WO2019017475A1

WO2019017475A1 - ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体

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Publication number: WO2019017475A1
Application number: PCT/JP2018/027288
Authority: WO
Inventors: 祐一岡田; 嘉一針貝; 昭彦山▲崎▼; 隆行進藤; 拓也寺門
Original assignee: 曙ブレーキ工業株式会社
Priority date: 2017-07-21
Filing date: 2018-07-20
Publication date: 2019-01-24
Also published as: EP3657038A1; CN208503308U; CN109281965A; TW201908617A; EP3657038B1; JP2019019959A; EP3657038A4; TWI680242B

Abstract

本発明に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体（１）は、制動トルクを受けるガイドプレート（１１）にライニング組立体（１３）が揺動自在に支持されて、ライニング組立体（１３）がディスクロータへ押圧される。ガイドプレート（１１）と、ガイドプレート（１１）の周縁部に対して周壁（３３）が固着されたトルク受けプレート（３）とは、ライニング組立体（１３）を揺動可能とする内部空間（４０）をライニング組立体（１３）の背面側に形成するための筐体を構成する。トルク受けプレート（３）には、キャリパブレーキ装着部へ装着された際に鉛直方向下方となる位置に、筐体の外部と内部空間（４０）を連通する穴（５１）が形成されている。

Description

ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体

　本発明は、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体に関する。

　ディスクブレーキ装置は、車軸に固定されるディスクロータと、このディスクロータに対峙して配置されるトルク受けプレートのディスクロータ側の面にライニング部材を組み付けたディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体と、トルク受けプレートをディスクロータに向かって進退駆動するアクチュエータを内蔵して車体フレームに固定されるブレーキキャリパとを具備する。そして、ディスクブレーキ装置は、トルク受けプレートをディスクロータ側に進出させてライニング部材がディスクロータへ押圧された時の摺動摩擦によって制動力を発生する。

　鉄道車両用のディスクブレーキ装置では、ディスクロータやディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体が大型である。このため、ディスクロータに押圧させるライニング部材を一体部品で形成すると、摩擦熱等でディスクロータに発生するうねり等のために非接触の領域が多くなる。この結果、安定した摩擦面積を維持できず、安定した制動特性が得られない。

　そこで、このような問題を解決するために、ガイドプレートに揺動自在に支持されてディスクロータへ押圧されるライニング組立体が、摩擦材の裏面に固着された裏板部に、外周面がガイドプレートのガイド孔部に揺動自在に嵌合するプレート嵌合部と、ガイド孔部よりも大きな外径の抜け止めフランジ部とを備え、ディスクロータと摩擦材との接触時に作用する制動トルクをプレート嵌合部からガイドプレートに伝達し、裏板部との間に間隙を開けてガイドプレートに固着されたトルク受けプレートと裏板部との間には、複数のライニング組立体に跨って配備されてトルク受けプレートからの押圧力をこれらのライニング組立体に作用させる複数のリンクプレートが設けられた構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体が提案されている（特許文献１参照）。

　このような構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体では、分割された各ライニング組立体が、それぞれ個別の揺動動作でディスクロータ表面のうねりに追従して、ディスクロータ表面に接触する。このため、安定した摩擦面積を維持して、安定した制動特性を維持できる。
　また、ライニング組立体から制動トルクを受ける部材と、ライニング組立体へ押圧力を作用させる部材とが別個に設定されており、ライニング組立体へ押圧力を作用させるリンクプレートとトルク受けプレートとの各接触部には、大きい負荷となる制動トルクが作用しない。そのため、押圧力を伝達する各接触部は、制動トルクを受け止める玉継手等の堅牢な係合にする必要がなく、加工精度の緩和によるコストの節減、生産性の向上を実現することができる。

日本国特許第４９８０４７２号公報

　ところで、上記特許文献１等に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体は、リンクプレートで連携させた複数のライニング組立体を揺動可能とする内部空間をライニング組立体の背面側に形成するため、ガイドプレートとガイドプレートの周縁部に対して全周縁部が固着されたトルク受けプレートとで筐体を構成している。
　しかしながら、上述した従来の筐体構造は、ガイドプレートのガイド孔部とライニング組立体のプレート嵌合部との隙間から筐体内部に水が浸入する可能性があり、その水による錆等の発生や、浸入した水の凍結等により、ライニング組立体の機能が低下することが考えられる。

　本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ガイドプレートとトルク受けプレートとで構成された筐体内部に水等が溜まることを防止できるディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を提供することにある。

　本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
　（１）　制動トルクを受けるガイドプレートに少なくとも１つのライニング組立体が揺動自在に支持されて、前記ライニング組立体がディスクロータへ押圧されるディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記ガイドプレートと、前記ガイドプレートの周縁部に対して全周縁部が固着されたトルク受けプレートとは、前記ライニング組立体を揺動可能とする内部空間を前記ライニング組立体の背面側に形成するための筐体を構成し、
　前記ガイドプレート及び前記トルク受けプレートの少なくともいずれか一方には、キャリパブレーキ装着部へ装着された際に鉛直方向下方となる位置に、前記筐体の外部と前記内部空間を連通する穴が形成されている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。

　（２）　上記（１）に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記ライニング組立体は、
　制動時に前記ディスクロータと接触する摩擦材と、前記摩擦材の裏面に固着された裏板部とを有し、かつ前記裏板部には、前記ガイドプレートに設けられたガイド孔部に揺動自在に嵌合されるプレート嵌合部を備え、
　前記プレート嵌合部が前記ガイド孔部に挿入装着され、前記ディスクロータと前記摩擦材との接触時に作用する制動トルクを前記プレート嵌合部から前記ガイドプレートに伝達している
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。

　（３）　上記（２）に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記トルク受けプレートと前記裏板部との間には、複数の前記ライニング組立体に跨って配備されてこれらライニング組立体と前記トルク受けプレートとの間で押圧力を伝達するリンクプレートが設けられている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。

　（４）　上記（１）～（３）の何れか１つに記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴が、前記トルク受けプレートに形成されている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。

　（５）　上記（４）に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴が、前記全周縁部の固着面に形成されて前記鉛直方向下方に延びる溝である
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。

　（６）　上記（４）に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって
　前記穴が、前記全周縁部を貫通して前記鉛直方向下方に延びる貫通穴である
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。

　（７）　上記（１）～（３）の何れか１つに記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって
　前記穴が、前記ガイドプレートに形成されている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。

　（８）　上記（１）～（７）の何れか１つに記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって
　前記トルク受けプレートは、前記鉛直方向下方に位置する前記穴に向かって傾斜する内壁面を有する
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。

　上記構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、ガイドプレートとトルク受けプレートとで構成された筐体の内部空間に浸入した水等は、ガイドプレート及びトルク受けプレートの少なくともいずれか一方に形成された穴から排出され、筐体内部に溜まることが防止される。そこで、筐体内部に浸入した水による錆等の発生や、浸入した水の凍結等により、ライニング組立体の機能が低下することはない。

　本発明に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、ガイドプレートとトルク受けプレートとで構成された筐体内部に水等が溜まることを防止できる。

　以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態（以下、「実施形態」という。）を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。

図１の（ａ）は本発明の第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体の背面側斜視図、図１の（ｂ）は図１の（ａ）に示したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体の正面側斜視図である。図２は、図１に示したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体の背面図である。図３は、図２のＩＩＩ－ＩＩＩ断面矢視図である。図４は、図１に示したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体の一部破断斜視図である。図５は、図４に示したライニング組立体及びリンクプレートの分解斜視図である。図６は、図１に示したトルク受けプレートを内側から見た斜視図である。図７は、図６に示したトルク受けプレートを内側から見た平面図である。図８の（ａ）は図７に示したトルク受けプレートに形成された穴を示す拡大断面図、図８の（ｂ）はトルク受けプレートに形成される穴の変形例を示す拡大断面図である。図９の（ａ），（ｂ）は、図７に示したトルク受けプレートに形成された穴の変形例を示す拡大断面図である。図１０の（ａ）は本発明の第２実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体におけるトルク受けプレート及びガイドプレートの要部分解斜視図、図１０の（ｂ）は図１０の（ａ）に示した穴を示す拡大断面図である。図１１の（ａ）は本発明の第３実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体の要部斜視図、図１１の（ｂ）は図１１の（ａ）に示した穴を示す要部拡大断面図である。

　以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
　図１の（ａ）～図４に示すように、本発明の第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１は、鉄道車両用ディスクブレーキ装置に使用されるもので、車軸上の不図示のディスクロータに対峙して配置される。ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１は、車体フレームに固定されたブレーキキャリパに内蔵のアクチュエータによって、ディスクロータに向かって進退駆動される。

　本実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１は、図１の（ａ）～図４に示すように、不図示のブレーキキャリパに内蔵されたアクチュエータによってディスクロータに向かって進退駆動されるトルク受けプレート３と、このトルク受けプレート３のディスクロータ側の内面の上に略平面上に敷設される２種のリンクプレートである第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６と、トルク受けプレート３のディスクロータ側で、トルク受けプレート３に連結固定されるガイドプレート１１と、ガイドプレート１１に揺動可能に嵌合支持された１０個のライニング組立体１３と、第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６とトルク受けプレート３との間に設けられたばね部材２４とから構成されている。

　ライニング組立体１３は、図５に示すように、略円板状に成型された摩擦材２１と、この摩擦材２１の裏面に固着された裏板部２２とから構成されている。
　裏板部２２には、図５に示すように、プレート嵌合部２２ａと、抜け止めフランジ部２２ｂと、が形成される。プレート嵌合部２２ａは、ガイドプレート１１に貫通形成された円形のガイド孔部１１ａに、外周面が揺動自在に嵌合する。プレート嵌合部２２ａには、環状のばね部材２４が嵌着される。ばね部材２４の外径は、ガイド孔部１１ａよりも大きく設定されている。抜け止めフランジ部２２ｂは、ガイドプレート１１のガイド孔部１１ａよりも大きな外径で形成され、ライニング組立体１３のディスクロータ側への抜けを阻止する。
　なお、本発明に係るライニング組立体の構成は、上記ライニング組立体１３の構成に限定されるものではなく、ガイドプレートに揺動自在に支持される構成であれば、種々の形態を採りうる。

　鋳造により形成されたトルク受けプレート３の外面３ｂには、図２に示すように、ブレーキキャリパに取付けられるフランジ部３１が周縁部に沿って設けられている。このフランジ部３１が、ブレーキキャリパに内蔵されたアクチュエータに連結されて、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１のディスクロータへの進退駆動が可能になる。さらに、トルク受けプレート３には、ブレーキキャリパに取付けられた際に固定ピン及び位置決めピンが貫通される固定穴３４及び位置決め穴３６が形成されている。

　トルク受けプレート３は、図３及び図４に示すように、ライニング組立体１３の裏板部２２との間に内部空間４０を開けるため、平板部の全周縁部に周壁３３が突出形成されている。そして、トルク受けプレート３は、ライニング組立体１３の裏板部２２との間に内部空間４０を開けて、締結部材であるリベット２８によりガイドプレート１１の周縁部に固着される。即ち、ガイドプレート１１と、ガイドプレート１１の周縁部に対して全周縁部（周壁３３）が固着されたトルク受けプレート３とは、ライニング組立体１３を揺動可能とする内部空間４０をライニング組立体１３の背面側に形成するための筐体を構成している。
　なお、ガイドプレート１１の周縁部に対して別体のスペーサを介してトルク受けプレートの全周縁部を固着し、内部空間４０を形成する筐体を構成してもよい。

　第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６は、図５に示すように、複数のライニング組立体１３に跨って配備されて、トルク受けプレート３からの押圧力をこれらのライニング組立体１３に作用させる。第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６の裏面（図５中、上面）には、トルク受けプレート３の内面３ａに向けて第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６の略重心位置に突設された凸部であるプレート当接曲面部３５が形成されている。各プレート当接曲面部３５は、トルク受けプレート３の内面３ａに当接して第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６の揺動を許容する。

　平板材から打ち抜き加工されたガイドプレート１１は、ガイド孔部１１ａが所定の離間間隔で１０個形成されており、それぞれのガイド孔部１１ａには、ライニング組立体１３が装着される。また、ガイドプレート１１の上限端側には、トルク受けプレート３の位置決め穴３６に対応する位置決め穴３９が形成されている。

　各ライニング組立体１３は、プレート嵌合部２２ａに嵌着されたばね部材２４がガイドプレート１１と抜け止めフランジ部２２ｂとの間に挟まれるようにしてガイドプレート１１の裏面側からガイド孔部１１ａに挿入装着されて、ディスクロータと摩擦材２１との接触時に作用する制動トルクをプレート嵌合部２２ａからガイドプレート１１に伝達する。

　本第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１では、複数個（本実施形態では１０個）のライニング組立体１３を平面状に敷き並べた形態であるが、ライニング組立体１３の抜け止めフランジ部２２ｂとガイドプレート１１との間に挟まれるように配置されたばね部材２４が、ライニング組立体１３の厚さ方向の寸法公差を吸収するため、ディスクロータに対する各ライニング組立体１３の接触性にばらつきが生じることを防止できる。
　従って、ライニング組立体１３の厚さ方向の寸法公差の影響を受けずに、安定した制動特性を維持することができる。

　それぞれのライニング組立体１３の裏板部２２は、中心に凹曲面形状のリンク当接部２２ｃが形成されると共に、中心から離れた位置に回り止め用の係合孔２２ｄが形成されている。
　これに対応して、第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６には、係合孔２２ｄに遊嵌してそれぞれのライニング組立体１３の回転挙動を規制する回転規制部３８が設けられている。回転規制部３８は、第１リンクプレート５と第２リンクプレート６の端部に延出した突片が、係合孔側に折り曲げられたものである。

　また、第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６には、裏板部２２のリンク当接部２２ｃに対応して、裏板当接曲面部３７が形成される。裏板当接曲面部３７は、リンク当接部２２ｃが揺動自在に当接する凸湾曲面に形成されている。

　そこで、本第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１では、第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６が、トルク受けプレート３からの押圧力を、ライニング組立体１３に作用させる。即ち、トルク受けプレート３からの押圧力は、プレート当接曲面部３５から第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６へ直接伝えられる。

　このため、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１では、小さく分割された各ライニング組立体１３が第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６により揺動自在に支持されている。そこで、ライニング組立体１３は、それぞれ個別の揺動でディスクロータ表面のうねりに追従して、ディスクロータ表面に接触する。このため、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１は、安定した摩擦面積を維持して、安定した制動特性を維持できる。

　また、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１では、ガイドプレート１１とトルク受けプレート３とがリベット２８による締結によって、一体の筐体構造となる。ライニング組立体１３の裏板部２２に形成した抜け止めフランジ部２２ｂの外径がガイドプレート１１のガイド孔部１１ａよりも大きく設定されていて、抜け止めフランジ部２２ｂの引っかかりにより、ライニング組立体１３はガイドプレート１１から脱落しない。このため、振動等で緩みが生じることのない堅牢な筐体構造が得られるとともに、ライニング組立体１３がガイドプレート１１から脱落することのない高い安全性を安価な構造で得ることができる。

　そして、本第１実施形態に係るトルク受けプレート３には、図６及び図７に示すように、ガイドプレート１１とトルク受けプレート３で構成された筐体の外部と内部空間４０を連通する穴５１が形成されている。穴５１は、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１がキャリパブレーキ装着部へ装着された際に、鉛直方向下方（図２中、下方）となる位置に形成されている。

　なお、本第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１は、キャリパブレーキ装着部に対して上下自在に取り付けできるように、上下対称に形成されている。そこで、穴５１は、トルク受けプレート３の鉛直方向上下端（図７中、上下端）となる２箇所に形成されている。従って、キャリパブレーキ装着部に対するディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１の上下取付け方向に関わらず、何れか一方の穴５１がトルク受けプレート３の鉛直方向下方に位置することができる。

　穴５１は、図８の（ａ）に示すように、トルク受けプレート３の上下端における内面３ａから外面３ｂに向けてそれぞれ水平方向に貫通する円柱状の貫通穴である。
　また、トルク受けプレート３は、穴５１の近傍における周壁３３の内面に、鉛直方向下方に位置する穴５１に向かって傾斜する一対の内壁面５３を有する（図７参照）。

　次に、上記構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１の作用を説明する。
　本第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１では、ガイドプレート１１とトルク受けプレート３とで構成された筐体の内部空間４０に、ガイドプレート１１のガイド孔部１１ａとライニング組立体１３のプレート嵌合部２２ａとの隙間から水が浸入する可能性がある。しかし、筐体の内部空間４０に浸入した水等は、トルク受けプレート３に形成された穴５１から排出され、筐体内部に溜まることが防止される。そこで、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１は、筐体内部に浸入した水による錆等の発生や、浸入した水の凍結等により、ライニング組立体１３の機能が低下することはない。

　また、本第１実施形態に係るトルク受けプレート３は、鉛直方向下方に位置する穴５１に向かって傾斜する一対の内壁面５３を有している。そこで、内部空間４０に浸入した水等は、内壁面５３を伝わって穴５１から筐体外部に速やかに排出され、内部空間４０の下方に滞留することがない。

　従って、本第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１によれば、ガイドプレート１１とトルク受けプレート３とで構成された筐体内部に水等が溜まることを防止できる。

　なお、トルク受けプレート３に形成される水抜き用の穴は、上記実施形態の穴５１の形状に限らず、種々の形状を採りうることが云うまでもない。
　例えば、図８の（ｂ）に示す穴５１Ａは、トルク受けプレート３の上下端における内面３ａから外面３ｂに向けてそれぞれ斜め上下端方向に貫通する斜円柱状の貫通穴である。
　穴５１Ａは、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１がキャリパブレーキ装着部へ装着された際に、外面３ｂに開口する開口端が内面３ａに開口する開口端よりも鉛直方向下方（図８の（ｂ）中、下方）に位置する。そこで、穴５１Ａに入った水等は、速やかに筐体外部に排出される。

　また、図９の（ａ）に示す穴５１Ｂは、トルク受けプレート３の全周縁部における上下端の周壁３３を貫通して鉛直方向上下端方向に貫通する円柱状の貫通穴である。
　穴５１Ｂは、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１がキャリパブレーキ装着部へ装着された際に、鉛直方向下方（図８の（ｂ）中、下方）に延びるように開口する。そこで、穴５１Ｂに入った水等は、速やかに筐体外部に排出される。

　また、図９の（ｂ）に示す穴５１Ｃは、トルク受けプレート３の全周縁部における上下端の周壁３３を貫通して鉛直方向上下端方向に貫通すると共に、筐体内部側の開口が筐体外部側の開口よりも大きくされた円錐台状の貫通穴である。
　穴５１Ｃは、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１がキャリパブレーキ装着部へ装着された際に、筐体内部側には大きく開口し、筐体外部側には小さく開口する。そこで、筐体内部の水等は排出され易く、筐体外部の水等は浸入し難くすることができる。

　図１０の（ａ）は、本発明の第２実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１Ａにおけるトルク受けプレート３Ａ及びガイドプレート１１の要部分解斜視図、図１０の（ｂ）は図１０の（ａ）に示した穴５１Ｄを示す拡大断面図である。なお、本第２実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１Ａにおいて上記第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１と同等の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。

　図１０の（ａ），（ｂ）に示すように、本第２実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１Ａの穴５１Ｄは、トルク受けプレート３Ａの全周縁部における上下端の周壁３３の固着面３３ａに形成されて鉛直方向上下端方向に延びる溝である。穴５１Ｄは、周壁３３の固着面３３ａに凹設された断面矩形状の溝と、溝の上方を覆うガイドプレート１１とによって構成される。

　従って、本第２実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１Ａによれば、上記本第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１と同様に、ガイドプレート１１とトルク受けプレート３Ａとで構成された筐体内部に水等が溜まることを防止できる。
　更に、穴５１Ｄは、ガイドプレート１１の周縁部に対して固着される周壁３３の固着面３３ａに溝を形成するだけでよいので、貫通穴を形成する場合よりも製造が容易となる。

　図１１の（ａ）は、本発明の第３実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１Ｂの要部斜視図、図１１の（ｂ）は図１１の（ａ）に示した穴５５を示す拡大断面図である。なお、本第３実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１Ｂにおいて上記第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１と同等の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。

　図１１の（ａ），（ｂ）に示すように、本第３実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１Ｂの穴５５は、ガイドプレート１１Ｂの上下端において筐体の外部と内部空間４０を連通するため、それぞれ水平方向に貫通して形成された円柱状の貫通穴である。

　従って、本第３実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１Ｂによれば、上記本第１実施形態に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体１と同様に、ガイドプレート１１Ｂとトルク受けプレート３Ｂとで構成された筐体内部に水等が溜まることを防止できる。
　更に、穴５５は、ガイドプレート１１Ｂに形成されるので、ガイドプレート１１Ｂのガイド孔部１１ａを打ち抜き加工する際に同時に形成することができ、製造が容易となる。

　ここで、上述した本発明に係るディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体の実施形態の特徴をそれぞれ以下に簡潔に纏めて列記する。
　［１］　制動トルクを受けるガイドプレート（１１，１１Ｂ）に少なくとも１つのライニング組立体（１３）が揺動自在に支持されて、前記ライニング組立体（１３）がディスクロータへ押圧されるディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記ガイドプレート（１１，１１Ｂ）と、前記ガイドプレート（１１，１１Ｂ）の周縁部に対して全周縁部（周壁３３）が固着されたトルク受けプレート（３，３Ａ，３Ｂ）とは、前記ライニング組立体（１３）を揺動可能とする内部空間（４０）を前記ライニング組立体（１３）の背面側に形成するための筐体を構成し、
　前記ガイドプレート（１１Ｂ）及び前記トルク受けプレート（３，３Ａ）の少なくともいずれか一方には、キャリパブレーキ装着部へ装着された際に鉛直方向下方となる位置に、前記筐体の外部と前記内部空間（４０）を連通する穴（５１，５１Ａ，５１Ｂ，５１Ｃ，５１Ｄ，５５）が形成されているディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体（１，１Ａ，１Ｂ）。
　［２］　上記［１］に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記ライニング組立体（１３）は、
　制動時に前記ディスクロータと接触する摩擦材（２１）と、前記摩擦材（２１）の裏面に固着された裏板部（２２）とを有し、かつ前記裏板部（２２）には、前記ガイドプレート（１１，１１Ｂ）に設けられたガイド孔部（１１ａ）に揺動自在に嵌合されるプレート嵌合部（２２ａ）を備え、
　前記プレート嵌合部（２２ａ）が前記ガイド孔部（１１ａ）に挿入装着され、前記ディスクロータと前記摩擦材（２１）との接触時に作用する制動トルクを前記プレート嵌合部（２２ａ）から前記ガイドプレート（１１，１１Ｂ）に伝達している
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体（１，１Ａ，１Ｂ）。
　［３］　上記［２］に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記トルク受けプレート（３，３Ａ，３Ｂ）と前記裏板部（２２）との間には、複数の前記ライニング組立体（１３）に跨って配備されてこれらライニング組立体（１３）と前記トルク受けプレート（３，３Ａ，３Ｂ）との間で押圧力を伝達するリンクプレート（第１リンクプレート５及び第２リンクプレート６）が設けられている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体（１，１Ａ，１Ｂ）。
　［４］　上記［１］～［３］の何れか１つに記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴（５１，５１Ａ，５１Ｂ，５１Ｃ，５１Ｄ）が、前記トルク受けプレート（３，３Ａ）に形成されている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体（１，１Ａ）。
　［５］　上記［４］に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴（５１Ｄ）が、前記全周縁部（周壁３３）の固着面（３３ａ）に形成されて前記鉛直方向下方に延びる溝である
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体（１Ａ）。
　［６］　上記［４］に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴（５１Ｂ，５１Ｃ）が、前記全周縁部（周壁３３）を貫通して前記鉛直方向下方に延びる貫通穴である
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体（１）。
　［７］　上記［１］～［３］の何れか１つに記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴（５５）が、前記ガイドプレート（１１Ｂ）に形成されている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体（１Ｂ）。
　［８］　上記［１］～［７］の何れか１つに記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記トルク受けプレート（３，３Ａ，３Ｂ）は、前記鉛直方向下方に位置する前記穴（５１，５１Ａ，５１Ｂ，５１Ｃ，５１Ｄ，５５）に向かって傾斜する内壁面（５３）を有する
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体（１，１Ａ，１Ｂ）。

　なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
　例えば、筐体の外部と内部空間を連通する本発明に係る穴は、断面円形や断面矩形の貫通穴に限らず、断面楕円や断面多角形等の種々の断面形状を採りうる。

　なお、本出願は、２０１７年７月２１日出願の日本特許出願（特願２０１７－１４１７０１）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

　本発明のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、ガイドプレートとトルク受けプレートとで構成された筐体内部に水等が溜まることを防止でき、水による錆等の発生や、浸入した水の凍結等により、ライニング組立体の機能が低下することがない。

１…ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体
３…トルク受けプレート
５…第１リンクプレート（リンクプレート）
６…第２リンクプレート（リンクプレート）
１１…ガイドプレート
１１ａ…ガイド孔部
１３…ライニング組立体
２１…摩擦材
２２…裏板部
２２ａ…プレート嵌合部
２２ｂ…抜け止めフランジ部
２２ｃ…リンク当接部
２２ｄ…係合孔
３３…周壁（周縁部）
４０…内部空間
５１…穴

Claims

　制動トルクを受けるガイドプレートに少なくとも１つのライニング組立体が揺動自在に支持されて、前記ライニング組立体がディスクロータへ押圧されるディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記ガイドプレートと、前記ガイドプレートの周縁部に対して全周縁部が固着されたトルク受けプレートとは、前記ライニング組立体を揺動可能とする内部空間を前記ライニング組立体の背面側に形成するための筐体を構成し、
　前記ガイドプレート及び前記トルク受けプレートの少なくともいずれか一方には、キャリパブレーキ装着部へ装着された際に鉛直方向下方となる位置に、前記筐体の外部と前記内部空間を連通する穴が形成されている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
　請求項１に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記ライニング組立体は、
　制動時に前記ディスクロータと接触する摩擦材と、前記摩擦材の裏面に固着された裏板部とを有し、かつ前記裏板部には、前記ガイドプレートに設けられたガイド孔部に揺動自在に嵌合されるプレート嵌合部を備え、
　前記プレート嵌合部が前記ガイド孔部に挿入装着され、前記ディスクロータと前記摩擦材との接触時に作用する制動トルクを前記プレート嵌合部から前記ガイドプレートに伝達している
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
　請求項２に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記トルク受けプレートと前記裏板部との間には、複数の前記ライニング組立体に跨って配備されてこれらライニング組立体と前記トルク受けプレートとの間で押圧力を伝達するリンクプレートが設けられている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
　請求項１～３の何れか１項に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴が、前記トルク受けプレートに形成されている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
　請求項４に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴が、前記全周縁部の固着面に形成されて前記鉛直方向下方に延びる溝である
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
　請求項４に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴が、前記全周縁部を貫通して前記鉛直方向下方に延びる貫通穴である
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
　請求項１～３の何れか１項に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記穴が、前記ガイドプレートに形成されている
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
　請求項１～７の何れか１項に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体であって、
　前記トルク受けプレートは、前記鉛直方向下方に位置する前記穴に向かって傾斜する内壁面を有する
　ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。