WO2019016897A1

WO2019016897A1 - スライドファスナー用スライダーの胴体、スライダー

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Publication number: WO2019016897A1
Application number: PCT/JP2017/026135
Authority: WO
Inventors: 陽平宮崎; 嘉一濱田
Original assignee: Ykk株式会社
Priority date: 2017-07-19
Filing date: 2017-07-19
Publication date: 2019-01-24
Also published as: TWI641336B; CN110740658A; CN110740658B; TW201907822A

Abstract

前後方向に貫通するエレメント路（１ａ）の上下を覆う上翼板（１１）と下翼板（１２）、上翼板と下翼板の上下間を連結する柱（１４）、上翼板の上面から突出すると共にカバー（４，４Ａ）を取り付ける前取付柱（１５）と後取付柱（１６）、上翼板の上面における前取付柱と後取付柱の間にカバーとは別部品の制御爪の前端部を収容可能に凹む収容凹部（１８）、前取付柱と後取付柱は側面にカバーを上下に揺動可能に支持するための前支持部（１５ｅ）と後支持部（１６ｅ）を備え、上翼板はその上面における後取付柱と収容凹部との間にはカバーとは別部品またはカバーと一体化した制御爪の爪部を収容可能であると共にエレメント路に通じる爪穴（１１ａ）を備え、爪穴は第１の爪穴部（１１ｂ，１１ｄ）と第２の爪穴部（１１ｃ，１１ｅ）を備え、第１の爪穴部と第２の爪穴部は上翼板の幅方向に隣り合うと共に前後方向の長さが異なるスライドファスナー用スライダーの胴体。

Description

スライドファスナー用スライダーの胴体、スライダー

　本発明は、スライドファスナーのスライダーの胴体、およびその胴体を使用するスライダーに関するもので、詳しくは自動停止機能が付いたスライダーに使用する胴体、およびスライダーに関する。

　自動停止機能が付いた従来のスライダーの一例としては、胴体と、胴体を操作する引手と、引手を胴体に回動可能に取り付けるカバーとの３部品で構成されたものが存在する（特許文献１）。

　カバーは、前後方向に延びる上壁と、上壁の側端から下方に延びる側壁とを備えるものである。またカバーは上壁・側壁の他に、上壁の前端から下方に延びる板バネとしての弾性片と、側壁の下端から下方に延びると共に胴体を移動可能および移動不能に制御する制御爪としての停止爪とを備えるものである。

　また胴体は、前後方向に貫通するエレメント路の上下を覆う上翼板と下翼板と、上翼板の上面の前後から突出すると共にカバーを取り付ける前方の取付柱と後方の取付柱とを備える。そして上翼板にはエレメント路に通じる爪孔が形成されている。爪孔に制御爪が収容され、板バネの復元力によって制御爪の先部がエレメントに衝突することによって、スライダーは移動不能の状態、いわゆる自動停止状態になる。

　特許文献１に開示されたスライダーの引手を操作する作業は、引手を引き上げるようにするもので、その引き上げ動作に連動して制御爪が後方に向かいながら上昇する。
　またカバーを胴体に装着する作業は、制御爪を胴体に装着する作業でもあり、スライダーの引手を操作する作業のときとは異なる方向に制御爪がカバーと一緒に動くものであり、詳しく言えば、カバーと一緒に制御爪が下方に向かいながら後方に向かうものである。
　上記した何れの作業においても爪孔は、制御爪の動きを阻止しないように、制御爪と衝突しない必要がある。そして何れの作業においても制御爪が後方に変位するので、自動停止状態において爪孔は、制御爪に対し前後両方に隙間を備える状態になっている。

　また自動停止機能を備える従来のスライダーの一例としては、胴体と、引手と、制御爪としての爪杆と、爪杆の一部を胴体の内部に突入させる復元力を弾性変形により発生させる板バネと、引手・板バネ・爪杆を覆うと共に引手・爪杆を胴体に取り付けるカバーとの５部品で構成されたものが存在する（特許文献２）。

　胴体は特許文献１の胴体と同様の機能を発揮するものとして、上翼板・下翼板・前方の取付柱・後方の取付柱を備える。また上翼板は爪孔の他に、爪杆の前端部を収容する収容凹部としての係止基部を備える。

　特許文献２に開示されたスライダーの引手を操作する作業は、特許文献１に開示されたスライダーの場合と同様である。
　また制御爪を胴体に装着する作業は、胴体の真上から下方に向かって制御爪を移動させ、爪杆の前端部を収容凹部に挿入すると共に、制御爪の後端部（爪部）を爪孔に挿入するようにする。
　上記した何れの作業においても爪孔は、制御爪の動きを阻止しないように、制御爪と衝突しないようにする必要がある。そして制御爪を胴体に装着する作業において制御爪が前後方向に変位しないので、自動停止状態において爪孔は、制御爪に対し後方に隙間を備える状態になっている。

特許４６３２９２４号公報特許５００８５１８号公報

　ところで上記した３部品のスライダーは５部品のスライダーと比べると、部品点数が少ないものである。その一方で５部品のスライダーは３部品のスライダーと比べると、制御爪の厚みをカバーの厚みとは無関係に設定できるものである。
　そこで本発明の出願人は本発明の出願時点において、５部品のスライダーと３部品のスライダーの良い点を兼ね備えるようにし、５部品のうち板バネをカバーと一体化する試み、つまり４部品のスライダーを製作する試みを行っている。より詳しく言えば、４部品のスライダーとは、胴体と、引手と、制御爪と、板バネ付きのカバーとを備えるものである。４部品のスライダーは、３部品のスライダーと比べると、殆ど同じ構成であるので、胴体を共通化できれば、１種類の胴体を生産するだけで、４部品のスライダーと３部品のスライダーを生産できる、言い換えれば２種類のスライダーを生産できるので望ましい。

　また４部品のスライダーと３部品のスライダーで胴体を共通化する場合には、爪孔の長さについて配慮する必要がある。制御爪が単独の部品となっている場合と、カバーの一部になっている場合とでは、自動停止状態において爪孔は、制御爪に対し前方に隙間を備えるか否かにおいて相違するからである。

　以上述べたことをまとめると、以下のように考えることができる。４部品のスライダーは、言い換えれば制御爪とカバーとが別である種類のスライダーである。また３部品のスライダーは、言い換えれば制御爪がカバーの一部である種類のスライダーである。したがって本発明の目的は、制御爪がカバーの一部である種類のスライダーと、制御爪とカバーとが別部品である種類のスライダーに、使用することのできる胴体を提供すること、並びにその胴体を使用したスライダーを提供することである。

　本発明のスライドファスナー用スライダーの胴体は、前後方向に貫通するエレメント路の上下を覆う上翼板と下翼板、上翼板と下翼板の上下間を連結する柱、上翼板の上面から突出すると共にカバーを取り付ける前取付柱と後取付柱、上翼板の上面における前取付柱と後取付柱の間にカバーとは別部品の制御爪の前端部を収容可能な収容凹部を備える。そして前取付柱と後取付柱は、その側面にカバーを上下に揺動可能に支持する前支持部と後支持部を備える。また上翼板は、その上面における後取付柱と収容凹部との間にはカバーとは別部品またはカバーと一体化した制御爪の爪部を収容可能であると共にエレメント路に通じる爪穴を備える。また爪穴は、第１の爪穴部と第２の爪穴部を備える。そのうえで第１の爪穴部と第２の爪穴部は、上翼板の幅方向に隣り合うと共に前後方向の長さを異ならせたものである。

　第１の爪穴部と第２の爪穴部の具体的な構成の例としては、以下の１）、２）の例を挙げることができる。

　１）上翼板は第１の爪穴部と第２の爪穴部を幅方向に仕切る仕切部を備えるものとし、第１の爪穴部と第２の爪穴部は仕切部によって離れているものである。

　２）第１の爪穴部と第２の爪穴部は幅方向に繋がっているものである。

　また前後方向の長さに関して第１の爪穴部と第２の爪穴部との関係は問わない。ただし穴の面積を小さくした方が、上翼板の強度を向上させるには望ましい。
またカバーとは別部品の制御爪の爪部がエレメント路に突入する場合、制御爪のうち爪部に対し上側に形成される被載置部が上翼板に載せ置かれることになる。
そして上翼板の強度を向上させると共に、制御爪の姿勢を安定させるには、次のようにすることが望ましい。
　すなわち前後方向の長さに関して第１の爪穴部は第２の爪穴部よりも短くする。また上翼板は、制御爪のうち爪部に対し上側に形成される被載置部を載せ置く載置部を備えるものとする。そのうえで載置部は、その周囲において爪穴以外の部分よりも段差状に下方に凹んで形成されると共に、第１の爪穴部に対して前側又は後側に隣接することである。

　また第１の爪穴部と第２の爪穴部は互いの前面の位置を揃えているか否かは問わないが、次のようにすることも可能である。
　すなわち第１の爪穴部と第２の爪穴部は互いの前面の位置を前後に異ならせたものである。

　上記した胴体を用いたスライダーの具体的な構成の例としては、以下の１）、２）の例を挙げることができる。
　１）カバーとは別部品の制御爪を用いるタイプのスライダーは、胴体、前後方向に回動可能であると共に回動の中心となる軸部が上翼板の上に配置される引手、前取付柱と後取付柱の間において軸部の上に載せると共に胴体を移動可能および移動不能に制御する制御爪であってその前端部の揺動凸部が収容凹部に嵌り合うと共にその後端部の爪部が爪穴からエレメント路に突入する制御爪、前取付柱と後取付柱に対して上下方向に揺動可能に取り付けられると共に制御爪を上方及び側方から上板部および側板部が覆うカバーであって上板部の前端から前取付柱の前面に沿って延びる板バネ部の復元力によって上板部が制御爪を下方に押し込むカバーを備える。そして爪部は少なくとも第１の爪穴部に収容されるものである。

　２）制御爪がカバーの一部である種類のスライダーは、胴体、前後方向に回動可能であると共に回動の中心となる軸部が上翼板の上に配置される引手、前取付柱と後取付柱に対して上下方向に揺動可能に取り付けられると共に前取付柱を上方及び側方から上板部および側板部が覆うカバーであって側板部から下方に延びる爪部が爪穴に収容されると共に上板部の前端から前取付柱の前面に沿って延びる板バネ部の復元力によって爪部の下部をエレメント路内に押し込むカバーを備える。そして爪部は第２の爪穴部に収容されるものである。

　本発明のスライドファスナー用スライダーの胴体は、カバーと一体化した制御爪の爪部を用いる場合には、第１の爪穴部と第２の爪穴部のうち前後方向の寸法の長い方に爪部を収容し、カバーとは別部品の制御爪を用いる場合には、第１の爪穴部と第２の爪穴部のうち前後方向の寸法の短い方に爪部を収容すると共に、制御爪の前端部を収容凹部に収容すればよい。このように本発明の胴体は、制御爪がカバーの一部である種類のスライダーと、制御爪とカバーとが別である種類のスライダーに、使用することができる。

本発明の第一・第二実施形態のスライダーに使用する胴体を示す平面図である。第一実施形態のスライダーの胴体における使用状態を示す平面図である。第一実施形態のスライダーを分解した状態を示す斜視図である。第一実施形態のスライダーを組み立てた状態を示す斜視図である。第一実施形態のスライダーにおけるカバーの装着状態を示す部分断面図である。（Ａ）（Ｂ）図は、第一実施形態のスライダーの自動停止状態と、自動停止状態を解除した状態を側方から視て示す断面図である。本発明の第二実施形態のスライダーを分解した状態を示す斜視図である。第二実施形態のスライダーの胴体における使用状態を示す平面図である。（Ａ）（Ｂ）図は、第二実施形態のスライダーの自動停止状態と、カバーの取り付け操作を示す部分断面図である。第三・第四実施形態のスライダーに使用する胴体を示す平面図である。第三実施形態のスライダーの胴体における使用状態を示す平面図である。第四実施形態のスライダーの胴体における使用状態を示す平面図である。第五実施形態のスライダーの胴体における使用状態を示す平面図である。第六実施形態のスライダーの胴体における使用状態を示す平面図である。第一・第二実施形態のスライダーにおける胴体の変形例を示す平面図である。第七実施形態のスライダーの自動停止状態を示す部分断面図である。スライドファスナーの平面図である。

　スライドファスナーＦは図１７に示すように、一対のファスナーストリンガーＦ１，Ｆ１と、一対のファスナーストリンガーＦ１，Ｆ１を開閉するスライダーＳを備えるものである。

　一対のファスナーストリンガーＦ１，Ｆ１は、帯状であって且つ帯幅方向に対向する一対のファスナーテープＦ２，Ｆ２と、一対のファスナーテープＦ２，Ｆ２の対向する側縁部に別々に固定された一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３とを備えるものである。ちなみにエレメント列Ｆ３は、図１７の例のようにモノフィラメントをコイル状に曲げ、そのコイルの一巻分のエレメントが多数連続するもの（以下「コイルエレメント」と称する。）や、図１１～１４に示すように、多数のエレメントがファスナーテープに対してその延びる方向に間隔をあけて固定されたもの（以下、「独立エレメント」と称する。）等がある。

　以下では、互いに直交する三本の直線方向を用いて、方向を定める。
　第１の直線方向は、一対のファスナーストリンガーＦ１を対向させる方向、言い換えれば一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３が対向する方向であり、左右方向、または幅方向と言う。ちなみにファスナーストリンガーＦ１（ファスナーテープＦ２）は帯状であり、その帯幅方向が左右方向である。左右方向とは、図１７の左右方向である。
　第２の直線方向は、一対のファスナーストリンガーＦ１の長手方向、言い換えれば帯状であるファスナーストリンガーＦ１の延びる方向であり、前後方向と言う。前方向とは、一対のファスナーストリンガーＦ１を閉じるときに（一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３を噛合させるときに）スライダーＳを移動させる方向である。後方向とは一対のファスナーストリンガーＦ１を開くときに（一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３を分離させるときに）スライダーＳを移動させる方向である。前方向とは図１７の上方向であり、後方向とは図１７の下方向である。
　第３の直線方向は、ファスナーストリンガーＦ１の厚み方向、言い換えればファスナーテープＦ２や、エレメント列Ｆ３の厚み方向であり、上下方向と言う。上方向とは、図１７の紙面に対して直交する方向のうち手前を向く方向である。下方向とは、図１７の紙面に対して直交する方向のうち奥を向く方向である。

　本発明の第一実施形態のスライダーＳはコイルエレメント用である。第一実施形態のスライダーＳは図３，４，１５に示すように、一対のファスナーストリンガーＦ１，Ｆ１を開閉可能な胴体１と、胴体１の上に配置されると共に前後に回動可能な引手２と、胴体１の上に載せられると共に引手２の態様に応じて胴体１を移動可能および移動不能に制御する制御爪３と、制御爪３を覆うと共に引手２と制御爪３を胴体１に連結するカバー４であって上下方向に揺動可能なカバー４とを備える。第一実施形態のスライダーＳは、胴体１と引手２と制御爪３とカバー４を別々の部品とするもので、４つの部品より構成されるものである。ちなみに引手２に関して、回動とは、スライダーＳによって一対のファスナーストリンガーＦ１，Ｆ１を開閉するときに引手２を操作して前後に回すときの動きである。以後、制御爪３が胴体１を移動不能に制御した状態、いわゆる自動停止状態に基づいてスライダーＳの各部品を説明する。

　引手２は図３に示すように、回動するときの半径方向に延びるものであって、半径方向の一端部には回動の中心となる軸部２１を、半径方向の他端部には引手２を摘まむための摘まみ部２２を備える。より詳しく言えば、引手２は、半径方向の一方側にはカバー４を通す貫通穴２３を備える。貫通穴２３に対して半径方向の他方側の部分が摘まみ部２２であり、貫通穴２３を形成する枠部のうち摘まみ部２２に対して半径方向に対向する部分が軸部２１である。この軸部２１が胴体１の上に配置され、軸部２１の上に制御爪３が配置される。

　制御爪３は、軸部２１の上側において前後に延びると共に軸部２１によって押し上げられる被押上げ部３１と、被押上げ部３１の後部から下方に向かう爪部３２とを備える。また制御爪３は、被押上げ部３１の後端よりも前側に爪部３２を備えるものであり、それゆえ被押上げ部３１の後端部３１ｃは、爪部３２よりも後方に張り出している。被押上げ部３１の詳細は後述する。

　カバー４は、胴体１の上面に対向する上板部４１、上板部４１の前端から下方に向かって延びる板バネ部４２、上板部４１の左右側端から下方に向かって延びる一対の側板部４３，４３を備える。カバー４は金属板をプレス加工によって折り曲げて形成したものである。またカバー４（側板部４３）の厚みは、制御爪３の左右方向の厚みよりも薄くなっている。なおカバー４の詳細は後で説明する。

　胴体１はエレメントを噛合および分離させるためのものである。胴体１は空間部として図３～５に示すように、その前後面には前後方向に貫通すると共に一対のエレメント列を通すエレメント路１ａを備え、その左右側面には前後方向に貫通すると共に一対のファスナーテープを通すテープ溝１ｂを備えるものである。
　エレメント路１ａは、その前部が左右に仕切られた空間部である。言い換えればエレメント路１ａの前部は、左右に分岐された二本の分岐路であり、エレメント路１ａの後部は、二本の分岐路が合流して後方へ向かう一本の通路となっている。

　またエレメント路１ａとテープ溝１ｂを形成するために胴体１は、エレメント路１ａの上側を覆う上翼板１１、上翼板１１に対して下方に間隔をあけて対向すると共にエレメント路１ａの下側を覆う下翼板１２、上翼板１１と下翼板１２の上下の間隔を狭めるように上または下方向に突出すると共に上翼板１１と下翼板１２の少なくとも一方の左右端部から突出するフランジ１３，１３（図示の例では両方の左右端部から突出する４枚のフランジ１３，…）、上翼板１１と下翼板１２の前部で且つ左右方向の中間部において上翼板１１と下翼板１２を連結する柱１４であって一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３の間に挟まれる柱１４、上翼板１１の上面の前後で且つ左右方向の中間部からそれぞれ上方に突出すると共にカバー４を取り付ける前取付柱１５と後取付柱１６を備える。

　上翼板１１と下翼板１２とは上下方向を厚み方向とする板である。上翼板１１は、前取付柱１５と後取付柱１６の間であって且つ後取付柱１６寄りの位置には、エレメント路１ａに爪部３２を突入させるための爪穴１１ａを備える。爪穴１１ａは上翼板１１をその厚み方向である上下方向に貫通するものである。

　図１に示すように爪穴１１ａは、カバーとは別部品の制御爪の爪部を収容可能な第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃとを備える。第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃは、上翼板１１の幅方向に隣り合うもので、本実施形態では幅方向に繋がっている（通じている）。また第１の爪穴部１１ｂは、幅方向に関して第２の爪穴部１１ｃよりも上翼板１１の中心側に位置するものである。
　また第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃは、平面視していずれも矩形状であり、いずれも前後方向の寸法（長さ）を幅方向の寸法よりも長くしてある。
　また第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃは、前後方向の寸法を異ならせたものである。そして前後方向の寸法に関して第１の爪穴部１１ｂは、第２の爪穴部１１ｃよりも短くなっている。
　また第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃは、互いの前面１１ｂ１，１１ｃ１の位置を前後に異ならせてある。より詳しく言えば第１の爪穴部１１ｂの前面１１ｂ１は、第２の爪穴部１１ｃの前面１１ｃ１よりも後方に位置するものである。また平面視して第１の爪穴部１１ｂの前面１１ｂ１は、第２の爪穴部１１ｃの前面１１ｃ１に対し段差状に後方に下がった状態になっている。
　なお爪穴１１ａは、俗にいう抜き勾配が付いたもので、下方から上方に向かって幅方向および前後方向の長さが広くなるものである。

　図２には、スライダーが自動停止状態のときの爪穴１１ａと制御爪の爪部３２との関係が示されている。また爪穴１１ａは前述したように抜き勾配が付いたものなので、図２では爪穴１１ａを簡略化し、爪穴１１ａの下端のみを示している。
　そして第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃは協働して制御爪３の爪部３２を収容するものである。この関係を詳細に説明するために、上翼板１１の左右方向の中心線（以下、「中心線」と言う。）Ｌを用いる。なお中心線Ｌは、噛合した状態の一対のエレメント列Ｆ３，Ｆ３を幅方向に二等分する線に一致する。前記した関係の詳細は以下の通りである。

　爪部３２の前面３２ａは爪穴１１ａの前面１１ｍに部分的に接触する。より詳しくは爪部３２の前面３２ａは、第１の爪穴部１１ｂの前面１１ｂ１に接触すると共に第２の爪穴部１１ｃの前面１１ｃ１とは離れた状態（非接触）となる。
　爪部３２の左右の側面３２ｂ，３２ｃのうち一方（中心線Ｌから遠い方の側面３２ｃ）は、第２の爪穴部１１ｃの側面（中心線Ｌから遠い方の側面１１ｃ２）に接触する。爪部３２の左右の側面３２ｂ，３２ｃのうち他方（中心線Ｌから近い方の側面３２ｃ）は、第１の爪穴部１１ｂの側面１１ｂ２と非接触である。
　また第１の爪穴部１１ｂの後面１１ｂ３と第２の爪穴部１１ｃの後面１１ｃ３は、幅方向に一直線に連続する状態になっている。また爪部３２の後面３２ｄは、爪穴１１ａの後面１１ｎ（第１の爪穴部１１ｂの後面１１ｂ３と第２の爪穴部１１ｃの後面１１ｃ３）と非接触である。

　また上翼板１１は図１，６に示すように、前取付柱１５と後取付柱１６の間であって且つ爪穴１１ａに対して後側に隣接して、制御爪３の被押上げ部３１の後端部３１ｃを載せ置く載置部１１ｚを備える。後端部３１ｃは被載置部３１ｃとも称する。また上翼板１１は、カバー４とは別部品の制御爪３の爪部３２がエレメント路１ａに突入する場合、制御爪３のうち爪部３２に対し上側の部分（被載置部３１ｃ）が載置部１１ｚの上に載せ置かれ、爪部３２がエレメント路１ａに突入する長さが定められると共に、制御爪３の姿勢が安定することになる。また載置部１１ｚは爪穴１１ａの幅方向の全長に亘って（第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃの双方に対し幅方向の全長に亘って）形成されている。また載置部１１ｚは、その周囲において上翼板１１の上面における爪穴１１ａ以外の部分よりも段差状に下方に凹んで形成されている。そして自動停止状態の場合、図６（Ａ）に示すように載置部１１ｚの上に被押上げ部３１の後端部（被載置部）３１ｃが載り、爪部３２が爪穴１１ａからエレメント路１ａに突入し、図示しないエレメント列に接触して、スライダーＳを移動不能に制御する。

　また胴体１は図３に示すように、上翼板１１・下翼板１２・フランジ１３・柱１４・前取付柱１５・後取付柱１６の他に、前取付柱１５と後取付柱１６の間であって且つ後取付柱１６に対して前側には、上翼板１１の上面から突出する内板１７を備える。より詳しく言えば内板１７は、爪穴１１ａと載置部１１ｚの側方であって後取付柱１６から前側に突出しており、カバー４における一対の側板部４３，４３の内側であって片方の側板部４３に沿うようにして配置される。

　また胴体１は図３，６に示すように、前取付柱１５と後取付柱１６の間において制御爪３を前後左右に位置決めすると共に上下に揺動可能に収容するものである。制御爪３の前端部を揺動の中心部として位置決めするために胴体１と制御爪３は、互いの前端部において上下方向に嵌り合う揺動凸部３１ａと収容凹部１８とを備える。

　図１，３，６に示すように収容凹部１８は、揺動凸部３１ａを収容するために上翼板１１の上面側において下方に凹むものである。また収容凹部１８は、本実施形態では前取付柱１５の後側に隣接して形成される。より詳しく言えば胴体１は、上翼板１１の上面に前取付柱１５・後取付柱１６の他に、当該上面から上方に突出する突出部１９を備え、突出部１９の上面には収容凹部１８としての穴が形成されている。また収容凹部１８は、幅方向に関しては突出部１９の中央部に形成され、前後方向のうち後面に関しては突出部１９の後面よりも前側に形成され、前後方向のうち前面に関しては突出部１９の前端（言い換えれば前取付柱１５の後面）に一致して形成されている。

　また収容凹部１８は図１，２に示すように、側面１８ａを前後方向に対し傾斜した状態としている。より詳しく言えば以下の通りである。収容凹部１８の左右側面１８ｂ,１８ａは、上翼板１１の左右方向の中心線Ｌに対し左右の両側に配置してある。そして収容凹部１８の左右側面１８ｂ，１８ａのうち中心線Ｌに対し第１の爪穴部１１ｂが位置する側（図の右側）の側面１８ａは、後方へ向かうにつれて中心線Ｌから離れるように傾斜している。また収容凹部１８と爪穴１１ａは制御爪３の揺動凸部３１ａと爪部３２を収容するので、自動停止状態において制御爪は前後方向に対して傾斜する。このように胴体１は、上翼板１１・下翼板１２・フランジ１３・柱１４・前取付柱１５・後取付柱１６・内板１７の他に、突出部１９・揺動用の収容凹部１８を備える。

　また揺動凸部３１ａは図３，６に示すように、制御爪３の被押上げ部３１の前端部である。より詳しく言えば、制御爪３の被押上げ部３１は、前後に延びる被押上げ部本体３１ｂと、被押上げ部本体３１ｂの前端部から下方に延びる揺動凸部３１ａとを備える。ちなみに側面視すると、被押上げ部本体３１ｂは円弧状であって、その円弧の中心が被押上げ部本体３１ｂの下方に位置するものとなっている。

　また胴体１は、カバー４の板バネ部４２を前取付柱１５の前面に沿わせるようにして前後左右に位置決めして収容するものである。そのために胴体１と板バネ部４２は次のような構成をしている。
　板バネ部４２は、カバー４の上板部４１の前端から前方に向かって延びる第１のバネ片部４２ａと、第１のバネ片部４２ａの前端から下方に向かって延びる第２のバネ片部４２ｂとを備える。
　胴体１の前取付柱１５は左右方向の中間部であって且つ上面から前面に亘って板バネ部用の凹部１５ｂを備える。板バネ部用の凹部１５ｂは、第１のバネ片部４２ａを収容する第１の凹部１５ｃと、第２のバネ片部４２ｂを収容する第２の凹部１５ｄを備える。この第２の凹部１５ｄは、前取付柱１５の前面と上翼板１１の上面の両面に亘って形成されている。また第１の凹部１５ｃは前取付柱１５の上面に形成されている。

　カバー４を胴体１に対して上下に揺動可能にする構成に関して、カバー４は以下の通りである。図３，５に示すようにカバー４の側板部４３は、上板部４１の左右側端から下方に向かって延びる側板本体部４３ａと、側板本体部４３ａの下部に対して前方に突出する前突出片部４３ｂと、側板本体部４３ａに対して後方に突出する後突出片部４３ｃを備える。
　前突出片部４３ｂは、カバー４が揺動するときの中心部となり、後突出片部４３ｃは、カバー４が揺動するときの変位部となる。したがってカバー４は、側板部４３の前部を揺動の中心部とすると共に側板部４３の後部を揺動によって上下に変位する変位部とするものである。またカバー４の後部を上方に変位させたときには、板バネ部４２が弾性変形して撓み、制御爪３と一緒にカバー４の後部を下方に押し戻す大きな復元力が発生するものである。
　なお一対の側板本体部４３ａ，４３ａのうち側方に対向する部分は、左右に貫通すると共に下方に開口する貫通穴４３ａ１をそれぞれ備えている。この貫通穴４３ａ１は、引手２の軸部２１を通すと共に引手２を回動可能に支持するための穴である。

　カバー４を胴体１に対して上下に揺動可能にする構成に関して、胴体１は以下の通りである。図３，５に示すように胴体１は、前取付柱１５の左右側面の下部に、左右の前突出片部４３ｂを上下に変位不能に収容する前収容部１５ｅを備え、後取付柱１６の左右側面の下部に、後突出片部４３ｃを上下に変位可能に収容する後収容部１６ｅを備える。
　前収容部１５ｅは前取付柱１５の側面において凹むと共に後方に開口している。前収容部１５ｅの上下寸法は、前突出片部４３ｂの上下寸法よりも僅かに長いものである。この
前収容部１５ｅはカバー４を上下に揺動可能に支持するための前支持部１５ｅである。
　また前取付柱１５の側面のうち前支持部１５ｅに対して上側の部分は、前支持部１５ｅに対して段差状に側方に張り出した前張出部１５ｆである。前張出部１５ｆは、前支持部１５ｅに収容された前突出片部４３ｂを上方向に変位不能にする。
　後収容部１６ｅは後取付柱１６の側面において凹むと共に前方に開口している。また後収容部１６ｅの上下寸法は、後突出片部４３ｃの上下寸法よりも充分に長いものである。この後収容部１６ｅは、カバー４を上下に揺動可能に支持するための後支持部１６ｅである。
　また後取付柱１６の側面のうち後支持部１６ｅに対して上側の部分は、後支持部１６ｅに対して段差状に側方に張り出した後張出部１６ｆである。後張出部１６ｆは、上下方向に変位可能な後突出片部４３ｃの移動範囲のうち上方の限界位置を定める。

　上記した第一実施形態のスライダーＳは以下のようにして組み立てる。まず引手２を胴体１に装着する作業は、胴体１に対しその上方から引手２の軸部２１を前取付柱１５と後取付柱１６（突出部１９）の間に挿入するものである。次に制御爪３を胴体１に装着する作業は、軸部２１の上方から制御爪３を下方へ移動させ、軸部２１を制御爪３で上方から覆うようにして揺動凸部３１ａを収容凹部１８に挿入し、爪部３２を爪穴１１ａに挿入するものである。つまり制御爪３を胴体１に装着する作業において制御爪３は前後方向に変位しない。最後にカバー４を胴体１に装着する作業は、カバー４を前取付柱１５と後取付柱１６に取り付けるものである。なお第一実施形態のスライダーＳのカバー４を胴体１に装着する作業は、第二実施形態のスライダーのカバーを胴体に装着する作業と同じであるので、第二実施形態のスライダーにおいて詳述する。

　上記した第一実施形態のスライダーＳは、図６（Ａ）に示すように引手２の軸部２１が上翼板１１の上面に載っている場合には、カバー４の上板部４１が制御爪３に接触し、板バネ部４２の下端部が胴体１の前面に接触していることから、板バネ部４２が僅かに撓んでいる。この板バネ部４２の復元力によって、カバー４の上板部４１が制御爪３を下方に押し込んで、爪部３２がエレメント路１ａに深く突入した状態になる。そして一方のエレメント列における隣り合うエレメントの間に爪部３２の先部（下部）が嵌る。また爪部３２の上部の前面３２ａが第１の爪穴部１１ｂの前面１１ｂ１に接触し、載置部１１ｚの上に被押上げ部３１の後端部（被載置部）３１ｃが載った状態になる。したがって第一実施形態のスライダーＳは移動不能となる。特に第一実施形態のスライダーＳは後方へ移動しようとしても、引手２を操作しない限り、爪部３２の前面３２ａと第１の爪穴部１１ｂの前面１１ｂ１との接触状態は維持されるので、第一実施形態のスライダーＳは移動不能となる。なお、このとき、板バネ部４２の復元力によって、カバー４の上板部４１が制御爪３の上方への移動を規制していれば、カバー４の上板部４１と制御爪３が接触していなくても（近接した状態であっても）よい。

　ちなみに図２に基づいて前述したように爪部３２の後面３２ｄと爪穴１１ａの後面１１ｎ（第１の爪穴部１１ｂの後面１１ｂ３と第２の爪穴部１１ｃの後面）とは非接触である（間隔があいており）、この間隔を利用して制御爪３の爪部３２は揺動凸部３１ａを中心にして後方へ向かいながら上方へ変位可能としてある。したがって自動停止状態において爪穴１１ａは、制御爪３に対し後方に隙間を備える状態になっている。

　そして第一実施形態のスライダーＳの引手２を操作する作業は、引手２を引き上げるようにするもので、その引き上げ動作に連動して制御爪３が後方に向かいながら上昇する。そうすると、第一実施形態のスライダーＳは、図６（Ｂ）に示すように引手２の軸部２１が制御爪３を押し上げて上翼板１１の上面よりも上方に離れる。このとき、制御爪３がカバー４の上板部４１に接触し、側板部４３の前部を揺動の中心部としてカバー４を上方に持ち上げる。このとき板バネ部４２が大きく撓んでおり、板バネ部４２には大きな復元力が発生している。この復元力はカバー４を制御爪３ごと下方へ押し込もうとする力である。また引手２の軸部２１が制御爪３を押し上げた場合には、爪部３２は上昇して、爪部３２の上部の前面３２ａが第１の爪穴部１１ｂの前面１１ｂ１から離れると共に、被押上げ部３１の後端部３１ｃが載置部１１ｚから離れた状態になる。このとき、軸部２１が上翼板１１の上面に載っている場合に比べて、爪部３２のエレメント路１ａに突入する突入長さが短くなる、又は爪部３２がエレメント路１ａに突入しなくなるため、爪部３２の先部（下部）が一方のエレメント列における隣り合うエレメントの間から抜け出ており、第一実施形態のスライダーＳは移動可能となる。このように軸部２１の上下位置に応じて爪部３２の突入長さが変化することによって、制御爪３の爪部３２はスライダーＳ（胴体１）の移動を制御する。

　また本発明の第二実施形態のスライダーＳ１もコイルエレメント用である。また本発明の第二実施形態のスライダーＳ１は図７に示すように、第一実施形態のスライダーＳと比べると、同じ構成の胴体１と引手２とを備える点においては共通し、制御爪３が無いこと、およびカバー４Ａの形状について相違する。つまり第二実施形態のスライダーＳ１の胴体１は図１に示すように、第一実施形態のスライダーＳの胴体１と同じ構成である。また第二実施形態のスライダーＳ１は、胴体１と引手２とカバー４Ａを別々の部品とするもので、３つの部品より構成されるものである。以下、相違点について説明する。

　カバー４Ａは、第一実施形態のスライダーＳのカバー４と比べると、上板部４１、板バネ部４２、一対の側板部４３，４３を備える点において共通し、一対の側板部４３，４３のうち一方の側板部４３から、より詳しくは側板部４３のうち貫通穴４３ａ１よりも後方から制御爪３の爪部３２を下方に向かって延ばしてある点において相違する。

　制御爪３は本実施形態では、爪部３２のみで構成されている。前後方向の幅に関して爪部３２は、先部（下部）が徐々に細くなる形状となっている。また爪部３２の前面および後面の両方が下方に向かうにつれて互いに接近するようになっている。この爪部３２は図８に示すように、第２の爪穴部１１ｃに収容される。

　カバー４Ａを胴体１に装着する作業は以下の通りである。
　まず図９（Ｂ）の一点鎖線に示すようにカバー４Ａの後突出片部４３ｃを後取付柱１６の後支持部１６ｅに挿入し、カバー４Ａの前突出片部４３ｂを前取付柱１５の前支持部１５ｅに対し上側に配置し、カバー４Ａを水平に対し傾いた状態にする。このとき爪部３２の先部（下部）は、爪穴１１ａの前面１１ｍ（第２の爪穴部１１ｃの前面１１ｃ１）に接近した状態になっている。
　次にカバー４Ａの前側を下方に押し込む。そうすると図９（Ｂ）の実線に示すように、カバー４Ａが後突出片部４３ｃを中心にして前方に倒れるように徐々に回転し、カバー４Ａと一緒に制御爪３の爪部３２が爪穴１１ａの内部で下方に向かいながら後方に向かうものである。さらにカバー４Ａの前側を下方に押し込むと、図９（Ａ）の実線に示すようにカバー４Ａの前突出片部４３ｂが前取付柱１５の前支持部１５ｅに収容され、カバー４Ａの爪部３２が第２の爪穴部１１ｃに対し前後に間隔をあけた状態で収容される。詳しく言えば図８に示すように、爪部３２の前面３２ａは第２の爪穴部１１ｃの前面１１ｃ１に非接触であり、爪部３２の後面３２ｄは第２の爪穴部１１ｃの後面１１ｃ３に非接触である。また爪部３２の左右側面３２ｂ，３２ａと爪穴１１ａの左右側面（第１の爪穴部１１ｂの側面１１ｂ２、第２の爪穴部１１ｃの側面１１ｃ２）も非接触である。
　なお第二実施形態のスライダーＳ１のカバー４Ａを胴体１に装着する作業は、制御爪３を胴体１に装着する作業でもあり、第一実施形態のスライダーのカバー４を胴体１に装着する作業と同じである。また第二実施形態のスライダーＳ１の場合、カバー４Ａを胴体１に装着すると、板バネ部４２の復元力によってカバー４Ａが下方に押し込まれ、それによってカバー４Ａの一部である爪部３２がエレメント路１ａ内に押し込まれる。

　第二実施形態のスライダーＳ１の引手２を操作する作業は、引手２を引き上げるようにするもので、その引き上げ動作に連動して制御爪３が後方に向かいながら上昇する。上記した何れの作業においても制御爪３は後方に変位するので、自動停止状態において爪穴１１ａは制御爪３の爪部３２に対し前後両方に隙間を備える状態になっている。

　上記した第一実施形態のスライダーＳと第二実施形態のスライダーＳ１は図１，２，８に示すように、何れも同じ胴体１を使用するものである。したがって両実施形態のスライダーＳ１，Ｓ２に用いられる胴体１は、以下の効果を有する。
　胴体１は、第二実施形態のスライダーＳ１のようにカバー４Ａと一体化した制御爪３の爪部３２を用いる場合には、第２の爪穴部１１ｃにのみ爪部３２を収容する。ちなみに第２の爪穴部１１ｃは、第１の爪穴部１１ｂよりも前後方向の寸法が長いものであり、爪部３２は長い方の第２の爪穴部１１ｃに収容される。
　また胴体１は、第一実施形態のスライダーＳのようにカバー４とは別部品の制御爪３を用いる場合には、制御爪３の前端部である揺動凸部３１ａを収容凹部１８に収容すると共に、第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃの両方に爪部３２を収容してある。ちなみに第１の爪穴部１１ｂは、第２の爪穴部１１ｃよりも前後方向の寸法が短いものであり、爪部３２は短い方の第２の爪穴部１１ｃと長い方の爪穴部１１ｂの両方に収容される。なお第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃの両方に爪部３２を収容してあるので、第１の爪穴部１１ｂにのみ爪部３２を収容する場合よりも、爪穴１１ａの幅方向の寸法を短くできる。
　このように胴体１は、制御爪３とカバー４とが別である種類のスライダーＳと、制御爪３がカバー４Ａの一部である種類のスライダーＳ１とに使用することができる。

　また第一実施形態のスライダーＳは、制御爪３とカバー４とを別部品とするものであるが、組立後に分解して、制御爪３が一体化したカバー４を用意すれば、第二実施形態のスライダーＳ１を組み立てることができる。
　なお第二実施形態のスライダーＳ１は、制御爪３が一体化したカバー４Ａを用いるものであるが、組立後に分解して、別部品の制御爪３とカバー４を用意すれば、第一実施形態のスライダーＳ１を組み立てることができる。

　本発明の第三・第四実施形態のスライダーは、独立エレメントに対応させたものであり、より詳しく言えば、この実施形態ではエレメント列が金属製のエレメントから構成されるものである。図１１には第三実施形態のスライダーの胴体１Ａと制御爪３の関係が、図１２には第四実施形態のスライダーの胴体１Ａと制御爪３との関係が示されている。第三・第四実施形態のスライダーは図１０～１２に示すように、同じ構造の胴体１Ａを用いるものである。

　この胴体１Ａは、爪穴１１ａが左右方向に離れた二つの貫通穴１１ｄ，１１ｅを備えるものである。一方の貫通穴１１ｄは第１の爪穴部１１ｄであり、他方の貫通穴１１ｅは第２の爪穴部１１ｅである。これら第１の爪穴部１１ｄと第２の爪穴部１１ｅは平面視していずれも矩形状であり、いずれも前後方向の寸法（長さ）を幅方向の寸法よりも長くしてある。

　また上翼板１１は第１の爪穴部１１ｄと第２の爪穴部１１ｅを幅方向に隣り合わせると共に、第１の爪穴部１１ｄと第２の爪穴部１１ｅの間に、第１の爪穴部１１ｄと第２の爪穴部１１ｅを幅方向に仕切る仕切部１１ｓを備える。したがって第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃは仕切部１１ｓによって幅方向に離れている。また仕切部１１ｓの上面には本実施形態では上翼板１１の上面から隆起する隆起部１１ｔを備えるものである。

　上翼板１１の左右方向の中心線Ｌに対して、第１の爪穴部１１ｄは一方側に形成され、第２の爪穴部１１ｅは他方側に形成される。また中心線Ｌに対して第２の爪穴部１１ｅは第１の爪穴部１１ｄよりも離れている。また図示の例では第２の爪穴部１１ｅは中心線Ｌとの間に間隔を備えるものであり、第１の爪穴部１１ｂはその上端においては中心線Ｌとの間に間隔が無く、その下端においては中心線Ｌとの間に間隔があるものである。

　第１の爪穴部１１ｄと第２の爪穴部１１ｅは前後方向の長さを異ならせたものであり、第１の爪穴部１１ｄの前後方向の寸法は第２の爪穴部１１ｅの前後方向の寸法よりも短くなっている。前後方向の位置に関して、第１の爪穴部１１ｄの前面１１ｄ１の上端は第２の爪穴部１１ｅの前面１１ｅ１の上端と同じに形成されている。また前後方向の位置に関して、第１の爪穴部１１ｄの前面１１ｄ１の下端は第２の爪穴部１１ｅの前面１１ｅ１の下端よりも前側に形成されている。いっぽう第１の爪穴部１１ｄの後面１１ｄ３は第２の爪穴部１１ｅの後面１１ｅ３よりも前側に形成されている。また幅方向の寸法に関して第１の爪穴部１１ｂは第２の爪穴部１１ｃよりも広く形成されている。

　この場合の第１の爪穴部１１ｄは図１１に示すように、カバーとは別部品の制御爪３の爪部３２を収納するものである。また上翼板１１は、第１の爪穴部１１ｄに対して後側に隣接して、制御爪３の被押上げ部３１の後端部３１ｃを載せ置く載置部１１ｚを備える。そして第三実施形態のスライダーは図示しないが第一実施形態のように、胴体・制御爪・カバー・引手の４部品を備えるものである。

　また第２の爪穴部１１ｅは図１２に示すように、カバーと一体化した制御爪３の爪部３２を収納するものである。そして図示しないが第四実施形態のスライダーは、第二実施形態のように胴体・カバー・引手の３部品を備えるものである。

　第三・第四実施形態のスライダーの胴体１Ａは、第一・第二実施形態のスライダーの胴体１と同様に、制御爪３とカバーとが別である種類のスライダーと、制御爪３がカバーの一部である種類のスライダーとに使用することができる。

　本発明の第五・第六実刑形態のスライダーも、独立エレメントに対応させたものであり、より詳しく言えば、この実施形態ではエレメント列が樹脂製のエレメントから構成されるものである。図１３には第五実施形態のスライダーの胴体１Ｂと制御爪３の関係が、図１４には第六実施形態のスライダーの胴体１Ｂと制御爪３との関係が示されている。第五・第六実施形態のスライダーも、第三・第四実施形態のスライダーと同様に、同じ構造の胴体１Ｂを用いるものである。また胴体１Ｂの上翼板１１は爪穴１１ａを備え、爪穴１１ａは仕切部１１ｓによって幅方向に離れる第１の爪穴部１１ｄと第２の爪穴部１１ｅを備えるものである。そして第五・第六実施形態のスライダーの胴体１Ｂが第三・第四実施形態のスライダーの胴体１Ａと相違する点は、第１の爪穴部１１ｂの下端が中心線Ｌとの間に間隔が無い点である。第２の爪穴部１１ｃが中心線Ｌとの間に間隔を備える点については、第三・第四実施形態のスライダーと同じである。

　ちなみに第五実施形態のスライダーは図示しないが第一実施形態のように、胴体・制御爪・カバー・引手の４部品を備えるものである。
　また第六実施形態のスライダーは図示しないが第二実施形態のように、胴体・カバー・引手の３部品を備えるものである。
　そして第五・第六実施形態のスライダーの胴体１Ｂも、第一・第二実施形態のスライダーの胴体１と同様に、制御爪３とカバーとが別である種類のスライダーと、制御爪３がカバーの一部である種類のスライダーとに使用することができる。

　上記した第一・第二実施形態のスライダーはコイルエレメント用であり、これらスライダーに使用した胴体に関して爪穴は幅方向に繋がっている（通じている）第１の爪穴部と第２の爪穴部を備えるものであった。また第三～第六実施形態のスライダーは独立エレメント用であり、これらスライダーに使用した胴体に関して爪穴は仕切部によって幅方向に仕切られた第１の爪穴部と第２の爪穴部を備えるものであった。ただし仕切部の有無によって胴体は、使用可能なエレメント列がコイルエレメント用と独立エレメント用の何れかに定まるものではない。

　たとえば胴体は、爪穴が幅方向に通じている第１の爪穴部と第２の爪穴部を備えるものの場合に、コイルエレメントだけでなく、独立エレメントにも使用できる。図１５には第一・第二実施形態のスライダーにおける胴体１の変形した実施形態（以下、「変形例」と言う。）が示されている。

　変形例の胴体１Ｃの爪穴１１ａに関して、第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃは、互いの後面１１ｂ３，１１ｃ３の位置を前後に異ならせてある。より詳しく言えば第１の爪穴部１１ｂの後面１１ｂ３は、第２の爪穴部１１ｃの後面１１ｃ３よりも前方に位置するものである。また平面視して第２の爪穴部１１ｃの後面１１ｃ３は第１の爪穴部１１ｂの後面１１ｂ３に対し段差状に後方に下がった状態になっている。
　また第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃは、互いの前面１１ｂ１，１１ｃ１の位置を互いの上端においては幅方向に一直線に連続させ、その下端においては前後に異ならせてある。より詳しく言えば第１の爪穴部１１ｂの前面１１ｂ１の下端（後端）は、第２の爪穴部１１ｃの前面１１ｃ１の下端（後端）よりも前方に位置するものである。また平面視して第２の爪穴部１１ｃの前面１１ｃ１は第１の爪穴部１１ｂの前面１１ｂ１に対し下方に向かうにつれて段差状に後方に下がった状態になっている。

　また上翼板１１は、前取付柱１５と後取付柱１６の間であって且つ爪穴１１ａの第１の爪穴部１１ｂに対して後側に隣接して載置部１１ｚを備える。つまり載置部１１ｚは爪穴１１ａの幅方向の全長ではなく、第１の爪穴部１１ｂのみにおける幅方向の全長に形成され、第２の爪穴部１１ｃには形成されていない。
　このように変形例の胴体１Ｃは独立エレメントに使用することができる。
　したがって変形例の胴体１Ｃと第一・第二実施形態の胴体１を考慮すれば、第１の爪穴部１１ｂと第２の爪穴部１１ｃとが幅方向に繋がっている胴体は、コイルエレメントだけでなく、独立エレメントにも対応することができる。

　また本発明の第七実施形態のスライダーＳ２は、胴体１Ｄの載置部１１ｚ１と制御爪３の被載置部３３について、第一実施形態のスライダーＳと相違する。

　胴体１Ｄは爪穴１１ａ（より詳しくは第１の爪穴部１１ａ）に対し載置部１１ｚ１を前方に隣接して形成してある。いっぽう制御爪３は、爪部３２に対し上側の前面から被載置部３３を前方に張り出している。この場合、制御爪３は、被押上げ部３１と爪部３２と、被押上げ部３１および爪部３２とは別の被載置部３３を備えるものである。
　このようにすれば、スライダーＳ２が移動不能であるときには、載置部１１ｚ１の上に被載置部３３が載った状態になる。また一対のエレメント列における隣り合うエレメントの間に爪部３２の先部（下部）が嵌る。

　本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば突出部１９は本実施形態では前取付柱１５の後方に隣接していたが、本発明ではこれに限らず前取付柱１５の後方に離れていても良い。この場合、図示しないが、平面視して突出部１９の前後方向および幅方向の中央部に収容凹部が形成されていれば良い。

　Ｆ　スライドファスナー
　Ｆ１　ファスナーストリンガー
　Ｆ２　ファスナーテープ
　Ｆ３　エレメント列
　Ｓ，Ｓ１，Ｓ２　スライダー
　１　胴体
　１Ａ，１Ｂ，１Ｃ，１Ｄ　胴体
　１ａ　エレメント路
　１ｂ　テープ溝
　１１　上翼板
　１１ａ　爪穴
　１１ｂ　第１の爪穴部
　１１ｂ１　前面
　１１ｂ２　側面
　１１ｂ３　後面
　１１ｃ　第２の爪穴部
　１１ｃ１　前面
　１１ｃ２　側面
　１１ｃ３　後面
　１１ｄ　第１の爪穴部
　１１ｄ１　前面
　１１ｄ２　側面
　１１ｄ３　後面
　１１ｅ　第２の爪穴部
　１１ｅ１　前面
　１１ｅ２　側面
　１１ｅ３　後面
　１１ｎ　爪穴の後面
　１１ｓ　仕切部
　１１ｔ　隆起部
　１１ｚ，１１ｚ１　載置部
　１２　下翼板
　１３　フランジ
　１４　柱
　１５　前取付柱
　１５ｂ　板バネ部用の凹部
　１５ｃ　第１の凹部
　１５ｄ　第２の凹部
　１５ｅ　前収容部（前支持部）
　１５ｆ　前張出部
　１６　後取付柱
　１６ｅ　後収容部（後支持部）
　１６ｆ　後張出部
　１７　内板
　１８　収容凹部
　１８ａ　側面
　１８ｂ　側面
　１９　突出部
　２　引手
　２１　軸部
　２２　摘まみ部
　２３　貫通穴
　３　制御爪
　３１　被押上げ部
　３１ａ　揺動凸部
　３１ｂ　被押上げ部本体
　３１ｃ　後端部（被載置部）
　３２　爪部
　３２ａ　爪部の前面
　３２ｂ　爪部の側面
　３２ｃ　爪部の側面
　３２ｄ　爪部の後面
　３３　被載置部
　４，４Ａ　カバー
　４１　上板部
　４２　板バネ部
　４２ａ　第１のバネ片部
　４２ｂ　第２のバネ片部
　４３　側板部
　４３ａ　側板本体部
　４３ａ１　貫通穴
　４３ｂ　前突出片部
　４３ｃ　後突出片部

Claims

　前後方向に貫通するエレメント路（１ａ）の上下を覆う上翼板（１１）と下翼板（１２）、
　前記上翼板（１１）と前記下翼板（１２）を連結する柱（１４）、
　前記上翼板（１１）の上面から突出すると共にカバー（４，４Ａ）を取り付ける前取付柱（１５）と後取付柱（１６）、
　前記上翼板（１１）の上面における前記前取付柱（１５）と前記後取付柱（１６）の間に前記カバー（４）とは別部品の制御爪（３）の前端部を収容可能に凹む収容凹部（１８）を備え、
　前記前取付柱（１５）と前記後取付柱（１６）は、その側面に前記カバー（４，４Ａ）を上下に揺動可能に支持するための前支持部（１５ｅ）と後支持部（１６ｅ）を備え、
　前記上翼板（１１）は、その上面における前記後取付柱（１６）と前記収容凹部（１８）との間には前記カバー（４）とは別部品または前記カバー（４Ａ）と一体化した前記制御爪（３）の爪部（３２）を収容可能であると共に前記エレメント路（１ａ）に通じる爪穴（１１ａ）を備え、
　前記爪穴（１１ａ）は第１の爪穴部（１１ｂ，１１ｄ）と第２の爪穴部（１１ｃ，１１ｅ）を備え、
　前記第１の爪穴部（１１ｂ，１１ｄ）と前記第２の爪穴部（１１ｃ，１１ｅ）は、前記上翼板（１１）の幅方向に隣り合うと共に前後方向の長さを異ならせたものであることを特徴とするスライドファスナー用スライダーの胴体。
　前記上翼板（１１）は前記第１の爪穴部（１１ｄ）と前記第２の爪穴部（１１ｅ）を幅方向に仕切る仕切部（１１ｓ）を備え、
　前記第１の爪穴部（１１ｄ）と前記第２の爪穴部（１１ｅ）は前記仕切部（１１ｓ）によって離れていることを特徴とする請求項１に記載のスライドファスナー用スライダーの胴体。
　前記第１の爪穴部（１１ｂ）と前記第２の爪穴部（１１ｃ）は幅方向に繋がっていることを特徴とする請求項１に記載のスライドファスナー用スライダーの胴体。
　前後方向の長さに関して前記第１の爪穴部（１１ｂ，１１ｄ）は前記第２の爪穴部（１１ｃ，１１ｅ）よりも短く、
　前記上翼板（１１）は、制御爪（３）のうち爪部（３２）に対し上側に形成される被載置部（３１ｃ，３１ｄ）を載せ置く載置部（１１ｚ，１１ｚ１）を備え、
　載置部（１１ｚ，１１ｚ１）は、その周囲において前記爪穴（１１ａ）以外の部分よりも段差状に下方に凹んで形成されると共に、前記第１の爪穴部（１１ｂ，１１ｄ）に対して前側又は後側に隣接することを特徴とする請求項１～３の何れかに記載のスライドファスナー用スライダーの胴体。
　前記第１の爪穴部（１１ｂ，１１ｄ）と前記第２の爪穴部（１１ｃ，１１ｅ）は互いの前面（１１ｂ１，１１ｄ１，１１ｃ１，１１ｅ１）の位置を前後に異ならせたものであることを特徴とする請求項１～４の何れかに記載のスライドファスナー用スライダーの胴体。
　請求項１～５の何れかに記載の前記胴体（１，１Ａ，１Ｂ，１Ｃ）、
　前後方向に回動可能であると共に回動の中心となる軸部（２１）が前記上翼板（１１）の上に配置される引手（２）、
　前記前取付柱（１５）と前記後取付柱（１６）の間において前記軸部（２１）の上に載せると共に前記胴体（１）を移動可能および移動不能に制御する制御爪（３）であってその前端部の揺動凸部（３１ａ）が前記収容凹部（１８）に嵌り合うと共にその後端部の爪部（３２）が前記爪穴（１１ａ）から前記エレメント路（１ａ）に突入する前記制御爪（３）、
　前記前取付柱（１５）と前記後取付柱（１６）に対して上下方向に揺動可能に取り付けられると共に前記制御爪（３）を上方及び側方から上板部（４１）および側板部（４３）が覆うカバー（４）であって前記上板部（４１）の前端から前記前取付柱（１５）の前面に沿って延びる板バネ部（４２）の復元力によって前記上板部（４１）が前記制御爪（３）を下方に押し込む前記カバー（４）を備え、
　前記爪部（３２）は少なくとも前記第１の爪穴部（１１ｂ，１１ｄ）に収容されることを特徴とするスライドファスナーのスライダー。
　請求項１～５の何れかに記載の前記胴体（１，１Ａ，１Ｂ，１Ｃ）、
　前後方向に回動可能であると共に回動の中心となる軸部（２１）が前記上翼板（１１）の上に配置される引手（２）、
　前記前取付柱（１５）と前記後取付柱（１６）に対して上下方向に揺動可能に取り付けられると共に前記前取付柱（１５）を上方及び側方から上板部（４１）および側板部（４３）が覆うカバー（４Ａ）であって前記側板部（４３）から下方に延びる爪部（３２）が爪穴（１１ａ）に収容されると共に前記上板部（４１）の前端から前記前取付柱（１５）の前面に沿って延びる板バネ部（４２）の復元力によって前記爪部（３２）の下部をエレメント路（１ａ）内に押し込む前記カバー（４Ａ）を備え、
　前記爪部（３２）は第２の爪穴部（１１ｃ，１１ｅ）に収容されることを特徴とするスライドファスナーのスライダー。