WO2017208896A1 - 表示装置 - Google Patents

Abstract

バックライト光の利用効率を向上させることによって、前面側に透過する光の光量を増加させるとともに、背面側の眩しさを抑制することによって視聴者が感じるストレスを緩和することが可能な表示装置を提供する。　導光板２０から表示面側に出射された第１偏光波だけでなく、裏面側に出射された第１偏光波および第２偏光波から散乱モードの高分子分散型液晶素子６０によって変換された光に含まれる第１偏光波も、液晶パネル３０によって第２偏光波に変換され前面側に透過する。これにより、導光板２０から出射された光の利用効率が向上する。また、導光板２０から裏面側に出射された第１偏光波および第２偏光波の一部が反射型偏光板５３によって表示面側に反射されるので、背面側に透過する第１偏光波の光量が少なくなる。

Description

表示装置

　本発明は、表示装置に関し、特に、背景が透けて見えるシースルーディスプレイとしても機能する表示装置に関する。

　近年、外部から与えられた画像信号に基づく画像を表示するだけでなく、前面側から背面側を視認することが可能なディスプレイ（以下、「シースルーディスプレイ」と呼ぶ場合がある）としても機能する表示装置の開発が活発に進められている。このようなシースルーディスプレイには、液晶パネルを用いる方式、透明な有機ＥＬ（Organic Light-Emitting Diode）と透明金属であるＩＴＯ（Indium Tin Oxide：酸化インジウム錫）薄膜とを組み合わせる方式、プロジェクタ方式などの様々な方式がある。

　特許文献１に記載された液晶表示装置モジュールは、コレステリック液晶の反射および透過特性を利用したシースルーディスプレイである。この液晶表示装置モジュールは、液晶パネルの側面に配置したバックライトユニットから光を直接入射させて画像を表示することにより、画像の視認性を向上させると共に、シースルーディスプレイとして使用したときの液晶パネルの透明度を改善する。

　また、特許文献２に記載された表示装置では、２つの液晶セルの間にそれらにバックライト光を照射するバックライトユニットが配置され、当該バックライトユニットの両面にそれぞれ反射型偏光板が貼り付けられている。これにより、表示装置は、２つの液晶セルに明るい画像を表示することができる。また、１つのバックライトユニットで２つの液晶パネルを同時に照射するので、バックライトユニットの個数を減らすことができ、消費電力の低減が可能になる。

日本の特開２０１３－２０２５６号公報 日本の特開２００４－１９９０２７号公報

　しかし、例えば液晶パネルを用いる方式のシースルーディスプレイでは、背面側を視認しやすくするために、表示装置内に透明度の高い光学部材を配置する必要がある。このような光学部材を配置すると、背面側に透過する光が多くなるので、導光板から出射される光のうち前面側に透過する光が少なくなる。このため、導光板から出射される光の利用効率が低下する。また、導光板から光を取り出す方法にもよるが、表示装置の裏面から背面側に出射される光は導光板に対して特定の角度方向にピークを有する場合が多い。このため、背面側にいる視聴者が当該特定の角度方向から表示装置の裏面を視認したときに、最も明るい光が目に入り、視聴者はストレスを感じやすくなる。

　特許文献１に記載の液晶表示装置モジュールでは、液晶パネルの前面側および背面側に出射される光量は等しく、しかも背面側に出射された光を再利用することはできない。このため、バックライトユニットから液晶パネルに入射した光の利用効率が低下する。また、特許文献２に記載の表示装置では、導光板の両面の反射型偏光板は、反射軸が互いに直交するように貼り付けられている。このため、当該表示装置は、前面側から背面側を視認することが可能なシースルーディスプレイとして使用することができない。

　そこで、本発明は、バックライト光の利用効率を向上させることによって、前面側に透過する光の光量を増加させるとともに、背面側の眩しさを抑制することによって視聴者が感じるストレスを緩和することが可能な表示装置を提供することを目的とする。

　第１の局面は、画像信号に基づく画像を表示すると共に、シースルーディスプレイとしても機能するディスプレイを備えた表示装置であって、
　前記ディスプレイは、
　　第１偏光波および前記第１偏光波の偏光軸と直交する偏光軸を有する第２偏光波を含む光を射出する光源と、
　　前記光源からの光を前記ディスプレイの表示面側および裏面側に向けて出射する導光板と、
　　前記導光板の裏面に配置され、入射する偏光波の偏光状態を変換することなく出力する透過モードと、前記第１偏光波と前記第２偏光波の割合が１対１に近づくように変換して出力する散乱モードとを有する光散乱切替素子と、
　　前記光散乱切替素子の裏面に配置された反射型偏光板と、
　　前記導光板から前面側に向かって順に配置された第１偏光板と、偏光変調素子と、第２偏光板とを備え、
　　偏光変調素子は、電圧を印加可能な複数の画素を含み、前記電圧によって前記画素に入射する前記第１偏光波または前記第２偏光波の偏光状態を制御して出力し、
　　前記反射型偏光板および前記第１偏光板は、前記第１偏光波および前記第２偏光波のうちいずれか一方の偏光波を透過し、前記第２偏光板は他方の偏光波を透過することを特徴とする。

　第２の局面は、第１の局面において、
　前記第１偏光板および前記第２偏光板は、いずれも吸収型偏光板であることを特徴とする。

　第３の局面は、第１の局面において、
　前記第１偏光板は吸収型偏光板であり、前記第２偏光板は反射型偏光板であることを特徴とする。

　第４の局面は、第１の局面において、
　前記第１偏光板は反射型偏光板であり、前記第２偏光板は吸収型偏光板であることを特徴とする。

　第５の局面は、第２から第４のいずれかの局面において、
　前記偏光変調素子は液晶パネルであることを特徴とする。

　第６の局面は、第５の局面において、
　前記液晶パネルはノーマリホワイト型のパネルであることを特徴とする。

　第７の局面は、第５の局面において、
　前記液晶パネルは，ねじれネマティック方式のパネルであることを特徴とする。

　第８の局面は、第１の局面において、
　前記偏光変調素子と前記第２偏光板との間に配置されたカラーフィルタをさらに備えることを特徴とする。

　第９の局面は、第１の局面において、
　前記光源は、少なくとも白色の表現が可能な色の光を発する複数種類の発光体を含み、前記複数種類の発光体を時分割して順に発光させることを特徴とする。

　第１０の局面は、第１の局面において、
　前記光散乱切替素子は、電界をオンしたときに前記散乱モードとなり、前記電界をオフしたときに前記透過モードになることを特徴とする。

　第１１の局面は、第１０の局面において、
　前記光散乱切替素子は、液晶層と、前記液晶層内に形成された高分子ネットワークと、表面に電極が形成された封止部材とを備え、前記液晶層と前記高分子ネットワークとを前記封止部材によって挟んだ構造の高分子分散型液晶素子であることを特徴とする。

　第１２の局面は、第１１の局面において、
　前記光散乱切替素子の前記封止部材は、等方性フィルムシートまたは等方性ガラス板のいずれかであることを特徴とする。

　第１の局面によれば、導光板から表示面側に出射されたいずれか一方の偏光波だけでなく、裏面側に出射された第１偏光波および第２偏光波から散乱モードの光散乱切替素子によって変換された光に含まれるいずれか一方の偏光波も、偏光変調素子によって他方の偏光波に変換されて前面側に透過する。これにより、導光板から出射された光の利用効率が向上し、画面が明るくなる。また、導光板から裏面側に出射された第１偏光波および第２偏光波の一部が反射型偏光板によって表示面側に反射されるので、背面側に透過する一方の偏光波の光量が少なくなる。これにより、背面側にいる視聴者が感じる眩しさによるストレスが緩和される。

　第２の局面によれば、第１の発明の場合と同様に、光の利用効率を向上させることができるとともに、背面側に透過する偏光波の光量を少なくすることができる。また、ディスプレイをシースルーディスプレイとして使用する際に、前面側または背面側に透過する偏光波の光量が少なくなるので、視聴者が視認する画面の明るさは暗くなる、しかし、導光板の濁度が小さくなるので、視聴者はぼやけることなくくっきりと表示された背景を視認することができる。

　第３の局面によれば、第１の発明の場合と同様の効果が得られる。また、ディスプレイをシースルーディスプレイとして使用すれば、第２の発明と同様の効果が得られる。さらに、ディスプレイの表面に配置された反射型偏光板は前面側から入射した第１偏光波を反射するミラーとして機能するので、デザイン性に優れたディスプレイを実現することができる。

　第４の局面によれば、第１の発明の場合と同様の効果が得られる。また、ディスプレイをシースルーディスプレイとして使用すれば、第２の発明と同様の効果が得られる。

　第５の局面によれば、偏光変調素子は液晶パネルであるため、入射した光の偏光状態の制御を容易に行うことができる。

　第６の局面によれば、偏光変調素子はノーマリホワイト型の液晶パネルであるため、液晶パネルの電源がオフ状態のときにはシースルーディスプレイとして機能し、視聴者は背面側の状態や前面側の状態を視認することができる。

　第７の局面によれば、偏光変調素子である液晶パネルは、ねじれネマティック方式であるため、第１偏光波と第２偏光波との間の変換を容易に行うことができる。

　第８の局面によれば、偏光変調素子と第２偏光板との間にカラーフィルタを設けることにより、背面側または前面側から透過した光や導光板から前面側に出射された光はカラーフィルタを透過する。このため、前面側にいる視聴者は、カラー画像を視認したり、背面側または前面側の状態をカラーで視認したりできる。

　第９の局面によれば、少なくとも白色の表現が可能な色の光を時分割して順に偏光変調素子に照射することにより、前面側にいる視聴者は、カラー画像を視認したり、背面側の状態をカラーで視認したりできる。さらに、カラーフィルタを設ける必要がないので、カラーフィルタによる光の吸収がなく、画像や背面の状態をより高い輝度で表示できる。

　第１０の局面によれば、電界オフ時に透過モードになるリバースモード型の光散乱切替素子を使用すれば、ディスプレイの電源をオフした状態で、シースルーディスプレイとして機能させることができる。これにより、シースルーディスプレイとして機能しているときのディスプレイの消費電力を低減することができる。

　第１１の局面によれば、光散乱切替素子は、液晶層と前記液晶層内に形成された高分子ネットワークとを封止部材によって挟んだ構造の高分子分散型液晶素子であるので、透過モードと散乱モードの切り替えを容易に行うことができる。

　第１２の局面によれば、光散乱切替素子の封止部材として、等方性フィルムシートまたは等方性ガラス板を使用し、封止部材で複屈折が生じないようにする。これにより、光散乱切替素子を透過する透過光の光量の減少を防ぐことができるので、光の利用効率が向上し、画面の明るさが明るくなる。

第１の基礎検討で使用したディスプレイにおいて、背面側から入射した光が前面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 図１に示すディスプレイにおいて、前面側から入射した光が背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 図１に示すディスプレイにおいて、光源が点灯しているときに導光板から出射された光が前面側と背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 第２の基礎検討で使用したディスプレイにおいて、背面側から入射した光が前面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 図４に示すディスプレイにおいて、前面側から入射した光が背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 図４に示すディスプレイにおいて、光源が点灯しているときに導光板から出射された光が前面側と背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 導光板の濁度と、背景の見え方または画面の明るさとの関係を示す図であり、より詳しくは、（Ａ）は濁度が大きい場合の背景の見え方または画面の明るさとの関係を示す図であり、（Ｂ）は濁度が小さい場合の背景の見え方と画面の明るさを示す図ある。 第１の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。 第１の実施形態に係る液晶表示装置に含まれるディスプレイの構成を示す断面図である。 第１偏光波と第２偏光波の割合を調整する高分子分散型液晶素子の構成を示す断面図であり、より詳しくは、（Ａ）は、電界をオンすることによって透過モードになった高分子分散型液晶素子の断面図であり、（Ｂ）は、電界をオフすることによって散乱モードになった高分子分散型液晶素子の断面図である。 図９に示すディスプレイにおいて、背面側から入射した光が前面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 図９に示すディスプレイにおいて、前面側から入射した光が背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 図９に示すディスプレイにおいて、光源が点灯しているときに導光板から出射された光が前面側と背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 第１の基礎検討で使用したディスプレイにおける光線軌跡と各光線軌跡の光量を示す図である。 第２の基礎検討で使用したディスプレイにおける光線軌跡と各光線軌跡の光量を示す図である。 第１の本実施形態のディスプレイにおける光線軌跡と光量との関係を示す図である。 第１の実施形態の効果を第１および第２基礎検討の場合と比較してまとめた図である。 第２の実施形態のディスプレイにおいて、背面側から入射した光が前面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 第２の実施形態のディスプレイにおいて、前面側から入射した光が背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 第２のディスプレイにおいて、光源が点灯しているときに導光板から出射された光が前面側と背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。 第３の実施形態のディスプレイにおいて、導光板から出射された第１および第２偏光波の光線軌跡と各光線軌跡の光量を時系列で表す図である。 第３の実施形態のディスプレイにおいて、導光板から出射された第１および第２偏光波の光線軌跡と各光線軌跡の光量を、図２１から続く時系列で表す図である。 第３の実施形態のディスプレイにおいて、導光板から出射された第１および第２偏光波の光線軌跡と各光線軌跡の光量を、図２２から続く時系列で表す図である。 第３の実施形態の効果を第１および第２基礎検討の場合と比較してまとめた図である。 第５の実施形態において、高分子分散型液晶素子の封止部材として複屈折性を示すフィルムまたはガラス板が使用され、光源が点灯されない状態で、背面側から前面側に透過する光の光線軌跡を説明するための図である。 第５の実施形態において、高分子分散型液晶素子の封止部材として複屈折性を示すフィルムまたはガラス板が使用され、光源が点灯された状態で、導光板から出射された光の光線軌跡を説明するための図である。 カラーで画像や背景を表示するカラーフィルタ方式のディスプレイの構成を示す断面図である。

＜１．基礎検討＞
　各実施形態について説明する前に、シースルーディスプレイとして機能する従来の液晶表示装置が有している問題点を明らかにするために発明者が行った第１および第２の基礎検討について説明する。

＜１．１　第１の基礎検討＞
　図１は、第１の基礎検討で使用したディスプレイ１１において、背面側から入射した光が前面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。図１に示すように、ディスプレイ１１では、前面側から背面側に向かって、第２吸収型偏光板４２、液晶パネル３０、第１吸収型偏光板４１、および導光板２０が配置されている。なお、液晶パネル３０は、ＴＮ（Twisted Nematic（ねじれネマティック））方式で駆動される、ノーマリホワイト型のパネルであるとする。

　液晶パネル３０は、ＴＮ方式で駆動されるため、液晶パネル３０の各画素は、画像信号ＤＶに応じた信号電圧が書き込まれていない状態または０Ｖの信号電圧が書き込まれている状態のいずれかである非駆動状態（オフ状態）のときに入射した偏光波の偏光軸を９０度回転させて出力する。最大の信号電圧が書き込まれる駆動状態（オン状態）になると、偏光波の偏光軸を回転させることなくそのまま出力する。また、書き込まれた信号電圧の電圧値が両者の中間値である場合には、偏光軸が９０度回転された偏光波と、偏光軸が回転されない偏光波とがその電圧値に応じた割合で出力される。

　ディスプレイ１１では、液晶パネル３０の裏面側に第１吸収型偏光板４１が配置され、表示面側に、第１吸収型偏光板４１の透過軸と直交する透過軸を有する第２吸収型偏光板４２が配置されている。このため、オフ状態の画素に入射した第１偏光波は、画素を透過することによって偏光軸を回転されて第２偏光波となり、第２吸収型偏光板４２を透過して前面側に抜ける。一方、オン状態の画素に入射した第１偏光波はそのまま出力され、第２吸収型偏光板４２に吸収される。なお、本願の光線軌跡を表す各図において、吸収型偏光板に吸収される偏光波には、その進行方向を示す矢印の先端に「×」が付されている。

　図１を参照して、導光板２０に取り付けられた光源２５が消灯（オフ）され、液晶パネル３０が駆動状態のときに、背面側から入射した光の光線軌跡を説明する。導光板２０の端部には、例えばＬＥＤ（Light Emitting Device）などの光源２５が取り付けられているが、図１では光源２５は消灯されている。

　図１に示すように、背面側から入射した光に含まれる第１偏光波および第２偏光波は、導光板２０を透過して第１吸収型偏光板４１に入射する。第１偏光波は第１吸収型偏光板４１を透過し、第２偏光波は吸収される。第１吸収型偏光板４１を透過した第１偏光波は、液晶パネル３０に入射する。液晶パネル３０はＴＮ方式であるので、液晶パネル３０に入射した第１偏光波のうちオフ状態の画素に入射した第１偏光波は、液晶パネル３０によって偏光軸を回転されることにより第２偏光波に変換されて出射される。オン状態の画素に入射した第１偏光波は偏光軸を回転されることなく第１偏光波のまま出射される。液晶パネル３０から出射された第２偏光波は第２吸収型偏光板４２を透過し、第１偏光波は第２吸収型偏光板４２に吸収される。これにより、オフ状態の画素を透過した第２偏光波だけが前面側に透過する。その結果、前面側にいる視聴者はオフ状態の画素に対応する位置に背面側の状態が表示され、オン状態の画素に対応する位置に黒表示された画面を視認することができる。

　図２は、図１に示すディスプレイ１１において、前面側から入射した光が背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。図２を参照して、導光板２０の端部に取り付けられた光源２５が消灯され、液晶パネル３０が駆動状態のときに、前面側から光が入射したときの光線軌跡を説明する。図２に示すように、前面側から第２吸収型偏光板４２に入射した光のうち第１偏光波は第２吸収型偏光板４２に吸収され、第２偏光波は第２吸収型偏光板４２を透過して液晶パネル３０に入射する。液晶パネル３０に入射した第２偏光波のうち、オン状態の画素に入射した第２偏光波は液晶パネル３０によって偏光軸を回転されることなく第２偏光波のまま出射される。オフ状態の画素に入射した第２偏光波は偏光軸を回転されることにより第１偏光波に変換されて出射される。これらの偏光波は第１吸収型偏光板４１に入射し、第１偏光波は第１吸収型偏光板４１を透過し、第２偏光波は第１吸収型偏光板４１に吸収される。第１偏光波は導光板２０を透過して背面側に抜ける。その結果、背面側にいる視聴者はオフ状態の画素に対応する位置に前面側の状態が表示され、オン状態の画素に対応する位置に黒表示された状態を視認することができる。このように、図１および図２に示す光線軌跡から、ディスプレイ１１はシースルーディスプレイとして機能することがわかる。

　図３は、図１に示すディスプレイ１１において、光源２５が点灯しているときに導光板２０から出射された光が前面側と背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。図３を参照して、導光板２０に取り付けられた光源２５が点灯（オン）され、液晶パネル３０が駆動状態のときに、光源２５から出射された光の光線軌跡を説明する。光源２５から出射された光は、第１偏光波と第２偏光波を含み、導光板２０に入射すると、導光板２０の内部を全反射しながら進み、導光板２０からディスプレイ１１の表示面側および背面側に出射される。図３に示すように、導光板２０から背面側に出射された第１偏光波および第２偏光波はそのまま背面側に透過する。このため、背面側にいる視聴者はディスプレイ１１を見ると眩しく感じる。

　表示面側に出射された第１偏光波および第２偏光波は第１吸収型偏光板４１に入射する。これらの偏光波が第１吸収型偏光板４１に入射してから、第２偏光波だけが前面側に透過するまでの光線軌跡は図１に示す場合と同じであるので、その説明を省略する。この結果、前面側にいる視聴者はオフ状態の画素に対応する位置に発光状態が表示され、オン状態の画素に対応する位置に黒表示された画面を視認することができる。

　第１の基礎検討によれば、光源２５を点灯させたとき、導光板２０から表示面側に出射された光に含まれる第１偏光波は、画面の明るさに寄与するが、第２偏光波は第１吸収型偏光板４１に吸収され、画面の明るさに寄与しない。また、導光板２０から背面側に出射された第１および第２偏光波はいずれも画面の明るさに寄与しない。このように、光源２５から出射された光のうちの多くは表示面の明るさに寄与しないので、光の利用効率が低いという問題点がある。さらに、導光板２０から背面側に出射された光は、ディスプレイ１１の構造にもよるが、導光板２０に対して特定の角度方向に明るさのピークを有する場合が多い。この場合、視聴者が当該角度方向からディスプレイ１１の裏面を見れば、明るさが最も明るくなる方向なので、視聴者は眩しさのためにストレスを感じやすくなるという問題点も有する。

＜１．２　第２の基礎検討＞
　図４は、第２の基礎検討で使用したディスプレイ１２において、背面側から入射した光が前面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。図４に示すように、ディスプレイ１２では、前面側から背面側に向かって、第２吸収型偏光板４２、液晶パネル３０、第１吸収型偏光板４１、第２反射型偏光板５２、導光板２０、および第１反射型偏光板５１が配置されている。液晶パネル３０は、ＴＮ方式で駆動される、ノーマリホワイト型のパネルであるとする。このように、ディスプレイ１２には、図１に示すディスプレイ１１において、導光板２０を挟み、透過軸が第１吸収型偏光板４１の透過軸と同じ方向の２枚の第１および第２反射型偏光板５１、５２が追加されている。この場合、第１および第２反射型偏光板５１、５２は、第１偏光波を透過し、第２偏光波を反射する。

　図４を参照して、導光板２０の端部に取り付けられた光源２５が消灯され、液晶パネル３０が駆動状態において、背面側から入射した光の光線軌跡を説明する。背面側から第１反射型偏光板５１に入射した第２偏光波は、第１反射型偏光板５１によって反射され、背面側に戻される。

　第１および第２反射型偏光板５１、５２の透過軸は第１吸収型偏光板４１の透過軸と同じ方向であるので、背面側から入射した第１偏光波は、第１反射型偏光板５１、導光板２０、第２反射型偏光板５２、第１吸収型偏光板４１を順に透過し、液晶パネル３０に入射する。液晶パネル３０に入射した第１偏光波の光線軌跡は、第１の基礎検討において説明した図１の場合と同じであるので、その説明を省略する。これにより、オフ状態の画素を透過した第１偏光波だけが第２偏光波に変換されて前面側に透過する。その結果、前面側にいる視聴者は　オフ状態の画素に対応する位置に背面側の状態が表示され、オン状態の画素に対応する位置に黒表示された画面を視認することができる。

　図５は、図４に示すディスプレイ１２において、前面側から入射した光が背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。図５を参照して、導光板２０の端部に取り付けられた光源２５が消灯され、液晶パネル３０が駆動状態において、前面側から入射した光の光線軌跡を説明する。図５に示すように、前面側から第２吸収型偏光板４２に入射した第１偏光波は、第２吸収型偏光板４２によって吸収され、第２偏光波は第２吸収型偏光板４２を透過して液晶パネル３０に入射する。液晶パネル３０に入射した第２偏光波の光線軌跡は、第１の基礎検討において説明した図２の場合と同じであるので、その説明を省略する。これにより、液晶パネル３０から第１偏光波と第２偏光波が出射され、第１吸収型偏光板４１に入射する。第１偏光波は第１吸収型偏光板４１を透過して第２反射型偏光板５２に入射し、第２偏光波は第１吸収型偏光板４１に吸収される。

　第２反射型偏光板５２および第１反射型偏光板５１の透過軸は、第１吸収型偏光板４１の透過軸と同じ方向であるので、第１偏光波は、第２反射型偏光板５２、導光板２０、第１反射型偏光板５１を順に透過して背面側に抜ける。その結果、背面側にいる視聴者はオフ状態の画素に対応する位置に前面側の状態が表示され、オン状態の画素に対応する位置に黒表示された画面を視認することができる。このように、図４および図５に示す光線軌跡から、ディスプレイ１２もシースルーディスプレイとして機能することがわかる。

　図６は、図４に示すディスプレイ１２において、光源２５が点灯しているときに導光板２０から出射された光が前面側と背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。図６を参照して、導光板２０の端部に取り付けられた光源２５が点灯され、液晶パネル３０が駆動状態において、導光板２０から表示面側と裏面側に出射された光の光線軌跡を説明する。

　図６を参照して、導光板２０から裏面側に出射された第１偏光波は、第１反射型偏光板５１を透過して背面側に透過する。一方、表示面側に出射された第１偏光波は、第２反射型偏光板５２を透過して第１吸収型偏光板４１に入射する。第１吸収型偏光板４１に入射した第１偏光波が、第２吸収型偏光板４２を透過して前面側に透過するまでの光線軌跡は、図３に示す光線軌跡と同じであるので、その説明を省略する。これにより、オフ状態の画素を透過した第１偏光波は、液晶パネル３０によって第２偏光波に変換され、第２吸収型偏光板４２を透過して前面側に抜ける。オン状態の画素を透過した第１偏光波は、第１偏光波のまま第２吸収型偏光板４２に入射し吸収される。

　導光板２０から裏面側に出射された第２偏光波は、第１反射型偏光板５１によって反射され、導光板２０に入射する。導光板２０に入射した第２偏光波は、導光板２０内の偏光散乱要素を通過することによって第２偏光波に乱れが生じ、第１偏光波と第２偏光波の合成波になり、第２反射型偏光板５２に向けて出射される。合成波に含まれる第１偏光波は第２反射型偏光板５２を透過し、第１吸収型偏光板４１に入射する。第１吸収型偏光板４１に入射してから前面側に透過するまでの光線軌跡は、図３に示す導光板２０から表示面側に出射された第１偏光波の光線軌跡と同じであるので、その説明を省略する。

　合成波に含まれる第２偏光波は、第２反射型偏光板５２によって反射され、導光板２０に入射する。導光板２０に入射した第２偏光波は、導光板２０内の偏光散乱要素を再び通過することによって、第１偏光波と第２偏光波を含む合成波が生成され、第１反射型偏光板５１に向けて出射される。合成波に含まれる第１偏光波は第１反射型偏光板５１を透過して背面側に抜ける。一方、第２偏光波は、第１反射型偏光板５１によって反射され導光板２０に入射する。このようにして、第１または第２反射型偏光板５１、５２によって反射された第２偏光波は、導光板２０内の偏光散乱要素を通過することによって、第１偏光波と第２偏光波を含む合成波が生成されることを繰り返す。なお、導光板２０から表示面側に出射された第２偏光波の光線軌跡も、上述の裏面側に出射された第２偏光波の場合と実質的に同じであるので、その説明を省略する。

　このように、導光板２０から表示面側に出射された第１偏光波、および、導光板２０から裏面側または表示面側に出射された第２偏光波から生成された合成波に含まれる第１偏光波は、液晶パネル３０のオフ状態の画素を入射することによって第２偏光波に変換されて第２吸収型偏光板４２を透過し、前面側に抜ける。これにより、液晶パネル３０のオフ状態の画素に対応する位置には発光状態が表示される。また、オン状態の画素に入射した第１偏光波は第１偏光波のまま出射されるので、第２吸収型偏光板４２に吸収される。これにより、オン状態の画素に対応する位置には黒表示がされる。

　第２の基礎検討によれば、導光板２０から表示面側に出射された第１偏光波だけでなく、表示面側および裏面側に出射された第２偏光波も導光板２０内の偏光散乱要素を通過することによって乱れが生じる。これにより、第２偏光波から第１偏光波と第２偏光波を含む合成波が生成され、合成波に含まれる第１偏光波も前面側に透過する。この場合、光の利用効率をさらに向上させるためには、偏光散乱要素を多くして合成波に含まれる第１偏光波の割合を多くする必要がある。理想的な光利用効率にするためには、第２偏光波から導光板２０内で生成された合成波に含まれる第１偏光波と第２偏光波の割合が次式（１）を満たすようにすることが好ましい。
　　　第１偏光波：第２偏光波＝１：１　…　（１）

　式（１）を満たす偏光散乱要素を多く含む導光板２０を使用すれば、第２偏光波の利用効率が向上するので、前面側に透過する第２偏光波の光量が多くなり、その結果画面が明るくなる。しかし、導光板２０の透明度を表す濁度（ヘイズ（haze））も大きくなる。濁度が大きくなると、ディスプレイ１２の前面側から背面側を視認したときに、画面全体が白濁し背景がぼやけて見えにくくなるという問題が生じる。

　一方、偏光散乱要素を少なくすれば濁度が小さくなるので、画面の白濁が少なくなり、背景がより見やすくなる。しかし、第２偏光波から生成した合成波に含まれる第１偏光波の割合が少なくなるので、第２偏光波の利用効率を向上させることができない。また、第１の基礎検討と比較して、背面側に透過する第１偏光波の光量が増加するので、視聴者がディスプレイ１２を背面側から視認すればより眩しく感じるという問題も解決されていない。

　図７は、導光板２０の濁度と、背景の見え方または画面の明るさとの関係を示す図であり、より詳しくは、図７（Ａ）は濁度が大きい場合の背景の見え方と画面の明るさとの関係を示す図であり、図７（Ｂ）は濁度が小さい場合の背景の見え方と画面の明るさを示す図ある。濁度が大きい場合には、図７（Ａ）に示すように、画面は明るくなるが、背景はぼやけて見える。しかし、濁度が小さくなると、図７（Ｂ）に示すように、背景はくっきり見えるようになるが、画面の明るさは暗くなる。

＜２．第１の実施形態＞
　図８は、第１の実施形態に係る液晶表示装置１１０の構成を示すブロック図である。

＜２．１　表示装置の構成と動作＞
　本発明では、以下の各実施形態において詳細に説明するディスプレイを備える液晶表示装置１１０は公知のものを使用する。そこで、液晶表示装置１１０の構成について簡単に説明する。

　図８は、後述するディスプレイ１５を備えた液晶表示装置１１０の構成を示すブロック図である。図８に示すように、液晶表示装置１１０は、ディスプレイ１５、表示制御回路１１２、走査信号線駆動回路１１３、および、データ信号線駆動回路１１４を備えたアクティブマトリクス型の表示装置である。このディスプレイ１５は、液晶パネル３０だけでなく、光源が取り付けられた導光板、各種の偏光板などを含むが、これらの図示は省略する。

　ディスプレイ１５に含まれる液晶パネル３０は、ｎ本の走査信号線Ｇ１～Ｇｎ、ｍ本のデータ信号線Ｓ１～Ｓｍ、および、（ｍ×ｎ）個の画素Ｐｉｊを含んでいる（ただし、ｍは２以上の整数、ｊは１以上ｍ以下の整数）。走査信号線Ｇ１～Ｇｎは互いに平行に配置され、データ信号線Ｓ１～Ｓｍは走査信号線Ｇ１～Ｇｎと直交するように互いに平行に配置される。走査信号線Ｇｉとデータ信号線Ｓｊの交点近傍には、画素Ｐｉｊが配置される。このように（ｍ×ｎ）個の画素Ｐｉｊは、行方向にｍ個ずつ、列方向にｎ個ずつ、２次元状に配置される。走査信号線Ｇｉはｉ行目に配置された画素Ｐｉｊに共通して接続され、データ信号線Ｓｊはｊ列目に配置された画素Ｐｉｊに共通して接続される。

　液晶表示装置１１０の外部からは、水平同期信号ＨＳＹＮＣ、垂直同期信号ＶＳＹＮＣなどの制御信号ＳＣと画像信号ＤＶが供給される。表示制御回路１１２は、これらの信号に基づき、走査信号線駆動回路１１３に対してクロック信号ＣＫと、スタートパルスＳＴを出力し、データ信号線駆動回路１１４に対して制御信号ＳＣと画像信号ＤＶを出力する。

　走査信号線駆動回路１１３は、ハイレベルの出力信号を１つずつ順に走査信号線Ｇ１～Ｇｎに与える。これにより、走査信号線Ｇ１～Ｇｎが１本ずつ順に選択され、１行分の画素Ｐｉｊが一括して選択される。データ信号線駆動回路１１４は、制御信号ＳＣと画像信号ＤＶに基づき、データ信号線Ｓ１～Ｓｍに対して画像信号ＤＶに応じた信号電圧を印加する。これにより、選択された１行分の画素Ｐｉｊに画像信号ＤＶに応じた信号電圧が書き込まれる。このようにして、液晶表示装置１１０は液晶パネル３０に画像を表示する。

＜２．２　ディスプレイの構成＞
　図９は、第１の実施形態に係る液晶表示装置１１０に含まれるディスプレイ１５の構成を示す断面図である。図９に示すように、ディスプレイ１５では、前面側から背面側に向かって配置された、第２吸収型偏光板４２、液晶パネル３０、第１吸収型偏光板４１、導光板２０、リバースモード型の高分子分散型液晶素子６０、および反射型偏光板５３が順に配置されている。このように、ディスプレイ１５は、図１に示すディスプレイ１１において、導光板２０の裏面側に、リバースモード型の高分子分散型液晶素子６０および反射型偏光板５３がさらに配置されている。

　導光板２０は、アクリルやポリカーボネートなどの透明樹脂、またはガラスからなり、光源２５から入射した光を前面側および背面側に射出することが可能なように、その表面にドットパターンが形成されていたり、シリカなどの拡散剤が添加されていたりする。導光板２０の側面には光源２５として例えばＬＥＤ（発光体）が取り付けられている。このため、光源２５が点灯されれば、光源２５から出射された光は導光板２０に入射し、導光板２０の表面で全反射を繰り返しながら進み、ドットパターンや拡散剤に入射すると、導光板２０から表示面側または裏面側に出射される。

　高分子分散型液晶素子６０は、第１偏光波、第２偏光波、またはそれらを含む光が入射すれば、１対１に近づくように調整された第１偏光波と第２偏光波を生成して出射する。図１０は、第１偏光波と第２偏光波の割合を調整する高分子分散型液晶素子６０の構成を示す断面図であり、より詳しくは、図１０（Ａ）は、電界をオンすることによって透過モードになった高分子分散型液晶素子６０の断面図であり、図１０（Ｂ）は、電界をオフすることによって散乱モードになった高分子分散型液晶素子６０の断面図である。

　図１０（Ａ）に示すように、高分子分散型液晶素子６０は、透明電極６２が形成された２枚の封止部材６１によって挟まれた空間に、高分子ネットワーク６３と液晶を封止した素子であり、封止部材６１にはガラス板が使用されている。図１０（Ａ）に示すように、透明電極６２に電圧を印加しないことによって電界をオフにしたときに、高分子ネットワーク６３と共に封止された液晶の液晶分子６４が同一方向に整列する。この場合、高分子分散型液晶素子６０に入射した入射光の偏光方向は変換されることなく高分子分散型液晶素子６０を透過する。例えば、入射光が第１偏光波であれば、透過光も第１偏光波のままである。このときの高分子分散型液晶素子６０のモードを「透過モード」と呼ぶ。

　一方、図１０（Ｂ）に示すように、透明電極６２に電圧を印加することによって電界をオンにしたときに、高分子ネットワーク６３と共に封止された液晶分子６４の向きがランダムになる。この場合、高分子分散型液晶素子６０に入射した光は散乱され、散乱光に含まれる第１偏光波と第２偏光波の割合は１対１に近づくように調整される。このときの高分子分散型液晶素子６０のモードを「散乱モード」と呼ぶ。このように、電界オフ時に透過モードになり、電界オン時に散乱モードになるリバースモード型の高分子分散型液晶素子６０としては、リバースモード型高分子ネットワーク／液晶複合膜（ＰＤＬＣ（Polymer Dispersed Liquid Crystal：高分子分散型液晶））などがある。

　本実施形態では、高分子分散型液晶素子６０の散乱モードおよび透過モードは、光源２５の点灯／消灯と同期して切り替わる。具体的には、光源２５を点灯したときには、高分子分散型液晶素子６０は散乱モードになり、光源２５を消灯すれば、高分子分散型液晶素子６０は透過モードに切り替わる。このように、高分子分散型液晶素子６０のモードと、光源２５の点灯／消灯を同期させる。このため、後述するように、光源２５を点灯し、高分子分散型液晶素子６０を散乱モードにすれば、導光板２０から出射された光のうち前面側に透過する光の割合が多くなり、光の利用効率が向上する。

　なお、光源２５が点灯されたときには、高分子分散型液晶素子６０を透過モードにし、光源２５が消灯されれば、高分子分散型液晶素子６０を散乱モードにしても良いが、本明細書ではその説明を省略する。

　また、一般的な高分子分散型液晶素子は、上記高分子分散型液晶素子６０と異なり、電界オン時に透過モードになり、電界オフ時に散乱モードになるノーマル型である。しかし、本発明で使用する高分子分散型液晶素子６０は、上述のように電界オン時に散乱モードになり、電界オフ時に透過モードになるリバースモード型である。これは、液晶表示装置１１０の消費電力を抑制するために、ディスプレイ１５の電源をオフしたときにシースルーディスプレイとなるように設計することが好ましいからである。そこで、以下では、特に断らない限り、高分子分散型液晶素子６０はリバースモード型として説明する。しかし、シースルーディスプレイとして使用する際の消費電力が増加しても良い場合には、ノーマル型の高分子分散型液晶素子を使用することも可能である。

　またディスプレイ１５では、反射型偏光板５３の透過軸と第１吸収型偏光板４１の透過軸は同じ方向であり、第１吸収型偏光板４１の透過軸と第２吸収型偏光板４２の透過軸は互いに直交している。

＜２．３　光線軌跡＞
　図１１は、図９に示すディスプレイ１５において、背面側から入射した光が前面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。図１１に示すように、高分子分散型液晶素子６０は透過モードであり、光源２５は消灯されている。背面側から入射した第２偏光波は、反射型偏光板５３によって背面側に反射される。一方、背面側から入射した第１偏光波は、反射型偏光板５３を透過し、高分子分散型液晶素子６０に入射する。高分子分散型液晶素子６０は透過モードであるので、第１偏光波は変換されることなく第１偏光波のまま透過する。反射型偏光板５３の透過軸と第１吸収型偏光板４１の透過軸とは同じ方向であるので、第１偏光波はさらに導光板２０および第１吸収型偏光板４１を透過して液晶パネル３０に入射する。

　液晶パネル３０に入射した第１偏光波の光線軌跡は、第１の基礎検討において説明した図１の場合と同じであるので、その説明を省略する。これにより、オフ状態の画素を透過した第１偏光波は第２偏光波に変換され、第２偏光波は第２吸収型偏光板４２を透過して前面側に抜ける。オン状態の画素を透過した第１偏光波は変換されることなく第１偏光波のまま出射され、第２吸収型偏光板４２に吸収される。その結果、前面側にいる視聴者はオフ状態の画素に対応する位置に背面側の状態が表示され、オン状態の画素に対応する位置に黒表示された画面を視認することができる。

　図１２は、図９に示すディスプレイ１５において、前面側から入射した光が背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。図１１に示す場合と同様に、図１２の場合も高分子分散型液晶素子６０は透過モードであり、光源２５は消灯されている。前面側から入射した第１偏光波は、第２吸収型偏光板４２に吸収され、第２偏光波は、第２吸収型偏光板４２を透過し液晶パネル３０に入射する。

　液晶パネル３０のオン状態の画素に入射した第１偏光波は変換されることなくそのまま出射され、第１吸収型偏光板４１に吸収される。一方、オフ状態の画素に入射した第２偏光波は第１偏光波に変換され、第１吸収型偏光板４１および導光板２０を透過して高分子分散型液晶素子６０に入射する。高分子分散型液晶素子６０は透過モードであるので、入射した第１偏光波はそのまま透過し、反射型偏光板５３に入射する。反射型偏光板５３の透過軸は、第１吸収型偏光板４１の透過軸と同じ方向であるので、第１偏光波は、反射型偏光板５３を透過して背面側に抜ける。その結果、背面側にいる視聴者は、オフ状態の画素に対応する位置に前面側の状態が表示され、オン状態の画素に対応する位置に黒表示された画面を視認することができる。このように、図１１および図１２に示す光線軌跡から、ディスプレイ１５はシースルーディスプレイとして機能することがわかる。

　図１３は、図９に示すディスプレイ１５において、光源２５が点灯しているときに導光板２０から出射された光が前面側と背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。この場合、図１１および図１２に示す場合と異なり、高分子分散型液晶素子６０は散乱モードであり、光源２５は点灯されている。図１３に示すように、導光板２０から表示面側に出射された第１偏光波と第２偏光波は、第１吸収型偏光板４１に入射する。第１吸収型偏光板４１は、入射した光のうち第２偏光波を吸収し、第１偏光波を透過する。第１吸収型偏光板４１を透過した第１偏光波が液晶パネル３０に入射してから前面側に透過するまでの光線軌跡は、図６に示す場合と同じであるので、その説明を省略する。

　一方、導光板２０から裏面側に出射された第１偏光波は、高分子分散型液晶素子６０に入射すると、高分子分散型液晶素子６０は、入射した第１偏光波から、１対１に近づくように調整された第１偏光波と第２偏光波を生成し、反射型偏光板５３に向けて出射する。第１偏光波は反射型偏光板５３を透過して背面側に抜け、第２偏光波は反射型偏光板５３によって反射され、再び高分子分散型液晶素子６０に入射する。

　また、導光板２０から裏面側に出射された第２偏光波は、散乱モードの高分子分散型液晶素子６０に入射すると、高分子分散型液晶素子６０は、入射した第２偏光波から、１対１に近づくように調整された第１偏光波と第２偏光波を生成し、反射型偏光板５３に向けて出射する。入射した光のうち第１偏光波は、反射型偏光板５３を透過して背面側に抜ける。第２偏光波は反射型偏光板５３によって反射され再び高分子分散型液晶素子６０に入射する。高分子分散型液晶素子６０は、反射型偏光板５３によって反射された第２偏光波から、１対１に近づくように調整された第１偏光波と第２偏光波を生成し、導光板２０に向けて出射する。第１偏光波および第２偏光波は、導光板２０を透過して第１吸収型偏光板４１に入射する。その後の第１偏光波および第２偏光波の光線軌跡は、導光板２０から表示面側に出射された第１偏光波および第２偏光波の光線軌跡と同じであるので、その説明を省略する。

　その結果、前面側にいる視聴者はオフ状態の画素に対応する位置に発光状態が表示され、オン状態の画素に対応する位置に黒表示された画面を視認することができる。このように、ディスプレイ１５は、発光状態と黒表示とを組み合わせて表示することができる。

　次に、本実施形態のディスプレイ１５における光線軌跡と光量との関係について説明する前に、第１の基礎検討で使用したディスプレイ１１、および第２基礎検討で使用したディスプレイ１２における光線軌跡と光量との関係について検討する。いずれの場合も光源２５は点灯され、そのときに導光板２０から表示面側および裏面側に出射される光量の総和は“１”であるとし、各種部材による光量の損失は無視する物とする。

　図１４は、第１の基礎検討で使用したディスプレイ１１における光線軌跡と各光線軌跡の光量を示す図である。図１４に示すように、導光板２０から表示面側および裏面側に出射される第１および第２偏光波の割合は、いずれも“０．２５”である。この場合、背面側に透過する第１および第２偏光波の割合はそれぞれ“０．２５”である。また、導光板２０から表示面側に出射された第１偏光波から変換され、前面側に透過する第２偏光波の割合も“０．２５”である。しかし、導光板２０から表示面側に出射された第２偏光波は第１吸収型偏光板４１によって吸収され、前面側に透過することができない。その結果、前面側に透過する光の割合は“０．２５”であり、背面側に透過する光の割合は“０．５０”となる。

　図１５は、第２の基礎検討で使用したディスプレイ１２における光線軌跡と各光線軌跡の光量を示す図である。図１５に示すように、第２の基礎検討では、導光板２０から表示面側および裏面側に出射された第１および第２偏光波のうち、第１および第２反射型偏光板５１、５２で反射されることなく前面側または背面側に透過する光の割合は、それぞれ“０．２５”になる。

　しかし、第１の基礎検討の場合と異なり、導光板２０から裏面側に出射される第２偏光波、または導光板２０から表示面側に出射され、第２反射型偏光板５２によって反射された第２偏光波は、第１反射型偏光板５１によって反射され、再び導光板２０に入射する。導光板２０に入射した第２偏光波は、導光板２０内の偏光散乱要素を通過することによって散乱され、第１偏光波と第２偏光波を含む合成波となる。この合成波に含まれる第１偏光波と第２偏光波の割合は、通常１対１ではない。そこで、合成波に含まれる第１偏光波の割合を“α”とすると、“α”は次式（２）を満たす値になる。
　　　　　　α≦０．２５　…　（２）

　第１反射型偏光板５１によって反射された第２偏光波から生成された合成波に含まれる、割合が“α”の第１偏光波は、第２反射型偏光板５２、第１吸収型偏光板４１を透過し液晶パネル３０に入射する。液晶パネル３０に入射した第１偏光波は、第２偏光波に変換され、第２吸収型偏光板４２を透過して前面側に抜ける。その結果、前面側に透過する第２偏光波の割合は“α”になる。その結果、前面側および背面側に透過する光の割合はいずれも“０．２５＋α”となる。

　図１６は、本実施形態のディスプレイ１５における光線軌跡と光量との関係を示す図である。図１６に示すように、導光板２０から表示面側および裏面側に出射される第１および第２偏光波の割合は、いずれも“０．２５”であり、高分子分散型液晶素子６０は散乱モードである。

　導光板２０から裏面側に出射され、高分子分散型液晶素子６０を透過した光について説明する。高分子分散型液晶素子６０に入射する光は、導光板２０から裏面側に出射された割合が“０．２５”の第１偏光波と、割合が“０．２５”の第２偏光波である。第１偏光波は、高分子分散型液晶素子６０によって、いずれも第１偏光波と第２偏光波の割合が１対１に近づくように調整される。その結果、割合が“０．２５”の第１偏光波は、“０．１２５”の第１偏光波と、“０．１２５”の第２偏光波に変換される。

　同様に、割合が“０．２５”の第２偏光波は、“０．１２５”の第１偏光波と“０．１２５”の第２偏光波に変換される。その結果、高分子分散型液晶素子６０から反射型偏光板５３に向けて出射される第１偏光波の割合は、上記２つの第１偏光波の割合”０．１２５”の和である“０．２５”になる。同様にして、高分子分散型液晶素子６０から反射型偏光板５３に向けて出射される第２偏光波の割合も、上記２つの第２偏光波の割合”０．１２５”の和である“０．２５”になる。

　このようにして第１偏光波および第２偏光波からそれぞれ生成された、割合が“０．１２５”の第１偏光波は反射型偏光板５３を透過して背面側に抜ける。一方、反射型偏光板５３によって反射された、割合が“０．１２５”の第２偏光波は、高分子分散型液晶素子６０に入射し、高分子分散型液晶素子６０によって割合が１対１に近づくように調整され、それぞれ割合が“０．０６２５”の第１偏光波と第２偏光波になる。割合が“０．０６２５”の第１偏光波および第２偏光波は、導光板２０を透過して、第１吸収型偏光板４１に入射する。

　第１吸収型偏光板４１は、第２偏光波を吸収し、第１偏光波を透過するので、割合が“０．０６２５”の第１偏光波が透過し、液晶パネル３０に入射する。液晶パネル３０によって変換された第２偏光波が第２吸収型偏光板４２を透過して前面側に抜ける。このとき、液晶パネル３０から出射された第１偏光波の割合“０．１２５”は、液晶パネル３０に入射した、割合が“０．０６２５”である２つの第１偏光波の和である。その結果、前面側に透過する第２偏光波の割合は、“０．２５”と“０．１２５”の和である“０．３７５”となる。一方、背面側に透過する第１偏光波の割合は、“０．１２５”と“０．１２５”の和である“０．２５”となる。

　上記結果から、以下のことがわかる。まず、前面側に透過する第２偏光波について、本実施形態の場合と、第１の基礎検討の場合および第２の基礎検討の場合とを比較する。第１の基礎検討では、図１４に示すように、前面側に透過する第１偏光波の割合は“０．２５”である。第２の基礎検討では、図１５に示すように、前面側に透過する第１偏光波の割合は“０．２５＋α”である。“α”は上式（２）で表される範囲の値であるため、“０．２５＋α”は最大で“０．５”になる。これに対し、本実施形態の場合は、図１６に示すように、“０．３７５”である。これらの結果から、本実施形態の場合は、第１の基礎検討の場合よりも多くの光量の第２偏光波が前面側に透過する。しかし、第２の基礎検討の場合には、本実施形態の場合よりもより多くの光量の第２偏光波が前面側に透過する場合がある。第２の基礎検討において前面側に透過する光の光量を多くすれば、後述する問題が生じる。

　一方、背面側に透過する第１偏光波について、本実施形態の場合と、第１の基礎検討の場合および第２の基礎検討の場合と比較する。第１の基礎検討では、図１４に示すように、背面側に透過する光は、割合が“０．２５”の第１偏光波と、割合が“０．２５”の第２偏光波である。このため、背面側に透過する光の割合はそれらの和である“０．５０”となる。第２の基礎検討では、図１５に示すように、背面側に透過するのは第１偏光波だけであり、その割合は“０．２５＋α”である。“α”は上式（２）で表される範囲の値であるため、“少なくとも“０．２５”以上にある。これに対し、本実施形態の場合は、図１６に示すように、背面側に透過する光は第１偏光波だけであり、その割合は“０．２５”である。このことから、本実施形態の場合、背面側に透過する光の光量はいずれの基礎検討の場合よりも少なくなることがわかる。さらに、第１の基礎検討において説明したように、導光板２０から背面側に透過する光は、導光板２０に対して特定の角度方向に明るさのピークを有するが、本実施形態によれば明るさのピークが特定の角度方向よりも広い角度に分散される。これにより、視聴者が感じる眩しさが低減される。

　図１７は、本実施形態の効果を第１および第２の基礎検討の場合と比較した図である。第１の基礎検討の場合に比べて、本実施形態では前面側に透過する光の光量を１．５倍に増加させることができる。これにより、光の利用効率が向上し、画面を明るくすることができる。また、背面側に透過する光の光量を１／２にすることができ、さらに明るさのピークを広い角度に分散させることによって、背面側からディスプレイ１５を見たときの眩しさを軽減することができる。第２の基礎検討では、前面側に透過する光量は“０．２５＋α”なり、“α”の値によっては、本実施形態の場合よりも透過する光の光量が多くなるので、画面が明るくなる。しかし、“α”の値が大きくなればなるほど、導光板２０の濁度が大きくなり、それに伴って、図７（Ａ）に示すように前面側から背景側を見たときに見える背景のぼやけが大きくなる。これに対し、本実施形態では、視聴者は明るい画面にくっきりと表示された背景を視認することができる。

＜２．４　効果＞
　本実施形態によれば、導光板２０から表示面側に出射された第１偏光波だけでなく、裏面側に出射された第１偏光波および第２偏光波から散乱モードの高分子分散型液晶素子６０によって変換された光に含まれる第１偏光波も、液晶パネル３０によって第２偏光波に変換され前面側に透過する。これにより、導光板２０から出射された光の利用効率が向上するので、画面を明るくすることができる。

　また、導光板２０から裏面側に出射された第１偏光波および第２偏光波の一部が反射型偏光板５３によって表示面側に反射されるので、背面側に透過する第１偏光波の光量が少なくなる。これにより、背面側にいる視聴者は眩しさを感じにくくなる。さらに、視聴者がディスプレイ１５をシースルーディスプレイとして使用する場合に、画面の明るさは暗くなるが、導光板２０の濁度が小さくなるので、視聴者はぼやけることなくくっきりと表示された背景を視認することができる。

＜３．第２の実施形態＞
　本実施形態に係る液晶表示装置の構成および動作は、図８に示す第１の実施形態の場合と同じであるので、その構成を示す図および説明を省略する。また、本実施形態のディスプレイ１６の構成は、図９に示す第１の実施形態のディスプレイ１５の構成要素である第２吸収型偏光板４２の代わりに、第１偏光波を反射し、第２偏光波を透過する反射型偏光板５４が配置されていることだけが異なり、その他の構成要素の配置は図９に示す場合と同じであるので、その構成を示す図および説明を省略する。

＜３．１　光線軌跡＞
　図１８は、本実施形態のディスプレイ１６において、背面側から入射した光が前面側に透過するときの光線軌跡を示す図であり、図１９は本実施形態のディスプレイ１６において、前面側から入射した光が背面側に透過するときの光線軌跡を示す図であり、図２０はディスプレイ１６において、光源２５が点灯しているときに導光板２０から出射された光が前面側と背面側に透過するときの光線軌跡を示す図である。図１８および図１９では、高分子分散型液晶素子６０は透過モードであり、光源２５は消灯されている。図２０では高分子分散型液晶素子６０は散乱モードであり、光源２５は点灯されている。

　いずれの場合も、背面側から入射した第１および第２偏光波、前面側から入射した第２偏光波、導光板２０から出射された第１および第２偏光波の光線軌跡は、それぞれ図１１、図１２、図１３に示す場合と同じであるので、説明を省略する。しかし、本実施形態では、前面側から反射型偏光板５４に入射した第１偏光波は、反射型偏光板５４によって反射されて前面側に戻される。なお、いずれの場合も液晶パネル３０を透過して反射型偏光板５４に入射した第１偏光波は、反射型偏光板５４によって反射され再び液晶パネル３０に入射するが、本実施形態の目的と直接関係していないので、その説明は省略する。

＜３．２　効果＞
　本実施形態によれば、ディスプレイ１６の表示面に反射型偏光板５４が配置されているので、前面側から反射型偏光板５４に入射した光のうち第１偏光波が反射される。これにより、前面側にいる視聴者は、反射された第１偏光波によってミラー状態になり、前面側を映すとともに、例えば図１８に示す場合であれば、オフ状態の画素に対応する位置に表示される背面側の状態を視認することができ、図２０に示す場合であれば、オフ状態の画素に対応する位置に表示される発光状態を視認することができる。これにより、ディスプレイ１６はデザイン性に優れたディスプレイになる。

＜４．第３の実施形態＞
　本実施形態に係る液晶表示装置の構成および動作は、図８に示す第１の実施形態の場合と同じであるので、その構成を示す図および説明を省略する。また、本実施形態のディスプレイ１７の構成は、図９に示す第１の実施形態のディスプレイ１５の構成要素のうち、液晶パネル３０と導光板２０とに挟まれた位置に配置されていた第１吸収型偏光板４１の代わりに、反射型偏光板５５が配置されていることだけが異なり、その他の構成要素の配置は図９に示す場合と同じである。このため、その構成を示す図および説明を省略する。なお、反射型偏光板５５の偏光軸は、反射型偏光板５３の偏光軸と同じ方向である。

＜４．１　光線軌跡＞
　本実施形態のディスプレイ１７は、シースルーディスプレイとして機能し、背面側から入射した第１偏光波を第２偏光波として前面側に透過し、また前面側から入射した第２偏光波を第１偏光波として背面側に透過する。しかし、それらの光線軌跡は、それぞれ第１の実施形態の図１１および図１２と実質的に同じであるので、光線軌跡を示す図およびその説明を省略する。

　図２１～図２３は、本実施形態のディスプレイ１７において、導光板２０から出射された第１および第２偏光波の光線軌跡と各光線軌跡の光量を時系列で表す図である。図２１～図２３を参照して、光源２５は点灯されており、高分子分散型液晶素子６０は散乱モードである場合の各光線軌跡の光量を説明する。なお、図２１～図２３に示す光線軌跡のうち、反射型偏光板５５によって反射される第２偏光波の光線軌跡以外の光線軌跡は、図１６に示す光線軌跡と同じであるので、その説明を省略する。

　図２１に示すように、導光板２０から表示面側および裏面側に出射された第１偏光波の割合は、それぞれ“０．２５”である。そのうち表示面側に出射された第１偏光波は、反射型偏光板５５、液晶パネル３０、第２吸収型偏光板４２を透過して前面側に抜ける。この場合、前面側に透過するのは、液晶パネル３０によって第１偏光波から変換された第２偏光波であり、その割合は“０．２５”である。また、裏面側に出射された第１偏光波は、散乱モードの高分子分散型液晶素子６０および反射型偏光板５３を透過して背面側に抜ける。この場合、背面側に透過するのは第２偏光波であり、その割合は図１６において説明したように“０．２５”である。

　導光板２０から表示面側に出射された第２偏光波は、反射型偏光板５５によって反射され、背面側に向かう。そこで、この第２偏光波を「第２偏光波Ａ」とし、図２２においてその光線軌跡を説明する。

　導光板２０から裏面側に出射された第２偏光波は、散乱モードの高分子分散型液晶素子６０を透過して、反射型偏光板５３に入射する。なお、反射型偏光板５３に入射する第２偏光波の割合が“０．２５”になる理由は、図１６において説明したので省略する。

　反射型偏光板５３に入射した第２偏光波は反射され、高分子分散型液晶素子６０に入射する。高分子分散型液晶素子６０は、第２偏光波から、１対１に近づくように調整された第１偏光波と第２偏光波を生成して出射する。その結果、出射された第１偏光波および第２偏光波の割合は、いずれも“０．１２５”である。第１偏光波および第２偏光波は導光板２０を透過して反射型偏光板５５に入射する。反射型偏光板５５は、割合が“０．１２５”の第１偏光波を透過し、“０．１２５”の第２偏光波を反射する。反射型偏光板５５を透過した第１偏光波は、その後液晶パネル３０、第２吸収型偏光板４２を透過して前面側に抜ける。この場合、前面側に透過するのは、液晶パネル３０によって変換された第２偏光波であり、その割合は“０．１２５”である。

　以上の説明から、図２１に示す段階では、前面側に透過する第２偏光波の割合は、“０．３７５”であり、背面側に透過する第１偏光波の割合は“０．２５”と“０．１２５”の和である“０．３７５”であることがわかる。

　なお、反射型偏光板５５によって反射された、割合が“０．１２５”の第２偏光波を「第２偏光波Ｂ」とし、図２３においてその後の光線軌跡を説明する。

　次に、図２２を参照して、図２１の第２偏光波Ａの光線軌跡を説明する。第２偏光波Ａは、導光板２０を透過して高分子分散型液晶素子６０に入射する。高分子分散型液晶素子６０は、第２偏光波Ａから、１対１に近づくように調整された第１偏光波と第２偏光波を生成して出射する。これにより、出射された第１偏光波および第２偏光波の割合は、いずれも“０．１２５”となる。割合が“０．１２５”の第１偏光波は反射型偏光板５３を透過して背面側に抜ける。割合が“０．１２５”の第２偏光波は反射型偏光板５３によって反射される。

　反射型偏光板５３によって反射された第２偏光波は、再び高分子分散型液晶素子６０に入射する。高分子分散型液晶素子６０は、第２偏光波から、１対１に近づくように調整された第１偏光波と第２偏光波を生成して出射する。その結果、出射された第１偏光波および第２偏光波の割合は、いずれも“０．０６２５”となる。第１偏光波および第２偏光波は導光板２０を透過して反射型偏光板５５に入射する。反射型偏光板５５は、割合が“０．０６２５”の第１偏光波を透過し、“０．０６２５”の第２偏光波を反射する。反射型偏光板５５を透過した第１偏光波は、その後液晶パネル３０、第２吸収型偏光板４２を透過して前面側に抜ける。この場合、前面側に抜けるのは、液晶パネル３０によって変換された第２偏光波であり、その割合は“０．０６２５”である。

　以上の説明から、図２２に示す段階では、前面側に透過する第２偏光波の割合は、“０．０６２５”であり、背面側に透過する第１偏光波の割合は“０．１２５”であることがわかる。

　なお、導光板２０から表示面側に出射された、割合が“０．０６２５”の第２偏光波は、反射型偏光板５５によって反射される。この第２偏光波である第２偏光波Ｃのその後の光線軌跡の説明は省略する。

　次に、図２３を参照して、図２１の第２偏光波Ｂの光線軌跡を説明する。反射型偏光板５３によって反射された、割合が“０．１２５”の第２偏光波Ｂは、導光板２０を透過して、高分子分散型液晶素子６０に入射する。高分子分散型液晶素子６０は、第２偏光波Ｂから、１対１に近づくように調整された第１偏光波と第２偏光波を生成して出射する。この結果、出射された第１偏光波および第２偏光波の割合は、いずれも“０．０６２５”となる。割合が“０．０６２５”の第１偏光波は反射型偏光板５３を透過して背面側に抜け、割合が“０．０６２５”の第２偏光波は反射型偏光板５３によって反射される。

　反射型偏光板５３によって反射された第２偏光波は、高分子分散型液晶素子６０に入射する。高分子分散型液晶素子６０は、第２偏光波から、１対１に近づくように調整された第１偏光波と第２偏光波を生成して出射する。この結果、出射された第１偏光波および第２偏光波の割合は、いずれも“０．０３１２５”となる。これらの第１および第２偏光波は、導光板２０を透過して反射型偏光板５５に入射する。反射型偏光板５５は、割合が“０．０３１２５”の第１偏光波を透過し、“０．０３１２５”の第２偏光波を反射する。反射型偏光板５５を透過した第１偏光波は、その後液晶パネル３０、第１吸収型偏光板４１を透過して前面側に抜ける。この場合、前面側に抜けるのは、液晶パネル３０によって変換された第２偏光波であり、その割合は“０．０３１２５”である。

　以上の説明から、図２３に示す段階では、前面側に透過する第２偏光波の割合は、“０．０３１２５”であり、背面側に透過する第１偏光波の割合は“０．０６２５”であることがわかる。

　なお、導光板２０から表示面側に出射された、割合が“０．０３１２５”の第２偏光波は、反射型偏光板５５によって反射される。この第２偏光波である第２偏光波Ｄのその後の光線軌跡の説明は省略する。

　このように、導光板２０から表示面側に出射された第２偏光波は、反射型偏光板５５および反射型偏光板５３によって反射され、高分子分散型液晶素子６０によって第２偏光波から生成された第１偏光波が反射型偏光板５５を透過して前面側に抜ける。これにより、前面側に抜ける第２偏光波の光量が増加する。また、高分子分散型液晶素子６０によって生成された第１偏光波が反射型偏光板５３を透過して背面側に抜ける。これにより、背面側に抜ける第１偏光波の光量も増加する。なお、図２２および図２３において説明を省略
した第２偏光波Ｃおよび第２偏光波Ｄによって、前面側に透過する第２偏光波および背面側に透過する第１偏光波の割合はさらに高くなる。

　前面側および背面側に透過する第２偏光波の割合の和を求めていくと、それらは最終的に“０．２５”になる。一方、図２１に示すように、導光板２０から表示面側に射出された、割合が“０．２５”の第１偏光波も、液晶パネル３０によって変換され、割合が“０．２５”の第２偏光波として前面側に透過する。その結果、導光板２０から出射される光のうち、前面側に透過する第２偏光波の割合はそれらの和である“０．５０”になる。

　図２４は、本実施形態の効果を第１および第２基礎検討の場合と比較した図である。第１の基礎検討の場合に比べて、本実施形態では前面側に透過する光の光量は２倍に増加するので、光の利用効率が向上し、画面を明るくすることができる。また、第２の基礎検討では、前面側に透過する光量は“０．２５＋α”であり、“α”の値が“０．２５”になれば、本実施形態の場合と同じになる。このため、第２の基礎検討の場合も、本実施形態の場合と同程度にまで、光の利用効率を向上させることができる。しかし、第２の基礎検討の場合には、図１７でも説明したように、“α”の値が大きくなればなるほど、導光板２０の濁度が大きくなり、前面側から背面を見た時に背景がぼやけるという問題がある。これに対し、本実施形態では、視聴者は明るい画面にくっきりと表示された背景を視認することができる。

＜４．２　効果＞
　本実施形態によれば、導光板２０と高分子分散型液晶素子６０とを２枚の反射型偏光板５３、５５で挟むので、導光板２０から表示面側および裏面側に出射される第２偏光波もこれらの反射型偏光板５３、５５の間で反射される際に、散乱モードの高分子分散型液晶素子６０によって第１偏光波と第２偏光波を１対１に近い割合で含む光に変換される。変換された第１偏光波は、導光板２０の前面に配置された反射型偏光板５５を透過して前面側に透過するので、前面側に透過する光の光量をより増加させることができる。その結果、光の利用効率をさらに向上させることができ、画面をより明るくすることができる。

＜５．第４の実施形態＞
　本実施形態に係る液晶表示装置は、上記各ディスプレイ１５～１７に含まれる高分子分散型液晶素子６０の構成に特徴を有する。そこで、以下の各実施形態に係る液晶表示装置の構成および動作は、図８に示す構成および動作と同じであるため、図および説明を省略する。

　第１の実施形態において説明した高分子分散型液晶素子６０において、高分子ネットワーク６３と液晶を封止するための封止部材６１として、複屈折性を示すフィルムシートを使用すれば以下のような問題が生じる。

　図２５は、図９に示すディスプレイ１５において、高分子分散型液晶素子６０の封止部材６１として複屈折性を示すフィルムシートが使用され、光源２５が消灯された状態で、背面側から前面側に透過する光の光線軌跡を説明するための図である。この場合、透過モードの高分子分散型液晶素子６０に入射した第１偏光波は、第１偏光波のまま高分子分散型液晶素子６０を透過することができず、複屈折性を示す封止部材６１によって複屈折される。これにより、高分子分散型液晶素子６０から出射される光は、例えば第１偏光波と第２偏光波を０．９対０．１のように、第２偏光波を含み、その分だけ第１偏光波の割合が低くなる。その後、第１偏光波は第１吸収型偏光板４１を透過し、さらに液晶パネル３０によって変換された第２偏光波が前面側に透過し、第２偏光波は第１吸収型偏光板４１に吸収される。前面側に透過した第２偏光波の光量は、図１１に示す場合に比べて少なくなるので、画面の明るさは暗くなる。

　また、図２６は、高分子分散型液晶素子６０の封止部材６１として複屈折性を示すフィルムシートが使用され、光源２５が点灯された状態で、導光板２０から出射された光の光線軌跡を説明するための図である。この場合、導光板２０から裏面側に出射された第２偏光波は、散乱モードの高分子分散型液晶素子６０に入射すると、第１偏光波と第２偏光波を１対１に近い割合で含むのではなく、複屈折性を示す封止部材６１であるフィルムシートによって複屈折される。これにより、高分子分散型液晶素子６０から出射される光は、例えば第１偏光波と第２偏光波の割合が０．４対０．６のように、第２偏光波をより多く含み、その分だけ第１偏光波は少なくなる。その後、第１偏光波は第１吸収型偏光板４１を透過し、さらに液晶パネル３０によって変換された第２偏光波が前面側に透過する。この第２偏光波の光量は、図１３に示す場合に比べて少なくなるので、画面の明るさは暗くなる。

　そこで、高分子分散型液晶素子６０の封止部材６１として、複屈折性を示すフィルムシートの代わりに、複屈折性を示さないフィルムシートを使用する。これによって、高分子分散型液晶素子６０は、透過モードのときには、入射した第１偏光波をそのまま出射し、散乱モードのときには、第１偏光波と第２偏光波の割合が１対１に近づくように調整して出射する。その後、第１偏光波は第１吸収型偏光板４１を透過し、さらに液晶パネル３０によって変換された第２偏光波が前面側に透過する。いずれの場合も、前面側に透過する第２偏光波の光量は、図２５および図２６に示す場合に比べて多くなるので、画面の明るさは明るくなる。

　このように、高分子分散型液晶素子６０に、封止部材６１として複屈折性を示さないフィルムシートを使用することによって、封止部材６１で複屈折が生じないようにする。これにより、高分子分散型液晶素子６０を透過する透過光の光量の減少を防ぐことができるので、光の利用効率が向上し、画面を明るくすることができる。このような複屈折性を示さないフィルムとしては、例えば溶液流涎成膜法によって製造されたＴＡＣ（Triacetylcellulose）フィルム（トリアセチルセルロースフィルム）を使用することができる。

　また、複屈折性を示さない封止部材６１として、複屈折性を示さないガラス板を使用しても良い。これにより、画面を明るくすることができるだけでなく、さらにフィルムシートを使用する場合に比べてディスプレイの剛性を向上させることができる。なお、複屈折性を示さないガラス板の製造方法は公知であるので、その説明を省略する。また、複屈折性を示さないフィルムシートを「等方性フィルムシート」と呼び、複屈折性を示さないガラス板を「等方性ガラス板」と呼ぶことがある。

＜６．その他＞
　上記各実施形態において、光源２５は導光板２０の側面のいずれか１辺に取り付けられるだけでなく、いずれか２辺または３辺に取り付けられても良く、あるいは４辺に取り付けられても良い。

　上記各実施形態では、各ディスプレイ１５～１７は、白黒の画像および背景を表示するとして説明したが、画像および背景をカラーで表示するようにしてもよい。ディスプレイ１５～１７のいずれも構成を少し変更するだけでカラー表示できるようにすることができるが、以下の説明では、第１の実施形態のディスプレイ１５を例に挙げて、説明する。図２７は、カラーで画像や背景を表示するカラーフィルタ方式のディスプレイ１８の構成を示す断面図である。図２７に示すように、ディスプレイ１８では、液晶パネル３０と第２吸収型偏光板４２との間にカラーフィルタ８０が配置されている。これにより、導光板２０から出射された光や、前面側または背面側から入射した光がカラーフィルタ８０を透過するので、画像や背景がカラーで表示される。

　上記各実施形態では、ディスプレイ１５～１７を透過する光の偏光状態を制御するための素子として、ＴＮ方式で駆動される液晶パネル３０を使用した。しかし、使用可能な液晶パネルはＴＮ方式に限定されず、例えばＶＡ（Virtical Alignment）方式などの他の方式で駆動される素子であっても、２枚の偏光板で挟んだ状態で駆動時または非駆動時のいずれか一方において偏光波を透過させ、他方において偏光波を透過させないように制御できる素子であれば良い。そこで、このような素子を「偏光変調素子」と呼ぶことがある。

　また、ディスプレイ１５～１７がシースルーディスプレイとして機能するためには、偏光変調素子は、ノーマリホワイト型またはノーマリブラック型のいずれであっても良い。しかし、ノーマリホワイト型の場合には、偏光変調素子がオフ状態、すなわち非駆動時に透明になる。これに対し、ノーマリブラック型の場合には、偏光変調素子がオン状態、すなわち駆動状態のときに透明になる。このように、ノーマリブラック型の偏光変調素子は、画像を表示するときだけでなく、シースルー状態になるときも駆動しなければならない。このため、ノーマリホワイト型の偏光変調素子は、ノーマリブラック型の偏光変調素子に比べて、少ない消費電力で駆動できるメリットがある。

　また、散乱モードでは、第１偏光波と第２偏光波の割合が１対１に近づくように調整し、透明モードではそのまま透過させることができる素子として、高分子分散型液晶素子６０を使用した。しかし、高分子分散型液晶素子６０に限定されず、上記のような機能を有する素子であれば良い。そこで、このような素子を「光散乱切替素子」と呼ぶことがある。このような光散乱切替素子は、その種類にかかわらずリバースモード型がより好ましい。

　なお、上記実施形態における第１吸収型偏光板４１および反射型偏光板５５をまとめて「第１偏光板」と呼び、第２吸収型偏光板４２および反射型偏光板５４をまとめて「第２偏光板」と呼ぶことがある。

　本願は、２０１６年５月３０日に出願された「表示装置」という名称の日本の特願２０１６－１０７６９０号に基づく優先権を主張する出願であり、この出願の内容は引用することによって本願の中に含まれる。

　　１５、１６、１７　…　ディスプレイ
　　２０　…　導光板
　　２５　…　光源
　　３０　…　液晶パネル（偏光変調素子）
　　４１　…　第１吸収型偏光板
　　４２　…　第２吸収型偏光板
　　５１　…　第１反射型偏光板
　　５２　…　第２反射型偏光板
　　５３　…　反射型偏光板
　　５４　…　反射型偏光板
　　５５　…　反射型偏光板
　　６０　…　高分子分散型液晶素子（光散乱切替素子）
　　６１　…　封止部材
　　６３　…　高分子ネットワーク
　　６４　…　液晶分子
　　８０　…　カラーフィルタ

Claims (12)

1. 　画像信号に基づく画像を表示すると共に、シースルーディスプレイとしても機能するディスプレイを備えた表示装置であって、
   　前記ディスプレイは、
   　　第１偏光波および前記第１偏光波の偏光軸と直交する偏光軸を有する第２偏光波を含む光を射出する光源と、
   　　前記光源からの光を前記ディスプレイの表示面側および裏面側に向けて出射する導光板と、
   　　前記導光板の裏面に配置され、入射する偏光波の偏光状態を変換することなく出力する透過モードと、前記第１偏光波と前記第２偏光波の割合が１対１に近づくように変換して出力する散乱モードとを有する光散乱切替素子と、
   　　前記光散乱切替素子の裏面に配置された反射型偏光板と、
   　　前記導光板から前面側に向かって順に配置された第１偏光板と、偏光変調素子と、第２偏光板とを備え、
   　　偏光変調素子は、電圧を印加可能な複数の画素を含み、前記電圧によって前記画素に入射する前記第１偏光波または前記第２偏光波の偏光状態を制御して出力し、
   　　前記反射型偏光板および前記第１偏光板は、前記第１偏光波および前記第２偏光波のうちいずれか一方の偏光波を透過し、前記第２偏光板は他方の偏光波を透過することを特徴とする、表示装置。
2. 　前記第１偏光板および前記第２偏光板は、いずれも吸収型偏光板であることを特徴とする、請求項１に記載の表示装置。
3. 　前記第１偏光板は吸収型偏光板であり、前記第２偏光板は反射型偏光板であることを特徴とする、請求項１に記載の表示装置。
4. 　前記第１偏光板は反射型偏光板であり、前記第２偏光板は吸収型偏光板であることを特徴とする、請求項１に記載の表示装置。
5. 　前記偏光変調素子は液晶パネルであることを特徴とする、請求項２から４のいずれかに記載の表示装置。
6. 　前記液晶パネルはノーマリホワイト型のパネルであることを特徴とする、請求項５に記載の表示装置。
7. 　前記液晶パネルは、ねじれネマティック方式のパネルであることを特徴とする、請求項５に記載の表示装置。
8. 　前記偏光変調素子と前記第２偏光板との間に配置されたカラーフィルタをさらに備えることを特徴とする、請求項１に記載の表示装置。
9. 　前記光源は、少なくとも白色の表現が可能な色の光を発する複数種類の発光体を含み、前記複数種類の発光体を時分割して順に発光させることを特徴とする、請求項１に記載の表示装置。
10. 　前記光散乱切替素子は、電界をオンしたときに前記散乱モードとなり、前記電界をオフしたときに前記透過モードになることを特徴とする、請求項１に記載の表示装置。
11. 　前記光散乱切替素子は、液晶層と、前記液晶層内に形成された高分子ネットワークと、表面に電極が形成された封止部材とを備え、前記液晶層と前記高分子ネットワークとを前記封止部材によって挟んだ構造の高分子分散型液晶素子であることを特徴とする、請求項１０に記載の表示装置。
12. 　前記光散乱切替素子の前記封止部材は、等方性フィルムシートまたは等方性ガラス板のいずれかであることを特徴とする、請求項１１に記載の表示装置。

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