WO2020217903A1 - 混合組成物 - Google Patents

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  • the film obtained by using the composition in which the organosilicon compound is mixed may be destroyed when subjected to friction or the like, and the droplets may easily adhere or the adhered droplets may not be easily removed. was there.
  • Trimethylsilyloxytrialkoxysilane Trimethylsilyloxytrialkoxysilane; alkyltrialkoxysilanes such as methyltrimethoxysilane, ethyltrimethoxysilane, methyltriethoxysilane, ethyltriethoxysilane, methyltripropoxysilane; alkenyltri such as vinyltrimethoxysilane, vinyltriethoxysilane Alkoxysilanes; trialkoxysilanes such as trimethoxysilanes, triethoxysilanes and tripropoxysilanes; dialkoxyalkylsilanes such as dimethoxymethylsilanes and diethoxymethylsilanes.

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Abstract

少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A)と、金属化合物(B)と、酸(C)と、水(D)との混合組成物であり、前記水(D)に対する前記酸(C)のモル比(C/D)が、0.002~0.15である混合組成物。

Description

混合組成物
 本発明は、有機ケイ素化合物と金属化合物の混合組成物に関する。
 各種の表示装置、光学素子、半導体素子、建築材料、自動車部品、ナノインプリント技術等において、基材の表面に液滴(特に、水滴)が付着すると、基材が汚れたり、腐食したり、さらにこの汚れや腐食に由来する性能低下等の問題が生じることがある。そのためこれらの分野においては、基材表面の撥水・撥油性が良好であることが求められている。
 基材表面の撥水・撥油性を高められる皮膜を形成するための組成物として、有機ケイ素化合物を混合した混合組成物が知られている。例えば、特許文献1には、少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物、及び加水分解性基が金属原子に結合している金属化合物を混合したコーティング組成物が開示されている。この文献には、該コーティング組成物から得られる皮膜は、撥水・撥油性、耐光性、耐熱性などが良好であることが開示されている。また、特許文献2には、トリアルキルシリル基を少なくとも1つと、加水分解性ケイ素基を2つ以上有する有機ケイ素化合物、及び金属原子に加水分解性基が少なくとも1つ結合している金属化合物の混合組成物が開示されている。この文献には、該混合組成物を用いることによって、撥水性に加え、耐熱性及び耐光性が良好な皮膜を提供できることが開示されている。
 ところで、有機ケイ素化合物が混合された組成物を用いて得られる皮膜は、摩擦等を受けると破壊されることがあり、液滴が付着しやすくなったり、付着した液滴が除去されにくくなる場合があった。
 一方、特許文献3には、n-デシルトリメトキシシラン又はトリス(トリメトキシシリルオキシ)シロキシ-ポリジメチルシロキシ-トリメトキシシランなどの有機ケイ素化合物と、カルボン酸化合物と、酸触媒との混合組成物が開示されている。この文献には、有機ケイ素化合物がn-デシルトリメトキシシランの場合、皮膜の耐摩耗性が向上することが開示されている。
国際公開第2016/068138号 特開2017-119849号公報 特開2018-172660号公報
 しかし、さらなる耐摩耗性の向上が求められる。
 本発明は、上記の様な事情に着目してなされたものであって、撥水・撥油性に優れ、さらに耐摩耗性にも優れた皮膜を実現できる組成物を提供することを目的とする。
 本発明は、以下の発明を含む。
 [1] 少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A)と、金属化合物(B)と、酸(C)と、水(D)との混合組成物であり、前記水(D)に対する前記酸(C)のモル比(C/D)が、0.002~0.15である混合組成物。
 [2] 前記有機ケイ素化合物(A)と前記金属化合物(B)の合計モル量に対する前記水(D)のモル量の比[D/(A+B)]が、3.1~130である[1]に記載の組成物。
 [3] 前記酸(C)の量が、0.0001~30質量%である[1]または[2]に記載の組成物。
 [4] 前記有機ケイ素化合物(A)が、下記式(a1)で表される化合物である[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
 [式(a1)中、複数のAa1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表し、Za1は、トリアルキルシリル基含有分子鎖、シロキサン骨格含有基、または炭化水素鎖含有基を表し、xは、0または1であり、Ra1は、トリアルキルシリル基含有分子鎖を表す。Za1およびRa1の該トリアルキルシリル基に含まれる水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。]
 [5] 前記有機ケイ素化合物(A)が、下記式(a2)で表される化合物である[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
 [式(a2)中、Aa1、Za1、xは、上記と同義である。Zs1は、-O-または2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-に置き換わっていてもよく、複数のRs2は、それぞれ独立に、炭素数が1~10のアルキル基を表し、n1は、1以上の整数であり、Ys1は、単結合または-Si(Rs22-Ls1-を表し、該Ls1は、2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-に置き換わっていてもよく、複数のRs1は、それぞれ独立に、炭化水素基またはトリアルキルシリルオキシ基を表す。]
 [6] 前記金属化合物(B)が、下記式(b1)で表される化合物である[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
  M(Rb10r(Ab1m-r  (b1)
 [式(b1)中、Mは、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、またはTaを表し、Rb10は、シロキサン骨格含有基、炭化水素鎖含有基、または水素原子を表し、rは、0または1である。複数のAb1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表し、mは、金属原子Mの価数であって、3~5から選ばれる整数である。]
 [7] 前記金属化合物(B)が、下記式(b2)で表される化合物である[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
  Si(ORb11y4-y  (b2)
 [式(b2)中、Rb11は、炭素数1~6のアルキル基を表し、yは、3または4である。]
 [8] 溶剤(E)が混合されており、前記溶剤(E)の量が、10質量%以上である[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
 なお、前記混合組成物は、混合後、例えば保管中に反応が進んだものも含む。以下では、混合組成物を、単に組成物と呼ぶことがある。
 本発明の混合組成物を用いて得られる皮膜は、良好な撥水・撥油性および耐摩耗性を有する。
 以下、有機ケイ素化合物(A)、金属化合物(B)、酸(C)、および水(D)について順に説明する。
 1.有機ケイ素化合物(A)
 本発明における有機ケイ素化合物(A)は、少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、少なくとも1つの加水分解性基とが中心ケイ素原子に結合している。
 上記トリアルキルシリル基含有分子鎖とは、トリアルキルシリル含有基が分子鎖の末端に結合した構造を有する1価の基であり、分子鎖にトリアルキルシリル含有基が結合していることで、本発明の組成物から形成される皮膜の撥水・撥油性が向上し、特に水滴の滑落性が向上する。またトリアルキルシリル基含有分子鎖が存在することで、液滴(水滴等)と該皮膜の間の摩擦が低減され、液滴が移動しやすくなる。トリアルキルシリル含有基のアルキル基がフルオロアルキル基に置き換わっている場合においても、同様に該皮膜界面(表面)の撥水・撥油性(特に、水滴の滑落性)を向上することができる。
 上記トリアルキルシリル含有基に含まれるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましく、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2である。
 上記トリアルキルシリル基含有分子鎖において、トリアルキルシリル含有基が結合している分子鎖としては、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
 上記トリアルキルシリル含有基が結合している分子鎖は、ジアルキルシロキサン鎖を含むことが好ましく、直鎖状ジアルキルシロキサン鎖を含むことがより好ましい。また、ジアルキルシロキサン鎖を含む上記分子鎖は、2価の炭化水素基を含んでいてもよい。該分子鎖の一部が2価の炭化水素基であっても、残部がジアルキルシロキサン鎖であるため、得られる皮膜の化学的・物理的耐久性が良好である。
 上記有機ケイ素化合物(A)において、中心ケイ素原子に結合するトリアルキルシリル基含有分子鎖の個数は、1以上であり、3以下が好ましく、より好ましくは2以下である。中心ケイ素原子に結合するトリアルキルシリル基含有分子鎖の個数は、1が特に好ましい。
 上記加水分解性基とは、加水分解によってヒドロキシ基を与える基(ケイ素原子と結合してシラノール基となる基)であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基;ヒドロキシ基;アセトキシ基;塩素原子;イソシアネート基;等を好ましく挙げることができる。これらの中でも、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1または2のアルコキシ基がより好ましい。
 上記有機ケイ素化合物(A)において、中心ケイ素原子に結合する加水分解性基の個数は、1以上であり、2以上が好ましく、通常、3以下が好ましい。
 上記有機ケイ素化合物(A)の中心ケイ素原子には、トリアルキルシリル基含有分子鎖、加水分解性基のほか、シロキサン骨格含有基(好ましくは、トリアルキルシリル基含有分子鎖の分子鎖を構成する原子の数よりも少ない原子の数のシロキサン骨格含有基)、または炭化水素鎖含有基(好ましくは、トリアルキルシリル基含有分子鎖の分子鎖を構成する原子の数よりも少ない炭素数の炭化水素鎖を含有する炭化水素鎖含有基)が結合していてもよい。
 本発明の組成物は、上記有機ケイ素化合物(A)を2種以上含んでいてもよい。
 上記有機ケイ素化合物(A)は、具体的には、下記式(a1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 [式(a1)中、複数のAa1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表し、Za1は、トリアルキルシリル基含有分子鎖、シロキサン骨格含有基、または炭化水素鎖含有基を表し、xは、0または1であり、Ra1は、トリアルキルシリル基含有分子鎖を表す。Za1およびRa1の該トリアルキルシリル基に含まれる水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。]
 上記式(a1)中、複数のAa1は、それぞれ独立に、加水分解性基であり、加水分解によってヒドロキシ基を与える基(ケイ素原子と結合してシラノール基となる基)であればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基;ヒドロキシ基;アセトキシ基;塩素原子;イソシアネート基;等を好ましく挙げることができる。これらの中でも、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1または2のアルコキシ基がより好ましい。
 上記式(a1)中、Ra1は、トリアルキルシリル基含有分子鎖であり、上述した通り、トリアルキルシリル含有基が分子鎖の末端に結合した構造を有する1価の基である。上記トリアルキルシリル含有基は、少なくとも1つのトリアルキルシリル基を含む基であり、好ましくは2つ以上、さらに好ましくは3つのトリアルキルシリル基を含む基である。
 上記トリアルキルシリル含有基は、下記式(s1)で表される基が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 [上記式(s1)中、複数のRs1は、それぞれ独立に、炭化水素基またはトリアルキルシリルオキシ基を表し、該炭化水素基またはトリアルキルシリルオキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。*は結合手を表す。]
 上記Rs1が炭化水素基である場合、その炭素数は、1~4が好ましく、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2である。
 上記Rs1が炭化水素基である場合、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
 上記式(s1)において、上記Rs1の少なくとも1つがトリアルキルシリルオキシ基であるか、上記Rs1が全てアルキル基であることが好ましい。
 複数のRs1は、同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
 Rs1が全て炭化水素基(特にアルキル基)である場合、3つのRs1の合計の炭素数は、9以下が好ましく、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。3つのRs1のうち少なくとも1つがメチル基であることが好ましく、少なくとも2つがメチル基であることがより好ましく、3つのRs1全てがメチル基であることが特に好ましい。
 上記Rs1が全て炭化水素基(アルキル基)である基(トリアルキルシリル基)としては、具体的には、下記式で表される基等が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 また、上記式(s1)において、Rs1の少なくとも1つがトリアルキルシリルオキシ基である場合、上記トリアルキルシリルオキシ基としては、Rs1が全て炭化水素基(アルキル基)である基(トリアルキルシリル基)のケイ素原子に酸素原子が結合している基が挙げられる。上記式(s1)において、2個以上のRs1がトリアルキルシリルオキシ基であることが好ましく、3個のRs1がトリアルキルシリルオキシ基であることが更に好ましい。
 Rs1の少なくとも1つがトリアルキルシリルオキシ基である基としては、下記式で表される基が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 上記トリアルキルシリル基含有分子鎖において、トリアルキルシリル含有基は、分子鎖の末端(自由端側)、特に分子鎖の主鎖(最長直鎖)の末端(自由端側)に結合していることが好ましい。
 上記トリアルキルシリル含有基が結合している分子鎖は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
 上記トリアルキルシリル含有基が結合している分子鎖は、ジアルキルシロキサン鎖を含むことが好ましく、直鎖状ジアルキルシロキサン鎖を含むことがより好ましい。また、ジアルキルシロキサン鎖を含む上記分子鎖は、2価の炭化水素基を含んでいてもよい。該分子鎖の一部が2価の炭化水素基であっても、残部がジアルキルシロキサン鎖であるため、得られる皮膜の化学的・物理的耐久性が良好である。
 上記トリアルキルシリル含有基が結合している分子鎖は、下記式(s2)で表される基が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 [式(s2)中、Zs1は、-O-または2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-に置き換わっていてもよく、複数のRs2は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基を表し、n1は、1以上の整数であり、Ys1は、単結合または-Si(Rs22-Ls1-を表し、該Ls1は、2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-に置き換わっていてもよい。上記式(s2)において、左側の*は、中心ケイ素原子との結合手を表し、右側の*は、トリアルキルシリル含有基との結合手を表す。]
 上記Rs2で表されるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましく、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2である。
 n1は、1~100の整数が好ましく、より好ましくは1~80の整数、さらに好ましくは1~60の整数、特に好ましくは1~50の整数、最も好ましくは1~30の整数である。
 Zs1またはLs1で表される2価の炭化水素基の炭素数は、1~10が好ましく、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4である。前記2価の炭化水素基は、鎖状が好ましく、鎖状である場合、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。また、前記2価の炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルカンジイル基が好ましい。前記2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
 さらに、前記2価の炭化水素基に含まれる一部の-CH2-は、-O-に置き換わっていてもよい。この場合、連続する2つの-CH2-が同時に-O-に置き換わることはなく、Si原子に隣接する-CH2-が-O-に置き換わることはない。2つ以上の-CH2-が-O-に置き換わっている場合、-O-と-O-の間の炭素数は、2~4が好ましく、2または3がさらに好ましい。前記2価の炭化水素基の一部が-O-に置き換わった基としては、具体的には、(ポリ)エチレングリコール単位を有する基、(ポリ)プロピレングリコール単位を有する基等を例示することができる。
 前記式(s2)において、Zs1が-O-であり、Ys1が単結合であること、すなわち前記分子鎖は、ジアルキルシリルオキシ基の繰り返しのみからなることが好ましい。ジアルキルシロキサン鎖がジアルキルシリルオキシ基の繰り返しのみからなる場合、得られる皮膜の化学的・物理的耐久性が良好である。
 トリアルキルシリル基含有分子鎖に含まれる分子鎖としては、下記式で表される分子鎖を挙げることができる。下記式中、q1は、1以上の整数を表し、*は、中心ケイ素原子またはトリアルキルシリル含有基に結合する結合手を表すものとする。q1は、上記n1と同じ数値範囲であり、好ましい範囲も同じである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
 また、トリアルキルシリル基含有分子鎖を構成する原子の合計数は、24以上が好ましく、より好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。また、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、さらに好ましくは2000以下、さらにより好ましくは1200以下、特に好ましくは700以下、最も好ましく250以下である。
 上記トリアルキルシリル基含有分子鎖は、下記式(s3)で表される基が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
 [式(s3)中、Zs1、Rs2、n1、Ys1、Rs1は、上記と同義である。*は、中心ケイ素原子との結合手を表す。]
 上記トリアルキルシリル基含有分子鎖は、下記式(s3-1)または下記式(s3-2)で表される基が好ましく、下記式(s3-2)で表される基がより好ましい。
 上記トリアルキルシリル基含有分子鎖が、下記式(s3-1)で表される場合、下記式(s3-1-1)で表される基がより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 [式(s3-1)および式(s3-1-1)中、Zs1、Rs2、n1、Ys1は、上記と同義である。Rs3は、炭素数1~4のアルキル基を表す。*は、中心ケイ素原子との結合手を表す。]
 Rs3で表されるアルキル基の炭素数は、1~3が好ましく、より好ましくは1または2である。また、式(s3-1)及び式(s3-1-1)中、-Si(Rs33に含まれるRs3の合計の炭素数は、9以下が好ましく、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。さらに、-Si(Rs33に含まれるRs3のうち、Rs3は少なくとも1つがメチル基であることが好ましく、2つ以上のRs3がメチル基であることがより好ましく、3つのRs3全てがメチル基であることが特に好ましい。
 上記トリアルキルシリル基含有分子鎖が、下記式(s3-2)で表される場合、下記式(s3-2-1)で表される基がより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
 [上記式(s3-2)および式(s3-2-1)中、Zs1、Rs2、n1、Ys1は、上記と同義である。Rs4は、炭素数1~4のアルキル基を表す。*は、中心ケイ素原子との結合手を表す。]
 Rs4で表される炭素数1~4のアルキル基としては、上記Rs3で説明した基が挙げられ、その好ましい範囲も同様である。
 Rs4で表されるアルキル基の炭素数は、1~3が好ましく、より好ましくは1または2である。また、-Si(Rs43に含まれるRs4の合計の炭素数は、9以下が好ましく、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。さらに、-Si(Rs43に含まれるRs4のうち、少なくとも1つがメチル基であることが好ましく、2つ以上のRs4がメチル基であることがより好ましく、3つのRs4全てがメチル基であることが特に好ましい。
 上記トリアルキルシリル基含有分子鎖としては、具体的には、下記式(s3-I)で表される基が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
 [上記式(s3-I)中、*は中心ケイ素原子との結合手を表す。]
 上記式(s3-I)中、Zs10、Rs20、n10、Ys10、Rs10は、下記表1、2に示す組み合わせが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000017
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000018
 上記表1、表2に示したn10は、好ましくは1~30である。
 また、上記式(a1)中、Za1は、トリアルキルシリル基含有分子鎖、シロキサン骨格含有基、または炭化水素鎖含有基を表す。
 Za1がトリアルキルシリル基含有分子鎖である場合は、上記Ra1と同様のものが挙げられる。
 Za1がシロキサン骨格含有基である場合、前記シロキサン骨格含有基は、シロキサン単位(Si-O-)を含有する1価の基であり、Ra1のトリアルキルシリル基含有分子鎖を構成する原子の数よりも少ない数の原子で構成されるものであることが好ましい。これにより、シロキサン骨格含有基は、トリアルキルシリル基含有分子鎖よりも長さが短いか、立体的な広がり(かさ高さ)が小さな基となる。シロキサン骨格含有基には、2価の炭化水素基が含まれていてもよい。
 上記シロキサン骨格含有基は、下記式(s4)で表される基が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
 [式(s4)中、Zs1、Rs2、およびYs1は上記と同義である。Rs5は、炭化水素基またはヒドロキシ基を表し、該炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-に置き換わっていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は、フッ素原子に置換されていてもよい。n3は、0~5の整数を表す。*は、中心ケイ素原子との結合手を表す。]
 Rs5で表される炭化水素基としては、Rs1で表される炭化水素基と同様の基が挙げられ、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
 Rs5で表される炭化水素基の炭素数は、1~4が好ましく、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2である。
 n3は、1~5の整数が好ましく、より好ましくは1~3の整数である。
 上記シロキサン骨格含有基の原子の数の合計は、600以下が好ましく、より好ましくは500以下、さらに好ましくは350以下、さらにより好ましくは100以下、特に好ましくは50以下、最も好ましくは30以下であり、また10以上が好ましい。また、Ra1のトリアルキルシリル基含有分子鎖とZa1のシロキサン骨格含有基の原子の数の差は、10以上が好ましく、より好ましくは20以上であり、1000以下が好ましく、より好ましくは500以下、さらに好ましくは200以下である。
 上記シロキサン骨格含有基としては、具体的には、下記式で表される基が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
 Za1が炭化水素鎖含有基である場合、Ra1におけるトリアルキルシリル基含有分子鎖の分子鎖を構成する原子の数よりも炭化水素鎖部分の炭素数が少ないものであることが好ましい。また、トリアルキルシリル基含有分子鎖の最長直鎖を構成する原子の数よりも、炭化水素鎖の最長直鎖の炭素数が少ないものであることが好ましい。炭化水素鎖含有基は、少なくとも一部に炭化水素基を有する基を意味し、通常、炭化水素基(炭化水素鎖)のみから構成されるが、必要により、この炭化水素鎖の一部のメチレン基(-CH2-)が酸素原子に置き換わった基であってもよい。また、Si原子に隣接するメチレン基(-CH2-)は酸素原子に置き換わることはなく、また連続する2つのメチレン基(-CH2-)が同時に酸素原子に置き換わることもない。
 なお、炭化水素鎖部分の炭素数とは、酸素非置換型の炭化水素鎖含有基では炭化水素基(炭化水素鎖)を構成する炭素原子の数を意味し、酸素置換型の炭化水素鎖含有基では、酸素原子をメチレン基(-CH2-)と仮定して数えた炭素原子の数を意味するものとする。
 以下、特に断りがない限り、酸素非置換型の炭化水素鎖含有基(すなわち1価の炭化水素基)を例にとって炭化水素鎖含有基について説明するが、いずれの説明でも、そのメチレン基(-CH2-)のうち一部を酸素原子に置き換えることが可能である。
 前記炭化水素鎖含有基は、それが炭化水素基の場合には、炭素数は1以上、3以下が好ましく、より好ましくは1である。また、前記炭化水素鎖含有基は、分岐鎖であっても直鎖であってもよい。前記炭化水素鎖含有基は、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素鎖含有基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素鎖含有基がより好ましい。前記飽和脂肪族炭化水素鎖含有基としては、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。飽和脂肪族炭化水素基には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が含まれる。
 飽和脂肪族炭化水素基の一部のメチレン基(-CH2-)が酸素原子に置き換わる場合、具体的には、(ポリ)エチレングリコール単位を有する基等を例示することができる。
 上記式(a1)中、xは、好ましくは0である。
 上記有機ケイ素化合物(A)は、下記式(a2)で表される化合物が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
 [式(a2)中、Aa1、Za1、x、Zs1、Rs2、n1、Ys1、Rs1は、それぞれ上記と同義である。]
 上記式(a2)において、上記n1は、1~60の整数が好ましい。上記n1は、より好ましくは2以上の整数、更に好ましくは3以上の整数であり、より好ましくは50以下の整数、更に好ましくは40以下の整数、特に好ましくは30以下の整数、最も好ましくは25以下の整数である。
 上記式(a2)で表される有機ケイ素化合物(A)は、下記式(a2-1)または下記式(a2-2)で表されるものが好ましく、下記式(a2-2)で表されるものがより好ましい。
 上記式(a2)で表される有機ケイ素化合物(A)が、下記式(a2-1)で表される場合、下記式(a2-1-1)で表される化合物がより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
 [式(a2-1)および式(a2-1-1)中、Aa1、Zs1、Rs2、n1、Ys1、Rs3は、上記と同義である。]
 上記式(a2)で表される有機ケイ素化合物(A)が、下記式(a2-2)で表される場合、下記式(a2-2-1)で表される化合物がより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
 [式(a2-2)および式(a2-2-1)中、Aa1、Zs1、Rs2、n1、Ys1、Rs4は、上記と同義である。]
 上記式(a2)で表される有機ケイ素化合物(A)は、具体的には、式(A-I)で表される化合物が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
 上記式(A-I)において、Aa10、Zs10、Rs20、n10、Ys10、Rs10は、下記表3-1、3-2、4-1、4-2に示す組み合わせが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000025
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000026
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000027
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000028
 上記表3-1、表3-2、表4-1、表4-2に示したn10は、好ましくは1~30である。
 上記式(A-I)の中でも、(A-I-26)で表されるものがより好ましい。すなわち、上記式(a2)で表される有機ケイ素化合物(A)としては、下記式(a3)で表されるものが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000029
 [式(a3)中、n2は、1~60の整数である。]
 上記n2は、より好ましくは2以上の整数、更に好ましくは3以上の整数であり、より好ましくは50以下の整数、更に好ましくは45以下の整数、特に好ましくは30以下の整数、最も好ましくは25以下の整数である。
 上記有機ケイ素化合物(A)の量は、組成物の全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.015質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、0.5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.4質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。上記の有機ケイ素化合物(A)の量は、組成物の調製時に調整できる。また、前記有機ケイ素化合物(A)の量は、組成物の分析結果から算出してもよい。なお、本明細書において、各成分の量、質量比またはモル比の範囲を記載している場合、上記と同様に、該範囲は、組成物の調製時に調整できる。
 上記有機ケイ素化合物(A)の合成方法としては、特開2017-201009号公報に記載の方法が挙げられる。
 2.金属化合物(B)
 本発明の組成物に係る金属化合物(B)は、金属を含む化合物であり、上記有機ケイ素化合物(A)と混合することによりスペーサーとして機能し、上述したトリアルキルシリル基を適度に分散させることにより皮膜の撥水・撥油性を向上できると考えられる。
 上記金属化合物(B)は、金属原子に加水分解性基が少なくとも1つ結合していることが好ましい。
 上記金属化合物(B)は、下記式(b1)で表される化合物が好ましい。
  M(Rb10r(Ab1m-r  (b1)
 [式(b1)中、Mは、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、またはTaを表し、Rb10は、シロキサン骨格含有基、炭化水素鎖含有基、または水素原子を表し、rは、0または1である。複数のAb1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表し、mは、金属原子Mの価数であって、3~5から選ばれる整数である。]
 上記式(b1)で表される化合物は、金属原子Mに、少なくとも加水分解性基Ab1が結合した化合物である。なお、本明細書において「金属」とは、SiやGeなどの半金属も含む意味で用いる。
 上述の通り、本発明の組成物から得られる皮膜は、有機ケイ素化合物(A)に由来するトリアルキルシリル基によって撥水・撥油機能が高められ、金属化合物(B)に基づく構造は皮膜中でスペーサーとして機能すると考えられる。
 上記金属原子Mは、Al、Si、Ti、Sn、またはZrが好ましく、Al、Si、Ti、またはZrがより好ましく、Siが更に好ましい。
 上記シロキサン骨格含有基とは、少なくとも一部にシロキサン骨格含有基を有する基であり、上記炭化水素鎖含有基とは、少なくとも一部に炭化水素鎖を有する基であればよい。
 なお、上記金属原子MがSiの場合、Rb10のシロキサン骨格含有基は、ジアルキルシロキサン鎖を含まない基であることが好ましい。
 上記Ab1で表される加水分解性基、およびRb10で表されるシロキサン骨格含有基、炭化水素鎖含有基は、上記有機ケイ素化合物(A)で説明した加水分解性基、シロキサン骨格含有基、および炭化水素鎖含有基の中から適宜選択でき、好ましい範囲も同様である。
 上記mは金属原子Mの価数であり、金属原子MがAl、Fe、In等の3価金属の場合には3であり、金属原子MがGe、Hf、Si、Ti、Sn、Zr等の4価金属の場合には4であり、金属原子MがTa等の5価金属の場合には5である。
 本発明の組成物は、上記金属化合物(B)を2種以上混合されていてもよい。
 上記金属化合物(B)としては、r=0、すなわち金属原子Mに加水分解性基Ab1のみが結合した金属化合物B1;または、r=1、すなわち金属原子Mに、シロキサン骨格含有基、炭化水素鎖含有基、または水素原子が1つと、加水分解性基Ab1が2つ以上結合した金属化合物B2;が挙げられる。
 (金属化合物B1)
 金属原子Mに、加水分解性基Ab1のみが結合した金属化合物B1としては、具体的には、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のトリアルコキシアルミニウム;トリエトキシ鉄等のトリアルコキシ鉄;トリメトキシインジウム、トリエトキシインジウム、トリプロポキシインジウム、トリブトキシインジウム等のトリアルコキシインジウム;テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラプロポキシゲルマニウム、テトラブトキシゲルマニウム等のテトラアルコキシゲルマニウム;テトラメトキシハフニウム、テトラエトキシハフニウム、テトラプロポキシハフニウム、テトラブトキシハフニウム等のテトラアルコキシハフニウム;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン;テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラプロポキシスズ、テトラブトキシスズ等のテトラアルコキシスズ;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のテトラアルコキシジルコニウム;ペンタメトキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、ペンタプロポキシタンタル、ペンタブトキシタンタル等のペンタアルコキシタンタル;等が挙げられる。
 (金属化合物B2)
 金属原子Mに、シロキサン骨格含有基、炭化水素鎖含有基、または水素原子が1つと、加水分解性基Ab1が2つ以上結合した金属化合物B2は、金属原子Mが4価の金属(Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr等)であることが好ましく、金属原子MがSiの場合の具体例としては、トリメチルシリルオキシトリメトキシシラン、トリメチルシリルオキシトリエトキシシラン、トリメチルシリルオキシトリプロポキシシラン等のトリメチルシリルオキシトリアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン等のトリアルコキシシラン;ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン等のジアルコキシアルキルシラン等が挙げられる。
 上記金属化合物(B)としては、具体的には、下記式(b2)で表される化合物が好ましい。
  Si(ORb11y4-y  (b2)
 [式(b2)中、Rb11は、炭素数1~6のアルキル基を表し、yは、3または4である。]
 Rb11で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
 Rb11で表されるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましく、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2である。
 上記金属化合物(B)の量は、組成物の全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、5質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
 上記有機ケイ素化合物(A)と上記金属化合物(B)との量の合計(A+B)は、組成物の全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上であり、3質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。
 上記有機ケイ素化合物(A)に対する上記金属化合物(B)のモル比(B/A)は、2~500が好ましい。上記モル比(B/A)は、8以上がより好ましく、更に好ましくは10以上、特に好ましくは15以上、最も好ましくは20以上であり、200以下がより好ましく、更に好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。
 3.酸(C)
 上記酸(C)は、無機酸でも有機酸でもよく、具体的には、硝酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、マロン酸、ギ酸、安息香酸、フェニルエタン酸、酢酸、ブタン酸、2-メチルプロパン酸、プロパン酸、2,2-ジメチルプロパン酸などが挙げられる。
 上記酸(C)は、1種のみを含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。上記酸(C)としては、有機酸が好ましく、より好ましくはマレイン酸、リン酸、マロン酸、酢酸である。
 上記酸(C)の量は、組成物の全体を100質量%としたとき、30質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。上記酸(C)の量の下限は、組成物の全体を100質量%としたとき、0質量%超であり、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上である。
 上記酸(C)は、第1解離時のpKaが1以上であることが好ましく、皮膜形成時の反応を穏やかに進行させることができ、良好な皮膜を形成できる。上記pKaとは、酸解離定数であり、上記酸(C)の第1解離時におけるpKaは、1.5以上が好ましく、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3.5以上である。上記酸(C)の第1解離時におけるpKaの上限は特に限定されず、例えば、10以下が好ましく、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
 上記酸(C)として、第1解離時のpKaが1以上の酸を使用する場合、第1解離時のpKaが1未満の酸を併用してもよく、併用しなくてもよい。第1解離時のpKaが1未満の酸を使用する場合は、該第1解離時のpKaが1未満の酸の量は、組成物の全体を100質量%としたとき、2.0質量%未満が好ましく、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下である。
 上記酸(C)のpKaは、具体的には、マレイン酸pKa=1.92、リン酸pKa=2.12、マロン酸pKa=2.60、ギ酸pKa=3.75、安息香酸pKa=4.2、フェニルエタン酸pKa=4.31、酢酸pKa=4.76、ブタン酸pKa=4.83、2-メチルプロパン酸pKa=4.84、プロパン酸pKa=4.87、2,2-ジメチルプロパン酸pKa=5.03、硝酸pKa=-1.5、塩酸pKa=-8、である。
 上記酸(C)の量は、上記有機ケイ素化合物(A)と上記金属化合物(B)との量の合計(A+B)に対して[(C)/(A+B)]、0.05質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、20質量%以下が好ましく、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である。
 4.水(D)
 本発明では、上記水(D)に対する上記酸(C)のモル比(C/D)が0.002~0.15であるこのモル比(C/D)を制御することによって、撥水・撥油性と耐摩耗性を両立できる。
 上記水(D)に対する上記酸(C)のモル比(C/D)は、0.003以上が好ましく、より好ましくは0.004以上であり、0.1以下が好ましく、より好ましくは0.8以下である。
 上記水(D)の量は、組成物の全体を100質量%としたとき、0質量%超、2.0質量%以下が好ましい。上記水の量を、2.0質量%以下とすることによって、皮膜形成時の反応を穏やかに進行させることができ、良好な皮膜を形成できる。上記水(D)の量は、組成物の全体を100質量%としたとき、1.5質量%以下が好ましく、より好ましくは1.0質量%以下であり、0.005質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.015質量%以上である。
 上記有機ケイ素化合物(A)と上記金属化合物(B)の合計モル量(A+B)に対する上記水(D)のモル量の比[D/(A+B)]は、3.1~130が好ましい。上記比[D/(A+B)]は、3.15以上がより好ましく、更に好ましくは11以上であり、100以下がより好ましく、更に好ましくは50以下である。
 本発明の混合組成物は、上記した有機ケイ素化合物(A)と、金属化合物(B)と、酸(C)と、水(D)とが混合された組成物であり、それら(A)~(D)を混合することにより得ることができる。
 5.溶剤(E)
 本発明の組成物には、溶剤(E)が用いられていてもよい。上記溶剤(E)は、水以外の溶剤を意味し、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒等が挙げられる。上記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。上記エーテル系溶媒としては、例えば、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)等が挙げられる。上記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。上記アミド系溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの中でも、アルコール系溶媒またはエーテル系溶媒が好ましく、アルコール系溶媒がより好ましい。
 上記溶剤(E)の量は、組成物の全体を100質量%としたとき、10質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、99.95質量%以下が好ましく、より好ましくは99.90質量%以下、更に好ましくは99.88質量%以下である。
 本発明の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、例えば、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤、抗菌剤、生物付着防止剤、消臭剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤等の各種の添加剤を共存させてもよい。
 本発明の組成物を硬化することによって、膜が得られる。硬化した膜は、撥液層となり、撥水・撥油性および耐摩耗性に優れている。
 本発明の組成物を硬化した膜は、基板上に形成されていてもよい。
 本発明の組成物(以下、撥液層形成用組成物ということがある。)を基材と接触させる方法としては、例えば、組成物を基材にコーティングする方法が挙げられる。具体的には、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコート法、バーコート法、手塗り(布等に液を染み込ませ、基材に塗りこむ方法)、かけ流し(スポイトなどを用いて液を基材にそのままかけ、塗布する方法)、霧吹き(霧吹きを用いて基材に塗布する方法)などが挙げられる。特に、作業性の観点から、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、手塗り、かけ流し、霧吹きが好ましく、より好ましくはスピンコーティング法、手塗り、霧吹き、更に好ましくはスピンコーティング法である。
 本発明の撥液層形成用組成物を基材と接触させた状態で、空気中、常温で静置(例えば、10~48時間)するか、または1~10時間程度加熱(例えば、300℃以下、特に80~300℃)することで、加水分解性基の加水分解、および重縮合が促進され、基材上に皮膜を形成できる。
 上記皮膜(撥液層)の膜厚は、例えば、0.5~100nm程度とできる。
 本発明の撥液層形成用組成物を接触させる基材は特に限定されず、基材の形状は平面、曲面のいずれでもよいし、多数の面が組み合わさった三次元的構造でもよい。
 上記基材の材質も限定されず、有機系材料、無機系材料のいずれで構成されていてもよい。上記有機系材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂;等が挙げられる。上記無機系材料としては、例えば、セラミックス;ガラス;鉄、シリコン、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属;前記金属を含む合金;等が挙げられる。
 上記基材には予め易接着処理を施してもよい。上記易接着処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の親水化処理が挙げられる。また、樹脂、シランカップリング剤、テトラアルコキシシラン等によるプライマー処理を施してもよいし、ポリシラザンなどのガラス皮膜を基材に予め塗布しておいてもよい。
 本発明の撥液層形成用組成物から得られる撥液層と、上記基材との間に、さらに中間層を形成することが好ましい。すなわち、基材上に中間層形成用組成物から得られる中間層を形成し、この中間層の表面(基材とは反対側の表面)に上記撥液層形成用組成物から得られる撥液層を形成することが好ましい。
 上記中間層形成用組成物としては、例えば、ポリシラザン(F)を含有し、更に下記式(g1)で表される金属化合物およびその縮合物から選ばれる少なくとも1つの金属化合物(G)および/またはシロキサン鎖を含む化合物(H)が混合されている混合組成物が挙げられる。こうした中間層形成用組成物から得られる中間層を、上記撥液層と上記基材との間に形成することにより、基材上に撥液層のみを形成した場合と比べて、撥液層の形成反応が促進され、撥液層の架橋密度が高くなり、撥液層の耐摩耗性が著しく向上する。また、従来は撥液層を実用的な速度で形成する際に加熱が必要であったが、上記中間層を上記撥液層と上記基材との間に形成することにより、実用的な速度での撥液層の常温硬化が容易となる。
M(Rg10r(Ag1m-r  (g1)
 [式(g1)中、Mは、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、またはTaを表し、Rg10は、炭化水素鎖含有基、または水素原子を表し、rは、0または1である。複数のAg1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表し、mは、金属原子Mの価数であって、3~5から選ばれる整数である。]
 以下、中間層形成用組成物について説明する。
 11.ポリシラザン(F)
 上記中間層形成用組成物は、少なくともポリシラザン(F)を含有している。上記ポリシラザン(F)は、ケイ素-窒素結合を有する化合物であれば特に限定されないが、下記式(f1)で表される構造単位を有することが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000030
 [式(f1)中、Rf11、Rf12及びRf13は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基、又はアルキルシリル基を表す。]
 Rf11~Rf13で表される炭素数1~10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基;イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、メチルペンチル基、エチルペンチル基、メチルヘキシル基、エチルヘキシル基、プロピルヘキシル基、tert-オクチル基等の分岐状の飽和脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の環状の飽和脂肪族炭化水素基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、p-tert-ブチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、2,6-ジエチルフェニル基、2-メチル-6-エチルフェニル基等の芳香族炭化水素基;アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基等の上記に例示した炭化水素基を組合せた基が挙げられる。
 該炭素数1~10の炭化水素基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子;ヒドロキシ基;ニトロ基;アミノ基;シアノ基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクロイルオキシ基;環を形成する原子数が6~12のヘテロアリール基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1~3のアルコキシ基;環を形成する炭素数が6~12のアリールオキシ基等が挙げられる。
 Rf11~Rf13で表される炭素数1~10の炭化水素基としては、無置換の炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、無置換の炭素数1~6の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、無置換のメチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基であることが更に好ましく、メチル基であることが最も好ましい。
 Rf11~Rf13で表されるアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリn-プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt-ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
 上記ポリシラザン(F)は、前記式(f1)において、Rf11及びRf12の少なくとも一方が炭素数1~10の炭化水素基である構造単位(f2)を有する、つまり有機ポリシラザンであることが好ましい。また、Rf13は水素原子であることが好ましい。
 上記ポリシラザン(F)は、前記構造単位(f2)に加えて更に、下記式(f3)で表される構造単位を有することがより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000031
 [式(f3)中、Rf31及びRf32は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を表し、Yfは、炭素数1~10の2価の炭化水素基を表し、複数のXfは、それぞれ独立に、加水分解性基を表す。]
 Rf31及びRf32で表される炭素数1~10の炭化水素基としては、上記Rf11~Rf13で表される炭素数1~10の炭化水素基で説明した基と同様のものが挙げられる。中でも、炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~6の直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基であることが更に好ましい。
 Yfで表される2価の炭化水素基としては、その炭素数が1~4であることが好ましく、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。前記2価の炭化水素基は、鎖状であることが好ましく、鎖状である場合、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。また、前記2価の炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルカンジイル基であることが好ましい。前記2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
 さらに、前記2価の炭化水素基に含まれる一部の-CH2-は-O-に置き換わっていてもよい。この場合連続する2つの-CH2-が同時に-O-に置き換わることはなく、Si原子に隣接する-CH2-が-O-に置き換わることはない。2つ以上の-CH2-が-O-に置き換わっている場合、-O-と-O-の間の炭素原子数は、2~4であることが好ましく、2~3であることがさらに好ましい。2価の炭化水素基の一部が-O-に置き換わった基としては、具体的には、(ポリ)エチレングリコール単位を有する基、(ポリ)プロピレングリコール単位を有する基等を例示することができる。
 Xfで表される加水分解性基としては、加水分解によりヒドロキシ基(シラノール基)を与える基であればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基;ヒドロキシ基;アセトキシ基;塩素原子;イソシアネート基;等を好ましく挙げることができる。中でも、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~2のアルコキシ基がより好ましい。複数のXfは、同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
 前記式(f3)のSiXf 3基は、前記ポリシラザン(F)100質量%に対して、2質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。上限は限定されないが、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
 上記ポリシラザン(F)が有機ポリシラザンの場合、Si-Hの水素原子、及びSiに結合した炭素数1~10の炭化水素基の含有比は適宜選択できるが、例えば炭化水素基/水素原子のモル比は0.1~50であり、好ましくは0.2~10である。なお、これらのモル比は、NMR測定等から算出できる。
 上記ポリシラザン(F)の量は、組成物の全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、2.5質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下である。
 12.金属化合物(G)
 上記中間層形成用組成物には、下記式(g1)で表される金属化合物およびその縮合物から選ばれる少なくとも1つの金属化合物(G)が用いられていてもよい。
  M(Rg10r(Ag1m-r  (g1)
 [式(g1)中、Mは、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、またはTaを表し、Rg10は、炭化水素鎖含有基、または水素原子を表し、rは、0または1である。複数のAg1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表し、mは、金属原子Mの価数であって、3~5から選ばれる整数である。]
 上記金属化合物(G)は、上記式(g1)で表される通り、金属原子Mに、少なくとも加水分解性基Ag1が結合した化合物である。なお、本明細書において「金属」とは、SiやGeなどの半金属も含む意味で用いる。
 上記金属原子Mは、Al、Si、Ti、Sn、またはZrが好ましく、Al、Si、Ti、またはZrがより好ましく、Siが更に好ましい。
 上記Ag1で表される加水分解性基、および上記Rg10で表される炭化水素鎖含有基は、上記有機ケイ素化合物(A)で説明した加水分解性基、および炭化水素鎖含有基の中から適宜選択でき、好ましい範囲も同様である。
 上記mは金属原子Mの価数であり、金属原子MがAl、Fe、In等の3価金属の場合には3であり、金属原子MがGe、Hf、Si、Ti、Sn、Zr等の4価金属の場合には4であり、金属原子MがTa等の5価金属の場合には5である。
 上記中間層形成用組成物は、上記式(g1)で表される金属化合物およびその縮合物を2種以上含んでいてもよい。
 上記金属化合物(G)としては、r=0、すなわち金属原子Mに加水分解性基Ag1のみが結合した金属化合物G1;または、r=1、すなわち金属原子Mに、炭化水素鎖含有基、または水素原子が1つと、加水分解性基Ag1が2つ以上結合した金属化合物G2;が挙げられる。
 (金属化合物G1)
 金属原子Mに、加水分解性基Ag1のみが結合した金属化合物G1としては、具体的には、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のトリアルコキシアルミニウム;トリエトキシ鉄等のトリアルコキシ鉄;トリメトキシインジウム、トリエトキシインジウム、トリプロポキシインジウム、トリブトキシインジウム等のトリアルコキシインジウム;テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラプロポキシゲルマニウム、テトラブトキシゲルマニウム等のテトラアルコキシゲルマニウム;テトラメトキシハフニウム、テトラエトキシハフニウム、テトラプロポキシハフニウム、テトラブトキシハフニウム等のテトラアルコキシハフニウム;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン;テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラプロポキシスズ、テトラブトキシスズ等のテトラアルコキシスズ;テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等のテトラアルコキシジルコニウム;ペンタメトキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、ペンタプロポキシタンタル、ペンタブトキシタンタル等のペンタアルコキシタンタル;等が挙げられる。
 (金属化合物G2)
 金属原子Mに、炭化水素鎖含有基、または水素原子が1つと、加水分解性基Ag1が2つ以上結合した金属化合物G2は、金属原子Mが4価の金属(Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr等)であることが好ましく、金属原子MがSiの場合の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン等のトリアルコキシシラン;ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン等のジアルコキシアルキルシラン等が挙げられる。
 上記金属化合物(G)としては、具体的には、下記式(g2)で表される化合物およびその縮合物から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
  Si(ORg21z(Rg224-z  (g2)
 [式(g2)中、Rg21は、炭素数1~6のアルキル基を表し、Rg22は、炭化水素鎖含有基、または水素原子を表し、zは、3または4である。]
 上記Rg21で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。上記Rg21で表されるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましく、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1または2である。
 Rg22で表される炭化水素鎖含有基としては、上記Rg10で表される炭化水素鎖含有基で説明した基と同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様である。
 上記式(g1)で表される金属化合物の縮合物としては、例えば、複数の式(g1)で表される金属化合物間において、加水分解性基が加水分解・縮合反応することにより形成された化合物が挙げられる。複数の式(g1)で表される金属化合物は同一であっても異なっていてもよい。上記式(g1)で表される金属化合物が2~60個縮合した縮合物であることが好ましく、2~40個縮合した縮合物であることがより好ましく、2~20個縮合した縮合物であることが更に好ましく、2~10個縮合した縮合物であることが特に好ましい。上記式(g1)で表される金属化合物を加水分解縮合させて縮合物を得てもよいし、適宜市販のシロキサンオリゴマーやレジンを用いてもよい。
 上記金属化合物(G)は、上記式(g2)で表される化合物及びその縮合物から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
 上記式(g2)で表される化合物の縮合物としては、複数の式(g2)で表される金属化合物間において、(ORg21)基が加水分解・縮合反応することにより形成された化合物であることが好ましく、複数の式(g2)で表される金属化合物は同一であっても異なっていてもよい。式(g2)で表される化合物の縮合物としては、式(g2)で表される金属化合物が2~60個縮合した縮合物であることが好ましく、2~40個縮合した縮合物であることがより好ましく、2~20個縮合した縮合物であることがさらに好ましく、2~10個縮合した縮合物であることが特に好ましい。
 また、上記金属化合物(G)を2種以上用いてもよい。
 上記中間層形成用組成物に上記金属化合物(G)が用いられている場合、その量は、中間層形成用組成物の全体を100質量%としたとき、例えば、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、10質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
 上記中間層形成用組成物に上記金属化合物(G)が用いられている場合、上記ポリシラザン(F)と上記金属化合物(G)との合計量は、中間層形成用組成物の全体を100質量%としたとき、例えば、0.02質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
 13.シロキサン鎖を含む化合物(H)
 上記中間層形成用組成物には、シロキサン鎖を含む化合物(H)が用いられていてもよい。
 上記シロキサン鎖を含む化合物(H)は、シロキサン結合を少なくとも1つ有する化合物であれば特に限定されず、シロキサン鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。
 上記シロキサン鎖は、ジアルキルシロキサン鎖を含むことが好ましく、直鎖状ジアルキルシロキサン鎖を含むことがより好ましい。また前記シロキサン鎖は、シロキサン結合以外の2価の基をさらに含んでいてもよく、該2価の基としては、2価の炭化水素基、2価の炭化水素基の一部のメチレン基(-CH2-)が酸素原子に置き換わった基、及び-O-等が挙げられる。
 上記シロキサン鎖の末端には、シリル基が結合していることが好ましい。シリル基はケイ素原子に3つの置換基が結合した基であり、該置換基としては、水素原子、炭化水素鎖含有基、アルキルシリルオキシ基、アルキルシリル基とシロキサン鎖を含む基及び加水分解性基等が挙げられる。
 上記炭化水素鎖含有基は、少なくとも一部に炭化水素基を有する基を意味し、通常、炭化水素基(炭化水素鎖)のみから構成されるが、必要により、この炭化水素鎖の一部のメチレン基(-CH2-)が酸素原子に置き換わった基であってもよい。また、Si原子に隣接するメチレン基(-CH2-)は酸素原子に置き換わることはなく、また連続する2つのメチレン基(-CH2-)が同時に酸素原子に置き換わることもない。なお、炭化水素鎖部分の炭素数とは、酸素非置換型の炭化水素鎖含有基では炭化水素基(炭化水素鎖)を構成する炭素原子の数を意味し、酸素置換型の炭化水素鎖含有基では、酸素原子をメチレン基(-CH2-)と仮定して数えた炭素原子の数を意味するものとする。以下、特に断りがない限り、酸素非置換型の炭化水素鎖含有基(すなわち1価の炭化水素基)を例にとって炭化水素鎖含有基について説明するが、いずれの説明でも、そのメチレン基(-CH2-)のうち一部を酸素原子に置き換えることが可能である。
 上記炭化水素鎖含有基は、それが炭化水素基の場合には、炭素数は1以上、3以下であることが好ましく、より好ましくは1である。また、前記炭化水素鎖含有基は、分岐鎖であっても直鎖であってもよい。前記炭化水素鎖含有基は、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素鎖含有基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素鎖含有基であることがより好ましい。前記飽和脂肪族炭化水素鎖含有基としては、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)がより好ましい。飽和脂肪族炭化水素基には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が含まれる。
 飽和脂肪族炭化水素基の一部のメチレン基(-CH2-)が酸素原子に置き換わる場合、具体的には、(ポリ)エチレングリコール単位を有する基等を例示することができる。
 上記加水分解性基としては、加水分解によりヒドロキシ基(シラノール基)を与える基であればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ヒドロキシ基;アセトキシ基;塩素原子;イソシアネート基;等を好ましく挙げることができる。中でも、炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~2のアルコキシ基がさらに好ましい。
 1つのケイ素原子が複数の置換基を有している場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
 上記シロキサン鎖の少なくとも片側の末端には、少なくとも1つの加水分解性基が結合したケイ素原子が結合していることが好ましく、2つ以上の加水分解性基が結合したケイ素原子が結合していることがより好ましく、3つの加水分解性基が結合したケイ素原子が結合していることが更に好ましい。該加水分解性基が結合したケイ素原子は、シロキサン鎖の片末端に結合していてもよいし、シロキサン鎖の両末端に結合していてもよいが、片末端側にのみ結合していることが好ましい。
 上記シロキサン鎖の両末端には、置換基として3つのアルコキシ基を有するシリル基(トリアルコキシシリル基)、置換基として3つのアルキル基を有するシリル基(トリアルキルシリル基)、及び置換基として3つのトリアルキルシリルオキシ基を有するシリル基[トリス(トリアルキルシリルオキシ)シリル基]のいずれかが結合していることがより好ましく、片末端側にトリアルコキシシリル基、もう一方の末端側にトリアルキルシリル基又はトリス(トリアルキルシリルオキシ)シリル基が結合していることが特に好ましい。
 上記シロキサン鎖を含む化合物(H)のより好ましい態様としては、トリアルキルシリル基とシロキサン鎖を有する分子鎖(以下、この分子鎖を「分子鎖(ts1)」という場合がある)が、少なくとも1つケイ素原子(以下、このケイ素原子を「中心ケイ素原子」という場合がある)に結合している化合物である。
 上記シロキサン鎖を含む化合物(H)において、中心ケイ素原子に結合する分子鎖(ts1)の個数は、1以上であり、3以下であることが好ましく、より好ましくは2以下であり、特に好ましくは1である。
 上記シロキサン鎖を含む化合物(H)の中心ケイ素原子には、分子鎖(ts1)のほか、加水分解性基、前記分子鎖(ts1)を構成する原子の数よりも少ない原子の数のシロキサン骨格含有基、又は分子鎖(ts1)を構成する原子の数よりも少ない炭素数の炭化水素鎖を含有する炭化水素鎖含有基が結合していてもよい。
 上記シロキサン鎖を含む化合物(H)は、具体的には、下記式(h1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000032
 [式(h1)中、Rh1は、トリアルキルシリル基とシロキサン鎖を有する分子鎖を表し、Ah1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表し、Zh1は、トリアルキルシリル基とシロキサン鎖を有する分子鎖、シロキサン骨格含有基、又は炭化水素鎖含有基を表し、Rh1及びZh1の該トリアルキルシリル基に含まれる水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、xは、0~3の整数を表す。]
 上記Rh1のトリアルキルシリル基とシロキサン鎖を有する分子鎖[分子鎖(ts1)]は、トリアルキルシリル含有基が前記シロキサン鎖の末端に結合した構造を有する1価の基である。トリアルキルシリル含有基のアルキル基は、フルオロアルキル基に置き換わっていてもよい。
 上記トリアルキルシリル含有基は、少なくとも1つのトリアルキルシリル基を含む基であり、好ましくは2つ以上、さらに好ましくは3つのトリアルキルシリル基を含む。
 上記トリアルキルシリル含有基は、上記有機ケイ素化合物(A)と同様、上記式(s1)で表される基が好ましい。
 分子鎖(ts1)において、トリアルキルシリル含有基は、前記シロキサン鎖の末端(自由端側)、特にシロキサン鎖の主鎖(最長直鎖)の末端(自由端側)に結合していることが好ましい。
 トリアルキルシリル含有基が結合しているシロキサン鎖は、上記で説明したシロキサン鎖と同様であり、直鎖状ジアルキルシロキサン鎖を含むことが好ましい。また前記分子鎖は、2価の炭化水素基を含んでいてもよい。分子鎖の一部が2価の炭化水素基であっても、残部がジアルキルシロキサン鎖であるため、得られる皮膜の化学的・物理的耐久性が良好である。
 上記シロキサン鎖は、上記有機ケイ素化合物(A)で示した上記式(s2)で表される基が好ましい。
 分子鎖(ts1)に含まれるシロキサン鎖としては、上記有機ケイ素化合物(A)で示したトリアルキルシリル基含有分子鎖に含まれる分子鎖を挙げることができる。
 また、分子鎖(ts1)を構成する原子の合計数は、上記有機ケイ素化合物(A)で示したトリアルキルシリル基含有分子鎖を構成する原子の合計数と同じ範囲であればよい。
 分子鎖(ts1)は、上記有機ケイ素化合物(A)で示した上記式(s3)で表される基が好ましい。
 上記分子鎖(ts1)は、上記有機ケイ素化合物(A)で示した上記式(s3-1)または上記式(s3-2)で表される基が好ましく、上記式(s3-2)で表される基がより好ましい。
 分子鎖(ts1)としては、上記有機ケイ素化合物(A)で示した上記式(s3-I)で表される基が挙げられる。
 次に、式(h1)におけるAh1について説明する。Ah1は、加水分解性基であり、加水分解によりヒドロキシ基(シラノール基)を与える基であればよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;ヒドロキシ基;アセトキシ基;塩素原子;イソシアネート基;等を好ましく挙げることができる。中でも、炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~2のアルコキシ基がさらに好ましい。
 式(h1)におけるZh1は、トリアルキルシリル基とシロキサン鎖を有する分子鎖、シロキサン骨格含有基、又は炭化水素鎖含有基を表す。Zh1がトリアルキルシリル基とシロキサン鎖を有する分子鎖である場合は、上記Rh1と同様のものが挙げられる。
 Zh1がシロキサン骨格含有基である場合、該シロキサン骨格含有基は、シロキサン単位(Si-O-)を含有する1価の基であり、Rh1の分子鎖(ts1)を構成する原子の数よりも少ない数の原子で構成されるものであることが好ましい。これにより、シロキサン骨格含有基は、分子鎖(ts1)よりも長さが短いか、立体的な広がり(かさ高さ)が小さな基となる。シロキサン骨格含有基には、2価の炭化水素基が含まれていてもよい。
 上記シロキサン骨格含有基は、上記有機ケイ素化合物(A)で示した上記式(s4)で表される基が好ましい。
 シロキサン骨格含有基の原子の数の合計は、上記シロキサン骨格含有基の原子の数の合計と同様の範囲が好ましい。また、Rh1の分子鎖(ts1)とZh1のシロキサン骨格含有基の原子の数の差は、10以上が好ましく、より好ましくは20以上であり、1000以下が好ましく、より好ましくは500以下、さらに好ましくは200以下である。
 シロキサン骨格含有基としては、具体的には、上記シロキサン骨格含有基として具体的に示した基が挙げられる。
 Zh1が炭化水素鎖含有基である場合、分子鎖(ts1)を構成する原子の数よりも炭化水素鎖部分の炭素数が少ないものであればよい。また、分子鎖(ts1)の最長直鎖を構成する原子の数よりも、炭化水素鎖の最長直鎖の炭素数が少ないものであることが好ましい。炭化水素鎖含有基としては、上記で例示された炭化水素鎖含有基と同様の基を例示することができる。
 式(h1)におけるxは、2以下の整数が好ましく、より好ましくは0または1であり、更に好ましくは0である。
 式(h1)で表されるシロキサン鎖を含む化合物(H)は、上記有機ケイ素化合物(A)で示した上記式(a2)で表される化合物が好ましい。好ましい範囲も同じである。
 上記シロキサン鎖を含む化合物(H)としては、下記式(h3)及び下記式(h4)で表されるものがより好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000033
 [式(h3)中、n2は、1~60の整数である。]
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000034
 [式(h4)中、n4は、1~60の整数である。]
 上記n2及びn4は、より好ましくは2以上の整数、更に好ましくは3以上の整数であり、より好ましくは50以下の整数、更に好ましくは45以下の整数、より更に好ましくは30以下の整数、特に好ましくは25以下の整数である。
 所定量のシロキサン鎖を含む化合物(H)を含有することにより、組成物を基材に接触させる際の塗工性が向上する。
 上記シロキサン鎖を含む化合物(H)の合成方法の例としては、特開2017-201009号公報に記載の方法が挙げられる。
 上記中間層形成用組成物に上記シロキサン鎖を含む化合物(H)が用いられている場合、その量は、中間層形成用組成物の全体を100質量%としたとき、例えば、0.005質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、0.3質量%以下が好ましく、より好ましくは0.2質量%以下である。
 上記中間層形成用組成物に上記シロキサン鎖を含む化合物(H)が用いられている場合、上記ポリシラザン(F)と上記シロキサン鎖を含む化合物(H)との合計量は、中間層形成用組成物の全体を100質量%としたとき、例えば、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、5質量%以下が好ましく、より好ましくは2.6質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。
 上記中間層形成用組成物が上記ポリシラザン(F)を含有し、更に上記金属化合物(G)、及び上記シロキサン鎖を含む化合物(H)が用いられている場合、これらの合計量は、中間層形成用組成物の全体を100質量%としたとき、例えば、0.3質量%以上が好ましく、より好ましくは0.4質量%以上であり、また、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下である。
 上記中間層形成用組成物は、例えば、ポリシラザン(F)を含有し、更に金属化合物(G)および/またはシロキサン鎖を含む化合物(H)が混合された混合組成物であり、(F)と、(G)および/または(H)を混合することにより得られる。
 14.溶剤(I)
 上記中間層形成用組成物には、溶剤(I)が用いられていてもよい。
 上記溶剤(I)としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。前記アルコール系溶媒としては、上記溶剤(E)として例示した溶媒以外に、1-プロポキシ2-プロパノール等が挙げられる。前記エーテル系溶媒としては、上記溶剤(E)として例示した溶媒以外に、ジブチルエーテル等が挙げられる。前記ケトン系溶媒としては、上記溶剤(E)として例示した溶媒が挙げられる。前記エステル系溶媒としては、上記溶剤(E)として例示した溶媒が挙げられる。前記アミド系溶媒としては、上記溶剤(E)として例示した溶媒が挙げられる。前記脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ミネラルスピリット等が挙げられ、前記芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。中でも、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒が好ましく、脂肪族炭化水素系溶媒がより好ましい。これらの溶媒は1種類を用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。コーティング液の安定性が増し、塗工ブレや塗工時の異物が低減できることから、上記溶剤(I)は、水分を有していないことが好ましい。
 上記溶剤(I)の量は、中間層形成用組成物の全体を100質量%としたとき、例えば、50質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。上限は、ポリシラザン(F)、金属化合物(G)、シロキサン鎖を含む化合物(H)、及びこれら以外の添加成分(以下、第三成分という)の量に応じて設定され、ポリシラザン(F)、金属化合物(G)、シロキサン鎖を含む化合物(H)、及び第三成分以外が溶剤(I)であってもよい。
 上記中間層形成用組成物の調製の際、触媒を共存させてもよい。
 前記触媒は、ポリシラザンを硬化させ得る触媒が好ましく、例えば、1-メチルピペラジン、1-メチルピペリジン、4,4’-トリメチレンジピペリジン、4,4’-トリメチレンビス(1-メチルピペリジン)、ジアザビシクロ-[2,2,2]オクタン、シス-2,6-ジメチルピペラジン、4-(4-メチルピペリジン)ピリジン、ピリジン、ジピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、ピペリジン、ルチジン、ピリミジン、ピリダジン、4,4’-トリメチレンジピリジン、2-(メチルアミノ)ピリジン、ピラジン、キノリン、キノキサリン、トリアジン、ピロール、3-ピロリン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、1-メチルピロリジンなどのN-ヘテロ環状化合物、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、トリペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミンなどのアミン類、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]5-ノネン(DBN)、1,5,9-トリアザシクロドデカン、1,4,7-トリアザシクロノナンなどが挙げられる。
 また、触媒としては上記触媒の他、ケイ素原子に結合する加水分解性基の加水分解・縮合触媒として作用する触媒も好ましく、かかる触媒として、例えば、酸性化合物;塩基性化合物;有機金属化合物;等が挙げられる。前記酸性化合物としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、過酸化水素、塩素酸、次亜塩素酸等の無機酸;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、マレイン酸、ステアリン酸等の有機酸;等が挙げられる。前記塩基性化合物としては、アンモニア等が挙げられる。前記有機金属化合物としては、Al、Fe、Zn、Sn等の金属元素を中心金属とする有機金属化合物が挙げられ、カルボン酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトン錯体、アルミニウムエチルアセトアセテート錯体等の有機アルミニウム化合物;カルボン酸鉄(オクチル酸鉄など)等の有機鉄化合物;亜鉛アセチルアセトナートモノハイドレート、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;ジブチル錫ジアセテート錯体等の有機錫化合物;その他、有機金属化合物としては、Ni、Ti、Pt、Rh、Co、Ru、Os、Pd、Ir、などを含む金属カルボン酸塩;Ni、Pt、Pd、Rhなどを含むアセチルアセトナ錯体;Au、Ag、Pd、Ni、Zn、Tiなどの金属微粒子;金属過酸化物;メタルクロライド;フェロセン、ジルコノセンなどの金属のシクロペンタジエニル錯体等が挙げられる。
 上記中間層形成用組成物にも本発明の効果を損なわない範囲で、上述した添加剤を共存させてもよい。
 上記中間層形成用組成物を上記基材と接触させる方法としては、上記撥液層形成用組成物を上記基材と接触させる方法として例示した方法を採用できる。
 上記のようにして基材上に接触させた中間層形成用組成物を、空気中、常温で静置することで、空気中の水分と反応し、分解とシロキシ基化が進行し、基材上にSi-O骨格含有皮膜を形成できる。静置時間は特に限定されないが、1分以上であることが好ましく、より好ましくは2分以上である。また、実用性の観点から、12時間以下であることが好ましく、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは30分以下、より更に好ましくは10分以下である。
 上記中間層の膜厚は、例えば0.1~200nm程度とでき、好ましくは0.2~100nm、より好ましくは、0.3~50nmである。
 本発明の撥液層形成用組成物を硬化した膜上の液滴(具体的には、水滴)の接触角は、95°以上が好ましく、より好ましくは100°以上、さらに好ましくは102°以上である。この接触角は、後述する実施例の測定法に従って決定できる。
 本発明の撥液層形成用組成物を硬化した膜上の液滴(具体的には、水滴)の滑落速度は、20mm/秒以上が好ましく、より好ましくは25mm/秒以上、さらに好ましくは30mm/秒以上、特に好ましくは45mm/秒以上である。この滑落速度は、後述する実施例の測定法に従って決定できる。
 本発明の撥液層形成用組成物を硬化した膜は、好ましくは800回以上、より好ましくは1000回以上、さらに好ましくは1600回以上、特に好ましくは2000回以上、最も好ましくは2400回以上の耐摩耗性を示す。この耐摩耗性は、後述する実施例の測定法に従って決定できる。
 以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
 (中間層形成用組成物Iの作製)
 Durazane(登録商標) 1500 rapid cure(MERCK社製)0.15部、テトラエトキシシラン0.09部、および上記表3-2に示した(A-I-26)においてn10の平均が24である化合物(以下、化合物(1)と表記する。)0.015部を、イソオクタン29.75部に溶解させ、中間層形成用組成物Iを得た。なお、Durazane(登録商標) 1500 rapid cureは、以下の下記式(f4)で表される構造単位を有する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000035
 上記式(f4)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
 Durazane(登録商標) 1500 rapid cure(MERCK社製)は、9~27質量%のSi(OC253基を有しており、また、上記(f4)中の構造における、SiH基の水素原子とSi-CH3基のメチル基のモル比(メチル基/水素原子)は、2.39であった。前記Si(OC253基の質量比、及び水素原子とメチル基のモル比は、1H-NMR(400MHz,基準:CDCl3(=7.24ppm))の積分値に基づいて定めた。すなわち、積分値から有機ポリシラザン中のSiH、SiCH3、及びSi(OCH2CH33のモル比を求め、水素原子とメチル基のモル比を算出した。また、それぞれを質量比に換算して、有機ポリシラザン中に含まれるSi(OC253基の質量%を算出した。
 (撥液層形成用組成物No.1の作製)
 上記化合物(1)0.014部、トリエトキシシラン0.036部を、イソプロピルアルコール0.1027部に溶解させ、室温で10分撹拌した。得られた溶液に酢酸0.0000733部および水0.0128部を滴下した後、65℃で2時間撹拌し、試料溶液1を得た。得られた試料溶液1をイソプロピルアルコール46.7038部で希釈し、撥液層形成用組成物No.1を作製した。撥液層形成用組成物No.1における各化合物の割合(質量%)は下記表5-1に記載の通りである(他の実施例及び比較例について同じ)。
 <皮膜No.1>
 大気圧プラズマ処理によって表面を活性化させたガラス基板5×5cm2(EAGLE XG、Corning社)を仰角45°となるように設置し、上記中間層形成用組成物Iを500μLガラス基板上面からかけ流し、常温常湿にて5分間乾燥させた。さらにその上から、上記撥液層形成用組成物No.1を500μLかけ流し、常温常湿にて1日風乾させることによって、ガラス基板上に皮膜(中間層および撥液層)を形成した。
 (撥液層形成用組成物No.2~No.12、No.21、No.22)
 上記撥液層形成用組成物No.1において、有機ケイ素化合物(A)、金属化合物(B)、酸(C)、水(D)、および溶剤(E)の種類及び/又は量を、下記表5-1または表5-2に示すように変更した以外は上記撥液層形成用組成物No.1と同様にして撥液層形成用組成物No.2~No.12、No.21、No.22を作製した。
 <皮膜No.2~No.11、No.15、No.21、No.22>
 上記皮膜No.1と同じ条件で、上記中間層形成用組成物Iを500μLガラス基板上面からかけ流し、常温常湿にて5分間乾燥させた。さらにその上から、上記撥液層形成用組成物No.2~No.12、No.21、またはNo.22を500μLかけ流し、常温常湿にて1日風乾させることによって、ガラス基板上に皮膜(中間層および撥液層)を形成した。
 <皮膜No.12~No.14、No.23>
 大気圧プラズマ処理によって表面を活性化させたガラス基板5×5cm2(EAGLE XG、Corning社)を仰角45°となるように設置し、上記撥液層形成用組成物No.1、No.2、No.4、またはNo.21を500μLかけ流し、常温常湿にて1日風乾させることによって、ガラス基板上に皮膜(撥液層)を形成した。
 <皮膜No.16、No.17>
 中間層形成用組成物Iの代わりに、下記中間層形成用組成物IIまたはIIIを用いる以外は、上記皮膜No.1と同じ条件で、中間層形成用組成物IIまたはIIIを500μLガラス基板上面からかけ流し、常温常湿にて5分間乾燥させた。さらにその上から、上記撥液層形成用組成物No.1を500μLかけ流し、常温常湿にて1日風乾させることによって、ガラス基板上に皮膜(中間層および撥液層)を形成した。
 (中間層形成用組成物IIの作製)
 上記Durazane(登録商標) 1500 rapid cure(MERCK社製)0.15部、および上記化合物(1)0.015部を、イソオクタン29.84部に溶解させ、中間層形成用組成物IIを得た。
 (中間層形成用組成物IIIの作製)
 上記Durazane(登録商標) 1500 rapid cure(MERCK社製)0.15部、およびトリエトキシシラン0.09部を、イソオクタン29.84部に溶解させ、中間層形成用組成物IIIを得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000036
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000037
 上記皮膜No.1~No.17、No.21~No.23について、以下の要領で特性を評価した。
 (接触角)
 協和界面科学社製の接触角測定装置「DM700」を用い、水滴量を3.0μLとし、解析方法をθ/2法として皮膜表面の水に対する接触角を測定した。接触角が95°以上の場合を撥水性に優れると評価した。
 (滑落速度)
 皮膜表面に水を滴下し、皮膜表面における水滴の滑落速度によって撥水性を評価した。具体的には、協和界面科学社製の接触角測定装置「DM700」を用い、20°に傾けたガラス基板上の皮膜表面に50μLの水を滴下し、水滴が、初期滴下位置から15mm滑落するまでの時間を測定し、皮膜表面における水滴の滑落速度(mm/秒)を算出した。なお、滴下した水滴が、2分以内に初期滴下位置から15mm以上滑落しない場合は滑落せずと判断し、滑落速度0.0mm/秒とした。水滴の滑落速度が20mm/秒以上の場合を撥水性に優れると評価した。
 (耐摩耗性)
 皮膜の上に水2.5mLを滴下し、その上にシリコンシート(SR-400、タイガースポリマー社製)を接触させた。その状態でシリコンシートに荷重500gをかけた。その後、往復速度が毎分400mmの条件にて、20mmの距離を、皮膜No.12~14は200回刻みで皮膜を擦り、皮膜No.12~14以外は400回刻みで皮膜を擦り、摩耗した部位の中央部分3点における接触角をそれぞれ測定し、3点中2点が85°以下に低下するまでの回数を測定した。回数が800回以上の場合を耐摩耗性に優れると評価した。
 得られた皮膜の特性を評価した結果を表6-1または表6-2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000038
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000039
 皮膜No.1~No.17では、本発明で規定する要件を満足する組成物(撥液層形成用組成物)を用いて撥液層を形成したため、撥水性を損なうことなく、優れた耐摩耗性を有する皮膜を作製できた。特に皮膜No.12~No.14と比べて、皮膜No.1~No.11、No.15~No.17では撥水性および耐摩耗性が相対的に良好になった。また、皮膜No.1~No.11、No.15~No.17では、基材の上に、ポリシラザン(F)を含有し、更に上記金属化合物(G)および/またはシロキサン鎖を含む化合物(H)、および溶媒(I)を混合した組成物を用いて中間層を形成してから撥液層を形成したため、撥液層が常温で硬化し、常温硬化性に優れていた。
 本発明の撥液層形成用組成物を用いて得られる皮膜は、撥水・撥油性、および耐摩耗性に優れている。そのため、本発明の撥液層形成用組成物を用いて処理した基材は、タッチパネルディスプレイ等の表示装置、光学素子、半導体素子、建築材料、自動車部品、ナノインプリント技術等における基材として有用である。また、本発明の撥液層形成用組成物から形成される皮膜は、電車、自動車、船舶、航空機等の輸送機器におけるボディー、窓ガラス(フロントガラス、サイドガラス、リアガラス)、ミラー、バンパー等の物品として好適に用いられる。また、建築物外壁、テント、太陽光発電モジュール、遮音板、コンクリートなどの屋外用途にも用いることができる。また、漁網、虫取り網、水槽などにも用いることができる。更に、台所、風呂場、洗面台、鏡、トイレ周りの各部材の物品、シャンデリア、タイルなどの陶磁器、人工大理石、エアコン等の各種屋内設備にも利用可能である。また、工場内の治具や内壁、配管等の防汚処理としても用いることができる。また、ゴーグル、眼鏡、ヘルメット、パチンコ、繊維、傘、遊具、サッカーボールなどにも好適である。更に、食品用包材、化粧品用包材、ポットの内部など、各種包材の付着防止剤としても用いることができる。

Claims (8)

  1.  少なくとも1つのトリアルキルシリル基含有分子鎖と、少なくとも1つの加水分解性基とがケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物(A)と、
     金属化合物(B)と、
     酸(C)と、
     水(D)との混合組成物であり、
     前記水(D)に対する前記酸(C)のモル比(C/D)が、0.002~0.15である混合組成物。
  2.  前記有機ケイ素化合物(A)と前記金属化合物(B)の合計モル量に対する前記水(D)のモル量の比[D/(A+B)]が、3.1~130である請求項1に記載の組成物。
  3.  前記酸(C)の量が、0.0001~30質量%である請求項1または2に記載の組成物。
  4.  前記有機ケイ素化合物(A)が、下記式(a1)で表される化合物である請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
     [式(a1)中、
     複数のAa1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表し、
     Za1は、トリアルキルシリル基含有分子鎖、シロキサン骨格含有基、または炭化水素鎖含有基を表し、
     xは、0または1であり、
     Ra1は、トリアルキルシリル基含有分子鎖を表す。
     Za1およびRa1の該トリアルキルシリル基に含まれる水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。]
  5.  前記有機ケイ素化合物(A)が、下記式(a2)で表される化合物である請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
     [式(a2)中、Aa1、Za1、xは、上記と同義である。
     Zs1は、-O-または2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-に置き換わっていてもよく、
     複数のRs2は、それぞれ独立に、炭素数が1~10のアルキル基を表し、
     n1は、1以上の整数であり、
     Ys1は、単結合または-Si(Rs22-Ls1-を表し、該Ls1は、2価の炭化水素基を表し、該2価の炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-に置き換わっていてもよく、
     複数のRs1は、それぞれ独立に、炭化水素基またはトリアルキルシリルオキシ基を表す。]
  6.  前記金属化合物(B)が、下記式(b1)で表される化合物である請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
      M(Rb10r(Ab1m-r  (b1)
     [式(b1)中、
     Mは、Al、Fe、In、Ge、Hf、Si、Ti、Sn、Zr、またはTaを表し、
     Rb10は、シロキサン骨格含有基、炭化水素鎖含有基、または水素原子を表し、
     rは、0または1である。
     複数のAb1は、それぞれ独立に、加水分解性基を表し、
     mは、金属原子Mの価数であって、3~5から選ばれる整数である。]
  7.  前記金属化合物(B)が、下記式(b2)で表される化合物である請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
      Si(ORb11y4-y  (b2)
     [式(b2)中、
     Rb11は、炭素数1~6のアルキル基を表し、
     yは、3または4である。]
  8.  溶剤(E)が混合されており、前記溶剤(E)の量が、10質量%以上である請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
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