WO2014046249A1 - 体壁接触型水槽および体腔内液体灌流システム - Google Patents

体壁接触型水槽および体腔内液体灌流システム Download PDF

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辰男 五十嵐
雅 関根
幸男 納谷
栄富 盧
新山 正徳
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拓司 浅野
麻奈美 越塚
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  • the liquid immediately after being discharged from the liquid feeding nozzle 22 to the water tank 12 is a turbulent flow that is turbulent relatively quickly and has a large amount of water energy for stirring the liquid.
  • this water flow energy is gradually attenuated while it is retained in the water tank 12, the liquid reaching the body cavity has a laminar flow (or a flow close to a laminar flow) with a small water flow energy for stirring.
  • the liquid supplied as a laminar flow into the body cavity is drawn toward the suction port 32 by the suction force of the suction pump 28. That is, according to the present embodiment, a constant flow toward the suction port 32 is generated in the body cavity without stirring the liquid. And by making such a constant flow, the turbidity of the liquid, and thus the visibility of the operative field can be effectively prevented.

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Abstract

 体壁接触型水槽12は、体壁120に接触させて設置され、体腔内に供給される液体が貯留される水槽本体と、前記水槽本体の底部に形成された貫通孔であって、前記体壁120に形成された切開創を介して前記水槽本体内に貯留された液体を体腔内に流入させる貫通孔と、前記水槽本体を、前記体壁120および前記切開創に取り付けられた開創器110の少なくとも一方に、液密に連結する連結手段と、を備える。

Description

体壁接触型水槽および体腔内液体灌流システム
 本発明は、手術時に、体腔内に等張液等の液体を還流させる体腔内液体灌流システム、および、当該体腔内液体灌流システムで用いられる体壁接触型水槽に関する。
 現行の開腹術、内視鏡手術、ロボット支援手術は、いずれも、臓器を気体と重力に暴露させながら行う術式である。こうした従来の術式では、重力に抗して臓器を取り扱う必要があるため、当該臓器を取り扱う鉗子等にはある程度の強度が必要であり、結果として、鉗子等の細径化には限界があった。また、術中、超音波診断を行う際にも、超音波プローブの位置に制限があった。
 そこで、一部では、体腔内に等張液等の液体を灌流させた状態で手術を行うことが提案されている。例えば、特許文献1には、灌流用生理液によって、人間または動物の生体の組織または腔を連続的に灌流および排液するための装置が開示されている。また、特許文献2には、体腔内に液体を灌流させる場合に適したトロッカーが開示されている。このトロッカーは、内視鏡の通路となる内側管と、当該内側管の外周を覆うように同心円状に配置され外側管とを備えており、外側管の先端面には、液体を吐出する液流出口および液体を吸引する液流入口が形成されている。
特許第3301614号公報 特開2012-081191号公報
 しかし、特許文献1,2の技術では、液体は、比較的小径の開口から体腔内に直接供給されていた。かかる小径の開口から多量の液体を供給するためには、流速を速くせざるを得ず、その流れは、乱流になりがちであった。かかる乱流として吐出される液体を、体腔内に直接供給すると、当該供給される液体の水流エネルギーにより、体腔内に貯留されている液体が激しく撹拌される。この場合、僅かでも出血が生じていると、液中に流れた血液が短時間で体腔内の液体全体に拡散し、液体全体が濁り、視野不良になるという問題があった。
 そこで、本発明では、体腔内での液体の撹拌を防止しつつ、体腔内に等張液等の液体を灌流させる体腔内液体灌流システム、および、当該システムで用いられる体壁接触型水槽を提供することを目的とする。
 本発明の体壁接触型水槽は、体壁に接触させて設置され、体腔内に供給される液体が貯留される水槽本体と、前記水槽本体の底部に形成された貫通孔であって、前記体壁に形成された切開創を介して前記水槽本体内に貯留された液体を体腔内に流入させる貫通孔と、前記水槽本体を、前記体壁および前記切開創に取り付けられた開創器の少なくとも一方に、液密に連結する連結手段と、を備えることを特徴とする。
 好適な態様では、前記連結手段は、前記水槽本体の底部と前記開創器とを液密に連結する連結機構を含む。他の好適な態様では、前記連結手段は、前記水槽本体の底部に連結されるとともに、前記体壁に液密に接着する接着面を含む。
 他の好適な態様では、前記水槽本体に液体を吐出する送液ノズル、または、前記送液ノズルが着脱自在に取り付けられる取り付け機構が、前記水槽本体に固定設置されている。この場合、前記水槽本体に固定設置された送液ノズルまたは前記取り付け機構は、前記送液ノズルから吐出された液体が前記水槽本体の内面に沿って斜め下方向に流れる位置および姿勢に設定されている、ことが望ましい。他の好適な態様では、前記水槽本体は、超音波の透過性が高い材料からなる。
 他の本発明である体腔内液体灌流システムは、液体が貯留されるとともに体壁に接触して設置される水槽本体と、前記水槽本体の底部に形成されるとともに前記体壁に形成された切開創を介して前記水槽本体内に貯留された液体を体腔内に流入させる貫通孔と、を備えた体壁接触型水槽と、前記体壁接触型水槽内に液体を供給する供給手段と、前記体腔内において、供給された液体を吸引して体腔外に移送する吸引手段と、前記供給手段および吸引手段の駆動を制御して、液体を灌流させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
 本発明によれば、体腔に供給される液体が、体壁接触型水槽に一時的に貯留され、体腔内に流入する液体の流れが安定して一定方向となる。その結果として、体腔内での液体の撹拌が効果的に防止される。
本発明の実施形態である体腔内液体灌流システムの概略構成図である。 体腔内液体灌流システムの構成ブロック図である。 水槽の斜視図である。 水槽の断面斜視図である。 連結機構の一例を示す図である。 連結機構の他の一例を示す図である。 連結機構の他の一例を示す図である。 送液ノズルの配置態様を示す図である。
 以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である体腔内液体灌流システム10の概略構成図である。また、図2は、体腔内液体灌流システム10のブロック図である。また、図3Aおよび図3Bは、体壁接触型水槽(以下、単に「水槽」と呼ぶ)12の斜視図および断面図である。
 はじめに、体腔内液体灌流システム10が使用される内視鏡手術について簡単に説明する。内視鏡手術を行う際には、図1に示すように、体壁120に形成された小さい切開創から内視鏡100や鉗子102、電気メスなどの手術器具を体腔内に挿入し、この内視鏡100や鉗子102等を用いて臓器等の手術対象部位を手術したり観察したりする。このとき、切開創をほぼ円形に安定して開口させ、かつ、切開創に加わる力を均一にするために、切開創には、開創器110が装着される。開創器110は、シリコーンゴムなどの比較的弾性に富んだ材質からなる。開創器110は、略円筒形部材で、その上下端に外側に張り出す鍔部が形成されており、この上下に形成された鍔部で体壁120を挟み込むようにして切開創に装着される。
 手術中、体腔内には等張液等の液体が充填される。このように液体を充填することにより、手術を行うために十分な空間が確保できる。また、液体を充填することにより、臓器などの手術対象部位に浮力が作用するため、比較的小さい力で手術対象部位を取り扱うことができる。そのため、鉗子102等の手術器具として、剛性は乏しいものの、小径で微細な作業に適したものを使用することができる。また、術中、超音波診断が必要な場合もある。超音波診断を好適に行うためには、超音波プローブと観察対象部位との間の空気が存在しないことが必要である。そのため、従来の内視鏡手術では、超音波プローブの位置は、空気を避けられるような特定の位置に制限されがちであった。一方、体腔内を液体で充填した場合には、観察対象部位の周辺の空気が自動的に排除されるため、超音波プローブの位置に関する自由度を大幅に向上できる。
 体腔内液体灌流システム10は、かかる内視鏡手術において、体腔内に液体を灌流させるシステムである。本実施形態の体腔内液体灌流システム10は、体壁120に接触して設置される水槽12、当該水槽12内に液体を供給する供給機構、体腔内の液体を吸引する吸引機構、および、供給・吸引機構の駆動を制御するコントローラ14を備えている。
 供給機構は、貯留タンク16に貯留された等張液等の液体を、供給配管20を介して、水槽12内に供給する機構である。供給配管20の先端には、送液ノズル22が取り付けられており、この送液ノズル22は水槽12に取り付けられている。供給機構に設けられた供給用ポンプ18は、コントローラ14により駆動制御される。吸引機構は、体腔内に貯留された液体を、吸引して、吸引配管30を介してフィルタ31に移送したうえで、当該フィルタ31で等張液などの液体と血液等の廃棄成分とに分離する機構である。分離して得られた等張液などの液体は貯留タンク16または供給配管20に移送され、血液等の廃棄成分は、廃液タンク26に移送される。吸引配管30の先端に設けられた吸引口32は、体腔内に挿入される。吸引機構に設けられた吸引用ポンプ28も、コントローラ14により駆動制御される。コントローラ14は、ユーザからの指示に応じて、供給用ポンプ18および吸引用ポンプ28の駆動を制御することで、体腔内において液体を還流させる。
 水槽12は、体壁120の上に設置され、液体が貯留される容器である。この水槽12の本体部40は、図3A、図3Bに示すように、上方に近づくにつれ大径になる略円錐台形で、その天面は完全開口されている。水槽12の底面の中央には、円形の貫通孔42が形成されている。体壁120に設置された本体部40は、この貫通孔42および切開創を介して体腔内に連通される。そして、この貫通孔42および切開創を介して、本体部40に貯留された液体が体腔内に流入するようになっている。この貫通孔42の大きさは特に限定されないが、切開創よりも大きいことが望ましい。なお、切開創の大きさは、手術の内容によって変更すればよい。例えば、内視鏡100や鉗子102、電気メス等を用いて体腔内で手術する場合には、切開創は、比較的小さくてもよく、例えば、直径20mm程度でもよい。また、体腔内の臓器を水槽12の内部に手で牽引し、水槽12の内部(すなわち体腔の外部)で手術する場合、切開創は、手が入る程度の径、例えば、直径70mm程度にすることが望ましく、貫通孔42の径も70mm以上とすることが望ましい。
 本体部40の底面の外周縁からは、外側方向に張り出す略円形の鍔部44が形成されている。この鍔部44は、体壁120表面の形状に追従するべく、適度な柔軟性を有していることが望ましい。
 かかる水槽12は、本体部40を、体壁120および開創器110の少なくとも一方に液密に連結する連結機構を有している。この連結機構の構成としては、種々考えられる。例えば、本体部40の底面に、耐水性に優れた医療用粘着剤を塗布することで形成される粘着面を、連結機構として用いてもよい。この場合、図1に示すように、本体部40の底面(粘着面)を、体壁120表面に密着し、粘着させることで、本体部40と体壁120が液密に連結される。
 また、上記構成に替えて、または、上記構成に加えて、図4に示すように、サージカルドレープ46を鍔部44を介して本体部40に取り付けておき、当該サージカルドレープ46を連結機構の一部として用いてもよい。サージカルドレープ46は、手術の際、手術部位周辺を被覆するシート材で、防水性を有し、その片面には耐水性に優れた医療用粘着剤が設けられている。かかるサージカルドレープ46を鍔部44の全周囲から外側に広がるように固着する。そして、水槽12を用いる場合は、当該サージカルドレープを、体壁120の表面に密着させ、粘着させればよい。かかる構成とすることで、本体部40と体壁120の表面とが液密に連結され、本体部40から漏れた液体が外部に漏れることが防止される。
 また、上記構成に替えて、または、上記構成に加えて、本体部40の底面を開創器110に液密に連結する構成を、連結機構の一部として用いてもよい。例えば、図5に示すように、貫通孔42の内径を、開創器110の鍔部の外径より小径に構成し、使用時には、本体部40の底面を、開創器110の鍔部と体壁120の表面との間に潜り込ませることで、本体部40を開創器110に液密に連結する構成としてもよい。また、別の形態として、図6に示すように、貫通孔42の内周面に、開創器110の鍔部周縁を挟み込むような溝48を形成し、使用時には、当該溝48内に、開創器110の鍔部周縁を挿入することで、本体部40を開創器110に液密に連結する構成としてもよい。さらに別の形態として、水槽12の本体部40と開創器110とを、一体化していてもよい。換言すれば、水槽12自体に開創器110としての機能を持たせてもよい。
 また、水槽12自体に連結機構を設けるのではなく、水槽12とは別の部材を用いて、水槽12を、体壁120または開創器110に液密に連結してもよい。例えば、医療用粘着テープであるサージカルテープを用いて、鍔部44を体壁120に貼り付け、これにより、液漏れを防止してもよい。
 次に、以上のような構成の体腔内液体灌流システム10の使用する際の流れについて説明する。体腔内液体灌流システム10は、上述した通り、内視鏡手術の際に用いられる。体腔内液体灌流システム10を用いる場合は、まず、水槽12の貫通孔42と切開創とが対向し、水槽12と体腔内が連通する位置に水槽12を設置する。この際、水槽12の液体が外部に漏出しないように、水槽12本体部40を、体壁120および開創器110の少なくとも一方に液密に連結しておく。
 水槽12本体部40がセットできれば、続いて、供給用ポンプ18を駆動し、液体を水槽12内に供給する。水槽12内に供給された液体は、当該水槽12から貫通孔42、切開創を経て、体腔内へと流入していく。そして、体腔内が液体で満たされると、体腔内に入りきらなかった液体は、水槽12内に満ちていき、水槽12内の水位が上昇していく。
 水槽12内の液体が規定の水位に到達すれば、続いて、吸引用ポンプ28も駆動し、体腔内の液体を吸引する。ここでの吸引流量は、供給流量とほぼ同じとする。これにより、水槽12内の水位はほぼ一定に保たれたまま、体腔内に、順次、新しい液体が供給されることになる。この状態になれば、術者は、内視鏡100や鉗子102等の手術器具を、貫通孔42および切開創を通過させて、体腔内に挿入し、手術対象部位の観察や手術を行う。
 ここで、液体は、水槽12内で貯留された後、貫通孔42および切開創を介して、体腔内に供給されることになる。換言すれば、送液ノズル22から吐出された液体は、体腔内に到達するまでに、一定時間、水槽12内に滞留することになる。この滞留の間に、液体に含まれる気泡が除去される。その結果、体腔内には、気泡の少ない液体が供給されることになり、気泡による視認性の低下や、気泡に起因する超音波診断の精度劣化(エコーの透過性低下)などが防止できる。
 また、送液ノズル22から水槽12に吐出された直後の液体は、比較的、速く乱れた乱流となっており、液体を撹拌する水流エネルギーが大きい。しかし、この水流エネルギーは、水槽12内に滞留されている間に、徐々に減弱していくため、体腔内に到達する液体は、撹拌する水流エネルギーが小さい、層流(または層流に近い流れ)となる。そして、層流として体腔内に供給された液体は吸引用ポンプ28の吸引力により、吸引口32へと引き寄せられていく。つまり、本実施形態によれば、体腔内には、液体が撹拌されることなく、吸引口32に向かう一定の流れが生じる。そして、このような一定の流れを作ることにより、液体の濁り、ひいては、術野の視認性低下を効果的に防止できる。
 すなわち、手術の際には、出血により血液が液体に流れ出ることがある。このとき、液体を撹拌する水流エネルギーが大きいと、血液は、短時間のうちに、体腔内全体に拡散し、液体全体が濁る。かかる液体の濁りは、術野の視認性を低下させ、手術の効率を大幅に悪化させる。一方、本実施形態のように、体腔内において、吸引口32に向かう一定の流れを生じさせると、液中に漏出した血液は、撹拌されることなく、吸引口32で吸引される。その結果、濁りによる視認性低下が効果的に防止される。特に、多量出血が生じるような場合、本実施形態によれば、出血点を視認し続けることが可能となるため、手術の安全性をより向上できる。
 次に、上述した灌流をより効率的に行うために望ましい、各部の構成について説明する。はじめに吸引機構の構成について詳説する。吸引機構に設けられた吸引口32は、切開創から当該手術対象部位を挟んで、反対側に位置させることが望ましい。すなわち、図1で言えば、吸引口32は、位置A付近に配置されることが望ましい。これは、出血が生じた場合でも、血液が切開創とは反対側の手術対象部位から遠ざかる方向に一定に流れて、術野の視認性低下を効果的に防止できるからである。また、手術対象部位が、切開創の真下に位置している場合であっても、吸引口32は、体腔内の奥に配置することが望ましい。吸引口32を奥側に位置させることで、加温された液体を体腔の奥(隅)まで行き渡らせることができるからである。
 また、吸引配管30および吸引用ポンプ28は、図1、図2では、一つしか図示していないが、より多数設けられてもよい。例えば、通常の出血に対応するための吸引配管30および吸引用ポンプ28とは別に、多量出血時にのみ駆動させる緊急用の吸引配管30および吸引用ポンプ28を設けてもよい。この場合、緊急用の吸引配管30の吸引口32は、手術対象部位の近傍に設置されることが望ましい。
 また、供給機構に設けられる送液ノズル22は、図7に示すように、その先端が斜め下方向に向き、かつ、水槽12の本体部40の内面に沿うように配置することが望ましい。送液ノズル22をかかる配置とし、液体を水槽12本体部40の内面に沿わせて送液することで、水槽12内に回転した流れ、いわゆる、旋回流が発生する。この旋回流により、血液等で濁った液体が、体腔内から水槽12側に逆流することが防止される。なお、送液ノズル22を簡易に適切な位置・姿勢に設置するために、水槽12に、当該送液ノズル22の取り付け機構(送液ノズル22のホルダ)、あるいは、送液ノズル22そのものを設けることが望ましい。水槽12に送液ノズル22を固着した場合には、当該送液ノズル22に、供給配管20の先端部が簡易に着脱できるコネクタ23も連結させておくことが望ましい。
 術中における液体の供給・吸引の流量は、出血しても好適な視野が保てるのであれば、特に限定されない。また、この液体の供給・吸引の流量は、一定である必要はなく、出血の量に応じて変動させてもよい。例えば、出血が生じていない場合は、供給・吸引の流量を小さくしたり、場合によっては、供給・吸引を完全に停止したりしてもよい。一方、出血が生じた場合には、比較的、大きい流量、例えば、1600ml/min~2500ml/minにしてもよい。液体の供給・吸引の流量の値は、術者が目視で液体の濁り(出血の有無)を確認して決定してもよい。また、別の形態として、液体の濁りを検知する濁度センサを設け、コントローラ14が、当該濁度センサの検出値に応じて、各ポンプの駆動(供給・吸引の流量の値)を自動制御するようにしてもよい。
 また、供給・吸引の流量を大きくした場合、水槽12内の水位に大きな変動が生じる。そして、結果として、水槽12内から液体があふれ出たり、液体が不足して体腔内の臓器が外気に晒されたりする恐れがある。そこで、水槽12の壁面に、水位の上限値および下限値を示す目盛を設けてもよい。かかる目盛を設けることで、ユーザは、現在の水位が適正であるか否かを一目で判断することができ、水位が不足している場合は、供給流量を増加(または吸引流量を減少)させ、水位が高い場合は供給量を減少(または吸引流量を増加)させればよい。また、別の形態として、水槽12内に水位計を設け、コントローラ14が、当該水位計で検出された検出値(水位)に応じて、各ポンプの駆動を自動制御するようにしてもよい。
 次に水槽12の望ましい形状・サイズについて説明する。上述の説明では、水槽12の本体部40を略円錐台形状としたが、少なくとも底面に貫通孔42が形成されるのであれば、他の形状、例えば、直方形などに変更されてもよい。ただし、上述した旋回流を形成するためには、本体部40は、断面略円形の形状、例えば、円錐台形や円筒形であることが望ましい。
 水槽12のサイズは、手術の内容(予想される出血量)や患者の体格、供給・吸引ポンプの能力などに応じて設定されることが望ましい。より具体的に説明すると、出願人の実験によれば、出血が生じた場合に素早く視野を回復させるためには、液体の供給・吸引の流量を1600ml以上、2500ml/min以下の範囲に収めることが望ましいことが分かった(ただし、当然のことながら、手術の内容、予想される出血量によっては、この値は大きく変動する)。また、水槽12に供給された液体を、層流として体腔内に供給するためには、ある程度の時間(例えば12secなど)、液体を水槽12内に留める必要がある。この層流にするために必要な滞留時間をT(sec)、液体の供給・吸引流量をV(ml/min)とした場合、水槽12には、少なくとも、X=T*V/60(ml)の液体が貯留されることが望まれる。水槽12の容量は、この液量Xを安全に貯留できる容量、すなわち、水槽12を多少傾けても液体がこぼれない程度の容量とすることが望ましく、例えば、水槽12の容量は、1.3・X~1.6・X程度にすることが望ましい。
 具体例を挙げて説明すると、例えば、液体の供給・吸引の流量が2500ml/min、層流にするために必要な滞留時間が12secであった場合、水槽12に貯留されるべき液量Xは、500mlとなる。そして、500mlの液体をこぼすことなく貯留するためには、水槽12は、650~800ml程度の容量とすることが望ましい。
 また、水槽12の断面積は、水槽12に貯留される液量X(体積)、および、水槽12内で必要とされる水位に基づいて決定することが望ましい。水槽12内で必要とされる水位は、水槽12内での作業性や、臓器に与える負荷量などに基づいて決定すればよい。すなわち、手術の内容によっては、体腔内の臓器を、水槽12内まで取り出して手術することもある。この場合において、臓器を外気にさらさないためには、水槽12内の水位は、少なくとも取り出す臓器の厚み以上であることが望ましい。また、体腔内における患者の臓器に与える水圧は、水槽12本体部40に貯留される液体の水位によって決まるが、臓器への負担を軽減するためには、水圧は、極力小さい、ひいては、水位は極力小さいことが望ましい。以上のような各種条件を考慮して、水槽12内で必要とされる水位を決定し、当該水位と、貯留されるべき液量Xの値に応じて、水槽12の断面積を決定することが望ましい。
 また、水槽12の材質は、水圧に耐えられる材質であれば、特に限定されないが、体壁120の表面に応じて形状変化できる適度な弾性を有していることが望ましい。また、より望ましくは、水槽12は、超音波診断を阻害しない材質であることが望ましい。超音波診断を阻害しない材質とは、すなわち、超音波の透過性が高い材質であり、音響インピーダンスが液体に近い材質、例えば、シリコーンなどである。また、水槽12は、液体を貯留した場合に、自立できる程度の強度を有することが望ましいが、何らかの補助部材を用いて水槽12を支持するようにしてもよい。例えば、水槽12が自立困難な場合は、水槽12の本体部40の上端を関節アーム機構などで吊り上げ保持して、当該水槽12の転倒を防止してもよい。
 なお、図1は、腹腔手術を想定した図となっているが、本実施形態の体腔内液体灌流システムは、関節や目の治療、産婦人科、泌尿器科の分野にも適用してもよい。水槽の形状・サイズは、この手術対象部位の特性に応じて、柔軟に変更されてもよい。
 10 体腔内液体灌流システム、12 体壁接触型水槽、14 コントローラ、16 貯留タンク、18 供給用ポンプ、20 供給配管、22 送液ノズル、23 コネクタ、26 廃液タンク、28 吸引用ポンプ、30 吸引配管、31 フィルタ、32 吸引口、40 本体部、42 貫通孔、44 鍔部、46 サージカルドレープ、48 溝、100 内視鏡、102 鉗子、110 開創器、120 体壁。

Claims (7)

  1.  体壁に接触させて設置され、体腔内に供給される液体が貯留される水槽本体と、
     前記水槽本体の底部に形成された貫通孔であって、前記体壁に形成された切開創を介して前記水槽本体内に貯留された液体を体腔内に流入させる貫通孔と、
     前記水槽本体を、前記体壁および前記切開創に取り付けられた開創器の少なくとも一方に、液密に連結する連結手段と、
     を備えることを特徴とする体壁接触型水槽。
  2.  請求項1に記載の体壁接触型水槽であって、
     前記連結手段は、前記水槽本体の底部と前記開創器とを液密に連結する連結機構を含む、ことを特徴とする体壁接触型水槽。
  3.  請求項1に記載の体壁接触型水槽であって、
     前記連結手段は、前記水槽本体の底部に連結されるとともに、前記体壁に液密に接着する接着面を含む、ことを特徴とする体壁接触型水槽。
  4.  請求項1に記載の体壁接触型水槽であって、
     前記水槽本体に液体を吐出する送液ノズル、または、前記送液ノズルが着脱自在に取り付けられる取り付け機構が、前記水槽本体に固定設置されている、ことを特徴とする体壁接触型水槽。
  5.  請求項4に記載の体壁接触型水槽であって、
     前記水槽本体に固定設置された送液ノズルまたは前記取り付け機構は、前記送液ノズルから吐出された液体が前記水槽本体の内面に沿って斜め下方向に流れる位置および姿勢に設定されている、ことを特徴とする体壁接触型水槽。
  6.  請求項1に記載の体壁接触型水槽であって、
     前記水槽本体は、超音波の透過性が高い材料からなる、ことを特徴とする体壁接触型水槽。
  7.  液体が貯留されるとともに体壁に接触して設置される水槽本体と、
     前記水槽本体の底部に形成されるとともに前記体壁に形成された切開創を介して前記水槽本体内に貯留された液体を体腔内に流入させる貫通孔と、を備えた体壁接触型水槽と、
     前記体壁接触型水槽内に液体を供給する供給手段と、
     前記体腔内において、供給された液体を吸引して体腔外に移送する吸引手段と、
     前記供給手段および吸引手段の駆動を制御して、液体を灌流させる制御手段と、
     を備えることを特徴とする体腔内液体灌流システム。
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