WO2023140203A1 - 電動圧縮機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電動圧縮機の初期なじみ中の起動性を考慮しつつ製品寿命の低下や故障を抑制する。 【解決手段】電動圧縮機の制御装置は、電動圧縮機に動力源として備えられた電動モータのロータ位置をセンサレスで検出してステータコイルへの通電を制御するセンサレスモードを実行する。センサレスモードの実行時には、電動モータの駆動が電動圧縮機の初期なじみに有効となる時間に基づいて電動圧縮機の慣らし運転が完了したか否かを監視する。センサレスモードの前段階として起動モードを実行するときには、起動電流ISTARTを、慣らし運転が完了したと判定する前では高電流値Iに設定し、慣らし運転が完了したと判定した以降では低電流値Iに設定する。

Description

電動圧縮機の制御装置
 本発明は、電動圧縮機の制御装置に関する。
 電動モータの通常運転時、ステータコイルに発生する誘起電圧によりロータ位置をセンサレスで検出することでステータコイルへの通電を制御するセンサレスモードが知られている。このセンサレスモードで駆動される電動モータの起動時には、ステータコイルに誘起電圧が発生していないため、ロータ位置をセンサレスで直ちに検出することは通常困難である。このため、電動モータの起動時には、センサレスモードへ移行する前段階として、ロータ位置を考慮しない強制転流によってロータを強制的に回転させて誘起電圧を発生させる起動モードが実行されている(例えば特許文献1)。
特開2010-110177号公報
 ところで、上記の電動モータを圧縮機の動力源として有する電動圧縮機では、使用開始当初における初期なじみ中の起動性を考慮し、予め起動電流を比較的高い値に設定して起動モードを実行することが考えられる。しかし、このような比較的高い起動電流による起動モードが起動毎に実行されると、モータ駆動回路の半導体スイッチング素子や電動圧縮機の機械的摺動部の劣化を徒に早め、製品寿命の低下や故障を招くおそれがある。
 そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、電動圧縮機の初期なじみ中の起動性を考慮しつつ製品寿命の低下や故障を抑制する、電動圧縮機の制御装置を提供することを目的とする。
 上記目的を達成するために、本発明の電動圧縮機の制御装置は、電動圧縮機に動力源として備えられた電動モータのロータ位置をセンサレスで検出してステータコイルへの通電を制御するセンサレスモードを実行し、センサレスモードの実行時に、電動モータの駆動が電動圧縮機の初期なじみに有効となる時間に基づいて電動圧縮機の慣らし運転が完了したか否かを監視し、センサレスモードの前段階として起動モードを実行するときに、起動電流を、慣らし運転が完了したと判定する前では第1電流値に設定し、慣らし運転が完了したと判定した以降では第1電流値よりも低い第2電流値に設定する。
 本発明の電動圧縮機の制御装置によれば、電動圧縮機の初期なじみ中における起動性を考慮しつつ製品寿命の低下や故障を抑制することができる。
電動圧縮機を適用した冷凍サイクルの一例を示す概要図である。 電動圧縮機の駆動制御系の一例を示す回路ブロック図である。 第1例モータ制御装置の電動モータ制御処理例を示すフローチャートである。 同モータ制御装置のセンサレスモード機能構成例を示すブロック図である。 同モータ制御装置のセンサレスモード処理例を示すフローチャートである。 同モータ制御装置の起動モード機能構成例を示すブロック図である。 同モータ制御装置の起動モード処理例を示すフローチャートである。 第2例モータ制御装置の起動モード機能構成例を示すブロック図である。 同モータ制御装置の起動モード処理例を示すフローチャートである。 第3例モータ制御装置の起動モード機能構成例を示すブロック図である。 同モータ制御装置の起動モード処理例を示すフローチャートである。
 以下、本発明を実施するための実施形態について、添付図面を参照して詳述する。
 図1は、圧縮機が適用される冷凍サイクルの一例を示す。
 冷凍サイクル1は、冷媒が循環する冷媒配管2に対して、圧縮機3、凝縮器4、膨張弁5及び蒸発器6をこの順番で配設して構成された蒸気圧冷凍サイクルである。圧縮機3は、低温・低圧の気体冷媒を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。凝縮器4は、圧縮機3を通過した高温・高圧の気体冷媒を冷却して低温・高圧の液体冷媒にする。膨張弁5は、低温・高圧の液体冷媒を減圧して低温・低圧の液体冷媒にする。蒸発器6は、低温・低圧の液体冷媒を気化させて低温・低圧の気体冷媒にする。このような冷凍サイクル1は、車載式又は定置式を問わず、エアコンディショナーやヒートポンプ等、様々な機器に適用可能である。
 図2は、圧縮機3の駆動制御系の概略的な構成例を示す。圧縮機3は、その動力源となる電動モータ7と共に電動圧縮機8を構成し、この電動モータ7を駆動するモータ駆動回路9は、コンピュータを内蔵するモータ制御装置10により制御される。これにより、モータ制御装置10は、電動圧縮機8の制御装置として機能する。電動圧縮機8、モータ駆動回路9及びモータ制御装置10は、一体的に形成されたハウジングに収容されるが、少なくともモータ制御装置10が電動圧縮機8とは別体の独立したハウジングに収容されることを排除するものではない。
 電動モータ7は、U相コイル71、V相コイル72、W相コイル73の各一端がスター結線で接続されたステータコイルを含むステータと、永久磁石を含むロータと、を有する永久磁石同期モータである。図中では、3相コイル71,72,73からなるステータコイルのみを示し、その他は図示を省略してある。また、3相コイル71,72,73の結線形式の一例としてスター結線を用いているが、これに代えてデルタ結線が用いられてもよい。
 モータ駆動回路9は、6つのスイッチング素子91~96を含み、直流電源11から供給された直流電力を3相交流電力に変換する3相ブリッジ回路である。具体的には、直流電源11の高電位側から延びる正極側電力線11aと直流電源11の低電位側から延びる負極側電力線11bとの間に、U相アーム、V相アーム及びW相アームが並列に接続されている。U相アームは、2つのスイッチング素子91,92を直列に接続してなり、スイッチング素子91,92の接続線とU相コイル71の他端とが接続されている。V相アームは、2つのスイッチング素子93,94を直列に接続してなり、スイッチング素子93,94の接続線とV相コイル72の他端とが接続されている。W相アームは、2つのスイッチング素子95,96を直列に接続してなり、スイッチング素子95,96の接続線とW相コイル73の他端とが接続されている。図中ではスイッチング素子91~96としてゲート信号Sgに応じてスイッチング動作を行うIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を示しているが、外部からの制御信号に応じてスイッチング動作を行うものであれば他の半導体スイッチング素子でもよい。例えば、IGBTに代えてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いることができる。
 また、モータ駆動回路9は、電流センサ97~99を有している。電流センサ97は、U相電流Iuを計測し、その計測値を反映した電流計測信号Siuを出力する。電流センサ98は、V相電流Ivを計測し、その計測値を反映した電流計測信号Sivを出力する。電流センサ99は、W相電流Iwを計測し、その計測値を反映した電流計測信号Siwを出力する。図中では、電流センサ97~99はそれぞれ、シャント抵抗の両端電位差を増幅して出力するシャント式電流センサとして示され、このシャント抵抗は、下アームのスイッチング素子92,94,96と負極側電力線11bとの間に介装されている。なお、電流センサ97~99として、シャント抵抗を用いる代わりに、ホールICを用いてもよい。
 モータ制御装置10は、電流計測信号Siu,Siv,Siwと、印可電圧信号Svu,Svv,Svwと、を入力し、これらの信号に基づいて、モータ駆動回路9のスイッチング素子91~96のそれぞれへ個別にゲート信号Sgを出力する。ここで、印可電圧信号SvuはU相コイル7uの他端に印加されるU相印可電圧Vuの値を反映し、印可電圧信号SvvはV相コイル7vの他端に印加されるV相印可電圧Vvの値を反映し、誘起電圧信号SvwはW相コイル7wの他端に印加されるW相印可電圧Vwの値を反映している。なお、スイッチング素子91~96をスイッチング駆動できるように、ゲート信号Sgの信号レベルを調整するプリドライバをモータ制御装置10とモータ駆動回路9との間に介在させてもよい。
 モータ制御装置10は、具体的には、電動圧縮機8の通常運転時、3相コイル71,72,73に発生する誘起電圧や鎖交磁束によりロータ位置(ロータの回転角度)を推定することで3相コイル71,72,73への通電を制御するセンサレスモードを実行する。一方、モータ制御装置10は、電動圧縮機8の起動時、センサレスモードへ移行する前段階として、ロータ位置を考慮しない強制転流によってロータを強制的に回転させる起動モードを実行する。これは、電動圧縮機8の起動時には、ロータの停止により3相コイル71,72,73に誘起電圧が発生していないため、ロータ位置をセンサレスで直ちに検出できないことを考慮したものである。
 図3は、モータ制御装置10において電動モータ7を駆動するための制御処理を概略的に示す。モータ制御装置10は、内蔵のコンピュータにおいて、プロセッサが不揮発性メモリに予め格納している制御プログラムや定数等を揮発性メモリに読み出して実行することにより、電動モータ7を駆動するための制御処理を行う。具体的には、モータ制御装置10は、外部から運転指令が入力されたことを契機として、ステップS1(図中では「S1」と略記する。以下同様である。)で起動モードを実行し、ステップS2でセンサレスモードを実行する。なお、モータ制御装置10は、電動モータ7を駆動するための制御処理の一部又は全部を、ソフトウェアを介さずにハードウェアで具現化してもよい。
[第1例のモータ制御装置]
 次に、図4~図7を参照して、上記のように構成されたモータ制御装置10の第1例であるモータ制御装置10Aについて説明する。
 図4は、モータ制御装置10Aにおけるセンサレスモード実行時の機能構成例を示す。モータ制御装置10Aは、センサレスモード実行時の機能として、相電流取得部101、印加電圧取得部102、ロータ位置推定部103、回転速度算出部104、3相-2軸変換部105及び目標回転速度保持部106を有している。また、モータ制御装置10Aは、センサレスモード実行時の機能として、電流指令値算出部107、電圧指令値算出部108、2軸-3相変換部109及びゲート信号生成部110を有している。
 相電流取得部101は、入力された電流計測信号Siu,Siv,Siwに基づいて(例えば電流計測信号Siu,Siv,SiwについてA/D変換等を行うことで)、U相電流Iu、V相電流Iv及びW相電流Iwの各値を取得する。
 印加電圧取得部102は、入力された印可電圧信号Svu,Svv,Svwに基づいて(例えば印可電圧信号Svu,Svv,SvwについてA/D変換等を行うことで)、3相印加電圧Vu,Vv,Vwの各値を取得する。
 ロータ位置推定部103は、先ず、ロータ位置θmを推定するための準備として、U相誘起電圧Eu、V相誘起電圧Ev及びW相誘起電圧Ewを算出する。3相誘起電圧Eu,Ev,Ewの各値は、3相電流Iu,Iv,Iwの対応相の値及び3相印可電圧Vu,Vv,Vwの対応相の値を、対応相における誘起電圧と相電流及び印可電圧との関係式に代入することで取得される。そして、ロータ位置推定部103は、3相電流Iu,Iv,Iwと3相誘起電圧Eu,Ev,Ewとに基づいて、電動モータ7のロータ位置θmを推定する。
 具体的には、ロータ位置推定部103は、3相電流Iu,Iv,Iwが互いに120degの位相差で電気角に対して余弦関数状に変化するものとして、取得した3相電流Iu,Iv,Iwの各値に基づいて相電流波形の波高値(相電流波高値)及び電気角(相電流電気角)を算出する。また、ロータ位置推定部103は、3相誘起電圧Eu,Ev,Ewが互いに120degの位相差で電気角に対して余弦関数状に変化するものとして、取得した3相誘起電圧Eu,Ev,Ewの各値に基づいて誘起電圧波形の波高値(誘起電圧波高値)及び電気角(誘起電圧電気角)を算出する。そして、ロータ位置推定部103は、相電流波高値、誘起電圧電気角及び相電流電気角と電流位相との間で予め関連付けがなされた所定のデータテーブルを参照して電流位相を取得し、相電流電気角及び電流位相に基づいてロータ位置θmを算出する。ここで、電流位相は、ロータのdq軸回転座標系において、電動モータ7の入力電流のベクトルに対して、そのd軸成分(d軸電流)及びq軸成分(q軸電流)の位相関係を示すためのパラメータである。なお、本方式によるロータ位置θmの推定(詳細については、例えば特開2011-10438を参照されたい)に代えて、例えば3相誘起電圧Eu,Ev,Ewのゼロクロス検出等、他の方式によりロータ位置θmの推定を行うことも可能である。
 回転速度算出部104は、推定されたロータ位置θmを用いて(例えば連続して取得された2つのロータ位置θmの時間変化率として)ロータの現在の回転速度ω[rad/s]を算出する。
 3相-2軸変換部105は、推定されたロータ位置θmに基づいて、ステータの3相静止座標系における3相電流Iu,Iv,Iwをロータのdq軸回転座標系におけるd軸及びq軸電流Id,Iqに変換する。
 目標回転速度保持部106は、外部からの運転指令に含まれる目標回転速度ωa[rad/s]の値をRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリに一時的に保持する。
 電流指令値算出部107は、目標回転速度ωaとロータの現在の回転速度ωとの偏差に基づいて、PI制御等により回転速度のフィードバック制御を行い、電動モータ7の入力電流の指令値をdq軸回転座標系におけるd軸及びq軸電流指令値Id*,Iq*として算出する。
 電圧指令値算出部108は、d軸電流Idの値とd軸電流指令値Id*との偏差やq軸電流Iqの値とq軸電流指令値Iq*との偏差、及び、ロータの現在の回転速度ωに基づいて、PI制御等により電動モータ7の入力電流のフィードバック制御を行う。これにより、電圧指令値算出部108は、電動モータ7の印加電圧の指令値をdq軸回転座標系におけるd軸及びq軸電圧指令値Vd*,Vq*として算出する。
 2軸-3相変換部109は、推定されたロータ位置θmに基づいて、ロータのdq軸回転座標系におけるd軸及びq軸電圧指令値Vd*,Vq*をステータの3相静止座標系における3相電圧指令値、すなわち、U相、V相及びW相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に変換する。
 ゲート信号生成部110は、3相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に基づいてゲート信号Sgを生成する。例えば、ゲート信号生成部110は、3相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*と三角波等のキャリアとの比較により得られるPWM(Pulse Width Modulation)信号をゲート信号Sgとして生成することができる。
 また、モータ制御装置10Aは、電動モータ7の駆動に直接関係しないが、センサレスモード実行時の機能構成として、慣らし時間算出部111、慣らし完了判定部112及び慣らし完了フラグ記憶部113をさらに有している。
 慣らし時間算出部111は、電動圧縮機8の慣らし運転が未完了であるときのセンサレスモード実行時において電動圧縮機8の初期なじみに有効な電動モータ7の駆動が行われた時間を積算し、その積算値を慣らし時間ΣtBRKとしてフラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリに記憶する。電動圧縮機8の初期なじみに有効な電動モータ7の駆動とは、電動モータ7の発生トルク及び電動モータ7に流れる電流の大きさの少なくとも一方が、発生トルク及び電流の大きさのそれぞれについて規定された閾値以上となる駆動である。例えば、慣らし時間算出部111は、3相電流Iu,Iv,Iwに基づいて、電動圧縮機8の初期なじみに有効な電動モータ7の駆動であるか否かを判断できる。
 ここで、電動圧縮機8の初期なじみとは、電動圧縮機8の機械的摺動部における摩擦面の十分な平滑化をいうものとする。また、電動圧縮機8の慣らし運転とは、初期なじみが完了したと推測されるまでの電動モータ7の駆動をいうものとする。したがって、初期なじみが完了するタイミングと慣らし運転が完了するタイミングとは必ずしも一致しない。
 慣らし完了判定部112は、慣らし時間ΣtBRKに基づいて、電動圧縮機8の初期なじみが完了したとみなすか否かを判定する。そして、慣らし完了判定部112は、初期なじみが完了したとみなす場合には、電動圧縮機8の慣らし運転は完了したと判定し、初期なじみが未完了であるとみなす場合には、電動圧縮機8の慣らし運転は完了していないと判定する。
 慣らし完了フラグ記憶部113は、慣らし完了判定部112の判定結果に基づいて、電動圧縮機8の慣らし運転が完了したか否かを示す慣らし完了フラグFの値を必要に応じて書き替えて、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリに記憶する。例えば、慣らし運転未完了と判定されたときに慣らし完了フラグFの値が0である場合、慣らし運転完了と判定されると、慣らし完了フラグFの値は1に書き替えられる。
 図5は、モータ制御装置10Aにおけるセンサレスモード実行時の制御処理のうち、慣らし時間算出部111、慣らし完了判定部112及び慣らし完了フラグ記憶部113の機能により行われる慣らし完了フラグ設定処理の一例を示す。慣らし完了フラグ設定処理は、センサレスモード実行中に制御周期Δtで繰り返し行われる。
 ステップS11において、モータ制御装置10Aは、慣らし時間算出部111により、慣らし完了フラグ記憶部113が記憶している慣らし完了フラグFの値を参照して、電動圧縮機8の慣らし運転が完了しているか否かを判定する。そして、モータ制御装置10Aは、電動圧縮機8の慣らし運転が完了していると判定した場合には(YES)、慣らし完了フラグ設定処理を一旦終了する一方、電動圧縮機8の慣らし運転が完了していないと判定した場合には(NO)、処理をステップS102へ進める。
 ステップS12において、モータ制御装置10Aは、慣らし時間算出部111により、電動圧縮機8の初期なじみに有効な電動モータ7の駆動が行われているか否かを判定する。例えば、モータ制御装置10Aは、3相電流Iu,Iv,Iwの各値から算出した二乗和平方根の値が閾値以上であるか否かに基づいて、電動圧縮機8の初期なじみに有効な電動モータ7の駆動が行われているか否かを判定できる。あるいは、d軸及びq軸電流Id,Iqの値から算出される電動モータ7の発生トルクと閾値との比較、又は、d軸及びq軸電流Id,Iqの二乗和平方根と閾値との比較に基づいて初期なじみに有効な電動モータ7の駆動有無を判定してもよい。そして、モータ制御装置10Aは、電動圧縮機8の初期なじみに有効な電動モータ7の駆動が行われていると判定した場合には(YES)、処理をステップS13へ進める。一方、モータ制御装置10Aは、電動圧縮機8の初期なじみに有効な電動モータ7の駆動が行われていないと判定した場合には(NO)、慣らし完了フラグ設定処理を一旦終了する。
 ステップS13において、モータ制御装置10Aは、慣らし時間算出部111により、慣らし完了フラグ設定処理における制御周期Δtを現在の慣らし時間ΣtBRKに加算して新たな慣らし時間ΣtBRKを取得する。
 ステップS14において、モータ制御装置10Aは、慣らし完了判定部112により、新たな慣らし時間ΣtBRKが所定値a以上であるか否かを判定する。この所定値aは、電動圧縮機8の初期なじみに必要な時間として、不揮発性メモリに予め格納されている0より大きい値である。そして、モータ制御装置10Aは、新たな慣らし時間ΣtBRKが所定値a以上であると判定した場合には(YES)、電動圧縮機8の慣らし運転が完了したとみなして、処理をステップS15へ進める。一方、モータ制御装置10Aは、新たな慣らし時間ΣtBRKが所定値a未満であると判定した場合には(NO)、電動圧縮機8の慣らし運転が未完了であるとみなして、慣らし完了フラグ設定処理を一旦終了する。
 ステップS15において、モータ制御装置10Aは、慣らし完了フラグ記憶部113により、慣らし完了フラグFの値を慣らし運転未完了を示す値(例えば0)から慣らし運転完了を示す値(例えば1)へ書き替える。そして、モータ制御装置10Aは、ステップS16において慣らし時間ΣtBRKをゼロにリセットして、慣らし完了フラグ設定処理を一旦終了する。
 図6は、モータ制御装置10Aにおける起動モード実行時の機能構成例を示す。なお、センサレスモード実行時と起動モード実行時とで同様の機能については、同一の符号を付して、センサレスモード実行時と異なる内容について説明する。
 起動モードは、モータ制御装置10Aが外部から運転指令を入力したことを契機として実行が開始され、起動モード実行時の機能構成は、起動電流選択、強制転流及び起動判定の3つの機能に大別される。起動電流選択機能には、起動電流選択部114及び慣らし完了フラグ記憶部113が含まれる。強制転流機能には、電流指令値算出部107、電圧指令値算出部108、2軸-3相変換部109、ゲート信号生成部110及び仮想ロータ位置算出部115が含まれる。起動判定機能には、相電流取得部101、印加電圧取得部102、ロータ位置推定部103、仮想ロータ位置算出部115及び起動判定部116が含まれる。なお、目標回転速度保持部106は、前述のように運転指令に含まれる目標回転速度ωaを保持するが、この目標回転速度ωaは第1例の起動モード実行時には用いられない。以下の起動モード実行時において同様である。
 起動電流選択部114は、外部からの運転指令に応じて、不揮発性メモリに記憶された慣らし完了フラグFの値に基づいて、電動圧縮機8の起動性に影響を与えない起動トルクTSTARTを発生する起動電流ISTARTの値を選択する。具体的には、起動電流選択部114は、高電流値I又は低電流値Iのいずれか一方を選択する。高電流値Iは、電動圧縮機8の初期なじみ中の起動性に影響を与えない起動トルクTを発生する電流値である。一方、低電流値Iは、電動圧縮機8の初期なじみが終了した後の起動性に影響を与えない起動トルクTを発生し、高電流値Iよりも顕著に低い電流値である。起動電流選択部114は、慣らし完了フラグFが電動圧縮機8の慣らし運転未完了を示す値(例えば0)である場合には高電流値Iを選択し、慣らし完了フラグFが電動圧縮機8の慣らし運転完了を示す値(例えば1)である場合には低電流値Iを選択する。
 仮想ロータ位置算出部115は、外部からの運転指令に応じて、ロータが所定の回転速度ωv[rad/s]で回転していると仮定したときのロータ位置すなわち仮想ロータ位置θvを所定時間毎(例えば制御周期毎)に算出し、これを揮発性メモリに記憶する。例えば、仮想ロータ位置θvは、予め設定された所定の回転速度ωvに起動モードの実行開始から経過した時間を乗算して算出される。このように、仮想ロータ位置θvは、ロータ位置θmと異なり、ロータの実際の回転角度を示すものではない。
 電流指令値算出部107は、選択された起動電流ISTARTに基づいて、電動モータ7の入力電流の指令値をdq軸回転座標系におけるd軸及びq軸電流指令値Id*,Iq*として算出する。起動モード実行時には、ロータの現在の回転速度ωがフィードバックされず、d軸及びq軸電流指令値Id*,Iq*は固定値となる。例えば、d軸及びq軸電流指令値Id*,Iq*は、以下の2つの関係式に、選択した起動電流ISTART(起動トルクTSTART)の値を用いて算出される。第1の関係式は、電動モータ7の入力電流がd軸電流とq軸電流とで示されるものである。第2の関係式は、電動モータ7の出力トルクがd軸電流及びq軸電流で示されるものである。第1及び第2の関係式に選択した起動電流ISTART(起動トルクTSTART)の値を用いると、d軸及びq軸電流Id,Iq以外は定数である。このため、d軸電流Idとして算出されるd軸電流指令値Id*、及び、q軸電流指令値Iq*として算出されるq軸電流指令値Iq*は固定値となる。
 電圧指令値算出部108は、算出されたd軸及びq軸電流指令値Id*,Iq*に基づいて、電動モータ7の印加電圧の指令値をdq軸回転座標系におけるd軸及びq軸電圧指令値Vd*,Vq*として算出する。起動モード実行時には、d軸及びq軸電流Id,Iq並びにロータの現在の回転速度ωがフィードバックされず、d軸及びq軸電圧指令値Vd*,Vq*は固定値となる。例えば、d軸及びq軸印加電圧Vd*,Vq*はdq軸回転座標系における電動モータ7の電圧方程式を用いて算出される。この電圧方程式において、d軸及びq軸印加電圧Vd,Vqはそれぞれ、d軸及びq軸電流Id,Iqとロータの回転速度ωを変数として示される。しかし、上記の電圧方程式に、d軸及びq軸電流Id,Iqにd軸及びq軸電流指令値Id*,Iq*を用い、ロータの回転速度ωに所定の回転速度ωvを用いると、d軸及びq軸印加電圧Vd,Vq以外は定数である。このため、d軸印加電圧Vdとして算出されるd軸電圧指令値Vd*、及び、q軸印加電圧Vqとして算出されるq軸電圧指令値Vq*は固定値となる。
 2軸-3相変換部109は、算出された仮想ロータ位置θvに基づいて、ロータのdq軸回転座標系におけるd軸及びq軸電圧指令値Vd*,Vq*をステータの3相静止座標系における3相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に変換する。
 起動判定部116は、ロータ位置推定部103で推定されたロータ位置θm及び仮想ロータ位置算出部115で算出された仮想ロータ位置θvに基づいて、電動圧縮機8の起動が成功したか否かを判定する。起動成功であるとの判定結果に応じて、モータ制御装置10Aは起動モードからセンサレスモードへ移行する。起動成功であるとの判定結果が制限時間内になかった場合には、再度、起動モードの実行が試みられる。
 図7は、モータ制御装置10Aにおける起動モード実行時の制御処理の一例を示す。
 ステップS101において、モータ制御装置10Aは、起動電流選択部114により、慣らし完了フラグ記憶部113が記憶している慣らし完了フラグFの値を参照して、電動圧縮機8の慣らし運転が完了しているか否かを判定する。そして、モータ制御装置10Aは、電動圧縮機8の慣らし運転が完了している(例えばF=1)と判定した場合には(YES)、処理をステップS102へ進めて、起動電流ISTARTとして低電流値Iを選択する。一方、モータ制御装置10Aは、電動圧縮機8の慣らし運転が未完了である(例えばF=0)と判定した場合には(NO)、処理をステップS103に進めて、起動電流ISTARTとして高電流値Iを選択する。
 ステップS104では、モータ制御装置10Aは、ステップS102又はステップS103で設定された起動電流ISTARTの値に基づいて強制転流制御を行う。なお、強制転流制御の内容については、第1例の起動モード実行時の機能である、電流指令値算出部107、電圧指令値算出部108、2軸-3相変換部109、ゲート信号生成部110及び仮想ロータ位置算出部115に関する説明をもって省略する。
 ステップS105では、モータ制御装置10Aは、相電流取得部101、印加電圧取得部102、ロータ位置推定部103、仮想ロータ位置算出部115及び起動判定部116により、仮想ロータ位置θv及びロータ位置θmに基づいて、電動圧縮機8の起動が成功したか否かを判定する。例えば、モータ制御装置10Aは、ステップS104の強制転流制御中に揮発性メモリに記憶された、仮想ロータ位置θvとロータ位置θmとのずれ量Δθが継続的にゼロ又は僅少となったときに、電動圧縮機8の起動が成功したと判定する。一方、モータ制御装置10Aは、起動モードを開始してから制限時間内にずれ量Δθが継続的にゼロ又は僅少とならなかった場合には、電動圧縮機8の起動が失敗したと判定する。そして、モータ制御装置10Aは、電動圧縮機8の起動が成功したと判定した場合には(YES)、起動モード実行時の制御処理を終了して、センサレスモードへ移行する。一方、モータ制御装置10Aは、電動圧縮機8の起動が失敗したと判定した場合には(NO)、起動モードを最初から実行するために現在の仮想ロータ位置θvの値をゼロにリセットして、処理をステップS101へ戻す。
 上記のように構成されるモータ制御装置10Aでは、センサレスモード実行時に積算される慣らし時間ΣtBRKに基づいて電動圧縮機8の慣らし運転が完了したと判定したときに、慣らし完了フラグFの値を書き替えている。そして、モータ制御装置10Aは、次に電動圧縮機8を起動する際の起動モード実行時の起動電流ISTARTを、慣らし完了フラグFの値に基づいて、慣らし運転が完了していないときの高電流値Iから慣らし運転が完了したときの低電流値Iに切り替えている。このため、電動圧縮機8の起動毎に高電流値Iの起動電流ISTARTで起動モードを実行する場合と比較すると、モータ駆動回路9のスイッチング素子91~96や電動圧縮機8の機械的摺動部の劣化を低減することが可能となる。これにより、電動圧縮機8の初期なじみ中の起動性を考慮しつつ製品寿命の低下や故障を抑制することができる。
[第2例のモータ制御装置]
 次に、図8及び図9を参照して、上記のように構成されたモータ制御装置10の第2例であるモータ制御装置10Bについて説明する。モータ制御装置10Bの起動モード実行時の機能構成には、モータ制御装置10Aと比較して、起動時間計測部117及び慣らし不要判定部118が追加されている。これにより、モータ制御装置10Bは、慣らし時間ΣtBRKが所定値a以上となるまでに電動圧縮機8の初期なじみが完了した場合に、起動電流ISTARTを低電流値Iへ切り替えできるようにしている。なお、モータ制御装置10Bについては、センサレスモード実行時の機能構成に関する説明を省略するとともに、起動モード実行時の機能構成で同様の機能については同じ符号を付して、その説明を省略ないし簡略化する。以下において同様である。
 図8は、モータ制御装置10Bにおける起動モード実行時の機能構成例を示す。起動時間計測部117は、電動圧縮機8の慣らし運転が完了していない場合に、起動モードの実行を開始してから起動成功と判定されるまでの時間すなわち起動時間tSTARTを計測する。慣らし不要判定部118は、起動時間tSTARTに基づいて、電動圧縮機8の慣らし運転が不要であるか否かを判定する。また、慣らし完了フラグ記憶部113は、前述の慣らし完了判定部112の判定結果に加え、慣らし不要判定部118の判定結果に基づいて、慣らし完了フラグFの値を必要に応じて書き替え、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリに記憶する。
 図9は、モータ制御装置10Bにおける起動モード実行時の制御処理の一例を示す。なお、図9のステップS201~ステップS205は、図7のステップS101~ステップS105と同様の処理を行うものであるので、その説明を省略する。
 モータ制御装置10Bは、ステップS205において電動圧縮機8の起動が成功したと判定すると、処理をステップS206へ進める。ステップS206において、モータ制御装置10Bは、起動時間計測部117により、慣らし完了フラグ記憶部113が記憶している慣らし完了フラグFの値を参照して、電動圧縮機8の慣らし運転が完了しているか否かを判定する。そして、モータ制御装置10Bは、電動圧縮機8の慣らし運転が完了している(例えばF=1)と判定した場合には(YES)、起動モード実行時の制御処理を終了する。一方、モータ制御装置10Bは、電動圧縮機8の慣らし運転が未完了である(例えばF=0)と判定した場合には(NO)、処理をステップS207へ進める。
 ステップS207において、モータ制御装置10Bは、起動時間計測部117により、起動時間tSTARTを計測して、この起動時間tSTARTが所定値b未満であるか否かを判定する。所定値bは、電動圧縮機8の初期なじみの進行につれて起動時間tSTARTが短縮されることを考慮して、電動圧縮機8の初期なじみが実際に完了しているときの起動時間tSTARTに基づいて予め規定されて不揮発性メモリに記憶された0より大きい値である。そして、モータ制御装置10Bは、起動時間tSTARTが所定値b未満であると判定した場合には(YES)、処理をステップS208へ進めて、電動圧縮機8の慣らし運転の不要度合いを示す慣らし不要変数N(:正の整数)の値を1つ増加させる。一方、モータ制御装置10Bは、起動時間tSTARTが所定値b以上であると判定した場合には(NO)、起動モード実行時の制御処理を終了する。
 ステップS209において、モータ制御装置10Bは、慣らし不要判定部118により、慣らし不要変数Nの値が所定値c以上であるか否かを判定する。そして、モータ制御装置10Bは、慣らし不要変数Nの値が所定値c(≧1)以上であると判定した場合には(YES)、電動圧縮機8の慣らし運転は不要であるとみなして、処理をステップS210へ進める。一方、モータ制御装置10Bは、慣らし不要変数Nの値が所定値c未満であると判定した場合には(NO)、電動圧縮機8の慣らし運転は必要とみなして、起動モード実行時の制御処理を終了する。
 ステップS210において、モータ制御装置10Bは、慣らし完了フラグ記憶部113により、慣らし完了フラグFの値を慣らし運転未完了を示す値(例えば0)から慣らし運転完了を示す値(例えば1)へ書き替える。そして、モータ制御装置10Bは、ステップS211において慣らし不要変数Nの値をゼロにリセットして、起動モード実行時の制御処理を終了する。
 なお、慣らし不要変数Nの値は、リセットされた値であるか否かにかかわらず、次に起動モードが実行されるまでに、書き込み可能な不揮発性メモリに保持される。
 上記のように構成されるモータ制御装置10Bでは、起動時間tSTARTに基づいて電動圧縮機8の初期なじみが実際に完了しているか否かを監視している。そして、モータ制御装置10Bは、電動圧縮機8の初期なじみが完了していると判断したときには、慣らし時間ΣtBRKの値にかかわらず、慣らし完了フラグFの値を慣らし運転完了を示す値(例えば1)に書き替えている。このため、起動電流ISTARTが高電流値Iとなる時間は、電動圧縮機8の初期なじみに必要な最低限の時間となる。したがって、モータ制御装置10Bは、モータ制御装置10Aと比較すると、電動圧縮機8の初期なじみ中の起動性と製品寿命の低下や故障の抑制との両立という観点でより有利となる。
[第3例のモータ制御装置]
 次に、図10及び図11を参照して、上記のように構成されたモータ制御装置10の第3例であるモータ制御装置10Cについて説明する。モータ制御装置10Cの起動モード実行時の機能構成には、モータ制御装置10Aと比較して、起動失敗カウント部119及び初期なじみ判定部120が追加されている。これにより、モータ制御装置10Cは、電動圧縮機8の慣らし運転が完了した後でも、電動圧縮機8の初期なじみが不足している場合には、起動電流ISTARTを高電流値Iへ再設定して電動圧縮機8の起動性を確保できるようにしている。
 図10は、モータ制御装置10Cにおける起動モード実行時の機能構成例を示す。起動失敗カウント部119は、起動判定部116で起動失敗と判定されるたびにカウント値を増加させて、これを起動失敗回数M(:正の整数)として記憶する。初期なじみ判定部120は、起動失敗回数Mに基づいて、電動圧縮機8の初期なじみが不足しているか否かを判定する。また、慣らし完了フラグ記憶部113は、前述の慣らし完了判定部112の判定結果に加え、初期なじみ判定部120の判定結果に基づいて、慣らし完了フラグFの値を必要に応じて書き替え、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリに記憶する。
 図11は、モータ制御装置10Cにおける起動モード実行時の制御処理の一例を示す。なお、図11のステップS301~ステップS305は、図7のステップS101~ステップS105と同様の処理を行うものであるので、その説明を省略する。
 モータ制御装置10Cは、ステップS305において電動圧縮機8の起動が失敗したと判定すると、処理をステップS306へ進める。ステップS306において、モータ制御装置10Cは、起動失敗カウント部119により、慣らし完了フラグ記憶部113が記憶している慣らし完了フラグFの値を参照して、電動圧縮機8の慣らし運転が完了しているか否かを判定する。そして、モータ制御装置10Cは、電動圧縮機8の慣らし運転が完了している(例えばF=1)と判定した場合には(YES)、処理をステップS307へ進めて、起動失敗回数Mの値を1つ増加させる。一方、モータ制御装置10Cは、電動圧縮機8の慣らし運転が未完了である(例えばF=0)と判定した場合には(NO)、起動モードを再度実行すべく処理をステップS301へ戻す。
 ステップS308において、モータ制御装置10Cは、初期なじみ判定部120により、起動失敗回数Mが所定値d以上であるか否かに基づいて、電動圧縮機8の初期なじみが不足しているか否かを判定する。そして、モータ制御装置10Cは、起動失敗回数Mが所定値d以上である場合には(YES)、電動圧縮機8の初期なじみが不足していると判定して、処理をステップS309へ進める。一方、モータ制御装置10Cは、起動失敗回数Mが所定値d未満である場合には(NO)、電動圧縮機8の初期なじみは不足していないと判定して、起動モードを再度実行すべく処理をステップS301へ戻す。
 ステップS309において、モータ制御装置10Cは、慣らし完了フラグ記憶部113により、慣らし完了フラグFの値を慣らし運転未完了を示す値(例えば0)にリセットする。そして、モータ制御装置10Cは、ステップS310において起動失敗回数Mの値をゼロにリセットし、起動モードを再度実行すべく処理をステップS301へ戻す。
 なお、起動失敗回数Mの値は、書き込み可能な不揮発性メモリに記憶されるか、あるいは、1回の起動モード実行により慣らし運転完了フラグFがリセットされない場合には起動モード終了時にリセットされてもよい。
 上記のように構成されるモータ制御装置10Cでは、電動圧縮機8の慣らし運転が完了した後、起動失敗回数Mに基づいて電動圧縮機8の初期なじみが不足しているか否かを監視している。そして、モータ制御装置10Cは、電動圧縮機8の初期なじみ不足と判断したときには、慣らし完了フラグFの値を慣らし運転未完了を示す値(例えば0)にリセットして、起動電流ISTARTを高電流値Iへ再設定し、電動圧縮機8の起動性を確保している。したがって、モータ制御装置10Cは、モータ制御装置10Aと同様に製品寿命の低下や故障の抑制できるという効果を奏するだけでなく、モータ制御装置10Aと比較して、特に電動圧縮機8の起動性という点で有利となる。
 以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、以下のように種々の変形態様が考えられる。
 上記の実施形態において、起動電流ISTARTは高電流値I及び低電流値Iの2つから選択されていたが、これに代えて、3つ以上の相異なる電流値から選択可能である。この場合、慣らし時間ΣtBRKがゼロから所定値aまでの間で増加するに従って、慣らし完了フラグFの値は2回以上書き替えられ、慣らし完了フラグFの各値は互いに異なる値となる。起動電流ISTARTとして選択される電流値は、慣らし完了フラグFの各値について相異なる値に設定され、慣らし時間ΣtBRKの増加とともに慣らし完了フラグFの値が変化していくに従って、高電流値Iから低電流値Iへ多段階的に減少する。
 上記の実施形態において、起動電流ISTARTは慣らし完了フラグFの値に基づいて選択されていたが、これに代えて、起動電流ISTARTは慣らし完了フラグFを用いずに決定されてもよい。例えば、慣らし時間ΣtBRKに対して起動電流ISTARTの電流値が連続的に変化する関数を用いることで、慣らし時間ΣtBRKと一対一で対応する電流値を算出することができる。上記の関数としては、低電流値Iと高電流値Iとの差分を所定値aで除算した値を傾きとし高電流値Iを切片とする一次の減少関数を用いることができる。これにより、起動電流ISTARTとして選択される電流値は、慣らし時間ΣtBRKが増加するに従って、高電流値Iから低電流値Iへ連続的に減少する。
 モータ制御装置10Bでは、慣らし不要変数Nの値が所定値c以上であると慣らし運転完了フラグFを慣らし運転未完了を示す値(例えば0)から慣らし運転完了を示す値(例えば1)へ書き替えていた。これに代えて、所定値cの値が3以上の整数に設定されていれば、慣らし不要変数Nの値がゼロから所定値cまで増加するに従って、慣らし完了フラグFの値が2回以上相異なる値に書き替えられてもよい。起動電流ISTARTとして選択される電流値は、慣らし完了フラグFの各値について相異なる値に設定され、慣らし不要変数Nの増加とともに慣らし完了フラグFの値が変化していくに従って、高電流値Iから低電流値Iへ多段階的に減少する。
 また、モータ制御装置10Bにおいて、起動電流ISTARTは、慣らし完了フラグFを用いずに、起動時間tSTARTが所定値bから減少していくに従って、起動電流ISTARTを高電流値Iから低電流値Iへ向けて連続的に減少して設定されてもよい。例えば、起動時間tSTARTに対して起動電流ISTARTの電流値が連続的に変化する関数を用いることで、起動時間tSTARTと一対一で対応する電流値を算出することができる。
 モータ制御装置10Cにおいて、起動失敗回数Mの値が所定値d以上であるときに慣らし完了フラグFをゼロにリセットしていた。これに代えて、所定値dの値が3以上の整数に設定されていれば、起動失敗回数Mの値がゼロから所定値dまで増加するに従って、慣らし完了フラグFの値が2回以上相異なる値に書き替えられてもよい。起動電流ISTARTとして選択される電流値は、慣らし完了フラグFの各値について相異なる値に設定され、起動失敗回数Mの増加とともに慣らし完了フラグFの値が変化していくに従って、低電流値Iから高電流値Iへ多段階的に増大する。
 上記の実施形態では、電動圧縮機8の初期なじみに有効な電動モータ7の駆動が行われているか否かを判定するために、電動モータ7の発生トルク、及び、電動モータ7に流れる電流の少なくとも一方がそれぞれの閾値以上になることを基準としていた。これに代えて又は加えて、ロータの回転速度ωを用いてもよい。例えば、慣らし時間ΣtBRKの算出において制御周期Δtを加算するためには、ロータの回転速度ωが所定速度以上となっていることを基準としてもよい。要するに、電動モータ7の発生トルク、電動モータ7に流れる電流の大きさ及び電動モータ7の回転速度ωの少なくとも一つが、発生トルク、電流の大きさ及び回転速度ωのそれぞれについて規定された閾値以上であるか否かに基づいて、電動圧縮機8の初期なじみに有効な電動モータ7の駆動が行われているか否かを判定できる。
 前述のように、冷凍サイクル1は車両用エアコンディショナーに適用されてもよく、この場合、モータ制御装置10は、冷凍サイクル1に組み込まれた電動圧縮機8と共にエンジンルームに格納されてもよい。このようなモータ制御装置10は、車室内でHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニットの制御を行うHVACコントローラから運転指令を入力して電動モータ7の駆動を制御することができる。モータ制御装置10とHVACコントローラとの間では、CAN(Controllable Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークを介して通信が行われる。慣らし完了フラグF、慣らし不要変数N、起動失敗回数Mの各値は、HVACコントローラの書き込み可能な不揮発性メモリに保持されて、必要に応じて、モータ制御装置10A~10Cに送信されてもよい。
 モータ制御装置10A~10Cのセンサレスモードでは、慣らし時間算出部111、慣らし完了判定部112及び慣らし完了フラグ記憶部113を除き、共通する機能を有している。これらの共通する機能は、ステータコイルに発生する誘起電圧によりロータ位置をセンサレスで検出することでステータコイルへの通電を制御する駆動態様を実現するために例示したものであり、このような駆動態様は他の方法で実現されてもよい。例えば、電流指令値算出部107において、電動モータ7の入力電流の指令値を電流波高指令値及び電流位相指令値として算出することができる。この場合、電圧指令値算出部108では、ロータ位置推定部103で算出した電流波高値と電流波高指令値との偏差、及び、ロータ位置推定部103で算出した電流位相と電流位相指令値との偏差に基づいて、電動モータ7の印加電圧の指令値を算出することができる。
 また、モータ制御装置10A~10Cの起動モードでは、慣らし完了フラグ記憶部113、起動電流選択部114、起動時間計測部117、慣らし不要判定部118、起動失敗カウント部119及び初期なじみ判定部120を除き、共通する機能を有している。これらの共通する機能は、電動モータ7を強制転流で駆動して電動圧縮機8の起動成否を判断する起動態様を実現するために例示したものであり、このような起動態様は他の方法で実現されてもよい。例えば、電流指令値算出部107において、電流波高値と電動モータ7の入力電流とを関連付けた所定のテーブルを参照して、運転指令に含まれた、あるいは、モータ制御装置10A~10Cに予め格納された設定電流波高値に対応する電動モータ7の入力電流の指令値を一意に算出することができる。
 なお、上記の実施形態で説明した各技術的思想及びこれに基づく変形態様は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合せて使用することができる。例えば、モータ制御装置10Bの起動モード実行時の機能構成にモータ制御装置10Cの起動失敗カウント部119及び初期なじみ判定部120を追加してもよい。電動圧縮機8は、製造上の許容誤差等に起因して、初期なじみ完了までの時間に個体差を有する。しかし、上記のようにモータ制御装置10Bにモータ制御装置10Cの一部を組み合わせることで、慣らし時間ΣtBRKに基づいて慣らし運転の完了時期を判断することで生じる初期なじみの過不足にも対応することができる。すなわち、慣らし時間ΣtBRKが所定値a未満であっても初期なじみが十分であれば、早期に起動電流ISTARTを低電流値Iにして製品寿命の低下や故障を抑制できる。一方、慣らし時間ΣtBRKが所定値a以上であっても初期なじみが不足していれば起動電流ISTARTを再び高電流値Iにして電動圧縮機8の起動性を向上できる。
 3…圧縮機、7…電動モータ、8…電動圧縮機、10,10A,10B,10C…モータ制御装置、71…U相コイル(ステータコイル)、72…V相コイル(ステータコイル)、73…W相コイル(ステータコイル)、ISTART…起動電流、I…高電流値(第1電流値)、I…低電流値(第2電流値)、Iu…U相電流、Iv…V相電流、Iw…W相電流、M…起動失敗回数、tSTART…起動時間、θm…ロータ位置、ΣtBRK…慣らし時間、ω…回転速度

Claims (5)

  1.  電動圧縮機に動力源として備えられた電動モータのロータ位置をセンサレスで検出してステータコイルへの通電を制御するセンサレスモードを実行する、電動圧縮機の制御装置であって、
     前記センサレスモードの実行時に、前記電動モータの駆動が前記電動圧縮機の初期なじみに有効となる時間に基づいて前記電動圧縮機の慣らし運転が完了したか否かを監視し、
     前記センサレスモードの前段階として起動モードを実行するときに、起動電流を、前記慣らし運転が完了したと判定する前では第1電流値に設定し、前記慣らし運転が完了したと判定した以降では前記第1電流値よりも低い第2電流値に設定する、電動圧縮機の制御装置。
  2.  前記電動モータの駆動が前記電動圧縮機の初期なじみに有効となる時間は、前記電動モータの発生トルク、前記電動モータに流れる電流の大きさ及び前記電動モータの回転速度の少なくとも一つが、前記発生トルク、前記電流の大きさ及び前記回転速度のそれぞれについて規定された閾値以上となる時間の積算値である、請求項1に記載の電動圧縮機の制御装置。
  3.  前記第1電流値は、前記慣らし運転が完了したと判定される前において、前記起動モードを開始してから前記電動圧縮機の起動が成功するまでの起動時間に基づいて、前記第2電流値を下限値として減少させられる、請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機の制御装置。
  4.  前記第2電流値は、前記慣らし運転が完了したと判定された以降において、前記起動モードの実行時に前記電動圧縮機の起動が失敗した回数に基づいて、前記第1電流値を上限値として増大させられる、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の電動圧縮機の制御装置。
  5.  前記第1電流値は、前記電動モータの駆動が前記電動圧縮機の初期なじみに有効となる時間が増加するに従って段階的又は連続的に減少する複数の値で構成される、請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機の制御装置。
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