WO2021124843A1

WO2021124843A1 - 端子付電線

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Publication number: WO2021124843A1
Application number: PCT/JP2020/044410
Authority: WO
Inventors: 知聖金; 智哉河口
Original assignee: 株式会社オートネットワーク技術研究所; 住友電装株式会社; 住友電気工業株式会社
Priority date: 2019-12-18
Filing date: 2020-11-30
Publication date: 2021-06-24
Also published as: JP2021096977A

Abstract

本開示の一態様は、電線及び端子の容易な位置調整を可能にした端子付電線を提供する。本開示の一態様に従う端子付電線（１）は、電線（１４）と、２箇所にスリット部（２３）が形成された端子（１５）と、電線（１４）が嵌挿された端子（１５）の筒部（１９）を、かしめによって電線（１４）と固定するカシメバンド（１６）とを備える。電線（１４）を端子（１５）の筒部（１９）の内部に挿し込み、筒部（１９）の外周をカシメバンド（１６）によってかしめることにより、電線（１４）及び端子（１５）を固定する。

Description

端子付電線

　本開示は、端子付電線に関するものである。

　従来、特許文献１等には、車両において機器同士を電気接続する端子付電線の一例として、ワイヤハーネスが記載されている。特許文献１のワイヤハーネスは、電線と、電線の両端に取り付け固定された端子とを備える。ワイヤハーネスは、電気接続したい２つの機器の一方に片方の端子を接続し、他方の機器に、もう片方の端子を接続することにより、これら機器を電気接続する。

特開２０１８－９２８３６号公報

　近年、車両の電動化に応じて、ワイヤハーネスの電線も径が大きくなる傾向にある。このため、電線の端子を車体側の端子台に接続する場合に、電線が従来の大きさの径であれば十分であった公差吸収量では足りず、電線の端子を、端子台の決められた位置に接続することができない可能性があった。

　そこで、電線及び端子の容易な位置調整を可能にした端子付電線を提供することを目的とする。

　本開示の端子付電線は、導体の少なくとも一部が被覆材によって覆われた電線と、少なくとも１箇所にスリット部が形成された筒部の内部に前記電線の端部が嵌挿され、接続相手に電気接続される端子と、前記電線が嵌挿された前記筒部を、かしめによって前記電線と固定するカシメバンドとを備える。

　本開示によれば、電線及び端子の容易な位置調整を可能にした端子付電線を提供することが可能となる。

図１は、一実施形態の端子付電線を示す概略構成図である。図２は、端子付電線の端子部分を示す概略斜視図である。図３は、端子付電線の端子部分を示す概略分解斜視図である。図４は、端子付電線の全体を示す概略側面図である。図５（ａ）～（ｄ）は、端子付電線を端子台に固定する手順を示す説明図である。別例の端子付電線の端子部分を示す概略斜視図である。

　［本開示の実施形態の説明］
　最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
　本開示の端子付電線は、
　［１］電線と、少なくとも１箇所にスリット部が形成された筒部の内部に前記電線の端部が嵌挿され、接続相手に電気接続される端子と、前記電線が嵌挿された前記筒部を、かしめによって前記電線と固定するカシメバンドとを備える。

　この構成によれば、電線を端子の筒部の内部に挿し込み、筒部の外周をカシメバンドによってかしめることにより、電線及び端末を固定する。このため、電線を端子の筒部に挿し込む際に、その挿し込み量を調整するのみで、電線と端子との位置合わせを行うことができる。よって、電線及び端子を容易に位置調整することができる。

　［２］前記電線は、端部が被覆材に覆われずに導体が露出する形状に形成され、前記端子は、前記電線の端部において前記導体が露出する箇所に前記筒部が前記カシメバンドによって取り付け固定されていることが好ましい。この構成によれば、導体が露出した箇所に端子を挿し込むという簡素な取り付け構造とすることができる。

　［３］前記筒部の外周面には、前記カシメバンドの取り付け位置を案内する位置決め部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、カシメバンドを筒部の適切な位置に取り付けることができる。

　［４］前記端子は、前記筒部と、前記接続相手に電気接続される箇所となる電気接触部とを備える形状に形成され、前記電気接触部には、前記端子を前記接続相手に固定する際の締結部を通す真円又は正多角形状の孔が形成されていることが好ましい。この構成によれば、電線を端子の内部に挿し込み、カシメバンドでかしめて固定する構造によって電線及び端子の間の位置合わせを行うようにすれば、例えば固定用の締結部を通す孔が設けられた電気接触部の場合、その孔の形状を、位置調整を許容可能にする長孔ではなく、正多角形状の孔とすることができる。よって、電気接触部の孔を正多角形状の孔とした場合、この孔を長孔とする場合に比較して、電気接触部の大きさを小さくすることが可能となるので、端子の小型化に寄与する。

　［５］前記端子及び前記カシメバンドの組は、前記電線の両端の少なくとも一方に設けられていることが好ましい。この構成によれば、電線の両端で公差吸収が可能となるので、電線及び端子の間の位置合わせを取りやすくすることができる。

　［６］前記端子は、前記筒部の軸方向に沿って延びる前記スリット部が、径方向において対向するように一対設けられた形状に形成されていることが好ましい。この構成によれば、筒部にスリット部を複数設ければ、カシメバンドで端子をかしめる前、端子の筒部の開口を大きくすることが可能となるので、電線を筒部の開口に挿し込み易くすることができる。

　［７］前記端子は、前記筒部の軸方向に沿って延びる前記スリット部を１つのみ有する形状に形成されていることが好ましい。この構成によれば、端子の形状を、スリット部が１つのみの簡素な構成とすることができる。

　［本開示の実施形態の詳細］
　本開示の端子付電線の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。

　図１に示すように、端子付電線１は、ハイブリッド車や電気自動車等の車両２に搭載される。端子付電線１は、高圧回路を構成する高圧電線３と、低圧回路を構成する低圧電線４とを備えている。高圧電線３は、車両２の前部に搭載されたインバータ等の機器５と、車両２の後部に搭載された高圧バッテリ等の機器６とを電気的に接続する。インバータは、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータと接続され、高圧バッテリから交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリは、例えば数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。

　低圧電線４は、車両２の前部に搭載されたヒューズボックス等の機器７と、車両２の後部に搭載された低圧バッテリ等の機器８とを電気的に接続する。低圧バッテリは、例えば１２ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。端子付電線１は、例えば車両２の床下等を通るように配索される。端子付電線１は、例えば樹脂製のクランプ９を介して車体に固定されている。クランプ９は、車体に複数設けられてもよいし、１つのみ設けるようにしてもよい。

　高圧電線３及び低圧電線４は、例えば車両２の前後方向に延びるように長尺状に形成されている。高圧電線３は、高電圧・大電流に対応可能である。高圧電線３及び低圧電線４は、例えば複数の金属素線を撚り合わせてなる芯線と、その芯線を被覆する絶縁被覆とを有している。高圧電線３及び低圧電線４は、自身に電磁波をシールドする電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよいし、自身にシールド構造を有さないノンシールド電線であってもよい。高圧電線３は、一端部がコネクタを介して機器５と接続され、他端部がコネクタを介して機器６と接続されている。低圧電線４は、一端部が端子金具を介して機器７と接続され、他端部が端子金具を介して機器８と接続されている。

　図２及び図３に示すように、端子付電線１は、導体１２の少なくとも一部が被覆材１３によって覆われた電線１４と、電線１４の端部に取り付け固定された端子１５と、かしめによって端子１５を電線１４に固定するカシメバンド１６とを備える。高圧回路用の端子付電線１の場合、電線１４は、高圧電線３である。電線１４は、端部が被覆材１３に覆われずに導体１２が露出する形状に形成されている。導体１２は、両端以外の箇所が被覆材１３によって覆われている。

　端子１５は、電線１４が挿通される筒部１９と、接続相手２０に電気接続される箇所となる電気接触部２１とを備える。端子１５の筒部１９は、電線１４の端部において導体１２が露出する箇所に取り付け固定されている。接続相手２０は、例えば車体側に設けられた端子台２０ａ（図４等参照）である。

　筒部１９には、開口２２から内部に電線１４の端部が挿通され、少なくとも１箇所にスリット部２３が形成されている。本例のスリット部２３は、筒部１９の径方向において対向するように一対（計２つ）設けられている。スリット部２３は、筒部１９の長さ方向に沿って切り込み入った形状に形成されている。

　筒部１９の外周面には、カシメバンド１６の取り付け位置を案内する位置決め部２４が形成されている。位置決め部２４は、筒部１９の周方向全周に亘って凹設された溝部からなる。

　電気接触部２１は、筒部１９の側面から突出するとともに略平板状に形成されている。電気接触部２１には、端子１５を接続相手２０（端子台２０ａ）に固定する際の締結部２７を通す真円又は正多角形状の孔２８（図３等参照）が形成されている。本例の孔２８の形状は、真円となっている。締結部２７は、例えばネジやボルトであることが好ましい。

　カシメバンド１６は、筒部１９を外周から覆って締め付けるバンド本体部２９と、バンド本体部２９の締め付け量を調整する調整部３０とを備える。バンド本体部２９は、リング状をなすとともに、縮径及び拡径可能に調整部３０に連結されている。調整部３０には、例えばドライバ等の治具３１（図５（ｃ）参照）によって回されるネジ部３２が形成され、このネジ部３２の回し量を通じて、バンド本体部２９の径の大きさ、すなわち締め付け量が調整される。

　図４に示すように、端子１５及びカシメバンド１６の組は、端子付電線１の両端にそれぞれ設けられている。端子１５は、締結部２７を介して端子台２０ａに取り付け固定されている。締結部２７は、端子１５を間に介在させた状態で、端子台２０ａの締結穴３３に締結される。

　本実施形態の作用について説明する。
　図５（ａ）に示すように、端子付電線１の電線１４に端子１５を取り付けるにあたり、まずは筒部１９の外周にカシメバンド１６が仮止めされた端子１５を用意する。カシメバンド１６は、筒部１９の外周上の位置決め部２４に対し、緩い状態（きつく締め付けられていない状態）で嵌め込まれていることが好ましい。

　図５（ｂ）に示すように、筒部１９の外周にカシメバンド１６が仮止めされた端子１５に、電線１４の端部を挿し込む。本例の場合、端子１５は、電線１４の端部において、被覆材１３が覆われていない導体１２の先端に取り付けられる。

　ところで、近年、自動車の電動化に伴って、端子付電線１に流す電流が大きくなり、その結果、端子付電線１の電線１４も径が大きくなる傾向にある。そのため、端子付電線１を端子台２０ａに固定するにあたり、端子付電線１を従来の端子で端子台２０ａに固定する構造では、端子付電線１の公差吸収機能、一例としては余長機能や寸法公差機能を満足することができない現状があった。余長機能は、例えば長さ方向の位置調整の機能である。寸法公差機能は、例えば寸法公差を吸収する機能である。仮に、端子付電線１の公差吸収機能が十分でないと、例えば端子付電線１の従来の端子と端子台２０ａとの位置関係が合わず、端子付電線１を端子台２０ａに固定できない問題に繋がる。

　図５（ｃ）において、端子付電線１を端子台２０ａに固定するにあたり、端子１５の孔２８を端子台２０ａの締結穴３３に位置を合わせながら、電線１４に対する端子１５の位置を調整する。電線１４に対する端子１５の位置調整は、電線１４に対する端子１５の挿し込み量によって調整する。そして、電線１４に対する端子１５の位置調整後、端子１５を電線１４にきつく固定するためにカシメバンド１６をかしめる。本例の場合、治具３１を使用して、カシメバンド１６をきつくかしめることが好ましい。カシメバンド１６がホースバンド（ホースクランプ）の場合、カシメバンド１６に設けられたネジ部３２を、治具３１としてのドライバ等で回して、きつくかしめる。これにより、電線１４の端部に端子１５が本止めされる。

　図５（ｄ）に示すように、電線１４の端部に端子１５が本止めされた端子付電線１を、車体側に設けられた端子台２０ａに取り付け固定する。本例の場合、端子付電線１は、端子１５の電気接触部２１がボルト等の締結部２７によって端子台２０ａに固定される。本例の場合、締結部２７は、端子１５の孔２８に通されて、端子台２０ａの締結穴３３に締結される。以上の作業を各組の端子１５及び端子台２０ａで各々行い、端子付電線１を車体に取り付ける。

　本実施形態の効果について説明する。
　（１）端子付電線１は、電線１４と、少なくとも１箇所にスリット部２３が形成された筒部１９の内部に電線１４の端部が挿通され、接続相手２０である端子台２０ａに接続される端子１５と、電線１４が嵌挿された筒部１９を、かしめによって電線１４と固定するカシメバンド１６とを備える。

　本例の構成によれば、電線１４を端子１５の筒部１９の内部に挿し込み、筒部１９の外周をカシメバンド１６によってかしめることにより、電線１４及び端子１５を固定する。このため、電線１４を端子１５の筒部１９に挿し込む際に、その挿し込み量を調整するのみで、電線１４と端子１５との位置合わせを行うことができる。よって、電線１４及び端子１５を容易に位置調整することができる。

　（２）電線１４は、端部が被覆材１３に覆われずに導体１２が露出する形状に形成されている。端子１５は、電線１４の端部において導体１２が露出する箇所に筒部１９がカシメバンド１６によって取り付け固定されている。この場合、導体１２が露出した箇所に端子１５を挿し込むという簡素な取り付け構造とすることができる。

　（３）筒部１９の外周面には、カシメバンド１６の取り付け位置を案内する位置決め部２４が形成されている。よって、カシメバンド１６を筒部１９の適切な位置に取り付けることができる。

　（４）端子１５は、筒部１９と、接続相手２０（本例は端子台２０ａ）に電気接続される箇所となる電気接触部２１とを備える形状に形成されている。電気接触部２１には、端子１５を接続相手２０（本例は端子台２０ａ）に固定する際の締結部２７を通す真円（正多角形状も可）の孔２８が形成されている。本例のように、電線１４を端子１５の内部に挿し込み、カシメバンド１６でかしめて固定する構造によって電線１４及び端子１５の位置合わせを行うようにすれば、例えば接続相手２０（本例は端子台２０ａ）への固定用の締結部２７を通す孔２８が設けられた電気接触部２１の場合、その孔２８の形状を、位置調整を許容する長孔ではなく、真円（正多角形状も可）とすることができる。よって、孔２８の形状を長孔とする場合に比較して、電気接触部２１の大きさを小さくすることが可能となるので、端子１５の小型化に寄与する。

　（５）端子１５及びカシメバンド１６の組は、電線１４の両端の少なくとも一方に設けられている。この場合、例えば電線１４の両端に端子１５及びカシメバンド１６の組を設ければ、電線１４の両端で公差吸収が可能となるので、電線１４及び端子１５の間の位置合わせを取り易くすることができる。

　（６）端子１５は、筒部１９の軸方向に沿って延びるスリット部２３が、径方向において対向するように一対設けられた形状に形成されている。よって、カシメバンド１６で端子１５をかしめる前、複数のスリット部２３の開きによって、端子１５の筒部１９の開口２２を大きくとっておくことが可能となるので、電線１４を筒部１９に挿し込み易くすることができる。

　本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
　・図６に示すように、端子１５は、筒部１９の軸方向に沿って延びるスリット部２３を１つのみ有する形状に形成されてもよい。この場合、端子１５の形状を、スリット部２３が１つのみの簡素な構成とすることができる。

　・端子１５の筒部１９は、例えば孔や凹部等が形成された形状でもよい。
　・端子１５の筒部１９は、導体１２及び被覆材１３の両方が内部に挿し込まれる取り付け状態をとってもよい。

　・端子１５の電気接触部２１は、板状に限定されず、例えばブロック状等の他の形状に変えてもよい。
　・電気接触部２１の孔２８は、真円に限らず、例えば四角形状や六角形状としてもよい。

　・端子１５は、筒部１９及び電気接触部２１を有する形状に限らず、端子付電線１を端子台２０ａに接続できる形状であればよい。
　・スリット部２３は、例えば斜め方向に延びる形状としてもよい。

　・スリット部２３は、直線状に限らず、例えば曲線状や段状などの他の形状に変えてもよい。
　・スリット部２３は、３つ以上設けられてもよい。

　・スリット部２３を複数設ける場合、これらスリット部２３を互いに異なる形状としてもよい。
　・スリット部２３を複数設ける場合、筒部１９の周方向に等間隔に配置されることに限らず、非等間隔の配置としてもよい。

　・端子１５は、端子台２０ａの締結穴３３に位置合わせしながら、カシメバンド１６によって電線１４に固定される取り付け手順をとることに限定されない。例えば、電線１４及び端子１５の位置関係が、ある程度分かっているのであれば、端子１５を端子台２０ａの締結穴３３に位置合わせすることはせず、先に電線１４及び端子１５をカシメバンド１６で固定してしまい、その後、端子１５を端子台２０ａに位置合わせして固定する手順をとってもよい。

　・端子１５を端子台２０ａに固定する締結部２７は、ネジに限らず、ピン等の他の部材に変えてもよい。
　・端子１５を端子台２０ａに固定する方法は、締結部２７を用いた構造に限らず、例えば溶着などの他の方法を用いてもよい。

　・カシメバンド１６は、ホースバンドに限定されず、かしめによって電線１４及び端子１５を固定できる部材であればよい。
　・カシメバンド１６は、金属製に限定されず、樹脂製でもよい。

　・カシメバンド１６の取り付け位置を案内する位置決め部２４は、凹部に限定されない。例えば、筒部１９及びカシメバンド１６の一方に突部を設け、この突部を、これらの他方に係止することで、カシメバンド１６の取り付け位置を決めるものでもよい。

　・端子１５及びカシメバンド１６の組は、電線１４の片方の端部にのみ設けられてもよい。すなわち、端子１５及びカシメバンド１６の組は、電線１４の少なくとも一方の端部に設けられていればよい。

　・端子付電線１は、電線１４を内部に収納する筒状のパイプを備えてもよい。
　・端子１５及びカシメバンド１６を備える端子ユニットが製品として販売されてもよい。

　・端子付電線１は、車載用に限らず、他の機器や装置に使用されてもよい。
　・実施形態の電線１４の導体１２は、数百ボルトであり得る１００ボルトを超える高電圧に適合された導体断面積を有することができる。そのようなその導体１２を有する電線１４は一般的に太く曲げにくい。高電圧に適合された電線１４は、高圧電力供給線と呼称することがある。

　・実施形態の端子１５の筒部１９は、スリット付き導体ホルダと呼称することがある。筒部１９は、電線１４の導体１２の径方向外向き面と摩擦接触する径方向内向き面を有してよい。筒部１９がカシメバンド１６によって外側から締め付けられていない状態において、例えば筒部１９の自然状態において、導体１２の長手方向に導体１２と筒部１９とが相対移動できかつ導体１２と筒部１９とを所望の長さ位置に一時的に保持できるように、筒部１９の径方向内向き面は電線１４の導体１２の径方向外向き面と摩擦接触してよい。筒部１９は、カシメバンド１６によって締め付けられる前に導体１２と筒部１９とを脱離可能な状態で保持し、導体１２の長手方向における導体１２と筒部１９との位置を一時的に決めるのに有利である。これは、端子付電線１の余長調整にとって有利である。筒部１９がカシメバンド１６によって外側から締め付けられていない状態の筒部１９は、導体１２と筒部１９とが脱離可能な状態のままで、電線１４の導体１２の径方向外向き面を弾性的に押圧するように構成されてよい。

　・実施形態のカシメバンド１６は、筒部１９を介して導体１２に印加するカシメバンド１６の締結力を可逆的に調整可能に構成された締結要素と呼称することがある。例えば、カシメバンド１６が筒部１９を介して導体１２をゼロ以上の比較的小さい締結力または第１の締結力で締結するとき、導体１２の径方向外向き面と筒部１９の径方向内向き面とは、第１の摩擦力で接触し少なくとも長手方向にスライド可能に接触してよい。カシメバンド１６が筒部１９を介して導体１２を比較的大きい締結力、すなわち、前記第１の締結力よりも大きい第２の締結力で締結するとき、導体１２の径方向外向き面と筒部１９の径方向内向き面とは、前記第１の摩擦力よりも大きい第２の摩擦力で接触し少なくとも長手方向にスライド不能に接触してよい。カシメバンド１６が筒部１９を介して導体１２を中程度の締結力、すなわち、前記第１の締結力よりも大きく前記第２の締結力よりも小さい第３の締結力で締結するとき、導体１２の径方向外向き面と筒部１９の径方向内向き面とは、前記第１の摩擦力と前記第２の摩擦力との間の中程度の摩擦力または第３の摩擦力で接触し少なくとも長手方向にスライド可能に接触してよい。筒部１９を介して導体１２に印加するカシメバンド１６の締結力は、第１の締結力と第２の締結力との間で、例えば第１の締結力と第３の締結力との間で、可逆的にすなわち両方向に調整可能であってよい。例えば、カシメバンド１６の締結力は、第１の締結力と第２の締結力との間で、例えば第１の締結力と第３の締結力との間で、ステップレスにまたは段階的に調整可能に構成されてよい。電線１４の導体１２と端子１５の筒部１９とが少なくとも長手方向にスライド可能に接触した状態、すなわち、電線１４の導体１２の径方向外向き面と端子１５の筒部１９の径方向内向き面とが第２の摩擦力よりも小さい摩擦力で、例えば第１の摩擦力または第３の摩擦力で接触した状態を、端子１５の筒部１９と電線１４の導体１２とが導体１２の長手方向に相対移動可能でかつ脱離不能に連結される弛緩連結状態または不完全締結状態または第１の締結状態と呼称することがある。電線１４の導体１２と端子１５の筒部１９とが少なくとも長手方向にスライド不能に接触した状態、すなわち、電線１４の導体１２の径方向外向き面と端子１５の筒部１９の径方向内向き面とが第２の摩擦力以上の摩擦力で接触した状態を、端子１５の筒部１９と電線１４の導体１２とが導体１２の長手方向に相対移動不能でかつ脱離不能に締結される緊密連結状態または完全締結状態または第２の締結状態と呼称することがある。締結力を可逆的に調整可能なカシメバンド１６と、筒部１９は、端子付電線１の余長を端子付電線１の製造後に調整するのに有利である。例えば端子付電線１を端子台などの接続相手２０に接続するときまたはその直前に、作業者はカシメバンド１６を適度に緩めて、導体１２の長手方向における導体１２と筒部１９の位置を調整することができる。例えば、作業者は、端子付電線１を接続相手２０に接続するときに、端子付電線１の余長が適切長さよりも過長または過短であると気付くことがある。この場合、作業者は、カシメバンド１６の締結力を弱くし、筒部１９と導体１２との相対位置を導体１２の長手方向に移動して端子付電線１の余長を適切長さに調整し、その後、カシメバンド１６の締結力を例えば第２の締結力へと強めることによって端子付電線１の余長を適切長さに固定することができる。

　・カシメバンド１６が筒部１９を前記第１の締結力または前記第３の締結力で締結するとき、筒部１９は、元の形状に完全にまたは不完全に復元可能に弾性変形してよい。カシメバンド１６が筒部１９を前記第２の締結力で締結するとき、筒部１９は可塑変形してよい。

　・カシメバンド１６と筒部１９との組合せを備える実施形態の端子付電線１は、カシメバンド１６と筒部１９との協働により導体１２を締結するように構成される。例えば、カシメバンド１６が筒部１９を介して導体１２に印加するカシメバンド１６の締結力を可逆的に調整でき、端子付電線１の製造後であっても、例えば、端子１５の電気接触部２１を接続相手２０に固定するときに（場合により電気接触部２１を電気接触部２１を接続相手２０に非固定的に連結した後であっても）、筒部１９に対する導体１２の位置を長手方向にずらすことができ、端子付電線１の余長を調整するのに有利である。端子付電線１の余長を調整の利便性は、電線１４が比較的曲げにくい高圧電力供給線である場合に顕著である。

　・実施形態の端子付電線１によれば、作業者は、端子１５の電気接触部２１を接続相手２０に固定する作業（締結部２７の締め付け）を第１の作業方向から行ってよく、カシメバンド１６で筒部１９を締め付ける作業（ネジ部３２の締め付け）を第２の作業方向から行ってよく、第２の作業方向は第１の作業方向と同じであってよい。この構成によれば、作業者は、端子１５の電気接触部２１を接続相手２０に固定する作業（締結部２７の締め付け）と、カシメバンド１６で筒部１９を締め付ける作業（ネジ部３２の締め付け）とを同じ方向から実施することができ、端子付電線１の組付け作業スペースの点で有利である。

　本開示は、以下の実装例を包含する。限定のためでなく、理解の補助として例示的な実施形態のいくつかの構成要素の参照符号を付した。以下の実装例において記述した事項のうちの一部を省略してもよく、実装例において記述した事項のうちのいくつかを選択または抽出して組合せてもよい。

　［付記１］本開示のいくつかの態様に従う端子付電線（１）は、
　導体（１２）を有する電線（１４）と、
　前記電線（１４）の前記導体（１２）を保持するためのスリット付き導体ホルダ（１９）を有する端子（１５）と、
　前記電線（１４）の前記導体（１２）と前記端子（１５）の前記スリット付き導体ホルダ（１９）とを脱離不能に連結するために、前記スリット付き導体ホルダ（１９）の外側から前記スリット付き導体ホルダ（１９）に取付けられる締結要素（１６）とを備えることができ、
　前記締結要素（１６）が前記端子（１５）の前記スリット付き導体ホルダ（１９）を介して前記導体（１２）をゼロ以上の比較的小さい第１の締結力をもって締結するとき、前記電線（１４）の前記導体（１２）の径方向外向き面と前記端子（１５）の前記スリット付き導体ホルダ（１９）の径方向内向き面とは、第１の摩擦力で接触し、少なくとも長手方向にスライド可能であってよく、
　前記締結要素（１６）が前記端子（１５）の前記スリット付き導体ホルダ（１９）を介して前記導体（１２）を前記第１の締結力よりも大きい第２の締結力をもって締結するとき、前記電線（１４）の前記導体（１２）の径方向外向き面と前記端子（１５）の前記スリット付き導体ホルダ（１９）の径方向内向き面とは、前記第１の摩擦力よりも大きい第２の摩擦力で接触し、少なくとも長手方向にスライド不能であってよく、
　前記締結要素（１６）が前記端子（１５）の前記スリット付き導体ホルダ（１９）を介して前記導体（１２）を前記第１の締結力と前記第２の締結力との間の中間締結力である第３の締結力をもって締結するとき、前記電線（１４）の前記導体（１２）の径方向外向き面と前記端子（１５）の前記スリット付き導体ホルダ（１９）の径方向内向き面とは、前記第１の摩擦力と前記第２の摩擦力との間の中間摩擦力である第３の摩擦力で接触し、少なくとも長手方向にスライド可能であってよく、
　前記締結要素（１６）は、前記導体（１２）に印加する締結力を、少なくとも前記第１の締結力と前記第３の締結力との間で可逆的に調整可能に構成されてよい。

　［付記２］いくつかの態様では、前記締結要素（１６）は、前記導体（１２）に印加する締結力を、少なくとも前記第１の締結力と前記第３の締結力との間でステップレスに調整可能に構成されてよい。

　［付記３］いくつかの態様では、前記締結要素（１６）によって締め付けられていない状態の前記スリット付き導体ホルダ（１９）は、前記導体（１２）と前記スリット付き導体ホルダ（１９）とが脱離可能な状態のままで、前記電線（１４）の前記導体（１２）の前記径方向外向き面を弾性的に押圧するように構成されてよい。

　１…端子付電線
　２…車両
　３…高圧電線
　４…低圧電線
　５～８…機器
　９…クランプ
　１２…導体
　１３…被覆材
　１４…電線
　１５…端子
　１６…カシメバンド
　１９…筒部
　２０…接続相手
　２０ａ…端子台
　２１…電気接触部
　２２…開口
　２３…スリット部
　２４…位置決め部
　２７…締結部
　２８…孔
　２９…バンド本体部
　３０…調整部
　３１…治具
　３２…ネジ部
　３３…締結穴

Claims

　電線と、
　少なくとも１箇所にスリット部が形成された筒部の内部に前記電線の端部が嵌挿され、接続相手に電気接続される端子と、
　前記電線が嵌挿された前記筒部を、かしめによって前記電線と固定するカシメバンドとを備える端子付電線。
　前記電線は、端部が被覆材に覆われずに導体が露出する形状に形成され、
　前記端子は、前記電線の端部において前記導体が露出する箇所に前記筒部が前記カシメバンドによって取り付け固定されている
請求項１に記載の端子付電線。
　前記筒部の外周面には、前記カシメバンドの取り付け位置を案内する位置決め部が形成されている
請求項１又は請求項２に記載の端子付電線。
　前記端子は、前記筒部と、前記接続相手に電気接続される箇所となる電気接触部とを備える形状に形成され、
　前記電気接触部には、前記端子を前記接続相手に固定する際の締結部を通す真円又は正多角形状の孔が形成されている
請求項１から請求項３のいずれか一項に記載の端子付電線。
　前記端子及び前記カシメバンドの組は、前記電線の両端の少なくとも一方に設けられている
請求項１から請求項４のいずれか一項に記載の端子付電線。
　前記端子は、前記筒部の軸方向に沿って延びる前記スリット部が、径方向において対向するように一対設けられた形状に形成されている
請求項１から請求項５のいずれか一項に記載の端子付電線。
　前記端子は、前記筒部の軸方向に沿って延びる前記スリット部を１つのみ有する形状に形成されている
請求項１から請求項５のいずれか一項に記載の端子付電線。