WO2019030991A1 - 空中映像表示装置 - Google Patents

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Abstract

空中映像表示装置は、平面視で互いに直交する複数の反射面を有する光学プレートと、被対象物からの光を偏向して光学プレートに導く偏向光学素子4とを備える。偏向光学素子4は、透光性の平板部材41と、平板部材41の内部に互いに離間して配置される複数の反射偏向面42とを有している。複数の反射偏向面42は、平板部材41の互いに対向する2面のうちの一方の面41aから入射した被対象物からの光を反射によって偏向して、他方の面41bから出射させる。

Description

空中映像表示装置
 本発明は、被対象物の実像を空中に結像させる空中映像表示装置に関するものである。
 近年、特殊な光学プレートを使用して被対象物の実像を空中に結像させ、その実像を観察者に観察させる空中映像表示装置が提案されてきている。ここで、被対象物には、ディスプレイ(例えば液晶表示装置(LCD))のほか、3次元的な物体も含まれるが、広義には、ディスプレイに表示される画像も含まれるものとする。
 通常、空中における実像(空中像)の結像位置は、光学プレートに対して被対象物と面対象となる位置であるため、観察者に見やすい空中像を提供すべく、光学プレートから大きく離れた位置に空中像を結像させる場合には、光学プレートに対して被対象物を大きく離す必要がある。そのため、光学プレートと被対象物とを含む空間が大きくなり、空中映像表示装置が大型化してしまう。また、光学プレートに対して光線の入射角度が所望の角度よりも極端に大きくなると、光学プレート内での多重反射によって反射の効率が低下し、空中像が暗くなる(空中像の輝度が低下する)。
 そこで、例えば特許文献1では、光学プレートに対して被対象物側に、偏向光学素子として、リニアプリズムを配置することで、上記の不都合を低減するようにしている。リニアプリズムは、一方向に同一形状(例えば断面直角三角形)で延びる複数の構造体(プリズム)を複数並列に形成した光学部材である。被対象物からの光をリニアプリズムによって屈折させて光学プレートに入射させることにより、光学プレートに対して被対象物を寝かせた配置であっても、リニアプリズムから光学プレートに対しては所望の入射角度(例えば45°~50°)に近づけて光線を入射させることができる。これにより、装置の薄型化を実現しつつ、上記の多重反射を低減して輝度低下を抑えるようにしている。
特開2017-26734号公報(請求項1、段落〔0007〕、〔0019〕、図1等参照)
 ところが、偏向光学素子として、光の屈折を利用したリニアプリズムを用いる構成では、偏向角度を大きくするのに限界があり、装置の薄型化に限界がある。すなわち、装置を薄型化すべく、リニアプリズムによる偏向角度を大きくしようとすると、周期的に並んだ各プリズムの傾斜面を立てていく(各プリズムの頂角を鋭角にしていく)必要がある。しかし、各プリズムの傾斜面が立ちすぎると、リニアプリズムを例えば樹脂材料で成形する場合に、各プリズムの頂角の部分(角部)をきれいに成形することができず、角部が丸みを帯びてしまう。また、各プリズムの傾斜面が立ちすぎることで、成形時に金型が抜けにくくなり、プリズム面精度が低くなる可能性がある。いずれにしても、リニアプリズムの製造誤差に起因して、所望の偏向特性が得られなくなる可能性がある。
 そのため、リニアプリズムによる偏向角度は、実際には20°~30°程度が限界である。したがって、装置の薄型化を図るべく、被対象物を光学プレートに対して寝かせて配置する場合でも、空中像の結像効率(輝度)を考慮すると、光学プレートに対して25°~15°程度までしか寝かせて配置することができず(それ以上寝かせて配置すると、リニアプリズムから光学プレートに対して所望の入射角度(例えば45°)で入射させることができなくなるため)、装置の薄型化に限界がある。
 本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、用いる偏向光学素子の構成を工夫することにより、装置の薄型化を図りつつ、空中像の輝度低下を抑えることができる空中映像表示装置を提供することにある。
 本発明の一側面に係る空中映像表示装置は、平面視で互いに直交する複数の反射面を有する光学プレートを備え、被対象物からの光を前記複数の反射面で反射させて、該光学プレートに対して前記光の入射側とは反対側の空中に導き、前記被対象物の実像を前記空中に結像させる空中映像表示装置であって、前記被対象物からの光を偏向して前記光学プレートに導く偏向光学素子をさらに備え、前記偏向光学素子は、透光性の平板部材と、前記平板部材の内部に互いに離間して配置され、前記平板部材の互いに対向する2面のうちの一方の面から入射した前記被対象物からの光を反射によって偏向して、他方の面から出射させる複数の反射偏向面とを有している。
 上記の構成によれば、複数の反射偏向面を平板部材の内部に有する反射型の偏向光学素子を用い、被対象物からの光を反射によって偏向するため、光学プレートに対して被対象物を平行に配置しても、被対象物からの光を光学プレートに対して所望の角度で偏向光学素子を介して入射させることが可能となる。これにより、装置の薄型化を図りつつ、空中像の輝度低下を抑えることが可能となる。
本発明の実施の形態1に係る空中映像表示装置の全体の構成を模式的に示す断面図である。 上記空中映像表示装置の光学プレートの概略の構成を示す斜視図である。 参考例の空中映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。 参考例の偏向光学素子としてのプリズム板の概略の構成を示す断面図である。 上記実施の形態1の偏向光学素子の詳細な構成を示す断面図である。 上記偏向光学素子の製造工程を模式的に示す説明図である。 上記偏向光学素子が表示装置に対して傾いて配置されている場合において、上記表示装置から出射される光の光路を示す説明図である。 上記偏向光学素子に様々な角度で入射する各光線の光路を模式的に示す説明図である。 上記偏向光学素子の他の構成を示す断面図である。 上記実施の形態1の空中映像表示装置の主要部を模式的に示す断面図である。 図10で示した各パラメータ間の幾何学的関係を模式的に示す説明図である。 上記実施の形態1の偏向光学素子の主要部を拡大して示す断面図である。 比較例1の空中映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。 実施例1の空中映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。 上記実施の形態1の空中映像表示装置の他の構成を模式的に示す断面図である。 上記空中映像表示装置が備える拡散制限部材の詳細な構成を示す断面図である。 半値角90°の光源から出射される光線の角度分布を示す説明図である。 半値角40°の光源から出射される光線の角度分布を示す説明図である。 図17の角度分布を有する光源からの光を偏向光学素子に入射させた場合において、上記偏向光学素子から出射される光線の角度分布を示す説明図である。 図18の角度分布を有する光源からの光を偏向光学素子に入射させた場合において、上記偏向光学素子から出射される光線の角度分布を示す説明図である。 本発明の実施の形態2の空中映像表示装置の構成を模式的に示す断面図である。 上記空中映像表示装置が備える透過制御部材の概略の構成を示す断面図である。 上記透過制御部材の透過率分布を示すグラフである。 本発明の実施の形態3の空中映像表示装置の構成を模式的に示す斜視図である。 図24のA-A’線矢視断面図である。 比較例2の空中映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。 実施例2の空中映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。 実施の形態3の空中映像表示装置が備える筐体のプレート保持部を変位させる機構を示す斜視図である。 上記プレート保持部を移動させる前後の様子を模式的に示す断面図である。 上記筐体の位置決め部を変位させる機構を示す斜視図である。 被対象物としてのディスプレイの設置面に対する取り付け手法の一例を示す断面図である。 上記筐体の他の構成を模式的に示す断面図である。 図32の筐体のプレート保持部を移動させる前後の様子を模式的に示す断面図である。 図32の筐体の位置決め部をプレート保持部に近づけた状態を示す断面図である。 本発明の実施の形態4の空中映像表示装置の構成を示す斜視図である。 図35のB-B’線矢視断面図である。 上記空中映像表示装置の他の構成を示す斜視図である。 図37のC-C’線矢視断面図である。
 〔実施の形態1〕
 本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をa~bと表記した場合、その数値範囲に下限aおよび上限bの値は含まれるものとする。また、本発明は、以下の内容に限定されるものではない。
 (空中映像表示装置の全体構成)
 図1は、本実施形態の空中映像表示装置1の全体の構成を模式的に示す断面図である。空中映像表示装置1は、被対象物の実像を空中に映像M(空中像)として結像させるものであり、ディスプレイ2と、光学プレート3と、偏向光学素子4とを備えている。
 ディスプレイ2は、画像を表示するデバイスであり、例えば液晶表示装置(LCD)や有機EL(Electro Luminescence)表示装置で構成される。本実施形態では、ディスプレイ2自体またはディスプレイ2の表示面2aに表示される画像が被対象物を構成している。したがって、本実施形態において、被対象物の実像とは、ディスプレイ2の表示面2aに表示される画像の実像を指す。ディスプレイ2は、光学プレート3と平行となるように、つまり、表示面2aが光学プレート3の厚み方向に垂直な面(例えば光入射側の面3a)と平行となるように位置している。
 偏向光学素子4は、光学プレート3に対してディスプレイ2側に配置されており、ディスプレイ2とともに筐体5内に収容されている。偏向光学素子4は、ディスプレイ2の光出射面である表示面2aと平行に配置されている。図1では、偏向光学素子4は、ディスプレイ2と離間して配置されているが、ディスプレイ2から偏向光学素子4への光の取り込み効率を向上させる観点では、偏向光学素子4はディスプレイ2と接して配置されていることが望ましい(図14参照)。なお、偏向光学素子4の詳細については後述する。
 光学プレート3は、筐体5の開口部5aに位置している。なお、光学プレート3は、筐体5の内部に収容されていてもよい。この場合、光学プレート3から出射される光を透過させるために、筐体5において、少なくとも光学プレート3と対向する部分を透明にすればよい。この光学プレート3は、ディスプレイ2から偏向光学素子4を介して入射する光を内部で反射させて、空中に映像Mを結像する。
 図2は、光学プレート3の概略の構成を示す斜視図である。本実施形態では、光学プレート3は、2枚の光学パネル20・30を積層して構成されている。光学パネル20は、光学パネル20・30の積層方向(例えばZ方向)に垂直な面内で互いに垂直な2方向のうちの一方向(例えばX方向)に、複数の板状部材21を接着層を介して並べることによって形成されている。光学パネル30は、上記2方向のうちの他の方向(例えばY方向)に、複数の板状部材31を接着層を介して並べることによって形成されている。
 各板状部材21は、Y方向に長尺状に形成される透明基板21aと、該透明基板21aにおけるX方向に対向する2面のうちの少なくとも一方に形成される反射面21bとを有している。同様に、各板状部材31は、X方向に長尺状に形成される透明基板31aと、該透明基板31aにおけるY方向に対向する2面のうちの少なくとも一方に形成される反射面31bとを有している。
 上記の構成において、ディスプレイ2からの光は、偏向光学素子4にて偏向された後、光学プレート3に入射し、光学プレート3の複数の反射面(反射面21b・31b)で反射された後、光学プレート3に対して上記光の入射側とは反対側の空中に導かれる。これにより、ディスプレイ2の表示面2aに表示された画像の実像が映像(空中像)Mとして空中に結像される。なお、光学プレート3によって空中に実像が結像される原理については、特許文献1と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
 なお、光学プレート3としては、上記の2層構造のほか、互いに直交する反射面(平面視でV字型(L字型))を同一面上にアレイ状に並べた1層構造のものを用いることもできる。
 (課題についての補足説明)
 次に、本実施形態の偏向光学素子4の詳細について説明する前に、前述した課題について説明を補足しておく。
 図3は、参考例1の空中映像表示装置1’の概略の構成を示す断面図である。光学プレート3に対して光線の入射角度が所望の角度(例えば45°~50°)から乖離していると、光学プレート3内での多重反射によって反射の効率が低下し、空中像が暗くなることは前述の通りである。そこで、例えば被対象物(ディスプレイ2)として、LCDなどの一般的な表示装置を用いる場合、上記表示装置は正面輝度が最も高いため、図3のように、光学プレート3に対してディスプレイ2を45°だけ傾斜させて配置することが望ましい。しかし、ディスプレイ2が上記のように傾斜していると、空中映像表示装置1’自体の大きさ(奥行きD2)がディスプレイ2の大きさによって決定してしまい(具体的には、奥行きD2を、(表示面の長さ)×(1/√2)よりも大きくすることが必要となり)、空中映像表示装置1’の薄型化に限界が生じてしまう。
 したがって、理想的には、図1で示したように、光学プレート3に対してディスプレイ2を平行に配置にすることが望ましい。この場合、空中映像表示装置1の奥行きをD2よりも小さいD1にして、薄型化を図ることができる。しかも、光学プレート3とディスプレイ2とを平行に配置した構成で、ディスプレイ2からの光線を光学プレート3に対して最適な角度(例えば45°)で入射させることができれば、空中映像表示装置1の薄型化と空中像の高輝度とを両立させることができる。そこで、できるだけディスプレイ2を光学プレート3に対して平行に配置にしつつ、ディスプレイ2と光学プレート3との間に偏向光学素子4を配置して、ディスプレイ2からの光線を光学プレート3に対して最適な角度に偏向し、入射させる構成について検討する。
 ここで、上記の偏向光学素子4として、屈折によって光を偏向する光学素子を用いる場合について考える。図4は、上記光学素子の一例である参考例2のプリズム板100の概略の構成を示す断面図である。プリズム板100は、特許文献1で用いられるリニアプリズムに対応する光学素子であり、複数のプリズム101aと平板部101bとを一体化して構成されている。複数のプリズム101aは、断面直角三角形状であり、各プリズム101aの斜面101a1が互いに平行となるように、平板部101b上に並列に配置されている。また、各プリズム101aおよび平板部101bは、同一材料(例えば樹脂)で形成されている。プリズム板100に対して、被対象物からの光が平板部101b側から入射すると、上記光は、平板部101bおよびプリズム101aのそれぞれと空気層との界面での屈折によって偏向され、光学プレート3に入射する。
 ここで、プリズム101aの斜面101a1と平板部101bとのなす角度を、プリズム角α(°)と呼ぶ。なお、このプリズム角αは、立ち上がり角とも呼ばれる。プリズム板100での入射光の偏向角度は、プリズム板100の材質の屈折率と、プリズム角αとによって決まる。例えば、プリズム板100の材質が、屈折率1.49のPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)であるとすると、プリズム角αが40°である場合、平板部101bに対して垂直方向から入射した光線は、プリズム板100から出射されるときに、約22°偏向される。
 空中映像表示装置1を薄型化すべく、図1のように、ディスプレイ2を光学プレート3に対して完全に平行となるように配置する場合、空中像の画像品質を最も良好にすることを考えると、偏向光学素子4での偏向角度として、45°を実現する必要がある。しかし、偏向光学素子4として、上記したPMMA製のプリズム板100を用いた場合、このプリズム板100で偏向角度45°を実現しようとすると、プリズム角αを約66°にすることが必要となる。このようにプリズム角αが大きいと、前述の通り、各プリズム101の頂角部分をきれいに成形することができず、頂角部分が丸みを帯びてしまう。また、プリズム101aの斜面101a1が平板部101bに対して立ちすぎることで、成形時に金型が抜けづらくなり、プリズム面精度が低くなる可能性がある。その結果、良好な偏向特性を得ることが困難となる。
 そこで、本実施形態では、偏向光学素子4として、屈折ではなく、反射を利用して光を偏向する光学素子を用いる。以下、本実施形態の偏向光学素子4の詳細について説明する。
 (偏向光学素子の詳細について)
 図5は、本実施形態の偏向光学素子4の詳細な構成を示す断面図である。本実施形態の偏向光学素子4は、透光性の平板部材41と、複数の反射偏向面42とを有している。平板部材41は、例えばガラスや樹脂などからなる透明基材であり、互いに対向する2面として、面41aおよび面41bを有している。なお、これらの面41aおよび面41bは、平板部材41の厚み方向に垂直な面である。反射偏向面42は、平板部材41の一方の面41aから入射した被対象物からの光を反射によって偏向して、他方の面41bから出射させる金属反射面(ミラー、ルーバー)で構成されており、平板部材41の内部に互いに離間して配置されている。
 複数の反射偏向面42は、平板部材41の2面(面41a、面41b)の少なくとも一方(ここでは両方)に対して傾斜している。なお、各反射偏向面42の傾き角度(厳密には、上記2面の少なくとも一方の面の法線に対する各反射偏向面42の傾斜角度)のことを、以下では、ルーバー角度とも称する。
 また、複数の反射偏向面42は、図5の紙面に平行な面内、つまり、被対象物から任意の反射偏向面42に入射する入射光線(例えば光線La)と、該入射光線が反射偏向面42で反射偏向されて出射されるときの出射光線(例えば光線Lb)とを含む面内で、平板部材41の厚み方向に垂直な一方向に所定のピッチで離間して配置されている。
 上記構成の偏向光学素子4では、入射光を各反射偏向面42での反射によって偏向するため、各反射偏向面42の傾斜角度(ルーバー角度)に応じて、入射する光の偏向方向(出射方向)を調整することができる。したがって、偏向光学素子4の平板部材41の材質および各反射偏向面42のルーバー角度を適切に設定することにより、ディスプレイ2を光学プレート3に対して平行に配置にしつつ、ディスプレイ2からの光線を、光学プレート3に対して最適な角度で入射するように、偏向光学素子4によって偏向することが容易となる。
 例えば、平板部材41をガラス(屈折率1.517のBK7(Schott社製))で構成した場合、ルーバー角度を13.9°に設定することで、偏向光学素子4の面41aに対して垂直に入射した光線La(入射角0°の光線)を、反射偏向面42で反射させ、面41bに対して出射角が45°となるように偏向して光線Lbとして出射することができ、これによって、光学プレート3に対して最適な角度(45°)で光線Lbを入射させることができる。
 また、例えば、平板部材41を、屈折率1.49のPMMA樹脂で構成した場合、ルーバー角度を14.2°に設定することで、偏向光学素子4の面41aに対して垂直に入射した光線Laを、反射偏向面42で反射させ、面41bから出射角45°の光線Lbとして出射することができ、この場合も、光学プレート3に対して最適な角度(45°)で光線Lbを入射させることができる。
 なお、ディスプレイ2から出射される光に含まれる光線のうち、偏向光学素子4の面41aに対して垂直以外の角度で入射する光線については、面41aでの屈折、反射偏向面42での反射、面41bでの屈折を経て光学プレート3に導かれ、光学プレート3に対して最適な角度(45°)に近い角度で入射することになる。
 上記構成の偏向光学素子4は、例えば以下のようにして製造することができる。図6は、本実施形態の偏向光学素子4の製造工程を模式的に示している。まず、所定の厚みのガラス基板51を用意する(工程(A))。そして、ガラス基板51の両面に反射膜52をコーティングする(工程(B))。この反射膜52のコーティングは、例えばアルミニウムの蒸着によって行うことができる。なお、この反射膜52は、上述した反射偏向面42を形成する膜である。次に、反射膜52をコーティングしたガラス基板51を、接着剤を介して複数枚(例えば数百枚)積層して接着し、ガラスブロック53を形成する(工程(C))。その後、得られたガラスブロック53を、反射膜52に対して斜め方向から、所定のピッチで切断する(工程(D))。切断した個片を所定の形状(例えば薄い直方体形状)に整形することにより、薄い平板状の偏向光学素子4を得ることができる。なお、工程Dにおいて、ガラスブロック53を切断する向き(反射膜52に対する切断角度)は、得ようとする偏向光学素子4の所望のルーバー角度に応じて適宜調整されればよい。
 なお、ガラス基板51の代わりに樹脂基板(例えばPMMAからなる基板)を用いても、上記と同様の手法で偏向光学素子4を製造することができる。樹脂基板を用いた場合は、ガラス基板51を用いた場合よりも安価に偏向光学素子4を製造することができる。
 以上のように、光学プレート3のディスプレイ2側に、平板部材41および複数の反射偏向面42を有する偏向光学素子4を配置することにより、光学プレート3に対してディスプレイ2を完全に平行に配置しつつ、ディスプレイ2からの光線を、偏向光学素子4で反射偏向させて、光学プレート3に対して最適な角度で入射させることができる。したがって、光学プレート3に対するディスプレイ2の平行配置により、空中映像表示装置1の薄型化を達成することができる。しかも、ディスプレイ2からの光線が光学プレート3に対して最適な角度で入射することで、光学プレート3での多重反射が低減される。これにより、光学プレート3での多重反射に起因する空中像の輝度低下およびゴースト像の発生を抑えることができる。
 なお、光学プレート3に対してディスプレイ2を完全に平行に配置した場合、上述した空中映像表示装置1の薄型化の効果が最も高いが、平行から若干(例えば数°~15°程度)ずれた配置であってもよい。この場合でも、図3のようにディスプレイ2を光学プレート3に対して45°傾ける構成や、屈折型のプリズム板100を用い、かつ、ディスプレイ2を傾けて配置する構成に比べると、光学プレート3に対するディスプレイ2の傾き角度は十分に小さいため、空中映像表示装置1の薄型化の効果が得られることに変わりはない。
 また、偏向光学素子4の複数の反射偏向面42は、平板部材41の互いに対向する面41aおよび面41bの少なくとも一方に対して傾斜している。これにより、ディスプレイ2に対して偏向光学素子4を平行またはそれに近い状態で配置しつつ、ディスプレイ2からの入射光を複数の反射偏向面42で反射偏向して光学プレート3に入射させる構成を確実に実現することができる。
 また、複数の反射偏向面42は、任意の反射偏向面42に対する入射光線(例えば光線La)と出射光線(例えば光線Lb)とを含む面内で平板部材41の厚み方向に垂直な一方向に離間して配置されている。これにより、ディスプレイ2からの入射光を各反射偏向面42での反射によってほぼ同じ方向に偏向することができ、光学プレート3に対して最適な角度またはこれに近い角度範囲で光を確実に入射させることができる。
 (偏向光学素子と被対象物との位置関係について)
 本実施形態では、上述のように、偏向光学素子4は、ディスプレイ2の光出射面である表示面2aと平行に配置されている(図1参照)。これにより、空中に結像される実像の品位の低下を抑えることができる。より詳しくは、以下の通りである。
 図7は、偏向光学素子4がディスプレイ2に対して傾いて配置されている場合において、ディスプレイ2から出射される光の光路を示している。偏向光学素子4がディスプレイ2に対して傾いて配置されていると、ディスプレイ2の表示面2aと偏向光学素子4との距離(光路長)が、表示面2a上の位置によって異なる。このため、ディスプレイ2から出射された光を偏向光学素子4の反射偏向面42(図5参照)で一方向(図7の紙面に平行な方向)に反射偏向する構成では、ディスプレイ2に表示された画像を上記一方向に引き伸ばした画像の実像が空中像として観察されてしまう。これは、ディスプレイ2から偏向光学素子4を介して光学プレート3に入射する光の光路を展開したときに、ディスプレイ2が、破線で示すディスプレイ2Vに対応することになり、図7の紙面に平行な面内において、ディスプレイ2の長さ(表示画像の長さ)H1よりも、ディスプレイ2Vの長さ(表示画像の長さ)H2のほうが長くなることから容易に理解できる。
 本実施形態のように、偏向光学素子4がディスプレイ2の表示面2aと平行に配置されている構成では、ディスプレイ2の表示面2aと偏向光学素子4との距離が、表示面2a上の位置に関係なく一定となり、表示面2a上の位置によって、表示面2aと偏向光学素子4との間の光路長に差が生じることがなくなる。これにより、ディスプレイ2から出射された光を偏向光学素子4の反射偏向面42で一方向に反射偏向する構成であっても、ディスプレイ2に表示された画像の実像を、上記画像と同じ縦横比で(一方向に引き伸ばされることなく)空中に結像することができる。その結果、空中に結像される実像の品位の低下を抑えることができる。
 (反射偏向面のピッチと輝度ムラについて)
 図8は、偏向光学素子4に様々な角度で入射する光線L1~L3の光路を模式的に示している。光線L1は、偏向光学素子4の面41aに対して垂直に入射し、反射偏向面42で反射偏向された後、面41bから45°方向に出射される光線(望ましい光線)である。光線L2は、偏向光学素子4の面41aに斜め方向から入射し、反射偏向面42で反射偏向されずに平板部材41をそのまま透過して面41bから出射される光線(無反射光線)である。光線L3は、偏向光学素子4の面41aに斜め方向から入射し、複数の反射偏向面42で反射偏向されて、面41bから出射される光線(複数回反射光線)である。なお、図8では、光線L1~L3をそれぞれの入射位置をずらして図示しているが、2枚の反射偏向面42・42の間の同じブロック(平板部材41)でも、これらの光線L1~L3が存在する可能性はある。
 偏向光学素子4の複数の反射偏向面42のピッチが異なると、光線L1~L3の各透過量が、偏向光学素子4の場所によって変化する。例えば、複数の反射偏向面42のピッチが広い場所では、光線L2の透過量が増大する。一方、複数の反射偏向面42のピッチが狭い場所では、光線L3の透過量が増大し、光線L1の透過量が減少する場合がある。このように、光線L1~L3の各透過量が偏向光学素子4の場所によって変化し、各透過量のバランスが偏向光学素子4の場所によって変化すると、偏向光学素子4を介して光学プレート3に入射する光の光量が場所によって変化する。なお、光線L2および光線L3は、空中像としては結像に寄与しないが(光学プレート3に対して所望の角度範囲で入射しないため)、光線L1によって結像される空中像に対しては、光線L2および光線L3の透過光量の(場所による)ムラの影響が反映されてしまい、結果として、光学プレート3を介して空中に結像される空中像に輝度ムラが生じてしまう。
 以上のことを考慮し、本実施形態では、偏向光学素子4の複数の反射偏向面42は、これらが離間して配置される上記一方向に一定のピッチで配置されている。例えば、偏向光学素子4(平板部材41)の厚み2mmに対して、複数の反射偏向面42は、上記一方向に0.5mmピッチで配置されている。これにより、偏向光学素子4の場所によって光線L1~L3の各透過量が変化するのを抑えて、偏向光学素子4を介して光学プレート3に入射する光の光量の分布にムラが生じるのを抑えることができる。その結果、光学プレート3を介して空中に結像される空中像に輝度ムラが生じるのを抑えることができる。
 (複数回反射光線を低減する構成)
 図9は、本実施形態の偏向光学素子4の他の構成を示す断面図である。同図に示すように、偏向光学素子4は、複数の反射偏向面42の裏面側に無反射層43を有していることが望ましい。つまり、平板部材41の透明な媒質41cを挟む位置関係にある2つの反射偏向面42のうち、一方の反射偏向面42と、透明な媒質41cとの間に無反射層43が設けられていることが望ましい。
 なお、上記の無反射層43は、図6で示した製造工程において、反射膜52をコーティングしたガラス基板51を複数枚積層して接着する際に、黒色顔料(例えばカーボンブラック)を添加した接着剤を用いることによって実現することができる。すなわち、黒色顔料を添加した接着剤は、入射光を反射させずに吸収するため、上記の無反射層43(光吸収層)として機能することができる。また、ガラス基板51の両面に塗布された反射膜52の一方にさらに墨塗りを行って墨塗り面とするか、ガラス基板51の片面に反射膜52を塗布し、もう片方に墨塗りを行って墨塗り面とし、複数枚のガラス基板51を接着剤によって積層接着するようにしてもよい。この場合は、墨塗り面が無反射層43を構成する。
 上記のように、複数の反射偏向面42の裏面側に無反射層43を設けることにより、偏向光学素子4の内部で、任意の反射偏向面42に入射した光線L3がそこで反射偏向され、媒質41cを介して隣り合う他の反射偏向面42に向かう場合でも、その光線L3を他の反射偏向面42の直前の無反射層43で吸収して、偏向光学素子4から出射されないようにすることができる。つまり、複数の反射偏向面42で反射され、所望の角度以外で光学プレート3に入射する光線L3を減らすことができる。その結果、光線L3に起因するゴースト像の発生を抑えることができる。
 (光学プレートに最適な角度で光を入射させるための条件)
 図10は、本実施形態の空中映像表示装置1の主要部を模式的に示す断面図である。被対象物が、画像を表示するディスプレイ2である場合において、光学プレート3に対するディスプレイ2の配置角度(後述する角度Ddに対応する)によって、ディスプレイ2からの光を光学プレート3に最適角度θで入射させるための、偏向光学素子4での偏向角度は変わってくる。そこで、本実施形態の空中映像表示装置1は、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。すなわち、
  35°<Dd+sin-1(nsin(2×Ld))<55°
                           ・・・(1)
 ここで、
  Dd:ディスプレイ2の表示面2aと光学プレート3とのなす角度(°)
  n :偏向光学素子4の各反射偏向面42で反射偏向されるディスプレイ2からの光が通過する平板部材41の媒質41cのd線(波長587.56nm)の屈折率
  Ld:偏向光学素子4の各反射偏向面42と、平板部材41の面41aまたは面41bの法線Nとのなす角度(°)
である。
 条件式(1)は、ディスプレイ2からの光を、偏向光学素子4を介して光学プレート3に最適角度θで入射させるための条件を規定している。条件式(1)において、sin-1(nsin(2×Ld))は、ディスプレイ2から出射される光に含まれる光線のうち、偏向光学素子4の面41aに対して垂直に入射する光線(入射角0°)が反射偏向面42で反射された後、面41bから出射されるときの出射角を指し、スネルの法則より導かれる。上記出射角をφ(°)とすると、条件式(1)は、以下の条件式(1a)のように書き換えることができる。
  35°<Dd+φ<55°   ・・・(1a)
 一方、図11は、図10で示した最適角度θと、角度Ddと、出射角φとの間の幾何学的関係を模式的に示している。図11より、最適角度θは、以下の式(A)で表されることがわかる。
  θ=90°-(Dd+φ)   ・・・(A)
 条件式(1)または(1a)を満足すると、式(A)より、
  35°<θ<55°   ・・・(B)
が成り立つ。
 つまり、条件式(1)を満足するように、ディスプレイ2の配置角度(角度Dd)および偏向光学素子4の各反射偏向面42の傾斜角度(角度Ld)を設定することにより、ディスプレイ2からの光は、偏向光学素子4を介して、光学プレート3に対して、式(B)を満足する最適な角度範囲(45°に近い入射角度)で入射することになる。これにより、光学プレート3での多重反射が確実に低減されるため、光学プレート3によって空中に結像される空中像の輝度を確実に向上させることができるとともに、ゴースト像の発生を確実に低減することができる。
 (偏向光学素子の反射偏向面のピッチに関する条件)
 図12は、本実施形態で用いる偏向光学素子4の主要部を拡大して示す断面図である。本実施形態の空中映像表示装置1は、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。すなわち、
  P<t(tan(2×Ld)-tan(Ld))   ・・・(2)
 ここで、
  P :偏向光学素子4の各反射偏向面42の配列ピッチ(mm)
  t :偏向光学素子4の平板部材41の厚み(mm)
  Ld:偏向光学素子4の各反射偏向面42と、平板部材41の面41aまたは面41bの法線Nとのなす角度(°)
である。
 条件式(2)は、ディスプレイ2から出射される光に含まれる光線のうち、偏向光学素子4に対して垂直に入射した光線が、複数の反射偏向面42で複数回反射されてゴースト光として光学プレート3に入射するのを低減するための条件を規定している。すなわち、図12で示すように、ディスプレイ2から出射される光に含まれる光線のうち、偏向光学素子4の面41aに対して垂直に入射する光線Lが、反射偏向面42の面41a側の端部で反射されて進行する場合を考える。このとき、光線Lが一方の反射偏向面42で反射された後、隣り合う他方の反射偏向面42またはこれと同一面に到達するまで進行するときの、偏向光学素子4の厚み方向に垂直な方向の進行距離S2は、以下の式で表される。
  S2=t・tan(2×Ld)   ・・・(C)
 また、図12の幾何学的関係により、距離S1は、以下の式で表される。
  S1=t・tan(Ld)   ・・・(D)
 S2-S1の値が、複数の反射偏向面42の配列ピッチP以下であると、光線Lが隣り合う反射偏向面42で複数回反射されて偏向光学素子4から出射され、光学プレート3に対して最適な角度範囲以外の角度で入射することになる。このような光線Lは、ゴースト像を生じさせる原因となる。したがって、ゴースト像を生じさせる光線Lを低減するためには、
  P<S2-S1   ・・・(E)
を満足することが必要となる。
 式(C)(D)を式(E)に代入すると、式(E)は、条件式(2)と等価となる。すなわち、条件式(2)を満足することにより、光線Lが偏向光学素子4に入射して複数の反射偏向面42で複数回反射され、ゴースト光として光学プレート3に入射するのを低減することができ、ゴースト像の発生を低減することができる。
 (シミュレーションについて)
 次に、本実施形態の空中映像表示装置1の薄型化の効果を確認するため、以下のシミュレーションを行った。その結果について説明する。
 図13は、比較例1の空中映像表示装置1aの概略の構成を示す断面図であり、図14は、実施例1の空中映像表示装置1の概略の構成を示す断面図である。実施例1の空中映像表示装置1は、光学プレート3に対してディスプレイ2を平行に配置し、偏向光学素子4をディスプレイ2と接するように配置して構成されている。一方、比較例1の空中映像表示装置1aは、実施例1の空中映像表示装置1から偏向光学素子4を省き、ディスプレイ2を光学プレート3に対して45°傾けて配置した構成である(光学プレート3に対して最適な角度で光線を入射させるため)。なお、図13および図14では、説明に関係のない部材(装置のメカ部材やディスプレイ2の支持基板等)の図示を省略している。
 ここで、いずれの空中映像表示装置1・1aにおいても、用いた光学プレート3のサイズは、縦244mm×横244mmであり、ディスプレイ2の表示面2aのサイズは、対角10インチ(縦221mm×横124mm)であり、光学プレート3からの空中像(映像M)の飛び出し量は、100mmであった。なお、空中像の飛び出し量とは、空中像の中心から光学プレート3までの、光学プレート3に対して45°方向の距離を指す。
 空中映像表示装置1a・1において、ディスプレイ2を収容する筐体5の厚みを、それぞれ奥行方向の厚みt1(mm)およびt2(mm)としたとき、比較例1の空中映像表示装置1aでは、厚みt1が115mmであったのに対して、実施例1の空中映像表示装置1では、厚みt2が71mmであった。したがって、偏向光学素子4を用いた実施例1の空中映像表示装置1によれば、偏向光学素子4を用いない比較例1の空中映像表示装置1aに比べて、大幅に薄型化できていることがわかる。
 また、実施例1の空中映像表示装置1では、表示面2aと光学プレート3とのなす角度をDd(°)とし、平板部材41の媒質41cのd線の屈折率をnとし、偏向光学素子4において、面41bの法線に対する各反射偏向面42の傾斜角度をLd(°)としたとき、Dd=0°、n=1.517、Ld=13.9°であった。この場合、Dd+sin-1(nsin(2×Ld))=45°となり、条件式(1)を満足していた。
 また、実施例1の空中映像表示装置1では、偏向光学素子4の各反射偏向面42の配列ピッチをP(mm)とし、偏向光学素子4の平板部材41の厚みをt(mm)としたとき、P=0.5、t=2.0、Ld=13.9°であり(上述した条件式(2)の右辺は0.56であり)、条件式(2)を満足していた。
 (空中映像表示装置の他の構成)
 図15は、本実施形態の空中映像表示装置1の他の構成を模式的に示す断面図である。同図に示すように、空中映像表示装置1は、図1の構成に加えて、拡散制限部材6をさらに備えていてもよい。拡散制限部材6は、偏向光学素子4に対して被対象物側(ディスプレイ2側)に配置され、被対象物からの光(拡散光)を、所定範囲内の拡散角度に制限して(狭めて)出射する平板状の光学部材である。
 図16は、拡散制限部材6の詳細な構成を示す断面図である。拡散制限部材6は、透光性部材61と、透光性部材61の内部で互いに離間して所定のピッチで配置される複数の遮光板62とを有している。遮光板62の配列ピッチは、偏向光学素子4の反射偏光板42の配列ピッチと一致していることが望ましいが、互いに異なっていてもよい。また、遮光板62は、平板状の拡散制限部材6の厚み方向に垂直な面61aに対して垂直に設けられていることが望ましいが、入射光を所定範囲内の拡散角度に制限して出射できるのであれば、面61aに対して傾いていてもよい。
 上記のように、入射光を所定範囲内の拡散角度に制限して出射する拡散制限部材6としては、例えば住友スリーエム社製のプライバシーフィルターを用いることができる。
 被対象物として、例えばLCDなどのディスプレイ2を用いた場合、ディスプレイ2から出射される光は、一般的にある広がりを有している。ディスプレイ2から完全な平行光だけが出射されれば、偏向光学素子4で偏向されて出射される光線は、きれいに所望の角度成分(例えば光学プレート3に対して45°で入射する成分)だけを持つ光線となる。しかし、広がりを持った角度成分の光が偏向光学素子4に入射すると、偏向光学素子4にて所望の角度以外の角度で偏向されて出射される光線が存在してしまう。そして、このような光線が光学プレート3に入射すると、上述のように光学プレート3での多重反射によって輝度低下やゴースト像の発生が起こる。
 本実施形態のように、偏向光学素子4に対して被対象物側に拡散制限部材6を配置することにより、ディスプレイ2から広がりを持つ光が拡散制限部材6に入射した場合でも、入射光のうちで角度βよりも大きい角度で拡散する光線については遮光板62で吸収され、角度β以下の角度で拡散する光線は、遮光板62で吸収されずに拡散制限部材6から出射され、偏向光学素子4に入射する。つまり、拡散制限部材6に入射した光は、拡散角度が入射光よりも狭い所定範囲内(上記の例では角度β以下)に制限されて出射され、偏向光学素子4に入射する。これにより、偏向光学素子4にて所望の角度以外の角度で偏向されて光学プレート3に入射する光線を減らすことができる。その結果、光学プレート3での多重反射を低減して、輝度低下やゴースト像の発生を抑えることができる。
 ここで、偏向光学素子4に入射する光の広がりと、偏向光学素子4から出射される光の角度分布との関係について考察する。図17は、半値角90°の光源から出射される光線の角度分布(出射方向と強度との関係)を示し、図18は、半値角40°の光源から出射される光線の角度分布(出射方向と強度との関係)を示している。ここで、半値角とは、正面(出射方向は0°の方向とする)の光の強度に比べて、強度が半分になるときの角度を指す。なお、出射方向0°は、偏向光学素子4に対して入射角0°で入射する方向(垂直入射のときの入射方向)に対応し、同心円の中心から半径方向外側に向かう方向は、光の強度が増大する方向に対応する。また、図19および図20は、偏向光学素子4から出射される光線の角度分布(出射方向と強度との関係)を示しており、図19は、一例として、図17の角度分布を有する光源からの光を偏向光学素子4に入射させた場合を示し、図20は、一例として、図18の角度分布を有する光源からの光を偏向光学素子4に入射させた場合を示している。
 各光源からの光を偏向光学素子4にて反射偏向させる場合、図19および図20より、半値角90°の光源よりも半値角40°の光源を用いたほうが、つまり、光線の広がり(拡散角度)のより小さい光源を用いたほうが、偏向光学素子4にて反射偏向されて出射され、光学プレート3に対して所望の角度(例えば45°方向)で入射する光の強度が高いことがわかる。これは、偏向光学素子4に入射する光線の広がりが大きいと、偏向光学素子4での反射偏向により、光学プレート3に対して所望の角度以外の角度で入射する光が増大し、光学プレート3に対して所望の角度で入射する光が減少するためである。したがって、このような考察からも、拡散角度の狭い光を偏向光学素子4に入射させるほうが、光学プレート3に対して所望の角度で入射する光を増大させるのに有利であることがわかる。
 よって、本実施形態のように、拡散制限部材6を配置して被対象物からの光の拡散角度を制限し、拡散角度の狭い光を偏向光学素子4に入射させることにより、偏向光学素子4から光学プレート3に対して所望の角度で入射する光を増大させて、光学プレート3での多重反射を低減し、多重反射に起因する輝度低下やゴースト像の発生を抑えることができると言える。
 なお、図19および図20の角度分布より、偏向光学素子4に入射する光の半値角は、60°(40°と90°との間)以下であることが、光学プレート3に対して所望の角度で入射する光を増大させて、多重反射に起因する輝度低下やゴーストの発生を抑える点で望ましく、半値角40°以下であることがさらに望ましいと言える。したがって、拡散制限部材6が、被対象物からの光を所定範囲の拡散角度に制限して出射する際の上記所定範囲(角度β)としては、全角60°以下(垂直入射(0°方向)に対して±30°以下)であることが望ましく、全角40°以下(垂直入射(0°方向)に対して±20°以下)であることがさらに望ましいと言える。
 (その他)
 偏向光学素子4は、光学プレート3と被対象物(ディスプレイ2)との間であれば、どの位置に設けられてもよいが、被対象物から偏向光学素子4への光の取り込み効率向上(入射光の漏れ防止)の観点から、光学プレート3と被対象物との中間位置よりも、被対象物側に配置されていることが望ましい。
 偏向光学素子4をディスプレイ2に対して傾けて配置する場合、偏向光学素子4においてディスプレイ2との距離が近い側の端部から遠い側の端部に向かうにつれて、複数の反射偏向面42の傾斜角度(図12の角度Ld)が大きくなるように、偏向光学素子4を構成してもよい。この場合、ディスプレイ2に対する偏向光学素子4の傾きに起因して、ディスプレイ2に表示された画像の実像が一方向に引き伸ばされるのを、複数の反射偏向面42の異なる角度での反射偏向によって打ち消すことができる。これにより、空中に結像される実像の品位の低下を抑えることができる。
 〔実施の形態2〕
 図21は、本発明の実施の形態2の空中映像表示装置1の構成を模式的に示す断面図である。同図に示すように、本実施形態の空中映像表示装置1は、実施の形態1の図1で示した構成に加えて、透過制御部材7をさらに備えている。なお、図21では、透過制御部材7は、偏向光学素子4と接して配置されているが、離間して配置されてもよい。また、透過制御部材7を設ける構成は、拡散制限部材6を設ける図16の構成にも勿論適用可能である。以下、実施の形態1と異なる部分について説明する。
 図22は、透過制御部材7の概略の構成を示す断面図である。透過制御部材7は、偏向光学素子4(図21参照)からの光を所定範囲内の拡散角度に制限して透過させる平板状の光学部材であり、偏向光学素子4と光学プレート3との間の光路中に配置されている。透過制御部材7は、透光性の平板部材71と、平板部材71の内部で互いに離間して配置される複数の遮光板72とを有している。平板部材71は、例えば透明な樹脂(例えばシリコーンゴム)で構成されており、光入射側の面71aおよび光出射側の面71bを有している。これらの面71a・71bは、平板部材71の厚み方向に垂直な面であり、互いに対向している。複数の遮光板72は、例えば黒色顔料を含有する樹脂(例えばシリコーンゴム)で構成されており、帯状に形成され、平板部材71の内部に所定のピッチで並んで配置されているとともに、平板部材71の厚み方向(面71a・71bの法線Nの方向)に対して傾斜した状態で配置されている。本実施形態では、複数の遮光板72は、法線Nに対して約45°傾斜しているが、この傾斜角度は適宜変更可能である。
 図23は、透過制御部材7の透過率分布を示している。上記のように複数の遮光板72が法線Nに対して傾斜していることにより、透過制御部材7の面71aに入射する光線の入射方向(透過制御部材7の透過方向)によっては、遮光板72で吸収される光線や、遮光板72で吸収されずに面71bから出射される光線が存在する。その結果、透過制御部材7を透過する光線の透過率は、平板部材71の厚み方向を基準とする角度に応じて変化する特性となっている。具体的には、複数の遮光板72が法線Nに対して約45°傾斜している場合、透過制御部材7(例えば1.0mm厚)を透過する光線の透過率は、法線Nに対して約45°傾斜した方向(γ≒45°)において最大(80%)となり、上記透過率が最大の方向に対する角度差が大きくなるにしたがって、光線の透過率が減少する特性となっている。このように、本実施形態の透過制御部材7は、厚み方向とは異なる方向に透過率が最大となる特性を有している。
 なお、複数の遮光板72が法線Nに対して例えば約10°傾斜している場合、透過制御部材7(例えば1.0mm厚)を透過する光線の透過率は、法線Nに対して約10°傾斜した方向において最大となり、複数の遮光板72が法線Nに対して例えば約20°傾斜している場合、透過制御部材7(例えば1.0mm厚)を透過する光線の透過率は、法線Nに対して約20°傾斜した方向において最大となることがわかっている。また、複数の遮光板72の傾斜角度によっては、透過制御部材7において透過率が最大となる方向と各遮光板72とが完全に平行となる場合もあり得る。以上のことから、複数の遮光板72は、透過率が最大となる方向と平行または略平行となるように、平板部材71の厚み方向に対して傾斜した状態で配置されていると言うことができる。なお、厚み方向に対して傾斜した状態には、厚み方向に対する傾斜角度が0°(厚み方向と平行)となる状態は含まれない。また、本明細書において、「略平行」とは、角度差が例えば10°以下であることを指すが、5°以下であることが望ましい(以下での説明においても、「略平行」は上記と同様に解釈するものとする)。
 このように、複数の遮光板72が平板部材71の内部で傾斜して設けられていることにより、ディスプレイ2から偏向光学素子4を介して透過制御部材7に光が入射する際に、偏向光学素子4から出射される光のうちで角度ψ(図22参照)よりも大きい角度で拡散する光線については遮光板72で吸収され、角度ψ以下の角度で拡散する光線は、遮光板72で吸収されずに透過制御部材7から出射され、光学プレート3に入射する。つまり、透過制御部材7に入射した光は、拡散角度が入射光よりも狭い所定範囲内(上記の例では角度ψ以下)に制限されて出射され、光学プレート3に入射することになる。
 上記のように、偏向光学素子4からの光を所定範囲内の拡散角度に制限して透過させるとともに、厚み方向とは異なる方向に透過率が最大である特性を有する透過制御部材7としては、例えば信越ポリマー株式会社製の視野角制御フィルム(VCF;View Control Film)を用いることができる。
 本実施形態では、透過制御部材7は、偏向光学素子4から出射されて、透過率が最大である方向に内部を透過する光線が、光学プレート3に対して所望の角度範囲で入射するように配置されている。例えば、ディスプレイ2が光学プレート3と平行または略平行となるように配置され、偏向光学素子4が、ディスプレイ2から垂直に入射する光線を出射角45°で出射させる構成では、図21のように、透過制御部材7は、偏向光学素子4と接して(偏向光学素子4と平行に)配置される。このような配置により、ディスプレイ2から出射され、偏向光学素子4にて約45°偏向されて透過制御部材7に入射する光線は、透過率が最大である約45°方向に効率よく透過し、光学プレート3に対して所望の角度範囲(例えば45°~50°)で入射することになる。
 以上のように、偏向光学素子4の光学プレート3側に透過制御部材7を配置することにより、ディスプレイ2から出射され、偏向光学素子4で偏向される光に含まれる光線のうち、光学プレート3に対して所望の角度範囲で入射する方向に向かう光線を、透過制御部材7によって高い透過率で透過させる一方、偏向光学素子4にて上記角度範囲以外の方向に偏向される光線の進行を、透過制御部材7での拡散角度の制限(遮光板72での光吸収)によって抑えることができる。これにより、光学プレート3によって結像される空中像の輝度低下を抑えつつ、上記角度範囲以外の方向に偏向される光線に起因するゴーストの発生を抑えることができる。
 また、透過制御部材7は、透光性の平板部材71と、平板部材71の内部で互いに離間して配置される複数の遮光板72とを有しており、複数の遮光板72は、透過率が最大となる方向と平行または略平行となるように、平板部材71の厚み方向に対して傾斜した状態で配置されている。このように平板部材71と複数の遮光板72とを組み合わせて透過制御部材7を構成することにより、偏向光学素子4からの光を所定範囲内の拡散角度に制限して透過させ、厚み方向とは異なる方向に透過率が最大である透過制御部材7を確実に実現することができる。
 〔実施の形態3〕
 (空中映像表示装置の構成)
 図24は、本発明の実施の形態3の空中映像表示装置1の構成を模式的に示す斜視図であり、図25は、図24のA-A’線矢視断面図である。本実施形態の空中映像表示装置1は、実施の形態1で示した筐体5の代わりに、筐体8を備えた構成であってもよい。以下、筐体8の詳細について説明する。
 筐体8は、光学プレート3および偏向光学素子4を、互いに離間して平行または略平行となるように保持する。この筐体8は、図25に示すように、偏向光学素子4に対して光学プレート3とは反対側が開口した形状であり、開口側から筐体8を被対象物に被せることが可能となっている。すなわち、筐体8は、一部に開口部8aを有しており、この開口部8aを介して、被対象物を筐体8に対して相対的に挿抜することが可能となっている。なお、ここでは、被対象物として、設置面Qに予め設置された、タッチパネルのない平板状のディスプレイ2(既設画像表示素子)を例に挙げて説明するが、タッチパネル付きのディスプレイであってもよい。
 筐体8は、プレート保持部81と、素子保持部82と、位置決め部83と、枠体84とを有している。枠体84は、プレート保持部81、素子保持部82および位置決め部83を、これらの外周縁側から支持する枠状の支持体である。上記の開口部8aは、枠体84の一方の端部に形成される。プレート保持部81、素子保持部82および位置決め部83は、いずれも、枠体84の内側に収まるように、この順で互いに平行に配置されるとともに、平面視でそれぞれ枠状に形成されているが、これらの形状は特に限定されない。また、プレート保持部81、素子保持部82、位置決め部83および枠体84は、プラスチックなどの樹脂で構成されるが、これらの材質も特に限定されない。
 プレート保持部81は、光学プレート3を保持する。なお、光学プレート3の保持の仕方は、特に限定されない。例えば、プレート保持部81は、光学プレート3の周縁部をクランプする(挟み込む)ことによって光学プレート3を保持してもよい。また、プレート保持部81と光学プレート3の周縁部とを押さえ部材を介してねじ止めしたり、接着剤で接着することにより、プレート保持部81が光学プレート3を保持する構成としてもよい。
 素子保持部82は、光学プレート3と平行または略平行となるように、偏向光学素子4を保持する。なお、偏向光学素子4の保持の仕方も特に限定されない。例えば、素子保持部82は、偏向光学素子4の周縁部をクランプすることによって偏向光学素子4を保持してもよい。また、素子保持部82と偏向光学素子4の周縁部とを押さえ部材を介してねじ止めしたり、接着剤で接着することにより、素子保持部82が偏向光学素子4を保持する構成としてもよい。なお、素子保持部82は、偏向光学素子4のみならず、上述した拡散制限部材6(図16参照)および透過制御部材7(図22参照)の少なくとも一方を同時に保持してもよい。
 位置決め部83は、筐体8の開口側から筐体8をディスプレイ2に被せたときに、ディスプレイ2と当接することによって、ディスプレイ2に対して光学プレート3が平行または略平行となるように筐体8を位置決めする。したがって、位置決め部83は、ディスプレイ2と当接可能な当接部でもある。この位置決め部83は、素子保持部82に対してプレート保持部81とは反対側の位置で、枠体84によって支持されている。
 図26は、比較例2の空中映像表示装置1bの概略の構成を示す断面図である。比較例2の空中映像表示装置1bは、図13で示した比較例1の空中映像表示装置1aの筐体5を、ディスプレイ2の配置位置で切断した筐体8’に置き換え、鉛直方向に沿った設置面Qに取り付けられたディスプレイ2から垂直に出射される光線が、光学プレート3に対して所望の角度(ここでは45°とする)で入射するように、筐体8’をディスプレイ2に被せた構成である。なお、筐体8’には、光学プレート3が保持されており、偏向光学素子4は保持されていないとする。偏向光学素子4を用いない比較例2では、ディスプレイ2と光学プレート3とが45°で交差する位置関係にあることが、図26より明らかである。
 一方、図27は、実施例2の空中映像表示装置1の概略の構成を示す断面図である。実施例2の空中映像表示装置1は、鉛直方向に沿った設置面Qに取り付けられたディスプレイ2に、図25で示した筐体8を開口側から被せた構成である。なお、偏向光学素子4は、ディスプレイ2から垂直に入射する光線が光学プレート3に対して入射角45°で入射するように、入射光線を偏向する構成であるとする。筐体8には、上述した位置決め部83が設けれているため、筐体8を平板状のディスプレイ2に被せたときに、位置決め部83がディスプレイ2の表面の一部と当接し、これによって、ディスプレイ2に対して光学プレート3が平行となるように、ディスプレイ2に対する筐体8の位置が固定される。光学プレート3および偏向光学素子4は、筐体8(プレート保持部81、素子保持部82)によって予め平行となるように保持されているため、結局、光学プレート3、偏向光学素子4、ディスプレイ2の3者は、互いに平行な位置関係となる。
 ここで、実施例2の空中映像表示装置1および比較例2の空中映像表示装置1bのいずれにおいても、用いた光学プレート3のサイズは、先の実施例1および比較例1と同じ、縦244mm×横244mmであり、ディスプレイ2の表示面2aのサイズは、対角10インチ(縦221mm×横124mm)であり、光学プレート3からの空中像(映像M)の飛び出し量は、100mmであるとする。実施例2の空中映像表示装置1では、光学プレート3、偏向光学素子4およびディスプレイ2が互いに平行な位置関係となるため、設置面Qからの装置の突出量(筐体8の厚み)を極力抑えることができ、上記突出量として、実施例1の厚みt2と同じ71mmを実現することができる。これに対して、比較例2の空中映像表示装置1bでは、偏向光学素子4を配置しないため、部分的に切断した筐体8’を用いても、設置面Qからの装置の突出量(筐体8’の厚み)は、比較例1の厚みt1の√2倍である162.6mmとなる。なお、上記の√2倍は、45°で交差するディスプレイ2と光学プレート3との幾何学的な位置関係から導出される。つまり、実施例2の構成では、比較例2の構成に比べて、設置面Qからの装置の突出量を半分以下に大幅に低減することが可能となる。
 以上のように、上述した構成の筐体8を用いる空中映像表示装置1では、筐体8をディスプレイ2に被せたときに、位置決め部83がディスプレイ2と当接することによって、光学プレート3とディスプレイ2とが平行または略平行となり、最終的に、光学プレート3、偏向光学素子4、ディスプレイ2の3者が互いに平行または略平行な位置関係となる。これにより、ディスプレイ2の設置面Qに対する装置の突出量を小さくすることが可能となり、装置を薄型化することが可能となる。
 また、被対象物の実像(映像M)は、原理上、光学プレート3に対して被対象物と面対称となる空中の位置に結像されるため、被対象物として、鉛直方向に沿った設置面Qに設置されたディスプレイ2を利用する場合、偏向光学素子4を用いない比較例2の構成では、図26のように、空中における映像Mの結像位置(表示画面)が水平方向に沿って位置する。この場合、観察者は、映像Mを正規の観察方向からずれた方向から観察することになり、映像Mを観察しにくくなる。なお、映像Mの正規の観察方向とは、光学プレート3から映像Mの結像位置に向かう方向とは逆方向を指し、図26では、鉛直下向きの方向を指す。つまり、図26の構成では、映像Mを真上からでないと観察することができない。
 これに対して、実施例2の構成では、光学プレート3、偏向光学素子4、ディスプレイ2の3者が互いに平行または略平行な位置関係となることで、空中における映像Mの結像位置(表示画面)が鉛直方向に沿って(ディスプレイ2と平行に)位置する。この場合、観察者は、映像Mを上記した正規の観察方向から観察することが可能となり、映像Mを観察しやすくなる。つまり、映像Mの視認性を向上させることができる。
 また、筐体8の上記構成により、設置面Qに設置された既設の被対象物(ディスプレイ2またはタッチパネル付きディスプレイ)に、筐体8を被せるだけで、被対象物の実像(例えばディスプレイ2の表示映像)を簡単に空中映像化することができる。
 また、後述する入力検知部9(図35等参照)を用いて、映像Mに対する入力位置を検知するタッチパネルを実現する場合でも、入力者(映像Mの観察者)は、映像Mを例えば斜め45°上方から観察しながら、手や指で映像Mの所望の位置を指定し、入力することができるため、入力操作もしやすくなる(入力による操作性が向上する)。
 また、上述した筐体8は、プレート保持部81と、素子保持部82と、枠体84とをさらに有しており、位置決め部83は、素子保持部82に対してプレート保持部81とは反対側の位置で、枠体84によって支持されている。これにより、筐体8をディスプレイ2に被せたときに、位置決め部83をまずディスプレイ2と当接させて、光学プレート3とディスプレイ2とを平行または略平行にすることができる。また、プレート保持部81、素子保持部82および位置決め部83が同じ枠体84で支持されているため、位置決め部83がディスプレイ2と当接すると同時に、光学プレート3、偏向光学素子4、ディスプレイ2の3者の位置関係を、互いに平行または略平行にすることができる。
 (変位機構について)
 上記したプレート保持部81および位置決め部83の少なくとも1つは、相互の離間距離が変化するように、枠体84に支持されていてもよい。なお、本実施形態では、素子保持部82は、プレート保持部81または位置決め部83との離間距離が変化するように、枠体84に支持されているが、枠体84に対して固定されていてもよい。
 図28は、プレート保持部81を変位させる機構を示す斜視図である。プレート保持部81の枠体84側の端面には、枠体84側に突出する凸部81aが形成されている。凸部81aの数は特に限定されず、1個であってもよいし、複数個であってもよい。また、凸部81aが形成される位置は、プレート保持部81において枠体84と対向する位置であればよく、特に限定されない。
 一方、枠体84の内面には、プレート保持部81の凸部81aが嵌まり込む凹部84aが形成されている。凹部84aは、プレート保持部81および位置決め部83の離間距離が変化する方向(図28では上下方向)に延びている。凹部84aの数は特に限定されないが、凸部81aの数と一致していればよい。また、凹部84aが形成される位置は、枠体84においてプレート保持部81の凸部81aが嵌る位置であればよく、特に限定されない。
 上記のように、プレート保持部81に凸部81aを形成し、枠体84に凹部84aを形成し、凸部81aを凹部84aに嵌め込むことにより、凸部81aと凹部84aとが摺動する方向、つまり、位置決め部83に対して離間距離が変化する方向にプレート保持部81を移動(変位)させることができる。これにより、位置決め部83と当接しているディスプレイ2に対して、プレート保持部81で保持されている光学プレート3を、相互の離間距離が変化する方向に移動(変位)させることができる。その結果、光学プレート3を介して空中に結像される映像Mの結像位置を調整することが可能となる。
 図29は、プレート保持部81を位置決め部83に対して移動させる前後の様子を模式的に示している。例えば、プレート保持部81が位置決め部83から最も離れた位置をP1とし、位置P1よりも位置決め部83側のプレート保持部81の位置を、P2とする。プレート保持部81を位置P1からP2に(位置決め部83との離間距離が小さくなる方向に)移動させると、上記プレート保持部81で保持されている光学プレート3を介して空中に結像される映像Mの結像位置は、位置M1から位置M2に変化し、映像Mの結像位置がディスプレイ2に近づく。逆に、プレート保持部81を位置P2から位置P1に(位置決め部83との離間距離が大きくなる方向に)移動させると、光学プレート3を介して空中に結像される映像Mの結像位置は、位置M2から位置M1に変化し、映像Mの結像位置がディスプレイ2から遠ざかる。
 また、図30は、位置決め部83を変位させる機構を示す斜視図である。なお、同図では、図示の複雑化を避けるために、プレート保持部81および素子保持部82の図示を省略している。位置決め部83の枠体84側の端面には、枠体84側に突出する凸部83aが形成されている。凸部83の数は特に限定されず、1個であってもよいし、複数個であってもよい。また、凸部83aが形成される位置は、位置決め部83において枠体84と対向する位置であればよく、特に限定されない。
 ここでは、位置決め部83の凸部83aは、プレート保持部81の凸部81aと同一形状で形成されている。そして、凸部83aは、凸部81aと同様に、枠体84の凹部84aに嵌まり込んでいる。なお、凸部81aが嵌まり込む凹部84aとは別に、凸部83aが嵌まり込む凹部を枠体84に設けるようにしてもよい。
 上記のように、位置決め部83に凸部83aを形成し、凸部83aを枠体84の凹部84aに嵌め込むことにより、凸部83aと凹部84aとが摺動する方向、つまり、プレート保持部81に対して離間距離が変化する方向に位置決め部83を移動(変位)させることができる。これにより、プレート保持部81で保持されている光学プレート3と、位置決め部83と当接しているディスプレイ2との相互の離間距離を変化させることができるため、光学プレート3を介して空中に結像される映像Mの結像位置を調整することができる。
 例えば、図31は、ディスプレイ2の設置面Qに対する取り付け手法の一例を示している。ディスプレイ2が取付治具Rを介して設置面Qに取り付けられる場合、ディスプレイ2は、取付治具Rの設置面Qからの高さ分だけ、設置面Qから浮き上がって位置する。この場合、筐体8を開口側からディスプレイ2に被せると、位置決め部83がディスプレイ2との当接を保ったまま、初期の位置W1から、プレート保持部81側の位置W2に移動する。これにより、光学プレート3を介して空中に結像される映像Mの結像位置は、初期の位置M1から、ディスプレイ2により近い位置M2に変化する。逆に、位置決め部83を位置W2から位置W1に移動させると(取付治具Rがない場合を想定)、光学プレート3を介して空中に結像される映像Mの結像位置は、位置M2から位置M1に変化し、映像Mの結像位置がディスプレイ2から遠ざかる。
 以上のように、プレート保持部81および位置決め部83の少なくとも1つが、相互の離間距離が変化するように枠体84に支持されている。これにより、ディスプレイ2に垂直な方向に、映像Mの結像位置を調整することができるため、映像Mを観察する個々の観察者ごとに、観察しやすい映像Mを提供することが可能となる。
 なお、以上では、プレート保持部81および位置決め部83の離間距離を変化させるにあたって、プレート保持部81に凸部81aを設け、枠体84に凸部81aが嵌まり込む凹部84aを設ける例について説明したが、枠体84に凸部を設け、プレート保持部81に上記凸部が嵌まり込む凹部を設けてもよい。同様に、枠体84に凸部を設け、位置決め部83に上記凸部が嵌まり込む凹部を設けてもよい。
 つまり、プレート保持部81および位置決め部83と、枠体84とのうち、一方は、凸部(例えば凸部81aまたは83a)を有し、他方は、上記凸部が嵌まり込む凹部(例えば凹部84a)を有し、上記凹部は、プレート保持部81と位置決め部83との離間距離が変化する方向に沿って延びていることにより、プレート保持部81および位置決め部83を移動させて相互の離間距離を変化させることができる。これにより、位置決め部83が当接するディスプレイ2と、プレート保持部81によって保持される光学プレート3との距離を変化させて、上述のように、映像Mの結像位置を調整することが可能となる。
 (筐体の他の構成)
 図32は、上記した筐体8の他の構成を模式的に示す断面図である。筐体8において、上記した位置決め部83は、偏向光学素子4を保持する素子保持部を兼ねており、光学プレート3と平行または略平行となるように、偏向光学素子4を保持してもよい。そして、プレート保持部81および位置決め部83が枠体84で支持されていてもよい。つまり、筐体8は、図25の素子保持部82の機能を位置決め部83に持たせることによって、素子保持部82の配置を省略した構成であってもよい。
 なお、位置決め部83が偏向光学素子4を保持するときの保持の仕方は特に限定されない。例えば、位置決め部83は、偏向光学素子4の周縁部をクランプすることによって偏向光学素子4を保持してもよい。また、位置決め部83と偏向光学素子4の周縁部とを押さえ部材を介してねじ止めしたり、接着剤で接着することにより、位置決め部83が偏向光学素子4を保持する構成としてもよい。また、位置決め部83は、偏向光学素子4のみならず、上述した拡散制限部材6(図16参照)および透過制御部材7(図22参照)の少なくとも一方を同時に保持してもよい。
 図32の構成であっても、筐体8をディスプレイ2に被せたときに、位置決め部83がディスプレイ2と当接することによって、光学プレート3とディスプレイ2とが平行または略平行となる。また、プレート保持部81および位置決め部83によって、光学プレート3と偏向光学素子4とは、平行または略平行に保持されるため、位置決め部83がディスプレイ2と当接したときには、光学プレート3、偏向光学素子4、ディスプレイ2の3者が互いに平行または略平行な位置関係となる。これにより、図25の構成と同様に、ディスプレイ2の設置面Qに対する装置の突出量を小さくすることが可能となり、装置を薄型化することが可能となる(図27参照)。しかも、図25の素子保持部82を省略した構成で、つまり、筐体8を簡素化した構成で、上記の効果を得ることができる。
 また、図32の筐体8においても、プレート保持部81および位置決め部83の少なくとも1つが、相互の離間距離が変化するように枠体84に支持される構成としてもよい。つまり、図32の筐体8において、プレート保持部81に凸部81aを設け、位置決め部83に凸部83aを設け、枠体84に凹部84aを設けて、プレート保持部81および位置決め部83の相互の離間距離を変化させるようにしてもよい。
 凸部81aと凹部84aとを摺動させることにより、図33に示すように、プレート保持部81を位置決め部83に対して離間距離が変化するように移動させることができる。これにより、空中における映像Mの結像位置を、ディスプレイ2と垂直な方向に変化させることができる。例えば、プレート保持部81と位置決め部83との離間距離が相対的に大きい場合の映像Mの結像位置をM1とし、離間距離が相対的に小さい場合の映像Mの結像位置をM2とすると、プレート保持部81を位置決め部83に近づけることにより(離間距離を小さくすることにより)、空中における映像の結像位置をM1からM2に変更する(ディスプレイ2側に近づける)ことができる。
 また、凸部83aと凹部84aとを摺動させることにより、図34に示すように、位置決め部83をプレート保持部81に対して離間距離が変化するように移動させることができ、これによって、空中における映像Mの結像位置を、ディスプレイ2と垂直な方向に変化させることができる。例えば、位置決め部83をプレート保持部81に近づけることにより(離間距離を小さくすることにより)、空中における映像の結像位置をM1からM2に変更する(ディスプレイ2側に近づける)ことができる。
 このように、図32の構成においても、プレート保持部81および位置決め部83の少なくとも1つが、相互の離間距離が変化するように、枠体84に支持されていることにより、ディスプレイ2に垂直な方向に映像Mの結像位置を調整して、観察者ごとに、観察しやすい映像Mを提供することが可能となる。
 〔実施の形態4〕
 図35は、本発明の実施の形態4の空中映像表示装置1の構成を示す斜視図であり、図36は、図35のB-B’線矢視断面図である。本実施形態の空中映像表示装置1は、実施の形態3の構成に加えて、入力検知部9を有している。入力検知部9は、空中に結像される被対象物の実像の表示画面において物体によって指定される入力位置を、物体と非接触で検知するセンシング機器である。なお、上記の物体としては、例えば実像の観察者の手や指のほか、観察者が手に持つスタイラスペンなどを想定することができる。入力検知部9は、例えば筐体8上に設置されるが、上記表示画面における入力位置を検知できる位置に設置されていればよく、筐体8以外の位置に設置されてもよい。
 上記の入力検知部9は、例えば、実像の表示画面に向けて赤外線を照射し、表示画面上で入力位置を指定する物体で反射される赤外線をカメラで受光して得られる画像に基づいて、入力位置を検知する。このような入力検知部9は、Light Coding方式(パターン照射方式とも呼ばれる)またはTOF(Time of Flight)方式を採用したセンシング機器で構成することができる。
 Light Coding方式を採用したセンシング機器は、赤外線パターンを投光するIRプロジェクタと、投光された赤外線パターンを読み取るIRカメラとを備えており、物体に投光した赤外線パターンをIRカメラで撮影し、(工場出荷時にキャリブレーションしておいた)パラメータを用いて、三角測量により画像上の各点のデプス(位置)を算出する。
 すなわち、Light Coding方式では、「キャリブレーション(準備)」と「テスト(実際の撮影)」との2段階で位置検知が行われる。「キャリブレーション」では、既知のパターンについて「パターン中の各点がどれだけ移動(シフト)すると、デプスがどれだけ変化するか」というパラメータを、単純で正確な物体(平面や立方体など)を撮影することによって予め求めておく。そして、「テスト」では、撮影した画像の各点が既知パターンのどの位置に相当するかを画像処理(テンプレートマッチングなど)によって求め、あとは「キャリブレーション」で求めておいたパラメータから、その画素のデプスを計算する。
 一方、TOF方式が採用されたセンシング機器は、パルス変調された赤外線を投光するプロジェクタと、赤外線カメラとを備えており、物体に投光した赤外線が反射して戻ってくる時間を計測し、上記時間と赤外線の移動速度とから、物体の各点までの距離(位置情報)を得る。
 つまり、Light Coding方式およびTOF方式のいずれによっても、空間中の物体の三次元的な位置を、物体と非接触で検知することができ、実像の表示画面上で物体によって指定される入力位置を非接触で検知することができる。なお、Light Coding方式またはTOF方式を採用したセンシング機器としては、例えば、マイクロソフト社のKinect(登録商標)を用いることができる。
 また、入力検知部9は、赤外線を出射する複数の光源と、複数のカメラとを用い、各カメラで撮影された画像から、物体(例えば指)の外形によって遮蔽された3次元空間を算出し、物体の断面形状(例えば物体が指である場合が楕円形状)が上記3次元空間内でフィットした場合に、その断面形状の位置を物体の位置として検知するセンシング機器で構成されてもよい。この場合でも、空間中の物体の三次元的な位置を、物体と非接触で検知することができるため、実像の表示画面上で物体によって指定される入力位置を、物体と非接触で検知することができる。なお、上記センシング機器としては、例えば、リープモーション社のLEAP MOTION(登録商標)コントローラを用いることができる。
 本実施形態のように、空中映像表示装置1が上記した入力検知部9を有し、入力検知部9によって、実像の表示画面における物体による入力位置を、物体と非接触で検知することにより、空中映像表示装置1を非接触式のタッチパネルとして用いることができる。通常の接触式のタッチパネルでは、タッチパネルの表面が物体との接触によって汚れたり、濡れたりすることがあり、また、不特定多数の人が利用するタッチパネルとの接触によって、物体が感染することもある。非接触式のタッチパネルでは、そのような心配が全くなく、表面の汚れや水分を除去する清掃も全く不要となり、衛生面も向上する。
 特に、壁等の設置面Qに設置された既設の被対象物(ディスプレイ2またはタッチパネル付きディスプレイ)に、本実施形態の空中映像表示装置1(筐体8)を被せるだけで、非接触式のタッチパネルを実現することができる。これにより、既設の被対象物を利用したタッチパネル化が非常に容易となる。
 また、入力検知部9が、実像の表示画面に向けて赤外線を照射し、物体で反射される赤外線をカメラで受光して得られる画像に基づいて、入力位置を検知するため、入力位置を非接触で検知する構成を確実に実現することが可能となる。
 ところで、入力検知部9による入力検知の手法は、上記の例には限定されない。図37は、本実施形態の空中映像表示装置1の他の構成を示す斜視図であり、図38は、図37のC-C’線矢視断面図である。入力検知部9は、赤外線の発光部および受光部を備え、発光部から赤外線を実像の表示画面と平行に出力し、物体で反射される赤外線を受光部で検出することによって、物体による入力位置を検知する構成であってもよい。この構成であっても、物体の三次元的な位置を、物体と非接触で検知することができるため、物体による入力位置を物体と非接触で確実に検知することが可能となる。なお、上記の入力検知部9としては、例えばNeonode社のAirBar(商品名)を用いることができる。
 その他にも、入力検知部9としては、発光部から出射されるレーザを走査してレーザーカーテンを生成し、物体によってレーザが遮られた位置を検知することによって、物体による入力位置を非接触で検知するセンシング機器を用いることもできる。
 〔その他〕
 以上で説明した各実施の形態の構成を適宜組み合わせて、空中映像表示装置を構成することも勿論可能である。
 以上で説明した各の実施形態の空中映像表示装置は、以下のように表現することができる。
 すなわち、以上で説明した空中映像表示装置は、平面視で互いに直交する複数の反射面を有する光学プレートを備え、被対象物からの光を前記複数の反射面で反射させて、該光学プレートに対して前記光の入射側とは反対側の空中に導き、前記被対象物の実像を前記空中に結像させる空中映像表示装置であって、前記被対象物からの光を偏向して前記光学プレートに導く偏向光学素子をさらに備え、前記偏向光学素子は、透光性の平板部材と、前記平板部材の内部に互いに離間して配置され、前記平板部材の互いに対向する2面のうちの一方の面から入射した前記被対象物からの光を反射によって偏向して、他方の面から出射させる複数の反射偏向面とを有している。
 前記偏向光学素子の前記複数の反射偏向面は、前記平板部材の前記2面の少なくとも一方に対して傾斜していることが望ましい。
 前記偏向光学素子の前記複数の反射偏向面は、前記被対象物から任意の前記反射偏向面に入射する入射光線と、該入射光線が前記反射偏向面で反射偏向されて出射されるときの出射光線とを含む面内で、前記平板部材の厚み方向に垂直な一方向に離間して配置されていることが望ましい。
 前記偏向光学素子の前記複数の反射偏向面は、前記一方向に一定のピッチで配置されていることが望ましい。
 上記の空中映像表示装置は、前記偏向光学素子に対して前記被対象物側に配置され、前記被対象物からの光を、所定範囲内の拡散角度に制限して出射する拡散制限部材をさらに備えていることが望ましい。
 前記拡散制限部材は、透光性部材と、前記透光性部材の内部で互いに離間して配置される複数の遮光板とを有していることが望ましい。
 前記偏向光学素子は、前記被対象物の光出射面と平行に配置されていることが望ましい。
 前記偏向光学素子は、前記複数の反射偏向面の裏面側に無反射層を有していることが望ましい。
 前記被対象物は、画像を表示するディスプレイであり、上記の空中映像表示装置は、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。すなわち、
  35°<Dd+sin-1(nsin(2×Ld))<55°
                           ・・・(1)
 ここで、
  Dd:前記ディスプレイの表示面と、前記光学プレートとのなす角度(°)
  n :前記偏向光学素子の各反射偏向面で反射偏向される前記ディスプレイからの光が通過する前記平板部材の媒質のd線の屈折率
  Ld:前記偏向光学素子の各反射偏向面と、前記平板部材の前記2面のいずれかの面の法線とのなす角度(°)
である。
 上記の空中映像表示装置は、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。すなわち、
  P<t(tan(2×Ld)-tan(Ld))   ・・・(2)
 ここで、
  P :前記偏向光学素子の各反射偏向面の配列ピッチ(mm)
  t :前記偏向光学素子の前記平板部材の厚み(mm)
  Ld:前記偏向光学素子の各反射偏向面と、前記平板部材の前記2面のいずれかの面の法線とのなす角度(°)
である。
 上記の空中映像表示装置は、前記偏向光学素子からの光を所定範囲内の拡散角度に制限して透過させ、厚み方向とは異なる方向に透過率が最大である透過制御部材をさらに備え、前記透過制御部材は、透過率が最大である方向に透過する光線が、前記光学プレートに対して所望の角度範囲で入射するように配置されていてもよい。
 上記の空中映像表示装置において、前記透過制御部材は、透光性の平板部材と、前記平板部材の内部で互いに離間して配置される複数の遮光板とを有しており、前記複数の遮光板は、透過率が最大となる方向と平行または略平行となるように、前記平板部材の厚み方向に対して傾斜した状態で配置されていてもよい。
 上記の空中映像表示装置は、前記光学プレートおよび前記偏向光学素子を、互いに離間して平行または略平行となるように保持する筐体をさらに備え、前記筐体は、前記偏向光学素子に対して前記光学プレートとは反対側が開口した形状であり、前記開口側から該筐体を前記被対象物に被せたときに、前記被対象物と当接することによって、前記被対象物に対して前記光学プレートが平行または略平行となるように該筐体を位置決めする位置決め部を有していてもよい。
 上記の空中映像表示装置において、前記筐体は、前記光学プレートを保持するプレート保持部と、前記偏向光学素子を保持する素子保持部と、前記プレート保持部、前記素子保持部および前記位置決め部を支持する枠体とをさらに有しており、前記位置決め部は、前記素子保持部に対して前記プレート保持部とは反対側の位置で、前記枠体によって支持されていてもよい。
 上記の空中映像表示装置において、前記筐体は、前記光学プレートを保持するプレート保持部と、前記プレート保持部および前記位置決め部を支持する枠体とをさらに有しており、前記位置決め部は、前記偏向光学素子を保持する素子保持部を兼ねていてもよい。
 上記の空中映像表示装置において、前記プレート保持部および前記位置決め部の少なくとも1つは、相互の離間距離が相対的に変化するように、前記枠体に支持されていてもよい。
 上記の空中映像表示装置において、前記プレート保持部および前記位置決め部と、前記枠体とのうち、一方は、凸部を有し、他方は、前記凸部が嵌まり込む凹部を有し、前記凹部は、前記プレート保持部と前記位置決め部との離間距離が変化する方向に沿って延びていてもよい。
 上記の空中映像表示装置は、空中に結像される前記被対象物の実像の表示画面において物体によって指定される入力位置を、前記物体と非接触で検知する入力検知部をさらに備えていてもよい。
 上記の空中映像表示装置において、前記入力検知部は、前記表示画面に向けて赤外線を照射し、前記物体で反射される前記赤外線をカメラで受光して得られる画像に基づいて、前記入力位置を検知してもよい。
 上記の空中映像表示装置において、前記入力検知部は、赤外線を前記被対象物の実像の表示画面と平行に出力し、前記物体で反射される前記赤外線を検出することによって前記入力位置を検知してもよい。
 以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
 本発明は、光学プレートを用いて空中に映像を結像させる空中映像表示装置に利用可能である。
   1   空中映像表示装置
   2   表示装置(被対象物)
   2a  表示面(光出射面)
   3   光学プレート
   4   偏向光学素子
   6   拡散制限部材
   7   透過制御部材
   8   筐体
   9   入力検知部
  21b  反射面
  31b  反射面
  41   平板部材
  41a  面
  41b  面
  42   反射偏向面
  43   無反射層
  61   透光性部材
  62   遮光板
  71   平板部材
  72   遮光板
  81   プレート保持部
  82   素子保持部
  83   位置決め部
  84   枠体

Claims (20)

  1.  平面視で互いに直交する複数の反射面を有する光学プレートを備え、被対象物からの光を前記複数の反射面で反射させて、該光学プレートに対して前記光の入射側とは反対側の空中に導き、前記被対象物の実像を前記空中に結像させる空中映像表示装置であって、
     前記被対象物からの光を偏向して前記光学プレートに導く偏向光学素子をさらに備え、
     前記偏向光学素子は、
     透光性の平板部材と、
     前記平板部材の内部に互いに離間して配置され、前記平板部材の互いに対向する2面のうちの一方の面から入射した前記被対象物からの光を反射によって偏向して、他方の面から出射させる複数の反射偏向面とを有している、空中映像表示装置。
  2.  前記偏向光学素子の前記複数の反射偏向面は、前記平板部材の前記2面の少なくとも一方に対して傾斜している、請求項1に記載の空中映像表示装置。
  3.  前記偏向光学素子の前記複数の反射偏向面は、前記被対象物から任意の前記反射偏向面に入射する入射光線と、該入射光線が前記反射偏向面で反射偏向されて出射されるときの出射光線とを含む面内で、前記平板部材の厚み方向に垂直な一方向に離間して配置されている、請求項1または2に記載の空中映像表示装置。
  4.  前記偏向光学素子の前記複数の反射偏向面は、前記一方向に一定のピッチで配置されている、請求項3に記載の空中映像表示装置。
  5.  前記偏向光学素子に対して前記被対象物側に配置され、前記被対象物からの光を、所定範囲内の拡散角度に制限して出射する拡散制限部材をさらに備えている、請求項1から4のいずれかに記載の空中映像表示装置。
  6.  前記拡散制限部材は、
     透光性部材と、
     前記透光性部材の内部で互いに離間して配置される複数の遮光板とを有している、請求項5に記載の空中映像表示装置。
  7.  前記偏向光学素子は、前記被対象物の光出射面と平行に配置されている、請求項1から6のいずれかに記載の空中映像表示装置。
  8.  前記偏向光学素子は、前記複数の反射偏向面の裏面側に無反射層を有している、請求項1から7のいずれかに記載の空中映像表示装置。
  9.  前記被対象物は、画像を表示するディスプレイであり、
     以下の条件式(1)を満足する、請求項1から8のいずれかに記載の空中映像表示装置;
      35°<Dd+sin-1(nsin(2×Ld))<55°
                             ・・・(1)
     ここで、
      Dd:前記ディスプレイの表示面と、前記光学プレートとのなす角度(°)
      n :前記偏向光学素子の各反射偏向面で反射偏向される前記ディスプレイからの光が通過する前記平板部材の媒質のd線の屈折率
      Ld:前記偏向光学素子の各反射偏向面と、前記平板部材の前記2面のいずれかの面の法線とのなす角度(°)
    である。
  10.  以下の条件式(2)を満足する、請求項1から9のいずれかに記載の空中映像表示装置;
      P<t(tan(2×Ld)-tan(Ld))
                             ・・・(2)
     ここで、
      P :前記偏向光学素子の各反射偏向面の配列ピッチ(mm)
      t :前記偏向光学素子の前記平板部材の厚み(mm)
      Ld:前記偏向光学素子の各反射偏向面と、前記平板部材の前記2面のいずれかの面の法線とのなす角度(°)
    である。
  11.  前記偏向光学素子からの光を所定範囲内の拡散角度に制限して透過させ、厚み方向とは異なる方向に透過率が最大である透過制御部材をさらに備え、
     前記透過制御部材において、透過率が最大である方向に透過する光線が、前記光学プレートに対して所望の角度範囲で入射するように配置されている、請求項1から10のいずれかに記載の空中映像表示装置。
  12.  前記透過制御部材は、
     透光性の平板部材と、
     前記平板部材の内部で互いに離間して配置される複数の遮光板とを有しており、
     前記複数の遮光板は、透過率が最大となる方向と平行または略平行となるように、前記平板部材の厚み方向に対して傾斜した状態で配置されている、請求項11に記載の空中映像表示装置。
  13.  前記光学プレートおよび前記偏向光学素子を、互いに離間して平行または略平行となるように保持する筐体をさらに備え、
     前記筐体は、前記偏向光学素子に対して前記光学プレートとは反対側が開口した形状であり、前記開口側から該筐体を前記被対象物に被せたときに、前記被対象物と当接することによって、前記被対象物に対して前記光学プレートが平行または略平行となるように該筐体を位置決めする位置決め部を有している、請求項1から12のいずれかに記載の空中映像表示装置。
  14.  前記筐体は、
     前記光学プレートを保持するプレート保持部と、
     前記偏向光学素子を保持する素子保持部と、
     前記プレート保持部、前記素子保持部および前記位置決め部を支持する枠体とをさらに有しており、
     前記位置決め部は、前記素子保持部に対して前記プレート保持部とは反対側の位置で、前記枠体によって支持されている、請求項13に記載の空中映像表示装置。
  15.  前記筐体は、
     前記光学プレートを保持するプレート保持部と、
     前記プレート保持部および前記位置決め部を支持する枠体とをさらに有しており、
     前記位置決め部は、前記偏向光学素子を保持する素子保持部を兼ねている、請求項13に記載の空中映像表示装置。
  16.  前記プレート保持部および前記位置決め部の少なくとも1つは、相互の離間距離が変化するように、前記枠体に支持されている、請求項14または15に記載の空中映像表示装置。
  17.  前記プレート保持部および前記位置決め部と、前記枠体とのうち、一方は、凸部を有し、他方は、前記凸部が嵌まり込む凹部を有し、
     前記凹部は、前記プレート保持部と前記位置決め部との離間距離が変化する方向に沿って延びている、請求項16に記載の空中映像表示装置。
  18.  空中に結像される前記被対象物の実像の表示画面において物体によって指定される入力位置を、前記物体と非接触で検知する入力検知部をさらに備えている、請求項1から17のいずれかに記載の空中映像表示装置。
  19.  前記入力検知部は、前記表示画面に向けて赤外線を照射し、前記物体で反射される前記赤外線をカメラで受光して得られる画像に基づいて、前記入力位置を検知する、請求項18に記載の空中映像表示装置。
  20.  前記入力検知部は、赤外線を前記表示画面と平行に出力し、前記物体で反射される前記赤外線を検出することによって前記入力位置を検知する、請求項18に記載の空中映像表示装置。
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