WO2010038308A1 - バックル - Google Patents

Abstract

　雄部材（Ａ）と雌部材（Ｂ）とを備える。雄部材（Ａ）は、紐状部材を取り付け可能な基部（１０）と、この基部（１０）から突出形成され雄部材（Ａ）の差込方向に対して交差する方向へ弾性変形可能な一対の脚部（２０）と、この各脚部（２０）に設けられ雌部材（Ｂ）に係合可能な係合部（３０）とを備える。雄部材（Ａ）が雌部材（Ｂ）に差し込まれた際、脚部（２０）の一部と雌部材（Ｂ）の内壁とが接触し、脚部（２０）が弾性復帰する力を利用して雄部材（Ａ）を反差込方向へ付勢する付勢部（７０）を備えている。

Description

バックル

　本発明は、雄部材と雌部材とを備えたバックルに関する。詳しくは、１本の紐状部材の両端、あるいは、２本の紐状部材同士を連結、分離するために用いられるバックルに関する。

　１本の紐状部材の両端、あるいは、２本の紐状部材同士を連結、分離するバックルのなかには、プラグがソケット内に差し込まれた状態において、プラグとソケットとのがたつきを防止した構造が提案されている（例えば、特許文献１参照）。
　これは、プラグと、ソケットとを備える。プラグは、プラグ本体と、このプラグ本体の両側から互いに平行に突出形成された一対の脚部と、この一対の脚部の間にこれらと平行に突設されたガイドバーとを備える。各脚部の外側には、反差込側に向いて開口する係合溝が形成されている。ガイドバーの先端には、脚部と平行にばね部材が一体的に形成されている。ソケットは、筒状のソケット本体と、このソケット本体の両側壁に形成されプラグの脚部を外部へ露出させる開口部と、この開口部が形成された側壁に形成されプラグの係合溝が係合する被係合部とを備える。

　このような構成において、プラグをソケットに係合するには、プラグの脚部をソケット内に差し込む。すると、各脚部の先端がソケットの両側壁によって互いに内側へ弾性変形されながら差し込まれていくとともに、ばね部材が圧縮されていく。やがて、各脚部の係合溝がソケットの被係合部を越えると、内側に弾性変形されていた各脚部が外側へ弾性復帰される。ここで、プラグの押し込み動作を止めると、圧縮されていたばね部材の復帰力により、プラグが反差込方向へ付勢されるため、各脚部の係合溝がソケットの被係合部に係止される。

　プラグをソケットから外すには、一旦、プラグをソケットの内部に押し込んだのち、ソケットの開口部から外部へ露出したプラグの脚部を互いに内側へ押圧して、係合溝を被係合部から外す。すると、ばね部材の復元力により、プラグがソケットから押し出される。これにより、プラグをソケットから外すことができる。

DE19837071A1公報

　ところで、このようなバックルでは、プラグに設けたばね部材によってプラグに反差込方向の付勢力を発生させて、プラグのがたつきを防止する構造であるため、次のような課題がある。
　すなわち、ガイドバーの先端にばね部材を一体的に形成しなければならないから、構造が複雑化し、製造上困難を伴う。しかも、プラグ単体の状態では、ガイドバーの先端からばね部材が突出しているため、このばね部材に衣類などが引っ掛かりやすい。

　本発明の目的は、このような課題を解決し、構造の複雑化を伴うことなく、プラグとソケットとのがたつきを防止できるバックルを提供することにある。

　本発明のバックルは、雄部材と、この雄部材が差込係合される雌部材とを備え、前記雄部材は、紐状部材を取り付け可能な基部と、この基部から突出形成され前記雄部材の差込方向に対して交差する方向へ弾性変形可能な一対の脚部と、この各脚部に設けられ前記雌部材に係合可能な係合部とを備え、前記雄部材が前記雌部材に差し込まれた際、前記脚部の一部と前記雌部材の内壁とが接触し、前記脚部が弾性復帰する力を利用して前記雄部材を反差込方向へ付勢する付勢部が形成されている、ことを特徴とする。
　ここで、付勢部において、前記脚部が弾性復帰する力を利用して前記雄部材を反差込方向へ付勢するには、前記脚部の一部と前記雌部材の内壁との接触部の少なくとも一方に、反差込方向へ向かって拡がる傾斜面や湾曲面などを形成することによって実現できる。

　このような構成によれば、雄部材の一対の脚部を雌部材に差し込むと、脚部の一部が雌部材の内壁に接触される。すると、これらの接触部には付勢部が形成されているから、この付勢部によって、脚部が弾性復帰する力を利用して雄部材が反差込方向へ付勢される。そのため、雄部材と雌部材とが接触されて雄部材と雌部材とのがたつきが防止される。
　従って、脚部の一部または雌部材の内壁に、脚部が弾性復帰する力を利用して雄部材を反差込方向へ付勢する付勢部を形成するだけでよいから、簡単な構成で雄部材と雌部材とのがたつき、つまり、差込方向および反差込方向のがたつきを防止できる。

　本発明のバックルにおいて、前記付勢部は、前記各脚部の先端部外側に形成された雄側当接部と、前記雌部材の内壁に形成され前記各雄側当接部が接触する一対の雌側当接部とを備え、前記一対の雌側当接部は、前記反差込方向へ向かうに従って互いに離れる方向へ延びる壁面に形成されている、ことが好ましい。
　このような構成によれば、各脚部の先端部外側に形成された雄側当接部が、雌部材の内壁に形成された雌側当接部に当接すると、脚部の弾性復帰力によって雄側当接部は、雌側当接部の壁面に沿って離れる方向、つまり、反差込方向へ案内されるから、雄部材を反差込方向へスムーズに付勢することができる。

　本発明のバックルにおいて、前記一対の雌側当接部は、前記反差込方向へ向かうに従って互いに離れる方向へ拡がった傾斜壁面とされ、前記雄側当接部は、前記雌側当接部の前記傾斜壁面に対して面接触する壁面を有している、ことが好ましい。
　このような構成によれば、雌側当接部が傾斜壁面とされているから、簡単に形成できる。また、雄側当接部も、雌側当接部の傾斜壁面に対して面接触する壁面を有しているから、耐摩耗性に優れる。

　本発明のバックルにおいて、前記雌部材は、前記雄部材の一対の脚部が差し込まれる差込口と、この差込口から差し込まれた前記一対の脚部の先端を互いに接近する方向へ弾性変形させるとともに、前記雄部材が所定位置まで差し込まれた際に前記一対の脚部の先端部を互いに離間する方向へ弾性復帰させるガイド部と、前記雄部材が所定位置まで差し込まれた際に前記各係合部が係合する一対の被係合部とを備え、前記被係合部は、前記雄部材の差込方向に対して交差する被係合壁面を有し、前記係合部は前記被係合壁面に当接する係合壁面を有し、前記付勢部によって前記雄部材が反差込方向へ付勢された際、前記係合壁面が前記被係合壁面に接触した状態で係合される、ことが好ましい。

　このような構成によれば、被係合部は、雄部材の差込方向に対して交差する被係合壁面を有し、係合部は被係合壁面に当接する係合壁面を有し、付勢部によって、雄部材が反差込方向へ付勢された際、係合壁面が被係合壁面に接触した状態で係合されるから、外れにくい構造にできる。
　つまり、付勢部によって、雄部材が反差込方向へ付勢されると、雄部材の差込方向に対して交差する被係合壁面に、係合部の係合壁面が接触した状態で係合される。この状態において、雄部材を雌部材から引き抜く力、つまり、雄部材に反差込方向の力が働くと、その力は雄部材の差込方向に対して交差する被係合壁面と係合壁面とで受けられるから、外れにくい構造にできる。

　本発明のバックルにおいて、前記被係合壁面は、前記雌部材の中央から幅方向外側へ向かうに従って前記差込口へ向かって傾斜する傾斜壁面に形成され、前記係合壁面は、前記雄部材の中央から幅方向外側へ向かうに従って前記基部側へ向かって傾斜する傾斜壁面に形成されている、ことが好ましい。
　このような構成によれば、雄部材に反差込方向の力、すなわち、係合解除方向の力が働くと、その力が被係合壁面と係合壁面とで受けられる。被係合壁面および係合壁面は、それぞれの部材の中央から幅方向外側へ向かうに従って反差込方向へ向かって傾斜する傾斜面に形成されているから、雄部材に働く反差込方向の力によって、一対の脚部が拡がる方向へ変形される。その結果、雄部材と雌部材との係合強度が増すから、より一層外れにくい構造にできる。

　本発明のバックルにおいて、前記係合壁面は、前記脚部の先端に前記雄側当接部に近接して設けられている、ことが好ましい。
　このような構成によれば、係合壁面と雄側当接部とが脚部の先端に近接して設けられているから、係合壁面が被係合壁面に対して外れにくく、安定した係合状態が得られる。

本発明の実施形態のバックルを示す分解斜視図。 前記実施形態のバックルの分離状態を示す平面図。 前記実施形態のバックルの分離状態を示す側面図。 前記実施形態において、プラグがソケットに差し込まれる様子を示す図。 前記実施形態において、プラグがソケットに係合される前の状態を示す図。 前記実施形態において、プラグがソケットに係合された後の状態を示す図。 本発明の変形例に係るバックルの分離状態を示す平面図。 前記変形例において、プラグがソケットに差し込まれる様子を示す図。

符号の説明

　１…バックル、１０…基部、２０…脚部、２８…雄側当接部、３１Ｄ…後側壁（係合壁面）、４０…雄部材本体、４１…差込口、５２…第２ガイド部、６０…被係合部、６１Ｄ…被係合壁面、７０…付勢部、７１…雌側当接部、Ａ…雄部材、Ｂ…雌部材。

　以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
＜実施形態＞
（全体構成）
　図１は本実施形態のバックルの分解斜視図、図２は同バックルの分離状態を示す平面図、図３は同バックルの分離状態を示す側面図、図４はプラグがソケットに差し込まれる様子を示す図である。
　本実施形態のバックル１は、図１～図４に示すように、紐状部材の端部２，３を連結、分離するためのもので、合成樹脂によって一体成形された雄部材Ａと、同様に合成樹脂によって一体成形され雄部材Ａが差込係合される雌部材Ｂとを備えている。なお、雄部材Ａおよび雌部材Ｂの材料については、合成樹脂に限らず、金属などの他の材料でもよい。

（雄部材）
　雄部材Ａは、紐状部材を取付可能な基部１０と、この基部１０の幅方向（雄部材Ａの差込方向に直交する方向）両側から互いに平行に突出形成され雄部材Ａの差込方向に対して交差する方向（具体的には、略直交する方向）でかつ互いに接近離隔する方向へ弾性変形可能な一対の脚部２０と、この各脚部２０の先端に設けられ雌部材Ｂに係合される係合部３０と、脚部２０の間にこれらと平行であって基部１０の幅方向中央から突設された１本のガイドバー３５とを備えている。

　基部１０は、内部中央に紐状部材の端部２が挿入係止される紐取付部としての紐取付孔１１を有する略五角形の枠フレーム１２によって形成されているとともに、脚部２０が突出形成された側の枠材１２Ａに突合部１４が形成されている。
　紐取付孔１１の中間であって枠フレーム１２の幅方向に連結杆１３が架設され、この連結杆１３によって紐取付孔１１が、脚部２０が設けられた差込方向前端側とそれとは反対側の差込方向後端側の２つの紐取付孔１１Ａ，１１Ｂに分割されている。これにより、紐状部材を紐取付孔１１Ａ，１１Ｂに挿通させて連結杆１３の周囲に旋回させることにより、紐状部材の長さ調節が可能な構造となっている。
　枠フレーム１２のうち脚部２０が設けられた枠材１２Ａは、雌部材Ｂとの突合部１４として形成されている。突合部１４は、枠材１２Ａの両端部よりも中央部が脚部２０の突出方向に向かって突出したＶ字状に形成され、この枠材１２Ａの脚部２０が設けられた面に枠材１２Ａの外周輪郭形状よりも僅かに小さい輪郭形状で脚部２０の突出方向へ僅かに突出した嵌合凸部１５を有する。

　脚部２０は、雄部材Ａの差込方向に対して略直交する方向へ弾性変形可能な外側脚片２１および内側脚片２２と、この外側脚片２１および内側脚片２２の先端間から延長された先端ガイド片２４とを有する。内側脚片２２は、外側脚片２１より中央側に形成されている。
　外側脚片２１は、基部１０の両側から雄部材Ａの差込方向へ略直線状に延長され、先端に向かって中間位置からやや外側へ膨出されたのち、内側へ緩やかな円弧で湾曲する形状に形成されている。
　内側脚片２２は、基端が突合部１４の斜辺の略中間付近に位置され、つまり、内側脚片２２の基端が外側脚片２１の基端より脚部２０の先端側に位置され、この基端と先端との間に屈曲部２３を有する。屈曲部２３は、脚部２０の内側への変形時に更に屈曲するとともに、脚部２０の外側への変形時に伸長し外側脚片２１の外側への一定量以上の変形を規制する。具体的な形状は、基端から先端に向かうに従って、突合部１４の斜辺に対して略直角にかつ外側脚片２１に接近する方向に向かって延長され、外側脚片２１に近づいたのち外側脚片２１から離れる方向へ湾曲され、再び、外側脚片２１に接近する方向へ湾曲する形状に形成されている。なお、内側脚片２２の内外弾性変形方向の肉厚が、外側脚片２１の内外弾性変形方向の肉厚より薄く形成されている。
　先端ガイド片２４は、外側脚片２１および内側脚片２２の先端連結部から更に先端に向かうに従って次第に幅狭に形成され、その先端表裏面側に先端ガイド片２４の表裏面より突出する係合部３０を有している。先端ガイド片２４の外側輪郭縁からこれと連続する外側脚片２１の外側輪郭縁の中間位置にかけて、差込ガイド面２６および操作部２７が形成されているとともに、先端ガイド片２４の先端部外側に雄側当接部２８が形成されている。つまり、脚部２０の先端側面には、係合部３０と雄側当接部２８とが近接して設けられている。

　係合部３０は、一対の脚部２０の先端ガイド片２４の先端表裏面に突出して形成された突起３１によって形成されている。
　突起３１は、図５に示すように、内側壁３１Ａ、前側壁３１Ｂ、外側壁３１Ｃ、後側壁３１Ｄなどの周壁を有し、隣接壁の角部が円弧面で連結された変形四角形状に形成されている。内側壁３１Ａは、先端ガイド片２４の内側面側に位置し、雄部材Ａの差込方向と略平行な壁面に形成されている。前側壁３１Ｂは、雄部材Ａの差込方向に対して略直交する壁面に形成されている。外側壁３１Ｃは、前側壁３１Ｂから雄部材Ａの反差込方向へ向かうに従って内側壁３１Ａから次第に離れる傾斜壁面に形成されている。後側壁３１Ｄは、係合壁面として機能するもので、内側壁３１Ａの後端から外側壁３１Ｃへ向かうに従って反差込方向へ傾斜する傾斜壁面に形成されている。

　ガイドバー３５は、突合部１４の先端から一対の脚部２０と平行に突出して形成されているとともに、中央に長孔３６が、表裏面側にガイド溝３７が、それぞれガイドバー３５の長手方向に沿って形成されている。

（雌部材）
　雌部材Ｂは、表裏面を構成する表壁４０Ａおよび裏壁４０Ｂと、これらを連結する一対の側壁４０Ｃを有する扁平角筒形状の雌部材本体４０を備える。
　雌部材本体４０の一端には、雄部材Ａの一対の脚部２０が差し込まれる差込口４１が形成されているとともに、雄部材Ａの突合部１４と突き合わされる突合部４２が設けられている。突合部４２は、雄部材Ａの突合部１４と合致するＶ字形状に形成されているとともに、差込口４１に雄部材Ａの嵌合凸部１５が嵌り込む形状に形成されている。

　雌部材本体４０の他端（差込口４１とは反対側端）には、紐状部材の端部３が挿入係止される紐取付部としての紐取付孔４３および連結杆４４が形成されているとともに、側壁４０Ｃの中間部には、表壁４０Ａおよび裏壁４０Ｂの内部に向かって凹状に切り欠かれた開口部４５が形成されている。開口部４５からは、雄部材Ａの脚部２０の中間部外側部分（操作部２７）が露出され、脚部２０を互いに内側へ押圧操作できるようになっている。

　雌部材本体４０の内部には、ガイドバー３５を案内する第１ガイド部５１と、一対の脚部２０の先端部を案内する第２ガイド部５２と、各係合部３０が係合する被係合部６０と、雄部材Ａが雌部材Ｂ内に差し込まれた際、脚部２０が外側へ弾性復帰する力を利用して雄部材Ａを反差込方向へ付勢し、雄部材Ａと雌部材Ｂとを接触させて雄部材Ａと雌部材Ｂとのがたつき（差込方向および反差込方向のがたつき）を防止する付勢部７０とがそれぞれ設けられている。

　第１ガイド部５１は、雌部材本体４０の表壁４０Ａおよび裏壁４０Ｂの内面に形成されガイドバー３５を案内するガイド溝５１Ａと、雌部材本体４０の表壁４０Ａおよび裏壁４０Ｂの内面に突出形成されガイドバー３５のガイド溝３７を案内するガイド突条５１Ｂとから構成されている。ガイド溝５１Ａは、差込口４１から雌部材本体４０の内部に向かって次第に幅狭に形成されたのち一定幅で雌部材本体４０の内部中間まで形成されている。

　第２ガイド部５２は、雌部材本体４０の差込口４１から差し込まれた雄部材Ａの一対の脚部２０の係合部３０を案内しながら一対の脚部２０の先端部を互いに接近する方向へ弾性変形させるとともに、雄部材Ａが所定位置まで差し込まれたとき、一対の脚部２０の先端部を互いに離間する方向へ弾性復帰させる。具体的には、雌部材本体４０の内部において、雌部材本体４０の表壁４０Ａおよび裏壁４０Ｂの内面に突出形成され、雄側当接部２８が当接する雌側当接部としてのガイド壁面５２Ａによって形成されている。ガイド壁面５２Ａは、反差込方向へ向かうに従って次第に離れる方向へ延びる、つまり、互いに拡がる方向へ傾斜する傾斜壁面に形成されている。

　被係合部６０は、表壁４０Ａおよび裏壁４０Ｂの内面よりも突出した段状の第２ガイド部５２の奥部にこれに連続して形成されている。すなわち、図５に示すように、雌部材本体４０の表壁４０Ａおよび裏壁４０Ｂの内面に、ガイド壁面５２Ａの奥部から両外側に向かって凹部６１が切り欠き形成され、この凹部６１に被係合部６０が形成されている。被係合部６０は、凹部６１によって形成される壁面のうち、反差込方向側の壁面に係合部３０が接触した状態で係止される被係合壁面６１Ｄを有する。
　被係合壁面６１Ｄは、係合部３０のうち基部１０の突合部１４と対向する後側壁３１Ｄが係止される壁で、雄部材Ａの差込方向に対して交差し、中央から外側へ向かうに従って、反差込方向へ傾斜する傾斜壁面に形成されている。なお、裏壁４０Ｂに形成された凹部６１と連続して外側に貫通した孔は、被係合壁面６１Ｄを形成するための金型（スライドコア）挿入口であって、裏壁４０Ｂの外表面に開口されているが、表壁４０Ａに形成された凹部６１についても、表壁４０Ａの外表面に開口されていてもよい。

　付勢部７０は、雌部材本体４０の奥部において、被係合部６０よりも外側の側壁４０Ｃの内面に形成され脚部２０の雄側当接部２８が接触する雌側当接部７１によって形成されている。雌側当接部７１は、反差込方向へ向かうに従って互いに離れる方向へ延びる傾斜壁面に形成されている。従って、雄部材Ａが雌部材Ｂ内の所定位置まで差し込まれ、一対の脚部２０の先端が外側へ弾性復帰されると、完全に弾性復帰される前に、雄部材Ａの雄側当接部２８が雌側当接部７１に当接される。すると、雌側当接部７１の傾斜壁面によって、雄部材Ａが反差込方向へ付勢されるため、雄部材Ａの係合部３０が雌部材Ｂの被係合部６０に係合される。つまり、雄部材Ａの後側壁３１Ｄが雌部材Ｂの被係合壁面６１Ｄに接触した状態で係止される。ここで、雄側当接部２８は、雌側当接部７１の傾斜壁面の中間位置に面接触するよう形成されている。

（係合動作）
　雄部材Ａの一対の脚部２０を雌部材Ｂの差込口４１から差し込むと、図４に示すように、ガイドバー３５が第１ガイド部５１によって案内され、各脚部２０の係合部３０が第２ガイド部５２によって案内されながら、雌部材Ｂ内に差し込まれる。このとき、各脚部２０の係合部３０が第２ガイド部５２のガイド壁面５２Ａに当接すると、雄部材Ａの差込に伴って、一対の脚部２０の先端部が互いに接近する方向へ弾性変形されていく。
　やがて、係合部３０がガイド壁面５２Ａを越えて被係合部６０に達すると、図５に示すように、一対の脚部２０の弾性復帰力によって、各係合部３０は、互いに離間する方向へ変位され凹部６１に嵌り込む。このとき、脚部２０が完全に弾性復帰される前に、脚部２０の先端の雄側当接部２８が付勢部７０の雌側当接部７１に当接される。

　雌側当接部７１は、雄部材Ａの反差込方向へ向かうに従って互いに離間する方向へ傾斜する傾斜壁面に形成されているから、つまり、脚部２０の先端の雄側当接部２８が当接する雌部材本体４０の内壁に傾斜壁面の雌側当接部７１が形成されているから、脚部２０の弾性復帰力が雄側当接部２８を通じて雌側当接部７１に横方向から作用する。
　そのため、図６に示すように、脚部２０の先端の雄側当接部２８が雌側当接部７１の傾斜方向、つまり、雄部材Ａの反差込方向へ移動される結果、雄部材Ａの係合壁面（後側壁３１Ｄ）が雌部材Ｂの被係合壁面６１Ｄに接触した状態で係止される。従って、雄部材Ａの反差込方向（引抜方向）において、係合部３０と被係合部６０との間にはクリアランスが生じないから、クリアランスによって生じるがたつきを防止できる。
　なお、雄部材Ａと雌部材Ｂとが係合完了した状態において、付勢部７０によって雄部材Ａが抜き差し方向に付勢されていることが好ましいが、それに限らず、係合壁面３１Ｄと被係合壁面６１Ｄが接触した状態であれば、付勢力がなくても問題ない。

　このとき、雄側当接部２８は、雌側当接部７１の傾斜壁面に対して面接触する壁面に形成され、かつ、傾斜壁面の中間、好ましくは中央寄りに接触するように形成されているから、耐摩耗性に優れる。
　また、雄部材Ａが雌部材Ｂに係合した状態において、雄部材Ａを雌部材Ｂから引き抜く力、つまり、雄部材Ａに反差込方向の力が働くと、その力は雄部材Ａの差込方向に対して交差する被係合壁面６１Ｄと係合壁面（後側壁３１Ｄ）とで受けられるから、外れにくい構造にできる。とくに、雄部材Ａに反差込方向の力が働くと、その力が被係合壁面６１Ｄと係合壁面（後側壁３１Ｄ）とで受けられる。被係合壁面６１Ｄおよび係合壁面（後側壁３１Ｄ）は、それぞれの部材の中央から幅方向外側へ向かうに従って反差込方向へ向かって傾斜する傾斜面に形成されているから、雄部材Ａに働く反差込方向の力によって、一対の脚部２０が拡がる方向へ変形される。その結果、雄部材Ａと雌部材Ｂとの係合強度が増すから、より一層外れにくい。
　また、係合壁面（後側壁３１Ｄ）と雄側当接部２８とが脚部２０の先端に近接して設けられているから、係合壁面（後側壁３１Ｄ）が被係合壁面６１Ｄに対して外れにくく、安定した係合状態が得られる。

（外し動作）
　雄部材Ａを雌部材Ｂから外すには、雌部材Ｂの開口部４５から突出している脚部２０の操作部２７を内側へ押圧する。すると、雄部材Ａの脚部２０が内側に弾性変形される。
　これにより、係合部３０が被係合部６０から外れるから、この状態において、雄部材Ａを雌部材Ｂから引き抜くと、雄部材Ａを雌部材Ｂから外すことができる。

＜変形例＞
　なお、本発明は、上記実施形態で説明した構造のバックルに限定されるものでなく、次のような変形例も含む。
　上記実施形態では、雄部材Ａの係合部３０が、雌部材Ｂの差込口４１の奥部に設けた被係合部６０に係合する構造であったが、これに限らず、他の構成であってもよい。

　例えば、図７および図８に示すように、雄部材Ａの一対の脚部２０の根本部分に係合部３０が形成され、雌部材Ｂの開口部４５の側壁４０Ｃに被係合部６０が形成された構造であってもよい。係合部３０は、脚部２０の根本部分の外側に切り欠き形成され、外側へ向かうに従って反差込方向へ傾斜する係合壁面３１Ｅを有する。被係合部６０は、雌部材Ｂの開口部４５の側壁４０Ｃに形成され、側壁４０Ｃ部分に外側へ向かうに従って反差込方向へ傾斜する被係合壁面６１Ｄを有する。
　この例では、付勢部７０は、各脚部２０の先端部外側に形成された雄側当接部２８と、雌部材Ｂの内部内壁に形成され雄側当接部２８と接触する雌側当接部７１とから構成されている。雌側当接部７１は、反差込方向へ向かうに従って互いに離れる方向へ延びる壁面に形成されている。雄側当接部２８は、雌側当接部７１と面接触する形状に形成され、かつ、傾斜壁面の中間、好ましくは中央寄りに接触するように形成されている。
　この変形例においても、上記実施形態と同様な効果が期待できるほか、上記実施形態の構成よりもシンプルにできる。

　上記実施形態では、付勢部７０は、雌部材本体４０の奥部において、被係合部６０よりも外側の側壁４０Ｃの内面に形成された雌側当接部７１によって形成されていたが、これに限られない。
　例えば、雌部材本体４０の内部に突起状の雌側当接部７１を形成し、一対の脚部２０の先端外側に反差込方向へ向かうに従って次第に拡がる傾斜壁面状の雄側当接部２８を形成し、雄部材Ａを雌部材Ｂに差し込んだ際に雄側当接部２８が雌側当接部７１に当接するように構成すれば、雄側当接部２８の傾斜壁面によって、上記実施形態と同様な効果が期待できる。

　上記実施形態では、雄部材Ａおよび雌部材Ｂにそれぞれ紐取付部としての紐取付孔１１，４３を形成したが、雌部材Ｂについては、紐取付孔４３がなくてもよい。つまり、雌部材Ｂの雌部材本体４０を直接他の部材に固定するようにしてもよい。
　また、紐状部材としては、帯状のベルトに限らす、幅がない細い紐であってもよい。

　上記実施形態では、雄部材Ａおよび雌部材Ｂを合成樹脂によって成形（射出成形、あるいは、射出圧縮成形）したが、これに限らず、金属などで形成してもよい。

　本発明は、例えば、バッグ類等のベルトや紐を着脱するバックルとして好適であるが、その他どのような用途にも利用可能である。

Claims (6)

1. 　雄部材Ａと、この雄部材Ａが差込係合される雌部材Ｂとを備え、
   　前記雄部材Ａは、紐状部材を取り付け可能な基部１０と、この基部１０から突出形成され前記雄部材Ａの差込方向に対して交差する方向へ弾性変形可能な一対の脚部２０と、この各脚部２０に設けられ前記雌部材Ｂに係合可能な係合部３０とを備え、
   　前記雄部材Ａが前記雌部材Ｂに差し込まれた際、前記脚部２０の一部と前記雌部材Ｂの内壁とが接触し、前記脚部２０が弾性復帰する力を利用して前記雄部材Ａを反差込方向へ付勢する付勢部７０が形成されている、ことを特徴とするバックル。
2. 　前記付勢部７０は、前記各脚部２０の先端部外側に形成された雄側当接部２８と、前記雌部材Ｂの内壁に形成され前記各雄側当接部２８が接触する一対の雌側当接部７１とを備え、
   　前記一対の雌側当接部７１は、前記反差込方向へ向かうに従って互いに離れる方向へ延びる壁面に形成されている、ことを特徴とする請求項１に記載のバックル。
3. 　前記一対の雌側当接部７１は、前記反差込方向へ向かうに従って互いに離れる方向へ拡がった傾斜壁面とされ、
   　前記雄側当接部２８は、前記雌側当接部７１の前記傾斜壁面に対して面接触する壁面を有している、ことを特徴とする請求項２に記載のバックル。
4. 　前記雌部材Ｂは、前記雄部材Ａの一対の脚部２０が差し込まれる差込口４１と、この差込口４１から差し込まれた前記一対の脚部２０の先端を互いに接近する方向へ弾性変形させるとともに、前記雄部材Ａが所定位置まで差し込まれた際に前記一対の脚部２０の先端部を互いに離間する方向へ弾性復帰させるガイド部５２と、前記雄部材Ａが所定位置まで差し込まれた際に前記各係合部３０が係合する一対の被係合部６０とを備え、
   　前記被係合部６０は、前記雄部材Ａの差込方向に対して交差する被係合壁面６１Ｄを有し、前記係合部３０は前記被係合壁面６１Ｄに当接する係合壁面３１Ｄ，３１Ｅを有し、
   　前記付勢部７０によって前記雄部材Ａが反差込方向へ付勢され、前記係合壁面３１Ｄ，３１Ｅが前記被係合壁面６１Ｄに接触した状態で係合される、ことを特徴とする請求項２または請求項３に記載のバックル。
5. 　前記被係合壁面６１Ｄは、前記雌部材Ｂの中央から幅方向外側へ向かうに従って前記差込口４１へ向かって傾斜する傾斜壁面に形成され、
   　前記係合壁面３１Ｄ，３１Ｅは、前記雄部材Ａの中央から幅方向外側へ向かうに従って前記基部１０側へ向かって傾斜する傾斜壁面に形成されている、ことを特徴とする請求項４に記載のバックル。
6. 　前記係合壁面３１Ｄは、前記脚部２０の先端に前記雄側当接部２８に近接して設けられている、ことを特徴とする請求項５に記載のバックル。
    

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