(第1の実施の形態)
図1から図5を参照して、表示体の第1の実施の形態について説明する。
なお、表示体が表示する画像は、表示領域の一例である画素の繰り返しによって画像を表現するラスタ画像に限らず、ベクトルによって表現された表示領域の集合によって画像を表現するベクトル画像であってもよい。以下では、説明の便宜上、表示領域の一例として画素を用いて表示体を説明するとともに、単一の反射方向に画像を表示するための画素の集合を表示画素群の一例として説明する。また、添付図面は、表示体における特徴を分かりやすく示すため、表示体において特徴となる部分を便宜上拡大している場合があり、寸法や比率等が実際とは異なる場合がある。
図1が示すように、表示体10は、複数の画素11Aが並ぶ面である表示面10Sを備える。各画素11Aは、反射方向に画像Pを表示するための構造のなかで、独立した像を形成する繰り返しの最小単位である。典型的には、各画素11Aは、表示面10Sにおいてマトリックス状に並ぶ表示領域である。画像Pは、例えば、文字、図形、記号、絵柄等であり、本実施の形態では、画像Pは、円状を有している。表示面10Sは、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
表示面10Sは、所定の大きさを占有するための所定の大きさを有した複数の単位格子L1Eを備え、各単位格子L1Eは表示面10Sにおいて、例えばマトリックス状に並ぶ。単位格子L1Eは、表示面10Sにおいて光学的な機能を発現する繰り返しの最小単位である。図1に示す例では、各画素11Aが1つの方向であるX方向、および、X方向と直交する1つの方向であるY方向に沿って並び、矩形格子の単位格子L1Eに1つずつ位置する。
また、本実施の形態では、表示面10Sは、表示される画像の階調ごとに関連付けられた複数の画素群11Sa~11Sdを有している。図1に示す例では、第1の画素群11Saが円形状を有するとともに画像Pの中心に位置する。また、第2の画素群11Sbが円環状を有するとともに、第1の画素群11Saに対する径方向の外側において第1の画素群11Saと隣り合う。また、第3の画素群11Scが円環状を有するとともに、第2の画素群11Sbに対する径方向の外側において第2の画素群11Sbと隣り合う。また、第4の画素群11Sdが円環状を有するとともに、第3の画素群11Scに対する径方向の外側において第3の画素群11Scと隣り合う。そして、各画素群11Sa~11Sdは、複数の単位格子L1Eを備え、単位格子L1Eに位置する画素11Aは画素群11Sa~11Sdごとに共通である。
図2が示すように、画素11Aは、画素群11Sa~11Sdに一つずつの方向である反射方向が含まれる範囲に向けて、表示面10Sに入射する光を反射する1つの反射面11Sを備える。反射面11Sは、表示面10Sと交差する光学面であって、反射面11Sと表示面10Sとが形成する角度が傾斜角θであり、傾斜角θはY方向に沿って一定である。各反射面11Sは、入射角度に所定の範囲を有して反射面11Sに入射した光を反射するとともに、単一の画素群に共通する反射方向を反射角度に含める形状を有する。反射面11Sは、可視光を鏡面反射する鏡面であり、所定の方向から反射面11Sに入射する光を各反射面11Sの傾斜角θに基づく方向へ正反射する。そして、各画素群11Sa~11Sdは、画素群11Sa~11Sdに含まれる反射面11Sの反射によって、各画素群11Sa~11Sdに固有の画像を各画素群11Sa~11Sdの反射方向に形成する。
この場合、複数の反射方向のなかで相互に隣り合う2つの反射方向には、相関性を有して、かつ、相互に異なる画像が形成される。なお、相互に隣り合う2つの反射方向とは、各表示領域群に固有の反射方向において、反射方向間における差が最も小さい反射方向である。また、相関性を有した画像間では、画像に含まれる要素画像の種別が相互に等しく、かつ、要素画像の形状が相互に異なるものであり、反射方向の並びの順に従って、要素画像の形状が、所定の規則に基づく流れを有して変化する、すなわち、連続的に変化する。図1に示す例では、画素群11Sa~11Sdを構成する各画素11Aが発現する光学的な機能によって、表示体10の反射方向の変化に応じて、画像Pにおける径の中心から径方向の外側に向けて連続的に広がる動的な画像Pが表示される。ここで、画像Pでは、幾何学模様の一種である円環状の画像が要素画像である。
なお、各画素11Aは、構造幅が1μm~300μmの範囲であることが好ましい。構造幅が1μm以上であれば、回折光が生じて画像に虹色の発色が生じることが抑えられる。構造幅が300μm以下であれば、観察者が画素11Aの反射面11Sの傾斜構造を認識すること、また、表示体10が表示する画像Pの解像度が低くなることが抑えられる。なお、構造幅は、各画素群11Sa~11Sdにおいて、複数の画素11Aが繰り返される方向に沿う画素11Aの幅である。
画素11Aを形成する材料は、特に限定されるものではない。画素11Aを形成する材料には、例えば、ポリマー組成物等が挙げられる。ただし、画素11Aを形成する材料には、ポリマー組成物の他にも、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、および、光安定化剤等を適宜配合することができる。また、画素11Aは、表示面10Sにおいて三角柱状を有する突部であってもよいし、表示面10Sにおいて反射面11Sを有する窪みであってもよい。
次に、各画素11Aが備える反射面11Sの構成を詳細に説明する。なお、反射面11Sによって反射された光の進む方向は、反射面11Sによって回折される方向であってもよいし、反射面11Sによって回折される方向とは異なる方向であってもよい。
図3(a)~(d)が示すように、各画素11Aは、表示面10Sと直交する軸線を中心とした回転位置を変化させることによって、反射面11Sの向きが相互に異なっている。そして、図3(a)に示した画素11Aを基準としたとき、当該画素11Aに対する回転角度のずれが小さい順に、図3(b)、図3(c)、および、図3(d)に示した画素11Aが並んでいる。
ここで、図4(a)~(d)は、図3(a)~図3(d)に示した画素11AにおけるX方向に沿う断面図を示している。すなわち、図3(a)に示す画素11Aの断面図が図4(a)に示され、図3(b)に示す画素11Aの断面図が図4(b)に示され、図3(c)に示す画素11Aの断面図が図4(c)に示され、図3(d)に示す画素11Aの断面構造が図4(d)に示されている。この場合、図4(a)が示すように、基準となる画素11Aにおいて反射面11Sと表示面10Sとが形成する角度である傾斜角は「θ1」である。これに対して、図4(b)が示すように、基準となる画素11Aから回転角度がずれている画素11Aにおいて反射面11Sと表示面10Sとが形成する角度である傾斜角は「θ2」である。
このとき、図4(a)および図4(b)が示すように、画素11Aの反射面11Sの向きがX方向に沿うときには、画素11Aの反射面11Sにおける斜辺の長さが距離「L1」である。これに対して、画素11Aの反射面11Sの向きがX方向と交差する方向に沿うときには、画素11Aの反射面11Sにおける斜辺の長さが距離「L2」であり、距離「L2」は上述した距離「L1」よりも長い。なお、画素11Aの反射面11Sの高さHは、画素11Aにおける反射面11Sの向きに依らず一定である。そのため、図4(b)が示すように、基準となる画素11Aから回転角度がずれている画素11Aの反射面11Sにおける傾斜角θ2は、図4(a)が示すように、基準となる画素11Aの反射面11Sにおける傾斜角θ1よりも小さい。
また、図4(c)が示すように、画素11Aの反射面11Sの向きが、図4(b)に示す画素11Aと比較して基準となる画素11Aから大きくずれているときには、画素11Aの反射面11Sにおける斜辺の長さが距離「L3」であり、距離「L3」は上述した距離「L2」よりも長い。なお、上述のように、画素11Aにおける反射面11Sの高さHは、画素11Aにおける反射面11Sの向きに依らず一定である。そのため、図4(c)が示すように、基準となる画素11Aからの回転角度のずれが比較的大きい画素11Aの反射面11Sにおける傾斜角θ3は、図4(b)が示すように、基準となる画素11Aからの回転角度のずれが比較的小さい画素11Aの反射面11Sの傾斜角θ2よりも小さい。
同様に、図4(d)が示すように、画素11Aの反射面11Sの向きが、図4(c)に示す画素11Aと比較して基準となる画素11Aから更に大きくずれているときには、画素11Aの反射面11Sにおける斜辺の長さが距離「L4」であり、距離「L4」は上述した距離「L3」よりも長い。なお、上述のように、画素11Aにおける反射面11Sの高さHは、画素11Aにおける反射面11Sの向きに依らず一定である。そのため、図4(d)が示すように、基準となる画素11Aからの回転角度のずれが比較的大きい画素11Aの反射面11Sの傾斜角θ4は、図4(c)が示すように、基準となる画素11Aからの回転角度のずれが比較的小さい画素11Aの反射面11Sの傾斜角θ3よりも小さい。
すなわち、画素11Aにおける反射面11Sの向きと、表示面10Sと直交する断面における画素11Aの反射面11Sにおける傾斜角θ(θ1~θ4)との間には一定の相関関係があり、画素11Aの反射面11Sの向きを異ならせると、上記断面における画素11Aの反射面11Sにおける傾斜角θ(θ1~θ4)が異なる。なお、各画素11Aの反射面11Sは、傾斜角θを有する平面であってもよいし、非平面であってもよい。非平面の反射面11Sとしては、微細な凹凸を有する面であってよいし、曲面であってもよく、非平面な反射面11Sの傾斜角θはその非平面を平面で近似した基準面の傾斜角とすることができる。
なお、図5(a)~(d)が示すように、各画素11Aの反射面11Sが有する傾斜角θ(θ1~θ4)は、反射面11Sによって反射された光の進む方向と、反射面11Sによって回折される方向とを異ならせる角度でもよいし、反射面11Sによって回折される方向と一致させる角度でもよい。一例として、反射面11Sによって鏡面反射される光の進行する方向と、反射面11Sによって生成された特定の波長λを有するm次(mは1以上の整数)の回折光の進行する方向とを一致させる大きさとすることも可能である。この際、m次の回折光の進行する方向は、反射方向DKである。
詳しくは、反射面11Sに入射する入射光が進行する方向と、表示面10Sの法線方向とが形成する角度が入射角αである。m次の回折光が進行する方向と、表示面10Sの法線方向とが形成する角度が回折角β(β1,β2,β3,β4)である。画素11Aの生成する回折光の波長が特定の波長λであり、回折角βは各反射面11Sの傾斜角θごとに固有の値である。入射角α、回折角β、波長λ、および、傾斜角θは、下記式(1)、および、式(2)を満たす。
sinα+sinβ=mλ(mは1以上の整数) ・・・(1)
θ=(α-β)/2 ・・・(2)
上述した傾斜角θを有した反射面11Sは、特定の波長λを有するm次の回折光について高い回折効率を示す。例えば、各反射面11Sは、白色の入射光を反射方向の有色光に変換するとともに、その変換効率として高い値を有する。また、各画素11Aに1つずつの反射面11Sを各画素11Aが備えるため、反射方向DKに表示される画像の解像度を高めることが可能でもある。結果として、回折効率が高められた光による画像を反射方向DKに表示すること、ひいては、反射方向DKに表示される画像の視認性を高めることが可能である。
ここで、画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θが相互に異なるときには、所定の方向から入射する入射光の入射角αが一定であるとすると、その回折方向となる反射方向DKが相互に異なる。
より詳しくは、画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θおよび入射角αを入力として、上述した式(2)に基づき、回折角βが以下の式により得られる。
β=α-2θ ・・・(3)
そして、この式(3)からも明らかなように、入射角αが一定であるとすると、画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θが比較的大きい角度「θ1」であるときには、回折角βの値が小さくなる傾向を有する。そのため、図5(a)および図5(b)が示すように、画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θが比較的小さい角度「θ2」であるときの回折角β2は、画素11Aの反射面11Sの傾斜角θが比較的大きい角度「θ1」であるときの回折角β1よりも大きい。
また同様に、図5(b)および図5(c)が示すように、画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θが比較的小さい角度「θ3」であるときの回折角β3は、画素11Aの反射面11Sの傾斜角θが比較的大きい角度「θ2」であるときの回折角β2よりも大きい。更には、図5(c)および図5(d)が示すように、画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θが比較的小さい角度「θ4」であるときの回折角β4は、画素11Aの反射面11Sの傾斜角θが比較的大きい角度「θ3」であるときの回折角β3よりも大きい。
すなわち、画素11Aの反射面11Sの傾斜角θと回折角βとの間には一定の相関関係があり、画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θを異ならせると、各画素11Aから回折された光により画像が表示される方向、言い換えれば反射方向が異なる。
なお、本実施の形態では、図1に示した画像Pを形成する画素11Aのうち、第1の画素群11Saに図5(a)が示す画素11Aが割り当てられている。また、第2の画素群11Sbに図5(b)が示す画素11Aが割り当てられている。また、第3の画素群11Scに図5(c)が示す画素11Aが割り当てられている。また、第4の画素群11Sdに図5(d)が示す画素11Aが割り当てられている。
そして、表示体10を回折角β1に対応する方向から観察したときには、図5(a)が示す画素11Aが表示する画像であって、図1が示す画像Pのうち、円形状の画素群11Saが表示する画像が高い輝度で視認される。また、表示体10を回折角β2に対応する方向から観察したときには、図5(b)が示す画素が表示する画像であって、円環状の画素群11Sbが表示する画像が高い輝度で視認される。
また、表示体10を回折角β3に対応する方向から観察したときには、図5(c)が示す画素11Aが表示する画像であって、円環状の画素群11Scが表示する画像が高い輝度で視認される。また、表示体10を回折角β4に対応する方向から観察したときには、図5(d)が示す画素11Aが表示する画像であって、円環状の画素群11Sdが表示する画像が高い輝度で視認される。
すなわち、表示体10の反射方向を回折角β1に対応する方向から回折角β4に対応する方向に向けて連続的に変化させたときには、図1に示した画像Pが、画像Pにおける径の中心から径方向の外側に向けて連続的に広がる動的な画像として順に視認される。
ここで、画像が表示される方向、すなわち反射方向が連続した画素11Aの組み合わせ、つまり、回折角β1に対応する画素11Aと回折角β2に対応する画素11Aとの組み合わせでは、それら画素11A同士が表示面10S上で隣り合う。また、回折角β2に対応する画素11Aと回折角β3に対応する画素11Aとの組み合わせでは、それら画素11A同士が表示面10S上で隣り合う。また、回折角β3に対応する画素11Aと回折角β4に対応する画素11Aとの組み合わせでは、それら画素11A同士が表示面10S上で隣り合う。すなわち、複数の反射方向のなかで相互に隣り合う2つの反射方向をそれぞれ第1の反射方向、および、第2の反射方向としたとき、第1の反射方向に画像を形成する画素群を構成する画素11Aは、第2の反射方向に画像を形成する画素群を構成する画素11Aと隣り合う。
そのため、上述のように、表示体10を観察する方向を連続的に変化させたときには、画像Pにおいて隣り合う領域が、順に流れて動くように画像Pにおける径の中心から径方向の外側に向けて、画像の動きにおける流れを方向付けるような視覚効果が得られる。
このように、画像の動きにおける流れを方向付けるような視覚効果は、反射面11Sの傾斜角θが、画素11A間において一定の相関関係を有することによるものであり、所定の規則に基づいた流れを有して変化することによるものである。そして、反射面11Sによって反射された光の進む方向と、反射面11Sによって回折される方向とが異なる構成においても、画像の動きの流れを方向付けるような視覚効果は得られる。
上述した表示体10を製造する方法は、例えば、原版から表示体10を複製する方法である。原版を製造する方法は、平板状の基板が有する一方の面に感光性樹脂を塗布した後、感光性樹脂にビームを照射して、感光性樹脂の一部を露光および現像し、これによって、原版を製造する。そして、電気めっき等の方法によって、金属製のスタンパを原版から製造し、この金属製スタンパを母型として用いることによって表示体10を複製する。なお、金属製のスタンパを製造する方法は、旋盤技術を用いた金属基板の切削加工であってもよい。表示体10を複製する方法は、例えば、熱エンボス法、キャスト法、および、フォトポリマー法等によって成形物を形成し、その成形物の表面に反射層を蒸着する方法である。
フォトポリマー法は、プラスチックフィルム等の平坦な基材と、金属製のスタンパとの間に、放射線硬化樹脂を流し込み、放射線の照射によって放射線硬化樹脂を硬化させた後、硬化された樹脂層を基材ごと、金属製のスタンパから剥離する。フォトポリマー法は、熱可塑性樹脂を利用するプレス法やキャスト法に比べて、画素11Aにおける構造の精度が高い点、および、耐熱性や耐薬品性にも優れた画素11Aが得られる点において好ましい。
なお、反射層に用いられる材料は、反射性を有し、かつ、蒸着による反射層の形成が可能であれば特に限定されるものでない。反射膜に用いられる材料には、金属、合金等を用いることができる。金属としては、例えば、アルミニウム、金、銀、プラチナ、ニッケル、スズ、クロム、および、ジルコニウム等が挙げられ、また、これらの合金を適用することができる。また、反射層は、酸化亜鉛および硫化亜鉛等の高屈折材料から形成される層を含んでいてもよい。アルミニウムおよび銀は、可視光領域において反射率が特に高い点において他の材料よりも好ましい。
反射層を形成する方法は、上述した蒸着に限らず、画素11Aの反射面11Sに沿って被覆する反射層を形成することができれば特に限定されるものではない。反射層を形成する方法には、物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法:PVD法)や化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)を採用できる。物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法:PVD法)としては、例えば、(a)真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法を採用することができる。化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)としては、例えば、(b)プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等を採用することができる。ただし、これらの方法の中でも、真空蒸着法およびイオンプレーティング法のいずれかを用いることが好ましい。これにより、生産性が高く、かつ、良好な反射層を形成することができる。
以上説明したように、上記第1の実施の形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)表示体10を観察する方向を変化させたとき、相互に関連する内容であって、かつ、相互に異なる内容を有した画像の表示が、観察する各方向で繰り返される。それゆえに、表示体10が有する意匠性を向上させることが可能となる。
(2)表示体10を観察する方向を変化させたとき、画像Pの変化が幅広い視域で視認される。それゆえに、画像Pに基づく表示体10の真偽の判定を比較的容易な作業で迅速に行うことが可能となる。
(3)相関性を有した画像間では、画像に含まれる要素画像の種別が等しく、かつ、要素画像の形状が相互に異なる。そのため、観察する方向を変化させたときに画像同士の相関性が観察者によって認識されやすい。したがって、相互に関連する内容であって、かつ、相互に異なる内容を有した画像を反射方向に応じて表示することの効果が、より顕著に得られる。
(4)表示体10を観察する方向を連続的に変化させたときに、画像Pの内容が連続的に変化する。そのため、表示体10が有する意匠性をより一層向上させることが可能となる。
(5)画像Pの内容を連続させる各画素群11Sa~11Sdが相互に隣り合うため、相互に隣り合う反射面11Sの構成を相互に近しいものとすることが可能であって、ひいては、表示体10の製造に要する負荷を軽減することが可能ともなる。
(6)各画素11Aにおける反射面11Sの向く方向と、各々の反射面11Sが光を反射する方向とは一定の相関関係を有する。そのため、各画素11Aにおける反射面11Sの向きを制御パラメータとして各々の反射面11Sを備える各画素11Aが光を反射する方向を調整することにより、これら画素11Aを複数組み合わせて構成される画素群11Sa~11Sdに対して所望の反射方向を対応付けることが容易ともなる。
(7)表示面10Sに並ぶ複数の画素11Aを備え、表示面10Sが有する各単位格子に単一の画素11Aが位置する。これにより、小さな色の点、すなわちドットを集めて構成された画像であるラスタ画像に基づき各単位格子に位置する画素11Aの構造を設計することが可能となる。
(8)各画素11Aの反射面11Sは、基体を被覆する反射層に含まれる。これにより、反射方向に進む反射光の強度を、基体により反射された反射光の強度とは異なる強度とすることが可能ともなる。
なお、上記第1の実施の形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
・表示体10を観察する方向を連続的に変化させたときの幾何学模様を有した画像の動的な表示方法の変形例として、以下に示すものを採用することができる。
第1の例として、図6(a)が示すように、表示領域群ごとにおける反射方向の変化に応じて、表示面10Sと対向する平面視において、表示面10Sにおける中心から直線的に、かつ、放射状に広がる動的な画像として画像Pを表示する構成としてもよい。この場合、例えば、表示面10Sと対向する平面視において、表示面10Sの中心から径方向の外側に向けて、第1の画素群11Sa、第2の画素群11Sb、第3の画素群11Sc、および、第4の画素群11Sdを順に配置する。そして、表示面10Sの中心から放射方向に向けて、画素11Aにおける反射面11Sの向きを次第に変化させることにより、上述した画像を表示することが可能となる。
また、第2の例として、図6(b)が示すように、表示領域群ごとにおける反射方向の変化に応じて、表示面10Sと対向する平面視において、表示面10Sにおける中心から渦巻状をなすように放射状に広がる動的な画像として画像Pを表示する構成としてもよい。この場合にも、例えば、表示面10Sと対向する平面視において、表示面10Sの中心から径方向の外側に向けて、第1の画素群11Sa、第2の画素群11Sb、第3の画素群11Sc、および、第4の画素群11Sdを順に配置する。そして、表示面10Sの中心から放射方向に向けて、画素11Aの反射面11Sの向きを次第に変化させることにより、上述した画像を表示することが可能となる。
また、第3の例として、図6(c)が示すように、表示領域群ごとにおける反射方向の変化に応じて、表示面10Sと対向する平面視において、紙面における表示面10Sの上方から下方に向けて波打ち形状の画像が連続的に広がる動的な画像として画像Pを表示する構成としてもよい。この場合、例えば、波打ち形状をなすように紙面における横方向に一列に並んだ画素群を、横方向とは直交する縦方向に複数並べる。このとき、紙面における表示面10Sの上側から下側に向けて、第1の画素群11Sa、第2の画素群11Sb、第3の画素群11Sc、および、第4の画素群11Sdを順に配置する。そして、紙面における表示面10Sの上方から下方に向けて、画素11Aにおける反射面11Sの向きを次第に変化させることにより、上述した画像を表示することが可能となる。
・説明の便宜上、図3(a)~(d)を参照して、表示面10Sと直交する断面において、画素11Aにおける反射面11Sの高さHが一定となる角度の範囲で、画素11Aにおける反射面11Sの向きを変更する例を説明した。ただし、表示面10Sと直交する断面において、画素11Aにおける反射面11Sの高さHが変化するような角度の範囲であっても、反射面11Sの傾斜角θが反射面11Sの向きに応じて変化するのであれば、反射面11Sの向きを調整する角度の範囲として採用することは可能である。言い換えれば、画素11Aの反射面11Sの向きと、表示面10Sと直交する断面における画素11Aの反射面11Sにおける傾斜角θとの間に一定の相関関係があり、画素11Aにおける反射面11Sの向きを異ならせると、上記断面における画素11Aにて反射面11Sの傾斜角θが異なるような角度の範囲であればよい。なお、反射面11Sの向きが相互に等しい複数の表示領域群を備える構成であっても、各表示領域群の傾斜角θが相互に異なる構成であれば、画像の動きにおける流れを方向付けるような視覚効果は得られる。
・各画素11Aが備える反射面11Sの向きは、例えば以下のように定義することができる。なお、以下において、XY平面に垂直な方向がZ方向である。
すなわち、図7が示すように、反射面11Sの法線を表示面10Sに投影した投影方向DPと、表示面10Sにおける1つの方向、例えばY方向とが形成する角度が方位角Φである。投影方向DPがY方向に一致するとき、反射面11Sの方位角Φは0°である。反射面11Sの向きは、方位角Φによって特定することが可能である。方位角Φの範囲は、以下の式(4)によって表すことができる。
0°≦Φ<360° ・・・(4)
・各画素11Aは、表示面10Sにおいて三角柱状を有する突部に限らず、以下の形状を有する突部であってもよい。なお、以下に説明する図8では、画素11Aが有する高さの変化を平面において図示する便宜上、画素11AにおいてZ方向に沿う高さが大きい部分ほど明度が低くなるように、画素11Aの明度にグラデーションが付されている。
すなわち、図8(a)が示すように、方位角Φが0°であるとき、および、図8(d)が示すように、方位角Φが90°であるとき、単位格子L1Eの全体に1つの画素11Aを配置することが可能である。
これに対して、図8(b)が示すように、方位角Φが30°であるとき、および、図8(c)が示すように、方位角Φ60°であるときであって、かつ、Z方向から見て単位格子L1Eにおいて反射部分が占める面積を最大とするとき、1つの画素11Aを複数の反射部分から構成してもよい。すなわち、単位格子L1Eのうち、第1反射部分11A1が位置しない領域には、第2反射部分11A2であって、第1反射部分11A1と方位角Φが等しく、かつ、傾斜角θが等しい反射面11Sを有した反射部分を配置してもよい。すなわち、1つの単位格子L1E内に2つの反射部分を配置してもよい。
なお、第1反射部分11A1および第2反射部分11A2において方位角Φが30°または60°であるときに限らず、第1反射部分11A1および第2反射部分11A2が0°、90°、180°、および、270°以外の方位角Φを有するときにも、単位格子L1Eには、2つの反射部分を配置してもよい。
・図8(b)および図8(c)を参照して説明したように、1つの単位格子L1Eには2つ以上の反射部分が位置してよく、例えば、図9および図10を参照して以下に説明するように、1つの単位格子L1Eには、3つの反射部分が位置してもよい。すなわち、単位格子L1Eにおいて、1つの画素は複数の反射部分から構成されてもよい。
図9(a)から図9(c)は、それぞれ1つの単位格子L1Eに位置する2つ以上の反射部分を備える画素の構造を示している。図10(a)から図10(c)は、図9において示される反射部分の構造に対応する断面構造を示している。より詳しくは、図10(a)が図9(a)に示される反射部分の断面構造を示し、図10(b)が図9(b)に示される反射部分の断面構造を示し、図10(c)が図9(c)に示される反射部分の断面構造を示している。以下では、説明の便宜上、1つの単位格子L1Eに位置する反射部分の構造を説明するために、図9に示される斜視図と、図10に示される断面図とを同時に参照する。
図9(a)が示すように、単位格子L1Eには、第1反射部分11A1および第2反射部分11A2が位置している。第1反射部分11A1の反射面11Sと表示面10Sとが形成する傾斜角θと、第2反射部分11A2の反射面11Sと表示面10Sとが形成する傾斜角θとは相互に等しい一方で、第2反射部分11A2の高さは、第1反射部分11A1の高さよりも低い。
図10(a)は、図9(a)におけるI‐I線に沿う断面構造であって、XZ平面に沿う断面構造を示している。XZ平面に沿う断面において、第1反射部分11A1の斜辺が第1斜辺SL1であり、第2反射部分11A2の斜辺が第2斜辺SL2である。第1斜辺SL1は第2斜辺SL2よりも長く、第1斜辺SL1は例えば第2斜辺SL2の2倍である。X方向に沿う、言い換えれば反射部分が並ぶ方向に沿う各反射部分の幅が構造幅であり、構造幅は上述した範囲を満たすことが好ましい。
図9(b)が示すように、単位格子L1Eには、第1反射部分11A1、第2反射部分11A2、および、第3反射部分11A3が位置している。第1反射部分11A1の反射面11Sと表示面10Sとが形成する傾斜角θ、第2反射部分11A2の反射面11Sと表示面10Sとが形成する傾斜角θ、および、第3反射部分11A3の反射面11Sと表示面10Sとが形成する傾斜角θとは、相互に等しい。3つの反射部分において、第1反射部分11A1の高さと第2反射部分11A2の高さとがほぼ等しく、第3反射部分11A3の高さは、第1反射部分11A1の高さおよび第2反射部分11A2の高さの両方よりも小さい。ただし、第2反射部分11A2および第3反射部分11A3は、それぞれ三角柱形状を有する一方で、第1反射部分11A1は、四角柱形状と三角柱形状とが、紙面の下方から順に繋がった形状を有している。言い換えれば、第1反射部分11A1は、四角柱形状を有する第1部分と、三角柱形状を有する第2部分とから構成され、第1部分の上に第2部分が位置している。
図10(b)は、図9(b)におけるII‐II線に沿う断面構造であって、XZ平面に沿う断面構造を示している。XZ平面に沿う断面において、第1反射部分11A1の斜辺が第1斜辺SL1であり、第2反射部分11A2の斜辺が第2斜辺SL2であり、第3反射部分11A3の斜辺が第3斜辺SL3である。3つの反射部分において、各反射部分の斜辺の長さは、第1反射部分11A1、第3反射部分11A3、および、第2反射部分11A2の順に大きくなるが、3つの斜辺には、相互に同じ長さを有した斜辺が2つ含まれてもよいし、全ての斜辺において長さが等しくてもよい。
3つの反射部分には、三角柱形状を有する反射部分と、四角柱形状と三角柱形状とを組み合わせた形状を有する反射部分が含まれている。すなわち、3つの反射部分には、外形が相互に異なる反射部分が含まれている。そのため、外形が相互に等しい反射部分のみが3つの反射部分に含まれる構成と比べて、3つの反射部分がX方向に沿って並ぶことに起因する回折光の射出がより抑えられる。
図9(c)は、図9(b)が示す各反射部分を、Z方向を中心として、紙面における右回りに45°回転させた構造を有している。すなわち、図9(b)が示す各反射部分における方位角Φと、図9(c)が示す各反射部分における方位角とが相互に異なっている。
図10(c)は、図9(c)におけるIII‐III線に沿う断面構造である。すなわち、図9(c)は、X方向に対して45°の角度で交差する方向と、Z方向とによって定められる平面であって、単位格子L1Eにおける対角線を含む平面に沿う断面構造を示している。III‐III線に沿う断面であって、図10(c)に示される断面構造と、II‐II線に沿う断面であって、図10(b)に示される断面構造とは相互に等しい。
幾何光学において、反射面11Sにて反射する光は広がりを有しない。一方で、例えば、図10(a)から図10(c)に示される断面、すなわち、複数の反射面11Sを含むような任意の断面において、全ての反射面11Sにおける斜辺の長さが相互に等しい場合に、各斜辺の長さが開口のサイズに相当するような回折現象が生じる。本開示における表示体が可視光を利用する表示体であること、また、開口の大きさに比べて、表示体と観察者との間の距離である観察距離が十分大きいことから、表示体が備える画素において、Fraunhofer回折理論が成り立つ。反射面11Sに入射する光が特定の波長λを有すると仮定するとき、開口のサイズD、波数k、および、広がり角ψによって、回折光の強度Iが、下記式(A)を満たす。なおI(0)は、正反射の光の強度である。
図11(a)は、開口のサイズDが10μmであるときの回折光の強度分布を示し、図11(b)は、開口のサイズDが20μmであるときの回折光の強度分布を示し、図11(c)は、開口のサイズDが50μmであるときの回折光の強度分布を示している。図11には、入射する光の波長λが、可視光の波長の範囲において比視感度が最も高い波長である555nmであると仮定している。また、簡略化のために、反射面11Sの各斜辺が傾きを有しないものと見なしている。
図11(a)から図11(c)から明らかなように、開口のサイズD、すなわち反射面11Sにおける斜辺の長さに応じて、反射面11Sで反射される光における回折の状態が異なるため、各開口のサイズDによって、回折光の強度分布が互いに異なる。回折光の強度分布において、反射面11Sにおける正反射の方向に射出される光の強度が最も大きいことは、開口のサイズDに関わらず共通している。正反射の方向に射出される光において、光の射出される角度の範囲が、広がり角である。正反射の方向に射出される光の広がり角は、開口のサイズDが10μmであるときに最も大きく、開口のサイズDが50μmであるときに最も小さい。すなわち、開口のサイズDが大きくなるほど、正反射の方向に射出される光の広がり角は小さくなる。
ここで、表示体を観察する観察者の瞳に入射することが可能な角度の範囲を±0.5°とする。反射面11Sに対する入射光の光量を100%とするとき、反射面11S、言い換えれば各画素において反射された光の光量は、開口のサイズDが10μmであるとき32%であり、開口のサイズDが20μmであるとき58%であり、開口のサイズDが50μmであるとき90%である。このように、開口のサイズD、言い換えれば、斜辺の長さが大きいほど、観察者によって視認される光の光量が高まり、結果として、表示体の輝度が高まる。
表示体は、開口のサイズD、すなわち画素のサイズが互いに異なる複数種の画素を有してもよい。こうした構成によれば、各画素におけるサイズの違いによって、回折光の強度分布が異なるため、観察者によって観察される光の光量が異なる画素を有した表示体とすることができる。なお、画素のサイズは、複数の画素から構成される画素群ごとに異なってもよい。
・図12は表示体10の断面構造を示している。図12が示すように、表示体10は、基体12と上述した複数の画素11Aとを備える構成であってもよい。こうした構成では、基体12のうち、複数の画素11Aの位置する表面12Sが上述した表示面10Sに対応する。表示体10の観察側は、基体12に対して複数の画素11Aが位置する側である第1観察側であってもよいし、複数の画素11Aに対して基体12が位置する側である第2観察側であってもよい。なお、表示体10の観察側が第2観察側であるときには、基体12は光透過性を有する必要がある。
図13は、表示体10の観察側が第2観察側であるときに、表示体10に入射する光と表示体10から出射される光とを模式的に示している。なお、表示体10の観察者OBは、表示面10Sの広がるXY平面に対して、観察者OBの観察方向DOを含む平面が直交する状態で観察する例を説明する。また、図13には、表示体10が、基体12の延びる方向がY方向に沿うように配置された例が示されている。
図13が示すように、観察者OBは、基体12の表面12Sと水平面HRとが形成する傾斜角Θが約45°になるように表示体10を傾けた状態で観察することが多い。また、表示体10には、例えば天井に位置する蛍光灯の光や太陽光等のように、観察者OBの真上から表示体10に向けて光が入射することが多い。
この場合に、表示体10の反射面11Sに入射した入射光Linが反射面11Sにおいて反射することによって出射光Loutとして観察側に向けて出射されるためには、反射面11Sの方位角Φが観察者OBの観察方向DOとは反対側を向いていること、すなわち方位角Φが0°であることが好ましい。方位角Φが0°であるとき、観察者OBは、強度の最も高い反射光を視認することができる。そして、反射面11Sにおける方位角Φと0°との差が大きくなるほど、観察者OBによって観察される光の強度が低くなるため、観察者OBは、表示体10の明度が低いと感じる。
ここで、表示体10が第1観察側から観察されたときと、第2観察側から観察されたときとの間では、反射面11Sの方位角Φが、方位角Φにおける90°と270°とを通る軸に対して対象な方位角Φに変わる。
すなわち、図14(a)が示すように、表示体10が第1観察側から観察されたとき、反射面11Sの法線方向は、第1方向D1である。これに対して、図14(b)が示すように、表示体10が第2観察側から観察されたとき、反射面11Sの法線方向は、紙面の左右方向において第1方向D1に対して方向が反転された第2方向D2である。そのため、表示体10が第2観察側から観察されたときの方位角Φが0°であるとき、表示体10が第1観察側から観察されたときの方位角Φは180°である。
観察者OBは、表示体10が水平面HRに対して傾きを有するように表示体10を静止させた状態で表示体10を観察するばかりでなく、水平面HRに対する表示体10の傾きを変えながら表示体10を観察することもある。上述したように、表示面10Sと水平面HRとの傾斜角Θが約45°であるときには、方位角Φが0°であるときに、観察者OBによって視認される光の強度が最も大きくなる。
そして、表示体10が前後方向に沿って傾けられると、方位角Φが0°である反射面11Sから反射される光のうち、観察者OBによって視認される光の強度が小さくなる。言い換えれば、表示面10Sのうち、観察者OBの観察方向を含む平面であってX方向に沿う平面と交差する部分と、観察方向を含む平面のうち、表示面10Sと交差する部分とが変わらないように表示体10が傾けられると、方位角Φが0°である反射面11Sから反射される光のうち、観察者OBによって視認される光の強度が小さくなる。これに対して、方位角Φが180°である反射面11Sから反射される光のうち、観察者OBによって視認される光の強度が大きくなる。
そのため、表示面10Sと水平面HRとの傾斜角Θと、反射面11Sにおける方位角Φとの組み合わせによって、表示体10の画像が表示されたり、表示されなかったりする。
・図15および図16を参照して、表示体10Aの表示面10ASと、観察者OBの観察方向を含む平面とが形成する角度が変わることによって、観察者OBが視認することの可能な画像が変わる例を説明する。なお、上述したように、図15および図16におけるY方向と、各画素11Aが有する反射面の投影方向とが一致するときに、反射面の方位角Φが0°である。
図15が示すように、表示体10Aは表示面10ASを有し、表示面10ASは、第1画像P1を表示する第1領域群AS1と、第2画像P2を表示する第2領域群AS2とを含んでいる。第1領域群AS1および第2領域群AS2の各々には、複数の画素11Aが位置している。本例では、表示面10ASと対向する平面視において、第1領域群AS1は三日月形状を有し、第2領域群AS2は星形状を有している。
これに対して、表示面10ASのうち、第1領域群AS1および第2領域群AS2以外の部分には、画素11Aが位置してもよいし、画素11Aが位置しなくてもよい。ただし、表示面10ASのうち、第1領域群AS1および第2領域群AS2以外の部分に画素11Aが位置し、かつ、全ての画素11Aにおいて方位角Φが等しいときには、所定の形状を有した画素11Aが一定の周期で表示面10ASに位置する。これにより、表示面10ASから回折光が出射されやすくなるため、第1画像P1および第2画像P2の視認性が回折光のために低くなることがある。
一方で、第1領域群AS1および第2領域群AS2以外の部分に画素11Aが位置しないときには、表示体10Aが傾けられたときにおいて、画素11Aが位置しない領域群での反射光における強度の変化が小さくなる。そのため、第1画像P1および第2画像P2と、画素11Aが位置しない部分とのコントラストが一定に保たれ、各画像の視認性が高まる。
第1領域群AS1に属する複数の画素11Aにおいて、各画素11Aの有する方位角Φの範囲が第1範囲であり、第2領域群AS2に属する複数の画素11Aにおいて、各画素11Aの有する方位角Φの範囲が第2範囲であり、第1範囲と第2範囲とは相互に異なる範囲である。第1範囲に含まれる方位角Φと第2範囲に含まれる方位角Φとの差における最小値は、30°以上であることが好ましい。
具体的には、例えば、第1範囲に含まれる方位角Φが第2範囲に含まれる方位角Φよりも大きいとき、第1範囲が90°以上180°未満である一方で、第2範囲が0°以上60°以下であれば、第1範囲に含まれる方位角Φと第2含まれる方位角Φとの差における最小値が30°である。第1範囲に含まれる方位角Φと第2範囲に含まれる方位角Φとの差が30°以上であることによって、第1画像P1と第2画像P2とを含む1つの画像が視認されることを抑えることができる。
第1範囲における方位角Φおよび第2範囲における方位角Φは、0°以上180°未満の範囲に含まれてもよいし、180°以上360°未満の範囲に含まれてもよい。例えば、第1範囲を120°以上180°未満の範囲に設定し、第2範囲を15°以上60°以下の範囲に設定することが可能である。すなわち、第2範囲における方位角Φの最小値と、第1範囲における方位角Φの最大値との差が、180°未満であることが好ましい。
これにより、観察者OBが、表示体10Aにおいて観察方向を含む平面であってX方向に沿う平面と交差する部分と、観察方向を含む平面において表示体10Aと交差する部分とが変わらないように、かつ、表示体10Aと観察方向を含む平面とが形成する角度が変わるように表示体10Aを傾けるとき、以下の点で好ましい。すなわち、第1領域群AS1から出射される光と、第2領域群AS2から出射される光とが、1つの画像を形成しているように観察者OBに視認されることが抑えられる。
なお、第1領域群AS1および第2領域群AS2の各々に属する複数の画素11Aには、第1の実施の形態にて説明したように、反射面11Sの向き、すなわち方位角Φの相互に異なる画素11Aが含まれているが、各領域群において、全ての反射面11Sにおける方位角Φが等しくてもよい。
図16を参照して、表示体10Aの一例であって、第1範囲に含まれる方位角Φが120°以上180°未満であり、かつ、第2範囲に含まれる方位角Φが15°以上60°以下であるときの作用を説明する。なお、第1範囲における方位角Φおよび第2範囲における方位角Φが180°以上360°未満の範囲に含まれるときにも、表示体60の作用は、以下に説明する作用と同様である。
図16(a)が示すように、観察者OBは、表示体10Aの表示面10ASと観察者OBの観察方向DOを含む平面とが直交するように、表示体10Aを把持している。また、観察者OBは、表示面10AS内において、第1領域群AS1がY方向において第2領域群AS2よりも上方に位置するように、すなわち、第2領域群AS2が第1領域群AS1よりも観察者OBの手元からの距離が小さくなるように、表示体10Aを把持している。
このとき、観察者OBは、第1領域群AS1が表示する第1画像P1を視認することができる一方で、第2領域群AS2が表示する第2画像P2を視認することができない。
これに対して、図16(b)が示すように、表示体10Aを前後方向であって、方位角Φが0°である投影方向、および、方位角Φが180°である投影方向に沿って傾ける。言い換えれば、観察者OBは、観察者OBの観察方向DOを変えずに、観察方向DOを含む平面であってX方向に沿う平面と表示面10ASとが形成する角度のうち、以下の角度が小さくなるように、表示体10Aを傾ける。
すなわち、観察者OBは、観察方向DOを含む平面を挟んで形成される2つの角度のうち、観察方向DOを含む平面に対して観察者OBの手元側、すなわちY方向における下方側の角度が小さくなるように、表示体10Aを傾ける。言い換えれば、表示体10Aの表示面10ASにおいて観察方向DOを含む面と交差する部分と、観察方向DOを含む面において表示面10ASと交差する部分との両方が変わらないように、観察者OBは表示体10Aを傾ける。
このとき、観察者OBは、第2領域群AS2が表示する第2画像P2を視認することができる一方で、第1領域群AS1が表示する第1画像P1を視認することができない。
このように、表示体10Aによれば、表示体10Aの表示面10ASと観察者OBの観察方向DOを含む平面とが形成する角度によって、表示体10Aが表示する画像を第1画像P1と第2画像P2との間で変えることができる。
なお、上述した第1範囲における方位角Φおよび第2範囲における方位角Φが90°以上180°未満の範囲に含まれてもよいし、180°以上270°未満の範囲に含まれてもよい。こうした構成では、観察者OBが以下のように表示体10Aを傾けることによって、表示体10Aが表示する画像を第1画像P1と第2画像P2との間で変えることができる。
すなわち、表示体10Aを左右方向であって、方位角Φが90°である投影方向、および、方位角Φが270°である投影方向に沿って傾けることによって、表示体10Aが表示する画像を第1画像P1と第2画像P2との間で変えることができる。
言い換えれば、表示体10Aを観察するときに、表示体10Aの表示面10ASと観察者OBの観察方向DOを含む平面であってX方向に沿う平面とが直交する状態から、観察者OBは、以下のように表示体10Aを傾ければよい。すなわち、観察者OBは、表示体10Aの表示面10ASにおいて観察方向DOを含む面と交差する部分は変わらない一方で、観察方向DOを含む面において表示体10Aと交差する部分が変わるように、観察者OBが表示体10Aを傾ければよい。
こうした構成では、上述した構成と比べて、画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θがより大きいときに、表示面10ASに入射した光が多重反射しやすく、これにより、第1画像P1と第2画像P2とが重なりやすい。それゆえに、画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θが、表示面10ASに入射した光が多重反射しない程度に大きいことが好ましい。
・図17が示すように、表示体10Bは表示面10BSを有し、表示体10Bは第1領域群BS1、第2領域群BS2、および、第3領域群BS3を含んでいる。表示体10Bは第1画像P1と第2画像P2とを表示することができ、第1画像P1は、第1領域群BS1と第3領域群BS3とによって表示され、第2画像P2は、第2領域群BS2と第3領域群BS3とによって表示される。本例において、第1画像P1は三日月形状を有し、第2画像P2は星形状を有している。
第1領域群BS1は複数の単位格子L1Eを含み、各単位格子L1Eには、第1画像P1を表示するための1つの第1画素が位置している。第2領域群BS2は複数の単位格子L1Eを含み、各単位格子L1Eには、第2画像P2を表示するための1つの第2画素が位置している。これに対して、第3領域群BS3は複数の単位格子L1Eを含み、複数の単位格子L1Eの一部には第1画素が位置する一方で、残りの単位格子L1Eには、第2画素が位置している。表示面10BSのうち、第1領域群BS1、第2領域群BS2、および、第3領域群BS3以外の部分には、画素が位置してもよいし、画素が位置しなくてもよい。
なお、第1画素における方位角Φの第1範囲と、第2画素における方位角Φの第2範囲との間には、上述した表示体10Aにおける第1範囲と第2範囲と同等の関係が成り立つことが好ましい。また、表示面10BSのうち、第1領域群BS1、第2領域群BS2、および、第3領域群BS3以外の部分には、上述した表示体10Aにて説明した理由から、画素が位置しないことが好ましい。
第3領域群BS3において、複数の第1画素および複数の第2画素は、市松状に並んでもよいし、ストライプ状に並んでもよい。第3領域群BS3では、例えば、第1画素と第2画素との数が等しく、第3領域群BS3が有する単位格子L1Eの全てに、第1画素および第2画素のいずれか一方が位置している。
第1領域群BS1が有する全ての単位格子L1Eには第1画素が位置してもよいし、第2領域群BS2が有する全ての単位格子L1Eには第2画素が位置してもよい。ただし、この場合には、第1画像P1のうち、第1領域群BS1が表示する部分と、第3領域群BS3が形成する部分との間で明度が異なり、かつ、第2画像P2のうち、第2領域群BS2が表示する部分と、第3領域群BS3が表示する部分との間で明度が異なる。
そのため、第1領域群BS1において、複数の単位格子L1Eに対して第1画素の位置する割合、および、第2領域群BS2において、複数の単位格子L1Eに対して第2画素の位置する割合は、第3領域群BS3において、複数の単位格子L1Eに対して各画素の位置する割合に等しいことが好ましい。
なお、複数の画像を表示することが可能な表示面において、1つの領域群に複数の画像のいずれかを表示するための画素が位置し、かつ、いずれかの画像を表示するための画素が1つの領域群に同じ数だけ位置する構成では、以下のように画素の占有率が設定されることが好ましい。すなわち、画素の位置する全ての領域群において、単位格子におけるいずれかの画像を表示するための画素の占有率は、画像数の逆数であることが好ましい。
・表示体は4つの画像を表示することが可能な構成であり、かつ、表示体の表示面に含まれる1つの領域群には、各画像を表示するための4種の画素が位置してもよい。こうした構成では、4種の画素は、第1配列、第2配列、および、第3配列のいずれかの状態で並ぶことができる。
このうち、第1配列は4種の画素がストライプ状に並ぶ配列であり、相互に異なる種類の画素に対応する4つの列が1つの周期を構成している。第2配列は、X方向に対して45°で傾く直線を形成するように、各種類の画素が線状に並んだ状態である。なお、第2配列でも、第1配列と同様、相互に異なる種類の画素に対応する4つの列が1つの周期を構成している。第3配列は、単位格子L1Eにおける1つの格子点において4種の画素の全てが相互に隣り合うように4種の画素が並んだ状態である。
ここで、単位格子L1Eの一辺を1とするとき、第1配列における各画素の周期は4であり、第2配列における各画素の周期は2√2であり、第3配列における各画素の周期は2である。こうした周期は画像の解像度に相当するため、画像の解像度を小さくする上では、各画素の周期が小さいことが好ましい。
・表示体10が第2観察側から観察されるときには、反射面11Sの傾斜角θを以下のように設定することが好ましい。なお、以下では、表示体10において、複数の画素11Aの屈折率と、基体12の屈折率とが相互に等しい例について説明する。
図18が示すように、観察者OBの真上から表示体10に向けて光が入射するとき、入射光Linは、空気と基体12との界面で屈折し、画素11Aの反射面11Sにおいて反射される。そして、反射面11Sにおいて反射された光は、基体12と空気との界面において屈折し、出射光Loutとして観察者OBによって視認される。
ここで、表示面10S、すなわち基体12の表面12Sと水平面HRとの傾斜角Θを45°と仮定し、観察者OBの観察方向DOを含む平面と表示面10Sとが形成する角度を直角と仮定する。こうした仮定の下では、出射光Loutと入射光Linとが形成する角度γが45°であるときに、観察者OBは最も強度の高い光を視認することができる。
反射面11Sの傾斜角θの算出には、以下の式(5)、すなわちスネルの法則を用いることができる。
n1sinα=n2sinβ ・・・(5)
式(5)において、n1およびn2はそれぞれ媒質の屈折率であり、αは入射光Linにおける屈折角であり、βは出射光Loutにおける屈折角である。表示体10において、各画素11Aの屈折率および基体12の屈折率n1は1.5であると仮定し、空気との界面における屈折について以下に記載する。なお、空気の屈折率n2は1である。
表示体10と空気との界面における屈折は、上述したように、入射光Linが空気から表示体10に入射するときである第1の場合と、反射面11Sにおいて反射された光が、表示体10から空気に向けて出射光Loutとして出射されるときである第2の場合とに生じる。
入射光Linにおける屈折角を屈折角αとし、出射光Loutにおける屈折角を屈折角βとするとき、第1の場合において以下の式(6)が成り立ち、第2の場合において以下の式(7)が成り立つ。
1sinΘ=1.5sinα ・・・(6)
1.5sin(α-2θ)=sinβ ・・・(7)
傾斜角Θは45°であるため、式(6)より屈折角αは28.13°である。また、屈折角βが0°であるとき、以下の式(8)が成り立つ。
γ=Θ+β=45 ・・・(8)
屈折角α、屈折角β、および、式(8)を式(7)に代入すると、以下の式(9)を導くことができる。
1.5sin(28.13-2θ)=0 ・・・(9)
式(9)より導かれる反射面11Sの傾斜角θは、14°である。
・単位格子L1EにおけるX方向に沿う長さおよびY方向に沿う長さ、言い換えれば単位長さは、1μm以上300μm以下であることが好ましい。単位長さが1μm以上であることによって、表示面10Sに並ぶ複数の画素11Aによって回折光が出射されることが抑えられるため、画像Pの視認性が表示体10から出射される回折光のために低くなることが抑えられる。また、単位長さが300μm以下であるため、画素11Aが目視にて確認されることが抑えられ、表示体10の解像度が低くなることが抑えられる。
(第2の実施の形態)
図19および図20を参照して、表示体における第2の実施の形態について説明する。なお、表示体が表示する画像は、表示領域の一例である画素の繰り返しによって画像を表現するラスタ画像に限らず、ベクトルによって表現された表示領域の集合によって画像を表現するベクトル画像であってもよい。以下では、説明の便宜上、表示領域の一例として画素を用いて表示体を説明するとともに、単一の反射方向に画像を表示するための画素の集合を表示画素群の一例として説明する。また、画素を構成する反射面が有する構成は、第1の実施の形態と同じく、反射面によって反射された光の進む方向は、反射面によって回折される方向であってもよいし、反射面によって回折される方向とは異なる方向であってもよい。以下では、反射光の進む方向と、回折光の進む方向とが一致する例を示す。そして、添付図面は、表示体の特徴を分かりやすく示すため、表示体の特徴となる部分を便宜上拡大している場合があり、寸法や比率等が実際とは異なる場合がある。
図19が示すように、表示体20は、複数の画素21Aが縦に5列並び、かつ、横に5行並ぶ面である表示面20Sを備える。すなわち、表示面20Sと対向する平面視において、複数の画素21Aがマトリックス状に並んでいる。そして、複数の画素21Aが発現する光学的な機能によって、表示体20を観察する方向の変化に応じて、複数の矩形状を有したマトリックスが組み合わされた多角形状模様の画像が、連続的に変化する動的な画像として表示面20Sに表示される。
表示面20Sは、表示される画像の階調ごとに関連付けられた複数の画素群21Sa,21Sb,21Sc,21Sd,21Seを有している。これら画素群21Sa~21Seを構成する各画素21Aは、上述した縦に5列並び、かつ、横に5行並ぶマトリックス状のマス目となる単位格子L2Eに1つずつ位置する。すなわち、各単位格子L2Eはそれぞれ単一の画素21Aにより構成されている。
そして、本実施の形態では、図16に示した画素21Aのうち、1行目において横方向に沿って1列に並ぶ全ての画素21Aが、第1の画素群21Saを構成する画素に割り当てられている。また、画素21Aのうち、2行目において横方向に沿って1列に並ぶ全ての画素21Aが、第2の画素群21Sbを構成する画素に割り当てられている。また、画素21Aのうち、3行目において横方向に沿って1列に並ぶ全ての画素21Aが、第3の画素群21Scを構成する画素に割り当てられている。また、画素21Aのうち、4行目において横方向に沿って1列に並ぶ全ての画素21Aが、第4の画素群21Sdを構成する画素に割り当てられている。また、画素21Aのうち、5行目において横方向に沿って1列に並ぶ全ての画素21Aが、第5の画素群21Seを構成する画素に割り当てられている。
ここで、上述した第1の画素群21Saから第5の画素群21Seは、各々の反射面の向きがこの順に連続的に変化するものであり、例えば、対応する回折角βの大きさもこの順に連続的に変化してもよい。この場合、第1の画素群21Saから第5の画素群21Seの各々は、対応する回折角βと表示体20の反射方向とが一致したときには各々の画素群21Sa~21Seが表示する画像を高い輝度で視認させる。一方で、対応する回折角βと表示体20の反射方向とが一致しないときには各々の画素群21Sa~21Seが表示する画像を視認させにくい。すなわち、本実施の形態では、第1の画素群21Saから第5の画素群21Seの各々が、観察者による視認の有無を切り替えるべく、表示体20の反射方向に応じて白色または黒色による2値表示を行うようにしている。
なお、白色とは、その画素21Aから射出される反射光の強度が相対的に高い状態であり、黒色とは、その画素21Aから射出される反射光の強度が相対的に低い状態であって、その画素21Aから射出される反射光のほとんどが観察者によって視認されない状態である。
図20の左端に示す例では、例えば表示体20を正面から観察したときには、第1の画素群21Saから第5の画素群21Seが表示する画像の何れもが視認されず、全ての画素群21Sa~21Seが黒色、言い換えれば背景色として視認される。これに対して、この状態から表示体20を観察する方向を次第に変化させると、まず、第1の画素群21Saの回折角βに対応する方向と表示体20の反射方向とが一致し、第1の画素群21Saが表示する画像が高い輝度で視認される。次いで、表示体20を観察する方向を更に変化させると、第2の画素群21Sbから第5の画素群21Seの各々における回折角βに対応する方向と表示体20の反射方向とが順次一致し、第2の画素群21Sbから第5の画素群21Seの各々が表示する画像が高い輝度で順に視認される。
すなわち、この例では、表示体20を観察する方向を次第に変化させると、横方向に沿って延びる画像を要素画像として、紙面における表示面20Sの上方から下方に向けて移動する動的な画像が、順に視認される。
このように、紙面の上方から下方に向けて移動する動的な画像を視認させる効果は、反射面11Sの傾斜角θが、行の順番に従う流れを有して変化することによるものである。そして、反射面11Sによって反射された光の進む方向と、反射面11Sによって回折される方向とが異なる構成においても、同様の視覚効果は得られる。
以上説明したように、上記第2の実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(9)表示体20を観察する方向を変化させたとき、画像に含まれる要素画像の種別が相互に等しく、かつ、要素画像の位置が反射方向に応じて相互に異なるようにした。これにより、表示体20を観察する方向を変化させたときに、相互に関連する内容であって、かつ、相互に異なる内容の画像の表示を実現することができる。
なお、上記第2の実施の形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
・表示体20を観察する方向を連続的に変化させたときに、多角形状模様の画像が動的に表示される形態の変形例として、以下に示すものを採用することができる。
図21(a)が示すように、第1の例の表示体は、表示領域群ごとにおける反射方向の変化に応じて、マトリックス状に並ぶ画素21Aのうち、紙面における左上の角部と右下の角部とを結ぶ対角線上の画素21Aが、右斜め上方および左斜め下方に移動する動的な画像を表示する構成でもよい。
図21(b)が示すように、第2の例の表示体は、表示領域群ごとにおける反射方向の変化に応じて、マトリックス状に並ぶ画素21Aが白色または黒色による2値表示を、表示面20Sの全体で均等に分散させつつ切り替える構成でもよい。
言い換えれば、マトリックス状に並ぶ画素21Aの各々が、観察者による視認の有無を切り替えるべく、表示領域群ごとの反射方向に応じて白色または黒色による2値表示を行うものであればよい。
図21(c)が示すように、第3の例の表示体は、表示領域群ごとにおける反射方向の変化に応じて、横方向に沿って延びる画像を、紙面における表示面20Sの上方から下方に向けて移動させるとともに、画像における移動の軌跡を画像間での濃淡、すなわち、反射光における強度の差によって表示する構成でもよい。
この場合、例えば、第1の画素群21Saから第5の画素群21Seの各々の間における回折角βの差を小さく設定すればよい。この構成では、図21(c)の左端に示す例のように、例えば表示体10を正面から観察したときには、第1の画素群21Saから第5の画素群21Seの表示する画像の何れもが視認されず、全ての画素が黒色、言い換えれば背景色として視認される。これに対して、この状態から表示体20を観察する方向を次第に変化させると、まず、第1の画素群21Saの回折角βに対応する方向と表示体20の反射方向とが一致し、第1の画素群21Saが表示する画像が高い輝度で視認される。
次いで、表示体20を観察する方向を更に変化させると、第2の画素群21Sbの回折角βに対応する方向と表示体20を観察する方向とが一致し、第2の画素群21Sbが表示する画像が最も高い輝度で視認される。このとき、表示体20を観察する方向は、第1の画素群21Saの回折角βに対応する方向とのずれが小さいため、第1の画素群21Saが表示する画像についても若干の輝度の低下を伴いつつ視認される。すなわち、第1の画素群21Saが表示する画像は、第2の画素群21Sbが表示する画像よりも輝度が低く、かつ、第3の画素群21Scから第5の画素群21Seの各々が表示する画像よりも輝度が高い画像として視認される。
また、この状態から表示体20を観察する方向を更に変化させると、第3の画素群21Scの回折角βに対応する方向と表示体20の反射方向とが一致し、第3の画素群21Scが表示する画像が高い輝度で視認される。このとき、上述と同様に、表示体20を観察する方向は、第2の画素群21Sbの回折角βに対応する方向とのずれが小さいため、第2の画素群21Sbが表示する画像についても若干の輝度の低下を伴いつつ視認される。また同様に、表示体20を観察する方向は、第1の画素群21Saの回折角βに対応する方向とのずれもさほど大きくはないため、第1の画素群21Saが表示する画像についても輝度の低下の度合いが増大しつつも視認される。言い換えれば、第1の画素群21Saが表示する画像、第2の画素群21Sbが表示する画像、および、第3の画素群21Scが表示する画像は、この順に輝度が高い画像として視認される。
すなわち、この構成では、表示体20を観察する方向は、第1の画素群21Saから第5の画素群21Seのなかで、特定の画素群における回折角βに対応する方向と一致したとしても、他の画素群21Sa~21Seの回折角βに対応する方向とのずれが比較的小さい。そのため、表示体20を観察する方向を次第に変化させると、第1の画素群21Saから第5の画素群21Seのうち、いずれかの画素群が表示する画像の輝度が一旦高くなった後であっても、その画像群が表示する画像の輝度が低下しつつも、他の画素群が表示する画像と併せて視認される。
(第3の実施の形態)
図22および図23を参照して、表示体の第3の実施の形態について説明する。なお、表示体が表示する画像は、表示領域の一例である画素の繰り返しによって画像を表現するラスタ画像に限らず、ベクトルによって表現された表示領域の集合によって画像を表現するベクトル画像であってもよい。以下では、説明の便宜上、表示領域の一例として画素を用いて表示体を説明するとともに、単一の反射方向に画像を表示するための画素の集合を表示画素群の一例として説明する。また、画素を構成する反射面が有する構成は、第1の実施の形態と同じく、反射面によって反射された光の進む方向は、反射面によって回折される方向であってもよいし、反射面によって回折される方向とは異なる方向であってもよい。以下では、反射光の進む方向と、回折光の進む方向とが一致する例を示す。そして、添付図面は、表示体の特徴を分かりやすく示すため、表示体の特徴となる部分を便宜上拡大している場合があり、寸法や比率等が実際とは異なる場合がある。
図22が示すように、表示体30は、複数の画素31Aがマトリックス状に並ぶ面である表示面30Sを備える。各画素31Aの位置は、三角格子の各単位格子L3Eである。そして、複数の画素31Aが発現する光学的な機能によって、表示体30を観察する方向の変化に応じて、複数の画素31Aが組み合わされた多角形状模様の画像が連続的に変化する動的な画像が、表示面30Sに表示される。
表示面30Sは、表示される画像の階調ごとに関連付けられた複数の画素群31Sa~31Seを有している。これら画素群31Sa~31Seを構成する各画素31Aは、上述したマトリックス状のマス目となる各単位格子L3Eに1つずつ位置する。すなわち、各単位格子L3Eは、それぞれ単一の画素31Aにより構成されている。
そして、本実施の形態では、図22に示した画素31Aのうち、紙面における最下段において横方向に沿って1列に並ぶ全ての画素が、第1の画素群31Saを構成している。また、画素31Aのうち、紙面の下から2段目における横方向に沿って1列に並ぶ全ての画素が、第2の画素群31Sbを構成している。また、画素31Aのうち、紙面の下から3段目における横方向に沿って1列に並ぶ全ての画素が、第3の画素群31Scを構成している。また、画素31Aのうち、紙面の下から4段目における横方向に沿って1列に並ぶ全ての画素が、第4の画素群31Sdを構成している。また、画素31Aのうち、紙面における最上段に位置する画素が、第5の画素群31Seを構成している。
ここで、上述した第1の画素群31Saから第5の画素群31Seでは、各々に属する反射面の向きがこの順に連続的に変化し、対応する回折角βの大きさもこの順に連続的に変化する。この場合、第1の画素群31Saから第5の画素群31Seの各々は、対応する回折角βと表示領域群ごとの反射方向とが一致したときには各々の画素群31Sa~31Seが表示する画像を高い輝度で視認させる。一方で、対応する回折角βと表示領域群ごとの反射方向とが一致しないときには、各々の画素群31Sa~31Seが表示する画像を視認させにくい。すなわち、本実施の形態では、第1の画素群31Saから第5の画素群31Seの各々が、観察者による視認の有無を切り替えるべく、表示体30を観察する方向に応じて白色または黒色による2値表示を行うようにしている。
図23の左端に示す例では、例えば表示体30を正面から観察したときには、第1の画素群31Saから第5の画素群31Seの表示する画像の何れもが視認されず、全ての画素群31Sa~31Seが黒色、言い換えれば背景色として視認される。これに対して、この状態から表示体30を観察する方向を次第に変化させると、まず、第1の画素群31Saの回折角βに対応する方向と表示体30を観察する方向とが等しくなり、第1の画素群31Saが表示する画像が高い輝度で視認される。その後、表示体30を観察する方向を更に変化させると、第2の画素群31Sbから第5の画素群31Seの各々の回折角βに対応する方向と表示体30を観察する方向とが順次等しくなり、第2の画素群31Sbから第5の画素群31Seの各々が表示する画像が高い輝度で視認される。
すなわち、この例では、表示体30を観察する方向を次第に変化させると、横方向に沿って延びる画像を要素画像として、紙面における表示面30Sの最下段から最上段に向けて移動する動的な画像が順に視認される。
このように、紙面における上方から下方に向けて移動する動的な画像を視認させる効果は、反射面11Sの傾斜角θが、各段の順番に従う流れを有して変化することによるものである。そして、反射面11Sによって反射された光の進む方向と、反射面11Sによって回折される方向とが異なる構成においても、同様の視覚効果は得られる。
以上説明したように、上記第3の実施の形態によれば、上記第2の実施の形態と同様の効果が得られる。
なお、上記第3の実施の形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
・表示体30を観察する方向を連続的に変化させたときに、多角形状模様の画像を動的に表示する形態の変形例として、以下に示すものを採用することができる。
図24(a)が示すように、第1の例の表示体は、表示体を観察する方向の変化に応じて、横方向に沿って延びる画像を、紙面における表示面30Sの最下段から最上段に向けて移動させるとともに、画像における移動の軌跡を濃淡、すなわち反射光の強度によって表示する構成としてもよい。
この場合、例えば、第1の画素群31Saから第5の画素群31Seの各々に対応する回折角βの大きさの差を小さく設定すればよい。この構成では、図24(a)の左端に示す例のように、例えば表示体30を正面から観察したときには、第1の画素群31Saから第5の画素群31Seの表示する画像の何れもが視認されず、全ての画素群31Sa~31Seが黒色、言い換えれば背景色として視認される。
これに対して、この状態から表示体30を観察する方向を次第に変化させると、まず、第1の画素群31Saの回折角βに対応する方向と表示体30を観察する方向とが一致し、第1の画素群31Saが表示する画像が高い輝度で視認される。
次いで、この状態から表示体30を観察する方向を更に変化させると、第2の画素群31Sbの回折角βに対応する方向と表示体30を観察する方向とが一致し、第2の画素群31Sbが表示する画像が最も高い輝度で視認される。このとき、表示体30を観察する方向は、第1の画素群31Saの回折角βに対応する方向とのずれが小さいため、第1の画素群31Saが表示する画像についても若干の輝度の低下を伴いつつ視認される。すなわち、第1の画素群31Saが表示する画像は、第2の画素群31Sbが表示する画像よりも輝度が低く、かつ、第3の画素群31Scから第5の画素群31Seの各々が表示する画像よりも輝度が高い画像として視認される。
また、この状態から表示体30を観察する方向を更に変化させると、第3の画素群31Scの回折角βに対応する方向と表示体30を観察する方向とが一致し、第3の画素群31Scが表示する画像が高い輝度で視認される。このとき、上述と同様に、表示体30を観察する方向は、第2の画素群31Sbの回折角βに対応する方向とのずれが小さいため、第2の画素群31Sbが表示する画像についても若干の輝度の低下を伴いつつ視認される。また同様に、表示体30を観察する方向は、第1の画素群31Saの回折角βに対応する方向とのずれもさほど大きくはないため、第1の画素群31Saが表示する画像についても輝度の低下の度合いが増大しつつも視認される。
すなわち、この構成では、表示領域群ごとの反射方向は、第1の画素群31Saから第5の画素群31Seのなかで、特定の画素群における回折角βに対応する方向と一致したとしても、他の画素群の回折角βに対応する方向とのずれは比較的小さい。そのため、表示体を観察する方向を次第に変化させていくと、第1の画素群31Saから第5の画素群31Seのうち、いずれかの画素群が表示する画像の輝度が一旦高くなった後であっても、その画像群が表示する画像の輝度の低下しつつも、他の画素群が表示する画像と併せて視認される。
図24(b)が示すように、第2の例の表示体は、複数の画素31Aがピラミッド状に並んだ集合体の一部を、3つの領域R1,R2,R3の各々に割り当てられた構成でもよい。各々の領域R1,R2,R3を構成する画素31Aの反射面の向きが、紙面における最上段の画素を基準として一定の比率で少しずつ異なっている。そのため、ある反射方向から見たときに各領域に位置する画素31Aの集合体が、濃淡、言い換えれば反射光の強度に差を有する画像を表示する。また、各領域のうち、下段において左右の両側の領域R1に位置する最上段の画素31Aが、第1の画素群31Saを構成する画素に割り当てられている。
また、下段における真ん中の領域R2に位置する最下段の画素31Aが、第2の画素群31Sbを構成する画素に割り当てられている。また、上段の領域R3に位置する最上段の画素31Aが、第3の画素群31Scを構成する画素に割り当てられている。ここで、上述した第1の画素群31Saから第3の画素群31Scは、各々の反射面の向きがこの順に連続的に変化するものであり、対応する回折角βの大きさもこの順に連続的に変化する。
そして、図24(c)の左端に示す例では、例えば表示体30を正面から観察したときには第1の画素群31Saの回折角βに対応する方向と表示体30を観察する方向とが一致する。このとき、第1の画素群31Saおよび第1の画素群31Saを基準として一定の比率で反射面の向きが異なる画素31Aの集合体が、領域R1において高い輝度で視認される。
これに対して、この状態から表示体30を観察する方向を次第に変化させると、第2の画素群31Sbの回折角βに対応する方向と表示体30を観察する方向とが一致する。このとき、第2の画素群31Sbおよび第2の画素群31Sbを基準として一定の比率で反射面の向きが異なる画素31Aの集合体が、領域R2において高い輝度で視認される。なお、表示体30を観察する方向は、第1の画素群31Saの回折角βに対応する方向とのずれが小さい。そのため、第1の画素群31Saおよび第1の画素群31Saを基準として一定の比率で反射面の向きが異なる画素31Aの集合体が、領域R1において表示する画像についても、若干の輝度の低下を伴いつつ視認される。
また、この状態から表示体30を観察する方向を更に変化させると、第3の画素群31Scの回折角βに対応する方向と表示体30を観察する方向とが一致する。このとき、第3の画素群31Scおよび第3の画素群31Scを基準として一定の比率で反射面の向きが異なる画素11Aの集合体が、領域R3において高い輝度で視認される。このとき、上述と同様に、表示体30を観察する方向は、第2の画素群31Sbの回折角βに対応する方向とのずれが小さい。そのため、第2の画素群31Sbおよび第2の画素群31Sbを基準として一定の比率で反射面の向きが異なる画素31Aの集合体が、領域R2において表示する画像についても、若干の輝度の低下を伴いつつ視認される。
また同様に、表示体30を観察する方向は、第1の画素群31Saの回折角βに対応する方向とのずれもさほど大きくはない。そのため、第1の画素群31Saおよび第1の画素群31Saを基準として一定の比率で反射面の向きが異なる画素11Aの集合体が、領域R1において表示する画像についても、輝度の低下の度合いが増大しつつも視認される。
すなわち、この構成では、表示体30を観察する方向は、第1の画素群31Saから第3の画素群31Scのなかで、特定の画素群の回折角に対応する方向と一致したとしても、他の画素群の回折角βに対応する方向とのずれは比較的小さい。そのため、表示体30を観察する方向を次第に変化させると、第1の画素群31Saから第3の画素群31Scのうち、いずれかの画素群が表示する画像の輝度が一旦高くなった後であっても、その画像が輝度の低下を伴いつつも他の画素群が表示する画像と併せて視認される。
(第4の実施の形態)
図25(a)~(c)を参照して、表示体の第4の実施の形態について説明する。表示体が表示する画像は、表示領域の一例である画素の繰り返しによって画像を表現するラスタ画像に限らず、ベクトルによって表現された表示領域の集合によって画像を表現するベクトル画像であってもよい。以下では、説明の便宜上、表示領域の一例として画素を用いて表示体を説明するとともに、単一の反射方向に画像を表示するための画素の集合を表示画素群の一例として説明する。また、画素を構成する反射面が有する構成は、第1の実施の形態と同じく、反射面によって反射された光の進む方向は、反射面によって回折される方向であってもよいし、反射面によって回折される方向とは異なる方向であってもよい。以下では、反射光の進む方向と、回折光の進む方向とが一致する例を示す。そして、添付図面は、表示体の特徴を分かりやすく示すため、表示体の特徴となる部分を便宜上拡大している場合があり、寸法や比率等が実際とは異なる場合がある。
図25(a)が示すように、表示体40において、幾何学的な立体構造体を要素画像として示す画像Pにおいて奥行情報が相互に異なる領域に、反射面の向きが異なる複数の画素が関連付けられている。本実施の形態では、幾何学的な立体構造体は、リンゴである。このとき、立体構造体の奥行情報を濃淡に変換して表現する上で立体構造体の各領域に適した階調値を事前に設定しておき、事前に設定した階調値に対して、各画素の反射面の向きが個別に関連付けられている。各領域における階調値は、表示体40を製造する際に用いられる画像の階調値にも対応する。
なお、立体構造体の各領域における階調値は、例えば以下の方法によって表現することができる。また、以下では、階調の一例として256階調を表現する方向を説明する。
上述したように、表示体40の表示面40Sと水平面HRとの傾斜角Θが約45°であるときであって、かつ、表示体40を第1観察側から観察するときには、反射面11Sにおける方位角Φと観察者OBによって観察される光の強度とは、以下の関係を有する。すなわち、反射面11Sにおける方位角Φが180°であるときに、観察者OBが最も強度の高い光を視認することができ、反射面11Sにおける方位角Φと180°との差が大きくなるほど、観察者OBが視認することのできる光の強度が低くなる。
例えば、表示体40が有する全ての反射面11Sの方位角Φが90°以上180°以下の範囲に含まれるときには、製造時に用いる画像の階調が256階調であるため、1階調あたりの方位角Φは約0.35°である。なお、90°を255で除算することによって、1階調あたりの方位角Φを算出することができる。階調0には90°が対応し、階調255には180°が対応するため、例えば、画像における階調値が1である領域には、方位角Φが90.35°である反射面11Sを割り当てればよく、画像における階調値が100である領域には、方位角Φが125°である反射面11Sを割り当てればよい。
なお、階調と方位角Φによって制御される実際の強度は、必ずしも一対一で対応していなくてもよく、例えば、最大階調値が100である場合には、画像における階調値が100である領域に、方位角Φが180°である反射面11Sを割り当ててもよい。この場合には、90°を最大階調値から最小階調値を引いた値で除算することによって、1階調あたりの方位角Φを算出することができる。
そして、本実施の形態では、図25(a)が示すように、表示体40を正面から見たときには、表示面40Sのなかで、立体構造体の画像における全体が低い輝度で視認される。一方で、表示面40Sのなかで、立体構造体の背景となる領域の全体が、高い輝度で視認される。
これに対して、この状態から表示体40を観察する方向を次第に変化させると、立体構造体の画像Pにおける各領域に関連付けられた各画素の回折角βに対応する方向が、立体構造体の背景となる各領域に関連付けられた各画素の回折角βに対応する方向と比較して、表示体40を観察する方向と隣り合うようになる。これにより、図25(b)が示すように、表示体40が表示する立体構造体の画像Pの各領域と立体構造体の背景となる領域との明暗が逆転する。
また、この状態から表示体40を観察する方向を更に変化させると、立体構造体の画像Pにおける陰影に相当する領域に関連付けられた各画素の回折角βに対応する方向と、表示体40を観察する方向とが乖離し、立体構造体の画像Pにおける陰影に相当する領域の輝度が低下する。これにより、図25(c)が示すように、表示体40が表示する立体構造体の各領域における明暗の差がより一層鮮明になる。
このように、画像の陰影における流れを方向付けるような視覚効果は、反射面11Sの傾斜角θが、画素11A間において一定の相関関係を有することによるものであり、所定の規則に基づいた流れを有して変化することによるものである。そして、反射面11Sによって反射された光の進む方向と、反射面11Sによって回折される方向とが異なる構成においても、画像の陰影の流れを方向付けるような視覚効果は得られる。
以上説明したように、上記第4の実施の形態によれば以下に列挙する効果が得られる。
(10)画像に含まれる要素画像の種別が相互に等しく、かつ、要素画像に対する陰影が表示体40を観察する方向に応じて相互に異なるようにした。これにより、反射方向を変化させたときに、相互に関連する内容であって、かつ、相互に異なる内容を有した画像の表示を実現することができる。
(11)表示体40を観察する方向を次第に変化させると、立体構造体の画像Pにおける各領域での明暗の度合いに基づく画像のコントラストも連続的に変化する。そのため、表示体40の反射方向の変化に応じて観察者の印象を大きく変化させるように、画像Pを立体的な画像として表示することが可能となる。
なお、上記第4の実施の形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
・ある反射方向から表示体40を観察したときに明度が最も高い領域を、別の反射方向から表示体40を観察したときにその領域の明度が最も低くなるように構成してもよい。同様に、ある反射方向から表示体40を観察したときに明度が最も低い領域を、別の反射方向から表示体40を観察したときにその領域の明度が最も高くなるように構成してもよい。更には、ある反射方向から表示体40を観察したときに明度が最も高い領域、もしくは、明度が最も低い領域を、別の反射方向から表示体40を観察したときにその領域の明度が表示面40S内の各画素の明度の中間値となるように構成してもよい。
・図26が示すように、表示体40Aが表示面40ASに表示する画像Pは、複数の面Pfから構成される多面体であってもよい。本変形例において、画像Pは2つの六面体から構成され、2つの六面体は、一方の六面体における一辺と、他の六面体における一辺とを共有している。
画像Pは、複数の表示領域群ASgによって形成され、各表示領域群ASgは、1つの面Pfを表示するための複数の画素から構成されている。各表示領域群ASgに属する複数の画素が有する反射面は、その表示領域群ASgごとの方位角Φを有し、すなわち、各表示領域群ASgは、表示領域群ASgに固有の方位角Φを有している。各表示領域群ASgにおける方位角Φは、画像Pとしての多面体を構成する各面Pfにおける法線方向NLに応じた方位角である。
具体的には、図27が示すように、表示体40Aの表示面40ASを含むXY平面からZ方向に突出する半球において、各面Pfの法線方向NLと、Z方向とが形成する角度が天頂角θzである。天頂角θzが大きい面Pfほど、その面から出射される光の強度であって、観察者OBによって視認される光の強度が小さくなるように、各面Pfに固有の、言い換えれば各表示領域群ASgに固有の方位角Φが設定されればよい。これにより、表示体40Aによって、複数の面Pfから構成される多面体を画像Pとして表示することができる。なお、上述した例では、観察者OBが、観察方向を含む平面と表示面40ASとが直交する方向から、すなわちZ方向から表示体40Aを観察する場合を想定している。
(第5の実施の形態)
図28および図29を参照して、表示体の第5の実施の形態について説明する。なお、表示体が表示する画像は、表示領域の一例である画素の繰り返しによって画像を表現するラスタ画像に限らず、ベクトルによって表現された表示領域の集合によって画像を表現するベクトル画像であってもよい。以下では、説明の便宜上、表示領域の一例として画素を用いて表示体を説明するとともに、単一の反射方向に画像を表示するための画素の集合を表示画素群の一例として説明する。また、画素を構成する反射面が有する構成は、第1の実施の形態と同じく、反射面によって反射された光の進む方向は、反射面によって回折される方向であってもよいし、反射面によって回折される方向とは異なる方向であってもよい。以下では、反射光の進む方向と、回折光の進む方向とが一致する例を示す。そして、添付図面は、表示体の特徴を分かりやすく示すため、表示体の特徴となる部分を便宜上拡大している場合があり、寸法や比率が実際とは異なる場合がある。
なお、以下に参照する図28では、先に参照した図8と同様、画素が有する高さの変化を平面において図示する便宜上、画素においてZ方向に沿う高さが大きい部分ほど明度が低くなるように、画素の明度にグラデーションが付されている。
また、第5の実施の形態における表示体は、第4の実施の形態における表示体40のように、立体構造体の画像である立体像を表示することができ、かつ、第1の実施の形態における変形例の表示体10Aのように、相互に異なる第1画像と第2画像とを、表示体の傾きに応じて表示することが可能である。
図28が示すように、複数の画素51Aには、Z方向から見て、単位格子L1Eにおいて画素51Aが占める面積が最大となる大きさを有していない画素が含まれてもよい。すなわち、単位格子L1E内には、画素51Aが位置する画素領域L1Eaと、画素領域L1Eaの外側の領域である画素外領域、すなわち周辺領域L1Ebとが設定されている。画素領域L1Eaは単位格子L1Eと相似な形状または相同な形状を有している。言い換えれば、画素領域L1Eaは、単位格子L1E以下の大きさを有した正方形状を有している。
画素領域L1Eaは、単位格子L1Eと同心であり、かつ、画素領域L1Eaを区画する全ての辺が、単位格子L1Eを区画する辺のいずれかと平行になるように、単位格子L1E内に位置している。各画素領域L1Eaに位置する画素51Aは、Z方向から見て、各画素領域L1Eaにおいて画素51Aが占める面積が最大となるような大きさを有している。すなわち、画素51Aが複数の反射部分を備えるときには、各画素51Aに含まれる反射面51Sの面積が最大となるような大きさを各反射部分が有している。
周辺領域L1Ebは、正方形枠状を有し、画素領域L1Eaの全周にわたって画素領域L1Eaの外側に位置している。言い換えれば、周辺領域L1Ebは、画素領域L1Eaの周りを取り囲んでいる。
これにより、反射面51Sの方位角Φが同じであるときには、単位格子L1Eよりも小さい画素領域L1Eaに位置する画素51Aにおける反射面51Sの面積は、単位格子L1Eと同じ大きさを有する画素領域L1Eaに位置する画素51Aにおける反射面51Sの面積よりも小さい。また、観察者OBが所定の観察点から観察しているときには、反射面51Sの大きさが大きいほど、画素51Aから出射される光であって、かつ、観察者OBによって視認される光の強度が高い。
それゆえに、画素51Aが位置する画素領域L1Eaの大きさを変え、これにより、画素51Aが有する反射面51Sの大きさを変えることによって、単位格子L1E当たりの光の強度を変えることができる。また、反射面51Sの大きさを変えることによって単位格子L1Eと同じ大きさ当たりの光の強度が変わることを利用して、表示体50が表示する画像Pにおける階調の幅を大きくすることができる。
図29が示すように、方位角Φに応じた反射面51Sの面積、言い換えれば、方位角Φに応じた画素領域L1Eaの大きさは、方位角Φが変わることに伴って半径の大きさが連続的に変わる楕円を用いて設定することが可能である。すなわち、図29が示す楕円において、反射面51Sにおける投影方向DPを示す矢印ARと楕円とが接するときの矢印ARの長さに、画素領域L1Eaの大きさを比例させることによって、各単位格子L1Eにおける画素領域L1Eaの大きさを設定することが可能である。
なお、楕円におけるX方向に沿う直径と、Y方向に沿う直径との比は、単位角度当たりの方位角Φの変化に対応する画素領域L1Eaの大きさの変化に応じて適宜変更することが可能である。
上述したように、表示体50を第1観察側から観察し、かつ、表示面50Sと水平面HRとの傾斜角Θが45°であり、かつ、表示面50Sと観察方向を含む平面とが直交するときには、方位角Φが180°である反射面51Sの輝度が最も高く、180°と方位角Φとの差が大きいほど、反射面51Sの輝度が低くなる。なお、こうした観察状態が第1観察状態である。
これに対して、上述したように、表示体50をこうした状態から以下のように傾けたときには、方位角Φが0°である反射面51Sの輝度が最も高く、0°と方位角Φとの差が大きいほど、反射面51Sの輝度が低くなる。すなわち、表示体50を前後方向に、言い換えれば、表示体50の表示面50Sにおいて、観察方向を含み、かつ、X方向に沿う平面と交差する部分と、この観察方向を含む面において、表示面50Sと交差する部分との両方が変わらないように、観察者OBは表示体50を傾ける。なお、こうして表示体50を傾けた後の観察状態が第2観察状態である。
方位角Φが0°付近である反射面51Sと、方位角Φが180°付近である反射面51Sとにおいては、表示体50の観察状態が第1観察状態と第2観察状態との間で変わることによって、観察者OBによって視認される各反射面51Sにおける光の強度が大きく変わる。これに対して、方位角Φが90°付近である反射面51Sにおいては、表示体50の観察状態が第1観察状態および第2観察状態のいずれであっても、観察者OBによって視認される各反射面51Sの光の強度が大きくは変わらない。
そのため、表示体50の観察状態を第1観察状態と第2観察状態との間で変える途中において、第1画像を表示するための反射面51Sのなかで、方位角Φが90°付近である反射面51Sと、第2画像を表示するための反射面51Sのなかで、方位角Φが90°付近である反射面51Sの輝度が同程度になる。それゆえに、これらの反射面51Sによって表示された画像が1つの画像として視認されやすい。
この点で、先に参照した図29が示す楕円によれば、方位角が90°に近付くほど画素領域L1Eaの大きさが小さくなるため、方位角が90°付近である反射面51Sから出射された光の光量が小さくなる。これにより、方位角が90°付近である反射面51Sから出射された光が目立ちにくくなるため、第1画像を表示するための反射面51Sによって表示される画像と、第2画像を表示するための反射面51Sによって形成される画像とが1つの画像として視認されにくくなる。結果として、表示体50の視認性を高めることができる。
また、第1画像および第2画像のうち、明度の低い部分を表現するための画素領域L1Eaの大きさを、より明度の高い部分を表現するための画素領域L1Eaの大きさよりも小さくするため、各画素51Aにおいて画素領域L1Eaの大きさが同じである構成よりも各画像におけるコントラストを高めることができる。
(その他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
・上記各実施の形態において、各画素11A,21A,31Aが光を反射する特性を有する材料により構成されるのであれば、反射層を被覆することなく、各画素11A,21A,31Aにおいて露出した面を反射面として機能させるようにしてもよい。
・上記第1の実施の形態では、表示体10を観察する方向を変化させたとき、画像に含まれる要素画像の種別が相互に等しく、かつ、要素画像の形状が反射方向に応じて相互に異なるようにした。また、上記第2の実施の形態では、表示体20を観察する方向を変化させたとき、画像に含まれる要素画像の種別が相互に等しく、かつ、要素画像の位置が反射方向に応じて相互に異なるようにした。
また、上記第4の実施の形態では、表示体40を観察する方向を変化させたとき、画像に含まれる要素画像の種別が相互に等しく、かつ、要素画像に対する陰影が反射方向に応じて相互に異なるようにした。これに代えて、表示体10,20,40を観察する方向を変化させたとき、画像に含まれる要素画像の種別が相互に等しく、かつ、要素画像の大きさ、または、要素画像の明るさが反射方向に応じて相互に異なるようにしてもよい。また、表示体10,20,40を観察する方向を変化させたとき、画像に含まれる要素画像の種別が相互に等しく、かつ、要素画像の位置、要素画像の形状、要素画像の大きさ、要要素画像の明暗、および、要素画像に対する陰影を制御パラメータとして組み合わせて変化させるようにしてもよい。
言い換えれば、表示体を観察する方向に応じた画像間では、画像に含まれる要素画像の種別が相互に等しく、かつ、要素画像の位置、要素画像の形状、要素画像の大きさ、要素画像の明暗、および、要素画像に対する陰影の少なくとも1つが相互に異なる構成であればよい。
・上記各実施の形態では、各画素11A(21A,31A)の反射面11Sの向きを変更することにより各画素11A(21A,31A)から回折される光の向きを調整するようにした。これに代えて、あるいは、これに加えて、図30(a)~(d)が示すように、各画素11Aの反射面11Sの高さHを維持しつつX方向における長さを画素11Aの反射面11SのピッチD1~D4として調整することにより、各画素11A(21A,31A)からの回折光の向きを調整するようにしてもよい。ピッチは、上述した構造幅に等しい。なお、図30(a)に示した画素11A(21A,31A)を基準としたとき、画素11A(21A,31A)に対して、反射面11Sにおけるピッチの調整された度合いが小さい順に、図30(b)、図30(c)、および、図30(d)に示した画素11A(21A,31A)が並んでいる。
ここで、図31(a)~(d)は、図30(a)~(d)に示した画素11A(21A,31A)におけるX方向に沿う断面図を示している。すなわち、図31(a)は、図30(a)が示す画素11A(21A,31A)に対応する断面図であり、図31(b)は、図30(b)が示す画素11A(21A,31A)に対応する断面図である。図31(c)は、図30(c)が示す画素11A(21A,31A)に対応する断面図であり、図31(d)は、図30(d)が示す画素11A(21A,31A)に対応する断面図である。この場合、画素11A(21A,31A)の反射面11Sの高さHが、4種の画素11A(21A,31A)において等しい値に維持されている。そのため、画素11A(21A,31A)における反射面11SのピッチD1~D4が長くなるほど、画素11A(21A,31A)において反射面11Sと表示面10Sとが形成する角度である傾斜角θ1’~θ4’は次第に小さくなる。
すなわち、画素11Aにおける反射面11SのピッチD1~D4と、表示面10Sと直交する断面での画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θ1’~θ4’との間には一定の相関関係がある。そして、画素11Aにおける反射面11SのピッチD1~D4を異ならせると、上記断面における画素11Aにおける反射面11Sの傾斜角θ1’~θ4’が異なる。そのため、上述のように、各画素11A(21A,31A)における反射面11Sの向きとは別に、あるいは、各画素11A(21A,31A)における反射面11Sの向きに加え、各画素11A(21A,31A)における反射面11SのピッチD1~D4も併せて調整することにより、以下の効果が得られる。すなわち、表示面10Sと直交する断面において、画素11A(21A,31A)における反射面11Sの傾斜角θ1’~θ4’をより多彩に制御することが可能となる。言い換えれば、反射面11Sの傾斜角θを、より多くの値に制御することができる。その結果、こうした構成によれば、表示体10により表示される画像の階調の多層化を図ることができる。
同様に、図32(a)~(d)が示すように、各画素11A(21A,31A)における反射面11SのピッチDを維持しつつ、各画素11A(21A,31A)における反射面11Sの高さH1~H4を調整するようにしてもよい。なお、図32(a)に示した画素11A(21A,31A)を基準としたとき、画素11A(21A,31A)に対して、反射面11Sにおける高さの調整された度合いが小さい順に、図32(b)、図32(c)、および、図32(d)に示した画素11A(21A,31A)が並んでいる。
ここで、図33(a)~(d)は、図32(a)~(d)に示した画素11A(21A,31A)におけるX方向に沿う断面図を示している。すなわち、図33(a)は、図32(a)が示す画素11A(21A,31A)に対応する断面図であり、図33(b)は、図32(b)が示す画素11A(21A,31A)に対応する断面図である。図33(c)は、図32(c)が示す画素11A(21A,31A)に対応する断面図であり、図33(d)は、図32(d)が示す画素11A(21A,31A)に対応する断面図である。この場合、画素11A(21A,31A)のピッチDが、4種の画素11A(21A,31A)において等しい値に維持されている。そのため、画素11A(21A,31A)における反射面11Sの高さH1~H4が低くなるほど、画素11A(21A,31A)において反射面11Sと表示面10Sとが形成する角度である傾斜角θ1’’~θ4’’は次第に小さくなる。
すなわち、画素11A(21A,31A)における反射面11Sの高さH1~H4と、表示面10Sと直交する断面での画素11A(21A,31A)における反射面11Sの傾斜角θ1’’~θ4’’との間には一定の相関関係がある。そして、画素11A(21A,31A)における反射面11Sの高さH1~H4を異ならせると、上記断面における画素11A(21A,31A)にて反射面11Sの傾斜角θ1’’~θ4’’が異なる。そのため、上述のように、各画素11A(21A,31A)における反射面11Sの向きとは別に、あるいは、各画素11A(21A,31A)における反射面11Sの向きに加えて、各画素11A(21A,31A)における反射面11Sの高さH1~H4を調整することにより、以下の効果が得られる。すなわち、表示面10Sと直交する断面において、画素11A(21A,31A)における反射面11Sの傾斜角θをより多彩に制御することが可能となる。言い換えれば、反射面11Sの傾斜各θを、より多くの値に制御することができる。その結果、こうした構成によれば、表示体10により表示される画像の階調の多層化を図ることができる。
・上記各実施の形態では、表示体10,20,30,40における表示領域群ごとの反射方向を連続的に変化させることにより、反射方向に形成される画像を連続的に変化させるようにした。ただし、表示体10,20,30,40の反射方向に応じた画像の連続的な変化は必ずしも必要ではなく、例えば静止した画像の出現と消滅を繰り返す等、表示体10,20,30,40の反射方向の並びの順に従って、画像が断続的に変化する構成であってもよい。言い換えれば、複数の反射方向のなかで相互に隣り合う2つの反射方向へ形成される画像同士が一定の相関性を有する構成であればよい。
なお、こうした構成は、図15および図16を参照して先に説明したように、第1領域群AS1が表示する第1画像P1と、第2領域群AS2が表示する第2画像P2との双方が二次元画像として視認される画像であって、こうした2つの画像の間で表示する画像を変えることが可能な構成であってもよい。また、2つの画像の間で表示する画像を変えることが可能な構成において、第1画像P1と第2画像P2との少なくとも一方が三次元画像、すなわち、第4の実施の形態、第4の実施の形態の変形例、および、第5の実施の形態において上述された立体像として視認される像であってもよい。また、表示体は、3つ以上の画像を表示することができる表示面を有してもよい。
例えば、第1画像P1と第2画像P2との両方が立体像であるときには、図34を参照して以下に説明する構成でもよい。なお、図34において、図34(a)は、観察者OBが、図16(a)を参照して先に説明した条件と同じ条件にて表示体60を観察したときに、表示体60が表示する画像を示す図である。これに対して、図34(b)は、観察者OBが、図16(b)を参照して先に説明した条件と同じ条件にて表示体60を観察したときに、表示体60が表示する画像を示す図である。
すなわち、図34(a)が示すように、表示体60は、第1画像P1として立体像を表示することができる。第1画像P1は、本変形例においてバナナを立体的に示す像であるが、他の物体を立体的に示す像であってもよい。
これに対して、図34(b)が示すように、図34(a)とは異なる条件にて観察者OBが表示体60を観察するときには、表示体60は、第1画像P1とは異なる第2画像P2として立体像を表示することができる。第2画像P2は、本変形例においてレモンを立体的に示す像であるが、第1画像P1と異なる像であれば、他の物体を立体的に示す像であってもよい。また、第1画像P1と第2画像P2とは、相互に同じ像であってもよい。
なお、上述したように、第1画像P1を表示するための反射面における方位角Φの範囲と、第2画像P2を表示するための反射面における方位角Φの範囲とが、相互に異なることによって、表示体60は、観察者OBが表示体60を観察する条件に応じて、第1画像P1と第2画像P2とを個別に表示することができる。例えば、第1画像P1を表示するための反射面における方位角Φの範囲は、0°以上90°以下であり、第2画像P2を表示するための反射面における方位角Φの範囲は、100°以上180°以下である。
また、こうした表示体60では、第1画像P1を表示するための反射面における方位角Φの範囲の大きさと、第2画像P2を表示するための反射面における方位角Φの範囲の大きさとを異ならせることによって、第1画像P1における明度の範囲と、第2画像P2における明度の範囲とを異ならせることができる。例えば、第1画像P1を表示するための反射面における方位角Φの範囲の大きさを10°に設定する一方で、第2画像P2を表示するための反射面における方位角Φの範囲の大きさを80°に設定することができる。これにより、第1画像P1における明度の範囲と、第2画像P2との明度の範囲とが相互に等しい表示体と比べて、第1画像P1と第2画像P2との間での画像の変化を観察者が認識しやすくなる。
また例えば、第1画像P1が二次元画像である一方で、第2画像P2が三次元画像であるときには、図35を参照して以下に説明する構成でもよい。なお、図35において、図35(a)は、観察者OBが、図16(a)を参照して先に説明した条件と同じ条件にて表示体70を観察したときに、表示体70が表示する画像を示す図である。これに対して、図35(b)は、観察者OBが、図16(b)を参照して先に説明した条件と同じ条件にて表示体70を観察したときに、表示体70が表示する画像を示す図である。
すなわち、図35(a)が示すように、表示体70は、第1画像P1として二次元的な画像であって、画像の全体において明度が等しい画像を表示することができる。本変形例において、第1画像P1は文字列の一例であって、アルファベットの「ABC」を表現する画像である。なお、第1画像P1は、二次元的な画像を表示することが可能であれば、他の文字を表現する形状を有してもよいし、数字、記号、図形、および、絵柄のいずれかを表現する形状を有してもよい。
これに対して、図35(b)が示すように、表示体70は、第2画像P2として立体像を表示することができる。本変形例において、第2画像P2はレモンを立体的に示す像であるが、立体像であれば他の物体の立体像であってもよい。
このように、二次元的な画像である第1画像P1と三次元的な画像である第2画像P2とを表示することが可能な表示体70によれば、明度が一様である第1画像P1によって第2画像P2に比べて視認性の高い画像を表示することができる。また、表示体70は第2画像P2を表示することができるため、明度が一様な画像のみを表示する構成と比べて、意匠性が高められる。
なお、図35を参照して先に説明した例のように、第1画像P1が文字列であり、第2画像P2が絵柄である場合のように、2つの画像における属性が異なる、言い換えれば各画像が相互に異なるカテゴリに属するときには、観察者OBが、第1画像P1と第2画像P2との間での画像の変化に気付きやすくなる。
・上記各実施の形態において、各画素11A(21A,31A)が複数の傾斜面を有する構成としてもよい。この場合、図36(a)が示すように、各々の傾斜面11Sα,11Sβと表示面10Sとが形成する角度である傾斜角θα,θβが相互に異なる構成としてもよい。または、図36(b)が示すように、各々の傾斜面11Sα,11Sαと表示面10Sとが形成する角度である傾斜角θα,θβが相互に等しい構成としてもよい。これらの構成のうち、図36(a)に示す例では、相対的に小さい傾斜角θαを有する傾斜面11Sαが、反射方向に画像を形成する反射面として機能する。あるいは、相対的に大きい傾斜角θβを有する傾斜面11Sβが、反射方向に画像を形成する反射面として機能する。その一方で、図36(b)に示す例では、傾斜角θα,θβが相互に等しい傾斜面11Sα,11Sβのうち何れか一方の傾斜面が、反射方向に画像を形成する反射面として機能する。