図1に示すように、以下に説明する行動予測装置10は、取得部11と予測部12とを備える。取得部11は、対象空間(住宅20)において分電盤21で複数系統に分岐された分岐回路22ごとに電気負荷24による消費電力値を計測装置23から取得する。予測部12は、消費電力値が取得された日時を消費電力値に結び付けた電力情報を用いて、消費電力値があらかじめ定められた基準値まで立ち下がる時刻を第1停止時刻として求める。さらに、予測部12は、第1停止時刻を用いて対象空間の利用者が行う特定の行動の種類および行動が生じる時刻を予測する。
予測部12は、モデルに、電力情報から抽出された第1停止時刻を当て嵌めることにより、行動の種類および行動が生じる時刻を予測することが望ましい。モデルは、少なくとも1系統の分岐回路22における第2停止時刻を条件に含み、かつ行動の種類および行動が生じる時刻を推定するように設定される。モデルに当て嵌める第1停止時刻は、モデルの条件に用いられている少なくとも1系統の分岐回路の電力情報から抽出される。このモデルは、複数系統の分岐回路22から選択された2系統以上の分岐回路22における第2停止時刻の順序を条件に含むことが望ましい。
また、行動予測装置10は、記憶部13と判定部14と生成部15(モデル生成部)とを備えることが望ましい。記憶部13は、電力情報を記憶する。判定部14は、記憶部13が記憶している電力情報から分岐回路22ごとに第2停止時刻を抽出する。生成部15は、判定部14が抽出した第2停止時刻と利用者の行動との間の規則性を評価する。そして、生成部15は、規則性を見出した場合に、該当する分岐回路22における第2停止時刻を条件に含み、かつ行動の種類および行動が生じる時刻を導き出すように設定されたモデルを生成する。この場合、行動予測装置10は、モデルの条件に含める分岐回路22を指定するための入力を受け付ける入力部17を備えることが望ましい。
上述した基準値は、記憶部13が記憶している電力情報に基づいて分岐回路22ごとに求められた待機電力値を用いて設定されることが望ましい。ただし、基準値は、経験的に定めることも可能である。
行動予測装置10は、予測部12が予測した行動の種類および行動が生じる時刻に応じて、行動に関連した情報を提示装置30に提示する出力部16を備えていてもよい。
モデルは、対象空間(住宅20)におけるガスと水道水との少なくとも一方の消費に関する消費情報を条件に含んでいてもよい。
以下、本実施形態の行動予測装置10についてさらに詳しく説明する。以下では、対象空間が住宅20である場合を想定して説明するが、対象空間は、店舗、オフィス、教育施設(学校、塾)などであってもよい。
図1に示すように、対象空間である住宅20には分電盤21が配置される。分電盤21は系統電源のような電源26から受電した電力を複数系統の分岐回路22に分岐させる。各分岐回路22には住宅20で使用される電気負荷24が接続される。電気負荷24が使用した電力(消費電力)は、計測装置23が分岐回路22を単位として計測する。
本実施形態の行動予測装置10は、基本的には、計測装置23が計測した消費電力値を用いて既知の行動が行われる時刻を予測するように構成されている。すなわち、時間の経過に伴う消費電力値の変化と既知の行動との間の規則性を見出す技術、および見出した規則性を用いることによって時間の経過に伴う消費電力値の変化から既知の行動が行われる時刻を予測する技術を提供する。本実施形態は、住宅20における消費電力値を用いるから、利用者が住宅20の住人である場合を想定して説明する。
分電盤21が受電する電力は、電気事業者が供給する系統電源(商用電源)だけではなく、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池システムなどの分散型電源から供給される電力を含んでいてもよい。ただし、分電盤21に電力を供給する電源の種類にかかわらず、行動予測装置10は、計測装置23が常時において計測する消費電力値を用いる。
計測装置23は、分電盤21に内蔵される構成と、分電盤21の外部に配置される構成とのいずれかが採用される。分岐回路22と電気負荷24とは、一対一に対応する場合と一対多に対応する場合とがある。たとえば、エアコン、IHクッキングヒータ(IH:Induction Heating)、電子レンジのように消費電力が比較的大きい電気負荷24は、分岐回路22に一対一に接続されていることがある。分岐回路22と電気負荷24とが一対多に接続される場合、住宅20における部屋を単位として分岐回路22が割り当てられることが多い。本実施形態では、説明を簡単にするために、分岐回路22に単一の電気負荷24が接続されている場合と、分岐回路22が住宅20の部屋に対応する場合とのほかは考慮しない。
計測装置23は、分岐回路22ごとの通過電流をロゴスキーコイルあるいはクランプ型の電流センサにより監視し、監視した電流値と分岐回路22の線間の電圧値との積の積算値を消費電力値として算出する。すなわち、計測装置23が計測する消費電力値は、実際には瞬時値ではなく、所定の単位時間ごとの電力量である。単位時間は、たとえば、1秒~10分程度の範囲で選択され、望ましくは、30秒あるいは1分が選択される。単位時間は1秒程度であってもよい。
分岐回路22ごとの瞬時電力は、単位時間内でも時間経過に伴って変動しているが、本実施形態では、単位時間内での瞬時電力の変動は考慮せず、単位時間における積算電力量を消費電力値とする。この消費電力値を単位時間で除すれば、単位時間における消費電力の平均値が得られる。
単位時間が短いほど消費電力値の変化が詳細に監視されるが、分電盤21が受電する電力の変動あるいは電気負荷24の動作に起因する消費電力値の変動を、利用者の行動に起因する消費電力値の変動と混同する可能性がある。したがって、単位時間は、時間の経過に伴う消費電力値の変化と利用者の行動との間の規則性を見出すことができ、かつ利用者の行動とは無関係な消費電力値の変動の影響を低減できるように設定される。
行動予測装置10は、プログラムを実行することによって以下の機能を実現するコンピュータを主なハードウェア構成として備える。言い換えると、コンピュータを、以下に説明する行動予測装置10として機能させるためのプログラムが提供される。この種のコンピュータは、パーソナルコンピュータのほか、スマートフォン、タブレット端末などの可搬型の端末装置であってもよい。また、コンピュータは、マイコン(microcontroller)のようにプロセッサとメモリとを一体に備える構成であってもよい。
行動予測装置10を構成するコンピュータが、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などから選択される場合、計測装置23から通信によって消費電力値を受け取るための中継装置が必要である。この種の中継装置として、HEMSコントローラ(HEMS:Home Energy Management System)を用いることが望ましいが、無線LANのアクセスポイントを中継に用いるように構成することも可能である。
HEMSコントローラは、計測装置23から消費電力値を取得し、消費電力値を適宜の提示装置30に提示することにより消費電力値を見える化するように構成される。また、HEMSコントローラは、通信機能を備える特定の電気負荷24との間で通信することによって、電気負荷24の動作を監視し、また電気負荷24の動作を指示することが可能になっている。HEMSコントローラもまたコンピュータ(マイコン)を備えるから、行動予測装置10は、HEMSコントローラの一部の機能として実現することも可能である。
行動予測装置10は、インターネットのような電気通信回線を通して通信するサーバと端末装置とによって構成されていてもよい。この場合、端末装置は計測装置23から取得した消費電力値をサーバに転送し、サーバにおいて規則性を見出す処理を行う構成を採用してもよい。この場合、規則性(ルール)の情報をサーバが見出した場合には、サーバから端末装置にルールの情報を送信し、端末装置においてルールを用いて行動を推定するようにしてもよい。
要するに、本実施形態を実現する態様は様々であり、CPU(Central Processing Unit)の処理能力、メモリの容量などのハードウェア資源、あるいは利用の形態などに応じて、行動予測装置10としてのタスクを適宜の装置で処理するように構成される。
なお、プログラムは、ROM(Read Only Memory)にあらかじめ書き込まれるほか、インターネットのような電気通信回線を通して提供されるようにしてもよい。また、コンピュータで読み取り可能な記録媒体によりプログラムが提供されてもよい。
以下に行動予測装置10の構成および動作を説明する。以下では、行動予測装置10がHEMSコントローラの一機能として実現されている場合を想定して説明する。図1に示す行動予測装置10は、取得部11と予測部12と記憶部13と判定部14と生成部15と出力部16とを備える。さらに、行動予測装置10は内蔵時計25を備える。
取得部11は、計測装置23が計測した分岐回路22ごとの消費電力値を取得する。この取得部11は、計測装置23を接続するためのインターフェイス部として兼用されている。上述したように消費電力値は、計測装置23が単位時間ごとに算出するから、取得部11は分岐回路22ごとの消費電力値を単位時間ごとに取得する。なお、計測装置23において単位時間ごとに消費電力値を算出する機能を取得部11が兼用するように構成することも可能である。
記憶部13は、取得部11が計測装置23から取得した消費電力値を日時に結び付け、消費電力値と日時とを含む情報を電力情報として格納する。すなわち、電力情報は、単位時間ごとの消費電力値と、当該消費電力値が生じた日時とを含んでいる。日時は内蔵時計25で計時される。内蔵時計25は、たとえば行動予測装置10に設けられたリアルタイムクロックが用いられる。
また、記憶部13は、分岐回路22ごとに電力情報を記憶する。すなわち、記憶部13は、分岐回路22ごとに消費電力値の推移の履歴を記憶する。記憶部13は、1週間、1ヶ月、6ヶ月、1年、2年などから選択される期間の電力情報を記憶できる程度の容量を有する。記憶部13に電力情報を格納する期間が長いほど情報量が多くなり、予測の精度が高いモデルを生成できると考えられるが、長期間の電力情報を収集していたのでは利用開始が遅れ、また利用者の生活習慣の変化により後述するモデルが変化する可能性もある。したがって、行動予測装置10は、比較的短い期間の電力情報を用いて複数のモデルを生成し、必要に応じて各モデルを修正することが望ましい。なお、行動予測装置10は、モデルを少なくとも1つ生成すればよい。
本実施形態は、住宅20において電気負荷24の使用と、住宅20における利用者(住人)の特定の行動との間に規則性が見出される場合があるという予想に基づいて構成されている。利用者の特定の行動は、単独の電気負荷24における使用との間でもある程度の規則性を持つことがあるが、複数の電気負荷24における使用の順番との間にはより明確な規則性を持つことがある。
本実施形態では、利用者の特定の行動として、「外出」と「就寝」とを取り上げる。これは、「外出」あるいは「就寝」の前には、ほとんどの電気負荷24を停止させることを習慣にしている利用者が多いからである。たとえば、「外出」の前には、照明器具、IHクッキングヒータ、エアコン、テレビジョン受像機などの多くの電気負荷24は停止させることが一般的である。また、「就寝」の前には、通常は、照明器具、IHクッキングヒータ、テレビジョン受像機のような電気負荷24は停止させている。
行動予測装置10は、上述の知見に基づいて、分岐回路22ごとの電力情報を用いて電気負荷24が停止した時刻(以下、「停止時刻」という)を抽出し、停止時刻を条件として特定の行動の種類および当該行動が生じる時刻を予測するように構成される。停止時刻は、取得部11が計測装置23から取得した消費電力値を用いて予測部12が抽出する。予測部12は、抽出した停止時刻を、生成部15が生成した各モデルに照らし合わせ、当て嵌まるモデルがあれば、該当するモデルを用いて特定の行動の種類および当該行動が生じる時刻を予測する。
各モデルは、行動の種類に応じて選択された分岐回路22ごとの停止時刻を条件に含んでいる。このモデルは、選択された分岐回路22において停止時刻が検出されることを条件として、該当する行動の種類と当該行動が生じる時刻とを推定するように設定される。単独の分岐回路22の場合、停止時刻が検出された時間帯を考慮すると、行動の種類に関する推定の精度が高くなる。ただし、以下に説明するモデルは、1種類の行動について、複数の分岐回路22に関する停止時刻を用いる。また、以下に説明するモデルは、停止時刻が生じる順序も条件に含むことにより、行動の種類および該当する行動が生じる時刻を導き出すように設定される。
上述したモデルを生成するために、記憶部13が記憶している過去の電力情報が用いられる。また、記憶部13には、後述するように、過去における特定の行動の種類と当該行動が生じた時刻とが記憶されている。判定部14は、記憶部13が記憶している電力情報を用いて分岐回路22ごとの停止時刻を抽出する。さらに、生成部15は、判定部14が抽出した分岐回路22ごとの停止時刻と、特定の行動が生じた時刻とを用いて、特定の行動と分岐回路22ごとの停止時刻との間の規則性を評価する。
ここでは、特定の行動は、「外出」または「就寝」であるから、生成部15は、「外出」または「就寝」に関して、分岐回路22ごとの停止時刻との間の規則性を評価する。「外出」または「就寝」という行動は、一般的には、特定の電気負荷24が停止した後に、引き続いて生じるという規則性が見出される。したがって、「外出」あるいは「就寝」という行動を推定するには、特定の分岐回路22に関する消費電力値に着目し、消費電力値に基づいて電気負荷24が停止したことを検出すればよい。
判定部14は、停止時刻を求めるために、記憶部13が記憶している電力情報に基づいて、分岐回路22ごとに電気負荷24の稼働と非稼働との状態を判定するための基準値を定める。基準値は、専門家ないし熟練者が経験に基づいて適宜に定めることが可能であるが、自動的に定めることが望ましい。基準値を自動的に定める場合、判定部14は、分岐回路22ごとに待機電力値を求め、待機電力値に基づいて基準値を設定することが可能である。基準値は、待機電力値を用いればよいが、待機電力値に所定値を加算した値あるいは待機電力値から所定値を減算した値を用いてもよい。
判定部14は、分岐回路22ごとの消費電力値を基準値と比較し、消費電力値が基準値まで立ち下がった時点を停止時刻として抽出する。つまり、消費電力値が基準値を超える期間は、該当する分岐回路22に接続された電気負荷24が稼働した期間と判断し、消費電力値が基準値以下である期間は、該当する分岐回路22に接続された電気負荷24が非稼働であった期間と判断する。
分岐回路22ごとの待機電力値を求めるには、分岐回路22ごとに1日のような所定の期間における消費電力値の変化を用いる。具体的には、消費電力値と比較する比較値を徐々に小さくするように変化させ、消費電力値が比較値より小さい状態の継続時間が所定の基準時間以上であるという条件を満足する比較値の最小値を、待機電力値として採用すればよい。待機電力値は、他の方法で求めてもよく、たとえば、比較値を徐々に大きくするように変化させ、1日のうちで消費電力値が比較値以下である期間が所定の基準時間以上であるという条件を満足する比較値の最小値を、待機電力値として採用してもよい。ここでの基準時間は、電気負荷24が使用される頻度や時間帯に応じて定められる。つまり、基準時間は、対象となる電気負荷24が非稼働状態である時間に応じて設定される。
判定部14は、着目する分岐回路22について待機電力値を求めると、待機電力値に基づいて基準値を設定する。判定部14は、基準値を定めた後、該当する分岐回路22における消費電力値が基準値まで立ち下がる時刻を停止時刻として求める。したがって、停止時刻は、分岐回路22ごとに抽出される。
ここに、消費電力値が基準値まで立ち下がる時刻は、当該時刻の後に消費電力値が基準値以下である状態が所定の判定時間を超えて継続するという条件を満たす必要がある。つまり、消費電力値が基準値まで立ち下がった時点から判定時間が経過する前に消費電力値が基準値を超えた場合は、消費電力値が基準値まで立ち下がった時刻は停止時刻として採用しない。なお、判定部14は、日毎に分岐回路22ごとの停止時刻を求めるから、1つの分岐回路22について1日に停止時刻が複数回抽出される場合もある。
判定部14が分岐回路22ごとに抽出した停止時刻は、生成部15に引き渡される。生成部15は、分岐回路22ごとに抽出された停止時刻と、記憶部13が記憶している利用者の行動との間に規則性があるか否かを評価する。生成部15は、規則性を見出した場合には、該当する行動を推定するための条件に停止時刻を用いる。生成部15が生成するモデル(すなわち、規則)は、利用者の行動の種類および当該行動が生じる時刻を予測する条件に、当該行動を推定するために選択された分岐回路22における停止時刻を用いている。つまり、モデルは、選択された分岐回路22の停止時刻を条件として、利用者による特定の行動が生じるまでの予測時間を対応させている。また、上述したように、生成部15が生成するモデルは、複数系統の分岐回路22(2系統以上の分岐回路22)における停止時刻の発生順序を含んでいる。
上述のように、モデルは、選択された複数の分岐回路22(2つ以上の分岐回路22)と、分岐回路22ごとの停止時刻と、停止時刻が発生した順序とを、利用者の行動の種類および行動が生じる時刻を求めるための条件に含んでいる。なお、モデルは、選択された分岐回路22に関して停止時刻の前の消費電力値などを条件に含んでいてもよい。
利用者の行動の種類および行動が生じる時刻は、選択された分岐回路22における停止時刻に基づいて推定されるから、該当する行動が必ず生じるとは限らない。とくに、分岐回路22において停止時刻が検出されてから行動が生じると予測される時刻までの時間が長いほど、推定の信頼度は低下すると考えられる。そこで、本実施形態では、モデルにおいて条件である分岐回路22ごとの停止時刻に対して、推定の信頼度ないし確信度を表す確率を与えている。この確率には、停止時刻から行動までの予測時間が短くなるほど大きい値が割り当てられ、また、順番が後になるほど大きい値が割り当てられる。
以下に、電力情報を用いてモデルを生成する具体例を説明する。いま、選択された複数の分岐回路22における消費電力値が時間経過に伴って図2、図3のように変化したとする。記憶部13が蓄積する電力情報において、消費電力値は複雑に変動しているが、図2、図3に示す例では、説明を簡単にするために、模式化して消費電力値の推移を示している。
本実施形態では、上述したように、「外出」および「就寝」が特定の行動として推定される。図2は、IHクッキングヒータ、リビングのエアコン、リビングに設置された電気負荷(エアコンを除く全ての電気負荷)に対応した3系統の分岐回路22における停止時刻と、「外出」との間に規則性が見出された場合を示している。なお、以下の説明では、“リビングに設置された電気負荷”を、単に“リビング”と記載する。また、図3は、リビングのエアコン、リビング、寝室に対応した3系統の分岐回路22における停止時刻と、「就寝」との間に規則性が見出された場合を示している。なお、以下の説明では分岐回路22ごとの名称として、対応する電気負荷24または部屋の名称を用いる。
図2において、符号P1はIHクッキングヒータによる消費電力値を表し、符号P2はリビングのエアコンによる消費電力値を表し、符号P3はリビングにおける消費電力値を表している。図2に示す例において、IHクッキングヒータの停止時刻t1は6:40、リビングのエアコンの停止時刻t2は8:20、リビングの停止時刻t3は8:30とする。また、「外出」の時刻txは8:35とする。
図3において、符号P4は寝室における消費電力値を表し、また、図2と同様に、符号P2はリビングのエアコンによる消費電力値を表し、符号P3はリビングにおける消費電力値を表している。図3に示す例では、リビングのエアコンについての停止時刻t4は23:30、リビングにおける停止時刻t5は23:40、寝室に設置された電気負荷の停止時刻t6は24:10とする。また、「就寝」の時刻tyは24:15とする。なお、以下の説明では、“寝室に設置された電気負荷”を、単に“寝室”と記載する。
ところで、多くの電力情報を分析した結果、利用者は特定の行動の前に、おおむね類似した手順を踏むという知見が得られている。言い換えると、利用者は、特定の行動の前には、所定の手順を踏むことが習慣ないし癖になっていることが多い。分岐回路22ごとの消費電力値から求められた停止時刻は、電気負荷24の操作に関する利用者の行動を反映している。そこで、停止時刻に関して利用者が「外出」あるいは「就寝」を行う前の習慣ないし癖を見出すことができれば、生成部15は、特定の行動に停止時刻を関連させたモデルを生成することが可能になる。
図2に示す例では、「外出」の時刻tx、IHクッキングヒータの停止時刻t1、リビングのエアコンに関する停止時刻t2、リビングにおける停止時刻t3には、t1<t2<t3≦txという関係がある。また、tx-t3≒5分、tx-t2≒15分、tx-t1≒115分という関係が成立している。
同様に、図3に示す例では、「就寝」の時刻ty、リビングのエアコンに関する停止時刻t4、リビングにおける停止時刻t5、寝室における停止時刻t6には、t4<t5<t6≦tyという関係がある。また、ty-t6≒5分、ty-t5≒35分、ty-t4≒45分という関係が成立している。
上述のように、特定の行動の前には、複数の分岐回路22で消費電力値が基準値まで立ち下がり、かつ消費電力値が基準値まで立ち下がる停止時刻の発生順序に規則性が見出される。1日を単位として分岐回路22ごとの停止時刻を求めると、単一の分岐回路22の停止時刻、あるいは複数の分岐回路22の停止時刻の先後の関係に、1日における特定の行動との関連性を見出せる可能性がある。
ただし、上述した例のように、「外出」と「就寝」という異なる行動の前には、リビングのエアコンに関する消費電力値およびリビングに関する消費電力値が基準値まで立ち下がるという事象が生じる点では共通している。しかも、上述した例では、リビングに関する停止時刻は、リビングのエアコンに関する停止時刻の後であるから、2系統の分岐回路22のみについて停止時刻の発生順序を用いても「外出」と「就寝」とは区別できない可能性がある。
ところで、「外出」あるいは「就寝」という行動に際しては、すべての分岐回路22において消費電力値が基準値まで立ち下がる。そのため、住宅20における消費電力値の合計は、分岐回路22ごとの待機電力値の合計まで低下する。したがって、分岐回路22ごとの基準値(第1の基準値)とは別に、住宅20における消費電力値の合計に対しても基準値(第2の基準値)を設定する。第2の基準値を設定しておけば、住宅20における消費電力値の合計が第2の基準値まで立ち下がったことを、「外出」あるいは「就寝」の必要条件に用いることが可能になる。
そこで、判定部14は、住宅20における消費電力値の合計が第2の基準値まで立ち下がった時点が検出されると、あらかじめ定めた長さの抽出期間T1を設定する(図2、図3参照)。抽出期間T1は、住宅20における消費電力値の合計が第2の基準値まで立ち下がった時点から抽出期間T1に相当する時間だけ遡ることによって設定される。判定部14は、記憶部13が記憶している電力情報を用いて、抽出期間T1内で分岐回路22ごとの停止時刻を抽出する。抽出期間T1は、一定時間でよいが、3系統以上の分岐回路22について停止時刻を抽出できるように設定されていることが望ましい。本実施形態では、「外出」および「就寝」という行動に関して、3系統ずつの分岐回路22について停止時刻の発生順序を条件に含むモデルを用いる。もちろん、4系統以上の分岐回路22に関する停止時刻の順序を条件に用いてもよい。本実施形態における「外出」のモデルを表1に示し、「就寝」のモデルを表2に示す。
それぞれのモデルは、「停止時刻の範囲」、「分岐回路」、「順序」、「外出までの予測時間」または「就寝までの予測時間」の4項目を含む。「外出までの予測時間」は、該当する分岐回路22での停止時刻から利用者の「外出」までの時間の推定値である。予測時間は、多数の電力情報と行動との関係を用いて統計的に算出することが望ましい。ただし、予測時間は、電力情報と行動との関係を用いて専門家が経験則に照らして定めてもよい。また、モデルは、原則として個々の利用者について生成される。さらに、平日と休日との別、季節の別など他の条件によっても異なるモデルが生成される場合がある。
なお、表1、表2において、σ11、σ12、σ13、σ21、σ22、σ23は、予測時間に関する許容誤差を示している。多数の電力情報を用いて予測時間を統計的に算出する場合、許容誤差は、予測時間の分散などを用いて設定される。つまり、許容誤差は、予測時間のばらつきの程度を表している。したがって、一般的には、予測時間が短いほど許容誤差は小さくなる。すなわち、σ11≧σ12≧σ13の関係になり、またσ21≧σ22≧σ23の関係になる。
上述したように、モデルを構成している分岐回路22で停止時刻が検出されると、該当する停止時刻から特定の行動が行われるまでの予測時間の推定精度は、停止時刻から特定の行動が行われるまでの時間が短いほど高まると考えられる。また、特定の行動が生じるまでに利用者が行動に応じた手順を踏むとすれば、手順が進むほどに該当する行動が生じる確率が高くなると考えられる。表1、表2に示す確率は、事象が順番に生じた場合に特定の行動が生じる確率を表している。
表1では、IHクッキングヒータに関して停止時刻が検出されると、この停止時刻から(115±σ11)分後に「外出」を行うという予測が可能であり、この予測に対する確率(信頼度)が43%であることが表されている。表1によれば、その後に、リビングのエアコンに関して停止時刻が検出されると、この停止時刻から(15±σ12)分後に「外出」を行うという予測が可能であり、この予測の確率は67%まで上昇する。また、表1によれば、リビングのエアコンに関する停止時刻が検出された後に、リビングに関する停止時刻が検出されると、この停止時刻から(5±σ13)分後に「外出」を行うという予測が可能になり、この予測の確率は86%になる。
表1における確率の求め方について簡単に説明する。表1における予測の確率は表3のようなデータに基づいて算出される。表3は、「外出」の判断に用いる3系統の分岐回路22に関して、14日分の停止時刻と「外出」との関係を、記憶部13に格納された電力情報から求めた例である。表3において、「IH」はIHクッキングヒータが接続された分岐回路22を表し、「エアコン」はリビングのエアコンが接続された分岐回路22を表し、「リビング」はリビングに対応する分岐回路22を表している。また、分岐回路22に関して、「True」は停止時刻が検出されたことを表し、「False」は停止時刻が検出されないことを表す。「外出」に関しては、「True」は外出したことを表し、「False」は在宅していたことを表す。なお、表3の左端の数値は、データを区別する目的で付与しており、順番には意味がない。
表3では、IHクッキングヒータに関して停止時刻が検出された後に、「外出」が行われたか否かを示している。この例において、「外出」が行われているのは、IHクッキングヒータとリビングのエアコンとリビングとのすべてで停止時刻が検出された場合のみである。IHクッキングヒータの停止時刻が検出されたとしても、リビングで停止時刻が検出されなければ、「外出」は行われていない。
表3に基づいて確率を求めると、以下のようになる。IHクッキングヒータに関して停止時刻が検出された14日のうち「外出」に至った日数は6日存在するから、確率は6/14≒43%である。また、IHクッキングヒータに関して停止時刻が検出された後に、リビングのエアコンに関して停止時刻が検出された日数は9日存在し、そのうち「外出」に至った日は6日存在するから、確率は6/9≒67%である。さらに、IHクッキングヒータに関して停止時刻が検出され、リビングのエアコンに関して停止時刻が検出された後に、リビングに関して停止時刻が検出された日数は7日であり、そのうち「外出」に至った日数は6日存在する。したがって、この場合には、6/7≒86%の確率で「外出」が行われる。このように、「外出」を判断するための情報が増加するに従って、予測の確率が高まることがわかる。
同様に、表2では、リビングのエアコンに関して停止時刻が検出された段階では、この停止時刻から(45±σ21)分後に「就寝」を行うという予測が可能になり、この予測に関する確率が50%であることが表されている。その後、リビングに関して停止時刻が検出されると、表2によれば、この停止時刻から(35±σ22)分後に「就寝」を行うという予測が成り立ち、予測の確率は70%になる。さらに、表2では、リビングに関して停止時刻が検出された後に、寝室に関して停止時刻が検出されると、その停止時刻から(5±σ23)分後までに「就寝」を行うという予測が可能になり、予測の確率は90%まで上昇する。
以上説明したように、利用者の特定の行動と、行動の前における分岐回路22ごとの停止時刻との間の規則性が見出されると、行動の種類ごとに、表1、表2に示すようなモデルを生成することが可能になる。生成されたモデルは生成部15に保持され、予測部12は、取得部11が計測装置23から取得した消費電力値にモデルを適用することにより、利用者による行動の種類と行動が生じる時刻とを予測する。予測部12は、取得部11が取得した分岐回路22ごとの消費電力値を基準値と比較することにより、分岐回路22ごとの停止時刻を求める。ここに予測部12が用いる基準値は、判定部14で定めた基準値と同じでよい。
なお、モデルは、「行動時刻の範囲」を条件に追加して含んでいてもよい。「行動時刻の範囲」とは、利用者による特定の行動が生じると予測される時間帯である。予測部12は、分岐回路22ごとの停止時刻から行動が生じる時刻を予測したときに、この予測した時刻が「行動時刻の範囲」で規定されている時間帯に含まれる場合にのみ、該当する行動の可能性を予測することが望ましい。
たとえば、「外出」を予測するときに、予測部12は、該当する分岐回路22において検出された停止時刻を条件として「外出」の時刻を予測し、この予測した時刻が7:00~9:00の時間帯であれば、停止時刻を「外出」の予測に採用することが望ましい。予測部12は、「外出」のモデルが対象としている分岐回路22で停止時刻が検出されたとしても、予測した時刻が「行動時刻の範囲」の時間帯を逸脱している場合は、「外出」の予測には用いないことが望ましい。このように、「行動時刻の範囲」も予測に用いることによって、予測の精度が一段と高められる。
予測部12は、モデルとして設定されているすべての分岐回路22に関する停止時刻が条件を満足した場合に、分岐回路22ごとに設定された停止時刻から予測時間の経過後に、モデルに対応した行動を利用者が行うと予測する。利用者が行動する時刻は、モデルの中で確率が最大になる分岐回路22に対応する予測時間に基づいて予測される。表1に示すモデルであれば、リビングに関する停止時刻から(5±σ13)分後に「外出」を行うと予測される。
ところで、「外出」あるいは「就寝」の間は、一般的には、必要最小限の電気負荷24を除いて、電気負荷24への給電が停止される。つまり、ほとんどの電気負荷24は、「外出」あるいは「就寝」の間に給電されないように、「外出」あるいは「就寝」の前に消されなければならない。したがって、「外出」あるいは「就寝」の前に、利用者に対して電気負荷24の消し忘れに関する注意が喚起されると、利用者にとっての利便性が向上する。「外出」あるいは「就寝」の際には、電気負荷24の消し忘れだけではなく、鍵などの戸締まりについても注意を喚起することが望ましい。
このような注意の喚起を行うために、特定の行動が生じる時刻を予測部12が予測すると、出力部16に所定の提示情報を出力させる。出力部16は、行動に応じた内容の提示情報をあらかじめ記憶しており、時刻が事前に予測された行動について記憶している提示情報を適宜の提示装置30に出力する。
提示装置30は、液晶表示器のようなフラットパネルディスプレイである表示器と、タッチパネルあるいは押釦スイッチのような操作器とを一体に備える操作表示装置を採用することが望ましい。この種の提示装置30は、行動予測装置10のための専用装置であってもよいが、出力部16に、端末装置と通信するインターフェイス部160が設けられていれば、端末装置を提示装置30として採用することが可能である。この種の端末装置として、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などから選択される汎用の端末装置を採用すると、専用の提示装置30を用いることなく、行動予測装置10との間で情報の授受が可能になる。
ところで、モデルにおいて、分岐回路22に関する停止時間から行動が実施される時刻までの予測時間には許容誤差が含まれている。したがって、表1の例であれば、リビングに関する停止時刻から「外出」する時刻までの予測時間は、最短で(5-σ13)分であり、最長で(5+σ13)分である。最長の予測時間を選択した場合、提示装置30に提示を行う前に「外出」が行われる可能性がある。
利用者の特定の行動に関連して利用者に通知することが望ましい提示情報を提示することによって消し忘れなどに対する注意を喚起する場合、提示情報の提示は、利用者が特定の行動を実施するよりも前の時刻に行うことが望ましい。したがって、出力部16が提示装置30に提示情報を出力するタイミングは、予測部12が予測した予測時間の範囲で最短になるように設定されていることが望ましい。
ここに、特定の分岐回路22における停止時刻の直後に、該当するモデルに対応した行動が実施される場合、最短の予測時間は誤差を無視した0分になる。この場合、この特定の分岐回路22における停止時刻と同時に、提示装置30への提示が行われる。
なお、上述の構成例では、予測部12は、モデルの条件を定めているすべての分岐回路22に関して停止時刻が得られると、モデルに対応した行動までの時間を推定するように構成されている。これに対して、予測部12は、予測の確率が所定の閾値以上になると、行動までの時間を推定するように構成されていてもよい。たとえば、当該閾値を70%に設定している場合、予測部12は、表2に示す「就寝」に対応したモデルについては、リビングに関する停止時刻が求められた後に、寝室に関する停止時刻を待たずに、「就寝」までの時間を推定する。この場合でも、モデルの中に確率がさらに高い条件が含まれているときには、予測部12は予測時間を修正すればよい。
上述した例では、特定の行動の種類および行動が生じる時刻が予測されると、提示装置30に情報を提示するように構成しているが、出力部16は、特定の行動に対して他の装置を制御するように構成されていてもよい。出力部16は、たとえば、「就寝」すると予測される時刻の前に、睡眠に適した環境を作り出すために、照明の調光および調色を行う制御、テレビジョン受像機の輝度および音量を低減させる制御などを行うように構成されていてもよい。
上述した構成例では、モデルの条件を定めている少なくとも1系統の分岐回路22が固定的に設定されている。モデルの条件を定めているすべての分岐回路22は、分岐回路22ごとの停止時刻と、行動との相関を評価することにより、自動的に抽出することが可能である。ただし、自動的に抽出された分岐回路22には、行動を推定する条件として不要な分岐回路22が含まれている可能性がある。また、相関が比較的弱い分岐回路22の停止時刻であっても条件に含めることによって、推定の精度が高くなる場合も考えられる。
したがって、行動予測装置10は、図1に示すように、生成部15において生成されたモデルの条件を定めている分岐回路22の追加および削除を可能にする入力部17を備えることが望ましい。入力部17は入力装置31を接続する機能を有する。入力装置31は、提示装置30と同様に、表示器と操作器とを一体に備える操作表示装置を用いることが望ましい。
入力装置31は行動予測装置10のための専用装置であってもよいが、入力部17に、端末装置と通信するインターフェイス部170が設けられていれば、端末装置を入力装置31として採用することが可能である。端末装置は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などから選択される汎用の端末装置を採用することが望ましい。提示装置30と入力装置31とは、ハードウェアを共用してもよい。ただし、提示装置30と入力装置31とのハードウェアを共用する場合、端末装置で実行する応用プログラム(いわゆる、アプリケーションソフトウェア)により、提示装置30と入力装置31との機能が実現される。
以下に、入力装置31を用いてモデルの内容を変更する具体例を説明する。いま、図4のように、「外出」の推定に用いる分岐回路22の消費電力値として、IHクッキングヒータに関する消費電力値P1、リビングのエアコンに関する消費電力値P2、リビングに関する消費電力値P3のほかに、洋室の消費電力値P5が選定されている場合を想定する。図示例において、IHクッキングヒータに関する停止時刻t1は6:40、リビングのエアコンに関する停止時刻t2は8:30、リビングに関する停止時刻t3は8:30、「外出」の時刻txは8:40とする。また、洋室に関する停止時刻t5は10:10とする。
図4のような動作は、タイマーで動作する電気負荷24が洋室に存在し、該当する電気負荷24が、「外出」の後にタイマーで設定した時刻になるまで運転を継続しているような場合に生じる。このような電気負荷24が含まれている場合、表1に示したモデルのように、住宅20の消費電力値の合計が基準値(第2の基準値)まで立ち下がった時点を求めても、この時点は「外出」の時刻txを過ぎることになる。したがって、住宅20の消費電力値の合計が基準値まで立ち下がった時点から遡っても「外出」の予測には用いることができない。
そこで、入力装置31を用いることによって、「外出」を予測するためのモデルから、洋室の消費電力値P5を除外する。言い換えると、特定の行動の予測に不必要な情報(分岐回路22)を入力装置31を用いて削除することにより、「外出」に関して予測の精度を高めることが可能になる。
ところで、図2、図3のような動作からモデルを生成するときには、住宅20の消費電力値の合計が第2の基準値まで立ち下がった時点に基づいて抽出期間T1(図2、図3参照)を設定している。一方、図4のような動作からモデルを生成するときには、洋室の消費電力値P5を除外するから、抽出期間T1を設定する条件も変更される。すなわち、抽出期間T1は、消費電力値が基準値(第1の基準値)まで立ち下がった分岐回路22のうち、立ち下がりの時刻が「外出」の時刻txより前であり、かつ「外出」の時刻txにもっとも近い停止時刻に基づいて設定される。要するに、「外出」の時刻txを予測するモデルは、「外出」より前に生じた停止時刻の順序を用いて定められる。
また、「外出」の前に必ずしもIHクッキングヒータを用いないのであれば、IHクッキングヒータをモデルから除外することにより、「外出」に関する予測の精度を高めることが可能になる。一方、電気負荷24が新たに追加されたような場合、追加された電気負荷24の消費電力値を用いると、行動をより精度よく予測することが可能になる場合がある。このような場合には、入力装置31を用いることにより、モデルの条件を定めている分岐回路22を追加すればよい。
上述のように、入力装置31を用いることによってモデルの条件を定めている分岐回路22を削除したり追加したりすることが可能になるから、利用者の特定の行動に関する予測の精度の向上に寄与する。
ところで、利用者による特定の行動(上述の例では、「外出」と「就寝」)が生じた時刻は、行動予測装置10だけでは知ることができない。そのため、以下のいずれかの方法を用いて、利用者による特定の行動が生じた時刻が行動予測装置10に与えられる。特定の行動が生じた時刻は、入力部17を通して与えられる。
すなわち、入力部17に接続される入力装置31を用い、入力装置31を操作した時点を契機として、行動予測装置10に特定の行動が生じた時刻を与えればよい。この場合、行動に対応した釦を入力装置31に設けておき、入力部17には、利用者が特定の行動を行ったときに該当する釦が押されたことに対する入力を受け付ける第1のインターフェイス部(第1のI/F部)171を設けておく。第1のインターフェイス部171は、入力装置31の釦が押されたときに、行動の種類を記憶部13に登録し、かつ内蔵時計25で計時されている日時を行動の時刻として記憶部13に登録すればよい。入力装置31が操作表示装置である場合、釦は画面に表示すればよい。そして、生成部15は、モデルの生成において、入力装置31の操作によって指定された時刻を、利用者による特定の行動が生じた時刻として採用する。
モデルを生成するための電力情報の情報量が少ない場合、あるいは利用者による特定の行動が生じる時刻に比較的大きいばらつきがある場合などには、上述のように、行動のタイミングを行動予測装置10に通知することが望ましい。このように、利用者が特定の行動を行った時点を利用者が申告することにより、特定の行動が行われた時刻が、行動予測装置10に精度よく登録される。
以上のように、行動予測装置10は、行動が生じる時刻を利用者が申告するための入力を受け付ける第1のインターフェイス部171を備えることが望ましい。この場合、生成部15は、第1のインターフェイス部171が受け付けた時刻をモデルの生成において行動が生じる時刻として採用するように構成されていることが望ましい。ここで、第1のインターフェイス部171が、本発明の申告情報受付部に相当する。
入力部17は、入力装置31ではなく、利用者による特定の行動が生じたときに、必ず操作される装置40からの情報を受ける第2のインターフェイス部(第2のI/F部)172を備えていてもよい。特定の行動が生じたときに必ず操作される装置40は、たとえば「外出」の際に施錠される電気錠、防犯システムが設置されている住宅20であれば在宅時と外出時とで動作モードが切り替えられる切替スイッチ(モード選択スイッチ)などである。
これらの装置40は、通常は外出時に操作されるから、操作されたことを表す情報が第2のインターフェイス部172に与えられると、行動予測装置10は外出という行動の種類と外出の時点とを認識する。以後の処理は入力装置31を用いて利用者が行動の時刻を申告する場合と同様である。また、「外出」に限らず「就寝」の場合も、「就寝」の際に必ず操作される装置40(たとえば、ベッドサイドのランプ)が操作された場合の情報を行動予測装置10に与えればよい。このように、入力装置31を用いない構成を採用すれば、入力装置31の操作が不要であるから、手間が省けることになる。
以上のように、行動予測装置10は、行動が生じるときに操作される装置40が操作されたことを示す情報を受け取る第2のインターフェイス部172を備えていてもよい。この場合、生成部15は、第2のインターフェイス部172が情報を受け取った時刻をモデルの生成において行動が生じる時刻として採用するように構成されていることが望ましい。ここで、第2のインターフェイス部172が、本発明の操作情報受付部に相当する。
ところで、住宅20の住人が複数人である場合、住人ごとに行動の時刻が異なる場合がある。たとえば、すべての住人が同じ時刻に「外出」を行うとは限らない。以下では、複数の住人が、同じ種類の行動を異なる時刻に行う場合の構成について説明する。以下の説明において、説明を簡単にするために住宅20における住人を2人と仮定するが、3人以上の場合も同様の技術を適用することが可能である。
複数人の行動を予測する場合、個人の識別を行う構成を採用するか、個人の識別を行わない構成を採用するかに応じて、行動予測装置10の構成は異なる。図5に示す行動予測装置10は、個人の識別を行う構成を記載しているが、個人の識別を行わない場合には、管理部18は省略される。上述したように、ここでは、住宅20に2人が居住している場合を想定しているから、行動予測装置10は、2人の行動を区別して認識すればよい。
図5において、判定部14が電力情報から抽出した分岐回路22ごとの停止時刻は生成部15に与えられる。生成部15は、上述したように、選択された複数の分岐回路22における停止時刻の順序を、特定の行動を予測する条件に関連させたモデルを生成する。ただし、2人の行動を識別する必要があるから、モデルにおいて行動を予測する条件になる情報の種類は多いほうがよい。
たとえば、上述した構成例では、3系統の分岐回路22における停止時刻を1人の行動に対応付けているが、2人以上の行動を区別するには、4系統以上の分岐回路22における停止時刻を用いることが望ましい。ここでは、IHクッキングヒータ、リビングのエアコン、リビング、洋室、トイレという5系統の分岐回路22における停止時刻を用いることにより、2人の行動を識別する例を示す。
いま、2人が「外出」するまでに、選択された5系統の分岐回路22の消費電力値が、図6のように変化したとする。図6において、符号P1はIHクッキングヒータによる消費電力値を表し、符号P2はリビングのエアコンによる消費電力値を表し、符号P3はリビングにおける消費電力値を表している。また、符号P5は洋室における消費電力値、符号P6はトイレにおける消費電力値を表している。
判定部14は、上述した構成例と同様に、住宅20における消費電力値の合計が第2の基準値まで立ち下がった時点から遡るように抽出期間T1を設定する。図示例では、2人の「外出」の時刻tx1,tx2をそれぞれ予測する必要があるから、抽出期間T1は、2人の「外出」に関連する停止時刻を含むように比較的長い時間に設定される。図示例の抽出期間T1には、トイレに対応した分岐回路22で2回の停止時刻t61、t62が検出され、他の分岐回路22でそれぞれ1回ずつの停止時刻t1、t2、t3、t5が検出されている。
生成部15は、抽出期間T1で抽出した停止時刻t1、t2、t3、t5、t61、t62を用いて、表4、表5のようなモデルを生成する。表4は「外出」を先に行う一人目のモデルであり、表5は「外出」を後で行う二人目のモデルである。表4、表5において、σ31、σ32、σ33、σ41、σ42、σ43、σ44、σ45、σ46は、予測時間に関する許容誤差を示している。
表5に示すモデルは、行動に関連する条件が6個あり、「順序」が1~3の3個の条件は、一人目の行動に関連する条件である。したがって、二人目の行動に関連する条件は「順序」が4~6の3個の条件に絞り込んでもよい。つまり、トイレに関する停止時刻t62、リビングのエアコンに関する停止時刻t2、リビングに関する停止時刻t3の3種類だけを二人目の「外出」に対応させることが望ましい。
要するに、抽出期間T1に抽出された停止時刻と行動との相関を評価することにより、モデルで用いる分岐回路22を選択すればよい。停止時刻と行動との相関の程度は、モデルにおける「確率」に反映されている。したがって、たとえば、表5に示す例では、「確率」が50%未満である分岐回路22を条件から省略するという基準を定めてもよい。この基準は、表1、表4に示すモデルに適用することも可能である。たとえば、表1、表4に示すモデルにおいて、「順序」が1である条件を省略しても「外出」を予測するモデルとして用いることが可能である。
ところで、図5に示す構成例は、一人ずつの情報を管理するために管理部18を備えている。生成部15が生成するモデルでは、停止時刻で定めた条件ごとに行動までの時間を対応付けているから、人を区別しない場合は、行動の種類と行動の時刻とを予測することが可能である。一方、同じ行動であっても人に応じてモデルに含まれる条件が異なるから、モデルを人に関連させると、予測部12がモデルを用いて行動の種類および行動が生じる時刻を予測した時点で、管理部18は、該当する行動に対応した人を推定することが可能になる。
管理部18には、行動の予測を行う人が入力部17を通してあらかじめ登録される。行動の種類および行動の時刻を入力装置31の操作によって記憶部13に登録する構成であれば、入力装置31の操作を人と対応させることも可能である。つまり、入力装置31は、行動の種類だけではなく行動を行う人も併せて入力できるように構成されていることが望ましい。この構成では、記憶部13に記憶される行動の種類および行動の時刻は、管理部18に登録された人に対応させて登録される。
生成部15はモデルを生成したときに、モデルを人に対応させ、モデルと人との対応関係を管理部18に記憶させる。要するに、管理部18は、生成部15が生成したモデルが、どの人に対応するかを記憶する。さらに、管理部18は、人ごとに所要の属性を記憶している。人の属性としては、名前や住所は含まなくてもよいが、各人が使用する端末装置(移動体電話機、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなど)に情報を通知するための識別情報、通知を希望する情報の種類を含むことが望ましい。各人が使用する端末装置に情報を通知するための識別情報は、電話番号、メールアドレスなどから選択される。
通知を希望する情報は、住宅20に関する情報のほか、各人の行動に関連した情報を含むことが望ましい。たとえば、住宅20に関する情報は、住宅20における機器(電気負荷24など)の消し忘れ、戸締まり忘れなどを含む。あるいはまた、過去の消費電力値から食器洗い洗浄機(以下、「食洗機」という)を毎日運転させるという習慣が既知になっている場合に、「就寝」の前に食洗機が使用されていないことを情報として提示装置30に提示させることも可能である。
また、洗濯機のような特定の機器の運転が検出された場合、該当する機器に関連する情報を住宅20に関する情報に含めてもよい。たとえば、「外出」の前に、分岐回路22の消費電力値に基づいて洗濯機の運転が検出された場合、洗濯物を外に干すべきか否かの情報が通知される。各人の行動に関連した情報としては、ウェブサイトからインターネットのような電気通信回線を通して取得する情報を含んでいてもよい。
上述のような情報を取得するために、入力部17は、第3のインターフェイス部(第3のI/F部)173を備えることが望ましい。第3のインターフェイス部173は、住宅20における機器に関連する情報を取得するように構成され、また、インターネットのような電気通信回線に接続されるように構成される。さらに、行動予測装置10は、行動の種類と情報の取得先とが登録された登録部19を備える。第3のインターフェイス部173は、予測部12が行動の種類を予測したときに、登録部19に登録されている取得先から当該行動に関連する情報を取得する。
登録部19には、たとえば、「外出」という行動に対して、天気予報、交通状況、商店または飲食店の割引情報などを取得するための取得先が登録される。また、登録部19には、住宅20に関する情報として、窓の開閉状態、洗濯機のような機器の運転状態などに関する情報の取得先が登録される。第3のインターフェイス部173を通して情報を取得する取得先および情報の種類は、登録部19にあらかじめ登録される。管理部18には、各人の各行動に対して、必要な情報の種類が結び付けて登録されている。
したがって、予測部12が各人の特定の行動について、行動の種類および行動の時刻を予測したとき、出力部16は、管理部18を参照することにより必要な情報の種類を確認し、さらに登録部19を参照することにより該当する情報の取得先を抽出する。第3のインターフェイス部173は、抽出された取得先から所要の情報を取得し、出力部16に引き渡す。その結果、各人の各行動に対応した情報を各人が保有する提示装置30に提示することが可能になる。
以上のように、対象空間における利用者が複数人である場合に、行動予測装置10は、管理部18を備えることが望ましい。管理部18は、利用者ごとに対応するモデルと、利用者ごとに提示装置30に提示する情報の種類と、利用者ごとに保有する提示装置30を識別する情報とを記憶する。この場合、出力部16は、予測部12が行動の種類を予測する際に用いたモデルに対応する利用者について、管理部18が記憶している種類の情報を、管理部18が記憶している提示装置30に提示することが望ましい。ここで、第3のインターフェイス部173が、本発明の関連情報取得部に相当する。
また、行動予測装置10は、登録部19と第3のインターフェイス部173とを備えていることが望ましい。登録部19は、行動の種類に関連した情報を取得するために、行動の種類と情報の取得先とが登録される。第3のインターフェイス部173は、予測部12が行動の種類を予測したときに、登録部19に登録されている取得先から当該行動に関連する情報を取得するように構成される。この場合、出力部16は、第3のインターフェイス部173が取得した情報を提示装置30に提示するように構成されていることが望ましい。第3のインターフェイス部173は、電気通信回線を通して情報を取得するように構成されていることが望ましい。
なお、登録部19および第3のインターフェイス部173は、図5に示した行動予測装置10のように複数人に対応する構成だけではなく、図1に示した行動予測装置10に設けてもよい。
上述した構成例において、生成部15は、電力情報のみに基づいてモデルを生成しているが、住宅20のガスと水道水との少なくとも一方の消費に関する消費情報を含むモデルを生成してもよい。この場合、モデルは、消費電力値に加えて、ガスの消費量と水道水の消費量との少なくとも一方を含むことになる。モデルがガスあるいは水道水に関する情報を含んでいる場合であっても、原則としては、電気負荷24のみを含む場合と同様である。取得部11は、ガスと水道水との少なくとも一方の消費量も取得するから、ガスと水道水との使用状態に関して提示装置30に情報を提示することが可能である。たとえば、「外出」に際してカランを閉め忘れている場合に、注意を喚起するメッセージを提示装置30に提示することが可能になる。
「外出」において提示装置30に提示される情報の例を表6に示し、「就寝」において提示装置30に提示される情報の例を表7に示す。
図7、図8は、住宅20における2人の住人がそれぞれ携行する端末装置(提示装置30)に対して、異なる情報を提示する例を示している。一方の住人に対しては、図7のように、「外出」に際して、天気予報に関連させて傘の携行を促す情報を提示し、さらに、「外出」の時刻に対応した列車の出発時刻および列車の運行状況を表す情報(遅延や事故の情報)を提示している。また、他方の住人に対しては、図8のように、「外出」に際して、天気予報に関連させて洗濯物に対する注意を喚起する情報を提示し、さらに、特定の店舗での特売の情報、およびカランの閉め忘れに関する情報を提示している。
なお、図5に示した行動予測装置10に関して上述した部分以外は、図1の同符号を付した部分と同様に動作する。したがって、図5に示した行動予測装置10のうち、図1に示した行動予測装置10と同符号を付した部分については説明を省略する。
上述した行動予測装置10は、住宅20ごとに設置することが可能である。また、住宅20にHEMSコントローラが設置されている場合、行動予測装置10は、インターネットのような電気通信回線を通して通信するサーバで実現してもよい。サーバが行動予測装置10となる場合、行動予測装置10は、計測装置23からの電力値を、HEMSコントローラから電気通信回線を通して取得すればよい。つまり、サーバが複数の住宅20から分岐回路ごとに消費された電力値を収集し、住宅20ごとのモデルを生成することになる。
この構成であれば、記憶部13、判定部14、生成部15などについて、サーバの豊富なハードウェア資源を利用することが可能になる。その結果、住宅20には、計測装置23から電力情報を取得し、電力情報をサーバに通知するためのHEMSコントローラを設けるだけでよく、利用者にとって、行動予測装置10を利用するための初期コストの増加が抑制される。なお、行動予測装置10から出力される情報を提示する提示装置30、および行動予測装置10に指示を与える入力装置31は、汎用の端末装置で実現すればよい。この場合、端末装置は、応用プログラムを実行することにより、提示装置30および入力装置31として機能する。応用プログラムは、インターネットのような電気通信回線を通して提供されるようにすればよい。また、コンピュータで読み取り可能な記録媒体により応用プログラムが提供されてもよい。
なお、上述した実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんのことである。
なお、本実施形態において、予測部12で抽出する停止時刻は、本発明の第1停止時刻に相当する。さらに、モデルに含まれる停止時刻、つまり判定部14で抽出される停止時刻は、本発明の第2停止時刻に相当する。
以上説明したように、本実施形態の行動予測装置10は、少なくとも1系統の分岐回路22における停止時刻を条件に含み、かつ行動の種類および当該行動が生じる時刻を推定するように設定されたモデルを用いる。予測部12は、電力情報から求めた停止時刻をこのモデルに当て嵌めることにより、行動の種類および当該行動が生じる時刻を予測する。したがって、行動予測装置10は、分岐回路22ごとに計測される消費電力値に基づいて利用者の行動を事前に予測することが可能になるという利点を有する。
また、本実施形態のプログラムは、コンピュータを、上述した行動予測装置10として機能させるためのプログラムである。このプログラムはコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータが実行したり、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータにインストールした後にコンピュータに実行させればよい。また、プログラムは、インターネットのような電気通信回線を通して提供されてもよい。
このプログラムによると、分岐回路ごとに計測される消費電力値に基づいて利用者の行動を事前に予測することができる。