WO2021241445A1

WO2021241445A1 - 分散液

Info

Publication number: WO2021241445A1
Application number: PCT/JP2021/019389
Authority: WO
Inventors: 佑樹篠田; 隆生松村; 里華梶原
Original assignee: 株式会社Ｄｎｐファインケミカル
Priority date: 2020-05-29
Filing date: 2021-05-21
Publication date: 2021-12-02

Abstract

分散安定性が良好なシリコーン油を含有する分散液を提供する。　無機酸化物粒子と、分散剤と、シリコーン油と、を含有する分散液であって、前記無機酸化物粒子は、その表面にはシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを備え、分散剤が、アクリル－シリコーン系グラフト共重合体を含有する分散液である。無機酸化物粒子は酸化チタンを含有することが好ましく、分散剤は、アクリル－シリコーン系グラフト共重合体として、（アクリレーツ／ジメチコン）コポリマー、（アクリレーツ／アクリル酸エチルヘキシル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー、（アクリレーツ／アクリル酸ステアリル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー及び（アクリレーツ／アクリル酸ベヘニル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマーよりなる群から選ばれる分散剤を含有することが好ましい。

Description

分散液

　本発明は、無機酸化物粒子を含有する分散液及びそれを含む化粧料に関する。

　酸化チタンや酸化亜鉛などの無機酸化物粒子は紫外線遮蔽効果を有することから日焼け止めサンスクリーンなどの化粧料（以下、単に化粧料と表記する。）に含有される。

　このような化粧料の製造の際には、高濃度の無機酸化物粒子が分散された分散液を製造して、その分散液を使用することが行われる。このような分散液を予め製造することで、化粧料の製造の際に取り扱い性や利便性を向上させることができる。

　例えば、特許文献１には、疎水化処理した微粒子金属酸化物にグリセリン脂肪酸エステル及び／またはポリグリセリン脂肪酸エステル、ヒドロキシ脂肪酸縮合物、変性シリコーン、及び炭化水素油を含む分散液が開示されている。特許文献１によれば、この分散液は炭化水素油中での分散安定性が高く、経時的に極めて安定な化粧料を提供することができると記載されている。

特開２００６－００１８８６号公報

　本発明は、分散安定性が良好なシリコーン油を含有する分散液を提供することを目的とする。

　本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、所定の表面処理が施された無機酸化物粒子と、特定の分散剤と、を含有する分散液であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。

　（１）無機酸化物粒子と、分散剤と、シリコーン油と、を含有する分散液であって、前記無機酸化物粒子は、その表面にはシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを備え、前記分散剤が、アクリル－シリコーン系グラフト共重合体を含有する分散液。

　（２）前記無機酸化物粒子は酸化チタンを含有する（１）に記載の分散液。

　（３）前記分散剤の重量平均分子量が２００００以下の分散剤を含む（１）又は（２）に記載の分散液。

　（４）前記分散剤は、アクリル－シリコーン系グラフト共重合体として、（アクリレーツ／ジメチコン）コポリマー、（アクリレーツ／アクリル酸エチルヘキシル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー、（アクリレーツ／アクリル酸ステアリル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー及び（アクリレーツ／アクリル酸ベヘニル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマーよりなる群から選ばれる分散剤を含有する
　（１）から（３）のいずれかに記載の分散液。

　（５）前記無機酸化物粒子に対する前記分散剤の含有量は、２質量％以上４０質量％以下である（１）から（４）のいずれかに記載の分散液。

　（６）　化粧料に用いられる（１）から（５）のいずれかに記載の分散液。

　（７）（１）から（６）のいずれかに記載の分散液を含有する化粧料。

　本発明の分散液は、シリコーン油を含有した場合であっても、分散安定性が高い。

　以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。また、本明細書において、「～」との表記は、「以上」「以下」を意味し、「Ｘ：Ｙ～Ａ：Ｂ」との表記は「Ｘ：Ｙ」及び「Ａ：Ｂ」そのものを含み、「Ｘ：Ｙ」と「Ａ：Ｂ」との間の範囲を意味する。

　＜分散液＞
　本実施の形態に係る分散液は、無機酸化物粒子と、分散剤と、シリコーン油と、を含有する。そして、無機酸化物粒子の表面にはシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムによって形成された被膜を有しており、さらに、アクリル－シリコーン系グラフト共重合体を含有する分散剤を含有することを特徴としている。

　このような構成であることで、シリコーン油を含有する分散液であっても無機酸化物粒子の分散安定性が高い分散液となる。

　また、従前の分散液により化粧料を製造すると、分散液の段階では分散安定性が良好であっても、分散液に溶剤等を加えることにより、無機酸化物粒子が凝集することで無機酸化物粒子が沈降して無機酸化物粒子と溶剤とが分離することがある。本実施の形態に係る分散液により製造される化粧料は、分散液と同様に分散安定性も高い。

　また、本実施の形態に係る分散液は、含有する無機酸化物粒子が小さい粒径であっても分散安定性が高い。例えば、１００ｎｍ以下程度の小さい粒径の無機酸化物粒子を含有することにより、分散液や製造される化粧料の透過率（透明度）も高いものとすることが可能となる。

　分散液の透過率は具体的には、紫外可視近赤外分光光度計により評価することができる。分散液の透過率は、例えば、分散液を石英ガラス基材に所定厚さ（例えばＷＥＴ厚６μｍ）になるように塗布し、乾燥後に波長４００ｎｍから７５０ｎｍまでの光を照射して、波長４００ｎｍから７５０ｎｍの範囲の面積を求めることにより求めることができる。分散液の透過率の好ましい値は、基に塗布する厚さや分散液に含まれる無機酸化物粒子の含有量によっても異なるものであり、例えば、無機酸化物粒子の含有量が４０質量％であるときには、分散液を石英ガラス基材にＷＥＴ厚６μｍになるように塗布して乾燥膜での波長４００ｎｍから７５０ｎｍまでの透過率の面積が２５０００以上、好ましくは２９０００以上、より好ましくは３００００以上であれば十分に透過率が高いと評価することができる。なお、より正確な分散液の透過率を求めるには、複数回測定して、その平均を求めればよい。

　以下、本実施の形態に係る分散液に含有される各成分について説明する。

　［無機酸化物粒子］
　無機酸化物粒子は、化粧料に紫外線遮蔽効果を付与する。この無機酸化物粒子は、その表面にはシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを備える。

　無機酸化物粒子としては、紫外線遮蔽能を有する酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ビスマスなどの微粒子無機酸化物や、一般的に化粧品に用いられる無水ケイ酸（ケイ素酸化物）、酸化アルミニウム、酸化鉄などの微粒子無機酸化物、及びこれらの複合体などが挙げられる。

　無機酸化物粒子としては酸化チタンを含有するものであることが好ましい。酸化チタンは、紫外線領域のＵＶＢ領域（波長２９０ｎｍ～３２０ｎｍ）での紫外線遮蔽能が高く、酸化チタンを含有する化粧料のＳＰＦ（Ｓｕｎ　Ｐｒｏｔｅｃｔｉｏｎ　Ｆａｃｔｏｒ）値を高めることが可能となる。

　無機酸化物粒子の粒子径の上限は、特に限定されるものではないが、１００ｎｍ以下であることが好ましく、５０ｎｍ以下であることが好ましく、３０ｎｍ以下であることがより好ましい。１００ｎｍ以下であることで、分散液や製造される化粧料の透過率（透明度）も高いものとすることが可能となる。

　無機酸化物粒子の粒子径の下限は、特に限定されるものではないが、５ｎｍ以上であることが好ましい。５ｎｍ以上であることで、無機酸化物粒子同士の凝集が抑制されて、分散液や化粧料の分散安定性が向上する。

　なお、無機酸化物粒子の粒子径は、例えば、粉体を一次粒子まで分散後、電子顕微鏡でランダムに選択した所定数（例えば２００個）の粒子の粒子径を測定し、その１次粒子径の平均を算出することにより求めることができる。

　さて、無機酸化物粒子は、その表面にはシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを備える。またその表面はシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを含む被膜で形成されていてもよい。本実施の形態に係る分散液は無機酸化物粒子と、後述するアクリル－シリコーン系グラフト共重合体を含有する分散剤を兼ね揃えることにより、分散液及び製造される化粧料中での無機酸化物粒子の分散安定性が効果的に向上する。

　以下、無機酸化物粒子の表面にシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを含む被膜を備える態様を説明するが、本発明の分散液は、必ずしも被膜が形成されていなくとも単に表面にシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを備えたものであればよい。

　表面に被膜が形成された無機酸化物粒子は、所定の疎水性付与剤で表面処理する方法が挙げられる。例えば、混合機で攪拌されている無機酸化物粒子中に、所定の疎水性付与剤をスプレー等の方法で添加する方法、溶媒に無機酸化物粒子を分散して、これに所定の疎水性付与剤及び反応触媒等を加え、さらに攪拌した後、これを濾過、乾燥する方法、無機酸化物粒子に疎水性付与剤又をスプレーする方法等が挙げられる。なお、無機酸化物粒子には予めシリカ被膜（含水シリカ被膜）が形成されていてもよい。

　所定の疎水性付与剤は、例えば、シリコーン油、クロロシラン類、シラザン類、有機アルコキシシラン類が好ましく用いられる。

　シリコーン油類としては、特に制限はないが、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン及び環状ポリジメチルシロキサンが挙げられる。また、アルキル変性、ポリエーテル変性、アミノ変性、メルカプト変性、エポキシ変性、フッ素変性等の変性シリコーン油を用いても良い。

　クロロシラン類としては、特に制限はないが、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン及びフェニルトリクロロシランが挙げられる。

　シラザン類としては、特に制限はないが、ヘキサメチルジシラザン、Ｎ，Ｎ’－ビス（トリメチルシリル）ウレア、Ｎ－トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリメチルシリルアミン及びトリメチルシリルイミダゾールが挙げられる。

　有機アルコキシシラン類としては、特に制限はないが、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス（β－メトキシエトキシ）シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ－（メタクリロイルオキシプロピル）トリメトキシシラン、β－（３，４－エポキシシクロヘキシル）エチルトリメトキシシラン、γ－グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ－グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、Ｎ－β（アミノエチル）γ－アミノプロピルトリメトキシシラン、Ｎ－β（アミノエチル）γ－アミノプロピルメチルジエトトキシシラン、γ－アミノプロピルトリエトキシシラン、Ｎ－フェニル－γ－アミノプロピルトリメトキシシラン、γ－メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ－クロロプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤及びメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトシシシラン及びジフェニルジエトキシシランが挙げられる。また、パーフルオロ化あるいは部分フルオロ化されたアルキル基を有するアルコキシシランも用いることができる。

　なお、これらのシリコーン油、クロロシラン類、シラザン類、有機アルコキシシラン類とともに、ロウ、高級脂肪酸トリグリセライド、高級脂肪酸、高級脂肪酸多価金属塩、高級脂肪族硫酸化物の多価金属塩等の高級脂肪酸、高級アルコールまたはそれらの誘導体、パーフロロ化または部分フッ素化した高級脂肪酸及び高級アルコール等の有機フッ素化合物等の他の疎水性付与剤が含まれていてもよい。

　被膜は、無機酸化物粒子の複雑な形状にも付き回りがよく、０．５ｎｍ程度の被膜であっても被覆性がよい。なお、被膜（シリカ被膜を含む）には、含水シリカを含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。

　無機酸化物粒子の表面処理は、上記の方法で製造してもよいし、例えば、シロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムによって表面処理された市販の無機酸化物粒子を入手してもよい。このような表面処理された市販の無機酸化物粒子としては、堺化学工業社製のＳＴＲ－１００Ｃ－ＬＰやテイカ社製のＭＴＹ－１００ＳＡＳ等を挙げることができる。

　分散液中のシロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量（質量）に対するシロキサン系化合物が表面に存在する質量の割合（例えば、被覆率）の下限は、１質量％以上であることが好ましく、３質量％以上であることが好ましい。シロキサン系化合物が存在する質量の割合（例えば、被覆率）の下限が１質量％以上とすることで無機酸化物粒子の分散性を向上させることができる。シロキサン系化合物が存在する質量の割合（例えば、被覆率）の上限は、３０質量％以下であることが好ましく、１５質量％以下であることがより好ましく、１０質量％以下であることがさらに好ましい。シロキサン系化合物が存在する質量の割合（例えば、被覆率）の上限が３０質量％以下とすることで分散液中に含有する無機酸化物粒子自体の量が多くすることができ、より効果的に紫外線遮蔽効果が得られるようになる。なお、本明細書において、「シロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子」の表記は、無機酸化物粒子自体と、その表面に存在するシロキサン系化合物などの表面修飾剤と、を含めたものを意味する。「シロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量」との表記は、無機酸化物粒子自体の含有量と、その表面に存在するシロキサン系化合物などの表面修飾剤の含有量の合計量を意味するものである。また、「シロキサン系化合物などで表面を修飾された無機酸化物粒子」との表記は、シロキサン系化合物で表面を修飾された無機酸化物粒子のみならず、シロキサン系化合物と、シロキサン系化合物とは異なるものと、で表面を修飾された無機酸化物粒子をも含む意味で使用される。

　無機酸化物もしくは水酸化物の水溶性塩を溶解させて被覆処理を行った場合、分散液中のシロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量（質量）に対する無機酸化物または水酸化物が表面に存在する質量の割合（例えば、被覆率）の下限は、酸化物換算で１質量％以上であることが好ましく、２．５質量％以上であることがより好ましく、５質量％以上であることがさらに好ましい。無機酸化物または水酸化物が表面に存在する質量の割合（例えば、被覆率）の下限が１質量％以上とすることで耐光性の向上や反応性の抑制を発揮することができる。無機酸化物または水酸化物が表面に存在する質量の割合（例えば、被覆率）の上限は、３０質量％以下であることが好ましく、２５質量％以下であることがより好ましく、１５質量％以下であることがさらに好ましい。無機酸化物または水酸化物が表面に存在する質量の割合（例えば、被覆率）の上限が３０質量％以下とすることで分散液中における無期酸化物粒子自体の含有量を多くすることができより効果的に紫外線遮蔽効果が得られるようになる。

　分散液中のシロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量は、特に制限はないが、分散液中のシロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量の下限は、分散液全量中２０質量％以上であることが好ましく、３０質量％以上であることがより好ましい。シロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量が分散液全量中２０質量％以上であることで高濃度の分散液とすることが可能となり、化粧料を製造する際の分散液の量も減らすことが可能となって取り扱い性が向上する。シロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量の上限は、分散液全量中６０質量％以下であることが好ましく、５５質量％以下であることがより好ましく、５０質量％以下であることがさらに好ましい。シロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量が分散液全量中６０質量％以下であることで分散液や化粧料中での無機酸化物粒子の分散安定性が向上する。

　シロキサン系化合物などが表面に存在する無機酸化物粒子中の無機酸化物粒子自体が占める割合としては７０質量％以上、好ましくは８０質量%以上、最も好ましくは８５質量％以上であることが、紫外線遮蔽効果を向上させられる点で好ましい。

　［分散剤］
　分散剤は、分散液中の無機酸化物粒子を分散する。そして、この分散剤は、アクリル－シリコーン系グラフト共重合体を含有することを特徴としている。上述したように無機酸化物粒子の表面にはシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを備えており、さらにアクリル－シリコーン系グラフト共重合体を含有する分散剤を兼ね揃えることにより、分散液及び製造される化粧料中での無機酸化物粒子の分散安定性が効果的に向上する。

　アクリル－シリコーン系グラフト共重合体としては、分子鎖の片末端にラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物とアクリレートおよび／またはメタクリレートを主体とするラジカル重合性モノマーとのラジカル重合体で、（アクリレーツ／ジメチコン）コポリマー、（アクリレーツ／アクリル酸エチルヘキシル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー、（アクリレーツ／アクリル酸ステアリル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー、（アクリレーツ／アクリル酸ベヘニル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー等が挙げられる。これら市販品は、（アクリレーツ／ジメチコン）コポリマーでは、ＫＰ－５４１、ＫＰ－５４５、ＫＰ－５５０、（アクリレーツ／アクリル酸エチルヘキシル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマーでは、ＫＰ－５７５、ＫＰ－５７８（アクリレーツ／アクリル酸ステアリル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマーでは、ＫＰ－５６１Ｐ、（アクリレーツ／アクリル酸ベヘニル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマーでは、ＫＰ－５６２Ｐ（いずれも信越化学工業社製）が挙げられる。この中でも、（アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン）コポリマーが特に好ましい。なお、これらの市販品は、共重合体を溶剤に溶解（希釈）させたものであっても溶剤に溶解（希釈）させていないものであってもよい。

　分散剤の重合平均分子量は、特に制限されるものではないが、２００００以下であることが好ましい。分散剤の重合平均分子量が２００００以下であることで、分散液中に分散剤が好ましく分散されて、無機酸化物粒子の分散性をも向上させることができる。なお、本明細書において重量平均分子量とはゲル透過クロマトグラフィー（ＧＰＣ）によるポリスチレン換算値である。

　分散剤の含有量は、分散液中のシロキサン化合物及び水酸化アルミニウムなどが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量に応じて決定することが好ましい。表面にシロキサン系化合物などを備える無機酸化物粒子と、アクリル－シリコーン系グラフト共重合体を含有する分散剤と、の適切な含有量比を制御することで、無機酸化物粒子と分散剤との相溶性をより効果的に向上させることが可能となって、無機酸化物粒子の分散性が向上して分散液や製造される化粧料の透過率（透明度）も高いものとすることができる。特に、本実施の形態の分散液は、無機酸化物粒子表面に存在するシロキサン系化合物と溶剤であるシリコーン油はいずれもシロキサン結合（Ｓｉ－Ｏ）を有しており構造が比較的類似する。このため、分散剤の含有量が比較的少なくても無機酸化物粒子の分散性を十分に向上させることができる。

　具体的には、分散液中のシロキサン化合物及び水酸化アルミニウムなどが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量（質量）に対する分散剤の含有量（質量）の割合の下限は２質量％以上であることが好ましく、５質量％以上であることがより好ましく、７質量％以上であることがさらに好ましい。分散液中のシロキサン化合物及び水酸化アルミニウムなどが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量（質量）に対する分散剤の含有量（質量）の割合の下限が２質量％以上であることで、無機酸化物粒子の分散性をより向上させることができる。シロキサン化合物及び水酸化アルミニウムなどが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量（質量）に対する分散剤の含有量（質量）の割合の上限は４０質量％以下であることが好ましく、３５質量％以下であることがより好ましく、３０質量％以下であることがさらに好ましく、２５質量％以下であることがさらになお好ましい。シロキサン化合物及び水酸化アルミニウムなどが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量（質量）に対する分散剤の含有量（質量）の割合が４０質量％超含有すると、分散液の粘度が相対的に上昇する傾向や、分散性及び透明性が相対的に低下する傾向がある。シロキサン化合物及び水酸化アルミニウムなどが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量（質量）に対する分散剤の含有量（質量）の割合が４０質量％以下であることで、このような粘度の上昇や分散性及び透明性の低下を効果的に抑制することができる。

　また、分散液中のシロキサン化合物及び水酸化アルミニウムなどが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量（質量）に対する分散剤の含有量（質量）の割合は２質量％以上２０質量％以下、好ましくは５質量％以上１５質量％以下であることにより、分散液の透過率（透明度）をより高いものとすることができる。

　また、分散液中のシロキサン化合物及び水酸化アルミニウムなどが表面に存在する無機酸化物粒子の含有量（質量）に対する分散剤の含有量（質量）の割合は１０質量％以上４０質量％以下、好ましくは１５質量％以上３５質量％以下、さらに好ましくは２０質量％以上３０質量％以下であることにより、分散安定性がさらに良好な分散液とすることができる。

　［シリコーン油］
　シリコーン油は、分散液の分散媒体である。シリコーン油としては、ジシロキサン、トリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、オクタメチルテトラシロキサン（Ｄ４）、デカメチルシクロペンタシロキサン（Ｄ５）、ドデカメチルシクロシロキサン（Ｄ６）、ドデカメチルヘキサシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、カプリリルメチコン、ドデカメチルペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらの中でも、特にジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン（Ｄ５）、トリストリメチルシロキシメチルシラン、ドデカメチルペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、オクタメチルテトラシロキサン（Ｄ４）が好ましい。

　分散液全量に対してシリコーン油の含有量の下限は、３０質量％以上であることが好ましく、４０質量％以上であることがより好ましい。分散液全量に対してシリコーン油の含有量の上限は、６０質量％以下であることが好ましく５７質量％以下であることがより好ましい。

　［その他の成分］
　本実施の形態に係る分散液は、その他の成分として、通常の化粧料に使用される種々の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、ワックス、制汗剤、防腐剤・殺菌剤、香料、塩類、酸化防止剤、ｐＨ調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、美白剤、増粘剤、保湿剤、アルコール等のその他の添加剤を含んでよい。

　＜分散液の製造方法＞
　本実施の形態に係る分散液は、例えば、各成分を媒体撹拌ミル、ディスパー、超音波分散機、高速ミキサー等で混合する方法を挙げることができる。

　＜化粧料＞
　化粧料は、分散液を使用して製造することができる。化粧料は、分散液にシリコーン油、水、有機溶剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、波長変換剤、ワックス、制汗剤、防腐剤・殺菌剤、香料、塩類、酸化防止剤、ｐＨ調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、美白剤、増粘剤、保湿剤、アルコールその他の添加剤を加えて混合することで製造することができる。

　以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。

　＜分散液の製造＞
　下記表１の割合になるように各成分のように実施例及び比較例の分散液を製造した。具体的には、ペイントシェイカーを用いてジルコニアビーズにて各成分を分散させて分散液を製造した。単位は質量％である。

　表中「ＳＴＲ－１００ＣＬＰ」とは、堺化学工業社製のシロキサン系化合物（ハイドロゲンジメチコン）及び水酸化アルミニウムによって表面処理された酸化チタン粒子（一次粒子の粒径：１５ｎｍ）である。シロキサン系化合物が存在する率は４質量％であり、水酸化物が存在する率は７質量％であった。シロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを備えた無機酸化物粒子中の無機酸化物粒子自体が占める割合としては８９質量％であった。

　表中「ＭＴＹ－１００ＳＡＳ」とは、テイカ社製のシロキサン系化合物（メチルハイドジェンポリシロキサン）及び水酸化アルミニウムによって表面処理された酸化チタン粒子（一次粒子の粒径：１５ｎｍ）である。なお、この被膜は含水シリカを含有する。

　表中「ＭＴ－０１」とは、テイカ社製のステアリン酸及び水酸化アルミニウムによって表面処理された酸化チタン粒子（一次粒子の粒径：１０ｎｍ）である。

　表中「ＭＴ－１００Ｚ」とは、テイカ社製のステアリン酸及び水酸化アルミニウムによって表面処理された酸化チタン粒子（一次粒子の粒径：１５ｎｍ）である。

　表中「ＭＴ－１００ＴＶ」とは、テイカ社製のステアリン酸及び水酸化アルミニウムによって表面処理された酸化チタン粒子（一次粒子の粒径：１５ｎｍ）である。

　表中「ＳＴＲ－１００ＣＬＦ」とは、堺化学工業社製のステアリン酸及び水酸化アルミニウムによって表面処理された酸化チタン粒子（一次粒子の粒径：１５ｎｍ）である。

　表中「ＫＰ－５７８」とは、信越化学社製の（アクリレーツ／アクリル酸エチルヘキシル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー（アクリル－シリコーン系グラフト共重合体）であって、溶剤に溶解していないものである。

　表中「ＫＦ－６１０５」とは、信越化学社製のラウリルポリグリセリル－３ポリジメチルシロキシエチルジメチコンである。

　表中「ＫＦ－６１０６」とは、信越化学社製のポリグリセリル－３ポリジメチルシロキシエチルジメチコンである。

　表中「ＫＦ－６０１７」とは、信越化学社製のＰＥＧ－１０ジメチコンである。

　表中「ＫＦ－６０２８」とは、信越化学社製のＰＥＧ－９ポリジメチルシロキシエチルジメチコンである。

　表中「ＫＦ－６０３８」とは、信越化学社製のラウリルＰＥＧ－９ポリジメチルシロキシエチルジメチコンである。

　表中「ＫＦ－９９５」とは、信越化学社製のデカメチルシクロペンタシロキサン（シリコーン油）である。

　表中「ＫＦ－９９５」とは、信越化学社製のデカメチルシクロペンタシロキサン（環状構造を有するシリコーン油）である。

　表中「ＫＦ－９６Ｌ－１．５ＣＳ」とは、信越化学社製のデカメチルテトラシロキサン（直鎖状構造を有するシリコーン油）である。

　表中「ＫＦ－９６Ｌ－２．０ＣＳ」とは、信越化学社製のドデカメチルペンタシロキサン（直鎖状構造を有するシリコーン油）である。

　表中「ＤＭ　１　ＰＬＵＳ」とは、旭化成ワッカーシリコン社製のポリジメチルシロキサン／ヘキサメチルジシロキサン／オクタメチルテトラシロキサン（Ｄ４）の混合物である。

　＜評価＞
　［分散安定性評価］
　実施例及び比較例の分散液について分散安定性を確認した。具体的には、ペイントシェイカーにて調製された分散液の状態を確認し、下記の評価基準にて評価した。評価結果を表１に示す。
　（評価基準）
　〇：ゲル化もなく、流動性を有していた。
　×：ゲル化したか、又は粘度が高くなり流動性を失っていた。

　［化粧料の分散安定性評価］
　実施例及び比較例の分散液により製造された化粧料について分散安定性を確認した。具体的には、分散液にその実施例に含まれるシリコーン油と同様のシリコーン油を加えて分散安定性を確認し、下記の評価基準にて評価した。評価結果を表１に示す。
　（評価基準）
　〇：無機酸化物粒子の沈降は発生しなかった。
　△：無機酸化物粒子の沈降は発生したが実用上問題の無いレベルであった。
　×：無機酸化物粒子の沈降は発生し、溶媒（シリコーン油）と分離した。

　［透明性評価］
　実施例及び比較例の分散液について透明性を確認した。具体的には、分散液を石英ガラス基材にＷＥＴ厚６μｍになるようにバーコーター＃３にて塗布し、９０℃５分間乾燥することで乾燥膜を形成した。そしてその乾燥膜について島津製作所社製　ＵＶ－３６００ｉ　Ｐｌｕｓを用いて波長４００ｎｍから７５０ｎｍまでの光を照射して、波長４００ｎｍから７５０ｎｍの範囲の透過光強度（透過率）の面積を求めた。

　＜評価結果について＞
　表１から分かるように、所定の表面処理が施された無機酸化物粒子と、特定の分散剤と、を含有する実施例の分散液であれば、分散性が高く、さらに実施例の分散液を用いて製造された化粧料は、分散安定性が高いものであることが分かる。

　さらに、実施例の分散液は、透過率も高く、化粧料として十分使用に耐えうるものであることが分かる。

　特に実施例１、２で用いたシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを備えた無機酸化物粒子（ＳＴＲ－１００ＣＬＰ）は、分散液中のシロキサン化合物及び水酸化アルミニウムなどが表面に存在する無機酸化物粒子中の無機酸化物粒子自体が占める割合が８９質量％であることから、この実施例１、２の分散液により製造された化粧料は、紫外線遮蔽効果をより効果的に向上させることができるものである。

　さらに、無機酸化物粒子の含有量が分散液全量中５０質量％の実施例５～１１の分散液であっても分散性が高く、この分散液を用いて製造された化粧料は、分散安定性が高いものであった。

Claims

　無機酸化物粒子と、分散剤と、シリコーン油と、を含有する分散液であって、
　前記無機酸化物粒子は、その表面にはシロキサン系化合物及び水酸化アルミニウムを備え、
　前記分散剤が、アクリル－シリコーン系グラフト共重合体を含有する
　分散液。
　前記無機酸化物粒子は酸化チタンを含有する
　請求項１に記載の分散液。
　前記分散剤の重量平均分子量が２００００以下の分散剤を含む
　請求項１又は２に記載の分散液。
　前記分散剤は、アクリル－シリコーン系グラフト共重合体として、（アクリレーツ／ジメチコン）コポリマー、（アクリレーツ／アクリル酸エチルヘキシル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー、（アクリレーツ／アクリル酸ステアリル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマー及び（アクリレーツ／アクリル酸ベヘニル／メタクリル酸ジメチコン）コポリマーよりなる群から選ばれる分散剤を含有する
　請求項１から３のいずれかに記載の分散液。
　前記無機酸化物粒子に対する前記分散剤の含有量は、２質量％以上４０質量％以下である
　請求項１から４のいずれかに記載の分散液。
　化粧料に用いられる
　請求項１から５のいずれかに記載の分散液。
　請求項１から６のいずれかに記載の分散液を含有する
　化粧料。