WO2022210056A1 - フィルター及びその製造方法、フィルターデバイス、稀少細胞を分離または分取する方法、並びに細胞懸濁液中の稀少細胞の分析方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、一方の面及び他方の面を貫通する複数のフィルター孔を有するフィルターであって、前記フィルター孔は、前記一方の面に第1の開口部と、前記他方の面に第2の開口部とを有し、前記第1の開口部の短軸径W1と長軸径L1との比(L1/W1)が1.00以上1.20以下であり、前記短軸径W1が7.0μm以上9.0μm以下であり、前記第2の開口部の短軸径W2と長軸径L2との比(L2/W2)が1.00以上1.20以下であり、前記短軸径W1と前記短軸径W2との比(W2/W1)および前記長軸径L1と前記長軸径L2との比(L2/L1)がともに1.20以上1.50以下である、フィルターに関する。

Description

フィルター及びその製造方法、フィルターデバイス、稀少細胞を分離または分取する方法、並びに細胞懸濁液中の稀少細胞の分析方法
 本発明は、フィルター及びその製造方法、フィルターデバイス、稀少細胞を分離または分取する方法、並びに細胞懸濁液中の稀少細胞の分析方法に関する。
 がん検診等、特定の病気にかかっているかどうかを調べる検診の分野において、コストを抑制する観点や受診者への負荷を軽減する観点から、血液や唾液等の体液を用いて検診を行うリキッドバイオプシーに関心が高まっている。リキッドバイオプシーの1つとして、血液中に存在する稀少細胞を分析する技術が注目されている。
 稀少細胞として、例えば循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell、以下「CTC」という。)が挙げられる。CTCは、原発腫瘍組織又は転移腫瘍組織から遊離し、血液内に浸潤した細胞である。血液中のCTCについて分析し、進行固形がん患者の病態の把握や、治療効果の判定等に応用することが期待されている。さらには、CTCの生細胞を培養し、抗がん剤スクリーニングへ応用することも期待されている。
 CTC等の稀少細胞を分離または分取する方法としては、種々の方法が検討されており、例えばセルソーターを用いる方法、遠心分離法、フィルターを用いる方法(以下、フィルター法ともいう。)等が挙げられる。しかしながら、セルソーターを用いた場合、高い純度(purity)で分取できるものの、生細胞の分取は困難である。また、遠心分離法は、原理的・手技的な要因から、純度の点で劣りやすい。そのため、生細胞の分離または分取、及び比較的高純度での分離または分取が可能な方法として、フィルター法が期待されている。
 例えば、特許文献1には、血液検体を、所定の孔を含むフィルターを用いてフィルター処理して稀少細胞を分離または検出することが記載されている。
日本国特開2016-180753号公報
 しかしながら、従来のフィルター法においては、検体に対し溶血処理等の前処理をする必要があった。稀少細胞の生細胞を回収するためには、稀少細胞をなるべく傷つけないようにするため、溶血処理等の稀少細胞を損傷し得る前処理を必要としない分離または分取の方法が求められている。また、コスト抑制の観点からも、より簡便な分離または分取の方法が求められている。
 上記の課題に鑑み、本発明は、溶血処理等の前処理をしなくても稀少細胞を分離または分取することができるフィルター及びその製造方法、並びにフィルターデバイスを提供することを目的とする。また、本発明は、上記フィルター又はフィルターデバイスを用いて稀少細胞を分離または分取する方法、及び細胞懸濁液中の稀少細胞の分析方法を提供することを目的とする。
 上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を包含する。
1.一方の面及び他方の面を貫通する複数のフィルター孔を有するフィルターであって、
 前記フィルター孔は、前記一方の面に第1の開口部と、前記他方の面に第2の開口部とを有し、
 前記第1の開口部の短軸径W1と長軸径L1との比(L1/W1)が1.00以上1.20以下であり、
 前記短軸径W1が7.0μm以上9.0μm以下であり、
 前記第2の開口部の短軸径W2と長軸径L2との比(L2/W2)が1.00以上1.20以下であり、
 前記短軸径W1と前記短軸径W2との比(W2/W1)および前記長軸径L1と前記長軸径L2との比(L2/L1)がともに1.20以上1.50以下である、フィルター。
2.前記フィルターの厚みが10μm以上30μm以下である、前記1に記載のフィルター。
3.前記第1の開口部の重心C1から前記他方の面へ引いた垂線と前記他方の面との交点C2’と、前記第2の開口部の重心C2との距離が3μm以下である、前記1または2に記載のフィルター。
4.前記フィルターの開孔率が10.5%以上25%以下である、前記1~3のいずれか1に記載のフィルター。
5.複数の前記フィルター孔が等間隔に配列されている、前記1~4のいずれか1に記載のフィルター。
6.前記フィルター孔同士の間隔が8μm以上30μm以下である、前記1~5のいずれか1に記載のフィルター。
7.前記フィルターは、フィルムに前記フィルター孔を有するフィルターであって、
 前記フィルムの全光線透過率が80%以上である、前記1~6のいずれか1に記載のフィルター。
8.前記フィルターは、フィルムに前記フィルター孔を有するフィルターであって、
 前記フィルムのショア硬度が30以上50以下であり、ヤング率が5MPa以上25MPa以下である、前記1~7のいずれか1に記載のフィルター。
9.前記フィルターが熱可塑性樹脂を含む、前記1~8のいずれか1に記載のフィルター。
10.前記熱可塑性樹脂の主たる成分がポリエチレンまたはポリプロピレンである、前記9に記載のフィルター。
11.前記1から10のいずれか1に記載のフィルターと、前記フィルターを保持する保持部とを含み、シリンジに対して着脱可能な、フィルターデバイス。
12.前記1から10のいずれか1に記載のフィルターの製造方法であって、フィルムに突起構造を表面に有する金型を加熱しながら押し当ててフィルター孔を形成することを含む、フィルターの製造方法。
13.前記1から10のいずれか1に記載のフィルターまたは前記11に記載のフィルターデバイスを用いて細胞懸濁液をろ過するろ過工程を含む、細胞懸濁液中の稀少細胞を分離または分取する方法。
14.前記ろ過工程において、前記細胞懸濁液の自重によりろ過することを含む、前記13に記載の稀少細胞を分離または分取する方法。
15.前記稀少細胞が、がん細胞、循環腫瘍細胞(CTC)、上皮間葉転換CTC(EMTCTC)、集塊形成型CTC(clustered CTC)、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、がん幹細胞、上皮細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、胎児細胞、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の細胞である、前記13または14に記載の稀少細胞を分離または分取する方法。
16.前記ろ過工程において、前記フィルターの前記一方の面側から前記細胞懸濁液をろ過することを含む、前記13~15のいずれか1に記載の稀少細胞を分離または分取する方法。
17.前記13~16のいずれか1に記載の方法で分離又は分取した前記稀少細胞を、前記稀少細胞の動態の観察若しくは活性測定を含む方法で分析すること又は前記稀少細胞の遺伝子を分析することを含む、細胞懸濁液中の稀少細胞の分析方法。
 本発明によれば、検体に溶血処理等の稀少細胞を損傷し得る前処理をしなくても稀少細胞を分離または分取できる。すなわち、かかる前処理によって検体中の稀少細胞が傷つくことを抑制できるため、稀少細胞をより損なわない状態(intact)で分離または分取可能となり、生細胞を分取しやすくなることが期待される。さらには、稀少細胞の分離または分取がより簡便となるため、コストを抑制できる。
図1は、本実施形態に係るフィルターの一例を模式的に示す概略図であり、図1の(a)は一方の面側から見た平面図であり、(b)は他方の面側から見た平面図であり、(c)は(a)及び(b)におけるA-A断面図である。 図2は、共焦点レーザー顕微鏡を用いてフィルターを観察する方法を模式的に示す概略図である。 図3は、共焦点レーザー顕微鏡によるフィルターの観察画像を例示する図であり、図3の(a)は他方の面からの反射光を観察した画像を示す図であり、(b)は反射体の露出部分からの反射光を観察した画像を示す図である。 図4は、図3の画像を二値化処理した画像を示す図であり、図4の(a)は図3の(a)から暗部を第2の開口部に相当する領域として抽出した画像(第2の開口部の抽出画像)を示す図であり、図4の(b)は図3の(b)から明部を第1の開口部に相当する領域として抽出した画像(第1の開口部の抽出画像)を示す図である。 図5は、本実施形態に係るフィルターの製造方法の一例を模式的に示すフロー図である。
 以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際の寸法や縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
<フィルター>
 本実施形態に係るフィルターは、一方の面及び他方の面を貫通する複数のフィルター孔を有するフィルターであって、前記フィルター孔は、前記一方の面に第1の開口部と、前記他方の面に第2の開口部とを有し、前記第1の開口部の短軸径W1と長軸径L1との比(L1/W1)が1.00以上1.20以下であり、前記短軸径W1が7.0μm以上9.0μm以下であり、前記第2の開口部の短軸径W2と長軸径L2との比(L2/W2)が1.00以上1.20以下であり、前記短軸径W1と前記短軸径W2との比(W2/W1)および前記長軸径L1と前記長軸径L2との比(L2/L1)がともに1.20以上1.50以下である。
 図1は、本実施形態に係るフィルターの一例を模式的に示す概略図である。図1の(a)は一方の面側から見た平面図であり、(b)は他方の面側から見た平面図であり、(c)は(a)及び(b)におけるA-A断面図である。フィルター1は、一方の面100及び他方の面200を貫通する複数のフィルター孔3を有する。フィルター孔3はそれぞれ、一方の面100に第1の開口部103を有し、他方の面200に第2の開口部203を有する。
 第1の開口部103において、短軸径W1と長軸径L1との比(L1/W1)は1.00以上1.20以下である。(L1/W1)が1.20以下であることで、第1の開口部が真円に近い形状となりやすい。(L1/W1)は1.18以下が好ましく、1.15以下がより好ましい。また、(L1/W1)は1.00以上であって、製造しやすさの観点からは1.00を超えることが好ましい。第1の開口部が真円に近い形状であることで、比較的大きな開口面積を保ちつつ、特定のサイズの稀少細胞を効率的に分離できるため好ましい。
 第1の開口部103の短軸径W1は7.0μm以上9.0μm以下である。短軸径W1が7.0μm以上であることで、比較的小さな圧力損失で特定サイズの希少細胞を捕捉することができる。短軸径W1は7.5μm以上が好ましく、8.0μm以上がより好ましい。また、短軸径W1が9.0μm以下であることで、特定サイズの希少細胞を通過させずに捕捉することができる。短軸径W1は8.8μm以下が好ましく、8.5μm以下がより好ましい。
 第2の開口部203において、短軸径W2と長軸径L2との比(L2/W2)は1.00以上1.20以下である。(L2/W2)が1.20以下であることで、第2の開口部が真円に近い形状となりやすい。(L2/W2)は1.18以下が好ましく、1.15以下がより好ましい。また、(L2/W2)は1.00以上であって、製造しやすさの観点からは1.00を超えることが好ましい。第2の開口部が真円に近い形状であることで、比較的大きな開口面積を保ちつつ、特定のサイズの稀少細胞を効率的に分離できるため好ましい。
 短軸径W1と短軸径W2との比(W2/W1)および長軸径L1と長軸径L2との比(L2/L1)は、ともに1.20以上1.50以下である。かかる要件を満たすフィルター孔3は、第1の開口部103から第2の開口部203にかけて大きくなるテーパー形状となる。なお、ここでテーパー形状とは、第1の開口部に対し第2の開口部の方が大きい、すなわち上記の要件を満たす形状であればよく、フィルターの厚み方向の距離に伴ってフィルター孔径が一定の変化率で大きくなる場合のみに限定されるものではない。フィルター孔3がかかるテーパー形状であると、フィルター孔が円筒形状である場合に比べ、検体がフィルターを一方の面100から他方の面200側へ通過する際の圧力損失を抑制できる。圧力損失を十分に抑制する観点から、(W2/W1)および(L2/L1)はともに1.20以上であり、1.22以上が好ましく、1.25以上がより好ましい。また、フィルター孔が隣接するフィルター孔と連通するのを抑制する観点から、(W2/W1)および(L2/L1)はともに1.50以下であり、1.45以下が好ましく、1.40以下がより好ましい。
 本実施形態に係るフィルターにおいて、開口部の短軸径および長軸径は次の方法で測定される値である。
 まず、図2に模式的に示すように、フィルター1を、一方の面100が反射体400側となるようにして反射体400上に配置する。次いで、共焦点レーザー顕微鏡(不図示)を用いて、他方の面200側からフィルター1を観察する。このとき、フィルター1は固定した状態で、ピントを他方の面200に合わせて観察することで、他方の面200からの反射光R2を観察できる。また、ピントを一方の面100が接する反射体400の表面に合わせて観察することで、反射体400の露出部分からの反射光R1、すなわち第1の開口部の形状に相当する形状を有する領域からの反射光を観察できる。
 図3は、共焦点レーザー顕微鏡によるフィルターの観察画像を例示する図である。図3の(a)は他方の面からの反射光を観察した画像であり、(b)は反射体の露出部分からの反射光を観察した画像である。
 次に、得られたフィルターの観察画像を画像処理ソフトにより二値化する。図4は、図3の画像を二値化処理した画像である。図4の(a)は図3の(a)から暗部を第2の開口部に相当する領域として抽出した画像(第2の開口部の抽出画像)である。図4の(b)は図3の(b)から明部を第1の開口部に相当する領域として抽出した画像(第1の開口部の抽出画像)である。このように、共焦点レーザー顕微鏡の観察画像を二値化処理することで、観察領域中の各開口部に相当する略円形状の図形が配列された画像が得られる。
 第1の開口部の抽出画像における、第1の開口部に相当する領域106の重心を通る弦長の最小の値を第1の開口部における短軸径W1とする。また、領域106の重心を通る弦長の最大の値を第1の開口部における長軸径L1とする。また同様に、第2の開口部の抽出画像における、第2の開口部に相当する領域206の重心を通る弦長の最小の値を第2の開口部における短軸径W2とする。また、領域206の重心を通る弦長の最大の値を第2の開口部における長軸径L2とする。
 稀少細胞を分離または分取する際に用いられる細胞懸濁液等の検体は、例えば血液細胞等、稀少細胞以外の細胞等を含むものであり、比較的高粘度である。そのため、従来のフィルターにおいて溶血処理等の前処理をせずに検体をろ過処理した場合、フィルターが詰まる等の問題が生じてしまい、稀少細胞の分離が困難であった。また、検体に対し前処理として溶血処理等を行った場合、稀少細胞が傷ついてしまい、生細胞として分取することが難しくなる場合があった。
 一方で、本実施形態に係るフィルターは、複数のフィルター孔において、それぞれフィルター孔及び開口部の形状が特定の範囲に調節されていることで、複数のフィルター孔の孔径や形状が均一となりやすい。本実施形態に係るフィルターは、開口部の形状及び孔径を精密かつ均一に制御することで分離性能を確保しつつ、孔形状を調整して圧力損失を抑制することで、比較的高粘度の検体も詰まることなくろ過できることを見出してなされたものである。より具体的には、本実施形態に係るフィルターは、第1の開口部が稀少細胞の分離に好適な形状及び大きさに調整されていることで優れた分離性能を有し、フィルター孔が第1の開口部から第2の開口部にかけて大きくなるテーパー形状であることで、検体ろ過時の圧力損失が抑制され、溶血処理等の前処理を経なくても検体をろ過できる。本実施形態に係るフィルターによれば、溶血処理等の前処理によって稀少細胞が傷つくことを抑制できるため、稀少細胞をより損なわない状態(intact)で分離または分取可能となり、生細胞を分取しやすくなる。さらには、稀少細胞の分離または分取の過程において、工程を少なくできるため、コストを抑制できる。
 上記に加えて、従来のフィルターにおいては、前処理を行った検体を用いる場合であっても、さらにシリンジ等で陽圧をかける、又はポンプ等で陰圧をかけるなどして、圧力をかけることで検体をろ過する必要があった。本実施形態に係るフィルターによれば、例えばフィルター厚み、開孔率又は孔密度等をさらに調整して、より圧力損失を抑制できる構成とすることで、検体の自重による自然落下で検体をろ過することも可能となる。自然落下で検体をろ過可能であれば、稀少細胞の分離または分取に係る工程がさらに簡便なものとなり、検体中の稀少細胞への負荷もより小さくできるため好ましい。
 本実施形態に係るフィルターは、このようにフィルター孔が特定の形状及び大きさであることで、検体中の稀少物、好ましくは稀少細胞の分離または分取に好適に用いられる。本実施形態に係るフィルターを用い、好ましくは検体を一方の面側から他方の面側へ通過させてろ過することで、検体が所望の稀少細胞(稀少物)を含む場合、稀少細胞(稀少物)はろ過後にフィルターの一方の面上に残り、分離又は分取される。本実施形態に係るフィルターは、特に、第1の開口部の短軸径W1が7.0μm以上9.0μm以下であり、第1の開口部が真円に近い形状であることで、サイズが2μm~8μm程度の血液細胞等はフィルター孔を通過させつつ、サイズが9μm~30μm程度の稀少細胞(稀少物)はフィルター孔を通過させないようにできるため、かかる稀少細胞(稀少物)を効率的に分離または分取することができる。後に詳述するが、このような稀少細胞としては例えば循環腫瘍細胞(CTC)、集塊形成型CTC(clustered CTC)、上皮間葉転換CTC(EMTCTC)等のがん細胞や、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、がん幹細胞、上皮細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞及び胎児細胞等が挙げられる。すなわち本実施形態に係るフィルターは、循環腫瘍細胞(CTC)、集塊形成型CTC(clustered CTC)、上皮間葉転換CTC(EMTCTC)等のがん細胞や、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、がん幹細胞、上皮細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞及び胎児細胞等の分離または分取に特に好適に用いられる。
 以下、本実施形態に係るフィルターの好ましい態様についてさらに説明する。
 本実施形態に係るフィルターの厚みtは、10μm以上30μm以下であることが好ましい。厚みtは取り扱い性の観点から10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、18μm以上がさらに好ましい。また、厚みtは圧力損失をより抑制する観点から30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、23μm以下がさらに好ましい。厚みtは、ノギスやマイクロメーター等の測定器により測定できる。
 第1の開口部103の重心C1から他方の面200へ引いた垂線と他方の面200との交点C2’と、第2の開口部203の重心C2との距離は、3μm以下であることが好ましい。C2’とC2の距離は、2μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。C2’とC2の距離が小さいことは、フィルター孔がフィルターの厚み方向により平行に(より小さい傾斜で)貫通していることを意味する。フィルター孔がフィルターの厚み方向により平行に貫通することで、圧力損失をより抑制できるため好ましい。また、検体ろ過後のフィルターを顕微鏡等で観察する際に、画像が見やすくなるため好ましい。
 図1の(c)に、C1、C2’及びC2の関係を模式的に示す。なお、図1の(c)においては、説明上の便宜からC2’とC2とが異なる位置に明瞭に示されるように配置が調整されているが、C2’とC2は同じ位置、すなわちC2’とC2の距離が0μmであってもよい。
 本実施形態に係るフィルターにおいて、各フィルター孔のC2’とC2の距離は、例えば上述した第2の開口部の抽出画像における、各領域206の重心の画像上の座標と、第1の開口部の抽出画像における、第1の開口部に相当する各領域106の重心の画像上の座標とを比較し、その距離をフィルター上の距離に換算することで求められる。
 本実施形態に係るフィルターの開孔率は、10.5%以上25%以下であることが好ましい。開孔率が10.5%以上であることで、圧力損失をより抑制しやすい。開孔率が低い場合、被処理液を押出もしくは吸引する等の圧力をかける操作が必要となりやすく、稀少細胞の損傷や分取対象物のすり抜けによる回収ロスなどが生じることがある。一方で、開孔率を10.5%以上とすることで、自然落下可能なフィルター法により好適に適用することができる。同様の観点から、開孔率は12%以上がより好ましく、18%以上がさらに好ましい。また、開孔率は高い方が好ましいが、フィルターの機械的強度を保持する観点からは25%以下であることが好ましい。開孔率は23%以下がより好ましく、22%以下がさらに好ましい。
 本実施形態に係るフィルターにおいて、開孔率は、開孔率(%)=(第1の開口部の面積/フィルター面積)×100で求められる値である。
 本実施形態に係るフィルターの孔密度は、3600個/mm以上4200個/mm以下であることが好ましい。孔密度が3600個/mm以上であることで、圧力損失をより抑制しやすい。孔密度は3700個/mm以上がより好ましく、3800個/mm以上がさらに好ましい。また、孔密度が4200個/mm以下であることで、フィルターの非開口部の面積が多くなり、フィルターの強度が保てるため好ましい。孔密度は4100個/mm以下がより好ましく、4000個/mm以下がさらに好ましい。
 本実施形態に係るフィルターにおいて、孔密度は、孔密度(個/mm)=(フィルター孔数(個)/フィルター面積(mm))で求められる値である。
 また、本実施形態に係るフィルターは、任意の0.64mm×0.64mmの領域において孔密度が3600個/mm以上4200個/mm以下であることが好ましい。任意の0.64mm×0.64mmの領域における孔密度はより好ましくは3700個/mm以上であり、さらに好ましくは3800個/mm以上である。また、任意の0.64mm×0.64mmの領域における孔密度はより好ましくは4100個/mm以下であり、さらに好ましくは4000個/mm以下である。かかる要件を満たすことで、フィルター面におけるフィルター孔の分布が均等となりやすい。フィルター面におけるフィルター孔の分布が均等であることで、検体ろ過時に検体の流れに偏りが生じることを抑制できる。検体の流れの偏りを抑制することで、分離時に詰まりが生じたり、細胞が凝集した状態で分離されてしまい、培養や分析をする際の問題となったりすることを抑制できる。
 上記と同様の観点や、製造時又は製造後に複数のフィルター孔同士が連通してしまうことを抑制する観点から、本実施形態に係るフィルターの複数のフィルター孔は、等間隔に配列されていることがより好ましい。フィルター孔の具体的な配列パターンは特に限定されないが、例えば所定周期で所定の形状または図形を繰り返し配列したパターンが好ましく、具体的には例えば、正方格子状、三角格子状、六角格子状及び平行体格子状等の格子状や、渦巻き状、同心円状並びに放射状等が挙げられる。なお、フィルター孔が等間隔に配列されるとは、フィルター孔同士の間隔が厳密に全て等しいことを意図したものではなく、本発明の効果を奏する範囲において、略等間隔であればよい。
 フィルター孔同士の間隔(フィルター孔の間隔)は8μm以上30μm以下であることが好ましい。フィルター孔の間隔が上記範囲であることで、孔密度や開孔率を上述の好ましい範囲に調節しやすい。また、フィルター孔の間隔が上記下限値以上であることで、複数のフィルター孔同士が製造時又は製造後に連通してしまうことを抑制できるため好ましい。フィルター孔の間隔は10μm以上がより好ましく、14μm以上がさらに好ましい。また、フィルター孔の間隔は28μm以下がより好ましく、24μm以下がさらに好ましい。また、複数のフィルター孔が略等間隔に配列され、かつ、その間隔が上記範囲であることがより好ましい。
 ただし、フィルター孔同士の間隔(フィルター孔の間隔)とは、一のフィルター孔の第1の開口部の重心から隣接する別のフィルター孔の第1の開口部の重心までの距離をいう。
 本実施形態に係るフィルターを構成する成分は特に限定されないが、上述の好ましい態様を備えるフィルターを得やすい点から、フィルターは熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。フィルターにおける熱可塑性樹脂の割合は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。熱可塑性樹脂の割合の上限は特に限定されないが、100質量%が実質的な上限である。
 熱可塑性樹脂の主たる成分としては、具体的に好ましくは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、製造時の離型性に優れる点、成形性に優れる点から好ましい。なお、主たる成分とはフィルターに含まれる熱可塑性樹脂全体を100質量%としたときに50質量%以上を占める成分をいう。なお、主たる成分は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。上限値は特に限定されるものではないが、100質量%が実質的な上限となる。
 熱可塑性樹脂の主たる成分は、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることが好ましい。ポリエチレンまたはポリプロピレンを用いることによって、比較的低い温度で貫通孔を成形することが可能となるため、生産性を高めやすい。また、孔径の制御が容易である、適度な柔軟性や透明性を有する等の理由から、上述の好ましい態様を備えるフィルターを得やすいため好ましい。
 フィルターは、熱可塑性樹脂の他に例えば製造上又は使用上等の種々の目的で添加される、各種の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の例としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、離型剤、増粘剤、可塑剤、pH調整剤および塩などが挙げられる。特に、製造時の離型剤として、長鎖カルボン酸、もしくは長鎖カルボン酸塩などの低表面張力のカルボン酸やその誘導体、および、長鎖アルコールやその誘導体、変性シリコーンオイルなどの低表面張力のアルコール化合物等を重合時に少量添加することが好ましく行われる。
 フィルターを構成する成分は、一般的な化学分析、例えば赤外分光(IR)や核磁気共鳴(NMR)等で分析することで特定できる。
 本実施形態に係るフィルターの構成として、特に限定されないが、例えばフィルムに上述のフィルター孔を有する構成が好ましい。フィルムの材質は特に限定されないが、上述の好ましい態様を備えるフィルターを得やすい点から、例えば樹脂フィルムが好ましく、熱可塑性樹脂を含む樹脂フィルムがより好ましい。フィルムの材質のより好ましい態様は、具体的には上述したフィルターを構成する成分の好ましい態様と同様である。本発明の効果を阻害しない範囲において、フィルムは1種類の樹脂の単体からなる層であってもよく、複数の樹脂層からなる積層体であってもよい。また、フィルムは必要に応じ、各種のコーティング等が施されていてもよい。
 フィルムの全光線透過率は80%以上が好ましい。全光線透過率は82%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。全光線透過率が上記範囲であることで、検体ろ過後のフィルターをそのまま顕微鏡観察や生細胞の培養に用いることが容易となりやすい。全光線透過率の上限は特に限定されないが、典型的には100%以下である。
 全光線透過率は、シングルビーム測光器を用いた全光線透過率の測定方法(JIS K 7361-1)で測定できる。
 フィルムのショア硬度は30以上50以下が好ましい。フィルムのショア硬度が30以上であることで、フィルターのピンセット等でのハンドリング性が向上するため好ましい。ショア硬度は32以上がより好ましく、35以上がさらに好ましい。また、ショア硬度が50以下であることで、フィルターが適度に柔軟性を有することとなり、圧力損失をより抑制しやすいため好ましい。ショア硬度は48以下がより好ましく、46以下がさらに好ましい。
 ショア硬度は、デュロメータ硬さ試験(JIS K 7215)の方法で測定できる。
 フィルムのヤング率は5MPa以上25MPa以下が好ましい。フィルムのヤング率が5MPa以上であることで、ろ過する際にフィルターの開口形状の変形を抑制しやすいため好ましい。ヤング率は7MPa以上がより好ましく、10MPa以上がさらに好ましい。また、ヤング率が25MPa以下であることで、フィルターが適度に柔軟性を有することとなり、圧力損失をより抑制しやすいため好ましい。ヤング率は22MPa以下がより好ましく、20MPa以下がさらに好ましい。
 ヤング率は、引張特性試験(JIS K 7161)の方法で測定できる。
 また、ハンドリング性、ろ過性の観点から、ショア硬度とヤング率の両方を、それぞれ上記の範囲とすることがより好ましい。
<フィルターデバイス>
 本発明は、本実施形態に係るフィルターと、前記フィルターを保持する保持部とを含み、シリンジに対して着脱可能な、フィルターデバイスにも関する。保持部は、フィルターを保持することができればその形状等は特に限定されず、用途や着脱するシリンジ等に応じて適宜設計できる。また、シリンジに対して着脱するための機構も特に限定されず、用途や着脱するシリンジ等に合わせて調整できる。本実施形態に係るフィルターデバイスによれば、本実施形態に係るフィルターを用いた検体のろ過において、検体の流路として入手が容易な既製のシリンジ等を使用可能となり、ろ過をより簡便に行えるため好ましい。
<稀少細胞を分離または分取する方法>
 本実施形態に係るフィルターまたは本実施形態に係るフィルターデバイスは、稀少細胞の分離または分取に好適に使用される。すなわち、本発明は、検体中の稀少細胞を分離または分取する方法にも関する。かかる方法として、本実施形態に係るフィルターまたは本実施形態に係るフィルターデバイスを用いて検体をろ過するろ過工程を含む方法が挙げられる。
 ろ過工程において、フィルターの一方の面から検体をろ過することが好ましい。一方の面から検体をろ過するとは、すなわち検体をフィルターの一方の面側から他方の面側へ通過させてろ過することをいう。検体が所望の稀少細胞を含む場合、稀少細胞がろ過後にフィルターの一方の面上に残ることで、稀少細胞が分離又は分取される。
 ろ過工程において、フィルターの一方の面側と他方の面側とで圧力差を設けてもよいが、検体中の稀少細胞への損傷を抑制する観点からは、圧力差は10Pa以下が好ましく、1Pa以下がより好ましい。また、ろ過工程において圧力差を設けないこと、すなわち検体の自重によりろ過することがさらに好ましい。本実施形態に係るフィルターにおいては、ろ過時の圧力損失が抑制されているので、圧力差を比較的小さくすることができ、さらには、検体の自重によりろ過することも可能となる。
 フィルターの送液速度は特に限定されないが、ろ過に要する時間の低減の観点から例えばフィルター孔1つあたり5nl/min以上が好ましく、10nl/min以上がより好ましく、20nl/min以上がさらに好ましい。また、ろ過対象への負荷低減の観点から例えば1000nl/min以下が好ましく、500nl/min以下がより好ましく、100nl/min以下がさらに好ましい。なお、上述の通り、送液には必ずしも圧力差等の駆動力は必要ではなく、検体の自重により上記速度で検体が送液されてもよい。
 ろ過面積は、特に限定されるものではなく、例えばフィルター孔数と検体のろ過処理量等を考慮して設定できる。フィルター処理容量を大きくする観点から、ろ過面積は50mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、130mm以上がさらに好ましい。また、必要検体量を低減する観点から、ろ過面積は1000mm以下が好ましく、800mm以下がより好ましく、500mm以下がさらに好ましい。
 本実施形態に係るフィルターによりろ過し得る検体としては、特に限定されないが、例えば細胞懸濁液が好ましい。細胞懸濁液として、具体的には血液、尿、唾液、脳脊髄液、胸水、腹水、細胞診断後の残余検体等が挙げられる。
 本実施形態に係るフィルターによれば、検体に溶血処理等の前処理をしなくてもろ過処理が可能である。したがって、稀少細胞の損傷を抑制し、生細胞を分取しやすくする観点からは、検体に対し、溶血処理等の稀少細胞を損傷し得る前処理は行わないことが好ましい。ただし、その目的や用途等に応じてかかる処理を行うことを妨げるものではない。また、その目的や用途、検体の状態等に応じて、検体の希釈や稀少細胞の標識処理等、公知の前処理を行ってもよい。
 本実施形態に係るフィルターにより分離される物質としては、例えば上記検体に含まれる稀少物が挙げられ、稀少物としては稀少細胞や稀少物質が挙げられる。分離される物質としては、典型的には稀少細胞が好ましい。なお、上述した実施形態においては、分離される物質として稀少細胞を例に説明したが、上記の通り分離される物質は稀少細胞のみに限定されるものではない。
 稀少細胞としては、例えばがん細胞、循環腫瘍細胞(CTC)、上皮間葉転換CTC(EMTCTC)、集塊形成型CTC(clustered CTC)、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、がん幹細胞、上皮細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、胎児細胞、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の細胞が挙げられる。稀少細胞は、好ましくは循環腫瘍細胞(CTC)、上皮間葉転換CTC(EMTCTC)、集塊形成型CTC(clustered CTC)からなる群から選択される1以上の細胞である。本実施形態に係るフィルターは孔の形状や大きさが特定の範囲に調整されているので、これらの稀少細胞の分離または分取に好適に用いられる。
 稀少物質としては、例えばアスベスト、コレステリン結晶、血栓、尿酸結晶、ピロリン酸カルシウム結晶等が挙げられる。
<細胞懸濁液中の稀少細胞の分析方法>
 本発明は、細胞懸濁液中の稀少細胞の分析方法にも関する。すなわち、本実施形態に係る細胞懸濁液中の稀少細胞の分析方法は、本実施形態に係る稀少細胞を分離または分取する方法で分離又は分取した稀少細胞を、前記稀少細胞の動態の観察若しくは活性測定を含む方法で分析すること又は前記稀少細胞の遺伝子を分析することを含む。すなわち、本実施形態に係るフィルターによれば、稀少細胞を生細胞として分離または分取できるため、稀少細胞の動態の観察若しくは活性測定を含む方法で分析すること又は稀少細胞の遺伝子を分析することが可能である。分析の方法は特に限定されず、公知の分析技術を使用できる。分析は、その具体的手法に応じて、ろ過後にフィルターの一方の面上に残ることで分離または分取された稀少細胞をフィルター上に残した状態で行ってもよく、フィルターから稀少細胞を回収した上で行ってもよい。
<フィルターの製造方法>
 本実施形態に係るフィルターの製造方法は、上述のフィルターが得られる方法であれば特に限定されないが、一例として、フィルムに突起構造を表面に有する金型を加熱しながら押し当ててフィルター孔を形成すること(フィルター孔形成工程)を含む方法が挙げられる。以下、本実施形態に係るフィルターの好ましい製造方法の例を、図面を参照し具体的に説明する。
 図5は、本実施形態に係るフィルターの製造方法の一例を模式的に示すフロー図である。上記フィルター孔形成工程において、フィルムは、フィルム11と、支持フィルム12とが少なくとも積層された積層構造体10の状態で用いられることが好ましい。すなわち、フィルター孔形成工程において、前記積層構造体10に対して、突起構造21を表面に有する金型20を加熱しながら該積層構造体10のフィルム11側に押し当てることにより、フィルム11に貫通孔を形成し、支持フィルム12に前記貫通孔に連通する凹部を形成することが好ましい。ここで、フィルム11に形成された貫通孔が、本実施形態に係るフィルターのフィルター孔に相当する。
 また、フィルター孔形成工程において積層構造体を用いた場合、フィルター孔形成工程の後にフィルムと支持フィルムとを剥離することが好ましい(剥離工程)。剥離工程により、フィルター孔形成工程で貫通孔(フィルター孔)が形成されたフィルムをフィルターとして得られる。
 さらに具体的には、本実施形態に係るフィルターの製造方法の例は以下の通りである。
 最初に、図5の(a)に示すようにフィルム11と支持フィルム12が積層された積層構造体10と、表面に独立した突起構造が所定位置に配置された金型20を準備する。ここで、フィルム11は熱可塑性樹脂P1を含むことが好ましく、支持フィルムは熱可塑性樹脂P2を含むことが好ましい。また、熱可塑性樹脂P1の融点はTm1とし、熱可塑性樹脂P2のガラス転移点はTg2とする。
 各層に含まれる各熱可塑性樹脂の割合としては、層全体を100質量%としたときにその熱可塑性樹脂を60質量%以上含むことが好ましい。さらには、80質量%以上含むことがより好ましい。また各層には、熱可塑性樹脂P1または熱可塑性樹脂P2以外に、成形性や離型性を付与するための添加物やコーティング成分が含まれていてもよい。なお、上限値は特に限定されるものではないが、100質量%が実質的な上限となる。
 また、フィルムと支持フィルムとの界面は剥離が可能であることが好ましく、フィルムと支持フィルムとの界面は、コーティング等により形成された粘着剤の作用を利用してラミネートされていることが好ましい。また、本実施形態ではフィルムと支持フィルムの2層積層構成を説明しているが、支持フィルムを挟んでフィルムと反対側に別の層を設けてもよい。フィルム表面のコーティングにフィルムと同じ構成の材料を適用すれば、成形後の平面性が高くなるため好ましい。
 積層構造体とは、異なる成分を含む層が2層以上積層された構造体をいう。なお、積層構造体はロールツーロールで搬送される連続体フィルムであってもよいし、枚葉体シートであってもよい。
 ガラス転移温度とは、JIS K 7244-4(1999)に記載の方法に準じた方法により、試料動的振幅速さ(駆動周波数)は1Hz、引張りモード、チャック間距離5mm、昇温速度2℃/分での温度依存性(温度分散)を測定したときに、tanδが極大となる温度のことである。
 また、ここでいう融点とはDSC(示差熱量分析)により得られる、昇温過程(昇温速度:20℃/分)における融点Tmであり、上述と同様にJIS K 7121(1999)に基づいた方法により、25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷し、再度室温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って得られた2ndRunの結晶融解ピークにおけるピークトップの温度でもってその樹脂の融点とする。
 本実施形態に係る製造方法の例において、まず、表面に突起構造21を有する金型20を加熱しておく。加熱は金型がTm1以上かつTg2以上の温度範囲となるように行うことが好ましい。加熱は金型と積層構造体が接触している状態で行ってもよい。接触させておくことにより、積層構造体の平面性を良好な状態で保持させておくことができる。
 なお、金型の加熱温度の上限値は限定されるものではないが、熱可塑性樹脂P1の熱分解点以下であり、かつ、熱可塑性樹脂P2の熱分解点以下であることが好ましい。
 次に、図5の(b)に示すように、加熱した状態の積層構造体10のフィルム11の表面に、突起構造面が接触するように金型20を加圧して押し当てる。加圧されることにより、突起構造21が適正な高さを有すれば、突起構造がフィルム11を突き抜けて、支持フィルム12まで突き刺さる。そして、図5の(c)に示されるように、金型20と積層構造体10とが隙間なく当接した状態となる。
 この時の必要な圧力と加圧時間はフィルムの材質、転写形状、特に凹凸のアスペクト比に依存するものであり、概ねプレス圧力の好ましい範囲は1~50MPa、成形時間の好ましい範囲は0.01~60秒である。
 プレス圧力のより好ましい範囲は2~40MPaであり、さらに好ましい範囲は3~15MPaである。また、成形時間のより好ましい範囲は1~50秒であり、さらに好ましい範囲は3~30秒である。
 また、位置制御によって金型20を積層構造体10に押し当ててもよい。すなわち、あらかじめ設定された位置に金型20を移動させて積層構造体10に押し当ててもよい。あらかじめ設定された位置とは、フィルムの表面に金型の突起構造を含む平面が隙間無く当接できる位置のことである。
 なお、昇圧後に金型の位置を保持したまま除圧して金型20と積層構造体10の接触状態を保持してもよい。
 次に、図5の(c)に示すように、加圧した状態または接触した状態を保持したままで、金型を冷却する。冷却は支持フィルムを構成する熱可塑性樹脂P2のガラス転移温度Tg2以下まで行うことが好ましい。Tg2以下まで冷却することにより、金型20を積層構造体10から剥離した後での樹脂変形を抑制することができ、精度の高い貫通孔形成が可能となるため好ましい。
 次に、図5の(d)に示すように、積層構造体10を金型20から剥離する。剥離は、積層構造体の表面に対して垂直方向に金型や積層構造体を離間するように移動させる。積層構造体が連続体のフィルムの場合には連続的に積層構造体の表面に対して垂直方向に張力を与えて、線状の剥離位置が連続的に移動するようにして剥離することが好ましい。この状態で保持して、貫通孔を有するフィルム、すなわち製造されたフィルターを使用する直前で支持フィルムを剥離することにしてもよい。支持フィルムはカバーフィルムとしての役割を持ち、使用する直前で剥離すれば表面に傷がつきにくく、また、使用直前まで厚く剛性の高いフィルムとして扱えるので作業性が良いため好ましい。
 図5の(e)ではフィルム11を支持フィルム12から剥離する。剥離は、フィルムまたは支持フィルムの表面に対して垂直方向にフィルムまたは支持フィルムに張力を与えて、線状の剥離位置が連続的に移動するようにして剥離することが、剥離跡を抑制する観点から好ましい。
 図5を用いて説明した上記の工程を実施することにより、フィルム11に高精度に形状が制御されたフィルター孔が形成されたフィルターを製造できる。上記の製造方法によれば、フィルムは成形時には溶融状態であるので、突起構造を押し付けたときのフィルムは粘性材料に近い挙動で塑性変形を引き起こし、開口部端面でのバリの少ない貫通孔が形成される。また、さらに、突起パターン(突起構造)が押し込まれた時に、支持フィルムでは粘弾性変形を引き起こし、支持フィルムの内部に突起構造がスムーズに進入できるので、フィルムと支持フィルムとの界面でもバリの少ない綺麗な端面を形成できる。
 上記のような方法において、金型の突起構造の形状および配置をフィルター孔形状に合わせて調節することで、フィルター孔やその開口部の形状、並びに配置等が高精度に制御されたフィルターを製造できる。すなわち、本実施形態に係る製造方法では、金型の突起構造の形状や配置を、本実施形態におけるフィルターのフィルター孔形状や配置の好ましい態様に対応するよう調整することで、所望のフィルターを製造することができる。
 金型の材質は、強度と熱伝導率が高い金属が好ましく、例えばニッケルや鋼、ステンレス鋼、銅などが好ましい。また、外表面に加工性を向上させるために鍍金を施したものを使用してもよい。
 突起構造の高さ、形状、断面形状や配列等は、要求されるフィルター孔の形状やフィルムの厚みによって適宜決定される。突起構造の高さについては、フィルム11の厚みを突き抜ける長さであることが好ましい。すなわち、成形時に金型20が積層構造体10に密着した時に、フィルム11を突き抜ける高さであることが好ましい。また、突起構造の形状は上述したフィルター孔形状に対応する形状が好ましく、例えば円錐台形状又は円錐形状等が好ましい。突起構造の高さ方向に垂直な断面の断面形状は例えば円形が好ましい。
 表面に突起構造を有する各金型の作成方法は、金属表面に直接切削やレーザー加工や電子線加工を施工する方法、金属表面に形成した鍍金皮膜に直接切削やレーザー加工や電子線加工を施工する方法などが挙げられる。また、レジストを基板の上に塗布した後、フォトリソグラフィー手法によって所定のパターンニングでレジストを形成した後、基板をエッチング処理して凹部を形成し、レジスト除去後に電気鋳造でその反転パターンを得る方法などが挙げられる。異方性エッチングを適用することにより錐状のパターンを得ることができる。基板としては金属板の他にシリコン基板等も適用できる。
 フィルム11の材質等について、その好ましい態様は、上述したフィルターにおけるフィルムの好ましい態様と同様である。
 支持フィルム12を構成する熱可塑性樹脂の主たる成分としては、具体的に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂ポリエーテル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィンポリマー、またはポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。特に好ましくは、ポリメタクリル酸メチルまたはシクロオレフィンポリマーである。なお、主たる成分とは支持フィルムを構成する樹脂全体を100質量%としたときに50質量%以上を占める成分をいう。なお、主たる成分は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。また、支持フィルム12はフィルターを構成する成分と同様、各種の添加剤を適宜含んでいてもよい。
 熱可塑性樹脂P2はポリメタクリル酸メチル、シクロオレフィンポリマーまたはポリカーボネートであることが好ましい。特に好ましくは、ポリメタクリル酸メチルまたはシクロオレフィンポリマーである。ポリメタクリル酸メチル、シクロオレフィンポリマーまたはポリカーボネートを用いることによって、貫通孔(フィルター孔)に連通する凹部を精度良く成形することが可能となる。
 フィルムや支持フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲において、上述の樹脂の単体からなる層であっても構わないし、複数の樹脂層からなる積層体であってもよい。この場合、単体の層と比べて離型性や耐摩擦性などの表面特性等を付与することができる。このように複数の樹脂層からなる積層体とした場合でも、フィルムおよび支持フィルムの各層において、主たる熱可塑性樹脂成分が前述の要件を満たすことが好ましい。
 また、フィルムおよび支持フィルムの製造方法としては、例えば熱可塑性樹脂を溶融押出により製膜することが好ましい。表層に離型層や粘着層などを設ける場合は、共押し出ししてフィルム状に加工する方法を用いれば良いが、製膜後にコーティングにより設けてもよい。また、単膜で作製したフィルムに表層原料を押出ラミネートする方法を用いてもよい。また、フィルムと支持フィルムとの積層は、ロールで挟圧してラミネートする方法の他、加熱されたロールなどにより熱ラミネートする方法等を適用することができる。
 以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[フィルター評価]
(フィルター孔形状、配置)
(共焦点レーザー顕微鏡による観察)
 反射体として自己粘着フィルム(材質:ポリエチレン、東レフィルム加工株式会社製、型番トレテック7721)を用い、各フィルターを、一方の面が下側となるようにして反射体上に配置した。次いで、共焦点レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製、型番OLS4100)を用いて、他方の面側からフィルターを観察した。このとき、フィルターは固定した状態で、ピントを他方の面に合わせた観察画像と、ピントを一方の面が接する反射体の表面に合わせた観察画像とを得た。観察範囲は131μm四方とし、この範囲でレーザー観察時の反射光強度が受光素子の最大強度を超えないように照射強度を調節した。
 ただし比較例1のフィルターは、フィルターの厚みが厚いために反射体の表面からレーザーの反射光を得ることができなかったため、共焦点レーザー顕微鏡を用いた画像観察が困難であった。そのため、比較例1のフィルターは走査型電子顕微鏡によりフィルターの断面画像を取得することにより観察した。
(二値化処理)
 次に、得られたフィルターの観察画像を画像処理ソフトにより二値化した。ピントを他方の面に合わせた観察画像については、観察画像中の反射光強度の最大値に対して、0~10%の反射光強度である部分を暗部として抽出した。その際、撮像領域境界にかかる部分と、100ピクセル以下の部分については、対象から除外した。なお、全体は1024×1024ピクセルで撮像しており、100ピクセル以下は面積換算で1.6μm以下である。またピントを一方の面が接する反射体の表面に合わせた観察画像については、観察画像中の反射光強度の最大値に対して、13~100%の反射光強度である部分を明部として抽出した。その際、撮像領域境界にかかる部分と、2000ピクセル以下の部分については、対象から除外した。なお、全体は1024×1024ピクセルで撮像しており、2000ピクセル以下は面積換算で32μm以下である。
 二値化した画像から、第1の開口部の短軸径W1及び長軸径L1、第2の開口部の短軸径W2及び長軸径L2、C2’とC2の距離、開孔率、孔密度並びにフィルター孔の間隔を求めた。
(厚み)
 マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製、型番CLM1-15QMX)を用いてフィルターの厚みを測定した。
(全光線透過率)
 透過率計(株式会社村上色彩技術研究所製、型番HR-100)を用いて、フィルター孔を形成する前のフィルムの全光線透過率を測定した。40mm×40mmのフィルム試験片を用意し、ハロゲンビームが透過する光線のうち、平行成分と拡散成分すべてを含めた光線の透過率を全光線透過率とした。
(ショア硬度)
 硬度計(株式会社テクロック製、型番GS719N)を用いて、フィルター孔を形成する前のフィルムのショア硬度を測定した。
(ヤング率)
 引張試験機(株式会社オリエンテック製型番RTA-500)を用いて、フィルター孔を形成する前のフィルムのヤング率を測定した。温度23℃、湿度65%RH、引張強度は300mm/minの条件で測定した。
[実施例及び比較例]
(実施例1)
 フィルムとして、ポリエチレン(融点126℃)を主として含む厚み15μmのフィルムを用い、支持フィルムとして、シクロオレフィンポリマー(COP)(ガラス転移温度136℃)を主として含む厚み100μmのフィルムを用いた。なお、フィルムの一方の表層には低密度ポリエチレンを主体とした厚さ6μmの粘着層を有する。フィルムの粘着層を支持フィルムの表面に貼り合わせるようにラミネートし、積層構造体を構成した。
 金型としては、円錐台形状の突起構造が全面に配置された金型を用いた。円錐台は底面が直径8μmの円形で、高さが50μmであり、ピッチ16μmで正方配置されている。突起構造が加工されている領域は100mm(フィルム幅方向)×100mm(フィルム搬送方向)の領域である。金型の材質は厚さ20mmの銅を母材として表面にニッケル鍍金膜を施したものに、鍍金膜に円錐台パターンを機械加工により形成した。
 成形時の金型温度は150℃とし、加圧力としては全面で5MPaの圧力がかかるようにした。加圧時間としては30秒であった。また、剥離時の金型温度は80℃であった。金型からフィルムを剥離することによって、フィルムに貫通孔を有し、支持フィルムに前記貫通孔に連通する凹部を有する熱可塑性フィルムを得た。
 金型から剥離した熱可塑性フィルムを、引き続き連続的に、巻き取り装置に送り出し、フィルムと支持フィルムとを剥離し、各々巻き取った。巻き取ったフィルムを、複数のフィルター孔を有するフィルターとして得た。
(実施例2)
 開孔率が10%となるように突起構造の配置を変更した以外は実施例1と同様の金型を用いて、実施例1と同様の手順でフィルターを作製した。
(比較例1)
 材質としてポリカーボネートから構成されるScreenCell(登録商標) CYTO R kit(型番RCY 4FC)を用いた。
(比較例2)
 材質としてエポキシ系樹脂から構成されるCellSieve(商品名) Microfilters-8micron diameter 5 pack (for training)を用いた。
 各例のフィルターについて、上述の各項目を評価した結果を表1に示す。表中、「N.D.」は該当のデータが未測定であることを示す。なお、比較例1におけるフィルター孔の間隔は値にばらつきがあったため「不定」とした。実施例1、2及び比較例2におけるフィルター孔は等間隔(略等間隔)に配列されていた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
[自然落下試験]
(試験方法)
 各例のフィルターについて、検体の自重による自然落下でのろ過が可能かどうかを評価した。直径13mmフィルター用のフィルターホルダー(SWINNEXSX0001300、ミリポア社製)に各例のフィルターをセットした。フィルターホルダーにプランジャーを外した20mLシリンジ(テルモシリンジ20mL SS-20ESZ、テルモ株式会社製)をセットした。このシリンジに検体として生理食塩水5mL及び全血5mLを用いて、それぞれのろ過が終了するまでの時間を計測した。ただし、60秒間で滴下が開始しない場合には自然落下でのろ過が困難と判断し、表中に「滴下せず」と示した。試験は各例のフィルターについて、生理食塩水5mL及び全血5mLを用いて、実施例1は各3回、実施例2及び比較例1、2は各々1回行った。ただし、生理食塩水5mLにおいて「滴下せず」であったフィルターに関しては、より粘度の大きい全血5mLにおいても同様に自然落下でのろ過が困難と判断し、全血5mLの試験は実施しなかった。
 試験結果を表2に示す。ここで、表2中に「a~b秒」と示す場合、aは複数回行った試験結果のうち最小の秒数を表し、bは最大の秒数を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
[細胞回収率試験]
(検体の用意)
 ボランティアより採取した血液に肺腺癌細胞株H827を100個/mLとなるように混和し、うち3mLを1回の評価用として細胞回収率の評価試験に供した。これを、希釈なしの検体として評価した。また、希釈なしの検体を生理食塩水で3倍希釈した検体及び5倍希釈した検体も同様に評価した。希釈なしの検体を用いて3回(No.1~3)、3倍希釈の検体を用いて3回(No.4~3)、5倍希釈の検体を用いて3回(No.7~9)評価した。
(試験方法)
 前記自然落下試験と同じ方法でフィルターホルダーに実施例1のフィルターをセットし、シリンジをセットした。このシリンジを用いて上記の検体(No.1~9)をそれぞれろ過した。
(評価)
 ろ過後にフィルター上に分離されて残った細胞(フィルター捕捉細胞)について以下の項目を評価した。
 細胞計測値:ろ過後のフィルターをギムザ染色液にて染色し、顕微鏡下で腫瘍細胞の個数をカウントし、得られた個数を細胞計測値(個)とした。カウントに際しては、単個の細胞も2個以上からなる細胞集塊も1個とカウントした。
 回収率:(細胞計測値/全細胞数)×100を回収率(%)とした。全細胞数は希釈なしの検体は300、3倍希釈の検体は100、5倍希釈の検体は60とした。
 細胞集塊数:上記細胞計測値のうち、2個以上の細胞からなる細胞集塊の個数を細胞集塊数(個)とした。
 また、分離後のろ液(Flow Through液)について以下の項目を評価した。ろ液は半量をViCellにて評価、残り半量をスメア標本として評価した。
 ViCell:ろ液半量をViCell XR(BECKMAN COULTER社)を用いて細胞の個数をカウントし、得られた個数をViCell(個)とした。
 スメア標本:ろ液半量をスライドガラスに滴下、引きガラス法にて塗抹したのち、ギムザ染色液にて染色した。顕微鏡下で腫瘍細胞の個数をカウントし、得られた個数をスメア標本(個)とした。
 評価結果を表3に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 上記の結果から、実施例1のフィルターによれば、フィルター孔が所定の孔形状を有することで、血液中の稀少細胞を分離でき、かつ、溶血処理等の稀少細胞を損傷し得る前処理をしなくても検体をろ過できることが確認された。さらに、実施例1のフィルターにおいては、吸引装置などの特別な機材を必要とせず、自然落下による検体のろ過も可能である事が確認された。
 なお、実施例2のフィルターを用いた細胞回収率試験は行っていないものの、実施例2のフィルターもフィルター孔の配置を除けば実施例1と同様の条件で作製されたものであり、同様に血液中の稀少細胞を分離でき、かつ、溶血処理等の稀少細胞を損傷し得る前処理をしなくても検体をろ過できると考えられる。
 また、細胞回収率試験の結果によれば、分離後のろ液中には稀少細胞はほとんど含まれていなかった。したがって、本発明のフィルターを通過する稀少細胞はほとんどないものと考えられる。
 本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2021年3月30日出願の日本特許出願(特願2021-058467)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
1 フィルター
3 フィルター孔
100 一方の面
103 第1の開口部
106 第1の開口部に相当する領域
200 他方の面
203 第2の開口部
206 第2の開口部に相当する領域
400 反射体
10 積層構造体
11 フィルム
12 支持フィルム
20 金型
21 突起構造

Claims (17)

  1.  一方の面及び他方の面を貫通する複数のフィルター孔を有するフィルターであって、
     前記フィルター孔は、前記一方の面に第1の開口部と、前記他方の面に第2の開口部とを有し、
     前記第1の開口部の短軸径W1と長軸径L1との比(L1/W1)が1.00以上1.20以下であり、
     前記短軸径W1が7.0μm以上9.0μm以下であり、
     前記第2の開口部の短軸径W2と長軸径L2との比(L2/W2)が1.00以上1.20以下であり、
     前記短軸径W1と前記短軸径W2との比(W2/W1)および前記長軸径L1と前記長軸径L2との比(L2/L1)がともに1.20以上1.50以下である、フィルター。
  2.  前記フィルターの厚みが10μm以上30μm以下である、請求項1に記載のフィルター。
  3.  前記第1の開口部の重心C1から前記他方の面へ引いた垂線と前記他方の面との交点C2’と、前記第2の開口部の重心C2との距離が3μm以下である、請求項1または2に記載のフィルター。
  4.  前記フィルターの開孔率が10.5%以上25%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルター。
  5.  複数の前記フィルター孔が等間隔に配列されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルター。
  6.  前記フィルター孔同士の間隔が8μm以上30μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルター。
  7.  前記フィルターは、フィルムに前記フィルター孔を有するフィルターであって、前記フィルムの全光線透過率が80%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルター。
  8.  前記フィルターは、フィルムに前記フィルター孔を有するフィルターであって、
     前記フィルムのショア硬度が30以上50以下であり、ヤング率が5MPa以上25MPa以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルター。
  9.  前記フィルターが熱可塑性樹脂を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のフィルター。
  10.  前記熱可塑性樹脂の主たる成分がポリエチレンまたはポリプロピレンである、請求項9に記載のフィルター。
  11.  請求項1から10のいずれか1項に記載のフィルターと、前記フィルターを保持する保持部とを含み、シリンジに対して着脱可能な、フィルターデバイス。
  12.  請求項1から10のいずれか1項に記載のフィルターの製造方法であって、フィルムに突起構造を表面に有する金型を加熱しながら押し当ててフィルター孔を形成することを含む、フィルターの製造方法。
  13.  請求項1から10のいずれか1項に記載のフィルターまたは請求項11に記載のフィルターデバイスを用いて細胞懸濁液をろ過するろ過工程を含む、細胞懸濁液中の稀少細胞を分離または分取する方法。
  14.  前記ろ過工程において、前記細胞懸濁液の自重によりろ過することを含む、請求項13に記載の稀少細胞を分離または分取する方法。
  15.  前記稀少細胞が、がん細胞、循環腫瘍細胞(CTC)、上皮間葉転換CTC(EMTCTC)、集塊形成型CTC(clustered CTC)、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、がん幹細胞、上皮細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、胎児細胞、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の細胞である、請求項13または14に記載の稀少細胞を分離または分取する方法。
  16.  前記ろ過工程において、前記フィルターの前記一方の面側から前記細胞懸濁液をろ過することを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の稀少細胞を分離または分取する方法。
  17.  請求項13~16のいずれか1項に記載の方法で分離又は分取した前記稀少細胞を、前記稀少細胞の動態の観察若しくは活性測定を含む方法で分析すること又は前記稀少細胞の遺伝子を分析することを含む、細胞懸濁液中の稀少細胞の分析方法。
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