WO2012029186A1 - 電気錠及び該電気錠を使用した電子錠システム - Google Patents

Abstract

電気的施錠手段と機械的施錠手段間の機械的ストレスをなくし、収納システムを電子錠システムとしない場合でも容易且つ低コストで電子錠システムに移行できる電子錠を提供する。 電気的施錠手段（ロックモジュール）43と、機械的に施錠・解錠できる機械的施錠手段とを有し、機械的施錠手段のデッドボルト42は機械的施錠解錠操作に伴って止め具に対する位置が変化し、デッドボルト42と共に移動するロックモジュール43はロックシャフト44とアクチュエータを含む電動装置を有して、ロックシャフト44が上記電動装置で駆動されて移動し、アクチュエータが施錠状態に駆動されると、ロックシャフト44の先端部が止め具14の係止溝に係止する位置に移動できて、止め具14の機械的移動を停止でき、上記電動装置が解錠状態に駆動されると、ロックシャフト44の先端部が止め具14の係止溝から離脱して、止め具14の機械的移動が可能になる構成とした。

Description

電気錠及び該電気錠を使用した電子錠システム

　本発明は、機械錠だけで施錠・解錠ができ、また電気的にも施錠・解錠ができる電気錠、及び該電気錠を使用した電子錠システムに関するものである。

　近年、書類等の収納システム（ファイル棚、ロッカー、引き出し等を収納庫とする収納システム）においては、高いセキュリティを実現するため、機械的施錠手段で施錠及び解錠を行う従来の機械錠システムに替えて、施錠・解錠権限を有する者を特定するとともに、施錠・解錠履歴を記録することができる電子錠システムが普及している。

　こうした電子錠システムは、ファイル棚、ロッカー、引き出し等の施錠及び／又は解錠を、ＩＣカード等（電子的鍵媒体）に記載登録されたカードＩＤナンバー等の認証及び／又は照合等によって行うものであり、一般的には、ファイル棚等の扉等に組み込まれた電気錠及び電気錠の制御等を行う各種モジュールと、電気錠の施錠・解錠をカードＩＤナンバーの認証及び／又は照合等を行うことによって達成する親機と、親機と通信を行って認証、照合、施錠・解錠履歴等を行う管理コンピュータとからなっている（特許文献１）。

　このような電子錠システムにおいてファイル棚等の扉等に組み込まれる構成要素は、例えば以下のようなものである。第１にデッドボルト（閂部材を施錠状態で停止させるための止め具等の機械的移動を禁止する部材で、従来の機械的施錠手段では、止め具の係止溝に直接係合して止め具の移動を禁止する。）を電気的に駆動する駆動機構（例えばモーターあるいはソレノイドコイルを使用した電磁アクチュエータ等である）、第２に駆動機構を作動させる回路等を有する駆動基板（駆動モジュール）、第３に親機から送信された施錠信号や解錠信号を受信等する小型無線装置（小型無線モジュール）、第４に電源から受電した電圧等を制御等して駆動基板や小型無線機に給電する電源制御基板（電源制御モジュール）、そして、第５に電源となる１次電池又は２次電池を収容する電池パッケージ（電池モジュール）であり、さらに、第６に機械錠である。ここで機械錠は、電気錠や電子錠システムの電源異常や故障時等に使用することで緊急時に強制的に解錠する、例えばシリンダー錠等である。

　これまでの該シリンダー錠は、電気錠が動作しない場合に、物理的にモーター、ソレノイド等の駆動装置を動かす機能であり、電気錠に換えてシリンダー錠の使用を継続した場合は、電気錠自体に機械的なストレスを与え、結果的に電気錠を毀損する機構となっていることがほとんどである。

　かかる電子錠システムでは、収納システムを設置した部屋等の壁面等に、電子的鍵媒体に登録ＩＤを書き込んだり、登録ＩＤを読み込んだりするための親機を設置して、この親機がさらに通信回線等を経由して或いは直接的に管理コンピュータへ接続されて、登録ＩＤの認証・照合等を行うことで、セキュリティの高い電子錠システムを構築できるようになっている。もちろん電子錠システムの管理者は、管理コンピュータを介して、施錠・解錠等をリアルタイムにモニターし、それらの履歴や登録ＩＤの認証・照合等を管理することができるのが一般的である。

特開２０１０－１７４５１６号公報

　ところで、収納システムの導入に際しては、ユーザーにおける予算等の制約から、電子錠システムを採用せず、機械錠システムとしておいて、その後、高いセキュリティが要求されるようになったときに、電子錠システムにシステムアップすることがある。

　こうした場合、収納システムの導入時にファイル棚等の扉等に組み込まれる構成は（工場出荷時の構成は）、機械錠と駆動機構だけを備える構成（第１の構成）と、第１の構成に加えて駆動基板、小型無線装置、電源制御基板、電池パッケージを備える構成（第２の構成）とが想定される。

　しかし第１の構成では、機械錠の施錠・解錠の際におけるデッドボルトの機械的な移動（以下、単に「移動」と表記することがある。）が駆動機構に用いられるモーター又は電磁アクチュエータ等に伝達されて（両者が機械的に相互干渉して）、デッドボルトと駆動機構との間に機械的ストレスが生じる。さらに、電子錠システムにシステムアップする際には、駆動基板、小型無線装置、電源制御基板、電池パッケージを追加する必要が生じて、これらの構成要素を扉の内側に取り付ける工事と、これら構成要素間の電気的な配線工事が必要となって、システムアップの工期及び工事費が増加する。

　第２の構成では、システムアップ時の上記工事が不要となる一方で、第１の構成と同様な機械的ストレスが生じ、また駆動基板、小型無線装置、電源制御基板、電池パッケージを当初から備えているため、導入当初のコストがアップする。

　なお、第１及び第２の構成のいずれであっても、電子錠システムとした場合、モーターあるいは電磁アクチュエータを駆動するための電流を流さなければならず、好ましくは、こうした電流を少なくすることが望まれる（バッテリー交換の寿命を長くできることが望まれる）。

　なお、電子錠システムとしない場合、当初の構成を機械錠だけとして、システムアップ工事の現場において解施錠を直接司るシリンダー錠等の機械的な駆動機構に電気錠を追加することは、現場における機械錠への駆動機構の取り外しと、改めて電気的信号で制御される錠を加えた解施錠装置の組み込み作業等が生じるため、極めて専門性の高い技術を必要とする錠前の安全性の保証がなくなるため、このようなシステムアップは採用し難いものとなってしまう。

　本発明は、上記各問題を解決するために、収納システムの導入当初において、電子錠システムとして使用しない場合には、施錠・解錠時における駆動機構とデッドボルトの間に生じる機械的ストレスをなくし且つコストを低減し、また電子錠システムにシステムアップする際の工事を簡単化できて工事費用を低減でき、また電子錠システムに障害が生じて、電子錠システムの電気錠の解錠ができなくなったときでも、機械錠による解錠・施錠を可能とし、好ましくは、電気錠等の消費電流を低減してバッテリー交換の周期を長くできる電子錠及び該電気錠を使用した電子錠システムの実現を課題とするものである。

　上記課題を解決するため、本発明は、閂部材の機械的移動を規制する止め具を有する収納庫において使用される電気錠であって、電気的施錠手段及び機械的なカギを用いて施錠及び解錠をすることができる機械的施錠手段を有し、機械的施錠手段が有するデッドボルトが機械的施錠手段の施錠操作及び／もしくは解錠操作に伴って止め具に対する位置が変化し、デッドボルトとともに移動するロックモジュールは少なくともロックシャフト及びアクチュエータを含む電動装置を有し、ロックシャフトはアクチュエータを含む電動装置で駆動されて機械的に移動し、アクチュエータを含む電動装置が施錠状態に駆動されると、ロックシャフトの先端部が止め具の係止溝に係止する位置に移動することができて、止め具の機械的移動を停止させることができ、アクチュエータを含む電動装置が解錠状態に駆動されると、ロックシャフトの先端部が止め具の係止溝から離脱する位置に移動して、止め具の機械的移動が可能になる構成を有している（請求項１）。

　ここでアクチュエータは、ロックシャフトを機械的に移動させることができるものであればよく、圧電アクチュエータのほか、例えばモーターあるいはソレノイドコイルを使用した電磁アクチュエータであってもよい。

　かかる構成を有する電気錠においては、圧電アクチュエータ等の電動装置を施錠状態にしておき、機械的施錠手段の操作だけでデッドボルトと止め具との位置関係を変化させることで、ロックシャフトの先端部を止め具の係止溝に係止させたり離脱させたりすることが可能になる（機械錠システムとして使用できる）。また電子錠システムとした使用した場合に、故障等によって解錠できなくなっても、機械的施錠手段の操作で解錠できる。従って該電気錠を用いることで、収納システムの導入当初には機械錠システムとすることができ、その後電子錠システムにシステムアップすることができる。

　また該電気錠では、電気的施錠手段（ロックモジュール）は、機械的施錠手段に含まれるデッドボルトとともに移動するから、機械的施錠手段の操作時及び電気的施錠手段の操作時のいずれにおいても、ロックモジュールと機械的施錠手段（たとえば）との間に機械的相互干渉が生じない（両者の間には機械的ストレスが生じない）。このように機械的干渉が生じない結果、該電気錠では、アクチュエータによる機械的施錠手段の駆動がないために、電気的施錠手段の負荷が軽くなって低消費電力化され、さらに機械的な構造も単純化できるから、小型・軽量化が可能となる。

　ところで機械的施錠手段の例としては、シリンダー錠等がある。また本発明においては、機械的施錠手段を施錠・解錠するためのカギをメカニカル・キーと表記することがある。なお把手部は、ファイル棚等の扉等の開閉のために閂部材の位置を移動させる操作を行なう部分であり、ハンドル型、レバー型、ボタン型等その形態を問わない。

　さらに（請求項２）に係る電気錠は、ロックシャフトの移動方向とデッドボルトの移動方向とが略直交しており、機械的施錠手段の施錠状態のときには、デッドボルトが止め具に接近し、この状態でアクチュエータを含む電動装置が施錠状態に駆動されると、ロックシャフトの先端部が止め具の係止溝に係止して、止め具の機械的移動が停止され、一方アクチュエータを含む電動装置が解錠状態に駆動されると、ロックシャフトの先端部が止め具の係止溝から離脱して、止め具の機械的移動が可能になるものである。

　この場合、機械的施錠手段が解錠状態になったときには、デッドボルトが止め具から離脱して、アクチュエータを含む電動装置が施錠状態にあっても、ロックシャフトの先端部は止め具の係止溝に係止しないようになっている。

　かかる電気錠では、機械的施錠手段の施錠状態（デッドボルトが止め具の係止溝に接近している状態）であっても、ロックシャフトは、デッドボルトの移動方向と略直交する方向に移動できるから、アクチュエータを含む電動装置で駆動されて、止め具の係止溝から離脱すること（電気錠の解錠状態）ができ、また係止溝に係止すること（電気錠の施錠状態）ができる。

　一方、機械的施錠手段が解錠状態にあるときには、デッドボルトが止め具から離脱しており、ロックシャフトは、その駆動状態にかかわらず止め具の係止溝に係止しない。従って、アクチュエータを含む電動装置を施錠状態にしておくことで機械錠として使用することができ、故障等で電気錠を解錠できないときには、機械的施錠手段の操作で解錠することができる。

　上記電気錠のアクチュエータを圧電アクチュエータとする構成をとってもよい。圧電アクチュエータは、強誘電体に電圧を印加すると、強誘電体が変形することを利用したもので、駆動電圧の変化時だけわずかな電流（例えば数百マイクロアンペア）が流れるにすぎないから、消費電力が極めて少ない電気錠を実現できる。また圧電アクチュエータは、電磁アクチュエータ等に比べて構造が簡単で、巻き線部品を必要としないから、小型・軽量、かつローコストであり、もちろん銅損、鉄損を生じない。

　さらに請求項３に係る電気錠が有するアクチュエータを含む電動装置は、略長方形状のケースに入れてデッドボルトに一体的に取付けられ、その一端側がロックモジュール本体に固定され、その他端側がロックモジュール本体に対し解放されており、他端側には応動部材が係合している。圧電アクチュエータ等の電動装置は、所定の電圧が印加されるとその長手方向の反りが変化して、その他端がデッドボルトの移動方向と略直交する方向に移動することで、応動部材を駆動する。応動部材にはロックシャフトの基端部が係合しており、応動部材の移動に伴ってロックシャフトが移動する。すなわち、圧電アクチュエータ等の電動装置は、印可電圧が変化すると、その長手方向の反りが変化して、応動部材を介して、ロックシャフトをデッドボルトの移動方向と略直交する方向に移動させる。

　電気錠が有するロックモジュールは、さらに受力部を有している（請求項４）。受力部が、応動部材を介して、前記ロックシャフトの基端部から前記応動部材に加わる力に抗することができる。すなわち、応動部材の一面側がロックシャフトの基端部と相対し、その他面側が受力部に相対している。従って受力部は、ロックシャフトの基端部から応動部材に加わる力に抗して、応動部材がロックシャフトの軸方向に移動することを防ぐことができる。

　本発明に係る電子錠システム（請求項５）は、少なくとも収納庫の外部に設置されて電気錠の施錠・解錠のためにICカードや携帯電話のような電子的鍵媒体の照合を行う親機と、収納庫に設置された信号送受信機能と電気錠制御機能、電流電圧制御機能を有する子機及び電気錠とを有し、子機は、電源を内蔵して電気錠を駆動することができるとともに、親機と通信を行って、電子的鍵媒体の照合の結果に基づき、電気錠を駆動して、収納庫が施錠及び／又は解錠することができる。

　電源となる電池パッケージと子機のモジュールを一体化することによって、子機を電気錠と離して設置して、両者の間を１本のワイヤー・ハーネスでコンセントに差し込むレベルで簡単に接続することができる。あるいは、子機を直接電気錠のコネクター部分に取り付けることも可能となる。例えば、子機が有するコネクタまたは接点を電気錠が有するコネクタまたは接点に直接接続できる位置にこ設置するとで、子機と電気錠との間を、配線（ワイヤー・ハーネス）を用いることなく接続することができる。

　もちろん圧電アクチュエータを含む電動装置を使用することで、電気錠と子機のさらなる低消費電力化、小型・軽量化も可能となる。

　かくして、電気錠を組込んであるキャビネットの使用において、シリンダー錠等の機械的施錠から、利用管理が可能な電子錠システムへの転用に必要な専門技術者への依頼や付属品等、必要なコストの低減が可能となり、また電子錠システムへのシステムアップの工期短縮、コスト削減に資することができる。

　本発明に係る電子錠システム（請求項６）は、電子錠システムにおける駆動基板、小型無線装置、電源制御基板及び電池モジュールを１つにパッケージ化した子機と、管理者から通信回線等で送られてくるキャビネット扉の解施錠の権限情報を受信し記録し保存し、電子的鍵のＩＤを読み込んで同記録データと照合して子機に解施錠信号を送信する親機を一体的な製品とする電子錠システムである。圧電アクチュエータ等の電動装置を作動させる回路等を有する駆動基板（駆動モジュール）、親機から送信された施錠信号や解錠信号を受信等する小型無線装置（小型無線モジュール）、電源から受電した電圧等を制御等して駆動基板や小型無線機に給電する電源制御基板（電源制御モジュール）、及び電源となる１次電池又は２次電池を収容する電池モジュールをすべて小型・軽量化することができて、これらを子機として１つのパッケージに収容することができる。また、こうした１パッケージ化によってコストを低減できる。

　もちろん圧電アクチュエータを含む電動装置を使用することで、電気錠と子機のさらなる低消費電力化、小型・軽量化、コスト低減が可能となる。

　ここで１パッケージ化された駆動基板、小型無線装置、電源制御基板及び電池モジュールとは、それらの名称に拘わらず、少なくとも上述各モジュールの機能を有して一体化することで、該パッケージを電気錠と組み合わせる電子錠システムの収納庫側において、必要とされる機能を発揮するものであればよい。

　子機の動作をコントロールする親機に対し、キャビネット管理者が指定する解施錠の権限データを送信する管理システムは、インターネットやイントラネットの他、一般電話、無線電話、内線電話の各回線を使って親機と解施錠の権限データを送受信する。親機と子機をセットした製品となる該機構は管理者が使用する管理ソフトをセットして販売される。該管理ソフトは、電子的媒体を鍵とするための同媒体のＩＤを読み込んで同媒体を鍵として登録するシステムであるが、ＰＣを操作して使用する管理システムのソフトプログラムは、利用者であるキャビネット管理者に対し、直接ＣＤ－ＲＯＭやネットからのダウンロードによって提供される他、ＡＳＰ方式（アプリケーションサービスプロバイダー）等のネットで提供する。ＡＳＰ方式では、利用者からの委託で、電子鍵の登録データの保存、親機への書き込み、親機にアクセスしたデバイスの照合履歴、子機が制御する電気錠の開閉情報を、保管し利用者に提供する。

　ここで、上記電子錠システムは、前記親機と通信を行うことができて、少なくとも該電子錠システムにおける施錠・解錠権限者の特定、及び／又は施錠・解錠履歴を管理記録するための管理コンピュータをさらに有する構成とすることもできる（請求項７）。

　上記構成を有する本発明の電気錠及び該電気錠を使用した電子錠システムによれば、収納システムの導入時に、電子錠システムではなく機械錠システムとする場合であっても、電気的な施錠・解錠を行うロックモジュールと、機械的な施錠・解錠を行うデッドボルトとの間に生じる機械的ストレスをなくすことができるとともに、低消費電力化、各構成要素の小型・軽量化が可能となる。またアクチュエータを電磁アクチュエータやモーター等の巻き線部品が不要な圧電アクチュエータとした場合には、さらにコストを低減でき、消費電力が極めて少なくなるから、電気錠とその周辺電子回路の消費電力が極めて少なくなって、さらなる電子回路の小型化、バッテリーの小型化、バッテリー寿命の延長が可能となる（バッテリー交換周期を長くすることができる）。

　また、駆動基板、小型無線装置、電源制御基板及び電池ホルダーを１パッケージ化した子機とした場合には、駆動基板間の配線（ワイヤー・ハーネス）をなくすことができ、子機を収納庫（ファイル棚等）の扉内部に容易に取り付けることができる。

　かくして、電子錠システムにおける構成要素の小型化が図れて、コスト低減が可能となる。電子錠システムへのシステムアップでも同様であり、その工期短縮にも資する。

　また電子錠システムに障害が生じて、電気錠の解錠ができなくなったときでも、機械的施錠手段による解錠や施錠が可能となる。

本発明に係る電気錠を使用する電子錠システムの概略構成を示す図である。 電子錠システムで使用される把手部の概略構成を示す図である。 本発明に係る電気錠の一実施形態を説明するために電気錠の側面概略構造を示すものであり（ａ）は概略側面構造を（ｂ）は同平面概略構造を示す図である。 図３に示した電気錠におけるロックモジュール（圧電アクチュエータを含む電動装置を用いた場合のロックモジュール）の分解斜視図である。 本発明に係る電子錠システム（一実施形態）の概略構成を示す図である。 図５に示した電子錠システムにおける子機の概略構成を示す図である。 図５に示した電子錠システムにおける親機の概略構成を示す図である。

　先ず、本発明に係る電気錠を使用する電子錠システムについて、その概略を説明したのち、本発明に係る電気錠及び本発明に係る電子錠システムを実施するための形態について、図面を用いて説明する。

　本発明に係る電気錠を使用する電子錠システムは、図１に示すように、ファイル棚等の収納庫１０ｎ（ｎ＝１、２・・・）の施錠及び／又は解錠を行うものである。かかる電子錠システムは、収納庫１０ｎごとに設けられた電気錠と子機、ならびに収納庫１０ｎの外部に設けられて各子機との間で通信を行なうための親機２０を備えている。この電子錠システムでは、さらに親機２０が、電子錠システムにおける施錠・解錠のための電子的鍵媒体との間の認証及び／又は照合等のために、管理コンピュータ３０との間で通信を行なうものであってもよい。

　図２は、収納庫１０ｎに取り付けられる把手部１１（図１を併せて参照）の概略構成を示す図である。この把手部１１は、把手を手で操作するなどして閂部材１２を矢印Ａ方向に移動させるものである。この閂部材１２の移動に対応して、閂操作部１３の止め具１４が矢印Ｂの方向に移動するようになっており、閂部材１２の先端部１２ａが把手部１１から最も突出して、収納庫１０ｎの扉を開くことができないときに、止め具１４を移動できなくすることで、収納庫１０ｎを施錠状態にすることができる。なお止め具１４は、規制部材１５で、その移動方向が規制されて矢印Ｂ方向の以外にぶれないようになっている。

（電気錠）
　図３は、本発明に係る電気錠の一実施形態を説明するためのものである。ここで（ａ）は電気錠の側面概略構造を、（ｂ）は同平面概略構造を示す図である。

　本発明に係る電気錠４０は、機械的施錠手段であるシリンダー錠４１、デッドボルト４２及び電気的施錠手段であるロックモジュール４３を有している。シリンダー錠４１は、その外周部４１ａが収納庫１０ｎの扉に取り付けられて、回転部４１ｂがメカニカル・キーによる施錠及び解錠操作で回転するようになっている。デッドボルト４２は、略コ字形状をなしており、その一端側４２ａがシリンダー錠４１の回転部４１ｂに係合しており、その他端側４２ｂにはロックモジュール４３がビス４２ｃで取り付けられている。ここでは、シリンダー錠４１が有する回転部４１ｂの回転運動が往復運動に変換されて、この往復運動でデッドボルト４２が矢印Ｃ１及びＣ２の方向に駆動されるようになっている。

　かくしてデッドボルト４２は、シリンダー錠４１の施錠操作にともない矢印Ｃ１の方向に移動して止め具１４に近接する一方、解錠操作にともない矢印Ｃ２方向に移動して止め具１４から離れる。そして、このデッドボルト４２の移動に伴ってロックモジュール４３も移動する。従ってシリンダー錠４１の操作に伴って、シリンダー錠４１とロックモジュール４３と間に機械的ストレスが生じることはないのである。

（ロックモジュール）
　図３に示すロックモジュールは、例えばソレノイドコイルを使用した電磁アクチュエータを有しており、ソレノイドコイルが所定の電流で駆動されると、ソレノイドコイルが発生する磁界によって、ロックシャフト４４とその先端部４４ａが矢印Ｄ方向に移動するように構成されている。かくしてロックモジュール４３は、ロックシャフト４４を、デッドボルト４２の移動方向と略直交する方向（矢印Ｄ方向）に円滑に移動させることができる。

　従ってシリンダー錠４１が施錠状態のときに、デッドボルト４２が止め具１４に接近するようにしておけば、この状態でアクチュエータが施錠状態に駆動されると、ロックシャフト４４の先端部４４ａが止め具１４の係止溝１４ａに係止することができて、止め具１４の機械的移動（図２における矢印Ｂ方向の移動）が停止されることになる。一方、アクチュエータが解錠状態に駆動されると、ロックシャフト４４の先端部４４ａが止め具１４の係止溝１４ａから離脱して、止め具１４の機械的移動が可能になる。

　また、シリンダー錠４１が解錠状態のときには、デッドボルト４２が止め具１４から離脱するから、ロックシャフト４４の先端部４４ａは、止め具１４の係止溝１４ａに係止することがない。

　ところで電気錠４０を機械錠として使用することを考慮すれば、電気錠４０のアクチュエータは、所定の電流で駆動されると解錠状態となって、電流が流れないときには施錠状態となるものが好ましい。なおアクチュエータは、ソレノイドコイルの使用に替えて、例えばモーターの回転をウォームギヤで減速してロックシャフト４４を移動させるものであってもよい。

　図４は、アクチュエータとして圧電アクチュエータ４５を用いた場合のロックモジュール４３の分解斜視図である。ロックモジュール４３は、ロックモジュール本体４３ａと、ロックシャフト４４、圧電アクチュエータ４５、応動部材４６、および受力部４７を有している。ロックシャフト４４は、シャフト孔４８を挿通して、その基端部４４ｂが応動部材４６に係合するようになっている。

　圧電アクチュエータ４５は、略長方形状をなし、その一端側４５ａがロックモジュール本体４３ａに固定され、その他端側４５ｂがロックモジュール本体４３ａに対し解放されている。また、圧電アクチュエータ４５の他端側４５ｂには応動部材４６が係合している。すなわち、ロックシャフト４４と圧電アクチュエータ４５の他端側４５ｂは、応動部材４６を介して係合しているのである。

　圧電アクチュエータ４５は、所定の電圧が印加されるとその長手方向の反りが変化して、その他端側４５ｂがデッドボルト４２の移動方向と略直交する方向（矢印Ｄ方向）に移動する。この圧電アクチュエータ４５の他端側４５ｂの移動にともないロックシャフト４４とその先端部４４ａが矢印Ｄ方向（図３及び図４参照）に移動するのである。

　ここで応動部材４６は、ロックシャフト４４と相対する側の面が受力部４７に相対している。従って、受力部４７は、ロックシャフト４４から応動部材４６に加わる力に抗して、ロックシャフト４４がその軸方向に移動することを防ぐ。かくしてロックモジュール４３は、圧電アクチュエータ４５で駆動されるロックシャフト４４を、デッドボルト４２の移動方向と略直交する方向（矢印Ｄ方向）に円滑に移動させることができるのである。

　もちろんシリンダー錠４１が施錠状態のときに、デッドボルト４２が止め具１４に接近するようになっていることと、圧電アクチュエータ４５が解錠状態に駆動されると、ロックシャフト４４の先端部４４ａが止め具１４の係止溝１４ａから離脱して、止め具１４の機械的移動が可能になることは、電磁アクチュエータの場合と同様である。

　なお電気錠４０を機械錠として使用することを考慮すれば、圧電アクチュエータ４５は、所定の電圧が印可されると解錠状態となって、電圧が印可されないときには施錠状態となるものが好ましい。またロックモジュール４３は、圧電アクチュエータ４５を駆動するための緩衝増幅器（図示せず）を有してもよい。かかる緩衝増幅器は、ロックモジュール４３の外部に配置された駆動モジュール等からの制御電圧信号の緩衝増幅器として作用するもので、簡易なスイッチング回路等で構成することができる。

（電子錠システム）
　図５は、発明に係る電子錠システムの一実施形態を説明するためのものである。本発明に係る電子錠システムは、少なくとも収納庫１０ｎの外部に設置されて、施錠・解錠のためにＩＣカード等の電子的鍵媒体（図示せず）の照合を行なう親機２０と、収納庫１０ｎに設置された把手部１１が有する電気錠４０及び子機５０とを有している。子機５０は、電源を内蔵して電気錠４０を駆動することができるとともに、親機２０と無線通信を行なって、親機２０が行った電子的鍵媒体の照合の結果に基づき、電気錠４０を駆動して、収納庫１０ｎの施錠及び／又は解錠を行う。もちろん電子錠４０は、電磁アクチュエータまたは圧電アクチュエータのいずれを用いるものであってもよい。

　ここで収納庫１０ｎは、その扉を閉めることで、電気錠４０が自動的に施錠状態になるものであってもよい。こうした場合には、電子錠システムによる電子的鍵媒体の照合は、解錠の際に行われることになる。もちろん電子的鍵媒体の照合結果に基づいて施錠及び解錠を行う電子システムであってもよい。

　子機５０は、図６に示すように、駆動モジュール５１、小型無線モジュール５２、電源制御モジュール５３及び電池モジュール５４を１つのパッケージに収納したものである。駆動モジュール５１、小型無線モジュール５２及び電源制御モジュール５３は、例えば一枚の印刷基板上にアッセンブリーされており、この印刷基板に電池モジュール５４が装着される。かくしてこれら４つのモジュールが一体化されて、小型化、軽量化、及びローコスト化を図ることができる。ここで、アクチュエータに圧電アクチュエータ４５を用いた場合には、電気錠４０の消費電力をさらに低減できるから、さらなる小型、軽量化が可能となる。

　また子機５０は１本のワイヤー・ハーネス５０ａを有しており、子機５０を収納庫１０ｎの扉の内部側に取り付けるとともに、ワイヤー・ハーネス５０ａを把手部１１の電気錠４０に接続するだけで、収納庫１０ｎを電子錠システムに対応させることができる。

　親機２０は、例えば、収納システムが設置された部屋の壁などに取り付けられて、図７に示すように、親機側無線モジュール２１を有して各子機５０の小型無線モジュール５２と通信を行うことができ、また電子的鍵媒体センサモジュール２２を有して、電子的鍵媒体が電子錠システムの施錠・解錠のために登録されているかを判断するために電子的鍵媒体センサと非接触で通信を行なうことができる。

　さらに親機２０は、マイクロプロセッサーやメモリー等を搭載した電子的鍵媒体照合モジュール２３を有して、通信を行なった電子的鍵媒体が電子錠システムの施錠・解錠のために登録されているかを判断することができる。ここで親機２０は、電子的鍵媒体照合モジュール２３の搭載に替えて、図示しない通信手段で管理コンピュータと通信を行なう回路機能を搭載して、電子的鍵媒体が電子錠システムの施錠・解錠のために登録されているかの判断を管理コンピュータに委ねてもよい。こうした場合における親機２０と管理コンピュータとの通信のための回線は、ＬＡＮ回線、公衆電話回線、インターネット等、その形態を問わない。ここで、例えば電子錠システムの管理者は、管理コンピュータを介して、施錠・解錠権限者の登録や施錠・解錠記録などを、常にまたは定期的に管理・確認して、電子錠システムのセキュリティを維持することができる。

　以上、本発明に係る電気錠及び該電気錠を使用した電子錠システムについて、その実施形態を説明したが、本発明は、上述実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱することなく適宜変形して実施できるものである。

　本発明に係る電気錠及び該電気錠を使用した電子錠システムは、機械部品、電子部品、コンピュータ制御等の技術を応用したものであり、また公官庁、企業、研究機関等のユーザーにおける文書管理、物品、資材管理等の収納システムにおいて利用されるものであり、さらにこれらユーザーに電気錠及び該電子錠を用いた電子錠システムを製造、販売等する企業において製造販売等されるものであるから、発明として経済的価値を発揮し得るもので、産業上の利用可能性がある。

１０ｎ　収納庫
１１　把手部
１２　閂部材
１３　閂操作部
１４　止め具
１４ａ　係止溝
２０　親機
３０　管理コンピュータ
４０　電気錠
４１　シリンダー錠（機械的施錠手段）
４２　デッドボルト（機械的施錠手段）
４３　ロックモジュール（電気的施錠手段）
４４　ロックシャフト
４５　圧電アクチュエータ
４６　応動部材
４７　受力部
５０　子機
５１　駆動モジュール
５２　小型無線モジュール
５３　電源制御モジュール
５４　電池モジュール

Claims (7)

1. 閂部材の機械的移動を規制する止め具を有する収納庫において使用される電気錠であって、
   電気的施錠手段及び機械的なカギを用いて施錠及び解錠をすることができる機械的施錠手段を有し、
   前記機械的施錠手段が有するデッドボルトが前記機械的施錠手段の施錠操作及び解錠操作に伴って前記止め具に対する位置が変化し、
   前記デッドボルトとともに移動するロックモジュールは少なくともロックシャフト及びアクチュエータを含む電動装置を有し、
   前記ロックシャフトはアクチュエータを含む電動装置で駆動されて機械的に移動し、
   前記アクチュエータを含む電動装置が施錠状態に駆動されると、前記ロックシャフトの先端部が前記止め具の係止溝に係止する位置に移動することができて、前記止め具の機械的移動を停止させることができ、
   前記アクチュエータを含む電動装置が解錠状態に駆動されると、前記ロックシャフトの先端部が前記止め具の係止溝から離脱する位置に移動して、前記止め具の機械的移動が可能になることを特徴とする電気錠。
2. 前記ロックシャフトの移動方向と前記デッドボルトの移動方向とが略直交しており、
   前記機械的施錠手段の施錠状態のときには、前記デッドボルトが止め具に接近しており、
   この状態で前記アクチュエータを含む電動装置が施錠状態に駆動されると、前記ロックシャフトの先端部が前記止め具の係止溝に係止して、前記止め具の機械的移動が停止され、
   前記アクチュエータを含む電動装置が解錠状態に駆動されると、前記ロックシャフトの先端部が前記止め具の係止溝から離脱して、前記止め具の機械的移動が可能になり、
   前記機械的施錠手段が解錠状態のときには、前記デッドボルトが前記止め具から離脱して、前記アクチュエータを含む電動装置が施錠状態にあっても、前記ロックシャフトの先端部が止め具の係止溝に係止しないことを特徴とする請求項１に記載の電気錠。
3. 前記アクチュエータを含む電動装置は、略長方形状のケースに入れてデッドボルトに一体的に取付けられ、その一端側がロックモジュール本体に固定され、その他端側がロックモジュール本体に対し解放されており、他端側には応動部材が係合しており、該電動装置は、所定の電圧が印加されるとその長手方向の反りが変化して、その他端がデッドボルトの移動方向と略直交する方向に移動することで、応動部材を駆動することを特徴とする請求項１または２に記載の電気錠。
4. 前記ロックモジュールはさらに受力部を有して、
   前記受力部が、前記応動部材を介して、前記ロックシャフトの基端部から前記応動部材に加わる力に抗することで、
   前記応動部材が前記ロックシャフトの軸方向への移動を防ぐことを特徴とする請求項３に記載の電気錠。
5. 少なくとも、前記収納庫の外部に設置されて前記電気錠の施錠・解錠のためにICカード及び／もしくは携帯電話を含む電子的鍵媒体の照合を行う親機と、
   前記収納庫に設置され信号送受信機能、電気錠制御機能、電流電圧制御機能を有する子機及び前記電気錠とを有し、
   前記子機は、電源を内蔵して前記電気錠を駆動することができるとともに、
   前記親機と通信を行って、前記電子的鍵媒体の照合の結果に基づき、前記電気錠を駆動して、前記収納庫を施錠及び／又は解錠することができることを特徴とする電子錠システム。
6. 前記電気錠を駆動するための駆動モジュールと、前記子機が前記親機と通信を行うための小型無線モジュールと、前記駆動モジュール及び小型無線モジュールに電源を供給するための電源制御モジュールと、前記子機に電力を供給するために電池モジュールとを１つにパッケージとして有する子機と、
   管理者から通信回線等で送られてくるキャビネット扉の解施錠の権限情報を受信し、及び／もしくは記録し、及び／もしくは保存し、電子的鍵のＩＤを読み込んで同記録データと照合して前記子機に解施錠信号を送信する親機と
   を一体的な製品として具備することを特徴とする請求項５に記載の電子錠システム。
7. 　請求項５または６に記載の電子錠システムに加えて、
   　さらに前記親機と通信を行うことができて、少なくとも該電子錠システムにおける施錠・解錠権限者の特定、及び／又は施錠・解錠履歴を管理記録するための管理コンピュータを有することを特徴とする電子錠システム。

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