WO2023282309A1 - フィルター構造体 - Google Patents

Abstract

フィルター構造体（Ｆ１）は、通気性を有し通過する気体をろ過するフィルター層（１）と、フィルター層の一方面の少なくとも一部に粘着剤により形成された粘着剤層（１０）と、粘着剤層の表面に積層され且つ剥離可能なシート層（２０）とを有し、フィルター層に切除予定領域（３）が設定され、シート層及びフィルター層の少なくとも一方に、フィルター層の切除予定領域と非切除領域との境界位置を示す境界部（４）が形成されている。対象物への取り付け前に境界部により示される位置で切除予定領域を切除することにより、対象物に貼り付ける必要が無い部分又は貼り付けると不具合が生じる部分を避けて対象物にフィルター構造体を取り付けることが可能となる。

Description

フィルター構造体

　本発明は、エアコンディショナー（以下、エアコンと言う）、空気清浄機、レンジフード、通気口等の対象物に貼着して、通過する気体をろ過するためのフィルター構造体に関するものである。

　図１０は、国際公開ＷＯ２０１８／０４３５２２号公報に記載された従来のフィルター構造体を示す背面図である。図１１は、日本国特開２０１７－３２２２７号公報に記載された従来の空気清浄機を示すものであって、（Ａ）は運転中の状態を示す斜視図、（Ｂ）は前面化粧板を取り外した状態の斜視図である。

　図１０に示す従来のフィルター構造体Ｇは、シート状のフィルター層１００と、フィルター層１００の一方の面に粘着剤で形成された粘着剤層１０１と、粘着剤層１０１の表面に積層された剥離シート等のシート層（不図示）とを有している。

　フィルター層１００は、不織布等の通気性を有する材料が用いられる。尚、この例では、長辺方向を縦、短辺方向を横とする矩形の形態に形成される。

　粘着剤層１０１は、フィルター層１００の外周縁部に沿って形成された輪郭粘着剤層１０２、輪郭粘着剤層１０２の内側において縦方向及び横方向にそれぞれ形成されて格子状を成す複数の補強粘着剤層１０３、縦横の補強粘着剤層１０３によって形成される格子で囲まれた領域に形成されたハート型のデザイン粘着剤層１０４を有している。

　フィルター構造体Ｇを空気清浄機の吸気口に貼り付けて使用すると、フィルター層１００の空気が通過する部位は捕集したホコリ等の蓄積により黒く汚れて着色が進行するのに対し、各粘着剤層１０１が形成された部位は空気の流通が抑えられるためホコリ等が蓄積されにくい。このため、使用の継続に従い、粘着剤層１０１の形態が視覚的に白く浮き上がるようになり、特にデザイン粘着剤層１０４のハート形状が視認されることによって、フィルター構造体Ｇの交換時期を表示する機能を発揮するものである。

　尚、空気清浄機には、吸気口が背面に設けられた背面吸気型以外に、図１１に示す空気清浄機Ｋのように、前面吸気型の機種も存在する。図示する前面吸気型の空気清浄機Ｋは、本体部１２０の前面側に、シート状の空気清浄手段１２３が配置された吸気口１２２が設けられ、この吸気口１２２は前面化粧板１２１によって覆われる。前面化粧板１２１は、その上部が上部支持部１２４によって回動自在に支持されると共に、下部が、進退可能に駆動される下部支持部１２５によって前後方向に移動可能に支持される。

　この空気清浄機Ｋの使用時には、下部支持部１２５を前進駆動させ、上部支持部１２４を軸として前面化粧板１２１の下部を前方へ回動させることにより、本体部１２０と前面化粧板１２１との間に離隔を形成して、吸気口を外気に連通させるように構成されている。

国際公開ＷＯ２０１８／０４３５２２号公報 日本国特開２０１７－３２２２７号公報

　図１０に示す従来のフィルター構造体Ｇは、背面吸気型の空気清浄機に対してはそのままの大きさで、或いは、吸気口の寸法に合うように縦又は横の補強粘着剤層に沿って切断して吸気口に貼り付ければよい。

　しかし図１１に示すような前面吸気型の空気清浄機Ｋに対しては、前面化粧板１２１の上下４個所を支持する上部支持部１２４及び下部支持部１２５が吸気口１２２の周囲に設けられているため、フィルター構造体Ｇと干渉する。そこで、このフィルター構造体Ｇを、前面吸気型の空気清浄機Ｋの吸気口１２２に取り付ける場合は、上部支持部１２４及び下部支持部１２５と干渉する部分、即ち、４隅を含む領域１１０（図１０において一点鎖線で囲んだ領域）を切除しなくてはならない。

　しかしながら従来のフィルター構造体Ｇは、切除する範囲が明確になっていないため、必要以上の範囲を切除して吸気口を完全に覆うことができなくなったり、反対に充分な範囲を切除できなくて、空気清浄機の支持部と干渉する部分が生じ、吸気口の周囲に密着不良の個所を生じさせたりするおそれがあった。

　又、天井埋め込み式の業務用エアコンにあっては、天井面に配置される吸気口の周囲に室内の温度や人体を検知するためのセンサが設けられる場合がある。このようなエアコンに対しフィルター構造体をそのまま貼り付けると、その一部がセンサを覆い隠してセンサの機能を支障する可能性があるので、センサと干渉し得る部分のフィルター層を切除しなくてはならない。しかしながら従来のフィルター構造体は、センサに対応してフィルター層を切除する範囲が明確になっていなかったので、必要以上の範囲を切除して吸気口を完全に覆うことができなくなったり、反対にセンサと干渉する部分が残ってセンサの機能を阻害したりするという問題を招くおそれがある。

　本発明は、取付対象物において、フィルター層を貼り付ける必要が無い部分又は貼り付けると不具合が生じる部分がある場合に、これらの部分を避けて貼り付けることが可能なフィルター構造体を提供することを目的とする。

　上記目的を達成するため、この発明の第１の局面におけるフィルター構造体は、通気性を有し通過する気体をろ過するフィルター層と、フィルター層の一方面の少なくとも一部に粘着剤により形成された粘着剤層と、粘着剤層の表面に積層され且つ剥離可能なシート層とを有するフィルター構造体であって、フィルター層に切除予定領域が設定され、シート層及びフィルター層の少なくとも一方に、フィルター層の切除予定領域と非切除領域との境界位置を示す境界部が形成されているものである。

　このように構成すると、シート層又はフィルター層の少なくとも一方の境界部によって、フィルター構造体を切断する位置が示されるという作用１が得られる。

　この発明の第２の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面における発明の構成において、境界部は、印刷によって形成された線、図形、文字、記号、一定範囲の着色等の視覚的表示、エンボス加工や罫線加工によって形成された目印、及び、ミシン目やハーフカット等の切断補助部のうちから選択した少なくとも１つを含むものである。

　このように構成すると、境界部が視覚的表示、目印、及び、切断補助部のうちの少なくとも１つを含むから、境界部の位置を把握できるという作用２が得られる。

　この発明の第３の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面又は第２の局面における発明の構成において、フィルター層は矩形の形態を有し、切除予定領域は、フィルター層の少なくとも１個所の隅部に設定されるものである。

　このように構成すると、矩形のフィルター層における４隅のうちの少なくとも１個所が切除予定領域となるという作用３が得られる。

　以上説明したように、この発明の第１の局面におけるフィルター構造体は、作用１が得られるため、以下の効果を奏する。対象物への取り付けするにあたっては、境界部により示される位置で切除予定領域を切除することにより、対象物に貼り付ける必要が無い部分又は貼り付けると不具合が生じる部分を避けて対象物にフィルター構造体を取り付けることが可能となる。切除予定領域の範囲を境界部により確認できるから、境界部に基づきフィルター層の適切な範囲を容易に切除することができる。又、切除予定領域を切除して使用することも、切除予定領域を切除せずに使用することも可能であるから、１種類のフィルター構造体で複数種類の対象物に使用可能である。更に、シート層に境界部を形成する場合には、フィルター層には境界部を形成しなくても同様の効果を奏することができる。シート層に形成する境界部は、着色を施したり説明用の文言や記号を表示したりする等、形態の自由度が高くなる。尚、シート層は使用時にフィルター構造体から除去されるから、このような境界部を形成してもフィルター層の意匠性には影響を与えない。

　この発明の第２の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面における発明の効果に加えて、作用２が得られるため、印刷や目印等の視覚的表示を採用する場合は、目視により切除予定領域の範囲を把握し易くなる。ミシン目等の切断補助部を採用する場合は、切除予定領域の切除が容易になる。

　この発明の第３の局面におけるフィルター構造体は、第１の局面又は第２の局面における発明の効果に加えて、作用３が得られるため、対象物に貼り付ける必要が無い部分又は貼り付けると不具合が生じる部分を有している場合でも、切除予定領域の少なくとも１個所を切除することで、その部分を避けてフィルター構造体を適切に取り付けることが可能となる。

本発明の第1の実施の形態によるフィルター構造体を、シート層を分離した状態で示す斜視図である。 図１Ａに示すフィルター構造体の正面図である。 本発明の第２の実施の形態によるフィルター構造体の正面図である。 本発明の第３の実施の形態によるフィルター構造体を説明するために、シート層を分離した状態で示した斜視図である。 図３Ａに示すフィルター構造体の背面図である。 本発明の第４の実施の形態によるフィルター構造体の背面図である。 本発明の第５の実施の形態によるフィルター構造体の背面図である。 本発明の第６の実施の形態によるフィルター構造体の背面図である。 図６に示すフィルター構造体の切断例を示す背面図である。 図６に示すフィルター構造体の異なる切断例を示す背面図である。 本発明の第７の実施の形態によるフィルター構造体の一部を示す背面図である。 特許文献１に記載された従来のフィルター構造体を示す背面図である。 特許文献２に記載された従来の空気清浄機を示すものであって、（Ａ）は運転中の状態を示す斜視図、（Ｂ）は前面化粧板を取り外した状態の斜視図である。

[第１の実施の形態]
　図１Ａは本発明の第1の実施の形態によるフィルター構造体を、シート層を分離した常置で示す斜視図であり、図１Ｂは図１Ａに示すフィルター構造体の正面図である。尚、以下の説明において、フィルター構造体におけるフィルター層にシート層が積層されている側を背面とし、反対側の面を正面とする。

　これらの図を参照して、フィルター構造体Ｆ１は、通気性を有し通過する気体を濾過するシート状のフィルター層１と、フィルター層１の一方面の少なくとも一部に、粘着剤により形成される粘着剤層１０と、粘着剤層１０の表面に積層され且つ剥離可能なシート層２０を備える。

　フィルター層１は、例えば不織布、織布、又は編み布等で構成され、ホコリ等の捕集と気体の流通とが両立すると共に、実用的な強度を有するものである。好適には、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）等のポリエステル、ポリプロピレン又はプロピレン主体の共重合体、モダクリルを含むアクリル等の合成樹脂繊維で構成される不織布を用いることができるが、これらに限定されない。不織布の製造方法についても限定はなく、例えばケミカルボンド法やサーマルボンド法等の公知の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。又、フィルター層１は、難燃、抗ウイルス、抗菌、抗カビ等の機能を発揮する加工が施されていてもよい。

　粘着剤層１０を形成する粘着剤は特に限定されず、例えば、２液混合型ポリウレタン系粘着剤のような主剤及び硬化剤を含む２液混合型粘着剤やアクリル系ホットメルト粘着剤のようなホットメルト粘着剤等が使用できる。又、粘着剤には、必要に応じ、密着性を向上させる粘着付与剤や、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤等の添加剤、低温時における粘着力の低下、糊残り等を抑制するための各種添加剤を配合してもよい。フィルター層への粘着剤層の形成方法は、公知の方法を採用することができる。例えば、粘着剤をフィルター層に直接塗布するか、又は後述するような剥離可能なシート層等に一旦に粘着剤を塗布した上で、このシート層とフィルター層を接触させることによりフィルター層に粘着剤を転写する等の方法により間接的に塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を乾燥（固化）させる方法を採用することができる。直接的又は間接的に粘着剤層をフィルター層に塗布するにあたっての塗布方法は、限定されないが、例えばローラー、スプレー、刷毛、印刷等によって実施することができる。即ち、公知の装置を使用した、例えばロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、インクジェット法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等をいずれも採用することができる。直接的に塗布する場合は、例えばフィルター層の片面にスプレーにて全体又は部分的に粘着剤を吹き付けることにより、フィルター層に粘着剤層を形成することができる。又、間接的に塗布する場合は、例えばシリコーンコートが施された剥離可能なシート層に粘着剤をロール等にて印刷した後、このシート層の粘着剤層側をフィルター層と接触させロール等で圧着することにより、フィルター層に粘着剤層を転写する方法等が採用できる。

　シート層２０は、例えば、シリコーンコートが少なくとも一方の面に形成されたＰＥＴフィルム等が用いられる。シート層を設けることによって粘着剤層の表面が保護されるから、フィルター構造体の使用前に粘着剤層が目的の対象物以外に貼り付くのを防止できる。又、複数のフィルター構造体を重ね合わせることも可能になる等、取り扱い性が向上する。使用に際しては、シート層を剥離し、露出させた粘着剤層を対象物に対しシールのように貼り付ければよい。シート層２０の素材としては、ＰＥＴフィルム以外に、セロファン、ＰＥＴ以外の樹脂フィルム、樹脂コートのような表面加工を施した紙、金属シート等も使用可能である。

　図１Ａ及び図１Ｂに示す本例のフィルター構造体Ｆ１は、前面吸気型の空気清浄機を取付対象とするものである。フィルター層１は矩形であり、これをそのまま前面吸気型の空気清浄機に取り付けると、その４隅が、吸気口の周囲に設けられる前面化粧板を支持する支持部材と干渉する。そこで本例では、フィルター層１の４隅に、その一部を切除するための切除予定領域３が設定されると共に、切除予定領域３と非切除領域５との境界位置を示す境界部４が、フィルター層１に形成されている。この境界部４は、例えばフィルター層１の表面に印刷、ミシン目やハーフカット等によって表示することで、切除予定領域３の輪郭を視覚的に把握可能となる。境界部４を形成する方法は特に限定されず、印刷によって形成された線、図形、文字、記号、一定範囲の着色等の視覚的表示としたり、エンボス加工や罫線加工によって形成された目印としたり、ミシン目やハーフカット等の切断補助部としてもよい。

　このように構成された本例のフィルター構造体Ｆ１によれば、取付対象物である前面吸気型の空気清浄機へ取り付ける前に、必要に応じて境界部４の位置で切除予定領域３を切除する。次いで、シート層２０を剥離し、露出させた粘着剤層１０を位置合わせして吸気口にシールのように貼り付ける。これにより、吸気口の周りに突出している前面化粧板の支持部材とフィルター層１とが干渉するのを避けて、フィルター構造体Ｆ１を取り付けることが可能となる。

　尚、粘着剤層１０は、前述のようにスプレー法で形成してもよく、パターン印刷により帯状や格子状に形成してもよく、文字、記号、図形のほか、キャラクターをデザイン化した絵柄を形成してもよい。又、粘着剤層１０により境界部を形成してもよい。

　[第２の実施の形態]
　図２は本発明の第２の実施の形態によるフィルター構造体の正面図である。

　本例のフィルター構造体Ｆ２の構成の主要部は第１の実施の形態と共通であり、ここでは相違点を中心に説明する。

　本例のフィルター構造体Ｆ２は、取付対象である空気清浄機の吸気口の大きさが異なる場合に対応可能としたものである。即ち本例のフィルター構造体Ｆ２は、フィルター層１全体の輪郭２ａに対応する大きさのフィルター構造体Ｆ２－Ａの外に、それより小さい輪郭２ｂを有するフィルター構造体Ｆ２－Ｂ、及び、それより更に小さい輪郭２ｃを有するフィルター構造体Ｆ２－Ｃを含んでおり、これら３つの異なる大きさのフィルター構造体のうちから、条件に応じて１つを選択可能に構成したものである。ここで、各フィルター構造体Ｆ２－Ａ～Ｆ２－Ｃは相似形である。

　本例では、各輪郭２ｂ、２ｃの配置を、それぞれの特定の隅部が、フィルター層１全体の輪郭２ａにおける１つの頂点Ｑに集まる形態となるように設定してある。更に各輪郭２ａ、２ｂ、２ｃそれぞれの４隅には、切除予定領域３ａ、３ｂ、３ｃの範囲を示す境界部４ａ、４ｂ、４ｃが、フィルター層１の表面に印刷、ミシン目やハーフカット等で形成される。尚、境界部４ａ、４ｂ、４ｃを形成する方法は特に限定されず、第１の実施の形態と同様に印刷によって形成された線、図形、文字、記号、一定範囲の着色等の視覚的表示としたり、エンボス加工や罫線加工によって形成された目印としたり、ミシン目やハーフカット等の切断補助部としてもよい。又、フィルター構造体Ｆ２－Ｂの輪郭２ｂ及びＦ２－Ｃの輪郭２ｃの形成方法は、境界部４ａ、４ｂ、４ｃを形成する方法と同様の方法を採用できる。

　このような構成により本例のフィルター構造体Ｆ２は、フィルター層の大きさを吸気口の大きさに合わせて小さくする必要がある場合、それに合わせて選択した輪郭２ｂ（又は２ｃ）に沿ってフィルター層１を切断することで、最適な大きさのフィルター構造体Ｆ２－Ｂ（又はＦ２－Ｃ）とすることができる。そして、必要に応じて、切断して得られたフィルター構造体Ｆ２－Ｂ（又はＦ２－Ｃ）のフィルター層１の切除予定領域３ｂ（又は３ｃ）を境界部４ｂ（又は４ｃ）に沿って切除することにより、吸気口の周囲の突起物とフィルター層１とが干渉するのを避けて、フィルター構造体Ｆ２－Ｂ（又はＦ２－Ｃ）を吸気口に貼り付けることができる。

　本例のフィルター構造体は、吸気口の大きさに合わせてフィルター層を切断する際、フィルター層を特定の隣接する２辺に沿う２方向で直線的に切断するだけでよいから、少ない切断回数で目的の大きさのフィルター構造体を得ることができる。又、本例では、切断後のフィルター構造体において、境界部により切除予定領域が表示されるから、切除予定領域の範囲を目視により容易に把握することができ、切除作業が容易である。

　尚、粘着剤層１０によりフィルター構造体Ｆ２－Ｂの輪郭２ｂ及びＦ２－Ｃの輪郭２ｃを形成してもよい。

　[第３の実施の形態]
　図３Ａは本発明の第３の実施の形態によるフィルター構造体を説明するために、シート層を分離した状態で示した斜視図であり、図３Ｂは図３Ａに示すフィルター構造体の背面図である。即ち、シート層を示している。

　本例のフィルター構造体Ｆ３の構成の主要部は第１の実施の形態と共通であり、ここでは相違点を中心に説明する。

　これらの図を参照して、本例のフィルター構造体Ｆ３は、前面吸気型の空気清浄機を取付対象とするものであって、フィルター層１の４隅に、フィルター層１の一部を切除するための切除予定領域が設定される。本例では、切除予定領域３０と非切除領域３１との境界位置を示す境界部４０をシート層２０に形成した点及びフィルター層１には切除予定領域と非切除領域との境界位置を示す境界部が形成されていない点が、第１の実施の形態とは異なる。

　この境界部４０は、例えばシート層２０の表面に印刷、ミシン目やハーフカット等によって形成され、切除予定領域３０の輪郭を視覚的に表示している。

　このように構成された本例のフィルター構造体Ｆ３によれば、取付対象物である前面吸気型の空気清浄機へ取り付ける前に、必要に応じて境界部４０の位置で切除予定領域３０を切除する。次いで、シート層２０を剥離し、露出させた粘着剤層１０を位置合わせして吸気口にシールのように貼り付ける。これにより、吸気口の周りに突出する前面化粧板の支持部材と干渉するのを避けて、フィルター構造体Ｆ３を取り付けることが可能となる。

　本例では、シート層２０に境界部４０を形成するから、フィルター層１には切除予定領域と非切除領域との境界位置を示す境界部を形成する必要がない。シート層２０に形成する境界部４０は、着色を施したり説明用の文言や記号を表示させたりする等、形態の自由度が高くなり、切除予定領域３０の範囲を確実に把握できるようにすることができる。尚、シート層２０は使用時にフィルター構造体Ｆ３から除去されるから、このような境界部を形成してもフィルター層１の意匠性には影響を与えない。

　ところで、境界部４０はシート層２０に形成されるから、粘着剤層１０の意匠性や形成方法を制限しないので、粘着剤層１０の形態や形成方法の自由度を高くできる。従って粘着剤層１０は、本例のようにスプレー法で形成する以外に、パターン印刷により帯状や格子状に形成してもよく、文字、記号、図形のほか、キャラクターをデザイン化した絵柄を形成してもよい。

　[第４の実施の形態]
　図４は本発明の第４の実施の形態によるフィルター構造体の背面図である。

　本例のフィルター構造体Ｆ４の構成の主要部は第３の実施の形態と共通であり、ここでは相違点を中心に説明する。

　本例のフィルター構造体Ｆ４は、取付対象である空気清浄機の吸気口の大きさが異なる場合に対応可能としたものである。即ち本例のフィルター構造体Ｆ４は、シート層２０全体の輪郭２０ａに対応する大きさのフィルター構造体Ｆ４－Ａの外に、それより小さい輪郭２０ｂを有するフィルター構造体Ｆ４－Ｂ、及び、それより更に小さい輪郭２０ｃを有するフィルター構造体Ｆ４－Ｃを含んでおり、これら３つの異なる大きさのフィルター構造体のうちから、条件に応じて１つを選択可能に構成したものである。ここで、各フィルター構造体Ｆ４－Ａ～Ｆ４－Ｃは相似形である。

　フィルター構造体Ｆ４－Ｂの輪郭２０ｂ及びＦ４－Ｃの輪郭２０ｃは、第３の実施の形態の境界部の形成方法と同様の方法で形成することができる。又、本例の輪郭２０ａ～２０ｃは、シート層２０全体の輪郭２０ａの中心Ｐに、輪郭２０ｂ、２０ｃの中心が重なって略同心的な配置となるように形成されている。更に、各輪郭２０ａ、２０ｂ、２０ｃそれぞれの４隅には、切除予定領域３０ａ、３０ｂ、３０ｃの範囲を示す境界部４０ａ、４０ｂ、４０ｃが形成されており、これらは、第３の実施の形態の境界部の形成方法と同様の方法で形成することができる。

　このような構成により本例のフィルター構造体Ｆ４は、フィルター層の大きさを吸気口の大きさに合わせて小さくする必要がある場合、それに合わせて選択した輪郭２０ｂ（又は２０ｃ）に沿って切断することで、最適な大きさのフィルター構造体Ｆ４－Ｂ（又はＦ４－Ｃ）とすることができる。そして、必要に応じて、切断して得られたフィルター構造体のフィルター層の切除予定領域３０ｂ（又は３０ｃ）を境界部４０ｂ（又は４０ｃ）に沿って切除することにより、吸気口の周囲の突起物とフィルター層とが干渉するのを避けて、フィルター構造体Ｆ４－Ｂ（又はＦ４－Ｃ）を吸気口に貼り付けることができる。

　[第５の実施の形態]
　図５は本発明の第５の実施の形態によるフィルター構造体の背面図である。

　本例のフィルター構造体Ｆ５の構成の主要部は第３の実施の形態と共通であり、ここでは相違点を中心に説明する。

　本例では、シート層２０における切除予定領域３０の範囲を、着色、網掛け、ハッチング等により面的に表示したものである。従って、この例では、切除予定領域３０を示す面的表示部分の輪郭が境界部４１となる。

　このように本例では、切除予定領域３０を面的に表示したので、その範囲を視覚的に把握するのが容易である。

　[第６の実施の形態]
　図６は本発明の第６の実施の形態によるフィルター構造体の背面図であり、図７は図６に示すフィルター構造体の切断例を示す背面図である。

　本例のフィルター構造体Ｆ６の構成の主要部は第３の実施の形態と共通であり、ここでは相違点を中心に説明する。

　本例のフィルター構造体Ｆ６は、天井埋め込み式の業務用エアコンを使用対象とするものである。この種のエアコンでは、室内に臨むパネルがほぼ正方形の輪郭を有し、その中央にほぼ正方形の吸気口が設けられ、吸気口の４辺それぞれの外側に吹出口が配置された構造を有するものが多く知られている。本例のフィルター構造体Ｆ６は、このようなエアコンの吸気口の形状に合わせて、正方形状に形成される。

　本例のフィルター構造体Ｆ６は、シート層２０に、フィルター層１を切断するための複数の切断線が形成されている。具体的には、正方形のシート層２０の１方向の輪郭２０ｘ（横方向）に平行な複数の切断線５１～５６と、これに直角なもう１方向の輪郭２０ｙ（縦方向）に平行な複数の切断線６１～６６とが、第３の実施の形態の境界部の形成方法と同様にして印刷、ミシン目やハーフカット等でシート層２０に形成される。そしてシート層２０の４隅を含み、切断線５１～５６と切断線６１～６６とが交差して格子状となっている領域が、切除予定領域Ｓに設定される。

　本例のフィルター構造体Ｆ６は、シート層２０に上記のような形態の切断線を形成することにより、吸気口の大きさが異なるエアコンへの対応が可能となっている。図７の（Ａ）（Ｂ）を参照して、例えば横方向の１つの切断線５１と縦方向の１つの切断線６１とに沿ってフィルター層１を切断してＬ字形の部分ｅ１、ｅ２を切除する。これにより、元のフィルター構造体Ｆ６よりも一回り小さいフィルター構造体ｆ１、ｆ２を得ることができるから、大きさが一回り小さいエアコンの吸気口に適合させることができる。

　又、本例のフィルター構造体Ｆ６は、複数の横方向及び縦方向の切断線を有しており、それらのうちから適宜選択した切断線で切断することで大きさを様々に変更することができる。依って本例は、様々な大きさの吸気口に適合させることが可能なフィルター構造体を提供するものである。

　尚、本例では、切断後のフィルター層の形状がいずれも元のフィルター層と同様のほぼ正方形となるように設定されている。この構成により、例えば業務用エアコンのような寸法違いであっても形状が基本的に正方形である対象物への適用が容易になる。

　ところで、天井埋め込み式の業務用エアコンにあっては、吸気口の周囲に人体や温度を検知するセンサが配置されている場合があり、その位置によっては、フィルター構造体を貼り付けたときにセンサがフィルター層で覆い隠される場合がある。そこで本例では、フィルター層におけるセンサと対応する可能性がある部分を切除するため、切除予定領域Ｓを設定した。具体的には、ほぼ正方形のフィルター層１における４つの隅部を含む部分それぞれを切除予定領域Ｓとし、そのうちの少なくとも１個所を選択すると共に、この選択した切除予定領域Ｓ内で、除外対象物の大きさに合わせてその一部を必要に応じて切除するように設定することができる。即ち、切除予定領域Ｓ内の格子状の切断線が境界部として機能する。

　例えば図６の例では、切除予定領域Ｓ内に複数の切断線が格子状に形成されており、それら格子状の切断線により切除予定領域Ｓが９マスに区画されている。そして図７の（Ａ）の例では、切断線５１、６１に沿って切断した後のフィルター構造体ｆ１において、切除予定領域Ｓ内における切断線５６、６６で区画された１マスの部分Ｓ１を切除する態様としている。この場合、切断線５６、６６の一部が境界部を形成する。

　又、図７の（Ｂ）の例にあっては、切断線５１、６１に沿って切断した後のフィルター構造体ｆ２において、切断後に切断線５１、６１で新たに形成される隅部において、切断線５２、６２で区画される領域を新たに切除する部分Ｓ１としている。この場合、切断線５２、６２の一部が境界部を形成する。

　尚、切除予定領域Ｓ内で実際に切除する部分は適宜変更可能であり、２マス以上を切除する態様や、９マス全部を削除する態様としてもよい。更に、切除予定領域Ｓ内で２個所以上の部分を切除してもよく、４個所の切除予定領域Ｓのうち、複数個所の切除予定領域Ｓを切除対象に選択してもよい。

　尚、本例では、切除予定領域Ｓの内部に切断線を格子状に形成したことにより、除外対象物に応じた切除範囲の把握が容易になる。

　図８は図６に示すフィルター構造体の異なる切断例を示す背面図である。

　上述の図７に示した切断例は、シート層２０の輪郭のうち隣接する特定の２辺の輪郭２０ｘ、２０ｙに沿う切断線に沿ってフィルター構造体をＬ字状に切断するものであるが、これに限られず、一方の輪郭だけに沿う切断線に沿って直線状に切断してもよく、３方の輪郭に沿う切断線に沿ってＵ字形に切断してもよく、更には輪郭全周に沿う切断線で切断して、正方形に切り抜いてもよい。

　具体的には、図８の（Ａ）に示すように、フィルター構造体Ｆ６を１本の切断線５１に沿って切断して直線状の部分ｅ３を切り離し、縦方向の長さを短くしたフィルター構造体ｆ３を得るようにしてもよい。或いは図８の（Ｂ）に示すように、輪郭の３辺に沿う３本の切断線５１、６１、６６に沿ってフィルター構造体Ｆ６を切断してＵ字形の部分ｅ４を切り離し、一回り小さいフィルター構造体ｆ４を得るようにしてもよい。更には図８の（Ｃ）に示すように、輪郭の全周に沿う４本の切断線５１、５６、６１、６６に沿ってフィルター構造体Ｆ６を切断してロ字状の部分ｅ５を切り離し、正方形状に切り抜いたフィルター構造体ｆ５を得るようにしてもよい。

　更に、図８の（Ａ）～（Ｃ）に示す各実施の形態において、切断後に形成されるフィルター構造体ｆ３～ｆ５において、センサ等の除外対象物との干渉を避けるために、切断線を利用してフィルター構造体の一部分Ｓ１を切除してもよい。

　又、図８の（Ａ）の例においては、切断線５１と平行ないずれか一本の切断線においてもフィルター構造体Ｆ６を直線状に切断して、より寸法の小さいフィルター構造体を得るようにしてもよい。図８の（Ｂ）、（Ｃ）の例においては、より内側の切断線で切断して、より小さいフィルター構造体を得るようにしてもよい。これらの態様を採用することで、切断後の大きさが様々に異なるフィルター構造体を得ることができる。

　[第７の実施の形態]
　図９は本発明の第７の実施の形態によるフィルター構造体の一部を示す背面図である。

　本例のフィルター構造体Ｆ７の構成の主要部は第３の実施の形態と共通であり、ここでは相違点を中心に説明する。

　上述の実施の形態では、シート層２０に印刷、ミシン目やハーフカット等によって境界部を形成したが、これに代えて、本例のフィルター構造体Ｆ７は、シート層２０に一定間隔に配置した目印７０で、切除予定領域Ｓの境界部４０を示したものである。この目印７０は、印刷で形成してもよいが、印刷以外に、シート層２０の表面にエンボス加工や罫線加工を施して形成してもよい。目印７０の形態としては、例えば十字型や、円形、正方形、三角形、星形等、特に限定されるものではない。

　目印７０をシート層２０に一定間隔で配置することで、それらを基準として、フィルター構造体Ｆ７を所定位置で切断することができる。

　尚、上記の第２の実施の形態では、サイズの異なる２種類の輪郭をフィルター層に表示したが、３種類以上の異なるサイズの輪郭を表示するようにしてもよい。

　又、上記の第２の実施の形態においてフィルター層に形成した輪郭及び境界部を、フィルター層ではなくシート層に形成してもよい。

　反対に、上記の第４の実施の形態においてシート層に形成した輪郭及び境界部、第５の実施の形態においてシート層に形成した面的表示、第６の実施の形態においてシート層に形成した切断線、第７の実施の形態においてシート層に形成した目印を、シート層ではなくフィルター層に形成してもよい。

　更には、これらの実施の形態で示した境界部を、フィルター層及びシート層の両方に設けてもよい。この場合、フィルター層とシート層とで表示を共通としてもよく、異なる形成方法を採用してもよい。

　又、上記の各実施の形態では、境界部等はフィルター層又はシート層のどちらかに形成されていたが、フィルター層及びシート層の両方に形成してもよい。

　又、上記の各実施の形態では、切除予定領域は矩形に設定されるが、それ以外の形態に設定してもよい。

　又、上記の各実施の形態では、切除予定領域を隅部に設定したが、これに限定されない。例えば、取付対象の内方側にフィルター層と干渉する部分がある場合や、センサ等が設けられているためフィルター層で覆うことが適切でない部分がある場合は、これらの部分に合わせてフィルター層の内方に切除予定領域を設定してもよい。この場合、境界部をミシン目等の切断補助部で形成して、切除予定領域を切り取り易くしてもよい。

　又、上記の各実施の形態では、フィルター構造体は矩形又は正方形であったが、多角形、円形、楕円形等様々な形状を採用してもよい。この場合、例えば円形のフィルター構造体では隅部が無いから、取付対象の干渉部分と対応する個所に切除予定領域を設定し、その範囲を表示する境界部を形成すればよい。

　又、上記の各実施の形態では、切断後のフィルター層の形状が、元のフィルター層と相似となるように設定したが、切断後の形状が相似にならなくてもよい。

　又、上記の第１～第５の実施の形態の各々では、４個所の切除予定領域を全て切除可能なようにしたが、１個所だけ切除予定領域を設定するとの態様も可能である。

　又、上記の各実施の形態のフィルター構造体は、切除予定領域を切除せずに、フィルター層の全体を使用してもよい。

　又、上記の各実施の形態におけるシート層については、例えば業務用エアコン用のフィルター構造体のように大判な製品である場合に、フィルター層の中間位置で分割された２つの分割シート層を含むものとしてもよい。この構成により、フィルター構造体の取り付けに当たり、２つの分割シート層のうち一方を剥がして粘着剤層全体の半分を露出させ、これをエアコンの吸気口に貼り付けた後、もう一方の分割シート層を剥離して残り半分を吸気口の残りの部分に貼り付けるという手順を行うことで、取付作業を容易にすることができる。背面のシート層は３つ以上に分割してもよく、不等分に分割してもよく、異形に分割してもよい。

　又、上記の各実施の形態における粘着剤層は、文字、記号、図形、絵柄等のデザイン粘着剤層を含んでもよい。デザイン粘着剤層を設けることで、フィルター構造体の対象物への貼り付けに寄与すると共に、フィルター構造体の交換時期を表示する交換表示機能を付与することが可能となる。又、交換表示機能はフィルター層に通気性が無い又はフィルター層よりも劣るフィルムを熱溶着して予め貼り付けたりして付与してもよい。

　又、本発明のフィルター構造体は、空気清浄機、家庭用や業務用のエアコン以外に、例えば台所や厨房のレンジフード、換気扇等の家庭用又は業務用の機器、屋内外に設置される通気口等にも使用することができる。

　本発明は、空気清浄機、家庭用又は業務用のエアコン、台所や厨房のレンジフード、換気扇等の家庭用又は業務用の機器、屋内外に設置される通気口等に使用されるフィルター構造体製品に適用することができる。特に、取付対象に応じて一部を切除又は切断することで、背面吸気型の空気清浄機にも前面吸気型の空気清浄機にも使用可能なフィルター構造体製品を提供できる。又、天井埋め込み式の業務用エアコンのように吸気口の大きさが異なる取付対象に１種類で対応可能なフィルター構造体製品を提供できる。又、本発明は、矩形又は正方形のほか、多角形、円形、楕円形等様々な形状のフィルター構造体製品を提供することができる。更に、フィルターの交換時期を表示する機能を有するフィルター構造体製品を提供することができる。

 

Claims (3)

1. 　通気性を有し通過する気体をろ過するフィルター層（１）と、前記フィルター層の一方面の少なくとも一部に粘着剤により形成された粘着剤層（１０）と、前記粘着剤層の表面に積層され且つ剥離可能なシート層（２０）とを有するフィルター構造体（Ｆ１）であって、
   　前記フィルター層に切除予定領域（３）が設定され、
   　前記シート層及び前記フィルター層の少なくとも一方に、前記フィルター層の切除予定領域と非切除領域（５）との境界位置を示す境界部（４）が形成されている、
   フィルター構造体。
2. 　前記境界部は、
   印刷によって形成された線、図形、文字、記号、一定範囲の着色等の視覚的表示、
   エンボス加工や罫線加工によって形成された目印、及び、
   ミシン目やハーフカット等の切断補助部、
   のうちから選択した少なくとも１つを含む、
   請求項１記載のフィルター構造体。
3. 　前記フィルター層は矩形の形態を有し、
   　前記切除予定領域は、前記フィルター層の少なくとも１個所の隅部に設定される、
   請求項１又は請求項２記載のフィルター構造体。
   
    

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