WO2017200090A1 - 熱の移動を抑制する薄膜構造体並びに該薄膜構造体を積層した構造物及び基材 - Google Patents

熱の移動を抑制する薄膜構造体並びに該薄膜構造体を積層した構造物及び基材 Download PDF

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Abstract

表面から裏面への熱移動を抑制することができる薄膜構造体を提供する。薄膜構造体は、金属酸化物を含む中空微粒子と固化状態の基剤とを含む。中空微粒子は、一方の表面から深さ方向に少なくとも第1の位置まで、基剤内において稠密に分布している。薄膜構造体の表面に対して熱エネルギーが照射されたときには、薄膜構造体から遠赤外放射が発生するが、その遠赤外放射が発生する最深部の位置は、表面から第1の位置までの距離より小さい第2の位置に存在する。

Description

熱の移動を抑制する薄膜構造体並びに該薄膜構造体を積層した構造物及び基材
 本発明は、建築物、車両、各種設備などの外表面又は内表面に積層されることによって、これらの内部又は外部のいずれか一方の側から他方の側への赤外放射による熱移動を抑制することができる薄膜構造体に関する。
 建築物、車両、又は各種設備など(本明細書においては、これらを含めて「構造物」という)を始めとする様々な用途において、密閉された空間、例えば建物や容器等の内部から外部又は外部から内部への熱を遮断する目的で、種々の断熱材が用いられる。断熱材には、主に繊維系断熱材と発泡系断熱材がある。
 繊維系断熱材としては、例えばグラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどが挙げられ、発泡系断熱材としては、例えばウレタンフォーム、ビーズ法ポリスチレンフォームなどの発泡系断熱材などが挙げられる。これらの従来の断熱材は、内部に空隙を有するため密度が低く、そのため熱伝導率が小さく、結果として断熱効果が得られる。しかし、これらの断熱材を用いて熱の移動を効果的に抑制するためには、断熱材を構造物の表面に厚く施工することが必要であり、断熱性能を向上させるための断熱材使用量の増加に伴って材料コストや施工コストが高くなるとともに、断熱材が厚くなることによって使用できる空間が小さくなる。結果として、従来の断熱材には、断熱性能の向上には限界がある。また、従来の断熱材には、構造物の表面形状に対する追従性が悪いという課題もある。
 こういった従来の断熱材が有する課題を解決するために、いわゆる断熱性塗膜又は塗料が提案されている。断熱性塗膜又は塗料は、一般に、微粒子又は中空微粒子を樹脂などの基剤に混合し、この混合物を、例えば構造物の表面に直接施工したり、テープなどの基材フィルムに塗布して用いたりするものであり、必要に応じて断熱機能に寄与する添加剤が加えられる場合もある。こうした技術は、例えば特許文献1~5において提案されている。
 特許文献1(特開平11-80599)は、ガラス製又はセラミックス製の白色中空ビーズを50~80容積%の割合で分散させることによって、全体を白色とし、光の反射を利用して遮熱効果を得る断熱性塗膜についての技術である。塗膜を白色にすることによって汚れが目立ち、使用用途が限定される課題もあるが、これに対しては、断熱性塗膜を2層構造とし、表層の第2の断熱性塗膜によって白色の断熱性塗膜を保護する。
 特許文献2(特開2000-71389)においては、光線を反射する性質を有する5~20μmのセラミック微粉末と、断熱効果を有する50~100μmのセラミック微粉末とを、塗膜形成剤中に分散混合させたことによって形成される断熱性塗料が提案されている。この技術においては、光線を反射する性質を有する微粉末として、例えば、TiO、SnO、In、TiN、Siなどが提案され、断熱効果を有する微粉末として、例えば、KO・nTiOなどのチタン酸塩、CaO・nSiOなどの珪酸塩が提案されている。
 特許文献3(特開2005-179514)においては、バインダ樹脂にシリカ(SiO・nHO)が含まれた断熱性の樹脂組成物が提案されている。この技術においては、シリカは、細孔容積、比表面積、最頻細孔直径などに関して特定の性能を有するものであり、より優れた断熱性能を求めて、シリカがこのような性質を有するように設計及び製造に精密性が要求される。
 特許文献4(特開2009-108222)においては、直径30nm~300nmの大量のナノ中空粒子(シリカ殻からなる粒子)が、30体積%~70体積%の範囲で塗料中に混合された断熱性塗料が提案されている。通常、大量のナノ中空粒子を溶媒に混合する場合には、凝集を起こしやすいという課題がある。しかし、この文献においては、湿式ジェットミルでナノ中空粒子を強力に溶媒中に分散させることによって、その大部分を溶媒に微細分散させ、更に、これらの微細分散粒子に表面修飾剤を反応付加させて表面修飾することによって、凝集を防止して塗料中に微細分散させることができるとされている。
 特許文献5(特開2000-290594)は、微小セラミックバルーンと接着性樹脂のエマルジョンからなる高性能断熱性塗料を、予めフィルムに塗布乾燥することによって施工性を改善させた、断熱性フィルムを提案するものである。
特開平11-80599 特開2000-71389 特開2005-179514 特開2009-108222 特開2000-290594
E.D.Palik編、Handbook of Optical Constants of Solids、Academic Press 中村俊哉、甲斐高志、「セラミックタイル断熱材の輻射・熱伝導連成解析に関する研究」、航空宇宙技術研究所報告、NAL-TR-1470、2003年8月 日本熱物性学会編、「新編熱物性ハンドブック」、養賢堂、2008年4月、p.747
 上述のとおり、従来、断熱性塗膜又は塗料として、基剤に微粒子又は中空微粒子が含まれたものが提案されてきたが、これらはいずれも、十分な熱移動抑制効果を示すものではなかった。従来の断熱性塗膜又は塗料は、乾燥状態の塗膜に占める微粒子又は中空微粒子の割合がそれほど大きくない。これは、微粒子又は中空微粒子の割合を多くすると、塗膜の強度が低下して層の状態を維持しにくくなり、構造物に積層することが困難になるためである。このため、塗膜を十分に厚くすることができず、薄い塗膜では表面に与えられた熱が裏面にまで到達することになる。
 そこで、従来の提案においては、断熱性塗膜又は塗料として用いられたときに、薄くても高い断熱性を持たせるために、熱伝導率を減少させる工夫も行われてきた。具体的には、基剤に含まれる熱伝導率の低い微粒子や中空微粒子の割合を高くすることによって、断熱性塗膜又は塗料全体の熱伝導率を小さくすることが行われてきた。しかしながら、その結果、断熱性塗膜又は塗料中の熱放射による熱移動が増大するため、断熱性塗膜又は塗料の厚さを一定以上の厚さにする必要があった。
 本発明は、表面に熱エネルギーが与えられた時に、表面の温度が速やかに上昇し、薄膜深部から表面方向への遠赤外放射(「熱放射」と同義であるが、以後、遠赤外光としての意味が強い場合には「遠赤外放射」、エネルギーの輸送の意味が強い場合には「熱放射」という言葉を用いる。また、「遠」を略し、「赤外」を使う場合がある。)が効果的に行われ、深部への熱移動が抑制されることによって、表面に与えられた熱エネルギーの殆どが裏面まで到達しないという特徴を持つ薄膜構造体を提供することを目的とする。このような薄膜構造体は、数百μmの厚みであっても、数mm程度の断熱材と同等の断熱性能を有する。
 この目的を達成するために、本発明者らは、薄膜構造体の表面からの熱放射が発生する深さと、熱伝導率の減少だけでなく容積比熱をも考慮した、非定常状態における温度変化のしやすさを示す熱浸透率とに注目した。その結果、表面に熱が加えられた際に熱放射が到達する深さ(すなわち、表面からの熱放射の発生する深さ)程度の表面層において、温度上昇を速やかに生じさせ、それによる熱放射のうち表面層への熱放射を利用することによって、100μm程度の厚さであっても薄膜構造体内部への熱移動が抑制されることを見出した。このような熱移動の抑制を達成する手段は、(a)薄膜構造体の内部における遠赤外放射の到達距離が短く、(b)熱伝導率及び容積比熱を小さくすること、すなわち熱浸透率を小さくすることによって、表面温度の上昇を速やかに生じさせることにより、表面からの外部への熱放射量が大きく、結果的に熱移動抑制効果が高い薄膜構造体を得ることである。こうした薄膜構造体は、光の侵入深さと熱浸透率とを、ともにできるだけ小さくすることにより得られる薄膜構造体である。
 ここで、「熱移動の抑制効果」とは、物質の表面から入った熱の一部が表面側の空間に熱放射によって戻されることによって奥まで移動する熱量を減少させる効果をいい、従来の断熱性塗料における「断熱性」や「遮熱性」とは異なる概念を表す。従来の「断熱性」は、物質の両側(又は、物質の両側にある気体又は液体)に温度差があったときに高温部から低温部に流れる熱量の大小をいい、この熱量が小さい場合は、その物質は断熱性が高いことになる。また、「遮熱性」とは、(短波、長波を含む)放射による熱伝達があった場合に、物質の有する反射特性によって、放射を外界に戻し、吸収量を減少させることにより、物質の深部に熱が移動しない特性を言う。
 より具体的には、物資の高温側表面層内において発生する熱放射は、物質の深部に向かうと同時に、物質の高温側の表面にも向かう。物質深部側への熱放射は、内部の熱移動を増大させ、結果として熱伝導率として表される量に組み込まれる。一方、表面側への熱放射は、一部は物質に吸収されるものの、残りは物質の表面に達し、外部への熱移動に寄与することになる。この現象は、物質から外部への熱移動分が外部から物質への熱移動量を減少させることにつながり、結果として熱の移動を抑制する。
 第1の態様においては、本発明は、単独で又は基材の少なくとも一方の面に積層されて用いられる薄膜構造体を提供する。薄膜構造体は、金属酸化物を含む中空微粒子と固化状態の基剤とを含む。中空微粒子は、一方の表面から深さ方向に少なくとも第1の位置まで、基剤内において稠密に分布している。薄膜構造体の表面に対して熱エネルギー(熱放射)が照射されたときには、表面近傍が熱放射を吸収することによる表面近傍の温度上昇により、薄膜構造体の表面近傍からの遠赤外放射の強度が増大するが、その遠赤外放射が発生する最深部の位置は、表面から第1の位置までの距離より小さい第2の位置に存在する。この薄膜構造体の熱浸透率は、500J/(m・s0.5・K)より小さい。
 一般に、熱の移動は、熱放射、熱伝導及び対流の3つの形態で現れる。薄膜構造体の表面に与えられた熱エネルギーのうち、構造体を移動して裏面に到達する熱エネルギーの大小は、熱放射及び熱伝導の状態によって決まる。例えば、表面に与えられた熱エネルギーが薄膜構造体を通して裏面に達し、放射される場合には、表面に与えられた熱エネルギーの一部が、熱放射又は熱伝導によって表面とは反対側の面まで移動していることになる。
 本発明に係る薄膜構造体においては、熱放射と対流熱伝達によって表面に与えられた熱エネルギーは熱放射及び熱伝導によって内部に拡散するが、そのうちの熱放射分については、薄膜構造体の内部における再放射を除き、表面から少なくとも第1の位置までにおいて稠密に分布した中空微粒子によって十分に散乱されることになる(すなわち、表面から第1の位置までにおいて熱放射が十分に散乱されるように、中空微粒子が稠密に分布されている)。ここで、「稠密に分布」しているとは、中空微粒子が基剤中においてほぼ隙間無く連続的に存在している状態をいい、固化状態の基剤中において中空微粒子の占める割合が、薄膜構造体の表面から深さ方向に少なくとも第1の位置までにおいて、約80容積%以上の状態をいう。このように、中空微粒子が基剤内において稠密に分布しているため、薄膜構造体の表面に与えられた熱放射は、その殆どが中空微粒子によって散乱されることになる。散乱量は、薄膜構造体の表面から深さ方向に向かって指数関数的に低下し、散乱が生じる最深部の位置は、表面からの距離が第1の位置までの距離より小さい第2の位置となる。したがって、表面に与えられた熱放射は、第2の位置より浅い位置でほとんどが吸収又は散乱され、吸収分は表面温度の上昇に寄与する。
 一方、表面に対して熱放射と対流熱伝達を含む熱エネルギーが与えられたときに、基剤又は中空微粒子に吸収された熱エネルギーは、基剤表面近傍の温度上昇の原因となり、温度上昇分だけ表面からの遠赤外放射量が増大する。この遠赤外放射量の増大分は、散乱が生じる最深部の位置すなわち第2の位置を最深部として、放射される。いいかえると、遠赤外放射は、深さ方向に対して第2の位置より浅い位置から放射され、第2の位置より深い位置からは、放射されたとしても表面に達しない、すなわち結果的に放射されないことになる。表面近傍からの熱放射は、表面方向及び深部方向ともに発生するが、深部方向に発生した熱放射は表面に達しないため、薄膜構造体の深部に吸収されることになる。したがって、表面に熱エネルギーが与えられた時には、表面近傍からの放射と内部への熱伝導のバランスで温度分布が決まるが、熱浸透率が小さい場合には外部への熱放射が効率的に起こることにより薄膜構造体内部での温度勾配が緩やかになる。このことによって、深部に到達する熱エネルギーが小さくなり、結果的に裏面に到達する熱エネルギー量が減少する。
 また、本発明に係る薄膜構造体は、空気を内部に含んだ中空微粒子が稠密に分布しているため、全体としての熱伝導率が低く、密度が小さい。したがって、薄膜構造体は、容積比熱が小さいという性質を有する。このように、熱伝導率及び容積比熱が小さいという性質の結果として、薄膜構造体は、熱浸透率が小さく、そのため表面に接する空気の温度変化や熱放射の出入りに速やかに追随して表面の温度が上下することになる。したがって、表面に熱エネルギーが与えられた場合には、深部の温度が変化する前に表面の温度が変化し、表面から外部空間に対して熱放射が効率的に生じる。このことによって、深部に到達する熱エネルギーが小さくなり、結果的に裏面に到達する熱エネルギー量が減少する。
 本発明に係る薄膜構造体に含まれる中空微粒子は、金属酸化物を含むものであり、金属酸化物として、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化第二鉄(Fe)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)、二酸化ケイ素(SiO)若しくは三酸化アンチモン(Sb)のいずれか又はこれらの組合せを含むものであることが好ましい。
 一実施形態においては、薄膜構造体の表面から深さ方向に第2の位置までの距離は、20μm以下であることが好ましい。このように、遠赤外放射の最深部が薄膜構造体の表面から浅い位置に存在するため、薄い膜構造体を実現することができる。
 一実施形態においては、表面に対して熱エネルギーが照射されたときに放射される遠赤外線の波長は、5μm~30μmであることが好ましい。5μm~30μmの波長範囲には、理論的には室温付近(300K(27℃))の黒体からの熱放射の88%が含まれており、この波長領域での放射率が高ければ、室温付近で効率的に熱放射が生じることになる。したがって、本発明に係る薄膜構造体は、波長が5μm~30μmの遠赤外線を放射するものであれば、効果的な熱移動抑制効果を奏するものとなる。
 第2の態様においては、本発明は、請求項1~5のいずれかに記載の薄膜構造体が表面に積層された構造物を提供する。さらに第3の態様においては、本発明は、請求項1~5のいずれかに記載の薄膜構造体が基材に積層された積層体が提供される。本発明に係る薄膜構造体は、単独で構造物の表面に積層して用いることも、何らかの基材、例えば木材、金属、テープ、樹脂などといった種々の基材の一方の面若しくは両方の面に積層し、こうして得られた薄膜構造体と基材との積層体を構造物の表面に積層して用いることもできる。本発明に係る薄膜構造体を積層する好ましい構造物として、建築構造物、自動車、鉄道車両、船舶を挙げることができる。
 構造物の内部と外部との境界に、本発明に係る薄膜構造体を積層させた場合には、内部又は外部の熱源からの熱エネルギーの外部又は内部への移動を抑制することができるため、構造物の内部の環境を一定の状態に維持することができる。特に、本発明に係る薄膜構造体を建物の外壁及び/又は内壁に積層した場合には、年間を通して建物の空調エネルギーを削減することができ、極めて高い省エネルギー効果を実現することが可能である。また、本発明に係る薄膜構造体を、例えば、室内の壁に積層し、室内に熱源を設けた場合には、短い時間で室内の温度が上昇するという効果が得られる。これは、薄膜構造体から室内側への遠赤外線放射が増大するとともに、熱が薄膜構造体の奥まで浸透しにくいため、薄膜構造体に与えられた熱エネルギーが効率的に室内側に戻るためである。さらに、本発明に係る薄膜構造体は、表面付近から遠赤外線を放射する性能が高いため、対流熱伝達により周辺の温度と同一化した部分からの放射の効果によって、室内快適性を高めることに寄与する。
本発明の一実施形態による薄膜構造体の断面写真を示す。 図1に示される薄膜構造体の平面写真を示す。 本発明の一実施形態による薄膜構造体の熱移動抑制効果を検証するためのモデル試験における、時間経過に伴う設定温度及び設定日射量の設定条件を示す。 本発明の一実施形態による薄膜構造体の熱移動抑制効果を示す。 本発明の一実施形態による薄膜構造体の熱移動抑制効果に関するシミュレーションの計算モデルを示す。 シミュレーション結果を示す。
 以下、本発明を詳細に説明する。
[薄膜構造体の性質]
 本発明に係る薄膜構造体は、固化状態の基剤と、金属酸化物が含まれた中空微粒子とを含む。本発明に係る薄膜構造体は、以下のような性質を有する。
(1)中空微粒子が稠密に分布している
 本発明に係る薄膜構造体は、構造体の表面から深さ方向に少なくとも第1の位置まで、基剤内に中空微粒子が「稠密」に存在している。熱放射と対流熱伝達により表面に与えられた熱エネルギーは、熱放射及び熱伝導によって内部に拡散するが、そのうちの熱放射分については、表面から少なくとも第1の位置までにおいて稠密に分布した中空微粒子によって散乱される。中空微粒子の含有率は、表面から少なくとも第1の位置までにおいて、好ましくは、約80容積%以上であり、約95容積%より小さい。含有率が約80容積%より小さい場合には、十分な熱放射の散乱効果を発揮せず、また熱浸透率が低くならない。含有率が95容積%以上の場合には、基剤が中空微粒子を安定的に保持することができず、本薄膜構造体の機能を発揮できる状態で薄膜を維持することができなくなるおそれがある。第1の位置は、一実施形態においては薄膜構造体の厚みに等しく、別の実施形態においては薄膜構造体の厚みより小さい。図1は、本発明の一実施形態による薄膜構造体の断面写真を示す。図1の薄膜構造体は、厚みが約270μm~約300μmであり、図1から、その厚み全体にわたって中空微粒子が稠密に分布していることが分かる。
(2)遠赤外放射の位置が浅い
 本発明に係る薄膜構造体は、基剤又は中空微粒子に吸収された熱エネルギーが遠赤外線として放射される最深部の位置が浅いことを特徴とする。このように遠赤外放射(又は熱放射)の位置が浅いことと、薄膜構造体の表面に対して熱エネルギーが与えられたときに表面の温度が深部の温度より高くなりやすい(これは熱浸透率が低いことによる特徴と考えられる)こととの相互作用によって、遠赤外放射の多くはより温度の高い表面に近い位置から、結果的に熱源方向に対してのみ発生し、その結果、表面に与えられた熱エネルギーの多くは、薄膜構造体の裏面まで移動しない。本発明の一実施形態による薄膜構造体においては、遠赤外放射は、薄膜構造体の表面から20μmより浅い位置から生じる。
 薄膜構造体は、室温300K(27℃)のときに、放射される遠赤外線の波長が5μm~30μmであることが好ましい。理論的には、黒体の単位表面からの放射量を表すプランクの放射則と、プランクの放射則を全波長領域にわたって積分することにより得られるステファン-ボルツマンの法則とから、温度300Kにおいて波長5μm~30μmの間の波長域での放射量は、全波長領域にわたる放射量の約88%となる。したがって、本発明に係る薄膜構造体も、5μm~30μmの波長の遠赤外線を放射するものであれば、効果的な熱移動抑制効果を奏する。
(3)熱浸透率が小さい(容積比熱及び熱伝導率が小さい)
 本発明に係る薄膜構造体は、空気を内部に含んだ中空微粒子が稠密に分布しているため、熱伝導率が小さく、かつ密度が小さいため容積比熱が小さいという特徴を有する。結果として、薄膜構造体は、熱浸透率が小さく、深部に到達する熱エネルギーが小さくなり、裏面に到達する熱エネルギー量が減少するという利点を有する。具体的には、本発明に係る薄膜構造体の熱浸透率は、500J/(m・s0.5・K)より小さい。なお、熱浸透率Teは、非定常熱伝導において単位体積における温度変化のしやすさを表す指標であり、以下の式で表される。
  Te=Tc×ρC
 ここで、Tcは熱伝導率、ρは密度、Cは比熱、ρCは容積比熱を表す。
(4)中空微粒子の屈折率と基剤の屈折率との差が大きい
 本発明に係る薄膜構造体においては、基剤の屈折率と中空微粒子の屈折率との差が大きい。中空微粒子は、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化第二鉄(Fe)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)、二酸化ケイ素(SiO)若しくは三酸化アンチモン(Sb)のいずれか又はこれらの組み合わせを含むものであることが好ましいが、これらの金属酸化物の一部の屈折率は、非特許文献1に求めることができる。これによると、5μmから25μmの波長領域、特に室温付近における黒体放射のピーク波長である10μm付近では、格子振動があるために複素屈折率は波長によって大きく変動し、基剤となる樹脂との屈折率差が大きい波長領域が存在する。その波長領域では、金属酸化物と基剤との界面における反射や散乱が容易に発生し、その結果、赤外放射の表面からの侵入深さが浅くなり、赤外放射の発生する最深部の位置が浅くなる。屈折率の差は、波長8μmから13μmの間の少なくとも一点において0.5よりも大きいことが好ましい。
(5)表面積が大きい
 本発明に係る薄膜構造体は、表面から少なくとも第1の位置まで中空微粒子が稠密に分布しており、その中空微粒子が表面に現れているため、表面積の大きい表面となっている。このことは、図2に示される薄膜構造体の平面写真からも明らかである。したがって、薄膜構造体内部で放射された遠赤外線は、表面から薄膜構造体の外部に効率的に放出されるという特徴を有するとともに、対流熱伝達による熱の移動も効率的に生じるというという特徴を有する。
 本発明に係る薄膜構造体の厚みは、50μm~50mmであることが好ましい。50μmより薄い薄膜構造体では、熱移動抑制による効果が十分に得られない。一方、50mmより厚い薄膜構造体では、費用対効果が低下する。
[薄膜構造体の構成]
 以下に、本発明に係る薄膜構造体の構成を説明する。
(基剤)
 本発明に係る薄膜構造体は、液体状態の基剤(以下、液状基剤という)に中空微粒子を混合することによって得られる薄膜原料を乾燥させて硬化させたものであり、液状基剤が硬化した部分である固化状態の基剤中に中空微粒子が存在した状態となっているものである。液状基剤は、樹脂と水と各種の添加剤とを加えて十分に攪拌することによって得られる。
 液状基剤は、樹脂に、水と、必要に応じて、顔料、中空微粒子安定剤、中空微粒子平準化剤、紫外線吸収剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、造膜助剤などといった添加剤とを加え、十分に攪拌して混合することによって得られる。本発明において使用可能な樹脂の具体例として、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などを挙げることができる。樹脂は、樹脂エマルジョンであることが好ましい。樹脂エマルジョンとして、アクリル樹脂エマルジョン、アクリルシリコン樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン又はエポキシ樹脂エマルジョンなどを用いることができる。これらの樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
 一般に、中空微粒子の含有率を多くすると、薄膜構造体の強度が低下し、薄膜構造体とその構造体を積層する表面との積層性(付着性)が低下して、構造物の表面に施工することが難しくなる。したがって、構造物の表面に対する施工性を向上させるために、液状基剤の流動性を高めることが好ましい。液状基剤の流動性は、使用する樹脂の種類及び混合比率を適切に選択することによって調整することができる。樹脂の混合比率は、液状基剤100容積%に対して、約60容積%~約70容積%であることが好ましい。
 液状基剤には、乾燥したときに含まれる中空微粒子の配置を安定させるために、中空微粒子安定剤を混合することが好ましい。中空微粒子安定剤として、中空微粒子の平均粒子径より小さい微粒子を用いることができる。こうした微粒子は、同時に遮熱効果をもたらす微粒子であることがより好ましい。こうした微粒子として、例えばカーボン微粒子や酸化チタン(TiO)の微粒子などを用いることができる。
 また、中空微粒子を液状基剤中に一様に分散させることができるように、中空微粒子平準化剤を混合することが好ましい。中空微粒子平準化剤として、例えばシランカップリング剤などといった、有機材料と無機材料との界面における接着性の改良に効果的な成分を用いることができる。
 さらに、紫外線からの基剤の劣化を防止する目的で、例えば紫外線吸収ポリマーなどといった紫外線吸収剤を基剤に混合することが好ましい。また、薄膜構造体に防藻性を付与する目的で、例えば酸化カルシウムなどといった防藻効果を奏する物質を基剤に混合することが好ましい。
 液状基剤には、必要に応じて各種の添加剤を添加することが好ましい。添加剤として、増粘剤、分散剤、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、造膜助剤などといった、公知の添加剤を用いることができる。本発明においては、基剤中に含まれる中空微粒子の量が極めて多いため、液状基剤に中空微粒子を投入した後は、十分に攪拌する必要がある。十分な攪拌を行うにあたっては、気泡の発生が問題になることが多く、したがって消泡剤を適切なタイミングで使用することが好ましい。また、中空微粒子を液状基剤に投入する際には、全量を一度に投入するのではなく、数回に分けて投入することが好ましい。
(中空微粒子)
 本発明に係る薄膜構造体に含まれる中空微粒子は、金属酸化物を含む中空の粒状体である。中空微粒子は、液状基剤中に均一に混合することができ、その機械的特定を損なわないものであればよい。中空微粒子に含まれる金属酸化物として、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化第二鉄(Fe)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)、二酸化ケイ素(SiO)若しくは三酸化アンチモン(Sb)のいずれか又はこれらの組合せを用いることができる。本発明においては、中空微粒子として、これらの金属酸化物を含む中空構造のアルミノ珪酸ソーダガラスを用いることが最も好ましい。
 本発明に係る薄膜構造体に用いることが可能な中空微粒子は、平均粒径が10μm~100μmであることが好ましく、密度が0.05g/cc~0.3g/ccであることが好ましい。
 中空微粒子は、多孔質であることが好ましい。多孔質の中空微粒子を用いることによって、薄膜構造体が調湿機能を備えるため、例えば薄膜構造体を建築物の内壁に積層した場合に室内の快適性が向上するという利点がある。
[薄膜構造体の用途]
 本発明に係る薄膜構造体は、空間を隔てる境界の一方から他方への熱移動を抑制することを必要とする用途であれば、あらゆる用途に用いることができる。薄膜構造体は、構造体単独で用いることもできるし、何らかの基材上に又は構造物の壁面に積層して用いることもできるし、何らかの容器の表面に積層して用いることもできる。薄膜構造体を基材に積層して用いる場合には、基材として、例えば、木材、金属、テープ、樹脂などを挙げることができる。薄膜構造体を積層する構造物として、例えば、建築物、自動車、鉄道車両、船舶などを挙げることができる。
 以下に、本発明の一実施例について説明する。
 本実施例においては、金属酸化物として、酸化アルミニウム(Al)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)及び酸化チタン(TiO)を、概ね3:1:1:1の割合で含むアルミノ珪酸ソーダガラスを用いた。主成分である二酸化ケイ素(SiO)の含有比率は、約75%であった。基剤については、硬化前の液状基剤に含まれる成分の比率は、表1に示すとおりであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 表1の各種成分を準備し、これらを十分に混合、攪拌することによって、液体状態の基剤を得た。この液体状態の基剤100重量部に対して、上述のアルミノ珪酸ソーダガラス(中空微粒子)18重量部を混合することによって、中空微粒子を含む液体状態の薄膜原料を得た。このときの中空微粒子の含有率は60容積%であった。こうして得られた薄膜原料を、建物の壁や金属板などの基材に塗布し、乾燥させることによって、中空微粒子の含有率が80容積%の薄膜構造体を得た。なお、薄膜原料は、中空微粒子の含有量が多いため、短時間で滑らかさが失われて、基材に塗布できなくなる。したがって、塗布の際には、薄膜原料をエタノールで適宜希釈し、基剤を滑らかにして基剤内で中空微粒子を適切に分散させることにより、基材に塗布した。必要に応じて薄膜原料を塗り重ねることによって薄膜構造体を得る必要がある場合には、塗り重ねごとに必要に応じてエタノールを追加しながら行うことが好ましい。エタノールは、乾燥の過程で揮発するため、最終的に得られる薄膜構造体には残存しない。中空微粒子の含有率が80容積%より大きい薄膜構造体は、基剤100重量部に対して混合する中空微粒子の量を、最終的に必要な含有率となるように適宜設計することにより、得ることができる。
(薄膜構造体の熱物性値)
 表2は、本発明に係る薄膜構造体(実施例)及び比較用断熱性塗膜(比較例)について、25℃における熱物性値の比較を示す。実施例の試料は、本発明に係る薄膜構造体の薄膜原料を、1cm×1cm及び5cm×5cmの銅板に必要な厚みで塗布し、それぞれ乾燥させることによって得た。乾燥後の薄膜構造体の厚みは283μm、中空微粒子の含有率は92容積%であった。1cm×1cmの試料を用いてレーザフラッシュ法によって熱拡散率を測定し、熱拡散率から熱伝導率及び熱浸透率を導出した。導出に必要な密度については、5cm×5cmの試料を用いて、試料の重量及び厚さを測定することにより計測し、比熱については、5cm×5cmの試料から剥離した薄膜を用いて示差走査熱量計によって測定した。
 一方、比較例は、原料成分として、表1に記載の成分からなる断熱性塗料を、1cm×1cm及び5cm×5cmの銅板に塗布し、それぞれ乾燥させることによって得た。乾燥後の塗膜の厚みは、421μmであった。比較例の熱物性値の測定方法は、実施例と同様である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 実施例の薄膜構造体は、比較例と比べて、密度、熱伝導率及び熱浸透率が小さい。このような特徴により、本発明に係る薄膜構造体は、表面に熱エネルギーが照射されたときに表面の温度が速やかに上昇するという性質を有する。また、熱伝導率及び密度が小さいため、本発明に係る薄膜構造体は、容積比熱が小さく、その結果として、深部に到達する熱エネルギーが小さくなり、裏面に到達する熱エネルギー量が減少するという性質も有する。
 また、表3には、薄膜構造体について、中空微粒子の含有率を変化させたときの熱物性値の比較を示す。表3に示される各試料の熱物性値の測定方法は、表2の実施例の場合と同様であった。表3において、CG50は、中空微粒子の含有率が50容積%の試料であり、同様に、CG70、CG80は、それぞれ70容積%、80容積%の資料である。また、CG91、CG92は、いずれも含有率が90容積%の試料である。中空微粒子の含有率が80容積%以上の薄膜構造体は、熱浸透率が500J/(m・s0.5・K)より低いことが分かる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
(熱移動抑制効果に関するモデル試験)
 モデル試験設備を用いて、本発明に係る薄膜構造体を積層した壁の熱移動抑制効果を実証した。具体的には、株式会社マルイ製の人工気象装置を用いて室内環境(室内室)及び屋外環境(室外室)を構築し、室内室と室外室とを隔てる壁の室外室側に薄膜構造体を積層した場合としない場合とについて、赤外放射量(W/m)を測定した。赤外放射量は、室外室側に設置された赤外放射計によって測定した。室内室と室外室とを隔てる壁として、薄膜構造体を積層した錆止め処理済みの鉄板(実施例)と、薄膜構造体を積層しない錆止め処理済みの鉄板(比較例)とを用いた。なお、実施例の鉄板と比較例の鉄板は同一のものである。鉄板の大きさは1m×1m、厚みは1mm、薄膜積層体の厚みは400μmであった。
 人工気象装置は、以下のプログラムで作動させた。図3は、以下のプログラムにおいて設定された設定温度及び設定日射量の時間経過を示す。
(冬季想定)
a.室外室、室内室ともに温度10℃で安定させた後、室内室を30℃まで昇温
b.室内室を10℃まで降温して安定させた後、室外室に95W/mの日射を照射
c.照射停止して安定後、室外室に515W/mの日射を照射
d.照射停止し、安定化
(夏季想定)
e.室外室、室内室ともに温度30℃で安定させた後、室内室を10℃まで降温
f.室内室を30℃まで昇温して安定させた後、室外室に95W/mの日射を照射
g.照射停止して安定後、室外室に515W/mの日射を照射
h.照射停止して安定後、室内室を10℃まで降温し、同時に515W/mの日射を照射
i.照射停止し、安定化
 図4は、本モデル試験の結果による薄膜積層体の熱移動抑制効果を示す図であり、具体的には、試験時間の経過に伴う赤外放射量の測定値の変化を示すものである。赤外放射は、室内室と室外室とを隔てる壁からの室外室側への放射である。図中の「暖房時」「冷房時」「日射照射」は、それぞれ、暖房状態を想定した温度設定、冷房状態を想定した温度設定、及び、日光又は人体による熱エネルギー照射の時間を示す。赤外放射量は、赤外放射計の測定値を赤外放射計自身の温度を用いて補正した。
 図4から、薄膜構造体の熱移動抑制効果について、以下のように説明することができる。
(1)経過時間2時間付近(上記プログラムaの操作の時点)、12時間付近(上記プログラムeの操作の時点)及び18時間以降(上記プログラムhの操作の時点)において、室内室における温度の上昇及び下降に対して、比較例では赤外放射量が増大しているが、実施例では赤外放射量は変化していない。このことから、実施例の場合には室内室における温度の変化が室外室側に影響を与えておらず、実施例の壁は熱移動抑制効果があることがわかる。
(2)経過時間4時間付近(上記プログラムbの操作の時点)、7時間付近(上記プログラムcの操作の時点)、14時間付近(上記プログラムfの操作の時点)、17時間付近(上記プログラムgの操作の時点)及び19時間付近(上記プログラムhの操作の時点)において、いずれも実施例の赤外放射量が比較例の赤外放射量より大きい。これは、実施例の場合には、壁の熱浸透率が低いため日射照射時において壁の表面のみ温度が速やかに上昇するとともに深部まで熱が伝わらず、その結果、壁表面からの赤外放射量が大きくなっているものと考えられる。
(3)室内環境の快適性及び暖冷房負荷に関する効果という観点からみた場合における実施例の壁(すなわち、本発明に係る薄膜構造体が施工された壁)の優位性は、以下のように説明することができる。
(ア)経過時間2時間付近の結果より、実施例の壁の場合には、冬季暖房時に室内から室外に暖房熱が逃げにくいため、暖房効率が高くなり、暖房負荷の低減が可能であることがわかる。
(イ)冬季の暖房時の結果は、室内室と室外室との位置づけを交換し、室内室側に薄膜構造体を施工した場合における夏季の冷房時の効果と考えることができる。したがって、経過時間2時間付近の結果より、実施例の壁の場合には、夏季の冷房時における室内室側への壁からの放射熱が小さく、室内の快適性を維持することができることが分かる。
(ウ)経過時間4時間付近における日射照射の結果は、室内側に薄膜構造体を施工した場合において、室内側に人体又は他の何らかの発熱体がある場合の効果と考えることができる。したがって、経過時間4時間付近の結果より、人体又は他の何らかの発熱体からの赤外放射によって誘起される壁からの赤外放射量が、実施例の方が比較例より大きいことから、実施例の壁を用いることによる暖房負荷の低減が可能であることが分かる。
(エ)経過時間12時間付近の結果より、実施例の壁の場合には、夏季の冷房時における室外側の熱が室内側に移動しにくいため、冷房効率が高くなり、冷房負荷の低減が可能であることがわかる。
(オ)上記(イ)と同様に、夏季の冷房時の結果は、室内室と室外室との位置づけを交換し、室内室側に薄膜構造体を施工した場合における冬季の暖房時の効果と考えることができる。したがって、経過時間12時間付近の結果より、実施例の壁の場合には、冬季の暖房時における室内室側への壁からの熱放射が大きく、室内の快適性を維持することができることがわかる。
(熱移動抑制効果に関するシミュレーション)
 本発明に係る薄膜構造体が熱移動抑制効果を有することを示すための計算機シミュレーションを行った。シミュレーションにおいては、本発明に係る薄膜構造体の実施例として表3に示される「CG91」の試料の物性値を用い、比較例として表3に示される「CG50」の試料の物性値を用いた。計算方法としては、輻射輸送方程式をもとに二流束法で与えられる式を用い、計算機シミュレーションにより、厚さ1mmの薄膜構造体を通過する熱量を求めた。輻射輸送方程式及び二流速法については、例えば、非特許文献2によって知ることができる。用いた計算モデルを図5に示す。表4には、シミュレーションに用いた薄膜構造体CG50及びCG91の物性値を示す。CG50及びCG91の中空微粒子含有率は、それぞれ50容積%及び90容積%である。十分に大きな薄膜構造体の表側空気層の温度は20℃(293K)、裏側空気層の温度は0℃(273K)と仮定した。また、熱流を十分に確保するために、表側空気層から200(W/m2)の赤外放射が入射し、すべて吸収されると仮定した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 図5に示される計算モデルの各記号の意味は次の通りである。
:薄膜構造体の表側空気層の温度
:薄膜構造体の裏側空気層の温度
eH:薄膜構造体の表側の減衰係数(吸収係数と散乱係数の和。非特許文献3を参照。その逆数が赤外放射の侵入深さ(第2の位置)に相当する。図5においては、侵入深さを表すために逆数KeH -1で示した)
eL:薄膜構造体の裏側の減衰係数(KeHと同様に、図5においては、侵入深さを表すために逆数KeL -1で示した。裏側の侵入深さは固定値30μmとした)
in:表側空気層から薄膜構造体表面へ入射する赤外放射量
:薄膜構造体の表側方向に向かう赤外放射量
:薄膜構造体の裏側方向に向かう赤外放射量
irH:薄膜構造体の表側空気層から表面へ入射する、空気層を熱源とする赤外放射量
irL:薄膜構造体の裏側空気層から裏面へ入射する、空気層を熱源とする赤外放射量
SH:薄膜構造体の表側面の位置
SL:薄膜構造体の裏側面の位置
cH:薄膜構造体の表側面での対流によって移動する熱量
cL:薄膜構造体の裏側面での対流によって移動する熱量
tot:薄膜構造体を移動する熱量
 シミュレーションの結果を図6に示す。図6の横軸は、遠赤外放射の最深部(すなわち第2の位置に相当)であり、縦軸は、薄膜構造体を通過する熱量である。この結果から、以下のことがわかる。
(1)第2の位置に関わらず、CG91は、CG50より薄膜構造体の裏面まで移動する熱量が小さい。これは、薄膜構造体の熱伝導率又は熱浸透率の違いによるものであり、全体に3.5%程度の差がみられる。
(2)CG50、CG91ともに、約20μmの位置で移動熱量が大きく変化しており、その位置より小さい位置の方が、薄膜構造体の裏面まで移動する熱量は小さい。このことは、遠赤外放射の最深部の位置が20μm以下であることがより好ましいことを意味する。
 

Claims (7)

  1.  単独で又は基材の少なくとも一方の面に積層されて用いられる、熱移動抑制効果を呈する薄膜構造体であって、
     金属酸化物を含む中空微粒子と固化状態の基剤とを含み、
     前記中空微粒子は、前記薄膜構造体の一方の表面から深さ方向に少なくとも第1の位置まで、前記基剤内において稠密に分布しており、
     前記表面に対して熱エネルギーが照射されたときにおける遠赤外放射の最深部の位置が、前記表面から前記第1の位置までの距離より小さい第2の位置に存在し、
     熱浸透率が500J/(m・s0.5・K)より小さい、
    条件を満足する熱特性を有する、薄膜構造体。
  2.  少なくとも前記表面から前記第1の位置までにおいて、前記中空微粒子の含有率は80容積%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜構造体。
  3.  前記金属酸化物は、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化第二鉄(Fe)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)、二酸化ケイ素(SiO)若しくは三酸化アンチモン(Sb)のいずれか又はこれらの組合せであることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜構造体。
  4.  前記第2の位置は、前記表面から20μm以下の位置であることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜構造体。
  5.  前記遠赤外放射による放射線の波長は5~30μmであることを特徴とする、請求項1
  6.  請求項1~5のいずれかに記載の薄膜構造体が表面に積層されたことを特徴とする構造物。
  7.  請求項1~5のいずれかに記載の薄膜構造体が基材に積層された積層体。
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