WO2013054894A1 - 有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

 外光の反射率が低く、低温高湿下で長時間使用しても赤色の変化の小さな有機EL表示装置とその製造方法を提供する。 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子上に偏光板を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、該偏光板が視認側からT1層、偏光子、T2層を順に有し、前記T1層の23℃・80%RHにおける透湿度が150g/m・24h以下であり、前記T2層がλ/4位相差フィルムであり、かつ該T2層は、23℃・80%RHにおける平衡含水率が3.0~7.0質量%の範囲内であるであることを特徴とする。

Description

有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法
 本発明は有機エレクトロルミネッセンス表示装置及びその製造方法に関し、特に、明るい場所で観察しても、低温高湿環境下で使用し続けても高品質な画像が観察できる有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
 電極間に発光層を設け、これに電圧を印加して発光を生じる有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子ともいう。)は、平面型照明、光ファイバー用光源、液晶ディスプレイ用バックライト、液晶プロジェクター用バックライト、ディスプレイ装置等の各種光源として盛んに研究、開発が進められている。
 有機EL素子は、発光効率、低電圧駆動、軽量、低コストという点で優れており、近年極めて注目を浴びている素子である。
 有機EL素子は、陰極から電子を、陽極から正孔を注入し、両者が発光層で再結合することにより、発光層の発光特性に対応した可視光線の発光を生じさせるものである。
 視認側の電極には、透明導電性材料の中では最も電気伝導度が高い点から、専ら酸化インジウムスズ(ITO)が使用される。
 一方、反対側の電極には、通常金属電極が使用される。
 これらの金属電極の金属材料は、光反射率が高く、電極(陰極)としての機能のほかに、発光層で発光した光を反射し、出射光量(発光輝度)を高める機能も担っている。
 すなわち、視認側と反対方向に発光した光は、金属材料表面で鏡面反射し、透明なITO電極から出射光として取り出されることになる。
 しかしながら、このような有機EL素子を用いたディスプレイ装置である有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置ともいう)は、金属電極が光反射性の強い鏡面となっているため、発光していない状態では外光反射が著しく目立つことになる。
 即ち、室内照明の映り込みなどが激しく、明所では黒色が表現できなくなり、このような有機EL表示装置は、明室コントラストが極端に低いという問題点を有する。
 これを改善するために、有機EL素子の視認側に円偏光素子であるλ/4位相差フィルムを有する偏光板を設けることが知られている。
 有機EL表示装置では、通常、λ/4位相差フィルムは偏光板の一方の面に設けられ、該偏光板はλ/4位相差フィルム側で有機EL素子と接着される。このようなλ/4位相差フィルムとしては、通常、環状オレフィンポリマー(COP)やポリカーボネート(PC)が用いられる。
 しかしながら、このような偏光板を用いた有機EL表示装置は、低温(20℃程度)かつ高湿の環境下で長時間使用した場合、赤色の変色が生じる。
 液晶表示装置の偏光板に用いられる光学フィルムとして、特定のセルロースエステルを含有し吸湿量の小さなλ/4位相差フィルムを用いて、液晶表示装置の着色を防止することが特許文献1に開示されている。
 また、特許文献2には、液晶表示装置の偏光板に用いられる光学フィルムとして、高透湿性のフィルムを用いることにより、赤色の変色を防止することが記載されている。
 しかし、特許文献1及び特許文献2の方法は主として液晶表示装置に関するものであり、上記の光学フィルムを有機EL表示装置の偏光板に用いても赤色の変色は改善されなかった。
特開2002-71957号公報 特開2010-78967号公報
 本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、外光の反射率が低く、低温高湿下で長時間使用しても赤色の変化の小さな有機EL表示装置とその製造方法を提供することである。
 本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、偏光板を構成する偏光子を挟む2枚の光学フィルムのうち、有機EL素子側の光学フィルムがλ/4位相差フィルムであって、一定の吸湿性を有することにより、かつ、もう一方の視認側の光学フィルムの水分透過率を低くすることにより、有機EL表示装置の赤色が変色することを防止することができることを見いだし本発明に至った。
 すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
 1.有機エレクトロルミネッセンス素子上に偏光板を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、該偏光板が視認側からT1層、偏光子、T2層を順に有し、前記T1層の23℃・80%RHにおける透湿度が150g/m・24h以下であり、前記T2層がλ/4位相差フィルムであり、かつ該T2層は、23℃・80%RHにおける平衡含水率が3.0~7.0質量%の範囲内であるであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
 2.前記λ/4位相差フィルムが、セルロースエステルを含有し、該セルロースエステルの少なくとも一種が下記式(1)及び式(2)を満足することを特徴とする前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
 式(1) 2.3≦A+B≦2.7
 式(2) 0≦B≦2.0
〔式(1)及び(2)において、Aは前記セルロースエステルのアセチル基置換度であり、Bはアセチル基以外のアシル基の置換度である。〕
 3.前記λ/4位相差フィルムが、糖エステル化合物を含有することを特徴とする前記1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
 4.前記λ/4位相差フィルムがセルロースエステルを含有し、該λ/4位相差フィルムの23℃・55%RHの環境下、光波長650nmで測定したときの面内リターデーション値Ro(650)に対する同環境下、光波長550nmで測定したときの面内リターデーション値Ro(550)の比の値Re(550/650)が0.7以上、1.0未満であることを特徴とする前記1~3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
 5.前記λ/4位相差フィルムが、斜め延伸された樹脂フィルムであることを特徴とする前記1~4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
 6.前記λ/4位相差フィルムの膜厚が、20~60μmの範囲内であることを特徴とする前記1~5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
 7.前記T1層は、アセチル基置換度が2.80~2.95の範囲内であるセルロースエステル及びポリエステル系可塑剤を含有することを特徴とする前記1~6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
 8.前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、トップエミッション型であることを特徴とする前記1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
 9.前記1~8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法であって、前記λ/4位相差フィルムを、斜め延伸する工程を経て、製造することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
 本発明の上記手段により、外光の反射率が低く、低温高湿下で長時間使用しても赤色の変化の小さな有機EL表示装置を提供することができる。また、その製造方法を提供することができる。
 本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
 T1層にCOPやPC等の低透湿性のフィルムを用いた場合、有機EL素子と偏光板の間の接着剤に含まれる有機溶剤が抜けにくく、また、経時で外部から侵入した水分が有機EL表示装置内に滞留し、青色発光が劣化することにより、赤色の発光が強調されたために、赤色の変色が生じたと推測している。
 そこで、本発明に係るT2層が適度な吸湿性を有すると、T2層が余剰の水分を吸収し、T1層が外部から水分が浸入するのを遮断するため、青色発光の劣化が防止されると推測している。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の構成の一例を示す図である。 テンターによる斜め延伸を示す模式図である。
 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子上に偏光板を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、該偏光板が視認側からT1層、偏光子、T2層を順に有し、前記T1層の23℃・80%RHにおける透湿度が150g/m・24h以下であり、前記T2層がλ/4位相差フィルムであり、且つ該T2層は、23℃・80%RHにおける平衡含水率が3.0~7.0質量%の範囲内であるであることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項8までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
 本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記λ/4位相差フィルムがセルロースエステルを含有し、該λ/4位相差フィルムの23℃・55%RHの環境下光波長650nmで測定したときの面内リターデーション値Ro(650)に対する同環境下光波長550nmで測定したときの面内リターデーション値Ro(550)の比の値Re(550/650)が0.7以上、且つ1.0未満であることが好ましい。
 また、前記λ/4位相差フィルムが、一種又は二種のセルロースエステルを含有し、該セルロースエステルの少なくとも一種が前記式(1)及び式(2)を満足することが、外光の反射率を低減する効果が得られることから、好ましい。
 さらに、本発明においては、前記λ/4位相差フィルムが、糖エステル化合物を含有することが好ましい。これにより、外光の反射率を低減する効果が得られる。
 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法としては、前記λ/4位相差フィルムを、斜め延伸する工程を経て、製造する態様の製造方法であることが、製造の効率の観点から、好ましい。
 また、λ/4位相差フィルムは、工程の取扱い性の観点から、膜厚が20μm以上であることが好ましく、表示装置の厚さを薄くするために膜厚が60μm以下であることが好ましい。
 さらに、T1層は光学特性が均一で、耐久性が高いことから、アセチル基置換度が2.80~2.95の範囲内であるセルロースエステル及びポリエステル可塑剤を含有することが好ましい。
 また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、低電力で高い輝度の画像が観察でき、また、解像力を高めることができることから、トップエミッション型であることが好ましい。
 以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
 (有機EL表示装置)
 有機EL表示装置は発光層を挟んで透明電極と金属電極を有し、発光層で発生した光を透明電極を通して観察することができる。電極に選択的に電圧を掛けるためのTFTを金属電極側に有するトップエミッション型が開口面積が広く、低電力で高い輝度の画像が観察でき、また、解像力を高めることができるので好ましい。
 図1に、本発明の有機EL画像表示装置の一例であるトップエミッション型の構成を示すがこれに限定されるものではない。
 ガラスやポリイミド等を用いた基板1上に順にTFT2、金属電極3、透明電極(ITO等)4、正孔輸送層5、発光層6、バッファー層(カルシウム等)7、陰極(アルミニウム等)8、ITO9、及び絶縁膜10を有する有機EL素子B上に、偏光子12をT2層(λ/4位相差フィルム)11とT1層13によって挟持した偏光板Cを設けて、有機EL画像表示装置Aを構成する。該T1層13には硬化層14が積層されていることが好ましい。硬化層14は、有機EL画像表示装置の表面のキズを防止するだけではなく、円偏光板による反りを防止する効果を有する。更に、硬化層上には、反射防止層15を有していてもよい。上記有機EL素子自体の厚さは1μm程度である。
 一般に、有機EL画像表示装置は、透明基板上に金属電極と有機層と透明電極とを順に積層して発光体である素子(有機EL素子)を形成している。ここで、有機層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、及び電子注入層の積層体等、種々の組み合わせを持った構成が知られている。
 有機EL画像表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
 有機EL画像表示装置においては、発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg-Ag、Al-Liなどの金属電極を用いている。
 このような構成の有機EL画像表示装置において、発光層は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で形成されている。このため、発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL画像表示装置の表示面が鏡面のように見える。
 (偏光板)
 電圧の印加によって発光する発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機EL素子を含む有機EL画像表示装置において、金属電極により外光が反射されることを防止するために、偏光板を有する。偏光板は、偏光子をT1層とT2層で挟んだ構造を有し、偏光子にT1層用光学フィルムとT2用光学フィルムを接着して製造することができる。
 また、有機EL表示装置は、偏光板と有機EL素子を接着して製造することができ、T1層が視認側、T2層が有機EL素子側に配置される。
 このとき、T2層は、λ/4位相差フィルムであり、λ/4位相差フィルム及び偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。
 すなわち、この有機EL画像表示装置に入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過し、この直線偏光はλ/4位相差フィルムにより、偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
 この円偏光は、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極を透過して、λ/4位相差フィルムによって再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
 (T1層)
 偏光板はT1層、偏光子及びT2層が順に積層された構成を有し、該偏光板と有機EL素子が接着されて、有機EL表示装置が形成される。T1層は、有機EL表示装置において、視認側に位置する光学フィルムである。
 T1層の透湿度は、23℃・80%RHにおいて、150g/m・24h以下である。また、T1層の透湿度は、10g/m・24h以上であることが、赤色の変化が小さいことから好ましい。T1層を形成するT1層用光学フィルムは、単一の層であっても良いし、複数の層から構成されていても良い。前記光学フィルムが複数の層から構成される場合は、視認側の表面にハードコート層が設けられていることが好ましい。
 T1層の透湿度は、T1層に含有される樹脂や添加剤により変化する。また、延伸条件や膜厚により調整することができる。
 (透湿度)
 なお、本明細書では、調湿条件を23℃・80%RHに変更する以外は、JIS Z-0208に従って、透湿度を算出するものとする。サンプルの透湿度測定の際は、恒温恒湿装置に入れたカップを適当な時間間隔で取り出して秤量する操作を繰り返し、二つの連続する秤量で、それぞれ単位時間あたりの質量増加を求め、それが5%以内で一定になるまで評価を続ける。また、サンプルの吸湿等による影響を除外するため、吸湿剤の入れていないブランクのカップを測定し、透湿度の値を補正する。また、ビニルアルコール系重合体を含む樹脂層を有する保護フィルムの透湿度を測定する場合には、透明基材フィルム上に設けた該樹脂層が測定カップに接する様な向きでサンプルをセットし、上記と同様の方法で、透明基材フィルム側からの透湿度を測定する。
 (T1層用光学フィルム)
 前記T1層用光学フィルムは、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム又はアクリルフィルム等を使用することができる。
 これらの内、セルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、本発明においては、セルロースエステルフィルムが光学特性、生産性、コスト面から好ましい。
 T1層用光学フィルムに用いられるセルロースエステルは、アセチル基置換度が2.80~2.95の範囲内であることが好ましく、更に、T1層用光学フィルムはポリエステル系可塑剤を含有することが好ましい。
 T1層用光学フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC4UA、KC6UA、KC4CZ、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、及びKC12UR(以上、コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)製)が使用できる。
 また、3D画像表示用の有機エレクトロルミネセンス画像表示装置の場合は、偏光子の両面にλ/4位相差フィルムを配置することが表示画像の品質向上に効果を有するため、本発明に係るT1層として本発明に係るλ/4位相差フィルムを用いることも好ましい。
 (ハードコート層(硬化層ともいう))
 前記T1層はハードコート層(硬化層)を有することができる。ハードコート層は高硬度であることが、表示装置の表面における使用や円偏光板化工程において傷が付きにくいことから望まれおり、鉛筆硬度が3H以上であることが好ましく、より好ましくは4H以上である。
 鉛筆硬度は、作製した硬化層付の保護フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
 また、硬化層のマルテンス硬さ(HMs)が、400N/mm以上、800N/mm以下であることが好ましい。
 マルテンス硬さ(ビッカース硬さ)とは、ビッカース圧子及び稜線同士の角度が115度の三角錐圧子を用いた微小硬度計で、フィルムのハードコート表面を、ハードコート層の膜厚の略1/10の厚さまで圧子を押し込んだ時の負荷試験力-押し込み深さ曲線において、該負荷試験力-押し込み深さ曲線から求められる最大負荷試験力(Fmax)の50%値から90%値までの押し込み深さが負荷試験力の平方根に対する傾き(M)より、下記式で定義される値をいう。
 1HMs=1/(26.4M
 本発明の硬化層は、公知のものがそのまま使用することができる。硬化層を形成する樹脂バインダーについて説明する。樹脂バインダーとしては、活性エネルギー線硬化樹脂が好ましい。活性エネルギー線硬化樹脂とは、紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性エネルギー線硬化樹脂層が形成される。
 活性エネルギー線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、特に、紫外線硬化樹脂が機械的膜強度(耐擦性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。
 紫外線硬化樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。
 ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/又はメタクロイルオキシ基を有する化合物である。これらの化合物は、それぞれ単独又は二種以上を混合して用いられる。
 また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。エネルギー活性線硬化性樹脂の添加量は、硬化層形成組成物中では、固形分中の15質量%以上70質量%未満であることが好ましい。
 また、硬化層にはエネルギー活性線硬化性樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:エネルギー活性線硬化性樹脂=20:100~0.01:100の範囲内で含有することが好ましい。
 光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α-アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
 硬化層には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又はゼラチン等の親水性樹脂等のバインダーを用いることもできる。また、ハードコート層には滑り性や屈折率を調整するために無機化合物又は有機化合物の粒子を含んでもよい。
 前記硬化層の視認側には、更に、反射防止層が設けられることが好ましい。該反射防止層は外光が保護フィルムや硬化層の表面で反射されることにより画像のコントラストを低下することを防止することができる。
 (T2層)
 本発明に係る偏光板は、T1層、偏光子、T2層の順に積層された構造を有し、偏光板が有機EL素子に接着されるときに、T2層は偏光子と有機EL素子に挟まれる状態になる。本発明において、T2層はλ/4位相差フィルムであり、直線偏光を円偏光に変換することができる。
 このように、T2層に円偏光性を付与することにより、有機EL表示装置の金属電極で外光が反射され、非発光のセルで黒のコントラストが低下するのを防止することができる。しかし、このようなλ/4位相差フィルムを用いた有機EL表示装置を低温高湿下で使用し続けると、赤色の変色が生じる。この赤色の変色は、T1層の23℃・80%RHにおける透湿度を150g/m・24h以下とし、T2層の23℃・80%RHにおける平衡含水率が3.0~7.0質量%の範囲内とすることにより防止できる。
 (λ/4位相差フィルム)
 本発明の「λ/4位相差フィルム」とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4位相差フィルムは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、層の面内のリターデーション値Roが該光の波長の約1/4である。本発明のλ/4位相差フィルムは、光波長λ550nmで測定したRo(550)が110~170nmの範囲内でありRo(550)が120~160nmの範囲内であることが好ましく、Ro(550)が130~150nmの範囲内であることが更に好ましい。
 本発明のλ/4位相差フィルムは、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲においておおむね波長の1/4のリターデーション値を有する位相差板(フィルム)であることが好ましい。
 可視光の波長の範囲においておおむね1/4のリターデーション値にするためには、波長400から700nmにおいて長波長ほどリターデーション値が大きくなるいわゆる、逆波長分散性を有する必要がある。特に、下記式(3)で表される光波長550nmで測定したリターデーション値であるRo(550)と光波長650nmで測定したリターデーション値であるRo(650)の比Re(550/650)が、0.7以上、1.0未満であることが黒色の再現にとって好ましく、0.84~0.95の範囲内であることが更に好ましく、0.84~0.93の範囲内であることが最も好ましい。樹脂をセルロースエステルにした場合、Re(550/650)は、ほぼ0.7以上になる。
 なお、前記Re(550/650)は、Ro(550)/Ro(650)とも表すことができる。Re(550/650)が、0.7以上、1.0未満であることにより、外光反射の影響を小さくでき、黒色画像を正面と斜めから見たときの色の変化を小さくすることができる。
 式(3):Ro=(nx-ny)×d
 式中、nx、nyは、23℃・55%RH、光波長450nm、550nm又は650nmにおける屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう。)、ny(フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率)であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。
 前記Roは自動複屈折率計を用いて測定することができる。自動複屈折率計Axometric社製のAxoScanを用いて、23℃・55%RHの環境下で、各波長での複屈折率測定によりRoを算出する。
 λ/4位相差フィルムの遅相軸と後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。「実質的に45°」とは、40~50°の範囲内であることを意味する。λ/4位相差フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41~49°の範囲内であることが好ましく、42~48°の範囲内であることがより好ましく、43~47°の範囲内であることが更に好ましく、44~46°の範囲内であることが最も好ましい。
 (平衡含水率)
 T2層のλ/4位相差フィルムの平衡含水率は、23℃・80%RHにおける平衡含水率が、3.0~7.0質量%の範囲内であるが、平衡含水率が3.0%未満又は7.0%を超えると、低温・低湿で長時間使用したときに、赤色の変化が大きくなる。平衡含水率は下記の方法で測定することができる。
 T2層用のフィルムサンプルを23℃、相対湿度20%に調湿された部屋に4時間以上放置した後、23℃・80%RHに調湿された部屋に24時間放置し、サンプルを微量水分計(例えば三菱化学(株)製、CA-20型)を用いて、温度150℃で水分を乾燥・気化させた後、カールフィッシャー法により定量する。
 (セルロースエステル)
 前記λ/4位相差フィルムは、単一層で逆波長分散性を有することから、セルロースエステルを含有することが好ましい。
 本発明に係るλ/4位相差フィルムは、フィルムの全質量100質量%に対して、セルロースエステルを好ましくは60~100質量%の範囲で含む。また、セルロースエステルの総アシル基置換度は、2.3~2.7の範囲内であることが好ましい。また、アセチル基以外のアシル基の置換度が0~2.0の範囲内であることが好ましい。
 セルロースエステルとしては、セルロースと、炭素数2~22程度の脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸とのエステルが挙げられ、特に、セルロースと炭素数が6以下の低級脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
 セルロースのヒドロキシ基に結合するアシル基は、直鎖であっても分岐していてもよく、また環を形成してもよい。さらに別の置換基が置換してもよい。同じ置換度である場合、上述した炭素数が多いと複屈折性が低下するため、炭素数としては炭素数2~6の範囲内のアシル基の中で選択することが好ましく、プロピオニル置換度及びブチリル置換度の総和は0.5以上であることが好ましい。前記セルロースエステルとしての炭素数が2~4の範囲内であることが好ましく、炭素数が2又は3であることがより好ましい。
 具体的には、セルロースエステルとしては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート又はセルロースアセテートフタレートのようなアセチル基のほかにプロピオネート基、ブチレート基又はフタリル基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを用いることができる。なお、ブチレートを形成するブチリル基は、直鎖であっても分岐していてもよい。
 本発明においては、セルロースエステルとして、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、又はセルロースアセテートプロピオネートが特に好ましく用いられる。
 前記セルロースエステルは、下記一般式(1)及び(2)を満足することが外光反射を防止し、赤色の変化を防止する点から好ましい。
 式(1) 2.3≦A+B≦2.7
 式(2) 0≦B≦2.0
〔式(1)及び(2)において、Aは前記セルロースエステルのアセチル基置換度であり、Bはアセチル基以外のアシル基の置換度である。〕
 また、目的に叶う光学特性を得るために、置換度の異なる樹脂を混合して用いてもよい。その際の混合比としては、1:99~99:1(質量比)の範囲内が好ましい。
 上述した中でも、特にセルロースアセテートプロピオネートが、セルロースエステルとして好ましく用いられる。セルロースアセテートプロピオネートでは、0≦B≦2.0であり、かつ、2.3≦A+B<2.7であることが好ましく、0.5≦B≦2.0であることがより好ましい。なお、アシル基の置換度は、ASTM-D817-96に準じて測定されうる。
 セルロースエステルの数平均分子量は、60000~300000の範囲であると、得られるフィルムの機械的強度が強くなるため、好ましい。より好ましくは、数平均分子量が100000~250000の範囲内のセルロースエステルが用いられる。
 セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。測定条件は以下のとおりである。なお、本測定方法は、本発明におけるほかの重合体の測定方法としても使用することができる。
 溶媒:メチレンクロライド;
 カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工株式会社製)を3本接続して使用する;
 カラム温度:25℃;
 試料濃度:0.1質量%;
 検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製);
 ポンプ:L6000(日立製作所株式会社製);
 流量:1.0ml/min
 校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー株式会社製)Mw=1000000~500の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
 セルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1~45質量ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が45質量ppm以下であれば、スリッティングの際に破断しにくく生産効率が高い。なお、残留硫酸含有量は、1~30質量ppmの範囲がより好ましい。残留硫酸含有量は、ASTM D817-96に規定の方法により測定することができる。
 また、セルロースエステル中の遊離酸含有量は、1~500質量ppmの範囲内であることが好ましい。上記の範囲であると、上記と同様に破断しにくいため、好ましい。なお、遊離酸含有量は、1~100質量ppmの範囲であることが好ましく、更に破断しにくくなる。特に1~70質量ppmの範囲が好ましい。遊離酸含有量はASTM D817-96に規定の方法により測定することができる。
 λ/4位相差フィルムを溶融流延法で製造する場合は、合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、更に十分に行うことによって、残留アルカリ土類金属含有量、残留硫酸含有量、及び残留酸含有量を上記の範囲とすることができ好ましい。
 また、セルロースエステルは、フィルムにしたときの輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)を意味する。輝点異物は、直径0.01mm以上の輝点の個数が200個/cm以下であることが好ましく、100個/cm以下であることがより好ましく、50個/cm以下であることが更に好ましく、30個/cm以下であることが一層好ましく、10個/cm以下であることが特に好ましく、皆無であることが最も好ましい。
 また、直径0.005~0.01mmの範囲内の輝点についても、200個/cm以下であることが好ましく、100個/cm以下であることがより好ましく、50個/cm以下であることが更に好ましく、30個/cm以下であることが一層好ましく、10個/cm以下であることが特に好ましく、皆無であることが最も好ましい。
 セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどが挙げられる。また、それらから得られたセルロースエステルは、それぞれ任意の割合で混合使用されうる。
 セルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、特開平10-45804号に記載の方法を参考にして合成することができる。
 また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらの微量金属成分は、製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となりうるような成分は少ない方が好ましく、特に、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成することにより不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。また、カルシウム(Ca)成分は、カルボン酸やスルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物(すなわち、錯体)を形成しやすく、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成するおそれがあるため、少ないことが好ましい。
 具体的には、鉄(Fe)成分については、セルロースエステル中の含有量が1質量ppm以下であることが好ましい。また、カルシウム(Ca)成分については、セルロースエステル中の含有量が好ましくは60質量ppm以下であり、より好ましくは0~30質量ppmの範囲内である。さらに、マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、セルロースエステル中の含有量が0~70質量ppmの範囲内であることが好ましく、特に0~20質量ppmの範囲内であることが好ましい。
 なお、鉄(Fe)成分の含有量、カルシウム(Ca)成分の含有量、マグネシウム(Mg)成分の含有量などの金属成分の含有量は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析することができる。
 (糖エステル化合物)
 本発明に係るλ/4位相差フィルムは糖エステル化合物を含有することが有機EL表示装置の外光の反射を低減することから好ましい。
 本発明に用いられる糖エステル化合物の合成原料の糖の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
 グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F-フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
 この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
 本発明に用いられる糖エステル化合物の合成時に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は一種類でもよいし二種以上の混合であってもよい。
 好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2-エチル-ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
 好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。
 好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環に1~5個のアルキル基若しくはアルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、テトラリンカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、又はそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
 前記糖エステル化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
 本発明に用いられる一般式(I)で表される化合物の平均置換度は3.0~6.0の範囲内であることが、延伸処理においてヘイズ上昇を抑制し安定な位相差を発現する上でも有効である。平均置換度はより好ましくは4.5~6.0の範囲である。
 本発明において、一般式(I)で表される化合物の置換度とは、一般式(I)に含まれる8つのヒドロキシ基のうち、水素以外の置換基で置換されている数を表し、すなわち、一般式(I)のR~Rのうち、水素以外の基を含む数を表す。したがって、R~Rが全て水素以外の置換基により置換された場合に、置換度は最大値の8.0となり、R~Rが全て水素原子である場合には、0.0となる。
 一般式(I)で表される構造を有する化合物は、ヒドロキシ基の数、OR基の数が固定された単一種の化合物を合成することは困難であり、式中のヒドロキシ基の数、OR基の異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られているため、本発明における一般式(I)の置換度としては、平均置換度を用いることが適当であり、常法により高速液体クロマトグラフィーによって置換度分布を示すチャートの面積比から平均置換度を測定することができる。
 一般式(I)において、R~Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、又は、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基を表し、R~Rは、同じであっても、異なっていてもよい。
 具体例の一部を以下に示すが、これらは、R~Rがそれぞれ水素原子又は置換基を表し、該置換基を全て同じ置換基Rとした場合であって、本発明はこれらに限定されない。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
 本発明に用いられる糖エステル化合物は、糖エステルに、アシル化剤(エステル化剤ともいう。例えば、アセチルクロライドの酸ハロゲン化物、無水酢酸等の無水物。)を反応させることによって製造することが可能であり、置換度の分布は、アシル化剤の量、添加タイミング、エステル化反応時間の調節によってなされるが、置換度違いの糖エステル化合物の混合、あるいは純粋に単離した置換度違いの化合物を混合することにより、目的の平均置換度、置換度4以下の成分を調整することができる。
 (合成例:本発明に係る化合物の合成)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖(スクロース)34.2g(0.1モル)、無水安息香酸135.6g(0.6モル)、ピリジン284.8g(3.6モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。
 次に、コルベン内を4×10Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×10Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A-1、A-2、A-3、A-4及びA-5等の混合物である糖エステル化合物1を得た。
 得られた混合物を高速液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC-MS)で解析したところ、A-1が1.2質量%、A-2が13.2質量%、A-3が14.2質量%、A-4が35.4質量%、A-5等が40.0質量%であった。平均置換度は5.2であった。
 同様に、無水安息香酸158.2g(0.7モル)、146.9g(0.65モル)、124.3g(0.55モル)と当モルのピリジンとを反応させて、表1記載のような成分の糖エステルを得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 次いで、得られた混合物の一部を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA-1、A-2、A-3、A-4及びA-5等を得た。
 なお、A-5等とは、置換度4以下の全ての成分、つまり置換度4、3、2、1の化合物の混合物であることを意味する。また、平均置換度は、A-5等を置換度4として計算した。
 本発明においては、ここで作製した方法により所望の平均置換度に近い糖エステル及び単離したA-1~A-5等を組み合わせ添加することにより、平均置換度を調整することができる。
 <HPLC-MSの測定条件>
 1)LC部
 装置:日本分光(株)製カラムオーブン(JASCO CO-965)、ディテクター(JASCO UV-970-240nm)、ポンプ(JASCO PU-980)、デガッサ-(JASCO DG-980-50)
 カラム:Inertsil ODS-3 粒子径5μm 4.6×250mm(ジーエルサイエンス(株)製)
 カラム温度:40℃
 流速:1ml/min
 移動相:THF(1%酢酸):HO(50:50)
 注入量:3μl
 2)MS部
 装置:LCQ DECA(Thermo Quest(株)製)
 イオン化法:エレクトロスプレーイオン化(ESI)法
 Spray Voltage:5kV
 Capillary温度:180℃
 Vaporizer温度:450℃
 本発明のλ/4板は、上記糖エステル化合物を、λ/4板中に1~20質量%の範囲内で、特に3~15質量%の範囲内で含むことが好ましい。この範囲内であれば、本発明の優れた効果を呈するとともに、原反保管中におけるブリードアウトなどもなく好ましい。
 (可塑剤)
 本発明に係るT1層は、可塑剤を含有することが好ましい。T1層用光学フィルムはポリエステル系可塑剤を含有することがより好ましく、数平均分子量(Mn)が300以上10000以下のポリエステル系可塑剤含有することが更に好ましい。ただし、延伸の際150℃以上の高温をかける場合は、ポリエステル系化合物の揮発を抑制するために、1000以上、10000以下が好ましく用いられる。
 前記ポリエステル系可塑剤の具体的な構造について、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有するポリエステル系可塑剤が用いることが好ましい。ポリエステル系可塑剤としては、例えば、下記一般式(a)で表されるポリエステル系可塑剤が好ましい。
 一般式(a) B-(G-A-)G-B
 (式中、Bはベンゼンモノカルボン酸残基又は脂肪族モノカルボン酸残基を表し、Gは炭素数2~12のアルキレングリコール残基又は炭素数6~12のアリールグリコール残基又は炭素数4~12のオキシアルキレングリコール残基を表し、Aは炭素数4~12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素数6~12のアリーレンジカルボン酸残基を表し、nは1以上の整数を表す。)
 一般式(a)で表されるポリエステル系可塑剤は、通常のポリエステル系可塑剤と同様の反応により得られるものである。
 ポリエステル系可塑剤のベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリーブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等が挙げられ、これらはそれぞれが一種単独で、又は二種以上の混合物として使用されうる。
 また、ポリエステル系可塑剤の脂肪族モノカルボン酸成分としては、例えば、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。重縮合エステルの両末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
 また、炭素数3以上8以下の環状脂肪族を有するモノカルボン酸が好ましく、炭素数6の環状脂肪族を有するモノカルボン酸がより好ましく、シクロヘキサンカルボン酸、4-メチル-シクロヘキサンカルボン酸が最も好ましい。重縮合エステルの両末端に使用するモノカルボン酸類の環状脂肪族の炭素数が3以上8以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
 ポリエステル系可塑剤の炭素数2~12のアルキレングリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオール等が挙げられ、これらはそれぞれが一種単独で、又は二種以上の混合物として使用されうる。なかでも特に、炭素数2~6のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため好ましく、更に好ましくは炭素数2~4のアルキレングリコールである。
 また、ポリエステル系可塑剤の炭素数4~12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられ、これらはそれぞれ一種単独で、又は二種以上の混合物として使用されうる。
 ポリエステル系可塑剤の炭素数4~12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられ、これらはそれぞれ一種単独で、又は二種以上の混合物として使用されうる。さらに、炭素数6~12のアリーレンジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
 T1層用光学フィルムに好ましく含有されるポリエステル系可塑剤は、その数平均分子量が300~10000の範囲内である。より好ましくは1000~10000の範囲内である。更に好ましくは6000~8000の範囲内である。
 なお、ポリエステル系可塑剤の酸価は、好ましくは0.5mgKOH/g以下であり、より好ましくは0.3mgKOH/g以下である。また、ポリエステル系可塑剤の水酸基価は、好ましくは25mgKOH/g以下であり、より好ましくは15mgKOH/g以下である。なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシ基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
 (斜め延伸)
 本発明に係るλ/4位相差フィルムは、セルロースエステルフィルムの延伸工程でフィルム搬送方向に対して45°方向に延伸することにより製造されることが好ましく、長尺状のλ/4位相差フィルムの長手方向に対する配向角θを35~55°の範囲内にする上で好ましい。
 以下、45°の方向に延伸する方法を説明する。
 セルロースエステルフィルムを長手方向に対して実質的に45°の方向に斜め延伸するためには、図2で示されるテンターを用いることが好ましい。図2は、テンターによる斜め延伸を示す模式図である。
 延伸フィルムの製造は、テンターを用いて行う。このテンターは、フィルムロール(繰出しロール)から繰り出されるフィルムを、オーブンによる加熱環境下で、その進行方向(フィルム幅方向の中点の移動方向)に対して斜め方向に拡幅する装置である。このテンターは、オーブンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。フィルムロールから繰り出され、テンターの入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、オーブン内にフィルムを導き、テンターの出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
 なお、テンターのレール形状は、製造すべき延伸フィルムに与える配向角、延伸倍率等に応じて、左右で非対称な形状となっており、手動で又は自動で微調整できるようになっている。本発明においては、長尺の熱可塑性樹脂フィルムを延伸し、配向角θが延伸後の巻取り方向に対して、10~80°の範囲内で、任意の角度に設定できるようになっている。本発明において、テンターの把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。
 図2は、斜め延伸するために用いるテンターのレールの軌道(レールパターン)を示している。セルロースエステルフィルムの繰出し方向DR1は、延伸後のフィルムの巻取り方向(MD方向)DR2と異なっており、これにより、比較的大きな配向角をもつ延伸フィルムにおいても広幅で均一な光学特性を得ることが可能となっている。繰出し角度θiは、延伸前のフィルムの繰出し方向DR1と延伸後のフィルムの巻取り方向DR2とのなす角度である。本発明においては、例えば40~80°の範囲内の配向角を持つフィルムを製造するため、繰出し角度θiは、10°<θi<60°、好ましくは15°<θi<50°で設定される。繰出し角度θiを前記範囲とすることにより、得られるフィルムの幅方向の光学特性のバラツキが良好となる(小さくなる。)。
 フィルムロール(繰出しロール)から繰出されたセルロースエステルフィルムは、テンター入口(符号aの位置)において、その両端(両側)を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。テンター入口(符号aの位置)で、フィルム進行方向(繰出し方向DR1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具CL,CRは、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーンを有するオーブンを通過する。ここで、略垂直とは、前述の向かい合う把持具CL,CR同士を結んだ直線とフィルム繰出し方向DR1とがなす角度が、90±1°以内にあることを示す。
 予熱ゾーンとは、オーブン入口部において、両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、再び一定となるまでの区間をさす。また、冷却ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg℃以下に設定される区間をさす。
 各ゾーンの温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg+5~Tg+20℃の範囲内、延伸ゾーンの温度はTg~Tg+20℃の範囲内、冷却ゾーンの温度はTg-30~Tg℃の範囲内に設定することが好ましい。
 延伸工程における延伸倍率R(W/Wo)は、好ましくは1.3~3.0倍の範囲内、より好ましくは1.5~2.8倍の範囲内である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向の厚さムラが小さくなるので好ましい。テンター延伸機の延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差を付けると幅方向厚さムラを更に良好なレベルにすることが可能になる。なお、Woは延伸前のフィルムの幅、Wは延伸後のフィルムの幅を表す。
 上記斜め方向に延伸する工程は、製膜工程内(オンライン)で行ってもよく、また一度フィルムを巻き取った後に繰り出して上記テンターにて延伸を行ってもよい(オフライン)。
 セルロースエステルフィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
 セルロースエステルフィルムの乾燥工程における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点-5℃以下、100℃以上で10分以上60分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は100~200℃の範囲内、更に好ましくは110~160℃の範囲内で乾燥が行われる。
 所定の熱処理の後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。更に、幅手両端部にはナーリング加工をすることが好ましい。
 ナーリング加工は、加熱されたエンボスローラーを押し当てることにより形成することができる。エンボスローラーには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
 セルロースアセテートフィルムの幅手両端部のナーリングの高さは4~20μmの範囲内、幅5~20mmの範囲内が好ましい。
 また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻き取りの前に設けることが好ましい。
 (偏光子)
 前記偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性ポリマーフィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、1~80μmの範囲内程度である。
 ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍の範囲内に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗しても良い。
 ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
 λ/4位相差フィルムの遅相軸と偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。「実質的に45°」とは、40~50°の範囲内であることを意味する。λ/4位相差フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41~49°の範囲内であることが好ましく、42~48°の範囲内であることがより好ましく、43~47°の範囲内であることが更に好ましく、44~46°の範囲内であることが最も好ましい。
 具体的には、上記偏光子はMD方向に一軸延伸された長尺のロールフィルムであり、上記λ/4位相差フィルムはMD方向と45°の遅相軸を有する長尺状のロールフィルムであり、両者のMD方向を合わせて張り合わせることにより、長尺状の偏光板を作製することができる。
 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
 《T1層用光学フィルムの準備》
 T1層用の光学フィルムとして、表2に記載の101~112を準備した。
 表2に記載のT1層用の光学フィルム101~112を以下に示す。
 T1層用光学フィルム101:COP1:シクロオレフィンポリマーフィルム60μm(ゼオノアフィルムZF14-060、日本ゼオン(株)製)。
 T1層用光学フィルム102:COP2:シクロオレフィンポリマーフィルム40μm(ゼオノアフィルムZF14-040、日本ゼオン(株)製)。
 T1層用光学フィルム103:PET1:ポリエチレンテレフタレートフィルム60μm(ルミラー;東レ株式会社製)。
 T1層用光学フィルム104:PET2:ポリエチレンテレフタレートフィルム30μm(ルミラー;東レ株式会社製)。
 T1層用光学フィルム105:PP1 :ポリプロピレンフィルム30μm。
 T1層用光学フィルム106:PC1 :ポリカーボネートフィルム30μm(ピュアエースTT-138;帝人株式会社製)。
 T1層用光学フィルム107:PMMA1:下記の方法で作製したアクリル樹脂フィルム30μm。
 (PMMA1の作製)
 204kgのメタクリル酸メチル(MMA)及び51kgの2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)を共重合し、質量平均分子量:132000、ラクトン環含有割合:28.5%のアクリル共重合樹脂を合成した。
 前記アクリル共重合樹脂を用い、溶融製膜し、二軸延伸を行った膜厚60μmの耐熱アクリルフィルムに30μm厚の保護フィルム(トレテック7332、東レフィルム加工株式会社製)を貼付し、初期巻き取り張力T=80N、張力テーパー15%としてロール状に巻き取った。次いで、得られたフィルムロールを巻芯ごと巻き替え機にセットし、繰出し張力T=70N、初期巻き取り張力T=80N、張力テーパー15%とし、更に、T及びTを制御する駆動部(駆動ローラー)間に一本の押付け用ゴムローラー(ニップローラー)を配置し、フィルムの走行位置を固定してフィルムの巻き替えを行い、厚さ30μmのPMMA1を作製した。なお、繰出し張力Tは、巻き終わりまで一定とした。
 T1層用光学フィルム108:PMCAP1:前記アクリル共重合樹脂(前記PMMA1の作製で合成)70質量%、下記CAP30質量%の混合樹脂フィルム120μm。
 T1層用光学フィルム109:PMCAP2:前記アクリル共重合樹脂(前記PMMA1の作製で合成)70質量%、下記CAP30質量%の混合樹脂フィルム80μm。
 T1層用光学フィルム110:CE1(アセチル基置換度2.88、総アシル基置換度2.88、数平均分子量150000のTACを含有する下記セルロースエステルフィルム(厚さ40μm))に、下記の硬化層を積層したフィルム。
 T1層用光学フィルム111:CE2(アセチル基置換度2.88、総アシル基置換度2.88、数平均分子量150000のTACを含有する下記セルロースエステルフィルム(厚さ60μm)に、下記の硬化層を積層したフィルム。
 T1層用光学フィルム112:CE3(アセチル基置換度2.88、総アシル基置換度2.88、数平均分子量150000のTACを含有する下記セルロースエステルフィルム(厚さ20μm)に、下記の硬化層を積層したフィルム。
 CAP   :セルロースアセテートプロプロピオネートフィルム(アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、総アシル基置換度2.75)、数平均分子量110000
 (T1層用光学フィルム110~112の作製)
 (ポリエステル1の合成)
 1,2-プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2-プロピレングリコールを減圧留去することにより、ポリエステル1を得た。ポリエステル1は、1,2-プロピレングリコール、無水フタル酸及びアジピン酸が縮合して形成されたポリエステル鎖の末端に安息香酸のエステルを有する。ポリエステル1の酸価0.10、数平均分子量450であった。
 〈微粒子分散液1〉
 微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製)11質量部
 エタノール                       89質量部
 以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
 〈微粒子添加液1〉
 メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の数平均粒径が0.01~1.0μmとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
 メチレンクロライド                   99質量部
 微粒子分散液1                      5質量部
 (T1層用光学フィルム110の作製)
前記T1層用光学フィルム110は下記にしたがって作製した。
 (ドープの調製)
 メチレンクロライド                  340質量部
 エタノール                       64質量部
 セルロースアセテート(アセチル基置換度2.88、総アシル置換度2.88、Mw=150000)               100質量部
 ポリエステル1(可塑剤)                10質量部
 紫外線吸収剤(チヌビン928(BASFジャパン(株)製))2質量部
 微粒子添加液1                      1質量部
 (フィルムCE1の形成)
 上記の組成物を各々ミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、ドープを調製した。ドープをバンド流延機にて流延した。ここで、ドープの流延量を調整することにより延伸後のフィルムの膜厚が40μmとなるように流延を行った。残留溶剤量が約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをテンターにより140℃の熱風を当てて、延伸率32%まで拡幅した後、延伸率が30%となるように140℃で60秒間緩和させた。その後テンター搬送からローラー搬送に移行し、更に120℃から150℃で乾燥し巻き取り、フィルムCE1を作製した。
 次いで上記作製したフィルムCE1の表面に下記硬化層B及び硬化層Cを積層して、ハードコート層を有するT1層用光学フィルム110を作製した。
 (硬化層Bの塗布)
 上記フィルムCE1上に、下記硬化層B塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して、硬化後の層厚が110nmとなるように硬化層Bを設けた。
 〈粒子分散液Aの作製〉
 メタノール分散アンチモン複酸化物コロイド(固形分60%、日産化学工業(株)製アンチモン酸亜鉛ゾル、商品名:セルナックスCX-Z610M-F2)6.0kgにイソプロピルアルコール12.0kgを攪拌しながら徐々に添加し、粒子分散液Aを調整した。
 〈硬化層B塗布液〉
 PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)   40質量部
 イソプロピルアルコール                 25質量部
 メチルエチルケトン                   25質量部
 ペンタエリスリトールトリアクリレート         0.9質量部
 ペンタエリスリトールテトラアクリレート        1.0質量部
 ウレタンアクリレート(商品名:U-4HA 新中村化学工業社製)
                            0.6質量部
 粒子分散液A                      20質量部
 1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(イルガキュア184、BASFジャパン社製)               0.4質量部
 2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モノフォリノプロパン-1-オン(イルガキュア907、BASFジャパン社製)
                            0.2質量部
 10%FZ-2207、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(日本ユニカー社製)                   0.4質量部。
 (硬化層Cの塗布)
 上記硬化層B上に、下記の硬化層C塗布液をダイコートし、80℃で乾燥した後、120mJ/cmの紫外線を高圧水銀灯で照射して層厚が92nmになるように硬化層Cを設けT1層用光学フィルム110を作製した。
 〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
 テトラエトキシシラン230g(商品名:KBE04、信越化学工業社製)とエタノール440gを混合し、これに2%酢酸水溶液120gを添加した後に、室温(25℃)にて26時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
 (硬化層C塗布液)
 プロピレングリコールモノメチルエーテル        430質量部
 イソプロピルアルコール                430質量部
 テトラエトキシシラン加水分解物A           120質量部
 γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製)                  3.0質量部
 イソプロピルアルコール分散中空シリカゾル(固形分20%、触媒化成工業社製シリカゾル、商品名:ELCOM V-8209)   40質量部
 アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製)                    3.0質量部
 10%FZ-2207、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液(日本ユニカー社製)                   3.0質量部。
 (T1層用光学フィルム111、112の作製)
 フィルムCE1の形成において、延伸後のフィルムの厚さを60μmとなるようにドープの流延量を変えたほかは同様にして、フィルムCE2を形成した。また、延伸後のフィルムの厚さを20μmとなるようにドープの流延量を変えたほかは同様にして、フィルムCE3を形成した。
 T1層用光学フィルム110の作製において、フィルムCE1をフィルムCE2、フィルムCE3に代えたほかは同様にして、T1層用光学フィルム111、112を作製した。
 T1層用光学フィルム101~112の透湿度を前記(透湿度)に記載の方法に従って測定した。
 結果を表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 《T2層用光学フィルム201の作製》
 〈微粒子分散液1〉
 微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製)11質量部
 エタノール                       89質量部
 以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
 〈微粒子添加液1〉
 メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の数平均粒径が0.01~1.0μmとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
 メチレンクロライド                   99質量部
 微粒子分散液1                      5質量部。
 (主ドープ)
 下記組成の主ドープを調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテートを攪拌しながら投入した。下記組成の全てを投入後これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。
 なお、ポリエステル1は、上記合成例により合成した化合物を用いた。
 〈主ドープの組成〉
 メチレンクロライド                  340質量部
 エタノール                       64質量部
 セルロースアセテート(Mw=210000、アセチル基置換度2.41、総置換度2.41)                  100質量部
 ポリエステル1                    2.5質量部
 チヌビン928(紫外線吸収剤;BASFジャパン製)  2.0質量部
 微粒子添加液1                    1.0質量部。
 上記ドープを、無端ベルト流延装置を用い、ステンレスベルト支持体上に均一に流延した。
 ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離したセルロースエステルフィルムを、熱をかけながらテンターを用いて幅方向に延伸した。次いで、乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させ、テンタークリップで挟んだ端部をレーザーカッターでスリットし、その後巻き取った。
 得られたフィルムを168℃の条件で2.0倍の延伸倍率まで、遅走軸と長手方向が45°となるように斜め延伸し、膜厚64μmのT2層用光学フィルム201(長尺状のλ/4位相差フィルム)を得た。
 なお、上記ポリエステル1はT1層用光学フィルム110~112の作製と同様のポリエステル1を用いた。
 《T2層用光学フィルム202~216の作製》
 T2層用光学フィルム201の作製において、樹脂と添加剤、延伸条件及び膜厚を表3のように変化させたほかは、同様にしてT2層用光学フィルム202~214を作製した。なお、T2層用光学フィルム215はT1層用光学フィルム102と同様に、COP2を用い、T2層用光学フィルム216はT1層用光学フィルム106と同様に、PC1を用いた。表3における樹脂の「他のアシル基置換度」のアシル基は、プロピオニル基である。また、表3の添加剤1-5、1-8、1-11、1-16は、前記糖エステル化合物の具体例を表す。
 《T2層用光学フィルムの評価》
 前記(平衡含水率)に記載の方法により、T2層用光学フィルム201~216の平衡含水率を求めた。
 また、自動複屈折率計Axometric社製のAxoScanを用いて、23℃・55%RHの環境下で、各波長での複屈折率測定によりRoを算出する方法で、T2層用光学フィルム201~216の面内リターデーションを光波長450nm、550nm及び650nmで測定し、Re(550/650)を求めた。
 結果を表3に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 《偏光板301の作製》
 厚さ、120μmの長尺状のポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。
 これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し長尺状の偏光子を得た。
 作製したT2層用光学フィルム202の片面を完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として用い、上記長尺状の偏光子の片面に貼合した。その際、偏光子と光学フィルム202の長手方向を合わせ、偏光子の透過軸とλ/4フィルムの遅相軸のなす角度が45°となるよう貼合した。偏光子のもう一方の面に、T1層用光学フィルム101を、同様にアルカリケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として用い、貼り合わせて偏光板301(長尺状)を作製した。
 《偏光板302~327の作製》
 偏光板301の作製において、T2層用光学フィルムとT1層用の光学フィルムを表4のように変えたほかは同様にして、偏光板302~327を作製した。ただし、光学フィルム110~112を用いる場合は、硬化層を設けていない面を偏光子と対向させて接着した。
 《有機EL表示装置301の作製》
 次に、以下の手順で、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を作製した。
 本実施例の有機EL素子は、ガラス基板上にTFTを設け、その上にスパッタリング法によって厚さ80nmのクロムからなる反射電極、反射電極上に陽極としてITOをスパッタリング法で厚さ40nmに成膜し、陽極上に正孔輸送層としてポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)をスパッタリング法で厚さ80nm、正孔輸送層上にシャドーマスクを用いて、RGBそれぞれの発光層を100nmの層厚で形成した。赤色発光層としては、ホストとしてトリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq)と発光性化合物[4-(dicyanomethylene)-2-methyl-6(p-dimethylaminostyryl)-4H-pyran](DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。緑色発光層としては、ホストとしてAlqと、発光性化合物クマリン6(Coumarin6)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。青色発光層としては、ホストとしてBAlqと発光性化合物Peryleneとを共蒸着(質量比90:10)して厚さ100nmで形成した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 さらに、発光層上に電子が効率的に注入できるような仕事関数の低い第1の陰極としてカルシウムを真空蒸着法により4nmの厚さで成膜し、第1の陰極上に第2の陰極としてアルミニウムを2nmの厚さで成膜した。ここで、第2の陰極として用いたアルミニウムはその上に形成される透明電極をスパッタリング法により成膜する際に、第1の陰極であるカルシウムが化学的変質をすることを防ぐ役割がある。以上のようにして、有機発光層を得た。次に、陰極上にスパッタリング法によって透明導電膜を80nmの厚さで成膜した。ここで透明導電膜としてはITOを用いた。さらに、透明導電膜上にCVD法によって窒化珪素を200nm成膜することで、絶縁膜とした。
 次に、上記作製した偏光板301のT2層側に接着層を塗工した後、図1に示すように、上記のように製作した有機EL素子の絶縁膜上に偏光板を接着した。
 《有機EL表示装置302~327の作製》
 有機EL表示装置301の作製において、偏光板を302~327に変えたほかは同様にして、有機EL表示装置302~327を作製した。
 《有機EL表示装置の評価》
 1)赤色の変色
 1-1)有機EL表示装置を、23℃・95%RHで24時間保存した。保存後の有機EL表示装置に23℃・55%RHの雰囲気下で、白の画像を表示させて、正面の色味を目視観察した。
 1-2)また、保存後の有機EL表示装置に白の画像を表示させたときの、有機EL表示装置の輝度スペクトルを測定した。
 輝度スペクトル測定は、コニカミノルタオプティクス(株)製 CS2000を用いて、以下の手順で行った。
 a)保存前と保存後のそれぞれにおいて、輝度スペクトル全体に対する、波長550nmの成分の割合t1と、波長650nmの成分の割合t2とを求めた。
 b)保存前における割合t1に対する割合t2の比率S(t2/t1)と、保存後における割合t1に対する割合t2の比率S(t2/t1)とを求めた。
 c)次いで、保存後の比率Sと、保存前の比率Sとの差「S-S」を求め、「(S-S)/S」を「表示光変化率」として定義した。
 (赤色の変色の評価基準)
 赤色の変色の評価は、以下の基準に基づいて行った。
 ◎:目視では白く、かつ表示光変化率が1%未満である
 ○:目視では白く、かつ表示光変化率が1%以上3%未満である
 △:目視ではピンクがかっており、かつ表示光変化率が1%以上3%未満である
 ×:目視ではっきりと赤みが認識でき、かつ表示光変化率が3%以上である。
 2)外光反射
 有機EL表示装置を、23℃・55%RHの環境に48時間保存後、電圧を印加せず、発光していない状態にして、照度約100lxの環境下に置き、正面と斜め45度の方向から目視により観察し、反射色の黒味レベルを下記の評価基準で評価した。結果を表4に示す。
 (外光反射の評価基準)
 ◎:正面と斜視で全く外光反射の色味に変化は見られない
 ○:正面と斜視で僅かに外光反射の色味に差は見られるが、気にならない程度
 △:正面と斜視で外光反射の色味違いが気になる状態
 ×:正面と斜視で外光反射の色味違いが極めて気になる状態
 上記、有機EL表示装置の評価結果を表4に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
 表4より、本発明の有機EL表示装置は、外光の反射の影響が小さく、且つ、低温高湿環境下に保存したときの赤色の変化が小さいことが分かる。これに対し、T2層の平衡含水率が3.0%未満である有機EL表示装置326及び327、並びに、T2層の平行含水率が7.0%を超える有機EL表示装置315は赤色の変化が大きいことが分かる。また、T1層の透湿度が150g/m・24hを超える有機EL表示装置309も、赤色の変化が大きいことが分かる。
 有機EL表示装置の黒色画像を観察する際に、見る角度によらず、外光の反射による色の変化が小さく、明るい場所で観察することができる高画質の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に適用できる。また、低温かつ高湿の環境下で長時間使用しても赤色の変化が小さく、幅広い環境条件で使用される有機エレクトロルミネッセンス表示装置に適用できる。
 A 有機エレクトロルミネセンス表示装置
 B 有機EL素子
 C 偏光板
 1 基板
 2 TFT
 3 金属電極
 4 ITO
 5 正孔輸送層
 6 発光層
 7 バッファー層
 8 陰極
 9 ITO
 10 絶縁膜
 11 T2層用光学フィルム
 12 偏光子
 13 T1層用光学フィルム
 14 硬化層
 15 反射防止層
 DR1 繰出し方向
 DR2 巻取り方向
 θi 繰出し角度(繰出し方向と巻取り方向のなす角度)
 CR,CL 把持具
 Wo 延伸前のフィルムの幅
 W 延伸後のフィルムの幅

Claims (9)

  1.  有機エレクトロルミネッセンス素子上に偏光板を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、該偏光板が視認側からT1層、偏光子、T2層を順に有し、前記T1層の23℃・80%RHにおける透湿度が150g/m・24h以下であり、前記T2層がλ/4位相差フィルムであり、かつ該T2層は、23℃・80%RHにおける平衡含水率が3.0~7.0質量%の範囲内であるであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  2.  前記λ/4位相差フィルムが、セルロースエステルを含有し、該セルロースエステルの少なくとも一種が下記式(1)及び式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
     式(1) 2.3≦A+B≦2.7
     式(2) 0≦B≦2.0
    〔式(1)及び(2)において、Aは前記セルロースエステルのアセチル基置換度であり、Bはアセチル基以外のアシル基の置換度である。〕
  3.  前記λ/4位相差フィルムが、糖エステル化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  4.  前記λ/4位相差フィルムがセルロースエステルを含有し、該λ/4位相差フィルムの23℃・55%RHの環境下、光波長650nmで測定したときの面内リターデーション値Ro(650)に対する同環境下、光波長550nmで測定したときの面内リターデーション値Ro(550)の比の値Re(550/650)が0.7以上、1.0未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  5.  前記λ/4位相差フィルムが、斜め延伸された樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  6.  前記λ/4位相差フィルムの膜厚が、20~60μmの範囲内であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  7.  前記T1層は、アセチル基置換度が2.80~2.95の範囲内であるセルロースエステル及びポリエステル系可塑剤を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  8.  前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、トップエミッション型であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
  9.  請求項1~8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法であって、前記λ/4位相差フィルムを、斜め延伸する工程を経て、製造することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
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