WO2019069907A1 - 特定香気成分を含む魚肉不快臭が低減された魚類 - Google Patents

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Abstract

魚肉の不快臭が低減された魚類また該魚類の加工品の提供。 魚肉中に、フルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンからなる群から選択される香気成分の少なくとも1つを含み、該香気成分により魚肉中の不快臭が低減された養殖魚、および該養殖魚の可食部。

Description

特定香気成分を含む魚肉不快臭が低減された魚類
 本発明は、不快臭が低減された魚類に関する。
 養殖魚等の魚介類の可食部を生のまま保存して鮮度が低下してくると特有の不快臭を発するようになり、この魚介類の不快臭は消費者から敬遠されている。この不快臭は、生臭さや鮮度低下臭とも呼ばれる。また、元来魚介類の生食文化のない国や地域では、生鮮魚介類の生臭さに抵抗を感じる者が多く、このため日本から海外市場への生食用生鮮魚介類の輸出拡大の障害となっていた。
 従来、魚肉の洗浄により不快臭を減少させ、あるいは香辛料、柑橘類、ハーブ(香草)や燻煙等により不快臭を減少させていたが、生のままの生鮮魚類の不快臭を減少させる決定的な方法はなかった。
 大豆や米、麦などを蒸したものに食塩と麹を混ぜて発酵させて製造する調味料である味噌は日本の食文化には欠かせない存在である。
 味噌は大量に製造され、味噌製造会社において、過剰に生産された味噌が年間数トン単位で廃棄されている。
 味噌等の発酵物を飼料に添加することにより不快なにおいを低減し得ることが報告されている(特許文献1~6および非特許文献1を参照)。しかしながら、これらはペットまたは牛、豚等の産業動物の糞便臭低減効果についての報告であり、魚肉の不快臭の低減効果については記載されていない。
 また、未利用味噌を飼料に添加し、養殖魚介類に投与することにより免疫賦活効果を発揮し得ることが報告されているが(特許文献7~9および非特許文献2を参照)、魚介類の不快臭の低減効果については記述されていない。
 さらに、味噌等の発酵物を調味料として畜肉または魚肉の調理時に加えることで、畜肉または魚肉の臭みを低減する効果があることが報告されている(特許文献10および11ならびに非特許文献3および4)。しかしながら、これは調味料としての効果であり、飼料に添加して魚介類に与えているのではない。
特開平11-285348号公報 特開平09-103252号公報 特開平05-192087号公報 特公平07-112406号公報 特開平05-192087号公報 特開平01-168245号公報 特開2015-172019号公報 特開2005-143480号公報 特開2005-206566号公報 特開2016-067240号公報 特開2015-043749号公報
小林桂他、生理学技術研究会報告・生物学技術研究会報告合同技術研究会報告、Vol.2005、Page 110-111 谷川昭夫、養殖、38(6)、60-62(2006) 黒野寿久他、畜産物需要開発調査研究事業報告書、335-359、(1998) 宮崎泰幸他、日本水産学会誌、82(5)、763-770、(2016)
 本発明は、魚肉の不快臭が低減された魚類また該魚類の加工品の提供を目的とする。
 本発明者らは、大量に廃棄されている未利用資源としての味噌を有効活用できないか検討を行った。未利用味噌を魚類用飼料に添加し、ブリへ3ヵ月間投与したところ、QDAによる官能評価でブリ魚肉の臭みが低減されるという効果を見出した。また、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)によるブリ魚肉のにおい成分の分析の結果、味噌添加飼料を魚類に給餌することによってフルフラール、酢酸エチル、αクベベン等の香気成分物質であって魚類の不快臭をマスキングし得る香気成分物質が魚肉中に増加することを見出し、本発明を完成させるに至った。
 すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 魚肉中に、フルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンからなる群から選択される香気成分の少なくとも1つを含み、該香気成分により魚肉中の不快臭が低減された養殖魚。
[2] 魚肉中のデカナール濃度に対する魚肉中のフルフラール濃度の比が2.0以上である、[1]の養殖魚。
[3] 魚肉中のデカナール濃度に対する魚肉中の酢酸エチル濃度の比が1.5以上である、[1]の養殖魚。
[4] 魚肉中のデカナール濃度に対する魚肉中のαクベベン濃度の比が1.2以上である、[1]の養殖魚。
[5] 麹菌発酵物または大豆発酵物を含む飼料を用いて養殖した、[1]~[4]のいずれかの養殖魚。
[6] 麹菌発酵物または大豆発酵物が、麹または味噌である、[5]の養殖魚。
[7] 麹菌発酵物または大豆発酵物が、米味噌、豆味噌、麦味噌または調合味噌である、[6]の養殖魚。
[8] アジ科、サバ科、タイ科、ハタ科、メバル科、スズキ科、サケ科、キュウリウオ科、ウナギ科、ナマズ科、ドジョウ科、コイ科、ヒラメ科、またはフグ科に属する魚である、[1]~[7]のいずれかの養殖魚。
[9] ブリ(ハマチ)、カンパチ、ヒラマサ、ヒレナガカンパチ、シマアジ、マアジ、ビンナガ、クロマグロ、ミナミマグロ、タイセイヨウマグロ、タイセイヨウクロマグロ、キハダ、メバチ、コシナガ、ハガツオ、スマ、マダイ、クロソイ、アカハタ、キジハタ、アオハタ、クエ、タマカイ、マハタ、ユカタハタ、サラサハタ、スジアラ、チダイ、マサバ、イワナ(アメマス)、ニジマス、ヤマメ(サクラマス)、アマゴ(サツキマス)、カラフトマス、サケ、ギンザケ、マスノスケ、ベニザケ、イトウ、アユ、ウナギ、ナマズ、ドジョウ、コイ、フナ、ヒラメ、またはトラフグである、[8]の養殖魚。
[10] 鰓、内臓、尾部および頭部からなる群より選択される部位の少なくとも一つが除去されている[1]~[9]のいずれかの養殖魚。
[11] 鰓および内臓が除去された形態である、[1]~[9]のいずれかの養殖魚。
[12] [1]~[11]のいずれかの養殖魚の可食部。
[13] [1]~[11]のいずれかの養殖魚の可食部の加工食品。
[14] 加熱食品または非加熱食品である、[13]の食品。
[15] 魚肉1g当たり、0.4ng以上のフルフラールが含まれる、[1]の養殖魚。
[16] 魚肉1g当たり、0.8ng以上の酢酸エチルが含まれる、[1]の養殖魚。
[17] 麹菌発酵物または大豆発酵物を含む飼料を用いて養殖した、[1]および[15]~[16]のいずれかに記載の養殖魚。
[18] 麹菌発酵物または大豆発酵物が、麹または味噌である、[17]の養殖魚。
[19] 麹菌発酵物または大豆発酵物が、米味噌、豆味噌、麦味噌、または調合味噌である、[18]の養殖魚。
[20] アジ科、サバ科、タイ科、ハタ科、メバル科、スズキ科、サケ科、キュウリウオ科、ウナギ科、ナマズ科、ドジョウ科、コイ科、ヒラメ科、またはフグ科に属する魚である、[1]および[15]~[19]のいずれかの養殖魚。
[21] ブリ(ハマチ)、カンパチ、ヒラマサ、ヒレナガカンパチ、シマアジ、マアジ、ビンナガ、クロマグロ、ミナミマグロ、タイセイヨウマグロ、タイセイヨウクロマグロ、キハダ、メバチ、コシナガ、ハガツオ、スマ、マダイ、クロソイ、アカハタ、キジハタ、アオハタ、クエ、タマカイ、マハタ、ユカタハタ、サラサハタ、スジアラ、チダイ、マサバ、イワナ(アメマス)、ニジマス、ヤマメ(サクラマス)、アマゴ(サツキマス)、カラフトマス、サケ、ギンザケ、マスノスケ、ベニザケ、イトウ、アユ、ウナギ、ナマズ、ドジョウ、コイ、フナ、ヒラメ、またはトラフグである、[20]の養殖魚。
[22] 鰓、内臓、尾部および頭部からなる群より選択される部位の少なくとも一つが除去されている[1]および[15]~[21]のいずれかの養殖魚。
[23] 鰓および内臓が除去された形態である、[1]および[15]~[22]のいずれかの養殖魚。
[24] [1]および[15]~[23]のいずれかの養殖魚の可食部。
[25] [1]および[15]~[24]のいずれかの養殖魚の可食部の加工食品。
[26] 加熱食品または非加熱食品である、[25]の食品。
 本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-192931号の開示内容を包含する。
 本発明者らが見出した知見によって、味噌等の発酵物を飼料に添加することで魚肉の不快臭を低減することができ、不快臭の低減した魚類を得ることができる。本発明において使用し得る味噌は廃棄予定の未利用資源であり、産業廃棄物として処理されていた未利用味噌を飼料添加物として利用することで、処理に費やしていた人件費、産廃費用等のコストの削減、さらには環境負荷の低減にも効果が期待される。また、近年、日本食の世界無形文化遺産登録によって、日本食が世界的に普及し、それに伴い魚介類の生食も受け入れられるようになってきた。しかし、元来魚介類の生食文化のない国や地域では、生鮮魚介類の生臭さに抵抗を感じる者が多い。そこで、本発明により魚介類の不快臭を低減することで、海外市場への生食用生鮮魚介類の輸出拡大が望める。
味噌添加飼料を給餌したブリ肉と味噌を添加しない飼料を給餌したブリ肉の不快臭のQDA法による官能評価の結果を示す図である。 味噌添加飼料を給餌したブリ肉と味噌を添加しない飼料を給餌したブリ肉の臭い成分のGC-MSのトータルイオンクロマトを示す図である。 味噌添加飼料を給餌したブリ肉の臭い成分のGC-MSによる主成分分析による解析の結果を示す図である。 味噌添加飼料を給餌したブリ肉の臭い成分のローディングプロットデータを示す図であり、第一主成分分軸上で0.6以上の47個をプロットにより表示した図である。
 以下、本発明を詳細に説明する。
 本発明は麹菌発酵物または大豆発酵物を含む、魚肉の不快臭を低減するための飼料を用いて養殖された、魚肉の不快臭が低減された魚類である。ここで、魚肉とは魚の筋肉、肝臓や心臓などの内臓、眼球、皮、脳等をいい、好ましくは筋肉をいう。筋肉としては、背側筋、腹側筋、背側竜骨筋、腹側竜骨筋、血合筋等が挙げられる。
 魚肉の不快臭とは、生臭さ、魚臭さ、あるいは鮮度低下臭ともいい、磯の香りや血合いの香りが混ざった臭いとも認識される。魚肉の不快臭の成分は複雑であり、種々のアミンやアンモニアの他、揮発性カルボニル、低級脂肪酸、揮発性含硫黄化合物等が含まれる。
 本発明において不快臭を低減する魚の種類は限定されず、海水魚、淡水魚のあらゆる食用魚が対象となる。麹菌発酵物または大豆発酵物添加飼料を用いるため、対象魚は好ましくは養殖魚、蓄養魚である。ここで、養殖魚とは卵の孵化から育てた魚をいい、蓄養魚とは天然の魚を捕獲してきた後、生簀などで一定期間成長させた魚をいう。蓄養魚を養殖魚と表示することがあり、本発明において、養殖魚という場合、蓄養魚も含む。また、単に飼育魚ということもできる。具体的な魚種として、アジ科、サバ科、タイ科、ハタ科、メバル科、スズキ科、サケ科、キュウリウオ科、ウナギ科、ナマズ科、ドジョウ科、コイ科、ヒラメ科、フグ科等に属する魚が挙げられ、ブリ(ハマチ)、カンパチ、ヒラマサ、ヒレナガカンパチ、シマアジ、マアジ、ビンナガ、クロマグロ、ミナミマグロ、タイセイヨウマグロ、タイセイヨウクロマグロ、キハダ、メバチ、コシナガ、ハガツオ、スマ、クロソイ、マダイ、アカハタ、キジハタ、アオハタ、クエ、タマカイ、マハタ、ユカタハタ、サラサハタ、スジアラ、チダイ、マサバ、イワナ(アメマス)、ニジマス、ヤマメ(サクラマス)、アマゴ(サツキマス)、カラフトマス、サケ、ギンザケ、マスノスケ、ベニザケ、イトウ、アユ、ウナギ、ナマズ、ドジョウ、コイ、フナ、ヒラメ、トラフグ等が挙げられる。
 本発明は、これらの魚種の養殖魚を含む。養殖魚は頭部から尾部までのすべての部位を有するまるごとの魚も、頭部や内臓等の一部が除去された加工された魚も含む。例えば、鰓、内臓、尾部および頭部からなる群より選択される部位の少なくとも一つが除去されている養殖魚を含み、また、鰓および内臓が除去された形態である養殖魚も含む。さらに、フィレ加工された形態である養殖魚や切身加工された形態である養殖魚も含む。さらに、これらの養殖魚の可食部、該可食部を原料とする非加熱食品、該可食部を原料とする加熱食品を包含する。可食部とは、ヒト等が食することができる魚体の一部をいい、例えば、筋肉、肝臓や心臓などの内臓、眼球、皮、脳等を挙げることができる。食品は、該可食部を加工することにより製造することができる。加工は調理を含む。非加熱食品は、加熱調理されていない可食部をいい、生の状態の可食部またはその加工品であり、刺身、すり身、さく、たたき(加熱しないもの)、酢締めした可食部等が挙げられる。加熱食品は、加熱調理された可食部をいい、焼いた可食部、揚げた可食部、煮た可食部、蒸した可食部、たたき(加熱したもの)、練り製品等が挙げられる。
 本発明においては、上記の魚類の飼料に、麹菌発酵物または大豆発酵物を添加し、魚類に給餌することにより、魚肉の不快臭が低減された魚類を養殖により製造することができる。
 麹菌発酵物または大豆発酵物として、例えば、味噌が挙げられる。麹菌発酵物は米、麦、大豆などの穀物にコウジカビなどの食品発酵に有効なカビ等の微生物を繁殖させた発酵物をいう。原料により、米麹、大豆麹、麦麹(大麦麹、小麦麹)等がある。微生物としては、Aspergillus oryzae、Aspergillus sojae等の黄麹菌などが挙げられる。味噌は、大豆、米、麦等の穀物に塩および麹を添加して発酵させて製造する発酵物である。味噌は、大豆と米麹の発酵物である米味噌、大豆と大豆麹の発酵物である豆味噌、大豆と麦麹(大麦)の発酵物である麦味噌、調合味噌を含む。ここで、調合味噌とは、米味噌、豆味噌または麦味噌を混合したもの、米麹に麦麹または豆麹を混合したものを使用したもの等、米味噌、麦味噌および豆味噌以外の味噌をいう。また、味噌は味噌の原料を混合し発酵させた発酵中の製造中のものでよい。このような製造中の味噌として、味噌の原料の仕込み混合物であって熟成前のものや天地返し(味噌の上部と下部を入れ替えて空気に触れさせる作業)をした熟成中のものが挙げられる。この中でも熟成後のもの、または熟成途中のものが好ましい。本発明においては、製造中の味噌も味噌という。味噌の色は限定されず、赤味噌でも、白味噌でも、淡色味噌でもよい。
 これらの麹菌発酵物または大豆発酵物を魚類の飼料に添加し、魚類に給餌すればよい。魚の飼料は限定されず、例えば、養殖魚の飼料として用いられている飼料ならばいかなる飼料も用いることができる。飼料の形状も限定されず、顆粒状飼料、ペレット状飼料、クランブル(ペレット状飼料をクランブラーで粉砕した形状の飼料)等がある。この中でもペレット状飼料が好ましい。ペレット状飼料には、フィッシュミール(魚粉)等を乾燥した固形タイプのドライペレット(DP)、生餌と魚粉と魚油などを混合した半生の固形タイプのモイストペレット(MP)、エクストルーダーと呼ばれる造粒機械で高温高圧加工して成型したエクストルーダーペレット(EP)等がある。
 上記の飼料を製造するときに麹菌発酵物または大豆発酵物を添加すればよい。ペレット状の飼料の場合には、ペレットを製造するための混合物に麹菌発酵物または大豆発酵物を添加し、ペレット状飼料として成形すればよい。
 飼料に添加する麹菌発酵物または大豆発酵物の含量は、麹菌発酵物または大豆発酵物を添加した飼料に対する最終含量で、3~20質量%、好ましくは3~10質量%、さらに好ましくは5~10質量%である。飼料は通常の給餌スケジュール(ブリであれば1日1回以上、魚体重の1~3%程度の飼料を給餌)により魚に与えればよく、魚種等により異なる。飼料を給餌する養殖期間は、魚種によるが、1~6ヶ月、好ましくは2~4か月であり、好ましくは魚の出荷の直前まで与える。養殖は海面の生簀で行う場合も、人工海水等を用いる陸上養殖も、淡水魚を対象とする内水面養殖も含む。
 本発明はさらに、麹菌発酵物または大豆発酵物を含む、魚肉の不快臭の低減剤を包含する。該低減剤は、例えば、麹菌発酵物または大豆発酵物を粉末状、顆粒状、ペレット状に成形したものである。該低減剤をサプリメントとして魚用飼料と同時に魚に給餌してもよいし、魚用飼料とは別に魚に給餌してもよい。また、該低減剤を魚の飼料に添加し、上記の麹菌発酵物または大豆発酵物を含む飼料を調製することもできる。
 麹菌発酵物または大豆発酵物添加飼料を魚に投与して摂食させることにより魚肉の不快臭をマスキングする物質の量が魚体内で増加する。ここで、マスキングとは、香気成分により不快臭が抑制されることをいう。
 魚肉の不快臭をマスキングする香気成分物質として、フルフラール(2-フランカルボキシアルデヒド)(C5HO2)、酢酸エチル(C4H8O2)およびαクベベン(C15H24)が挙げられる。本発明においては、魚に麹菌発酵物または大豆発酵物添加飼料を与えることにより、これらの物質が魚肉中に増加し、魚の不快臭がマスキングされ、低減する。
 フルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンは飼料に含まれているものが魚肉中で増加すると考えられる。麹菌発酵物または大豆発酵物以外の物質にも含まれており、麹菌発酵物または大豆発酵物を添加しない飼料を給餌し飼料を摂食した魚類の魚肉中にフルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンは存在するが、麹菌発酵物または大豆発酵物には比較的多くのフルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンの少なくとも1つが含まれており、麹菌発酵物または大豆発酵物を給餌した魚類の魚肉中に比較的多量のフルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンの少なくとも1つが増加し得る。
 魚肉の不快臭を低減するためには、フルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンの全ての物質が魚肉内で増加する必要は必ずしもなく、3種類の物質の少なくとも1種類が増加すればよい。あるいは、少なくとも2種類が増加すればよい。好ましくは3種類が増加すればよい。
 魚肉中のフルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンの含有量はGC/MS分析により測定することができる。この際、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いてフルフラール、酢酸エチルまたはαクベベンを抽出すればよく、ガラス撹拌子にPDMSをコーティングしたTwister PDMS(Gerstel社)を用いることができる。具体的には、例えば、魚肉を密閉した容器中に入れ、ヘッドスペース中にTwister PDMSを設置し、一定時間静置し、Twister PDMSに揮発成分を吸着した上でガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)計へ導入し測定すればよい(HSSE(Headspace Sorptive Extraction)法)。その他、Twister PDMSを用いる場合、SBSE(Stir Bar Sorptive Extraction)法やPassive法により測定することもできる。
 この際、魚肉中に普遍的に恒常的に存在し、個体間の含有量に差がなく、かつ麹菌発酵物または大豆発酵物添加飼料の投与によっても魚肉中の含量が変動しないデカナール(デシルアルデヒド)(C10H20O)を内部標準物質として用い、デカナールに対する相対値に基づいて、それぞれの物質の含有量を算出することができる。ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)により測定した場合、クロマトグラム上の各物質のピーク面積値を用いて算出すればよい。
 また、ビフェニル(C12H10)を内部標準物質として試料に添加して用いてもよい。
 このように、デカナールまたはビフェニルを内部標準物質として魚肉中のフルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンの相対濃度を測定した場合、本発明の養殖魚、該養殖魚の可食部、該可食部の加熱食品および非加熱食品は、デカナールまたはビフェニルを内部標準物質として魚肉中のフルフラールの相対濃度を測定した場合、魚肉中のフルフラール含有量が、麹菌発酵物または大豆発酵物添加飼料を投与しない魚類の魚肉中のフルフラール濃度に対して2%以上、好ましくは4%以上、さらに好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上増加している。また、本発明の養殖魚、該養殖魚の可食部、該可食部の加熱食品および非加熱食品は、デカナールまたはビフェニルを内部標準物質として魚肉中の酢酸エチルの相対濃度を測定した場合、魚肉中の酢酸エチル含有量が、麹菌発酵物または大豆発酵物添加飼料を投与しない魚類の魚肉中の酢酸エチル濃度に対して10%以上、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上、特に好ましくは30%以上増加している。また、本発明の養殖魚、該養殖魚の可食部、該可食部の加熱食品および非加熱食品は、デカナールまたはビフェニルを内部標準物質として魚肉中のαクベベンの相対濃度を測定した場合、魚肉中のαクベベン含有量が、麹菌発酵物または大豆発酵物添加飼料を投与しない魚の魚肉中のαクベベン濃度に対して3%以上、好ましくは4%以上、さらに好ましくは5%以上、さらに好ましくは7%以上、さらに好ましくは10%以上増加している。なお、フルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンはガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)により測定しているので、魚肉中のフルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンの濃度は、魚肉から揮発するフルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンの濃度ということもできる。
 さらに、本発明の養殖魚、該養殖魚の可食部、該可食部の加熱食品および非加熱食品において、魚肉1g当たり、0.8ng以上、好ましくは1ng以上の酢酸エチルが含まれ、0.4ng以上、好ましくは0.5ng以上のフルフラールが含まれる。
 実際に魚肉の不快臭が低減されたか否かは、官能評価により判断することができる。具体的な官能評価の方法は限定されないが、例えば、定量的記述分析法(QDA法)により行うことが好ましい。QDA法とは、ヒトを分析型パネルとし、自らが作成した特性用語に基づいてその特性を定量化する方法をいう。本発明の効果を判定する官能評価法における特性用語としては、「生臭いフレーバー」、「生臭い香り」、「磯の香り」、「血合いの香り」等が挙げられ、これらの特性のスコアが低いほど、魚肉の不快臭が低減されていると判断できる。
 その他、カテゴリー尺度法や2点識別法により官能評価を行ってもよい。
 本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 味噌添加飼料による魚類の不快臭の軽減
(1)官能評価(QDA法)
 未利用味噌の有効な活用方法を検討するため、飼料100kg対して味噌を7kgの割合で添加して、1日1回以上、魚体重の1~3質量%程度の飼料をブリへ3ヶ月間投与した。養殖は1枠が15m×15mの金網で作った生簀に2歳魚のブリを1枠当たり約10000尾入れて行った。また味噌を添加しない飼料を投与したブリを対照区とした。飼育後のブリ魚肉をQDA法(定量的記述分析法)による官能評価を実施した。QDAはパネル8名による2回繰り返し評価を行い、ブリ切身は容器に入れ氷上に置いて評価に供した。結果を図1に示した。図1中、*を付した特性は有意の差(p<0.05)が認められた特性である。
 図1に示すように、味噌添加飼料を投与した魚肉においては、味噌を添加しない飼料を投与した魚肉と比べて生臭さ等の臭みが低減された。
(2)におい成分分析
 ブリ普通肉(血合を除いた部分)を約3cm角に細断したものを流水で解凍した。解凍したブリ普通肉70gを500mL容量のガラス瓶に入れ、瓶底から約2/3の高さのところでTwister PDMS(ガラス製撹拌子にPDMS(ポリジメチルシロキサン)をコーティングしたもの)(Gerstel社)を2個、瓶の外側から磁石で固定することで内包した。室温(20℃前後)で180分間静置し、ヘッドスペース(上部の空間)中の揮発性成分をTwister PDMSに吸着させ、GC/MSに供した。試験区で増加していた3成分についてはライブラリー(NIST0.8)を用いた検索により化合物名をそれぞれ酢酸エチル、フルフラール、αクベベンと推定した。これらの3成分について、それぞれ主要なm/z(43、96、105)のイオンピーク面積値と、ブリ魚肉に普遍的に含まれ、恒常性が高く、個体間の変動が少ないデカナールの主要なm/z(57)のイオンピーク面積値に対する比を求めた。さらに試験区、対照区それぞれ2尾ずつ3回繰り返し測定を行い、各平均値を求めた。
<GC-MSメソッド>
カラムの種類: Inert Cap Pure Wax, length 60m, I.D. 0.25mm, df 0.25μm
カラム昇温条件: 40℃ 10min, 40~230℃(5℃/min)、230℃ 20min
カラム流量:線速度 28cm/sec, 流量1.7181mL/min, 圧力200.2kPa, コンスタントフローモード
 GC-MS分析によるトータルイオンクロマトを確認したところ、試験区と対照区は細かいピークでは差異は見られるが、似ている波形を示した(図2)。
 次に細かいピークの差異を検出するために、「Mass Profiler Professional(アジレント・テクノロジー(株)製)」を用いて全ピークを対象とした主成分分析を行った。結果、味噌添加飼料を投与した試験区と対照区では、第一主成分の軸(寄与率33.69%)において明瞭に識別された(図3)。次に味噌添加飼料を投与した試験区を牽引している主要な成分として、ローディングプロットデータの第一主成分軸上0.6以上の47成分について、ライブラリを用いた同定解析を行った(図4)。
 47成分の化合物名の推定を行った結果、魚臭低減/マスキング効果を有している可能性がある成分として酢酸エチル、フルフラール、αクベベンの3成分が検出された。これら3成分のピーク面積値を比較したところ、試験区では対照区と比べて、酢酸エチルは1.33倍、フルフラールは1.06倍、クベベンは1.12倍増加していることが判明した(表1)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 フルフラールは芳香族アルデヒドの一種で、味噌の香気に多く含まれていることが報告されている(柴崎一雄,岩渕せつ子.「味噌の香気成分に関する研究(第1報)揮発性カルボニル化合物について」, 1970)。また、フルフラールは魚特有の生臭さを消す調味液に含まれていることが報告されている(特開2009-171983号公報)。酢酸エチルもフルフラールと同様に味噌からよく検出され、また魚臭マスキング効果のある調味液に含まれていることが報告されている。αクベベンはセスキテルペン類の一種で、セスキテルペン類はかまぼこの杉板に含まれており、スケトウダラすり身の臭みをマスキングする効果があると報告されている(達家清明,小浜正江,末兼幸子,森大蔵.「かまぼこおよびかまぼこ板の揮発性成分のGC-MSによる同定定量」日本農芸化学会誌., 61, 5, 587-598, 1987)。
 従って、味噌添加飼料投与ブリの魚肉中で多く検出されたこれらにおい成分が、少なくとも一つ以上含まれていたことで、ブリ魚肉中に含まれる臭みをマスキングしたと考えられた。
実施例2 味噌添加飼料による魚類の不快臭の軽減(カンパチに対する試験)
(1)官能評価(尺度法)
 飼料100kgに対して未利用味噌(米味噌)を7kgの割合で添加して、3日間で2日以上、魚体重1~3質量%程度の飼料を2歳魚のカンパチ(約4kg)へ2ヶ月間投与した。また味噌を添加しない飼料を投与したカンパチを対照区とした。飼育後のカンパチ普通肉(血合を除いた部分)を約6~7mm幅に細断し、刺身として喫食した。魚肉の「生臭いフレーバー」について、尺度法(7段階)にて評価した。すなわち対照区を標準とし(中央4点)、それと比較したときの試験区の強度を7段階の中から選択した。パネル13名による3回繰り返し評価を行い、刺身は容器に入れ氷上に置いて評価に供した。
 結果、強度は3.9となり、味噌添加飼料を投与した魚肉においては味噌を添加しない飼料を投与した魚肉と比べて低減されていることが示された。
(2)官能評価(2点識別法)
 被験者21名に対し、試験区と対照区それぞれの刺身を喫食させ、「設問(1) 魚臭さをより強く感じた」「設問(2) よりおいしいと感じた」の2設問について「試験区」、「対照区」、「分からない」、のいずれかを選択させた。なお、それぞれのサンプルは試験区と対照区のいずれか分からないようブラインド試験とした。結果はχの二乗検定を用い、有意水準をp=0.05に設定して有意差の解析を行った。結果を表2に示した。
 味噌添加飼料を投与した魚肉においては、設問(1)において対照区が有意に多く選択され、設問(2)においては味噌投与区が有意に多く選択された。味噌添加飼料を投与した魚肉においては、味噌を添加しない飼料を投与した魚肉と比べ、魚臭さが低減され、よりおいしくなっていることが示された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
(3)におい成分分析
 カンパチ普通肉(血合を除いた部分)を約6~7mm幅に細断後、凍結して保管したものを分析直前に流水解凍した。身はミンチにして、10gを50mL容量のガラス瓶に入れ、瓶の蓋裏側にTwister PDMS(ガラス製撹拌子にPDMS(ポリジメチルシロキサン)をコーティングしたもの)(Gerstel社)を2個、外側から磁石で固定することで内包した。40℃雰囲気下で90分間静置し、ヘッドスペース(上部の空間)中の揮発性成分をTwister PDMSに吸着させ、GC/MSに供した。酢酸エチル、フルフラール、αクベベンの3成分について、それぞれ主要なm/z(43、96、161)のイオンピーク面積値を求めた。さらに試験区、対照区それぞれ3尾ずつ測定を行い、各平均値を求めた。
<GC-MSメソッド>
 実施例1と同様の方法で行った。
 酢酸エチル、フルフラール、αクベベンの3成分が検出された。これら3成分のピーク面積値を比較したところ、試験区では対照区と比べて、酢酸エチルについて1.06倍に増加していた。フルフラール、クベベンは増加しなかった(表3)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
(4)におい成分の含量値
 上述の官能評価(尺度法)において用いた試験区、対照区のカンパチ切り身について、酢酸エチル、フルフラール、αクベベンの3成分について含量値を測定した。ミンチ状の切り身100gを100gのジクロロメタンに浸漬し、25℃雰囲気下で3時間振盪した。上澄み液を採取し、固形物に再び100gのジクロロメタンに浸漬させ2時間振盪後、上澄みを採取し、先の上澄みと足し合わせ香気成分抽出液とした。窒素還流によりジクロロメタンを揮発させ適当量まで濃縮した。濃縮した抽出液をGC/MSにより分析した。酢酸エチル、フルフラール、αクベベンともに主要なm/z(43、96、161)のイオンピーク面積値を得た。なお、分析間誤差を補正するため、試験区、対照区いずれの抽出物においても内部標準としてビフェニルを添加した。すなわち上記の酢酸エチル、フルフラール、αクベベンのイオンピーク面積値を、ビフェニルの主要なm/z(154)のイオンピーク面積値で除した値を検出値として用いた。定量は外部標準添加法を用いた。検量線は一点検量線とし、各標準品5ppbの調製物を測定し基準値を得た。なお、αクベベンについては標品を入手することが出来なかったため、主要なm/z(161)のイオンピーク面積値の比率を算出した。
<GC-MSメソッド>
 実施例1と同様の方法で行った。
 結果を表4、および表5に示す。切り身中の成分含量は、酢酸エチルについて対照区0.76ng/gであるのに対し、試験区は1.07ng/gであった。フルフラールについて対照区0.40ng/gであることに対し、0.52ng/gであった。また、αクベベンについては対照区と比べて1.04倍含量が増加した。従って、少なくとも酢酸エチルが1.07ng/g以上、またはフルフラールが0.52ng/g以上、またはαクベベンが対照区に対し1.04倍の濃度が含まれるとき、魚肉切り身は魚臭さが低減されることが示された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
実施例3 味噌添加飼料による酢酸エチル、フルフラール、αクベベンの増加(フナの仲間である金魚に対する試験)
(1)におい成分分析
 飼料100gに対して未利用味噌(米味噌)を7gの割合(7質量%味噌添加試験区)、または3.5gの割合(3.5質量%味噌添加試験区)で添加して、一週間に5日以上、魚体重3.5~10質量%の飼料をワキン(小赤)(5~10g程度)へ44日間投与した。また味噌を添加しない飼料を投与したワキンを対照区とした。飼育後、筋肉部分を切り出し、2尾分を一つにした後にミンチ状にした。これを2gずつ10mL容量のガラス瓶に入れ、瓶の蓋裏側にTwister PDMS(ガラス製撹拌子にPDMS(ポリジメチルシロキサン)をコーティングしたもの)(Gerstel社)を2個、外側から磁石で固定することで内包した。40℃雰囲気下で2時間静置し、ヘッドスペース(上部の空間)中の揮発性成分をTwister PDMSに吸着させ、GC/MSに供した。酢酸エチル、フルフラール、αクベベンの3成分について、それぞれ主要なm/z(43、96、161)のイオンピーク面積値を求めた。さらに7g味噌添加試験区、3.5g味噌添加試験区、対照区それぞれ3回(各区6尾)ずつ測定を行い、各平均値を求めた。
 結果は表6に示す。αクベベンのみ7質量%添加試験区において2.53倍に増加していた。3.5質量%添加試験区においては増加していなかった。また、酢酸エチル、フルフラールについては7質量%、3.5質量%いずれにおいても増加していなかった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 本発明により、養殖魚の不快臭を低減することにより、養殖魚の価値を向上させることができる。
 本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (26)

  1.  魚肉中に、フルフラール、酢酸エチルおよびαクベベンからなる群から選択される香気成分の少なくとも1つを含み、該香気成分により魚肉中の不快臭が低減された養殖魚。
  2.  魚肉中のデカナール濃度に対する魚肉中のフルフラール濃度の比が2.0以上である、請求項1記載の養殖魚。
  3.  魚肉中のデカナール濃度に対する魚肉中の酢酸エチル濃度の比が1.5以上である、請求項1記載の養殖魚。
  4.  魚肉中のデカナール濃度に対する魚肉中のαクベベン濃度の比が1.2以上である、請求項1記載の養殖魚。
  5.  麹菌発酵物または大豆発酵物を含む飼料を用いて養殖した、請求項1~4のいずれか1項に記載の養殖魚。
  6.  麹菌発酵物または大豆発酵物が、麹または味噌である、請求項5記載の養殖魚。
  7.  麹菌発酵物または大豆発酵物が、米味噌、豆味噌、麦味噌、または調合味噌である、請求項6記載の養殖魚。
  8.  アジ科、サバ科、タイ科、ハタ科、メバル科、スズキ科、サケ科、キュウリウオ科、ウナギ科、ナマズ科、ドジョウ科、コイ科、ヒラメ科またはフグ科に属する魚である、請求項1~7のいずれか1項に記載の養殖魚。
  9.  ブリ(ハマチ)、カンパチ、ヒラマサ、ヒレナガカンパチ、シマアジ、マアジ、ビンナガ、クロマグロ、ミナミマグロ、タイセイヨウマグロ、タイセイヨウクロマグロ、キハダ、メバチ、コシナガ、ハガツオ、スマ、クロソイ、マダイ、アカハタ、キジハタ、アオハタ、クエ、タマカイ、マハタ、ユカタハタ、サラサハタ、スジアラ、チダイ、マサバ、イワナ(アメマス)、ニジマス、ヤマメ(サクラマス)、アマゴ(サツキマス)、カラフトマス、サケ、ギンザケ、マスノスケ、ベニザケ、イトウ、アユ、ウナギ、ナマズ、ドジョウ、コイ、フナ、ヒラメまたはトラフグである、請求項8記載の養殖魚。
  10.  鰓、内臓、尾部および頭部からなる群より選択される部位の少なくとも一つが除去されている請求項1~9のいずれか1項記載の養殖魚。
  11.  鰓および内臓が除去された形態である、請求項1~9のいずれか1項に記載の養殖魚。
  12.  請求項1~11のいずれか1項に記載の養殖魚の可食部。
  13.  請求項1~11のいずれか1項に記載の養殖魚の可食部の加工食品。
  14.  加熱食品または非加熱食品である、請求項13記載の食品。
  15.  魚肉1g当たり、0.4ng以上のフルフラールが含まれる、請求項1記載の養殖魚。
  16.  魚肉1g当たり、0.8ng以上の酢酸エチルが含まれる、請求項1記載の養殖魚。
  17.  麹菌発酵物または大豆発酵物を含む飼料を用いて養殖した、請求項1および15~16のいずれか1項に記載の養殖魚。
  18.  麹菌発酵物または大豆発酵物が、麹または味噌である、請求項17記載の養殖魚。
  19.  麹菌発酵物または大豆発酵物が、米味噌、豆味噌、麦味噌、または調合味噌である、請求項18記載の養殖魚。
  20.  アジ科、サバ科、タイ科、ハタ科、メバル科、スズキ科、サケ科、キュウリウオ科、ウナギ科、ナマズ科、ドジョウ科、コイ科、ヒラメ科またはフグ科に属する魚である、請求項1および15~19のいずれか1項に記載の養殖魚。
  21.  ブリ(ハマチ)、カンパチ、ヒラマサ、ヒレナガカンパチ、シマアジ、マアジ、ビンナガ、クロマグロ、ミナミマグロ、タイセイヨウマグロ、タイセイヨウクロマグロ、キハダ、メバチ、コシナガ、ハガツオ、スマ、クロソイ、マダイ、アカハタ、キジハタ、アオハタ、クエ、タマカイ、マハタ、ユカタハタ、サラサハタ、スジアラ、チダイ、マサバ、イワナ(アメマス)、ニジマス、ヤマメ(サクラマス)、アマゴ(サツキマス)、カラフトマス、サケ、ギンザケ、マスノスケ、ベニザケ、イトウ、アユ、ウナギ、ナマズ、ドジョウ、コイ、フナ、ヒラメまたはトラフグである、請求項20記載の養殖魚。
  22.  鰓、内臓、尾部および頭部からなる群より選択される部位の少なくとも一つが除去されている請求項1および15~21のいずれか1項記載の養殖魚。
  23.  鰓および内臓が除去された形態である、請求項1および15~22のいずれか1項に記載の養殖魚。
  24.  請求項1および15~23のいずれか1項に記載の養殖魚の可食部。
  25.  請求項1および15~24のいずれか1項に記載の養殖魚の可食部の加工食品。
  26.  加熱食品または非加熱食品である、請求項25記載の食品。
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