WO2012001782A1

WO2012001782A1 - 大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面切除具

Info

Publication number: WO2012001782A1
Application number: PCT/JP2010/061175
Authority: WO
Inventors: 経憲武井
Original assignee: Takei Tsunenori
Priority date: 2010-06-30
Filing date: 2010-06-30
Publication date: 2012-01-05

Abstract

　大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部（８０）に平行に大腿骨顆部後面を切除するための顆部後面切除具（２０）と、顆部後面切除具により切除された大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除するための遠位端面切除具（６０）とを含み、前記顆部後面切除具が、貫通孔（３）と、スリット（２）とを有するガイド本体（１）と、棒状部（１１）と、少なくとも２つのスタイラス部（１１ａ）とを有するスタイラス部材（１０）とを有し、前記遠位端面切除具が、ガイド本体（１）と、ガイド部材（３０）と、遠位端面切除基部（４０）と、遠位端面切除上部（５０）とを有する大腿骨顆部切除キット（１００）を提供する。

Description

大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面切除具

　本発明は、膝関節を人工膝関節に置き換える手術（以下、「人工膝関節置換術」と称することもある）における大腿骨顆部後面、大腿骨遠位端面等の切除を迅速かつ的確に行うことができる大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面切除具に関する。

　膝関節が変形性膝関節症、慢性関節リウマチ、骨腫瘍等を罹患したり、外傷等を負った場合、人工膝関節置換術が行われている。この人工膝関節置換術の成否は、大腿骨と脛骨とのアライメント（軸合わせ）を再建できるかどうかにかかっているといっても過言ではない。このアライメントを再建するには、人工膝関節の適切な設計、強固な固定、及び側副靭帯等からなる軟部組織の適切な緊張等が重要であり、これらが的確に行われなければ人工膝関節置換術の成功はあり得ない。
　このような人工膝関節置換術においては、図１に示すように、大腿骨２１０の顆部（骨端の膨らんだ部分）２１６の前面、後面、及び大腿骨遠位端（身体の中心から遠い骨端）面２１８、更に、脛骨２２０の近位端（身体の中心に近い骨端）面２２２を切除して人工膝関節を取り付けられるように造形する必要がある。また、膝関節２００を伸展時と屈曲時の軟部組織２３０の緊張度が異なっていると、緊張度の低い軟部組織２３０が弛緩してしまい良好なバランス状態を保つことができない。そこで、膝関節の屈曲時に対向する大腿骨顆部後面、及び脛骨近位端面２２２の切除は、膝関節の伸展時と屈曲時の軟部組織２３０の緊張度が等しくなるように行わなければならない。

　このため、人工膝関節置換術において、大腿骨顆部前面、大腿骨顆部後面、大腿骨遠位端面、及び脛骨近位端面の切除は、極めて大きな役割を果たしており、これらの切除作業は、精巧に行う必要がある。しかし、熟練した整形外科医であっても、自分の勘だけに頼って的確な骨の切除を行うことは不可能に近い。そこで、切除作業における整形外科医の負担をできる限り少なくして的確な切除を行うため、骨鋸の鋸刃を案内する補助具について種々提案されている。例えば、ガイド本体により支持される一対の案内面と、骨鋸の鋸刃と摺動可能に係合するガイド本体と、該ガイド本体を安定させるためのハンドルとを備え、骨面へのガイド本体の固定を取付ピンで行う補助具が提案されている（特許文献１参照）。

　この提案では、ガイド本体と大腿骨骨軸との関係を決定する手段として、「外面（外部）整列ガイド」により骨切削ガイドの方向付けを行っている（特許文献１の第４頁第５欄第２６行目乃至第３１行目参照）。このため、切除した骨端上に補助具を当て、前記「外面整列ガイド」を用いて位置決めをした後に取付ピンを打ち込んで固定している（特許文献１の第３図参照）。しかし、取付ピンの打ち込みによる固定では、一旦打ち込んだ取付ピンとガイド本体との位置関係を微調整できないので、個人差があり複雑な曲面を有する骨に適した位置決めを行うことが困難である。また、ガイド本体が取付ピンを中心にして回旋、即ち横ぶれしてしまうという課題がある。

　前記課題を解決するため本発明者は、先に、大腿骨顆部の骨軸方向中心部に設けた穿孔にその一端を挿入するロッドと、該ロッドの他端を支持する大腿骨顆部前面、及び大腿骨顆部後面の切除面を決定するためのガイド本体と、該ガイド本体に形成した骨鋸の鋸刃又は切除補助鋼線を案内するためのスリットと、前記ガイド本体にその一端を支持させ、他端を大腿骨顆部前面の骨軟骨移行部に当接させるスタイラス部材とを有してなり、前記ロッドの他端は支持部材を介して前記ガイド本体に支持され、前記支持部材は前記ロッドを横切る平面上を移動できるように前記ガイド本体に支持され、前記スタイラス部材の他端は、大腿骨顆部前面の骨軟骨移行部に実質的に線接触して、前記ガイド本体の回旋を大腿骨顆部前面の方向とほぼ平行に保つように構成されている膝関節の切除補助具を提案している（特許文献２参照）。
　この提案によれば、支持部材を介してガイド本体をロッドで支持し、該ロッドの一端を大腿骨骨軸に沿って設けた穿孔に挿入しているため、ガイド本体を大腿骨にしっかりと固定することができる。また、前記支持部材はロッドを横切る平面上を移動できるように構成されているので、ロッドに対する支持部材の相対位置を平面的に調整することができる。そのため、ガイド本体を大腿骨の好ましい位置に取り付けることができ、スタイラス部材の働きによりガイド本体の回旋を大腿骨顆部前面の方向とほぼ平行に保てるので、的確なアライメントを再建することができる。

　また、特許文献２の切除補助具では、スタイラス部材の先端形状について、「スタイラス部材２３０の他端２３２を折り曲げてＬ字形に形成し、その先端２３２ａをほぼ平坦な状態にする。第１の実施形態では、平坦状の先端２３２ａを線状にするために面取りをしている。このように先端２３２ａを平坦状にしたのは、大腿骨の表面との接触を線（面）で行わせるためである。点接触ではなく線接触（面接触）するようにしたのは、後で詳述するようにガイド本体が大腿骨顆部に対して回旋するのを防止するためである。」と記載されている（特許文献２の段落〔００３６〕、図２（特許文献２の図４）参照）。

　確かに、スタイラス部材の先端２３２ａを平坦とし線接触（面接触）にすると、一点接触の場合に比べて、ガイド本体が大腿骨顆部２２２に対して回旋するのをある程度防止することができる。スタイラス部材の先端２３２ａは、大腿骨顆部前面の骨軟骨移行部に当接しており、この大腿骨顆部前面の骨軟骨移行部は、人体内で最も変形の影響を受けない部位の一つである。しかし、人体中に真の平面は存在せず、たとえ略平坦な骨軟骨移行部であっても、表面に粗さ（凹凸）がある。このため、図２（特許文献２の図４）に示すように、スタイラス部材２３０の先端２３２ａが線状構造であると、凹凸による内外方向の不安定性が生じ、大腿骨顆部前面の骨軟骨移行部との接触条件によっては、安定した回旋度を確保できないという課題がある。

　ここで、大腿骨遠位端面の決定には、内外方向の切除位置と前後方向の切除位置の両方を同時決定する必要がある。特許文献２では、内外方向の切除位置はリガメントテンサー（図２９参照）にロッドを取り付け、下肢機能軸を確認した状態で鋼線をリガメントテンサーのスリットを介して大腿骨に刺入するため、内外方向の切除位置はこの時点で確立される。常に膝関節は０°伸展位でリガメントテンサーを設置することが可能であれば、前後方向の切除位置決定が可能であるが、通常はこの確認が不可能である。このため、前後方向の切除位置決定は、別途決定する必要がある。
　前後方向の切除位置は、大腿骨髄内軸に垂直でなければならない。本発明においては、図４３及び図４６に示すように、ガイド本体１にガイド部材３０を固定し、ロッド７０を貫通孔に連結し、ロッド７０を大腿骨骨孔に挿入する。ガイド部材３０の棒状ガイド３１は大腿骨髄内に挿入したロッド７０と前後方向において平行を保つこととなる。棒状ガイド３１に遠位端面切除基部４０を設置すると遠位端面切除基部４０の遠位面はロッド７０に対し垂直な面を形成し、前後方向の切除位置決定がされる。棒状ガイド３１に沿って遠位端面切除基部４０を遠位方向に移動して、遠位面が交線に接する状態とする。遠位端面切除基部４０の遠位面は内外方向の切除位置となる。遠位端面切除基部４０に遠位端面切除上部５０を固定し、骨鋸の鋸刃を挿入可能な案内用スリット９６を用いることで、正確な前後及び内外方向の切除位置にて大腿骨遠位端面の切除が可能となる。

　また、人工膝関節置換術においては、空気止血帯を用いて止血を行っており、手術中に輸血を行わない場合には、一連のすべての手術作業を２時間以内に完了させることが必要となる。このため、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部前面、大腿骨顆部後面、大腿骨遠位端面、及び脛骨近位端面の切除を迅速かつ的確に実施できる切除キット及び切除具の提供が望まれている。

　したがって、大腿骨顆部切除キットにおけるガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部後面及び大腿骨遠位端面の切除を迅速かつ的確に行うことができ、大腿骨と脛骨との的確なアライメントを再建できる大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面の切除を迅速かつ的確に行うことができる大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面の切除を迅速かつ的確に行うことができる大腿骨顆部後面切除具の速やかな提供が望まれているのが現状である。

特許第２５６０１０１号公報特開平１１－１１３９４０号公報

　本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、大腿骨顆部切除キットにおけるガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部後面及び大腿骨遠位端面の切除を迅速かつ的確に行うことができ、大腿骨と脛骨との的確なアライメントを再建できる大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面の切除を迅速かつ的確に行うことができる大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面の切除を迅速かつ的確に行うことができる大腿骨顆部後面切除具を提供することを目的とする。

　前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
　＜１＞　人工膝関節を取り付ける際に大腿骨顆部を切除するための大腿骨顆部切除キットであって、
　前記大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除するための顆部後面切除具と、
　前記顆部後面切除具により切除された大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除するための遠位端面切除具と、
を含み、
　前記顆部後面切除具が、前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入されるロッドに貫入される貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有するガイド本体と、
　前記ガイド本体における前記貫通孔を基準にして前記スリットとは反対側に着脱可能であって、前記スリットと平行に位置する棒状部と、該棒状部の先端部に位置し、該棒状部に対し垂直に屈曲し、かつ先端に少なくとも２つのスタイラス部とを有するスタイラス部材とを有し、
　前記遠位端面切除具が、前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入されるロッドに貫入される貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有するガイド本体と、
　前記ガイド本体における前記貫通孔を基準として前記スリットと反対側に着脱可能であって、前記顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面と平行な位置に配した前記スリットと平行に位置する棒状ガイドを有するガイド部材と、
　前記ガイド部材における前記棒状ガイドに貫入される貫通孔を有し、大腿骨顆部前面に位置決めされる遠位端面切除基部と、
　前記遠位端面切除基部に装着され、骨鋸の鋸刃が挿入可能であり、前記棒状ガイドに対して垂直に位置するスリットを有する遠位端面切除上部と、
を有することを特徴とする大腿骨顆部切除キットである。
　該＜１＞に記載の大腿骨顆部切除キットは、人工膝関節を取り付ける際に大腿骨顆部を切除するためのキットであり、顆部後面切除具と、遠位端面切除具とを含んでいる。
　前記顆部後面切除具は、ガイド本体と、スタイラス部材とを有している。前記ガイド本体は、貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有している。前記スタイラス部材を、前記ガイド本体における前記貫通孔を基準にして前記スリットとは反対側に装着し、前記ガイド本体の貫通孔にロッドを貫入して、該ロッドを大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、前記ガイド本体を前記ロッド上で動かし、大腿骨遠位端面に前記ガイド本体を密着させる。すると、前記ガイド本体におけるスリットが大腿骨骨軸に対し平行に配置される。この状態で、前記スタイラス部材の先端の少なくとも２つのスタイラス部を大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に少なくとも二点で点接触させると、ガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋誤差が最小限となり、回旋度が安定化し、前記ガイド本体が大腿骨顆部前面と平行に位置決めされる。
　したがって、大腿骨顆部切除キットの前記顆部後面切除具によれば、前記ガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を迅速かつ的確に切除することができる。
　前記遠位端面切除具は、ガイド本体と、ガイド部材と、遠位端面切除基部と、遠位端面切除上部とを有している。前記ガイド本体に前記ガイド部材を装着し、前記ガイド本体の貫通孔にロッドを貫入して、該ロッドを大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、ガイド本体をロッド上で動かし、大腿骨遠位端面にガイド本体を密着させる。すると、前記ガイド部材の棒状ガイドが大腿骨骨軸に平行に配置される。前記棒状ガイドを前記遠位端面切除基部の貫通孔に挿入し、前記ガイド部材と前記遠位端面切除基部を連結する。この状態で、前記遠位端面切除基部の位置決めを行い、位置決めされた遠位端面切除基部に前記遠位端面切除上部を装着する。すると、前記遠位端面切除基部が正確に位置決めされ、前記遠位端面切除上部における骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットが大腿骨遠位端面の切除位置となるので、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を迅速かつ的確に切除することができる。
　＜２＞　ガイド本体におけるスリットが大腿骨骨軸に対し平行に位置するように、スタイラス部材における少なくとも２つのスタイラス部を略平坦な骨軟骨移行部に当接させる前記＜１＞に記載の大腿骨顆部切除キットである。
　該＜２＞に記載の大腿骨顆部切除キットにおいては、前記ガイド本体におけるスリットが大腿骨骨軸に対し平行に位置するように、前記スタイラス部材における少なくとも２つのスタイラス部を略平坦な骨軟骨移行部に少なくとも二点で点接触させると、前記略平坦な骨軟骨移行部が表面に凹凸を有していても、ガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋誤差が最小限となり、回旋度が安定化し、前記ガイド本体が大腿骨顆部前面と平行に位置決めされる。
　＜３＞　遠位端面切除基部が、膝関節の伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度を略同一になるように調節して、大腿骨顆部前面に位置決めされる前記＜１＞から＜２＞のいずれかに記載の大腿骨顆部切除キットである。
　該＜３＞に記載の大腿骨顆部切除キットにおいては、前記遠位端面切除基部が、膝関節の伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度を略同一になるように調節して、大腿骨顆部前面に位置決めされる。この位置決めされた遠位端面切除基部に前記遠位端面切除上部が装着され、大腿骨遠位端面の切除が行われると、屈曲時と伸展時のバランスのとれた人工膝関節を装着することができる。
　＜４＞　人工膝関節を取り付ける際に顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除するための大腿骨遠位端面切除具であって、
　前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入されるロッドに貫入される貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有するガイド本体と、
　前記ガイド本体における前記貫通孔を基準として前記スリットと反対側に着脱可能であって、顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面と平行な位置に配した前記スリットと平行に位置する棒状ガイドを有するガイド部材と、
　前記ガイド部材における前記棒状ガイドに貫入される貫通孔を有し、大腿骨顆部前面に位置決めされる遠位端面切除基部と、
　前記遠位端面切除基部に装着され、骨鋸の鋸刃が挿入可能であり、前記棒状ガイドに対して垂直に位置するスリットを有する遠位端面切除上部と、
を有することを特徴とする大腿骨遠位端面切除具である。
　該＜４＞に記載の大腿骨遠位端面切除具においては、ガイド本体と、ガイド部材と、遠位端面切除基部と、遠位端面切除上部とを有している。前記ガイド本体に前記ガイド部材を装着し、前記ガイド本体の貫通孔にロッドを貫入して、該ロッドを大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、前記ガイド本体をロッド上で動かし、大腿骨遠位端面に前記ガイド本体を密着させる。すると、前記ガイド部材の棒状ガイドが大腿骨骨軸に平行に配置される。前記棒状ガイドを前記遠位端面切除基部の貫通孔に挿入し、前記ガイド部材と前記遠位端面切除基部を連結する。この状態で、好ましくは膝関節を伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度が等しくなるように調整して、前記遠位端面切除基部を位置決めする。位置決めされた遠位端面切除基部に前記遠位端面切除上部を装着する。すると、前記遠位端面切除基部が正確に位置決めされ、前記遠位端面切除上部における骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットが大腿骨遠位端面の切除位置となるので、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を迅速かつ的確に切除することができ、屈曲時と伸展時のバランスのとれた人工膝関節を装着することができる。
　＜５＞　人工膝関節を取り付ける際に大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除するための大腿骨顆部後面切除具であって、
　前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に対し平行に挿入されるロッドに貫入される貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有するガイド本体と、
　前記ガイド本体における前記貫通孔を基準にして前記スリットとは反対側に着脱可能であって、前記スリットと平行に位置する棒状部と、該棒状部の先端部に位置し、該棒状部に対し垂直に屈曲し、かつ先端に少なくとも２つのスタイラス部を有するスタイラス部材と、
を有することを特徴とする大腿骨顆部後面切除具である。
　該＜５＞に記載の大腿骨顆部後面切除具においては、ガイド本体と、スタイラス部材とを有している。前記ガイド本体は、貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有している。前記スタイラス部材を、前記ガイド本体における前記貫通孔を基準にして前記スリットとは反対側に装着し、前記ガイド本体の貫通孔にロッドを貫入して、該ロッドを大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、前記ガイド本体を前記ロッド上で動かし、大腿骨遠位端面に前記ガイド本体を密着させる。すると、前記ガイド本体におけるスリットが大腿骨骨軸に対し平行に配置される。この状態で、前記スタイラス部材における少なくとも２つのスタイラス部を大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に少なくとも二点で点接触させると、前記ガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋誤差が最小限となり、回旋度が安定化し、前記ガイド本体が大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部と平行に位置決めされる。
　したがって、前記大腿骨顆部後面切除具によれば、前記ガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を迅速かつ的確に切除することができる。

　本発明によると、従来における問題を解決することができ、大腿骨顆部切除キットにおけるガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部後面及び大腿骨遠位端面の切除を迅速かつ的確に行うことができ、大腿骨と脛骨との的確なアライメントを再建できる大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面の切除を迅速かつ的確に行うことができる大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面の切除を迅速かつ的確に行うことができる大腿骨顆部後面切除具を提供することができる。

図１は、膝関節のモデルを示す概略図である。図２は、従来のスタイラス部材を示す斜視図である。図３は、本発明の大腿骨顆部切除キットの一例を示す概略図である。図４は、本発明の大腿骨遠位端面切除具の一例を示す概略図である。図５は、本発明の大腿骨顆部後面切除具の一例を示す概略図である。図６Ａは、顆部後面切除具におけるスタイラス部材の平面図である。図６Ｂは、顆部後面切除具におけるスタイラス部材の側面図である。図７は、スタイラス部材における先端部のスタイラス部を示す拡大図である。図８は、スタイラス部材における先端部のスタイラス部を示す拡大図である。図９は、顆部後面切除具におけるガイド本体の上面図である。図１０は、顆部後面切除具におけるガイド本体の正面図である。図１１は、顆部後面切除具におけるガイド本体の側面図である。図１２は、顆部後面切除具におけるガイド本体の背面図である。図１３は、遠位端面切除具におけるガイド本体にガイド部材を装着した状態を示す上面図である。図１４は、遠位端面切除具におけるガイド本体にガイド部材を装着した状態を示す斜視図である。図１５は、遠位端面切除具におけるガイド本体にガイド部材及び遠位端面切除基部を装着した状態を示す上面図である。図１６は、遠位端面切除具におけるガイド本体にガイド部材及び遠位端面切除基部を装着した状態を示す側面図である。図１７は、遠位端面切除具における遠位端面切除上部を示す上面図である。図１８は、遠位端面切除具における遠位端面切除基部に遠位端面切除上部を装着した状態を示す上面図である。図１９は、大腿骨顆部後面切除工程において、顆部後面切除具を大腿骨顆部に取り付けた状態を示す図である。図２０は、大腿骨顆部後面切除工程において、顆部後面切除具を大腿骨顆部に取り付けた状態を示す図である。図２１は、大腿骨顆部後面切除工程において、顆部後面切除具のスタイラス部材の先端のスタイラス部の当接状態を示す図である。図２２は、大腿骨顆部後面切除工程において、顆部後面切除具のスタイラス部材の先端のスタイラス部の当接状態を示す図である。図２３は、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部を示す図である。図２４は、大腿骨顆部後面を切除後の膝関節の様子を示す図である。図２５は、脛骨近位端面切除工程において、脛骨近位端面切除具を装着した状態を示す図である。図２６Ａは、脛骨近位端面切除具のガイド本体のスリットにロッドを固定した髄外軸固定板を挿入した状態を示す図である。図２６Ｂは、脛骨近位端面切除具のガイド本体のスリットにロッドを固定した髄外軸固定板を挿入した状態を示す図である。図２７は、脛骨近位端面切除工程において、ガイド本体のゲージを示す図である。図２８は、膝関節の大腿骨顆部後面の切除面と脛骨近位端面の切除面の間にブロックを挿入した状態を示す図である。図２９は、リガメントテンサーの正面図及び背面図である。図３０は、リガメントテンサーの側面図である。図３１Ａは、リガメントテンサーに取り付けるトルクメーターを示す図である。図３１Ｂは、トルクメーターの目盛り部分の拡大図である。図３２は、リガメントテンサーの下側ブレードにスペーサーを固定した状態を示す図である。図３３Ａは、リガメントテンサー用スペーサーのおもて面を示す図である。図３３Ｂは、リガメントテンサー用スペーサーのうら面を示す図である。図３４は、リガメントテンサーの下側ブレードにスペーサーを固定した状態で膝の骨切り面間に挿入し、膝を屈曲させた状態を示す図である。図３５、図３４の状態でリガメントテンサーに荷重をかけた状態を示す図である。図３６は、リガメントテンサーのゲージ部分の拡大図である。図３７は、膝関節を伸展させた状態でリガメントテンサーを大腿骨と脛骨間に設置した状態を示す図である。図３８は、リガメントテンサーのゲージ部分の拡大図である。図３９は、リガメントテンサーの骨鋸用スリットに切除補助鋼線を挿入し、固定した状態を示す図である。図４０は、大腿骨遠位端面切除工程において、切除補助鋼線で位置決めを行った状態を示す図である。図４１Ａは、大腿骨顆部前面の内側と外側に切除補助鋼線で位置決めを行った状態を示す図である。図４１Ｂは、大腿骨顆部前面の内側と外側に切除補助鋼線で位置決めを行った状態を示す図である。図４２は、遠位端面切除具におけるガイド本体にガイド部材及び遠位端面切除基部を装着し、大腿骨遠位端面に取り付けた状態を示す正面図である。図４３は、遠位端面切除具におけるガイド本体にガイド部材及び遠位端面切除基部を装着し、大腿骨遠位端面に取り付けた状態を示す上面図である。図４４は、遠位端面切除具におけるガイド本体及びガイド部材を取り外した状態を示す正面図である。図４５は、遠位端面切除具におけるガイド本体及びガイド部材を取り外した状態を示す上面図である。図４６は、遠位端面切除具における遠位端面切除基部に遠位端面切除上部を装着し、大腿骨顆部前面に取り付けた状態を示す上面図である。図４７は、遠位端面切除具における遠位端面切除基部に遠位端面切除上部を装着し、大腿骨遠位端面の切除を実施する状態を示す斜視図である。図４８は、大腿骨遠位端面を切除後の状態を示す斜視図である。図４９は、顆部前面切除具のガイド本体を切除後の大腿骨遠位端面に取り付けた状態を示す図である。図５０は、骨鋸により大腿骨顆部前面を切除する状態を示す図である。図５１は、骨鋸により大腿骨顆部前面を切除する状態を示す別の図である。図５２は、人工膝関節を装着した膝関節を示す概略図である。

（大腿骨顆部切除キット）
　本発明の大腿骨顆部切除キットは、人工膝関節を取り付ける際に大腿骨顆部を切除するためのキットであって、顆部後面切除具と、遠位端面切除具とを含み、顆部前面切除具、更に必要に応じてその他の切除具を含んでなる。

　前記人工膝関節としては、通常、脛骨近位端部に装着する脛骨コンポーネントと、大腿骨遠位端部に装着する大腿骨コンポーネントと、前記脛骨コンポーネントと前記大腿骨コンポーネントとの間に挿入するインサートとから構成される。
　前記大腿骨コンポーネントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、サイズがＳ、Ｍ、及びＬの３種類であり、例えばコバルト－クロム－モリブデン合金製であることが好ましい。
　前記脛骨コンポーネントは、脛骨ベースプレートともいい、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、サイズがＳ、Ｍ、及びＬの３種類であり、例えばチタン合金製であることが好ましい。
　前記インサートは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、サイズがＳ、Ｍ、及びＬの３種類であり、例えばポリエチレン樹脂製であることが好ましい。

　人工膝関節置換術においては、大腿骨顆部前面、大腿骨顆部後面、及び大腿骨遠位端面以外にも、通常、脛骨近位端面も切除する必要がある。このため、人工膝関節置換術に用いられる切除キットには、前記顆部後面切除具、前記遠位端面切除具、及び前記顆部前面切除具以外にも、脛骨近位端面切除具も含まれる。
　前記大腿骨顆部は、大腿骨遠位端の膨らんだ部分であり、内側顆と外側顆の２つの隆起からなり、脛骨近位端と共に膝関節を形成している。

＜顆部後面切除具＞
　大腿骨顆部切除キットの前記顆部後面切除具は、大腿骨顆部前面における略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除するための切除具であり、ガイド本体と、スタイラス部材とを有し、ロッド、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。

　前記大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部とは、大腿骨顆部前面における略平坦な部位を意味する。人体内において真の平面（完全に平坦な面）は存在せず、前記「略平坦な骨軟骨移行部」は、他の人体構造物（筋、腱、靭帯等の起始部）の影響が全くないため、最も変形作用が生じない部位の一つであり、人の大腿骨において共通に存在する部位である。ただし、前記「略平坦な骨軟骨移行部」においても、表面に粗さ（凹凸）は存在する。前記「略平坦な骨軟骨移行部」は、変形性膝関節症等の症例では、骨棘に覆われていることが多いため、骨ノミ等により骨棘を予め切除することが必要となる。また、前記「略平坦な骨軟骨移行部」は、通常、軟部組織にその表面を覆われているため、該軟部組織を剥離し、近位方向に圧除して、前記「略平坦な骨軟骨移行部」を露出させることが必要となる。

＜＜ガイド本体＞＞
　前記ガイド本体は、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除する際に、大腿骨骨軸に平行に挿入されたロッドを通じて大腿骨遠位端面と接して配置され、大腿骨顆部後面の切除位置を確定するための部材である。

　前記ガイド本体の大きさ、形状、構造、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、例えばクロム－ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄等の金属；ポリエチレン、ＡＢＳ、ＦＲＰ等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、変形、摩耗が生じにくい等の点から、クロム－ニッケル合金が特に好ましい。前記ガイド本体の形状、大きさ等についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の形状及び大きさが好ましい。また、前記ガイド本体は、単一部材で形成されていてもよいし、２以上の部材で形成されていてもよい。

　前記ガイド本体は、貫通孔と、スリットとを有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。
　前記ガイド本体は、該ガイド本体のスリットが大腿骨骨軸と平行となるように大腿骨遠位端面に配置される。

－貫通孔－
　前記貫通孔は、前記ガイド本体の略中央部に設けられ、大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入されるロッドに貫入される孔である。
　前記大腿骨骨軸とは、一般的に解剖学的骨軸(Anatomical　axis)といわれるもので、大腿骨骨幹部の内外方向の中心を結んだ線とほぼ一致する線を意味する。前記大腿骨骨軸は、まず、内外方向の軸と前後方向の軸とを兼ね備える必要がある。大腿骨骨幹部内側及び外側壁を触知し、その中央を通過する線を内外方向の骨軸とする。その軸線上で後方で大腿骨骨皮質前壁の遠位端後方１０ｍｍの点を骨軸刺入孔とする。刺入孔と大腿骨前弯の頂点の後壁と骨髄内で接触する線を前後方向の骨軸とすることにより求めることができる。
　前記貫通孔は、その形状、大きさなどについては、前記ロッドが貫入可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記貫通孔の形状としては、例えば断面円形、断面楕円形、断面四角形、断面矩形などが挙げられる。前記貫通孔の大きさとしては、通常用いられる程度の大きさが好ましい。

　前記貫通孔の位置は、ガイド本体に装着されたスタイラス部材と、スリットとの間であって、ガイド本体の略中央部であることが好ましい。
　前記貫通孔が貫通孔形成部材に形成され、該貫通孔形成部材が貫通孔支持部材の開口部内をスライド移動可能に取り付けられている。前記貫通孔支持部材が、ガイド本体の中央開口部内をスライド移動可能に取り付けられている。これにより、前記スタイラス部材の先端の少なくとも２つのスタイラス部が理想的な位置（例えば大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部）で当接できるように、前記貫通孔の位置を適宜調整可能である。

－スリット－
　前記スリットは、骨鋸の鋸刃が挿入可能な幅を有する隙間であり、大腿骨顆部後面を切除する際に骨鋸の鋸刃を切除位置まで案内する機能を有する。
　前記スリットの幅は、骨鋸の鋸刃がスムーズに摺動可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
　上述したように、前記ガイド本体は、大腿骨骨軸と平行に大腿骨遠位端面に配置されるので、前記ガイド本体のスリットが大腿骨骨軸と平行に配置され、前記スリットにより、大腿骨顆部後面を大腿骨骨軸と平行に、骨鋸の鋸刃を案内することができる。

　前記スリットの大きさ、形状などについては、骨鋸の鋸刃を挿入可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の形状及び大きさが好ましい。
　前記スリットは、前記ガイド本体の前記貫通孔を基準として、前記ガイド本体に装着されたスタイラス部材と反対側（下部側）に設けられている。

　前記ガイド本体は、貫通孔を基準にスリットと反対側（上部側）の両端部に、スタイラス部材を取り付けるための取り付け軸を有している。
　前記ガイド本体の正面中央部には、前記ガイド本体を大腿骨遠位端面に固定するための固定穴が設けられており、該固定穴に固定釘等を打ち込むことにより、前記ガイド本体を大腿骨遠位端面に固定することができる。

＜＜スタイラス部材＞＞
　前記スタイラス部材は、大腿骨顆部後面を切除する際に、前記ガイド本体の回旋を防止し、かつ大腿骨顆部前面と平行に前記ガイド本体を位置決めする機能を有する。

　前記スタイラス部材においては、先端の少なくとも２つのスタイラス部が大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に当接することにより、大腿骨顆部前面との平行状態が獲得でき、回旋の際に再調節を必要としないガイド本体の設置が可能となる。
　前記スタイラス部材の先端に少なくとも２つのスタイラス部を有するので、近遠方向にズレが生じることがない。また、前記スタイラス部材の先端に少なくとも２つのスタイラス部を大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に当接させることにより、少なくとも２つのスタイラス部が大腿骨顆部後面の切除面の起始部線になる。したがって、前記スタイラス部材の先端に少なくとも２つのスタイラス部を有することにより、回旋と、大腿骨顆部後面の切除面の起点とを決定できる。

　前記スタイラス部材の大きさ、形状、構造、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、例えばクロム－ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄等の金属；ポリエチレン、ＡＢＳ、ＦＲＰ等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、変形、摩耗が生じにくい等の点から、クロム－ニッケル合金が特に好ましい。前記スタイラス部材の形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の形状及び大きさが好ましい。また、前記スタイラス部材は、単一部材で形成されていてもよいし、２以上の部材で形成されていてもよい。
　前記スタイラス部材は、ガイド本体における貫通孔を基準にしてスリットとは反対側（上側）に着脱可能に装着されている。

　前記スタイラス部材は、棒状部と、該棒状部の先端に少なくとも２つのスタイラス部とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。

－棒状部－
　前記棒状部は、前記ガイド本体のスリットと平行に配置し、該棒状部の先端のスタイラス部と共同して、ガイド本体の回旋を防止する機能を有する。
　前記棒状部の大きさ、形状、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、例えばクロム－ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄等の金属；ポリエチレン、ＡＢＳ、ＦＲＰ等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、変形、摩耗が生じにくい等の点から、クロム－ニッケル合金が特に好ましい。前記棒状部の形状としては、棒状であることが好ましい。前記棒状部の大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の大きさが好ましい。
　前記棒状部は、一端の先端部が該棒状部に対し垂直に屈曲しており（Ｌ字状）、少なくとも２つのスタイラス部を形成している。前記棒状部の他端にはスタイラス部材固定部が固定ネジにより設けられている。
　前記スタイラス部材固定部の両端部には取り付け穴が設けられており、該取り付け穴をガイド本体の両端部に突設された取り付け軸に挿入することで、前記スタイラス部材を前記ガイド本体に装着することができる。

－スタイラス部－
　前記スタイラス部は、前記棒状部の先端に位置し、該棒状部に対し垂直に屈曲し、かつ先端に少なくとも２つであり、前記スタイラス部は３つ以上であっても構わないが２つであることが好ましい。
　前記スタイラス部は、少なくとも２つの鋭角な爪状の先端を有し、該爪状の先端により大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部と少なくとも二点で点接触する。２つのスタイラス部間の距離は１０ｍｍ～３０ｍｍであることが好ましい
　前記スタイラス部材の先端に少なくとも２つのスタイラス部を有し、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部と少なくとも二点で点接触することにより、回旋度の不安定性が減少する。即ち、スタイラス部材の先端が線状構造であると、凹凸（表面粗さ）が少しでもあると１番高い点と２番目に高い点に先端が当たり、再骨点を中心に内外の２番目に高い点が反応してしまうため、内側の２番点に固定させるか、外側の２番点に固定させるかによって回旋誤差が生じてしまう。これに対し、前記スタイラス部材の先端が少なくとも２つのスタイラス部を有し、略平坦な骨軟骨移行部と少なくとも二点で点接触すると、回旋誤差が最小限となり、回旋度が安定化する。

＜＜ロッド＞＞
　前記ロッドは、前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入される。このため、前記ロッドが貫入される貫通孔を有するガイド本体は、大腿骨骨軸に対し平行に配置される。

　前記ロッドの大きさ、形状、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、例えばクロム－ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄等の金属；ポリエチレン、ＡＢＳ、ＦＲＰ等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、変形、摩耗が生じにくい等の点から、クロム－ニッケル合金が特に好ましい。
　前記ロッドは、先端部が尖がった棒状であり、大腿骨顆部の穿孔に挿入し易くなっている。前記ロッドの大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の大きさが好ましい。

　前記ロッドを前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば大腿骨顆部の髄腔に大腿骨骨軸に沿ってドリルにより穿孔を設け、該穿孔にロッドの先端部を挿入する方法などが挙げられる。

　本発明の大腿骨顆部切除キットにおける前記顆部後面切除具においては、前記ガイド本体は、貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有している。前記スタイラス部材を、前記ガイド本体における前記貫通孔を基準にして前記スリットとは反対側に装着し、前記ガイド本体の貫通孔にロッドを貫入して、該ロッドを大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、前記ガイド本体を前記ロッド上で動かし、大腿骨遠位端面にガイド本体を密着させる。これにより、前記ガイド本体におけるスリットが大腿骨骨軸に対し平行に配置される。この状態で、前記スタイラス部材における少なくとも２つのスタイラス部を大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に少なくとも二点で点接触させると、前記ガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋誤差が最小限となり、回旋度が安定化し、前記ガイド本体を大腿骨顆部前面と平行に位置決めできる。
　したがって、前記顆部後面切除具によれば、前記ガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を迅速かつ的確に切除することができる。

＜遠位端面切除具＞
　大腿骨顆部切除キットの前記遠位端面切除具は、大腿骨顆部切除キットの前記顆部後面切除具により切除された大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除するための切除具である。
　前記遠位端面切除具は、ガイド本体と、ガイド部材と、遠位端面切除基部と、遠位端面切除上部とを有し、ロッド、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。

＜＜ガイド本体＞＞
　前記ガイド本体は、貫通孔と、スリットとを有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなり、前記顆部後面切除具におけるガイド本体と同じものを使用できる。

－貫通孔－
　前記貫通孔は、前記顆部後面切除具におけるガイド本体の貫通孔と同様であるため、その説明を省略する。

－スリット－
　前記スリットは、前記顆部後面切除具におけるガイド本体のスリットと同様であるため、その説明を省略する。

－ロッド－
　前記ロッドは、前記顆部後面切除具におけるロッドと同様であるため、その説明を省略する。

＜＜ガイド部材＞＞
　前記ガイド部材は、前記ガイド本体に着脱可能に装着され、本発明の大腿骨顆部切除キットにおける前記顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面と垂直な大腿骨遠位端面の切除位置を確定するための部材である。

　前記ガイド部材の大きさ、形状、構造、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、例えばクロム－ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄等の金属；ポリエチレン、ＡＢＳ、ＦＲＰ等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、変形、摩耗が生じにくい等の点から、クロム－ニッケル合金が特に好ましい。前記ガイド部材の形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の形状及び大きさが好ましい。また、前記ガイド部材は、単一部材で形成されていてもよいし、２以上の部材で形成されていてもよい。

　前記ガイド部材は、前記ガイド本体における前記貫通孔を基準として前記スリットと反対側に着脱可能である。
　前記ガイド部材は、棒状ガイドを有し、ガイド部材固定部、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。

－棒状ガイド－
　前記棒状ガイドは、前記ガイド部材と、後述する遠位端面切除基部とを連結する機能を有し、前記棒状ガイドを前記遠位端面切除基部の貫通孔に挿入することにより、前記ガイド部材と前記遠位端面切除基部とが連結される。

　前記棒状ガイドの大きさ、形状、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、例えばクロム－ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄等の金属；ポリエチレン、ＡＢＳ、ＦＲＰ等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、変形、摩耗が生じにくい等の点から、クロム－ニッケル合金が特に好ましい。前記棒状ガイドの形状としては、例えば棒状であることが好ましい。前記棒状ガイドの大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の大きさが好ましい。

　前記ガイド部材における棒状ガイドは、ガイド部材固定部に対して垂直になるように設けられている。
　前記ガイド部材は、前記ガイド部材固定部の取り付け穴を前記ガイド本体の両端部に突設された取り付け軸に挿入することで、前記ガイド本体に対し前記ガイド部材が着脱可能に装着される。これにより、前記ガイド部材は、前記ガイド本体に対し垂直に取り付けられる。

＜＜遠位端面切除基部＞＞
　前記遠位端面切除基部は、前記ガイド部材と棒状ガイドを介して連結され、大腿骨遠位端面を切除する際の位置決め機能を有する部材である。
　前記遠位端面切除基部の貫通孔に、前記ガイド部材の棒状ガイドが貫入されることにより、前記ガイド部材と前記遠位端面切除基部とが連結される。

　前記遠位端面切除基部の大きさ、形状、構造、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、例えばクロム－ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄等の金属；ポリエチレン、ＡＢＳ、ＦＲＰ等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、変形、摩耗が生じにくい等の点から、クロム－ニッケル合金が特に好ましい。前記遠位端面切除基部の形状、大きさ等についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の形状及び大きさが好ましい。また、前記遠位端面切除基部は、単一部材で形成されていてもよいし、２以上の部材で形成されていてもよい。

　前記遠位端面切除基部は、膝関節の伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度を略同一になるように調節して、大腿骨顆部前面に位置決めされることが好ましい。前記「略同一」とは、実質的に同じであることを意味し、必ずしも完全一致を示さない。
　前記遠位端面切除基部を、膝関節の伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度が略同一になるように調節して、大腿骨顆部前面に位置決めし、この位置決めされた遠位端面切除基部に前記遠位端面切除上部が装着され、大腿骨遠位端面の切除を行う。これにより、屈曲時と伸展時のバランスのとれた人工膝関節を装着することができる。
　前記膝関節の伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度を略同一になるように調節する方法としては、詳細については後述するが、大腿骨顆部後面の切除面と脛骨近位端面の切除面との間に、トルクメーターを装着した後述するリガメントテンサーを用いて行うことが好ましい。

　前記遠位端面切除基部は、少なくとも貫通孔を有し、取り付け穴、固定穴、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。

－貫通孔－
　前記貫通孔の形状、大きさなどについては、前記ガイド部材における棒状ガイドが挿入可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば断面円形、断面四角形、断面矩形などが挙げられる。前記大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常用いられる程度の大きさが好ましい。
　前記貫通孔は、前記遠位端面切除基部の中央部に設けられており、前記ガイド部材の棒状ガイドが前記貫通孔に貫入することにより、前記遠位端面切除基部は、前記ガイド本体に対し平行に取り付けられる。

　前記遠位端面切除基部は、前記ガイド部材側に、後述する遠位端面切除上部を装着するための取り付け穴を有する。該取り付け穴に、前記遠位端面切除上部の取り付け突起を挿入して、前記遠位端面切除基部に前記遠位端面切除上部を装着することができる。

　前記遠位端面切除基部は、固定穴を有している。該固定穴に固定釘を打ち込むことにより、大腿骨顆部前面に前記遠位端面切除基部を固定することができる。
　前記遠位端面切除基部を大腿骨顆部前面に固定する際には、上述したように、膝関節の伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度を略同一になるように調節して、大腿骨顆部前面に位置決めした位置で固定されることが好ましい。

＜＜遠位端面切除上部＞＞
　前記遠位端面切除上部は、前記遠位端面切除基部に装着され、大腿骨遠位端面の切除を行う際に骨鋸の鋸刃を案内する機能を有する部材である。
　前記遠位端面切除上部が、前記遠位端面切除基部に装着されると、前記遠位端面切除上部のスリットが大腿骨遠位端面の切除位置となる。

　前記遠位端面切除上部の大きさ、形状、構造、材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記材質としては、例えばクロム－ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄等の金属；ポリエチレン、ＡＢＳ、ＦＲＰ等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、変形、摩耗が生じにくい等の点から、クロム－ニッケル合金が特に好ましい。前記遠位端面切除上部の形状、大きさ等についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の形状及び大きさが好ましい。また、前記遠位端面切除上部は、単一部材で形成されていてもよいし、２以上の部材で形成されていてもよい。

　前記遠位端面切除上部は、本体と、スリットと、ガイド部と、把持部とを有し、取り付け用突起、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
　前記遠位端面切除上部のスリットは、骨鋸の鋸刃が挿入可能な幅を有する隙間であり、大腿骨遠位端面を切除するために、骨鋸の鋸刃を案内する機能を有する。前記スリットの幅は、骨鋸の鋸刃がスムーズに摺動可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
　前記スリットの大きさ、形状などについては、骨鋸の鋸刃を挿入可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、通常用いられる程度の形状及び大きさが好ましい。
　前記遠位端面切除上部は、取り付け用凸部を有している。該取り付け用凸部を遠位端面切除基部の取り付け穴に挿入することで、前記遠位端面切除基部に前記遠位端面切除上部が装着される。

　本発明の大腿骨顆部切除キットにおける前記遠位端面切除具においては、前記ガイド本体に前記ガイド部材を装着し、前記ガイド本体の貫通孔にロッドを貫入して、該ロッドを大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、ガイド本体をロッド上で動かし、大腿骨遠位端面にガイド本体を密着させる。これにより、ガイド部材の棒状ガイドが大腿骨骨軸に平行に配置される。前記棒状ガイドを遠位端面切除基部の貫通孔に挿入し、前記ガイド部材と前記遠位端面切除基部を連結する。この状態で、好ましくは、膝関節を伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度が等しくなるように調整して、前記遠位端面切除基部を位置決めする。位置決めされた遠位端面切除基部に遠位端面切除上部を装着する。これにより、前記遠位端面切除基部の正確な位置決めが可能となり、遠位端面切除上部における骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットが大腿骨遠位端面の切除位置となるので、整形外科医の負担をできる限り少なくして、前記顆部後面切除具により切除された大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を的確に切除することができる。

（大腿骨遠位端面切除具）
　本発明の大腿骨遠位端面切除具は、人工膝関節を取り付ける際に顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除するための切除具である。
　前記大腿骨遠位端面切除具は、前記大腿骨顆部切除キットの前記顆部遠位端面切除具と共通する構成からなり、ガイド本体と、ガイド部材と、遠位端面切除基部と、遠位端面切除上部とを有し、ロッド、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。

－ガイド本体－
　前記ガイド本体は、前記大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具のガイド本体と同様であるため、その説明を省略する。

－ガイド部材－
　前記ガイド部材は、前記大腿骨顆部切除キットにおける遠位端面切除具のガイド部材と同様であるため、その説明を省略する。

－遠位端面切除基部－
　前記遠位端面切除基部は、前記大腿骨顆部切除キットにおける遠位端面切除具の遠位端面切除基部と同様であるため、その説明を省略する。

－遠位端面切除上部－
　前記遠位端面切除上部は、前記大腿骨顆部切除キットにおける遠位端面切除具の遠位端面切除上部と同様であるため、その説明を省略する。

－ロッド－
　前記ロッドは、前記大腿骨顆部切除キットにおける遠位端面切除具のロッドと同様であるため、その説明を省略する。

　本発明の大腿骨遠位端面切除具においては、前記ガイド本体に前記ガイド部材を装着し、前記ガイド本体の貫通孔にロッドを貫入して、該ロッドを大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、ガイド本体をロッド上で動かし、大腿骨遠位端面にガイド本体を密着させる。これにより、ガイド部材の棒状ガイドが大腿骨骨軸に平行に配置される。前記棒状ガイドを遠位端面切除基部の貫通孔に挿入し、前記ガイド部材と前記遠位端面切除基部を連結する。この状態で、好ましくは、膝関節を伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度が等しくなるように調整して、前記遠位端面切除基部を位置決めする。位置決めされた遠位端面切除基部に遠位端面切除上部を装着する。これにより、前記遠位端面切除基部の正確な位置決めが可能となり、遠位端面切除上部における骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットが大腿骨遠位端面の切除位置となる。
　したがって、本発明の大腿骨遠位端面切除具によれば、前記遠位端面切除基部の正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、顆部後面切除具により切除された大腿骨顆部後面の切除面に対し垂直に大腿骨遠位端面を的確に切除することができる。

（大腿骨顆部後面切除具）
　本発明の大腿骨顆部後面切除具は、人工膝関節を取り付ける際に大腿骨顆部前面における略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除するための切除具である。
　前記大腿骨顆部後面切除具は、前記大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具と共通する構成からなり、ガイド本体と、スタイラス部材とを有し、ロッド、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。

－スタイラス部材－
　前記スタイラス部材は、前記大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具のスタイラス部材と同様であるため、その説明を省略する。

－ロッド－
　前記ロッドは、前記大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具のロッドと同様であるため、その説明を省略する。

　本発明の大腿骨顆部後面切除具においては、前記ガイド本体は、貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有している。前記スタイラス部材を、前記ガイド本体における前記貫通孔を基準にして前記スリットとは反対側に装着し、前記ガイド本体の貫通孔にロッドを貫入して、該ロッドを大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、前記ガイド本体を前記ロッド上で動かし、大腿骨遠位端面に前記ガイド本体を密着させる。これにより、前記ガイド本体におけるスリットが大腿骨骨軸に対し平行に配置される。この状態で、前記スタイラス部材における少なくとも２つのスタイラス部を大腿骨顆部前面における略平坦な骨軟骨移行部に少なくとも二点で点接触させると、ガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋誤差が最小限となり、回旋度が安定化し、前記ガイド本体を大腿骨顆部前面と平行に位置決めできる。
　したがって、本発明の大腿骨顆部後面切除具によれば、前記ガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を迅速かつ的確に切除することができる。

＜大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面切除具の使用方法＞
　本発明の大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面切除具の具体的な使用方法について、人工膝関節置換術の手術手順に従って説明する。
　前記大腿骨顆部切除キットの使用方法、大腿骨遠位端面切除具の使用方法、及び大腿骨顆部後面切除具の使用方法は、いずれも人工膝関節置換術に含まれるので、これらは区別せずに、以下に説明する。

　前記人工膝関節置換術は、大腿骨顆部後面切除工程と、脛骨近位端面切除工程と、大腿骨遠位端面切除工程と、大腿骨顆部前面切除工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
　なお、骨切除における前準備工程として、例えば膝関節部の切開、大腿骨顆部前面の露出、前後十字靭帯、半月板等の切除及び切離などは終了しているものとする。

＜＜大腿骨顆部後面切除工程＞＞
　前記大腿骨顆部後面切除工程は、大腿骨顆部前面における略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除する工程であり、図３に示す本発明の大腿骨顆部切除キット１００における顆部後面切除具２０、又は図５に示す本発明の大腿骨顆部後面切除具１０２を用いて実施される。

　前記顆部後面切除具２０は、図３に示すように、ガイド本体１と、スタイラス部材１０とを有している。

　ガイド本体１は、図３、及び図９から図１２に示すように、スリット２と、貫通孔３とを有し、該貫通孔３を基準にしてスリット２と反対側にスタイラス部材１０が着脱可能に装着されている。
　貫通孔３は、図１０に示すように、ガイド本体１の略中央部に設けられ、ロッド７０が貫入される孔である。
　スリット２は、図１０に示すように、ガイド本体１の貫通孔３を基準に取り付け軸４，４と反対側（下部側）に平行に設けられており、骨鋸の鋸刃が挿入可能であり、骨鋸の鋸刃を切除位置に案内する機能を有している。

　スタイラス部材１０は、図６Ａ及び図６Ｂに示すように、棒状部１１と、該棒状部の先端に少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａとを有している。
　少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａは、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に少なくとも二点で点接触する。これにより、スタイラス部材１０は大腿骨顆部前面と略平行になり、スタイラス部材１０が大腿骨骨軸に平行に位置する。

　まず、置換する人工膝関節の大腿骨コンポーネントのサイズ（Ｓ、Ｍ、又はＬ）を決定するため、ロッドに大腿骨測定ゲージを取り付け、大腿骨のサイズを測定する。なお、大腿骨のサイズが境界に該当する時は大きい方の大腿骨コンポーネントのサイズを選択する。
　次に、図１９に示すように、本発明の大腿骨顆部切除キット１００における顆部後面切除具２０のガイド本体１にスタイラス部材１０を装着すると共に、ガイド本体１の貫通孔３にロッド７０を貫入させる。

　図１９及び図２０に示すように、ガイド本体１にスタイラス部材１０を装着する。そして、ロッド７０をガイド本体１の貫通孔３を通して大腿骨髄腔に設けた穿孔に挿入する。次に、スタイラス部材１０の位置がずれないように、指でスタイラス部材１０を固定保持しながら、ロッド７０上を移動させてガイド本体１を大腿骨遠位端面２１８に密着させる。
　次に、図２１及び図２２に示すように、ガイド本体１に装着したスタイラス部材１０の先端の少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａを、図２３に示す大腿骨顆部前面８１の略平坦な骨軟骨移行部８０に、少なくとも二点で点接触させる。これにより、ガイド本体１の回旋が防止されると共に、大腿骨顆部後面の切除方向も決定される。
　なお、変形性膝関節症等の高度な骨棘形成が生じている症例では、通常、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部８０は骨棘に覆われていることが多い。そのため、骨ノミ等により骨棘を切除することが必要となる。また、図２３に示す大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部８０は、通常、軟部組織にその表面を覆われているため、該軟部組織を剥離して、近位方向に圧除し、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部を露出させる。

　次に、図２０に示すように、ガイド本体１の固定穴６に固定釘（不図示）を打ち込んでガイド本体１を大腿骨遠位端面に固定する。
　なお、スタイラス部材１０の位置決定時に多少の遊びが感じられるときには、大腿骨骨軸との角度差が最も小さい位置を選択する。

　次に、図示を省略しているが、大腿骨遠位端面に固定されたガイド本体１のスリット２に、骨鋸の鋸刃を挿入して、大腿骨顆部前面における略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除する。

＜＜脛骨近位端面切除工程＞＞
　前記脛骨近位端面切除工程は、脛骨の骨軸に垂直に脛骨近位端面を切除する工程であり、脛骨近位端面切除具により実施される。

　前記脛骨近位端面切除具は、図２５に示すように、ガイド本体１３５と、髄内ロッド１３１と、髄外ロッド１３２とを有している。

　まず、脛骨近位端面の切除は、図２５に示すように、脛骨２２０の骨軸方向中心部にドリルで脛骨穿孔を設ける。次に、髄内ロッド１３１を、脛骨近位端面切除具のガイド本体１３５に装着して、脛骨穿孔に髄内ロッド１３１を挿入する。
　次に、図２６Ａ及び図２６Ｂに示すように、ガイド本体１３５のスリット（不図示）に、髄外ロッド１３２を固定した髄外軸固定板１３３を挿入する。この髄外ロッド１３２の遠位端が第１、２足趾間に向かうように、ガイド本体１３５の内外バランスを調節して、ガイド本体１３５を脛骨２２０の近位端面に骨釘で固定する。

　次に、図２７に示すように、脛骨近位端面切除具のガイド本体１３５のゲージ１３６を調節して、スリットの位置を決定する。人工膝関節の脛骨コンポーネントの厚み＋インサートの厚みに１ｍｍを加えた数値となり、通常は１０ｍｍである。なお、手術前に膝関節の拘縮があり、膝関節の完全伸展が得られない場合には、更に１ｍｍを加え、１１ｍｍとする。この位置で、脛骨近位端面切除具のガイド本体１３５のゲージ１３６を固定する。
　次に、ガイド本体１３５を残し、髄外ロッド１３２及び髄内ロッド１３１を除去し、図示を省略しているが、骨鋸の鋸刃をガイド本体１３５のスリットに挿入し、脛骨近位端面を切除する。

　以上説明したように、大腿骨顆部後面の切除及び脛骨近位端面の切除を実施した後、以下に説明するように、軟部組織バランスの調節を行う。

－屈曲位軟部組織の調節－
　軟部組織バランスの調節は、膝関節を約９０°屈曲した位置で行う。
　まず、図２８に示すように、大腿骨顆部後面の切除面９１と脛骨近位端面の切除面９２との間に、厚み１８ｍｍのブロック９０を挿入し、膝関節を軽度屈曲位に保つ。
　膝関節の軽度屈曲を試みたときに、挿入したブロック９０の厚みのため、屈曲位がとれる前にロックされてしまう現象が生ずることがある。これは後部関節包の拘縮が生じているためである。この後部関節包の拘縮は膝関節変形により生じた半月板の損傷や後方脱臼位状態が原因となる。そこで、膝関節を軽度屈曲位として、脛骨を引き下げ固定して大腿骨を引き上る。後部関節包を可視的状態に保ち、コッヘル鉗子にて残存している半月板を把持して、前方に引き出しながら膝関節を屈曲することにより、半月板が関節内に引き出される。この引き出された半月板を切除することにより、後部関節包の拘縮は解離される。
　なお、解離が十分であるか否かは、図２８に示すように、大腿骨顆部後面の切除面９１と脛骨近位端面の切除面９２との間に、ブロック９０の挿入を再度行うことにより確認することができる。

　軟部組織の内外バランスが異なる場合には、大腿骨顆部後面の切除面９１と、脛骨近位端面の切除面９２と、ブロック９０との間に間隙が生じる。
　軟部組織の内外バランスがとれている場合には、大腿骨顆部後面の切除面９１と、脛骨近位端面の切除面９２と、ブロック９０との間に間隙が生じない。
　軟部組織の内外バランスが悪い状態が確認されたときには、軟部組織を解離することにより、大腿骨顆部後面の切除面９１と、脛骨近位端面の切除面９２と、ブロック９０との間に間隙が形成されない、良好なバランス状態を形成することができる。

　上述した大腿骨顆部後面の切除及び脛骨近位端面の切除は、それぞれの基準点又は線に基づいて行われているため、軟部組織の内外バランスの調節のために骨切りによる修正を行う必要はない。しかし、大腿骨遠位端面の切除においては、上述した軟部組織の内外バランスを調節することが必要となる。

－屈曲時と伸展時の軟部組織の緊張度の決定－
　人工膝関節の大腿骨コンポーネントを取り付ける大腿骨顆部の切除面の基本的な形状は上下を逆にした台形状（理想的な形状はグランドピアノ型）である。このため、膝関節の屈曲時と伸展時の軟部組織の緊張度を同一にすることができれば、膝関節の軟部組織の緊張度はすべての角度で均一性を保つことができる。膝関節の屈曲時と伸展時の軟部組織の緊張度、即ち大腿骨顆部後面の切除面と脛骨近位端面の切除面との間にかかるス緊張度（ストレス）を同一にするため、以下に説明するリガメントテンサーを使用することが好ましい。

　図２９及び図３０に示すように、リガメントテンサー９７は、大腿骨顆部後面の切除面と脛骨近位端面の切除面との間に挿入する上側ブレード９３ａ及び下側ブレード９３ｂと、該ブレードの切除面に接する側の面間の距離を示すゲージ９４と、前記ブレードに加わる荷重量を計測するためのトルクメーター（不図示）を固定する構造を持つノブ９５とを有している。ゲージ９４はその基部に骨鋸用案内スリット９６を有している。
　リガメントテンサー９７は、ノブ９５を回転させて荷重をかけることにより該ノブ９５についているネジ構造の突起９８が下降して下側ブレード９３ｂを押し下げ、上側ブレード９３ａと下側ブレード９３ｂ間の距離が増加する。押し下げられた下側ブレード９３ｂが骨鋸用案内スリット９６を押し下げ、ゲージ９４自体が押し下げられた距離を測定することができる。
　ケージ９４と骨鋸用案内スリット９６の連結部分自体は下側ブレード９３ｂと連結していないので、下側ブレード９３ｂより下の方向、即ち、ゲージ９４の目盛りが増加する方向にはそれぞれ単独で移動することが可能な構造となっている。
　上側ブレード９３ａと下側ブレード９３ｂとの間にかかる荷重量は、図３１Ａ及びゲージの目盛部分の拡大図である図３１Ｂに示すようなトルクメーター９９をノブ９５に固定することにより測定できる。

－屈曲位におけるリガメントテンサーの使用方法－
　図３２に示すように、リガメントテンサー９７の下側ブレード９３ｂに、厚み９ｍｍのスペーサー１０５を装着する。
　図３３Ａは、スペーサー１０５のおもて面、図３３Ｂは、スペーサー１０５の裏面を示す。スペーサー１０５の裏面には、図３３Ｂに示すように、溝１１６が形成されている。図３２に示すように、スペーサー１０５の溝１１６をリガメントテンサー９７の下側ブレード９３ｂの溝に係合させて固定する。

　次に、図３４に示すように、スペーサー１０５を装着したリガメントテンサー９７をノブ９５が上方になる状態で大腿骨顆部後面の切除面と脛骨近位端面の切除面との間に挿入する。
　次に、図３５に示すように、スペーサー１０５を装着した下側ブレード９３ｂが、大腿骨顆部後面の切除面と脛骨近位端面の切除面との間に均一に接触するようになるまで膝関節を屈曲させる。
　次に、リガメントテンサー９７のノブ９５の固定穴（不図示）にトルクメーター９９を固定して、ノブを回転させて２０ｃＮ・ｍの荷重をかける。トルクメーター９９にはロックがかかっているため、適切な荷重がかかったときにカチッと音がしてそれ以上の荷重はかからない。この時点でのリガメントテンサー９７のゲージ１３８に示された数値を読む（図３６参照）。通常は７から８の間の数値を示す。この数値を記録する。
　次に、リガメントテンサー９７のノブ９５を逆方向に回転させて、リガメントテンサー９７のブレードを閉じた後、大腿骨顆部後面の切除面と脛骨近位端面の切除面との間から、スペーサー１０５を装着した下側ブレード９３ｂを除去し、スペーサー１０５をリガメントテンサー９７から取り外す。

　次に、図３７に示すように、リガメントテンサー９７の方向を上下反転させて、再び大腿骨顆部後面の切除面と脛骨近位端面の切除面との間に設置する。膝関節を完全に伸展し、リガメントテンサー９７の固定孔（不図示）に下肢機能軸決定用ロッド１０６を装着する。
　次に、リガメントテンサー９７のノブ９５にトルクメーター９９を取り付け、クリック音が生ずるまで、ノブ９５を回転させて、荷重をかける。荷重がかかった時点でのゲージの数値を読む。この数値が、上記屈曲時のゲージの数値以上になる場合には、ゲージの数値が１８になるように移動してから、ゲージを固定する。一方、屈曲時のゲージの数値より小さい数値になる場合には、上記屈曲時の値との差に１８を加算した値にゲージのレベルを合わせて、ゲージを固定する（図３８参照）。この操作により、骨鋸用案内スリット９６は近位方向に押し上げられる。

　次に、図３９に示すように、下肢機能軸決定用ロッド１０６を移動させて下肢機能軸に一致させる。下肢機能軸決定用ロッド１０６の先端が大腿骨頭中心に向かい、脛骨側ロッドの先端が足関節中央に向かうようにロッドの位置を調整し保持する。
　次に、リガメントテンサー９７のノブ９５を回転させて荷重をかけ、ゲージの数値を１６又は１８に合わせて固定する。この状態で、図３９に示すように、大腿骨２１０の内顆側と外顆側に各１本の切除補助鋼線１０７，１０７を、リガメントテンサー９７の骨鋸用案内スリット９６を通して打ち込み、固定し、膝関節を伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度が等しくなる位置決めを行う。
　次に、リガメントテンサー９７のノブ９５を閉じる。図４１Ａ及び図４１Ｂに示すように、切除補助鋼線１０７，１０７を残して、リガメントテンサー９７と下肢機能軸決定用ロッド１０６を取り外す。以上により、膝関節の伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度を略同一になるように調節が行われる。

＜＜大腿骨遠位端面切除工程＞＞
　前記大腿骨遠位端面切除工程は、図３に示す本発明の大腿骨顆部切除キット１００における顆部後面切除具２０、又は図５に示す本発明の大腿骨顆部後面切除具１０２により形成した大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除する工程であり、図３に示す本発明の大腿骨顆部切除キット１００における遠位端面切除具６０、又は図４に示す本発明の大腿骨遠位端面切除具１０１を用いて実施される。

　遠位端面切除具６０は、図３に示すように、ガイド本体１と、ガイド部材３０と、遠位端面切除基部４０と、遠位端面切除上部５０と、ロッド７０とを有している。
　なお、遠位端面切除具６０におけるガイド本体１及びロッド７０は、前記顆部後面切除具２０におけるガイド本体１及びロッド７０と同じものを用いることができるので、その説明を省略する。

　ガイド部材３０は、ガイド本体１に着脱可能に装着され、本発明の大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具２０により形成した大腿骨顆部後面の切除面と垂直な大腿骨遠位端面の切除位置を確定するための部材である。
　ガイド部材３０は、図３に示すように、棒状ガイド３１を有しており、ガイド本体１における貫通孔３を基準としてスリット２と反対側（上側）に着脱可能に取り付けられている。
　遠位端面切除基部４０は、ガイド部材３０と棒状ガイド３１を介して連結され、大腿骨遠位端面を切除する際の位置決めを行う機能を有する部材である。
　遠位端面切除基部４０は、図１５及び図１６に示すように、ガイド部材３０における棒状ガイド３１が貫入される貫通孔４１を有している。
　遠位端面切除上部５０は、遠位端面切除基部４０に装着され、大腿骨遠位端面の切除を行う際に骨鋸の鋸刃を案内する機能を有する部材である。
　遠位端面切除上部５０は、図１７及び図１８に示すように、本体５１と、スリット５２と、ガイド部５３と、把持部５４とを有している。

　次に、図４２及び図４３に示すように、ガイド部材３０を装着したガイド本体１を大腿骨遠位端面に密着させて、ガイド本体１の固定穴６に骨釘を打ち込んで、ガイド本体１を大腿骨遠位端面に固定する。
　次に、図４３に示すように、ガイド部材３０における棒状ガイド３１を遠位端面切除基部４０の貫通孔４１に挿入し、ガイド部材３０と遠位端面切除基部４０を連結させる。
　次に、図４３に示すように、遠位端面切除基部４０のガイド部材３側の面が、２本の切除補助鋼線１０７，１０７に接する位置において、遠位端面切除基部４０の固定穴４３に骨釘を打ち込むことにより、遠位端面切除基部４０を大腿骨顆部前面に固定する。これにより、膝関節を伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度を考慮した遠位端面切除基部４０の位置決めが行われる。
　次に、図４４及び図４５に示すように、切除補助鋼線１０７，１０７及び遠位端面切除基部４０を残し、ガイド本体１及びガイド部材３０を除去し、その後、切除補助鋼線１０７，１０７を除去する。
　次に、図４６に示すように、遠位端面切除基部４０の取り付け穴４２に遠位端面切除上部５０の取り付け用突起（不図示）を挿入することにより、遠位端面切除基部４０に遠位端面切除上部５０を装着する。
　次に、図４７に示すように、遠位端面切除上部５０におけるスリット５１に骨鋸の鋸刃１１０を挿入し、大腿骨顆部後面の切除面と直角に大腿骨遠位端面２１８の切除を行う。その結果、切除後は、図４８に示すように、大腿骨顆部後面の切除面と直角な大腿骨遠位端面の切除面２１８ａが形成される。

　以上説明した大腿骨遠位端面切除工程においては、膝関節の屈曲時と伸展時で同一負荷をかけて、同一歪み量が得られるように調節し、靭帯の弾性力を量的に調節した条件下で、遠位端面切除基部４０の正確な位置決めを行い、大腿骨遠位端面を大腿骨顆部後面の切除面と直角に切除することができる。

＜＜大腿骨顆部前面切除工程＞＞
　前記大腿骨顆部前面切除工程は、図３に示す本発明の大腿骨顆部切除キット１００における顆部後面切除具２０、又は図５に示す本発明の大腿骨顆部後面切除具１０２により切除された大腿骨顆部後面の切除面と平行に大腿骨顆部前面を切除する工程であり、顆部前面切除具を用いて実施される。

　前記顆部前面切除具１２０は、図４９に示すように、ガイド本体１２１と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリット１２２とを有している。
　図５０に示すように、膝関節を屈曲し、この状態で、顆部前面切除具のガイド本体１２１を大腿骨遠位端面２１８に密着させて、ガイド本体１２１の固定穴を通して骨釘１２３を打ち込んで、顆部前面切除具１２０のガイド本体１２１を大腿骨遠位端面２１８に固定する。
　次に、図５０及び図５１に示すように、ガイド本体１２１のスリット１２２に、骨鋸１１１の鋸刃１１０を挿入して、大腿骨顆部後面の切除面と平行に大腿骨顆部前面の切除を行う。

　以上説明したように、腿骨顆部前面、大腿骨顆部後面、大腿骨遠位端面、及び脛骨近位端面の切除を行った後、大腿骨顆部切除面及び脛骨近位端切除面に、図５２に示すように、人工膝関節２００を装着する。この人工膝関節２００は、脛骨２２０に装着する脛骨コンポーネント３１０と大腿骨２１０に装着する大腿骨コンポーネント３３０、及び脛骨コンポーネント３１０と大腿骨コンポーネント３３０間に挿入するインサート３２０から構成されている。
　前記人工膝関節としては、図５１に示すものの他、種々の形式（形態）のものを用いることができる。

　本発明の大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面切除具は、大腿骨顆部切除キットにおけるガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、大腿骨顆部後面及び大腿骨遠位端面の切除を迅速かつ的確に行うことができ、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨と脛骨との的確なアライメントを再建できるので、あらゆる人工膝関節に適用することができる。

　以下、本発明の実施例につき図面を用いて具体的に説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。

（実施例１）
＜大腿骨顆部切除キット＞
　本発明の大腿骨顆部切除キットの実施例について説明する。
　図３は、本発明の大腿骨顆部切除キット１００を示す概略図である。
　この大腿骨顆部切除キット１００は、顆部後面切除具２０と、遠位端面切除具６０とを有している。

＜＜顆部後面切除具＞＞
　顆部後面切除具２０は、大腿骨顆部前面における略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除する切除具であり、図３に示すように、ガイド本体１と、スタイラス部材１０と、ロッド７０とを有している。

－ガイド本体－
　ガイド本体１は、図３、及び図９～図１２に示すように、貫通孔３と、スリット２とを有している。この実施例では、ガイド本体１は、クロム－ニッケル合金製である。
　貫通孔３は、図１０に示すように、ガイド本体１の略中央部に設けられ、ロッド７０が貫入される孔である。
　貫通孔３は、貫通孔形成部材７に形成されており、該貫通孔形成部材７は、図１０に示すように、貫通孔支持部材５の開口部９内を図中矢印Ｂ方向にスライド移動可能に構成されている。
　貫通孔支持部材５は、図１０に示すように、ガイド本体１の中央開口部８内を図中矢印Ａ方向にスライド移動可能に構成されている。
　このように貫通孔形成部材７及び貫通孔支持部材５がスライド移動可能に構成されているので、ガイド本体１に装着されるスタイラス部材１０の先端の少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａが理想的な当接位置である大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部（図２３の８０参照）に当接できるように、貫通孔３の位置を適宜調節することができる。
　ガイド本体１の貫通孔３を基準にスリット２と反対側（上部側）の両端部には、図９から図１２に示すように、スタイラス部材１０を着脱可能に装着するための取り付け軸４，４が突設されている。スタイラス部材１０の棒状部１１は、図１９に示すように、ガイド本体１に対し垂直に装着される。
　ガイド本体１の正面略中央部には、図１０に示すように、固定穴６，６が設けられており、該固定穴に固定釘（不図示）を打ち込むことにより、ガイド本体１を大腿骨遠位端面に固定することができる。

　スリット２は、図１０に示すように、ガイド本体１の貫通孔３を基準に取り付け軸４，４と反対側（下部側）に平行に設けられており、骨鋸の鋸刃が挿入可能であり、骨鋸の鋸刃を切除位置に案内する機能を有している。

－スタイラス部材－
　スタイラス部材１０は、図３に示すように、棒状部１１と、該棒状部の先端に少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａと、スタイラス部材固定部１４とを有している。この実施例では、スタイラス部材１０は、クロム－ニッケル合金製である。
　棒状部１１は、一端の先端部が該棒状部１１に対し垂直に屈曲して、少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａを形成している。棒状部１１の他端はスタイラス部材固定部１４に固定ネジ１３で固定されている。
　棒状部１１は、固定ネジ１３を緩めることにより、棒状部１１の先端の少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａが理想的な当接位置である大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部（図２３の８０参照）に当接できるように、棒状部１１の突出長さを適宜調整することができる。
　棒状部１１の先端の少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａは、図６Ａから図８に示すように、先端が２つに分かれて鋭角な爪状となっており、二点接触が可能である。これにより、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部が凹凸（粗さ）を有していても、安定に当接できるので、ガイド本体の回旋を確実に防止できる。この実施例１では、２つのスタイラス部間の距離は１０ｍｍである。
　棒状部１１の先端の少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａは、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部（図２３の８０参照）に当接することにより、スタイラス部材１０は大腿骨顆部前面と平行になる。
　図３に示すように、スタイラス部材固定部１４は、その両端部に取り付け穴１５，１５が設けられている。該取り付け穴１５，１５にガイド本体１の両端部に突設された取り付け軸４，４を挿入することにより、スタイラス部材１０をガイド本体１に着脱可能に装着することができる。

－ロッド－
　ロッド７０は、大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入される棒状の部材である。この実施例１では、ロッドはクロムニッケル合金製であり、ロッドの長さは５０ｍｍ、ロッドの直径は１０ｍｍである。
　ロッド７０は、先端部が尖がった形状を呈しており、該ロッド７０の先端部を大腿骨遠位端面２１８の穿孔２１５に挿入し、固定する（図２４参照）。大腿骨遠位端面の穿孔２１５は、ドリルにより形成される。

　本発明の大腿骨顆部切除キット１００の顆部後面切除具２０においては、図３、図１９及び図２１に示すように、ガイド本体１は、貫通孔３と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリット２とを有している。スタイラス部材１０を、ガイド本体１における貫通孔３を基準にしてスリット２とは反対側に装着し、ガイド本体１の貫通孔３にロッド７０を貫入して、該ロッド７０を大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、ガイド本体１をロッド７０上で動かし、大腿骨遠位端面にガイド本体１を密着させる。これにより、ガイド本体１における骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットが大腿骨骨軸に対し平行に配置される。この状態で、スタイラス部材１０における少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａを大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に少なくとも二点で点接触させると、ガイド本体１の大腿骨顆部に対する回旋誤差が最小限となり、回旋度が安定化し、ガイド本体１を大腿骨顆部前面と平行に位置決めできる。
　したがって、本発明の大腿骨顆部切除キット１００の顆部後面切除具２０によれば、ガイド本体１の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を迅速かつ的確に切除することができる。
　この実施例１では、骨鋸としては、オシレイティングブレードを用いた。

＜＜遠位端面切除具＞＞
　遠位端面切除具は、顆部後面切除具により切除された大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除するための切除具であり、図３に示すように、ガイド本体１と、ガイド部材３０と、遠位端面切除基部４０と、遠位端面切除上部５０と、ロッド７０とを有している。
　なお、前記遠位端面切除具６０におけるガイド本体１及びロッド７０は、前記顆部後面切除具２０におけるガイド本体１及びロッド７０と同じものを用いることができるので、同じ符号を付してその説明を省略する。

－ガイド部材－
　ガイド部材は、大腿骨遠位端面を切除する際に、顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面と垂直な大腿骨遠位端面の切除位置を確定するための部材である。
　ガイド部材３０は、図３に示すように、棒状ガイド３１を有しており、ガイド本体１における貫通孔３を基準としてスリット２と反対側（上側）に着脱可能に取り付けられている。この実施例では、ガイド部材３０は、クロム－ニッケル合金製である。
　棒状ガイド３１は、図１３に示すように、一端がガイド部材固定部３２に設けられており、他端は後述する遠位端面切除基部の貫通孔４１に挿入可能である。
　ガイド部材固定部３２の両端部には取り付け穴３３，３３が設けられており、該取り付け穴をガイド本体１の両端部に突設された取り付け軸４，４に挿入することで、ガイド部材３０がガイド本体１に装着される。
　棒状ガイド３１は、図１３及び図１４に示すように、ガイド部材固定部３２に垂直に設けられているので、ガイド部材３０がガイド本体１に装着されると、棒状ガイド３１はガイド本体１から垂直に位置することになる。

－遠位端面切除基部－
　遠位端面切除基部は、ガイド部材と棒状ガイドを介して連結され、大腿骨遠位端面を切除する際の位置決めを行う機能を有する部材である。
　遠位端面切除基部４０は、図１５及び図１６に示すように、ガイド部材３０における棒状ガイド３１が貫入される貫通孔４１を有している。この実施例では、遠位端面切除基部４０は、クロム－ニッケル合金製である。
　ガイド部材３０における棒状ガイド３１が遠位端面切除基部４０の貫通孔４１に貫入されると、ガイド部材３０と遠位端面切除基部４０が連結される。
　遠位端面切除基部４０を大腿骨顆部前面に固定する際には、膝関節を伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度が等しくなるように調整した位置に基づき、遠位端面切除基部４０の位置決めを行う。
　遠位端面切除基部４０は、図１５及び図１６に示すように、固定穴４３を有しており、該固定穴４３に固定釘を打ち込むことにより、位置決めされた遠位端面切除基部４０を大腿骨顆部前面に固定することができる。

－遠位端面切除上部－
　遠位端面切除上部は、遠位端面切除基部に装着され、大腿骨遠位端面の切除を行う際に骨鋸の鋸刃を案内する機能を有する部材である。
　遠位端面切除上部５０は、図１７及び図１８に示すように、本体５１と、スリット５２と、ガイド部５３と、把持部５４とを有している。この実施例では、遠位端面切除上部５０は、クロム－ニッケル合金製である。
　スリット５２は、ガイド部材３０の棒状ガイド３１に対して垂直に配置しており、ガイド本体とは平行に位置している。
　遠位端面切除上部５０は、取り付け用凸部（不図示）を有し、図４３に示すように、該取り付け用凸部を遠位端面切除基部４０の取り付け穴４２に挿入することで、位置決めされた遠位端面切除基部４０に遠位端面切除上部５０が装着される。これにより、図４７に示すように、遠位端面切除上部５０におけるスリット５２に骨鋸の鋸刃１１０を挿入し、大腿骨遠位端面の切除を行うことができる。

　本発明の大腿骨顆部切除キット１００の遠位端面切除具６０においては、図３、図４３、及び図４６に示すように、ガイド本体１にガイド部材３０を装着し、ガイド本体１の貫通孔３にロッド７０を貫入して、該ロッド７０を大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、ガイド本体１をロッド７０上で動かし、大腿骨遠位端面にガイド本体１を密着させる。これにより、ガイド部材３０の棒状ガイド３１が大腿骨骨軸に平行に配置される。棒状ガイド３１を遠位端面切除基部４０の貫通孔４１に挿入し、ガイド部材３０と遠位端面切除基部４０を連結する。この状態で、好ましくは、膝関節を伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度が等しくなるように調整して、遠位端面切除基部４０を位置決めする。位置決めされた遠位端面切除基部４０に遠位端面切除上部５０を装着する。これにより、遠位端面切除基部４０の正確な位置決めが可能となり、遠位端面切除上部５０における骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリット５２が大腿骨遠位端面の切除位置となるので、整形外科医の負担をできる限り少なくして、前記顆部後面切除具により切除された大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を迅速かつ的確に切除することができ、屈曲時と伸展時のバランスのとれた人工膝関節を装着することができる。

（実施例２）
＜大腿骨遠位端面切除具＞
　本発明の大腿骨遠位端面切除具の実施例について説明する。
　図４は、本発明の大腿骨遠位端面切除具１０１を示す概略図である。
　この大腿骨遠位端面切除具１０１は、ガイド本体１と、ガイド部材３０と、遠位端面切除基部４０と、遠位端面切除上部５０とを有している。図４中７０は、大腿骨顆部に大腿骨骨軸に平行に挿入されるロッドである。

　本発明の大腿骨遠位端面切除具１０１は、人工膝関節を取り付ける際に、本発明の大腿骨顆部切除キットにおける前記顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除するためのキットである。
　前記ガイド本体１は、前記大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具のガイド本体１と同様であるため、同じ符号を付してその説明を省略する。
　前記ガイド部材３０は、前記大腿骨顆部切除キットにおける遠位端面切除具のガイド部材３０と同様であるため、同じ符号を付してその説明を省略する。
　前記遠位端面切除基部４０は、前記大腿骨顆部切除キットにおける遠位端面切除具の遠位端面切除基部と同様であるため、同じ符号を付してその説明を省略する。
　前記遠位端面切除上部５０は、前記大腿骨顆部切除キットにおける遠位端面切除具の遠位端面切除上部と同様であるため、同じ符号を付してその説明を省略する。
　前記ロッド７０は、前記大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具のロッド７０と同様であるため、同じ符号を付してその説明を省略する。

　本発明の大腿骨遠位端面切除具１０１においては、図４、図４３、及び図４６に示すように、ガイド本体１にガイド部材３０を装着し、ガイド本体１の貫通孔３にロッド７０を貫入して、該ロッド７０を大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、ガイド本体１をロッド７０上で動かし、大腿骨遠位端面にガイド本体１を密着させる。これにより、ガイド部材３０の棒状ガイド３１が大腿骨骨軸に平行に配置される。棒状ガイド３１を遠位端面切除基部４０の貫通孔４１に挿入し、ガイド部材３０と遠位端面切除基部４０を連結する。この状態で、好ましくは、膝関節を伸展時と屈曲時における軟部組織の緊張度が等しくなるように調整して、遠位端面切除基部４０を位置決めする。位置決めされた遠位端面切除基部４０に遠位端面切除上部５０を装着する。これにより、遠位端面切除基部４０の正確な位置決めが可能となり、遠位端面切除上部５０における骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリット５２が大腿骨遠位端面の切除位置となる。
　したがって、本発明の大腿骨遠位端面切除具によれば、前記遠位端面切除基部の正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部後面の切除面に対し垂直に大腿骨遠位端面を迅速かつ的確に切除することができ、屈曲時と伸展時のバランスのとれた人工膝関節を装着することができる。

（実施例３）
＜大腿骨顆部後面切除具＞
　本発明の大腿骨顆部後面切除具の実施例について説明する。
　図５は、本発明の大腿骨顆部後面切除具１０２を示す概略図である。
　この大腿骨顆部後面切除具１０２は、ガイド本体１と、スタイラス部材１０とを有している。図５中７０は、大腿骨顆部に大腿骨骨軸に平行に挿入されるロッドである。

　本発明の大腿骨顆部後面切除具１０２は、人工膝関節を取り付ける際に大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除するための切除具である。
　前記ガイド本体１は、前記大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具のガイド本体１と同様であるため、同じ符号を付してその説明を省略する。
　前記スタイラス部材１０は、前記大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具のスタイラス部材１０と同様であるため、同じ符号を付してその説明を省略する。
　前記ロッド７０は、前記大腿骨顆部切除キットにおける顆部後面切除具のロッド７０と同様であるため、同じ符号を付してその説明を省略する。

　本発明の大腿骨顆部後面切除具１０２においては、図５、図１９、及び図２１に示すように、ガイド本体１は、貫通孔３と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリット２とを有している。スタイラス部材１０を、ガイド本体１における貫通孔３を基準にしてスリット２とは反対側に装着し、ガイド本体１の貫通孔３にロッド７０を貫入して、該ロッド７０を大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入し、ガイド本体１をロッド７０上で動かし、大腿骨遠位端面にガイド本体を密着させる。これにより、ガイド本体１におけるスリット２が大腿骨骨軸に対し平行に配置される。この状態で、スタイラス部材１０における少なくとも２つのスタイラス部１１ａ，１１ａを大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に少なくとも二点で点接触させると、ガイド本体１の大腿骨顆部に対する回旋誤差が最小限となり、回旋度が安定化し、ガイド本体１を大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部と平行に位置決めできる。
　したがって、本発明の大腿骨顆部後面切除具１０２によれば、ガイド本体１の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を迅速かつ的確に切除することができる。

　以上、本発明の大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面切除具について詳細に説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更しても差支えない。例えば大腿骨顆部切除キットには、顆部後面切除具及び遠位端面切除具以外にも、顆部前面切除具及び脛骨近位端面切除具を含んでいることが好ましい。

　本発明の大腿骨顆部切除キット、大腿骨遠位端面切除具、及び大腿骨顆部後面切除具は、大腿骨顆部切除キットにおけるガイド本体の大腿骨顆部に対する回旋を確実に防止でき、正確な位置決めが可能となり、整形外科医の負担をできる限り少なくして、大腿骨顆部後面及び大腿骨遠位端面の切除を迅速かつ的確に行うことができ、大腿骨と脛骨との的確なアライメントを再建できるので、例えば人工膝関節置換術における大腿骨顆部後面の切除、大腿骨顆部前面の切除、大腿骨遠位端面の切除、脛骨近位端面の切除などに好適に用いることができる。

　　　１　　　ガイド本体
　　　２　　　スリット
　　　３　　　貫通孔
　　　４　　　取り付け軸
　　　５　　　貫通孔支持部材
　　　６　　　固定穴
　　　７　　　貫通孔形成部材
　　　８　　　中央開口部
　　　９　　　開口部
　　１０　　　スタイラス部材
　　１１　　　棒状部
　　１１ａ　　　スタイラス部
　　１３　　　固定ネジ
　　１４　　　スタイラス部材固定部
　　１５　　　取り付け穴
　　２０　　　顆部後面切除具
　　３０　　　ガイド部材
　　３１　　　棒状ガイド
　　３２　　　ガイド部材固定部
　　３３　　　取り付け穴
　　４０　　　遠位端面切除基部
　　４１　　　貫通孔
　　４２　　　取り付け穴
　　４３　　　固定穴
　　４５　　　骨釘
　　５０　　　遠位端面切除上部
　　５１　　　本体
　　５２　　　スリット
　　５３　　　ガイド部
　　５４　　　把持部
　　６０　　　遠位端面切除具
　　７０　　　ロッド
　　８０　　　骨軟骨移行部
　　８１　　　大腿骨顆部前面
　　９０　　　ブロック
　　９１　　　大腿骨顆部後面の切除面
　　９２　　　脛骨近位端面の切除面
　　９３ａ　　　上側ブレード
　　９３ｂ　　　下側ブレード
　　９４　　　ゲージ
　　９５　　　ノブ
　　９６　　　骨鋸案内用スリット
　　９７　　　リガメントテンサー
　　９８　　　突起
　　９９　　　トルクメーター
　１００　　　大腿骨顆部切除キット
　１０１　　　大腿骨遠位端面切除具
　１０２　　　大腿骨顆部後面切除具
　１０６　　　下肢機能軸決定用ロッド
　１０７　　　切除補助鋼線
　１１０　　　鋸刃
　１１１　　　骨鋸
　１１６　　　溝
　１２０　　　大腿骨顆部前面切除具
　１２１　　　ガイド本体
　１２２　　　スリット
　１２３　　　骨釘
　１３１　　　髄内ロッド
　１３２　　　髄外ロッド
　１３３　　　髄外軸固定板
　１３５　　　ガイド本体
　１３６　　　ゲージ
　１３８　　　ゲージ
　２００　　　膝関節
　２１０　　　大腿骨
　２１５　　　穿孔
　２１６　　　大腿骨顆部
　２１８　　　大腿骨遠位端面
　２１８ａ　　　大腿骨遠位端面の切除面
　２２０　　　脛骨
　２２２　　　脛骨近位端面
　２３０　　　軟部組織
　３１０　　　脛骨コンポーネント
　３２０　　　インサート
　３３０　　　大腿骨コンポーネント

Claims

　人工膝関節を取り付ける際に大腿骨顆部を切除するための大腿骨顆部切除キットであって、
　前記大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除するための顆部後面切除具と、
　前記顆部後面切除具により切除された大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除するための遠位端面切除具と、
を含み、
　前記顆部後面切除具が、前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入されるロッドに貫入される貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有するガイド本体と、
　前記ガイド本体における前記貫通孔を基準にして前記スリットとは反対側に着脱可能であって、前記スリットと平行に位置する棒状部と、該棒状部の先端部に位置し、該棒状部に対し垂直に屈曲し、かつ先端に少なくとも２つのスタイラス部とを有するスタイラス部材とを有し、
　前記遠位端面切除具が、前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入されるロッドに貫入される貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有するガイド本体と、
　前記ガイド本体における前記貫通孔を基準として前記スリットと反対側に着脱可能であって、前記顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面と平行な位置に配した前記スリットと平行に位置する棒状ガイドを有するガイド部材と、
　前記ガイド部材における前記棒状ガイドに貫入される貫通孔を有し、大腿骨顆部前面に位置決めされる遠位端面切除基部と、
　前記遠位端面切除基部に装着され、骨鋸の鋸刃が挿入可能であり、前記棒状ガイドに対して垂直に位置するスリットを有する遠位端面切除上部と、
を有することを特徴とする大腿骨顆部切除キット。
　人工膝関節を取り付ける際に顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面に垂直に大腿骨遠位端面を切除するための大腿骨遠位端面切除具であって、
　前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に平行に挿入されるロッドに貫入される貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有するガイド本体と、
　前記ガイド本体における前記貫通孔を基準として前記スリットと反対側に着脱可能であって、顆部後面切除具により形成した大腿骨顆部後面の切除面と平行な位置に配した前記スリットと平行に位置する棒状ガイドを有するガイド部材と、
　前記ガイド部材における前記棒状ガイドに貫入される貫通孔を有し、大腿骨顆部前面に位置決めされる遠位端面切除基部と、
　前記遠位端面切除基部に装着され、骨鋸の鋸刃が挿入可能であり、前記棒状ガイドに対して垂直に位置するスリットを有する遠位端面切除上部と、
を有することを特徴とする大腿骨遠位端面切除具。
　人工膝関節を取り付ける際に大腿骨顆部前面の略平坦な骨軟骨移行部に平行に大腿骨顆部後面を切除するための大腿骨顆部後面切除具であって、
　前記大腿骨顆部に該大腿骨骨軸に対し平行に挿入されるロッドに貫入される貫通孔と、骨鋸の鋸刃が挿入可能なスリットとを有するガイド本体と、
　前記ガイド本体における前記貫通孔を基準にして前記スリットとは反対側に着脱可能であって、前記スリットと平行に位置する棒状部と、該棒状部の先端部に位置し、該棒状部に対し垂直に屈曲し、かつ先端に少なくとも２つのスタイラス部を有するスタイラス部材と、
を有することを特徴とする大腿骨顆部後面切除具。