JP3961304B2 - 灌流吸引装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、手術部位に灌流液を供給し、これを除去組織とともに吸引する灌流吸引装置に関する。
【０００２】
【従来技術】
患部に灌流液を注入し、これを更に患部の除去組織と共に吸引除去する灌流吸引装置が知られている。特に眼科分野においては、白内障手術や硝子体手術等でこの灌流吸引装置が使用される。白内障手術では、装置は患者眼に供給された灌流液とともに、吸引孔を持つチップが先端に取り付けられたハンドピースにより除去組織を吸引し、吸引チューブの他端から廃液を排出する。
【０００３】
ところで、この種の装置では手術中の吸引圧を制御する機構が不可欠で、このため吸引チューブの途中には吸引圧検出系と接続部を設け、この接続部を通して圧力センサにより吸引圧を制御しているものがよく知られている。しかし、圧力センサは吸引チューブ内の圧力を直接検出するので、患者眼より吸引した除去組織が吸引圧センサ部に侵入することがある。吸引圧検出系に廃液が侵入すると、その部分に雑菌が繁殖し、チューブ内に逆流して術中の院内感染の可能性が皆無とは言えない。この対策として、圧力センサと吸引チューブの接続部に使い捨てのフィルタ等を装着して、雑菌及び体内組織の移動を防ぐ方法が採られていた。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、接続部にフィルタ等を装着する方法は、フィルタの抵抗及びフィルタに付着した組織等の目詰まりにより、吸引圧を正確に検出することが難しい。
また、吸引チューブを装置から取り外す際、患者眼より吸引した組織や液が装置との接続部より流出し、装置及びその周辺を汚すおそれもあった。
【０００５】
本発明は上記問題点を鑑み、吸引圧検出系への吸引液の侵入を防止しつつ精度良く吸引圧を検出できる灌流吸引装置を提供することを技術課題とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
（１） 手術部位に灌流液を供給し、これを吸引して体外に排出する吸引路を持つ灌流吸引装置において、前記吸引路に連通し液体が満たされる液体室を持つ変形可能な細長い袋状の隔膜と、該隔膜を取り囲むように収容する気体室と、該気体室に接続部を介して接続される圧力検出手段と、前記吸引路に加わる圧力変動に応じて前記隔膜の細長の側壁側が変形するように，その変形を定常化するガイド手段であって，前記隔膜又はその内側に設けられたガイド手段と、備えることを特徴とする。
（２） 手術部位に灌流液を供給し、これを吸引して体外に排出する吸引路を持つ灌流吸引装置において、前記吸引路に連通し液体が満たされる液体室を持つ変形可能な細長い袋状の隔膜と、該隔膜を取り囲むように収容する気体室と、該気体室に接続部を介して接続される圧力検出手段と、前記隔膜の外壁回りに形成された凸部であって，前記圧力検出手段に連通する前記気体室の連通口に対応する位置に形成された凸部と、を備えることを特徴とする。
【０００７】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図１は実施形態である灌流吸引装置の外観略図、図２は主要部の概略構成図である。
１は灌流吸引装置の装置本体であり、２は術者に把持されるＵＳハンドピースである。ＵＳハンドピース２の先端には、吸引孔を持つ管状の破砕用チップ２ａが取り付けられており、破砕用チップ２ａに超音波振動を与えることにより水晶体の核を破砕乳化する。３は灌流圧や吸引圧等の各種の設定を行うための入力部である操作パネル、４はＵＳハンドピース２の破砕用チップ２ａに超音波振動を生じさせるための電力を供給するケーブルである。本体１には装置全体の制御を行う制御部５が収納されている。
【０００８】
１０は患者眼Ｅに供給するための生理食塩水等の灌流液が入れられた灌流瓶であり、１１は灌流液を患者眼Ｅへ導くための灌流チューブである。灌流瓶１０はポール１２に吊り下げられており、ポール１２は上下動され、灌流瓶１０の高さを変化できるようになっている。灌流瓶１０の高さは患者眼Ｅ内の圧力を適度に維持するように設定される。
【０００９】
灌流チューブ１１の途中には制御弁１４が設けられており、制御弁１４の開閉により灌流液の流出制御が行われる。灌流チューブ１１の一端は灌流瓶１０側に接続され、他端は破砕用のＵＳハンドピース２側に接続される。ＵＳハンドピース２は手術段階や術式等により灌流吸引用ハンドピース等の各種ハンドピースが選択され、繋ぎ換えて使用される。
１６は柔軟性を持つ吸引チューブであり、ＵＳハンドピース２に取り付けられた破砕用チップ２ａの吸引孔から吸引される灌流液とともに破砕乳化した白内障核等の組織を体外に排出するために使用される。吸引チューブ１６の後方の途中には、吸引圧を発生するための蠕動型の吸引ポンプ２０が設けられている。吸引ポンプ２０は制御部５により制御され、その吸引流量が調整される。吸引された廃液は廃液袋１７に排出投入される。
【００１０】
吸引チューブ１６の途中には分岐したチューブ１９が接続されており、チューブ１９の他端にはその詳細を後述する圧力変換ユニット３０が接続されている。
圧力変換ユニット３０は、装置本体１側に設けられた圧力検出系を構成する圧力センサ３５と接続部３７を介して着脱自在に接続されている。
また、灌流瓶１０から制御弁１４に至る灌流チューブ１１の途中からチューブ１５が分岐されている。このチューブ１５も圧力変換ユニット３０側に接続されており、チューブ１５の途中にはベント弁１８が設けられている。
６はフットスイッチであり、そのポジション位置の信号に対応して制御部５は装置を駆動制御する。例えば、ＵＳハンドピース２を使用する際には、灌流のみを行う灌流モード、灌流及び吸引を行う灌流／吸引モード、灌流、吸引及び超音波破砕を行う灌流／吸引／破砕モードの３つのポジション位置がある。
【００１１】
次に、圧力変換ユニット３０の構成を図３、図４に基づいて説明する。圧力変換ユニット３０は、細長い袋状の形状をした隔膜４０と、この隔膜４０を収容するチャンバ３１ａを持つ下部ケース３１と、この下部ケース３１に収容された隔膜４０に蓋をする上部ケース３２を備える。上部ケース３２には、チューブ１５に接続される経路３３ａとチューブ１９に接続される経路３３ｂが形成されている。経路３３ａ及び３３ｂの口は、隔膜４０により形成される液体室４１に連通している。
【００１２】
実施形態の隔膜４０は先が丸くなった円筒形状をしており、その開放部には密閉性を確保するためのフランジ４０ａが形成されている。隔膜４０は柔軟性を持つシリコンの材質からなり、その側壁の膜厚は０．１〜０．２ｍｍであり、内圧に応じて容易に変形可能とされている。また、隔膜４０の内側の側壁には厚みを持つリブ（凸部）４０ｂが、フランジ４０ａから丸みを持つ先端に延びるように形成されている。隔膜４０は、下部ケース３１のチャンバ３１ａに収められた状態で、フランジ４０ａが上部ケース３２によって押さえられて密閉性が保たれるように固定される。
また、隔膜４０の外壁回りには円筒部の円周方向に延びる小リブ（凸部）４０ｃが形成されている。下部ケース３１にはチャンバ３１ａと圧力センサ３６側に連通する気体路３１ｂが設けられており、リブ４０ｃは下部ケース３１のチャンバ３１ａに収められた状態で気体路３１ｂの口に来るようにな位置に設けられている。
【００１３】
下部ケース３１のチャンバ３１ａに繋がる気体路３１ｂは、下部ケース３１に形成された取付部３１ｃを本体１側に固定された接続部３７に接続することにより、接続部３７に形成された気体路３７ａと接続される。気体路３７ａの先は圧力センサ３６が取付けられている。圧力センサ３６は、チャンバ３１ａから気体路３７ａに至る経路の気体圧を検出することにより、隔膜４０内で変動する液体圧力、すなわち吸引圧を検出する。また、気体路３７ａの途中で分岐された気体路は電磁弁３５に接続されており、電磁弁３５の開閉により空気の排出と密閉が行われる。
なお、下部ケース３１にはチューブ１９を吸引チューブ１６の途中に連結する分岐路３４が形成されている。
【００１４】
以上のような構成を備える装置において、その動作を以下に説明する。手術に際し、灌流瓶１０の位置、ＵＳハンドピース２や吸引ポンプ２０への各チューブ類の取り付けやその他必要な準備を行う。また、チューブの途中に接続された下部ケース３１の取付部３１ｃを接続部３７に差込んで取付ける。チューブ類の取付けが完了したら、チューブ内に灌流液を充填させる。灌流液を充填させるには、まず、ＵＳハンドピース２の先端に灌流液が洩れない様にキャップをし、入力部３でテストスイッチを押す。テストスイッチが押されると、制御部５は、ベント弁１８を締め、制御弁１４を開け、吸引ポンプ２０を回転させる。これにより、ＵＳハンドピース２の吸引路と吸引チューブ１６内の空気が排出され、その内部に灌流液が充填される。
【００１５】
吸引チューブ１６内に灌流液が満たされたら（これは圧力センサ３６の出力信号から検知される）、制御部５は制御弁１４を締めると共に、ベント弁１８を開ける。これにより、灌流瓶１０からの灌流液が圧力変換ユニット３０に導かれ、隔膜４０の液体室４１、チューブ１９内の空気が排出され、灌流液が充填される。この時、制御部５は電磁弁３５を開け、チャンバ３１ａから気体路３７ａに至る空間内の空気を大気圧にする。ＵＳハンドピース２、各チューブ及び隔膜４０内に灌流液が充填されると、吸引ポンプ２０を停止し、制御弁１４、ベント弁１８、電磁弁３５を締める。
【００１６】
装置側の必要なセッティングができたら、術者はＵＳハンドピース２のチップ２ａを眼内に差込み、フットスイッチ６の踏み込みにより、灌流液の供給動作、吸引動作及び超音波振動の動作をコントロールしながら超音波乳化吸引法による手術を行う。制御部５は、フットスイッチ６からの吸引用の信号が入力されると、吸引ポンプ２０を駆動する。吸引ポンプ２０により発生された吸引圧は吸引チューブ１６を介してＵＳハンドピース２に至り、破砕用チップ２ａの吸引孔から眼内の廃液が吸引される。
【００１７】
吸引チューブ１６内に発生する吸引圧は、圧力変換ユニット３０によって気体圧に変換され、これが圧力センサ３６により検出される。吸引ポンプ２０を回転させて吸引圧が上がると、隔膜４０内部の灌流液がチューブ１９を通り吸引される。更にＵＳハンドピース２のチップ２ａの閉塞等により吸引圧が上がると、図５に示す様に、隔膜４０がしぼむ。このとき、隔膜４０の内面側に設けられた厚みのあるリブ４０ｂは変形せず、薄膜の側壁のみが変形するようにしぼむ。リブ４０ｂは、隔膜４０内に負圧が加わったときに、薄膜の側壁側が変形するようにその変形の定常化をガイドする役目を果たす。このリブ４０ｂにより、隔膜４０が全体的にねじれて変形することなく、隔膜４０内の負圧が減少したときに元の形状に復帰するようになる。また、このリブ４０ｂは、変形が進んでいく過程で内面の密着により隔膜４０の先端側（図中では下部）に空気が残る途中閉塞を防止する役目も果たす。隔膜４０がしぼむことにより、チャンバ３１ａから気体路３７ａに至る空間の気体圧が負圧になるので、気体路３７ａに繋がる圧力センサ３６で吸引圧が検出できる。
【００１８】
また、リブ４０ｃを隔膜４０の外周に設けたことにより、図６に示す様に、隔膜４０の外壁面がチャンバ３１ａの内壁面にほぼ接するように収容された状態であっても、チャンバ３１ａの内壁面と隔膜４０の外壁面との間に幾分かの隙間（圧力センサ３６に連通する気体経路の空間）が確保される。これにより、隔膜４０の側壁が偏って変形することがなくなる。さらに、吸引チューブ１６に正圧が加わった場合には、この幾分かの隙間がつぶされるように隔膜４０の側壁が変形でき、チャンバ３１ａと連通する空間の圧力が上昇するので、正圧側への圧力変動も検知できる。ベント弁１８を開けると、灌流液がチューブ１５、隔膜４０、チューブ１９を経て吸引チューブ１６側に導かれるので、吸引圧を基準状態（０mmHg：吸引していない状態）に戻すことができる。吸引状態からベント弁１８を開けて吸引圧を基準状態に戻したい場合、正圧側への圧力変動を知ることによってベント弁１８の開閉を制御し、より短時間に吸引圧を定常状態に安定させることが可能となる。
【００１９】
手術の終了後は、圧力変換ユニット３０を接続部３７から取外すことにより、手術に使用したチューブ類を装置本体から容易に分離できる。また、チューブ内を流れる吸引液は、隔膜４０により装置本体側の圧力センサ３６等の圧力検出系とは隔離されいるので、装置側への吸引液の侵入を防止しつつ、常に精度良く吸引圧を検出することができる。吸引液の漏れがないので、これによる医療従事者への感染の心配も無い。また、隔膜４０を前述のような形状としたことにより、圧力変動による変形を大きく確保することができ、コンパクトながら圧力検出のレンジを広くすることができる。
【００２０】
以上説明した構成において、隔膜４０の変形をガイドするリブ４０ｂの形状や数については、上記に限られるものではない。例えば、図７に示すように隔膜４２のリブ４２ｂを片側一つにしても良い。また、図８に示すように、隔膜４３のリブ４３ｂを隔膜４３の底（尖端側）の部分は省く形状にしても良い。また、図８における２つのリブ４３ｂの先端どうしが繋がっている形状であってもよい。さらに、その繋がりあったリブの側面に少なくとも１つの穴が開いていても良い。
【００２１】
また、これらリブ４０ｂ等に代えて、隔膜の側壁を部分的に硬くした構成や、針金等の硬度のある部材をモールドした構成とすることもできる。さらには、これらリブを隔膜と一体的に形成する代わりに、上部ケース３２に隔膜のリブと同じような形状の凸部を設けても良い。この場合は柔軟な隔膜をその凸部に被せるように配置する。
また、チャンバ３１ａの内壁面と隔膜４０の外壁面との間に気体経路の空間を確保する構造としては、隔膜４０に形成したリブ４０ｃの代わりに、チャンバ３１ａの内壁面側に気体路３１ｂと繋がる溝を隔膜４０の周回りに設けたものでも良い。
【００２２】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、装置側への廃液の侵入を防止しつつ精度良く吸引圧を検出できる。また、吸引圧検出系に対するチューブ類の着脱も容易に行え、その取り外し時も吸引した液が漏れる心配がない。
【図面の簡単な説明】
【図１】灌流吸引装置の外観略図である。
【図２】灌流吸引装置の主要部の概略構成図である。
【図３】灌流吸引装置の圧力検出部の構成を示す断面図である。
【図４】隔膜及びチャンバの構成を示す図である。
【図５】隔膜及びチャンバの断面図である。
【図６】隔膜及びチャンバの断面図である。
【図７】隔膜の変容例を示す図である。
【図８】隔膜の変容例をを示す図である。
【符号の説明】
１ 装置本体
１１ 灌流チューブ
１６ 吸引チューブ
２０ 吸引ポンプ
３１ 下部ケース
３２ 上部ケース
３６ 圧力センサ
３７ 接続部
３７ａ 気体路
４０ 隔膜
４０ｂ リブ
４０ｃ リブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、手術部位に灌流液を供給し、これを除去組織とともに吸引する灌流吸引装置に関する。
【０００２】
【従来技術】
患部に灌流液を注入し、これを更に患部の除去組織と共に吸引除去する灌流吸引装置が知られている。特に眼科分野においては、白内障手術や硝子体手術等でこの灌流吸引装置が使用される。白内障手術では、装置は患者眼に供給された灌流液とともに、吸引孔を持つチップが先端に取り付けられたハンドピースにより除去組織を吸引し、吸引チューブの他端から廃液を排出する。
【０００３】
ところで、この種の装置では手術中の吸引圧を制御する機構が不可欠で、このため吸引チューブの途中には吸引圧検出系と接続部を設け、この接続部を通して圧力センサにより吸引圧を制御しているものがよく知られている。しかし、圧力センサは吸引チューブ内の圧力を直接検出するので、患者眼より吸引した除去組織が吸引圧センサ部に侵入することがある。吸引圧検出系に廃液が侵入すると、その部分に雑菌が繁殖し、チューブ内に逆流して術中の院内感染の可能性が皆無とは言えない。この対策として、圧力センサと吸引チューブの接続部に使い捨てのフィルタ等を装着して、雑菌及び体内組織の移動を防ぐ方法が採られていた。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、接続部にフィルタ等を装着する方法は、フィルタの抵抗及びフィルタに付着した組織等の目詰まりにより、吸引圧を正確に検出することが難しい。
また、吸引チューブを装置から取り外す際、患者眼より吸引した組織や液が装置との接続部より流出し、装置及びその周辺を汚すおそれもあった。
【０００５】
本発明は上記問題点を鑑み、吸引圧検出系への吸引液の侵入を防止しつつ精度良く吸引圧を検出できる灌流吸引装置を提供することを技術課題とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
（１） 手術部位に灌流液を供給し、これを吸引して体外に排出する吸引路を持つ灌流吸引装置において、前記吸引路に連通し液体が満たされる液体室を持つ変形可能な細長い袋状の隔膜と、該隔膜を取り囲むように収容する気体室と、該気体室に接続部を介して接続される圧力検出手段と、前記吸引路に加わる圧力変動に応じて前記隔膜の細長の側壁側が変形するように，その変形を定常化するガイド手段であって，前記隔膜又はその内側に設けられたガイド手段と、備えることを特徴とする。
（２） 手術部位に灌流液を供給し、これを吸引して体外に排出する吸引路を持つ灌流吸引装置において、前記吸引路に連通し液体が満たされる液体室を持つ変形可能な細長い袋状の隔膜と、該隔膜を取り囲むように収容する気体室と、該気体室に接続部を介して接続される圧力検出手段と、前記隔膜の外壁回りに形成された凸部であって，前記圧力検出手段に連通する前記気体室の連通口に対応する位置に形成された凸部と、を備えることを特徴とする。
【０００７】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図１は実施形態である灌流吸引装置の外観略図、図２は主要部の概略構成図である。
１は灌流吸引装置の装置本体であり、２は術者に把持されるＵＳハンドピースである。ＵＳハンドピース２の先端には、吸引孔を持つ管状の破砕用チップ２ａが取り付けられており、破砕用チップ２ａに超音波振動を与えることにより水晶体の核を破砕乳化する。３は灌流圧や吸引圧等の各種の設定を行うための入力部である操作パネル、４はＵＳハンドピース２の破砕用チップ２ａに超音波振動を生じさせるための電力を供給するケーブルである。本体１には装置全体の制御を行う制御部５が収納されている。
【０００８】
１０は患者眼Ｅに供給するための生理食塩水等の灌流液が入れられた灌流瓶であり、１１は灌流液を患者眼Ｅへ導くための灌流チューブである。灌流瓶１０はポール１２に吊り下げられており、ポール１２は上下動され、灌流瓶１０の高さを変化できるようになっている。灌流瓶１０の高さは患者眼Ｅ内の圧力を適度に維持するように設定される。
【０００９】
灌流チューブ１１の途中には制御弁１４が設けられており、制御弁１４の開閉により灌流液の流出制御が行われる。灌流チューブ１１の一端は灌流瓶１０側に接続され、他端は破砕用のＵＳハンドピース２側に接続される。ＵＳハンドピース２は手術段階や術式等により灌流吸引用ハンドピース等の各種ハンドピースが選択され、繋ぎ換えて使用される。
１６は柔軟性を持つ吸引チューブであり、ＵＳハンドピース２に取り付けられた破砕用チップ２ａの吸引孔から吸引される灌流液とともに破砕乳化した白内障核等の組織を体外に排出するために使用される。吸引チューブ１６の後方の途中には、吸引圧を発生するための蠕動型の吸引ポンプ２０が設けられている。吸引ポンプ２０は制御部５により制御され、その吸引流量が調整される。吸引された廃液は廃液袋１７に排出投入される。
【００１０】
吸引チューブ１６の途中には分岐したチューブ１９が接続されており、チューブ１９の他端にはその詳細を後述する圧力変換ユニット３０が接続されている。
圧力変換ユニット３０は、装置本体１側に設けられた圧力検出系を構成する圧力センサ３５と接続部３７を介して着脱自在に接続されている。
また、灌流瓶１０から制御弁１４に至る灌流チューブ１１の途中からチューブ１５が分岐されている。このチューブ１５も圧力変換ユニット３０側に接続されており、チューブ１５の途中にはベント弁１８が設けられている。
６はフットスイッチであり、そのポジション位置の信号に対応して制御部５は装置を駆動制御する。例えば、ＵＳハンドピース２を使用する際には、灌流のみを行う灌流モード、灌流及び吸引を行う灌流／吸引モード、灌流、吸引及び超音波破砕を行う灌流／吸引／破砕モードの３つのポジション位置がある。
【００１１】
次に、圧力変換ユニット３０の構成を図３、図４に基づいて説明する。圧力変換ユニット３０は、細長い袋状の形状をした隔膜４０と、この隔膜４０を収容するチャンバ３１ａを持つ下部ケース３１と、この下部ケース３１に収容された隔膜４０に蓋をする上部ケース３２を備える。上部ケース３２には、チューブ１５に接続される経路３３ａとチューブ１９に接続される経路３３ｂが形成されている。経路３３ａ及び３３ｂの口は、隔膜４０により形成される液体室４１に連通している。
【００１２】
実施形態の隔膜４０は先が丸くなった円筒形状をしており、その開放部には密閉性を確保するためのフランジ４０ａが形成されている。隔膜４０は柔軟性を持つシリコンの材質からなり、その側壁の膜厚は０．１〜０．２ｍｍであり、内圧に応じて容易に変形可能とされている。また、隔膜４０の内側の側壁には厚みを持つリブ（凸部）４０ｂが、フランジ４０ａから丸みを持つ先端に延びるように形成されている。隔膜４０は、下部ケース３１のチャンバ３１ａに収められた状態で、フランジ４０ａが上部ケース３２によって押さえられて密閉性が保たれるように固定される。
また、隔膜４０の外壁回りには円筒部の円周方向に延びる小リブ（凸部）４０ｃが形成されている。下部ケース３１にはチャンバ３１ａと圧力センサ３６側に連通する気体路３１ｂが設けられており、リブ４０ｃは下部ケース３１のチャンバ３１ａに収められた状態で気体路３１ｂの口に来るようにな位置に設けられている。
【００１３】
下部ケース３１のチャンバ３１ａに繋がる気体路３１ｂは、下部ケース３１に形成された取付部３１ｃを本体１側に固定された接続部３７に接続することにより、接続部３７に形成された気体路３７ａと接続される。気体路３７ａの先は圧力センサ３６が取付けられている。圧力センサ３６は、チャンバ３１ａから気体路３７ａに至る経路の気体圧を検出することにより、隔膜４０内で変動する液体圧力、すなわち吸引圧を検出する。また、気体路３７ａの途中で分岐された気体路は電磁弁３５に接続されており、電磁弁３５の開閉により空気の排出と密閉が行われる。
なお、下部ケース３１にはチューブ１９を吸引チューブ１６の途中に連結する分岐路３４が形成されている。
【００１４】
以上のような構成を備える装置において、その動作を以下に説明する。手術に際し、灌流瓶１０の位置、ＵＳハンドピース２や吸引ポンプ２０への各チューブ類の取り付けやその他必要な準備を行う。また、チューブの途中に接続された下部ケース３１の取付部３１ｃを接続部３７に差込んで取付ける。チューブ類の取付けが完了したら、チューブ内に灌流液を充填させる。灌流液を充填させるには、まず、ＵＳハンドピース２の先端に灌流液が洩れない様にキャップをし、入力部３でテストスイッチを押す。テストスイッチが押されると、制御部５は、ベント弁１８を締め、制御弁１４を開け、吸引ポンプ２０を回転させる。これにより、ＵＳハンドピース２の吸引路と吸引チューブ１６内の空気が排出され、その内部に灌流液が充填される。
【００１５】
吸引チューブ１６内に灌流液が満たされたら（これは圧力センサ３６の出力信号から検知される）、制御部５は制御弁１４を締めると共に、ベント弁１８を開ける。これにより、灌流瓶１０からの灌流液が圧力変換ユニット３０に導かれ、隔膜４０の液体室４１、チューブ１９内の空気が排出され、灌流液が充填される。この時、制御部５は電磁弁３５を開け、チャンバ３１ａから気体路３７ａに至る空間内の空気を大気圧にする。ＵＳハンドピース２、各チューブ及び隔膜４０内に灌流液が充填されると、吸引ポンプ２０を停止し、制御弁１４、ベント弁１８、電磁弁３５を締める。
【００１６】
装置側の必要なセッティングができたら、術者はＵＳハンドピース２のチップ２ａを眼内に差込み、フットスイッチ６の踏み込みにより、灌流液の供給動作、吸引動作及び超音波振動の動作をコントロールしながら超音波乳化吸引法による手術を行う。制御部５は、フットスイッチ６からの吸引用の信号が入力されると、吸引ポンプ２０を駆動する。吸引ポンプ２０により発生された吸引圧は吸引チューブ１６を介してＵＳハンドピース２に至り、破砕用チップ２ａの吸引孔から眼内の廃液が吸引される。
【００１７】
吸引チューブ１６内に発生する吸引圧は、圧力変換ユニット３０によって気体圧に変換され、これが圧力センサ３６により検出される。吸引ポンプ２０を回転させて吸引圧が上がると、隔膜４０内部の灌流液がチューブ１９を通り吸引される。更にＵＳハンドピース２のチップ２ａの閉塞等により吸引圧が上がると、図５に示す様に、隔膜４０がしぼむ。このとき、隔膜４０の内面側に設けられた厚みのあるリブ４０ｂは変形せず、薄膜の側壁のみが変形するようにしぼむ。リブ４０ｂは、隔膜４０内に負圧が加わったときに、薄膜の側壁側が変形するようにその変形の定常化をガイドする役目を果たす。このリブ４０ｂにより、隔膜４０が全体的にねじれて変形することなく、隔膜４０内の負圧が減少したときに元の形状に復帰するようになる。また、このリブ４０ｂは、変形が進んでいく過程で内面の密着により隔膜４０の先端側（図中では下部）に空気が残る途中閉塞を防止する役目も果たす。隔膜４０がしぼむことにより、チャンバ３１ａから気体路３７ａに至る空間の気体圧が負圧になるので、気体路３７ａに繋がる圧力センサ３６で吸引圧が検出できる。
【００１８】
また、リブ４０ｃを隔膜４０の外周に設けたことにより、図６に示す様に、隔膜４０の外壁面がチャンバ３１ａの内壁面にほぼ接するように収容された状態であっても、チャンバ３１ａの内壁面と隔膜４０の外壁面との間に幾分かの隙間（圧力センサ３６に連通する気体経路の空間）が確保される。これにより、隔膜４０の側壁が偏って変形することがなくなる。さらに、吸引チューブ１６に正圧が加わった場合には、この幾分かの隙間がつぶされるように隔膜４０の側壁が変形でき、チャンバ３１ａと連通する空間の圧力が上昇するので、正圧側への圧力変動も検知できる。ベント弁１８を開けると、灌流液がチューブ１５、隔膜４０、チューブ１９を経て吸引チューブ１６側に導かれるので、吸引圧を基準状態（０mmHg：吸引していない状態）に戻すことができる。吸引状態からベント弁１８を開けて吸引圧を基準状態に戻したい場合、正圧側への圧力変動を知ることによってベント弁１８の開閉を制御し、より短時間に吸引圧を定常状態に安定させることが可能となる。
【００１９】
手術の終了後は、圧力変換ユニット３０を接続部３７から取外すことにより、手術に使用したチューブ類を装置本体から容易に分離できる。また、チューブ内を流れる吸引液は、隔膜４０により装置本体側の圧力センサ３６等の圧力検出系とは隔離されいるので、装置側への吸引液の侵入を防止しつつ、常に精度良く吸引圧を検出することができる。吸引液の漏れがないので、これによる医療従事者への感染の心配も無い。また、隔膜４０を前述のような形状としたことにより、圧力変動による変形を大きく確保することができ、コンパクトながら圧力検出のレンジを広くすることができる。
【００２０】
以上説明した構成において、隔膜４０の変形をガイドするリブ４０ｂの形状や数については、上記に限られるものではない。例えば、図７に示すように隔膜４２のリブ４２ｂを片側一つにしても良い。また、図８に示すように、隔膜４３のリブ４３ｂを隔膜４３の底（尖端側）の部分は省く形状にしても良い。また、図８における２つのリブ４３ｂの先端どうしが繋がっている形状であってもよい。さらに、その繋がりあったリブの側面に少なくとも１つの穴が開いていても良い。
【００２１】
また、これらリブ４０ｂ等に代えて、隔膜の側壁を部分的に硬くした構成や、針金等の硬度のある部材をモールドした構成とすることもできる。さらには、これらリブを隔膜と一体的に形成する代わりに、上部ケース３２に隔膜のリブと同じような形状の凸部を設けても良い。この場合は柔軟な隔膜をその凸部に被せるように配置する。
また、チャンバ３１ａの内壁面と隔膜４０の外壁面との間に気体経路の空間を確保する構造としては、隔膜４０に形成したリブ４０ｃの代わりに、チャンバ３１ａの内壁面側に気体路３１ｂと繋がる溝を隔膜４０の周回りに設けたものでも良い。
【００２２】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、装置側への廃液の侵入を防止しつつ精度良く吸引圧を検出できる。また、吸引圧検出系に対するチューブ類の着脱も容易に行え、その取り外し時も吸引した液が漏れる心配がない。
【図面の簡単な説明】
【図１】灌流吸引装置の外観略図である。
【図２】灌流吸引装置の主要部の概略構成図である。
【図３】灌流吸引装置の圧力検出部の構成を示す断面図である。
【図４】隔膜及びチャンバの構成を示す図である。
【図５】隔膜及びチャンバの断面図である。
【図６】隔膜及びチャンバの断面図である。
【図７】隔膜の変容例を示す図である。
【図８】隔膜の変容例をを示す図である。
【符号の説明】
１ 装置本体
１１ 灌流チューブ
１６ 吸引チューブ
２０ 吸引ポンプ
３１ 下部ケース
３２ 上部ケース
３６ 圧力センサ
３７ 接続部
３７ａ 気体路
４０ 隔膜
４０ｂ リブ
４０ｃ リブ
Claims (2)
- 手術部位に灌流液を供給し、これを吸引して体外に排出する吸引路を持つ灌流吸引装置において、前記吸引路に連通し液体が満たされる液体室を持つ変形可能な細長い袋状の隔膜と、該隔膜を取り囲むように収容する気体室と、該気体室に接続部を介して接続される圧力検出手段と、前記吸引路に加わる圧力変動に応じて前記隔膜の細長の側壁側が変形するように，その変形を定常化するガイド手段であって，前記隔膜又はその内側に設けられたガイド手段と、備えることを特徴とする灌流吸引装置。
- 手術部位に灌流液を供給し、これを吸引して体外に排出する吸引路を持つ灌流吸引装置において、前記吸引路に連通し液体が満たされる液体室を持つ変形可能な細長い袋状の隔膜と、該隔膜を取り囲むように収容する気体室と、該気体室に接続部を介して接続される圧力検出手段と、前記隔膜の外壁回りに形成された凸部であって，前記圧力検出手段に連通する前記気体室の連通口に対応する位置に形成された凸部と、を備えることを特徴とする灌流吸引装置。
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