WO2022264983A1 - フィルター構造体 - Google Patents

Abstract

通気性を有し通過する気体を濾過するフィルター層（１）と、フィルター層（１）の一方面の少なくとも一部に粘着剤により形成された粘着剤層（１０）とを有し、フィルター層（１）の大きさは第１の対象物の寸法に適合するように設定され、第１の対象物よりも寸法が小さい第２の対象物に貼り付ける場合は、フィルター層（１）を所定の位置で切断するように設定されたフィルター構造体（Ｆ）であって、粘着剤層は、フィルター層（１）の輪郭に沿って連続する帯状の輪郭粘着剤層（１１）と、輪郭粘着剤層（１１）の内側に輪郭粘着剤層から所定の間隔を置いて輪郭粘着剤層の少なくとも一部に沿って連続する帯状の区画粘着剤層（Ｌ１）とを含み、輪郭粘着剤層（１１）と区画粘着剤層（Ｌ１）との間に、第２の対象物の大きさに適合させるためにフィルター層を切断するための適正切断領域（Ｒ１）が設定される。

Description

フィルター構造体

　本発明は、エアコンディショナー（以下、エアコンと言う）の対象物の吸気口に貼り付けて、通過する気体をろ過するためのフィルター構造体に関する。

　エアコン等の運転時に吸引する気体から塵埃等を取り除くため、従来、吸気口に貼り付けて通過する気体を濾過するフィルター構造体が使用されている。従来のフィルター構造体は一般に、不織布等の通気性を有する材料から成るシート状のフィルター層と、フィルター層の一方の面に粘着剤で形成された粘着剤層と、粘着剤層の表面に積層された剥離シート等のシート層とを有している。

　従来のフィルター構造体には、家庭用のエアコンを主たる使用対象とするもののほか、日本国実用新案登録第３１０１０６３号公報に記載されるフィルター構造体のように、比較的大型の天井埋め込み式の業務用エアコン（日本国特開２０１１－１５３７２５号公報参照）を使用対象とするものも知られている。

日本国実用新案登録第３１０１０６３号公報 日本国特開２０１１－１５３７２５号公報

　業務用エアコンには様々な大きさのものが存在するから、吸気口を覆うフィルター構造体の寸法もそれらに合わせて変更する必要がある。しかしながら特許文献１には１種類の大きさのフィルター構造体しか記載されていないので、取付対象となるエアコンの吸気口の寸法が、予め用意したフィルター構造体と適合しない場合は、フィルター構造体が吸気口の一部しか覆えなかったり、逆にフィルター構造体が大きすぎて吸気口周辺に設けられる吹出口と干渉したりするなどの問題が生じるおそれがある。業務用エアコンの寸法ごとに異なるフィルター構造体を予め用意することも考えられるが、この場合は、多品種の製品を準備する必要があるから、製造、流通、在庫等の管理が煩雑化する。

　そこで本発明は、１種類で、寸法の異なる複数種類の取付対象物に対応できることが可能なフィルター構造体の提供を目的とする。

　上記目的を達成するため、この発明の第１の局面におけるフィルター構造体は、通気性を有し通過する気体を濾過するフィルター層と、フィルター層の一方面の少なくとも一部に粘着剤により形成された粘着剤層とを有し、フィルター層の大きさは貼り付けが予定される第１の対象物の寸法に適合するように設定され、第１の対象物よりも寸法が小さい第２の対象物に貼り付ける場合は、フィルター層を所定の位置で切断するように設定されたフィルター構造体であって、粘着剤層は、フィルター層の輪郭に沿って連続する帯状の輪郭粘着剤層と、輪郭粘着剤層の内側に輪郭粘着剤層から所定の間隔を置いて輪郭粘着剤層の少なくとも一部に沿って連続する帯状の区画粘着剤層とを含み、輪郭粘着剤層と区画粘着剤層との間に、第２の対象物の大きさに適合させるためにフィルター層を切断するための適正切断領域が設定されているものである。

　このように構成すると、帯状の輪郭粘着剤層と帯状の区画粘着剤層との間に設定した適正切断領域内でフィルター構造体を切断すると、フィルター層の大きさが第２の対象物の大きさに適した大きさとなるという作用１が得られる。

　この発明の第２の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面における発明の構成において、粘着剤層は、輪郭粘着剤層からの間隔が異なる複数の区画粘着剤層を含むものである。

　このように構成すると、適正切断領域が複数になるから、切断後の寸法が異なる複数種類のフィルター層が得られるという作用２が得られる。

　この発明の第３の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面又は第２の局面における発明の構成において、区画粘着剤層は、輪郭粘着剤層の一部に沿って連続し、その端部において輪郭粘着剤層の他の部分に接続するように形成されるものである。

　このように構成すると、適正切断領域内で切断したフィルター層のほぼ全周にわたり、粘着剤層が連続するという作用３が得られる。

　この発明の第４の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面から第３の局面のいずれかにおける発明の構成において、輪郭粘着剤層と区画粘着剤層との間に設定される適正切断領域は、切断前後のフィルター層が互いに相似形となるように設定されるものである。

　このように構成すると、切断後のフィルター層の形状が、切断前のフィルター層と相似に保たれるという作用４が得られる。

　この発明の第５の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面から第４の局面のいずれかにおける発明の構成において、フィルター層は、その一部を切除するための少なくとも1つの切除予定領域が設定され、粘着剤層は、切除予定領域の輪郭に沿って連続するように、フィルター層の非切除側に形成された境界粘着剤層を更に含み、境界粘着剤層は輪郭粘着剤層に連続するものである。

　このように構成すると、切除予定領域を切除したときに、切除した部分に沿って粘着剤層が連続するという作用５が得られる。

　この発明の第６の局面におけるフィルター構造体は、第５の局面における発明の構成において、対象物が、吸気口の内方又は周囲の少なくとも一部にセンサが設けられた天井埋め込み式のエアコンであり、フィルター層の切除予定領域は、センサに対応する位置に設けられるものである。

　このように構成すると、切除予定領域を切除すると、フィルター層がエアコンのセンサと干渉しなくなるという作用６が得られる。

　この発明の第７の局面におけるフィルター構造体は、第５の局面又は第６の局面における発明の構成において、フィルター層は矩形又は正方形の形態を有し、切除予定領域がフィルター層の四隅のうちの少なくとも１個所を含む領域に設定され、粘着剤層は、輪郭粘着剤層と平行に形成された複数の格子状粘着剤層を更に含み、格子状粘着剤層の一部によって切除予定領域に対応する境界粘着剤層が形成され、格子状粘着剤層の一部を区画粘着剤層として選択可能であるものである。

　このように構成すると、格子状粘着剤層によって、境界粘着剤層と区画粘着剤層とが形成されるという作用７が得られる。

　この発明の第８の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面から第７の局面のいずれかにおける発明の構成において、粘着剤層の表面に積層され且つ剥離可能なシート層を更に含むものである。

　このように構成すると、シート層が粘着剤層の表面を保護するという作用８が得られる。

　この発明の第９の局面におけるフィルター構造体は、第８の局面における発明の構成において、シート層は、フィルター層上の少なくとも中間位置又はその近傍位置において分割された少なくとも２つの分割シート層を含み、粘着剤層は、隣接する分割シート層における隣接する輪郭それぞれに沿って形成された少なくとも２本の帯状の補強粘着剤層を更に含み、補強粘着剤層は、その幅寸法が、輪郭粘着剤層及び／又は区画粘着剤層の幅寸法よりも大きく設定されるものである。

　このように構成すると、シート層が分割されるフィルター層の中間位置又はその近傍位置に、輪郭粘着剤層及び／又は区画粘着剤層よりも幅寸法が大きい少なくとも２本の補強粘着剤層が形成されるという作用９が得られる。

　以上説明したように、この発明の第１の局面におけるフィルター構造体は、作用１が得られるため、フィルター層の大きさを第２の対象物に適した大きさに変更することが容易になる。又、１種類のフィルター構造体で、少なくとも２種類の大きさの対象物に対応可能となる。

　この発明の第２の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面における発明の効果に加えて、作用２が得られるため、１種類のフィルター構造体で、寸法が異なる複数種類の対象物に対応可能となる。

　この発明の第３の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面又は第２の局面における発明の効果に加えて、作用３が得られるため、切断後のフィルター層のほぼ全周にわたり対象物との間が粘着剤で閉塞されるから、フィルター層を通過せずに気体が吸い込まれるのが抑制される。

　この発明の第４の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面から第３の局面のいずれかにおける発明の効果に加えて、作用４が得られるため、例えば業務用エアコンのように、寸法違いであっても形状が基本的に正方形であるような対象物への適用が容易になる。

　この発明の第５の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面から第４の局面のいずれかにおける発明の効果に加えて、作用５が得られるため、境界粘着剤層によって切除予定領域の範囲の確認が容易になる。又、フィルター層における非切除側部分の端縁部と対象物との間が粘着剤層で閉塞されるから、気体がフィルター層を通過せずに吸い込まれるのが抑制される。

　この発明の第６の局面におけるフィルター構造体は、第５の局面における発明の効果に加えて、作用６が得られるため、エアコンのセンサの機能が正常に保たれる。

　この発明の第７の局面におけるフィルター構造体は、第５の局面又は第６の局面における発明の効果に加えて、作用７が得られるため、フィルター層に格子状粘着剤層を形成すればよいから、粘着剤層の形成パターンを簡略化でき、製造効率が向上する。

　この発明の第８の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面から第７の局面のいずれかにおける発明の効果に加えて、作用８が得られるため、フィルター構造体の使用前に粘着剤層の表面に異物が付着したりして使用時の粘着性低下を引き起こしたり、粘着剤層が目的の対象物以外に貼り付いたりすることを防止できる。又、複数のフィルター構造体を重ね合わせることも可能になる等、取り扱い性が向上する。

　この発明の第９の局面におけるフィルター構造体は、第８の局面における発明の効果に加えて、作用９が得られるため、一部の分割シート層を剥離して、フィルター層を一部分ずつ対象物に確実に貼り付けることができるから、フィルター構造体を対象物に取り付けやすくなる。

本発明の実施の形態によるフィルター構造体の一例を示す正面図である。 図１に示すフィルター構造体の一部を拡大し、シート層を一部剥離した状態を示す斜視図である。 図１のフィルター構造体において、適正切断領域の設定例を示す正面図である。 図１のフィルター構造体において、フィルター層の一部を適正切断領域及び切除予定領域で切断した状態を示す正面図である。 図１のフィルター構造体における各粘着剤層の幅寸法の関係を説明するための一部を拡大した正面図である。 図１のフィルター構造体の他の切断例を示す正面図である。

　図１は本発明の実施の形態によるフィルター構造体の一例を示す正面図であり、図２は図１に示すフィルター構造体の一部を拡大し、シート層を一部剥離した状態を示す斜視図であり、図３は図１のフィルター構造体において、適正切断領域の設定例を示す正面図であり、図４は図１のフィルター構造体において、フィルター層の一部を適正切断領域及び切除予定領域で切断した状態を示す正面図であり、図５は図１のフィルター構造体における各粘着剤層の幅寸法の関係を説明するための一部を拡大した正面図である。

　この実施の形態のフィルター構造体Ｆは、天井埋め込み式の業務用エアコンを使用対象とするものであり、吸気口に貼着して通過する気体を濾過し、塵埃等が直接吸い込まれるのを抑制するためのものである。例えば特許文献２に示されるエアコンは、室内に臨むパネルがほぼ正方形の輪郭を有し、その中央にほぼ正方形の吸気口が設けられ、吸気口の４辺それぞれの外側に吹出口が配置された構造を有している。本例のフィルター構造体Ｆは、上記エアコンの吸気口の形状に合わせて、正方形となされている。

　このフィルター構造体Ｆは、通気性を有し通過する気体を濾過するシート状のフィルター層１と、フィルター層１の一方面の少なくとも一部に粘着剤により形成され、対象物に対し粘着力を発揮する粘着剤層１０と、粘着剤層１０の表面に積層され且つ剥離可能なシート層３０を備える。

　フィルター層１は、例えば不織布、織布、又は編み布等で構成され、埃等の捕集と気体の流通とが両立すると共に、実用的な強度を有するものである。好適には、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）等のポリエステル、ポリプロピレン又はプロピレン主体の共重合体、モダクリルを含むアクリル等の合成樹脂繊維で構成される不織布を用いることができるが、これらに限定されない。不織布の製造方法についても限定はなく、例えばケミカルボンド法やサーマルボンド法等の公知の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。又、フィルター層１は、抗ウイルス性付与や抗菌処理等の加工が施されていてもよい。

　粘着剤層１０を形成する粘着剤は特に限定されず、例えば、２液混合型ポリウレタン系粘着剤のような主剤及び硬化剤を含む２液混合型粘着剤やアクリル系ホットメルト粘着剤のようなホットメルト粘着剤等が使用できる。又、粘着剤には、必要に応じ、密着性を向上させる粘着付与剤や、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤等の添加剤、低温時における粘着力の低下、糊残り等を抑制するための各種添加剤を配合してもよい。フィルター層への粘着剤層の形成方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、粘着剤を不織布に直接塗布するか、又は後述するような剥離可能なシート層等に一旦に粘着剤を塗布した上で、このシート層と不織布を接触させることにより不織布に粘着剤を転写する等の方法により間接的に塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥（固化）させる方法を採用することができる。直接的又は間接的に粘着剤層をフィルター層に塗布するにあたっての塗布方法は、限定されないが、例えばローラー、スプレー、刷毛、印刷等によって実施することができる。即ち、公知の装置を使用した、例えばロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、インクジェット法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等をいずれも採用することができる。間接的に塗布する場合は、例えばシリコーンコートが施された剥離可能なシート層に粘着剤をロール等にて印刷した後、このシート層の粘着剤層側をフィルター層と接触させロール等で圧着することにより、フィルター層に粘着剤層を転写する方法等が採用できる。

　シート層３０は、例えば、シリコーンコートが少なくとも一方の面に形成されたＰＥＴフィルム等が用いられる。シート層を設けることによって粘着剤層の表面が保護されるから、フィルター構造体の使用前に粘着剤層が目的の対象物以外に貼り付くのを防止できる。又、複数のフィルター構造体を重ね合わせることも可能になる等、取り扱い性が向上する。使用に際しては、シート層を剥離し、露出させた粘着剤層を対象物に対しシールのように貼り付ければよい。シート層２０の素材としては、ＰＥＴフィルムのほか、セロファン、ＰＥＴ以外の樹脂フィルム、樹脂コートのような表面加工を施した紙、金属シート等も使用可能である。

　本例のフィルター構造体Ｆは、粘着剤層１０の形成パターンに特徴を有している。図１を参照して、本例のフィルター層１はほぼ正方形であり、その輪郭に沿ってほぼ連続する帯状の輪郭粘着剤層１１が形成される。輪郭粘着剤層１１は、横方向に延びる１対の横輪郭粘着剤層１１ａ、１１ｃと、縦方向に延びる１対の縦輪郭粘着剤層１１ｂ、１１ｄとを有する。

　輪郭粘着剤層１１に囲まれた領域の内方には、横輪郭粘着剤層１１ａ、１１ｃと平行に形成された複数の帯状の粘着剤層１２ａ～２０ａが形成されると共に、縦輪郭粘着剤層１１ｂ、１１ｄと平行に形成された複数の帯状の粘着剤層１２ｂ～２０ｂが形成され、これらにより格子状の粘着剤層の形態を呈する。又、フィルター層１の中間位置には、２本の帯状の補強粘着剤層２１、２２が、わずかな間隙ｇを空けて平行に形成される。更に、フィルター層１の中央における粘着剤層の格子で囲まれた領域には、ハート型やキャラクターの絵柄に形成されたデザイン粘着剤層２３、２４が設けられる。

　本例のフィルター構造体Ｆは、粘着剤層１０を上記のような形態に形成することにより、吸気口の大きさが異なるエアコンへの対応が可能となっている。図３を参照して、例えば、横輪郭粘着剤層１１ａと平行で横輪郭粘着剤層１１ａに最も近い粘着剤層１２ａと、縦輪郭粘着剤層１１ｂと平行で縦輪郭粘着剤層１１ｂに最も近い粘着剤層１２ｂとによって形成されるＬ字形の部分を第１の区画粘着剤層Ｌ１に設定する。又、横輪郭粘着剤層１１ａ及び縦輪郭粘着剤層１１ｂと、第１の区画粘着剤層Ｌ１との間の領域を第１の適正切断領域Ｒ１に設定する。そして、吸気口の大きさがフィルター層１全体を貼り付けるのが適当であるエアコン（第１の対象物）から、吸気口の大きさがそれよりも小さいエアコン（第２の対象物）に取付対象を変更する場合に、第１の適正切断領域Ｒ１内でフィルター層１を切断すると、切断後のフィルター層１の大きさが、第２の対象物であるエアコンの吸気口の大きさに適合するように設定する。

　このように構成された本例のフィルター構造体Ｆは、図４に示すように、第１の区画粘着剤層Ｌ１に沿って、フィルター層１を第１の適正切断領域Ｒ１内で切断することで、第２の対象物であるエアコンの吸気口に適合する大きさのフィルター構造体ｆを得ることができる。このとき第１の区画粘着剤層Ｌ１は、その端部が輪郭粘着剤層１１ｃ、１１ｄに接続しているから、切断後のフィルター構造体ｆの切断端部は粘着剤層がほぼ連続するものとなる。即ち、切断後のフィルター構造体ｆにおいては、第１の区画粘着剤層Ｌ１と輪郭粘着剤層１１ｃ、１１ｄとで閉曲線を形成することになる。従って、これを対象物に貼り付けたときに、フィルター層１のほぼ全周にわたり対象物との間が粘着剤層で閉塞された構造を得ることができる。その結果、切断後のフィルター構造体において、フィルター層を通過せずに気体が吸い込まれるのを抑制することができる。

　尚、本例では、横方向の粘着剤層は、間隙ｇ（例えば５ｍｍ以下であるが、２～３ｍｍとしてもよい）の部分でわずかに不連続となっているが、粘着剤層中のこの程度の不連続は許容されるものであり実用上問題はない。

　又、本例では、横輪郭粘着剤層１１ａ及び縦輪郭粘着剤層１１ｂからの距離が第１の区画粘着剤層Ｌ１とは異なる粘着剤層１３ａ及び１３ｂ、１４ａ及び１４ｂによって、それぞれＬ字形の第２の区画粘着剤層Ｌ２及び第３の区画粘着剤層Ｌ３が設定されると共に、第１の区画粘着剤層Ｌ１と第２の区画粘着剤層Ｌ２の間の領域が第２の適正切断領域Ｒ２に設定され、第２の区画粘着剤層Ｌ２と第３の区画粘着剤層Ｌ３の間の領域が第３の適正切断領域Ｒ３に設定される。これにより、第２の適正切断領域Ｒ２内で第２の区画粘着剤層Ｌ２に沿ってフィルター層１を切断することにより、又は、第３の適正切断領域Ｒ３内で第３の区画粘着剤層Ｌ３に沿ってフィルター層１を切断することにより、吸気口がより小さい異なるエアコン（対象物）に適合させることが可能である。依って本例のフィルター構造体Ｆは、切断しない場合及び３個所の適正切断領域のいずれかで切断する場合を含めて、４種類の大きさが異なる対象物に対応可能となっている。

　更に本例では、切断後のフィルター層の形状がいずれも元のフィルター層と同様のほぼ正方形となるように設定されている。この構成により、例えば業務用エアコンのような寸法違いであっても形状が基本的に正方形である対象物への適用が容易になる。

　ところで、特許文献２に記載されるエアコンのように、吸気口の周囲に人体や温度を検知するセンサが配置されている場合があり、その位置によっては、フィルター構造体を貼り付けたときにセンサがフィルター層で覆い隠される場合がある。そこで本例では、フィルター層１におけるセンサと対応する可能性がある部分を切除するため、切除予定領域Ｓを設定した。具体的には、ほぼ正方形のフィルター層１における４つの隅部を含む部分それぞれを切除予定領域Ｓとし、そのうちの１個所以上を選択すると共に、この切除予定領域Ｓ内で、除外対象物の大きさに合わせてその一部を切除するように設定される。

　図３、４を参照して、本例では、切除予定領域Ｓ内に複数の格子状の粘着剤層が形成されており、それら格子状の粘着剤層により、切除予定領域Ｓの一部を切除した後のフィルター層１の非切除側の輪郭に沿って、粘着剤が連続する境界粘着剤層Ｍが形成されるように設定される。例えば４つの切除予定領域Ｓのうちの１個所を選択し、粘着剤層２０ａ、２０ｂに沿ってその一部分Ｓ１を切除したときに、この粘着剤層２０ａ、２０ｂにより、非切除側の領域の輪郭に沿ってＬ字形に連続する境界粘着剤層Ｍが形成される。この境界粘着剤層Ｍは、横輪郭粘着剤層１１ｃ及び縦輪郭粘着剤層１１ｄに接続しているから、一部分Ｓ１を切除した後の切断端部を対象物に貼り付けたときに、フィルター層１と対象物との間を粘着剤で閉塞することができる。又、本例では、切除予定領域Ｓの内部に格子状の粘着剤層を形成したことにより、除外対象物に応じた切除範囲の把握が容易になる。この構成は、他の隅部の切除予定領域Ｓについても同様である。

　このように構成されたフィルター構造体Ｆは、エアコンの吸気口に貼り付けたときに、吸気口の周囲の部分とフィルター層との間の隙間を粘着剤によって確実に閉塞できるから、塵埃等がフィルター層を介さずに吸気口に直接吸い込まれるのを抑制することが可能である。

　図５を参照して、本例のフィルター構造体Ｆは、粘着剤層の幅寸法が、例えば次のように設定されている。即ち、輪郭粘着剤層１１ａ、１１ｂの幅寸法Ｗ１と、区画粘着剤層Ｌ１、Ｌ２、Ｌ３の各幅寸法Ｗ２、Ｗ３、Ｗ４とがほぼ等しく、補強粘着剤層２１、２２の幅寸法Ｗ６、Ｗ７はＷ１より大きく最大に設定され、その他の粘着剤層（例えば１５ａ、１５ｂ）の幅寸法Ｗ５はＷ１より小さく最小に設定される。

　又、シート層３０が、フィルター層１の中間位置で分割された２つの分割シート層３０Ａ、３０Ｂ（図２参照）を含むものとなっている。分割シート層３０Ａ、３０Ｂはそれぞれフィルター層１の半分ずつを覆い、補強粘着剤層２１、２２間の間隙ｇの位置で分割されている。

　このような構成は、業務用エアコン用のフィルター構造体のように大判な製品である場合に、その取付作業を容易にするのに寄与するものである。フィルター構造体Ｆの取り付けに当たっては、先ず２つの分割シート層のうちのいずれか一方（例えば３０Ａ）を剥がし、粘着剤層１０全体の半分を露出させ、これをエアコンの吸気口に貼り付ける。この状態で、もう一方の分割シート層（例えば３０Ｂ）を剥離して残り半分の粘着剤層を露出させ、これを吸気口の残りの部分に貼り付ける。このとき、一方の分割シート層を剥がした状態でフィルター層を貼り付けると、フィルター構造体の貼り付け前の半分が中間位置から垂れ下がることがある。そうすると、その荷重が中央の１本の補強粘着剤層（例えば２１）の部分に作用するので、補強粘着剤層の保持力が不足していると、貼り付け作業の間に先に貼り付けた部分が剥がれるおそれがある。しかし本例では、補強粘着剤層２１、２２の幅寸法を輪郭粘着剤層及び区画粘着剤層の幅寸法よりも大きく設定したので、上記の問題が生じにくくなっており、フィルター構造値の半分を貼り付けた状態を確実に維持できるという効果を発揮する。

　更に、２本の補強粘着剤層２１、２２間に粘着層が形成されていない間隙ｇを含むので、この部分は他の部分よりフィルター層を折り曲げやすくなっている。そのため、フィルター構造体をシート層とは反対側に折り曲げて、分割シート層間の粘着剤層が形成されていない部分を露出させることにより、分割シート層を剥がしやすくすることができる。

　デザイン粘着剤層２３、２４は、フィルター層の対象物への貼り付けに寄与すると共に、フィルター構造体Ｆの交換時期を表示する。即ち、フィルター層１における空気が流通する部位では埃等の蓄積により着色が進行するのに対し、粘着剤層を形成した部位は空気の流通が抑えられるから、フィルター層１の着色が進まない。その結果、使用を継続するに従って、デザイン粘着剤層２３、２４の形態が浮き上がるように視認できるようになることで、フィルター構造体Ｆの交換時期を知ることが可能である。

　図６は図１のフィルター構造体の他の切断例を示す正面図である。

　上述の図４に示した切断例では、フィルター層１の４辺に沿う輪郭粘着剤層１１のうち隣接する特定の２辺の輪郭粘着剤層１１ａ、１１ｂを基準とし、これらに最も近い位置の粘着剤層１２ａ、１２ｂを、フィルター層１を切断するためのＬ字状の区画粘着剤層Ｌ１に設定した。しかしながら、これに限られず、区画粘着剤層は、輪郭粘着剤層の１辺だけに沿う直線状の形態としてもよく、輪郭粘着剤層のうちの３辺に沿うＵ字形の形態に設定してもよく、更には輪郭粘着剤層の４辺に全てに沿う正方形の形態に設定してもよい。具体的には図６の（Ａ）に示すように、輪郭粘着剤層１１ａに沿う１本の粘着剤層１２ａを区画粘着剤層Ｌ４に設定して、フィルター層１を直線状に切断してもよい。或いは図６の（Ｂ）に示すように、３個所の輪郭粘着剤層１１ａ、１１ｂ、１１ｄに沿う３本の粘着剤層１２ａ、１２ｂ、１２ｄを区画粘着剤層Ｌ５に設定して、フィルター層１をＵ字形に切断してもよい。更には図６の（Ｃ）に示すように、輪郭粘着剤層１１（１１ａ～１１ｄ）全てに沿う４本の粘着剤層１３ａ、１３ｂ、１９ａ、１９ｂを区画粘着剤層Ｌ６に設定して、フィルター層１を正方形状に切り抜いてもよい。尚、図６の（Ｃ）の例では、（Ａ）、（Ｂ）よりも内側の粘着剤層を区画粘着剤層Ｌ６に選択して、切断後のフィルター構造体ｆが、寸法の比較的小さい対象物に適合するように構成されている。

　又、図６の（Ａ）の例においては、区画粘着剤層Ｌ４と共に、これと平行なもう一方の輪郭粘着剤層１１ｃに近い方の粘着剤層の１本を区画粘着剤層に設定し、フィルター層１の対向する両端部をそれぞれ直線状に切断してもよい。図６の（Ｂ）の例においては、区画粘着剤層Ｌ５よりも内側の粘着剤層によって区画粘着剤層を設定してもよい。図６の（Ｃ）の例においては、区画粘着剤層Ｌ６よりも内側の粘着剤層１３ａ、１３ｂ、１９ａ、１９ｂによって区画粘着剤層を設定してもよく、区画粘着剤層Ｌ６の外側の粘着剤層１２ａ、１２ｂ、２０ａ、２０ｂによって区画粘着剤層を設定してもよい。これらの態様を採用することで、切断後の大きさが様々に異なるフィルター構造体ｆを得ることができる。

　又、図３に示す実施の形態では、フィルター層を異なる３種類の大きさに変更できるように、区画粘着剤層Ｌ１、Ｌ２、Ｌ３を複数位置に設定したが、１種類の大きさ変更に対応する単一の区画粘着剤層としてもよく、４種類以上の異なる大きさに変更可能としてもよい。

　尚、上記の区画粘着剤層の位置設定は一例であり、他の位置の輪郭粘着剤層を基準として他の位置に区画粘着剤層を設定してもよい。区画粘着剤層及び他の粘着剤層の形成本数は、図示の例より多くてもよく、少なくてもよい。

　又、上記の実施の形態では、適正切断領域で切断後のフィルター層の形状が、元のフィルター層と相似となるように設定したが、切断後の形状が相似にならなくてもよい。

　又、本例のフィルター構造体は、４つの隅部それぞれに切除予定領域Ｓを設定してあるので、どの位置に区画粘着剤層を設定しても、それらと干渉しない位置の切除予定領域を選択することが可能である。

　又、切除予定領域は、フィルター層の４つの隅部のうちの少なくとも１個所に設定すればよい。或いは、切除予定領域を特定の１つの隅部に設定し、これに合わせて、区画粘着剤層を予め固定した位置に設定してもよい。切除予定領域における実際に切除する部分の大きさは適宜変更可能であり、図３に示す一部分Ｓ１より大きい範囲を切除してもよく、切除予定領域Ｓ全体を切除してもよい。具体的には、図３及び図４に示す例では、切除予定領域Ｓはいずれも格子状の粘着剤層で９マスに区画されており、それらのうちの１マスだけから成るＳ１を切除する態様としたが、２マス以上を切除する態様や、９マス全部を削除する態様としてもよい。又、図４の例にあっては、区画粘着剤層Ｌ１に沿って切断した後のフィルター構造体ｆにおいて、切断後に形成されるフィルター層１の隅部（例えばＳ１の対角位置）を含む領域を、新たな切除予定領域Ｓ２に設定してもよい。更に、切除予定領域内で２個所以上の部分を切除してもよい。四隅の切除予定領域のうち、複数個所の切除予定領域を切除対象に選択してもよい。

　更に切除予定領域を形成する位置は隅部に限定されるものではない。例えば、吸気口の内方側（吸気口の角隅や中央部）にセンサが設けられている場合は、このセンサ位置に合わせて切除予定領域を設定すればよい。更に、予め対応個所にミシン目などを設けて切断しやすくしてもよい。このように切除予定領域は、実施の状況に応じて、その範囲や個数を自由に設定することが可能である。

　又、本発明のフィルター構造体は、エアコン以外に、空気清浄機、台所や厨房のレンジフード、換気扇等の家庭用又は業務用の機器、屋内外に設置される通気口等にも使用することができる。この場合、複数の格子状の粘着剤層のうちから適当に選択した位置の粘着剤層を区画粘着剤層とし、それに沿ってフィルター層を切断することにより、目的とする対象物の大きさに適合したフィルター構造体を得ることが可能である。

　上記の実施の形態では、フィルター構造体の形状は正方形であったが、長方形や、多角形、円形、楕円形等様々な形状を採用できる。又、例えば、円形の場合では角が無いため隅部は無いから、取付対象の干渉部分と対応する個所を切除予定領域とし、フィルター層の非切除側に境界粘着剤層を形成してもよい。

　上記の実施の形態では、デザイン粘着剤層を絵や図形に形成したが、フィルターの交換時期を表示する文字、記号等に形成してもよい。更にデザイン粘着剤層は省略してもよい。

　上記の実施の形態では、シート層を２つに分割したが、３つ以上に分割してもよく、分割されない単一のものでもよい。又、分割シート層はほぼ同形に形成したが、不等分に分割してもよく、異形に分割してもよい。

　上記の実施の形態では、補強粘着剤層の幅寸法を最も大きく設定したが、輪郭粘着剤層及び区画粘着剤層の少なくとも一方より幅が大きければよい。又、輪郭粘着剤層及び区画粘着剤層の幅寸法はほぼ同一としたが、異なってもよい。

　更に、上記の実施の形態では、補強粘着剤層を間に間隙を空けて２本形成したが、間隙は無くてもよい。更には、横方向にも補強粘着剤層を形成してもよい。間隙を横方向に形成してもよい。

　本発明は、エアコンの吸気口に用いられるものであって、特に業務用エアコンのように、形状が基本的に相似形であるが寸法違いのものが複数種類用意されているような製品への使用が好適なフィルター構造体製品を提供する。又、吸気口の周囲に人体や温度を検知するセンサが配置されているエアコンにも対応し得るフィルター構造体製品を提供できる。又、粘着剤層が格子状に形成されるだけでなく、ハート型やキャラクターの絵柄を表すデザイン粘着剤層が形成されたフィルター構造体製品も提供する。更に、エアコンだけでなく、空気清浄機、台所や厨房のレンジフード、換気扇等の家庭用又は業務用の機器、屋内外に設置される通気口等に使用されるフィルター構造体製品を提供することができる。更に、矩形、多角形、円形、楕円形等様々な形状のフィルター構造体製品を提供することも可能である。

 

Claims (9)

1. 　通気性を有し通過する気体を濾過するフィルター層（１）と、フィルター層（１）の一方面の少なくとも一部に粘着剤により形成された粘着剤層（１０）とを有し、
   　前記フィルター層の大きさは貼り付けが予定される第１の対象物の寸法に適合するように設定され、前記第１の対象物よりも寸法が小さい第２の対象物に貼り付ける場合は、前記フィルター層を所定の位置で切断するように設定されたフィルター構造体（Ｆ）であって、
   　前記粘着剤層は、前記フィルター層の輪郭に沿って連続する帯状の輪郭粘着剤層（１１）と、前記輪郭粘着剤層の内側に前記輪郭粘着剤層から所定の間隔を置いて前記輪郭粘着剤層の少なくとも一部に沿って連続する帯状の区画粘着剤層（ＬＩ）とを含み、
   　前記輪郭粘着剤層と前記区画粘着剤層との間に、前記第２の対象物の大きさに適合させるために前記フィルター層を切断するための適正切断領域（Ｒ１）が設定されている、
   フィルター構造体。
2. 　前記粘着剤層は、前記輪郭粘着剤層からの間隔が異なる複数の区画粘着剤層（ＬＩ～Ｌ３）を含む、請求項１記載のフィルター構造体。
3. 　前記区画粘着剤層は、前記輪郭粘着剤層の一部に沿って連続し、その端部において前記輪郭粘着剤層の他の部分に接続するように形成される、請求項１又は請求項２記載のフィルター構造体。
4. 　前記輪郭粘着剤層と前記区画粘着剤層との間に設定される前記適正切断領域は、切断前後のフィルター層（１）が互いに相似形となるように設定される、
   請求項１から請求項３のいずれかに記載のフィルター構造体。
5. 　前記フィルター層は、その一部を切除するための少なくとも1つの切除予定領域（Ｓ）が設定され、
   　前記粘着剤層は、前記切除予定領域の輪郭に沿って連続するように、前記フィルター層の非切除側に形成された境界粘着剤層を更に含み、
   　前記境界粘着剤層は前記輪郭粘着剤層に連続する、
   請求項１から請求項４のいずれかに記載のフィルター構造体。
6. 　前記対象物が、吸気口の内方又は周囲の少なくとも一部にセンサが設けられた天井埋め込み式のエアコンであり、
   　前記フィルター層の前記切除予定領域は、前記センサに対応する位置に設けられる、
   請求項５記載のフィルター構造体。
7. 　前記フィルター層は矩形又は正方形の形態を有し、
   　前記切除予定領域が前記フィルター層の四隅のうちの少なくとも１個所を含む領域に設定され、
   　前記粘着剤層は、前記輪郭粘着剤層と平行に形成された複数の格子状粘着剤層（１２ａ～２０ａ、１２ｂ～２０ｂ）を更に含み、
   　前記格子状粘着剤層の一部によって前記切除予定領域に対応する前記境界粘着剤層が形成され、
   　前記格子状粘着剤層の一部を前記区画粘着剤層として選択可能である、
   請求項５又は請求項６記載のフィルター構造体。
8. 　前記粘着剤層の表面に積層され且つ剥離可能なシート層（３０）を更に含む、請求項１から請求項７のいずれかに記載のフィルター構造体。
9. 　前記シート層は、前記フィルター層上の少なくとも中間位置又はその近傍位置において分割された少なくとも２つの分割シート層（３０Ａ、３０Ｂ）を含み、
   　前記粘着剤層は、隣接する前記分割シート層における隣接する輪郭それぞれに沿って形成された少なくとも２本の帯状の補強粘着剤層（２１、２２）を更に含み、
   　前記補強粘着剤層は、その幅寸法が、前記輪郭粘着剤層及び／又は前記区画粘着剤層の幅寸法よりも大きく設定される、
   請求項８記載のフィルター構造体。
   
    

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