WO2015151605A1

WO2015151605A1 - 複合建具、複合建具の断熱構造、及び複合建具のパネル組立構造

Info

Publication number: WO2015151605A1
Application number: PCT/JP2015/053967
Authority: WO
Inventors: 光洋飯盛; 正樹大東
Original assignee: 株式会社Ｌｉｘｉｌ
Priority date: 2014-03-31
Filing date: 2015-02-13
Publication date: 2015-10-08

Abstract

　複合建具は、屋外側に対向する第１金属枠と屋内側に対向する第１樹脂枠とを有する開口枠体と、開口枠体に取り付け可能であって、屋外側に対向する第２金属框と屋内側に対向する第２樹脂框とを有する障子と、を備え、第１金属枠と第１樹脂枠との間に、第１樹脂枠に複数の突起部を設けて凹部形状の第２空気室が金属枠に対向するように設けられている。

Description

複合建具、複合建具の断熱構造、及び複合建具のパネル組立構造

　本発明は、金属枠及び樹脂枠を有する開口枠体と金属框及び樹脂框を有する障子とを備えた複合型の辷り出し窓、ドア、引き違い障子等の各種の複合建具、上記開口枠体に上記障子を開閉可能に納めた各種の複合建具の断熱構造、及び、上記開口枠体に上記障子を納めた複合建具において、積層枚数の異なる積層パネルを選択的に障子に装着できるパネル組立構造に関する。
　本願は、２０１４年３月３１日に出願された日本国特許出願第２０１４－０７４５０５号、日本国特許出願第２０１４－０７４７７２号、及び日本国特許出願第２０１４－０７４８２４号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

　従来、アルミ製等の金属と樹脂とを接合した枠体と障子を備えた複合建具として、例えば特許文献１に記載された複合辷り出し窓等が提案されている。この横型の複合辷り出し窓には、開口部を形成する窓枠の室外側に金属枠が形成され、室内側に樹脂枠が形成されている。そして、窓枠に開閉可能に取り付けられる障子には、室外側に金属框が形成され、室内側に樹脂框が形成されている。この障子は上下框と左右の縦框によって四角形に框組みした框体にペアガラス等の複層ガラスを嵌め込んでいる。
　このような辷り出し窓等では、室内から見て樹脂枠によって金属枠を覆うことによって、断熱性を向上させると共にアルミ製等の金属を室内から見えないようにして審美性を向上させている。

　特許文献２に記載された複合型の引き違い窓では、障子を納める四角形に枠組みされた枠体の上枠及び下枠と左右の縦枠を、室外側金属枠部と室内側金属枠部とにそれぞれ分割し、これらを樹脂製のブリッジ材を介して連結して配置した。これによって、室外側金属枠部と室内側金属枠部をブリッジ材で熱的に絶縁し、金属枠による室内外間の熱の移動をブリッジ材で阻止し、室内外の断熱性を高くしている。

　また、従来、建物開口部に収納するスイング式、引き戸式、嵌め殺し式等の各種の窓及びドア等の建具では、建具の枠体、障子等の框にアルミ合金等の金属が含まれていると、樹脂製の建具と比較して熱伝導率が高く、断熱性が低いという特性があった。

　上記のように、特許文献１に記載の辷り出し窓等では、樹脂枠によって金属枠を覆うことで断熱性を向上させると共にアルミ等の金属を室内から見えないようにして冷たい感じを隠して審美性を向上させている。また、障子は、四角形枠状に形成された框内に嵌め込まれた複層ガラスの端部にグレージングチャンネルを装着して、框に嵌合させた構成を有している。特許文献３に記載された窓でも、複層ガラスの端部に断面略Ｕ字状のグレージングチャンネルを取り付けて框に装着している。

　このようなグレージングチャンネルを備えた障子、ドア等はせん断変形及びねじりに弱いために、温度変化、運搬、保管等の際にねじれが生じると複層ガラスと框が分離してしまう可能性がある。そのため、分離を防ぐために框の幅を大きくして複層ガラスの保持強度を高めていた。

　更に、従来、アルミ合金と樹脂を用いた複合建具では、障子内に単層ガラスまたは二層ガラス(ペアガラス)のいずれかを装着し、それらを用途に応じて使用している。
　特許文献４に記載された複合窓枠では、複合窓枠の障子に単層ガラスと二層ガラスを選択的に装着して断熱性を調整できる複合窓枠が提案されている。この複合窓枠では、四角形の窓枠が室外側の金属枠と室内側の樹脂枠とで形成され、窓枠に室外側の金属框と室内側の樹脂框で形成した障子を収納可能である。障子の金属框に形成した嵌合溝には、二層ガラスと単層ガラスのいずれかを選択的に装着して固定できる。

　また、障子の開口へ単層ガラスと二層ガラスとのいずれかを装着するに際し、窓枠の樹脂枠と金属枠との間に中央立設部を設ける。中央立設部の孔部に、単層ガラスを固定する単層ガラス用固定部材と二層ガラスを固定する複層ガラス用固定部材とのいずれかの本体部を選択的に嵌挿させて係合する。嵌合溝に単層ガラスを装着する場合には、押圧部の長い単層ガラス用固定部材を中央立設部に装着し、二層ガラスを装着する場合には、押圧部の短い複層ガラス用固定部材を中央立設部に装着する。これにより、押圧部によって窓枠の室外側に寄せて単層ガラスと二層ガラスとを選択的に取り付けて、金属外枠で障子を室外側から押圧して固定している。

日本国特開２００２－１９４９３８号公報日本国特開２０１２－３１５９０号公報日本国特開２００５－２０７２１９号公報日本国特開２０１１－２１４３１２号公報

　しかしながら、例えば図５及び図６に示す窓の上部部分の断面図に示すように、上述した複合型の窓１００にブリッジ材を設けない場合、枠体１０１のアルミ材等の金属上枠１０２が室外から室内まで延びて設置されていると、金属上枠１０２が室外の冷気を室内側に伝達し、室内側に露出した樹脂枠１０３の表面温度が低下して結露を発生する場合がある。なお、図５～図８において、矢印は熱の移動方向を示している。
　また、図７に示す複合型の窓１００のように、金属上枠１０２が冷気を室外から室内まで伝達することを防止するために、障子１０４の室内側部分は樹脂枠１０３で構成されている。しかし、障子１０４の框部分を通して室外から室内に熱移動することが多く、樹脂枠１０３の室内側露出面が冷却されて結露を生じることがある。また、この場合、反り等が発生すると、品質が不安定になる。

　一方、図８に示すように、金属のみで形成された窓１００において、枠体１０１内に樹脂製のブリッジ材１０６を設け、金属上枠の室外側金属枠部１０２ａと室内側金属枠部１０２ｂとを分断させてブリッジ材１０６を介して連結配置する。この場合、金属上枠の冷気等の熱移動は、ブリッジ材１０６によって阻止される。しかし、ブリッジ材１０６を外れた空間領域で熱移動が発生し、低温の空気の移動によって室内側金属枠部１０２ｂが冷やされる現象が生じたり、室内外の空間領域の熱移動によって断熱性が低下したりする。
　そのため、樹脂製のブリッジ材１０６を介して室外側金属枠部１０２ａと室内側金属枠部１０２ｂを分断して配設し、金属枠１０２の熱伝達を抑制するだけでは十分な断熱性を得られない。特に寒冷地では、建具にも高い断熱性を求められているにもかかわらず、金属と樹脂の複合建具においては、上記のような高い断熱性を備えた複合建具は提供されていなかった。

　また、特許文献１及び特許文献３に記載された複合建具では、複層ガラスの厚さより複層ガラスを取り付ける四角形枠形状の各框の長手方向に直交する方向の幅が大きく、框に金属を含むために屋内と屋外との間の熱移動が生じ易く断熱性が小さい。特に寒冷地では、建具にも高い断熱性を求められており、金属と樹脂とを備えた複合建具は断熱性が低いので使用されず、断熱性の高い樹脂建具や木製建具が使用されている。

　特許文献４に記載された複合窓枠では、単層ガラスと二層ガラスとを交換して装着可能である。しかし、二層ガラス装着用の障子に三層ガラス（トリプルガラス）を装着する場合、ガラスを設置する嵌合溝が同一幅であると３枚のガラス間の空気層の幅が小さくなり、断熱性能が向上しない。
　そのため、三層ガラスを障子に取り付けて断熱性能を向上させるには、三層ガラス専用の障子と窓枠とが必要であり、二層ガラスと三層ガラスとの交換装着は困難である。

　また、単層ガラスを装着する場合と二層ガラスを装着する場合に応じて、単層ガラス用固定部材と複層ガラス用固定部材との一方を選択して、中央立設部の孔内に交換装着して位置決め固定しなければならず、構成が複雑で交換と組立に手間取る。更に窓枠設置後に単層ガラスと二層ガラスとを交換する場合、屋外側からガラスの屋内側に設置した単層ガラス用固定部材と複層ガラス用固定部材の一方を中央立設部から外して他方を装着しなければならず、工数が増えて作業が煩雑である。
　特許文献４記載の複合窓枠では、単層ガラスと二層ガラスとを窓枠の屋外側位置を基準として装着するため、単層ガラスを装着すると断熱性能が一層小さくなる。

　本発明は、上記観点に鑑みてなされたものであって、金属と樹脂とから形成される複合型の建具において、屋内外の熱伝導を一層抑制して高い断熱性と防露性とを得られる複合建具を提供する。
　また、本発明は、金属と樹脂とからなる複合建具において、高強度で高い断熱性を備えた複合建具の断熱構造を提供する。
　更に、本発明は、積層枚数の異なる積層パネルを簡単かつ容易に交換して組み立てることができて、従来よりも断熱性の高い積層パネル構造を備えた、複合建具のパネル組立構造を提供する。

　本発明の第１態様は、複合建具であって、屋外側に対向する第１金属枠と屋内側に対向する第１樹脂枠とを有する開口枠体と、開口枠体に取り付け可能であって、屋外側に対向する第２金属框と屋内側に対向する第２樹脂框とを有する障子と、を備え、第１金属枠と第１樹脂枠との間に、第１樹脂枠に複数の突起部を設けて凹部形状の第２空気室が金属枠に対向するように設けられている。

　上記第１態様の複合建具によれば、開口枠体の第１金属枠に対向して第１樹脂枠に複数の突起部を設けて凹部形状の第２空気室を設けている。そのため、第２空気室によって屋外と屋内との間で熱の移動を低減させて断熱性を向上させ、樹脂枠の屋内側露出面での防露性を向上できる。

　本発明の第２態様は、複合建具であって、屋外側に対向する第１金属枠と、樹脂上枠と樹脂下枠とを含み、屋内側に対向する第１樹脂枠とを有する開口枠体と、開口枠体に取り付け可能であって、屋外側に対向する第２金属框と屋内側に対向する第２樹脂框とを有する障子と、を備え、開口枠体の第１樹脂枠には、樹脂上枠と樹脂下枠の少なくとも一方に上下方向と左右方向の一方または両方に樹脂で仕切った複数の第１空気室が形成されている。
　上記第２態様の複合建具によれば、開口枠体の第１樹脂枠に、上下方向と左右方向の一方または両方に樹脂で仕切った複数の第１空気室を形成している。そのため、複数の空気室を配列することによって屋外と屋内との間で熱の移動を低減させて断熱性を向上させ、屋内側露出面での防露性を向上できる。

　本発明の第３態様は、上記第１または第２態様の複合建具において、第１金属枠は、外側金属枠と内側金属枠とを含み、外側金属枠と内側金属枠が樹脂製のブリッジ材を介して連結されていることが好ましい。
　上記第３態様の複合建具によれば、第１金属枠の外側金属枠と内側金属枠とを樹脂製のブリッジ材を介して連結することで、屋外と屋内との間で熱の移動をブリッジ材で低減させて断熱性を向上でき、樹脂枠の屋内側露出面での防露性を向上できる。

　本発明の第４態様は、上記第３態様の複合建具において、外側金属枠とブリッジ材と内側金属枠の少なくともいずれかに対向する位置に、樹脂上枠と樹脂下枠の少なくとも一方に上下方向と左右方向の一方または両方に樹脂で仕切った複数の第１空気室と、樹脂上枠と樹脂下枠の少なくとも一方に複数の突起部を設けて形成した凹部形状の第２空気室と、を設けることが好ましい。
　上記第４態様の複合建具によれば、ブリッジ材によって金属枠の外側金属枠と内側金属枠との間での熱伝達を分断できて、熱の移動を低減させることができる。また、外側金属枠とブリッジ材と内側金属枠の少なくともいずれかに対向する位置に、上下方向と左右方向の一方または両方に仕切った複数の第１空気室と、凹部形状の第２空気室とを設けたことで、金属枠を外れた領域での熱伝達を分断できて熱の移動を低減させる。従って、金属枠と樹脂枠とで断熱性を向上できる。

　本発明の第５態様は、上記第１から第４態様の複合建具において、第１開口枠体の第１樹脂枠と障子の第２樹脂框との間に、間隔を開けて第１パッキンと第２パッキンとを設けて、空間を仕切る第１空気層を形成してもよい。
　上記第５態様の複合建具によれば、断熱性のある第１樹脂枠と第２樹脂框との間に第１パッキンと第２パッキンを設けて空気層を形成することで、更に断熱性を向上できる。

　本発明の第６態様は、上記第２、４、５のいずれか１態様の複合建具において、第１樹脂枠は、障子の第２金属框及び第２樹脂框に重なるように、複数の第１空気室を形成する隠し框構造を備えている。
　上記第６態様の複合建具によれば、隠し框構造を採用することで、障子の金属框及び樹脂框を、枠体の樹脂枠の複数の第１空気室に重ねることができる。従って、単なる枠体を重ねた従来の隠し框よりも、一層障子の断熱性を高めることができる。

　本発明の第７態様は、上記第２、４から６のいずれか１態様の複合建具において、障子の第２金属框の屋内側に形成された複数の第３空気室を有する第２樹脂框と、複数の第１空気室を備えた第１樹脂枠との間に、間隔を開けて第１パッキンと第２パッキンとを設けて、空間を仕切る第２空気層が形成されている。
　上記第７態様の複合建具によれば、障子の第２金属框の屋内側の第２樹脂框と複数の第１空気室を備えた第１樹脂枠との間に空気層を形成した隠し框を形成することで、隠し框による断熱性を一層高めることができる。
　本発明の第８態様は、上記第３または第４態様の複合建具において、複数の突起部は、ブリッジ材に対向する位置に設けられ、屋外と屋内を区切る。
　上記第８態様の複合建具によれば、突起部とブリッジ材によって第２空気室を屋外側と屋内側とに区切ることができる。そのため、屋外と屋内との間で空気の移動、例えば冷気の移動を低減できる。

　本発明の第９態様は、複合建具の断熱構造であって、屋外側に対向する金属枠と屋内側に対向する樹脂枠とを有する開口枠体と、開口枠体に納められていて屋外側に対向する金属框と屋内側に対向する樹脂框とを備えた障子と、障子に納められていて金属框に取り付けられた複層パネルと、を備え、金属框における金属下框の長手方向に直交する方向の幅の長さ（Ｍ）が、複層パネルの厚み方向の幅の長さ（Ｌ）以下に設定されている。
　上記第９態様の複合建具の断熱構造によれば、障子の複層パネルが金属框に取り付けられていて、金属下框の幅の長さ（Ｍ）を複層パネルの厚み方向の幅の長さ（Ｌ）以下に小さく設定することができ、金属下框の断熱性が大きくなり熱貫流率が小さい。そのため、金属と樹脂の複合建具であっても樹脂建具や木製建具と同等の断熱性を確保できる。

　本発明の第１０態様は、上記第９態様の複合建具の断熱構造において、複層ガラスは、トリプルガラスであることが好ましい。
　上記第１０態様の複合建具の断熱構造によれば、複層ガラスとしてトリプルガラスを用いると、複層ガラスと金属下框に高い断熱性が得られる。
　本発明の第１１態様は、上記第９または第１０態様の複合建具の断熱構造において、熱貫流率が、２．３３Ｗ/ｍ^２Ｋ未満であることが好ましい。
　上記第１１態様の複合建具の断熱構造によれば、複層建具でも樹脂建具や木製建具と同等の高い断熱性を確保できる。

　本発明の第１２態様は、上記第９から第１１態様の複合建具の断熱構造において、複層パネルの端部を覆い、端部に固定されたグレージングチャンネルをさらに備え、金属下框は、グレージングチャンネルの外周を覆い、複層パネルに係合してもよい。
　上記第１２態様の複合建具の断熱構造によれば、グレージングチャンネルを複層パネルの端部に固定すると共に、グレージングチャンネルの外周を金属下框で覆って複層パネルの側部に係合させている。そのため、複層パネルと金属下框は、グレージングチャンネルを介して連結されていて金属下框の幅を小さくしても高強度と高断熱性を確保できる。

　本発明の第１３態様は、上記第９から第１１態様の複合建具の断熱構造において、複層パネルの端部と金属下框とが、接着部によって固定されていてもよい。
　上記第１３態様の複合建具の断熱構造によれば、複層パネルと金属下框とを接着部で固定することで高強度の障子を得られ、金属下框の幅を小さくできる。

　本発明の第１４態様は、複合建具の断熱構造であって、屋外側に対向する金属枠と屋内側に対向する樹脂枠とを有する開口枠体と、開口枠体に納められていて屋外側に対向する金属框と屋内側に対向する樹脂框とを有する障子と、障子に納められていて金属框に取り付けられた複層パネルと、を備え、金属框の長手方向に直交する方向の幅の長さ（Ｍ）を複層パネルの厚み方向の幅の長さ（Ｌ）以下に設定されている。
　上記第１４態様の複合建具の断熱構造によれば、金属框の長手方向に直交する方向の幅の長さ（Ｍ）が複層パネルの厚み方向の幅の長さ（Ｌ）以下に設定されているため、金属框の面積が小さく金属框からの熱移動をきわめて小さくできる。さらに、断熱性の高い複層ガラスを取り付けることで、金属框の強度を維持しながら樹脂建具や木製建具と同等の高い断熱性を確保できる。

　本発明の第１５態様は、複合建具のパネル組立構造であって、屋外側に対向する金属枠と屋内側に対向する樹脂枠とを有する開口枠体と、開口枠体に納められていて屋外側に対向する金属框と屋内側に対向する樹脂框とを有し、積層パネルを装着した障子とを備え、金属框は、積層パネルを屋外側から押さえる外側押さえ部を有し、積層枚数の異なる積層パネルを交換して装着する際、少なくとも屋外方向における長さの異なる外側押さえ部を交換して装着可能である。
　上記第１５態様の複合建具のパネル組立構造によれば、積層枚数の異なる積層パネルを交換して障子に装着する際、金属框の外側押さえ部を交換して装着するので、積層パネルを交換して屋内外方向の幅が増大または減少しても外側押さえ部を交換して装着することができる。また、積層パネルの交換作業に際し、複合建具の屋外側に設けた金属框の外側押さえ部と積層パネルとを交換すればよく、開口枠体や樹脂框等の屋内側の部材として同一の部材を用いることができる。そのため、異なる積層パネルを備えた複合建具の組立やリフォーム等の際に組立作業や交換作業が容易である。屋内側の部品は交換の必要がなく共用できるので、製造コストや補修コストを低減できる。さらに、交換装着したパネルは屋内側を基準として設置できるため、一層断熱性が高くなる。

　本発明の第１６態様は、上記第１５態様の複合建具のパネル組立構造において、積層パネルは、二層パネルと三層パネルとを有し、二層パネルと三層パネルのいずれを装着しても、外側押さえ部の屋外方向の突出位置が同一であることが好ましい。
　上記第１６態様の複合建具のパネル組立構造によれば、交換装着によって積層パネルの屋内外方向の幅が変化しても、外側押さえ部の屋外方向の突出位置が同一であるため、占有スペースが一定で見栄えがよい。

　本発明の第１７態様は、上記第１５または第１６態様の複合建具のパネル組立構造において、二層パネルを装着する場合には三層パネルを装着する場合よりも、外側押さえ部の下部当接部の長さが短いことが好ましい。
　上記第１７態様の複合建具のパネル組立構造によれば、二層パネルを装着した場合、屋内外方向の外側押さえ部の突出長さを小さくできるので複合建具のパネル組立構造の小型化を達成できる。

　また、本発明の第１８態様は、上記第１５から第１７態様の複合建具のパネル組立構造において積層パネルは、樹脂框の基準位置に当接して設置されることが好ましい。
　上記第１８態様の複合建具のパネル組立構造によれば、積層パネルを交換装着する際、屋内側に位置する樹脂框を基準位置として積層パネルを設置できるので、屋外側に突出することを抑えて断熱性能を向上できる。

　本発明の第１９態様は、上記第１５から第１８態様の複合建具のパネル組立構造において、外側押さえ部は、積層パネルの側部に当接する押圧部を有していてもよい。
　上記第１９態様の複合建具のパネル組立構造によれば、外側押さえ部を積層パネルの呑み込み部等の側部に当接させることで交換した積層パネルを固定できる。

　本発明の第２０態様は、上記第１５から第１９態様の複合建具のパネル組立構造において、外側押さえ部は、金属枠に当接する当接部を有していてもよい。
　上記第２０態様の複合建具のパネル組立構造によれば、外側押さえ部を開口枠体の金属枠に当接させることで、交換した積層パネルを取り付けできる。

　本発明の第２１態様は、複合建具のパネル組立構造であって、屋外側に対向する金属枠と屋内側に対向する樹脂枠とを備えた開口枠体と、開口枠体に納めて金属框に積層パネルを装着した障子とを備え、金属框は、積層パネルを屋外側から押さえる外側押さえ部を備え、積層枚数の異なる積層パネルを交換して装着する際、少なくとも屋外方向長さの異なる外側押さえ部を交換して装着する。
　上記第２１態様の複合建具のパネル組立構造によれば、枚数の多い積層パネルを装着する際、外側押さえ部の屋内外方向の突出長さを短くすれば、積層パネルの交換装着による複合建具の屋外側への突出を抑制してスペースの増大を抑えることができる。
　また、上記態様は、フィックス窓にも適用できる。さらに、積層パネルは、樹脂枠の基準位置に当接して設置することができる。

　上記本発明に係る態様によれば、金属枠と樹脂枠との間に、樹脂枠に複数の突起部を設けて凹部形状の第２空気室を金属枠に対向させて設けている。そのため、金属枠との間で第２空気室によって屋外と屋内との間における熱の移動を低減させて断熱性と防露性を向上できる。

　上記本発明に係る態様によれば、開口枠体の樹脂枠は、樹脂上枠と樹脂下枠の少なくとも一方に上下方向と左右方向の一方または両方に複数の第１空気室を設けている。樹脂枠に形成した複数の第１空気室によって屋外と屋内との間での熱の移動を低減させ、断熱性能と防露性とを向上できる。

　また、上記本発明に係る態様によれば、障子の複層パネルが金属框に取り付けられていている。そのため、金属下框の長手方向に直交する方向の幅の長さを複層パネルの厚み方向の幅の長さ以下に設定できて金属下框の断熱性が高くなり、複層パネルと同様に金属下框の熱貫流率が小さい。従って、樹脂建具や木製建具と同等の断熱性を確保できる。

　さらに、上記本発明に係る態様によれば、障子の屋外側の金属框の外側押さえ部を屋外側から取り外して、積層枚数の異なるパネルを交換装着して屋内外方向の幅が増大または減少したとしても、当該積層パネルに適合した外側押さえ部を取り付けることができる。そのため、構造が簡単で積層枚数の異なるパネル間の着脱交換作業が容易である上に、屋内側の部品や部材を共通化して用いることができるので、製造コスト、組立コスト、及び補修コストを低減できる。
　また、従来、行われていなかった二層パネルと三層パネルとの着脱交換を容易に行うことができ、三層パネルに交換すれば断熱性が向上する。更に、交換装着したパネルは屋内側を基準として設置できるため、一層断熱性を向上できる。

本発明の第１実施形態による縦辷り出し窓の要部縦断面図である。図１に示す縦辷り込窓の要部水平断面図である。図１に示す縦辷り出し窓の下枠部分の拡大断面図である。図１に示す縦辷り出し窓の上枠部分の拡大断面図である。従来例におけるブリッジ材を備えない複合型窓の要部縦断面図である。従来例におけるブリッジ材を備えない他の複合型窓の要部縦断面図である。従来例におけるブリッジ材を備えない更に他の複合型窓の要部縦断面図である。従来例におけるブリッジ材を備えた複合型窓の要部縦断面図である。本発明の第２実施形態による縦辷り出し窓の要部縦断面図である。図１に示す縦辷り込み窓の要部水平断面図である。図１に示す縦辷り出し窓の金属下框部分の拡大断面図である。第２実施形態の第１変形例による複層ガラスの端部と金属下框との固定構造を示す要部縦断面図である。第２実施形態の第２変形例による複層ガラスの端部と金属下框との固定構造を示す要部縦断面図である。本発明の第３実施形態による縦辷り出し窓の障子に二層ガラスを装着した要部縦断面図である。図１４に示す縦辷り込み窓を有する連窓の要部水平断面図である。図１４に示す縦辷り込窓の金属下枠部分の拡大縦断面図である。縦辷り出し窓の障子に三層ガラスを装着した要部縦断面図である。三層ガラスを装着した連窓の要部水平断面図である。本発明の第４実施形態による縦辷り出し窓の障子に二層ガラスを装着した金属下枠部分の要部縦断面図である。図１９に示す障子に三層ガラスを装着した要部縦断面図である。本発明の第４実施形態によるフィックス窓に二層ガラスを装着した要部縦断面図である。図２１に示すフィックス窓に三層ガラスを装着した要部縦断面図である。

第１実施形態
　以下、本発明の第１実施形態による複合建具の一例としての縦辷り出し窓を図１から図４に基づいて説明する。
　図１及び図２に示す実施形態による縦辷り出し窓１は、建物の躯体に形成された建物開口部に取り付けられる枠体２内に納めた障子３を吊元側の縦框回りに回転させることで外側に開放可能である。縦辷り出し窓１は、アルミ等の金属と樹脂とを有する複合型であり、四角形枠状の複合型の枠体２と、枠体２に開閉可能に納められた複合型の障子３とが設置されている。

　枠体２は、屋外側に設けられたアルミ合金等の金属枠４と金属枠４の屋内側に設けられた合成樹脂製の樹脂枠５とで構成された開口枠体を形成している。金属枠４は、左右の金属縦枠６、７と金属上枠８及び金属下枠９とで形成されている。樹脂枠５は、左右の金属縦枠６、７の屋内側に形成した左右の樹脂縦枠１１、１２と、金属上枠８の屋内側に形成した樹脂上枠１３と、金属下枠９の屋内側に形成した樹脂下枠１４とで構成されている。
　樹脂上枠１３と樹脂下枠１４との対向する内側の面には、網戸レールの部分に取り付けるキャップ２２ａ、２２ｂが装着され、キャップ２２ａ、２２ｂには空気層４５が形成されている。

　障子３は、屋外側に設けられたアルミ合金等の金属からなる金属框１６と、金属框１６の屋内側に設けられた樹脂製の樹脂框１７とで構成されている。金属框１６は、左右の金属縦框１８、１９と金属上框２０及び金属下框２１とで形成されている。樹脂框１７は、左右の金属縦框１８、１９の屋内側に形成した左右の樹脂縦框２３、２４と、金属上框２０の屋内側に形成した屋内側端面２５ａを有する樹脂上框２５と、金属下框２１の屋内側に形成した樹脂下框２６とで構成されている。障子３の四角形に枠組みされた金属框１６及び樹脂框１７の内部には、例えば複層ガラスを有するガラス体３１が嵌め込まれている。

　縦辷り出し窓１の障子３は、枠体２の左右の樹脂縦枠１１、１２、樹脂上枠１３、樹脂下枠１４の戸当たりに当接することで閉鎖状態に納められ、屋外側にのみ開放可能である。また、障子３において、戸先側の金属縦框１８の長手方向中央部にはメインロックとしてグレモンハンドル３４が設けられ、戸先側の金属上枠８と金属下枠９にはグレモンハンドル３４のロック部品と係合可能な受け部が設けられている（図示せず）。また、樹脂縦框２３の下部の見込み面にはサブロック３６が設置されている。

　図３に示す枠体２の下枠部分において、枠体２の樹脂下枠１４の屋外側端面１４ａには嵌合凹部３０が形成され、嵌合凹部３０には第１パッキン３２Ａの一端が嵌合され他端が屋外側に突出している。第１パッキン３２Ａは例えば略Ｕ字形状を有しており、樹脂下框２６の端面２６ａには第１パッキン３２Ａの先端を係止する突起等の係止部が設けられていてもよい。また、樹脂下枠１４の屋外側端面１４ａにおける第１パッキン３２Ａの更に下方には第２パッキン３３Ａが突出して形成されており、図に示す例では第２パッキン３３Ａは下方に略Ｌ字型に屈曲または湾曲した形状を有している。

　障子３を枠体２に納めた閉鎖状態で、障子３における樹脂下框２６の屋内側端面２６ａに第１パッキン３２Ａの先端が当接しており、また第２パッキン３３Ａの先端部は端面２６ａに接触するか（図３参照）、わずかに離間した位置にある（図１参照）。この場合、第１パッキン３２Ａは樹脂下框２６の端面２６ａに強く押圧され、第２パッキン３３Ａは比較的軽く樹脂下框２６の端面２６ａに当接するか、あるいは微小間隔で離間するように配置されており、いずれの場合もほぼ閉鎖状態である。

　これによって、縦断面視で枠体２の樹脂下枠１４と樹脂下框２６と第１及び第２パッキン３２Ａ、３３Ａとによって密閉空間をなす空気層３５Ａを形成している。空気層３５Ａによって枠体２と障子３とを断熱することができ、屋外の冷気等の熱が屋内に伝達することを防止でき、断熱性と防露性を向上させることができる。また、障子３を枠体２に閉鎖させた状態で、障子３の樹脂下框２６が第１及び第２パッキン３２Ａ、３３Ａに当接するから、気密性を確保できると共に障子３の開閉作動にも影響を与えない。

　また、断熱の空気層は樹脂下枠１４と樹脂下框２６との間だけでなく、図１に示すように、樹脂上枠１３と樹脂上框２５との間にも形成されている。この場合、樹脂上枠１３の屋外側端面１３ａの下側にリブ３２Ｂが形成され、リブ３２Ｂの上方に間隔を開けてパッキン（第２パッキン）３３Ｂが形成されている。そのため、樹脂上枠１３の屋外側端面１３ａとリブ３２Ｂとパッキン３３とで密閉空間の空気層３５Ｂを形成している。
　同様に、左右の樹脂縦枠１１、１２の屋外側端面１１ａ、１２ａに第１パッキン３２Ｃ、３２Ｄがそれぞれ形成され、その内側に間隔を開けて第２パッキン３３Ｃ、３３Ｄがそれぞれ形成されている。そして、左右の樹脂縦枠１１、１２と樹脂縦框２３、２４の各端面１１ａ、１２ａ、２３ａ、２４ａと第１及び第２パッキン３２Ｃ、３２Ｄ、３３Ｃ、３３Ｄとで密閉空間の空気層３５Ｃ、３５Ｄを形成している。

　これら第１パッキン３２Ｃ、３２Ｄと第２パッキン３３Ｃ、３３Ｄと密閉空間の空気層３５Ｃ、３５Ｄは、上述した第１パッキン３２Ａ、第２パッキン３３Ａ、空気層３５Ａと同一構成を備えている。なお、空気層３５Ｂにも同一構成を採用できる。
　そのため、枠体２の四角形枠状の樹脂枠５と障子３の四角形枠状の樹脂框１７との間で、密閉空間の空気層３５Ａ～３５Ｄが四角形の各辺をなす枠状に形成される。

　図では上述の各第１パッキン３２Ａ、３２Ｃ、３２Ｄは略Ｕ字状に形成されており、第２パッキン３３Ａ、３３Ｃ、３３Ｄは略Ｌ字状やＪ字状に形成されているが、第１及び第２パッキンは任意の形状を採用することができる。枠体２に対する障子３の閉鎖状態で、第１パッキン３２Ａ、３２Ｃ、３２Ｄは強く樹脂框１７に当接し、第２パッキン３３Ａ、３３Ｃ、３３Ｄは弱く樹脂框１７に当接するか小さい間隔で離間していればよい。第１パッキン３２Ａ、３２Ｃ、３２Ｄ、第２パッキン３３Ａ、３３Ｂ、３３Ｃ、３３Ｄは、例えばＰＶＣ（ポリ塩化ビニル）等の合成樹脂、ゴム等の弾性材で形成されている。

　図４に示す枠体２の上枠部分において、金属枠４の金属上枠８では、上部において屋外側の外側金属上枠８ａと屋内側の内側金属上枠８ｂとが互いに分離され、樹脂製のブリッジ材３７を挟んで連結されている。そのため、外側金属上枠８ａに伝達される屋外側の低温等の熱はブリッジ材３７で遮断され、内側金属上枠８ｂには伝達されない。ブリッジ材３７はどのような形状でもよいが、外側金属上枠８ａと内側金属上枠８ｂとの間で熱を伝達しない程度に離間させるべく幅広に形成されている。
　図４に示す例では、ブリッジ材３７は、内部に中空部３７ａを有する略多角形枠状、例えば断面六角形枠状で、両端には外側金属上枠８ａと内側金属上枠８ｂの各端部に形成された凹部３８ａ、３８ｂに嵌合する凸部３７ｂ、３７ｃを有している。図３に示す金属下枠９も屋外側の外側金属下枠９ａと屋内側の内側金属下枠９ｂとが互いに分離され、樹脂製のブリッジ材１５を挟んで連結されている。
　なお、ブリッジ材３７、１５と分断された金属枠は、左右の縦枠には設けられていないが、設けてもよい。また、複数の空気室３９ａを形成した格子状部４０は、枠体２の左右の縦枠にも設けられていてもよい。

　内側金属上枠８ｂの屋内側に形成された樹脂上枠１３は、大きさの異なる複数の四角形断面の空気室３９ａ（第１空気室）を仕切った格子状部４０を形成し、樹脂で仕切られた上記複数の空気室３９ａはそれぞれ断熱性の密閉空間を構成する。樹脂上枠１３の格子状部４０は、外側金属上枠８ａ、ブリッジ材３７、屋内側の内側金属上枠８ｂの少なくともいずれか、ここでは全てに対向する領域に形成され、障子３よりも屋内側に配設されている。特に、ブリッジ材３７に対向する位置に空気室３９ａを設置することで、熱移動の断熱性は一層高くなる。

　格子状部４０で仕切られた各空気室３９ａは大きさの異なる種々の形状に形成したが、各空気室３９ａは同一の大きさにして上下左右方向に配列させてもよい。この場合には、格子状部４０は、寸法の等しい格子状に形成される。また、各空気室３９ａについて、上下左右方向に配列されるように格子状部４０を構成したが、上下方向だけ、または左右方向だけに形成してもかまわない。上記の場合でも、複数の空気室３９ａによって断熱性を高めることができる。このように、障子３と金属上枠８の外側金属上枠８ａ、ブリッジ材３７及び内側金属上枠８ｂとの間の空間には、格子状部４０で仕切られた複数の空気室３９ａが設置されているために、空間を熱が伝達して移動することを低減できる。

　樹脂上枠１３の格子状部４０では、外側金属上枠８ａ、ブリッジ材３７及び内側金属上枠８ｂに対向する面に、空気室３９ａの上側に突出する突起部４０ａが複数突出して形成される。外側金属上枠８ａ、ブリッジ材３７及び内側金属上枠８ｂと格子状部４０の複数の突起部４０ａとの間の凹部には、空気を貯留可能な空気室４２（第２空気室）が形成されている。空気室４２の突起部４０ａは外側金属上枠８ａ、ブリッジ材３７、内側金属上枠８ｂとの間に隙間があってもよいし、密閉されていてもよい。
　空気室４２によっても、外側金属上枠８ａ、ブリッジ材３７または内側金属上枠８ｂに対向する領域に複数の突起部４０ａを所定間隔で配列させたことで、熱が屋外と屋内との間で移動することを抑制し、断熱性能を一層向上できる。
　突起部４０ａはブリッジ材３７に対向する位置に１以上(図では２本)設けられている。突起部４０ａによって、空気室４２を屋外側の空気室４２と屋内側の空気室４２とに区切っている。これによって熱の移動を遮断するブリッジ材３７と突起部４０ａとの間に複数の空気室４２が形成され、屋外側と屋内側との間で空気の移動を抑制でき、例えば冷気が屋外から屋内に移動することを抑制できる。
　更に、樹脂上枠１３の格子状部４０の屋外側にも、上述したように空気層３５Ｂが形成されており、これによっても屋内外での熱の移動を抑制できるため、断熱性が向上する。また、格子状部４０と複数の空気室３９ｂとは、樹脂上框２５と樹脂下框２６にも形成されている。

　本実施形態において、上述した大きさの異なる多数の空気室３９ａを備えた格子状部４０は、樹脂下枠１４にも形成されている。樹脂下枠１４の格子状部４０では、外側金属下枠９ａ、ブリッジ材１５及び内側金属下枠９ｂに対向する面に、空気室３９ａの下側に突出する突起部４０ｂが複数突出して形成される。外側金属下枠９ａ、ブリッジ材１５及び内側金属下枠９ｂと格子状部４０の複数の突起部４０ｂとの間の凹部には、空気を貯留可能な空気室４４（第２空気室）が形成されている。空気室４４の突起部４０ｂは外側金属下枠９ａ、ブリッジ材１５、内側金属下枠９ｂとの間に隙間があってもよいし、密閉されていてもよい。
　空気室４４によっても、外側金属下枠９ａ、ブリッジ材１５または内側金属下枠９ｂに対向する領域に複数の突起部４０ｂを所定間隔で配列させたことで、熱が屋外と屋内との間で移動することを抑制し、断熱性能を一層向上できる。
　突起部４０ｂはブリッジ材１５に対向する位置に設けられていることで、突起部４０ｂによって空気室４４を屋外側の空気室４４と屋内側の空気室４４とに区切っている。これによって熱の移動を遮断するブリッジ材１５と突起部４０ｂの間に複数の空気室４４が形成され、屋外と屋内との間で空気の移動を低減でき、例えば屋外から屋内への冷気の移動を抑制できる。

　図１に示すように、障子３の上框（金属上框２０と樹脂上框２５）と下框（金属下框２１と樹脂下框２６）は、屋内側において、枠体２の上枠（金属上枠８と樹脂上枠１３）と下枠（金属下枠９と樹脂下枠１４）に隠れた構成を有している。同様に、図２に示すように、障子３の戸先側の縦框（金属縦框１８と樹脂縦框２３）と吊元側の縦框（金属縦框１９と樹脂縦框２４）は、屋内側において、枠体２の戸先側の縦枠（金属縦枠６と樹脂縦枠１１）と吊元側の縦枠（金属縦枠７と樹脂縦枠１２）に隠れた構成を有している。
　従って、本実施形態による縦辷り出し窓１の障子３は、枠体２によって上下左右の框が屋内側で隠れる隠し框を構成する。そのため、障子３の上下左右の框において、枠体２によって熱の移動を低減される。

　本実施形態による縦辷り出し窓１は上述の構成を備えている。次にその作用を説明する。
　本実施形態による縦辷り出し窓１において、図１及び図２に示すように、枠体２に障子３を納めて戸先側の金属縦框１８に設けたメインロックのグレモンハンドル３４を操作して、ロック部を受け部に係合させている。この状態で、屋外の温度が低温である場合でも、障子３のガラス体３１は空気の層を挟んで複数枚（図３では３枚）の積層ガラスが配列されているから断熱性が高く、冷気の熱が屋外から屋内に熱移動しにくい。
　また、障子３の左右縦框及び上下框との部分は、屋内側から見て枠体２の左右縦枠及び上下枠にそれぞれ重なった隠れ框になっている。

　図３及び図４において、枠体２の上枠と下枠とには樹脂上枠１３及び樹脂下枠１４に格子状部４０で仕切られた大きさの異なる空気室３９ａが上下左右にそれぞれ配列されている。更に、樹脂下框２６と樹脂下枠１４との間には空気層３５Ａが設置され、樹脂上枠１３の屋外側にも空気層３５Ｂが設置されている。そのため、障子３の上下框を通過して移動可能な冷気等の熱移動は、複数の空気室３９と空気層３５Ａ、３５Ｂとによってそれぞれ低減され、断熱性能を向上できる。

　障子３の左右縦框の部分には、戸先側の樹脂縦枠１１と吊元側の樹脂縦枠１２とが配設され、更に樹脂縦框２３、２４と樹脂縦枠１１、１２との間には空気層３５Ｃ、３５Ｄがそれぞれ設置されている。そのため、障子３の左右框を通過する冷気の屋内への熱移動が阻止され、断熱性能を向上できる。
　また、図１及び図３において、枠体２の金属下枠９の屋内側には、樹脂下枠１４の格子状部４０が設置され、格子状部４０で形成した大きさの異なる複数の空気室３９ａによって断熱され、枠体２の屋外から屋内に熱移動することを低減できる。
　更に、枠体２の下枠の部分では、金属下枠９における外側金属下枠９ａと内側金属下枠９ｂとがブリッジ材１５によって分離されている。そのため、外側金属上枠８ａに伝達される屋外の冷気等の熱がブリッジ材１５で分断され、内側金属下枠９ｂにまで伝達されない。
　ブリッジ材１５、外側金属下枠９ａ及び内側金属下枠９ｂに対向する位置に樹脂下枠１４の格子状部４０が設置され、格子状部４０で形成した大きさの異なる複数の空気室３９ａによって断熱される。そのため、冷気等が屋外から屋内に熱移動することを低減できる。
　更に、ブリッジ材１５、外側金属下枠９ａ及び内側金属下枠９ｂと格子状部４０の突起部４０ｂとの間にも凹部形状の空気室４４が配設されていて、突起部４０ｂによって仕切られた空気室４４によって屋外から屋内に熱移動することを低減できる。

　また、図１及び図４において、枠体２の上枠の部分では、金属上枠８における外側金属上枠８ａと内側金属上枠８ｂとがブリッジ材３７によって分離されている。そのため、外側金属上枠８ａに伝達される屋外の冷気等の熱がブリッジ材３７で分断され、内側金属上枠８ｂにまで伝達されない。ブリッジ材３７、外側金属上枠８ａ及び内側金属上枠８ｂに対向する位置に樹脂上枠１３の格子状部４０が設置され、格子状部４０で形成した大小複数の空気室３９ａによって断熱される。そのため、冷気等が屋外から屋内に熱移動することを低減できる。

　更に、ブリッジ材３７、外側金属上枠８ａ及び内側金属上枠８ｂと格子状部４０の突起部４０ａとの間にも凹部形状の空気室４２が配設されていて、突起部４０ａによって仕切られた空気室４２によって、屋外から屋内に熱移動することを低減できる。

　上述のように、本実施形態による縦辷り出し窓１によれば、外側金属上下枠８ａ、９ａ及び内側金属上下枠８ｂ、９ｂの間にブリッジ材３７、１５を設置して金属上下枠８、９における熱移動を低減させる。更に、金属上枠８、金属下枠９の屋内側に設けた樹脂上枠１３と樹脂下枠１４に格子状部４０で仕切った複数の空気室３９ａをそれぞれ設けたから、金属上枠８、金属下枠９に近接する空間領域でも屋外から屋内への熱移動を低減できる。
　更に、枠体２の上下枠において、外側金属上下枠８ａ、９ａ、ブリッジ材３７、１５、内側金属上下枠８ｂ、９ｂに対向する格子状部４０との間に複数の突起部４０ａ、４０ｂで形成した凹部状の複数の空気室４２、４４を設けている。そのため、一層屋外から屋内への冷気の熱移動及び屋内から屋外への暖気の熱移動を低減できる。

　縦辷り出し窓１の屋内からみて、障子３の左右の樹脂縦框２３、２４と樹脂上框２５及び樹脂下框２６を枠体２の左右の縦枠と上下枠の内側に隠し框として構成している。更に、障子３の左右の樹脂縦框２３、２４及び樹脂上下框２５、２６と枠体２の左右の樹脂縦枠１１、１２及び樹脂上下枠１３、１４との間に、空気層３５Ａ～３５Ｄをそれぞれ設けている。そのため、屋外から屋内への冷気等の熱移動及び屋内から屋外への暖気の熱移動を低減できて、屋外と屋内との間の熱移動を低減できる。

　従って、縦辷り出し窓１の枠体２と障子３とにおいて、屋外と屋内との間の断熱性と屋内側露出面の防露性とを大きく向上できる。
　特に、従来、アルミ等の金属と樹脂との複合型の縦辷り出し窓１を含む各種の窓、ドア等の複合建具は寒冷地等に用いられることがなく、高い断熱性を求められることがなかった。しかし、本実施形態による縦辷り出し窓１等の複合建具において、屋内外での熱移動を十分抑制して、樹脂製建具等と同等の高い断熱性と防露性を発揮することができる。従って、寒冷地等でも有効に使用できる。

　本発明による複合建具は、上述した実施形態による縦辷り出し窓１に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。
　以下に、本発明の変形例について説明するが、上述した実施形態で説明した部品、部材等と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明する。

　例えば、上述した実施形態では、（１）枠体２の金属上下枠８、９にブリッジ材３７、１５で分割した外側金属上下枠８ａ、９ａと内側金属上下枠８ｂ、９ｂとを連結し、（２）更に格子状部４０で仕切られた複数の空気室３９ａ、３９ｂと、（３）ブリッジ材３７、１５、外側金属上下枠８ａ、９ａまたは内側金属上下枠８ｂ、９ｂと格子状部４０との間に設けた凹部状の空気室４２、４４とからなる３組の構成を全て設けたが、このような構成に限定されない。

　例えば、（２）格子状部４０で仕切った複数の空気室３９ａ、３９ｂだけ設けてもよいし、（３）ブリッジ材３７、１５を設けない金属上下枠８、９に対向させて樹脂上下枠１３、１４に突起部４０ａ、４０ｂを設けて金属上下枠８、９との間に凹部形状の空気室４２、４４だけを設けてもよい。あるいは、（１）と（２）の組み合わせ、（１）と（３）の組み合わせ、（２）と（３）の組み合わせだけを設けてもよい。

　なお、上述した実施形態では、第１パッキン３２Ａ～３２Ｄ及び第２パッキン３３Ａ～３３Ｄによって、枠体２と障子３とにおける上下左右の四辺の樹脂枠と樹脂框との間に断熱のための空気層３５Ａ～３５Ｄを形成している。しかし、必ずしも全辺に空気層を形成する必要はなく、一部の辺だけに形成してもよい。その場合、地上からの冷気が伝達され易く比較的温度の低い下方の樹脂下枠１４と樹脂下框２６との間に空気層３５Ａを形成することが好ましい。

　また、第１パッキン３２Ａ、３２Ｃ、３２Ｄ及び第２パッキン３３Ａ、３３Ｂ、３３Ｃ、３３Ｄによって空気層３５Ａ～３５Ｄを形成する際、一層の空気層３５Ａ～３５Ｄを設ける構成を説明した。これに代えて、第１パッキン３２Ａ、３２Ｃ、３２Ｄ及び第２パッキン３３Ａ、３３Ｃ、３３Ｄ（または、第１パッキン３２Ａ、３２Ｃ、３２Ｄもしくは第２パッキン３３Ａ、３３Ｃ、３３Ｄ）と、パッキン３３Ｂとを中空部からなる空気層を有する形状に形成して、２～３層の空気層を形成するようにしてもよい。この場合、断熱性が一層向上する。

　本発明による金属と樹脂とを備えた複合建具の実施形態として縦辷り出し窓１に用いたが、これに限定されることはない。本発明による複合建具は、横辷り出し窓や引き違い窓、或いは引き違いドア等、各種の窓、ドア等の複合型の建具に採用できる。

第２実施形態
　以下、本発明の第２実施形態による複合建具の一例としての縦辷り出し窓を図９から図１１に基づいて説明する。
　図９及び図１０に示す実施形態による縦辷り出し窓２０１は、建物の躯体に形成された建物開口部に取り付けられる枠体２０２内に納めた障子２０３を吊元側の縦框回りに回転させることで外側に開放可能である。縦辷り出し窓２０１は、アルミ合金等の金属と樹脂とを有する複合型であり、四角形枠状の複合型の枠体２０２と、枠体２０２に開閉可能に納められた複合型の障子２０３とが設置されている。

　枠体２０２は、屋外側に設けられたアルミ合金等からなる四角形枠状の金属枠２０４と金属枠２０４の屋内側に設けられた合成樹脂製の樹脂枠２０５とで構成された開口枠体を形成している。金属枠２０４は、左右の金属縦枠２０６、２０７と金属上枠２０８及び金属下枠２０９とで形成されている。金属上枠２０８は、外側金属上枠部２０８ａと内側金属上枠部２０８ｂとが樹脂製のブリッジ材２１０を介して連結され、屋内外の熱移動を低減させている。金属下枠２０９は、外側金属下枠部２０９ａと内側金属下枠部２０９ｂとが樹脂製のブリッジ材２１５を介して連結され、屋内外の熱移動を低減させている。

　樹脂枠２０５は、左右の金属縦枠２０６、２０７の屋内側に形成した左右の樹脂縦枠２１１、２１２と、金属上枠２０８の屋内側に形成した樹脂上枠２１３と、金属下枠２０９の屋内側に形成した樹脂下枠２１４とで構成されている。なお、連窓の場合、金属縦枠２０７と樹脂縦枠２１２は方立を構成する。
　また、左右の樹脂縦枠２１１、２１２、樹脂上枠２１３、及び樹脂下枠２１４は、断面視で複数の空気室２３９ａを縦横方向に備えた格子状部をそれぞれ形成している。これら複数の空気室２３９ａによって、屋外と屋内との間の熱移動を低減させるようにしている。

　障子２０３は、屋外側に設けられたアルミ合金等の金属からなる金属框２１６と、金属框２１６の屋内側に設けられた樹脂製の樹脂框２１７とで構成されている。金属框２１６は、左右の金属縦框２１８、２１９と金属上框２２０及び金属下框２２１とで形成されている。樹脂框２１７は、左右の金属縦框２１８、２１９の屋内側に形成した左右の樹脂縦框２２３、２２４と、金属上框２２０の屋内側に形成した樹脂上框２２５と、金属下框２２１の屋内側に形成した樹脂下框２２６とで構成されている。左右の樹脂縦框２２３、２２４、樹脂上框２２５、及び樹脂下框２２６には、断面視で複数の空気室２３９ｂを縦横方向に備えた格子状部がそれぞれ形成されている。これら複数の空気室２３９ｂによって、屋外側と屋内側との間の熱移動を低減させている。
　障子２０３の四角形に枠組みされた金属框２１６及び樹脂框２１７の内部には、複層パネルとして例えば複層ガラス２３１が嵌め込まれている。縦辷り出し窓２０１の障子２０３は、枠体２０２の左右の樹脂縦枠２１１、２１２、樹脂上枠２１３、樹脂下枠２１４の戸当たり面に当接することで閉鎖状態に納められ、屋外側にのみ開放可能である。

　図１０に示す枠体２０２の戸当たり側の縦枠部分において、枠体２０２の樹脂縦枠２１１の屋外側端面２１１ａに形成された嵌合凹部に第１パッキン２３２Ａの一端が嵌合され、他端が屋外側に突出している。第１パッキン２３２Ａは例えば略Ｕ字形状を有しており、先端側部分は樹脂縦框２２３の屋内側端面２２３ａに当接されている。また、樹脂縦枠２１１の屋外側端面２１１ａにおける第１パッキン２３２Ａから離間した位置に第２パッキン２３３Ａが突出して形成されており、図に示す例では、第２パッキン２３３Ａは断面略Ｊ字型に屈曲または湾曲した形状を有している。

　障子２０３を枠体２０２に納めた閉鎖状態で、障子２０３における樹脂縦框２２３の屋内側端面２２３ａに第１パッキン２３２Ａの先端が当接しており、また第２パッキン２３３Ａの先端部は端面２２３ａに接触するか、わずかに離間した位置にある。この場合、第１パッキン２３２は樹脂縦框２２３の端面２２３ａに強く押圧され、第２パッキン２３３Ａは比較的軽く樹脂縦框２２３の端面２２３ａに当接するか、あるいは微小間隔で離間するように配置されて断熱空間が形成されている。

　これによって、水平断面視で枠体２０２の樹脂縦枠２１１と樹脂縦框２２３と第１及び第２パッキン２３２Ａ、２３３Ａとによって断熱空間をなす空気層２３５Ａを形成している。空気層２３５Ａは樹脂とパッキンとで形成されているため断熱性が高く、枠体２０２と障子２０３との間を断熱して屋外側と屋内側との間で熱の受け渡しを低減することができ、断熱性と防露性を向上させることができる。また、障子２０３を枠体２０２に閉鎖させた状態で、障子２０３の樹脂縦框２２３が第１及び第２パッキン２３２Ａ、２３３Ａに当接するから気密性を確保できると共に障子２０３の開閉作動にも影響を与えない。

　また、断熱の空気層は樹脂縦枠２１１と樹脂縦框２２３との間だけでなく、図１０に示すように、吊元側の樹脂縦枠２１２と樹脂縦框２２４との間にも形成されている。この場合、樹脂縦枠２１２の屋外側端面２１２ａに第１パッキン２３２Ｂが形成され、他端側に間隔を開けて第２パッキン２３３Ｂが形成されている。そのため、樹脂縦枠２１２、２２４の各端面２１２ａ、２２４ａと第１及び第２パッキン２３２Ｂ、２３３Ｂとで断熱空間の空気層２３５Ｂを形成している。

　同様に、図９に示す樹脂上枠２１３の屋外側端面２１３ａに、パッキン２３３Ｃとリブ２３２Ｃとで仕切られた空気層２３５Ｃが形成されている。また、樹脂下枠２１４の屋外側端面２１４ａに第１パッキン２３２Ｄが取り付けられ、第１パッキン２３２Ｄの下方に間隔を開けて第２パッキン２３３Ｄが形成されている。樹脂下枠２１４、２２６の各端面２１４ａ、２２６ａと第１及び第２パッキン２３２Ｄ、２３３Ｄとで断熱空間の空気層２３５Ｄを形成している。

　これら第１パッキン２３２Ｂ、２３２Ｄと第２パッキン２３３Ｂ、２３３Ｄと断熱空間の空気層２３５Ｂ、２３５Ｄは、上述した第１パッキン２３２Ａと第２パッキン２３３Ａ、空気層２３５Ａと同一構成を備えており、空気層２３５Ｃも同一構成であってもよい。
　そのため、枠体２０２の四角形枠状の樹脂枠２０５と障子２０３の四角形枠状の樹脂框２１７との間でそれぞれ断熱空間の空気層２３５Ａ～２３５Ｄが四角形の各辺をなす枠状に形成される。

　また、上述の各第１パッキン２３２Ａ、２３２Ｂ、２３２Ｄと第２パッキン２３３Ａ、２３３Ｂ、２３３Ｄは任意の形状を有することができる。枠体２０２に対する障子２０３の閉鎖状態で、第１パッキン２３２Ａ、２３２Ｂ、２３２Ｄは強く樹脂框２１７に当接し、第２パッキン２３３Ａ、２３３Ｂ、２３３Ｄは弱く樹脂框２１７に当接するか小さい間隔で離間していればよい。第１パッキン２３２Ａ、２３２Ｂ、２３２Ｄ、第２パッキン２３３Ａ、２３３Ｂ、２３３Ｄ、パッキン２３３Ｃは、樹脂枠２０５や樹脂框２１７より軟質のＰＶＣ等の合成樹脂やゴム等の弾性部材から形成されている。

　図１０に示す枠体２０２の戸当たり側の縦枠部分において、樹脂縦框２２３の見込み面にはロック機構として、例えばグレモンハンドル２４０が装着されている。
　また、図９及び図１０において、縦辷り出し窓２０１における枠体２０２は、屋内から見て、樹脂上枠２１３と樹脂下枠２１４とが、障子２０３の樹脂上框２２５と樹脂下框２２６とを覆うようにそれぞれ配設されている。同様に、屋内から見て、左右の樹脂縦枠２１１と樹脂縦枠２１２とは、左右の樹脂縦框２２３、２２４を覆うように配設されている。そのため、縦辷り出し窓２０１は、框部分の断熱性を高める隠し框構造を備えている。

　次に、複層ガラス２３１と金属下框２２１と樹脂下框２２６との断熱構造について説明する。この構造は金属下框２２１の部分だけでなく、金属框２１６の金属上框２２０の部分、左右の金属縦框２１８、２１９の部分にもそれぞれ同様に構成されている。そのため、本実施形態では、金属下框２２１の部分によって代表して説明する。
　図１１に示す障子２０３の金属下框２２１の部分において、複層ガラス２３１は、３枚の板ガラス２４３がそれぞれスペーサ２４４を介して平行に配列された三層ガラス（トリプルガラス）である。隣接する板ガラス２４３間でスペーサ２４４の外側端部にシール材２４１が充填されており、シール材２４１によって両側の板ガラス２４３を接着して、気密となるように固化している。
　複層ガラス２３１の四辺である各端部には、これらの端部を覆うように断面略Ｕ字状のグレージングチャンネル２４５が取り付けられている。各グレージングチャンネル２４５の底部には、２本の係止部２４６が一体形成される。各係止部２４６は、各一対の板ガラス２４３間のシール材２４１内に、固化前にそれぞれ挿入されて固化後に一体に固定される。これによって、グレージングチャンネル２４５は複層ガラス２３１と一体に固定される。シール材２４１は、例えばシリコン系、ポリサドフィド系の接着材を用いることが好ましい。また、係止部２４６は、例えば矢印型に形成されている。

　係止部２４６はグレージングチャンネル２４５と別体に形成してもよい。例えば、略Ｔ字状に形成した係止部２４６をグレージングチャンネル２４５に形成した穴を通してシール材２４１に挿入してシール材２４１を固化させることで、グレージングチャンネル２４５と複層ガラス２３１とを一体化できる。
　また、グレージングチャンネル２４５に係止部２４６を設けずに、例えば接着剤等で複層ガラス２３１の端部に固定してもよい。

　グレージングチャンネル２４５の両側部２４５ａには、外側の板ガラス２４３の側部に当接してシールするシール部２４７がそれぞれ設けられている。グレージングチャンネル２４５の屋内側の側部２４５ａは、樹脂下框２２６の屋外側端部ｔに押圧され、屋外側の側部２４５ａは、金属下框２２１の屋外側に位置する押圧部２２１ａによってシール部２４７を介して屋内側に押圧されている。
　そのため、複層ガラス２３１は固定されたグレージングチャンネル２４５を介して金属下框２２１と連結されている。従って、障子２０３にねじれやせん断変形の荷重がかかっても、複層ガラス２３１と金属下框２２１とが分離することを防止できる。

　金属下框２２１の押圧部２２１ａから下方に延びる壁面２２１ｂには、壁面２２１ｂの上下方向の途中部分から水平方向屋内側に延びる受け部２２１ｃが設けられている。受け部２２１ｃの他端部は、樹脂下框２２６の屋外側に設けられた、例えば断面略Ｌ字状の係合部２２６ｂに係合する係止部を有している。更に壁面２２１ｂの下端部には屋内側に延びる当接片２２１ｄを形成している。
　一方、金属下枠２０９の外側金属下枠部２０９ａの屋外側端部には、水切り片２４９が形成され、水切り片２４９と外側金属下枠部２０９ａとの接続部分近傍から上方に延びる起立片２５０に設けたパッキン２５１に金属下框２２１の当接片２２１ｄの端部が当接して水密に構成されている。金属下框２２１の受け部２２１ｃ上には、セッティングブロック２５３が設置されて、グレージングチャンネル２４５を介して複層ガラス２３１を支持している。

　寒冷地等では窓、ドア等に高い断熱性が要求されており、基準として、断熱性の高い樹脂製建具、木製建具等において、熱貫流率Ｕを下式（１）で示すように、２．３３Ｗ/ｍ^２Ｋ未満に設定することが要求されている。
　　　　Ｕ≦２．３３Ｗ/ｍ^２Ｋ　　　…（１）
　ここで、熱貫流率Ｕとは、窓等の各部位で窓の内外両側の温度が異なるときに、内外の温度差１℃について単位時間当たりで、窓の一方側から他方側に窓の面積１ｍ^２を通過する熱量をワットで表したものである。

　本実施形態に示す縦辷り出し窓２０１のような金属と樹脂とを備えた複合建具において、上記（１）式を満足する条件として、後述の試験等に基づいて次の条件を設定できる。
　即ち、図１１において、本実施形態による縦辷り出し窓２０１では、障子２０３の複層ガラス２３１の厚み方向の幅の長さをＬとし、金属下框２２１の屋外側端面(見付け面という)の長手方向に直交する方向の幅の長さ(以下、単に幅の長さという)をＭとして、両者の比を下記の（２）式で設定した。
　　　　Ｍ≦Ｌ　　　…（２）

　複層ガラス２３１は、固定されたグレージングチャンネル２４５を介して金属下框２２１と連結されているため、強度が高い。複層ガラス２３１は、３枚の板ガラス２４３がスペーサ２４４による所定の間隔(例えば１５ｍｍ)で平行に配列されているので、金属框２１６の部分より断熱性が高く（１）式を満たしている。
　金属下框２２１においても、金属下框２２１の屋外側端面の幅の長さＭを複層ガラス２３１の厚み方向の幅Ｌ以下に設定することで、外気に触れる面積が小さく屋内外の熱移動も小さい。従って、上記（１）式を満足する高い断熱性を得られる。

　そのため、本実施形態では、上述のように障子２０３に三層ガラス２３１を採用し、樹脂枠２０５と樹脂框２１７に空気室２３９ａ、２３９ｂを形成し、障子２０３の樹脂框２１７と樹脂枠２０５との間に空気層２３５Ａ、２３５Ｂ、２３５Ｃ、２３５Ｄを設けている。更に、（２）式により、金属下框２２１の屋外側端面の幅の長さＭを、複層ガラス２３１の厚み方向の幅Ｌと同一長さ以下（Ｍ≦Ｌ）に設定している。これにより、（１）式で示すように、熱貫流率Ｕが２．３３Ｗ/ｍ^２Ｋ未満となる程度に、金属下框２２１の断熱性を向上させることができる。

　上述したように、（１）式及び（２）式の条件は、障子２０３の金属下框２２１の屋外側の壁面２２１ｂの部分だけでなく、金属框２１６の金属上框２２０の部分、左右の金属縦框２１８、２１９の部分にもそれぞれ同様に形成されている。

　（２）式で示す金属框２１６の金属上下框２２０、２２１、及び左右の金属縦框２１８、２１９の各屋外側端面の長手方向に直交する方向の幅の長さＭを、複層ガラス２３１の厚み方向の幅Ｌと同一長さ以下に設定する。本発明の実施形態による縦辷り出し窓２０１は上述の構成を備えているから、このように設定することで、障子２０３において複層ガラス２３１の部分より断熱性の低い金属框２１６の部分においても、寒冷地で使用可能なように熱貫流率Ｕが２．３３Ｗ/ｍ^２Ｋ未満となる高い断熱性を確保することができる。そのため、アルミ合金等の金属と樹脂との複合型の縦辷り出し窓２０１においても、樹脂製建具や木製建具と同等な断熱性を得ることができる。

　また、複層ガラス２３１をグレージングチャンネル２４５と固定して金属下框２２１等の金属框２１６と連結させたため、金属框２１６の各幅の長さＭが、複層ガラス２３１の厚み方向の幅Ｌ以下でも、高い強度と耐久性及び耐候性と意匠性を得られる。
　本実施形態による縦辷り出し窓２０１は、屋内側から見て金属框２１６が樹脂枠２０５によって覆われている隠し框構造であるから、障子２０３の金属框２１６の部分の断熱性を一層向上できる。

　本発明による複合建具の断熱構造は、上述した実施形態による縦辷り出し窓２０１に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。
　例えば、障子２０３において金属框２１６の全てが上記（１）式と（２）式を満足していなくてもよい。例えば、少なくとも地表に近く比較的外気温の低い金属下框２２１の部分だけが（１）式と（２）式を満足するように設定してもよい。この場合でも、金属下框２２１と複層ガラス２３１との連結強度を高く維持して断熱性を高めることができる。

　また、図１２は、本発明の第１変形例による縦辷り出し框２０１を示す図である。本第１変形例においても、複層ガラス２３１の厚み方向の幅Ｌと金属框２１６の幅の長さＭとの関係は、（１）式と（２）式を満足する構成を有している。更に、本第１変形例では、複層ガラス２３１はその端部における各２つの板ガラス２４３の間に、スペーサ２５８をそれぞれ連結している。

　複層ガラス２３１は金属框２１６との連結部において、グレージングチャンネル２４５を備えていない。図１２に示す金属下框２２１では、押圧部２２１ａから下方に延びる壁面２２１ｂの途中に受け部２２１ｃに代えて、水平方向屋内側に延びる底部２２１ｅが設けられ、底部２２１ｅの端部は樹脂下框２２６の係合部２２６ｂに係合している。
　複層ガラス２３１の屋内側側面は、樹脂下框２２６の屋外側端部ｔに当接して位置決めされ、複層ガラス２３１の屋外側側面は、金属下框２２１の押圧部２２１ａの先端で屋内側に押圧されている。底部２２１ｅには複層ガラス２３１の端部が配設され、各板ガラス２４３の端部と底部２２１ｅとが接着剤による接着部２５６によって固定されている。図１２に示す例では、各板ガラス２４３毎に、接着部２５６によって端部が底部２２１ｅに固定されている。

　なお、複層ガラス２３１と金属下框２２１の底部２２１ｅとを固定する接着部２５６の構成は適宜選択できる。例えば、板ガラス２４３を個別に固定する手段に代えて、複層ガラス２３１の端面と底部２２１ｅとの間の全面に接着部２５６の層を形成してもよい。また、複層ガラス２３１の一方または両方の側面と金属下框２２１の壁面２２１ｂとの間や樹脂下框２２６との間を、接着剤で充填して接着部２５６を設けてもよい。
　また、上述した複層ガラス２３１の固定構造について、金属下框２２１の部分だけでなく、金属框２１６の金属上框２２０の部分、左右の金属縦框２１８、２１９の部分にもそれぞれ同様の構成を有している。

　図１３は、本発明の第２変形例による縦辷り出し框２０１を示す図である。本第２変形例においても、複層ガラス２３１の厚み方向の幅Ｌと金属下框２２１の幅の長さＭとの関係は、（１）式と（２）式を満足する構成を有している。
　本第２変形例では、複層ガラス２３１の端部に接着部２５６を設けることなく、グレージングチャンネル２４５を設けて覆い、グレージングチャンネル２４５の両側部２４５ａを樹脂下框２２６の屋外側端部ｔと金属下框２２１の押圧部２２１ａとで押圧することで固定している。

　本第２変形例による縦辷り出し框２０１では、複層ガラス２３１の端部をグレージングチャンネル２４５や金属下框２２１で固定していない。しかし、グレージングチャンネル２４５を介して樹脂下框２２６の屋外側端部ｔと金属下框２２１の押圧部２２１ａとで押圧することで、高い強度で保持できる。

　上述した実施形態や各変形例では、複層パネルとして、三層ガラス（トリプルガラス）の複層ガラス２３１を用いて説明したが、これに代えて二層ガラス(ペアガラス)を用いてもよい。この場合、三層ガラスと比較して断熱性能は低いが、（１）式を満足する程度の熱貫流率Ｕを有し、かつ（２）式を満足するように設定することができる。
　上述した実施形態や各変形例では、複層ガラス２３１の端部近傍の側面を、樹脂下框２２６の屋外側端部ｔと金属下框２２１の押圧部２２１ａとで挟持して押圧した。この構成に代えて、金属下框２２１の両側に押圧部２２１ａを設けて、これら一対の押圧部２２１ａ内に複層ガラス２３１の端部を挿入して、両側面を各押圧部２２１ａで挟んで挟持するようにしてもよい。

　上述した実施形態や各変形例において、金属框２１６の金属下框２２１だけでなく、金属上框２２０や左右の金属縦框２１８、２１９について、上記（１）式と（２）式を満足するようにした。しかしながら、障子２０３の金属框２１６の少なくとも１つの框部、特に地表に近く比較的温度の低い金属下框２２１の部分だけが（１）式と（２）式を満足するように設定してもよい。この場合でも、複合建具の金属下框２２１の断熱性を高めて、寒冷地等に使用可能な樹脂建具や木製建具と同等の断熱性を得ることができる。

　また、本発明による金属と樹脂とを備えた複合建具について、例として縦辷り出し窓２０１に用いる障子２０３の金属框２１６の断熱構造を説明したが、本発明はこれに限定されない。横辷り出し窓や引き違い窓、或いは引き違いドア等、各種の窓、ドア等の隠し框構造を備えた複合建具、または、隠し框構造を有さない複合建具に本発明の断熱構造を採用できる。

第３実施形態
　以下、本発明の第３実施形態による複合建具の一例としての縦辷り出し窓とフィックス（ＦＩＸ）窓とを図面に基づいて説明する。
　図１４及び図１５は連窓３０１を示す図であり、方立３２２の一方に縦辷り出し窓３０１Ａが配設され、他方に嵌め殺し窓であるフィックス（ＦＩＸ）窓３０１Ｂが配設されている。以下に、本発明の第３実施形態による複合建具を、図１４～図１８に示す縦辷り出し窓３０１Ａによって説明する。
　図１４及び図１５において、第３実施形態による縦辷り出し窓３０１Ａは、建物の躯体に形成された建物開口部に取り付けられる枠体３０２内に納めた障子３０３を吊元側の縦框回りに回転させることで外側に開放可能である。縦辷り出し窓３０１Ａは、アルミ合金等の金属と樹脂とを有する複合型であり、四角形枠状の複合型の枠体３０２と、枠体３０２に開閉可能に納められた複合型の障子３０３とが設置されている。

　枠体３０２は、屋外側に設けられたアルミ合金等からなる四角形枠状の金属枠３０４と金属枠３０４の屋内側に設けられた合成樹脂製の樹脂枠３０５とで構成された開口枠体を形成している。金属枠３０４は、左右の金属縦枠３０６及び金属縦枠３０７と金属上枠３０８及び金属下枠３０９とで、四角形枠状に形成されている。金属上枠３０８は、外側金属上枠部３０８ａと内側金属上枠部３０８ｂとが樹脂製のブリッジ材３１０を介して連結され、屋内外の熱移動を低減させている。金属下枠３０９は、外側金属下枠部３０９ａと内側金属下枠部３０９ｂとが樹脂製のブリッジ材３１５を介して連結され、屋内外の熱移動を低減させている。

　樹脂枠３０５は左右の金属縦枠３０６、３０７の屋内側に形成した左右の樹脂縦枠３１１、３１２と、金属上枠３０８の屋内側に形成した樹脂上枠３１３と、金属下枠３０９の屋内側に形成した樹脂下枠３１４とで構成されている。なお、金属縦枠３０７と樹脂縦枠３１２とは、連窓３０１の方立３２２を構成する。
　また、左右の樹脂縦枠３１１、３１２、樹脂上枠３１３、及び樹脂下枠３１４は、断面視で複数の空気室３３９を縦横方向に備えた格子状部をそれぞれ形成している。これら複数の空気室３３９によって、屋外と屋内との間の熱移動を低減させるようにしている。

　障子３０３は、屋外側に設けられたアルミ合金等の金属からなる金属框３１６と、金属框３１６の屋内側に設けられた樹脂製の樹脂框３１７とで構成されている。金属框３１６は、左右の金属縦框３１８、３１９と金属上框３２０及び金属下框３２１とで形成されている。樹脂框３１７は、左右の金属縦框３１８、３１９の屋内側に形成した左右の樹脂縦框３２３、３２４と、金属上框３２０の屋内側に形成した樹脂上框３２５と、金属下框３２１の屋内側に形成した樹脂下框３２６とで構成されている。障子３０３の四角形に枠組みされた金属框３１６及び樹脂框３１７の内部には、例えば複層ガラスとして二層ガラス(ペアガラス３３１が嵌め込まれている。
　縦辷り出し窓３０１Ａの障子３０３は、枠体３０２の左右の樹脂縦枠３１１、３１２、樹脂上枠３１３、樹脂下枠３１４の戸当たり面に当接することで閉鎖状態に納められ、屋外側にのみ開放可能である。また、二層ガラス３３１は、樹脂上下框３２５、３２６、及び左右の樹脂縦框の屋外側他面ｔを基準位置として位置決めされる。

　また、図１５に示す枠体３０２の戸当たり側の縦枠部分において、枠体３０２の樹脂縦枠３１１の屋外側端面３１１ａには嵌合凹部３３０が形成され、嵌合凹部３３０には第１パッキン３３２Ａの一端が嵌合され、他端が屋外側に突出している。第１パッキン３３２Ａは例えば略Ｕ字形状を有しており、先端側部分は、樹脂縦框３２３の屋内側端面３２３ａに当接している。また、樹脂縦枠３１１の屋外側端面３１１ａにおける第１パッキン３３２Ａから離間した位置に第２パッキン３３３Ａが形成されており、第２パッキン３３３Ａは、例えば断面略Ｊ字型に屈曲または湾曲した形状を有している。

　障子３０３を枠体３０２に納めた閉鎖状態で、障子３０３における樹脂縦框３２３の屋内側端面３２３ａに第１パッキン３３２Ａの先端が当接しており、第２パッキン３３３Ａの先端部は端面３２３ａに接触するか、わずかに離間した位置にある。この場合、第１パッキン３３２Ａは、樹脂縦框３２３の端面３２３ａに強く押圧され、第２パッキン３３３Ａは、比較的軽く樹脂縦框３２３の端面３２３ａに当接するか、あるいは微小間隔で離間するように配置されて密閉空間が形成されている。

　これによって、水平断面視で枠体３０２の樹脂縦枠３１１と樹脂縦框３２３と第１及び第２パッキン３３２Ａ、３３３Ａとによって密閉空間をなす空気層３３５Ａを形成している。空気層３３５Ａは樹脂とパッキンとで形成されているため断熱性が高く、枠体３０２と障子３０３との間を断熱して屋外側と屋内側との間で熱の受け渡しを低減することができ、断熱性と防露性を向上させることができる。また、障子３０３を枠体３０２に閉鎖させた状態で、障子３０３の樹脂縦框３２３が第１及び第２パッキン３３２Ａ、３３３Ａに当接するから気密性を確保できると共に障子３０３の開閉作動にも影響を与えない。

　また、断熱の空気層３３５Ａは樹脂縦枠３１１と樹脂縦框３２３との間だけでなく、図１５に示すように、吊元側の樹脂縦枠３１２と樹脂縦框３２４との間にも同様に、樹脂縦枠３１２の屋外側端面３１２ａに第１パッキン３３２Ｂと第２パッキン３３３Ｂが形成されている。そのため、樹脂縦枠３１２、３２４の各端面３１２ａ、３２４ａと第１及び第２パッキン３３２Ｂ、３３３Ｂとで密閉空間の空気層３３５Ｂを形成している。
　同様に、図１４に示す樹脂上枠３１３の屋外側端面３１３ａに、パッキン３３３Ｃとリブ３３２Ｃとで仕切られた空気層３３５Ｃが形成されている。また、樹脂下枠３１４の屋外側端面３１４ａにも第１パッキン３３２Ｄと第２パッキン３３３Ｄが形成され、樹脂下枠３１４、３２６の各端面３１４ａ、３２６ａと第１及び第２パッキン３３２Ｄ、３３３Ｄとで密閉空間の空気層３３５Ｄを形成している。

　第１パッキン３３２Ｂ、３３２Ｄと第２パッキン３３３Ｂ、３３３Ｄと密閉空間の空気層３３５Ｂ、３３５Ｄとは、上述した第１パッキン３３２Ａ、第２パッキン３３３Ａ、空気層３３５Ａと同一構成を備えており、空気層３３５Ｃも同一構成であってもよい。
　そのため、枠体３０２の四角形枠状の樹脂枠３０５と障子３０３の四角形枠状の樹脂框３１７との間でそれぞれ密閉空間の空気層３３５Ａ～３３５Ｄが四角形の各辺をなす枠状に形成される。

　次に、図１４に示す障子３０３の金属框３１６と樹脂框３１７とにおいて、金属下框３２１と樹脂下框３２６との間には、二層ガラス３３１の下端を支持するための断面略Ｕ字状のグレージングチャンネル３４０が嵌合溝部として設置され、その下方にはセッティングブロック３４１が設置されている。図１７において、二層ガラス３３１の端部両側には、グレージングチャンネル３４０の両側部３４０ａに設けたシール材３４２がそれぞれ当接している。二層ガラス３３１は、一対のシール材３４２によってグレージングチャンネル３４０の幅方向中央に配設されている。
　なお、二層ガラス３３１のグレージングチャンネル３４０は、金属上框３２０と樹脂上框３２５との間、金属縦框３１８と樹脂縦框３２３との間、金属縦框３１９と樹脂縦框３２４との間にも同様に設置されており、これらを同一の符号で表している。

　図１７に示す障子３０３の金属下框３２１は、二層ガラス３３１のグレージングチャンネル３４０の側部３４０ａを屋外側から押さえる外側押さえ部３４３を備えている。さらに、外側押さえ部３４３の上下方向中間部から水平方向に延びてセッティングブロック３４１を支持する受け部３４３ａと、外側押さえ部３４３の下部から水平方向に延びる当接部３４３ｂとを有している。受け部３４３ａは、屋内に向かって延びて、樹脂下框３２６の屋外側に設けた係合部３２６ｂと係合している。
　一方、外側金属下枠部３０９ａの水切り部３４４の起立部３４５には、パッキン３４６が設けられており、金属下框３２１の外側押さえ部３４３の当接部３４３ｂがパッキン３４６に当接して水密を確保している。このような金属下框３２１の外側押さえ部３４３と同様な構成が、金属上框３２０、金属縦框３１８、３１９にも設けられている。

　図１７及び図１８は、障子３０３に取り付けた二層ガラス３３１を三層ガラス（トリプルガラス）３４９に交換した構成を示す図である。この場合には、障子３０３の樹脂框３１７から金属框３１６と二層ガラス３３１とを取り外し、三層ガラス３４９と三層ガラス３４９用の金属框３５０とを装着する。金属框３５０は、金属上框３５１、金属下框３５２、及び左右の金属縦框３５３、３５４で四角形枠状に形成され、それぞれ樹脂上框３２５、樹脂下框３２６、左右の樹脂縦框３２３、３２４の屋外側に取り付けられている。

　三層ガラス３４９には、各端部に断面略Ｕ字状のグレージングチャンネル３５６が取り付けてあり、三層ガラス３４９を樹脂上下框３２５、３２６、及び左右の樹脂縦框３２３、３２４の各屋外側端部ｔに当接させて位置決めする。そのため、二層ガラス３３１と三層ガラス３４９とを交換装着しても、樹脂上下框３２５、３２６、及び左右の樹脂縦框３２３、３２４の屋外側端部ｔを基準位置として、それらの屋外側に三層ガラス３４９を位置決め固定する。

　金属下框３５２において、三層ガラス３４９のグレージングチャンネル３５６の外側の側部３５６ａを押圧する外側押さえ部３５７は、外側押さえ部３５７の上下方向中間部から水平方向に延びてセッティングブロック３４１を支える受け部３５７ａと、外側押さえ部３５７の下部から水平方向に延びる当接部３５７ｂを有している。受け部３５７ａは屋内側に向かって延びて、樹脂下框３２６の屋外側に設けた係合部３２６ｂと係合している。
　外側押さえ部３５７の当接部３５７ｂには、外側金属下枠部３０９ａの水切り部３４４の起立部３４５に設けたパッキン３４６に当接して水密を確保している。この場合、二層ガラス３３１から三層ガラス３４９に交換したことで、金属下框３５２の外側押さえ部３５７における受け部３５７ａと当接部３５７ｂとが外側押さえ部３４３と比較して、長く延びた構成を有している。
　このような金属下框３５２の外側押さえ部３５７と同様な構成が、金属框３５０の金属上框３５１、金属縦框３５３、３５４にも設けられている。

　本第３実施形態による縦辷り出し窓３０１Ａは、上述した構成を備えている。従って、二層ガラス３３１を装着した状態から例えば断熱性を向上させるために三層ガラス３４９に交換する場合、まず、図１４～図１７において、障子３０３の金属框３１６を樹脂框３１７から取り外し、更に二層ガラス３３１をグレージングチャンネル３４０と一体に取り外す。

　次いで、三層ガラス３４９を樹脂框３１７の樹脂上下框３２５、３２６及び左右の樹脂縦框３２３、３２４の屋外側端部ｔを基準位置として取り付け、三層ガラス３４９用の金属框３５０の金属上框３５１、金属下框３５２、及び左右の金属縦框３５３、３５４を装着することで、図１７、図１８に示す三層ガラス３４９を装着した障子３０３が得られる。

　上述したように本実施形態による縦辷り出し窓３０１Ａによれば、障３０３の屋外側に設けた金属框３１６、３５０を交換するだけで二層ガラス３３１と三層ガラス３４９を相互に交換することができるため、交換作業が容易である。また、金属框３１６、３５０以外の部品と加工金型とを共通にすることができ、障子３０３の製造コストや組立コストを低減できる。更に、本実施形態では、工場での障子３０３の組立だけでなく、既設の連窓３０１における障子３０３を、二層ガラス３３１から三層ガラス３４９に容易に交換できてリフォームでき、断熱性を向上させることができる。

　障子３０３において二層ガラス３３１から三層ガラス３４９に交換装着した場合では、交換装着した金属框３５０の金属上框３５１、金属下框３５２、及び左右の金属縦框３５３、３５４の外側押さえ部３５７の受け部３５７ａと当接部３５７ｂとが屋外側に延びるだけであり、断熱性を向上させることができ、かつ外観上の変化が小さくて済む。
　二層ガラス３３１と三層ガラス３４９との交換装着に際し、障子３０３の樹脂框３１７の屋外側端部ｔを基準位置として、屋内側に寄せて二層ガラス３３１または三層ガラス３４９を交換装着できる。このため、従来の障子３０３のように、交換によってガラスが屋外側に移動して設置されることがなく、断熱性向上の点で有利である。

　なお、本発明による複合建具のパネル組立構造は、上述した実施形態による縦辷り出し窓３０１Ａに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能である。
　以下に、本発明の他の実施形態について説明するが、上述した第３実施形態と同一または同様な部品や部材には同一の符号を用いて説明する。

第４実施形態
　本発明の第４実施形態による縦辷り出し窓３０１Ａの障子３０３について、図１９及び図２０により説明する。上述した第３実施形態では、障子３０３において二層ガラス３３１を三層ガラス３４９に交換することで、金属框３５０の屋外側への突出位置が外側に延びるように構成した。しかし、本第４実施形態では、二層ガラス３３１と三層ガラス３４９とを交換装着したとしても、金属框の屋外側突出位置が変化しないように構成した。

　即ち、図１９に示す障子３０３には、二層ガラス３３１が装着されており、金属框３１６と樹脂框３１７との間に二層ガラス３３１が設置されている。二層ガラス３３１は、樹脂框３１７の屋外側端部ｔを基準位置として設置されている。
　金属框３１６の金属下框３６０では、二層ガラス３３１の端部を保持するグレージングチャンネル３４０の側部３４０ａを屋外側から押圧する外側押さえ部３６１は、外側押さえ部３６１の上部に水平方向に延びて側部３４０ａを押圧する押圧部３６１ａと、上下方向中間部から水平方向に延びてセッティングブロック３４１を支える受け部３６１ｂとを備えている。

　外側押さえ部３６１の押圧部３６１ａは比較的長く設定されおり、受け部３６１ｂは水平方向屋内側に延びて樹脂下框３２６の屋外側に設けた係合部３２６ｂと係合している。
　なお、金属框３１６の他の框部分である金属上框、左右の金属縦框にも同様な構成の外側押さえ部３６１が設けられている。

　図２０に示すように、障子３０３の二層ガラス３３１を三層ガラス３４９に交換装着した場合、断面略Ｕ字状のグレージングチャンネル３５６を備えた三層ガラス３４９は、樹脂框３１７の屋外側端部ｔを基準位置として設置されている。また、三層ガラス３４９用の金属下框３６３に設けた外側押さえ部３６４は、外側押さえ部３６４の上部に水平方向に延びてグレージングチャンネル３５６の側部３５６ａを押圧する押圧部３６４ａと、上下方向中間部から水平方向に延びてセッティングブロック３４１を支える受け部３６４ｂとを備えている。
　外側押さえ部３６４の押圧部３６４ａと受け部３６４ｂとは、二層ガラス３３１から三層ガラス３４９に交換して屋外方向の幅が大きくなった分だけ、長さが短くなるように設定されている。そのため、障子３０３に設置する積層パネルを二層ガラス３３１から三層ガラス３４９に交換しても金属下框３６３の屋外方向の突出位置に変化がなく、外観の変化が小さく見栄えがよい。

　本発明の第４実施形態による複合建具のパネル組立構造について、図１５に示す連窓３０１のフィックス窓３０１Ｂに基づいて、図２１及び図２２により説明する。
　図１５、図１８、図２１、及び図２２に示す連窓３０１のフィックス窓３０１Ｂについても、縦辷り出し窓３０１Ａと同様に、枠体３０２の金属枠として金属上枠３０８、金属下枠３０９、金属縦枠３６６、及び方立３２２に連結した金属縦枠３６７を備える。さらに、フィックス窓３０１Ｂは、金属縦枠３６７の内側に樹脂枠として樹脂上枠３１３、樹脂下枠３１４、及び左右の樹脂縦枠３６８、３６９を備えている。

　図２１に示す障子３７０は、二層ガラス３３１を装着した嵌め殺し窓である。二層ガラス３３１の上端側にガスケット等の緩衝材３７１を介して金属上框３７２が設けられ、下端側部にも緩衝材３７１を介して金属下框３７３が設けられている。二層ガラス３３１の屋内側は、樹脂上枠３１３との間に緩衝材３７１が装着され、樹脂下枠３１４との間にも緩衝材３７１が装着されることで保持されている。
　金属上框３７２は金属上枠３０８と樹脂上枠３１３とに連結され、金属下框３７３は金属下枠３０９と樹脂下枠３１４とに連結されている。二層ガラス３３１の縦方向両側部は、緩衝材３７１を介して金属縦枠３６６、３６７に連結されている。

　金属下框３７３は、上下方向に延びていて上端部で緩衝材３７１を介して二層ガラス３３１を押圧する外側押さえ部３７５を有している。外側押さえ部３７５の下部には、屋内側に向かって延びてセッティングブロック３４１を支持する受け部３７５ａが設けられている。更に、受け部３７５ａの下方には、屋外側に延びて金属下枠部３０９の水切り部３４４から起立する起立部３４５に係合する、当接部３７５ｂが設けられている。なお、二層ガラス３３１は、樹脂下枠３１４の屋外側端部ｔに緩衝材３７１を介して当接する位置に設置されており、端面３１４ｂが二層ガラス３３１の設置の際の基準位置になる。
　このような金属下框３７３の構成は、金属上框３７２にも設置されている。

　図２２に示すように、障子３７０を二層ガラス３３１から三層ガラス３４９に交換した場合、三層ガラス３４９も樹脂下枠３１４の屋外側端部ｔに緩衝材３７１を介して当接する位置に設置される。また、三層ガラス３４９の下端部を支持する金属下框３７３の外側押さえ部３７７は、二層ガラス３３１の幅が三層ガラス３４９の幅に増大した分だけ、屋外側にずれている。ずれた分だけセッティングブロック３４１を支持する受け部３７７ａが長く延びており、更に受け部３７７ａの下方に設けた当接部３７７ｂの長さが短く設定されている。そのため、二層ガラス３３１用の外側押さえ部３７５と三層ガラス３４９用の外側押さえ部３７７とで当接部３７５ｂ、３７７ｂの屋外側の先端の位置は同一である（揃っている）。
　このような金属下框３７３の構成は、金属上框３７２にも設置されている。また、二層ガラス３３１から三層ガラス３４９に交換して設置することで、パネルを保持する金属縦枠３６６、３６７の屋外側部分についても外側にずらしている。三層ガラス３４９も、緩衝材３７１を介して金属上下框３７２、３７３、と金属縦枠３６６、３６７とによって保持される。

　従って、本第４実施形態によるフィックス窓３０１Ｂにおいても、二層ガラス３３１を三層ガラス３４９に交換することで断熱性を向上できる。また、二層ガラス３３１と三層ガラス３４９とを交換して装着する場合、樹脂下枠３１４の屋外側端部ｔを基準位置として設置する。そのため、いずれの場合も、二層ガラス３３１または三層ガラス３４９を屋内側に寄せて設置することができて、断熱性向上の点で有利である。交換して装着するに際しては、金属下框３７３、金属上框３７２、及び金属縦枠３６６、３６７だけを交換すればよく、その他の部品を共通化できるため、製造コストを抑えることができる。

　上述した各実施形態では、積層パネルとして二層ガラス３３１と三層ガラス３４９とを交換装着する場合について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。一層ガラスと二層ガラスとの間で交換、または異なる層数の積層パネルを交換して、装着してもよい。
　また、上述した各実施形態では、外側押さえ部を金属框３１６、３５０の一部として、積層ガラスを交換する際、金属框３１６、３５０を交換するように構成した。しかし、外側押さえ部を金属框３１６、３５０と分離可能に連結し、積層ガラスの交換に際して外側押さえ部を金属框３１６、３５０から分離して、外側押さえ部だけを交換して積層ガラスの幅の変化に対応させて装着するようにしてもよい。

　また、各実施形態において、二層ガラス３３１、三層ガラス３４９等の積層ガラスを装着する際の位置決め用基準位置である端部ｔは、少なくとも１カ所あればよい。
　なお、本発明による金属と樹脂とを備えた複合建具は、例として縦辷り出し窓３０１Ａとフィックス窓３０１Ｂとを用いたが、これに限定されることない。横辷り出し窓、引き違い窓、または引き違いドア等、各種の窓、ドア等の障子を備えた複合建具に本発明のパネル組立構造を採用できる。

１、２０１、３０１Ａ　縦辷り出し窓
２、２０２、３０２　枠体
３、２０３、３０３　障子
４、２０４、３０４　金属枠
５、２０５、３０５　樹脂枠
６、７、２０６、２０７、３０６、３０７、３６６、３６７　金属縦枠
８、２０８、３０８　金属上枠
８ａ、２０８ａ、３０８ａ　外側金属上枠
８ｂ、２０８ｂ、３０８ｂ　内側金属上枠
９、２０９、３０９　金属下枠
１３、２１３、３１３　樹脂上枠
１３ａ、１４ａ、２１３ａ、２１４ａ、３１３ａ、３１４ａ　屋外側端面、端面
１４、２１４、３１４　樹脂下枠
１５、３７、２１５、３１５　ブリッジ材
１６、２１６、３１６、３５０　金属框
１７、２１７、３１７　樹脂框
１８、１９、２１８、２１９、３１８、３１９　金属縦框
２３、２４、２２３、２２４、３２３、３２４　樹脂縦框
２５、２２５、３２５　樹脂上框
２６、２２６、３２６　樹脂下框
２５ａ、２６ａ、２２３ａ、３２３ａ　屋内側端面、端面
３１　ガラス体
３９ａ、３９ｂ、２３９ａ、２３９ｂ、３３９　空気室（第１空気室）
４０　格子状部
４０ａ、４０ｂ　突起部
４２、４４　空気室（第２空気室）

Claims

　屋外側に対向する第１金属枠と屋内側に対向する第１樹脂枠とを有する開口枠体と、
　前記開口枠体に取り付け可能であって、屋外側に対向する第２金属框と屋内側に対向する第２樹脂框とを有する障子と、を備え、
　前記第１金属枠と前記第１樹脂枠との間に、前記第１樹脂枠に複数の突起部を設けて凹部形状の第２空気室が前記第１金属枠に対向するように設けられている、複合建具。
　屋外側に対向する第１金属枠と、樹脂上枠と樹脂下枠とを含み、屋内側に対向する第１樹脂枠とを有する開口枠体と、
　前記開口枠体に取り付け可能であって、屋外側に対向する第２金属框と屋内側に対向する第２樹脂框とを有する障子と、を備え、
　前記開口枠体の第１樹脂枠には、前記樹脂上枠と前記樹脂下枠の少なくとも一方に上下方向と左右方向の一方または両方に樹脂で仕切った複数の第１空気室が形成されている、複合建具。
　前記第１金属枠は、外側金属枠と内側金属枠とを含み、前記外側金属枠と前記内側金属枠が樹脂製のブリッジ材を介して連結されている、請求項１または２に記載された複合建具。
　前記外側金属枠と前記ブリッジ材と前記内側金属枠の少なくともいずれかに対向する位置に、
　樹脂上枠と樹脂下枠の少なくとも一方に上下方向と左右方向の一方または両方に樹脂で仕切った複数の第１空気室と、
　樹脂上枠と前記樹脂下枠の少なくとも一方に前記複数の突起部を設けて形成した凹部形状の第２空気室と、
　を設けた、請求項３に記載された複合建具。
　前記開口枠体の前記第１樹脂枠と前記障子の前記第２樹脂框との間に、間隔を開けて第１パッキンと第２パッキンとを設けて、空間を仕切る第一空気層が形成されている、請求項１から４のいずれか1項に記載された複合建具。
　前記第１樹脂枠は、前記障子の前記第２金属框及び前記第２樹脂框に重なるように、前記複数の第１空気室を形成する隠し框構造を備える、請求項２、４、５のいずれか１項に記載された複合建具。
　前記障子の前記第２金属框の屋内側に形成された複数の第３空気室を有する前記第２樹脂框と、前記複数の第１空気室を備えた前記第１樹脂枠との間に、間隔を開けて第１パッキンと第２パッキンとを設けて、空間を仕切る第２空気層が形成されている、請求項２、４から６のいずれか1項に記載された複合建具。
　前記複数の突起部は、前記ブリッジ材に対向する位置に設けられ、屋外と屋内を区切る、請求項３または４に記載された複合建具。
　屋外側に対向する金属枠と屋内側に対向する樹脂枠とを有する開口枠体と、
　前記開口枠体に納められていて屋外側に対向する金属框と屋内側に対向する樹脂框とを有する障子と、
　前記金属框と前記樹脂框に取り付けられた複層パネルと、を備え、
　前記金属框における金属下框の長手方向に直交する方向の幅の長さが、前記複層パネルの厚み方向の幅の長さ以下に設定されている、複合建具の断熱構造。
　前記複層パネルは、トリプルガラスである、請求項９に記載された複合建具の断熱構造。
　熱貫流率が、２．３３Ｗ/ｍ^２Ｋ未満である、請求項９または１０に記載された複合建具の断熱構造。
　前記複層パネルの端部を覆い、前記端部に固定されたグレージングチャンネルをさらに備え、
　前記金属下框は、前記グレージングチャンネルの外周を覆い、前記複層パネルに係合する、
請求項９から１１のいずれか１項に記載された複合建具の断熱構造。
　前記複層パネルの端部と前記金属下框とが、接着部によって固定されている、請求項９から１１のいずれか１項に記載された複合建具の断熱構造。
　屋外側に対向する金属枠と屋内側に対向する樹脂枠とを有する開口枠体と、
　前記開口枠体に納められていて屋外側に対向する金属框と屋内側に対向する樹脂框とを有する障子と、
　前記障子に納められていて前記金属框に取り付けられた複層パネルと、を備え、
　前記金属框の長手方向に直交する方向の幅の長さが、前記複層パネルの厚み方向の幅の長さ以下に設定されている、複合建具の断熱構造。
　屋外側に対向する金属枠と屋内側に対向する樹脂枠とを有する開口枠体と、
　前記開口枠体に納めてられていて屋外側に対向する金属框と屋内側に対向する樹脂框とを有し、積層パネルを装着した障子と、を備え、
　前記金属框は、前記積層パネルを屋外側から押さえる外側押さえ部を有し、
　積層枚数の異なる前記積層パネルを交換して装着する際、少なくとも屋外方向における長さの異なる前記外側押さえ部を交換して装着可能である、複合建具のパネル組立構造。
　前記積層パネルは、二層パネルと三層パネルとを有し、前記二層パネルと前記三層パネルのいずれを装着しても、前記外側押さえ部の屋外方向の突出位置が同一である、請求項１５に記載された複合建具のパネル組立構造。
　前記二層パネルを装着する場合には前記三層パネルを装着する場合よりも、前記外側押さえ部の当接部の長さが短い、請求項１５または１６に記載された複合建具のパネル組立構造。