811は、上部板81の上面から上方に延びる。ガス流路812は、筒状部811の貫通孔と上部板81に形成された溝とによって構成される。
下部板82は、上下方向視(厚さ方向視)において上部板81と略重なっている。下部板82は、全体として略一定厚さの平板状とされている。下部板82の厚さは、上部板81の厚さと同等以上である。下部板82の表面82aは、下部板82の厚さ方向の片側を向いており、上部板81に対向する。下部板82の表面82aには、複数の凹部821および複数の溝822が形成されている。複数の凹部821および複数の溝822は、表面82aにおいて後述する内側薄肉部832と対向する領域に形成されている。
図29に示すように、複数の凹部821は、表面82aの面内方向に沿って縦横に配列されている。複数の凹部821は、培養細胞を収容するための凹みである。好ましくは、凹部821には、スフェロイド(細胞凝集塊)が収容される。複数の溝822は、隣接する凹部821の相互間をつなぐように形成されている。また、図28に示すように、幾つかの溝822は、表面82aの面内方向において複数の凹部821の形成領域の外側にも延びており、当該溝822はいずれかの凹部821につながっている。
図28に示すように、中部板83は、上部板81と下部板82との間に介在している。中部板83は、上下方向視(厚さ方向視)において上部板81および下部板82と略重なっている。より具体的には、中部板83は、外側厚肉部831および内側薄肉部832を有する。外側厚肉部831は、略一定の厚さを有し、環状とされている。外側厚肉部831の厚さは、上部板81や下部板82の厚さよりも大きい。内側薄肉部832は、外側厚肉部831の内側に位置して当該内側を塞いでいる。内側薄肉部832は、外側厚肉部831よりも極端に厚さが小さくされており、ガス透過性を有する。
外側厚肉部831には、培養液流路833および培養液流路834が形成されている。培養液流路833および培養液流路834は、各々、後述する下部空間S4と外部とに連通しており、培養液収容容器A9における内容物の注入や排出に用いられる。培養液流路833および培養液流路834は、外側厚肉部831の適所に形成された貫通路によって構成されており、外側厚肉部831の外側面に通じて端部が開口している。
本参考例において、培養液収容容器A9の内部の空間は、中部板83(内側薄肉部832)によって区画されており、内側薄肉部832に対して上部板81側の上部空間S3と、内側薄肉部832に対して下部板82側の下部空間S4と、を含む。上部板81に形成されたガス流路812は、上部空間S3に連通している。外側厚肉部831に形成された培養液流路833および培養液流路834は、下部空間S4に連通している。また、中部板83においてガス透過性を有する内側薄肉部832は、上部空間S3および下部空間S4のいずれにも接している。
上部板81、下部板82および中部板83は、それぞれ、弾力性を有する材料によって一体的に形成されている。上部板81、下部板82および中部板83を構成する材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。下部板82や中部板83と、内容物(培養細胞や培養液)との接触を考慮すると、下部板82および中部板83の構成材料としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、中部板83の硬さについては、例えばゴム硬度が20度~40度程度、上部板81および下部板82の硬さについては、例えばゴム硬度が40度~70度程度であるのが好ましい。
上部板81と中部板83の外側厚肉部831とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。また、下部板82と中部板83の外側厚肉部831とは、互いに当接しており、当該当接部位において互いに接合される。シリコーンゴム製の上部板81、中部板83および下部板82の接合は、例えばプラズマ接合により行う。プラズマ接合において、上部板81の当接部位、中部板83(外側厚肉部831)および下部板82の当接部位をプラズマ処理し、互いに重ね合わせて押圧する。これにより、シリコーンゴムからなる上部板81、中部板83および下部板82は、互いの当接部位が貼り合わされた状態となって、強固に接合される。
本参考例の培養液収容容器A9は、例えば細胞培養状態を維持しながら培養液の交換(灌流培養)を行う際に使用される。培養液収容容器A9は、灌流培養において細胞培養を行うための培養容器として使用することができる。
培養液収容容器A9の下部空間S4には多数の細胞と培養液が懸濁状態で注入されており、複数の凹部231それぞれにスフェロイドが形成される。灌流培養を行う際、例えば接続路を介して供給用バッグ(いずれも図示略)と培養液収容容器A9とをつなぎ、培養液流路833を通じて当該接続路と下部空間S4とを連通可能とする。また、他の接続路(図示略)を介して培養液収容容器A9と回収用バッグ(図示略)とをつなぎ、培養液流路834を通じて下部空間S4と当該他の接続路とを連通状態とする。そして、例えばポンプ手段(図示略)によって上記供給用バッグから新鮮な培養液が送出され、上記接続路を介して培養液収容容器A9に供給される。培養液収容容器A9の下部空間S4にある培養液は、上記他の接続路側へ排出され、当該他の接続路を介して上記回収用バッグに回収される。このように本参考例によれば、培養液収容容器A9を閉鎖系の培養容器として使用することができ、人手を介することなく培養液収容容器A9の培養液を交換することが可能である。したがって、培養液収容容器A9を用いて灌流培養を行うに際し、コンタミネーションのリスクを回避することができる。
培養液収容容器A9において、灌流培養に先立ち、ガス流路812を介して上部空間S3に所定のガス(例えばCO2濃度5%の調整ガス)を注入し、ガス流路812を封止する。ここで、上部空間S3を大気圧より高圧状態とすることで、図30に示すように、弾力性を有する材料からなる内側薄肉部832が延伸して下方に膨らみ、上部空間S3の容積が増加する。内側薄肉部832は、上部空間S3および下部空間S4の双方に接しており、ガス透過性を有する。このような構成によれば、例え上部空間S3にあるガスが内側薄肉部832を介して下部空間S4にある培養液に取り込まれることで、当該培養液のPH値を調整することが可能である。
下部板82の表面82aには複数の凹部821が設けられており、これら凹部821それぞれにスフェロイドが形成される。また、内側薄肉部832が延伸して下方に膨らむことで、当該内側薄肉部832は複数の凹部821を覆って塞ぐ。灌流培養を行う際にスフェロイドが不当に移動することは防止され、安定してスフェロイドを培養することができる。
また、下部板82の表面82aには、複数の凹部821の隣接相互間をつなぐ溝822が形成されている。幾つかの溝822は、表面82aの面内方向において複数の凹部821の形成領域の外側にも延びており、当該溝822はいずれかの凹部821につながっている。このような構成によれば、下部空間S4に供給される培養液が溝822を通じて各凹部821に流れることが可能である。これにより、供給された培養液が凹部821に収容されたスフェロイド(培養細胞)に接触しやすくなり、細胞培養の効率が向上する。
その他にも、本参考例の培養液収容容器A9において、上記の培養液収容容器A3と同様の作用効果を奏する。
なお、培養液収容容器A9において、上部板81がシリコーンゴムなどの軟質なゴム系材料によって構成される場合について説明したが、これに代えて、上部板を例えば硬質な合成樹脂製の平板により構成してもよい。さらに、上部板が透明樹脂であれば、当該上部板を介して内部の目視による観察が可能である。ガス注入用のガス流路および培養液注入排出用の培養液流路については、すべて中部板に形成すればよい。シリコーンゴム製の上部板と硬質合成樹脂製の中部板との接合は、例えばプラズマ接合により行う。プラズマ接合によれば、互いの当接部位が貼り合わされた状態となって、強固に接合される。
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係る培養液収容容器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
上記実施形態において、第2壁体2に凹部(例えば培養液収容容器A3における複数の凹部231など)が適宜形成される場合について説明したが、これに代えて、例えば第2壁体2に凸部が形成される構成としてもよい。図31、図32は、第2壁体2の表面2aに複数の凸部29が形成される場合の一例を示す。同図に示した複数の凸部29は、縦横に規則的に配列されており、近接する4つの凸部29によって略矩形をなすように配置されている。また、隣接する凸部29の間は少し間隔を隔てている。複数の凸部29を具備する構成は、好ましくは、培養液の供給用バッグとして使用する培養液収容容器に適用される。例えば上記の培養液収容容器A1,A2において、第2壁体2の表面2a(培養液収容容器A1,A2では第2薄肉部22の第2内面22a)に複数の凸部29を設けることができる。このような構成によれば、培養液収容容器の内部の培養液を排出し残量が僅かになった際、第1薄肉部12が第2壁体2の表面2aに貼りつくことを防止できる。したがって、培養液収容容器の内部にある培養液は、隣接する凸部29の隙間を通って最後までスムーズに流れる。
また、複数の凸部29を具備する培養液収容容器において、複数の凸部29に囲まれた表面(第2内面)に複数の微細な凹部が配列されていてもよい。複数の微細な凹部をさらに備える構成は、好ましくは、培養細胞および培養液を収容する培養液収容容器に適用される。灌流培養を行う際、例えば、略矩形をなす4つの近接する凸部29で囲まれた領域に配列された微細な凹部に、スフェロイド(細胞凝集塊)が収容される。このような構成によれば、灌流培養の際にスフェロイドが不当に移動することは防止され、安定してスフェロイドを培養することができる。また、培養液収容容器に供給される培養液は、隣接する凸部29の隙間を通ってスフェロイドの周囲に流れる。これにより、供給された培養液がスフェロイド(培養細胞)に接触しやすくなり、細胞培養の効率が向上する。
上記の第2壁体2に設けた凹部や凸部に代えて、凹凸部を設けてもよい。当該凹凸部は、例えば第2壁体2の内面の所定領域を凹凸状に形成することにより構成され、例えば第2壁体2の所定領域全体が波打つような曲面形状とされる。このような構成によっても、灌流培養の際に培養液を最後までスムーズに流すことができる。
本発明の培養液収容容器を用いて灌流培養を行った後、培養細胞を取り出すために、第1壁体1や第2壁体2に切断用凹部を設けてもよい。図33は、上記実施形態の培養液収容容器A5に切断用凹部を設けた場合の一例を示す。同図に示すように、第1壁体1の第1厚肉部11の適所には切断用凹部191が形成され、第2壁体2の主板部23(外側部232)の適所には切断用凹部291が形成される。切断用凹部191および切断用凹部291は、周囲の他の部位よりも厚さが小さくされて凹む部分であり、上下方向視において互いに重なる。切断用凹部191は、第1厚肉部11の外周縁から内周縁まで形成される。このような構成によれば、第1壁体1および第2壁体2を切断用凹部191,291において比較的容易に切断することができ、内部の培養細胞を取り出すことが可能である。