WO2016103640A1 - 樹脂部品のレーザ溶着構造 - Google Patents

Abstract

　樹脂部品のレーザ溶着構造では、レーザ光透過性を有する第１部品（１４）と、レーザ光吸収性を有する第２部品（１３）とを突合せた状態で、突合せ部分に対するレーザ照射により第１部品と第２部品とが溶着されている。第２部品のうち突合せ部分には、レーザ照射により溶融する突起部（２０，３２，７３）が設けられている。第１部品のうち突合せ部分には、突起部に嵌合して面接触する嵌合凹部（２１，４２，５２，６２，７４）が設けられている。

Description

樹脂部品のレーザ溶着構造 関連出願の相互参照

　本出願は、当該開示内容が参照によって本出願に組み込まれた、２０１４年１２月２２日に出願された日本特許出願２０１４－２５８６９３号を基にしている。

　本開示は、レーザ光透過性を有する第１部品と、レーザ光吸収性を有する第２部品とを突合せた状態で、その突合せ部分に対するレーザ照射により該第１部品と第２部品とが溶着されている樹脂部品のレーザ溶着構造に関する。

　例えば赤外線通信機のケースは、共に合成樹脂製のケース本体と蓋部とを、レーザ溶着により取付けている（例えば特許文献１参照）。図１０は、参考例として、この種のケースのレーザ溶着構造を示している。ここで、ケース本体１は、光吸収性を有する材料によって形成されている。ケース本体１は、接合部（接合面）１ａを上面に有すると共に、ケース本体１と一体的に設けられて、接合部１ａの内側に位置して蓋部３の位置ずれを防止するガイド壁部２を有している。これに対し、蓋部３は、光透過性を有する材料によって形成されている。蓋部３は、赤外線透過窓となる上壁部と、下部外周に設けられた接合用のフランジ部３ａとを有している。

　ケース本体１に蓋部３をレーザ溶着するにあたっては、ケース本体１の接合部１ａに、蓋部３のフランジ部３ａを突合せて重ねるように配置し、押え治具４によって押え付ける。このとき、ガイド壁部２により、蓋部３のフランジ部３ａの位置決めがなされる。そして、その突合せ状態で、図示しないレーザ溶着装置により、フランジ部３ａを通して接合部１ａ上面にレーザ光Ｌを照射する。これにより、ケース本体１の接合部１ａがレーザ光Ｌによって加熱されて溶融し、フランジ部３ａの下面部と溶着される。

特開２０１４－１０４６６８号公報

　しかしながら、上記のレーザ溶着構造では、接合部１ａとフランジ部３ａとの平面同士をレーザ溶着するため、溶着が均一になされにくく、溶着強度に劣る恐れがあった。そこで、本開示の発明者等は、図１１に示すように、ケース本体１の接合部１ａに突起部５を一体に設け、この突起部５にレーザ光Ｌを照射して溶融させ、フランジ部３ａと溶着させる構造を考えた。この構造によれば、突起部５を確実に溶融させることができ、平面同士の接合に比べて溶着強度を高めることができるものの、次のような不具合の発生が予想される。

　即ち、レーザ光Ｌの照射中は、押え治具４により蓋部３がケース本体１の接合部１ａに押え付けられるが、溶着作業中には、突起部５のうち溶けている部分と溶けていない部分とが一時的に混在することになる。これにより、押え治具４によって蓋部３にかかる荷重の増加あるいは減少が生ずるため、図１１にＣで示すコーナー部分に伸縮方向のストレスが作用し、白化現象が発生、進行する恐れがある。図１１にＣで示すコーナー部分とは、換言すれば、フランジ部３ａに連なる折曲り部分である。また、上記構成では、ケース本体１に位置ずれ防止用のガイド壁部２を設けるようにしているため、その分だけ余分なスペース（溶着幅）が必要になる不具合もある。突起部５に対し平面状のフランジ部３ａを接触させながら溶着するため、溶着部分の面積が比較的小さく、剥離に対する強度に劣る傾向もあった。

　本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、第１部品と第２部品とをレーザ照射によって溶着する構造にあって、溶着強度に優れながらも、白化現象の発生や進行を抑えることができる樹脂部品のレーザ溶着構造を提供することにある。

　本開示の第１態様に係る樹脂部品のレーザ溶着構造では、レーザ光透過性を有する第１部品と、レーザ光吸収性を有する第２部品とを突合せた状態で、突合せ部分に対するレーザ照射により第１部品と第２部品とが溶着されている。第２部品のうち突合せ部分には、レーザ照射により溶融する突起部が設けられている。第１部品のうち突合せ部分には、突起部に嵌合して面接触する嵌合凹部が設けられている。

　第１部品と第２部品とを突合せた状態では、それらの突合せ部分において、第２部品の突起部と、第１部品の嵌合凹部とが嵌合し、面接触状態となる。この状態で、突合せ部分に対するレーザ照射がなされると、レーザ光吸収性を有する第２部品の突起部の表面が加熱されて（発熱して）溶融し、嵌合凹部の内面と溶着する。これにて、第１部品と第２部品とがレーザ溶着される。

　このとき、嵌合している状態で溶着が進行するので、第１部品に対してストレスが作用しにくい構造とすることができ、白化現象を抑制することができる。もし白化現象が生じても、白化部分が溶融した突起部の樹脂により覆われるなど、白化の進行を抑えることができる。突起部と嵌合凹部とが嵌合することにより、第１部品と第２部品との間の位置ずれ防止を図ることができる。その結果、別途のガイド部を不要とし、その分だけ省スペース化（溶着幅の減少）を図ることができる。更に、突起部と嵌合凹部とが面接触するので、溶着面積を比較的大きくすることができ、剥離に対する強度を高めることができる。

　本開示の第２態様に係る樹脂部品のレーザ溶着構造では、レーザ光透過性を有する第１部品と、レーザ光吸収性を有する第２部品とを突合せた状態で、突合せ部分に対するレーザ照射により第１部品と第２部品とが溶着されている。第２部品のうち突合せ部分には、レーザ照射により内面が溶融する嵌合凹部が設けられている。第１部品のうち突合せ部分には、嵌合凹部に嵌合して面接触する突起部が設けられている。

　第１部品と第２部品とを突合せた状態では、それらの突合せ部分において、第１部品の突起部と、第２部品の嵌合凹部とが嵌合し、面接触状態となる。この状態で、突合せ部分に対するレーザ照射がなされると、レーザ光吸収性を有する第２部品の嵌合凹部の内面が加熱されて（発熱して）溶融し、突起部の外面と溶着する。これにて、第１部品と第２部品とがレーザ溶着される。

　このとき、突起部と嵌合凹部とが嵌合している状態で溶着が進行するので、第１部品に対してストレスが作用しにくい構造とすることができ、白化現象を抑制することができる。嵌合凹部と突起部とが嵌合することにより、第１部品と第２部品との間の位置ずれ防止を図ることができる。その結果、別途のガイド部を不要とし、その分だけ省スペース化（溶着幅の減少）を図ることができる。更に、突起部と嵌合凹部とが面接触するので、溶着面積を比較的大きくすることができ、剥離に対する強度を高めることができる。

　本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。
第１実施形態に係る、樹脂部品のケースの接合部分の構造を示す拡大縦断面図である。 図１に示すケースの外観を示す図である。 図２に示すケースの分解斜視図である。 第２実施形態に係る、ケースの接合部分の拡大縦断面図である。 第３実施形態に係る、ケースの接合部分の拡大縦断面図である。 第４実施形態に係る、ケースの接合部分の拡大縦断面図である。 第５実施形態に係る、ケースの接合部分の拡大縦断面図である。 第６実施形態に係る、ケースの接合部分の拡大縦断面図である。 第７実施形態に係る、ケースの接合部分の拡大縦断面図である。 参考例に係る、ケースの接合部分の拡大縦断面図である。 比較例に係る、凸部を設けた場合のケースの接合部分の拡大縦断面図である。

　以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。

　尚、以下に述べる各実施形態では、本開示を、例えばＩｒＤＡ規格に基づく赤外線通信を行う車載用の赤外線通信機のケースの接合に適用したものである。赤外線通信機器のケースが、本開示の樹脂部品に相当する。赤外線通信機は、例えば水素やエタノール等を燃料とする燃料電池車のような車両に設けられ、充電（燃料供給）時において、燃料タンクの残量等のデータを、充電ステーションに対し送信するために用いられる。

　（第１実施形態）
　図１から図３を参照して、第１実施形態について述べる。図２は、赤外線通信機１１のケース（樹脂部品）１２の外観を示しており、図３は、ケース１２の分解斜視図である。図２及び図３に示すように、ケース１２は、第２部品としてのケース本体１３と、このケース本体１３に接合（レーザ溶着）される第１部品としての蓋部１４とを備えて構成される。

　図３に示すように、ケース本体１３は、上面から見て一定幅の円弧状（扇形）をなすように湾曲し、上面が開口した薄型容器状をなしている。また、ケース本体１３の下面側には、下方に延びる外部接続用のコネクタ部１５が、ケース本体１３と一体的に設けられている。ケース本体１３の外周壁部の上端部は、図１にも示すように、後述する蓋部１４がレーザ溶着される接合部１６を形成している。このケース本体１３は、レーザ光吸収性を有する樹脂材料により形成されている。本実施形態の樹脂材料は、例えばＰＢＴ（ポリブチレンテレフタレート）樹脂をベースとして用いており、カーボンブラックなどの顔料のようなレーザ光吸収剤が添加剤としてＰＢＴに添加されている。

　また、図３に示すように、ケース本体１３には、例えば複数本の導体部１７がインサート成形により設けられている。コネクタ部１５は下面側が開口しており、図示はしないが、各導体部１７は、このコネクタ部１５内のコネクタ端子に一体的に連続している。さらに、ケース本体１３には、円弧の外周側に位置して、取付用の穴を有する舌片状の取付部１８も一体的に設けられている。図示はしないが、ケース本体１３の内部には、回路基板が、導体部１７に電気的に接続された状態で組付けられる。この回路基板には、赤外線通信用の複数個の赤外線ＬＥＤが実装されると共に、その通電回路等が設けられている。

　蓋部１４は、図２、図３に示すように、ケース本体１３の上面に被さってその上面開口部を塞ぐ蓋形状をなしており、その下端外周縁部には、図１にも示すフランジ部１９を一体に有している。本実施形態の蓋部１４は、ＰＢＴ（ポリブチレンテレフタレート）樹脂をベースとし、レーザ光透過性を有する樹脂材料によって形成されている。蓋部１４は、例えば薄いグレーに着色されている。この蓋部１４は、赤外線の透過性を有している。

　蓋部１４は、ケース本体１３に対し、その下端のフランジ部１９を接合部１６上に突合せた状態で、蓋部１４を透過した接合部１６へのレーザ光Ｌの照射により溶着される。本実施形態では、図１に示すようなケース１２のレーザ溶着構造が設けられている。即ち、ケース本体１３の接合部１６には、蓋部１４（フランジ部１９）との突合せ部分に位置するように、レーザ光Ｌの照射により溶融する突起部２０がケース本体１３と一体に設けられている。この突起部２０は、ケース本体１３の水平面状の接合部１６の外周側の全周にわたって延びており、上方に突出している。本実施形態では、突起部２０は、断面においてＲ形状を有する先端部を備えている。Ｒ形状とは、例えば半円形状のような曲線形状である。

　これに対し、蓋部１４のフランジ部１９の下端部（接合部１６との突合せ部分）には、突起部２０に嵌合して面接触する嵌合凹部２１が一体に設けられている。嵌合凹部２１は、フランジ部１９の下端部の全周にわたって延びている。嵌合凹部２１は、直線部分２１ａと枝分れ部分２１ｂとによって規定されている。直線部分２１ａは、蓋部１４の外周壁（立下り壁）から真直ぐ下方に延びている。枝分れ部分２１ｂは、蓋部１４の外周壁（立下り壁）の途中部分から同等の厚みで枝分れするように外側にやや斜め下方に延びている。これにより、嵌合凹部２１は、突起部２０の先端面及びそれに連なる内側面の２面において突起部２０と接触するような、断面Ｌ字状を有している。換言すれば、嵌合凹部２１を含む蓋部１４の端部は、断面において略Ｙ字形状を有している。

　次に、上記構成の赤外線通信機１１のケース１２に関して、ケース本体１３に対して蓋部１４をレーザ溶着する手順（方法）について述べる。まず、図示はしないが、レーザ溶着に用いられるレーザ溶着装置について簡単に述べておく。レーザ溶着装置は、例えばＹＡＧレーザを発生するレーザ光発生装置、集光レンズ等を有しレーザ光Ｌをワークに対し照射する照射ヘッド、レーザ光発生装置からのレーザ光を照射ヘッドに導く光ファイバ、ワークを保持する支持テーブル、照射ヘッドをワークに対し自在に移動させる移動機構を有している。移動機構は、照射ヘッドに対し、ワーク（支持テーブル）側を移動させても良い。

　本実施形態においては、図１に示すように、ケース本体１３と蓋部１４とが突合わされた状態で支持テーブルにセットされる。このとき、図示しない押え治具によって、蓋部１４（フランジ部１９）がケース本体１３（接合部１６）に対し押え付けられる。これにて、ケース本体１３の突起部２０と、蓋部１４の嵌合凹部２１とが嵌合し、面接触状態となる。突起部２０と嵌合凹部２１とが嵌合することにより、別途のガイド部を設けずとも、ケース本体１３と蓋部１４との間の位置ずれの防止を図ることができる。

　そして、その突合せ状態で、ケース本体１３（接合部１６）の突起部２０の先端部に対して、レーザ光Ｌが照射される。このレーザ光Ｌの照射は、図１に示すように、レーザ光Ｌを、枝分れ部分２１ｂを通して上方から照射しても良いし、直線部分２１ａを通して斜め方向から照射しても良い。あるいは、上方および斜め方向の両方から照射しても良い。このレーザ光Ｌの照射により、レーザ光吸収性を有するケース本体１３の突起部２０の表面が加熱（発熱）されて溶融し、嵌合凹部２１の内面と溶着する。

　この溶着は、照射ヘッドをワーク（ケース１２）に対し相対的に移動させながらケース１２の外周全体に渡って実行され、これにて、ケース本体１３と蓋部１４とがレーザ溶着される。このとき、突起部２０の先端がＲ形状を有しており、突起部２０と嵌合凹部２１とが２面において面接触している。その結果、広い面積において溶融するようになり、溶着面積を比較的大きくすることができる。

　また、上記のレーザ溶着構造にあっては、ケース本体１３の突起部２０と、蓋部１４の嵌合凹部２１とが嵌合している状態で溶着が進行する。これにより、蓋部１４のフランジ部１９に対してストレスが作用しにくい構造とすることができ、白化現象を抑制することができる。もし、嵌合凹部２１の内面部分で白化現象が生じても、その白化部分が溶融した突起部２０の樹脂により覆われるようになり、外観の悪化を抑えることができると共に、それ以上の白化の進行を抑えることができる。

　このように、ケース本体１３と蓋部１４とをレーザ光Ｌの照射によって溶着する本実施形態のレーザ溶着構造では、ケース本体１３に突起部２０を設けると共に、蓋部１４に嵌合凹部２１を設けている。その結果、溶着強度に優れながらも、白化現象の発生や進行を抑えることができるという優れた効果を奏する。しかも、従来のような位置ずれ防止用のガイド壁部を別に設けなくとも良く、ケース本体１３の接合部１６の幅寸法（図１に示す溶着幅Ｗ）を小さくすることができるといった利点も得ることができる。

　（第２実施形態）
　第２実施形態について、図４を参照して説明する。尚、以下の各実施形態においても、上記第１実施形態と同様に、赤外線通信機１１のケース１２を構成するケース本体１３と蓋部１４とを溶着するレーザ溶着構造に本開示を適用している。

　図４は、第２実施形態に係るレーザ溶着構造を示している。この第２実施形態では、ケース本体１３の接合部３１には、Ｒ形状の先端を有する突起部３２が一体に形成されていると共に、蓋部１４の直線部分２１ａが挿入される凹部としての凹溝部３３が突起部３２の内側に隣り合うように設けられている。蓋部１４のフランジ部１９の下端部（接合部３１との突合せ部分）には、第１実施形態と同様に、直線部分２１ａと枝分れ部分２１ｂとからなる、断面において略Ｌ字状を有する嵌合凹部２１が設けられている。

　この第２実施形態においても、ケース本体１３の突起部３２と、蓋部１４の嵌合凹部２１とが嵌合して面接触した面接触状態で、突起部３２に対してレーザ光Ｌが照射され、溶着が行われる。これによれば、上記第１実施形態と同様の作用および効果が得られることに加えて、突起部３２と嵌合凹部２１とが嵌合していると共に、直線部分２１ａの先端が凹溝部３３に挿入されることにより、より効果的にケース本体１３と蓋部１４との間の位置決め（位置ずれ防止）がなされる。

　（第３実施形態）
　図５は、第３の実施形態に係るレーザ溶着構造を示している。この第３実施形態でも、ケース本体１３の接合部１６には突起部２０が一体に形成されている。そして、蓋部１４のフランジ部４１には、突起部２０に嵌合して面接触する嵌合凹部４２が設けられる。本実施形態では、嵌合凹部４２の突起部２０に対する接触面が、断面において略Ｕ字形状を有している。略Ｕ字形状とは、底面と、底面に接続する側面と、開口部とにより規定される形状である。本実施形態では、図５に示すように、底面と側面とが鋭角をなして接続する部分と、底面と側面が滑らかな曲線状に接続される部分とを含んでいる。第３実施形態によれば、上記第１実施形態と同様の作用および効果が得られることに加えて、突起部２０と嵌合凹部４２とをより広い面積で面接触させることができる。

　（第４実施形態）
　図６は、第４実施形態に係るレーザ溶着構造を示している。この第４実施形態では、ケース本体１３の接合部１６には突起部２０が形成され、蓋部１４のフランジ部５１には、突起部２０に嵌合して面接触する嵌合凹部５２が設けられている。嵌合凹部５２の接触面は、断面において半円状（Ｕ字形状）を有している。この第４実施形態によっても、上記第１実施形態と同様の作用および効果が得られることに加えて、突起部２０と嵌合凹部５２とをより広い面積で面接触させることができる。

　（第５実施形態）
　図７は、第５実施形態に係るレーザ溶着構造を示している。この第５実施形態では、ケース本体１３の接合部１６には突起部２０が形成され、蓋部１４のフランジ部６１には、突起部２０に嵌合して面接触する嵌合凹部６２が設けられている。フランジ部（側壁部）６１は、断面がほぼＳ字状に湾曲するように設けられ、嵌合凹部６２の突起部２０に対する接触面は、断面において円弧状を有している。このような第５実施形態によっても、上記第１実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。

　（第６実施形態）
　図８は、第６実施形態に係るレーザ溶着構造を示している。この第６実施形態では、ケース本体１３のうち、蓋部１４のフランジ部７２に突合せられる接合部７１の上面は、内側（図８の右側）から外側（図８の左側）に向けて下降傾斜する傾斜面である。また、接合部７１の傾斜面から突出するように突起部７３が形成されている。これに対し、蓋部１４のフランジ部７２は、接合部７１の傾斜面に沿うような傾斜状に設けられると共に、その下面部に、突起部７３に嵌合して面接触する嵌合凹部７４を有している。嵌合凹部７４は、断面において略Ｕ字形状を有している。略Ｕ字形状とは、底面と、底面に接続する側面と、開口部とにより規定される形状である。本実施形態では、図８に示すように、底面及び側面は平坦な面であり、底面と側面とは角度をなして接続している。しかしながら、底面と側面は完全に平坦でなくてもよく、湾曲部を含むものであっても良い。

　このような第６実施形態によれば、上記第１実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。これに加えて、ケース本体１３と蓋部１４との突合せ部分が、突合せ方向（水平面）に対して傾斜する傾斜面とされている。これにより、接合部７１の面積（溶着面積）を確保しながらも、突合せ方向から見た溶着幅Ｗ０を、より小さくすることが可能となる。

　（第７実施形態）
　図９は、第７実施形態に係るレーザ溶着構造を示すものである。以下に、第７実施形態と上記第１実施形態等との相違点を説明する。

　詳しく図示はしないが、第２部品としてのケース本体１３は、レーザ光吸収性を有する樹脂材料から容器状に構成され、その外周壁部の上端部は、蓋部１４（フランジ部８２）が突合せ状態でレーザ溶着される接合部８１とされている。この接合部８１の上面は、内側（図９の右側）から外側（図９の左側）に向けて下降傾斜する傾斜面とされている。一方、第１部品としての蓋部１４は、レーザ光吸収性を有する樹脂材料から蓋状に構成され、その下端外周縁部には、フランジ部８２を一体に有している。このフランジ部８２は、接合部８１の傾斜面に沿うような傾斜状に設けられている。

　そして、本実施形態では、接合部８１の傾斜面には、レーザ光Ｌの照射により内面が溶融する嵌合凹部８３が全周に渡って延びる溝状に形成されている。更に本実施形態では、嵌合凹部８３の底部において開口し、該嵌合凹部８３内の空気を外部に排出する貫通穴（空気抜き穴）８４が設けられている。蓋部１４のフランジ部８２の下面には、嵌合凹部８３に嵌合して面接触する突起部８５が下方に突出して一体に設けられている。突起部８５の先端部（下端部）は、丸みを帯びたＲ形状とされ、嵌合凹部８３の内面に対し複数の面で接触するようになっている。

　上記構成においては、ケース本体１３の接合部８１（傾斜面）と蓋部１４のフランジ部８２とが突合せられた状態で、接合部８１に設けられた嵌合凹部８３と、フランジ部８２に設けられた突起部８５とが嵌合し、面接触状態となる。この状態で、突合せ部分に対するレーザ光Ｌの照射がなされると、レーザ光吸収性を有するケース本体１３の嵌合凹部８３の内面が加熱（発熱）されて溶融し、突起部８５の外面と溶着する。これにて、ケース本体１３と蓋部１４とがレーザ溶着される。

　このとき、嵌合凹部８３と突起部８５とが嵌合している状態で溶着が進行するので、蓋部１４（フランジ部８２）に対してストレスが作用しにくくなり、白化現象を抑制することができる。嵌合凹部８３と突起部８５とが嵌合することにより、ケース本体１３と蓋部１４との間の位置ずれ防止を図ることができる。これにより、別途のガイド部を不要とし、その分だけ省スペース化（溶着幅の減少）を図ることができる。接合部分が傾斜面とされているので、溶着幅をより一層小さくすることができる。

　更に、突起部８５と嵌合凹部８３とが面接触するので、溶着面積を比較的大きくすることができ、溶着強度（剥離に対する強度）を高めることができる。しかも、嵌合凹部８３の底部に貫通穴８４が設けられているので、溶着作業時において嵌合凹部８３内の空気が容易に抜けるようになり、溶着部分（嵌合凹部８３）に気泡が残って溶着強度を低下させるといった不具合を未然に防止することができる。

　（他の実施形態）
　以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、本開示における記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。

　上記各実施形態では、樹脂部品としての赤外線通信機１１のケース１２に本開示を適用したが、本開示は、２つの部品をレーザ溶着する樹脂部品全般に適用することができる。

　また、上記各実施形態では、ケース本体１３及び蓋部１４の材料として、ＰＢＴ樹脂をベースとした樹脂材料を採用したが、例えばポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などの各種樹脂材料を採用することができる。

　その他、突起部や嵌合凹部の形状などについても、様々な変更が可能である等、本開示は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。

　本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。

 

Claims (11)

1. 　レーザ光透過性を有する第１部品（１４）と、レーザ光吸収性を有する第２部品（１３）とを突合せた状態で、突合せ部分に対するレーザ照射により前記第１部品（１４）と前記第２部品（１３）とが溶着されている樹脂部品のレーザ溶着構造において、
   　前記第２部品（１３）のうち前記突合せ部分には、レーザ照射により溶融する突起部（２０，３２，７３）が設けられていると共に、
   　前記第１部品（１４）のうち前記突合せ部分には、前記突起部（２０，３２，７３）に嵌合して面接触する嵌合凹部（２１，４２，５２，６２，７４）が設けられている樹脂部品のレーザ溶着構造。
2. 　前記突起部（２０，３２，７３）は、Ｒ形状を有する先端部を備えている請求項１に記載の樹脂部品のレーザ溶着構造。
3. 　前記嵌合凹部（２１，４２，５２，６２，７４）は、前記突起部（２０，３２，７３）に対し、前記突起部（２０，３２，７３）の先端面及びそれに連なる一側面の少なくとも２面において接触するように構成されている請求項１又は２に記載の樹脂部品のレーザ溶着構造。
4. 　前記嵌合凹部（２１）の、前記突起部（２０，３２）に接触する接触面は、断面においてＬ字状を有している請求項３に記載の樹脂部品のレーザ溶着構造。
5. 　前記嵌合凹部（５２）の、前記突起部（２０）に接触する接触面は、断面においてＵ字形状を有している請求項３に記載の樹脂部品のレーザ溶着構造。
6. 　前記嵌合凹部（４２，７４）の、前記突起部（２０、７３）に接触する接触面は、断面において略Ｕ字形状を有する請求項３に記載の樹脂部品のレーザ溶着構造。
7. 　前記嵌合凹部（６２）の、前記突起部（２０）に接触する接触面は、断面において円弧状を有している請求項３に記載の樹脂部品のレーザ溶着構造。
8. 　前記第２部品（１３）のうち前記突合せ部分には、前記第１部品（１４）が挿入される凹部（３３）が、前記突起部（３２）に隣り合うように設けられている請求項１から７のいずれか一項に記載の樹脂部品のレーザ溶着構造。
9. 　前記突合せ部分は、突合せ方向に対して傾斜する傾斜面を有している請求項１から８のいずれか一項に記載の樹脂部品のレーザ溶着構造。
10. 　レーザ光透過性を有する第１部品（１４）と、レーザ光吸収性を有する第２部品（１３）とを突合せた状態で、突合せ部分に対するレーザ照射により前記第１部品（１４）と前記第２部品（１３）とが溶着されている樹脂部品のレーザ溶着構造において、
    　前記第２部品（１３）のうち前記突合せ部分には、レーザ照射により内面が溶融する嵌合凹部（８３）が設けられていると共に、
    　前記第１部品（１４）のうち前記突合せ部分には、前記嵌合凹部（８３）に嵌合して面接触する突起部（８５）が設けられている樹脂部品のレーザ溶着構造。
11. 　前記第２部品（１３）は、前記嵌合凹部（８３）の底部において開口して、内部を空気が通過する貫通穴（８４）を有している請求項１０に記載の樹脂部品のレーザ溶着構造。
    
     

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