WO2017014102A1

WO2017014102A1 - 衛生マスクシステム、消耗部品及び空気殺菌装置

Info

Publication number: WO2017014102A1
Application number: PCT/JP2016/070524
Authority: WO
Inventors: 新吾松井
Original assignee: 株式会社トクヤマ
Priority date: 2015-07-22
Filing date: 2016-07-12
Publication date: 2017-01-26
Also published as: JP6124956B2; CN107846995A; JP2017025430A

Abstract

従来の一般的な衛生マスクに比べて遥かに高い感染症予防効果が期待でき、しかも、携行し易く、取扱が簡便で、装着時において感じるストレスや美観の低下が許容範囲内であり、更に、長時間使用できる衛生マスクシステムを提供する。　装着時において装着者の鼻口部を覆う面体を耳掛けストラップなどの固定手段によって装着時において気密性を持って装着者の鼻口部を覆うように固定すると共に、呼吸時において、紫外線発光ダイオードを有する空気殺菌装置で殺菌された空気を、肺力吸引によって連結ホースを介して面体の吸気口から吸入でき、呼気を面体の排気口から排気するようにした衛生マスクシステムであって、前記面体を中央部に開口を有する面体枠部材と、該開口を塞ぐ非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムで要部が構成されるカバー部材とで構成した。

Description

衛生マスクシステム、消耗部品及び空気殺菌装置

　本発明は、新規な衛生マスクシステム、この衛生マスクシステム用の消耗部品及びこの衛生マスクシステムで使用される空気殺菌装置に関する。

　感染症予防の目的で、多くの人が集まるパブリックスペースにおいて衛生マスクを着用する人が増えている。こうした目的で使用される衛生マスクとしては、安価で使い捨てできるという利点から、フィルター機能を有する不織布の左右両側に耳掛部を設け、鼻口部を覆うようにした簡単な構造のものが広く普及している（特許文献１及び２参照）。

　しかしながら、このような汎用的な衛生マスクの着用による感染症予防には限界がある。すなわち、汎用的な衛生マスクにおける不織布（フィルター）で除去できる粒子径（カットオフ径）は高機能のものでも０．１μｍ程度であり、飛沫感染の防止には一定の効果を有するもののウイルスや細菌そのものの侵入を防止することはできない。また、その簡単な構造に起因して、装着時においてマスクと装着者の顔面部との間に隙間が生じ易く、この隙間を通じて飛沫が侵入することがある。

　これに対し、一般的に隙間が生じにくいマスクとしては呼吸器マスク、防塵マスク、ホースマスクなどが知られている。たとえば、特許文献３には、呼吸器マスク用のものとして、「顔面開口部と、空気の通過のためのスロットと、前記顔面開口部のまわりに間隔をあけられた少なくとも１つの装着部とを有するマスクシェルと、ホースコネクタと、前記マスクシェルに対して嵌合するよう適合される輪郭のついた開口部とを有する可動インターフェイスとを含み、前記可動インターフェイスの前記輪郭のついた開口部は、前記スロットの上で摺動可能であり、予め定められた範囲にわたって前記マスクシェル上に位置決めすることができ、さらに、遠位端および近位端を有する可撓性の側壁を含み、前記側壁の前記遠位端に位置する丸みのついた外側シール部と、前記遠位端と近位端との間に位置する丸みのついた内側シール部とを含み、前記内側シール部は、前記外側シール部よりも厚く、前記マスクシールの内面のまわりで連続しておらず、前記近位端に隣接して前記側壁に埋込まれた支持リングをさらに含むマスクシールを含み、前記支持リングは、前記マスクシェルの前記少なくとも１つの装着部と係合するように適合される少なくとも１つの装着部を含み、前記マスクシールの前記近位端は前記マスクシェルに取外し可能に取付け可能であり、前記可動インターフェイスは、装着者に適合可能であるように前記マスクシェル上に位置的に調節することができ、使用時に前記マスクシールは、前記装着者の顔の領域と接することにより内方に変形することができる、呼吸器マスクシールおよびシェル」が記載されている。

　また、特許文献４には、「吸気口の内側と排気口の外側とのそれぞれに逆止弁が取り付けられた面口部材を有し、前記吸気口における前記逆止弁よりも内側の部位および前記排気口における前記逆止弁よりも外側の部位の少なくとも一方の部位にその一方の部位に近接配置されている前記逆止弁が開放状態にあることを感知可能なセンサを備え、近接配置されている前記逆止弁が、環状の弁座に開閉可能に当接する円盤状の薄膜部と、前記弁座の径方向中央に形成された取付け部位に固定可能であって前記薄膜部から直立している取付け用軸部と、を有するマスク」が開示されている。

　一方、ホースマスクに関しては、紫外線（ＵＶ）殺菌機能を付加したものが知られており、当該機能の付加により感染症予防効果を著しく高めることができる。このようなホースマスクシステムとしては、「空気入口および空気出口を有するフェイスマスクと、周囲の空気からの空気を受け入れるための第１の入口と、前記フェイスマスクの前記空気入口に接続される出口を有する気流ハウジングを含む殺傷チャンバーと、ＵＶ光源と、前記気流ハウジングを通る空気流を生成するためのファンまたはブロワと、前記周囲の空気から入ってくる空気をろ過するための粒子フィルターと、を備えるシステム」が知られている（特許文献５参照）。

　さらに、電動ファン付き呼吸保護具（マスク）における清浄化空気の送気ユニットとして、「空気吸入口用開口部と空気排出用開口部とを有する殺菌室を有する筐体と、２００～３５０ｎｍの波長を有する深紫外線を出射する紫外線発光素子と、を含んでなる空気殺菌ユニットであって、前記紫外線発光素子を前記殺菌室の内部に向かって深紫外線を出射するように前記筐体に設置し、前記殺菌室の内壁面表面の少なくとも一部を紫外線反射材で構成して該紫外線発光素子から出射された深紫外線が前記殺菌室内に存在する空気を通過した後に該紫外線反射材で構成された内壁面表面で反射されて、該空気を更に１回以上通過するようにした空気殺菌ユニット内に電動ファンを配置したもの」が知られている（特許文献６参照）。なお、特許文献６では、殺菌室の構造は説明されているものの、呼吸保護具と組み合わせたシステム全体についての具体的説明はない。

特開２００７－２１０３２号公報特許第３９０７５００号公報特開２０１１－９２７６２号公報特許第４１１０１１０号公報特開２００９－５１４６５４号公報特開２０１４－１００２０６号公報

　感染症予防の観点からすると、吸気（呼吸時において吸い込む空気）を殺菌するための空気殺菌装置が必要であり、マスクシステムにおいては外気を混入させずに殺菌された空気のみを吸い込むようにする必要があると考えられる。また、一般人が通常の日常生活において使用するためには、空気殺菌装置を含むマスクシステムは簡便に携行できるものであることが好ましい。

　ところが、鼻口部を覆う不織布が有するフィルタリング（濾過）機能により浄化を行う従来の一般的な衛生マスクには、前記したような問題がある。また、呼吸器マスク、防塵マスク、ホースマスクなどは、鼻口を覆い外気を遮断する面体自体に浄化機能はなく、面体に直接又はホースを介して浄化装置又は清浄空気供給手段を接続することにより浄化空気の呼吸を可能にするものであるが、必ずしも殺菌は考慮されておらず、感染症防止効果には疑問がある。さらに、殺菌機能を有する浄化装置を有するものも知られているが、それは一般人が感染症予防のために携行して簡便に使用することを想定しているものではなく、また、重装備である。このため、持ち運びに不便であるばかりでなく装着したときにストレスを感じ、更にファッション性も著しく低い。

　携行を想定したものとしては、前記特許文献５に開示されているシステムが知られているが、該システムについては、殺傷チャンバーの構造が複雑で、ファン又はブロアー、及び相当重量のバッテリーパックを必要とするため、重装備となる点は上記と同様であり、やはり日常的な使用には適さない。さらに、紫外線光源、送気用のファン又はブロアー及び（バッテリーパック）冷却用のファンを駆動させるため多大な電力を要し、このことによって相当重量のバッテリーパックを使用しても連続稼働できる時間は高々８時間程度である。

　そこで、本発明は、従来の一般的な衛生マスクに比べて遥かに高い感染症予防効果が期待でき、しかも、携行し易く、取扱が簡便で、装着時において感じるストレスや美観の低下が許容範囲内であり、更に、省電力で長時間使用できる衛生マスクシステム、この衛生マスクシステム用の消耗部品及びこの衛生マスクシステムで使用される空気殺菌装置を提供することを目的とする。

　本発明の一形態に係る衛生マスクシステムは、装着時において装着者の鼻口部を覆う面体と、空気殺菌装置と、連結ホースと、を有する衛生マスクシステムであって、前記面体は、装着時において前記面体が気密性を持って装着者の鼻口部を覆うように固定する固定手段と、吸気弁を有する吸気口と、排気弁を有する排気口と、を有し、前記面体は、中央部に開口を有し装着時において被着者の顔面と密接する面体枠部材と、装着時において前記面体枠部材の中央部の開口を塞ぐ、非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムで要部が構成されるカバー部材と、を含んでなり、前記固定手段は前記面体枠部材又は前記カバー部材に付属しており、前記空気殺菌装置は、流入口及び殺菌空気排出口を有する殺菌室と、紫外線発光ダイオードと、を含み、装着時において、前記面体の吸気口と前記空気殺菌装置の殺菌空気排出口とは前記連結ホースによって気密に連結されることを特徴とする。

　上記衛生マスクシステムにおいては、美観又はファッション性の観点から、装着時において、前記カバー部材の任意の高さにおける幅は前記面体枠部材の同一の高さにおける幅より常に長くなっており、裏側に存在する面体枠部材を目隠しすることが好ましい。

　上記衛生マスクシステムにおいては、前記カバー部材及び前記面体枠部材の少なくとも一方は、両者を着脱可能に接合するための接合手段を有し、前記カバー部材と前記面体枠部材とは装着時において前記接合手段により互いに接合されて前記面体を構成することが好ましい。

　また、前記面体枠部材と前記空気殺菌装置とを前記連結ホースにより連結して形成される流路における圧力損失（ΔＰ１）が、前記面体の圧力損失（ΔＰ２）よりも小さいことが好ましく、ΔＰ１がΔＰ２の５０％以下であることがさらに好ましい。さらに、前記圧力損失（ΔＰ１）が、前記面体枠部材と前記空気殺菌装置とを前記連結ホースにより連結して形成される流路の下流側を減圧にして、２５℃の環境温度下で８リットル／分の流速で空気を流通させた時の圧力損失であり、その値が５．０ｍｍＨ_２Ｏ／ｃｍ^２未満、特に２．０ｍｍＨ_２Ｏ／ｃｍ^２未満であることが好ましい。

　さらに、前記空気殺菌装置において、複数の紫外線発光ダイオードが放熱用フィンを有するヒートシンク基板上に載置されており、前記放熱用フィンは、吸息時に発生する気流により前記紫外線発光ダイオードから発生する熱を放熱できるように配置されていることが好ましい。

　本発明の一形態に係る衛生マスクシステム用の消耗部品は、非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムで要部が構成されるカバー部材と、装着時において前記面体が気密性を持って装着者の鼻口部を覆うように保持する保持部材と、を有することを特徴とする消耗部品である。

　本発明の一形態に係る衛生マスクシステムで使用され得る空気殺菌装置は、該空気殺菌装置は、空気流入口及び殺菌空気排出口を有する殺菌室と、複数の紫外線発光ダイオードと、を含み、前記複数の紫外線発光ダイオードから出射される紫外線によって前記殺菌室内に存在する空気を殺菌する空気殺菌装置であり、前記複数の紫外線発光ダイオードは、放熱用フィンを有するヒートシンク基板上に載置されており、前記放熱用フィンは、肺力呼吸における吸息時に発生する気流により前記紫外線発光ダイオードから発生する熱を放熱できるように配置されていることを特徴とする空気殺菌装置である。

　本発明の衛生マスクシステムは、紫外線殺菌による浄化を取り入れることにより従来の衛生マスクに比べて遥かに高い感染症予防効果が期待でき、しかも携行しやすく取扱が容易である。また、肺力吸引型としても使用できるという特長を有する。また、肺力吸引型とした場合には、ブロアーやファンを駆動させるための電力が不要となり、バッテリーは、主として消費電力の小さいＵＶ－ＬＥＤの点灯に使用されることになるので、長時間の連続使用が可能となる。したがって、本発明の衛生マスクシステムは、一般人が感染症予防目的で日常的に使用するのに適した衛生用品であるといえる。

　また、本発明の衛生マスクシステムでは、カバー部材によって面体枠部材を目隠しすることにより、装着時に受ける印象を汎用的な衛生マスクを装着したときに受ける印象に近づけることができる。したがって、ファッション性を気にするユーザーにとっても装着に対する抵抗感を低減することができる。

　さらに、本発明の衛生マスクシステムは、面体、連結ホース及び空気殺菌装置を容易に（例えばワンタッチで）組立・分解できる構造とすることにより、それぞれを分解した形で持ち運び、必要に応じて適宜組み立てて使用できるので利便性が高い。さらに、汚れやすく壊れやすいカバー部材や面体枠部材を消耗部品とし、使い捨てにすることもできるので、クリーニングなどのメンテナンスに要する手間を大幅に削減することが可能である。さらに、カバー部材と面体枠部材とを取り外し可能に分けることにより、たとえばカバー部材を毎回交換し、面体枠部材は１０回程度繰り返し使用してから交換するなどのように、衛生面や耐久性を考えて交換（使い捨てにする）タイミングをずらすこともできるので経済的である。

本図は、本発明の一実施形態に係る衛生マスクシステムにおける面体の概略図である。本図は、図１に示す面体を装着した時の概略図である。本図は、図１に示す面体を装着した時の別の概略図である。本図は、本発明の一実施形態に係る衛生マスクシステムにおける別の面体の概略図である。本図は、本発明の一実施形態に係る衛生マスクシステムにおける更に別の面体の概略図である。本図は、本発明の一実施形態に係る衛生マスクシステムにおける空気殺菌装置の概略図である。本図は、図８に示す空気殺菌装置における面発光体の概略図である。本図は、本発明の一実施形態に係る衛生マスクシステムにおける別の空気殺菌装置の概略図である。本図は、本発明の一実施形態に係る衛生マスクシステムにおける更に別の空気殺菌装置の概略図である。

　本発明の一実施形態に係る衛生マスクシステムは、面体、空気殺菌装置及び連結ホースを含んでなる。ここで、面体とは、装着者の鼻口部を包むように覆って外気を遮断するマスク本体であり、付属する固定手段によって装着者の鼻口部を覆うように固定・保持されることによって、装着者の顔面と面体の間に気密性を有する空間、より具体的には、装着者の鼻口部を含む顔面の一部と、後述する面体枠部材及び該面体枠部材の中央開口部を塞ぐカバー部材と、によって画定される気密性を有する空間（以下、該空間をマスク空間ともいう。）を形成する。ここで、気密性とは、後述する吸気口及び排気口を同時に閉じた時の気密性をいい、気密性を有するとは、衛生マスク使用時において吸気口及び排気口を介さない空気の出入りが実質的にない程度の気密性を有すること意味する。なお、面体が有する前記固定手段としては、通常の衛生マスクや防塵マスクにおいて採用されている固定手段と同様な固定手段が特に限定なく採用される。このような固定手段を例示すれば、耳掛けストラップなどの耳部に掛け回して固定・保持するタイプの固定手段、頭掛けストラップ、頭部固定ベルト、頭部固定用バンドなどの頭部を締め付けながら固定・保持するタイプの固定手段を挙げることができる。

　前記面体は、衛生マスクを使用する際の吸息時においてマスク空間に吸気を導入するための吸気口と、呼息時において呼気をマスク空間外に排出するための排気口とを有する。吸気口及び排気口の夫々には逆止弁が取り付けられている。吸気口に取り付けられる逆止弁、すなわち吸気弁は吸息時に開き、呼息時に閉じる構造となっており、排気口に取り付けられる逆止弁、すなわち排気弁は吸息時に閉じ、呼息時に開く構造となっている。また、前記面体枠部材の吸気口には、連結ホースを連結するための連結ポート（面体側連結ポートともいう。）が設けられている。

　前記吸気口及び排気口に取り付けられる逆止弁としては、呼吸器マスク、防塵マスク、ホースマスクで採用されているものが特に限定なく採用できるが、呼吸時の圧力損失が低く、且つ軽量であるものを使用することが好ましい。このような逆止弁としては、たとえば特許文献２（特許第３９０７５００号公報）又は特許第３３５９０３３号公報に開示されているような逆止弁、即ち、「第１部分及び第２部分を有する可撓性フラップを備え、上記第１部分は弁座に取り付けられ、該弁座はオリフィス及びシール面を有し、該シール面は側面から見ると凹湾曲を有し、上記可撓性フラップは、流体がオリフィスを通過していないときシール面の凹湾曲と接触し、上記可撓性フラップの第２部分は、流体がオリフィスを通過しているときシール面から自由に持ち上がり、（ｉ）変形曲線に対して垂直に、変形曲線沿いに作用する一定力、（ii）重力の方向に作用する力であって、可撓性フラップの第２部分の質量と、少なくとも１重力単位の加速度との積に等しい大きさを有する力、又は、（ｉ）及び（ii）を組み合わせた力を加えた可撓性フラップの第２部分が示す変形曲線に一致する凹湾曲を備えることを特徴とする逆止弁」などが例示される。

　吸気口に設けられている面体側連結ポートは、連結ホースと連結するための連結手段を有している。連結手段としては、例えばカップラー継手のようにワンタッチ式で連結できるような連結手段が好適に採用され、この場合、面体側連結ポートにはカップラーのソケット又はプラグが取り付けられ、連結ホース側にはプラグ又はソケットが取り付けられる。

　前記面体は、面体枠部材と、カバー部材と、を含んでなる。以下、面体枠部材及びカバー部材について、更に詳しく説明する。

　本実施形態において、面体枠部材とは、装着時において装着者の顔面と密接する、中央部が開口した環状枠部材を意味する。面体枠部材は顔面との密着性を高めるためにその顔面と直接接触する部分に配置される「接触部」と、該接触部以外の「本体部」とを有する。接触部は、ウレタンフォーム、ポリオレフィンフォーム、ゴムスポンジなどの発泡樹脂、シリコーンゴム、熱可塑性エラストマーなどの可撓性、適度な柔軟性及び弾性を有する材質で構成されることが好ましい。防汚性、気密性及びコストの観点からは、シリコーンゴムまたは独立気泡を有する発泡樹脂を用いることが好ましい。また、本体部は、強度、軽量性、価格等の観点から、ポリオレフィン、ポリスチレン、ＰＥＴ（polyethylene terephthalate）、ＡＳ樹脂、ＡＢＳ樹脂等で構成されることが好ましい。面体枠部材は持ち運び易さの観点から、ヒンジ機構などを用いて折り畳み式としてもよい。前記接触部は、顔面と直接接触するため、皮脂や汗などによって汚れやすく、水やアルコールなどを浸み込ませた布等でふき取り清掃を行うことにより繰り返し使用することはできるが、接触部として安価な発泡樹脂等を使用した場合には、可撓性や柔軟性、弾性が低下し、顔面にフィットしにくくなるので、面体枠部材は、数回～数十回での使用で使い捨てにする消耗部品とすることが好ましい。

　面体を構成するもう一つの部材である、カバー部材は、非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムでその要部が構成される。ここで要部とは、少なくとも、面体枠材の開口を塞ぐことになる部分を意味する。本発明の衛生マスクシステムでは、吸気として紫外線殺菌した空気を吸入することを目的としているため、吸気に紫外線殺菌されていない空気が混入することを可及的に避ける必要がある。そのため、少なくともカバー部材において、面体枠部材の中央開口部を塞ぐことになる部分は非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムで構成される必要がある。ここで難通気性とは、前記面体枠部材と前記空気殺菌装置とを前記連結ホースにより連結して形成される流路における圧力損失をΔＰ１とし、当該難通気性のシート若しくはフィルム、より具体的には、面体枠部材の中央開口部を塞ぐ部分の圧力損失をΔＰ２'としたときに、ΔＰ１＜ΔＰ２'となること、好ましくはΔＰ１がΔＰ２'の１／２以下となること、更に好ましくはΔＰ１がΔＰ２'の１／１０以下となることを意味する。このような難通気性のシート若しくはフィルムとしては圧力損失が高い不織布が使用できる。また、非通気性シート又はフィルムとしては一般的な樹脂シートまたは樹脂フィルムが使用できる。また、不織布と樹脂フィルムを積層した複合シートを用いても良い。一般に薄い樹脂フィルムは破れる危険性があり、厚い樹脂シートは柔軟性に乏しいため、紫外線殺菌されていない空気の混入を防ぎ、耐久性が高く、取扱も容易であるという理由から、樹脂フィルムを不織布で挟んだような構造を有する複合シート或いは積層シートを使用することが好ましい。

　前記吸気口及び排気口は面体枠部材、カバー部材のいずれに形成されていてもよいが、前記したように吸気口には面体枠部材側連結ポートが設けられるので、機械的強度の関係から吸気口は面体枠部材に形成されるのが好ましい。

　前記本実施形態の衛生マスクシステムにおいては、美観又はファッション性の観点から、装着時において、前記カバー部材の任意の高さにおける幅は前記面体枠部材の同一の高さにおける幅より常に長くなっており、面体枠部材を目隠しすることが好ましい。ここで、高さとは装着時における、基準レベルからの上下方向（垂直方向）の長さを意味し、幅とは左右方向（水平方向）の長さを意味する。

　面体は、面体枠部材とカバー部材とが、たとえば熱融着や接着剤等により接合された一体のものであってもよいが、面体枠部材及びカバー部材を使用時（装着前に）に組み合わせて（組み立てて）面体を構成するようにしてもよい。カバー部材は、使用時において呼気と最も接触する部分であり、一度使用した後に取り外し、時間が経過してから再び使用することに対して使用者が心理的抵抗を感じるケースが多い。このため、また衛生的理由から毎回使い捨てにすることに対する要望も高い。これに対し、面体枠部材に対しても使い捨ての要望はあるものの、再使用に対する使用者の心理的抵抗は少なく、拭取りなどの簡単な操作で浄化することもできるため、毎回使い捨にすることは不経済であり、その交換頻度は、カバー部材ほど高くする必要はない。カバー部材と面体枠部材を取り外し可能にした場合には、両者の使い捨て頻度を変えることができ、衛生的かつ経済的に長期間使用することができる。なお、カバー部材は、固定手段が面体枠部材に付属する場合は、単なる非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムであってよく、固定手段がカバー部材に付属する場合でも、その基本的な構造は従来の衛生マスクと同様であるため、安価に製造でき、使い捨てに適しており、上記要望に応えることができる。

　面体枠部材及びカバー部材を使用時（装着前に）に組み合わせて（組み立てて）面体を構成するためには、両者を着脱可能に接合するための接合手段を用いればよい。接合手段としては、両者間の接合部におけるシール性が確保でき、着脱可能に接合できる手段であれば特に限定されず、たとえば、チャック構造より両者を接合する方法、面ファスナーにより両者を接合する方法、面体枠部材の開口部周縁に土手状突起又は堤状突起を設け、これと嵌合する抑え枠を用意し、両者の間に（必要に応じてＯ－リングなどのシール材を介在させて）シート部材を挟み込んで固定する方法、面体枠部材の開口部周縁に溝を設け、該溝に嵌合するＯ－リングなどの抑え部材との間にシート部材を挟み込んで固定する方法などが採用できる。また、シール性が特に要求されない部分には、補助的な接合手段を設けてもよい。補助的接合手段としては、面ファスナー、ホックあるいはスナップボタン、クリップ機構などを挙げることができる。カバー部材に結合手段を設ける場合には、面体枠部材の本体を必要に応じて結合手段の付け根付近まで羽根状に延出させて補強用土台とし、該付け根付近にこのような補助接合手段を設けることにより、面体枠部材の固定をよりしっかりと行うことができる。

　耳掛けストラップなどの前記固定手段は、通常、面体枠部材又はカバー部材の何れか一方に付属する。固定手段が面体枠部材に付属する場合には、例えば前記特許文献３（特開２０１１－９２７６２号公報）や特許文献４（特許第４１１０１１０号公報）に開示されているような、頭部固定ベルト、頭部固定用バンドなどの固定手段が付属した面体において、吸気口及び排気口の配置を面体の周縁部に移し、面体中央部に大きな開口を設けた構造となり、接合手段により非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムからなる所定形状のカバー部材でこの中央開口部を塞ぐように接合され、面体が構成される。なお、排気口は中央開口部を塞ぐカバー部材に設けても良い。

　また、カバー部材に前記固定手段を付属させた場合には、カバー部材は、特許文献１（特開２００７－２１０３２号公報）、特開２００７－５４３８１号公報、特許第５０３８９３８号公報に開示されているような従来の一般的な衛生マスクにおいてフィルター機能を有する不織布等に代えて非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムを用いること以外はこれら一般的な衛生マスクと同様にして固定手段が付属させられた構造となる。そして、面体枠部材は、固定手段を持たない他は上記と同様にして吸気口及び必要に応じて排気口が設けられ、接合手段により上記カバー部材が面体枠部材の中央開口部を塞ぐように接合され、面体が構成される。このとき、面体枠部材は、接合手段によりカバー部材と一体化して、カバー部材に付属する固定手段により、（装着時において）顔面の所定の位置に固定・保持されることになる。一般に、カバー部材に固定手段が付属する場合の固定手段は、耳掛けストラップ（ストラップとしてはゴム紐や不織布の一部を切り取ってリング状の帯としたものなどが挙げられる。）のような簡便な構造のものとなるので、確実な固定・保持を行うために面体枠部材はできるだけ軽量化されていることが好ましい。なお、固定手段としては、耳掛けストラップが構造も簡単で軽量で嵩張らないため、携行には最も適している。したがって、固定手段はカバー部材に付属するのが好適である。

　本実施形態の衛生マスクシステムにおける空気殺菌装置は、吸気を紫外線殺菌するためのものであり、空気（外気）を導入するための流入口（空気流入口ともいう。）及び殺菌空気排出口を有する殺菌室と、紫外線発光ダイオード（ＵＶ－ＬＥＤともいう。）と、を含む。該空気殺菌装置は、その内部に滞留する空気又はその内部を流通する空気にＵＶ－ＬＥＤから出射された紫外線を照射して殺菌を行うためのものであり、被殺菌体となる空気（外気）は前記流入口から空気殺菌装置内の殺菌室に導入され、殺菌された空気（殺菌空気）は前記殺菌空気排出口から排出され、連結ホース内を通って面体の吸気口からマスク空間内に入り、吸気（吸息時に吸い込む空気）となる。

　殺菌空気排出口には、前記面体枠部材側連結ポートと同様な、連結ホースを連結するための連結ポート（殺菌装置側連結ポートともいう。）が設けられている。該殺菌装置側連結ポートは、連結ホースと連結するための連結手段を有している。連結手段としては、例えばカップラー継手のようにワンタッチ式で連結できるような連結手段が好適に採用され、この場合、殺菌装置側連結ポートにはカップラーのソケット又はプラグが取り付けられ、連結ホース側にはプラグ又はソケットが取り付けられる。

　前記殺菌室の総容積は、一回の呼吸において吸引される空気量以上であることが好ましい。一般に、安静時の正常呼吸は、成人の場合、１分間に１２～２０回の頻度で、毎回約４５０ｍｌの空気を吸息することが知られている。したがって、上記殺菌室の総容積は、５００ｍｌ以上、好ましくは５００ｍｌ以上２，０００ｍｌ以下、特に好ましくは７５０ｍｌ以上１，５００ｍｌ以下であることが好ましい。なお、本実施形態の衛生マスクシステムでは、複数の空気殺菌装置を並列的に連結して使用することもできる。この場合、複数の空気殺菌装置における各殺菌室の容積の総和が前記総容積となる。

　前記紫外線発光ダイオード（ＵＶ－ＬＥＤ）は、２００ｎｍ以上３００ｎｍ未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する深紫外発光ダイオード（ＤＵＶ－ＬＥＤともいう。）であることが好ましい。空気殺菌装置で使用するＵＶ－ＬＥＤの数は、使用するＵＶ－ＬＥＤの出力に応じて、毎回呼吸で消費される量の空気を殺菌するに十分な数であれば、特に限定されない。たとえばインフルエンザウイルスを９９．９％不活性化するのに必要な紫外線照射量は、２５４ｎｍの紫外線を照射する場合、６．６ｍＷ秒／ｃｍ^２（＝ｍＪ／ｃｍ^２）であることが知られているので、３～５秒で４５０ｍｌの空気に対して１０ｍＷ秒／ｃｍ^２の紫外線照射を行えることが一つの目安となる。ＵＶ－ＬＥＤから出射される紫外線がそのまま殺菌室内の空気に照射されるようにしてもよいし、導光板等を経由して照射するようにしてもよい。

　空気殺菌装置においては、複数のＵＶ－ＬＥＤが放熱用フィンを有するヒートシンク基板上に載置されており、前記放熱用フィンは、吸息時に発生する気流により前記ＵＶ－ＬＥＤから発生する熱を放熱できるように配置されていることが好ましい。こうすることによりＵＶ－ＬＥＤの温度上昇を抑え、出力の安定化や耐久性の向上を図ることができる。

　ＵＶ－ＬＥＤは、電源から供給される電力によって点灯（稼働）する。電源としてはバッテリー電源を使用することが好ましい。バッテリーは空気殺菌装置に内蔵されていてもよく、独立して携行し、電源コードに依ってＵＶ－ＬＥＤに電力を供給するものであってもよい。電源としては、乾電池などの一次電池やリチウム電池などの二次電池が特に制限なく使用できる。また、空気殺菌装置は、ＵＶ－ＬＥＤの順方向電流を制御するための昇圧ＤＣ－ＤＣコンバータ又はチャージポンプを用いた発光制御回路を有することが好ましい。

　空気殺菌装置は、ファンやブロアー等の送風手段を有していてもよい。しかしながら、携行の利便性およびバッテリーの消費量を減らして連続使用時間を長くできるという観点から、ファンやブロアー等の送風手段を用いない肺力吸引型とすることが好ましい。本実施形態の衛生マスクシステムでは、前記面体枠部材と前記空気殺菌装置とを前記連結ホースにより連結して形成される流路の下流側を減圧にして、２５℃の環境温度下で８リットル／分の流速で空気を流通させた時の圧力損失を、たとえば５．０ｍｍＨ_２Ｏ／ｃｍ^２未満、好ましくは特に２．０ｍｍＨ_２Ｏ／ｃｍ^２未満とすることにより、肺力吸引型とすることができる。面体の吸気口に設置される逆止弁として低圧力損失のものを使用すると共に、吸気口の口径、連結ホースの口径及び長さを調整することにより、圧力損失をこのような範囲とすることができる。

　空気殺菌装置は、その流入口に粗大な埃やごみなどの侵入を防止するためのフィルターや脱臭フィルターを配置することが好ましい。但しこれらフィルターは、装着した場合でも前記低い圧力損失を維持できるようなものであることが好ましい。

　空気殺菌装置及びバッテリーは、携行に際しては、カバン、バックパックに、流入口から外気が取り込めるような形で保持するようにしてもよく、また、専用のホルダーを用いて使用者の身体に装着するようにしてもよい。専用のホルダーとしては、たとえば、首掛け式やベストタイプのライブジャケットの気室に相当する部分に空気殺菌装置を保持するようにしたもの、ウェストポーチタイプのもの等を挙げることができる。

　本実施形態の衛生マスクシステムにおける連結ホースは、空気殺菌装置の殺菌空気排出口と面体の吸気口とを接続するためのホースであり、各種樹脂性蛇腹ホース、シリコーンゴムホースなどの可撓性（フレキシビリティー）を有するホースが特に制限なく使用できる。連結ホースの断面形状は円形であるのが一般的であるが、楕円形状や多角形であってもよい。連結ホースの口径や長さは、空気殺菌装置を携行する際の空気殺菌装置と面体との距離に応じて、前記圧力損失が好適な範囲となるように適宜決定すればよい。また、連結ホースの両端には夫々面体側連結ポート及び殺菌装置側連結ポートと連結するための連結手段が設けられ、さらに、空気殺菌装置を並列に連結させる場合には分岐管を介在させて空気殺菌装置と面体とを連結させればよい。

　以下、図面を参照して本実施形態をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの具体例に限定されるものではない。

　図１に本実施形態の衛生マスクシステムで使用される面体１００の概略図を示した。面体１００は、面体枠部材１１０とカバー部材１２０とを含み、両者が熱融着により一体化されている。カバー部材１２０は、樹脂フィルムをポリオレフィンのような熱可塑性樹脂製不織布で挟んでホットプレスして得られる複合シート（積層シート）で構成され、カバー部材１２０に耳掛けストラップからなる固定手段１３０が付属している。面体枠部材１１０は、中央に中央開口部１１８を有する環状枠部材であり、その端縁に顔面用シールのための、発泡ポリウレタン等で構成される接触部１１７を有する。また、枠本体１１１は、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂で構成される硬質または半硬質の樹脂成型体からなる。図１は模式図であるため面体枠部材１１０は直線的に表されているが、実際の面体枠部材１１０の輪郭は、一般的な装着者を想定して、その顔面形状にできるだけフィットするような１つ以上の標準のサイズ（Ｓ、Ｍ、Ｌサイズ、子供用など）および曲線的形状で形成される。面体１００においては、吸気弁１１３を有する吸気口１１２、面体側連結ポート１１４、及び排気弁１１６を有する排気口１１５は、面体枠部材１１０に配置されている。そして、図２に示すように装着者が面体１００を装着した場合には、装着者の鼻口部を含む顔面の一部と、面体枠部材１１０と、面体枠部材１１０の中央開口部１１８を塞ぐカバー部材１２０と、によって画定される気密性を有する空間であるマスク空間１４０が形成される。
　なお、本実施形態に係る面体枠部材１１０の枠本体１１１は、図１及び図２に示す構成に限定されず、例えば図３に示すように複数の貫通孔Ｈが形成されている堅硬性のカップ状の枠体であってもよい。この場合、枠本体１１１は例えばプラスチック等の合成樹脂からなるものとすることができる。

　図４に示す面体１００ａは、本実施形態の衛生マスクシステムで使用される別の面体であり、排気弁１１６ａを有する排気口１１５ａが面体枠部材１１０の中央開口部１１８を塞ぐカバー部材１２０に形成されている。

　さらに、本実施形態の衛生マスクシステムで使用される更に別の面体１００ｂを図５に示す。面体１００ｂは、カバー部材１２０と面体枠部材１１０とがそれぞれ独立しており、装着者が装着する時に、接合手段１１９によりカバー部材１２０と面体枠部材１１０が互いに接合されて面体１００ｂを構成するものである。なお、面体１００ｂにおいては、接合手段１１９として面ファスナーを用いている。

　図６に、本実施形態の衛生マスクシステムにおいて使用される空気殺菌装置２００の概略図を示す。空気殺菌装置２００は、金属、樹脂等（例えば、ポリエチレンテレフタレート等）で構成される縦長平箱状の筺体２１０を有する。筺体２１０の一方の幅面（箱の幅と高さとで囲まれた面）は開口して流入口２２０を形成し、他方の幅面には殺菌空気排出口２３０が開けられ、殺菌空気排出口２３０には殺菌装置側連結ポート２３１が設けられている。そして、本実施形態の衛生マスクシステムを使用する際には、連結ホース１５０の一端と殺菌装置側連結ポート２３１とを接続し、更に連結ホース１５０の他端と面体（図示せず）の面体側連結ポートとを接続する。

　筺体２１０内部の底面上には、底面とほぼ同一の形状及び大きさを有する面発光体２５３が設置され、筺体２１０内部における面発光体２５３の発光面の上部空間が殺菌室２４０となっている。
　さらに、筐体２１０内部の他方の内壁には図６に示すように、流入口２２０近傍の位置において、水等で湿らされているウェット部材Ｅが設置されている。ウェット部材は、例えば保水機能を有するスポンジや繊維材で構成され、筐体２１０の外部から当該ウェット部材に水分を補給できる構造が設けられてもよい。ウェット部材Ｅは、殺菌室２４０に流入した空気を適度な湿度に調整するためのもので、例えば冬季など空気が乾燥し易い環境下での使用に好適である。なお、ウェット部材Ｅが設置される位置は、ＵＶ－ＬＥＤ２５０由来の紫外線に照射される位置にあればよく図６に示す位置に限定されない。また、本実施形態ではウェット部材Ｅは必要に応じて省略されてもよい。

　殺菌室２４０の内面（面発光体２５３の発光面を除く）は波長２５０～２７０ｎｍ、特に２６５ｎｍの紫外線に対する反射率が４０％以上、好ましくは６０％以上、最も好ましくは７０％以上の紫外線反射材で構成されていることが好ましく、耐久性の観点から該紫外線反射材は石英、フッ素樹脂等の上記紫外線に対して高い透過性を有する材料でコーティングされていることが好ましい。なお、紫外線反射材を例示すれば、クロム（紫外線反射率：約５０％）、白金（紫外線反射率：約５０％）、ロジウム（紫外線反射率：約６５％）、炭酸マグネシウム（紫外線反射率：約７５％）、炭酸カルシウム（紫外線反射率：約７５％）、酸化マグネシウム（紫外線反射率：約９０％）、アルミニウム（紫外線反射率：約９０％）などを挙げることができる。

　面発光体２５３の流入口２２０側端面には複数の紫外線発光ダイオード（ＵＶ－ＬＥＤ）２５０が配列配置されている。複数のＵＶ－ＬＥＤ２５０は、アルミニウムや銅などの金属で構成され必要に応じて絶縁層や配線を有するヒートシンク基板２５１に搭載される。複数のＵＶ－ＬＥＤ２５０を搭載したヒートシンク基板２５１（ＵＶ－ＬＥＤ搭載基板）は、流入口２２０の周囲を囲繞する断熱材２６０に埋設されている。なお、断熱材２６０は、加熱した該ＵＶ－ＬＥＤ搭載基板に使用者が直接触れて火傷することを防止する機能を有する。

　ヒートシンク基板２５１は放熱用のフィン２５２を有し、フィン２５２は、筺体２１０の天面方向に延出するように断熱材２６０から露出し、吸息時（呼吸において息を吸うとき）に発生する気流によりＵＶ－ＬＥＤ２５０から発生する熱を放熱できるようになっている。

　また、上記ＵＶ－ＬＥＤ搭載基板が配置されている場所より上流側には、脱臭機能を有する防塵フィルター２７０が着脱可能に配置されている。筺体２１０の外側には、バッテリー、これを内蔵するためのケース、ＬＥＤ駆動用回路およびスイッチ等（何れも図示せず）が付設され、ＵＶ－ＬＥＤ２５０の点灯を制御できるようになっている。

　面発光体２５３は、図７に示されるように光拡散ドット２５５を形成した導光板２５４であり、一方の端面に配置されたＵＶ－ＬＥＤ２５０から出射された紫外線が導光板２５４内で反射を繰り返しながら他方端面に向かって進行する。このとき光拡散ドット２５５によって紫外線が導光板２５４から殺菌室２４０方向に向かって漏れ出し、さらに漏れ出した光は殺菌室２４０の内壁で反射を繰り返すので、殺菌室２４０内に存在する空気に紫外線をほぼ均一に照射することができるようになっている。なお、面発光体２５３としては図７に示すようなものに限定されず、たとえば導光板２５４の一方の面に反射シートを、他方の面に拡散シートを貼付したような構造のものであってもよい。

　筺体２１０の大きさは殺菌室２４０の容積およびＬＥＤ出力等に応じて、通常の呼吸時における吸気が十分に殺菌できるように適宜決定すればよい。たとえば、携行に際してさほど負担を感じない大きさとして、縦（長さ）、横（幅）及び高さが夫々２０ｃｍ、１５ｃｍおよび３ｃｍの筺体を想定すると、殺菌室容積は９００ｍｌ弱となる。出力３０ｍＷのＵＶ－ＬＥＤを２０個用いた場合、発光面から出射されるＵＶ強度は約２ｍＷ／ｃｍ^２となり、理想的に全てのエネルギーが空気に照射されるとすると、１回の呼吸で吸入される空気に対する紫外線照射量は、１２～２０ｍＷ・秒／ｃｍ^２（ｍＪ／ｃｍ^２）となる。したがって、このようなケースでは、一つの紫外線殺菌装置を用いることによって、前記した一応の目安である"３～５秒で４５０ｍｌの空気に対して１０ｍＷ秒／ｃｍ^２の紫外線照射を行えること"という条件をある程度の余裕をもってクリアすることができると思われる。

　筺体２１０や面発光体２５３の形状は任意に変更可能であり、たとえば図８に示す空気殺菌装置２００ａのように筺体形状及び面発光体の形状を何れも円筒状とすることもできる。

　さらに、導光板２５４を使用せずに、ＵＶ－ＬＥＤ２５０から出射する紫外線を吸気に直接照射するようにしてもよい。図９に示す空気殺菌装置２００ｂはＵＶ－ＬＥＤ２５０から出射する紫外線を吸気に直接照射するタイプの例であり、複数のＵＶ－ＬＥＤ２５０を搭載した２つの基板２５１ａ及び２５１ｂが夫々殺菌室２４０内の流入口２２０側及び殺菌空気排出口２３０側に配置されている。これら基板２５１ａ及び２５１ｂは、何れも筺体２１０の底面及び天面に対して所定の角度に傾けて配置され、ＵＶ－ＬＥＤ２５０は殺菌室２４０の内壁面で反射を繰り返しながら殺菌室２４０内の空気に照射されるようになっている。なお、詳細な構造は図示しないが、前記基板２５１ａ及び２５１ｂは、アルミニウムや銅などの金属で構成され、必要に応じて絶縁層や配線を有するヒートシンク基板であり、放熱用のフィンは、吸息時に発生する気流によりＵＶ－ＬＥＤ２５０から発生する熱を放熱できるようになっている。また、断熱材を用いて火傷防止を行う点は図６に示した空気殺菌装置２００と同様である。

１００、１００ａ、１００ｂ・・・面体
１１０・・・面体枠部材
１１１・・・枠本体
１１２・・・吸気口
１１３・・・吸気弁
１１４・・・面体側連結ポート
１１５、１１５ａ・・・排気口
１１６、１１６ａ・・・排気弁
１１７・・・接触部
１１８・・・開口部
１１９・・・接合手段
１２０・・・カバー部材
１３０・・・固定手段
１５０・・・連結ホース
２００、２００ａ、２００ｂ・・・空気殺菌装置
２１０・・・筺体
２２０・・・（空気）流入口
２３０・・・殺菌空気排出口
２３１・・・殺菌装置側連結ポート
２４０・・・殺菌室
２５０・・・紫外線発光ダイオード（ＵＶ－ＬＥＤ）
２５１、２５１ａ、２５１ｂ・・・ヒートシンク基板
２５２・・・フィン
２５３・・・面発光体
２５４・・・導光板
２５５・・・光拡散ドット
２６０・・・断熱材
２７０・・・防塵フィルター

Claims

　装着時において装着者の鼻口部を覆う面体と、空気殺菌装置と、連結ホースと、を有する衛生マスクシステムであって、
　前記面体は、装着時において前記面体が気密性を持って装着者の鼻口部を覆うように固定する固定手段と、吸気弁を有する吸気口と、排気弁を有する排気口と、を有し、
　前記面体は、中央部に開口を有し装着時において被着者の顔面と密接する面体枠部材と、装着時において前記面体枠部材の中央部の開口を塞ぐ、非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムで要部が構成されるカバー部材と、を含んでなり、
　前記固定手段は前記面体枠部材又は前記カバー部材に付属しており、
　前記空気殺菌装置は、流入口及び殺菌空気排出口を有する殺菌室と、紫外線発光ダイオードと、を含み、
　装着時において、前記面体の吸気口と前記空気殺菌装置の殺菌空気排出口とは前記連結ホースによって気密に連結される
ことを特徴とする衛生マスクシステム。
　装着時において、前記カバー部材の任意の高さにおける幅は前記面体枠部材の同一の高さにおける幅より常に長くなっており、前記面体枠部材を目隠しする請求項１に記載の衛生マスクシステム。
　前記カバー部材及び前記面体枠部材の少なくとも一方は、両者を着脱可能に接合するための接合手段を有し、前記カバー部材と前記面体枠部材とは装着時において前記接合手段により互いに接合されて前記面体を構成することを特徴とする請求項１又は２に記載の衛生マスクシステム。
　前記面体枠部材と前記空気殺菌装置とを前記連結ホースにより連結して形成される流路における圧力損失（ΔＰ１）が、前記面体の圧力損失（ΔＰ２）よりも小さいことを特徴とする請求項１乃至３の何れか１つに記載の衛生マスクシステム。
　前記流路における圧力損失（ΔＰ１）が前記面体の圧力損失（ΔＰ２）の５０％以下である、請求項４に記載の衛生マスクシステム。
　前記圧力損失（ΔＰ１）が、前記面体枠部材と前記空気殺菌装置とを前記連結ホースにより連結して形成される流路の下流側を減圧にして、２５℃の環境温度下で８リットル／分の流速で空気を流通させた時の圧力損失であり、その値が５．０ｍｍＨ_２Ｏ／ｃｍ^２未満である、請求項４又は５に記載の衛生マスクシステム。
　前記空気殺菌装置において、複数の紫外線発光ダイオードが放熱用フィンを有するヒートシンク基板上に載置されており、前記放熱用フィンは、吸息時に発生する気流により前記紫外線発光ダイオードから発生する熱を放熱できるように配置されていることを特徴とする、請求項１乃至６の何れかに記載の衛生マスクシステム。
　請求項１乃至７の何れか１つに記載の衛生マスクシステム用の消耗部品であって、非通気性のシート若しくはフィルム及び／又は難通気性のシート若しくはフィルムで要部が構成されるカバー部材と、装着時において前記面体が気密性を持って装着者の鼻口部を覆うように保持する保持部材と、を有することを特徴とする消耗部品。
　請求項１乃至７の何れか１つに記載の衛生マスクシステムで使用され得る空気殺菌装置であって、前記空気殺菌装置は、空気流入口及び殺菌空気排出口を有する殺菌室と、複数の紫外線発光ダイオードと、を含み、前記複数の紫外線発光ダイオードから出射される紫外線によって前記殺菌室内に存在する空気を殺菌する空気殺菌装置であり、前記複数の紫外線発光ダイオードは、放熱用フィンを有するヒートシンク基板上に載置されており、前記放熱用フィンは、肺力呼吸における吸息時に発生する気流により前記紫外線発光ダイオードから発生する熱を放熱できるように配置されていることを特徴とする空気殺菌装置。