WO2022107876A1 - 捕捉用デバイス - Google Patents

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敦 山本
良平 山本
猛 河野
美岐子 内ケ島
正吾 粟田
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株式会社堀場製作所
学校法人中部大学
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    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/53Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
    • G01N33/543Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor with an insoluble carrier for immobilising immunochemicals

Definitions

  • [3] The device according to the above [1] or [2], wherein the specific substance is an antigen and the capture substance is an antibody.
  • the filter member is a columnar filter member having two end faces, one end face of which is the first region, and the other end face of which is the second region.
  • One of the devices listed. [5] A device set including the device according to any one of the above [1] to [4] and a well plate.
  • [6] The device set according to the above [5], wherein an opening is formed at the bottom of the well of the well plate.
  • [7] The device set according to the above [5] or [6], wherein the cross-sectional shape of the well of the well plate is tapered.
  • the distance between the end face of the first region and the end face of the second region is preferably 2 to 100 mm, more preferably 2 to 50 mm. More preferably, it is 2 to 30 mm.
  • the structure (particularly, average pore diameter) of the porous (meth) acrylic resin having a monolithic structure can be adjusted.
  • the capture substance (particularly the antibody) may be directly bound to the reactive functional group of the organic polymer, or may be bound to the reactive functional group via a linker.
  • a linker In order to improve the capture efficiency of a specific substance (particularly an antigen), it is preferable to bind the capture substance (particularly an antibody) to a reactive functional group via a linker.
  • Examples of the compound for forming a linker include protein G and the like.
  • the monolith disk taken out from the protein G solution was washed with 0.1 M phosphate buffer (pH 7).
  • the washed 10 monolithic discs were placed in 4 mL of 0.1 M Tris-hydrochloric acid buffer and allowed to stand at room temperature for 24 hours (quenching of unreacted epoxy groups of monolithic discs).

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Abstract

本発明は、試料液中の特定物質を捕捉するためのデバイスであって、デバイスは、試料液が通過可能なフィルター部材を有し、フィルター部材は、有機ポリマーから形成されており、且つその外部表面に、第1領域および第2領域を有し、第1領域は、試料液をフィルター部材中に導入するための入口となる領域であり、第2領域は、試料液がフィルター部材を通過して外に出て行くための出口となる領域であり、並びに特定物質を捕捉するための捕捉用物質が、第1領域に結合されておらず、且つ第2領域に結合されている、デバイスを提供する。

Description

捕捉用デバイス
 本発明は、試料液中の特定物質を捕捉するためのデバイスに関する。
 試料液中の特定物質を捕捉するためのデバイス(本明細書中「捕捉用デバイス」と略称することがある)として、これまで様々な物が知られている。例えば、特許文献1には、有機ポリマー製のフィルターに、特定物質(例えば抗体)と特異的に反応する物質(例えば抗原)を固定化したデバイスを、前記特定物質を捕捉するために用いることが開示されている。また、非特許文献1には、シリカモノリスに抗体を固定化して得られたデバイスを、抗原(オクラトキシンA)を捕捉するために用いることが開示されている。
特開2000-65832号公報
日本薬学会年会要旨集(CD-ROM)、137ページ、ROMBUNNO.26PB-pm128、発行年:2017年
 通常、特定物質を含む試料液には夾雑物が含まれており、特定物質を捕捉用デバイスで捕捉した後、特定物質を液体クロマトグラフィー等によって精製する必要があった。本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、試料液中の特定物質を捕捉し、且つ試料液中の夾雑物を簡便に除去することができるデバイスを提供することにある。
 上記目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
 [1] 試料液中の特定物質を捕捉するためのデバイスであって、
 デバイスは、試料液が通過可能なフィルター部材を有し、
 フィルター部材は、有機ポリマーから形成されており、且つその外部表面に、第1領域および第2領域を有し、
 第1領域は、試料液をフィルター部材中に導入するための入口となる領域であり、
 第2領域は、試料液がフィルター部材を通過して外に出て行くための出口となる領域であり、並びに
 特定物質を捕捉するための捕捉用物質が、第1領域に結合されておらず、且つ第2領域に結合されている、
デバイス。
 [2] フィルター部材が、モノリス構造を有する多孔質体である前記[1]に記載のデバイス。
 [3] 特定物質が抗原であり、捕捉用物質が抗体である前記[1]または[2]に記載のデバイス。
 [4] フィルター部材が、二つの端面を有する柱状のフィルター部材であり、一方の端面が第1領域であり、他方の端面が第2領域である前記[1]~[3]のいずれか一つに記載のデバイス。
 [5] 前記[1]~[4]のいずれか一つに記載のデバイスおよびウェルプレートを含むデバイスセット。
 [6] ウェルプレートのウェル底部に開口部が形成されている前記[5]に記載のデバイスセット。
 [7] ウェルプレートのウェルの断面形状が、テーパー状である前記[5]または[6]に記載のデバイスセット。
 [8] 試料液中の特定物質を捕捉する方法であって、
 前記[1]~[4]のいずれか一つに記載のデバイスのフィルター部材の第1領域から、試料液をフィルター部材中に導入するステップ、および
 フィルター部材中を通過して第2領域から外に出る試料液中の特定物質を、フィルター部材の第2領域に結合されている捕捉用物質によって捕捉するステップ
を含む方法。
 [9] 試料液中の特定物質を捕捉する方法であって、
 前記[5]~[7]のいずれか一つに記載のデバイスセットに含まれるデバイスのフィルター部材の第1領域から、試料液をフィルター部材中に導入するステップ、および
 フィルター部材中を通過して第2領域から外に出る試料液中の特定物質を、フィルター部材の第2領域に結合されている捕捉用物質によって捕捉するステップ
を含む方法。
 [10] フィルター部材の第2領域に捕捉された特定物質を、測定装置で定量するステップをさらに含む前記[8]または[9]に記載の方法。
 [11] 前記[1]~[4]のいずれか一つに記載のデバイス、
 デバイスの第2領域に一次光を照射する機器、および
 デバイスの第2領域から発生する二次光を検出する機器
を含む、特定物質を定量するための測定装置。
 [12] 前記[5]~[7]のいずれか一つに記載のデバイスセット、
 デバイスセットに含まれるデバイスの第2領域に一次光を照射する機器、および
 デバイスの第2領域から発生する二次光を検出する機器
を含む、特定物質を定量するための測定装置。
 [13] 試料液中の特定物質を捕捉したデバイスを、洗浄液を用いて洗浄する機構をさらに含む前記[11]または[12]に記載の測定装置。
 [14] 試料液中の特定物質を捕捉したデバイスから、溶媒を除去する機構をさらに含む前記[11]~[13]のいずれか一つに記載の測定装置。
 本発明のデバイスによれば、試料液中の特定物質を捕捉し、且つ試料液中の夾雑物を簡便に除去することができる。
本発明のデバイスに含まれるフィルター部材の形状の一例を示す概略図である。 本発明のデバイスに含まれるフィルター部材の形状の一例を示す概略図である。 本発明の測定装置の構成の一例を説明するための概略図である。 本発明のデバイスセットに含まれるウェルプレートの一例を示す概略平面図である。 ウェルの一例を説明するためのウェルプレートの一部分を示す概略平面図である。 ウェルの一例を説明するためのウェルプレートの一部分を示す概略断面図である。 試料液中の特定物質を捕捉した本発明のデバイスから溶媒を除去する機構の一例を説明するための概略図である。 実施例1で得られたモノリスディスクのSEM画像である(図8中の「10um」は「10μm」を意味する)。 実施例1で得られたモノリスディスクのSEM画像である(図9中の「1um」は「1μm」を意味する)。
 本発明は、試料液中の特定物質を捕捉するためのデバイスを提供する。
 本発明のデバイスは、試料液が通過可能なフィルター部材を有し、
 フィルター部材は、有機ポリマーから形成されており、且つその外部表面に、第1領域および第2領域を有し、
 第1領域は、試料液をフィルター部材中に導入するための入口となる領域であり、
 第2領域は、試料液がフィルター部材を通過して外に出て行くための出口となる領域であり、並びに
 特定物質を捕捉するための捕捉用物質が、第1領域に結合されておらず、且つ第2領域に結合されている
ことを特徴とする。
 本発明のデバイスでは、フィルター部材が有機ポリマーから形成されており、且つ特定物質を捕捉するための捕捉用物質が、第1領域に結合されておらず、且つ第2領域に結合されていることを特徴とする。このような本発明のデバイスの第1領域から、特定物質を含む試料液を添加することによって、試料液中の低極性の夾雑物がフィルター部材中に捕捉され、試料液がフィルター部材中を通過して第2領域から外に出る際に、第2領域に結合された捕捉用物質で特定物質を捕捉することができる。さらに、試料液の添加後に高極性の洗浄液(例えば、エタノールおよびリン酸緩衝液の混合溶液)を第1領域から添加することによって、フィルター部材中および第2領域に残存する高極性の夾雑物を除去することができる。このように本発明のデバイスを用いれば、特定物質を含む試料液および高極性の洗浄液を、順次、フィルター部材の第1領域から添加するという方法によって、特定物質を第2領域に捕捉し、夾雑物を簡便に除去することができる。そのため、本発明のデバイスを用いることによって、試料液の複雑な前処理を省略することが期待できる。
 特許文献1の実施例では、有機ポリマー製のフィルター全体に、捕捉用物質(抗原)が固定化されている。また、非特許文献1では、フィルターとしてのシリカモノリスに捕捉用物質(抗体)を固定化することが記載されている。これら特許文献1および非特許文献1のいずれにも、捕捉用物質が、有機ポリマー製のフィルター部材の第1領域に結合されておらず、且つ第2領域に結合されているという本発明の構成は開示されていない。
 フィルター部材の第1領域は、試料液をフィルター部材中に導入するための入口である。第1領域の面積は、好ましくは5~1,000mm、より好ましくは10~500mm、さらに好ましくは20~300mmである。本明細書中、「第1領域の面積」とは、フィルター部材が非多孔質体であると仮定して、該フィルター部材の外形から算出される第1領域の面積を意味する。後述する「第2領域の面積」および「端面の面積」の意味も、「第1領域の面積」の意味と同様である。
 フィルター部材の第2領域は、試料液がフィルター部材を通過して外に出て行くための出口であり、且つ第2領域に結合された捕捉用物質によって試料液中の特定物質を捕捉する。第2領域の面積は、捕捉された特定物質の密度を高くすることで、その発光強度を高めて、検出感度を向上させるために、好ましくは5~1,000mm、より好ましくは10~500mm、さらに好ましくは20~300mmである。
 本発明のデバイスは、特定物質を捕捉するための捕捉用物質が、フィルター部材の第1領域に結合されておらず、且つ第2領域に結合されていることを特徴の一つとする。捕捉用物質は、好ましくはフィルター部材の第2領域および第2領域から1mm以内の第2領域の表層部分のみに結合されており、より好ましくはフィルター部材の第2領域および第2領域から0.5mm以内の第2領域の表層部分のみに結合されており、さらに好ましくはフィルター部材の第2領域のみに結合されている。
 第2領域の面積1cmあたりに結合されている捕捉用物質の量は、好ましくは1~1,000pmol、より好ましくは3~300pmol、さらに好ましくは10~100pmolである。
 本発明において、特定物質が抗原であり、捕捉用物質が抗体であることが好ましい。抗原としては、例えば、オクラトキシンA、アフラトキシンなどのカビ毒等が挙げられる。抗体は、特定物質を特異的に認識する限り特に限定されず、市販品であってもよく、自体公知の方法により作製してもよい。また抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、あるいはこれらの断片(例:Fab、F(ab’)、ScFv、minibody等)であってもよい。上記抗体またはその断片は、ヒトを含む哺乳動物由来であり、例えば、ヒト型、マウス型、ラット型、ハムスター型、ウサギ型、ヤギ型、またはウマ型のものが挙げられる。上記抗体またはその断片は、IgGに限定されるものではなく、IgM、IgA、IgD、IgEであってもよい。
 抗体の分子量は、好ましくは5~3,000kDa、より好ましくは25~2,000kDa、さらに好ましくは125~1,000kDaである。捕捉用物質として高分子量の抗体を使用することによって、該抗体を、モノリス構造を有する多孔質体(フィルター部材)の第2領域に結合させる際に、該抗体が多孔質体の細孔内に浸透せず、実質上、第2領域のみに該抗体を結合させることができる。
 本発明において、特定物質が蛍光物質であることが好ましい。特定物質が蛍光物質である場合、蛍光物質を捕捉したフィルター部材の第2領域に一次光を照射し、第2領域から発生する二次光(即ち、蛍光)を検出することによって、蛍光物質を容易に定量することができる。蛍光物質としては、例えば、オクラトキシンA、アフラトキシンなどのカビ毒等が挙げられる。これらの中で、オクラトキシンAが好ましい。
 特定物質を含む試料液は、好ましくは溶液または乳濁液であり、より好ましくは溶液である。試料液の溶媒としては、例えば、水、極性有機溶媒、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。極性有機溶媒としては、例えば、エタノール等が挙げられる。試料液の溶媒は、好ましくは水、または水とエタノールとの混合溶媒である。
 試料液は、緩衝液、または緩衝液および極性有機溶媒の混合物でもよい。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液等が挙げられる。
 試料液1gあたりの特定物質の量は、好ましくは0.5~200ng、より好ましくは1~100ng、さらに好ましくは2~50ngである。
 本発明のデバイス中に含まれるフィルター部材は、例えば、繊維の集合体でもよく、モノリス構造を有する多孔質体でもよい。本明細書中「モノリス構造を有する多孔質体」とは、その骨格および空隙が、それぞれ3次元的につながった構造を有する多孔質体を意味する。フィルター部材は、好ましくはモノリス構造を有する多孔質体である。
 モノリス構造を有する多孔質体(以下「多孔質体」と略称することがある)の平均細孔径は、窒素吸着法およびBET法によって測定および算出した場合、好ましくは0.5~50nm、より好ましくは1~20nmである。また、フィルター部材として多孔質体を使用する本発明のデバイスの平均細孔径の範囲も、前記と同様である。
 多孔質体の比表面積は、好ましくは0.5~50m/g、より好ましくは1~20m/gである。また、フィルター部材として多孔質体を使用する本発明のデバイスの比表面積の範囲も、前記と同様である。この比表面積は、窒素吸着法およびBET法によって測定および算出することができる。
 本発明のデバイス中に含まれるフィルター部材は、二つの端面を有する柱状のフィルター部材であり、一方の端面が第1領域であり、他方の端面が第2領域であることが好ましい。柱状の部材としては、例えば、図1に示すような角柱状の部材でもよく、図2に示すようなディスク状(即ち、背が低い円柱状)の部材でもよい。ここで、柱状の部材の二つの端面とは、柱状の部材の両端に存在する面を意味する(図1および2中の端面1(第1領域)および端面2(第2領域))。
 柱状のフィルター部材中で低極性の夾雑物を充分に捕捉するために、第1領域である端面と第2領域である端面との距離は、好ましくは2~100mm、より好ましくは2~50mm、さらに好ましくは2~30mmである。
 二つの端面を有する柱状のフィルター部材において、二つの端面の面積は実質上等しいことが好ましい。「二つの端面の面積は実質上等しい」とは、「一方の端面の面積/他方の端面の面積」から算出される面積比が、0.9~1.1であることを意味する。端面の面積は、好ましくは5~1,000mm、より好ましくは10~500mm、さらに好ましくは20~300mmである。
 本発明のデバイス中に含まれるフィルター部材は、好ましくは二つの端面の面積が実質上等しい円柱状の部材である。該フィルター部材の円形状の端面の直径は、好ましくは2~36mm、より好ましくは3~25mm、さらに好ましくは5~20mmである。
 本発明において、フィルター部材を形成する有機ポリマーに特に限定はない。低極性の夾雑物の捕捉およびフィルター部材の製造し易さの観点から、有機ポリマーは、好ましくは(メタ)アクリル樹脂である。本明細書中「(メタ)アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸およびこれらの誘導体(例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等)からなる群から選ばれるモノマーに由来する構成単位を有するポリマーを意味する。言い換えると、「(メタ)アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位を有するポリマーを意味する。また、本明細書中「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。アクリル酸およびメタクリル酸は併用してもよい。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリルアミド」、「(メタ)アクリロイル基」等も、「(メタ)アクリル酸」と同様の意味である。
 (メタ)アクリル樹脂中の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位の量は、(メタ)アクリル樹脂全体あたり、好ましくは50~100重量%であり、より好ましくは70~100重量%であり、さらに好ましくは90~100重量%である。(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構成単位からなることが特に好ましい。
 (メタ)アクリル樹脂を形成するモノマーとしては、例えば以下のものが挙げられる:
 (メタ)アクリル酸;
 メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリルレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリルレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、5-メチルノルボルニル(メタ)アクリレート、5-エチルノルボルニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,1,1-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロ-プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロ-イソプロピル(メタ)アクリレート、トリフェニルメチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;
 エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリロールトリ(メタ)アクリレート、ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、ペンタントリオールトリ(メタ)アクリレート等の複数の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート;
 グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリロールモノ(メタ)アクリレート、ブタントリオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタントリオールモノ(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、2-イソシアナト-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-イソシアナト-1,1-ジメチルエチル(メタ)アクリレート、4-イソシアナトシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基以外の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート;
 (メタ)アクリルアミドおよびその誘導体(例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド)。
 前記モノマーは、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
 本発明のデバイスを形成するための有機ポリマーは、より好ましくは、架橋(メタ)アクリル樹脂である。架橋(メタ)アクリル樹脂は、優れた耐溶剤性等を発揮することができる。架橋(メタ)アクリル樹脂は、複数の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下「架橋性(メタ)アクリレート」と略称することがある)を含むモノマー混合物を重合することによって製造することができる。架橋性(メタ)アクリレートとしては、例えば、上述のものが挙げられる。架橋性(メタ)アクリレートは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。架橋性(メタ)アクリレートは、好ましくはエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
 本発明のデバイスを形成するための有機ポリマーは、より好ましくは、反応性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂である。反応性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂を用いれば、捕捉用物質を容易に結合させることができる。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアナト基等が挙げられる。これらの中で、反応性が高いエポキシ基が好ましい。反応性官能基を有する(メタ)アクリル樹脂は、反応性官能基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物から製造することができる。反応性官能基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、上述のものが挙げられる。反応性官能基を有する(メタ)アクリレートは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。反応性官能基を有する(メタ)アクリレートは、好ましくはグリシジル(メタ)アクリレートである。
 本発明のデバイスを形成するための有機ポリマーは、さらに好ましくは、反応性官能基を有する架橋(メタ)アクリル樹脂である。反応性官能基を有する架橋(メタ)アクリル樹脂は、反応性官能基を有する(メタ)アクリレートおよび架橋性(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物を重合することによって製造することができる。
 (メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノマー(以下「他のモノマー」と略称する)に由来する構成単位を含んでいてもよい。他のモノマーは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。他のモノマーとしては、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、ビニルトルエン、スチレン、ジビニルベンゼン、マレイン酸およびそのエステル、フマル酸およびそのエステル、無水マレイン酸等が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂中の他のモノマーに由来する構成単位の量は、(メタ)アクリル樹脂全体あたり、好ましくは0~50重量%であり、より好ましくは0~30重量%であり、さらに好ましくは0~10重量%である。他のモノマーを使用しないことが特に好ましい。
 以下、モノリス構造を有する多孔質体である有機ポリマー(即ち、フィルター部材)の製造方法の一例を説明する。なお、本発明は以下の製造方法に限定されない。
 例えば、架橋性(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物、およびポロゲンである溶媒を含む反応混合物を調製し、その中でモノマー混合物を重合することによって、モノリス構造を有する多孔質(メタ)アクリル樹脂(即ち、有機ポリマー製のフィルター部材)を製造することができる。
 架橋性(メタ)アクリレートの説明は上述の通りである。架橋性(メタ)アクリレートの使用量は、モノマー混合物全体に対して、好ましくは1~30重量%、より好ましくは2~20重量%、さらに好ましくは3~50重量%である。
 ポロゲンである溶媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。溶媒としては、例えば、1-プロパノール等が挙げられる。溶媒の使用量は、モノマーおよび後述する重合開始剤の混合物全体に対して、重量比で、好ましくは0.5~3倍、より好ましくは0.8~2.5倍、さらに好ましくは1~2倍である。
 使用するモノマーおよび溶媒の種類および量を調節することによって、モノリス構造を有する多孔質(メタ)アクリル樹脂の構造(特に、平均細孔径)を調節することができる。
 (メタ)アクリロイル基を有するモノマーの重合は、通常、重合開始剤を使用して行われる。(メタ)アクリロイル基および他の反応性官能基を有するモノマーを含むモノマー混合物の重合には、ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤を使用することによって、例えばヒドロキシ基を有するアルコール溶媒(例えば1-プロパノール)を含む溶液中における、エポキシ基を有するモノマー(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート)を含むモノマー混合物の重合を、前記ヒドロキシ基と前記エポキシ基とを反応させずに行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
 アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチル)二塩酸塩、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル-2,2′-アゾビス(イソブチレート)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等が挙げられる。
 有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、1,1-ジ(tert-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、ブチル 4,4-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)バレート、2,2-ジ(4,4-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジイソプロポキシルベンゼンペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジ-tert-ヘキシルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン-3、ジイソブチリルペルオキシド、ジ(3,5,5-tert-メチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジサクシニック酸ペルオキシド、ジ-(3-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド等が挙げられる。
 ラジカル重合開始剤は、好ましくはアゾ化合物であり、より好ましくは2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)である。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマー混合物100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.05~10重量部、さらに好ましくは0.1~5重量部である。
 架橋性(メタ)アクリレート、重合開始剤および溶媒を含む反応混合物を、チューブに充填し、チューブを封止した後、反応混合物を含むチューブを加熱することによって、重合を行うことが好ましい。このような方法によって、円柱状の架橋メタクリル樹脂を製造することができる。チューブの材質としては、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
 重合の温度および時間は、重合が完了できる限り特に限定はない。重合の温度および時間は、使用するモノマー、重合開始剤および溶媒に応じて当業者であれば適宜設定することができる。
 上述の重合によって、モノリス構造を有する多孔質(メタ)アクリル樹脂を得ることができる。得られた多孔質(メタ)アクリル樹脂は、その細孔内に、重合に用いた溶媒を含むため、これを除去することが好ましい。重合に用いた溶媒の除去は、加熱乾燥、減圧乾燥またはこれらの組み合わせによって行うことができる。沸点が高い溶媒(以下「高沸点溶媒」と記載する)を用いて重合を行った場合、高沸点溶媒よりも沸点が低い溶媒(以下「低沸点溶媒」と記載する)を用いて溶媒置換を行ってから、低沸点溶媒を除去してもよい。具体的には、細孔内に高沸点溶媒(例えば、1-プロパノール)を含む多孔質(メタ)アクリル樹脂を、低沸点溶媒(例えば、メタノール)に浸漬して、高沸点溶媒を低沸点溶媒に置換した後、加熱乾燥、減圧乾燥またはこれらの組み合わせによって、低沸点溶媒を除去してもよい。
 次に、フィルター部材の第2領域に捕捉用物質を結合させて本発明のデバイスを製造する方法の一例を説明する。なお、本発明は以下の製造方法に限定されない。
 捕捉用物質(特に抗体)の第2領域への結合は、フィルター部材を形成する有機ポリマーが有する反応性官能基を使用して行うことが好ましい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアナト基等が挙げられる。これらの中で、反応性が高いエポキシ基が好ましい。
 捕捉用物質(特に抗体)は、有機ポリマーが有する反応性官能基に直接結合させてもよく、リンカーを介して反応性官能基に結合させてもよい。特定物質(特に抗原)の捕捉効率を向上させるために、捕捉用物質(特に抗体)をリンカーを介して反応性官能基に結合させることが好ましい。リンカーを形成するための化合物(以下「リンカー化合物」と略称することがある)としては、例えば、プロテインG等が挙げられる。以下、捕捉用物質をリンカーを介して反応性官能基に結合させる製造方法の一例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
 反応性官能基を有するフィルター部材を、リンカー化合物の溶液に浸漬し、反応性官能基とリンカー化合物とを反応させる。溶液1mLあたりのリンカー化合物の量は、好ましくは0.005~1.0mg、より好ましくは0.010~0.5mgである。反応温度および時間は、使用する反応性官能基およびリンカー化合物の種類によって異なり、当業者であれば、その反応温度および時間を適宜選択することができる。例えば反応性官能基がエポキシ基であり、リンカー化合物がプロテインGである場合、その反応は、室温で行うことができる。なお、本明細書中「室温」とは、1~30℃を意味する。
 反応性官能基とリンカー化合物との反応後、得られたフィルター部材を、クエンチ剤の溶液に浸漬し、残っている反応性官能基をクエンチすることが好ましい。このようなクエンチを行うことによって、捕捉用物質をリンカーを介してのみ反応性官能基に結合させることができる。使用するクエンチ剤の種類は、使用する反応性官能基の種類によって異なり、当業者であればクエンチ剤を適宜選択することができる。例えば、エポキシ基のクエンチ剤としては、トリスヒドロキシメチルアミノメタンおよびその塩酸塩等が挙げられる。溶液中のクエンチ剤の濃度は、0.01~2M、より好ましくは0.05~1Mである。
 反応性官能基のクエンチのための反応温度および時間は、使用する反応性官能基およびリンカー化合物の種類によって異なり、当業者であれば、その反応温度および時間を適宜選択することができる。例えば反応性官能基がエポキシ基であり、リンカー化合物の溶液がトリス塩酸緩衝液(即ち、トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩の水溶液)である場合、室温でクエンチを行うことができる。
 上述のようにして得られたフィルター部材を、捕捉用物質の溶液に浸漬することによって、捕捉用物質をリンカーを介して結合させることができる。この際、フィルター部材の全体ではなく、フィルター部材の第2領域のみが捕捉用物質と接触させるように、フィルター部材を捕捉用物質の溶液に浸漬させることによって、捕捉用物質を第2領域のみに結合させることができる。溶液1mLあたりの捕捉用物質の量は、好ましくは0.05~5mg、より好ましくは0.10~2mgである。
 捕捉用物質をリンカーを介して結合させるための反応温度は、使用するリンカー化合物および捕捉用物質の種類によって異なり、当業者であれば、その反応温度および時間を適宜選択することができる。例えばリンカー化合物がプロテインGであり、捕捉用物質がモノクローナル抗体である場合、室温でモノクローナル抗体を結合させることができる。
 本発明は、本発明のデバイスおよびウェルプレートを含むデバイスセットも提供する。試料液中の特定物質の捕捉では、本発明のデバイスがウェルプレートのウェル内に設置されたデバイスセットが用いられる。本発明のデバイスの第1領域を上にして、該デバイスをウェル内に設置することが好ましい。本発明のデバイスがウェル内に固定されるように、本発明のデバイスとウェルプレートとを一体成型してもよい。
 「ウェルプレート」とは、ウェルを有する平板である実験器具を意味し、分析分野では「マイクロプレート」または「マイクロタイタープレート」と呼ばれることもある。ウェルプレートの一例を図4に示す。ウェルプレートのウェルの数としては、例えば6、24、96、384等が挙げられる。ウェルプレートとしては、96ウェルプレートが代表的である。ウェルプレートの材質に特に限定はなく、分析分野で使用されている通常の材質を使用することができる。その材質としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。
 図5および6を使用してウェルの一例を説明する。図5は、ウェルプレートの一部分を示す概略平面図であり、図6は、図5のA-A’線断面図に対応する、ウェルプレートの一部分を示す概略断面図である。但し、図5および6では縮尺を統一していない。また、簡略化のために、図5では、図6に示すウェル底部およびウェル底部に形成されている開口部を示していない。
 ウェル上部および底部の平面形状は円形状であることが好ましい。ウェル上部の直径(図6中のD1)、ウェル底部の直径(図6中のD2)およびウェルの深さ(図6中のL)は、それぞれ、本発明のデバイスをウェル内で保持できるような大きさであればよい。ウェル上部の直径は、好ましくは2~50mm、より好ましくは5~25mmである。ウェル底部の直径は、好ましくは2~50mm、より好ましくは5~25mmである。ウェルの深さは、好ましくは3~50mm、より好ましくは5~20mmである。
 図6に示すように、ウェル底部に開口部が形成されていることが好ましい。このようなウェルプレートを使用し、本発明のデバイスの第1領域を上にして、該デバイスをウェル内に設置することにより、デバイスのフィルター部材の第1領域から導入され、且つフィルター部材を通過した試料液を、ウェル底部の開口部から排出することができる。排出した試料液は、例えばウェルプレートの下に設置した廃液槽で受け取ることができる。ウェル底部の開口部の平面形状は、円形状であることが好ましい。ウェル底部の開口部の直径(図6中のD3)は、好ましくは0.5~20mm、より好ましくは1~10mmである。(ウェル底部の開口部の直径)/(ウェル底部の直径)の比(図6ではD2/D3)は、好ましくは1~100、より好ましくは1.05~1.2である。
 図6に示すように、ウェルの断面形状はテーパー状であることが好ましい。このようなウェルプレートを使用することにより、ウェル内に本発明のデバイスを設置しやすくなり、且つ本発明のデバイスがウェル底部に形成された開口部から落ちることを防止することができる。ウェルの断面形状のテーパー率(図6では(D1-D2)/L)は、好ましくは0.2/30~5/3、より好ましくは0.3/20~2/5である。
 本発明のデバイスセットにおいて、
 本発明のデバイスは、二つの端面の面積が実質上等しい円柱状のフィルター部材を有し、
 ウェルプレートは、上部および底部の平面形状が円形状であり、断面形状がテーパー状であり、底部に開口部が形成されているウェルを有し、並びに
 ウェル底部の開口部の平面形状が円形状である
ことが好ましい。この態様における、フィルター部材およびウェルの説明(フィルター部材の第1領域である端面と第2領域である端面との距離;ウェルの断面形状のテーパー率;等)の説明は、上述の通りである。この態様における、(フィルター部材の円形状の端面の直径)/(ウェル底部の直径)の比は、好ましくは1~2、より好ましくは1.01~1.1である。この態様における、(フィルター部材の円形状の端面の直径)/(ウェル底部の開口部の直径)の比は、好ましくは1~50、より好ましくは1.01~5である。
 本発明は、試料液中の特定物質を捕捉する方法も提供する。
 本発明の方法は、本発明のデバイスのフィルター部材の第1領域から、試料液をフィルター部材中に導入するステップ、および
 フィルター部材中を通過して第2領域から外に出る試料液中の特定物質を、フィルター部材の第2領域に結合されている捕捉用物質によって捕捉するステップ
を含むことを特徴とする。本発明の方法における試料液、特定物質および本発明のデバイス等の説明は上述の通りである。
 試料液を導入する方法に特に限定はない。例えば、第1領域側から第2領域側へと向かう方向に重量が作用するように、フィルター部材の第1領域を上にし、第2領域を下にして本発明のデバイスを配置し、ピペット等の添加器具、またはポンプ等を含む添加装置を用いて、第1領域から試料液を添加してもよい。また、フィルター部材の第2領域を上にし、第1領域を下にして本発明のデバイスを配置し、ポンプを含む添加装置を使用して、下の第1領域から上の第2領域に向けて試料液を供給してもよい。試料液の導入時の温度に特に限定はなく、試料液を、例えば室温で導入してもよい。
 本発明の方法では、本発明のデバイスおよびウェルプレートを含むデバイスセットを使用してもよい。前記デバイスセットを使用する場合、(1)ウェルプレートのウェルの一つに、本発明のデバイスを一つ設置したデバイスセットを使用してもよく、(2)ウェルプレートの複数のウェルの数個に、本発明のデバイスを一つずつ設置したデバイスセットを使用してもよく、(3)ウェルプレートの複数のウェルの全部に、本発明のデバイスを一つずつ設置したデバイスセットを使用してもよい。複数の本発明のデバイスを設置したデバイスセットを使用する場合、一つのデバイスずつに試料液を導入してもよく、数個のデバイスずつに試料液を導入してもよく、全部のデバイスに同時に試料液を導入してもよい。
 第2領域から外に出る試料液を受け取るために、フィルター部材の第2領域にチューブ、パイプ、廃液槽等を設置してもよい。また、フィルター部材の第2領域に、試料液を吸収する部材(例えば、ろ紙等)を設置してもよい。
 試料液の添加量は、本発明のデバイス1cmあたり、好ましくは0.1~20mL、より好ましくは0.5~10mLである。
 本発明の方法は、試料液中の特定物質を捕捉したデバイスを、洗浄液を用いて洗浄するステップをさらに含んでもよい。洗浄液は、高極性の洗浄液が好ましい。前記デバイスを洗浄する操作に特に限定はなく、例えば、(1)前記デバイスに洗浄液を添加する操作、(2)前記デバイスを洗浄液に浸漬させる操作(具体的には、洗浄液を入れた洗浄槽に前記デバイスを入れる操作)等が挙げられる。前記デバイスが浸漬された洗浄液に超音波を照射してもよい。
 本発明の方法で、ウェルプレートに複数の本発明のデバイスを設置したデバイスセットを使用する場合、一つのデバイスずつに洗浄液を添加してもよく、数個のデバイスずつに洗浄液を添加してもよく、全部のデバイスに同時に洗浄液を添加してもよい。
 本発明の方法で、本発明のデバイスおよびウェルプレートを含むデバイスセットを使用する場合、前記デバイスセットを洗浄液に浸漬させてもよい(具体的には、洗浄液を入れた洗浄槽に前記デバイスセットを入れてもよい)。前記デバイスセットが浸漬された洗浄液に超音波を照射してもよい。
 本発明の方法は、試料液の導入後に、本発明のデバイスのフィルター部材の第1領域から、高極性の洗浄液をフィルター部材に添加するステップをさらに含んでもよい。このようなステップを行うことで、フィルター部材中および第2領域に残った高極性の夾雑物を除去することができる。
 高極性の洗浄液としては、例えば、水、緩衝液、極性有機溶媒、およびこれらの混合物が挙げられる。極性有機溶媒としては、例えば、エタノール等が挙げられる。高極性の洗浄液の添加量は、本発明のデバイス1cmあたり、0.1~20mL、より好ましくは0.5~10mLである。
 本発明の方法は、試料液中の特定物質を捕捉したデバイスから、溶媒を除去するステップをさらに含んでもよい。除去される溶媒は、試料液の溶媒および/または洗浄液の溶媒(例えば水、極性有機溶媒)である。溶媒を除去する操作に特に限定はなく、例えば、(1)溶媒を吸収する部材(例えばろ紙、ロール紙等)を使用する操作、(2)前記デバイスを減圧下に置く操作、(3)前記デバイスに気体(例えば空気、窒素、アルゴン等)を吹き付ける操作等が挙げられる。
 図7を使用して、試料液中の特定物質を捕捉した本発明のデバイスから、溶媒を除去する機構の一例を説明する。図7に示す機構では、ウェルプレート移動機構(図示せず)を使用して、本発明のデバイス(図示せず)を設置したウェルプレート15を、図7中の矢印で示す方向に移動させる。このウェルプレート15と、ロール紙16から供給された溶媒吸収用の紙とを、溶媒吸収用のロール17および18を用いて接触させて、ウェルプレート15に含まれる本発明のデバイスから溶媒を除去する。溶媒吸収用の紙は、ロール紙巻取り用のロール19を使用することによって、ロール紙16から供給される。ロール紙巻取り用のロール19は、ウェルプレート移動機構と連動させることが好ましい。
 図7に示す機構では、溶媒吸収を強化するために、二つの溶媒吸収用のロール17および18を使用している。しかし、一つのみの溶媒吸収用のロールを使用してもよい。また、溶媒吸収をさらに強化するために、三つ以上の溶媒吸収用のロールを使用してもよい。また、図7に示す機構では、ロール20を使用して、ウェルプレート15と、ロール紙16から供給された溶媒吸収用の紙との接触面積を減らして、摩擦力を低減させている。しかし、ロール20は使用しなくともよい。
 溶媒を除去するために前記デバイスを減圧下に置く操作は、例えば、減圧ポンプを使用して、測定装置内のデバイスへの試料液の添加および/またはデバイスへの洗浄液の添加を行った部屋で行ってもよく、前記部屋とは別の減圧槽に前記デバイスを入れて行ってもよい。
 溶媒を除去するために前記デバイスに気体を吹き付ける操作は、ポンプ、コンプレッサー等を使用して行うことができる。気体を吹き付ける方向に特に限定はなく、デバイスの上から、デバイスの横から、またはデバイスの下から、気体を吹き付けることができる。
 本発明の方法で、本発明のデバイスおよびウェルプレートを含むデバイスセットを使用する場合、溶媒を除去するために、ウェル内に本発明のデバイスが設置されたウェルプレートに気体を吹き付けてもよい。ウェル内に設置された本発明のデバイスが外れることを防止するために、気体は、前記ウェルプレートの横から吹き付けることが好ましい。
 本発明の方法は、フィルター部材の第2領域に捕捉された特定物質を、測定装置で定量するステップをさらに含んでいてもよい。測定装置としては、例えば、後述するような本発明の測定装置が挙げられる。
 本発明は、特定物質を定量するための測定装置も提供する。
 本発明の一態様において、測定装置は、本発明のデバイス、デバイスの第2領域に一次光を照射する機器、および本発明のデバイスの第2領域から発生する二次光を検出する機器を含む。この態様における特定物質および本発明のデバイスの説明は上述の通りである。
 以下、図3を使用して、本発明の測定装置の構成の一例を説明する。本発明のデバイス4を、特定物質を捕捉したフィルター部材の第2領域が上になるように、測定装置に設置する。一次光6を照射するための光源5から本発明のデバイス4の第2領域に該一次光6を照射する。
 本発明の測定装置で使用し得る前記光源としては、特に限定はされず、ランプや種々の発光装置(例えば、発光ダイオード(LED))等が挙げられる。これらの中でもコンパクトで、且つ発光波長域が選択できる点からはLEDが好ましく、二次光が蛍光である場合には、該蛍光を発生させるための短波長域の一次光(励起光)を発する光源として、近紫外LEDがより好ましい。光源5から発せられた光が光学フィルター(図示せず)を通過して一次光6となるように構成してもよく、それによって一次光6の波長域を限定してもよい。
 第2領域から発生する二次光7は、該二次光7を検出する検出器8によって検出される。検出器8から発せられる検出信号(電気信号)は、制御装置9に送られ、該制御装置9において、捕捉された特定物質の量が前記検出信号に基づいて算出される。図3は、光源5、検出器8、制御装置9の構成の一例を示すブロック図であり、同図の例では、算出された特定物質の量を表示するための表示装置12がさらに設けられている。制御装置9では、検出器8からの検出信号が、信号受け入れ部10によって受入れられ、演算部11によって、捕捉された特定物質の量が検出信号に基づいて計算される。算出された特定物質の量は、表示装置12等に表示されてよい。制御装置9は、演算部11のためのロジック回路を含んだ電子機器等であってもよいが、コンピューターが好ましい態様である。表示装置12は、制御装置9と一体であっても、別個であってもよい。
 第2領域に捕捉された特定物質が蛍光物質である場合、二次光は蛍光である。本発明の測定装置で使用し得る前記検出器は、特に限定はされないが、フォトダイオードを受光ヘッドとして含んだ検出装置が好ましいものとして挙げられる。そのような検出装置は、例えば、受光ヘッドとアンプが一体になったもの、受光ヘッドと制御装置9との間にアンプが介在するもの、受光ヘッドのためのアンプが制御装置9内に含まれたものなど、従来公知の種々の装置を利用することができる。二次光7が光学フィルター(図示せず)を通過して検出器8で受光されるように構成してもよく、それによって検出器8に入射する光の波長域を選択してもよい。
 図3とは逆に、本発明のデバイスを、特定物質を捕捉したフィルター部材の第2領域が下になるように測定装置に設置し、本発明のデバイスの下に配置した機器から一次光を第2領域に照射し、第2領域から発生する二次光を、本発明のデバイスの下に配置した機器で検出してもよい。
 本発明の一態様において、測定装置は、本発明のデバイスセット(即ち、本発明のデバイスおよびウェルプレートを含むデバイスセット)、デバイスの第2領域に一次光を照射する機器、および本発明のデバイスの第2領域から発生する二次光を検出する機器を含む。この態様の測定装置は、ウェルプレートを使用するプレートリーダーの1種である。この態様における特定物質および本発明のデバイスおよびウェルプレートの説明は上述の通りである。
 本発明のデバイスを使用する前記測定装置または本発明のデバイスセットを使用する前記測定装置(以下、これらを「本発明の測定装置」と総称することがある)は、本発明のデバイスまたはデバイスセット、一次光を照射する機器、二次光を検出する機器等から構成される特定物質を定量する機構に加えて、本発明のデバイスの第1領域に試料液を導入する機構(以下「試料液導入機構」と略称することがある)をさらに含んでいてもよい。試料液導入機構は、例えば、本発明のデバイスまたはデバイスセット、添加装置(例えばポンプ等)、第2領域から排出した試料液を受ける廃液槽等から構成することができる。試料液導入機構における操作は、上述した本発明の方法における試料液を導入する操作と同様に行うことができる。
 本発明の測定装置は、試料液中の特定物質を捕捉したデバイスを、洗浄液を用いて洗浄する機構(以下「洗浄機構」と略称することがある)をさらに含んでいてもよい。洗浄液の説明は上述の通りである。洗浄機構は、例えば、(1)洗浄液の貯蔵槽、前期貯蔵槽中の洗浄液をポンプ等を使用して前記デバイスへ添加する機器、前記デバイスから排出された洗浄液を受ける廃液槽等、または(2)洗浄液を入れるための洗浄槽、前記洗浄槽中の洗浄液に前記デバイスまたはデバイスセットを入れる機器等から構成することができる。また、洗浄機構は、前記デバイスまたはデバイスセットが浸漬された洗浄液に超音波を照射するための機器を含んでいてもよい。
 本発明の測定装置は、試料液中の特定物質を捕捉したデバイスから、溶媒を除去する機構(以下「溶媒除去機構」と略称することがある)をさらに含んでいてもよい。溶媒除去機構としては、例えば、(1)溶媒を吸収する部材(例えばろ紙、ロール紙等)を使用する機構、(2)前記デバイスまたはデバイスセットを減圧下に置く機構、(3)前記デバイスまたはデバイスセットに気体(例えば空気、窒素、アルゴン等)を吹き付ける機構等が挙げられる。これら各機構における操作は、上述した本発明の方法における溶媒を除去する操作と同様に行うことができる。溶媒を吸収する部材を使用する機構は、例えば図7およびそれを用いた上述の説明と同様にして構成することができる。前記デバイスを減圧下に置く機構は、例えば、減圧ポンプ等から構成することができる。前記デバイスまたはデバイスセットに気体を吹き付ける機構は、例えばポンプ、コンプレッサー等から構成することができる。
 本発明のデバイスセット(即ち、本発明のデバイスおよびウェルプレートを含むデバイスセット)を使用する測定装置は、ウェル内に本発明のデバイスが設置されたウェルプレートを回転させて、その上下を反転させる機構(以下「回転機構」と略称することがある)をさらに含んでいてもよい。
 回転機構を含む本発明の測定装置では、
 (1)フィルター部材の第1領域を上にし、第2領域を下にして本発明のデバイスを、ウェルプレートのウェル内に設置し、
 (2)デバイスの第1領域から試料液を導入し、必要に応じてさらに洗浄液を添加し、
 (3)ウェルプレートを回転させて、デバイスの第2領域を上にし、
 (4)ウェルプレートの上方に配置した機器から一次光をフィルター部材の第2領域に照射し、および
 (5)第2領域から発生する二次光を、ウェルプレートの上方に配置した機器で検出することができる。
 回転機構を含む本発明の測定装置では、第2領域に一次光を照射する機器および第2領域から発生する二次光を検出する機器を、ウェルプレートの上方に配置することができるため、ウェルプレートから落ちる試料液または洗浄液が、前記機器に付着することを防止できる。
 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1:捕捉デバイスの製造および特性評価
<モノリス構造を有する多孔質体である有機ポリマーディスク(以下「モノリスディスク」と略称する)の製造>
 液状のグリシジルメタクリレート(GMA)と液状のエチレングリコールジメタクリレート(EGDM)とを重量比(GMA:EGDM)が95:5になるように混合し、得られたモノマー混合物に粉末状の2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を添加し、AIBNを溶解させた。なお、AIBNの添加量は、モノマー混合物100重量部に対して、1重量部であった。モノマーおよびラジカル重合開始剤の混合物に対して、重量比で1.5倍の1-プロパノールを添加し、得られた混合物を5分間攪拌した。
 得られた混合物をニチアス社製のナフロンチューブ(内径:8mm、長さ:10cm、材質:ポリテトラフルオロエチレン)に充填し、ナフロンチューブをゴム栓で封止した。
 ゴム栓を治具で固定して、混合物を含むナフロンチューブを、乾燥機に入れ、混合物を80℃で24時間加熱して重合を行った後、架橋(メタ)アクリル樹脂を含むナフロンチューブを乾燥機から取り出し、次いで多孔質(メタ)アクリル樹脂を、ナフロンチューブから取り出した。
 前記樹脂を室温でメタノールに浸漬した。次いでメタノールから前記樹脂を取り出し、室温で減圧乾燥することによって、モノリス構造を有する多孔質(メタ)アクリル樹脂を得た。次いで、円柱状の多孔質(メタ)アクリル樹脂を、ホーザン社製PCBカッターで厚さ3mmにカットして、モノリスディスクを得た(第1領域である端面の面積:約50mm、第2領域である端面の面積:約50mm、第1領域と第2領域との距離:3mm)。
 得られたモノリスディスク40個を、ジメチルスルホキシド(DMSO)100mLに入れ、室温で一晩静置した。これを2回繰り返した後、DMSOから取り出したモノリスディスクの、イソプロパノール中での15分間の超音波洗浄を2回、メタノール中での15分の超音波洗浄を2回行った。なお、超音波洗浄では、氷浴で液温を5℃程度に維持した。
 得られたモノリスディスクの平均細孔径および比表面積を、窒素吸着法およびBET法によって測定および算出した。結果を以下に記載する。
平均細孔径:2.8nm
比表面積:2.2m/g
 日本電子社製の走査型電子顕微鏡(SEM、型式:IT-300HR)を以下の条件で使用して、得られたモノリスディスクのSEM画像を2,000倍と30,000倍の倍率で撮影した。
・加速電圧:15kV
・作動距離(WD):5mm
・検出器:反射電子検出器
・真空度:70Pa
 得られたSEM画像を図8および9に示す。図8に示すように、得られたモノリスディスクでは、ポリマー粒子が連結することによって、その骨格が形成されている。また、このモノリスディスクから形成された本発明のデバイスでは、試料液が、図8に示すポリマー粒子間の空隙を通過すると考えられる。また、図9に示すポリマー粒子内の黒点の部分が、ポリマー粒子の細孔であると考えられる。
<抗体の固定化>
 30mL褐色瓶に、0.05mg/mLのプロテインG溶液(0.1Mリン酸緩衝液、pH7)4mL、次いで10個のモノリスディスクを入れ、室温で24時間静置した。
 プロテインG溶液から取り出したモノリスディスクを0.1Mリン酸緩衝液(pH7)で洗浄した。洗浄した10個のモノリスディスクを0.1Mトリス塩酸緩衝液4mLに入れ、室温で24時間静置した(モノリスディスクの未反応エポキシ基のクエンチ)。
 捕捉用物質として、オクラトキシンAに対するモノクローナル抗体を、自体公知の方法で作製した(M. Uchigashimaら,Methods 56 (2012) 180-185、J. Hiroseら,Biosci. Biotechnol. Biochem. 68 (2004) 2490-2497)。作製した0.2mg/mLのモノクローナル抗体溶液(0.1Mリン酸緩衝液、pH7、抗体の分子量:150kDa)40μLを試験管(内径:約10mm)に入れた。0.1Mトリス塩酸緩衝液から取り出した1個のモノリスディスクを、その片方の端面(第2領域)のみが抗体溶液に接するように試験管に入れ、試験管をパラフィルムで封止し、室温で24時間静置した。
 試験管から取り出したモノリスディスクを、0.1Mリン酸緩衝液で洗浄して、実質上、片方の端面(第2領域)のみに抗体が結合された捕捉デバイスを作製した。モノクローナル抗体の使用量および第2領域の面積から算出した、第2領域の面積1cmあたりに結合されているモノクローナル抗体の量は14pmolであった。
 得られた捕捉デバイスは、使用前は、0.02重量%のアジ化ナトリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液中で室温で保存した。
実施例2:コーヒー生豆のオクラトキシンAの捕捉および定量
<試料液の調製>
 粉末状のコーヒー生豆3gを、抽出液(メタノールおよび3重量%のNaHCO水溶液の混合溶液、メタノール:3重量%のNaHCO水溶液の体積比=1:1)25mLで室温で抽出した。この抽出時には、コーヒー生豆および抽出液の混合物を、ホモジナイザーを使用して攪拌した。その後、混合物を3000rpmで3分遠心分離し、上澄み液を採取した。
 採取した上澄み液5mL、水10mL、NaCl 5gおよび酢酸エチル10mLを混合し、得られた混合物を、直ぐに酢酸エチルで抽出した。その後、混合物を5000rpmで10分遠心分離し、上澄み液をナスフラスコに採取した。さらに遠心管の残りに酢酸エチル5mLを加えて、得られた混合物を5000rpmで10分遠心分離し、上澄み液をナスフラスコに採取した。
 得られた上澄み液を合わせ、エバポレーターで留去し、得られた残留物を、エタノールおよび0.1Mリン酸緩衝液の混合溶液(エタノールの濃度:50重量%)2mLに溶解させて、溶液を調製した。得られた溶液にオクラトキシンAを添加することによって、実施例2で使用する試料液を調製した。試料液1gあたりのオクラトキシンAの量は5ngであった。
<測定>
 実施例1で製造した捕捉用デバイスを、抗体が結合されていない第1領域を上に、抗体が結合されている第2領域を下にして、ろ紙の上に置いた。ピペットを用いて試料液2mL程度を、室温で捕捉デバイスの第1領域に添加した(捕捉用デバイス1cmあたりの試料液の添加量:約1.3mL)。次いで、ピペットを用いて、エタノールおよび0.1Mリン酸緩衝液の混合溶液(エタノールの濃度:20重量%)2mL程度を第1領域から捕捉用デバイスに添加した(捕捉用デバイス1cmあたりの前記混合溶液の添加量:約1.3mL)。その後、図3に示すような測定装置に、捕捉用デバイスの第2領域を上にしてセットし、その第2領域に近紫外線を照射し、第2領域からの蛍光を検出して、オクラトキシンAを定量した。
<結果>
 検量線を使って、得られた蛍光強度から捕捉デバイス上のオクラトキシン量を算出したところ、添加量の75~90重量%のオクラトキシンAを捕捉できたことが確認された。
 玄麦、レーズンおよびカカオ豆中のオクラトキシンAも、実施例2と同様の方法で捕捉および定量することができる。
 本発明のデバイスは、特定物質(例えば、オクラトキシンA)を捕捉および定量するために用いることができる。
 本願は、日本で出願された特願2020-193767号を基礎としており、その内容は本願明細書に全て包含される。
 1 端面(第1領域)
 2 端面(第2領域)
 3 フィルター部材
 4 本発明のデバイス
 5 光源
 6 一次光
 7 二次光
 8 検出器
 9 制御装置
 10 信号受け入れ部
 11 演算部
 12 表示装置
 13 ウェルプレートの一部分
 14 ウェル
 15 本発明のデバイスを設置したウェルプレート
 16 ロール紙
 17,18 溶媒吸収用のロール
 19 ロール紙巻取り用のロール
 20 ロール
 D1 ウェル上部の直径
 D2 ウェル底部の直径
 D3 ウェル底部の開口部の直径
 L ウェルの深さ

Claims (14)

  1.  試料液中の特定物質を捕捉するためのデバイスであって、
     デバイスは、試料液が通過可能なフィルター部材を有し、
     フィルター部材は、有機ポリマーから形成されており、且つその外部表面に、第1領域および第2領域を有し、
     第1領域は、試料液をフィルター部材中に導入するための入口となる領域であり、
     第2領域は、試料液がフィルター部材を通過して外に出て行くための出口となる領域であり、並びに
     特定物質を捕捉するための捕捉用物質が、第1領域に結合されておらず、且つ第2領域に結合されている、
    デバイス。
  2.  フィルター部材が、モノリス構造を有する多孔質体である請求項1に記載のデバイス。
  3.  特定物質が抗原であり、捕捉用物質が抗体である請求項1または2に記載のデバイス。
  4.  フィルター部材が、二つの端面を有する柱状のフィルター部材であり、一方の端面が第1領域であり、他方の端面が第2領域である請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
  5.  請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイスおよびウェルプレートを含むデバイスセット。
  6.  ウェルプレートのウェル底部に開口部が形成されている請求項5に記載のデバイスセット。
  7.  ウェルプレートのウェルの断面形状が、テーパー状である請求項5または6に記載のデバイスセット。
  8.  試料液中の特定物質を捕捉する方法であって、
     請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイスのフィルター部材の第1領域から、試料液をフィルター部材中に導入するステップ、および
     フィルター部材中を通過して第2領域から外に出る試料液中の特定物質を、フィルター部材の第2領域に結合されている捕捉用物質によって捕捉するステップ
    を含む方法。
  9.  試料液中の特定物質を捕捉する方法であって、
     請求項5~7のいずれか一項に記載のデバイスセットに含まれるデバイスのフィルター部材の第1領域から、試料液をフィルター部材中に導入するステップ、および
     フィルター部材中を通過して第2領域から外に出る試料液中の特定物質を、フィルター部材の第2領域に結合されている捕捉用物質によって捕捉するステップ
    を含む方法。
  10.  フィルター部材の第2領域に捕捉された特定物質を、測定装置で定量するステップをさらに含む請求項8または9に記載の方法。
  11.  請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス、
     デバイスの第2領域に一次光を照射する機器、および
     デバイスの第2領域から発生する二次光を検出する機器
    を含む、特定物質を定量するための測定装置。
  12.  請求項5~7のいずれか一項に記載のデバイスセット、
     デバイスセットに含まれるデバイスの第2領域に一次光を照射する機器、および
     デバイスの第2領域から発生する二次光を検出する機器
    を含む、特定物質を定量するための測定装置。
  13.  試料液中の特定物質を捕捉したデバイスを、洗浄液を用いて洗浄する機構をさらに含む請求項11または12に記載の測定装置。
  14.  試料液中の特定物質を捕捉したデバイスから、溶媒を除去する機構をさらに含む請求項11~13のいずれか一項に記載の測定装置。
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