WO2023021715A1 - 糖誘導体および糖-核酸コンジュゲート体 - Google Patents

糖誘導体および糖-核酸コンジュゲート体 Download PDF

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聡 小比賀
雅允 今野
歩 浅井
卓男 山口
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Abstract

本発明の糖-核酸コンジュゲート体は糖部分および核酸部分を含む。ここで、糖部分は、以下の式(II):で表される構造を含む。本発明のコンジュゲート体は、例えば、当該コンジュゲート体を構成する、miR302などの核酸改変体を癌細胞に効果的にデリバリーすることができる。これにより、抗腫瘍効果を向上させることが可能となる。

Description

糖誘導体および糖-核酸コンジュゲート体
 本発明は、糖誘導体および糖-核酸コンジュゲート体に関する。
 疾病の原因となる遺伝子の発現を制御し、その治療や予防を実現しようとする核酸医薬に近年大きな注目が集まっている。核酸医薬はその作用機序や有効成分となる核酸の構造の違いから様々なタイプに分類されている。その多くが、標的とする遺伝子の発現を配列特異的に制御可能であるという特徴を有する。そのため、これを利用して有効な治療法が見出されていない多くの難治性疾患に対する新たな治療法につながることが期待される。
 核酸医薬の臨床試験は、現在国内外合わせて140件以上が進められているが、まだ解決すべき課題も多く残されている。特に「デリバリー技術の整備」は喫緊の課題である。核酸医薬のデリバリー技術は、ナノパーティクルやリポソームなどに核酸医薬を搭載する方法と、核酸医薬そのものにある種のリガンドをコンジュゲートする方法とに大別される。特に後者では、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)をコンジュゲートしたアンチセンス核酸やsiRNAが、肝臓へのデリバリーにおいて顕著な成果を上げている(非特許文献1および2)。GalNAcコンジュゲートは肝臓をターゲットとした際に極めて有効であるが、他の臓器をターゲットにする際には、ポストGalNAcとなるリガンドの探索が必要不可欠である。
 また、マイクロRNAの1つであるmiR302の核酸改変体は、癌治療用の核酸医薬として有用である。これは、高分子ポリマーであるユニットPICとの組み合わせで抗腫瘍効果を発揮するものである(特許文献1)。しかし、より安全でありかつ製造工程の煩雑さからの解放のために、このような高分子ポリマーを用いない新たな核酸医薬のデリバリー技術の開発が所望されている
国際公開第2020/218494号
Wang,Y.ら、Expert Opin.Drug Metab.Toxicol.,2019,15,6,475-485 Maguregui,A.ら、ChemBioChem,2020,21,13,1808-1815
 本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、核酸医薬のデリバリーに有用となり得る糖-核酸コンジュゲート体と、それを構成する糖誘導体とを提供することにある。
 本発明は、以下の式(I):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
(式(I)中、
 R、R、およびRはそれぞれ独立して、
  水素原子、または
  核酸合成の水酸基の保護基、
であり、
 Rは、
  水素原子、または
  -OR[式中、Rは水素原子または核酸合成の水酸基の保護基である]
であり、
 RおよびRはそれぞれ独立して、
  水素原子、
  核酸合成の水酸基の保護基、
  分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基であって、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなる群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい、アルキル基、
  α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基であって、
    ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなる、リン酸基、
  核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、あるいは
 -P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表す]
であり、
 ただし、RおよびRが同一である場合を除き、そして
 nは1から5の整数である)
 で表される、糖誘導体である。
 1つの実施形態では、上記式(I)におけるnが4である。
 1つの実施形態では、上記式(I)におけるRが水素原子である。
 本発明はまた、糖部分および核酸部分を含む糖-核酸コンジュゲート体であって、
 該糖部分が以下の式(II):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
(式(II)中、
 R、R、およびRはそれぞれ独立して、水素原子、または核酸合成の水酸基の保護基であり、
 Rは、
  水素原子、または
  -OR[式中、Rは水素原子または核酸合成の水酸基の保護基である]
であり、
 nは1から5の整数であり、
 mは1から10の整数であり、
 Xは、薬学的に許容し得るカチオンであり、そして
 *は結合手である)
で表される構造を含む、糖-核酸コンジュゲート体である。
 1つの実施形態では、上記式(II)におけるR、RおよびRがともに水素原子である。
 1つの実施形態では、上記式(II)におけるnが4である。
 1つの実施形態では、上記式(II)におけるRが水素原子である。
 1つの実施形態では、上記核酸部分はmiRNAまたはその改変体の塩基配列から構成されている。
 さらなる実施形態では、上記miRNAはヒトmiR302a(配列番号1)またはその改変体である。
 さらなる実施形態では、上記miRNAは、配列番号2または配列番号3の塩基配列から0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の塩基が置換、欠失または挿入された配列を含む。
 本発明はまた、上記糖-核酸コンジュゲート体を含有する、医薬組成物である。
 1つの実施形態では、本発明の医薬組成物は抗腫瘍剤として使用される。
 本発明はまた、cRGD部分および核酸部分を含む、cRGD-核酸コンジュゲート体であって、
 該cRGD部分が以下の式(III):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
(式(III)中、
 qは1から10の整数であり、
 Xは、薬学的に許容し得るカチオンであり、そして
 *は結合手である)
で表される構造を含む、cRGD-核酸コンジュゲート体である。
 1つの実施形態では、上記核酸部分はmiRNAまたはその改変体の塩基配列から構成されている。
 本発明によれば、例えば癌細胞へのデリバリーを促進し、抗腫瘍効果を高める核酸医薬として有用なコンジュゲート体を提供することができる。また、本発明のコンジュゲート体は生体に対して高い安全性を有する。さらに、本発明のコンジュゲート体は、当該分野において煩雑な製造工程や高分子ポリマーなどの特殊な物質を用いることなく効率良く製造することができる。
実施例5で合成したcRGD-核酸コンジュゲート体の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析の結果を示すグラフである。 フコースアミダイトとOUM302とのコンジュゲート体およびcRGDとOUM302とのコンジュゲート体について、投与した担癌マウスにおける腫瘍増大の経日変化を示すグラフである。
 (用語の定義)
 本明細書において使用される用語は、特に言及する場合を除いて当該分野で通常用いられる意味で用いられる。
 まず、本明細書中で用いられる代表的な用語を定義する。
 本明細書において、用語「炭素数1からnのアルキル基」は、炭素数1~nの任意の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基をいう。例えば、炭素数nが9である場合、炭素数1からnのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基などが挙げられる。また、例えば、「分岐していてもよい炭素数1から9のアルキル基」という場合は、炭素数1~9の直鎖または分岐鎖のアルキル基をいう。用語「分岐していてもよい炭素数1から3のアルキル基」という場合は、炭素数1~3の任意の直鎖または分岐鎖のアルキル基をいう。さらに、用語「炭素数1から6の直鎖アルキル基」は、炭素数1~6の任意の直鎖アルキル基をいう。
 本明細書において、用語「炭素数1からnのアルコキシ基」は、炭素数1~nの任意の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基をいう。例えば、炭素数nが4である場合、炭素数1~nのアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基などなどが挙げられる。また、例えば、「分岐していてもよい炭素数1から3のアルコキシ基」という場合は、炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基をいう。また、用語「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」は、炭素数1~6の任意の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。一方、用語「炭素数1から6のアルコキシ基」という場合は、炭素数1~6の任意の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基をいう。
 用語「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」という場合は、上記「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」、ならびに「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」を構成する1つまたはそれ以上の水素原子が、同一または異なっていてもよい他の「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」で置換されたアルコキシ基をいう。このような「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロポキシメトキシ基、メトキシエトキシ基(例えば2-メトキシエトキシ基)、エトキシエトキシ基(例えば2-エトキシエトキシ基)、およびn-プロポキシエトキシ基が挙げられる。
 本明細書において、用語「炭素数1から6のシアノアルコキシ基」は、炭素数1~6の任意の直鎖、分岐鎖または環状のアルコキシ基における少なくとも1つの水素原子がシアノ基で置換された基をいう。
 本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基」は、炭素数1~6の任意の直鎖アルキル基を有するアルキルチオ基を包含する。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基などが挙げられる。一方、用語「炭素数1から6のアルキルチオ基」という場合は、炭素数1~6の任意の直鎖、分岐鎖または環状のアルキルチオ基をいう。
 本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基」は、炭素数1~6の任意の直鎖アルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基を包含する。例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。一方、用語「炭素数1から6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基」は、炭素数1~6の任意のアルキル基を2つ有するアミノ基を包含する。
 本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基」は、炭素数1~7の任意の直鎖アルキル基、炭素数3~7の任意の分岐鎖アルキル基、および炭素数3~7の任意の環状アルキル基を包含する。単に、「低級アルキル基」という場合もある。例えば、炭素数1~7の任意の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、およびn-ヘプチル基が挙げられ、炭素数3~7の任意の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基などが挙げられ、そして炭素数3~7の任意の環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
 本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基」は、炭素数2~7の任意の直鎖アルケニル基、炭素数3~7の任意の分岐鎖アルケニル基、および炭素数3~7の任意の環状アルケニル基を包含する。単に、「低級アルケニル基」という場合もある。例えば、炭素数2~7の任意の直鎖アルケニル基としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基などが挙げられ、炭素数3~7の任意の分岐鎖アルケニル基としては、イソプロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-ブテニル基などが挙げられ、そして炭素数3~7の任意の環状アルケニル基としては、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
 本明細書において、用語「炭素数n~nのアリール基」は、炭素数n~nの(ここで、nおよびnは整数であり、n<nである)の任意のアリール基を包含する。例えば「炭素数6から20のアリール基」には、フェニル基、ナフチル基などが包含される。
 本明細書において、用語「炭素数n~nのヘテロアリール基」は、1個以上のヘテロ原子を含む炭素数n~nの(ここで、nおよびnは整数であり、n<nである)の任意のヘテロアリール基を包含する。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などが挙げられる。例えば、「炭素数4から20のヘテロアリール基」は、このようなヘテロ原子を1つまたはそれ以上含む炭素数4~20のヘテロアリール基を包含する。
 本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基」は、炭化水素のみで構成された、炭素数6~10の任意のアリール基と、当該アリール基の環構造を構成する少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子、ならびにこれらの組合せ)で置換された、炭素数3~12の任意のヘテロアリール基とを包含する。当該炭素数6~10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基などが挙げられ、そして当該炭素数3~12の任意のヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピロリル基、キノリル基、インドリル基、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基などが挙げられる。
 本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基」の例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、3-フェニルプロピル基、2-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、2-フェニルブチル基、ピリジルメチル基、インドリルメチル基、フリルメチル基、チエニルメチル基、ピロリルメチル基、2-ピリジルエチル基、1-ピリジルエチル基、3-チエニルプロピル基などが挙げられる。
 本明細書において、用語「アシル基」の例としては、脂肪族アシル基および芳香族アシル基が挙げられる。具体的には、脂肪族アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、3-エチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1-メチルペンタデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、13,13-ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15-メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1-メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基およびヘナイコサノイル基のようなアルキルカルボニル基;スクシノイル基、グルタロイル基、アジポイル基のようなカルボキシ化アルキルカルボニル基;クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基のようなハロゲノ低級アルキルカルボニル基;メトキシアセチル基のような低級アルコキシ低級アルキルカルボニル基;(E)-2-メチル-2-ブテノイル基のような不飽和アルキルカルボニル基が挙げられる。また、芳香族アシル基の例としては、ベンゾイル基、α-ナフトイル基、β-ナフトイル基のようなアリールカルボニル基;2-ブロモベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基のようなハロゲノアリールカルボニル基;2,4,6-トリメチルベンゾイル基、4-トルオイル基のような低級アルキル化アリールカルボニル基;4-アニソイル基のような低級アルコキシ化アリールカルボニル基;2-カルボキシベンゾイル基、3-カルボキシベンゾイル基、4-カルボキシベンゾイル基のようなカルボキシ化アリールカルボニル基;4-ニトロベンゾイル基、2-ニトロベンゾイル基のようなニトロ化アリールカルボニル基;2-(メトキシカルボニル)ベンゾイル基のような低級アルコキシカルボニル化アリールカルボニル基;4-フェニルベンゾイル基のようなアリール化アリールカルボニル基などが挙げられる。好適には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基である。
 本明細書において、用語「シリル基」の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ-t-ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基のようなトリ低級アルキルシリル基;ジフェニルメチルシリル基、ブチルジフェニルブチルシリル基、ジフェニルイソプロピルシリル基、フェニルジイソプロピルシリル基のような1~2個のアリール基で置換されたトリ低級アルキルシリル基などが挙げられる。好適には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基であり、さらに好適にはトリメチルシリル基である。
 本明細書において、用語「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。好適には、フッ素原子または塩素原子である。
 本明細書において、用語「核酸合成のアミノ基の保護基」、「核酸合成の水酸基の保護基」、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」とは、核酸合成の際に安定してアミノ基、水酸基、リン酸基またはメルカプト基を保護し得るものであれば、特に制限されない。具体的には、酸性または中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解、および光分解のような化学的方法により開裂し得る保護基のことをいう。このような保護基としては、例えば、低級アルキル基、低級アルケニル基、アシル基、テトラヒドロピラニルまたはテトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロチオフラニル基、シリル基、低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基、ハロゲノ低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化エチル基、ハロゲン化エチル基、1~3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1~3個のアリール基で置換されたメチル基」、低級アルコキシカルボニル基、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」、アルケニルオキシカルボニル基、「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」などが挙げられる。
 より具体的には、テトラヒドロピラニル基またはテトラヒドロチオピラニル基としては、テトラヒドロピラン-2-イル基、3-ブロモテトラヒドロピラン-2-イル基、4-メトキシテトラヒドロピラン-4-イル基、テトラヒドロチオピラン-4-イル基、4-メトキシテトラヒドロチオピラン-4-イル基などが挙げられる。テトラヒドロフラニル基またはテトラヒドロチオフラニル基としては、テトラヒドロフラン-2-イル基、テトラヒドロチオフラン-2-イル基が挙げられる。低級アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、1,1-ジメチル-1-メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基としては、2-メトキシエトキシメチル基などが挙げられる。ハロゲノ低級アルコキシメチル基としては、2,2,2-トリクロロエトキシメチル基、ビス(2-クロロエトキシ)メチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化エチル基としては、1-エトキシエチル基、1-(イソプロポキシ)エチル基などが挙げられる。ハロゲン化エチル基としては、2,2,2-トリクロロエチル基などが挙げられる。1~3個のアリール基で置換されたメチル基としては、ベンジル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、α-ナフチルジフェニルメチル基、9-アンスリルメチル基などが挙げられる。「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1~3個のアリール基で置換されたメチル基」としては、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,4,5-トリメチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-メトキシフェニルジフェニルメチル基、4,4’-ジメトキシトリフェニルメチル基、2-ニトロベンジル基、4-ニトロベンジル基、4-クロロベンジル基、4-ブロモベンジル基、4-シアノベンジル基などが挙げられる。低級アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」としては、4-クロロフェニル基、2-フロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ニトロフェニル基、2,4-ジニトロフェニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」としては、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル基などが挙げられる。アルケニルオキシカルボニル基としては、ビニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられる。「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」としては、ベンジルオキシカルボニル基、4-メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2-ニトロベンジルオキシカルボニル基、4-ニトロベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。
 1つの実施形態では、「核酸合成の水酸基の保護基」としては、例えば脂肪族アシル基、芳香族アシル基、1~3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ基でアリール環が置換された1~3個のアリール基で置換されたメチル基」、およびシリル基が挙げられる。あるいは、1つの実施形態では、「核酸合成の水酸基の保護基」としては、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、p-メトキシベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(TOM)基、[(2-ニトロベンジル)オキシ]メチル(NBOM)基、ビス(アセトキシエトキシ)メチルエーテル(ACE)基、テトラヒドロ-4-メトキシ-2H-ピラン-2-イル(Mthp)基、1-(2-シアノエトキシ)エチル(CEE)基、2-シアノエトキシメチル(CEM)基、tert-ブチルジチオメチル(DTM)基、2-(4-トリルスルホニル)エトキシメチル(TEM)基、および4-(N-ジクロロアセチル-N-メチルアミノ)ベンジルオキシメチル(4-MABOM)基が挙げられる。
 1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」の保護基としては、例えば脂肪族アシル基、芳香族アシル基、「1~3個のアリール基で置換されたメチル基」、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、低級アルキル基、および低級アルケニル基が挙げられる。あるいは、1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」の保護基としては、例えばベンゾイル基、ベンジル基、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、および2-プロペニル基が挙げられる。
 1つの実施形態では、「核酸合成のアミノ基の保護基」としては、例えばアシル基、好適には、ベンゾイル基が挙げられる。
 1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」の「保護基」としては、例えば低級アルキル基、シアノ基で置換された低級アルキル基、アラルキル基、「ニトロ基またはハロゲン原子でアリール環が置換されたアラルキル基」、および「低級アルキル基、ハロゲン原子、またはニトロ基で置換されたアリール基」が挙げられる。あるいは、1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」の「保護基」としては、例えば2-シアノエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、ベンジル基、2-クロロフェニル基、および4-クロロフェニル基が挙げられる。
 1つの実施形態では、「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」としては、例えば脂肪族アシル基および芳香族アシル基、好適には、ベンゾイル基が挙げられる。
 本明細書において、用語「その塩」とは、特定の化合物に対する塩をいう。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩が挙げられる。
 本明細書において、用語「薬学的に許容し得るカチオン」とは、本発明のコンジュゲート体を例えば薬学的用途に使用する際に当該用途の目的を全体的にまたは部分的に阻害するおそれのないカチオンを意味し、例えば、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アニモニウムイオンなどを包含する。
 本明細書において、用語「薬学的に許容し得るアニオン」とは、本発明のコンジュゲート体を例えば薬学的用途に使用する際に当該用途の目的を全体的にまたは部分的に阻害するおそれのないアニオンを意味し、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオンなどを包含する。
 本明細書において、用語「核酸」は、リボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)の総称であり、塩基、糖およびリン酸からなるヌクレオチドがホスホジエステル結合で連なった生体高分子をいう。糖の部分がリボースであるものがRNA、リボースの2’位の水酸基が水素基に置換された2-デオキシリボースであるものがDNAである。糖の5’位が隣の糖の3’位とホスホジエステル結合し、この結合が繰り返されて鎖状を形成している。
 「ヌクレオシド」は、プリンまたはピリミジン塩基と糖とが結合した「ヌクレオシド」、ならびにプリンおよびピリミジン以外の芳香族複素環および芳香族炭化水素環でプリンまたはピリミジン塩基との代用が可能なものと糖が結合した「ヌクレオシド」を含む。天然型のヌクレオシドを「天然ヌクレオシド」ともいう。修飾された非天然型のヌクレオシドを「修飾ヌクレオシド」ともいい、特に糖部分が修飾されたヌクレオチドを「糖修飾ヌクレオシド」という。「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドの糖にリン酸基が結合した化合物を意味する。「ヌクレオシド」「ヌクレオチド」には、それぞれDNAのものおよびRNAのものが挙げられる。
 本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド」とは、同一または異なる「ヌクレオシド」がリン酸ジエステル結合または他の結合で、例えば5個~70個、好ましくは10個~40個、より好ましくは12個~30個結合した「ヌクレオチド」のポリマーであり、天然型のものと非天然型のものを含む。非天然型の「オリゴヌクレオチド」としては、好適には、糖部分が修飾された糖誘導体;リン酸ジエステル部分がチオエート化されたチオエート誘導体;末端のリン酸部分がエステル化されたエステル体;プリン塩基上のアミノ基がアミド化されたアミド体が挙げられ、さらに好適には、糖部分が修飾された糖誘導体が挙げられる。「オリゴヌクレオチド」は、天然ヌクレオシドまたは修飾ヌクレオシドからなるものであってもよく、あるいは天然ヌクレオシドと修飾ヌクレオシドとの混合であってもよい。
 オリゴヌクレオチドにおける糖と糖の間の結合(ヌクレオシド間結合)は、天然の核酸が有する結合であるホスホジエステル(D-オリゴ)でもよく、人工的に修飾がなされた結合(例えば、ホスホロチオエート(S-オリゴ)、メチルホスホネート(M-オリゴ)、ボラノホスホネート等)であってもよい。当該分野で公知の結合であれば、いずれも利用可能である。S-オリゴ(ホスホロチオエート)は、ヌクレオシド間のホスホジエステル結合のリン酸基部の酸素原子が硫黄原子で置換されたPS骨格を有する。この修飾は公知の方法にしたがって、オリゴヌクレオチドに取り込まれる。この修飾をオリゴヌクレオチド中に1もしくは複数もつアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)をS-オリゴ型(ホスホロチオエート型)ともいう。オリゴヌクレオチド中、全て同じ結合でもよいし、異なる結合を含んでいてもよい。好ましくは、本発明におけるオリゴヌクレオチドは、D-オリゴおよび/またはS-オリゴを含む。
 当該分野で公知のヌクレオチドの修飾もまた利用可能である。ヌクレオチドの修飾としては、糖修飾、核酸塩基修飾が知られている。このような核酸修飾は、当該分野で公知の方法に基づいて行うことができる。
 核酸塩基修飾としては、例えば、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-プロピニルシトシン等が挙げられる。
 糖修飾としては、例えば、糖の2’部位の置換および糖の4’位と2’位との間の架橋構造が挙げられる。糖の2’部位の置換としては、例えば、2’-F、2’-OCH(2’-OMe)、2’-OCHCHOCH(2’-MOE)等が挙げられる。糖の4’位と2’位との間の架橋構造については後述する。
 核酸の「改変」とは、塩基の置換、欠失または挿入、あるいは塩基以外の化学構造の変更(例えば、上述したような修飾)などの核酸の任意の変更を指す。本明細書では、このような改変を少なくとも1つ含む物質を「改変体」と呼ぶ。
(糖誘導体)
 本発明の糖誘導体は、以下の式(I)で表される:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
式(I)中、
 R、R、およびRはそれぞれ独立して、
  水素原子、または
  核酸合成の水酸基の保護基、
であり、
 Rは、
  水素原子、または
  -OR[式中、Rは水素原子または核酸合成の水酸基の保護基である]
であり、
 RおよびRはそれぞれ独立して、
  水素原子、
  核酸合成の水酸基の保護基、
  分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基であって、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなる群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい、アルキル基、
  α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基であって、
    ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなる、リン酸基、
  核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、あるいは
 -P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表す]
であり、
 ただし、RおよびRが同一である場合を除き、そして
 nは1から5の整数(例えば、1、2、3、4または5の整数)である。
 ここで、1つの実施形態では、本発明の糖誘導体は、上記式(I)中、Rが水素原子である構造、すなわち、以下の式(I-1):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
(式(I-1)中、R、R、R、RおよびRは上記で定義した基と同様であり、nは1から5の整数である)で表される構造を有するフコース誘導体である。
 あるいは、1つの実施形態では、本発明の糖誘導体は、上記式(I)中、Rが-ORである構造、すなわち、以下の式(I-2):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
(式(I-2)中、R、R、R、R、RおよびRは、上記で定義した基と同様であり、nは1から5の整数である)で表される構造を有するグルコース誘導体である。
 あるいは、1つの実施形態では、本発明の糖誘導体は、上記式(I)中、Rが-ORである構造、すなわち、以下の式(I-3):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
(式(I-3)中、R、R、R、R、RおよびRは、上記で定義した基と同様であり、nは1から5の整数である)で表される構造を有するマンノース誘導体である。
 あるいは、1つの実施形態では、本発明の糖誘導体は、上記式(I)中、Rが-P(R)R[式中、RおよびRは、上記で定義した基と同様である]であり、Rが核酸合成の水酸基の保護基である。本発明の糖誘導体は、上記式(I)のRが-P(R)Rを有することにより、核酸を構成する糖部分の5’位の水酸基とホスホロアミダイト化が可能である。その結果、本発明の糖誘導体は、核酸と一緒になって後述するようなコンジュゲート体を形成することができる。
 本発明の式(I)の糖誘導体(例えば、式(I-1)のフコース誘導体および式(I-2)のグルコース誘導体)は、例えば、Carbohydrate Research 2019,471,85-94、およびBulletin of the Korean Chemical Society 2011,32,2286-2300などの公知文献に記載されている公知物質を用いて、複数の反応工程を経て合成することができる。
(コンジュゲート体)
 本発明のコンジュゲート体は、糖-核酸コンジュゲート体およびcRGD(環状RGD)-核酸コンジュゲート体を包含する。
(糖-核酸コンジュゲート体)
 本発明の糖-核酸コンジュゲート体は、糖部分および核酸部分を含む。
(1)糖部分
 糖-核酸コンジュゲート体を構成する糖部分は、以下の式(II)で表される構造を含む:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
式(II)中、
 R、R、およびRはそれぞれ独立して、水素原子、または核酸合成の水酸基の保護基であり、
 Rは、
  水素原子、または
  -OR[式中、Rは水素原子または核酸合成の水酸基の保護基である]
であり、
 nは1から5の整数(例えば、1、2、3、4または5の整数)であり、
 mは1から10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数)であり、
 Xは、薬学的に許容し得るカチオンであり、そして
 *は結合手である。
 ここで、1つの実施形態では、本発明の糖-核酸コンジュゲート体は、上記式(II)中、Rが水素原子である構造、すなわち、以下の式(II-1):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
(式(II-1)中、R、RおよびRは上記で定義した基と同様であり、nは1から5の整数であり、mは1から10の整数である)で表される構造を含む。
 あるいは、1つの実施形態では、本発明の糖-核酸コンジュゲート体は、上記式(II)中、Rが-ORである構造、すなわち、以下の式(II-2):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
(式(II-2)中、R、R、RおよびRは上記で定義した基と同様であり、nは1から5の整数であり、mは1から10の整数である)で表される構造を含む。
 あるいは、1つの実施形態では、本発明の糖-核酸コンジュゲート体は、上記式(II)中、Rが-ORである構造、すなわち、以下の式(II-3):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
(式(II-3)中、R、R、RおよびRは上記で定義した基と同様であり、nは1から5の整数であり、mは1から10の整数である)で表される構造を含む。
 糖部分に含まれる式(II)で表される構造中、mは10を超えないことが好ましい。mが10を超える構造は、製造工程を煩雑にするおそれがあり、所望の糖-核酸コンジュゲート体を効率良く製造することが困難となることがあるからである。
(2)核酸部分
(2-1:オリゴヌクレオチド)
 糖-核酸コンジュゲート体を構成する核酸部分は、例えばオリゴヌクレオチドであり、好ましくは生体内の標的の臓器にデリバリーされて、所望の機能を発揮することが期待されるオリゴヌクレオチドである。所望の機能を発揮することが期待されるオリゴヌクレオチドとしては、例えば、標的遺伝子の発現を抑制するもの、および標的遺伝子の発現を調節するものが挙げられる。
 このようなオリゴヌクレオチドには、核酸医薬を構成するオリゴヌクレオチドが包含される。オリゴヌクレオチドは1本鎖または2本鎖のいずれであってもよく、具体的な例としては、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が挙げられる。ASOは、標的配列に結合可能な配列とともに2本鎖オリゴヌクレオチドを形成していてもよい。
 オリゴヌクレオチドは、標的遺伝子中の標的配列に結合可能な配列からなる例えば5~70塩基のオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドの長さは、好ましくは5塩基以上、6塩基以上、7塩基以上、8塩基以上、9塩基以上、10塩基以上、11塩基以上、12塩基以上、13塩基以上、14塩基以上または15塩基以上であり、かつ70塩基以下、50塩基以下、40塩基以下、30塩基以下、25塩基以下または20塩基以下である。
 核酸部分を構成するオリゴヌクレオチドが二本鎖オリゴヌクレオチドである場合、第2の鎖は、標的遺伝子中の標的配列に結合可能な配列からなる第1の鎖であるオリゴヌクレオチドに結合可能な配列からなるオリゴヌクレオチドである。この第2の鎖は、例えば、8~60塩基であり、好ましくは8塩基以上、9塩基以上、10塩基以上、11塩基以上、12塩基以上、13塩基以上、14塩基以上または15塩基以上であり、かつ60塩基以下、50塩基以下、40塩基以下、30塩基以下、25塩基以下または20塩基以下である。第2の鎖の長さは、第1の鎖の長さと同じであってもよいし、第1の鎖と結合する限りにおいて、第1の鎖よりも1または数個の塩基に相当する分が短い、あるいは第1の鎖と結合する部位の片側または両側に1または数個の塩基が付加することにより、第2の鎖は第1の鎖よりも長くてもよい。なお、本明細書において、「1または数個の塩基」とは、例えば1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、さらにより好ましくは1個または2個の塩基を意味する。第2の鎖の好ましい長さは第1の鎖の長さに依存する。例えば、第1の鎖の長さに対して50%以上の長さ、60%以上の長さ、70%以上の長さ、50~100%の長さ、60~100%の長さ、70~100%の長さである。
 オリゴヌクレオチドが標的配列に「結合する」とは、異なる複数の1本鎖のオリゴヌクレオチドまたは核酸が、核酸塩基の相補性により2本鎖以上の鎖の核酸を形成し得ることをいう。好ましくは2本鎖の核酸を形成し得ることをいう。結合の熱安定性の指標である2本鎖以上の鎖の核酸の融解温度(T)は特に限定されない。
 2本鎖核酸の融解温度(T)は、例えば、下記のように決定され得る:
 緩衝液(8.1mMのNaHPO、2.68mMのKCl、1.47mMのKHPO、およびpH7.2)中で、オリゴヌクレオチドと標的RNAとを等モル混合し、95℃にて5分間加熱後、室温まで徐冷してアニーリングさせ、2本鎖核酸を形成させる。2本鎖核酸の温度を20℃から95℃まで0.5℃/分の昇温速度で加温する際の260nmにおける吸光度(A)の温度(T)による変化を測定し、この測定結果よりdA/dT vs Tのグラフを作成し、このグラフにおいてdA/dTの値が最も大きくなる温度、つまりAのTによる変化が最も大きくなる温度を、2本鎖核酸のTとする。
 本発明において、2本鎖核酸の融解温度(T)は、例えば40℃以上であり、好ましくは50℃以上である。
 本明細書において「相補的」とは、異なる2つの1本鎖のオリゴヌクレオチドまたは核酸が2本鎖核酸を形成することができる対合関係にあることをいう。好ましくは、2本鎖を形成する領域の塩基配列が完全に相補性を有するが、当該2本鎖核酸を形成し得、所望の機能(例えば、発現抑制または調節)を発揮し得る限り、1個または数個のミスマッチを有し得る。1個または数個のミスマッチとは、オリゴヌクレオチドの長さに依存し得るが、1個~4個、好ましくは1個~3個、さらに好ましくは1個または2個のミスマッチを意味する。核酸部分を構成するオリゴヌクレオチドは、好ましくは、2本鎖を形成する領域の塩基配列に対して80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上の相補性を有するか、あるいは完全に(100%)相補性を有するものであってもよい。
 オリゴヌクレオチドはまた、天然DNAを含有するオリゴヌクレオチド(非修飾オリゴヌクレオチド)および化学的に修飾されたDNAを含有するオリゴヌクレオチドのいずれをも包含する。このような修飾は、オリゴヌクレオチドの活性を変更することができ、例えば、標的核酸に対する親和性を高めるか、または核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)に対する耐性を高めることができる。本発明においては、標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性を高めることにより、より短いオリゴヌクレオチドの使用を可能にする。
 オリゴヌクレオチドはまた、糖修飾ヌクレオシドを任意の位置に少なくとも1つ含むものであってもよい。この糖修飾ヌクレオシドは、その糖環の2’位と4’位との間に、例えば、以下に説明するような架橋部分を有する。
 1つの実施形態では、核酸部分を構成するオリゴヌクレオチドは、糖修飾ヌクレオシドとして、以下の式(IV)で表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含む:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
(式(IV)中、
 *は結合手であり、
 BASEは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン-9-イル基、またはα群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基を表し、
 該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
 Aは、以下:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
で表される二価の基であり、
 R25は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、または核酸合成のアミノ基の保護基を表し、
 R26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
 R26およびR27は一緒になって、-(CH-[式中、sは2から5の整数である]を表し、
 R28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であるか、あるいは、R28およびR29は一緒になって、=C(R37)R38[式中、R37およびR38は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルコキシ基、炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルアミノ基を表す]であり、
 R30およびR31は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基であり、
 R32は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、または炭素数1から6の直鎖または分岐鎖アルキルチオ基を表し、
 R33は、水素原子、水酸基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基、アミノ基、あるいは核酸合成の保護基で保護されたアミノ基であり、
 R34は、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基、または
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
(式中、*は結合手であり、tは2から5の整数である)
であるか、あるいは-(C=(NHR39)-NR4041[式中、R39、R40およびR41は、それぞれ独立して、水素原子、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、アミノ基の保護基、または
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
(式中、*は結合手であり、tは2から5の整数である)
である]であり、
 R35およびR36は、それぞれ独立して、水素原子;水酸基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルコキシ基;アミノ基;および核酸合成の保護基で保護されたアミノ基;からなる群から選択される基であるか、あるいは
 R35およびR36は一緒になって、-(CH-[式中、sは2から5の整数である]を表し、
 mは、0から2の整数であり、
 nは、0から1の整数であり、
 pは0から1の整数であり、
 Xは、酸素原子、硫黄原子、またはアミノ基であり、
 Xは酸素原子または硫黄原子である)。
 上記式(IV)において、「BASE」は、例えばプリン塩基(すなわち、プリン-9-イル基)またはピリミジン塩基(すなわち、2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基)である。これらの塩基は、水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、およびハロゲン原子からなるα群より選択される任意の置換基を1以上有していてもよい。
 上記「BASE」の具体例としては、アデニニル基、グアニニル基、シトシニル基、ウラシニル基、およびチミニル基、ならびに6-アミノプリン-9-イル基、2,6-ジアミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-クロロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-フルオロプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ブロモプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-メトキシプリン-9-イル基、6-アミノ-2-クロロプリン-9-イル基、6-アミノ-2-フルオロプリン-9-イル基、2,6-ジメトキシプリン-9-イル基、2,6-ジクロロプリン-9-イル基、6-メルカプトプリン-9-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-フルオロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、4-アミノ-2-オキソ-5-クロロ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メトキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-メルカプト-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、および4-アミノ-5-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基が挙げられる。
 あるいは、「BASE」は、核酸医薬への導入において有利であるという観点から、以下の構造式:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
でそれぞれ表される基、ならびに2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-メチル-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、6-アミノプリン-9-イル基、2-アミノ-6-ヒドロキシプリン-9-イル基、4-アミノ-5-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基、および2-オキソ-4-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル基であることが好ましい。「BASE」はまた、オリゴヌクレオチドの合成の際には、上記基を構成する水酸基およびアミノ基が保護基により保護されているものであることが好ましい。
 核酸部分を構成するオリゴヌクレオチドは、上述したような糖修飾ヌクレオシドおよび天然ヌクレオシドを用いて、常法によって合成することができ、例えば、市販の核酸自動合成装置(例えば、Applied Biosystems社製、株式会社ジーンデザイン製など)によって容易に合成することができる。合成法はホスホロアミダイトを用いた固相合成法、ハイドロジェンホスホネートを用いた固相合成法等がある。例えば、Tetrahedron Letters,1981, vol. 22. pp.1859-1862、国際公開第2011/052436号、国際公開第2014/046212号、国際公開第2015/125783号等に開示されている。
 本発明の糖-核酸コンジュゲート体において、核酸部分がオリゴヌクレオチドで構成される場合、上記糖部分の式(II)の構造中の結合手はオリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端の少なくともいずれか一方と結合され得る。本発明の糖-核酸コンジュゲート体を構成する核酸部分のオリゴヌクレオチドが二本鎖オリゴヌクレオチドである場合、好ましくは、第2の鎖に上記糖部分の式(II)の構造中の結合手が結合している。より好ましくは、第2の鎖の3’末端および/または5’末端に上記糖部分の式(II)の構造中の結合手が結合している。
 本発明の糖-核酸コンジュゲート体において、糖部分が結合していないオリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端はさらに修飾されていてもよい。オリゴヌクレオチドの追跡を可能にするため、オリゴヌクレオチドの薬物動態または薬力学を改善するため、および/またはオリゴヌクレオチドの安定性または結合親和性を向上させるために、当該分野で公知の修飾を利用することができる。このような修飾に用いることができる基としては、例えば、水酸基の保護基、レポーター分子、コレステロール、リン脂質、色素、蛍光分子等が挙げられる。また、本発明の糖-核酸コンジュゲート体において、上記糖部分の式(II)の構造中の結合手が結合していないオリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端はリン酸エステル部分を含んでいてもよい。本明細書において「リン酸エステル部分」とは、リン酸エステルならびに修飾リン酸エステルが含まれる、末端リン酸基を意味する。リン酸エステル部分は、いずれの末端に位置してもよいが、5’末端ヌクレオシドであることが好ましい。例えば、式:-O-P(=O)(OH)OHで示される基またはその修飾基(例えば、OおよびOHの1またはそれ以上が、H、O、OR’、S、N(R’)(ここでR’は、H、アミノ保護基または置換もしくは非置換のアルキルである)またはアルキルで置換されていてもよい。5’または3’末端は、それぞれ独立して置換または非置換の1~3のリン酸エステル部分を含んでいてもよい。
(2-2:miR302核酸改変体)
 1つの局面においては、本発明の糖-核酸コンジュゲート体を構成する核酸部分として、miR302核酸改変体を用いることができる。miR302核酸改変体については、例えば、特許文献1に記載のものを用いることができる。特に、OUM302と称するmiR302核酸改変体が好ましい。
 「miR302」とは、マイクロRNAの一種であり、miR-302/367クラスターを形成すると言われるため、このクラスターに属する任意のマイクロRNAがこの範疇に入る。少なくともmiR-367、miR-302d、miR-302a、miR-302cおよびmiR-302bの5つのメンバーが含まれる(例えば、Gao Z, Zhu X, Dou Y. The miR-302/367 cluster: a comprehensive update on its evolution and functions. Open Biol.2015;5(12):150138. doi:10.1098/rsob.150138を参照。https://www.addgene.org/98748/もまた参照)。ヒトmiR302は、miR302のうち、ヒトに由来する任意のマイクロRNAを指す。
 天然のヒトmiR302aは以下の塩基配列を有するマイクロRNAである:
5'-CCACCACUUAAACGUGGAUGUACUUGCUUUGAAACUAAAGAAGUAAGUGCUUCCAUGUUUUGGUGAUGG-3'(配列番号1)
 天然のヒトmiR302a分子は以下に示すステム-ループ構造を形成すると考えられる:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
 本明細書において、このステム-ループ構造の上半分に対応すると考えられる核酸をパッセンジャー鎖(p)、このステム-ループ構造の下半分に対応すると考えられる核酸をガイド鎖(g)と呼ぶことがある。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、配列番号1の連続した5個~69個の任意の塩基(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65または69個の塩基)からなる塩基配列から0個~10個(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個)の配列変更(例えば、置換、欠失および/または挿入)を含む塩基配列を含んでもよいし、当該塩基配列からなるものであってもよい。塩基配列には、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)およびチミン(T)以外の塩基(例えば、メチル化シトシンなどの任意のこれらの塩基のアルキル化体(例えば、メチル化体))が含まれていてもよい。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、
UAAGUGCUUCCAUGUUUUGGUGA(g1)(配列番号2)または
ACUUAAACGUGGAUGUACUUGCU(p1)(配列番号3)
の塩基配列から0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の置換、欠失および/または挿入を含む塩基配列を含み得る。配列番号2および配列番号3の配列は両方とも、配列番号1の連続した23の塩基配列である。配列番号2はガイド配列であり、配列番号3はパッセンジャー配列である。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、
UAAGUGCUUCCAUGUUUUGGUGA(g1)(配列番号2)の8番目および18番目の塩基の少なくとも一方、または
ACUUAAACGUGGAUGUACUUGCU(p1)(配列番号3)の4番目および14番目の塩基の少なくとも一方
に対応する位置において塩基の変更(置換、欠失または挿入)を含む塩基配列を含み得る。配列番号2の8番目および18番目の塩基は変更しても、その機能への影響が小さいと予測される。配列番号3の4番目および14番目の塩基は変更しても、その機能への影響が小さいと予測される。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、
UAAGUGCUUCCAUGUUUUGGUGA(g1)(配列番号2)の8番目および18番目以外の塩基において0、1、2、3、4または5個の置換、欠失または挿入を含む塩基配列、または
ACUUAAACGUGGAUGUACUUGCU(p1)(配列番号3)の4番目および14番目以外の塩基において0、1、2、3、4または5個の置換、欠失または挿入を含む塩基配列
を含み得る。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、
UAAGUGCTUCCAUGUTUTGGUTGA(g9)(配列番号4)の8番目および18番目の塩基において変更がないか、あるいは少なくとも一方の変更(置換、欠失または挿入)を含む塩基配列、または
ACCAAAACAUGGAAGCACUUACT(p10)(配列番号5)の4番目および14番目の塩基において変更がないか、あるいは少なくとも一方の変更(置換、欠失または挿入)を含む塩基配列
を含み得る。配列番号4は、配列番号1の連続した23の塩基配列(44~66番目の塩基:配列番号2の配列)から3個の塩基の置換および1個の塩基の挿入を有する配列であり、ガイド配列である。配列番号5は、配列番号1の連続した23の塩基配列(6~28番目の塩基:配列番号3の配列)から7個の塩基の置換を有する配列である。配列番号4の8番目および18番目の塩基を変更しても、その機能への影響が小さいと予測される。配列番号5の4番目および14番目の塩基を変更しても、その機能への影響が小さいと予測される。なお、g9とp10との組み合わせを「OUM302」と称する。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、2つの分子の複合体(例えば、ガイド鎖分子とパッセンジャー分子との複合体)として存在してもよいし、分離した複数種類の分子として存在してもよいし、ガイド鎖分子またはパッセンジャー分子の一方単独として存在してもよいし、1分子中にガイド鎖部分およびパッセンジャー部分の両方が含まれる分子として存在してもよい。この分子において、必要に応じて、例えば、Dicer等の作用により生体内で分解され得る配列を有していてもよい。そのような配列は、当業者は適宜設計することができ、例えば、UUGAAACUAAAGAAG(配列番号6)のような配列や構造が挙げられるが、それに限定されず、このような配列、ガイド鎖部分およびパッセンジャー部分を含む分子(例えば、分解配列は、ガイド鎖部分とパッセンジャー部分との間に位置付けられる)として核酸を設計することができる。
 miR302核酸改変体においてはパッセンジャー鎖部分がコンジュゲートされ得る。好ましくは、コンジュゲートされたパッセンジャー鎖部分とガイド鎖部分とが併用される。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、核酸の改変を受けたものであってもよい。このような核酸の改変としては、例えば、(1)糖環の2’位と4’位との間の架橋化、(2)PS骨格化、(3)リボースの2’のヒドロキシル基のアルコキシ基への置換(2’-OMe化)、(4)リボースの2’のヒドロキシル基のハロゲン原子(例えばF)への置換、(5)リボースからデオキシリボースへの置換、(6)末端5’のリン酸化および(7)リボースの2’位の炭素に結合した2つの基の間の結合関係(環の裏または表)が逆転した立体異性体糖への置換が挙げられる。この改変は、複数の改変の組み合わせであってもよい。これらの改変により、核酸はエキソヌクレアーゼ耐性および/またはエンドヌクレアーゼ耐性が付与され得、また、RNAに対する結合親和性が高められ得る。1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、上記(1)、(3)~(7)のいずれかの改変を0~10(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)含み、かつ上記(2)の改変を1~50の間の任意の数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45または50)含み、上述の塩基配列のいずれかを含む分子であり得る。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、改変を含むOUM302であり、
U^MAA^MGU^MGC^TMU^MCC^MAUMGU^MTU^MTG^MGU^MTLG^LA(配列番号7)または
LA^LC^C^A^A^A^A^C^A^U^G^G^A^A^G^C^A^C^U^U^A^LC^LT(配列番号8)
(式中、U =ウラシル、A=アデニン、G=グアニン、T=チミン、C=シトシンであり、さらにMA=2’-OMe RNA-A;MG=2’-OMe RNA-G;MC=2’-OMe RNA-C;MT=2’-OMe RNA-T;LG=LNA-G;LA=LNA-A;^=PS連結改変である)
の構造を含んでもよい。また、核酸の改変は上記に限定されない。例えば、糖修飾に関して、2’,4’-BNA/LNA(2’,4’-架橋核酸/ロックド核酸)の代わりにAmNA(アミド架橋核酸)を用いてもよい。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、上記改変とは異なる機能性部分(例えば、核酸改変体の検出、組織標的化、安定性向上および/または他の分子との結合を促進する部分)を含み得る。機能性部分としては、例えば、蛍光色素、発光色素、PEG、コレステロール、脂質、ビオチン、リンカー部分(NHS、アジドまたはアルキンを含む部分など)が挙げられるが、これらに限定されない。
 当業者は、本明細書に記載される核酸改変体を、任意の公知の手法(例えば、Current protocols in nucleic acid chemistry(https://currentprotocols.onlinelibrary.wiley.com/journal/19349289)などを参照)を使用して合成することができる。
 1つの実施形態では、miR302核酸改変体は、癌などの疾患の治療に使用され得る。miR302核酸改変体の使用によって治療され得る癌としては、膵臓癌(例えば、早期膵臓癌)、肝臓癌、胆嚢癌、胆道癌、胃癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、乳癌、肺癌、脳腫瘍および皮膚癌が挙げられるが、これらに限定されない。
(cRGD-核酸コンジュゲート体)
 本発明のcRGD-核酸コンジュゲート体は、cRGD部分および核酸部分を含む。
(1)cRGD部分
 cRGD-核酸コンジュゲート体を構成するcRGD部分は、以下の式(III)で表される構造を含む:
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
 式(III)中、qは1から10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10)であり、Xは、薬学的に許容し得るカチオンであり、そして*は結合手である。
 式(III)の構造を含むcRGD部分は、例えば、環状のRGDペプチド(cRGD)のSH基にてマレイミド-PEG2-NHSを連結させて得られたものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
(2)核酸部分
 cRGD-核酸コンジュゲート体を構成する核酸部分は、上記糖-核酸コンジュゲート体を構成する核酸部分と同様である。
(コンジュゲート体の合成方法)
 本発明のコンジュゲート体(すなわち、糖-核酸コンジュゲート体およびcRGD-核酸コンジュゲート体)は、例えば、予め核酸部分(例えば、オリゴヌクレオチド)の固相上の自動合成の際に、その材料としてオリゴヌクレオチドを構成可能な核酸分子と、糖部分またはcRDGを構成する化合物とを添加することによって、糖類部分またはcRDG部分を核酸部分とコンジュゲートすることができる。
 核酸部分の末端にアミノ基を有する場合、当該核酸部分は、カルボキシ基(-COOH)を有する化合物と作用してコンジュゲート体を得ることができる。例えば、核酸部分とcRGD部分とのコンジュゲート化では、核酸部分を構成する核酸の5’末端をリン酸化し、アミノ末端を付与するように改変し得る。これを、例えばcRGDとマレイミド-PEG2-NHSとを連結したものを、核酸部分のアミノ末端と反応させることにより、コンジュゲート体を得ることができる。
(医薬組成物)
 本発明の医薬組成物は、上記コンジュゲート体を含有する。
 本発明の医薬組成物の投与方法および剤形は、特に限定されず、当該分野で公知の投与方法および剤形が利用可能である。
 本発明の医薬組成物は、局所的あるいは全身的な治療、または治療すべき領域に応じて様々な方法により投与することができる。投与方法としては、例えば、局所的(例えば、点眼、膣内、直腸内、鼻腔内および経皮を含む)、経口的、または非経口的であってもよい。非経口的投与としては、静脈内注射もしくは点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注入、吸引もしくは吸入による気道を介した肺投与等が挙げられる。
 本発明の医薬組成物等を局所投与する場合、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴下剤、坐剤、噴霧剤、液剤、散剤等の剤形が採用され得る。
 経口投与用組成物の例としては、散剤、顆粒剤、水もしくは非水性媒体に溶解させた懸濁液または溶液、カプセル、粉末剤、錠剤等が挙げられる。非経口投与用組成物としては、バッファー、希釈剤およびその他の適当な添加剤を含む無菌水溶液等が挙げられる。
 本発明の医薬組成物は、上記コンジュゲート体における「核酸部分」の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合して得ることができる。注射剤の場合には適切な担体と共に滅菌処理を行なって製剤化することができる。
 投与対象の個体(生体)としては、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくは、ヒト、サル、イヌ、ネコなどの愛玩動物、ウシ、ブタなどの家畜動物であり、さらに好ましくはヒトである。投与有効量は、投与される個体に依存するが、個体の種類、性別、年齢、体重、症状等、ならびに投与の方法、経路、頻度などに応じて任意に定めることができる。
 1つの実施形態では、医薬組成物は抗腫瘍剤である。膵臓癌(例えば、早期膵臓癌)、肝臓癌、胆嚢癌、胆道癌、胃癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、乳癌、肺癌、脳腫瘍および皮膚癌が挙げられるが、これらに限定されない。
 以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
 以下の実施例で用いる動物の取り扱いは、国立大学法人大阪大学の動物実験ガイドラインにしたがって実施した。試薬類については具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、Sigma-Aldrich社、富士フイルム和光純薬株式会社、ナカライテスク株式会社等より市販されている同等品も代用可能である。
(実施例1:フコースアミダイト(フコース誘導体)の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
(1-1:化合物F3の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
 窒素気流下、文献(Carbohydrate Research 2019,471,85-94)に記載の化合物F2(7.50g,12.9mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(75.0mL)に溶解し、ヒドラジン酢酸塩(3.08g,32.3mmol)を加えて35℃で14時間撹拌した。次いで、反応液をジエチルエーテルで希釈し、飽和重曹水と飽和食塩水とで洗浄した後、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:4→2:3(容量比))で精製し、標題の化合物F3(3.78g、62%)を白色泡状固体として得た。化合物F3の物性データを表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000025
(1-2:化合物F4の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000026
 窒素気流下、上記で得られた化合物F3(490mg,1.03mmol)をジクロロメタン(10.0mL)に溶解し、氷浴中でトリクロロアセトニトリル(1.2mL,11.9mmol)とジアザビシクロウンデセン(30μL,0.20mmol)を加え、室温で14時間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:4(容量比))で精製し、標題の化合物F4(620mg、97%)を薄黄色泡状固体として得た。本化合物については、精製することなく次の反応にそのまま使用した。
(1-3:化合物F5の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000027
 アルゴン気流下、上記で得られた化合物F4(3.28g,5.28mmol)とモレキュラーシーブス4Å(1.5g)にジクロロメタン(25.0mL)を加えた。次いで、文献(Journal of Medicinal Chemistry 1991,34,2692-2701)に記載の化合物L1(1.32g,6.34mmol)のジクロロメタン(3.0mL)溶液を加え、-40℃で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.3mL,10.6mmol)を滴下した。3時間後、飽和重曹水(20.0mL)を加えて、ジクロロメタンで抽出した。その後、有機相を飽和重曹水と飽和食塩水とで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1回目:酢酸エチル:ヘキサン=1:4(容量比)、2回目:クロロホルム)で精製し、標題の化合物F5(2.61g,74%)を無色油状物質として得た。化合物F5の物性データを表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000028
(1-4:化合物F6の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000029
 上記で得られた化合物F5(460mg,689μmol)の酢酸エチル(7.0mL)溶液に10%パラジウム/炭素(161mg)を加え、水素気流化で30分激しく撹拌した。その後、反応混合物をろ過し、ろ液を減圧留去することにより標題の化合物F6(388mg、97%)を白色泡状固体として得た。化合物F6の物性データを表3に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000030
(1-5:化合物F7の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000031
 窒素気流下、上記で得られた化合物F6(389mg,0.674mmol)にジクロロメタン(3.0mL)とアセトニトリル(3.0mL)を加え溶解させた。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.3mL,13.5mmol)とN,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボラート(203mg,674μmol)を加え、室温で1.5時間撹拌した。その後、文献(Nucleic Acids Research 2014,42,8796-8807)に記載の化合物P1(280mg,0.667mmol)のジクロロメタン(2.5mL)溶液を加え、さらに室温で17時間撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈した後、飽和重曹水と飽和食塩水とで洗浄し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。次いで、溶媒を減圧下で留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(2%トリエチルアミン含有のクロロホルム:酢酸エチル=1:1(容量比))と再沈殿(酢酸エチル/ヘキサン)にて精製し、標題の化合物F7(468mg、71%)を白色泡状固体として得た。化合物F7の物性データを表4に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000032
(1-6:化合物F8の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000033
 アルゴン気流下、上記で得られた化合物F7(450mg,460μmol)のジクロロメタン(5.0mL)溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(250μL,1.44mmol)と2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト(185μL,829μmol)とを0℃で加え、1.5時間撹拌した。次いで、反応液をジクロロメタンで希釈し、水と飽和食塩水とで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン含有の酢酸エチル:ヘキサン=2:3(容量比))にて精製し、標題の化合物F8(453mg、84%;フコースアミダイト)を白色泡状固体として得た。化合物F8の物性データを表5に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000034
(実施例2:グルコースアミダイト(グルコース誘導体)の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000035
(2-1:化合物G5の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000036
 窒素気流下、文献(Bulletin of the Korean Chemical Society 2011,32,2286-2300)に記載の化合物G4(1.16g,1.57mmol)にジクロロメタン(30.0mL)を加えた。次いで、文献(Journal of Medicinal Chemistry 1991,34,2692-2701)に記載の化合物L1(420mg,2.02mmol)のジクロロメタン(7.5mL)溶液を加え、-40℃で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(600μL,15.9mmol)を滴下した。6.5時間後、飽和重曹水(10.0mL)を加えて、ジクロロメタンで抽出した。その後、有機相を飽和重曹水と飽和食塩水とで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1回目:酢酸エチル:ヘキサン=1:4、2回目:クロロホルム:メタノール=50:1(容量比))で精製し、標題の化合物G5(437mg,35%)を無色油状物質として得た。化合物G5の物性データを表6に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000037
(2-2:化合物G6の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000038
 上記で得られた化合物G5(734mg,932μmol)の酢酸エチル(10.0mL)溶液に10%パラジウム/炭素(228mg)を加え、水素気流化で2時間激しく撹拌した。その後、反応混合物をろ過し、ろ液を減圧下で留去することにより標題の化合物G6(582mg、90%)を白色泡状固体として得た。化合物G6の物性データを表7に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000039
(2-3:化合物G7の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000040
 窒素気流下、上記で得られた化合物G6(582mg,835μmol)にジクロロメタン(2.0mL)とアセトニトリル(4.0mL)を加え溶解させた。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.9mL,16.6mmol)とN,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボラート(252mg,837μmol)とを加え、室温で1時間撹拌した。その後、文献(Nucleic Acids Research 2014,42,8796-8807)に記載の化合物P1(350mg,834μmol)のジクロロメタン(4mL)溶液を加え、さらに室温で5時間撹拌した。反応液をジクロロメタンで希釈した後、飽和重曹水と飽和食塩水とで洗浄し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。次いで、溶媒を減圧下で留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン含有のクロロホルム:酢酸エチル=1:1(容量比))と再沈殿(酢酸エチル/ヘキサン)にて精製し、標題の化合物G7(648mg、70%)を白色泡状固体として得た。化合物G7の物性データを表8に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000041
(2-4:化合物G8の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000042
 アルゴン気流下、上記で得られた化合物G7(297mg,270μmol)のジクロロメタン(3.0mL)溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(150μL,864μmol)と2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト(110μL,493μmol)とを0℃で加え、室温で1.5時間撹拌した。次いで、反応液をジクロロメタンで希釈し、水と飽和食塩水とで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧下で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン含有の酢酸エチル:ヘキサン=2:3(容量比))にて精製し、標題の化合物G8(294mg、84%;グルコースアミダイト)を白色泡状固体として得た。化合物G8の物性データを表9に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000043
(実施例3:マンノースアミダイト(マンノース誘導体)の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000044
(3-1:化合物M5の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000045
 アルゴン気流下、文献(Bulletin of the Korean Chemical Society 2011, 32, 2286-2300)に記載の方法を用いて化合物M1から化合物M4を合成し、この化合物M4(2.53 g,3.41mmol)とモレキュラーシーブス4Å(1.25g)にジクロロメタン(20.0mL)を加えた。次いで、文献(Journal of Medicinal Chemistry 1991, 34, 2692-2701)に記載の化合物L1(1.05g,5.06mmol)のジクロロメタン(5.0mL)溶液を加え、-40℃で三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(850μL,6.77mmol)を滴下した。1.5時間後、飽和重曹水(30.0mL)を加えて、ジクロロメタンで抽出した。その後、有機相を飽和重曹水と飽和食塩水とで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)で精製し、標題の化合物M5(1.89g,71%)を無色油状物質として得た。化合物M5の物性データを表10に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000046
(3-2:化合物M6の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000047
 上記で得られた化合物M5(747mg,949μmol)の酢酸エチル(10.0mL)溶液に10%パラジウム/炭素(174mg)を加え、水素気流化で1時間激しく撹拌した。その後、反応混合物をろ過し、ろ液を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:3)で精製し、標題の化合物M6(478mg、72%)を白色泡状固体として得た。化合物M6の物性データを表11に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000048
(3-3:化合物M7の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000049
 窒素気流下、上記で得られた化合物M6(349mg,500μmol)にジクロロメタン(1.0mL)とアセトニトリル(1.0mL)とを加え溶解させた。続いて、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(850μL,5.00mmol)とN,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボラート(159mg,528μmol)とを加え、室温で1時間撹拌した。次に、文献(Nucleic Acids Research 2014, 42, 8796-8807)に記載の化合物P1(278mg,661μmol)のジクロロメタン(2.0mL)溶液を加え、さらに室温で2.5時間撹拌した。反応液に飽和重曹水(3.0mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。飽和重曹水と飽和食塩水とで洗浄し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。続いて、溶媒を減圧留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン含有のクロロホルム:酢酸エチル=1:1)と再沈殿(酢酸エチル/ヘキサン)にて精製し、標題の化合物M7(468mg、85%)を白色泡状固体として得た。化合物M7の物性データを表12に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000050
(3-4:化合物M8の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000051
 アルゴン気流下、上記で得られた化合物M7(355mg,323μmol)のジクロロメタン(3.0mL)溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(180μL,1.03mmol)と2-シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト(130μL,583μmol)を0℃で加え、2時間撹拌した。続いて、反応液に飽和重曹水(2.0mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。飽和重曹水と飽和食塩水で洗浄した後、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%トリエチルアミン含有の酢酸エチル:ヘキサン=1:4~2:3)にて精製し、標題の化合物M8(323mg、77%)を白色泡状固体として得た。化合物M8の物性データを表13に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000052
(実施例4:コンジュゲートしたオリゴヌクレオチド(糖-核酸コンジュゲート体)の合成および精製)
 実施例1で得られた化合物F8(フコースアミダイト)、実施例2で得られた化合物G8(グルコースアミダイト)および実施例3で得られた化合物M8(マンノースアミダイト)をそれぞれ0.1Mの無水アセトニトリル溶液として調製し、合成機(GeneDesign社製nS-8 Oligonucleotides Synthesizer)を用い、トリチルオン条件にてオリゴヌクレオチドの合成を行った。活性化剤には5-(ベンジルチオ)-1H-テトラゾール(0.25Mアセトニトリル溶液)を用い、縮合時間は化合物F8、G8およびM8について8分間(96秒間×5)へと延長した。キャッピング時間(キャッピング試薬:無水酢酸)は20秒間とし、デブロッキング時間(デブロッキング試薬:3w/v%トリクロロ酢酸のジクロロメタン溶液)は20秒間(10秒間×2)に設定した。その他、通常のホスホロアミダイト法に従って合成を行った。合成完了後、28%アンモニア水溶液を用い、室温下で4時間処理してカラム担体からの切り出しを行い、引き続き55℃で終夜静置することにより塩基部の脱保護を行った。次いで、簡易逆相カラム(Waters Sep-Pak(登録商標)Plus C18 Environmental Cartridges)により精製し、この際にトリフルオロ酢酸を用いてトリチル基を除去し、さらに逆相HPLCにて精製して、目的のオリゴヌクレオチドを得た。
 マトリックス(10mg/mL 3-ヒドロキシピコリン酸水溶液:1mg/mLクエン酸二アンモニウム水溶液=1:1,1μL)を乾燥させた箇所に、オリゴヌクレオチド水溶液(約50μM,1μL)を載せて再度乾燥させ、MALDI-TOF MSによってオリゴヌクレオチドの組成を確認した。分子量の測定はネガティブモードで行い、オリゴチミジル酸(13,17,21,23mer)を外部標準として用いた。また、オリゴヌクレオチドの定量を、吸光度測定器を用いる260nmの紫外部吸収を測定することにより行った。
 合成したオリゴヌクレオチドは以下の通りである。ON1からON6は、mMALAT1アンチセンス核酸(配列番号9(ON1からON6))にフコースアミダイト(実施例1の化合物F8)、グルコースアミダイト(実施例2の化合物G8)またはマンノースアミダイト(実施例3の化合物M8)をコンジュゲートした実施例である。ON1は1個のフコースアミダイト、ON2は3個のフコースアミダイト、ON3は1個のグルコースアミダイト、ON4は3個のグルコースアミダイト、ON5は1個のマンノースアミダイト、そしてON6は3個のマンノースアミダイトとコンジュゲートしたものであった。Fuc3-302a-pass-10は、OUM302のパッセンジャー鎖(p10:配列番号8)にフコースアミダイト(実施例1)をコンジュゲートした実施例である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000053
(実施例5:cRGD-核酸コンジュゲート体の合成および精製)
 cRGD付きコンジュゲート体の調製もまた、株式会社ジーンデザインに委託して行った。固相核酸合成の際に、パッセンジャー鎖(302a-pass-10:実施例4のFuc3-302a-pass-10より3分子のフコースアミダイトを除いたもの:配列番号8)とMMT-へキシルアミノホスホロアミダイトとをカップリングさせることによりアミノリンカーを伸長し、その後マレイミド-PEG2-NHSと縮合させ、cRGDペプチドと連結させることによりコンジュゲート体を得た。得られたコンジュゲート体について以下のHPLC条件:
 (HPLC条件)
 使用カラム:X-Bridge c18 2.5μm 4.6*75mm
 カラム温度:60℃
 溶媒A:100mM MHFIP,8mM TEA
 溶媒B:メタノール
 溶媒Bグラジエント:5~30%,20分
 流速:1mL/分
でHPLC分析を行った。HPLC分析の結果を図1に示す。また、得られたコンジュケート体についてのマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-MS)の結果は、計算値8920.31に対して実測値8918.03であった。
(実施例6:動物投与用のコンジュゲート体)
 動物に対し、実施例4で調製したフコースアミダイトをコンジュゲートしたOUM302パッセンジャー鎖(Fuc3-302a-pass-10)、または実施例4で調製したcRGDをコンジュゲートしたOUM302パッセンジャー鎖を、OUM302のガイド鎖(g9)と共に投与した(それぞれを「フコースアミダイトをコンジュゲートしたOUM302」「cRGDをコンジュゲートしたOUM302」ともいう)。
 OUM302のガイド鎖として、U^MAA^MGU^MGC^MTU^MCC^MAU^MGU^MTU^MTGM^GU^MTLG^LA(式中、MA=2’-OMe RNA-A;MG=2’-OMe RNA-G;MC=2’-OMe RNA-C;MT=2’-OMe RNA-T;LG=LNA-G;LA=LNA-A;^=PS連結改変である)を用いた(配列番号7)。ガイド鎖を、株式会社ジーンデザインに委託して合成した。
(実施例7:動物投与によるコンジュゲート体の腫瘍抑制の評価)
 担癌マウス(1×10個のMIA PaCa-2(ヒト膵癌細胞株)を5週齢のNOD-SCIDマウス(日本エスエルシー株式会社より入手)の背部皮下に移植して作製した)に核酸(62.5nmol/kg)(フコースアミダイトをコンジュゲートしたOUM302、cRGDをコンジュゲートしたOUM302または非コンジュゲートOUM302)を単回尾静脈注射し、0日目、5日目、7日目および13日目に腫瘍体積を計算式(短径×長径)/2により計測した。また、生理食塩水投与群をコントロールとした。腫瘍体積の結果は、0日目に測定した腫瘍体積に対する相対値として表した。結果を図2に示す。
 図2に示すように、フコースアミダイトとOUM302とのコンジュゲート体(図2中、「フコースコンジュゲート」という)を投与したマウス、およびcRGDとOUM302とのコンジュケート体(図2中、「cRGDコンジュゲート」という)を投与したマウスでは、非コンジュゲートOUM302(図2中、「非コンジュゲート」という)の投与に比べて、腫瘍の形成が抑制されていた。なお、例えば特許文献1においてOUM302は高分子ポリマーであるユニットPICと併用して投与されたが、これらのコンジュゲート体はそのような高分子ポリマーを用いることなく優れた抗腫瘍効果を示していた。
(実施例8:動物投与の際のコンジュゲート体の安全性の評価)
 6週齢のマウス(C57BL/6NCrl、雄)の尾静脈に、核酸(20mg/kg)(フコースアミダイトをコンジュゲートしたOUM302、cRGDをコンジュゲートしたOUM302または非コンジュゲートOUM302)を投与した。コントロールとして生理食塩水を投与した。96時間後に採血を行い、血清中のアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)および乳酸脱水素酵素(LDH)の活性をそれぞれ、LタイプワコーAST・J2(富士フイルム和光純薬株式会社製)、LタイプワコーALT・J2(富士フイルム和光純薬株式会社製)およびLタイプワコーLD・J(富士フイルム和光純薬株式会社製)の各キットを用い、7180形日立自動分析装置(株式会社日立ハイテク製)により測定した。
 結果を表15に示す。表15中のサンプル1および2は、フコースアミダイトとOUM302とのコンジュゲート体の結果であり、サンプル3および4は生理食塩水を投与したコントロールの結果であり、サンプル5および6はcRGDとOUM302とのコンジュゲート体の結果であり、サンプル7および8は非コンジュゲートOUM302の結果である。なお、これらのうち4検体は測定不可であったため、評価を行わなかった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000054
 表15に示すように、フコースアミダイトとOUM302とのコンジュゲート体(サンプル1)およびcRGDとOUM302とのコンジュゲート体(サンプル5)はいずれも、投与したマウスに対し顕著な毒性を示しておらず安全に使用できることがわかる。
 本発明は、例えば、医薬品の開発および製造において有用である。

Claims (14)

  1.  以下の式(I):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (式(I)中、
     R、R、およびRはそれぞれ独立して、
      水素原子、または
      核酸合成の水酸基の保護基、
    であり、
     Rは、
      水素原子、または
      -OR[式中、Rは水素原子または核酸合成の水酸基の保護基である]
    であり、
     RおよびRはそれぞれ独立して、
      水素原子、
      核酸合成の水酸基の保護基、
      分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基であって、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなる群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよい、アルキル基、
      α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基であって、
        ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなる、リン酸基、
      核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、あるいは
     -P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から6のアルコキシ基、炭素数1から6のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基を表す]
    であり、
     ただし、RおよびRが同一である場合を除き、そして
     nは1から5の整数である)
     で表される、糖誘導体。
  2.  前記式(I)におけるnが4である、請求項1に記載の糖誘導体。
  3.  前記式(I)におけるRが水素原子である、請求項1または2に記載の糖誘導体。
  4.  糖部分および核酸部分を含む糖-核酸コンジュゲート体であって、
     該糖部分が以下の式(II):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
    (式(II)中、
     R、R、およびRはそれぞれ独立して、水素原子、または核酸合成の水酸基の保護基であり、
     Rは、
      水素原子、または
      -OR[式中、Rは水素原子または核酸合成の水酸基の保護基である]
    であり、
     nは1から5の整数であり、
     mは1から10の整数であり、
     Xは、薬学的に許容し得るカチオンであり、そして
     *は結合手である)
    で表される構造を含む、糖-核酸コンジュゲート体。
  5.  前記式(II)におけるR、RおよびRがともに水素原子である、請求項4に記載の糖-核酸コンジュゲート体。
  6.  前記式(II)におけるnが4である、請求項4または5に記載の糖-核酸コンジュゲート体。
  7.  前記式(II)におけるRが水素原子である、請求項4から6のいずれかに記載の糖-核酸コンジュゲート体。
  8.  前記核酸部分がmiRNAまたはその改変体の塩基配列から構成されている、請求項4から7のいずれかに記載の糖-核酸コンジュゲート体。
  9.  前記miRNAがヒトmiR302a(配列番号1)またはその改変体である、請求項8に記載の糖-核酸コンジュゲート体。
  10.  前記miRNAが、配列番号2または配列番号3の塩基配列から0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の塩基が置換、欠失または挿入された配列を含む、請求項8または9に記載の糖-核酸コンジュゲート体。
  11.  請求項4から10のいずれかに記載の糖-核酸コンジュゲート体を含有する、医薬組成物。
  12.  抗腫瘍剤として使用される、請求項11に記載の医薬組成物。
  13.  cRGD部分および核酸部分を含む、cRGD-核酸コンジュゲート体であって、
     該cRGD部分が以下の式(III):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
    (式(III)中、
     qは1から10の整数であり、
     Xは、薬学的に許容し得るカチオンであり、そして
     *は結合手である)
    で表される構造を含む、cRGD-核酸コンジュゲート体。
  14.  前記核酸部分がmiRNAまたはその改変体の塩基配列から構成されている、請求項13に記載のcRGD-核酸コンジュゲート体。
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