以下、本発明の一態様による成形装置及び成形方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
〈成形装置の構成〉
図1は、成形装置の概略構成図である。図1に示されるように、金属パイプ100(図5参照)を成形する成形装置10は、互いに対となる上型(第1の金型)12及び下型(第2の金型)11からなるブロー成形金型13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間で金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構(保持部)30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構(加熱部)50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備える。また、成形装置10は、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
下型(第2の金型)11は、大きな基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面にキャビティ(凹部)16を備える。更に下型11の左右端(図1における左右端)近傍には電極収納スペース11aが設けられる。成形装置10は、当該電極収納スペース11a内に、アクチュエータ(図示しない)によって上下に進退動可能に構成された第1電極17及び第2電極18を備えている。これら第1電極17、第2電極18の上面には、金属パイプ材料14の下側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されていて(図3(c)参照)、当該凹溝17a,18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。また、第1電極17の正面(金型の外側方向の面)には凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されており、第2電極18の正面(金型の外側方向の面)には凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。また、下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22により上下移動自在に支持されている。
なお、下型11側に位置する一対の第1,第2電極17,18はパイプ保持機構30を構成しており、金属パイプ材料14を、上型12と下型11との間で昇降可能に支えることができる。また、熱電対21は測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計又は光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。なお、通電時間と温度との相関が得られれば、測温手段は省いて構成することも十分可能である。
上型(第1の金型)12は、下面にキャビティ(凹部)24を備え、冷却水通路25を内蔵した大きな鋼鉄製ブロックである。上型12は、上端部をスライド82に固定されている。そして、上型12が固定されたスライド82は、加圧シリンダ26によって吊られる構成とされ、ガイドシリンダ27によって横振れしないようにガイドされている。
上型12の左右端(図1における左右端)近傍には、下型11と同様な電極収納スペース12aが設けられる。成形装置10は、この電極収納スペース12a内に、下型11と同じく、アクチュエータ(図示しない)で上下に進退動可能に構成された第1電極17と第2電極18を備えている。これら第1、第2電極17,18の下面には、金属パイプ材料14の上側外周面に対応した半円弧状の凹溝17a,18aがそれぞれ形成されていて(図3(c)参照)、当該凹溝17a,18aに丁度金属パイプ材料14が嵌合可能とされている。また、第1電極17の正面(金型の外側方向の面)は凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されており、第2電極18の正面(金型の外側方向の面)は凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、上型12側に位置する一対の第1,第2電極17,18もパイプ保持機構30を構成しており、上下一対の第1,第2電極17,18で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド82と、上記スライド82を移動させるための駆動力を発生する駆動部81と、上記駆動部81に対する流体量を制御するサーボモータ83とを備えている。駆動部81は、加圧シリンダ26を駆動させる流体(加圧シリンダ26として油圧シリンダを採用する場合は動作油)を当該加圧シリンダ26へ供給する流体供給部によって構成されている。
制御部70は、駆動部81のサーボモータ83を制御することによって、加圧シリンダ26へ供給する流体の量を制御することにより、スライド82の移動を制御することができる。なお、駆動部81は、上述のように加圧シリンダ26を介してスライド82に駆動力を付与するものに限られない。例えば、駆動部81は、スライド82に駆動機構を機械的に接続させてサーボモータ83が発生する駆動力を直接的に又は間接的にスライド82へ付与するものであってもよい。例えば、偏心軸と、偏心軸を回転させる回転力を付与する駆動源(例えば、サーボモータ及び減速機等)と、偏心軸の回転運動を直線運動に変換してスライドを移動させる変換部(例えば、コネクティングロッド又は偏心スリーブ等)と、を有する駆動機構を採用してもよい。なお、本実施形態では、駆動部81がサーボモータ83を備えていなくともよい。
図2は、図1に示すII-II線に沿ったブロー成形金型13の断面図である。図2に示されるように、下型11の上面及び上型12の下面には、いずれも段差が設けられている。
下型11の上面には、下型11の中央のキャビティ16表面を基準ラインLV2とすると、第1突起11b、第2突起11c、第3突起11d、第4突起11eによる段差が形成されている。キャビティ16の右側(図2において右側、図1において紙面奥側)に第1突起11b及び第2突起11cが形成され、キャビティ16の左側(図2において左側、図1において紙面手前側)に第3突起11d及び第4突起11eが形成されている。第2突起11cは、キャビティ16と第1突起11bとの間に位置している。第3突起11dは、キャビティ16と第4突起11eとの間に位置している。第2突起11c及び第3突起11dのそれぞれは、第1突起11b及び第4突起11eよりも上型12側に突出している。第1突起11b及び第4突起11eにおいて基準ラインLV2からの突出量は略同一であり、第2突起11c及び第3突起11dにおいて基準ラインLV2からの突出量は略同一である。
一方、上型12の下面には、上型12の中央のキャビティ24表面を基準ラインLV1とすると、第1突起12b、第2突起12c、第3突起12d、第4突起12eによる段差が形成されている。キャビティ24の右側(図2において右側)に第1突起12b及び第2突起12cが形成され、キャビティ24の左側(図2において左側)に第3突起12d及び第4突起12eが形成されている。第2突起12cは、キャビティ24と第1突起12bとの間に位置している。第3突起12dは、キャビティ24と第4突起12eとの間に位置している。第1突起12b及び第4突起12eのそれぞれは、第2突起12c及び第3突起12dよりも下型11側に突出している。第1突起12b及び第4突起12eにおいて基準ラインLV1からの突出量は略同一であり、第2突起12c及び第3突起12dにおいて基準ラインLV1からの突出量は略同一である。
また、上型12の第1突起12bは下型11の第1突起11bと対向しており、上型12の第2突起12cは下型11の第2突起11cと対向しており、上型12のキャビティ24は下型11のキャビティ16と対向しており、上型12の第3突起12dは、下型11の第3突起11dと対向しており、上型12の第4突起12eは下型11の第4突起11eと対向している。そして、上型12において第2突起12cに対する第1突起12bの突出量(第3突起12dに対する第4突起12eの突出量)は、下型11において第1突起11bに対する第2突起11cの突出量(第4突起11eに対する第3突起11dの突出量)よりも大きくなっている。これにより、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間、及び上型12の第3突起12dと下型11の第3突起11dとの間のそれぞれには、上型12及び下型11が嵌合した際に空間が形成される(図7(c)参照)。また、上型12のキャビティ24と、下型11のキャビティ16との間には、上型12及び下型11が嵌合した際に空間が形成される(図7(c)参照)。
より詳細に説明すると、ブロー成形時に下型11と上型12とが合わさっていき嵌合する前の時点で、図7(b)に示されるように、上型12のキャビティ24の表面(基準ラインLV1となる表面)と、下型11のキャビティ16の表面(基準ラインLV2となる表面)との間には、メインキャビティ部(第1のキャビティ部)MCが形成される。また、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間には、メインキャビティ部MCに連通し、当該メインキャビティ部MCよりも容積が小さいサブキャビティ部(第2のキャビティ部)SC1が形成される。同様に、上型12の第3突起12dと下型11の第3突起11dとの間には、メインキャビティ部MCに連通し、当該メインキャビティ部MCよりも容積が小さいサブキャビティ部(第2のキャビティ部)SC2が形成される。メインキャビティ部MCは金属パイプ100におけるパイプ部100aを成形する部分であり、サブキャビティ部SC1,SC2は金属パイプ100におけるフランジ部100b,100cをそれぞれ成形する部分である(図7(c),(d)参照)。そして、図7(c),(d)に示されるように、下型11と上型12とが合わさって完全に閉じられた場合(嵌合した場合)、メインキャビティ部MC及びサブキャビティ部SC1,SC2は、下型11及び上型12内に密閉される。
図1に示されるように、加熱機構50は、電源51と、この電源51からそれぞれ延びて第1電極17及び第2電極18に接続している導線52と、この導線52に介設したスイッチ53とを有してなる。制御部70は、上記加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を焼入れ温度(AC3変態点温度以上)まで加熱することができる。
一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41を介して基台15上に載置固定されている。それぞれのシール部材44の先端には、先細となるようにテーパー面45が形成されている。一方のテーパー面45には、第1電極17のテーパー凹面17bに丁度嵌合当接することができる形状に構成され、他方のテーパー面45は、第2電極18のテーパー凹面18bに丁度嵌合当接することができる形状に構成されている(図3参照)。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在する。詳しくは図3(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。
第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68は、制御部70の制御により、金属パイプ材料14の一部14a,14b(図7(b)参照)を膨張させるための作動圧力を有するガス(以下、低圧ガスとする)と、金属パイプ100のパイプ部100a(図7(d)参照)を成形するための作動圧力を有するガス(以下、高圧ガスとする)とを、シール部材44のガス通路46に供給する役割を果たす。言い換えれば、制御部70は、気体供給部60の圧力制御弁68を制御することにより、金属パイプ材料14内に所望の作動圧力のガスを供給することができる。なお、高圧ガスの圧力は、例えば低圧ガスの約2倍~5倍である。
また、制御部70は、図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、加圧シリンダ26及びスイッチ53等を制御する。水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、成形装置1を用いた金属パイプの成形方法について説明する。図4は材料としての金属パイプ材料14を投入するパイプ投入工程から、金属パイプ材料14に通電して加熱する通電加熱工程までを示す。最初に焼入れ可能な鋼種の金属パイプ材料14を準備する。図4(a)に示すように、この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる第1,第2電極17,18上に載置(投入)する。第1,第2電極17,18には凹溝17a,18aがそれぞれ形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。次に、制御部70(図1参照)は、パイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、図4(b)のように、第1電極17、第2電極18を進退動可能としているアクチュエータ(図示しない)を作動させ、各上下に位置する第1,第2電極17,18を接近・当接させる。この当接によって、金属パイプ材料14の両方の端部は、上下から第1,第2電極17,18によって挟持される。また、この挟持は第1,第2電極17,18にそれぞれ形成される凹溝17a,18aの存在によって、金属パイプ材料14の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。ただし、金属パイプ材料14の全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に第1,第2電極17,18が当接するような構成であってもよい。
続いて、図1に示されるように、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50のスイッチ53をONにする。そうすると、電源51から電力が金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体が発熱する(ジュール熱)。この時、熱電対21の測定値が常に監視され、この結果に基づいて通電が制御される。
図5は、成形装置によるブロー成形工程の概要とその後の流れを示している。図5に示されるように、加熱後の金属パイプ材料14に対してブロー成形金型13を閉じ、金属パイプ材料14を当該ブロー成形金型13のキャビティ内に配置密閉する。その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44で金属パイプ材料14の両端をシールする(図3も併せて参照)。シール完了後、ブロー成形金型13を閉じると共に、ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティの形状に沿うように成形する(具体的な金属パイプ材料14の成形方法については後述する)。
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させ、金属パイプ100を得ることができる。
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイトなど)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を金属パイプ100に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
次に、図6及び図7(a)~(d)を参照して、上型12及び下型11による具体的な成形の様子の一例について詳細に説明する。図6は、成形装置によるブロー成形工程のタイミングチャートである。図6において、(a)は、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間の距離の時間変化を示し、(b)は、低圧ガスの供給タイミングを示し、(c)は高圧ガスの供給タイミングを示している。図6及び図7(a)に示されるように、図6の期間T1にて、加熱された金属パイプ材料14を上型12のキャビティ24と下型11のキャビティ16との間に準備する。例えば、金属パイプ材料14を下型11の第2突起11c及び第3突起11dによって支持する。なお、期間T1における上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間の距離は、D1である。
次に、図6に示される期間T1後の期間T2にて、駆動機構80によって上型12を下型11に合わせる方向に移動させる。これにより、図6に示される期間T2後の期間T3では、図7(b)に示されるように、上型12と下型11とを完全に閉じず、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間の距離をD2(D2<D1)にする。これにより、キャビティ24の基準ラインLV1における表面とキャビティ16の基準ラインLV2における表面との間にメインキャビティ部MCが形成される。また、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間にサブキャビティ部SC1が形成され、上型12の第3突起12dと下型11の第3突起11dとの間にサブキャビティ部SC2が形成される。メインキャビティ部MCとサブキャビティ部SC1,SC2とは互いに連通した状態となっている。このとき、上型12の第1突起12bの内縁と下型11の第2突起11cの外縁とが接触・密着すると共に、上型12の第4突起12eの内縁と下型11の第3突起11dの外縁とが接触・密着し、メインキャビティ部MC及びサブキャビティ部SC1,SC2は外部に対して密閉されている。加えて、上型12の第1突起12bと下型11の第1突起11bとの間、及び上型12の第4突起12eと下型11の第4突起11eとの間のそれぞれには、空間(隙間)が設けられる。
また、期間T3中に、加熱機構50による加熱により軟化した金属パイプ材料14内部に気体供給部60によって低圧ガスを供給する。この低圧ガスの圧力は、気体供給部60における圧力制御弁68を用いて制御されており、後に説明する期間T5にて金属パイプ材料14内部に供給される高圧ガスの圧力よりも低い。このような低圧ガスの供給により、金属パイプ材料14は、図7(b)に示されるように、メインキャビティ部MC内で膨張する。また、金属パイプ材料14の一部(両側部)14a,14bは、当該メインキャビティ部MCに連通するサブキャビティ部SC1,SC2内にそれぞれ入り込むように膨張する。そして、低圧ガスの供給を停止する。
次に、図6に示される期間T3後の期間T4にて、駆動機構80によって上型12を移動させる。具体的には、駆動機構80で上型12を移動させて、図7(c)に示されるように、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間の距離をD3(D3<D2)にするように、上型12と下型11とを嵌合する(クランプする)。このとき、上型12の第1突起12bと下型11の第1突起11bとは互いに隙間なく密着すると共に、上型12の第4突起12eと下型11の第4突起11eとは互いに隙間なく密着する。この駆動機構80の駆動によって、膨張した金属パイプ材料14の一部14a,14bを上型12及び下型11によって押圧し、サブキャビティ部SC1に金属パイプ100のフランジ部100bを成形すると共に、サブキャビティ部SC2に金属パイプ100のフランジ部100cを成形する。フランジ部100b,100cは、当該金属パイプ100の長手方向に沿って、金属パイプ材料14の一部が折り畳まれて成形されている(図5参照)。
次に、図6に示される期間T4後の期間T5中に、フランジ部100b,100cが成形された後の金属パイプ材料14内部に気体供給部60によって高圧ガスを供給する。この高圧ガスの圧力は、気体供給部60における圧力制御弁68を用いて制御されている。このような高圧ガスの供給により、メインキャビティ部MC内の金属パイプ材料14が膨張し、図7(d)に示されるように金属パイプ100のパイプ部100aが成形される。なお、期間T5における高圧ガスの供給時間は、期間T3における低圧ガスの供給時間よりも長い。これにより金属パイプ材料14が十分に膨張してメインキャビティ部MCの隅々まで行きわたり、パイプ部100aは、上型12及び下型11によって画成されるメインキャビティ部MCの形状に沿ったものになる。
以上に説明した期間T1~T5を経ることによって、パイプ部100a及びフランジ部100b,100cを有する金属パイプ100を仕上げることができる。これら金属パイプ材料14のブロー成形から金属パイプ100の成形完了までに至るまでの時間は、金属パイプ材料14の種類にもよるが概ね数秒から数十秒程度で完了する。なお、図7(d)に示す例では、メインキャビティ部MCは断面矩形状に構成されているため、金属パイプ材料14は当該形状に合わせてブロー成形されることにより、パイプ部100aは矩形筒状に成形される。ただし、メインキャビティ部MCの形状は特に限定されず、所望の形状に合わせて断面円形、断面楕円形、断面多角形等あらゆる形状を採用してもよい。
次に、本実施形態に係る成形装置1、及び当該成形装置1を用いた成形方法の作用・効果について比較例と比較しながら説明する。
まず、図8を参照して、比較例に係る成形装置を用いた成形方法を説明する。比較例に係る成形装置の制御部は、気体供給部に対して高圧ガスのみ供給させる制御を行いながら、金型同士を合わせるように駆動機構の駆動を制御する。よって、比較例に係る成形装置を用いた成形方法では、金属パイプ材料14に供給される気体が高圧ガスとなっており、当該金属パイプ材料14に高圧ガスが供給されると同時に上型12が下型11に合わさるように駆動する。この場合、図8(a)に示されるように、サブキャビティ部SC1,SC2にそれぞれ入り込むように膨張した金属パイプ材料14の一部14a,14bは、本実施形態の成形方法と比較して大きくなりすぎ、このように大きくなりすぎた金属パイプ材料14の一部14a,14bを上型12及び下型11によって押圧すると、図8(b)に示されるように、フランジ部100b,100cに撓み、歪み、又は折れ曲がり等が生じ、所望の形状のフランジ部を得られなくなる問題がある。また、高圧ガスの供給時間によっては金属パイプ材料14の伸び率が限界を超え、金属パイプ材料14が破裂するおそれがある。
一方、本実施形態に係る成形装置1によれば、制御部70の制御によって、サブキャビティ部SC1,SC2内に金属パイプ材料14の一部14a,14bを膨張させるように気体供給部60から金属パイプ材料14内に気体を供給させた後、膨張した金属パイプ材料14の一部14a,14bを上型12及び下型11で押圧してフランジ部100b,100cを成形するように駆動機構80を駆動させることができる。また、制御部70の制御により、メインキャビティ部MC内にパイプ部100aを成形させるように、気体供給部60から、フランジ部100b,100cが成形された後の金属パイプ材料14内に気体を供給させることができる。このように金属パイプ100におけるフランジ部100b,100cとパイプ部100aとを別々に成形するように制御部70が気体供給部60及び駆動機構80を制御しているため、所望の形状のフランジ部100b,100c及びパイプ部100aを容易に成形できる。
また、本実施形態では、サブキャビティ部SC1,SC2内に金属パイプ材料14の一部14a,14bを膨張させる際の低圧ガスの圧力を、メインキャビティ部MC内にパイプ部100aを成形させる際の高圧ガスの圧力よりも低くしているため、低圧ガスでフランジ部100b,100cを所望の大きさに成形できると共に、フランジ部100b,100cに関係なく高圧ガスで所望の形状のパイプ部100aを成形できる。したがって、所望の形状のフランジ部100b,100c及びパイプ部100aを一層容易に成形できる。
以上、本発明の一態様の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態における成形装置1は加熱機構50を必ずしも有していなくてもよく、金属パイプ材料14はすでに加熱されていてもよい。
また、本実施形態に係る駆動機構80は、上型12のみを移動させているが、上型12に加えて、または上型12に代えて下型11が移動するものであってもよい。下型11が移動する場合、当該下型11は基台15に固定されず、駆動機構80のスライドに取り付けられる。
また、本実施形態に係るガス源61は、高圧ガスを供給するための高圧ガス源と、低圧ガスを供給するための低圧ガス源との両方を有してもよい。この場合、制御部70による気体供給部60のガス源61の制御によって、状況に応じて高圧ガス源又は低圧ガス源から気体供給機構40に気体が供給されてもよい。なお、ガス源61が高圧ガス源及び低圧ガス源を有する場合、圧力制御弁68は気体供給部60に含まれなくてもよい。
また、本実施形態に係る金属パイプ100は、その片側にフランジ部を有していてもよい。この場合、上型12及び下型11によって形成されるサブキャビティ部は一つとなる。
また、上型12及び下型11の間に準備される金属パイプ材料14は、上下方向の径よりも左右方向の径の方が長い断面楕円形状を有してもよい。これにより、金属パイプ材料14の一部をサブキャビティ部SC1,SC2内に入り込みやすくしてもよい。加えて、上記金属パイプ材料14は、予め軸線方向に沿って曲げ加工(プリベンド加工)が施されてもよい。この場合、成形された金属パイプ100は、フランジ部を有すると共に屈曲した筒形状となる。