WO2023058525A1 - 発泡成形用樹脂及びその製造方法、発泡成形体の製造方法、構造体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
連続押出による発泡成形での発泡成形性を向上させることができる、発泡成形体の製造方法を提供する。 本発明によれば、押出工程と成形工程とを備える発泡成形体の製造方法であって、前記押出工程では、物理発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂を押出ヘッドのスリットから連続的に押し出すことによって発泡パリソンを形成し、前記成形工程では、前記発泡パリソンを金型で成形し、前記スリットの幅が、0.68~3.50mmであり、前記押出工程における前記発泡剤含有樹脂中の前記物理発泡剤のモル濃度が5~55mmol/kgである、方法が提供される。
Description
本発明は、発泡成形用樹脂及びその製造方法、発泡成形体の製造方法、構造体の製造方法に関する。
(第1観点)
特許文献1には発泡成形体の製造方法が開示されている。この方法では、アキュームレータに樹脂が一旦貯留された後、樹脂が押出ヘッドから押し出される。このため、樹脂の押出しが、断続的に行われる。
特許文献1には発泡成形体の製造方法が開示されている。この方法では、アキュームレータに樹脂が一旦貯留された後、樹脂が押出ヘッドから押し出される。このため、樹脂の押出しが、断続的に行われる。
(第2観点)
発泡成形体として、例えば自動車のインストルメントパネル内に取り付けられる各種空調ダクトが知られている。これら空調ダクトには、発泡した樹脂材料を成形した発泡ダクトが広く用いられている。発泡ダクトは、軽量であり、例えばポリオレフィン系樹脂などの樹脂材料に発泡剤を加えて溶融混練し、押出機のダイから押出される発泡パリソンをブロー成形することにより容易に製造することが出来る。
発泡成形体として、例えば自動車のインストルメントパネル内に取り付けられる各種空調ダクトが知られている。これら空調ダクトには、発泡した樹脂材料を成形した発泡ダクトが広く用いられている。発泡ダクトは、軽量であり、例えばポリオレフィン系樹脂などの樹脂材料に発泡剤を加えて溶融混練し、押出機のダイから押出される発泡パリソンをブロー成形することにより容易に製造することが出来る。
発泡成形体に用いられる樹脂材料としては、ポリオレフィン系樹脂が広く用いられており、中でもポリプロピレン系樹脂が一般的である(特許文献2)。
特許文献2には、長鎖分岐ホモポリプロピレンと、長鎖分岐ブロックポリプロピレンと、ポリエチレン系エラストマーを混合したに発泡剤を添加し、ブロー成形した発泡成形体が開示されている。
(第3観点)
特許文献3には、金属製部材を拡径するように変形させることで金属製部材同士を連結する方法が開示されている。
特許文献3には、金属製部材を拡径するように変形させることで金属製部材同士を連結する方法が開示されている。
(第1観点)
本願発明者は、アキュームレータを使用しない連続押出による発泡成形体の製造方法を鋭意研究している。実際に連続押出の発泡成形工程を研究する過程で、予期しない成形不良が発生した。
本願発明者は、アキュームレータを使用しない連続押出による発泡成形体の製造方法を鋭意研究している。実際に連続押出の発泡成形工程を研究する過程で、予期しない成形不良が発生した。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、連続押出による発泡成形での発泡成形性を向上させることができる、発泡成形体の製造方法を提供するものである。
(第2観点)
ところで、市販されているポリプロピレンやブロックポリプロピレンの大部分は、長鎖分岐構造を有しておらず、長鎖分岐ホモポリプロピレンや長鎖分岐ブロックポリプロピレンは、高価であったり、入手が容易でなかったりする場合があるので、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンを用いて発泡成形体を製造することが望まれている。
ところで、市販されているポリプロピレンやブロックポリプロピレンの大部分は、長鎖分岐構造を有しておらず、長鎖分岐ホモポリプロピレンや長鎖分岐ブロックポリプロピレンは、高価であったり、入手が容易でなかったりする場合があるので、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンを用いて発泡成形体を製造することが望まれている。
一方、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂は、三次元網目構造を有していないので、このようなポリプロピレン系樹脂を用いて発泡成形体を製造すると表面での破泡や気泡同士の合一が生じやすいという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、長鎖分岐構造を有さないポリプロピレン系樹脂が利用可能でありかつ優れた発泡成形性を有する発泡成形用樹脂の製造方法を提供するものである。
(第3観点)
樹脂製部材を特許文献3のように形状変形させると破損してしまうため、樹脂製部材同士を連結する場合には、例えば、ホットメルト接着剤を用いる方法が考えられる。しかし、ホットメルト接着剤を用いる方法では、流動性を有する接着剤を適切に扱う必要がある。すなわち、当該方法では、非連結箇所にはみ出さないように樹脂製部材の所望の位置に接着剤を塗布する必要があり、樹脂製部材同士を連結する工程の負担が増加する、という課題がある。
樹脂製部材を特許文献3のように形状変形させると破損してしまうため、樹脂製部材同士を連結する場合には、例えば、ホットメルト接着剤を用いる方法が考えられる。しかし、ホットメルト接着剤を用いる方法では、流動性を有する接着剤を適切に扱う必要がある。すなわち、当該方法では、非連結箇所にはみ出さないように樹脂製部材の所望の位置に接着剤を塗布する必要があり、樹脂製部材同士を連結する工程の負担が増加する、という課題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、樹脂で構成された部材同士を連結する作業負担を抑制することを目的としている。
(第1観点)
本発明の第1観点によれば、以下の発明が提供される。
[1]押出工程と成形工程とを備える発泡成形体の製造方法であって、前記押出工程では、物理発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂を押出ヘッドのスリットから連続的に押し出すことによって発泡パリソンを形成し、前記成形工程では、前記発泡パリソンを金型で成形し、前記スリットの幅が、0.68~3.50mmであり、前記押出工程における前記発泡剤含有樹脂中の前記物理発泡剤のモル濃度が5~55mmol/kgである、方法。
[2][1]に記載の方法であって、前記スリットの幅が2.85mm以下である、方法。
[3][1]又は[2]に記載の方法であって、前記物理発泡剤のモル流量が1.00~2.80mol/hである、方法。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の方法であって、前記物理発泡剤のモル流量が1.00~2.35mol/hである、方法。
[5][1]~[4]の何れか1つに記載の方法であって、前記成形は、ブロー成形、真空成形又はこれらの組み合わせである、方法。
本発明の第1観点によれば、以下の発明が提供される。
[1]押出工程と成形工程とを備える発泡成形体の製造方法であって、前記押出工程では、物理発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂を押出ヘッドのスリットから連続的に押し出すことによって発泡パリソンを形成し、前記成形工程では、前記発泡パリソンを金型で成形し、前記スリットの幅が、0.68~3.50mmであり、前記押出工程における前記発泡剤含有樹脂中の前記物理発泡剤のモル濃度が5~55mmol/kgである、方法。
[2][1]に記載の方法であって、前記スリットの幅が2.85mm以下である、方法。
[3][1]又は[2]に記載の方法であって、前記物理発泡剤のモル流量が1.00~2.80mol/hである、方法。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の方法であって、前記物理発泡剤のモル流量が1.00~2.35mol/hである、方法。
[5][1]~[4]の何れか1つに記載の方法であって、前記成形は、ブロー成形、真空成形又はこれらの組み合わせである、方法。
本願発明者は、鋭意検討を行ったところ、発泡剤含有樹脂中の物理発泡剤のモル濃度と、押出ヘッドのスリットの幅を特定の数値範囲内にした場合には、連続押出による発泡成形での発泡成形性を向上させることができるという新たな知見を得て、本願発明の完成に至った。
本発明の第2観点によれば、以下の発明が提供される。
[1]押出機を用いて、ポリプロピレン系樹脂と低密度ポリエチレンを含む原料樹脂を溶融混練する工程を備える発泡成形用樹脂の製造方法であって、前記ポリプロピレン系樹脂と前記低密度ポリエチレンの合計に対する前記低密度ポリエチレンの含有量が20~50質量%であり、前記押出機は、前記原料樹脂が投入されるシリンダと、前記シリンダ内に回転可能に配置されたスクリューを備え、前記スクリューは、中央部と、フライト部を備え、前記中央部は、前記スクリューの回転軸に沿って延び、前記フライト部は、前記中央部から径方向外側に突出するように設けられ、前記フライト部は、前記スクリューの回転に伴って前記原料樹脂を前記スクリューの先端に向けて搬送可能な形状であり、前記スクリューの、前記フライト部での直径をDとし、前記フライト部の、前記シリンダの内面に対向するフライト表面の面積をSとすると、S/Dは、800~1500である、方法。
[2]ポリプロピレン系樹脂と低密度ポリエチレンを含む原料樹脂が溶融混練されて構成される発泡成形用樹脂であって、前記ポリプロピレン系樹脂と前記低密度ポリエチレンの合計に対する前記低密度ポリエチレンの含有量が20~50質量%であり、前記発泡成形用樹脂は、メルトフローレイトが3.20~3.80g/10分であり、メルトテンションが35~90mNである、発泡成形用樹脂。
[3][1]に記載の方法で製造した発泡成形用樹脂又は[2]に記載の発泡成形用樹脂を用いて発泡パリソンを形成し、前記発泡パリソンを成形して発泡成形体を得る工程を備える、発泡成形体の製造方法。
[4][3]に記載の方法であって、前記成形は、ブロー成形又は真空成形である、方法。
[1]押出機を用いて、ポリプロピレン系樹脂と低密度ポリエチレンを含む原料樹脂を溶融混練する工程を備える発泡成形用樹脂の製造方法であって、前記ポリプロピレン系樹脂と前記低密度ポリエチレンの合計に対する前記低密度ポリエチレンの含有量が20~50質量%であり、前記押出機は、前記原料樹脂が投入されるシリンダと、前記シリンダ内に回転可能に配置されたスクリューを備え、前記スクリューは、中央部と、フライト部を備え、前記中央部は、前記スクリューの回転軸に沿って延び、前記フライト部は、前記中央部から径方向外側に突出するように設けられ、前記フライト部は、前記スクリューの回転に伴って前記原料樹脂を前記スクリューの先端に向けて搬送可能な形状であり、前記スクリューの、前記フライト部での直径をDとし、前記フライト部の、前記シリンダの内面に対向するフライト表面の面積をSとすると、S/Dは、800~1500である、方法。
[2]ポリプロピレン系樹脂と低密度ポリエチレンを含む原料樹脂が溶融混練されて構成される発泡成形用樹脂であって、前記ポリプロピレン系樹脂と前記低密度ポリエチレンの合計に対する前記低密度ポリエチレンの含有量が20~50質量%であり、前記発泡成形用樹脂は、メルトフローレイトが3.20~3.80g/10分であり、メルトテンションが35~90mNである、発泡成形用樹脂。
[3][1]に記載の方法で製造した発泡成形用樹脂又は[2]に記載の発泡成形用樹脂を用いて発泡パリソンを形成し、前記発泡パリソンを成形して発泡成形体を得る工程を備える、発泡成形体の製造方法。
[4][3]に記載の方法であって、前記成形は、ブロー成形又は真空成形である、方法。
本発明者は、まず、低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」)が長鎖分岐構造を有することに着目して、ポリプロピレン(以下、「PP」)系樹脂とLDPEを混合することを考え、実際に、押出機を用いて、PP系樹脂とLDPEを含む原料樹脂を溶融混練して発泡成形用樹脂を製造し、得られた発泡成形用樹脂を用いて発泡成形体を製造した。しかし、得られた発泡成形体は、表面に破泡が多く、この方法で得られた発泡成形用樹脂の発泡成形性は、良好でなかった。
発泡成形性が良好にならない原因について調査をしたところ、PP系樹脂とLDPEは相溶性が低いために、一般に用いられている押出機では、両者が十分に混練されず、そのために、LDPEを添加したことによる発泡成形性の向上効果が限定的であったことが分かった。
そして、この知見に基づき、S/Dが800~1500となるスクリューを有する押出機を用いて、PP系樹脂とLDPEを含む原料樹脂を溶融混練して発泡成形用樹脂を製造し、得られた発泡成形用樹脂を用いて発泡成形体を製造した。得られた発泡成形体は、表面の破泡が少なく、この方法で得られた発泡成形用樹脂の発泡成形性が優れていることが分かり、本発明の完成に到った。
本発明の第3観点によれば、以下の発明が提供される。
[1]超音波溶着工程を備える、構造体の製造方法であって、前記構造体は、第1及び第2部材を備え、第1部材は、中実の樹脂で構成された部材であり、第2部材は、発泡樹脂で構成された部材であり、前記超音波溶着工程では、ホーンを、第2部材に接触するように配置された第1部材に押し付けて、第1及び第2部材を超音波溶着し、前記ホーンは、スパイク部と、基部とを有し、前記スパイク部は、前記ホーンを第1部材に押し付ける方向において、先細るように形成され、且つ、前記基部の先端側に設けられている、方法。
[2][1]に記載の方法であって、第1部材は、薄肉部と肉厚部とを有し、前記薄肉部は、前記肉厚部に接続され、且つ、前記肉厚部よりも厚みが薄く、前記超音波溶着工程では、前記ホーンが前記薄肉部に押し付けられる、方法。
[3][2]に記載の方法であって、第1部材は、凹部を有し、前記凹部は、底面と、内面とを有し、前記底面は、前記薄肉部に形成され、前記内面は、前記底面に立設するように形成され、且つ、前記内面には、傾斜面が形成され、前記傾斜面は、前記肉厚部側から前記底面側にかけて傾斜している、方法。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の方法であって、前記ホーンは、少なくとも3つ以上の前記スパイク部を有し、前記スパイク部は、同心円上に位置するように配置されている、方法。
[1]超音波溶着工程を備える、構造体の製造方法であって、前記構造体は、第1及び第2部材を備え、第1部材は、中実の樹脂で構成された部材であり、第2部材は、発泡樹脂で構成された部材であり、前記超音波溶着工程では、ホーンを、第2部材に接触するように配置された第1部材に押し付けて、第1及び第2部材を超音波溶着し、前記ホーンは、スパイク部と、基部とを有し、前記スパイク部は、前記ホーンを第1部材に押し付ける方向において、先細るように形成され、且つ、前記基部の先端側に設けられている、方法。
[2][1]に記載の方法であって、第1部材は、薄肉部と肉厚部とを有し、前記薄肉部は、前記肉厚部に接続され、且つ、前記肉厚部よりも厚みが薄く、前記超音波溶着工程では、前記ホーンが前記薄肉部に押し付けられる、方法。
[3][2]に記載の方法であって、第1部材は、凹部を有し、前記凹部は、底面と、内面とを有し、前記底面は、前記薄肉部に形成され、前記内面は、前記底面に立設するように形成され、且つ、前記内面には、傾斜面が形成され、前記傾斜面は、前記肉厚部側から前記底面側にかけて傾斜している、方法。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の方法であって、前記ホーンは、少なくとも3つ以上の前記スパイク部を有し、前記スパイク部は、同心円上に位置するように配置されている、方法。
本発明では、ホーンを第2部材に接触するように配置された第1部材に押し付けることで第1及び第2部材を超音波溶着して第1及び第2部材を連結することができ、第1及び第2部材を連結する作業負担を抑制することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
(第1観点)
1.発泡成形装置
本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法は、一例では、図1に示す発泡押出機21及び分割金型34を含む発泡成形装置120を用いて実施することができる。発泡押出機21は、シリンダ23と、樹脂投入口25と、スクリュー27と、樹脂押出口31と、押出ヘッド32と、発泡剤注入口36とを備える。
1.発泡成形装置
本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法は、一例では、図1に示す発泡押出機21及び分割金型34を含む発泡成形装置120を用いて実施することができる。発泡押出機21は、シリンダ23と、樹脂投入口25と、スクリュー27と、樹脂押出口31と、押出ヘッド32と、発泡剤注入口36とを備える。
以下、各構成要素を詳細に説明する。
<樹脂投入口25>
樹脂投入口25は、いわゆるホッパーであり、ここから、原料樹脂が投入される。原料樹脂の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、樹脂投入口25からシリンダ23内に投入された後、シリンダ23内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ23内に配置されたスクリュー27の回転によって、シリンダ23の一端に設けられた樹脂押出口31に向けて溶融樹脂が搬送される。
樹脂投入口25は、いわゆるホッパーであり、ここから、原料樹脂が投入される。原料樹脂の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、樹脂投入口25からシリンダ23内に投入された後、シリンダ23内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ23内に配置されたスクリュー27の回転によって、シリンダ23の一端に設けられた樹脂押出口31に向けて溶融樹脂が搬送される。
各種樹脂材料から原料樹脂が選択される。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂である。ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち任意の材料が実施形態で使用されてもよい。
<スクリュー27>
スクリュー27は、シリンダ23内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら樹脂押出口31に向けて搬送する。スクリュー27の一端にはギア装置が設けられている。ギア装置は、スクリュー27を回転駆動するとともに、回転速度の制御も可能である。
スクリュー27は、シリンダ23内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら樹脂押出口31に向けて搬送する。スクリュー27の一端にはギア装置が設けられている。ギア装置は、スクリュー27を回転駆動するとともに、回転速度の制御も可能である。
<発泡剤注入口36>
シリンダ23には、シリンダ23内に発泡剤を注入するための発泡剤注入口36が設けられる。発泡剤注入口36から物理発泡剤Pが注入されることによって、溶融樹脂に物理発泡剤Pを注入した発泡剤含有樹脂が得られる。発泡押出機21内では高い圧力が維持されているため、物理発泡剤と溶融樹脂が別々の塊になって分離することなく、溶融樹脂内に物理発泡剤が微粒子状で分散された状態が維持される。
シリンダ23には、シリンダ23内に発泡剤を注入するための発泡剤注入口36が設けられる。発泡剤注入口36から物理発泡剤Pが注入されることによって、溶融樹脂に物理発泡剤Pを注入した発泡剤含有樹脂が得られる。発泡押出機21内では高い圧力が維持されているため、物理発泡剤と溶融樹脂が別々の塊になって分離することなく、溶融樹脂内に物理発泡剤が微粒子状で分散された状態が維持される。
物理発泡剤Pとしては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度-149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。なお、注入量の制御は、図示しない制御弁(調整バルブまたはインジェクタ等)の開度制御等によって行われてもよい。
<温度制御部29>
温度制御部29は、シリンダ23に沿って設けられた複数の温調ユニットを個別に制御して、シリンダ23の各部分の温度を制御するように構成されている。また、温度制御部29は、パリソンを形成するための押出ヘッド32の温度、及びシリンダ23と押出ヘッド32の間の連結部30の温度も制御可能である。各部分の温度は、押出ヘッド32内の樹脂圧に影響を与える。条件出しによって温度設定が完了したら、その設定温度からなるべく逸脱しないように各部分の温度が一定に制御されてもよい。
温度制御部29は、シリンダ23に沿って設けられた複数の温調ユニットを個別に制御して、シリンダ23の各部分の温度を制御するように構成されている。また、温度制御部29は、パリソンを形成するための押出ヘッド32の温度、及びシリンダ23と押出ヘッド32の間の連結部30の温度も制御可能である。各部分の温度は、押出ヘッド32内の樹脂圧に影響を与える。条件出しによって温度設定が完了したら、その設定温度からなるべく逸脱しないように各部分の温度が一定に制御されてもよい。
<樹脂押出口31・押出ヘッド32>
発泡剤含有樹脂は、樹脂押出口31から押し出され、連結部30を通じて押出ヘッド32内に注入される。押出ヘッド32は、スリット32aを有しており、発泡剤含有樹脂がスリット32aから押し出されることによって発泡パリソン33が形成される。スリット32aの形状は特に限定されないが、例えば、環状や線状(例:直線状)である。スリット32aが環状である場合、筒状の発泡パリソンが得られる。スリット32aが線状である場合(例えば、押出ヘッド32がTダイである場合)、シート状の発泡パリソンが得られる。スリット32aの幅は、可変になっているので、スリット32aの幅を変更することによって、発泡パリソン33の肉厚を変更可能となっている。
発泡剤含有樹脂は、樹脂押出口31から押し出され、連結部30を通じて押出ヘッド32内に注入される。押出ヘッド32は、スリット32aを有しており、発泡剤含有樹脂がスリット32aから押し出されることによって発泡パリソン33が形成される。スリット32aの形状は特に限定されないが、例えば、環状や線状(例:直線状)である。スリット32aが環状である場合、筒状の発泡パリソンが得られる。スリット32aが線状である場合(例えば、押出ヘッド32がTダイである場合)、シート状の発泡パリソンが得られる。スリット32aの幅は、可変になっているので、スリット32aの幅を変更することによって、発泡パリソン33の肉厚を変更可能となっている。
発泡剤含有樹脂がスリット32aから押し出され大気に開放されると、押出ヘッド32内の圧力と大気圧との差によって圧力勾配が発生することで物理発泡剤の容積が膨張し、発泡パリソン33が形成される。
<分割金型34>
発泡パリソン33は、一対の分割金型34の間に導かれる。分割金型34を用いて発泡パリソン33の成形を行うことによって発泡成形体が得られる。分割金型34を用いた成形の方法は特に限定されず、分割金型34のキャビティ内にエアーを吹き込んで成形を行うブロー成形であってもよく、分割金型34のキャビティの内面からキャビティ内を減圧して発泡パリソン33の成形を行う真空成形であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
発泡パリソン33は、一対の分割金型34の間に導かれる。分割金型34を用いて発泡パリソン33の成形を行うことによって発泡成形体が得られる。分割金型34を用いた成形の方法は特に限定されず、分割金型34のキャビティ内にエアーを吹き込んで成形を行うブロー成形であってもよく、分割金型34のキャビティの内面からキャビティ内を減圧して発泡パリソン33の成形を行う真空成形であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
2.発泡成形体の製造方法
本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法について説明する。本実施形態の方法は、押出工程と成形工程とを備える。
本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法について説明する。本実施形態の方法は、押出工程と成形工程とを備える。
2-1.押出工程
押出工程では、物理発泡剤Pを含有する発泡剤含有樹脂を押出ヘッド32のスリット32aから連続的に押し出すことによって発泡パリソン33を形成する。
押出工程では、物理発泡剤Pを含有する発泡剤含有樹脂を押出ヘッド32のスリット32aから連続的に押し出すことによって発泡パリソン33を形成する。
本実施形態は、発泡剤含有樹脂が連続的に押し出されることを特徴としている。発泡成形においては、発泡剤含有樹脂が発泡を開始するタイミングを適切に制御することが重要であり、発泡剤含有樹脂に加わる圧力を適切に制御することが重要である。このため、発泡成形では、アキュームレータに一定量の発泡剤含有樹脂を貯留した後に、貯留した発泡剤含有樹脂を高速で押し出すことによって発泡パリソンが形成されるのが一般的である。
本実施形態のような、アキュームレータを用いない連続押出の発泡成形では、発泡剤含有樹脂に加わる圧力の厳格な制御が困難であるため、発泡成形性が悪くなりやすい。一方、アキュームレータを用いない連続押出の発泡成形では、発泡押出機21を連続的に運転することができるので、発泡押出機21からの発泡剤含有樹脂の押出量の安定性を高めることができ、かつ製造効率を高めることができる。また、アキュームレータを有する発泡押出機21に比べて、設備コストや設置スペースを低減させやすいと利点がある。
本実施形態では、上記利点を享受しつつ、上記課題を克服すべく、押出ヘッド32のスリット32aの幅を0.68~3.50mmとし、発泡剤含有樹脂中の物理発泡剤のモル濃度を5~55mmol/kgとしている。これら2つのパラメータをこのような特定の数値範囲にすることによって、後述の実施例で示すように、連続押出の発泡成形でありながら、発泡成形性を良好にすることができた。
スリット32aの幅[mm]は、2.85以下が好ましい。この場合に、発泡成形性がさらに良好になる。スリット32aの幅[mm]は、具体的には例えば、0.68、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
発泡剤含有樹脂中の物理発泡剤のモル濃度[mmol/kg]は、{物理発泡剤のモル流量[mol/h]÷樹脂流量[kg/h]}×1000によって算出することができる。このモル濃度[mmol/kg]は、具体的には例えば、具体的には例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
物理発泡剤のモル流量[mol/h]は、単位時間(1hr)に注入される物理発泡剤の物質量であり、発泡剤注入口36を介して注入する物理発泡剤Pの流量を変更することで調節可能である。物理発泡剤のモル流量[mol/h]は、例えば、1.00~3.00であり、1.00~2.80が好ましく、1.00~2.35がさらに好ましい。この場合に、発泡成形性が特に良好になりやすいからである。このモル流量[mol/h]は、具体的には例えば、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
樹脂流量[kg/h]は、単位時間(1hr)あたりに流れる樹脂の質量(kg)である。樹脂流量の調節は、具体的には、スクリュー27の回転速度制御等で調節されてもよい。実施形態では連続押出を行うので、樹脂流量は、押出ヘッド32へ流れ込む樹脂流量に相当しつつ、押出ヘッド32から流れ出る樹脂流量にも相当している。
樹脂流量[kg/h]は、例えば30~150であり、具体的には例えば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
2-2.成形工程
成形工程は、発泡パリソン33を金型で成形する。本実施形態では、一対の分割金型34を用いて成形しているが、例えば、1つの金型を用いて真空成形を行ってもよい。
成形工程は、発泡パリソン33を金型で成形する。本実施形態では、一対の分割金型34を用いて成形しているが、例えば、1つの金型を用いて真空成形を行ってもよい。
この成形は、ブロー成形又は真空成形であることが好ましい。ブロー成形又は真空成形では、成形時に発泡パリソンが延伸されるので、発泡成形性が悪くなりやすい。このため、ブロー成形又は真空成形においては、本発明を適用することの技術的意義が顕著である。
本実施形態の方法では、発泡パリソン33が連続的に押し出されるので、一組の金型(1つの金型又は一対の分割金型)で成形を行うと、成形によって得られる発泡成形体を冷却する時間を確保することができない。そこで、複数組の金型を押出ヘッド32の直下に順次スライドさせて、複数組の金型を用いて成形工程を実施することが好ましい。これによって製造効率を向上させることができる。
成形工程の後、バリ取り等を含む仕上げ工程等が行われる。本実施形態の方法によれば、アキュームレータを介さないので、アキュームレータの貯留工程と射出工程とが省略されるので、製造効率を高めることができる。
本実施形態の製造方法によって得られる発泡成形体の一例としてダクトと挙げられる。発泡成形体の発泡倍率は、例えば、1.1~3.0倍であり、具体的には例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
(第1観点の実施例)
1.発泡成形体の製造
図1に示す装置及び上記実施形態に示す方法に従って、発泡パリソン33から発泡成形体を作製した。原料組成物としては、ポリプロピレン系樹脂A(ポレアリス社(Borealis AG)製、商品名「Daploy WB140」)と、ポリプロピレン系樹脂B(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP・BC4BSW」)と、ポリエチレン系エラストマー(三井化学株式会社製、商品名「タフマーDF605」)を質量比80:10:10で混合したもの(比重0.90)を用いた。押出ヘッド32としては、直径150mmのコアの周囲に環状スリットを有するものを用いた。環状スリットの幅、樹脂流量、物理発泡剤の種類及びモル流量は、表1~表2に示す値になるように調整した。
1.発泡成形体の製造
図1に示す装置及び上記実施形態に示す方法に従って、発泡パリソン33から発泡成形体を作製した。原料組成物としては、ポリプロピレン系樹脂A(ポレアリス社(Borealis AG)製、商品名「Daploy WB140」)と、ポリプロピレン系樹脂B(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP・BC4BSW」)と、ポリエチレン系エラストマー(三井化学株式会社製、商品名「タフマーDF605」)を質量比80:10:10で混合したもの(比重0.90)を用いた。押出ヘッド32としては、直径150mmのコアの周囲に環状スリットを有するものを用いた。環状スリットの幅、樹脂流量、物理発泡剤の種類及びモル流量は、表1~表2に示す値になるように調整した。
筒状の発泡パリソン33を分割金型34の間に配置し、型締めの後に発泡パリソン33内にエアーを吹き込むことによってブロー成形を行った。これにより、実施例・比較例の発泡成形体を作製した。
2.発泡成形体の評価
得られた発泡成形体の比重を測定し、樹脂組成物自体の比重を発泡成形体の比重で除することによって、発泡倍率を算出した。また、発泡成形体を100個製造したときの、成形不良が発生する割合(不良率)に基づいて、以下の基準で発泡成形性を評価した。得られた結果を表1~表2に示す。
◎:不良率が5%以下
○:不良率が5%超20%以下
△:不良率が20%超60%以下
×:不良率が60%超
得られた発泡成形体の比重を測定し、樹脂組成物自体の比重を発泡成形体の比重で除することによって、発泡倍率を算出した。また、発泡成形体を100個製造したときの、成形不良が発生する割合(不良率)に基づいて、以下の基準で発泡成形性を評価した。得られた結果を表1~表2に示す。
◎:不良率が5%以下
○:不良率が5%超20%以下
△:不良率が20%超60%以下
×:不良率が60%超
表1~表2に示すように、スリットの幅が0.68~3.50mmであり且つ物理発泡剤のモル濃度が5~55mmol/kgである全ての実施例では、全ての比較例よりも、発泡成形性が良好であった。
(第2観点)
1.発泡成形用樹脂の製造方法
図2を用いて、本発明の一実施形態の発泡成形用樹脂の製造方法について説明する。この方法は、押出機を用いて、PP系樹脂とLDPEを含む原料樹脂44を溶融混練する工程を備える。以下、各構成について詳細に説明する。
1.発泡成形用樹脂の製造方法
図2を用いて、本発明の一実施形態の発泡成形用樹脂の製造方法について説明する。この方法は、押出機を用いて、PP系樹脂とLDPEを含む原料樹脂44を溶融混練する工程を備える。以下、各構成について詳細に説明する。
<原料樹脂44>
原料樹脂44は、PP系樹脂とLDPEを含む。原料樹脂44は、PP系樹脂とLDPEのみを含んでもよく、その他の樹脂を含んでもよい。原料樹脂44中のPP系樹脂とLDPEの割合は、例えば60質量%以上である。この割合は、例えば60~100質量%であり、具体的には例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。原料樹脂44には、各種の添加剤(核剤、着色剤、酸化防止剤等)を添加してもよい。添加剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましい。
原料樹脂44は、PP系樹脂とLDPEを含む。原料樹脂44は、PP系樹脂とLDPEのみを含んでもよく、その他の樹脂を含んでもよい。原料樹脂44中のPP系樹脂とLDPEの割合は、例えば60質量%以上である。この割合は、例えば60~100質量%であり、具体的には例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。原料樹脂44には、各種の添加剤(核剤、着色剤、酸化防止剤等)を添加してもよい。添加剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましい。
<PP系樹脂>
PP系樹脂は、PPを主成分とする樹脂である。PP系樹脂を構成する単量体単位中のプロピレン単位の割合は、60質量%であり、80質量%以上が好ましい。この割合は、例えば60~100質量%であり、具体的には例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
PP系樹脂は、PPを主成分とする樹脂である。PP系樹脂を構成する単量体単位中のプロピレン単位の割合は、60質量%であり、80質量%以上が好ましい。この割合は、例えば60~100質量%であり、具体的には例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
PP系樹脂は、プロピレンの単独重合体(つまり、ホモポリプロピレン)であってもよく、プロピレンと他のオレフィン(エチレン等)の共重合体(ランダム共重合体又はブロック共重合体。以下、ランダム共重合体を「ランダムポリプロピレン」、ブロック共重合体を「ブロックポリプロピレン」と称する。)であってもよく、これらの混合物であってもよい。耐熱性の観点からPP系樹脂は、ホモポリプロピレン又はブロックポリプロピレンであることが好ましい。
PP系樹脂は、長鎖分岐構造を有するものであってもよいが、本発明は、PP系樹脂が長鎖分岐構造を有しない場合であっても発泡成形性が良好になる点が特徴的であるので、PP系樹脂が長鎖分岐構造を有しない場合に、本発明を適用することの技術的意義が顕著である。また、PP系樹脂が長鎖分岐構造を有する場合、せん断や酸化劣化による主鎖分裂が起こりやすいので、PP系樹脂は分岐構造を有さないことが好ましい。
PP系樹脂の長鎖分岐の程度は、分岐指数g'を用いて評価することができる。g'は、評価対象のポリマーの固有粘度[η]brと同じ分子量を有する線状ポリマーの固有粘度[η]linの比、すなわち、[η]br/[η]linによって与えられる。定義は、例えば「DevelopmentsinPolymerCharacterization-4」(J.V.Dawkinsed.AppliedSciencePublishers,1983)に、記載されており、当業者にとって公知の指標である。g'の値が小さいほど、長鎖分岐の程度が顕著である。
PP系樹脂のg'の値は、例えば0.95以上であり、0.95~1.00が好ましい。この値は、具体的には例えば、具体的には例えば、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1.00であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
PP系樹脂のメルトテンション(以下、「MT」)は、特に限定されないが、PP系樹脂が長鎖分岐構造を有さない場合にMTが低くなる傾向にあるので、MTが低い場合に本発明を適用することの技術的意義が顕著である。この観点では、PP系樹脂のMTは、100mN以下が好ましく、50mN以下がさらに好ましい。このMTは、例えば1~100mNであり、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100mNであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以下であってもよい。本明細書において、MTは、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用い、試験温度230℃、押出速度10mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径80mmのローラに巻き取り速度16rpmで巻き取ったときの張力を意味する。
PP系樹脂のメルトフローレイト(以下、「MFR」)は、特に限定されないが、例えば、0.5~10(g/10分)であり、具体的には例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10(g/10分)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本明細書において、MFRは、JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定を行って得られる値を意味する。
<LDPE>
LDPEは、長鎖分岐構造を有するポリエチレンである。LDPEの密度(g/cm3)は、0.910以上0.930未満であり、0.915以上0.925以下が好ましい。この密度は、具体的には例えば、0.910、0.915、0.920、0.925、0.929であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。LDPEは、一例では、空気中の酸素または過酸化物などラジカル開始剤を触媒とし、エチレンを1,000~4,000気圧・100~350℃の環境下で、多段ガス圧縮機を用いて重合することができる。
LDPEは、長鎖分岐構造を有するポリエチレンである。LDPEの密度(g/cm3)は、0.910以上0.930未満であり、0.915以上0.925以下が好ましい。この密度は、具体的には例えば、0.910、0.915、0.920、0.925、0.929であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。LDPEは、一例では、空気中の酸素または過酸化物などラジカル開始剤を触媒とし、エチレンを1,000~4,000気圧・100~350℃の環境下で、多段ガス圧縮機を用いて重合することができる。
LDPEが長鎖分岐構造を有しているために、LDPEを配合することによって、発泡成形用樹脂の発泡成形性を向上させることができる。
LDPEのMFRは、特に限定されないが、例えば、0.5~10(g/10分)であり、具体的には例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10(g/10分)であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
PP系樹脂とLDPEの合計に対するLDPEの含有量は、20~50質量%である。LDPEの含有量が少なすぎると、発泡成形性の向上効果が不十分になりやすく、LDPEの含有量が多すぎると耐熱性やポリプロピレンとの溶着性が不十分になりやすい。この含有量は、具体的には例えば、20、25、30、35、40、45、50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<押出機42>
図2に示すように、押出機42は、原料樹脂44が投入されるシリンダ42aと、シリンダ42a内に回転可能に配置されたスクリュー42bを備える。
図2に示すように、押出機42は、原料樹脂44が投入されるシリンダ42aと、シリンダ42a内に回転可能に配置されたスクリュー42bを備える。
原料樹脂44は、PP系樹脂のペレット44aと、LDPEのペレット44bを含むことが好ましい。原料樹脂44は、シリンダ42aに装着されたホッパー42cを介してシリンダ42a内に投入される。
スクリュー42bは、モーター42dによって回転駆動可能に構成されている。スクリュー42bを回転させることによって、原料樹脂44を溶融混練するとともに、原料樹脂44をシリンダ42aの先端に向けて搬送し、シリンダ42aの先端に設けられた吐出口42eを通じて押し出すことが可能になっている。
図3に示すように、スクリュー42bは、中央部42b1と、フライト部42b2を備える。中央部42b1は、スクリュー42bの回転軸に沿って延びる。フライト部42b2は、中央部42b1から径方向外側に突出するように設けられる。フライト部42b2は、スクリュー42bの回転に伴って原料樹脂44をスクリュー42bの先端に向けて搬送可能な形状であればよく、一例では螺旋状であるが、別の形状であってもよい。
フライト部42b2と、シリンダ42aの内面の間には、クリアランスCが設けられており、シリンダ42a内の原料樹脂44がクリアランスCを通過する際に、原料樹脂44にせん断力が加わって原料樹脂44に含まれるPP系樹脂とLDPEが混ぜ合わされる。クリアランスCの大きさは、例えば0.10~0.20mmの範囲内である。
スクリュー42bの、フライト部42b2での直径(別の表現では、フライト部42b2の、シリンダ42aの内面に対向するフライト表面42b3の回転軌跡の直径)をDとすると、Dは、例えば、10~300mmであり、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
フライト表面42b3の面積をSとすると、S/Dは、800~1500であることが好ましい。面積Sは、例えば、(フライト表面42b3の幅W)×(フライト部42b2の長手方向の長さ)で算出することができる。S/Dが大きいほど、原料樹脂44に加わるせん断力が大きくなり、PP系樹脂とLDPEを溶融混練して得られる発泡成形用樹脂中でのPP系樹脂とLDPEの分散性が向上する。一方、原料樹脂44に加わるせん断力が大きすぎると、原料樹脂44が過度に発熱して劣化してしまう場合がある。S/Dは、具体的には例えば、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
フライト部42b2が設けられている部位の、スクリュー42bの長さをLとすると、L/Dは、例えば、20~80であり、具体的には例えば、20、30、40、50、60、70、80であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
フライト部42b2が螺旋形状である場合、螺旋を構成する楕円の長手方向の長さをL1とすると、L1/Dは、例えば1.05~2であり、具体的には例えば、1.05、1.1、1.15、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
フライト表面42b3の幅(フライト部42b2の長手方向に垂直な方向の長さ)をWとすると、W/0.1Dは、例えば、0.5~2であり、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
スクリュー42bの回転速度は、特に限定されないが、例えば、10~200rpmであり、30~120rpmが好ましい。この回転速度は、具体的には例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200rpmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
押出機42からの発泡成形用樹脂の押出速度をVとすると、V/D2(g/hr・mm2)は、1~50であり、具体的には例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
原料樹脂44の加熱温度は、例えば、150~250℃であり、具体的には例えば、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<インジェクタ43>
押出機42のシリンダ42aには、シリンダ42a内に発泡剤を注入するためのインジェクタ43が設けられる。インジェクタ43から注入される発泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、及びブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。これらの中で、発泡剤としては、空気、炭酸ガス、または窒素ガスを用いることが好ましい。これらを用いることで有機物の混入を防ぐことができ、耐久性等の低下を抑制することが出来る。超臨界流体を用いることで、均一且つ確実に発泡することができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度-149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。化学発泡剤は、インジェクタ43から注入する代わりに、ホッパー42cから投入してもよい。
押出機42のシリンダ42aには、シリンダ42a内に発泡剤を注入するためのインジェクタ43が設けられる。インジェクタ43から注入される発泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、及びブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。これらの中で、発泡剤としては、空気、炭酸ガス、または窒素ガスを用いることが好ましい。これらを用いることで有機物の混入を防ぐことができ、耐久性等の低下を抑制することが出来る。超臨界流体を用いることで、均一且つ確実に発泡することができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度-149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。化学発泡剤は、インジェクタ43から注入する代わりに、ホッパー42cから投入してもよい。
<発泡成形用樹脂>
上記の方法で製造された発泡成形用樹脂(以下、「本実施形態の発泡成形用樹脂」)は、PP系樹脂とLDPEが高分散されており、PP系樹脂のマトリックス中にLDPEが微粒子状になって分散されていることが好ましい。この発泡成形用樹脂は、原料樹脂44と同様の組成を有するので、原料樹脂44についての上述の記載は、発泡成形用樹脂についても当てはまる。
上記の方法で製造された発泡成形用樹脂(以下、「本実施形態の発泡成形用樹脂」)は、PP系樹脂とLDPEが高分散されており、PP系樹脂のマトリックス中にLDPEが微粒子状になって分散されていることが好ましい。この発泡成形用樹脂は、原料樹脂44と同様の組成を有するので、原料樹脂44についての上述の記載は、発泡成形用樹脂についても当てはまる。
本実施形態の発泡成形用樹脂は、PP系樹脂が有する特性をある程度維持しつつ、LDPEが有する特性もある程度有する。LDPEは、PP系樹脂に比べて発泡成形性が優れているので、本実施形態の発泡成形用樹脂もPP系樹脂よりも優れた発泡成形性を有する。また、LDPEは、PP系樹脂に比べて低温耐衝撃性が優れているので、本実施形態の発泡成形用樹脂もPP系樹脂よりも優れた低温耐衝撃性を有する。
さらに、PP系樹脂は、LDPEよりも耐熱性及びPPとの溶着性が優れているので、本実施形態の発泡成形用樹脂もLDPEよりも優れた耐熱性及びPPとの溶着性を有する。
また、本実施形態の発泡成形用樹脂は、好ましくは、MFRが3.20~3.80g/10分であり、MTが35~90mNである。このような新規な物性を有することによって上記の技術的効果が奏される。MFRは、具体的には例えば、3.20、3.30、3.40、3.50、3.60、3.70、3.80g/10分であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。MTは、具体的には例えば、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90mNであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
2.発泡成形体の製造方法
本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法は、上記の方法で製造した発泡成形用樹脂又は上記の発泡成形用樹脂を用いて発泡パリソンを形成し、前記発泡パリソンを成形して発泡成形体を得る工程を備える。
本発明の一実施形態の発泡成形体の製造方法は、上記の方法で製造した発泡成形用樹脂又は上記の発泡成形用樹脂を用いて発泡パリソンを形成し、前記発泡パリソンを成形して発泡成形体を得る工程を備える。
本実施形態の方法は、例えば、図2に例示される発泡成形機41を用いて実施可能である。発泡成形機41は、押出機42と、インジェクタ43と、ヘッド58と、分割金型59を備える。押出機42とヘッド58は、連結管65で連結されている。
<押出機42>
押出機42では、原料樹脂と発泡剤と共に溶融混練されることによって発泡剤を含む発泡成形用樹脂が形成され、この発泡成形用樹脂が吐出口42eを通じて吐出されて、ヘッド58に注入される。
押出機42では、原料樹脂と発泡剤と共に溶融混練されることによって発泡剤を含む発泡成形用樹脂が形成され、この発泡成形用樹脂が吐出口42eを通じて吐出されて、ヘッド58に注入される。
<ヘッド58>
ヘッド58にはスリットが設けられており、このスリットを通じて、発泡剤を含む発泡成形用樹脂を押し出すことによって、発泡パリソン63を形成することができる。発泡パリソン63の形状は、特に限定されず、円筒状であってもよく、シート状であってもよい。なお、発泡剤を含む発泡成形用樹脂を所定量貯留した後に一度に押出可能に構成されたアキュームレータを備えてもよい。アキュームレータは、押出機42とヘッド58の間に設けてもよく、ヘッド58に内蔵してもよい。
ヘッド58にはスリットが設けられており、このスリットを通じて、発泡剤を含む発泡成形用樹脂を押し出すことによって、発泡パリソン63を形成することができる。発泡パリソン63の形状は、特に限定されず、円筒状であってもよく、シート状であってもよい。なお、発泡剤を含む発泡成形用樹脂を所定量貯留した後に一度に押出可能に構成されたアキュームレータを備えてもよい。アキュームレータは、押出機42とヘッド58の間に設けてもよく、ヘッド58に内蔵してもよい。
<分割金型59>
発泡パリソン63は、一対の分割金型59間に導かれる。分割金型59を用いて発泡パリソン63の成形を行うことによって発泡成形体が得られる。分割金型59を用いた成形の方法は特に限定されず、分割金型59のキャビティ内にエアを吹き込んで成形を行うブロー成形であってもよく、分割金型59のキャビティの内面からキャビティ内を減圧して発泡パリソン63の成形を行う真空成形であってもよく、その組み合わせであってもよい。ブロー成形の場合、エアは、例えば0.05~0.15MPaの圧力範囲で吹き込む。ブロー成形や真空成形では、発泡パリソン63が引き伸ばされるので、破泡が生じやすい。このため、ブロー成形又は真空成形の場合に、本発明を適用する技術的意義が顕著である。
発泡パリソン63は、一対の分割金型59間に導かれる。分割金型59を用いて発泡パリソン63の成形を行うことによって発泡成形体が得られる。分割金型59を用いた成形の方法は特に限定されず、分割金型59のキャビティ内にエアを吹き込んで成形を行うブロー成形であってもよく、分割金型59のキャビティの内面からキャビティ内を減圧して発泡パリソン63の成形を行う真空成形であってもよく、その組み合わせであってもよい。ブロー成形の場合、エアは、例えば0.05~0.15MPaの圧力範囲で吹き込む。ブロー成形や真空成形では、発泡パリソン63が引き伸ばされるので、破泡が生じやすい。このため、ブロー成形又は真空成形の場合に、本発明を適用する技術的意義が顕著である。
成形後に、冷えて固化した樹脂材料における完成品以外の部分を粉砕して回収樹脂材料とし、再度、発泡成形体の製造に用いることができる。
<発泡成形体>
上述した通り、本実施形態の発泡成形用樹脂は、発泡成形性が優れているので、この発泡成形用樹脂を用いることによって、表面での破泡や気泡同士の合一が生じにくい発泡成形体が得られる。
上述した通り、本実施形態の発泡成形用樹脂は、発泡成形性が優れているので、この発泡成形用樹脂を用いることによって、表面での破泡や気泡同士の合一が生じにくい発泡成形体が得られる。
また、本実施形態の発泡成形用樹脂は、低温耐衝撃性、耐熱性、及びPPとの溶着性も優れているので、この発泡成形用樹脂を用いることによって、低温耐衝撃性、耐熱性、及びPPとの溶着性が優れた発泡成形体が得られる。
発泡成形体の発泡倍率は、特に限定されないが、例えば、1.1~8倍であり、1.5~6倍が好ましい。この発泡倍率は、具体的には例えば、1.1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
発泡成形体は、中空体であることが好ましく、平均肉厚は、例えば1.5~5mmであり、具体的には例えば、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
(第2観点の実施例)
1.スクリュー42bの準備
スクリュー42bとして、表3に示すスクリューS1~S4及びCS1~CS4を準備した。これらのスクリューは、何れも、フライト部42b2が螺旋形状を有し、L1(フライト部42b2を構成する楕円の長手方向の長さ)/Dが1.12、W(フライト表面の2b3の幅)/0.1Dが1である。これらのスクリューのフライト部での直径D及びフライト表面の面積Sは、表3に示す通りである。フライト表面の面積Sは、スクリュー42bの長さLを変更することによって変更した。
1.スクリュー42bの準備
スクリュー42bとして、表3に示すスクリューS1~S4及びCS1~CS4を準備した。これらのスクリューは、何れも、フライト部42b2が螺旋形状を有し、L1(フライト部42b2を構成する楕円の長手方向の長さ)/Dが1.12、W(フライト表面の2b3の幅)/0.1Dが1である。これらのスクリューのフライト部での直径D及びフライト表面の面積Sは、表3に示す通りである。フライト表面の面積Sは、スクリュー42bの長さLを変更することによって変更した。
2.発泡成形体の製造
<実施例1>
実施例1では、図2に示す発泡成形機41を用いて、発泡成形体を作製した。押出機42のスクリュー42bとしては、スクリューS1を用いた。クリアランスCの大きさは、0.15±0.05mmとした。原料樹脂としては、PP系樹脂(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP・BC4BSW)とLDPE(旭化成株式会社製、サンテック-LD・M1820)のそれぞれのペレットを表4に示す割合で配合したものを用いた。また、樹脂100質量部に対して、核剤として20wt%の炭酸水素ナトリウム系発泡剤を含むLDPEベースマスターバッチ(大日精化工業株式会社製、商品名「ファインセルマスターP0217K」)を1.0重量部、及び着色剤として40wt%のカーボンブラックを含むLLDPEベースマスターバッチ1.0重量部を添加した。押出機42内の樹脂の温度が190~200℃になるように各部位の温度制御を行った。スクリューの回転速度は、60rpmとした。発泡剤は、N2ガスを用い、インジェクタ43を介して注入した。注入量は、0.4[wt.%](N2注入量/樹脂押出量)とした。発泡パリソン63の厚さは、発泡成形体の厚さが2mmになるように調節した。
<実施例1>
実施例1では、図2に示す発泡成形機41を用いて、発泡成形体を作製した。押出機42のスクリュー42bとしては、スクリューS1を用いた。クリアランスCの大きさは、0.15±0.05mmとした。原料樹脂としては、PP系樹脂(日本ポリプロ株式会社製、ノバテックPP・BC4BSW)とLDPE(旭化成株式会社製、サンテック-LD・M1820)のそれぞれのペレットを表4に示す割合で配合したものを用いた。また、樹脂100質量部に対して、核剤として20wt%の炭酸水素ナトリウム系発泡剤を含むLDPEベースマスターバッチ(大日精化工業株式会社製、商品名「ファインセルマスターP0217K」)を1.0重量部、及び着色剤として40wt%のカーボンブラックを含むLLDPEベースマスターバッチ1.0重量部を添加した。押出機42内の樹脂の温度が190~200℃になるように各部位の温度制御を行った。スクリューの回転速度は、60rpmとした。発泡剤は、N2ガスを用い、インジェクタ43を介して注入した。注入量は、0.4[wt.%](N2注入量/樹脂押出量)とした。発泡パリソン63の厚さは、発泡成形体の厚さが2mmになるように調節した。
以上の条件で形成された発泡パリソン63を分割金型59の間に配置した後に、分割金型59の型締めを行って、中空の発泡成形体を得た。
<実施例2~8及び比較例1~13>
スクリューの種類と原料樹脂の組成を表4~表6に示すように変更した以外は、実施例1と同様に発泡成形体を製造した。
スクリューの種類と原料樹脂の組成を表4~表6に示すように変更した以外は、実施例1と同様に発泡成形体を製造した。
2.物性測定
各実施例・比較例の発泡成形体からサンプル片を切り出し、MFR及びMTの測定を行った。その結果を表4~表6に示す。
各実施例・比較例の発泡成形体からサンプル片を切り出し、MFR及びMTの測定を行った。その結果を表4~表6に示す。
3.評価
作製した発泡成形体について、発泡成形性、耐熱性、PPとの溶着性及び低温耐衝撃性を以下の方法で評価した。その結果を表4~表6に示す。表4~表6に示すように、全ての実施例では、全ての評価結果が◎又は○であった。一方、全ての比較例では、少なくとも1つの評価結果が△又は×であった。
作製した発泡成形体について、発泡成形性、耐熱性、PPとの溶着性及び低温耐衝撃性を以下の方法で評価した。その結果を表4~表6に示す。表4~表6に示すように、全ての実施例では、全ての評価結果が◎又は○であった。一方、全ての比較例では、少なくとも1つの評価結果が△又は×であった。
<発泡成形性>
発泡成形性は、発泡成形体の発泡倍率の測定を行い、以下の基準で評価した。
◎:2.8倍以上
○:1.8倍以上、2.8倍未満
△:1.4倍以上、1.8倍未満
×:1.4倍未満
発泡成形性は、発泡成形体の発泡倍率の測定を行い、以下の基準で評価した。
◎:2.8倍以上
○:1.8倍以上、2.8倍未満
△:1.4倍以上、1.8倍未満
×:1.4倍未満
<耐熱性>
耐熱性は、JIS7161-2に準拠して、発泡成形体から試験片を切り取り、この試験片について、80℃での引張弾性率を測定し、以下の基準で評価した。
◎:75MPa以上
○:55MPa以上、75MPa未満
△:35MPa以上、55MPa未満
×:35MPa未満
耐熱性は、JIS7161-2に準拠して、発泡成形体から試験片を切り取り、この試験片について、80℃での引張弾性率を測定し、以下の基準で評価した。
◎:75MPa以上
○:55MPa以上、75MPa未満
△:35MPa以上、55MPa未満
×:35MPa未満
<PPとの溶着性>
PPとの溶着性は、発泡成形体をポリプロピレンの板に超音波溶着した部材について、室温で引張破壊試験を行い、引張破壊に必要な引張荷重の大きさに基づいて、以下の基準で評価した。
◎:20N/cm2以上
○:15N/cm2以上、20N/cm2未満
△:10N/cm2以上、15N/cm2未満
×:10N/cm2未満
PPとの溶着性は、発泡成形体をポリプロピレンの板に超音波溶着した部材について、室温で引張破壊試験を行い、引張破壊に必要な引張荷重の大きさに基づいて、以下の基準で評価した。
◎:20N/cm2以上
○:15N/cm2以上、20N/cm2未満
△:10N/cm2以上、15N/cm2未満
×:10N/cm2未満
<低温耐衝撃性>
低温耐衝撃性は、JIS K 7110に準拠して、発泡成形体について-10℃のIZOD強度を測定し、以下の基準で評価した。
◎:10kJ/m3以上
○:8kJ/m2以上、10kJ/m2未満
△:5kJ/m2以上、8kJ/m2未満
×:5kJ/m2未満
低温耐衝撃性は、JIS K 7110に準拠して、発泡成形体について-10℃のIZOD強度を測定し、以下の基準で評価した。
◎:10kJ/m3以上
○:8kJ/m2以上、10kJ/m2未満
△:5kJ/m2以上、8kJ/m2未満
×:5kJ/m2未満
(第3観点)
1.超音波溶着装置100の構成説明
図4に示すように、超音波溶着装置100は、振動伝達部2及び連結部3を有するホーン1と、振動子4と、発振器5と、ケーブル6と、加圧機構7と、配置台8と、保持部9とを備えている。なお、超音波溶着装置100は、発振器5や加圧機構7を制御する制御装置(不図示)も備えている。超音波溶着装置100は、第1及び第2部材11,12を超音波溶着することで、図6に示すような構造体10を製造することができる。なお、第1部材11は、中実の樹脂で構成された部材であり、第2部材12は、発泡樹脂で構成された部材である。
1.超音波溶着装置100の構成説明
図4に示すように、超音波溶着装置100は、振動伝達部2及び連結部3を有するホーン1と、振動子4と、発振器5と、ケーブル6と、加圧機構7と、配置台8と、保持部9とを備えている。なお、超音波溶着装置100は、発振器5や加圧機構7を制御する制御装置(不図示)も備えている。超音波溶着装置100は、第1及び第2部材11,12を超音波溶着することで、図6に示すような構造体10を製造することができる。なお、第1部材11は、中実の樹脂で構成された部材であり、第2部材12は、発泡樹脂で構成された部材である。
1-1.ホーン1
ホーン1は、振動子4から伝達された振動を第1及び第2部材11,12に伝達し、第1及び第2部材11,12を溶着するための工具である。ホーン1は、保持部9から突き出すように設けられている。ホーン1の上端部側は、保持部9内において固定されている。ホーン1は、例えば、金属材料から構成される。金属材料には、例えば、アルミニウム、鉄、及びチタン等を採用することができる。
ホーン1は、振動子4から伝達された振動を第1及び第2部材11,12に伝達し、第1及び第2部材11,12を溶着するための工具である。ホーン1は、保持部9から突き出すように設けられている。ホーン1の上端部側は、保持部9内において固定されている。ホーン1は、例えば、金属材料から構成される。金属材料には、例えば、アルミニウム、鉄、及びチタン等を採用することができる。
1-1-1.振動伝達部2
図4及び図5A~図5Cに示すように、振動伝達部2は、棒状部材であり、上端部が連結部3に連結している。振動伝達部2は、例えば、NC(numerical control)加工機で金属部材を加工することで製造することができる。振動子4の振動は、連結部3を介して振動伝達部2に伝達される。振動伝達部2は、基部2aと、スパイク部2bとを備えている。振動伝達部2は、複数(実施形態では4つ)のスパイク部2bを備えている。実施形態では、振動伝達部2が、4つのスパイク部2bを備えている例を説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、振動伝達部2が、3つ以上のスパイク部2bを備えることで、スパイク部2bを第1部材11に押し付けたときに、第1部材11の姿勢が傾いてしまうことを抑制することができる。
図4及び図5A~図5Cに示すように、振動伝達部2は、棒状部材であり、上端部が連結部3に連結している。振動伝達部2は、例えば、NC(numerical control)加工機で金属部材を加工することで製造することができる。振動子4の振動は、連結部3を介して振動伝達部2に伝達される。振動伝達部2は、基部2aと、スパイク部2bとを備えている。振動伝達部2は、複数(実施形態では4つ)のスパイク部2bを備えている。実施形態では、振動伝達部2が、4つのスパイク部2bを備えている例を説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、振動伝達部2が、3つ以上のスパイク部2bを備えることで、スパイク部2bを第1部材11に押し付けたときに、第1部材11の姿勢が傾いてしまうことを抑制することができる。
<基部2a>
図5Aに示すように、基部2aは、柱状部2a1と、端面部2a2を有する。柱状部2a1は、円柱状に形成されており、その先端側には端面部2a2が形成されている。端面部2a2には、4つのスパイク部2bが設けられており、実施形態では平坦面で構成されている。図5Aに示すように、柱状部2a1の先端の縁部には、環状のテーパー面2a11が形成されている。図5Cに示す柱状部2a1の直径R1(mm)は、具体的には例えば、7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
図5Aに示すように、基部2aは、柱状部2a1と、端面部2a2を有する。柱状部2a1は、円柱状に形成されており、その先端側には端面部2a2が形成されている。端面部2a2には、4つのスパイク部2bが設けられており、実施形態では平坦面で構成されている。図5Aに示すように、柱状部2a1の先端の縁部には、環状のテーパー面2a11が形成されている。図5Cに示す柱状部2a1の直径R1(mm)は、具体的には例えば、7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<スパイク部2b>
図5A~図5Cに示すように、スパイク部2bは、ホーン1を第1部材11に押し付ける方向において、先細るように形成されている。スパイク部2bは、基部2aの先端側(端面部2a2)が設けられている。図5Cに示すように、振動伝達部2は、中央に配置されたスパイク部2bと、このスパイク部2bを取り囲むように配置された3つのスパイク部2bとを有する。3つのスパイク部2bは、図5B及び図5Cに示すように、頂部2b2に対応する位置Otが三角形(実施形態では正三角形)をなすように、配置されている。なお、3つのスパイク部2bの頂部2b2に対応する位置Otは、同心円状に配置されている。また、中央のスパイク部2bの頂部2b2に対応する位置Oは、3つのスパイク部2bの位置Otからなる三角形の重心の位置に一致するように配置されている。換言すると、位置Oと各位置Otとの間の長さは等しい。なお、振動伝達部2がスパイク部2bを3つのみ備える形態である場合には、中央に配置されたスパイク部2bを省略するとよい。
図5A~図5Cに示すように、スパイク部2bは、ホーン1を第1部材11に押し付ける方向において、先細るように形成されている。スパイク部2bは、基部2aの先端側(端面部2a2)が設けられている。図5Cに示すように、振動伝達部2は、中央に配置されたスパイク部2bと、このスパイク部2bを取り囲むように配置された3つのスパイク部2bとを有する。3つのスパイク部2bは、図5B及び図5Cに示すように、頂部2b2に対応する位置Otが三角形(実施形態では正三角形)をなすように、配置されている。なお、3つのスパイク部2bの頂部2b2に対応する位置Otは、同心円状に配置されている。また、中央のスパイク部2bの頂部2b2に対応する位置Oは、3つのスパイク部2bの位置Otからなる三角形の重心の位置に一致するように配置されている。換言すると、位置Oと各位置Otとの間の長さは等しい。なお、振動伝達部2がスパイク部2bを3つのみ備える形態である場合には、中央に配置されたスパイク部2bを省略するとよい。
図5A及び図5Bに示すように、スパイク部2bは、円錐状に形成されている。スパイク部2bは、根元部2b1と、頂部2b2と、側面部2b3とを有する。図5Bに示すスパイク部2bの高さ幅h(mm)は、具体的には例えば、1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
根元部2b1は、端面部2a2に接続されており、円環状に形成されている。ここで、図5Cに示す根元部2b1(スパイク部2b)の幅R2(mm)は、具体的には例えば、1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
頂部2b2は、スパイク部2bの先端部に形成されている。図5Bに示す頂部2b2の角度θ(度)は、具体的には例えば、10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,105,110,115,120であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、頂部2b2の角度θ(度)は、頂部2b2を通る垂直断面でスパイク部2bを見たときにおいて、側面部2b3によって挟まれる角度に対応している。
側面部2b3は、根元部2b1から頂部2b2にかけて形成されている。側面部2b3は、ホーン1を第1部材11に押し付ける方向において、先細るように形成されており、実施形態では、円錐状に形成されている。
1-1-2.連結部3
連結部3は、振動子4の振動をホーン1に伝達させるにあたってその振動の振幅を拡大する機能を有する。連結部3は棒状部材であり、連結部3の下部が振動伝達部2に設けられ、連結部3の上部が振動子4と共に保持部9内に収容されている。
連結部3は、振動子4の振動をホーン1に伝達させるにあたってその振動の振幅を拡大する機能を有する。連結部3は棒状部材であり、連結部3の下部が振動伝達部2に設けられ、連結部3の上部が振動子4と共に保持部9内に収容されている。
1-2.振動子4
振動子4は、発振器5から供給される電力によって振動するように構成されている。振動子4は、例えば、電歪型の圧電セラミックス振動子等で構成することができる。
振動子4は、発振器5から供給される電力によって振動するように構成されている。振動子4は、例えば、電歪型の圧電セラミックス振動子等で構成することができる。
1-3.ケーブル6及び発振器5
発振器5は、ケーブル6を介して超音波に係る周波数の電力を振動子4に供給する。
発振器5は、ケーブル6を介して超音波に係る周波数の電力を振動子4に供給する。
1-4.加圧機構7及び保持部9
加圧機構7は、保持部9を予め定められた方向に移動可能に構成されている。加圧機構7は、例えば、モーターや、モーターの動力によって保持部9を移動させる機構等から構成することができる。なお、予め定められた方向は、保持部9側から配置台8側に向かう方向であり、実施形態では鉛直方向である。振動子4やホーン1は、保持部9に直接又は間接的に保持されているため、保持部9が加圧機構7に移動させられることで、ホーン1が保持部9と共に移動する。
加圧機構7は、保持部9を予め定められた方向に移動可能に構成されている。加圧機構7は、例えば、モーターや、モーターの動力によって保持部9を移動させる機構等から構成することができる。なお、予め定められた方向は、保持部9側から配置台8側に向かう方向であり、実施形態では鉛直方向である。振動子4やホーン1は、保持部9に直接又は間接的に保持されているため、保持部9が加圧機構7に移動させられることで、ホーン1が保持部9と共に移動する。
1-5.配置台8
配置台8は、第2部材12を配置するための台である。加圧機構7の下端部が配置台8に連結されることで、加圧機構7が固定されているが、加圧機構7はその他の箇所に固定されていてもよい。
配置台8は、第2部材12を配置するための台である。加圧機構7の下端部が配置台8に連結されることで、加圧機構7が固定されているが、加圧機構7はその他の箇所に固定されていてもよい。
2.構造体10の構成説明
図6に示すように、実施形態に係る製造方法で製造される構造体10は、第1及び第2部材11,12を備えている。構造体10は、超音波溶着で第1部材11を第2部材12に溶着させることで、第1部材11を第2部材12に固定して構成される。図7Aに示すように、構造体10には、凹状部11Cが形成されている。凹状部11Cは、超音波溶着時において、ホーン1のスパイク部2bが第1部材11に押し付けられることで形成される。
図6に示すように、実施形態に係る製造方法で製造される構造体10は、第1及び第2部材11,12を備えている。構造体10は、超音波溶着で第1部材11を第2部材12に溶着させることで、第1部材11を第2部材12に固定して構成される。図7Aに示すように、構造体10には、凹状部11Cが形成されている。凹状部11Cは、超音波溶着時において、ホーン1のスパイク部2bが第1部材11に押し付けられることで形成される。
2-1.第1部材11
第1部材11は、中実の樹脂で構成された部材であり、第1部材11を構成する樹脂は、例えば、ポリプロピレンで構成することができる。なお、第1部材11を構成する樹脂は、ポリプロピレンに限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成することができる。また、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。
第1部材11は、中実の樹脂で構成された部材であり、第1部材11を構成する樹脂は、例えば、ポリプロピレンで構成することができる。なお、第1部材11を構成する樹脂は、ポリプロピレンに限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成することができる。また、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。
図6に示すように、第1部材11は、本体部11aと、複数(実施形態では3つ)の固定部11bとを有する。なお、実施形態では、複数の固定部11bを備える例を示しているがこれに限定されるものではなく、1つであってもよい。
2-1-1.本体部11a
本体部11aの形状や機能は、特に限定されるものではないが、実施形態では、本体部11aは、車両のバックドアトリムを構成する部品であるリテーナに対応する部位である。本体部11aは、固定部11bに接続されており、且つ、固定部11bから突き出すように設けられている。
本体部11aの形状や機能は、特に限定されるものではないが、実施形態では、本体部11aは、車両のバックドアトリムを構成する部品であるリテーナに対応する部位である。本体部11aは、固定部11bに接続されており、且つ、固定部11bから突き出すように設けられている。
2-1-2.固定部11b
図7A~図8に示すように、固定部11bは、板状に構成されている。固定部11bは、薄肉部11Aと、肉厚部11Bとを有する。また、固定部11bには、凹部11b1が形成されている。
図7A~図8に示すように、固定部11bは、板状に構成されている。固定部11bは、薄肉部11Aと、肉厚部11Bとを有する。また、固定部11bには、凹部11b1が形成されている。
<薄肉部11A>
図7Bに示すように、薄肉部11Aは、肉厚部11Bに接続されており、且つ、薄肉部11Aの厚みt2は、肉厚部11Bの厚みt1よりも薄い。薄肉部11A及び肉厚部11Bは、第2部材12上に配置されている。なお、実施形態では、薄肉部11Aの全体及び肉厚部11Bの全体が、第2部材12に接触しているが、このような形態に限定されるものではない。例えば、薄肉部11Aは、超音波溶着装置100で溶着する領域のみが第2部材に接触しており、当該領域以外の領域(他の領域)は、非接触であってもよい。また、肉厚部11Bの一部が、第2部材12に接触していてもよいし、肉厚部11Bの全体が、第2部材12に非接触であってもよい。
図7Bに示すように、薄肉部11Aは、肉厚部11Bに接続されており、且つ、薄肉部11Aの厚みt2は、肉厚部11Bの厚みt1よりも薄い。薄肉部11A及び肉厚部11Bは、第2部材12上に配置されている。なお、実施形態では、薄肉部11Aの全体及び肉厚部11Bの全体が、第2部材12に接触しているが、このような形態に限定されるものではない。例えば、薄肉部11Aは、超音波溶着装置100で溶着する領域のみが第2部材に接触しており、当該領域以外の領域(他の領域)は、非接触であってもよい。また、肉厚部11Bの一部が、第2部材12に接触していてもよいし、肉厚部11Bの全体が、第2部材12に非接触であってもよい。
図7Bに示す薄肉部11Aの厚みt2は、図5Bに示すスパイク部2bの高さ幅hよりも、小さいことが好ましい。これにより、ホーン1を薄肉部11Aに押し付けて超音波溶着を実施すると、薄肉部11Aが熱で溶けてスパイク部2bが薄肉部11Aに突き刺さるだけでなく、第2部材12にも突き刺ささる。その結果、薄肉部11Aを構成する樹脂が第2部材12に入り込み、アンカー効果によって第1及び第2部材11,12が強固に溶着する。
図7Bに示す薄肉部11Aの厚みt2(mm)は、具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2.0,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3.0,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4.0,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9,5.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
図7Bに示す薄肉部11Aの厚みt2(mm)は、具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2.0,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3.0,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4.0,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9,5.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
実施形態に係る製造方法では、固定部1bには薄肉部11Aが形成されているので、少ない出力且つ短時間で適切な超音波溶着が可能である。加えて、実施形態に係る製造方法では、固定部1bには、薄肉部11Aが部分的に形成されているため、第1部材11の剛性が低下することを抑制することも可能である。
<肉厚部11B>
図7A及び図7Bに示すように、肉厚部11Bは、実施形態において、薄肉部11Aを取り囲むように配置されている。肉厚部11Bの厚みt1は、例えば、薄肉部11Aの厚みt2の1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2.0,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3.0,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4.0,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9,5.0倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
図7A及び図7Bに示すように、肉厚部11Bは、実施形態において、薄肉部11Aを取り囲むように配置されている。肉厚部11Bの厚みt1は、例えば、薄肉部11Aの厚みt2の1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2.0,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3.0,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4.0,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9,5.0倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
<凹部11b1>
凹部11b1は、実施形態において円形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えばn角形状(nは3以上の整数)であってもよい。凹部11b1は、内面11b2と、底面11b3と有する。
凹部11b1は、実施形態において円形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えばn角形状(nは3以上の整数)であってもよい。凹部11b1は、内面11b2と、底面11b3と有する。
図7A及び図7Bに示すように、内面11b2は、底面11b3に立設するように形成されている。また、内面11b2は、円環状に形成されている。更に、内面11b2には、傾斜面Srが形成されている。傾斜面Srは、肉厚部11Bの上面側から底面11b3側にかけて傾斜している。なお、実施形態では、内面11b2の全体に傾斜面Srが形成されているが、これに限定されるものではなく、内面11b2の一部に傾斜面Srが形成されていてもよい。図7Bに示す傾斜面Srの傾斜角度α(度)は、具体的には例えば、20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、例えば内面11b2が90度をなすように底面11b3に接続されている場合、超音波溶着時にホーン1が底面11b3に突き当てられると、内面11b2と底面11b3の接続部位が破損しやすくなる。それに対し、実施形態では、内面11b2には傾斜面Srが形成されているので、超音波溶着時において内面11b2と底面11b3との接続部位の破損を抑制することが抑制される。
なお、実施形態では、傾斜面Srは、一定角度をなす面であるものとして説明しているが、これに限定されるものではなく、下に凸をなすように円弧状に形成されていてもよい。このとき、この円弧の半径(mm)は、具体的には例えば、0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
凹部11b1の底面11b3は、薄肉部11Aの上面である。底面11b3は、実施形態において、円形状の平坦面である。底面11b3は、ホーン1のスパイク部2bが押し付けられる。図8に示す底面11b3の径r(mm)は、柱状部2a1の直径R1(mm)+x(mm)とするとよい。ここで、x(mm)は、具体的には例えば、3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
2-2.第2部材12
第2部材12は、発泡樹脂で構成された部材であり、第2部材12を構成する樹脂は、例えば、ポリプロピレンで構成することができる。発泡樹脂の発泡剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、物理発泡剤、化学発泡剤及びその混合物等を採用することができる。なお、第2部材12を構成する樹脂は、ポリプロピレンに限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成することができる。また、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。第2部材12を構成する発泡樹脂の発泡倍率(倍)は、具体的には例えば、1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
第2部材12は、発泡樹脂で構成された部材であり、第2部材12を構成する樹脂は、例えば、ポリプロピレンで構成することができる。発泡樹脂の発泡剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、物理発泡剤、化学発泡剤及びその混合物等を採用することができる。なお、第2部材12を構成する樹脂は、ポリプロピレンに限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成することができる。また、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。第2部材12を構成する発泡樹脂の発泡倍率(倍)は、具体的には例えば、1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
図7Bに示す第2部材12の厚みT1は、図5Bに示すスパイク部2bの高さ幅hよりも大きいことが好ましい。これにより、超音波溶着時において、ホーン1を第1部材11に押し込んだときに、スパイク部2bが第2部材12を貫通してしまうことを回避することができる。スパイク部2bの高さ幅hに対する第2部材12の厚みT1の比(T1/h)は、具体的には例えば、1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、第2部材12の厚みT1は、薄肉部11Aの厚みt2の、例えば、2倍以上であり、好ましくは、3倍以上である。
3.構造体の製造方法
本方法は、配置工程と、超音波溶着工程とを備える。以下、各工程について説明する。
本方法は、配置工程と、超音波溶着工程とを備える。以下、各工程について説明する。
2-1.配置工程
配置工程では、第2部材12を配置台8に配置する。その後に、図9に示すように、第2部材12上に第1部材11を配置する。なお、実施形態では、超音波溶着装置100のホーン1が上下方向に可動し、水平面に平行に配置台8及び第2部材12が配置されるものとして説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、ホーン1が左右方向に可動し、水平面に直交する面に平行に配置台8及び第2部材12が配置されていてもよい。この場合には、第2部材12を配置台8に固定する手段や、第1部材11を第2部材12に固定する手段を備えていることが好ましい。
配置工程では、第2部材12を配置台8に配置する。その後に、図9に示すように、第2部材12上に第1部材11を配置する。なお、実施形態では、超音波溶着装置100のホーン1が上下方向に可動し、水平面に平行に配置台8及び第2部材12が配置されるものとして説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、ホーン1が左右方向に可動し、水平面に直交する面に平行に配置台8及び第2部材12が配置されていてもよい。この場合には、第2部材12を配置台8に固定する手段や、第1部材11を第2部材12に固定する手段を備えていることが好ましい。
2-2.超音波溶着工程
超音波溶着工程では、発振器5を駆動してホーン1を振動させる。なお、発振器5の駆動開始は、配置工程で実施していておいてもよい。続いて、ホーン1を下方に移動させ、図10に示すように、ホーン1のスパイク部2bを第1部材11の薄肉部11Aに押し付ける。ここで、加圧機構7を制御することで、スパイク部2bが薄肉部11Aを下方に押し込み、発泡樹脂である第2部材12が加圧されて圧縮される。具体的には、図10に示すように、第2部材12の厚みは、配置工程における厚みT1から、超音波溶着工程における厚みT2となる。つまり、圧縮量Dは、厚みT1-厚みT2で表すことができる。なお、第2部材12が圧縮されたときにおいて、第2部材12の全体の厚みが、小さくなる必要はない。例えば、第2部材12のうち薄肉部11Aの下に配置される部分の厚みが、厚みT1から厚みT2となる。
超音波溶着工程では、発振器5を駆動してホーン1を振動させる。なお、発振器5の駆動開始は、配置工程で実施していておいてもよい。続いて、ホーン1を下方に移動させ、図10に示すように、ホーン1のスパイク部2bを第1部材11の薄肉部11Aに押し付ける。ここで、加圧機構7を制御することで、スパイク部2bが薄肉部11Aを下方に押し込み、発泡樹脂である第2部材12が加圧されて圧縮される。具体的には、図10に示すように、第2部材12の厚みは、配置工程における厚みT1から、超音波溶着工程における厚みT2となる。つまり、圧縮量Dは、厚みT1-厚みT2で表すことができる。なお、第2部材12が圧縮されたときにおいて、第2部材12の全体の厚みが、小さくなる必要はない。例えば、第2部材12のうち薄肉部11Aの下に配置される部分の厚みが、厚みT1から厚みT2となる。
圧縮量D(mm)は、具体的には例えば、0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.2,1.3,1.4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
また、第2部材12の厚みT1に対する圧縮量Dの比(D/T1)は、0.1≦D/T1≦0.5を満たすことが好ましくは、0.2≦D/T1≦0.44の関係を満たすことが更に好ましい。
また、第2部材12の厚みT1に対する圧縮量Dの比(D/T1)は、0.1≦D/T1≦0.5を満たすことが好ましくは、0.2≦D/T1≦0.44の関係を満たすことが更に好ましい。
超音波溶着工程では、第2部材12が厚みT2へ圧縮されてから、ホーン1が上方に移動して退避するまでは、圧縮量Dが維持されることが好ましいが、これに限定されるものではない。第2部材12が厚みT2へ圧縮されてから、ホーン1が上方に移動して退避するまでの間に、圧縮量Dが小さくなってもよい。
振動がスパイク部2bから第1及び第2部材11,12に伝達されることで、第1部材11と第2部材12との間に摩擦熱が発生する。これにより、図11に示すように、薄肉部11Aが溶融し、スパイク部2bが薄肉部11A内に進入し、更に、第2部材12に進入して突き刺さる。
その後、図12に示すように、ホーン1を上方に移動させて、ホーン1を第1部材11から退避させる。ホーン1を第1部材11から退避させると、第1及び第2部材11,12には、すり鉢状の凹状部11Cが形成されている。実施形態では、第1部材11が3つの固定部11bを有するため、第2部材12を移動させて、2つの固定部11bに対しても、上述した動作を繰り返し実施する。3つの固定部11bの超音波溶着が完了することで、構造体10を製造することができる。
3.実施形態の作用・効果
実施形態に係る製造方法では、ホーン1を第2部材12に接触するように配置された第1部材11に押し付けることで第1及び第2部材11,12を超音波溶着して第1及び第2部材11,12を連結することができる。つまり、ホーン1を第1部材11に押し付けるという簡易な作業によって、第1及び第2部材11,12を連結することができ、第1及び第2部材11,12の連結作業の負担を抑制することができる。
実施形態に係る製造方法では、ホーン1を第2部材12に接触するように配置された第1部材11に押し付けることで第1及び第2部材11,12を超音波溶着して第1及び第2部材11,12を連結することができる。つまり、ホーン1を第1部材11に押し付けるという簡易な作業によって、第1及び第2部材11,12を連結することができ、第1及び第2部材11,12の連結作業の負担を抑制することができる。
実施形態に係る製造方法では、スパイク部2bが薄肉部11Aだけでなく、第2部材12内に進入するように突き刺さり、構造体10には凹状部11Cが形成される。このため、薄肉部11Aを構成する樹脂が第2部材12に入り込み、アンカー効果によって第1及び第2部材11,12が強固に溶着する。
第1部材11は中実の樹脂部材であるため、発泡樹脂である第2部材12と比較すると、溶融しにくい。このため、第1部材11のうちホーン1を押し付ける箇所の厚みが大きい場合、作業者は、溶着強度を確保しようとして、発振器5の出力を上げ過ぎたり、ホーン1を第1部材11に押し当てる時間を長くし過ぎたりする可能性がある。そうすると、第1部材11よりも溶融しやすい第2部材12が溶融し過ぎてしまい、第2部材12の下面(第1部材11が配置される面とは反対側の面)に外観不良等の不具合が生じてしまう場合がある。このような不具合を回避するために、作業者が、発振器5の出力を下げると、溶着強度がでなくなってしまう場合がある。
実施形態に係る製造方法では、ホーン1を、肉厚部11Bではなく薄肉部11Aに押し付けて超音波溶着を行う。このため、ホーン1が薄肉部11Aに押し付けられると、薄肉部11Aが円滑に溶融して、スパイク部2bが円滑に第2部材12に突き刺さされ、薄肉部11Aと第2部材12とが速やかに超音波溶着される。このため、実施形態に係る製造方法では、発振器5の出力及びホーン1を第1部材11に押し当てる時間を低減することができ、第2部材12の下面に不具合が発生することを抑制することができる。また、実施形態に係る製造方法では、薄肉部11Aが円滑に溶融するため、溶着強度がでなくなってしまうことも抑制することができる。
実施形態に係る製造方法では、ホーン1を、肉厚部11Bではなく薄肉部11Aに押し付けて超音波溶着を行う。このため、ホーン1が薄肉部11Aに押し付けられると、薄肉部11Aが円滑に溶融して、スパイク部2bが円滑に第2部材12に突き刺さされ、薄肉部11Aと第2部材12とが速やかに超音波溶着される。このため、実施形態に係る製造方法では、発振器5の出力及びホーン1を第1部材11に押し当てる時間を低減することができ、第2部材12の下面に不具合が発生することを抑制することができる。また、実施形態に係る製造方法では、薄肉部11Aが円滑に溶融するため、溶着強度がでなくなってしまうことも抑制することができる。
実施形態に係る製造方法では、上述のように、超音波溶着時において発振器5の出力を低減することができるので、樹脂の溶け過ぎに起因するバリ発生を抑制することができる。また、実施形態に係る製造方法では、上述のように、超音波溶着時においてホーン1を第1部材11に押し当てる時間を低減することができるので、溶着サイクルを短縮することができる。
また、第1部材11が薄肉部11A(凹部11b1)を有するため、第1部材が部分的に薄くなった構成となっている。このため、実施形態に係る製造方法では、第1部材11の剛性低下を抑制することができる。また、固定部11bの全体が薄肉部である場合には、第1部材11の剛性低下だけでなく、第1部材11の成形時に反りが生じる可能性がある。実施形態に係る製造方法では、第1部材が部分的に薄くなった構成であり、第1部材11の成形時の反りを抑制することができる。
4.実施例及び比較例
4-1.圧縮量Dについて
圧縮量Dに応じて、構造体10に不具合等が発生するか、また、構造体10の溶着強度が十分に確保できているかを確認した。圧縮量Dは、0.6mm,1.0mm,1.3mm,1.5mmの4パターンで検証した。その他の条件は以下の通りである。
4-1.圧縮量Dについて
圧縮量Dに応じて、構造体10に不具合等が発生するか、また、構造体10の溶着強度が十分に確保できているかを確認した。圧縮量Dは、0.6mm,1.0mm,1.3mm,1.5mmの4パターンで検証した。その他の条件は以下の通りである。
超音波出力(発振器5の出力):25J
ホーン1の柱状部2a1の直径R1(mm):10mm
ホーン1のスパイク部2bの幅R2:2mm
ホーン1のスパイク部2bの高さ幅h:2mm
底面11b3の径r(mm):20mm
第1部材11の薄肉部11Aの厚みt2:1mm
第2部材12の厚みT1の厚みT1:3mm
ホーン1の柱状部2a1の直径R1(mm):10mm
ホーン1のスパイク部2bの幅R2:2mm
ホーン1のスパイク部2bの高さ幅h:2mm
底面11b3の径r(mm):20mm
第1部材11の薄肉部11Aの厚みt2:1mm
第2部材12の厚みT1の厚みT1:3mm
圧縮量Dが0.6mmの場合、1.0mmの場合,及び1.3mmの場合には、外観不良が見られなかった。一方で、圧縮量Dが1.5mmの場合には、10組の第1及び第2部材11,12に対して超音波溶着を実施したところ、8組は良品であったが、2組については第2部材12の光沢が潰れてしまい、外観不良が見られた。圧縮量Dが1.5mmであっても超音波溶着を実施可能であるが、圧縮量Dを大きくすることで外観不良が発生することをより効果的に抑制することができる。
圧縮量Dが1.0mmの場合及び1.3mmの場合について、第2部材12に溶着された第1部材11に対し、引っ張り試験(試験速度50mm/min)を実施した。使用した試験機は、TENSILON万能試験機である。試験の結果、いずれの場合も、第1部材11を第2部材12から剥離させるときの最大点荷重が200N以上であり、十分な溶着強度が確保されていることを確認した。
圧縮量Dが1.0mmの場合及び1.3mmの場合について、第2部材12に溶着された第1部材11に対し、引っ張り試験(試験速度50mm/min)を実施した。使用した試験機は、TENSILON万能試験機である。試験の結果、いずれの場合も、第1部材11を第2部材12から剥離させるときの最大点荷重が200N以上であり、十分な溶着強度が確保されていることを確認した。
4-2.スパイク部2bを備えないホーン
スパイク部2bを備えないホーンを用いて、第1及び第2部材11,12の超音波溶着を実施した場合に、適切な超音波溶着がなされるかについて確認した。なお、スパイク部2bを備えないホーンでは、その先端部分が、平坦な端面部2a2で構成される。スパイク部2bを備えないホーンで、10組の第1及び第2部材11,12に対して超音波溶着を実施したところ、全ての組の第1及び第2部材11,12において第2部材12が過加熱されて第2部材12の下面が溶融してしまい、第2部材12に外観不良が生じた。
スパイク部2bを備えないホーンを用いて、第1及び第2部材11,12の超音波溶着を実施した場合に、適切な超音波溶着がなされるかについて確認した。なお、スパイク部2bを備えないホーンでは、その先端部分が、平坦な端面部2a2で構成される。スパイク部2bを備えないホーンで、10組の第1及び第2部材11,12に対して超音波溶着を実施したところ、全ての組の第1及び第2部材11,12において第2部材12が過加熱されて第2部材12の下面が溶融してしまい、第2部材12に外観不良が生じた。
5.変形例
実施形態では、ホーン1が円錐状のスパイク部2bを備える形態であったがこれに限定されるものではない。図13A~図13Cに示すように、頂部2b2が直線状に延びるように形成されていてもよい。なお、本変形例では、3つのスパイク部2bが設けられている。
頂部2b2が延びる方向は、基部2aの軸方向に平行な方向に直交している。根元部2b1は、頂部2b2に平行に延びている。側面部2b3は、根元部2b1から頂部2b2にかけて平面状に形成されている。変形例に係るホーン1であっても、実施形態と同様の効果を得ることができる。
実施形態では、ホーン1が円錐状のスパイク部2bを備える形態であったがこれに限定されるものではない。図13A~図13Cに示すように、頂部2b2が直線状に延びるように形成されていてもよい。なお、本変形例では、3つのスパイク部2bが設けられている。
頂部2b2が延びる方向は、基部2aの軸方向に平行な方向に直交している。根元部2b1は、頂部2b2に平行に延びている。側面部2b3は、根元部2b1から頂部2b2にかけて平面状に形成されている。変形例に係るホーン1であっても、実施形態と同様の効果を得ることができる。
1:ホーン、1b:固定部、2:振動伝達部、2a:基部、2a1:柱状部、2a11:テーパー面、2a2:端面部、2b:スパイク部、2b1:根元部、2b2:頂部、2b3:側面部、3:連結部、4:振動子、5:発振器、6:ケーブル、7:加圧機構、8:配置台、9:保持部、10:構造体、11:第1部材、11A:薄肉部、11B:肉厚部、11C:凹状部、11a:本体部、11b:固定部、11b1:凹部、11b2:内面、11b3:底面、12:第2部材、21:発泡押出機、23:シリンダ、25:樹脂投入口、27:スクリュー、29:温度制御部、30:連結部、31:樹脂押出口、32:押出ヘッド、32a:スリット、32a:スリット、33:発泡パリソン、34:分割金型、36:発泡剤注入口、41:発泡成形機、42:押出機、42a:シリンダ、42b:スクリュー、42b1:中央部、42b2:フライト部、42b3:フライト表面、42c:ホッパー、42d:モーター、42e:吐出口、43:インジェクタ、44:原料樹脂、44a:ペレット、44b:ペレット、58:ヘッド、59:分割金型、63:発泡パリソン、65:連結管、100:超音波溶着装置、120:発泡成形装置、D:圧縮量、Sr:傾斜面、T1:厚み、T2:厚み、h:高さ幅、r:径、t1:厚み、t2:厚み、α:傾斜角度、θ:角度
Claims (13)
- 押出工程と成形工程とを備える発泡成形体の製造方法であって、
前記押出工程では、物理発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂を押出ヘッドのスリットから連続的に押し出すことによって発泡パリソンを形成し、
前記成形工程では、前記発泡パリソンを金型で成形し、
前記スリットの幅が、0.68~3.50mmであり、前記押出工程における前記発泡剤含有樹脂中の前記物理発泡剤のモル濃度が5~55mmol/kgである、方法。 - 請求項1に記載の方法であって、
前記スリットの幅が2.85mm以下である、方法。 - 請求項1に記載の方法であって、
前記物理発泡剤のモル流量が1.00~2.80mol/hである、方法。 - 請求項3に記載の方法であって、
前記物理発泡剤のモル流量が1.00~2.35mol/hである、方法。 - 請求項1~請求項4の何れか1つに記載の方法であって、
前記成形は、ブロー成形、真空成形又はこれらの組み合わせである、方法。 - 押出機を用いて、ポリプロピレン系樹脂と低密度ポリエチレンを含む原料樹脂を溶融混練する工程を備える発泡成形用樹脂の製造方法であって、
前記ポリプロピレン系樹脂と前記低密度ポリエチレンの合計に対する前記低密度ポリエチレンの含有量が20~50質量%であり、
前記押出機は、前記原料樹脂が投入されるシリンダと、前記シリンダ内に回転可能に配置されたスクリューを備え、
前記スクリューは、中央部と、フライト部を備え、前記中央部は、前記スクリューの回転軸に沿って延び、前記フライト部は、前記中央部から径方向外側に突出するように設けられ、前記フライト部は、前記スクリューの回転に伴って前記原料樹脂を前記スクリューの先端に向けて搬送可能な形状であり、
前記スクリューの、前記フライト部での直径をDとし、
前記フライト部の、前記シリンダの内面に対向するフライト表面の面積をSとすると、
S/Dは、800~1500である、方法。 - ポリプロピレン系樹脂と低密度ポリエチレンを含む原料樹脂が溶融混練されて構成される発泡成形用樹脂であって、
前記ポリプロピレン系樹脂と前記低密度ポリエチレンの合計に対する前記低密度ポリエチレンの含有量が20~50質量%であり、
前記発泡成形用樹脂は、メルトフローレイトが3.20~3.80g/10分であり、メルトテンションが35~90mNである、発泡成形用樹脂。 - 請求項6に記載の方法で製造した発泡成形用樹脂又は請求項7に記載の発泡成形用樹脂を用いて発泡パリソンを形成し、前記発泡パリソンを成形して発泡成形体を得る工程を備える、発泡成形体の製造方法。
- 請求項8に記載の方法であって、
前記成形は、ブロー成形又は真空成形である、方法。 - 超音波溶着工程を備える、構造体の製造方法であって、
前記構造体は、第1及び第2部材を備え、
第1部材は、中実の樹脂で構成された部材であり、
第2部材は、発泡樹脂で構成された部材であり、
前記超音波溶着工程では、ホーンを、第2部材に接触するように配置された第1部材に押し付けて、第1及び第2部材を超音波溶着し、
前記ホーンは、スパイク部と、基部とを有し、
前記スパイク部は、前記ホーンを第1部材に押し付ける方向において、先細るように形成され、且つ、前記基部の先端側に設けられている、方法。 - 請求項10に記載の方法であって、
第1部材は、薄肉部と肉厚部とを有し、
前記薄肉部は、前記肉厚部に接続され、且つ、前記肉厚部よりも厚みが薄く、
前記超音波溶着工程では、前記ホーンが前記薄肉部に押し付けられる、方法。 - 請求項11に記載の方法であって、
第1部材は、凹部を有し、
前記凹部は、底面と、内面とを有し、
前記底面は、前記薄肉部に形成され、
前記内面は、前記底面に立設するように形成され、且つ、前記内面には、傾斜面が形成され、
前記傾斜面は、前記肉厚部側から前記底面側にかけて傾斜している、方法。 - 請求項10~請求項12の何れか1つに記載の方法であって、
前記ホーンは、少なくとも3つ以上の前記スパイク部を有し、
前記スパイク部は、同心円上に位置するように配置されている、方法。
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