WO2023054209A1 - 硫化物系固体電解質及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、Li、P、S及びHaを含むアルジロダイト型の結晶相を含み、[Ha]/[P](原子比)が1.3以上であり、特定の条件で測定される35Cl-NMRスペクトルにおいて、0~30ppmに観測されるピークの面積強度Sと、-150~0ppmに観測されるピークの面積強度Sを用いたS/Sが3.5以上であるか、又は、-150~0ppmにはピークが観測され、0~30ppmにはピークが観測されない、リチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質に関する。

Description

硫化物系固体電解質及びその製造方法
 本発明はリチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質及びその製造方法に関する。
 リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器に広く用いられている。
 従来、リチウムイオン二次電池においては液体の電解質が使用されてきたが、液漏れや発火等が懸念され、安全設計のためにケースを大型化する必要があった。また、リチウムイオン二次電池は、電池寿命の短さ、動作温度範囲の狭さについても改善が望まれていた。
 これに対し、安全性の向上や高速充放電、ケースの小型化等が期待できる点から、固体電解質をリチウムイオン二次電池の電解質として用いる全固体型リチウムイオン二次電池が注目されている。
 固体電解質は、硫化物系固体電解質と酸化物系固体電解質とに大別される。硫化物系固体電解質を構成する硫化物イオンは、酸化物系固体電解質を構成する酸化物イオンに比べて分極率が大きく、高いリチウムイオン伝導性を示す。硫化物系固体電解質として、Li10GeP12等のLGPS型の結晶や、LiPSCl等のアルジロダイト型の結晶、Li11結晶化ガラス等のLPS結晶化ガラス等が知られている。
 アルジロダイト型の硫化物系固体電解質が開示されている例として、特許文献1が挙げられる。特許文献1に開示された硫化物系固体電解質は、立方晶で空間群F-43mに属する結晶構造を有し、組成式:Li7-xPS6-XHa(HaはCl若しくはBr)(x=0.2~1.8)で表される化合物を含有し、かつL表色系の明度L値が60.0以上である。これは、リチウムイオン伝導性を高め、電子伝導性を低くすることにより、充放電効率やサイクル特性を高めることを目的とする。
 アルジロダイト型の結晶構造において、4dサイトを占めるCl元素は、リチウムイオンの移動に伴うエネルギー障壁に関係し、リチウムイオンの隣接するサイトへのジャンプ頻度に影響する。つまり、高いリチウムイオン伝導率の実現に重要な因子である。非特許文献1には、アルジロダイト型の結晶構造の組成において、ハロゲン元素の割合を高くすることで、4dサイトを占めるハロゲン元素を増やす方法が開示されている。
国際公開第2015/012042号
Xuyong Feng et al.Energy Storage Materials 30(2020)67-73.
 しかしながら、ハロゲン元素の割合が高い組成を採用する以外に、アルジロダイト型の結晶構造において、4dサイトを占めるCl元素を増やす方法は知られていない。
 また、従来のアルジロダイト型の硫化物系固体電解質は、高いリチウムイオン伝導率を実現するために、300~600MPa程度の高圧で加圧成型体としたり、加熱しながら加圧してホットプレス成型体とする必要があった。しかしながら、上記方法で高いリチウムイオン伝導率を実現できても、実電池としての使用を想定すると、広い面積を高圧で加圧成型することは現実的ではない。
 上記を鑑みて、本発明は、アルジロダイト型の結晶相におけるハロゲン元素の元素比が従来ほど高くない場合であっても、低圧での加圧成型体で高いリチウムイオン伝導率を示す、リチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質及びその製造方法の提供を目的とする。
 本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、アルジロダイト型の結晶相が、35Cl-NMRスペクトルにおいて一定の条件を満たすことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、そのようなアルジロダイト型の結晶相を得るためのひとつの方法として、均質な中間体を経る製造方法を見出したものである。均質な中間体とは、原材料同士が反応したものであり、構造が例えば、アモルファスになったり、溶けて融液になったものを指す。
 すなわち、本発明は、下記[1]~[13]に関するものである。
[1] リチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質であって、Li、P、S及びHaを含むアルジロダイト型の結晶相を含み、前記Haは、少なくともClを含む、1種又は2種以上のハロゲン元素であり、前記Pの含有量[P]と前記Haの合計の含有量[Ha]とを用いて[Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比が1.3以上であり、下記条件で測定される35Cl-NMRスペクトルにおいて、0~30ppmに観測されるピークの面積強度Sと、-150~0ppmに観測されるピークの面積強度Sを用いてS/Sで表される面積強度の比が3.5以上であるか、又は、-150~0ppmにピークが観測され、0~30ppmにはピークが観測されない、硫化物系固体電解質。
(条件)LiClを外部標準として測定し、得られた35Cl-NMRスペクトルにおいて最も強度が高いケミカルシフトの位置を9.93ppmとして、プローブ:3.2mm固体用、測定条件:Single pulse法、パルス幅:2.45μs、観測中心:20ppm、観測幅:1000ppm、Relaxation delay:10sec、積算回数:1024、回転速度:15kHzの条件で35Cl-NMR測定を行い、35Cl-NMRスペクトルを得る。
[2] 前記Haは、Clを含む2種以上のハロゲン元素である、前記[1]に記載の硫化物系固体電解質。
[3] 前記Haは、Cl及びBrを含む2種以上のハロゲン元素である、前記[1]又は[2]に記載の硫化物系固体電解質。
[4] 前記Clの含有量[Cl]と前記Brの含有量[Br]とを用いて、[Cl]/[Br](原子比)で表される含有量の比が0.2~3.0である、前記[3]に記載の硫化物系固体電解質。
[5] 前記アルジロダイト型の結晶相は、LiPSHaで表した際に、a、b及びcで表される各元素比が、5≦a≦7、4≦b≦6かつ1.3≦c≦2の関係を満たす、前記[1]~[4]のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質。
[6] 前記アルジロダイト型の結晶相の結晶構造中にアニオンを含み、前記アニオンは、MとOとが結合したM-O結合を有する酸化物アニオンを含み、前記Mは周期表の第2~14族の金属元素及び半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である、前記[1]~[5]のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質。
[7] 前記Li、P、S、Ha、M及びOの元素の含有量の合計が90質量%以上である、前記[6]に記載の硫化物系固体電解質。
[8] リチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質の製造方法であって、Li、P、S及びHaを含む原材料を混合して原料混合物を得ること、前記原料混合物を加熱して均質な中間体化合物としての溶融物を得ること、及び前記溶融物を冷却し、アルジロダイト型の結晶を析出することを含み、前記Haは、少なくともClを含む、1種又は2種以上のハロゲン元素であり、アルジロダイト型の結晶相を含む、硫化物系固体電解質の製造方法。
[9] 前記加熱を、不活性雰囲気下、600~800℃、かつ5分以上の条件で行う、前記[8]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[10] リチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質の製造方法であって、Li、P、S及びHaを含む原材料を混合してアモルファスな中間体化合物を得ること、及び前記中間体化合物を加熱焼成してアルジロダイト型の結晶を析出することを含み、前記Haは、少なくともClを含む、1種又は2種以上のハロゲン元素であり、アルジロダイト型の結晶相を含む硫化物系固体電解質の製造方法。
[11] 前記中間体化合物は、Ramanスペクトルにおいて前記原材料に由来するピークが観察されない、前記[10]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[12] 前記混合を、ボールミルを用いたメカニカルミリング法を用いて、露点が-60℃以上の環境下、400rpm以上の回転数で12時間以上行う、前記[10]又は[11]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[13] 前記中間体化合物の粒子径が0.1~2μmである、前記[10]~[12]のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
 本発明に係る硫化物系固体電解質によれば、アルジロダイト型の結晶相におけるハロゲン元素の元素比が従来より低い場合であっても、低圧での加圧成型体で高いリチウムイオン伝導率の実現が可能である。そのため、リチウムイオン二次電池用の固体電解質として非常に有用であり、これにより、リチウムイオン二次電池の電池特性の向上が期待できる。
図1は、例9の硫化物系固体電解質の35Cl-NMRスペクトルであり、S/Sで表される面積強度の比の求め方を説明するための図である。 図2は、例1、例2、例5及び例9の硫化物系固体電解質の35Cl-NMRスペクトルである。
 以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
<硫化物系固体電解質>
 本実施形態に係る硫化物系固体電解質(以下、単に「固体電解質」と称することがある。)はリチウムイオン二次電池に用いられ、Li、P、S及びHaを含むアルジロダイト型の結晶相を含む。なお、Haは、少なくともClを含む、1種又は2種以上のハロゲン元素である。
(アルジロダイト型の結晶相)
 アルジロダイト型の結晶相において、Pの含有量[P]とHaの合計の含有量[Ha]とを用いて[Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比は1.3以上である。すなわち、アルジロダイト型の結晶相をLiPSHaで表した際に、cで表されるハロゲン元素の合計の元素比が1.3以上である。
 固体電解質は、下記条件で測定される35Cl-NMRスペクトルにおいて、0~30ppmと-150~0ppmとにピークが観測されるか、又は、-150~0ppmにはピークが観測されるが、0~30ppmにはピークが観測されない。
 0~30ppmと-150~0ppmとにピークが観測される場合、0~30ppmに観測されるピークの面積強度Sと、-150~0ppmに観測されるピークの面積強度Sを用いてS/Sで表される面積強度の比は3.5以上である。
 なお、-50~0ppmの範囲にシャープなピークが検出されることがあるが、これは、Sの一部として扱う。
(条件)
 LiClを外部標準として測定し、得られた35Cl-NMRスペクトルにおいて最も強度が高いケミカルシフトの位置を9.93ppmとして、プローブ:3.2mm固体用、測定条件:Single pulse法、パルス幅:2.45μs、観測中心:20ppm、観測幅:1000ppm、Relaxation delay:10sec、積算回数:1024、回転速度:15kHzの条件で35Cl-NMR測定を行い、35Cl-NMRスペクトルを得る。
 上記条件で測定された35Cl-NMRスペクトルに対し、ソフトウェア「ALICE2 FOR WINDOWS(登録商標) Ver.6」を使用して解析を行い、0~30ppmに観測されるピークの面積強度Sと、-150~0ppmに観測されるピークの面積強度Sを求める。
 面積強度Sと面積強度Sの算出方法として、図1に示した、例9の35Cl-NMRスペクトルを用いて説明する。
 図1において、0~30ppmの範囲を見ると、9.5ppm付近をピークトップとするピークA1が観測される。このピークA1のスピニングサイドバンドとして、228ppm付近をピークトップとするピークA2が、-208ppm付近をピークトップとするピークA3がそれぞれ観測される。
 ここで、ピークA1の面積強度を1とした際の、ピークA1、ピークA2及びピークA3の合計の面積強度を面積強度Sとする。なお、面積強度を求めるにあたり、ピークA1の積分範囲は0~20ppm、ピークA2の積分範囲は220~240ppm、ピークA3の積分範囲は-220~-200ppmとした。また、±450ppm付近にもピークA1に由来するスピニングサイドバンドが観測されるが、微弱なため、面積強度の計算には含めなかった。
 次いで、図1において、-150~0ppmの範囲を見ると、-60ppm付近をピークトップとするピークBが観測される。そこで-160~20ppmを積分範囲としてピークBの面積強度と求め、そこから、積分範囲が重複しているピークAの面積強度を引いた値をピークBの面積強度Sとする。
 上記により得られた面積強度Sと面積強度Sとから、S/Sで表される面積強度の比が求まる。
 上記に加え、本発明者らは、下記に示すように、第一原理計算からアルジロダイト型の結晶についての35Cl-NMRスペクトルを求めた。第一原理計算としては、密度汎関数法を用いた。
 ユニットセルとして、Li2218ClBrについて、4aサイトにClを一つ、Brを二つ、また、4dサイトにClを二つ、Brを一つ配置した初期構造を設定した。また、ユニットセルとして、Li2218Clについて、4aサイトにClを二つ、4dサイトにClを四つ配置した初期構造を設定した。そして、VASPを用いて構造最適化を行った後、NMR計算を実行した。
 この様にして第一原理計算から35Cl-NMRスペクトルを求めたところ、アルジロダイト型の結晶構造において、4aサイトのピークは、4dサイトのピークに比べて、より低磁場側、すなわちppmの値が高い側に位置することが分かった。
 これらの結果から、S/Sで表される面積強度の比が大きいと、4aサイトに位置するClが相対的に少なくなることを意味すると考えられる。これは、リチウム(Li)に囲まれた4dサイトの塩素(Cl)の割合が高くなることを意味する。
 4dサイトは、S2-かHaで表されるアニオンで構成されるが、S2-はHaよりも価数が高く、Liを拘束しやすい。その結果、リチウムイオン伝導率が低くなる。
 これに対し、本実施形態に係る硫化物系固体電解質では、より価数の低いClを含むHaが4dサイトを比較的多く占有することで、Liとの相互作用が下がってLiが動きやすくなる。その結果、リチウムイオン伝導率が高くなるものと考えている。
 上記に加え、第一原理計算を行った結果、4aサイトに位置するClが相対的に少ない方が、弾性率が低く見積もられることが分かった。これは、より弱い圧力で加圧成型した場合でも、界面の接触性が良好で界面抵抗が小さくなることを意味する。すなわち、本実施形態に係る硫化物系固体電解質は、50~100MPa程度の低圧による加圧成型体としても、高いリチウムイオン伝導率を実現できる。
 硫化物系固体電解質がHaとして、Cl以外のハロゲン元素を含む場合、そのハロゲン元素も、4aサイトに位置する量が相対的に少ない方が、弾性率が低くなり、低圧による加圧成型体としても高いリチウムイオン伝導率を実現できる。
 例えば、硫化物系固体電解質が、Cl以外のハロゲン元素としてBrを含む場合、79Br-NMRを測定すると、35Cl-NMRスペクトルと同じような考察が可能となるものと考えている。
 なお、本実施形態におけるアルジロダイト型の結晶相と、アルジロダイト型の結晶構造の組成においてハロゲン元素の割合を高くすることで、4dサイトを占めるハロゲン元素を増やすといった従来の方法について比較する。
 非特許文献1を参照すると、アルジロダイト型結晶の一般式は、Li6-xPS5-xCl1+xと表せ、従来は、ハロゲン元素の割合を高くすることで、結果的に4dサイトを占めるハロゲン元素の硫黄元素に対する割合を増やし、リチウムイオン伝導率を高めていた。ハロゲン元素の割合を高くするとは、ハロゲンの[Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比を大きくすることであり、つまりは、硫黄元素に対するハロゲン元素の割合を高くすることである。非特許文献1によると、ハロゲンの[Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比が大きくなるほど、S/Sで表される面積強度の比は小さくなる傾向にある。
 これに対し、本実施形態に係る硫化物系固体電解質は、[Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比を大きくした組成であっても、S/Sで表される面積強度の比を大きくでき、具体的には、面積強度の比が3.5以上を満たす。そして、上記面積強度の比が3.5以上であれば、[Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比が従来ほど大きくない場合であっても、低圧による加圧成型体でも高いリチウムイオン伝導率が実現される。
 このように、S/Sで表される面積強度の比は3.5以上であり、より高いリチウムイオン伝導率を得る観点から、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、30以上が特に好ましい。また、S/Sの上限は特に限定されず、高いほど好ましい。
 また、本実施形態に係る固体電解質は、35Cl-NMRスペクトルにおいて、-150~0ppmにピークが観測され、0~30ppmにはピークが観測されなくてもよい。これは、4aサイトに位置するClが0、すなわち存在しないことを意味し、S/Sで表される面積強度の比は無限大となることとなる。
 上記の35Cl-NMRスペクトルの特徴に加え、アルジロダイト型の結晶相において、Pの含有量[P]とHaの合計の含有量[Ha]とを用いて[Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比は1.3以上である。すなわち、アルジロダイト型の結晶相をLiPSHaで表した際に、cで表されるハロゲン元素の合計の元素比が1.3以上である。これにより、高いリチウムイオン伝導率を実現できる。
 [Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比は、1.3~2が好ましく、1.4~1.9がより好ましく、1.5~1.8がさらに好ましい。ここで、より高いリチウムイオン伝導率を得る観点から、[Ha]/[P](原子比)は1.4以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。一方、金属集電体の腐食を抑止する観点から、[Ha]/[P](原子比)は2以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下がさらに好ましい。
 アルジロダイト型の結晶相は同一組成の1種のみでも、異なる組成の2種以上が含まれていてもよい。異なる組成の2種以上が含まれている場合、少なくとも1種の組成が上記の35Cl-NMRスペクトルの特徴と[Ha]/[P](原子比)の特徴を備えていればよいが、他の組成もかかる特徴を備えることが好ましく、含まれるすべての組成がかかる特徴を備えることがより好ましい。
 アルジロダイト型の結晶相を構成する結晶構造は、X線粉末回折(XRD)パターンから解析できる。XRDパターンにおいて、2θ=15.7±0.5°及び30.2±0.5°の位置にピークを有することで、結晶がアルジロダイト型であると言える。XRDパターンは上記に加え、さらに2θ=18.0±0.5°の位置にもピークを有することが好ましく、さらに2θ=25.7±0.5°の位置にもピークを有することがより好ましい。
 アルジロダイト型の結晶相をLiPSHaで表した際のcの値については上記のとおりであるが、さらに、5≦a≦7、4≦b≦6かつ1.3≦c≦2の関係を満たすことが、結晶がアルジロダイト型となりやすいことから好ましい。かかる元素比は、5.1<a<6.3、4<b<5.3かつ1.4≦c≦1.9の関係を満たすことがより好ましく、5.2<a<6.2、4.1<b<5.2かつ1.5≦c≦1.8の関係を満たすことがさらに好ましい。
 すなわち、aについて、5以上が好ましく、5.1超がより好ましく、5.2超がさらに好ましく、また、7以下が好ましく、6.3未満がより好ましく、6.2未満がさらに好ましい。bについて、4以上が好ましく、4超がより好ましく、4.1超がさらに好ましく、また、6以下が好ましく、5.3未満がより好ましく、5.2未満がさらに好ましい。cについて、1.3以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、また、2以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下がさらに好ましい。
 アルジロダイト型の好ましい結晶構造は、例えばF-43m等の立方晶であるが、対称性が落ちた、六方晶、正方晶、直方晶、単斜晶等や、更に対称性が落ちた三斜晶等が存在してもよい。
 Haで表されるハロゲン元素は、少なくともClを含む、1種又は2種以上である。Clを含むことで、結晶がアルジロダイト型になりやすい。
 Cl以外のハロゲン元素としては、F、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
 ハロゲン元素はClの1種のみでもよいが、Clを含む2種以上であってもよく、その場合には、Cl及びBrを含む2種以上が好ましい。Brを含むことにより、固体電解質そのもののリチウムイオン伝導率を向上でき、また、弾性率の低下にも寄与することから、より低圧で加圧成型体とした際のリチウムイオン伝導率も向上する。
 ハロゲン元素がBrを含む場合、35Cl-NMRスペクトルにおけるS/Sで表される面積強度の比と同様に、79Br-NMRスペクトルにおける特定のピークの面積強度の比を用いて、4aサイトに位置するBrの相対的な少なさを表せる。
 先述した、第一原理計算から35Cl-NMRスペクトルを求める方法と同様の方法を用いて、第一原理計算から79Br-NMRスペクトルを求めた。その結果、アルジロダイト型の結晶構造において、4aサイトのピークは、4dサイトのピークに比べて、より低磁場側、すなわちppmの値が高い側に位置することが分かった。
(条件)
 KBrを外部標準として測定し、得られた79Br-NMRスペクトルにおいて最も強度が高いケミカルシフトの位置を54.5ppmとして、プローブ:3.2mm固体用、測定条件:Haln Echo法、パルス幅:1.4μs、観測中心:5.0ppm、観測幅:1MHz、Relaxation delay:0.3sec、積算回数:300000、回転速度:15kHzの条件で79Br-NMR測定を行い、79Br-NMRスペクトルを得る。
 上記条件で測定される79Br-NMRスペクトルにおいて、-400~400ppmに二つの重なったピークが観測されるが、観測されるピークの低磁場側ピークの面積強度SA2と、観測されるピークの高磁場側ピークの面積強度SB2を用いてSB2/SA2で表される面積強度の比が1以上であると、リチウム(Li)に囲まれた4dサイトの臭素(Br)の割合が高くなることを意味する。
 ハロゲン元素がCl及びBrを含む場合、アルジロダイト型の結晶相におけるClの含有量[Cl]と、Brの含有量[Br]とを用いて[Cl]/[Br](原子比)で表される含有量の比は、0.1~10が好ましく、0.2~3.0がより好ましく、0.3~1.6がさらに好ましく、0.5~0.8が特に好ましい。ここで、[Cl]/[Br](原子比)の下限について、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましく、0.5以上が特に好ましい。また、[Cl]/[Br](原子比)は10以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましく、0.8以下が特に好ましい。
 [Cl]/[Br](原子比)が上記範囲を満たすことで、リチウムイオンとハロゲン化物イオンとの相互作用が弱まり、固体電解質のリチウムイオン伝導率が良好となりやすい。これは、塩化物イオンよりもイオン半径の大きな臭化物イオンを混合することで、カチオンとアニオンとの間の相互作用を弱める混合アニオン効果の影響だと考えられる。また、[Cl]/[Br](原子比)が上記範囲を満たすことでリチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上しやすい。
 ハロゲン元素がCl及びBrを含む場合、アルジロダイト型の結晶相をLiPSClc1Brc2で表した際、[Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比は(c1+c2)で表される値と同じである。(c1+c2)は1.3以上であればよく、1.3~2が好ましく、1.4~1.9がより好ましく、1.5~1.8がさらに好ましい。ここで、上記のcの値と同様、高いリチウムイオン伝導率を得る観点から、(c1+c2)は1.4以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。一方、金属集電体腐食抑止の観点から、(c1+c2)は2以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下がさらに好ましい。
 LiPSClc1Brc2におけるc1で表される値は、Pの含有量[P]とClの含有量[Cl]とを用いて[Cl]/[P](原子比)で表される含有量の比と同じである。c1は0.1~1.9が好ましく、0.5~1.5がより好ましく、0.7~1.0がさらに好ましい。ここで、c1の下限については、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましい。また、c1は1.9以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましい。
 LiPSClc1Brc2におけるc2で表される値は、Pの含有量[P]とBrの含有量[Br]とを用いて[Br]/[P](原子比)で表される含有量の比と同じである。c2は0.1~1.9が好ましく、0.5~1.5がより好ましく、0.7~1.0がさらに好ましい。ここで、c2の下限については、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましい。また、c2は1.9以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましい。
 c1及びc2がそれぞれ上記範囲を満たすことで、結晶相の中のハロゲン化物イオンの存在割合をより最適なものとし、アニオンとリチウムイオンとの相互作用を低くしながら、より安定なアルジロダイト型の結晶相が得られる。その結果、リチウムイオン伝導率が良好となりやすい。また、c1及びc2がそれぞれ上記範囲を満たすことでリチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上しやすい。
 また、a、b及び(c1+c2)は、上述のa、b及びcとそれぞれ同様の関係を満たすことが好ましい。
 アルジロダイト型の結晶相の結晶子サイズは、固体電解質を細かく粉砕して電池化した際に良好なリチウムイオン伝導性を得る観点から、小さい方が好ましい。具体的には、結晶子サイズは1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、250nm以下がさらに好ましい。結晶子サイズの下限は特に限定されないが、通常5nm以上である。
 結晶子サイズは、XRDパターンのピークの半値幅とシェラーの式(Scherrer equation)を用いることにより算出できる。
 アルジロダイト型の結晶相の原材料については後に詳述するが、かかる原材料として硫化リチウム(LiS)を含む混合物が好適に用いられる。ここで、硫化リチウムは水酸化リチウム(LiOH)から製造されることが広く知られているが、水酸化リチウムは不純物としてNa、K、Mg及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(以降、「R」と称することもある。)を含み得る。Rを含む原材料を用いてアルジロダイト型の結晶相を製造すると、アルジロダイト型の結晶相にもRが含まれる場合がある。ここで、アルジロダイト型の結晶相におけるRの含有量を低減するには高純度の原材料を用いる必要があり、製造コストが上昇する懸念がある。
 しかしながら、アルジロダイト型の結晶相におけるRの含有比率が所定範囲であれば、固体電解質のリチウムイオン伝導率や耐熱性に影響はないか、影響があっても無視できるほど小さい。
 そのため、アルジロダイト型の結晶相はRで示されるNa、K、Mg及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
 Rを含むアルジロダイト型の結晶相をLia1a2PSHaで表した際、Rの含有量[R]とPの含有量[P]とを用いて、[R]/[P](原子比)で表される含有量の比は、a2で表される値と同じである。a2は、0.001~0.4が好ましく、0.01~0.3がより好ましく、0.02~0.2がさらに好ましい。ここで、製造コスト抑制の観点から、a2は0.001以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上がさらに好ましい。また、a2は、リチウムイオン伝導率の低下を抑制する観点から、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。アルジロダイト型の結晶相はRを含まなくてもよい。
 また、a1、b及びcはそれぞれ、上述のa、b及びcと同様の関係を満たすことが好ましい。ただしa1の値は、a2の値に応じて上述のaの好ましい数値範囲より小さい値であってもよい。その場合、(a1+a2)の値は、5≦(a1+a2)<7の関係を満たすことが好ましい。
 なお、RのうちMg及びCaは、後述する酸化物アニオンを構成するMとしても固体電解質中に含まれ得る。固体電解質がMg及びCaの少なくとも一方の元素を含む場合、これらの元素がMとして含まれているか、Rとして含まれているかはXRDパターンのリートベルト解析により、結晶構造を解析して判別できる。上記元素がRとして含まれる場合は、結晶構造中にMg、Caが存在し、且つ近傍にO2-が存在しない結果となる。ここで、近傍にO2-が存在しないとは、Mg、Caの第二近接元素以内にO2-が存在しないという意味である。
(酸化物アニオン)
 アルジロダイト型の結晶相の結晶構造中にアニオンが含まれるが、かかるアニオンは、MとOとが結合したM-O結合を有する酸化物アニオンを含むことが好ましい。これにより、固体電解質として、高いリチウムイオン伝導率を保った状態で、粒界抵抗を低減する熱処理をできる。なお、結晶構造中に含まれる酸化物アニオンは、1種のみでも、複数種を含んでいてもよい。
 Mとは、周期表の第2~14族の金属元素及び半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。
 第2~14族の金属元素とは、周期表の、第2~12族の元素、B以外の第13族の元素、及び、C、Si、Ge以外の第14族の元素である。
 第2~14族の半金属元素とは、周期表の第13及び14族の元素のうち、B、Si、及びGeである。
 中でも、Al、B、Ge、La、Ta、Nb、Ti、Si、Sn、V、Y及びZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことがより好ましい。
 なお、酸化物アニオン中のM-O結合の存在は、Raman分光法測定や核磁気共鳴(NMR)測定により確認できる。
 アルジロダイト型の結晶相の結晶構造中に酸化物アニオンを含む場合、固体電解質を構成する全成分に対して、アルジロダイト型の結晶相及び酸化物アニオンを構成する元素の含有量の合計は、高いリチウムイオン伝導率を実現する観点から90質量%以上が好ましく、92質量%以上がより好ましく、94質量%以上がさらに好ましい。また、含有量の合計の上限は特に限定されず、100質量%でもよい。結晶相にはアルジロダイト型の結晶の他、アモルファスも含み得る。また、Li、P、S及びHaの少なくとも一種からなるアルジロダイト型の別の結晶相を含んでいてもよい。
 上記含有量の合計とは、例えばLi、P、S、Ha、M及びOの元素の含有量の合計であり、アルジロダイト型の結晶がRを含む場合はRの含有量も含めた合計である。なお、本明細書においてHaの含有量とは、F、Cl、Br、及びIの含有量の合計である。
 各元素の含有量やそれらの合計は、ICP発光分析、原子吸光法、イオンクロマトグラフ法などを用いた組成分析により求められる。
 固体電解質のうち、アルジロダイト型の結晶相の割合は、高いリチウムイオン伝導率を実現する観点から、50質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。また、アルジロダイト型の結晶相の割合の上限は特に限定されず、100質量%でもよいが、一般的には99質量%以下となる。アルジロダイト型の結晶相の割合は、内部標準物質を含有させて、XRDや中性子線散乱により測定後、内部標準物質とのピーク強度を比較することにより算出できる。
 アルジロダイト型の結晶相及び酸化物アニオン以外に固体電解質に含まれていてもよいものとして、LiPS、Li、LiS、LiHa(HaはF、Cl、Br、及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲン元素)等が挙げられる。
 本実施形態に係る硫化物系固体電解質は、低圧により加圧成型体とした場合でも高いリチウムイオン伝導率を実現するが、低圧とは、例えば50~100MPaの範囲である。低圧による加圧成型体でのリチウムイオン伝導率の指標として、例えば80MPaで加圧成型体とした際の25℃におけるリチウムイオン伝導率は2mS/cm以上が好ましく、3mS/cm以上がより好ましく、4mS/cm以上がさらに好ましく、高いほど好ましい。
 上記範囲のリチウムイオン伝導率を実現するにあたり、固体電解質となる粒子同士の界面抵抗、すなわち粒界抵抗を低減する観点から、硫化物系固体電解質の弾性率は、40GPa以下が好ましく、30GPa以下がより好ましく、20GPa以下がさらに好ましい。なお、硫化物系固体電解質の弾性率は、圧粉体をナノインデンターで測定したり、粉体を固定して原子間力顕微鏡(AFM)で測定することにより求められる。
<硫化物系固体電解質の製造方法>
 本実施形態に係るリチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質の製造方法は、アルジロダイト型の結晶相を得る前の中間体化合物が均質な化合物であることが重要である。均質な化合物とは、単に複数の原材料の混合物ではなく、原材料同士が反応したものであり、構造が例えば、アモルファスになったり、溶けて融液になったものを指す。
 アモルファスにするためには、例えば、原材料をミキサーミル、ピンミルの様なメディアレス粉砕機で混合した上で、遊星ボールミル、ビーズミル、アトライタ(登録商標)の様なメディア粉砕機で機械的に混合しメカノケミカル反応を起こす方法が挙げられる。従来知られているメカノケミカル反応をより促進するために、加湿雰囲気下でメカノケミカル反応を行うことがより好ましい。これによりアモルファスな均質な中間体が得られる。
 アモルファスにするための上記混合における加湿雰囲気下としての具体的な環境は、露点が-60~-30℃が好ましく、-50~-30℃がより好ましい。ここで、露点の下限については、-60℃以上が好ましく、-50℃以上がより好ましい。また、合成中に硫化物と水が反応して硫化水素が多量に発生することを防ぐ観点からは、露点が-30℃以下の環境下が好ましい。なお、ここでの露点とは、設備全体の露点を意味する。
 融液とするためには、原材料をミキサーミル、ピンミルの様なもので混合した上で溶解を行う方法が挙げられる。これにより溶けた状態である融液を均質な化合物である中間体化合物とできる。また、原材料を有機溶媒等で一度溶解した状態でもよい。
 本実施形態に係る硫化物系固体電解質の製造方法は、このような均質な中間体化合物を経てアルジロダイト型の結晶相が得られれば特に限定されないが、例えば、下記の製造方法i、製造方法iiの2つの方法が挙げられる。
(製造方法i)
工程i-1:Li、P、S及びHaを含む原材料を混合して原料混合物を得る工程、
工程i-2:上記原料混合物を加熱して均質な中間体化合物としての溶融物を得る工程、及び
工程i-3:上記溶融物を冷却し、アルジロダイト型の結晶を析出する工程、
を含み、上記Haは、少なくともClを含む、1種又は2種以上のハロゲン元素である。
(製造方法ii)
工程ii-1:Li、P、S及びHaを含む原材料を混合してアモルファスな中間体化合物を得る工程、及び
工程ii-2:上記中間体化合物を加熱焼成してアルジロダイト型の結晶を析出する工程、を含み、上記Haは、少なくともClを含む、1種又は2種以上のハロゲン元素であり、上記工程ii-1で得られる中間体化合物は、粉末X線回折測定において上記原材料に由来するピークが観測されない、アモルファスな中間体化合物である。
 まず、製造方法iについて説明する。
 工程i-1は、Li、P、S及びHaを含む原材料を混合して原料混合物を得る工程である。
 Li、P、S及びHaを含む原材料とは、Li、P、S及びHaを含むアルジロダイト型の結晶を得る材料として従来公知の物を使用できる。例えば、Li(リチウム)を含有する化合物と、P(リン)を含有する化合物と、S(硫黄)を含有する化合物と、Ha(ハロゲン)を含有する化合物との混合物が挙げられる。
 Liを含有する化合物としては、例えば、硫化リチウム(LiS)、酸化リチウム(LiO)、炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム(LiOH)、硫酸リチウム(LiSO)等のリチウム化合物やリチウム金属単体等が挙げられる。
 Pを含有する化合物としては、例えば、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、リン酸リチウム(LiPO、Li、LiPO)、リン酸ナトリウム(NaPO、Na、NaPO)等のリン化合物やリン単体等が挙げられる。
 Sを含有する化合物としては、上記硫化リチウム(LiS)や上記硫化リン(P、P)や硫化水素(HS)等が挙げられ、硫黄単体も使用できる。
 Haを含有する化合物のうち、Cl(塩素)を含有する化合物としては、例えば、塩化リチウム(LiCl)、三塩化リン(PCl)、五塩化リン(PCl)、四塩化二リン(PCl)、塩化ホスホリル(POCl)、二塩化硫黄(SCl)、二塩化二硫黄(SCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、三塩化ホウ素(BCl)等が挙げられる。
 Haを含有する化合物のうち、Br(臭素)を含有する化合物としては、例えば、臭化リチウム(LiBr)、三臭化リン(PBr)、塩化ホスホリル(POBr)、二臭化二硫黄(SBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、三臭化ホウ素(BBr)等が挙げられる。
 中でも、硫化リチウムと、硫化リンと、塩化リチウム及び臭化リチウムの少なくとも一方と、の組み合わせが好ましい。
 これら原材料は大気中で非常に不安定で、水と反応して分解し、硫化水素ガスの発生や酸化のおそれがある。そのため、不活性雰囲気中で混合することが好ましい。
 原材料の混合は、例えば、ミキサーミル、ピンミルや粉体撹拌機、気流混合の様なメディアレス混合等により行える。原材料は工程i-2の前の混合により、一部が非晶質化してもよい。
 工程i-2は、得られた原料混合物を加熱して中間体化合物としての溶融物を得る工程である。
 溶融状態かどうかの確認は、高温X線回折測定において、原材料に由来するピークが観測されないことを意味する。Li-P-S-Ha組成の場合、融液はよく混ざり合うが、これは、原材料とは異なる均質の化合物の溶融物であることを意味する。また、溶融状態かどうかの簡易的な確認方法としては、炉内原料の様子を観察することでも確認できる。未融物が見られなければ、完全に溶解しており、均質な中間体化合物といってよい。
 均質な中間体化合物を経ることで、35Cl-NMRスペクトルにおいて、S/Sで表される面積強度の比が3.5以上であるか、又は、-150~0ppmにピークが観測され、0~30ppmにはピークが観測されない硫化物系固体電解質が得られるようになる。
 高温X線回折測定は、溶融物を得る加熱条件と同じ条件となるように、測定温度、保持時間、雰囲気等を設定した上で、測定を行う。
 また、測定温度を変化させながら高温X線回折測定を行うことで、相転移等の結晶状態の変化を追い、中間体化合物が得られるようになる加熱温度の見当を付けることが可能となる。
 溶融物を得るための加熱条件は、用いる原材料や原料混合物の組成によって異なる。
 加熱温度は、上記のような均質なアモルファスな中間体化合物が得られるようになる加熱温度以上であればよく、例えば、550~950℃が好ましく、600~900℃がより好ましく、600~850℃がさらに好ましく、650~800℃が特に好ましい。ここで、加熱温度の下限は、550℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、650℃以上がさらに好ましい。また、加熱温度は、成分の揮散による組成ズレ抑制の観点から、950℃以下が好ましく、900℃以下がより好ましく、850℃以下がさらに好ましく、800℃以下が特に好ましい。また、上記温度範囲で、段階的に温度を変化させてもよい。また、[Ha]/[P](原子比)で表されるハロゲン含有量が多い組成ほど、加熱温度を低くできる。
 加熱時間も、上記のような均質なアモルファスな中間体化合物が得られるようになる時間以上であればよく、スケールによっても異なるが、例えば、2~360分が好ましく、5~180分がより好ましく、10~120分がさらに好ましい。ここで、加熱時間の下限は、2分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上がさらに好ましい。また、加熱時間は、生産性の観点から、360分以下が好ましく、180分以下がより好ましく、120分以下がさらに好ましい。
 加熱溶融時に、撹拌することで、アモルファスな中間体化合物となる溶融物をより均質にできる。また、工程i-1での混合がより均質に近い程、続く工程ii-2の加熱時間を短くできる。
 上述したように、原材料は不活性雰囲気中で混合することが好ましく、溶融物も、そのまま不活性雰囲気下での加熱により得ることが好ましい。不活性雰囲気とは、例えばAr雰囲気、窒素雰囲気等が挙げられるが、生産費用の観点から、窒素雰囲気がより好ましい。また、真空封管した状態で加熱してもよい。
 アルジロダイト型の結晶相におけるHaがClに加えてBrを含む場合、BrはClに比べてイオン半径が大きいために、結晶構造中に入りにくい。そのため、溶融物を得るための加熱条件を、上記の加熱温度の範囲より高めにする、加熱時間を長めにする、又はその両方を行う等により調整することで、均質な中間体化合物を得やすくなる。
 しかしながら、溶融物が中間体化合物である製造方法iにおいては、中間体化合物の流動性が高いことから、そもそも非常に均質となりやすい。そのため、イオン半径の大きいBrも結晶構造中に入りやすく、さらには、4dサイトに入りやすくなるため、上記のような調整は必ずしも必要でない。
 アモルファスな中間体化合物は、高温X線回折測定において、原材料に由来するピークが観測されなければよいが、均質性の観点から、融液が分相していない均質な融液であることが好ましい。Li-P-S-Ha組成の場合、融液は分相せずによく混ざり合うが、分相の有無に関しては、目視か光学的に光が散乱せずに透過するか等で確認できる。
 工程i-3は、均質な中間体化合物である溶融物を冷却し、アルジロダイト型の結晶を析出する工程である。なお、上述の通り、固体電解質のリチウムイオン伝導率や弾性率への影響がない範囲であれば、アルジロダイト型の結晶中には原材料等に由来するR等の不純物が含まれていてもよい。
 結晶を析出するための冷却条件は、組成や目標とする結晶化率によって異なる。
 冷却速度は、アルジロダイト型の結晶が析出すれば特に限定されないが、5~2000℃/分が好ましく、10~1000℃/分がより好ましく、30~300℃/分がさらに好ましい。ここで、生産性の観点から、冷却速度は5℃/分以上が好ましく、10℃/分以上がより好ましく、30℃/分以上がさらに好ましい。また、結晶化率を高める観点から、冷却速度は2000℃/分以下が好ましく、1000℃/分以下がより好ましく、300℃/分以下がさらに好ましい。
 冷却時に、200~450℃の滞在時間を延ばし、結晶成長あるいは結晶構造の再構成を実施すると、リチウムイオン伝導率が向上する観点からより好ましい。
 冷却時の雰囲気は、原材料の混合や溶融物を得るための加熱時と同様、不活性雰囲気中で行うことが好ましい。また、溶融物を得る加熱を真空封管した状態で行う場合には、冷却も、そのまま真空封管された状態で行ってもよい。
 このように、本実施形態に係る製造方法iを採用することで、35Cl-NMRスペクトルにおいて、S/Sで表される面積強度の比を3.5以上とするか、又は、-150~0ppmにピークが観測され、0~30ppmにはピークが観測されない固体電解質を得られる。その結果、ハロゲン元素の元素比を従来のように高めなくとも、低圧による加圧成型体での高いリチウムイオン伝導率を実現できる。
 なお、得られる固体電解質の好ましい態様は、上記<硫化物系固体電解質>に記載された好ましい態様と同様である。
 次に製造方法iiについて説明する。
 工程ii-1は、Li、P、S及びHaを含む原材料を混合してアモルファスな中間体化合物を得る工程である。
 Li、P、S及びHaを含む原材料は、製造方法iの工程i-1にて記載したものと同様のものを同様の条件で使用できる。
 これら原材料の混合において、従来よりも非常に厳しい条件を採用することで、アモルファスな中間体化合物が得られるようになる。
 アモルファス(非晶質)な中間体化合物とは、X線回折測定において、原材料に由来するピークが観測されないことを意味するが、これは、原材料とは異なる均質の化合物であることを意味する。アモルファスな中間体化合物を経ることで、35Cl-NMRスペクトルにおいて、S/Sで表される面積強度の比が3.5以上であるか、又は、-150~0ppmにピークが観測され、0~30ppmにはピークが観測されない硫化物系固体電解質が得られるようになる。
 原材料の混合に、例えば、ボールミルを用いたメカニカルミリング法を用いる場合、容器に自転運動を与える回転ボールミル、振動運動を与える振動ボールミル、公転と自転運動を与える遊星ボールミル、ビーズミル、アトライタ(登録商標)等が挙げられ、いずれも、アモルファスな中間体化合物が得られる条件を採用すれば適用できる。中でも、より混合力や粉砕力の高い遊星ボールミルやアトライタ(登録商標)、ビーズミルが好ましい。
 ボールミルを用いたメカニカルミリング法の場合、回転数が高いほど、混合時間が長いほど、また、ボールの粒径が小さいほど、混合力及び粉砕力が高くなる。
 回転数は、用いるボールミルの種類や他の条件によっても異なるが、200~1000rpmが好ましく、300~800rpmがより好ましく、400~800rpmがさらに好ましい。ここで、回転数の下限は、200rpm以上が好ましく、300rpm以上がより好ましく、400rpm以上がさらに好ましい。回転数の上限は特に限定されないが、機械強度の観点から1000rpm以下が好ましく、800rpm以下がより好ましい。ビーズミルの様に回転数を周速で定義する場合、周速は8m/秒以上が好ましく、10m/秒以上がさらに好ましい。周速の上限は特に限定されないが、現実的な観点から20m/秒以下である。
 また、初めは低回転数で一定時間混合し、次いで高回転数に上げて一定時間混合するなど、複数の回転数を組み合わせてもよい。
 混合時間は、用いるボールミルの種類や他の条件によっても異なるが、遊星ボールミルの場合、5~300時間が好ましく、8~300時間がより好ましく、12~150時間がさらに好ましい。ここで、混合時間の下限は、5時間以上が好ましく、8時間以上がより好ましく、12時間以上がさらに好ましい。混合時間の上限は特に限定されないが、生産性の観点から300時間以下が好ましく、150時間以下がより好ましい。
 ビーズミルの様に循環式で処理できる方式の場合は、パス数は20~500パスが好ましく、50~500パスがより好ましく、100~300パスがさらに好ましい。ここで、パス数の下限は、20パス以上が好ましく、50パス以上がより好ましく、100パス以上がさらに好ましい。また、生産性の観点から、パス数は500パス以下が好ましく、300パス以下がより好ましい。
 ボールの粒径は、用いるボールミルの種類や他の条件によっても異なるが、0.1~5mmが好ましく、0.1~4mmがより好ましく、0.3~1mmがさらに好ましい。ここで、ボールの粒径の上限は、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。ボールの粒径の下限は、取り扱いの観点から0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。また、粒径の異なる2種以上のボールを合わせて用いてもよい。
 用いるボールの量は、用いるボールミルの種類や他の条件によっても異なるが、混合力や粉砕力の観点から、原材料の合計の重量に対して、100%以上の重さが好ましく、200%以上がより好ましく、500%以上がさらに好ましく、また、1000%以下が好ましい。
 ボールミルは乾式混合でも、分散媒を用いた湿式混合でもよいが、エネルギーを効率良く伝える観点から、乾式混合が好ましい。
 先述したように、メカノケミカル反応をより促進する観点から、混合時の設備全体における露点は、-60℃以上が好ましく、-50℃以上がより好ましい。また、合成中に硫化物と水が反応して硫化水素が多量に発生することを防ぐ観点からは、露点は-30℃以下が好ましい。
 なお、製造方法ii-1において、混合前の原材料を取り扱う際や、アモルファスな中間体化合物を得た後の露点は、-50℃以下や、-60℃未満でもよいが、生産性の観点からは、上記混合の雰囲気と同じ露点であることが好ましい。また、雰囲気は、窒素、アルゴンなどの不活性雰囲気が好ましいが、酸素が5%以下ならば入っていてもよい。
 上記のような混合により、原材料が混合されるのみならず、混合粉末の非晶質化がなされ、均質なアモルファスな中間体化合物が得られる。
 先述したように、得られるアモルファスな中間体化合物は、原材料に由来するXRDピークが観測されないことを意味するが、Ramanスペクトルにおいて、原材料に由来する位置のピークが完全に消失して観察されず、それとは別の位置にピークが出ていることを確認できると、より、均質なアモルファスな中間体化合物が得られたと判断できる。
 中間体化合物の粒子径は30nm~5μmが好ましく、0.1~3μmがより好ましく、0.1~2μmがさらに好ましい。得られたアモルファスな中間体化合物の検証に用いる粉末X線回折測定は、試料である粉末の粒子径が非常に小さいと、結晶であってもピークが観測されない場合がある。そのため、粒子径が非常に小さい原材料の混合物と、アモルファスな中間体化合物とを区別するといった観点からは、中間体化合物の粒子径は30nm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。一方、粉体の表面積を大きくし、続く反応を効率的に進める観点から、中間体化合物の粒子径は5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。
 なお、本明細書における中間体化合物の粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により得られるSEM像より求まる一次粒子径である。具体的には、大気非曝露のSEM測定を行い、倍率2000倍、加速電圧2kVで観察し、適当な視野内に映る粒子20個の粒子径を測定し、その平均の値を粒子径とする。
 工程ii-2は、工程ii-1で得られたアモルファスな中間体化合物を加熱焼成してアルジロダイト型の結晶を析出する工程である。なお、上述の通り、固体電解質のリチウムイオン伝導率や弾性率への影響がない範囲であれば、アルジロダイト型の結晶中には原材料等に由来するR等の不純物が含まれていてもよい。
 加熱は、例えば、不活性ガス雰囲気の下や、硫化水素ガス雰囲気の下、硫黄ガスの雰囲気の下、真空封管の下で行うことが好ましい。
 加熱温度は、350℃以上600℃未満が好ましく、400℃以上600℃未満がより好ましく、450~575℃がさらに好ましい。ここで、固相反応、すなわち結晶化を促進する観点から、加熱温度は350℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましく、450℃以上がさらに好ましい。また、熱分解を抑制する観点から、加熱温度は600℃未満が好ましく、575℃以下がより好ましい。
 同様の観点から、加熱時間は1~100時間が好ましく、2~50時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。ここで、加熱時間の下限について、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましく、4時間以上がさらに好ましい。また、加熱時間は100時間以下が好ましく、50時間以下がより好ましく、24時間以下がさらに好ましい。
 このように、本実施形態に係る製造方法iiを採用することで、35Cl-NMRスペクトルにおいて、S/Sで表される面積強度の比を3.5以上とするか、又は、-150~0ppmにピークが観測され、0~30ppmにはピークが観測されない固体電解質を得られる。その結果、ハロゲン元素の元素比を従来のように高めなくとも、低圧による加圧成型体での高いリチウムイオン伝導率を実現できる。
 なお、得られる固体電解質の好ましい態様は、上記<硫化物系固体電解質>に記載された好ましい態様と同様である。
<リチウムイオン二次電池>
 本実施形態に係る硫化物系固体電解質は、リチウムイオン二次電池に用いられる。
 リチウムイオン二次電池に用いられるにあたり、硫化物系固体電解質は、必要に応じてバインダー等の他の成分とともに固体電解質層を形成する。バインダーや他の成分は、従来公知の物が用いられる。
 固体電解質層全体に対して、固体電解質の含有量は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
 固体電解質層の形成方法も従来公知の方法が用いられる。例えば、固体電解質層を構成する成分を分散媒に分散あるいは溶媒に溶解させてスラリーとし、層状(シート状)に塗工し、乾燥させ、任意にプレスすることで固体電解質層を形成できる。必要に応じて、熱をかけて脱バインダー処理を行ってもよい。当該スラリーの塗工量等を調整することで、固体電解質層の厚みを容易に調整できる。
 また、湿式による成型ではなく、固体電解質粉末等を、正極又は負極等の表面上において乾式でプレス成型することで固体電解質層を形成してもよい。その他に、他の基材上に固体電解質層を形成し、これを、正極又は負極等の表面上に転写してもよい。
 本実施形態に係る固体電解質は、弾性率が低く、低圧による加圧成型体でも高いリチウムイオン伝導率を実現できる。そのため、上記のようにプレス成型する際には、従来より低い圧力として、50~100MPa程度の値を採用できる。50MPaよりもさらに低い圧力を採用してもよい。
 固体電解質は、正極活物質又は負極活物質と混合して、正極層又は負極層として用いてもよい。正極層又は負極層に用いられる正極活物質又は負極活物質、集電体、バインダー、導電助剤等は、従来公知の物が用いられる。
 固体電解質が用いられるリチウムイオン二次電池は、上記固体電解質層と、正極層と、負極層とを含む。
 リチウムイオン二次電池の外装体の材料も、従来公知の物を使用できる。リチウムイオン二次電池の形状も従来公知の物を使用できるが、例えば、コイン型、シート状(フィルム状)、折り畳み状、巻回型有底円筒型、ボタン型等が挙げられ、用途に応じて適宜選択できる。
 以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
 例1~例4、例7及び例8は実施例であり、例5、例6、例9及び例10は比較例である。
[例1]
 ドライ窒素雰囲気下で、表1に記載の組成比となるように、硫化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.98%)、五硫化二リン粉末(Sigma社製、純度99%)、及び塩化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.99%)を秤量し、同雰囲気中、ミキサー(WARING社製、X-TREME(MX1100XTM))でHighモードにて1分間混合することで原料混合物を得た(工程i-1)。得られた原料混合物を、石英管に真空封入して封管し、700℃で25分間加熱して溶融物を得た(工程i-2)。溶融物を封管させたまま、300℃/分の速度で室温まで冷却し、アルジロダイト型の結晶を析出することで、アルジロダイト型の結晶相を含む硫化物系固体電解質を得た(工程i-3)。
 また、溶融物と同じ条件、すなわち原料混合物を700℃で25分保持した際の炉内原料の様子を観察したところ、未融物は確認されなかった。これより、溶融物は均質な中間体化合物であることを確認した。
[例2、例5]
 組成比と工程i-2における加熱時間を表1に記載のものへと変更した以外は例1と同様にして、例2、例5のアルジロダイト型の結晶相を含む硫化物系固体電解質をそれぞれ得た。
 また、例1と同様に、溶融物と同じ条件、すなわち原料混合物を700℃で60分又は1分保持した際の炉内原料の様子を観察したところ、例2では未融物が確認されず、例5では一部未融物の様なものが見られた。これより、例2の溶融物は均質な中間体化合物であることを確認した。また、例5の条件は、溶融物がまだ完全に均質な中間体化合物にはならない条件なのだと考えられる。
[例3、例4]
 組成比と工程i-2における加熱時間を表1に記載のものへと変更した以外は例1と同様にして、例3、例4のアルジロダイト型の結晶相を含む硫化物系固体電解質をそれぞれ得た。なお、原材料として、例1と同じ硫化リチウム粉末、五硫化二リン粉末、及び塩化リチウム粉末に加えて、臭化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.995%)を用いた。
 また、例1と同様に、溶融物と同じ条件、すなわち原料混合物を700℃で60分保持した際の炉内原料の様子を観察したところ、未融物は確認されなかった。これより、例3、例4の溶融物は共に、均質な中間体化合物であることを確認した。
[例6]
 ドライ窒素雰囲気下で、表1に記載の組成比となるように、硫化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.98%)、五硫化二リン粉末(Sigma社製、純度99%)、及び塩化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.99%)を秤量し、同雰囲気中、乳鉢で混合することで原料混合物を得た(工程i-1)。得られた原料混合物を、石英管に真空封入して封管し、700℃で1分間加熱して溶融物を得た(工程i-2)。溶融物を封管させたまま、300℃/分の速度で室温まで冷却し、アルジロダイト型の結晶を析出することで、アルジロダイト型の結晶相を含む硫化物系固体電解質を得た(工程i-3)。
 また、例1と同様に、溶融物と同じ条件、すなわち原料混合物を700℃で1分保持した際の炉内原料の様子を確認したところ、一部未融物の様なものが見られた。これより、例6の条件は、溶融物が完全に均質な中間体化合物にはならない条件なのだと考えられる。
[例7]
 露点-60℃のドライ窒素雰囲気下で、表1に記載の組成比となるように、硫化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.98%)、五硫化二リン粉末(Sigma社製、純度99%)、及び塩化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.99%)を秤量してミキサーで1分間混合した後、遊星ボールミル(伊藤製作所製、LP-M2)を用いてさらに混合し、中間体化合物を得た(工程ii-1)。遊星ボールミルによる混合は、表1に記載のとおり、粒径4mmのボールを用いて、400rpmで50時間行った。得られた中間体化合物を、石英管に真空封入して封管し、450℃で5時間加熱焼成することで、アルジロダイト型の結晶を析出し、アルジロダイト型の結晶相を含む硫化物系固体電解質を得た(工程ii-2)。
 加熱焼成前の中間体化合物の粒子径としてSEM像から一次粒子径を確認したところ、0.9μmであった。また、粉末X線回折測定(リガク社製、SmartLab)により、原材料である硫化リチウム、五硫化二リン、及び塩化リチウムのいずれのピークも観測されず、アモルファス由来のハローパターンが得られた。これより、中間体化合物は均質なアモルファスの中間体化合物であることを確認した。
 なお、X線回折測定の測定条件は下記のとおりである。
 線源:CuKα線(λ=1.5418Å)、管球電圧:45kV、管球電流:200mA、走査角度:10~100°、走査速度:5°/分、ステップ数:0.01°/ステップ。
[例8]
 組成比を表1に記載のものへと変更し、設備全体の露点を-50℃とし、かかる雰囲気下で原材料の調合、遊星ボールミルによる混合及び石英管への真空封入を行った以外は例7と同様にして、アルジロダイト型の結晶相を含む硫化物系固体電解質を得た。なお、原材料として、例7と同じ硫化リチウム粉末、五硫化二リン粉末、及び塩化リチウム粉末に加えて、臭化リチウム粉末(Sigma社製、純度99.995%)を用いた。
 加熱焼成前の中間体化合物の一次粒子径は0.9μmであった。また例7と同様に、粉末X線回折測定により、原材料である硫化リチウム、五硫化二リン、塩化リチウム、及び臭化リチウムのいずれのピークも観測されず、アモルファス由来のハローパターンが得られた。これより、中間体化合物は均質なアモルファスの中間体化合物であることを確認した。
[例9、例10]
 例9においては工程ii-1における遊星ボールミルによる混合の条件を、例10においては組成比及び工程ii-1における遊星ボールミルによる混合の条件を、それぞれ変更した以外は、例7と同様にしてアルジロダイト型の結晶相を含む硫化物系固体電解質を得た。例9、例10の混合の条件は、表1に記載のとおり、粒径10mmのボールを用いて、400rpmで4時間行った。
 加熱焼成前の中間体化合物の一次粒子径は7.3μmであり、粉末X線回折測定により、原材料である硫化リチウム、五硫化二リン、及び塩化リチウムのピークが観測された。これより、中間体化合物は均質なアモルファスの中間体化合物ではないことを確認した。
[評価]
35Cl-NMR)
 得られた硫化物系固体電解質を、簡易グローブボックス内で直径3.2mmのZrOサンプル管に詰め、核磁気共鳴装置(JEOL社製 ECZ700)を用いて35Cl-NMRスペクトルを得た。
 測定条件は下記のとおりである。
 核種:35Cl
 プローブ:3.2mm固体用
 測定条件:Single pulse法
 パルス幅:2.45μs
 観測中心:20ppm
 観測幅:1000ppm
 Relaxation delay:10sec
 積算回数:1024
 回転速度:15kHz
 外部標準:LiClの35Cl-NMRスペクトルにおいて最も強度が高いケミカルシフトの位置を9.93ppmとする。
 測定された35Cl-NMRスペクトルにおいて、0~30ppmに観測されるピークの面積強度Sと、-150~0ppmに観測されるピークの面積強度Sを用いてS/Sで表される面積強度の比を求めた。
 具体的には、0~30ppmの範囲にピークトップを有するピークA1について、0~20ppmを積分範囲として面積を求めた。さらに、ピークAのスピニングサイドバンドとして、228ppm付近をピークトップとするピークA2と-208ppm付近をピークトップとするピークA3についても、それぞれ、220~240ppm、-220~-200ppmを積分範囲として面積を求めた。このピークA1、ピークA2及びピークA3の面積の合計を、ピークAの面積強度Sとした。なお、±450ppm付近にもピークA1に由来するスピニングサイドバンドが観測されるが、微弱なため、面積強度の計算には含めなかった。
 次いで、-75~-25ppmにピークトップを有するピークBについて、-160~20ppmを積分範囲として面積を求め、そこから、積分範囲が重複しているピークAの面積を引いた値をピークBの面積強度Sとした。
 結果を表1の「S/S35Cl-NMR)」に示す。また、例1、例2、例5及び例9の35Cl-NMRスペクトルを図2に示す。
(リチウムイオン伝導率)
 得られた硫化物系固体電解質を乳鉢で粉砕し、目開き100μmのメッシュパスで粗粒を取り除いた後、100mg測り取り、直径10mmの面積を80MPaで加圧成型しながら測定サンプルに対し、交流インピーダンス測定装置(Bio-Logic Sciences Instruments社製、ポテンショスタット/ガルバノスタット VSP)を用いてリチウムイオン伝導率を測定した。
 測定条件は、測定周波数:100Hz~1MHz、測定電圧:100mV、測定温度:25℃とした。
 結果を表1の「σ25(mS/cm)(80MPa)」に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 上記結果から、35Cl-NMRスペクトルにおけるS/Sで表される面積強度の比と、低圧での加圧成型体のリチウムイオン伝導率には非常に良好な相関が見られることが分かった。例えば例1は、[Cl]/[P](原子比)で表される含有量の比が1.58と比較的ハロゲンの量が多い場合であっても、S/Sが3.5以上であることで、低圧での加圧成型体のリチウムイオン伝導率は5.1mS/cmといった良好な値を示した。また、例3や例4はハロゲン元素として、塩素に加えて臭素を含む。臭素はイオン半径が大きいため、アルジロダイト型の結晶構造中に入りにくく、特に臭素が入り込むことでより塩素が4dサイトに入り込みにくくなることがある。しかしながら、均質な中間体化合物を経ることで、低圧での加圧成型体のリチウムイオン伝導率の高い硫化物系固体電解質が得られた。
 また、従来の固相法で得た例9の硫化物系固体電解質に比べ、同組成ながらも一次粒子径が小さく均質なアモルファスな中間体化合物を経た例7の硫化物系固体電解質は、S/Sの値が大きく、低圧での加圧成型体のリチウムイオン伝導率も高い結果を示した。また、ハロゲン元素として、塩素に加えて臭素を含む例10と例8も、上記例9と例7と同様の傾向が見られる結果となったことに加え、例8では、露点を-50℃と、加湿雰囲気下に設定することで、メカノケミカル反応がより促進される結果となった。
 このように、本実施形態に係る硫化物系固体電解質は、低圧での加圧成型体としても高いリチウムイオン伝導率を実現できる。これは、リチウムに囲まれた4dサイトを、S2-に比べて価数の低いCl又はClを含むハロゲン元素が占める割合が高く、リチウムイオンとの相互作用が下がり、リチウムイオンが動きやすくなることに起因するものと考えている。また、先述したように、4aサイトのClが相対的に少ない方が弾性率が低くなるといった第一原理計算の結果と照らして考察すると、4dサイトを、Cl又はClを含むハロゲン元素が占める割合が高いことで弾性率が低くなる。その結果、より弱い圧力で成型しても界面の接触性が良く、粒界抵抗が小さくなることから、低圧での加圧成型体としても高いリチウムイオン伝導率を実現できるものと考えられる。
 本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2021年9月30日出願の日本特許出願(特願2021-162226)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

Claims (13)

  1.  リチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質であって、
     Li、P、S及びHaを含むアルジロダイト型の結晶相を含み、
     前記Haは、少なくともClを含む、1種又は2種以上のハロゲン元素であり、
     前記Pの含有量[P]と前記Haの合計の含有量[Ha]とを用いて[Ha]/[P](原子比)で表される含有量の比が1.3以上であり、
     下記条件で測定される35Cl-NMRスペクトルにおいて、
     0~30ppmに観測されるピークの面積強度Sと、-150~0ppmに観測されるピークの面積強度Sを用いてS/Sで表される面積強度の比が3.5以上であるか、又は、
     -150~0ppmにはピークが観測され、0~30ppmにはピークが観測されない、硫化物系固体電解質。
    (条件)
     LiClを外部標準として測定し、得られた35Cl-NMRスペクトルにおいて最も強度が高いケミカルシフトの位置を9.93ppmとして、プローブ:3.2mm固体用、測定条件:Single pulse法、パルス幅:2.45μs、観測中心:20ppm、観測幅:1000ppm、Relaxation delay:10sec、積算回数:1024、回転速度:15kHzの条件で35Cl-NMR測定を行い、35Cl-NMRスペクトルを得る。
  2.  前記Haは、Clを含む2種以上のハロゲン元素である、請求項1に記載の硫化物系固体電解質。
  3.  前記Haは、Cl及びBrを含む2種以上のハロゲン元素である、請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質。
  4.  前記Clの含有量[Cl]と前記Brの含有量[Br]とを用いて、[Cl]/[Br](原子比)で表される含有量の比が0.2~3.0である、請求項3に記載の硫化物系固体電解質。
  5.  前記アルジロダイト型の結晶相は、LiPSHaで表した際に、a、b及びcで表される各元素比が、5≦a≦7、4≦b≦6かつ1.3≦c≦2の関係を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の硫化物系固体電解質。
  6.  前記アルジロダイト型の結晶相の結晶構造中にアニオンを含み、
     前記アニオンは、MとOとが結合したM-O結合を有する酸化物アニオンを含み、
     前記Mは周期表の第2~14族の金属元素及び半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硫化物系固体電解質。
  7.  前記Li、P、S、Ha、M及びOの元素の含有量の合計が90質量%以上である、請求項6に記載の硫化物系固体電解質。
  8.  リチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質の製造方法であって、
     Li、P、S及びHaを含む原材料を混合して原料混合物を得ること、
     前記原料混合物を加熱して均質な中間体化合物としての溶融物を得ること、及び
     前記溶融物を冷却し、アルジロダイト型の結晶を析出することを含み、
     前記Haは、少なくともClを含む、1種又は2種以上のハロゲン元素であり、
     アルジロダイト型の結晶相を含む、硫化物系固体電解質の製造方法。
  9.  前記加熱を、不活性雰囲気下、600~800℃、かつ5分以上の条件で行う、請求項8に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  10.  リチウムイオン二次電池に用いられる硫化物系固体電解質の製造方法であって、
     Li、P、S及びHaを含む原材料を混合してアモルファスな中間体化合物を得ること、及び
     前記中間体化合物を加熱焼成してアルジロダイト型の結晶を析出することを含み、
     前記Haは、少なくともClを含む、1種又は2種以上のハロゲン元素であり、
     アルジロダイト型の結晶相を含む、硫化物系固体電解質の製造方法。
  11.  前記中間体化合物は、Ramanスペクトルにおいて前記原材料に由来するピークが観察されない、請求項10に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  12.  前記混合を、ボールミルを用いたメカニカルミリング法を用いて、露点が-60℃以上の環境下、400rpm以上の回転数で12時間以上行う、請求項10又は11に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  13.  前記中間体化合物の粒子径が0.1~2μmである、請求項10~12のいずれか1項に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
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