明 細 書 発明の名称
R N A干渉法によるイネ萎縮ウィルス抵抗性ィネの作出法 技術分野
本発明は、 イネ萎縮ウィルス抵抗性イネの作出方法に関する。 より具体的には、 イネ萎縮ウィルスの複製に必要な分節ゲノムをコードする核酸分子を用いた、 ィ ネ萎縮ウィルス抵抗性イネの作出方法に関する。 背景技術
イネ萎縮ウィルスがョコバイによって伝播され、 虫体内で増殖することが、 1 9 3 0年代に証明された (非特許文献 1 =Fuki sh i,T : J,Fac. Hokkai do Imp. Univ. 45, 83-154 (1940) ) 。 様々なウィルスについて生物学的に多様な伝搬形式が明 らかになつてきている。 昆虫を媒介者とする植物ウィルスは、 その伝搬様式によ. つて、 4つに大別されている (非特許文献 2 =上田一郎および玉田哲男 「植物ゥ ィルスと媒介生物の相互関係」 細胞工学別冊 植物細胞工学シリーズ 分子レ ベルからみた植物の耐病性一植物と病原菌の相互作用に迫る一 156〜165 1997 年) 。
イネ萎縮病の防除は、 媒介昆虫であるツマグロョコバイ等のョコバイ類を薬剤 処理することによって実施してきた。 一旦、 イネ萎縮病が発生すると、 数年間そ の発生が終焉しない。 そのため、 華剤処理によるイネ萎縮病の防除を実施しょう とすると、 大量の薬剤を使用しなければならず、 環境汚染を起こす結果となる。 イネ萎縮ウィルスの防除の代替的な手段としては、 抵抗性品種の利用が最も有 効な方法のひとつとして考えられる。 本発明者らは、 これまで、 イネ品種におけ る遺伝子破壊系統 (ミュータントパネル) を用いて、 イネ萎縮ウィルスの感染'
増殖に関与する遺伝子を単離し、 イネのウィルス病抵抗性育種素材の作出法を開 発してきた。 上述のィネ遺伝子破壊系統の一つはィネ萎縮ウィルスに対する感受 性に変化が生じ、 本ウィルスに対し、 抵抗性を示した。 上記遺伝子を用いて、 上 記遺伝子破壊系統の形質転換を行つたところ、 ィネ萎縮ウィルスに対する感染性 が野生型ィネと同等に復帰し、 得られた遺伝子がィネ萎縮ウィルスの増殖に関与 する遺伝子であると結論された。 また、 上記遺伝子の破壊系統では、 いもち病に 対しても抵抗性を獲得していることが示されたものの、 イネの生育に関してはや や劣ることが見出された。
これまでに、 イネ萎縮ウィルス分節ゲノム S 3または S 8のセンス鎖またはァ ンチセンス鎖の組み込みによるイネ萎縮ウィルス抵抗性ィネ作出の試み (非特許 文献 4=育種学研究, 2001,第 3巻、 別冊 1号、 第 260頁) 、 およびイネ萎縮ウイ ルス分節ゲノム S 8の転写後型ジーンサイレンシングによるイネ萎縮ウィルス抵 抗性のイネの作出もまた報告されている (非特許文献 3 =Maら、 Acta Botanica S inica, 2004, 46(3): 332-336) 。
ウィルス外被夕ンパク質は一般にウィルス感染にとつて必須でありかつウィル ス粒子の構成において必須であることから、 ウィルス抵抗性遺伝子組換え植物の 開発において、 ウィルス外被タンパク質および Zまたはこれらをコードする分節 ゲノムを標的として、 これらウィルス外被タンパク質遺伝子を植物に導入するの が主流となっている。 RDVにおいても同様に、 ウィルス粒子の内殻タンパク質 の第 1層目を形成するタンパク質 (P 3) をコードする S 3 (非特許文献 4) ま たは外殻タンパク質の第 2層目を形成するタンパク質 (P 8) をコードする S 8
(非特許文献 3および非特許文献 4) を標的とした研究が行われている。 その具 体的理由としては、 以下の 3点がある:
(1) RDV粒子は、 上記のように外殻および内殻の 2層から構成されており、 P 3および P 8がなければ、 粒子として成立し得ないので、 P 3または P 8をコ ードする分節ゲノム (S 3または S 8) を標的とすることは重要である;
( 2 ) R D Vのような植物ウィルスは一般に、 植物体に侵入した後、 全身に広が り (遠距離移行) 、 大部分のウィルスは、 ウィルス粒子の形で移行すると考えら れているという点からも、 P 3または P 8をコードする分節ゲノム (S 3または S 8 ) を標的とすることが重要である;
( 3 ) S 3、 S 8がコードするタンパク質がなければ 2本鎖 R N Aゲノムを感染 細胞内に露出することとなり、 宿主に備わっている R N A千渉機構の標的になる 可能性がある。 従って、 S 3および S 8がコードするタンパク質はウィルスゲノ ムを守る上でも必須のタンパク質であると考えられるので、 これらタンパク質を コードする分節ゲノムを標的とすることは重要である。
これまでは、 上記のような考えに基づいて作出したイネ萎縮ウィルス抵抗性ィ ネによって、 約 9 0 %のイネ萎縮ウィルス抵抗性集団が得られたと評価されてい た (非特許文献 3 ) 。 しかしこのような評価にも拘わらず、 このようなイネ萎縮 ウィルス抵抗性イネは未だ実用化には至っていない。 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
実用化に結びつく、 イネ萎縮ウィルス抵抗性イネの作出方法および抵抗性型品 種を得ることが望まれている。 課題を解決するための手段
上記課題を解決するため、 本発明は、 抵抗性の評価に注目した。 そして非特許 文献 3に示されるイネ萎縮ウィルス抵抗性イネを、 新たな評価法で再度評価し直 したところ、 イネ萎縮ウィルスに感染した個体の集団における 「完全抵抗性」 ィ ネおよび 「発病遅延型抵抗性」 イネの割合の 「合計」 は、 約 8 0 %でしかない (すなわち、 約 8 0 %抵抗性集団でしかない) ことが分かった。 理論に束縛され ることを望まないが、 このように感受性のものが含まれることが、 非特許文献 3
の技術が実用化に結びついていない理由であると考えられる。 実用化を実現する ためには、 イネ萎縮ウィルス感染植物体の総計に対する 「完全抵抗性」 イネと
「発病遅延型」 イネの合計の割合がほぼ 100%になる (100%抵抗性集団を 得る) ことが重要であり、 このような高い抵抗性の割合を得られるものを 「イネ 萎縮ウィルス抵抗性イネ」 として評価すべきである。 その新しい基準で評価した ところ、 S 12を標的としたものも、 S 4を標的としたものも、 「完全抵抗性」 イネと 「発病遅延型」 イネの合計の割合がほぼ 100%であり、 100%抵抗性 集団であった。
本発明者らは、 より無病徴のレベルの高い抵抗性を示し、 抑制または安定した 抵抗性が付与されたイネ萎縮ウィルス抵抗型イネを作出し、 イネ萎縮ウィルス抵 抗性イネを実用化するために、 公知の抵抗性イネについての問題を評価すること を目的として、 外被タンパク質 これらをコードするゲノムの標的として作出さ れたイネ萎縮ウィルス抵抗性イネの評価を再検討したところ、 抵抗性個体が集団 のほぼ 90%であると報告されていたものは、 完全抵抗性個体が 60%程度であ るに過ぎないことが判明した。 RNA干渉法は標的遺伝子を 100 %発現抑制 (ノックアウト) するのではなく、 100%でないが高率で発現抑制 (ノックダ ゥン) するものであるので、 RN A干渉法の機構に基づけば、 完全抵抗性個体と 発病遅延型抵抗性個体とを明確に区別することは、 正しく評価する上で極めて重 要である。
本発明者らは、 従来のウィルス外被タンパク質/分節ゲノム以外のものを標的 としたウィルス抵抗性イネの作出において、 Pn s 12 (S 12) を標的とした 場合に、 完全抵抗性個体が 100%得られる (1個体も病徴が認められない) こ とを初めて発見した。 Pn s 4 (S 4) を標的とした場合には、 イネ萎縮病ウイ ルス感染イネ植物体の集団において、 完全抵抗性個体が 60%、 発病遅延型抵抗 性個体が 40 %の割合で得られた。 P n s 12は、 バイ口プラズマといわれるゥ ィルス合成のための足場となるタンパク質であり、 Pn s 4は、 感染細胞中での
R D V輸送において役割を果たすタンパク質である。 従って、 理論に束縛される ことを望まないが、 感染に必須のタンパク質を標的として感染自体を防御するよ りむしろ、 感染後のウィルス増殖のいずれかの過程に関与するタンパク質を標的 として R D V増殖を防御することが、 1 0 0 %に近いイネ萎縮ウィルス抵抗性集 団 (すなわち、 1 0 0 %抵抗性集団) を得る結果になると考えられる。 そしてこ のことにより、 イネ萎縮ウィルス抵抗性イネの実用化が可能になるはずである。 このようなイネ萎縮ウィルス抵抗性イネの開発に向けて、 本発明は、 イネ萎縮 ウィルスゲノムに存在する少なくとも 1つの遺伝子の発現抑制剤を含む、 イネ萎 縮病に抵抗性を付与するための組成物を提供する。
本発明はまた、 イネ萎縮病に対する耐性が付与された、 イネ萎縮ウィルスに感 染し得るイネ科植物を生産する方法を提供する。 この方法は、 A) イネ萎縮ウイ ルスゲノムに存在する少なくとも 1つの遺伝子の発現抑制剤を提供する工程; B ) 該発現抑制剤を該植物の細胞に導入する工程; C ) 該発現抑制剤が導入され た植物の細胞を選択する工程;および D) 該選択された細胞を再分化させて、 ト ランスジエニック植物を作出する工程;を包含する、 方法を提供する。 ここで得 られたトランスジエニック植物の 「抵抗性」 については、 新たな評価法で 「完全 抵抗性」 個体と 「発病遅延型」 個体の合計あるいは 「完全抵抗性」 個体を別個に 評価することとする。
本発明は、 一局面において、 イネ萎縮ウィルスゲノムに存在する少なくとも 1 つの遺伝子の発現抑制剤を含む、 イネ萎縮病に抵抗性を付与するための組成物を 提供する。
一実施形態において、 上記組成物は、 イネ萎縮病ウィルス感染個体の集団に対 して 1 0 0 %抵抗性集団 (イネ萎縮ウィルス感染イネの総計に対する完全抵抗性 イネと発病遅延型イネの合計の割合がほぼ 1 0 0 %) を与える。 好ましい実施形 態において、 上記組成物は、 7 0 %完全抵抗性集団 (イネ萎縮ウィルス感染植物
体の個体数総計に対して約 70%に完全抵抗性) を与えることができる。 より好 ましい実施形態において、 上記組成物は、 100%完全抵抗性集団 (イネ萎縮ゥ ィルス感染植物体の個体数総計に対して 100%に完全抵抗性) を与えることが できる。
一実施形態において、 上記少なくとも 1つの遺伝子は、 S 1 (配列番号 1) 、
S 3 (配列番号 5 ) 、 S 4 (配列番号 7 ) 、 S 5 (配列番号 9 ) 、 S 6 (配列番 号 1 1) 、 S 7 (配列番号 13) 、 S 9 (配列番号 17) 、 S 1 1 (配列番号 2 1) および S 12 (配列番号 23) 、 ならびにこれらの遺伝子をコードする核酸 配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改 変体からなる群より選択され得る。 好ましい実施形態において、 上記少なくとも 1つの遺伝子は、 S4 (配列番号 7) 、 S 6 (配列番号 1 1) 、 S I 1 (配列番 号 21) および S 12 (配列番号 23) 、 ならびにこれらの遺伝子をコードする 核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有す る改変体からなる群より選択され得る。 なお好ましい実施形態において、 上記遺 伝子は、 S 6 (配列番号 1 1) 、 S 11 (配列番号 21) および S 12 (配列番 号 23) 、 ならびにこれらの遺伝子をコードする核酸配列において 1または数個 の置換、 付加、 挿入、 および/または欠失を有する改変体からなる群より選択さ れ得る。
別の好ましい実施形態において、 上記少なくとも 1つの遺伝子は S 12 (配列 番号 23) 、 ならびにこれらの遺伝子をコードする核酸配列において 1または数 個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改変体であり得る。
さらに好ましい実施形態において、 上記発現抑制剤は、
(a) 配列番号 52に示される核酸配列からなるュビキチンプロモー夕一;
(b) ( i) 配列番号 25に示される核酸配列;あるいは
( i i ) 配列番号 25に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および または欠失を有する改変体、
と相補的なアンチセンス配列;
(c) 配列番号 46に示される核酸配列からなるトリミング配列;
(d) ( i) 配列番号 25に示される核酸配列;あるいは
( i i) 配列番号 25に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改変体、
からなるセンス配列;ならびに
(e) ターミネータ一配列、
を含み得る。
別の好ましい実施形態において、 上記発現抑制剤は、
(a' ) 配列番号 52に示される核酸配列からなるュビキチンプロモーター (b' ) (i) 配列番号 26に示される核酸配列;あるいは
( i i ) 配列番号 26に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改変体、
と相補的なアンチセンス配列;
(c ' ) 配列番号 46に示される核酸配列からなるトリミング配列;
(d' ) (i) 配列番号 26に示される核酸配列;あるいは
( i i ) 配列番号 26に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改変体、
からなるセンス配列;ならびに
(e ' ) 夕一ミネ一夕一配列、
を含み得る。
なお別の好ましい実施形態において、 上記発現抑制剤は、
(a" ) 配列番号 52に示される核酸配列からなるュビキチンプロモー夕一 (b" ) ( i) 配列番号 27に示される核酸配列;あるいは
( i i ) 配列番号 27に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改変体、
と相補的なアンチセンス配列;
(c" ) 配列番号 46に示される核酸配列からなるトリミング配列;
(d" ) ( i) 配列番号 27に示される核酸配列;あるいは
( i i ) 配列番号 27に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および または欠失を有する改変体、
からなるセンス配列;ならびに
(e" ) ターミネータ一配列、
を含み得る。
さらにもう一つの好ましい実施形態において、 上記発現抑制剤は、
(a" , ) 配列番号 52に示される核酸配列からなるュビキチンプロモータ
(b" , ) ( i) 配列番号 28に示される核酸配列;あるいは
( i i ) 配列番号 28に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および または欠失を有する改変体、
と相補的なアンチセンス配列;
(c" ' ) 配列番号 46に示される核酸配列からなるトリミング配列;
(d" ' ) (i) 配列番号 28に示される核酸配列;あるいは
( i i) 配列番号 17に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 およびノまたは欠失を有する改変体、
からなるセンス配列;ならびに
(e" ' ) ターミネータ一配列、
を含み得る。
一実施形態において、 上記少なくとも 1つの遺伝子は、 S 1 (配列番号 1) 、 S 3 (配列番号 5) 、 S4 (配列番号 7) 、 S 5 (配列番号 9) 、 S 6 (配列番 号 1 1) 、 S 7 (配列番号 13) 、 S 9 (配列番号 17) 、 S 1 1 (配列番号 2 1) および S 12 (配列番号 23) 、 ならびにこれらの遺伝子をコードする核酸
配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改 変体からなる群より選択され得る。
本発明の一局面において、 本発明は、 イネ萎縮ウィルスゲノムに存在する S 1 (配列番号 1 ) 、 S 3 (配列番号 5 ) 、 S 4 (配列番号 7 ) 、 S 5 (配列番号 9) 、 S 6 (配列番号 1 1) 、 S 7 (配列番号 13) 、 S 9 (配列番号 17 ) 、 S 1 1 (配列番号 21) および S 12 (配列番号 23) 、 ならびにこれらの遺伝 子をコードする核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zま たは欠失を有する改変体からなる群より選択される核酸配列の全部または一部と 相補的なアンチセンス配列、 トリミング配列、 および上記アンチセンス配列と相 補的なセンス配列を含む発現カセットを提供し得る。 好ましい実施形態において、 上記発現カセット中の上記核酸配列は、 S 6 (配列番号 1 1) 、 S 1 1 (配列番 号 21) および S 12 (配列番号 23) 、 ならびにこれらの遺伝子をコードする 核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および または欠失を有す る改変体からなる群より選択され得る。 さらに好ましい実施形態において、 上記 発現カセット中の上記核酸配列は、 S 12 (配列番号 23) およびこの遺伝子を コードする核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは 欠失を有する改変体であり得る。
別の実施形態において、 上記発現カセット中の上記アンチセンス配列は、 配列 番号 25のアンチセンス配列、 配列番号 26のアンチセンス配列、 配列番号 27 のアンチセンス配列、 および配列番号 28のアンチセンス配列、 ならびに配列番 号 25〜28のいずれか 1つに示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および または欠失を有する改変体のアンチセンス配列からなる群 より選択され、 上記トリミング配列は、 配列番号 46であり得る。
好ましい実施形態において、 上記発現カセットは、
(a) 配列番号 52に示される核酸配列からなるュビキチンプロモーター;
(b) ( i ) 配列番号 25に示される核酸配列;あるいは
( i i) 配列番号 25に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および/または欠失を有する改変体、
と相補的なアンチセンス配列;
( c ) 配列番号 46に示される核酸配列からなるトリミング配列;
(d) ( i) 配列番号 25に示される核酸配列;あるいは
( i i ) 配列番号 25に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改変体、
からなるセンス配列;ならびに
(e) 夕一ミネ一ター配列、
を含み得る。
別の好ましい実施形態において、 上記発現カセットは、
(a' ) 配列番号 52に示される核酸配列からなるュビキチンプロモーター; (b' ) ( i) 配列番号 26に示される核酸配列;あるいは
( i i) 配列番号 26に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および/または欠失を有する改変体、
と相補的なアンチセンス配列;
(c ' ) 配列番号 46に示される核酸配列からなるトリミング配列;
(d ' ) ( i) 配列番号 26に示される核酸配列;あるいは
( i i) 配列番号 26に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および/または欠失を有する改変体、
からなるセンス配列;ならびに '
(e ' ) 夕一ミネ一夕一配列、
を含み得る。
なお別の好ましい実施形態において、 上記発現カセットは、
(a" ) 配列番号 52に示される核酸配列からなるュビキチンプロモー夕一;
(b" ) ( i) 配列番号 27に示される核酸配列;あるいは
( i i) 配列番号 27に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および または欠失を有する改変体、
と相補的なアンチセンス配列;
(c " ) 配列番号 46に示される核酸配列からなるトリミング配列;
(d" ) ( i) 配列番号 27に示される核酸配列;あるいは
(i i) 配列番号 27に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改変体、
からなるセンス配列;ならびに
(e" ) 夕一ミネ一夕一配列、
を含み得る。
さらに別の好ましい実施形態において、 上記発現カセットは、
(a" ' ) 配列番号 52に示される核酸配列からなるュビキチンプロモー夕
(b" ' ) (i) 配列番号 28に示される核酸配列;あるいは
( i i ) 配列番号 28に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および または欠失を有する改変体、
と相補的なアンチセンス配列;
(c " ' ) 配列番号 46に示される核酸配列からなるトリミング配列;
(d" ' ) (i) 配列番号 28に示される核酸配列;あるいは
( i i) 配列番号 17に示される核酸配列において 1または数個の置換、 付加、 挿入、 および Zまたは欠失を有する改変体、
からなるセンス配列;ならびに
(e" ' ) 夕一ミネ一夕一配列、
を含み得る。
さらなる局面において、 本発明は、 上記発現カセットを含むベクター;上記べ クタ一を含む植物細胞;上記ベクターを含む植物体;上記ベクターを含む種子を
提供する。
一実施形態において、 上記植物体は、 イネ萎縮ウィルスに対する完全抵抗性を 示し得る。
一局面において、 本発明は、 イネ萎縮病に対する耐性が付与された、 イネ萎縮 ウィルスに感染し得るイネ科植物を生産する方法を提供し、 上記方法は、 以下の 工程を包含し得る:
A) 本発明のベクタ一を提供する工程;
B ) 本発明のベクタ一を上記植物の細胞に導入する工程;
C ) 本発明のベクタ一が導入された植物の細胞を選択する工程;および D) 上記選択された細胞を再分化させて、 トランスジエニック植物を作出する 工程。
別の局面において、 本発明は、 イネ萎縮病に対する耐性が付与された、 イネ萎 縮ウィルスに感染し得る植物の種子を生産する方法を提供し、 上記方法は、 以下 の工程を包含し得る:
A) 本発明のベクターを提供する工程;
B ) 本発明のベクターを上記植物の細胞に導入する工程;
C ) 本発明のベクターが導入された植物の細胞を選択する工程;
D) 上記選択された細胞を再分化させて、 トランスジエニック植物を作出する 工程;および '
E) 上記トランスジエニック植物から種子を得る工程。
なお別の局面において、 本発明は、 イネ萎縮病に対する耐性が付与された、 ィ ネ萎縮ウィルスに感染し得る植物を再生産する方法を提供し、 上記方法は、 以下 の工程を包含し得る:
A) 本発明のベクターを含む、 種子を提供する工程;
B ) 上記種子を生長させて、 成熟した植物体を得る工程;
C ) 上記植物体から、 種子を得る工程。
上記のように、 従来標的とされてきたイネ萎縮ウィルス外被タンパク質以外の ものをコードする分節ゲノム (好ましくは、 バイ口プラズマをコードする分節ゲ ノム) を標的とした発現抑制剤を含む組成物により、 より無病徴のレベルの高い、 すなわち、 100%抵抗性集団 (イネ萎縮ウィルス感染植物体の個体数総計に対 する完全抵抗性イネと発病遅延型イネの合計の割合がほぼ 100%を示す) 、 好 ましくは、 少なくとも約 70%完全抵抗性集団 (イネ萎縮ウィルス感染植物体の 個体数総計に対して少なくとも約 70%が完全抵抗性を示す) 力、 またはより好 ましくは、 約 100%完全抵抗性集団 (イネ萎縮ウィルス感染植物体の個体数総 計に対してほぼ 100%が完全抵抗性を示す) が提供され、 抑制または安定した 抵抗性が付与されたイネ萎縮ウィルス抵抗型イネの作出方法および抵抗型品種が 提供される。 図面の簡単な説明
図 1は、 接種してから 18時間後の RDVに感染したョコバイの媒介単層細胞
(VCM) における RDVの Pn s 4タンパク質、 Pn s 6タンパク質、 Pn s 10タンパク質、 Pn s 1 1タンパク質および Pn s 12タンパク質の細胞下位 置を示す。 Pn s 4、 Pn s 6、 Pn s 10および Pn s 1 1の免疫染色は緑色 で示され、 Pn s 1 2の免疫染色は赤色で示される。 ?11 5 6と 1 3 1 1との 共局在は、 黄色で示される。
図 2は、 接種してから 18時間後の RDV感染 VCMにおける RDVの Pn s 6 (a) 、 Pn s 1 1 (b) および Pn s 12 (c) を有する電子密集封入体の 免疫金標識を示す。 バーは、 300 nmを示す。
図 3は、 ウィルスに感染した VCMにおける RDVの P 1、 P 2、 P 3、 P 5、 P 7、 P 8、 P 9および Pn s 12の細胞下位置を示す。 P l、 P 2、 P 3、 P 5、 P 7、 P 8および P 9の免疫染色は緑色で示され、 Pn s 12の免疫染色は
赤色で示される。 P l、 P 2、 P 3、 P 5、 P 7、 P 8および P 9と、 Pn s l 2との共局在は、 黄色で示される。
図 4は、 接種して 18時間後の RDVに感染した V CMにおける電子密集封入 体の周縁における RDVコアおよび内殻タンパク質 P 1、 P 3、 ? 5ぉょび? 7、 または外殻タンパク質 P 2、 P 8および P 9の免疫金標識を示す。 P 7における 挿入図は、 単一のコア様粒子上に P 7が局在していることを示す。 矢印は、 コア 様粒子を示す。 バーは、 300 nmを示す。
図 5は、 接種して 48時間後の組換えバキュロウィルスに感染した S f 9細胞 における Pn s 12の細胞下位置を示す。 (a) F I T C結合 P n s 12特異的 I 80での?11 s 12の免疫蛍光染色によって、 斑状封入体の形成が明らかにな つた。 (b) 電子密集封入体との Pn s 12会合の免疫金標識。 バーは、 300 nmを示す。
図 6は、 フィルター結合アツセィによって示される、 0¥の?113 1 2の自 己会合を示す。 (a) 膜上のタンパク質をクーマシ一ブリリアントブルー (CB B) で染色することにより視覚化した。 (b) MBP (マルト一ス結合タンパク 質;コントロール) および RDVの MB P融合 P n s 12 (MBP— Pn s l 2) を、 Pn s 12が Pn s 12自体に結合するのを検出するためのプローブと して使用した。
図 7は、 接種してから種々の時点で示される、 ウィルスに感染した VCMにお ける RDVの Pn s 12および P 8の細胞下位置を示す。 P 8の免疫染色は緑色 で示され、 Pn s 12の免疫染色は赤色で示される。 重ね合わせた画像において、 P n s 12および P 8の共局在は黄色で示される。
図 8は、 RDVに感染した細胞における RNA合成の位置を示す。
図 9は、 インビポでの RDVの Pn s 4のリン酸化を示す。 感染 N. c i n e t i c e p s細胞 (+ ) および非感染 N. c i n c t i c e p s細胞 (-) の分 画した免疫沈降物のオートラジオグラフィ一の結果を示す。 マーカーは、 ホスホ
リラーゼ B (97.4kDa) 、 ゥシ血清アルブミン (66. OkDa) 、 オボアルブミン (45· OkDa) 、 力ルポニックアンヒドラーゼ (29. OkDa) 、 および ]3—ラクトグロビン (18.4 kDa) であった。
図 10は、 罹病イネの葉およびウィルスを運ぶ N.cincticepsのマルピーギ管の 細胞における Pn s 4の位置を示す。 A: RDVに感染したイネの葉における無 定形封入体内の Pn s 4の免疫金標識。 B: Pn s 4は、 ウィルス媒介昆虫にお ける直径約 10 nmの微小管構造の束と会合した。 バーは、 300 nmを示す。 図 1 1は、 接種してから種々の時点で決定した、 ウィルスに感染した VCMに おける RDVの Pn s 4および Pn s 12の共局在を示す。 Pn s 4の免疫染色 は緑色で示され、 Pn s 12の免疫染色は赤色で示される。 接種後 10時間のパ ネル中の Pn s 4の環状構造は、 矢印で示される。 Pn s 4および Pn s 12の 共局在は黄色で示される。
図 12は、 RDVに感染した VCMにおける Pn s 4の分布を示す電子顕微鏡 写真である。 A: Pn s 4は、 接種して 12時間後のバイ口プラズマの周縁に局 在した。 B : Pn s 4は、 接種して 18時間後に、 繊維状物質 (矢印) に局在し た。 C:接種して 36時間後の微小管構造をした Pn s 4 (矢印) 。 D:微小管 の横断面から、 閉じた輪のパラクリスタル列が明らかになった。 E : Pn s 4は、 接種して 36時間後の感染した V C Mの浸漬調製物からの種々の長さの管に局在 した。 バーは、 A〜Dにおいては 300 nmを示し、 Eにおいては 150 nmを 示す。 VP, バイ口プラズマ; FM, 繊維状物質; MnT, 微小管構造。
図 13は、 接種後 48時間後の組換えバキュロウィルスに感染した Sf9細胞に おける P n s 4の細胞下位置を示す。 A: P n s 4の免疫蛍光染色。 B:感染し た細胞の表面と会合した Pn s 4を示す、 Pn s 4の免疫金標識。 バーは、 30 0 nmを示す。
図 14は、 接種して 18時間後のウィルスに感染した V CMにおける管の電子 顕微鏡写真を示す。 (A) 細胞の表面から伸びかつ拡がった細胞膜により囲まれ
た管。 (B) 管中の Pn s 10の免疫金標識。 (C) 管内の電子密集粒子中のゥ ィルス抗原。 バ一は、 300 nmを示す。
図 15は、 ウィルスに感染した V CMにおける RDVの Pn s 10の細胞下位 置を示す。 (A) 接種して 10時間後の細胞下位置。 (B) 接種して 14時間後 の細胞下位置。 (C) 接種して 36時間後の細胞下位置。 バ一は、 25 mを示 す。
図 16は、 形質転換体当代 (TO) 株における目的の遺伝子の導入の確認 (A) 、 および導入された遺伝子の切断による TO株の細胞中の低分子 RN Aの 蓄積 (B) を示す。 Emp t yは、 コントロールとして供した、 導入遺伝子なし のべクタ一で形質転換した当代 (TO) 植物体を示す。
図 17は、 Triggerl2N導入形質転換体 (Triggerl2N) の接種検定の結果を示す。 図 17 A:左側の鉢は、 野生型株 (Emp t y) (左に健全株 (Mo c k) 、 右 に RDV接種株 (RDV) を示す) であり、 右の鉢は、 Triggerl2N導入形質転換 体 (RDV接種株) である。 図 17B: Trigger 12N導入形質転換体 (Triggerl2 N) 中の導入遺伝子と感染抵抗性との関係を示す。 図中の略語の意味は、 以下の 通りである。 S :接種後 3週間以内に発病、 D :発病遅延型抵抗性 (接種後 3— 8週に発病) 、 R :抵抗性 (無病徴 接種後 8週間) 、 RPS 7 :コントロール。 図 18は、 Tr i gg e r 4 N導入形質転換体 (Trigger4N) の接種検定の結 果を示す。 図 18A:左側の鉢は、 野生型株 (Emp t y) (左に健全株 (Mo c k) 、 右に RDV接種株 (RDV) を示す) であり、 右の鉢は、 Trigger4N導 入形質転換体 (RDV接種株) である。 図 18B: Trigger4N導入形質転換体 (T rigger4N) 中の導入遺伝子と感染抵抗性との関係を示す。 図中の略語の意味は、 以下の通りである。 S :接種後 3週間以内に発病、 D :発病遅延型抵抗性 (接種 後 3— 8週に発病) 、 R :抵抗性 (無病徴 接種後 8週間) 、 RPS 7 :コント ロール。
図 19は、 本発明の形質転換イネの作製方法において使用されるべクタ一の模
式図である。 配列の説明
配列番号 1 :分節ゲノム S 1の核酸配列
(GenB ankァクセッション番号 D 90198)
配列番号 2 :分節ゲノム S 1によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 3 :分節ゲノム S 2の核酸配列
(Ge nB a n kァクセッション番号 A B 001580由来) 配列番号 4 :分節ゲノム S 2によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 5 :分節ゲノム S 3の核酸配列
(Ge nBankァクセッション番号 DO 0693)
配列番号 6 :分節ゲノム S 3によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 7 :分節ゲノム S 4の核酸配列
(G e n B a n kァクセッション番号 X 54622)
配列番号 8 :分節ゲノム S 4によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 9 :分節ゲノム S 5の核酸配列
(Ge nB ankァクセッション番号 D 90033)
配列番号 10 :分節ゲノム S 5によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 1 1 :分節ゲノム S 6の核酸配列
(G e n B a n kァクセッション番号 M91653)
配列番号 12 :分節ゲノム S 6によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 13 :分節ゲノム S 7の核酸配列
(Ge nB an kァクセッション番号 DO 0639)
配列番号 14 :分節ゲノム S 7によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 15 :分節ゲノム S 8の核酸配列
(G e n B a n kァクセッション番号 D 13773)
配列番号 16 :分節ゲノム S 8によってコードされるアミノ酸配列
配列番号 17 :分節ゲノム S 9の核酸配列
(Ge nBankァクセッション番号 D 13404)
配列番号 18 :分節ゲノム S 9によってコードされるアミノ酸配列
配列番号 19 :分節ゲノム S 10の核酸配列
(Ge nB a n kァクセッション番号 D 00241)
配列番号 20 :分節ゲノム S 10によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 21 :分節ゲノム S 1 1の核酸配列
(Ge nB a n kァクセッション番号 D 10249)
配列番号 22 :分節ゲノム S I 1によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 23 :分節ゲノム S 12の核酸配列
(Ge nBankァクセッション番号 S 72085)
配列番号 24 :分節ゲノム S 12によってコードされるアミノ酸配列 配列番号 2 5 : T r i g g e r 12 Nの核酸配列
配列番号 2 6 : T r i g g e r 1 2 Cの核酸配列
配列番号 2 7 : T r i g g e r 4 Nの核酸配列
配列番号 2 8 : T r i g g e r 4 Cの核酸配列
配列番号 2 9 : T r i g g e r 1 (RDV S 1部分配列) の核酸配列 配列番号 3 0 : T r i g g e r 2 (RD V S 2部分配列) の核酸配列 配列番号 3 1 : T r i g g e r 3 (RDV S 3部分配列) の核酸配列 配列番号 3 2 : T r i g g e r 5 (RDV S 5部分配列) の核酸配列 配列番号 3 3 : T r i g g e r 6 (RDV S 6部分配列) の核酸配列 配列番号 3 4 : T r i g g e r 7 (RDV S 7部分配列) の核酸配列 配列番号 3 5 : T r i g g e r 9 (RDV S 9部分配列) の核酸配列 配列番号 3 6 : T r i g g e r 10 (RDV S 10部分配列) の核酸配列 配列番号 3 7 : T r i g g e r 1 1 (RDV S 1 1部分配列) の核酸配列
配列番号 38 :プライマ一 S 12— GS F 1
配列番号 39 :プライマ一 S 12 -GS R 1
配列番号 40 :プライマ一 S 12— GS F 2
配列番号 41 :プライマー S 12— GSR 2
配列番号 42 :プライマー S 04 -GS F 1
配列番号 43 :プライマ一 S 04— GS R 1
配列番号 44 :プライマー S 04— GS F 2
配列番号 45 :プライマ一 S 04 -GS R 2
配列番号 46 : GUS配列
配列番号 47 :プライマ一 S 4S 12-GSR 1
配列番号 48 :プライマー S I 2 S 04-GSF 1
配列番号 49 : Tr i gg e r 12 N 2
配列番号 52 : Tr i gge r 4 N 2
配列番号 51 : Tr i gge r 12 N4N
配列番号 52 :ュビキチンプロモーター配列
(G e n b a n kァクセッション番号 AY 452736由来)
配列番号 53 :分節ゲノム S 8の核酸配列
(Ge nB a n kァクセッション番号 D 00536)
配列番号 54 :分節ゲノム S 8によってコードされるアミノ酸配列 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を説明する。 本明細書の全体にわたり、 単数形の表現は、 特に言 及しない限り、 その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。 従って、 単数形の冠詞または形容詞 (例えば、 英語の場合は 「a」 、 「an」 、 「t h e」 など) は、 特に言及しない限り、 その複数形の概念をも含むことが理解され るべきである。 また、 本明細書において使用される用語は、 特に言及しない限り、
当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。 した がって、 他に定義されない限り、 本明細書中で使用される全ての専門用語および 科学技術用語は、 本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと 同じ意味を有する。 矛盾する場合、 本明細書 (定義を含めて) が優先する。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において 「イネ萎縮ウィルス」 とは、 RDVともいわれ、 レオウィル ス属に属するフアイトレォウィルスのメンバ一である。 このウィルスのゲノムは、 12分節の二本鎖 RNAであることが知られている。 各 RNA分節からおおむね 1種類のタンパク質がコードされる。 キヤプシド内部に RNAポリメラ一ゼを含 み感染直後のウィルス mRNA合成に関与する。 このウィルスは、 粒子を構成す る 7種の構造タンパク質と、 ポリアクリルアミドゲルにおける電気泳動易動度に よって S 1から S 12とよばれる 12本に分節した二本鎖 RNA (d s RNA) を遺伝子として有する。 また、 このウィルスは、 直径約 70nm、 分子量約 70 00万ダルトンの巨大な球状ウィルスである。 このウィルスは、 イネ科の植物に 分布している。 RDVは、 宿主の防御機構から逃れるために、 ゲノムの複製をキ ャプシド内で行い、 新たに転写した mRNAのみを細胞質に放出する。 そのため に、 RNA依存RNAポリメラーゼ、 キヤッビング酵素および核酸結合タンパク 質からなる転写複合体とよばれるタンパク質複合体をキヤプシド内部に持ってい ることが見出された。 RDVのキヤプシドは、 P 3タンパク質 120分子から作 られる内殻と、 P 8タンパク質 780分子から作られる外殻の二重殻構造を持ち、 直径約 70 OAの球殻構造をとっていることもまた、 見出された。 また、 RDV には、 多くの亜種系統および変種系統が存在することが確認されている。 従って、 本明細書において使用される場合、 用語 「RDV」 は、 当然のことながら、 この 用語が RDVの亜種系統および変種系統も意図していることは、 当業者であれば 容易に明らかである。 代表的な亜種系統および変種系としては、 〇株 (本発明者
らにより分離) 、 秋田株 (秋田県立大学により分離) 、 Chinese株 (中国北京大 学により分離) 、 Kunming株 (中国科学院により分離) 、 Yunnan株 (中国科学院 により分離) が挙げられるが、 これらに限定されない。 さらに、 0 ¥の0株の S 1 2の配列と Ch inese株の S 1 2 (G e n B a n kァクセッション番号 U 3 6 5 6 9 ) を比較したところ、 約 6 0ヌクレオチドの置換が認められた。 この程度 の置換があるとしても、 最低限発現抑制が起こる塩基長、 すなわち、 2 4ヌクレ ォチド以上実質的に一致した部分塩基配列が他の亜種株もしくは変異株間に存在 していれば、 ある 1種の亜種株に由来する分節ゲノムを含む本発明の発現抑制剤 は、 別の 1種の亜種株においても、 その効果を発揮し得る。 他方、 R D Vのどの 株由来の配列を用いたとしても、 当業者は本明細書の記載に基づいて他の株に対 しても効果を有する s i R N Aなどの発現抑制剤を製造することができることが理 解される。
代表的な亜種株のゲノムに関する情報は以下のとおりである。
表 A
本明細書においてウィルスの 「系統」 および 「株」 は、 同じウィルス種内での バリエーションをいうために使用され得るが、 これらの用語は、 交換可能に使用 され得ることが理解される。
本明細書において 「S 1」 とは、 (1 ) 配列番号 1に示される核酸配列; ( 2 ) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ントな条件下でハイブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3 ) 上記核酸配
列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および Zもしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R DVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 1をコードする核酸配列によって 示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのうち の 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである B LAS Tを用いてデフォルトパラメ一夕を用いて算出される。 ストリンジエンドな条件 は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内である。 S 1によってコードされる構造タンパク質 (P 1ともいわれる) は、 RDVの内 殻粒子に内包されるタンパク質であり、 RNAポリメラーゼとして機能する。 ま た、 S 1によってコードされる構造タンパク質は、 RDVの RNA合成において、 その役割を果たし、 おそらく感染中期に関与する。
本明細書において 「S 2」 とは、 (1) 配列番号 3に示される核酸配列; ( 2 ) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ントな条件下でハイブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および もしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R DVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 2をコードする核酸配列によって 示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのうち の 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである B LAS Tを用いてデフォルトパラメ一夕を用いて算出される。 ストリンジェン卜な条件 は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内である。 S 2によってコードされる構造タンパク質 (P 2ともいわれる) は、 RDVの外 殻を構成し、 RDVが感染する際の昆虫受容体認識において機能する。 また、 S 2によってコードされる構造タンパク質は、 昆虫細胞への侵入においてその役割
を果たすが、 植物での感染には不要な夕ンパク質である。
本明細書において 「S 3」 とは、 (1) 配列番号 5に示される核酸配列; ( 2 ) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ントな条件下でハイブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および Zもしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R DVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 3をコ一ドする核酸配列によって 示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのうち の 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである B LAS Tを用いてデフォルトパラメ一夕を用いて算出される。 ストリンジェン卜な条件 は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内である。 S 3によってコードされる構造タンパク質 (P 3ともいわれる) は、 RDVの内 殻粒子を構成するコアタンパク質であり、 RDV粒子の主要骨格として機能し、 おそらく感染中期に関与する。
本明細書において 「S 4」 とは、 (1) 配列番号 7に示される核酸配列; (2) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ントな条件下で八イブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および Zもしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R DVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 4をコードする核酸配列によって 示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのうち の 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである B LAS Tを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。 ストリンジェントな条件 は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内である。
S 4によってコードされる非構造タンパク質 (Pn s 4ともいわれる) は、 RD Vが感染した昆虫細胞において微小管構造物を形成し、 感染細胞中での RDV輸 送においてその役割を果し、 おそらく感染後期に関与する。
本明細書において 「S 5」 とは、 (1) 配列番号 9に示される核酸配列;
(2) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ントな条件下でハイブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および もしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R D Vの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 5をコードする核酸配列によって 示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのうち の 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである B LAS Tを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。 ストリンジェントな条件 は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内である。 S 5によってコードされる構造タンパク質 (P 5ともいわれる) は、 内殻粒子を 構成するコアタンパク質である。 P 5はまた、 キャップ化酵素 (グァ二リルトラ ンスフェラ一ゼ) として機能して、 mRNAを活性化する役割を果たし、 おそら く感染中期に関与する。
本明細書において 「S 6」 とは、 (1) 配列番号 1 1に示される核酸配列;
(2) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ン卜な条件下で八イブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および Zもしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R D Vの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 6をコードする核酸配列によって 示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのうち
の 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである B LAS Tを用いてデフォルトパラメ一夕を用いて算出される。 ストリンジェントな条件 は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内である。 S 6によってコードされる非構造タンパク質 (Pn s 6ともいわれる) は、 RD Vが感染した細胞において形成され、 ウィルスの合成工場として機能するバイ口 プラズマを構成するタンパク質であり、 おそらく感染初 ·中期に関与する。
本明細書において 「S 7」 とは、 (1) 配列番号 13に示される核酸配列; (2) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ントな条件下でハイブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および もしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R DVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 7をコードする核酸配列によって 示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのうち の 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである B LAS Tを用いてデフォルトパラメ一夕を用いて算出される。 ストリンジェン卜な条件 は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内である。 S 7によってコードされる構造タンパク質 (P 7ともいわれる) は、 RDVの内 殻粒子を構成するコアタンパク質である。 P 7はまた、 非特異的核酸結合タンパ ク質として機能して、 ウィルス粒子内の核酸収納においてその役割を果たし、 お そらく感染中期に関与する。
本明細書において 「S 8」 とは、 (1) 配列番号 15および配列番号 53に示 される核酸配列; (2) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程 度のストリンジェントな条件下でハイプリダイズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および Zもしく は欠失を有する改変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有す
る改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する 改変体; (6) RDVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 8をコードする 核酸配列によって示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RN A) のゲノムのうちの 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ッ —ルである BLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。 スト リンジェン卜な条件は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者 の技術範囲内である。 S 8によってコードされる構造タンパク質 (P 8ともいわ れる) は、 RDVの外殻を構成し、 RDV粒子の主要骨格として機能し、 おそら く感染中 ·後期に関与する。
本明細書において 「S 9」 とは、 (1) 配列番号 17に示される核酸配列; (2) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ントな条件下でハイブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および Zもしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R DVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 9をコードする核酸配列によって 示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのうち の 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである BLAS Tを用いてデフォルトパラメ一夕を用いて算出される。 ストリンジェントな条件 は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内である。 S 9によってコードされる構造タンパク質 (P 9ともいわれる) は、 外殻タンパ ク質であり、 おそらく感染後期に関与する。
本明細書において 「S 10」 とは、 (1) 配列番号 19に示される核酸配列; (2) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ントな条件下でハイブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および Zもしくは欠失を有する改
変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R DVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 10をコードする核酸配列によつ て示される、 12本に分節した RDVニ本鎮 RNA (d s RNA) のゲノムのう ちの 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである BL A STを用いてデフォルトパラメ一夕を用いて算出される。 ストリンジェントな条 件は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内であ る。 S 10によってコードされる非構造タンパク質 (Pn s 10ともいわれる) は、 RDVが感染した昆虫細胞において管状構造物を形成するように機能して、 昆虫細胞間輸送においてその役割を果たすが、 おそらく植物での感染に不要な夕 ンパク質である。
本明細書において 「S 1 1」 とは、 (1) 配列番号 21に示される核酸配列; (2) 上記核酸配列と中程度または高程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ントな条件下で八イブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および もしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R DVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 1 1をコードする核酸配列によつ て示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのう ちの 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである BL A STを用いてデフォルトパラメ一夕を用いて算出される。 ストリンジェントな条 件は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内であ る。 S 1 1によってコードされる非構造タンパク質 (Pn s 1 1ともいわれる) は、 RDVが感染した細胞において形成され、 ウィルスの合成工場として機能す るバイ口プラズマを構成するタンパク質であり、 おそらく感染初 ·中期に関与す る。
本明細書において 「S 12」 とは、 (1) 配列番号 23に示される核酸配列; (2) 上記核酸配列と中程度または髙程度にあるいは任意の程度のストリンジェ ン卜な条件下でハイブリダィズする核酸配列と相補的な配列; (3) 上記核酸配 列において 1もしくは数個の置換、 付加、 挿入および Zもしくは欠失を有する改 変体; (4) 上記核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有する改変体; (5) 上記核酸配列に対して少なくとも 80%以上の相同性を有する改変体; (6) R DVの他の亜種株もしくは変種株に由来する S 12をコードする核酸配列によつ て示される、 12本に分節した RDV二本鎖 RNA (d s RNA) のゲノムのう ちの 1つである。 上記の同一性または相同性は、 配列分析用ツールである BL A STを用いてデフォルトパラメ一夕を用いて算出される。 ストリンジェン卜な条 件は配列に依存して変化し、 このような条件の決定は、 当業者の技術範囲内であ る。 S 12によってコードされる非構造タンパク質 (Pn s 12ともいわれる) は、 RDVが感染した細胞において形成され、 ウィルスの合成工場として機能す るバイ口プラズマを構成するタンパク質であり、 おそらく感染の最も初期にウイ ルス工場の設営に関与するタンパク質である。
本明細書において 「構造タンパク質」 とは、 ウィルス粒子を構成するタンパク 質をいい、 RDVでは、 P 1 (配列番号 2) 、 P 2 (配列番号 4) 、 P 3 (配列 番号 6) 、 P 5 (配列番号 10) 、 P 7 (配列番号 14) 、 P 8 (配列番号 1 6) 、 および P 9 (配列番号 18) が該当する。 他方、 ウィルスゲノムにコード されるが、 粒子を構成しないタンパク質を 「非構造タンパク質」 といい、 Pn s 6 (配列番号 12) 、 P n s 1 1 (配列番号 22) 、 Pn s 12 (配列番号 2 4) 、 Pn s 4 (配列番号 8) および Pn s 10 (配列番号 20) が該当する。 一般に、 非構造タンパク質は、 構造タンパク質より早く合成される。
本明細書において 「バイ口プラズマ」 とは、 RDVにおける 3種の非構造タン パク質 (Pn s 6 (配列番号 12) 、 Pn s 1 1 (配列番号 22) 、 および Pn s 12 (配列番号 24) ;それぞれ、 分節ゲノム S 6 (配列番号 1 1) 、 S 1 1
(配列番号 2 1 ) 、 および S 1 2 (配列番号 2 3 ) によってコードされる) によ つて作られるウィルス粒子を合成するための工場をいう。 これらの非構造タンパ ク質は、 R D Vが細胞に感染すると最初に作る、 ウィルス複製にとって不可欠の 細胞内器官であり、 この内部でウィルス核酸が合成される。 上記 3種の非構造夕 ンパク質のうち、 最も早く集積されるのは P n s 1 2 (配列番号 2 4 ) であり、 R D Vを接種して約 6時間後である。 よって、 理論的には、 P n s 1 2の発現を 抑制するとウィルス複製の足場の構築が阻害され、 さらには、 ウィルス自身の複 製も阻害されると考えられる。
本明細書において 「イネ萎縮病」 とは、 植物ウィルス病の一種であって、 その 原因となるイネ萎縮ウィルス (R D V) は昆虫によって伝播される (例えば、 体 内に R D Vを保毒した、 ツマグロョコバイ、 クロスジツマグロョコバイまたはィ ナズマョコバイなどが、 イネの汁液を吸うために口吻をイネに刺すときに、 この イネ萎縮ウィルスがイネに感染する) 。 この植物ウィルス病にかかったイネは、 斑紋を生じ、 背丈が伸びなくなり、 収量が激減する。
本明細書において、 ウィルス (例えば、 イネ萎縮ウィルス) 等に対する 「抵抗 性」 または 「耐性」 とは、 ウィルス等が侵入しょうとする宿主生体 (本明細書で は、 植物) が、 ウィルス等の侵入に対して抵抗力を持つことをいう。 本明細書で は、 抵抗力とは、 宿主生体の通常の生存 ·増殖が維持される程度の性質のほか、 その宿主生体の生存が維持されている限り、 抵抗力を有するとみなす。
本明細書において、 病害 (例えば、 イネ萎縮病) に対する 「耐性」 または 「抵 抗性」 とは、 その病害に対して宿主生体 (本明細書では、 植物) が抵抗力を持つ ことをいう。 従って、 ウィルスまたは菌の侵入を許したとしても、 そのようなゥ ィルスまたは菌との共存が図られる限り、 病害に対する耐性はあるといえる。 本明細書において、 病害に対する 「完全抵抗性」 とは、 病害を引き起こす原因 因子 (例えば、 R D V) に感染していない植物体 (非感染植物体) と比較して、 その原因因子に感染した植物体 (感染植物体) が、 その植物体の生長 (例えば、
分けつ、 伸長) 、 目的物質の収量において、 非感染生物体と何ら変化なく共存が 図られることをいう。 一般に、 目的の植物体の野生型集団にある病原体を感染さ せたとき、 上記野生型集団中の個々の植物体に上記病原体による病徴が出現する 時期はほぼ同じである。 従って、 より狭義には、 「完全抵抗性」 とは、 目的の植 物体にある病原体を感染させたとき、 この植物体と同じ種の野生型植物体におい て病徴が出現する時期を超えてさらに終生何ら病徴が出現しない場合をいう。 さ らに 「感受性」 とは、 上記目的の植物体に上記病原体を感染させたときに、 上記 野生型の感染植物体において病徴が出現する時期とほぼ同時期に感染した場合を いう。 しかし、 上記感染植物体において、 何らかの 「抵抗性」 が付与されている ために、 上記病徴が、 野生型感染個体の病徴出現時期から上記一定期間の間に出 現する個体がある。 この場合、 このような個体において現れる抵抗性を 「発病遅 延型抵抗性」 という。 「発病遅延型抵抗性」 は、 ウィルスの侵入に対して抵抗力 を持ったために発病が遅延するという点では 「抵抗性」 であるものの、 結局病徴 が出現するという点では、 「完全抵抗性」 とは意味が異なるので、 評価する際に は、 「発病遅延型抵抗性」 個体と 「完全抵抗性」 個体とは厳密に区別して評価す べきことが理解される。 従って、 本明細書においては、 病原体に対する抵抗性を 正しく評価するために、 病原体に感染した植物体総数は、 感染に失敗した個体 (すなわち、 ツマグロョコバイが吸汁したにも拘わらず、 発病に至らなかったも の) を除いた個体の中で、 完全抵抗性個体が X %、 遅延型抵抗性個体が Y %、 感 受性個体が Ζ %である場合 (ここで Χ + Υ + Ζ = 1 0 0 (%) であるが、 好まし くは、 Ζはほぼ 0である) 、 上記病原体を感染させた植物体の 「集団」 における 完全抵抗性は、 Χ %として評価することとし、 (Χ + Υ) %としては評価しない。 また、 本明細書において、 感染植物体の集団に対して Χ %の個体に 「完全抵抗 性」 が付与され、 Υ %の個体に 「発病遅延型抵抗性」 が付与された植物体 (例え ば、 イネ) の個体集団を、 「 (Χ + Υ) %抵抗性集団」 または 「Χ %完全抵抗性 集団」 という。 例えば、 感染植物体の集団の 8 0 %の個体に 「完全抵抗性」 が付
与され、 15%の個体に 「発病遅延型抵抗性」 が付与された場合、 このような集 団は、 「80%完全抵抗性集団」 または 「95%抵抗性集団」 といい、 100% の個体に 「完全抵抗性」 が付与された集団は、 「100%完全抵抗性集団」 とい ラ。
例えば、 RDVの場合は、 2〜 3葉期のイネ植物体野生型集団に感染させた場 合、 約 3週間でほぼ全個体に病徴が出現する。 従って、 本明細書において、 目的 のイネ植物体が RDVに対して 「感受性」 であるとは、 上記イネ植物体において RDVを感染させてから 3週間以内にその病徴が出現した場合をいう。 また、 2 〜 3葉期のィネ植物体野生型集団に感染させた場合に、 感染から 8週間経過して も病徴が出現しない場合、 それ以降発病することはないので、 少なくともイネ植 物体に感染させてから 8週間後に病徴が出現しなければ、 一般に、 上記イネ植物 体は完全抵抗性であるとみなされる。 従って、 目的のイネ植物体が RDVに対し て 「完全抵抗性」 であるとは、 上記イネ植物体において RDVを感染させてから 通常は、 8週間にわたって、 または終生にわたってその上記イネ感染植物体に病 徴が全く出現せず、 非感染イネ植物体と何ら変化がない場合をいう。 目的のイネ 植物体が RDVに対して 「発病遅延型抵抗性」 であるとは、 上記イネ植物体に R DVを感染させたときに、 野生型イネにおいて感染させてから 3週間でその病徴 がほぼ全個体に出現することから、 通常は、 感染させてから 3〜8週間の間にそ の病徴が出現する場合をいう。 また、 目的のイネ植物体の集団において RDVを 感染させた場合に、 感染に失敗した個体を除いて、 RDV感染個体集団の全個体 が完全抵抗性である場合は、 「100%完全抵抗性集団」 として言及し、 上記集 団において病徴を示す感染ィネ植物体が 1個体も存在しないことをいう。 同様に、 RDV感染個体集団の全個体のうち、 X%の個体に 「完全抵抗性」 が付与され、 Y%の個体に 「発病遅延型抵抗性」 が付与された集団を 「 (Χ + Υ) %抵抗性集 団」 または 「Χ%完全抵抗性集団」 といい、 このような集団を得ることは、 非常 に困難である。
本明細書において、 「安定した抵抗性」 とは、 複数の世代において保持される 抵抗性をいう。 複数の世代において保持されるとは、 好ましくは 3世代、 より好 ましくは 5世代、 さらにより好ましくは 7世代、 最も好ましくは永久に保持され ることを意味する。
本明細書では、 特に言及するときは、 抵抗性は、 ウィルスまたは菌に対する性 質をいい、 耐性は病害に対する性質をいうが、 交換可能に使用され得ることが理 解される。
本明細書において、 「植物」 は、 単子葉植物および双子葉植物のいずれも含む。 通常、 本明細書では、 R D Vが感染する植物を指す。 好ましい植物は、 イネ科に 属する単子葉植物であり、 本発明にとって最も好ましい植物は、 イネである。 特 に他で示さない限り、 植物は、 植物体、 植物器官、 植物組織、 植物細胞、 および 種子のいずれをも意味する。 植物器官の例としては、 根、 葉、 茎、 および花など が挙げられる。 植物組織の例としては、 維管束組織 (篩部組織、 木部組織などを 含む) 、 頂端分裂組織、 葉肉組織、 厚角組織、 柔組織などが挙げられる。 植物細 胞の例としては、 カルスおよび懸濁培養細胞が挙げられる。
本明細書において 「野生型」 植物とは、 形質転換などの人為的手段による遺伝 的改変がなされていない天然に存在する植物をいう。
本明細書において生物の 「器官」 とは、 生物個体のある機能が個体内の特定の 部分に局在して営まれ, かつその部分が形態的に独立性をもっている構造体をい う。 例えば、 茎、 根、 葉、 花、 種子などを挙げることができるがそれらに限定さ れない。
本明細書において、 生物の 「組織」 とは、 細胞の集団であって、 その集団にお いて一定の同様の作用を有するものをいう。 従って、 組織は、 器官の一部であり 得る。 器官内では、 同じ働きを有する細胞を有することが多いが、 微妙に異なる 働きを有するものが混在することもあることから、 本明細書において組織は、 一 定の特性を共有する限り、 種々の細胞を混在して有していてもよい。
本明細書において 「ポリヌクレオチド」 、 「オリゴヌクレオチド」 および 「核 酸 J は、 本明細書において同じ意味で使用され、 任意の長さのヌクレオチドのポ リマーをいう。 この用語はまた、 「オリゴヌクレオチド誘導体」 または 「ポリヌ クレオチド誘導体」 を含む。 「オリゴヌクレオチド誘導体」 または 「ポリヌクレ ォチド誘導体」 とは、 ヌクレオチドの誘導体を含むか、 またはヌクレオチド間の 結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、 互換 的に使用される。 そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、 例えば、 2 ' _〇一メチル—リボヌクレオチド、 オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステ ル結合がホスホロチォエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、 オリ ゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合が N 3, - P 5 ' ホスホロアミデート 結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、 オリゴヌクレオチド中のリポース とリン酸ジエステル結合とがべプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド 誘導体、 ォリゴヌクレオチド中のゥラシルが C _ 5プロピニルゥラシルで置換さ れたォリゴヌクレオチド誘導体、 ォリゴヌクレオチド中のゥラシルが C一 5チア ゾールゥラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、 オリゴヌクレオチド中 のシトシンが C一 5プロピニルシトシンで置換されたォリゴヌクレオチド誘導体、 ォリゴヌクレオチド中のシトシンがフエノキサジン修飾シトシン (phenoxaz ine- mod i f i ed cyt os i ne) で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、 D N A中のリポ —スが 2, —O—プロピルリポースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およ びオリゴヌクレオチド中のリポースが 2 ' —メトキシエトキシリポースで置換さ れたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。 他にそうではないと示されな ければ、 特定の核酸配列はまた、 明示的に示された配列と同様に、 その保存的に 改変された改変体 (例えば、 縮重コドン置換体) および相補配列を包含すること が企図される。 具体的には、 縮重コドン置換体は、 1またはそれ以上の選択され た (または、 すべての) コドンの 3番目の位置が混合塩基および Zまたはデォキ シイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る (Ba t zerら、
Nucleic Acid Res.19:5081 (1991) ; Ohtsukaら、 J.Biol. Chem.260:2605-2608(198 5) ; Rossoliniら、 Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994)) 。
本明細書では 「核酸分子」 もまた、 核酸、 オリゴヌクレオチドおよびポリヌク レオチドと互換可能に使用され、 cDNA、 mRNA、 ゲノム DNA、 s i RN A、 s hRNA, RNAと DNAとの複合分子などを含む。 本明細書では、 核酸 および核酸分子は、 用語 「遺伝子」 の概念に含まれ得る。
本明細書において、 「遺伝子」 とは、 遺伝形質を規定する因子をいう。 通常ゲ ノム上に一定の順序に配列している。 タンパク質の一次構造を規定するものを構 造遺伝子といい、 その発現を左右するものを調節遺伝子 (たとえば、 プロモー夕 一) という。 本明細書では、 遺伝子は、 特に言及しない限り、 構造遺伝子および 調節遺伝子を包含する。 したがって、 遺伝子というときは、 通常、 本発明の遺伝 子の構造遺伝子ならびにそのプロモーターなどの転写および Zまたは翻訳の調節 配列の両方を包含する。 本明細書では、 「遺伝子」 は、 「ポリヌクレオチド」 、
「オリゴヌクレオチド」 、 「核酸」 および 「核酸分子」 を指すことがある。 本明 細書においてはまた、 「遺伝子産物」 は、 遺伝子によって発現された 「ポリヌク レオチド」 、 「オリゴヌクレオチド」 、 「核酸」 および 「核酸分子」 を包含する。 当業者であれば、 遺伝子産物が何たるかはその状況に応じて理解することができ る。
本明細書において、 「アミノ酸」 は、 本発明の目的を満たす限り、 天然のもの でも非天然のものでもよい。
本明細書において 「ヌクレオチド」 は、 天然のものでも非天然のものでもよい。 ヌクレオチドの配列は、 本明細書において 「ヌクレオチド配列」 または 「塩基配 列」 という。
本明細書において 「ヌクレオチド誘導体」 または 「ヌクレオチドアナログ」 と は、 天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能 を有するものをいう。 そのようなヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナ口
グは、 当該分野において周知である。 そのようなヌクレオチド誘導体およびヌク レオチドアナログの例としては、 ホスホロチォエート、 ホスホルアミデート、 メ チルホスホネート、 キラルメチルホスホネート、 2 _〇_メチルリポヌクレオチ ド、 ペプチド一核酸 (PNA) が含まれるが、 これらに限定されない。 本明細書 では、 ヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログは、 ヌクレオチドと同じ 生物学的機能、 特に RNA iの機能を果たす限り、 ヌクレオチドの代替として使 用され得ることが理解される。
アミノ酸は、 その一般に公知の 3文字記号か、 または IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される 1文字記号のいずれかにより、 本明 細書中で言及され得る。 ヌクレオチドも同様に、 一般に認知された 1文字コード により言及され得る。
本明細書では、 アミノ酸配列および塩基配列の類似性、 同一性および相同性の 比較は、 配列分析用ツールである BLASTを用いてデフオルトパラメ一夕を用 いて算出される。 同一性の検索は例えば、 NCB Iの BLAST 2.2.9 (2004.5.12 発行) を用いて行うことができる。 本明細書における同一性の値は通常は上記 B LASTを用い、 デフォルトの条件でァラインした際の値をいう。 ただし、 パラ メーターの変更により、 より高い値が出る場合は、 最も高い値を同一性の値とす る。 複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値 とする。
本明細書において、 「対応する」 ヌクレオチドとは、 ある核酸分子またはポリ ヌクレオチド分子において、 比較の基準となる核酸分子またはポリヌクレオチド における所定のヌクレオチドと同様の作用を有するか、 または有することが予測 されるヌクレオチドをいい、 RNA iにあっては、 RNA干渉作用において、 同 様の寄与をするヌクレオチドをいう。 アンチセンス分子であれば、 そのアンチセ ンス分子の特定の部分に対応するオルソ口グにおける同様の部分であり得る。 本明細書において、 「対応する」 遺伝子とは、 ある種において、 比較の基準と
なる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、 または有することが予測 される遺伝子をいい、 そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、 進化 学的に同じ起源を有するものをいう。 従って、 ある遺伝子 (例えば、 分節ゲノム
S 1〜S 12) に対応する遺伝子は、 その遺伝子のオルソログであり得る。 した がって、 ウィルスの遺伝子に対応する遺伝子は、 他のウィルス (他のレオウィル ス属のウィルスなど) においても見出すことができる。 そのような対応する遺伝 子は、 当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。 したがって、 例えば、 あるウィルスにおける対応する遺伝子は、 対応する遺伝子の基準となる 遺伝子の配列をクエリ配列として用いてそのウィルス (例えば、 他のレオウィル ス) の配列データべ一スを検索することによって見出すことができる。
本明細書において 「フラグメント」 とは、 全長のポリペプチドまたはポリヌク レオチド (長さが n) に対して、 l〜n— 1までの配列長さを有するポリべプチ ドまたはポリヌクレオチドをいう。 フラグメントの長さは、 その目的に応じて、 適宜変更することができ、 例えば、 その長さの下限としては、 ポリペプチドの場 合、 3、 4、 5、 6、 7、 8、 9、 10、 15, 20、 25、 30、 40、 50、 75、 100、 150、 200、 250およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、 ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ (例えば、 1 1など) もまた、 下限として適切であり得る。 また、 ポリヌクレオチドの場合、 5、 6、 7、 8、 9、 10、 15, 20、 25、 30、 40、 50、 75、 100、 200、 30 0、 400、 500およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、 ここの具体的に 列挙していない整数で表される長さ (例えば、 11など) もまた、 下限として適 切であり得る。 本明細書において、 ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さ は、 上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、 上 述の個数は絶対的なものではなく、 同じ機能を有する限り、 上限または下限とし ての上述の個数は、 その個数の上下数個 (または例えば上下 10%) のものも含 むことが意図される。 そのような意図を表現するために、 本明細書では、 個数の
前に 「約」 を付けて表現することがある。 しかし、 本明細書では、 「約」 のある なしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。 本明細書 において有用なフラグメントの長さは、 そのフラグメントの基準となる全長タン パク質の機能のうち少なくとも 1つの機能が保持されているかどうかによつて決 定され得る。
本明細書において 「生物学的機能」 とは、 ある遺伝子またはそれに関する核酸 分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、 その遺伝子、 核酸分子または ポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、 これには、 例えば、 特異的な抗体の生成、 酵素活性、 抵抗性の付与等を挙げることができるがそれら に限定されない。 本発明においては、 例えば、 植物におけるイネ萎縮ウィルスの 増殖への関与、 イネ萎縮ウィルスに対する抵抗性または感受性への関与、 イネ萎 縮病に対する耐性、 これらの具体的な機能について直接的または間接的に関連す る機能 (例えば、 ウィルスタンパク質との結合など) などを挙げることができる がそれらに限定されない。 本明細書において、 生物学的機能は、 「生物学的活 性」 によって発揮され得る。 本明細書において 「生物学的活性」 とは、 ある因子 (例えば、 ポリヌクレオチド、 タンパク質など) が、 生体内において有し得る活 性のことをいい、 種々の機能 (例えば、 転写促進活性) を発揮する活性が包含さ れ、 例えば、 ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化され る活性も包含される。 2つの因子が相互作用する場合、 その生物学的活性は、 そ の二分子との間の結合およびそれによつて生じる生物学的変化、 例えば、 一つの 分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、 2分子は結合し ていると考えられる。 したがって、 そのような共沈を見ることが一つの判断手法 として挙げられる。 例えば、 ある因子が酵素である場合、 その生物学的活性は、 その酵素活性を包含する。 別の例では、 ある因子がリガンドである場合、 そのリ ガンドが対応するレセプ夕一への結合を包含する。 そのような生物学的活性は、 当該分野において周知の技術によって測定することができる。
したがって、 「活性」 は、 結合 (直接的または間接的のいずれか) を示すかま たは明らかにするか;応答に影響する (すなわち、 いくらかの曝露または刺激に 応答する測定可能な影響を有する) 、 種々の測定可能な指標をいい、 例えば、 本 発明のポリぺプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、 ま たは例えば、 いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量 あるいは他の類似の機能の尺度が、 挙げられる。
本明細書において 「相互作用」 とは、 2つの物質についていうとき、 一方の物 質と他方の物質との間で力 (例えば、 分子間力 (ファンデルワールス力) 、 水素 結合、 疎水性相互作用など) を及ぼしあうこという。 通常、 相互作用をした 2つ の物質は、 会合または結合している状態にある。
本明細書中で使用される用語 「結合」 は、 2つのタンパク質もしくは化合物ま たは関連するタンパク質もしくは化合物の間、 あるいはそれらの組み合わせの間 での、 物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。 結合には、 イオン結合、 非イオン結合、 水素結合、 ファンデルワールス結合、 疎水性相互作用などが含ま れる。 物理的相互作用 (結合) は、 直接的または間接的であり得、 間接的なもの は、 別のタンパク質または化合物の効果を介するかまたは起因する。 直接的な結 合とは、 別のタンパク質または化合物の効果を介してもまたはそれらに起因して も起こらず、 他の実質的な化学中間体を伴わない、 相互作用をいう。
本明細書中で使用される用語 「調節する (modul ate) 」 または 「改変する (mo d i fy) 」 は、 特定の活性、 因子またはタンパク質の量、 質または効果における増 加または減少あるいは維持を意味する。
本明細書において 「アンチセンス (活性) 」 とは、 標的遺伝子の発現を特異的 に抑制または低減することができる活性をいう。 アンチセンス活性は、 通常、 目 的とする遺伝子の核酸配列の全部または一部、 あるいは上記の核酸配列と少なく とも 9 0 %の同一性を有する核酸配列と相補的な、 少なくとも 8の連続するヌク レオチド長の核酸配列によって達成される。 そのような核酸配列は、 好ましくは、
少なくとも 9の連続するヌクレオチド長の、 より好ましく 1 0の連続するヌクレ ォチド長の、 さらに好ましくは 1 1の連続するヌクレオチド長の、 1 2の連続す るヌクレオチド長の、 1 3の連続するヌクレオチド長の、 1 4の連続するヌクレ ォチド長の、 1 5の連続するヌクレオチド長の、 2 0の連続するヌクレオチド長 の、 2 5の連続するヌクレオチド長の、 3 0の連続するヌクレオチド長の、 4 0 の連続するヌクレオチド長の、 5 0の連続するヌクレオチド長の、 核酸配列であ り得る。 そのような核酸配列を有する分子を本明細書において 「アンチセンス分 子」 、 「アンチセンス核酸分子」 または 「アンチセンス核酸」 と称し、 これらは 互換的に使用される。 そのような核酸配列には、 上述の配列に対して、 少なくと も 7 0 %相同な、 より好ましくは、 少なくとも 8 0 %相同な、 さらに好ましくは、 9 0 %相同な、 もっとも好ましくは 9 5 %相同な核酸配列が含まれる。 そのよう なアンチセンス活性は、 目的とする遺伝子の核酸配列の 5 ' 末端の配列に対して 相補的であることが好ましい。 そのようなアンチセンスの核酸配列には、 上述の 配列に対して、 1つまたは数個あるいは 1つ以上のヌクレオチドの置換、 付加、 挿入および Zまたは欠失を有するものもまた含まれる。 本明細書中で開示される 核酸配列 (例えば、 配列番号 1 ) が与えられれば、 本発明のアンチセンス核酸は、 W a t s o nおよび C r i c k塩基対形成の法則または H o o g s t e e n塩基 対形成の法則に従い設計され得る。 アンチセンス核酸分子は、 シグナル伝達因子 の mR NAの全コード領域に相補的であり得るが、 より好ましくは、 mR NAの コード領域または非コ一ド領域の一部のみに対してアンチセンスであるオリゴヌ クレオチドである。 例えば、 アンチセンスオリゴヌクレオチドは、 mR N Aの翻 訳開始部位の周辺の領域に相補的であり得る。 ァンチセンスオリゴヌクレオチド は、 例えば、 約 5、 約 1 0、 約 1 5、 約 2 0、 約 2 5、 約 3 0、 約 3 5、 約 4 0、 約 4 5、 または約 5 0ヌクレオチド長であり得る。 1つの好ましい実施形態では、 本発明の発現抑制剤において使用されるアンチセンス核酸は、 その長さの下限に おいて少なくとも約 1 0 0ヌクレオチド、 少なくとも約 1 5 0ヌクレオチド、 少
なくとも約 2 0 0ヌクレオチド、 少なくとも約 2 5 0ヌクレオチド、 少なくとも 約 3 0 0ヌクレオチド、 少なくとも約 3 5 0ヌクレオチド、 好ましくは、 少なく とも約 4 0 0ヌクレオチド、 より好ましくは少なくとも約 4 5 0ヌクレオチド、 最も好ましくは少なくとも約 5 0 0ヌクレオチドの長さであり得るが、 これらの 長さに限定されず、 約 1 0 0ヌクレオチド〜約 5 0 0ヌクレオチドの間のいずれ の長さであってもよい;上記アンチセンス核酸は、 その長さの上限においては、 たとえば、 約 1 0 5 0ヌクレオチドまで、 約 1 1 0 0ヌクレオチドまで、 約 1 2 0 0ヌクレオチドまで、 約 1 3 0 0ヌクレオチドまで、 約 1 4 0 0ヌクレオチド まで、 約 1 5 0 0ヌクレオチドまで、 約 2 0 0 0ヌクレオチドまで、 または約 2 5 0 0ヌクレオチドの長さ、 あるいは対象となる核酸の全長であり得るが、 これ らの長さに限定されず、 約 5 0 0〜全長までの間の何れの長さであってもよい。 理論に束縛されることを望まないが、 標的遺伝子を上記範囲 (たとえば、 5 0 0 塩基程度) に設計することによって、 ウィルス系統間で幅広くアンチセンス現象 に基づく遺伝子発現抑制効果を誘起させることができると考えられるからである。 本発明のアンチセンス核酸は、 当該分野で公知の手順を用いて、 化学合成または 酵素的連結反応を用いて構築され得る。 例えば、 アンチセンス核酸 (例えば、 ァ ンチセンスオリゴヌクレオチド) は、 天然に存在するヌクレオチド、 またはその 分子の生物学的安定性を増加させるかもしくはアンチセンス核酸とセンス核酸と の間で形成された二本鎖の物理的安定性を増加させるように設計された種々の改 変ヌクレオチドを用いて (例えば、 ホスホロチォエー卜誘導体およびァクリジン 置換ヌクレオチドが使用され得る) 化学合成され得る。 アンチセンス核酸を生成 するために使用され得る改変ヌクレオチドの例として、 5 _フルォロウラシル、 5—ブロモウラシル、 5—クロロウラシル、 5—ョ一ドウラシル、 ヒポキサンチ ン、 キサンチン、 4 _ァセチルシトシン、 5— (カルボキシヒドロキシメチル) ゥラシル、 5—力ルポキシメチルァミノメチル _ 2—チォゥリジン、 5—カルボ キシメチルアミノメチルゥラシル、 ジヒドロウラシル、 i3— D—ガラクトシルキ
ユーオシン (queosine) 、 イノシン、 N 6—イソペンテニルアデニン、 1—メチ ルグァニン、 1—メチルイノシン、 2, 2—ジメチルダァニン、 2—メチルアデ ニン、 2—メチルダァニン、 3—メチルシトシン、 5—メチルシトシン、 N6— アデニン、 7—メチルダァニン、 5—メチルアミノメチルゥラシル、 5—メトキ シァミノメチル— 2—チォゥラシル、 i3—D—マンノシルキューォシン、 5' — メトキシカルボキシメチルゥラシル、 5—メトキシゥラシル、 2—メチルチオ— N 6—イソペンテニルアデニン、 ゥラシルー 5—ォキシ酢酸 (V) 、 ワイブトキ シン (wybutoxosine) 、 プソィドウラシル、 キューオシン、 2—チオシトシン、 5—メチル— 2—チォゥラシル、 2—チォゥラシル、 4_チォゥラシル、 5—メ チルゥラシル、 ゥラシルー 5—ォキシ酢酸メチルエステル、 ゥラシルー 5—ォキ シ酢酸 (V) 、 5—メチルー 2—チォゥラシル、 3_ (3—ァミノ— 3—N— 2 一カルボキシプロピル) ゥラシル、 3— (3—ァミノ— 3_カルポキシプロピル) ゥラシル、 および 2, 6—ジァミノプリンなどが挙げられるがそれらに限定され ない。
本明細書において 「RNA i (RNA interference) 」 とは、 二本鎖 RNA (do uble stranded RNA: d s RNA) によって配列特異的に mRNAが分解される ことによって、 タンパク質への翻訳が阻害され、 遺伝子発現が抑制される現象を いう。 遺伝子発現抑制手法としての植物における RNA iについての総説は、 例 えば、 三木ら、 「植物における RNA iの分子機構とその応用」 (実験医学 Vo 1.22 No.4(3月号) 2004) (本明細書中で、 参考として援用される) などが挙げら れる。 RNA iの利点の一つとして、 弱いものから強いものまで様々なレベルの 発現抑制が個々の遺伝子によって取得され得ること挙げられる。 現在、 RNA i は、 簡便かつ有効な遺伝子発現抑制法として利用されている。 好ましい実施形態 において、 「RNA i」 は、 二本鎖 RNA (d s RNAともいう) のような RN A iを引き起こす因子を細胞に導入することにより、 相同な mRNAが特異的に 分解され、 遺伝子産物の合成が抑制される現象およびそれに用いられる技術をい
う。 本明細書において RNA iはまた、 場合によっては、 RNA iを引き起こす 因子と同義に用いられ得る。
本明細書において 「RNA iを引き起こす因子」 とは、 RNA iを引き起こす ことができるような任意の因子をいう。 本明細書において 「遺伝子」 に対して 「RNA iを引き起こす因子」 とは、 その遺伝子に関する RNA iを引き起こし、
RNA iがもたらす効果 (例えば、 その遺伝子の発現抑制など) が達成されるこ とをいう。 そのような RNA iを引き起こす因子としては、 例えば、 標的遺伝子 の核酸配列の一部、 あるいは上記の核酸配列と少なくとも 90%の同一性を有す る核酸配列に対して少なくとも約 70%、 少なくとも約 80%、 少なくとも約 9 0%、 少なくとも約 95%またはそれ以上の相同性を有する配列またはストリン ジェン卜な条件下でハイブリダィズする配列を含む、 少なくとも 10ヌクレオチ ド長の二本鎖部分を含む RN Aまたはその改変体が挙げられるがそれに限定され ない。 ここで、 この因子は、 好ましくは、 3' 突出末端を含み、 より好ましくは、 3' 突出末端は、 2ヌクレオチド長以上の DN A (例えば、 2〜4ヌクレオチド 長の DNAであり得る。
本明細書において 「トリミング配列」 とは、 センス配列およびアンチセンス配 列に相当する配列とそれら二つの配列の間に位置する配列 (スぺ一サ一、 ヘアピ ン、 トリミング等と呼ばれている) ものをいう。 下記のような構造:
センス配列—トリミング配列一アンチセンス配列;または
アンチセンス配列一トリミング配列—センス配列
を有する核酸分子が導入され得たベクターで細胞が形質転換されると、 センス配 列とアンチセンス配列とが二本鎖 RN Aを形成し、 それら二つの鎖の間に位置す る部分はループまたはヘアピン部分として保持された、 その一部にループ又はへ ァピン構造の一本鎖部分を含む二本鎖 RN A (s hRNA) が形成される。 この トリミング配列の長さは、 センス配列とアンチセンス配列とが二本鎖 R N Aを形 成するときに、 このトリミング配列の構成する一本鎖部分がループまたはへアビ
ン構造をとる限りにおいてどのような長さのものであってもよい。 上記 s h R N Aは、 核から細胞質に移動し、 その導入された細胞内で D i c e rによって切断 されて s i R NAとなり、 R N A干渉を引き起こす。
好ましい実施形態では、 R NA iを引き起こす因子において使用されるセンス 配列またはアンチセンス配列の長さは、 その下限において少なくとも約 1 0 0ヌ クレオチド、 少なくとも約 1 5 0ヌクレオチド、 少なくとも約 2 0 0ヌクレオチ ド、 少なくとも約 2 5 0ヌクレオチド、 少なくとも約 3 0 0ヌクレオチド、 少な くとも約 3 5 0ヌクレオチド、 好ましくは、 少なくとも約 4 0 0ヌクレオチド、 より好ましくは少なくとも約 4 5 0ヌクレオチド、 最も好ましくは少なくとも約 5 0 0ヌクレオチドの長さであり得るが、 これらの長さに限定されず、 約 1 0 0 ヌクレオチド〜約 5 0 0ヌクレオチドの間のいずれの長さであってもよい;上記 センス配列またはアンチセンス配列の長さは、 その上限においては、 たとえば、 約 1 0 5 0まで、 約 1 1 0 0ヌクレオチドまで、 約 1 2 0 0ヌクレオチドまで、 約 1 3 0 0ヌクレオチドまで、 約 1 4 0 0ヌクレオチドまで、 約 1 5 0 0ヌクレ ォチドまで、 約 2 0 0 0ヌクレオチドまで、 または約 2 5 0 0ヌクレオチドの長 さ、 あるいは対象となる核酸の全長であり得るが、 これらの長さに限定されず、 約 5 0 0〜全長までの間の何れの長さであってもよい。 理論に束縛されることを 望まないが、 標的遺伝子を上記範囲 (たとえば、 5 0 0塩基程度) に設計するこ とによって、 ウィルス系統間で幅広く RNAiを誘起させることができると考えられ るからである。
本明細書において第 1の物質または因子が第 2の物質または因子に 「特異的に 相互作用する」 とは、 第 1の物質または因子が、 第 2の物質または因子に対して、 第 2の物質または因子以外の物質または因子 (特に、 第 2の物質または因子を含 むサンプル中に存在する他の物質または因子) に対するよりも高い親和性で相互 作用することをいう。 物質または因子について特異的な相互作用としては、 例え ば、 核酸におけるハイブリダィゼーシヨン、 タンパク質における抗原抗体反応、
リガンドーレセプ夕一反応、 酵素一基質反応など、 核酸およびタンパク質の両方 が関係する場合、 転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、 タンパク質 一脂質相互作用、 核酸一脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。 従って、 物質または因子がともに核酸である場合、 第 1の物質または因子が第 2 の物質または因子に 「特異的に相互作用する」 ことには、 第 1の物質または因子 が、 第 2の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含 される。 また例えば、 物質または因子がともにタンパク質である場合、 第 1の物 質または因子が第 2の物質または因子に 「特異的に相互作用する」 こととしては、 例えば、 抗原抗体反応による相互作用、 レセプ夕一一リガンド反応による相互作 用、 酵素一基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。 2種類の物 質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、 第 1の物質または因子が第 2 の物質または因子に 「特異的に相互作用する」 ことには、 転写因子と、 その転写 因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。 したがつ て、 本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリぺプチドなどの生物学的因子 に対して 「特異的に相互作用する因子」 とは、 そのポリヌクレオチドまたはその ポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、 他の無関連の (特に、 同一 性が 3ひ%未満の) ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、 代表的には同等またはより高いか、 好ましくは有意に (例えば、 統計学的に有意 に) 高いものを包含する。 そのような親和性は、 例えば、 ハイブリダィゼ一ショ ンアツセィ、 結合アツセィなどによって測定することができる。
本明細書において 「発現抑制剤」 とは、 広義には、 遺伝子の細胞内における発 現、 すなわち、 ゲノムの複製、 転写、 翻訳を抑制することができるあらゆる因子 をいラ。
本明細書において 「因子」 (agen t ) としては、 意図する目的を達成すること ができる限りどのような物質または他の要素 (例えば、 光、 放射能、 熱、 電気な どのエネルギー) でもあってもよい。 そのような物質としては、 例えば、 タンパ
ク質、 ポリペプチド、 オリゴペプチド、 ペプチド、 ポリヌクレオチド、 オリゴヌ クレオチド、 ヌクレオチド、 核酸 (例えば、 c D NA、 ゲノム D N Aのような D NA、 mR NAのような R NAを含む) 、 ポリサッカリド、 オリゴサッカリド、 脂質、 有機低分子 (例えば、 ホルモン、 リガンド、 情報伝達物質、 有機低分子、 コンビナトリアルケミストリで合成された分子、 医薬品として利用され得る低分 子 (例えば、 低分子リガンドなど) などであって、 代表的には分子量約 1 0, 0 0 0以下のもの (例えば、 約 1 , 0 0 0以下のもの) を指すがそれらに限定され ない) 、 これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。 ポリヌクレオ チドに対して特異的な因子としては、 代表的には、 そのポリヌクレオチドの配列 に対して一定の配列相同性を (例えば、 7 0 %以上の配列同一性) もって相補性 を有するポリヌクレオチド、 プロモー夕一領域に結合する転写因子のようなポリ ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。 ポリペプチドに対して特異 的な因子としては、 代表的には、 そのポリペプチドに対して特異的に指向された 抗体またはその誘導体あるいはその類似物 (例えば、 単鎖抗体) 、 そのポリぺプ チドがレセプ夕一またはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプ夕 ―、 そのポリペプチドが酵素である場合、 その基質などが挙げられるがそれらに 限定されない。
本明細書において 「複合分子」 とは、 ポリペプチド、 ポリヌクレオチド、 脂質、 糖、 低分子などの分子が複数種連結してできた分子をいう。 そのような複合分子 としては、 例えば、 R NAと D NAとの複合分子、 糖脂質、 糖ペプチドなどが挙 げられるがそれらに限定されない。 本明細書では、 配列番号 2のアミノ酸を有す るポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントであって、 イネ萎縮ウイ ルスの増殖に関与する生物学的な活性を有する限り、 それぞれの改変体もしくは フラグメントなどをコードする核酸分子も使用することができる。 また、 そのよ うな核酸分子を含む複合分子も使用することができる。
本明細書において 「単離された」 生物学的因子 (例えば、 細胞、 核酸または夕
ンパク質など) とは、 その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の 生物学的因子 (例えば、 核酸である場合、 核酸以外の因子および目的とする核酸 以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、 タンパク質以外の因子およ び目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など) から実質的 に分離または精製されたものをいう。 「単離された」 核酸およびタンパク質には、 標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。 したが つて、 単離された核酸およびタンパク質は、 化学的に合成した核酸およびタンパ ク質を包含する。
本明細書において 「精製された」 生物学的因子 (例えば、 細胞、 核酸または夕 ンパク質など) とは、 その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部 が除去されたものをいう。 したがって、 通常、 精製された生物学的因子における その生物学的因子の純度は、 その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い (すなわち濃縮されている) 。
本明細書中で使用される用語 「精製された」 および 「単離された」 は、 好まし くは少なくとも 7 5重量%、 より好ましくは少なくとも 8 5重量%、 よりさらに 好ましくは少なくとも 9 5重量%、 そして最も好ましくは少なくとも 9 8重量% の、 同型の生物学的因子が存在することを意味し、 その対象物を天然物から区別 するために用いられる。
本明細書で使用される場合、 「遺伝子導入」 とは、 生体内またはインビトロに おいて、 標的細胞内に、 天然、 合成または組換えの所望の遺伝子または遺伝子断 片を、 導入された遺伝子がその機能を維持するように、 導入することをいう。 本 発明において導入される遺伝子または遺伝子断片は、 特定の配列を有する D NA、 R NAまたはこれらの合成アナログである核酸を包含する。 また、 本明細書にお いて使用される場合、 遺伝子導入、 形質転換、 トランスフエクシヨン、 およびト ランスフエクトは、 互換可能に使用される。
本明細書で使用される場合、 「遺伝子導入ベクター」 および 「遺伝子べクタ
-J は互換可能に使用される。 「遺伝子導入ベクター」 および 「遺伝子べクタ — J とは、 目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができ るベクターをいう。 「遺伝子導入べクタ一」 および 「遺伝子ベクター」 としては、 プラスミドベクタ一などが挙げられるが、 これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、 「遺伝子導入活性」 とは、 ベクターによる 「遺伝 子導入」 の活性をいい、 導入された遺伝子の機能 (例えば、 発現ベクターの場合、 コードされるタンパク質の発現および またはそのタンパク質の活性など) を指 標として検出され得る。
本明細書で使用される場合、 「外来」 の核酸分子とは、 ある対象核酸分子内に 含まれるその対象核酸分子以外の起源の核酸分子などをいう。 この外来の核酸分 子は、 遺伝子導入べク夕一によつて導入された遺伝子が発現するために適切な調 節配列 (例えば、 転写に必要なプロモー夕一、 ェンハンサー、 夕一ミネ一夕一、 およびポリ A付加シグナル、 ならびに翻訳に必要なリボゾーム結合部位、 開始コ ドン、 終止コドンなど) と作動可能に連結される。 本発明の別の局面において、 外来遺伝子は、 この外来遺伝子の発現のための調節配列を含まない。
遺伝子導入べクタ一内に含まれる外来の核酸分子は、 代表的には D N Aまたは R N Aの核酸分子であるが、 導入される核酸分子は、 目的 (例えば、 R N A干 渉) を果たす核酸アナログ分子を含んでもよい。 遺伝子導入ベクター内に含まれ る分子種は、 単一の遺伝子分子種であっても、 複数の異なる遺伝子分子種であつ てもよい。
従って、 本明細書において遺伝子、 ポリヌクレオチド、 ポリペプチドなどの 「発現」 の 「減少」 または 「抑制」 とは、 交換可能に使用され、 ある因子 (すな わち、 発現抑制剤) を作用させたときに、 作用させないときよりも、 発現の量が 有意に減少することをいう。 好ましくは、 発現の減少は、 ポリペプチドの発現量 の減少を含む。
本明細書において遺伝子、 ポリヌクレオチド、 ポリペプチドなどの 「発現」 の
「増加」 とは、 本発明の因子を作用させたときに、 作用させないときよりも、 発 現の量が有意に増加することをいう。 好ましくは、 発現の増加は、 ポリペプチド の発現量の増加を含む。 本明細書において 「発現」 の 「誘導」 とは、 ある細胞に ある因子を作用させてその遺伝子の発現量を増加させることをいう。 したがって、 発現の誘導は、 まったくその遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が 発現するようにすること、 およびすでにその遺伝子の発現が見られていた場合に その遺伝子の発現が増大することを包含する。
本明細書において、 遺伝子が 「特異的に発現する」 とは、 その遺伝子が、 動物 の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる (好ましくは高 い) レベルで発現さ lることをいう。 特異的に発現するとは、 ある部位 (特異的 部位) にのみ発現してもよく、 それ以外の部位においても発現していてもよい。 好ましくは特異的に発現するとは、 ある部位においてのみ発現することをいう。 本明細書中で使用される場合、 「ジーンサイレンシング」 とは、 遺伝子発現の 抑制現象を意味する。 「ジーンサイレンシング」 と呼ばれる現象としては、 ゲノ ムインプリンティング、 X染色体の不活性化、 PEV (position effect varieg ation) 、 トウモロコシのパラミューテシヨンなどが挙げられる。 植物における トランスジーン (導入遺伝子) の不活性化の一つとして、 相同性依存型ジ一ンサ ィレンシング (Homology- dependent gene silencing; HDGS) があり、 その HD GS様の現象は、 植物内在性遺伝子、 植物以外のトランスジエニックにおいても 見られており、 生物のなんらかの遺伝子制御機構であると考えられる。
本明細書中で使用される場合、 「相同性依存型ジーンサイレンシング」 または 「HDGS」 は、 複数の遺伝子が、 その塩基配列の相同性またはその配列の類似 性に依存して起こる遺伝子発現の抑制現象をいう。 特に、 特定の導入された遺伝 子 (導入遺伝子) を過剰発現させると、 その導入遺伝子とともに本来ゲノムに存 在していた (すなわち、 内在的な) 同一または相同な遺伝子が抑制される現象を いう。 「HDGS」 としては、 例えば、 「PTGS」 が挙げられる。
本明細書中で使用される場合、 「転写後型ジーンサイレンシング」 または 「P TGS」 は、 転写後に起こる遺伝子発現の抑制現象をいう。 RNA iも PTGS の一種である。
本明細書中において使用される場合、 「コサブレッシヨン」 、 「コーサブレツ シヨン」 および 「共抑制」 は、 同意義語として使用され得る。 「コサブレッショ ン」 とは、 導入遺伝子を含む植物において、 その導入遺伝子と相同な配列を有す る内在性の遺伝子 (その植物において、 その植物のゲノム上の存在していた、 そ の導入遺伝子と同一であるかまたは相同である遺伝子) の両方の発現が抑制され る現象をいう。 この現象は、 ペチュニアの花の色素合成にかかる遺伝子の発現機 構を研究している過程に発見された (Napol i, C. , Lemieux, C. &Jprgensen, R.: Plan t Cell 2,291-299 (1990) ;ならびに van der Krol,R et al:Plant Cell 2, 291-29 9 (1990)) 。 その後、 植物のみでなくァカパンカビ、 ショウジヨウバエ、 線虫、 哺乳動物細胞などにおいてもそれらの同様の現象が発見されている。 このような 「コサプレツシヨン」 を、 育種目的に利用した例は、 SCIENCE Voし 309 29 July 2005 p.74卜 745などに記載されている。
理論に束縛されないが、 RNA iが働く機構として考えられるものの一つとし て、 d s RNAのような RNA iを引き起こす分子が細胞に導入されると、 比較 的長い (例えば、 40塩基対以上) RNAの場合、 ヘリカーゼドメインを持つダ ィサ一 (D i c e r) と呼ばれる RNaselll様のヌクレアーゼが AT P存在下で、 その分子を 3' 末端から約 20塩基対ずつ切り出し、 短鎖 d s RNA (s i RN Aとも呼ばれる) を生じる。 本明細書において 「s i RNA」 とは、 short inte rfering RNAの略称であり、 人工的に化学合成されるかまたは生化学的に合成さ れたものか、 あるいは生物体内で合成されたものか、 あるいは約 40塩基以上の 二本鎖 RN Aが体内で分解されてできた 10塩基対以上の短鎖二本鎖 RN Aをい レ 通常、 5' —リン酸、 3' —OHの構造を有しており、 3' 末端は約 2塩基 突出している。 この s i RNAに特異的なタンパク質が結合して、 R I SC (RN
A - induced-silencing- complex) が形成される。 この複合体は、 s i RNAと同 じ配列を有する mRN Aを認識して結合し、 RNaselll様の酵素活性によって s i RNAの中央部で mRNAを切断する。 s i R N Aの配列と標的として切断する mRN Aの配列の関係については、 100 %—致することが好ましい。 しかし、 s i RNAの中央から外れた位置についての塩基の変異については、 完全に RN A iによる切断活性がなくなるのではなく、 部分的な活性が残存する。 他方、 s i RNAの中央部の塩基の変異は影響が大きく、 RNA iによる mRNAの切断 活性が極度に低下する。 このような性質を利用して、 変異をもつ mRNAについ ては、 その変異を中央に配した s i RNAを合成し、 細胞内に導入することで特 異的に変異を含む mRN Aだけを分解することができる。 従って、 本発明では、 s i RNAそのものを RNA iを引き起こす因子として用いることができるし、 s i RNAを生成するような因子 (例えば、 代表的に約 40塩基以上の d s RN A) をそのような因子として用いることができる。
また、 理論に束縛されることを希望しないが、 s i RNAは、 上記経路とは別 に、 s i RNAのアンチセンス鎖が mRNAに結合して RNA依存性 RNAポリ メラーゼ (RdRP) のプライマーとして作用し、 d s RNAが合成され、 この d s RNAが再びダイサ一の基質となり、 新たな s i RNAを生じて作用を増幅 することも企図される。 従って、 本発明では、 s i RNA自体および s i RNA が生じるような因子もまだ、 有用である。 実際に、 昆虫などでは、 例えば 35分 子の d s RNA分子が、 1, 000コピー以上ある細胞内の mRN Aをほぼ完全 に分解することから、 s i RNA自体および s i RNAが生じるような因子が有 用であることが理解される。
本発明において s i RNAと呼ばれる、 約 20塩基前後 (例えば、 代表的には 約 21〜23塩基長) またはそれ未満の長さの二本鎖 RNAを用いることができ る。 このような s i RNAは、 細胞に発現させることにより遺伝子発現を抑制し、 その s i RNAの標的となる病原遺伝子の発現を抑えることから、 疾患の治療、
予防、 予後などに使用することができる。
本発明において用いられる s i RNAは、 RNA iを引き起こすことができる 限り、 どのような形態をとつていてもよい。
別の実施形態において、 本発明の RNA iを引き起こす因子は、 3' 末端に突 出部を有する短いヘアピン構造 (s hRNA; short hairpin RNA) であり得る。 本明細書において 「s hRNA」 とは、 一本鎖 RNAで部分的に回文状の塩基配 列を含むことにより、 分子内で二本鎖構造をとり、 ヘアピンのような構造となる 約 20塩基対以上の分子をいう。 そのような s hRNAは、 人工的に化学合成さ れる。 あるいは、 そのような s hRNAは、 センス鎖およびアンチセンス鎖の D NA配列を逆向きに連結したヘアピン構造の DNAを T 7 RNAポリメラーゼ によりインビトロで RN Aを合成することによって生成することができる。 理論 に束縛されることは希望しないが、 そのような s hRNAは、 細胞内に導入され た後、 細胞内で約 20塩基 (代表的には例えば、 21塩基、 22塩基、 23塩 基) の長さに分解され、 s i RNAと同様に RNA iを引き起こし、 本発明の処 置効果があることが理解されるべきである。 このような効果は、 昆虫、 植物、 動 物 (哺乳動物を含む) など広汎な生物において発揮されることが理解されるべき である。 このように、 s hRNAは、 s i RNAと同様に RNA iを引き起こす ことから、 本発明の有効成分として用いることができる。 s hRNAはまた、 好 ましくは、 3' 突出末端を有し得る。 二本鎖部分の長さは特に限定されないが、 好ましくは約 10ヌクレオチド長以上、 より好ましくは約 20ヌクレオチド長以 上であり得る。 ここで、 3' 突出末端は、 好ましくは DNAであり得、 より好ま しくは少なくとも 2ヌクレオチド長以上の DNAであり得、 さらに好ましくは 2 〜4ヌクレオチド長の DNAであり得る。
本発明において用いられる RNA iを引き起こす因子は、 人工的に合成した (例えば、 化学的または生化学的) ものでも、 天然に存在するものでも用いるこ とができ、 この両者の間で本発明の効果に本質的な違いは生じない。 化学的に合
成したものでは、 液体クロマトグラフィーなどにより精製をすることが好ましい。 本発明において用いられる RNA iを引き起こす因子は、 インビトロで合成す ることもできる。 この合成系において、 T7 R N Aポリメラ一ゼおよび T 7プ 口モーターを用いて、 铸型 DN Aからアンチセンスおよびセンスの RN Aを合成 する。 これらをインビトロでアニーリングした後、 細胞に導入すると、 上述のよ うな機構を通じて RNA iが引き起こされ、 本発明の効果が達成される。 ここで は、 例えば、 リン酸カルシウム法でそのような RN Aを細胞内に導入することが できる。
本発明の RNA iを引き起こす因子としてはまた、 mRNAとハイブリダィズ し得る一本鎖、 あるいはそれらのすべての類似の核酸アナログのような因子も挙 げられる。 そのような因子もまた、 本発明の方法および組成物において有用であ る。
本明細書において、 配列番号 8 (P n s 4) 、 配列番号 12 (Pn s 6) 、 配 列番号 22 (Pn s 1 1) または配列番号 24 (Pn s 12) のアミノ酸配列を 有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質を コードする天然の核酸は、 例えば、 配列番号 7 (S4) 、 配列番号 1 1 (S 6) 、 配列番号 21 (S 1 1) または配列番号 23 (S 12) に示される核酸配列の一 部またはその改変体を含む P C Rプライマーおよびハイブリダイゼーシヨンプロ ーブを有する c DN Aライブラリーから容易に分離される。
本明細書において、 ハイブリダィゼ一シヨンのための 「ストリンジェントな条 件」 とは、 標的配列に対して類似性または相同性を有するヌクレオチド鎖の相補 鎖が標的配列に優先的にハイブリダィズし、 そして類似性または相同性を有さな ぃヌクレオチド鎖の相補鎖が実質的にハイブリダイズしない条件を意味する。 あ る核酸配列の 「相補鎖」 とは、 核酸の塩基間の水素結合に基づいて対合する核酸 配列 (例えば、 Aに対する T、 Gに対する C) をいう。 ストリンジェン卜な条件 は配列依存的であり、 そして種々の状況で異なる。 より長い配列は、 より高い温
度で特異的にハイブリダィズする。 一般に、 ストリンジェン卜な条件は、 規定さ れたイオン強度および pHでの特定の配列についての熱融解温度 (Tm) より約 5 :低く選択される。 Tmは、 規定されたイオン強度、 pH、 および核酸濃度下 で、 標的配列に相補的なヌクレオチドの 50 %が平衡状態で標的配列にハイプリ ダイズする温度である。 「ストリンジェン卜な条件」 は配列依存的であり、 そし て種々の環境パラメ一夕一によつて異なる。 核酸のハイブリダィゼーシヨンの一 般的な指針は、 Tijssen(Tijssen (1993), Laboratory Technniques In Biochemist ry And MolecularBiology-Hybridizat ion With Nucleic Acid Probes Part I、 第 2章 「0verview ofpr inciples of hybridization and the strategy of nuc leic acid probeassayj 、 Elsevier, New York) に見出される。
代表的には、 ストリンジェン卜な条件は、 塩濃度が約 1. 0M Na+未満で あり、 代表的には、 pH7. 0〜8. 3で約 0. 0 1〜 1. 0Mの Na+濃度 (または他の塩) であり、 そして温度は、 短いヌクレオチド (例えば、 10〜5 0ヌクレオチド) については少なくとも約 30T:、 そして長いヌクレオチド (例 えば、 50ヌクレオチドより長い) については少なくとも約 6 Ot:である。 スト リンジェン卜な条件はまた、 ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達 成され得る。 本明細書におけるストリンジェン卜な条件として、 50%のホルム アミド、 1Mの NaCし 1%の SDS ( 37 ) の緩衝溶液中でのハイブリダ ィゼーシヨン、 および 0. 1 XS SCで 60 での洗浄が挙げられる。
本明細書において、 「ストリンジエンドな条件でハイプリダイズするポリヌク レオチド」 とは、 当該分野で慣用される周知の条件をいう。 本発明のポリヌクレ ォチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、 コロニー ·ハイブ リダィゼーション法、 プラーク ·ハイブリダィゼ一シヨン法あるいはサザンプロ ットハイブリダィゼーシヨン法等を用いることにより、 そのようなポリヌクレオ チドを得ることができる。 具体的には、 コロニーあるいはプラーク由来の DN A を固定化したフィル夕一を用いて、 0. 7〜1. 0MのNaC l存在下、 65で
でハイブリダィゼーシヨンを行った後、 0. 1〜2倍濃度の SSC (saline-sod ium citrate) 溶液 ( 1倍濃度の S S C溶液の組成は、 150mM 塩化ナトリ ゥム、 15mM クェン酸ナトリウムである) を用い、 65 条件下でフィル夕 —を洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。 ハイプリダイ セ一シヨンは、 Molecular Cloning 2nd ed. , Current Protocols in Molecular B iology, Supplement 1 38、 DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approac h, Second Edi t ion, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている 方法に準じて行うことができる。 ここで、 ストリンジ工ン卜な条件下でハイプリ ダイズする配列からは、 好ましくは、 A配列のみまたは T配列のみを含む配列が 除外される。 「ハイブリダィズ可能なポリヌクレオチド」 とは、 上記ハイブリダ ィズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌク レオチドをいう。 ハイブリダィズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、 本 発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする DN A の塩基配列と少なくとも 60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、 好まし くは 80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、 90%以上の相同性を有す るポリヌクレオチド、 さらに好ましくは 95%以上の相同性を有するポリヌクレ ォチドを挙げることができる。
本明細書において 「高度にストリンジェン卜な条件」 は、 核酸配列において高 度の相補性を有する DN A鎖のハイブリダィゼ一シヨンを可能にし、 そしてミス マツチを有意に有する D N Aのハイブリダイゼーションを除外するように設計さ れた条件をいう。 ハイブリダィゼーシヨンのストリンジエンシーは、 主に、 温度、 イオン強度、 およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。 こ のようなハイブリダイゼーシヨンおよび洗浄に関する 「高度にストリンジェント な条件」 の例は、 0. 0015M 塩化ナトリウム、 0. 0015M クェン酸 ナトリウム、 65〜68 :、 または 0. 015M 塩化ナトリウム、 0. 001 5M クェン酸ナトリウム、 および 50% ホルムアミド、 42 :である。 この
ような高度にストリンジェン卜な条件については、 Sambrook et al. , Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第 2版、 Cold Spring Harbor Laboratory (Cold Spr ing Harbor, N, Y.1989) ;および Anderson et a 1. , ucleic Acid Hybridization:a Practical approach> IV, IRL Press Limi ted (Oxford, England) . Limi ted, Oxford, Englandを参照のこと。 必要により、 よりストリンジェントな条件 (例えば、 よ り高い温度、 より低いイオン強度、 より高いホルムアミド、 または他の変性剤) を、 使用してもよい。 他の薬剤が、 非特異的なハイブリダィゼーシヨンおよび Z またはバックグラウンドのハイブリダィゼーシヨンを減少する目的で、 ハイブリ ダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。 そのような他の薬剤の例 としては、 0. 1%ゥシ血清アルブミン、 0. 1 %ポリビニルピロリドン、 0.
1%ピロリン酸ナトリウム、 0. 1 %ドデシル硫酸ナトリウム (NaDo d SO 4または SDS) 、 F i c o l 1、 De nh a r d t溶液、 超音波処理されたサ ケ精子 DNA (または別の非相補的 DNA) および硫酸デキストランであるが、 他の適切な薬剤もまた、 使用され得る。 これらの添加物の濃度および型は、 ハイ ブリダィゼ一シヨン条件のストリンジエンシーに実質的に影響を与えることなく 変更され得る。 ハイブリダィゼ一シヨン実験は、 通常、 pH6. 8〜7. 4で実 施されるが;代表的なイオン強度条件において、 ハイブリダィゼーションの速度 は、 ほとんと p H独 Λ£でめる。 Anderson et al. , ucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第 4章, IRL Press Limited (Oxford, England) を参照のこ と。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、 塩基の組成、 長さおよび 塩基対不一致の程度が挙げられる。 ハイブリダィゼーシヨン条件は、 当業者によ つて調整され得、 これらの変数を適用させ、 そして異なる配列関連性の DNAが ハイブリツドを形成するのを可能にする。 完全に一致した DNA二重鎖の融解温 度は、 以下の式によって概算され得る。
Tm (°C) =81.5 + 16.6 (log[Na+]) +0.41 (%G+C) — 600/N- 0.72 (%ホルムァ
ミド)
ここで、 Nは、 形成される二重鎖の長さであり、 [Na+] は、 ハイブリダィ ゼ一ション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、 %G + Cは、 ハイブリッド中の (グァニン +シトシン) 塩基のパーセンテージである。 不完全に一致したハイブリッドに関して、 融解温度は、 各 1%不一致 (ミスマツ チ) に対して約 1°Cずつ減少する。
本明細書において 「中程度にストリンジェン卜な条件」 とは、 「高度にストリ ンジェントな条件」 下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有する D N A 二重鎖が、 形成し得る条件をいう。 代表的な 「中程度にストリンジェントな条 件」 の例は、 0. 015M 塩化ナトリウム、 0. 0015M クェン酸ナトリ ゥム、 50〜65°C、 または 0. 015M 塩化ナトリウム、 0. 0015M クェン酸ナトリウム、 および 20%ホルムアミド、 37〜50 である。 例とし て、 0. 015M ナトリウムイオン中、 5 Ot:の 「中程度にストリンジェント な」 条件は、 約 21 %の不一致を許容する。
本明細書において 「高度」 にストリンジエンドな条件と 「中程度」 にストリン ジェン卜な条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、 当業者 によって理解される。 例えば、 0. 015M ナトリウムイオン (ホルムアミド なし) において、 完全に一致した長い DNAの融解温度は、 約 71°Cである。 6 5で (同じイオン強度) での洗浄において、 これは、 約 6%不一致を許容にする。 より離れた関連する配列を捕獲するために、 当業者は、 単に温度を低下させ得る か、 またはイオン強度を上昇し得る。
約 20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、 1M N a C 1における融解温度の適切な概算は、
Tm= (1つの A— T塩基につき 2で) + (1つの G— C塩基対につき 4 ) によって提供される。 なお、 6 Xクェン酸ナトリウム塩 (S SC) におけるナト リウムイオン濃度は、 1Mである (Suggsら、 Developmental Biology Using Pur
ified Genes, 683頁、 Brownおよび Fox (編)(1981)を参照のこと)。
配列番号 8 (P4) または配列番号 24 (Pnsl2) のアミノ酸配列を有するポリ ペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、 本質 的に 1 %ゥシ血清アルブミン (BSA) ; 50 OmM リン酸ナトリウム (N a P04) ; ImM EDTA; 42 の温度で 7% SDS を含むハイブリ ダイゼーシヨン緩衝液、 および本質的に 2 XSSC (60 OmM NaC 1 ; 6 OmM クェン酸ナトリウム) ; 50t:の 0· 1% SDSを含む洗浄緩衝液に よって定義される低ストリンジェント条件下、 さらに好ましくは本質的に 50 の温度での 1%ゥシ血清アルブミン (BSA) ; 50 OmM リン酸ナトリウム (N a P04) ; 15 %ホルムアミド; ImM EDTA; 7 % SDS を 含むハイブリダィゼ一シヨン緩衝液、 および本質的に 50 の 1 XSSC (30 OmM N a C 1 ; 3 OmM クェン酸ナトリウム) ; 1 % S D Sを含む洗浄 緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、 最も好ましくは本質的に 5 の温度での 1 %ゥシ血清アルブミン (B S A) ; 20 OmM リン酸ナト リウム (NaP〇4) ; 15%ホルムアミド; ImM EDTA ; 7%SDSを 含むハイブリダィゼ一シヨン緩衝液、 および本質的に 65 の 0. 5 XS SC (15 OmM Na C 1 ; 15mM クェン酸ナトリウム) ; 0. 1% SDS を含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号 1ま たは 3に示す配列の 1つまたはその一部とハイブリダィズし得る。
本明細書において 「相同性」 は、 2以上の配列の比較において、 それらの配列 が進化的に祖先を共有することを示す。 2種類の遺伝子が相同性を有するか否か は、 配列の直接の比較により類似性に基づいた判定をおこなうか、 またはストリ ンジェントな条件下でのハイブリダィゼーション法によって調べられ得る。 配列 の直接の比較により類似性に基づいた判定をおこなう場合、 その類似性測定過程 のァライメントにおける最も単純な解釈として、 同一な (もしくは等価である) 文字列 (塩基、 アミノ酸残基など) で並置されている文字列が、 これらの領域が
祖先配列のまま変化しなかったものであることを示し、 同一でない (もしくは、 等価でない) 文字列が、 突然変異が一方の配列で起こったものであるとの考察が 可能である。 ァライメントにおけるギャップ (インデル) は、 配列の一方で、 挿 入または欠失が起こったものであると考えられる。 つまり、 それらの配列の同一 性または類似性は高いことは、 それらの配列における相同性を強く示唆すること が理解される。 相同性は、 発現抑制剤の設計において参照される。
本明細書における 「プライマー」 とは、 高分子合成酵素反応において、 合成さ れる高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。 核酸分子の合成反応では、 合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子 (例えば、 D NA または R N Aなど) が用いられ得る。
通常プライマ一として用いられる核酸分子としては、 目的とする遺伝子の核酸 配列と相補的な、 少なくとも 8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するも のが挙げられる。 そのような核酸配列は、 好ましくは、 少なくとも 9の連続する ヌクレオチド長の、 より好ましくは少なくとも 1 0の連続するヌクレオチド長の、 さらに好ましくは少なくとも 1 1の連続するヌクレオチド長の、 少なくとも 1 2 の連続するヌクレオチド長の、 少なくとも 1 3の連続するヌクレオチド長の、 少 なくとも 1 4の連続するヌクレオチド長の、 少なくとも 1 5の連続するヌクレオ チド長の、 少なくとも 1 6の連続するヌクレオチド長の、 少なくとも 1 7の連続 するヌクレオチド長の、 少なくとも 1 8の連続するヌクレオチド長の、 少なくと も 1 9の連続するヌクレオチド長の、 少なくとも 2 0の連続するヌクレオチド長 の、 少なくとも 2 5の連続するヌクレオチド長の、 少なくとも 3 0の連続するヌ クレオチド長の、 少なくとも 4 0の連続するヌクレオチド長の、 少なくとも 5 0 の連続するヌクレオチド長の、 核酸配列であり得る。 プローブとして使用される 核酸配列には、 上述の配列に対して、 少なくとも 7 0 %相同な、 より好ましくは、 少なくとも 8 0 %相同な、 さらに好ましくは、 少なくとも 9 0 %相同な、 少なく とも 9 5 %相同な核酸配列が含まれる。 プライマ一として適切な配列は、 合成
(増幅) が意図される配列の性質によって変動し得るが、 当業者は、 意図される 配列に応じて適宜プライマ一を設計することができる。 そのようなプライマーの 設計は当該分野において周知であり、 手動でおこなってもよくコンピュータプロ グラム (例えば、 LASERGENE, Pr imerSelect, DNAStar) を用いて行ってもよい。 本明細書において、 「改変体」 とは、 もとのポリペプチドまたはポリヌクレオ チドなどの物質に対して、 一部が変更されているものをいう。 そのような改変体 としては、 置換改変体、 付加改変体、 挿入改変体、 欠失改変体、 短縮 (truncate d) 改変体、 対立遺伝子変異体などが挙げられる。 そのような改変体としては、 基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、 1または数個の置換、 付加、 挿入および Zまたは欠失、 あるいは 1つ以上の置換、 付加、 挿入および Zまたは 欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。 「オルソログ (ortholo g) J とは、 オルソロガス遺伝子 (orthologous gene) ともいい、 二つの遺伝子 がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。 オルソログは、 通常別の ウィルス株において、 もとのウィルス株と同様の機能を果たしていることがあり 得ることから、 本発明のオルソログもまた、 本発明において有用であり得る。 本明細書において 「保存的 (に改変された) 改変体」 は、 アミノ酸配列および 核酸配列の両方に適用される。 特定の核酸配列に関して、 保存的に改変された改 変体とは、 同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、 核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、 本質的に同一な配列をいう。 この ような塩基配列の改変法としては、 制限酵素などによる切断、 DNAポリメラー ゼ、 K 1 e n owフラグメント、 DNAリガーゼなどによる処理等による連結等 の処理、 合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法 (特定部位 指向突然変異法; Mark Zoller and Michael Smith, Methods in Enzymology, 100, 468-500 (1983)) が挙げられるが、 この他にも通常分子生物学の分野で用いられ る方法によって改変を行うこともできる。
本明細書において使用される核酸分子は、 目的とする遺伝子の発現を抑制する
限り、 上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換され ていてもよく、 あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。 あるいは、
5 ' 末端および Zまたは 3 ' 末端に他の核酸が結合していてもよい。 また、 ポリ ペプチドをコードする遺伝子をストリンジェン卜な条件下でハイプリダイズし、 そのポリぺプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸 分子でもよい。 このような遺伝子は、 当該分野において公知であり、 本発明にお いて利用することができる。
このような核酸は、 周知の P C R法により得ることができ、 化学的に合成する こともできる。 これらの方法に、 例えば、 部位特異的変位誘発法、 ハイブリダィ ゼーシヨン法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、 ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの 「置換、 付加、 挿 入および Zまたは欠失」 とは、 もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対 して、 それぞれアミノ酸もしくはその代替物、 またはヌクレオチドもしくはその 代替物が、 置き換わること、 付け加わること、 挿入されること、 または取り除か れることをいう。 このような置換、 付加、 挿入および Zまたは欠失の技術は、 当 該分野において周知であり、 そのような技術の例としては、 部位特異的変異誘発 技術などが挙げられる。 基準となる核酸分子またはポリペプチドにおけるこれら の変化は、 この核酸分子の 5 ' 末端もしくは 3 ' 末端で生じ得るか、 またはこの ポリべプチドを示すアミノ酸配列のァミノ末端部位もしくはカルボキシ末端部位 で生じ得るか、 またはそれらの末端部位の間のどこにでも生じ得、 基準配列中の 残基間で個々に散在する。 置換、 付加または欠失は、 1つ以上であれば任意の数 でよく、 そのような数は、 その置換、 付加または欠失を有する改変体において目 的とする機能 (例えば、 ホルモン、 サイト力インの情報伝達機能など) が保持さ れる限り、 多くすることができる。 例えば、 そのような数は、 1または数個であ り得、 そして好ましくは、 全体の長さの 2 0 %以内、 1 5 %以内、 1 0 %以内、 5 %以内、 または 1 5 0個以下、 1 0 0個以下、 5 0個以下、 2 5個以下などで
あり得る。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、 生化学的手法、 微生物学的手 法は、 当該分野において周知であり慣用されるものであり、 例えば、 Sambrook J. et al. (1989) . Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborお よびその 3rd Ed. (2001) ; Ausubel.F.M. (1987) . Current Protocols in Molecular
Biology, Greene Pub. Associates and Wi ley-Interscience; Ausubel, F. M. (198 9) . Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Cu rrent Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wi ley-Int erscience; Innis, M. A. (1990) . PCR Protocols : A Guide to Methods and Appl ica t ions, Academic Press; Ausubel, F. M. (1992) . Short Protocols in Molecular Bi o 1 ogy : A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biolo gy, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M. (1995). Short Protocols in Molecular
Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Bi ology, Greene Pub. Associates ; Innis, M. A. et al. (1995) . PCR Strategies, Academ ic Press;Ausubel,F.M. (1999). Short Protocols in Molecular Biology: A Comp end i urn of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wi ley, and annual updates ;Sninsky, J. J. et al. (1999) . PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press, 別冊実験医学 「遺伝子導入 &発現解析実 験法」 羊土社、 1 997などに記載されており、 これらは本明細書において関連 する部分 (全部であり得る) が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するための DN A合成技術および核酸化学につ いては、 例えば、 Gait.M. J. (1985). Oligonucleotide Synthesis:A Practical Ap proach, IRLPress; Gai t, M. J. (1990). Oligonucleotide Synthesis :A Practical A pproach, IRL Press'; Eckstein, F. (1991). Oligonucleotides and Analogues :A Pr actical Approac, IRL Press ;Adams, R. L. et al. (1992) . The Biochemistry of t
he Nucleic Acids, Chapman&Hal 1 ;Shabarova, Z. et al. (1994) . Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Wei nheim; Blackburn, G. M. et al. (1996) . ucleic A cids in Chemistry and Biology, Oxford University Press ;Hermanson, G. T. (199 6).Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、 これらは 本明細書において関連する部分が参考として援用される。
(遺伝子工学)
本発明において用いられる配列番号 2のアミノ酸配列を有するポリペプチドな らびにそのフラグメントおよび改変体は、 遺伝子工学技術を用いて生産すること ができる。
本明細書において遺伝子について言及する場合、 「ベクター」 または 「組み換 えべクタ一」 とは、 目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させるこ とができるベクターをいう。 そのようなベクターとしては、 原核細胞、 酵母、 動 物細胞、 植物細胞、 昆虫細胞、 動物個体および植物個体などの宿主細胞において 自立複製が可能、 または染色体中への組込みが可能で、 本発明のポリヌクレオチ ドの転写に適した位置にプロモ一夕一を含有しているものが例示される。 ベクタ 一のうち、 クローニングに適したベクターを 「クロ一ニングベクタ一」 という。 そのようなクローニングベクターは通常、 制限酵素部位を複数含むマルチプルク ローニング部位を含む。 そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング 部位は、 当該分野において周知であり、 当業者は、 目的に合わせて適宜選択して 使用することができる。 そのような技術は、 本明細書に記載される文献 (例えば、 S amb r o okら、 前出) に記載されている。 好ましいベクタ一としては、 プ ラスミド、 ファージ、 コスミド、 ェピソ一ム、 ウィルス粒子またはウィルスおよ び組み込み可能な DN Aフラグメント (すなわち、 相同組換えによって宿主ゲノ ム中に組み込み可能なフラグメント) が挙げられるが、 これらに限定されない。 ベクターの 1つの型は、 「プラスミド」 であり、 これは、 さらなる DNAセグ メントが連結され得る環状二重鎖 DNAループをいう。 別の型のベクタ一は、 ゥ
ィルスべクタ一であり、 ここで、 さらなる D NAセグメントは、 ウィルスゲノム 中に連結され得る。 特定のベクタ一 (例えば、 細菌の複製起点を有する細菌べク 夕一およびェピソ一ム哺乳動物ベクター) は、 これらが導入される宿主細胞中で 自律的に複製し得る。 他のベクタ一 (例えば、 非ェピソーム哺乳動物ベクター) は、 宿主細胞中への導入の際に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、 それにより、 宿主ゲノムと共に複製される。 さらに、 特定のベクタ一は、 これらが作動可能に 連結される遺伝子の発現を指向し得る。 このようなベクタ一は、 本明細書中で、 「発現べクタ一」 といわれる。
従って、 本明細書において 「発現ベクター」 または 「発現プラスミド」 とは、 構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメン 卜が宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。 調節エレ メントは、 好ましくは、 夕一ミネ一夕一、 薬剤耐性遺伝子のような選択マーカー および、 ェンハンサーを含み得る。 生物 (例えば、 植物) の発現べクタ一のタイ プおよび使用される調節エレメントの種類が、 宿主細胞に応じて変わり得ること は、 当業者に周知の事項である。
本発明において用いられ得る原核生物細胞に対する 「組み換えべクタ一」 とし ては、 pcDNA3 (+)、 pB l uescr i pt-SK (+/-) pGEM- T、 pEF - B0S、 pEGFP、 pHAT、 pUCl 8、 pFT-DEST™42GATEWAY、 pENTR™/D-T0P0 ( I nv i t rogen) などが例示される。 原 核生物細胞は、 遺伝子の増幅、 改変などに用いることができる。
本明細書において用いられ得る植物細胞に対する 「組み換えベクター」 として は、 pANDA (奈良先端大学院大学島本教授より分譲) 、 PBE7133- GUS- Hygro (pE7 Q IGUS-Hygro) 、 pPZP2H- l acを挙げることができるがそれらに限定されない。 本明細書において 「夕一ミネ一ター」 は、 遺伝子のタンパク質をコードする領 域の下流に位置し、 D N Aが mR N Aに転写される際の転写の終結、 およびポリ A配列の付加に関与する配列である。 夕一ミネ一夕一は、 mR N Aの安定性に寄 与し、 そして遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。 夕一ミネ一夕
—の例としては、 CaMV35S夕一ミネ一夕一、 およびノパリン合成酵素遺伝子の夕 一ミネ一夕一 (T n o s ) が挙げられるが、 これらに限定されない。
本明細書において 「プロモー夕一」 とは、 遺伝子の転写の開始部位を決定し、 またその頻度を直接的に調節する D N A上の領域をいい、 R N Aポリメラ一ゼが 結合して転写を始める塩基配列である。 推定プロモーター領域は、 構造遺伝子ご とに変動するが、 通常構造遺伝子の上流にあるが、 これらに限定されず、 構造遺 伝子の下流にもあり得る。
プロモーターは、 誘導性であっても、 構成的であっても、 部位特異的であって も、 時期特異的であってもよいが、 構成的プロモーターまたは誘導性プロモー夕 一が好ましい。 プロモー夕一としては、 例えば、 哺乳動物細胞、 大腸菌、 酵母な どの宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。
本明細書において、 遺伝子の発現について用いられる場合、 一般に、 「部位特 異性」 とは、 植物の部位におけるその遺伝子の発現の特異性をいう。 「時期特異 性」 とは、 植物の発達段階に応じたその遺伝子め発現の特異性をいう。 そのよう な特異性は、 適切なプロモー夕一を選択することによって、 所望の生物に導入す ることができる。 部位特異的調節エレメントを使用して核酸を発現することによ つて、 組換え植物発現ベクターでは、 特定の細胞型において核酸の発現を優先的 に指向し得る。 部位特異的調節エレメントは、 当該分野で公知である。
本明細書において、 「部位特異的発現プロモ一夕一」 とは、 器官 (例えば、 根、 茎、 葉、 果実、 種子ならびにそれらの組合せなど) 、 組織 (例えば、 表皮、 篩部、 柔組織、 木部、 維管束、 ならびにそれらの組合せなど) 、 発達段階 (例えば、 発 芽期、 生長期、 開花期、 登期ならびにそれらの組み合わせなど) などにおいて、 特異的なプロモーターである。 原理的には、 個体において特異的に発現している 遺伝子を単離し、 そのプロモータ一、 発現制御シス領域を単離することによって 得られる。
本明細書において、 プロモーターの発現が 「構成的」 であるとは、 生物のすべ
ての組織において、 その生物の成長 Z増殖のいずれにあってもほぼ一定の量で発 現される性質をいう。 具体的には、 ノーザンプロット分析したとき、 例えば、 任 意の時点で (例えば、 2点以上 (例えば、 5日目および 1 5日目) ) の同一また は対応する部位のいずれにおいても、 ほぼ同程度の発現量がみられるとき、 本発 明の定義上、 発現が構成的であるという。 構成的プロモー夕一は、 通常の生育環 境にある生物の恒常性維持に役割を果たしていると考えられる。 本発明のプロモ 一夕一の発現が 「応答性」 であるとは、 少なくとも 1つの因子が生物体に与えら れたとき、 その発現量が変化する性質をいう。 特に、 発現量が増加する性質を因 子に対して 「誘導性」 といい、 発現量が減少する性質を因子に対して 「減少性」 という。 「減少性」 の発現は、 正常時において、 発現が見られることを前提とし ているので、 「構成的」 な発現と重複する概念である。 これらの性質は、 生物の 任意の部分から R N Aを抽出してノーザンブロット分析で発現量を分析すること または発現された夕ンパク質をウエスタンプロットにより定量することにより決 定することができる。 因子に対して誘導性のプロモーターを本発明の部位特異的 組換え誘導因子をコードする核酸とともに組み込んだベクターで形質転換された 哺乳動物細胞または哺乳動物 (特定の組織などを含む) は、 そのプロモーターの 誘導活性をもつ刺激因子を用いることにより、 ある条件下での部位特異的組換え 配列の部位特異的組換えを行うことができる。
本発明のポリヌクレオチドは、 そのままでまたは改変されて、 当業者に周知の 方法を用いて、 適切な植物発現べクタ一に連結され、 公知の遺伝子 組換え技術 により、 植物細胞に導入され得る。 導入された遺伝子は、 植物細胞中の D N Aに 組み込まれて存在する。 なお、 植物細胞中の D NAとは、 染色体のみならず、 植 物細胞中に含まれる各種オルガネラ (例えば、 ミトコンドリア、 葉緑体など) に 含まれる D NAを含む。
本明細書において 「植物発現ベクター」 は、 本発明の遺伝子の発現を調節する プロモーターなどの種々の調節エレメントが宿主植物の細胞中で作動可能に連結
されている核酸配列をいう。 本願明細書で用いる用語 「制御配列」 は、 機能的プ 口モーターおよび、 任意の関連する転写要素 (例えば、 ェンハンサー、 CCAA Tボックス、 TATAボックス、 SP I部位など) を有する DNA配列をいう。 本願明細書で用いる用語 「作動可能に連結」 は、 遺伝子が発現し得るように、 そ れに関するポリヌクレオチドと、 その発現を調節するプロモー夕一、 ェンハンサ 一等の種々の調節エレメントとが宿主細胞中で作動し得る状態で連結されること をいう。 植物発現べクタ一は、 好適には、 植物遺伝子、 プロモーター、 夕一ミネ 一夕一、 薬剤耐性遺伝子およびェンハンサ一を含み得る。 発現ベクターのタイプ および使用される調節エレメントの種類が、 宿主細胞に応じて変わり得ることは、 当業者に周知の事項である。 本発明に用いる植物発現べクタ一は、 さらに T一 D NA領域を有し得る。 T— DNA領域は、 特にァグロパクテリゥムを用いて植物 を形質転換する場合に遺伝子の導入の効率を高める。
本明細書において 「植物遺伝子プロモーター」 は、 植物で発現するプロモー夕 —を意味する。 再生植物のすべての組織において、 本発明のポリヌクレオチドの 発現を指向させる植物プロモーターフラグメントを採用し得る。 構成的に発現さ せるためのプロモーターとしては、 例えば、 ノパリン合成酵素遺伝子のプロモー 夕一 (Langridge, 1985, Plant Cell Rep.4, 355)、 カリフラワーモザイクウィルス 19 S— RNAを生じるプロモーター (Guilley, 1982, Cell 30,763) 、 力リフラ ヮーモザイクウィルス 35 S— RNAを生じるプロモー夕一 (Odell, 1985,Natur e 313,810) 、 イネのァクチンプロモーター (Zhang, 1991, Plant Cell 3,1155) 、 トウモロコシュビキチンプロモータ一 (Cornejo 1993,Plant Mol. Biol.23, 567) 、 REX<i>プロモーター (Mitsuhara, 1996, Plant Cell Physiol.37, 49) などを用 いることができる。
あるいは、 植物プロモーターは、 特定組織において本発明のポリヌクレオチド の発現を指向させ得るか、 またはそうでなければ、 より特異的な環境または発達 の制御下にあり得る。 このようなプロモーターは、 本明細書では、 「誘導可能
な」 プロモーターと称する。 誘導可能なプロモーターとしては、 例えば、 光、 低 温、 高温、 乾燥、 紫外線の照射、 特定の化合物の散布などの外因によって発現す ることが知られているプロモ一夕一などが挙げられる。 この様なプロモー夕一と しては、 例えば、 光照射によって発現するリブロース— 1, 5— 2リン酸力ルポ キシラ一ゼ小サブユニットをコードする遺伝子のプロモーター (Fluhr, 1986, Pro. Natl. Acad. Sci. USA 83,2358) 、 低温によって誘導されるイネの 1 i p 1 9遺伝 子のプロモ一夕一 (Aguan, 1993, Mol. Gen. Genet.240, 1) 、 高温によって誘導され るイネの h s p 72、 h s p 80遺伝子のプロモーター (Van Breusegem, 1994,P lanta 193,57) 、 乾燥によって誘導されるシロイヌナズナの r a b 16遺伝子の プロモーター (Nundy, 1990, Proc. Natl. Acad. Scに USA 87, 1406) 、 紫外線の照射 によって誘導されるトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモ —タ一 (Schulze- Lefert, 1989,EMB0 J.8, 651) などが挙げられる。 また、 r ab 16遺伝子のプロモー夕一は植物ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導 される。
本明細書において 「薬剤耐性遺伝子」 は、 形質転換植物の選抜を容易にするも のであることが望ましい。 カナマイシン耐性を付与するためのネオマイシンフォ スフオトランスフェラーゼ I I (NPT I I) 遺伝子、 およびハイグロマイシン 耐性を付与するためのハイグロマイシンフォスフォトランスフエラーゼ遺伝子な どが好適に用いられ得るが、 これらに限定されない。 これらの薬剤耐性遺伝子は、 本発明においてスクリーニング技術などにおいて用いられる。
上記のような植物発現べクタ一は、 当業者に周知の遺伝子組換え技術を用いて 作製され得る。 植物発現べクタ一の構築には、 例えば、 pB I系のベクタ一また は pUC系のベクターが好適に用いられるが、 これらに限定されない。 .
DNA導入のための植物材料としては、 導入法などに応じて、 葉、 茎、 根、 塊 茎、 プロトプラスト、 カルス、 花粉、 種子胚、 苗条原基などから適当なものを選 択することができる。 「植物細胞」 とは、 任意の植物細胞であり得る。 「植物細
胞」 の例としては、 葉および根などの植物器官の細胞、 カルスならびに懸濁培養 細胞が挙げられる。 植物細胞は、 培養細胞、 培養組織、 培養器官、 または植物体 のいずれの形態であってもよい。 好ましくは、 培養細胞、 培養組織、 または培養 器官であり、 より好ましくは培養細胞である。
また一般に、 植物培養細胞へ DNAを導入する場合、 材料としてプロトプラス 卜が用いられ、 エレクト口ポーレ一シヨン法、 ポリエチレングリコール法などの 物理 ·化学的方法によって DNAの導入が行われるのに対して、 植物組織へ DN Aを導入する場合、 材料としては葉、 茎、 根、 塊茎、 カルス、 花粉、 種子胚、 苗 条原基など、 好ましくは葉、 茎、 カルスが用いられ、 ウィルスもしくはァグロバ クテリウムを用いた生物学的方法、 またはパーティクルガン法などの物理 ·化学 的方法によって DNAの導入が行われる。 ァグロパクテリゥムを介する方法とし ては、 例えば、 Nagelらの方法 (Microbiol. Lett. ,67, 325 (1990)) が用いられ得 る。 この方法は、 まず、 植物発現べクタ一で (例えば、 エレクトロボレ一シヨン によって) ァグロパクテリゥムを形質転換し、 次いで、 形質転換されたァグロバ クテリゥムをリーフディスク法などの周知の方法により植物組織に導入する方法 である。 これらの方法は、 当該分野において周知であり、 形質転換する植物に適 した方法が、 当業者により適宜選択され得る。 ,
植物発現べクタ一を導入された細胞は、 例えば、 カナマイシン耐性などの薬剤 耐性を基準として選択される。 選択された細胞は、 常法により植物体に再生され 得る。
本発明のポリヌクレオチドが導入された植物細胞から植物を再生させるには、 このような植物細胞を、 再分化培地、 ホルモンフリーの MS培地などに培養すれ ばよい。 発根した幼植物体は、 土壌に移植して栽培することにより植物体とする ことができる。 再生 (再分化) の方法は植物細胞の種類により異なる。 様々な文 献にイネ (Fuj imura, 1995, Plant Tissue CultureLett.2, 74) 、 トウモロコシ (S hillito, 1989,Bio/Technol.7, 581, Gorden-Kamm, 1990, Plant Cell 2, 603) 、 ジャ
ガイモ (Visser, 1989, Theor.Appl. Genet.78, 594) 、 タバコ (Nagata, 1971, Plant a 99,12) など各種の植物に対しての再分化の方法が記載されている。
再生した植物体においては、 当業者に周知の手法を用いて、 導入された本発明 の遺伝子の発現を確認し得る。 この確認は、 例えば、 ノーザンプロット解析を用 いて行い得る。 具体的には、 植物の葉から全 RNAを抽出し、 変性ァガロースで の電気泳動の後、 適切なメンブランにブロットする。 このプロットに、 導入遺伝 子の一部分と相補的な標識した RN Aプロ一ブをハイブリダィズさせることによ り、 本発明の遺伝子の mRN Aを検出し得る。
本発明のポリヌクレオチドを用いて形質転換され得る植物は、 遺伝子導入の可 能ないずれの植物をも包含する。
大腸菌を宿主細胞として使用する場合、 t r pプロモーター (P t r p) 、 1 a cプロモーター (P 1 a c) 、 PLプロモ一夕一、 PRプロモー夕一、 PSE プロモ一夕一等の、 大腸菌およびファージ等に由来するプロモーター、 SPOl プロモ一夕一、 SPO 2プロモーター、 p e n Pプロモーター等を挙げることが できる。 また P t r pを 2つ直列させたプロモーター (P t r p x2) 、 t a cプロモーター、 l a cT7プロモ一夕一、 l e t Iプロモ一夕一のように人 為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
本明細書において 「複製起点」 とは、 DNA複製が開始する染色体上の特定領 域をいう。 複製起点は、 内因性起点を含むようにそのベクターを構築することに よって提供され得るか、 または宿主細胞の染色体複製機構により提供され得るか のいずれかであり得る。 そのべクタ一が、 宿主細胞染色体中に組み込まれる場合、 後者が十分であり得る。 あるいは、 ウィルス複製起点を含むベクターを使用する よりも、 当業者は、 選択マーカーと本発明の DN Aとを同時形質転換する方法に よって、 哺乳動物細胞を形質転換し得る。 適切な選択マーカーの例は、 ジヒドロ 葉酸還元酵素 (DHFR) またはチミジンキナーゼである (米国特許第 4, 39 9, 216号を参照) 。
本明細書において 「ェンハンサ一」 とは、 目的遺伝子の発現効率を高めるため に用いられる配列をいう。 そのようなェンハンサ一は当該分野において周知であ る。 例えば、 ェンハンサ一として、 C aMV 35 Sプロモ一夕一内の上流側の配 列を含むェンハンサー領域が用いられるが、 これらに限定されない。 ェンハンサ 一は複数個用いられ得るが 1個用いられてもよいし、 用いなくともよい。
本発明において 「ェンハンサー」 は、 目的遺伝子の発現効率を高めるために用 いられ得る。 ェンハンサ一としては、 C aMV35 Sプロモーター内の上流側の 配列を含むェンハンサ一領域が好適である。 ェンハンサ一は、 1つの植物発現べ クタ一あたり複数個用いられ得る。
本明細書において 「作動可能に連結された (る) 」 とは、 所望の配列の発現
(作動) がある転写翻訳調節配列 (例えば、 プロモータ一、 ェン八ンサ一など) または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。 プロモーターが遺伝子に 作動可能に連結されるためには、 通常、 その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが 配置されるが、 必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において、 核酸分子を細胞に導入する技術は、 どのような技術でもよ く、 例えば、 形質転換、 形質導入、 トランスフエクシヨンなどが挙げられる。 そ のような核酸分子の導入技術は、 当該分野において周知であり、 かつ、 慣用され るものであり、 例えば、 Ausubel F. A.ら編(1988)、 Current Protocols in Molecu lar Biology, Wi ley, New York, NY; Sambrook Jら (1987)Molecular Cloning:A Lab oratory Manual, 2nd Ed.およびその第三版, Cold Spring Harbor Laboratory Pre ss, Cold Spring Harbor, Y, 別冊実験医学 「遺伝子導入 &発現解析実験法」 羊 土社、 1997などに記載される。 遺伝子の導入は、 ノーザンプロット、 ウェス 夕ンブロッ卜分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を 用いて確認することができる。
また、 ベクターの導入方法としては、 細胞に DNAを導入する上述のような方 法であればいずれも用いることができ、 例えば、 トランスフエクシヨン、 形質導
入、 形質転換など (例えば、 リン酸カルシウム法、 リボソーム法、 DEAEデキ ストラン法、 エレクト口ポレーシヨン法、 パーティクルガン (遺伝子銃) を用い る方法など) が挙げられる。
本明細書において 「形質転換体」 とは、 形質転換によって作製された細胞など の生命体の全部または一部をいう。 形質転換体としては、 原核細胞、 酵母、 動物 細胞、 植物細胞、 昆虫細胞などが例示される。 形質転換体は、 その対象に依存し て、 形質転換細胞、 形質転換組織、 形質転換宿主などともいわれる。 本発明にお いて用いられる細胞は、 形質転換体であってもよい。
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、 原核 生物細胞としては、 Escherichia属、 Serratia属、 Bacillus属、 Brevi bacterium 偶、 Corynebacterium属、 Microbacterium厲、 Pseudomonas属なこに属 る原核生 物細胞、 例えば、 Escherichia coli XLl-Blue, Escherichia coli XL2- Blue、 Escherichia coli DH1が例示される。
本明細書において使用される場合、 組換えベクターの導入方法としては、 DN Aを導入する方法であればいずれも用いることができ、 例えば、 塩化カルシウム 法、 エレクトロボレ一、:/ヨン法 [Methods.Enzymol., 194, 182 (1990)] 、 リポフエ クシヨン法、 スフエロプラスト法 [Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 1929 (1978)] 、 酢酸リチウム法などが挙げられる。
本明細書において遺伝子発現 (たとえば、 mRNA発現、 ポリペプチド発現) の 「検出」 または 「定量」 は、 例えば、 mRNAの測定および免疫学的測定方法 を含む適切な方法を用いて達成され得る。 分子生物学的測定方法としては、 例え ば、 ノ一ザンブロット法、 ドットプロット法または P C R法などが例示される。 免疫学的測定方法としては、 例えば、 方法としては、 マイクロ夕イタ一プレート を用いる EL I SA法、 R I A法、 蛍光抗体法、 ウエスタンプロット法、 免疫組 織染色法などが例示される。 また、 定量方法としては、 EL I SA法または R I A法などが例示される。 アレイ (例えば、 DNAアレイ、 プロテインアレイ) を
用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。 DN Aアレイについては、 (秀潤 社編、 細胞工学別冊 「DNAマイクロアレイと最新 PCR法」 ) に広く概説され ている。 プロテインアレイについては、 Nat Genet.2002 Dec ;32 Suppl :526- 32に 詳述されている。 遺伝子発現の分析法としては、 上述に加えて、 RT— PCR、 RACE法、 SS CP法、 免疫沈降法、 t wo— hy b r i dシステム、 インビ トロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。 そのようなさらなる分析方 法は、 例えば、 ゲノム解析実験法 ·中村祐輔ラボ ·マニュアル、 編集 ·中村祐輔 羊土社 (2002) などに記載されており、 本明細書においてそれらの記載は すべて参考として援用される。
(抵抗性の評価)
本発明の方法によって作出された遺伝子組換え植物が、 病原体に対する抵抗性 を有しているか否かは、 例えは、 Methods for Isolat ion, Cul t ivat ion, Inoculat ion of Plant Pathogens, JapanPlant Protec t ion Associat ionに記載されてレ る 試験方法により容易に確認し得る。 例えば、 イネ萎縮病の場合は、 特定のイネ品 種にツマグロョコバイなの RDVを媒介する昆虫を温室中で放飼してウィルス感 染させた場合の病斑形成やイネの背丈を、 原品種または野生型と組換え体とを比 較することによって検定することが可能であるが、 これに限定されることはない。 本明細書において 「発現量」 とは、 対象となる細胞などにおいて、 ポリべプチ ドまたは mRNAが発現される量をいう。 そのような発現量としては、 本発明の 抗体を用いて EL I S A法、 R IA法、 蛍光抗体法、 ウエスタンプロット法、 免 疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される 本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、 またはノーザンブロット法、 ドットブロッ卜法、 PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方 法により評価される本発明のポリペプチドの m R N Aレベルでの発現量が挙げら れる。 「発現量の変化」 とは、 上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方 法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質
レベルまたは mR NAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。 本明細書において 「上流」 という用語は、 特定の基準点からポリヌクレオチド の 5 ' 末端に向かう位置を示す。
本明細書において 「下流」 という用語は、 特定の基準点からポリヌクレオチド の 3 ' 末端に向かう位置を示す。
本明細書において 「相補的」 または 「相補体」 という用語は、 本明細書では、 相補領域全体がそのまま別の特定のポリヌクレオチドと W a t s o n & C r i c k塩基対を形成することのできるポリヌクレオチドの配列を示す。 本発明の 目的で、 第 1のポリヌクレオチドの各塩基がその相補塩基と対になっている場合 に、 この第 1のポリヌクレオチドは第 2のポリヌクレオチドと相補であるとみな す。 相補塩基は一般に、 Aと T (あるいは Aと U) 、 または Cと Gである。 本願 明細書では、 「相補」 という語を 「相補ポリヌクレオチド」 、 「相補核酸」 およ び 「相補ヌクレオチド配列」 の同義語として使用する。 これらの用語は、 その配 列のみに基づいてポリヌクレオチドの対に適用されるものであり、 2つのポリヌ クレオチドが事実上結合状態にある特定のセッ卜に適用されるものではない。
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、 この実施形態は本発明の例示で あり、 本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解さ れるべきである。 当業者はまた、 以下のような好ましい実施例を参考にして、 本 発明の範囲内にある改変、 変更などを容易に行うことができることが理解される べきである。
本発明者らは、 R D V分節ゲノム S 1〜S 1 2によってコードされるタンパク 質に対する抗体を作製し、 これらタンパク質の細胞内での挙動を観察した。 R D Vに感染した昆虫細胞中での 1 2種のタンパク質の挙動を追跡したところ、 3種 の非構造タンパク質 (P n s 6、 P n s 1 1、 および P n s 1 2 ) によってバイ 口プラズマというウィルス合成工場がまず造られることが見出された。 次に、 バ
ィ口プラズマで核酸が合成されるとともに、 内殻粒子を構成する 4種のタンパク 質 (P l、 P3、 ? 5ぉょび? 7) が集まり、 内殻粒子が作られる。 その後、 バ イロプラズマの周縁に移動した内殻粒子に 3種の外殻タンパク質 (P 2、 P 8、 および P 9) が結合して、 ウィルス粒子が作られる。 残りの非構造タンパク質、 P4および P 10は、 それぞれ、 ウィルスの細胞内輸送および昆虫細胞間での輸 送に関与する管状構造物を構築することも見出された。
これらタンパク質の細胞内での挙動を考慮に入れて、 標的遺伝子を選択して発 現抑制剤を作製し、 RDV抵抗性イネの作出を試みた。
一局面において、 本発明は、 イネ萎縮ウィルスゲノムに存在する少なくとも 1 つの遺伝子の発現抑制剤を含む、 イネ萎縮病に抵抗性を付与するための組成物を 提供する。
本発明の一実施形態において、 上記少なくとも 1つの遺伝子は、 S4 (配列番 号 7) 、 S 6 (配列番号 1 1) 、 S 1 1 (配列番号 21) および S 12 (配列番 号 23) からなる群より選択され得る。 最も好ましい実施形態において、 上記少 なくとも 1つの遺伝子は S 12であり得るが、 S 1 (配列番号 1) 、 S 2 (配列 番号 3) 、 S 3 (配列番号 5) 、 S4 (配列番号 7) 、 S 5 (配列番号 9 ) 、 S 7 (配列番号 13) 、 S 9 (配列番号 17) 、 S 10 (配列番号 19) もまた同 様に使用することができる。
一実施形態において、 本発明の発現抑制剤は、 配列番号 33 (Trigger 6) 、 配 列番号 37 (Trigger 11) 、 配列番号 25 (Trigger 12N) および配列番号 26 (Trigger 12C) の核酸配列と相補的なアンチセンス配列を用いて作製すること ができる。
一実施形態において、 好ましいアンチセンス配列は、 配列番号 25 (Trigger 12N) によって示される核酸配列に相補的な配列、 配列番号 26 (Trigger 12C) によって示される核酸配列に相補的な配列、 配列番号 27 (Trigger 4N) によつ て示される核酸配列に相補的な配列、 配列番号 28 (Trigger 40 によって示さ
れる核酸配列に相補的な配列であり得る。
一実施形態において、 トリミング配列は、 5〜32個またはそれ以上のヌクレ ォチド配列を有し得る。 好ましいトリミング配列としては、 GUS配列、 ピルビ ン酸オルトリン酸シ千ナ一ゼ、 pyruvate orthophosphate dikinase)イントロン、 dof affecting germination(DAGl)イントロンなどが挙げられるが、 これらに限 定されない。
一実施形態において、 本発明の発現抑制剤は、 配列番号 29 (Trigger 1) 、 配 列番号 30 (Trigger 2) 、 配列番号 31 (Trigger 3) 、 配列番号 32 (Trigger 5) 、 配列番号 34 (Trigger 7) 、 配列番号 35 (Trigger 9) 、 または配列番号 36 (Trigger 10) の核酸配列と相補的なアンチセンス配列を用いて作製するこ とができる。
本発明のプロモーターは、 誘導性であっても、 構成的であっても、 部位特異的 であっても、 時期特異的であってもよいが、 好ましいプロモーターとしては、 構 成的プロモーターまたは誘導性プロモー夕一が挙げられる。 誘導性プロモー夕一 としては、 ストレス誘導性プロモーター (例えば、 感染誘導性プロモーター) が 好ましい。 恒常性プロモーターとしては、 ュビキチンプロモーター、 ァクチンプ 口モーターが挙げられるが、 これらに限定されない。 感染誘導性プロモーターと しては、 WRKY転写因子プロモーター、 PR 1プロモー夕一、 PBZ 1遺伝子 プロモー夕一、 ペルォキシダーゼプロモーター、 マイトジェン活性化プロモー夕 —などが挙げられるが、 これらには限定されない。
本発明は、 一局面において、 イネ萎縮ウィルスゲノムに存在する少なくとも 1 つの遺伝子をコ一ドする核酸配列と相補的なアンチセンス配列、 トリミング配列、 および該アンチセンス配列と相補的なセンス配列を含む、 発現カセットを提供す る。
好ましい実施形態において、 上記少なくとも 1つの遺伝子は、 S 4 (配列番号
7) 、 S 6 (配列番号 1 1) 、 S 1 1 (配列番号 21) および S 12 (配列番号
23) からなる群より選択され得る。 特に S 12 (配列番号 23) が好ましい。 しかし、 S 1 (配列番号 1) 、 S 2 (配列番号 3) 、 S 3 (配列番号 5) 、 S 5 (配列番号 9) 、 S 7 (配列番号 13) 、 S 9 (配列番号 17) 、 および S 10 (配列番号 19) を同様に使用することもできる。
別の好ましい実施形態において、 使用されるアンチセンス配列は、 例えば、 In vitrogenのウェブサイトにおいて禾 ij用可能な rnai— designer (http://www. invitr ogen.co.jp/rnai/rnai_designer.shtml/) 、 Pr omegaのウェブサイ卜にぉレて禾 ij
(http://www. promega. com. siRNADesigner/) 、 Ambionの ウェブサイ卜の siRNA Target Finder, Dharmaconの siDESIGN Center, GenScript の siRNA Target Finder, および Gene specific siRNA selector (これらの方法 に限定されない) を使用することによって容易に設計可能である。
本発明は、 一局面において、 上記発現カセットを含むベクタ一を提供する。 本 発明において使用されるベクターは、 所望の目的 (発現、 送達、 挿入、 導入な ど) を達成する限り、 どのようなベクターを用いても良いことが理解される。 本発明のベクターは、 目的の細胞に導入された否かを確認するために、 薬剤耐 性遺伝子を含み得る。 薬剤耐性遺伝子としては、 カナマイシン耐性を付与するた めのネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼ I I (NPT I I) 遺伝子、 お よびハイグロマイシン而 ί性を付与するためのハイグロマイシンフォスフォトラン スフエラーゼ遺伝子などが好適に用いられ得るが、 これらに限定されない。
本発明は、 一局面において、 上記ベクターを含む植物細胞、 植物体、 種子を提 供する。
このような植物としては、 どのようなものでも良いが、 好ましくは、 イネ萎縮 ウィルスなどのレオウィルスに罹患する植物であり、 さらに好ましくは、 イネ科 植物 (コムギ、 ォォムギ、 トウモロコシ、 ソルガムなど) 、 さらにより好ましく はイネ属植物、 さらにより好ましくは、 イネ (例えば、 ジャポニカ種またはイン ディ力種) であり得る。
一実施形態において、 本発明の植物体は、 イネ萎縮ウィルスに対する完全抵抗 性を示す。
(抵抗性 ·耐性植物の作出)
本発明は、 一局面において、 イネ萎縮病に対する耐性が付与された、 イネ萎縮 ウィルスに感染し得るイネ科植物を生産する方法;イネ萎縮病に対する耐性が付 与された、 イネ萎縮ウィルスに感染し得る植物の種子を生産する方法;およびィ ネ萎縮病に対する耐性が付与された、 イネ萎縮ウィルスに感染し得る植物を再生 産する方法を提供する。
上記に示される方法は、 本発明の発現抑制剤を、 イネ科植物の細胞に導入する 工程を包含する。 一般的に、 本発明のベクターは、 種々の慣用的技術を用いて所 望の植物宿主 (例えば、 イネ科植物の細胞) のゲノムに導入することができる。 好ましい導入法としては、 ァグロパクテリゥム法、 ポリエチレングリコール法、 エレクト口ポレーシヨン法、 パーティクルガン法が挙げられるが、 これらに限定 されない。 上記方法はさらに、 イネ萎縮病ウィルスに対して抵抗性を有する植物 を選択する工程を包含する。. このような選択は、 抵抗性を有するトランスジェニ ック植物を選択することができる限り、 どのような方法を用いてもよく、 細胞レ ベルの選択でもよいし、 植物体レベルの選択でもよい。
本発明のベクターが導入されたか否かを確認するために、 薬剤耐性遺伝子 (例 えば、 ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子) を含むベクター の場合、 上記の導入工程後に得られた細胞は、 その薬剤耐性遺伝子が細胞中で発 現したか否かを検出するための薬剤 (例えば、 ハイグロマイシン) を含む選択培 地中で増殖させることによって選択される。 当然のことながら、 このような選択 培地中に含まれる薬剤は、 上記ベクター中に含まれる薬剤耐性遺伝子に依存して 変更され得る。
上記のようにして選択された細胞を、 当該分野で一般的に使用される再生培地 中で培養することにより、 例えば、 根およびシュートが確認できるまで再分化さ
せる。 このような再生培地としては、 以下の実施例に記載されるような再分化培 地 (M S R E) などのような (当該分野で周知の) 培地が挙げられるが、 これら に限定されない。
上記のようにして再分化させることによって得られた根およびシュートは、 鉢 上げされ、 試験に適した時期 (例えば、 9葉期) まで、 または成熟期まで生長さ せられることによって、 トランスジエニック植物 (T O ) が作出される。
さらに、 このようにして得られたトランスジエニック植物中に本発明のベクタ 一が含まれているか否かについては、 上記植物から細胞を採取して全細胞 D N A を得、 ゲノムに組み込まれた薬剤耐性遺伝子をサザンブロットなどで、 得られた トランスジエニック植物中に実際に本発明のベクタ一が含まれているか否かを確 認できる。 また、 低分子 R N Aを得、 Tr igger領域をプロ一ブにノザンブロット を行うことで、 トランスジエニック植物中で実際に R N A iを誘起できているこ とも確認できる。 さらには、 得られたトランスジエニック植物に、 実際に R D V を感染させて、 感染トランスジエニック植物とコントロール野生型植物とを比較 することによって、 本発明のベクターが含まれているか否かを検出することもで さる。
さらに、 本発明のトランスジエニック植物は、 T O植物から得られた種子、 さ らに後代の T 1植物、 T 2植物、 T 3植物などから得ることもできる。
(使用)
別の局面において、 本発明は、 本発明の発現抑制剤の、 イネ萎縮病ウィルスに 対する抵抗性、 イネ萎縮病に対する耐性を付与するための、 またはその耐性もし くは抵抗性を付与する農薬を製造するための使用を提供する。 ここで使用される 核酸分子および因子は、 本明細書において上記される任意の核酸分子であり得る ことが理解される。
本明細書において引用された、 科学文献、 特許、 特許出願などの参考文献は、 その全体が、 各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考とし
て援用される。
以上、 本発明を、 理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。 以下に、 実施例に基づいて本発明を説明するが、 上述の説明および以下の実施例 は、 例示の目的のみに提供され、 本発明を限定する目的で提供したのではない。 従って、 本発明の範囲は、 本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例に も限定されず、 特許請求の範囲によってのみ限定される。 実施例
(材料および方法)
以下に示す実施例において、 特段の記載がない場合、 一般的に、 以下に記載さ れる材料および方法を用いて実験を行った。
1. イネの生育
実験系統として、 イネ (Oryza sativa cv. Nipponbare) を使用した。 イネ植 物を温室 (20t:〜 32 ) において栽培し、 9葉期まで生育させてから、 以下 の実験に使用した。 イネへの RDV接種試験においては、 各形質転換体系統およ びコントロールの野生型ィネのいずれも、 2〜 3葉期まで生育させてから使用し た。 なぜなら、 RDVの病徴は新しく展開した葉において観察される、 すなわち、 イネの生育期において、 2〜 3葉期が RDVに対する感受性が最も高いからであ る。
2. NC— 24細胞の樹立およびウィルス
NC—24細胞 (Nephotettix cincticeps (以下、 NCという) 細胞株を NC の卵から切り出した胚性断片より樹立し、 以下の実験において使用した。 簡潔に は、 以下に示すように作製した (詳細については、 Kimura, I.&Omura.T. (1988). L eafhopper cell cultures as a means for phytoreovirus research. Adv Dis V
ector Res 5, 111- 135;および Leafhopper cell culture for virus research. I n Arthropod Cell Culture Systems, pp. 91 - 107. Edited by K. Maramorosch & A. H. Mcintosh. Philadelphia, PA: CRC Pressを参照のことのこと) 。 胚運 動期の Nephotettix cinct icepsの卵から胚断片を切り出し、 組織培養物の外植片 として使用した。 卵から取り出した若い胚の各々を、 くぼみ付きスライドガラス (hollow slide) 上でタイロード溶液中でいくつかの断片に切断した。 その断片 を、 夕イロ一ド溶液 (pH7.5) 中の 25 %トリプシンを用いて、 30°Cにお いて 10〜20分間処理した。 その後、 その断片を微細二一ドルの周りに巻き付 けることによって増殖培地に移した。 密閉可能なガラスディッシュの中に囲った 小さなプラスチックディッシュの中心に、 少量の培地 (0.3〜0.5ml) 中に約 30 個の断片を一緒に置いた。 さらなる培地を、 そのプラスチックディッシュの縁内 の底の四方に配置して、 適切な蒸気圧を維持し、 上記断片を含む別の培地の乾燥 を避けた。 この培養物を 25 でインキュベートした。 L i uおよび B l a c k の培地から誘導した NC細胞用増殖培地 (以下の試薬および培地の節を参照のこ と) を、 NC細胞株を培養するために使用した。 初代培養物において、 胚断片の 大部分の外植片は、 数時間後、 培養容器の底表面に接着し、 インキュベートして 48時間後以内に、 その外植組織の周りに細胞増殖が発生し始めた。 その細胞は 数を増やしはじめ、 単層の細胞シートを形成し、 徐々に、 元々の組織外植片を包 み込むほどに拡がった。 その初代培養物は、 1週間に 1回培地を交換することに よって数ケ月間維持することができた。 細胞がディッシュ中でほぼコンフルェン 卜になるまで増殖したとき、 それら細胞を新たなディッシュに移した。 これらの 継代培養細胞を、 さらに継代培養するためにプラスチック培養フラスコに入れた。 細胞単層は、 2タイプの上皮細胞から構成されていた。 主要なものは、 紡錘体状 の細胞であり、 少数のものは、 丸い形の細胞であった。 NC細胞において、 前者 は、 7〜: 10 im幅で 15〜60 m長であり、 後者は、 直径 6〜20^mであ る。 NC細胞の倍加時間は、 約 96時間であった。 最終的に 6系統の NC細胞株
を樹立し、 4〜6日間間隔で約 90〜約 165回継代できた。 NC細胞株を凍結せず に維持するために、 細胞を 15 または 2 Ot:でインキュベートした。 培養培地 を 1ヶ月に 1回交換した。 また、 これらの温度では、 培養細胞はその増殖をほぼ 停止したか、 またはあるとしてもゆっくりと増殖した。 細胞を 15 :で 14ヶ月 維持し、 20°Cで 6ヶ月間維持した。 この手順が、 細胞培養物の短期間保存のた めに簡便な方法であることが分かった。 NC細胞株を凍結し、 Agallia constric ta (以下、 ACという) 細胞貯蔵に使用した類似の方法 (Phytopathology 59, 1 032 (1969)) において、 液体窒素中で長期間ポリプロピレンバイアル中に保存す ることができた。 対数増殖期の媒介細胞単層を、 沈降によって回収し、 そのペレ ットを、 5% ジメチルスルホキシドを含む培地中に懸濁した。 その懸濁した細 胞を含むバイアルを、 _ 80°Cでー晚インキュベートし、 — 196T:の液体窒素 中に入れた。 凍結した細胞を 37 のウォー夕一バスに入れて迅速に融解するこ とによって回収し、 1分間あたり 1mlの培地を添加することによって 10m l まで希釈した。 低速遠心分離によって沈降させ、 4m 1の新しい培地中に懸濁し た。 これらを 25 cm2の NUNCフラスコ中に分散させた。 これらの細胞のう ちの約 20%を、 この手順によって回収した。 NC細胞株は、 良好に生存性を維 持したものを使用するために、 4年間隔で細胞を起こして (recover) 、 凍結し たものを使用する。
RDV接種においては、 0.01M MgCl2含有 0.1M ヒスチジン溶液 (His- Mg) (p H約 6. 0) が媒介細胞単層での感染性の保存にとって優れた緩衝液であること が分かった。
^^(:— 24細胞を、 Kimuraおよび Omura (Adv Dis Vector Res 5, 111-135 (198 8)) に記載されるように調製した増殖培地中で、 25 :において単層培養物とし て維持した。
以降の全ての実験において RDVの〇株を使用したが、 いずれの RDV亜種系 統、 あるいはいずれの変種系統を使用しても同様の結果が得られるであろうこと
は、 当業者であれば容易に明らかである。 RDVの O株は、 Zhongら (Arch Viro 1 148, 2275-2280(2003)) により記載されるように、 CC 14を用いずに RDV 感染イネ植物から精製した。 RDV粒子を含むスクロース勾配画分をプールし、 - 70°Cで保存した。
3. S 1〜S 12によってコードされるタンパク質に対する抗体の作製 ゥサギポリクローナル抗血清を、 RDVの各分節ゲノムセグメント S 1〜S 1 2によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質に対する抗体を、 鈴木 ら (Virology 202, 4卜 48 (1994)および鈴木ら Arch Virol 144, 1371-1380 (199 9)) ; Zhongら (Arch Virol 148,2275-2280(2003)) に記載されるように調 製した。 S 1〜S 12によってコードされるタンパク質に特異的な I gG抗体を、 得られた特異的ポリクロ一ナル抗血清からプロテイン A—セファロ一スを用いて 単離した。 これらの単離された I gG抗体に、 フルォレセイン— 5—イソチオシ ァネー卜またはローダミンを、 公知の方法に従って直接結合させた (Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA) 。
4. S 1〜S 12によってコードされるタンパク質のバキュロウィルスによ る発現
バキュロウィルス系を、 Miyazakiら (J Mol Biol 345, 229- 237 (2005)) によ り記載されるように、 RDVタンパク質の発現のために使用した。 S 1〜S 12 によってコードされる cDNAのコード領域を、 pGADT7ベクタ一 (Clonte ch) にクローニングし、 完全に配列決定して、 増幅の間にヌクレオチドの誤った 取り込みが何もないことを確認した。 適切な制限酵素で消化した後、 その cDN Aを、 p F a s t B a cドナープラスミド (Invitrogen) にライゲートした。 次 いで、 組換え pFa s t Bacを、 バクミドへの置き換えのために、 Escherichi a coli DHlOBac細胞 (Invitrogen) に導入した。 組換えバクミドを単離し、 これ
を用いて Spodoptera frugiperda (S f 9) 細胞を Cel IFECTIN (Invitrogen) の 存在下で製造業者の説明書に従ってトランスフエクトした。 次いで、 トランスフ ェクトしてから 72時間後、 S f 9細胞を収集し、 タンパク質の発現を、 S l〜 S 12によってコードされる各タンパク質に特異的な抗体で免疫ブロッテイング することにより調べた。
細胞学的な観察に関しては、 トランスフエクシヨンを行う前日に、 1. 5 X 1 04/cm2の密度でカバーガラス (15mm直径) 上に、 S f 9細胞を播種した。 培養培地を除去し、 細胞を組換えバキュロウィルスに感染させた。 細胞を、 2 7 で12〜72時間にわたってインキュベートしてから、 免疫蛍光顕微鏡のた めに処理した。
5. 各組換え RDVタンパク質の発現および精製
各 RDVタンパク質をコードする c DNAのコ一ド領域を、 EcoRI- Xholフラグ メントとして、 それぞれ、 適切なベクタ一 (例えば、 pET-30a (Novagen) 、 pGAD T7 (Clontech) が挙げられる) の EcoRI-XhoI部位にクロ一ニングし、 適切なフラ グメントがクローニングされたことを DN A配列決定により確認した。 次いで、 これらのフラグメントを、 細菌発現べクタ一 pMAL-c2X (New England Biolabs) の EcoRI- Sal I部位にサブクロ一エングし、 E.coli BL21 (DE3) 細胞 (Novagen) において発現させた。 各タンパク質を、 それぞれ、 マルト一ス結合タンパク質 (MBP-Pn s 12) との融合タンパク質として、 New England Biolabsの説 明書に従って精製した。
6. 免疫染色
二重染色実験に関しては、 I gGを、 プロテイン A-セファロースァフィニテ ィーカラムを用いて、 特異的ポリクロ一ナル抗血清から単離した。 溶出した I g Gを、 PBSに対して完全に透析した。 製造業者の説明書に従って (Invitroge
n) 、 これら I gGに、 フルォレセイン (F I TC) またはローダミンを直接結 合させた。 ウィルス接種後の種々の時点で、 カバ一ガラス上で増殖させたョコバ ィの媒介単層細胞 (VCM) 、 すなわち NC— 24の単層細胞または S f 9細胞 を、 PBSで洗浄し、 2% パラホルムアルデヒド中で、 室温において 30分間 固定した。 この細胞を PB Sで洗浄し、 1% 83八と0. 1% Triton X - 10 0とを含有する PBS中に浸透させた。 固定後、 これら細胞を、 PBSで洗浄し た。 細胞を、 37°Cで 1. 0〜1. 5時間にわたって、 直接結合した I gGの 1 00倍希釈溶液とともにインキュベートした。 カバーガラスを脱イオン水で洗浄 し、 ProLong Ant i fade (Invitrogen) でスライドガラス上にマウントした。 細胞 を、 Zeiss 510共焦点レーザー走査顕微鏡 (L SM) の下で視覚化した。 偽感染 細胞を有するカバーガラスを、 各実験に含め、 感染細胞と同様に処理して、 コン 卜ロールとして供した。
データ獲得は、 663油浸レンズを用いて行った。 緑色蛍光色素 (F I TC) および赤色蛍光色素 (ローダミン) の検出を、 狭帯域フィル夕セットおよび 2本 のレーザ一線 (アルゴン、 488 nm;およびヘリウム Zネオン、 543 nm) を用いることによって行った。 データを、 顕微鏡に備え付けのマルチトラツキン グ装置を使用することによって収集して、 クロストークを回避した。 細胞深度計 算およびスケールバーを含め、 全ての測定値を、 Zeiss LSM 510ソフトウェアを 使用することによって計算した。
7. 免疫電子顕微鏡
カバーガラス上の細胞を、 2% パラホルムアルデヒドと 2% ダルタルアルデ ヒドとを含有する 0. 1M リン酸緩衝液 (pH7. 2) 中で、 室温において 2 時間固定した。 固定したサンプルを、 一連の勾配を付けた— 20 のエタノール を通して脱水し、 LRゴールド樹脂 (Bioscience)中に包埋した。 重合を、 一 20で で 72時間行った。 サンプルを、 ダイアモンドナイフを備えたウルトラミクロ卜
ーム (LKB Nov a) で切片にし、 その後、 L iら (Adv Dis Vector Res 5, 111- 135 (2004)) によって記載されるように、 ゥサギ抗血清、 15nmの金粒子 を結合させた免疫金標識抗ゥサギ I gGャギ抗体 (GAR 15; British Bifocals I nternational) とともにインキュベートした。 切片を、 2% 酢酸ゥラニルおよ び Reynolds溶液 (硝酸鉛 1. 33 g、 クェン酸ナトリウム 1. 76 g、 1 N水酸 化ナトリウム溶液 8mし トータル 5 Om 1に蒸留水でメスアップ) で各々 5分 間染色し、 電子顕微鏡 (H-7000; Hitachi) 下で観察した。
8. インビポで新たに合成された RNAの免疫蛍光による検出
RDV接種の 10時間後に、 インビボで RNAを標識するために、 カバーガラ ス上で増殖させた VCMを、 His-Mgで洗浄し、 10 gZm 1のァクチノマイシ ン D (Sigma-Aldrich) で 30分間処理した。 次いで、 VCMを、 Silvestriら (J Virol 78,7763-7774(2004)) に記載されるように、 10mMのプロモウリジ ン 5' —三リン酸 (BrUTP; Sigma-Aldrich) および 6% Cel 1 feet inトランス フエクシヨン試薬 (Invitrogen) の存在下で 30分間さらにインキュベートした。 ,細胞を、 接種してから 1 1時間後に固定し、 免疫蛍光分析のために、 マウス由来 のモノクローナル抗ブロモデォキシゥリジン (BrdU) (Sigma-Aldrich) (1 : 50) 、 次に、 Alexa Fluor 594ロバ抗マウス I gG (Invitrogen) または各 R DVタンパク質に特異的な、 F I TCを結合させた I gG (1 : 50) で処理し た。
9. フィルター結合アツセィ
フィルター結合アツセィを、 Ue d aら (J Gen Virol 78,3135- 3140(199 7)) に記載されるものと類似する方法によって行った。 ヒスチジンタグ化 Pn s 12を発現する E. coli細胞の抽出物を、 S D S— P AG Eゲル(12% ポリアクリ ルアミド)での電気泳動により分画し、 タンパク質バンドを、 I國 obilon- P (Mill
ipore) P VD F膜フィル夕一に転写した。 フィル夕を PBS (137mM NaCK 8.1 mM Na2HP04, 2.7mM KCK 1.5mM KH2P04) 中の 5%スキムミルク中、 穏やかに攪拌 しながら室温において 1時間ブロックした後、 0. 05% Tween 20を含む PB S中で 3回 (各 10分間) 洗浄し、 そのフィルタを、 MBPまたは MBP- Pn s 12のいずれか 1. 25 g/m 1とともに 4 で一晩インキュベートした。 そのフィル夕を、 上記のように洗浄し、 次いで、 ゥサギにおいて惹起した MB P 特異的抗血清 (?83で1 : 4000希釈; New England Biolabs) とともに室 温において 1時間インキュベートした。 その後、 そのフィル夕を、 ゥサギ I gG (H + L) に対してャギにおいて惹起したアルカリホスファターゼ結合ゥサギ抗 体 (1 : 10000希釈; Biosource International) とともに室温において 1 時間インキュベートした。 洗浄後、 そのプロットを、 室温において AP緩衝液 [lOOmM Tris/HCl (pH 9.5)、 lOOmM NaCK 5mM MgCl2] 中で、 ニトロブル一テト ラゾリウムおよび 5 _ブロモ _ 4—クロロー 3—インドリルホスフェートで発色 させた。 その反応を、 バックグラウンドの色が見え始めたときに蒸留水でフィル 夕を洗浄することによって停止させた。
• 1 0. 培地および試薬
(0) N 6—ビタミン (1. 2D
グリシン 2 g ニコチン酸 0. 5 g ピリドキシン HC 1 0. 5 g チアミン HC 1 1
ミオイノシ] ^一ル 100 g 蒸留水で 1.2 Lにする。
2m lずつ分注し、 使用時まで一 20 で保存する
(1) MS—ビタミン 2 L
ニコチン酸 0. 5 g ピリドキシン HC 1 0. 5 g チアミン HC 1 0. 1 g ミオイノシトール 100 g 蒸留水で 1.2Lにする。
1. 2m lずつ分注し、 使用時まで一 20 で保存する。
(2) カルス誘導培地 (N6D) 1 L
スクロース 30 g カザミノ酸 0. 3 g
Chu(N6) Basal Salt Mixture Powder (Sigma社から購入)
3. 981 g プロリン 2. 9 g
N 6—ビタミン 1. 2m 1
2 4— D (0. 1 M — KOH中 lmg/m l) 2ml
IN KOHで pH5. 8に調節して、 蒸留水で 1 Lにする。 ゲルライ卜 4 gを加えて、 オートクレープにかける (
(3) 共存培養培地 (N6CO) L
スクロース 30 g グルコース 10 g カザミノ酸 0. 3 g
Chu (N6) Basal Salt Mixture Powder (Sigma社から購入)
3. 981 g
N 6—ビタミン 1. 2ml 2, 4-D (0. KOH中 lmgZm 1 ) 2ml
IN K〇Hで pH5. 2に調節し、 蒸留水で 1 Lにする。 ゲルライ卜 4 gを加えてォートクレーブにかける。
温度が 5 未満に下がるまで待ってから、 ァセトシリンゴン (50mgZm 1 ) を 400 1加える。
(4) 選抜培地 (N6 SE) 1 L
スクロース 30 g
カザミノ酸 0. 3 g
Chu(N6) Basal Salt Mixture Powder (Sigma社から購入)
98 1 g プロリン 2. 9 g
N 6—ビタミン 1. 2 m 1
2, — 4— D (0. — 1M— KOH中 lmgZm 1 ) 2 m 1
IN KOHで pH5. 8に調節して、 蒸留水で 1 Lにする ( ゲルライト 4 gを加えて、 オートクレーブにかける。
温度が 50 未満に下がるまで待ってから、 カルペニシリン (250mgZm 1 ) 2m 1およびハイグロマイシン (50mg/m 1 ) 0. 5mlを添加す る。
(5) 再分化培地 (MSRE)
スクロース 30 g
D—ソルビ] ^一ル 30 g カザミノ酸 2 g ムラシゲ ·スクーグ植物培地用混合塩類 (和光純薬社から購入) 4. 4g
MS—ビタミン 1. 2m l 力イネチン (DMSO中 1 OmgZm 1 ) 0. 2ml α—ナフタレン酢酸 (ΝΑΑ)
— (DMSO中 lmgZm 1 ) 0. 2ml
N K〇Hで pH5. 8に調節して、 蒸留水で 1 Lにする ゲルライト 4 gを加えて、 オートクレープにかける。
温度が 50°C未満に下がるまで待ってから、 カルペニシリン (250mgZm 1 ) lm 1およびハイグロマイシン (5 OmgZm 1 ) 0. 5mlを添加す る。
(6) ホルモンフリー (HF) 培地 (1 L)
スクロース 30 g ムラシゲ ·スクーグ植物培地用混合塩類 (和光純薬社から購入) 4. 4g MS—ビタミン 1. 2m 1
N KOHで pH5. 8に調節して、 蒸留水で 1 Lにする。 ゲルライト 4 gを加えて、 ォ一トクレーブにかける。
温度が 50で未満に下がるまで待ってから、
ハイグロマイシン (5 OmgZm 1 ) 0. 5mlを添加する。
(7) YEP培地 (1 L)
パクトペプトン 10 g バクトイ一ス卜エキストラクト 10 g
N a C 1 5 g 蒸留水で 1 Lにし、 オートクレープにかける
(8) AB培地 (1 L)
K2HP04 3 g
NaH2P04 1
NH4C 1 1
Mg S04 · 7H20 0. 3 g
KC 1 0. 15 g
C a C 12 · 2H20 0. 012 g F e S04 · 7H20 0. 0025 g グルコース 5 g
E 15 g 蒸留水で 1 Lにし、 オートクレープにかける。
(9) NC— 24用増殖培地
シュナイダーの D r o s o p h i 1 a培地 (改変)
(Invitrogen社から購入) 500ml
Medium 199 (10X濃度) (Invi trogen社から購入)
(ハンクス塩類およびグルタミン含有、 炭酸水素ナトリウム非含有) 50ml グルタミン含有 Medium CMRL 1066 (Invi trogen社から購入)
25ml 非働化ゥシ胎仔血清 150m l
0. 05M ヒスチジン溶液 500ml
ペニシリン Gカリウム 120 000単位 硫酸ストレブトマイシ 12 Gmg 硫酸ネオマイシン ( 10, 000 μ gZm 1 ) 6ml フンギゾン (250 g/m l) 4m 1 合計 約
培地の pHは、 2N HC 1で 6. 50〜 6. 60に調節する。 実施例 1 : RDVがコードする 12種のタンパク質の感染細胞内での動態とゥ ィルス複製
(1) RDVによるョコバイ細胞の感染
RDVでのョコバイの媒介単層細胞 (Vector cells in monolayer; VCM) の同 時感染を、 Kimura (J Gen Virol 67, 2119-2124 (1986)) に記載されるように行つ た。 カバーガラス (15mm直径) 上のョコバイ細胞の培養単層の各々が 80% コンフルェントに達したとき、 細胞を 0.01M MgCl2含有 0.1M ヒスチジン溶液 (pH 6.2; His-Mg) で 2回洗浄し、 50 1のウィルス調製物を接種した。 各接種液 は、 精製ウィルスの調製物の 10倍段階希釈液から得た。 細胞を 2 で 2時間 インキュベートした。 その後、 接種液を除去し、 各単層を H i s— Mgで 2回洗 浄し、 各カバーガラスを 0. 12〜0. 2mlの培地で覆った。 接種した単層を、 種々の時間にわたってィンキュベートし、 その後に固定した。
(2) タンパク質の細胞内での動態
上記で作製した各抗体を用いて、 RDV感染を抑制するための標的とする RD V分節ゲノムを同定するために、 各 RDV分節ゲノムによってコードされるタン パク質の RDV感染細胞内での動態を調べた。
(2. 1) 非構造タンパク質である P n s 6、 Pn s 1 1および Pn s 12は、
ウィルス封入体の構成要素である
RDVの非構造タンパク質が、 封入体の形成において重要な役割を果たすか否 かを決定するために、 感染した V CMにおける RDVの非構造タンパク質の細胞 下位置を、 共焦点免疫蛍光顕微鏡によって調べた。 感染した細胞を、 接種して 1 8時間後に固定し、 Pn s 4特異的抗体、 Pn s 6特異的抗体、 Pn s l O特異 的抗体、 Pn s 1 1特異的抗体、 または Pn s 12特異的抗体でプローブした。 RDV—感染した細胞において、 Pn s 1 1および Pn s 12は、 別個の斑状封 入体において検出された (図 1) 。 Pn s 6は、 感染した細胞の細胞質において 拡散して分布しており、 斑状封入体に濃縮されていた (図 1) 。 種々の画像を重 ね合わせたところ、 3種類の非構造タンパク質が共に局在していることが認めら れた。 このことは、 これら非構造タンパク質 Pn s 6、 ?113 1 1ぉょび?11 3 12が、 ウィルス封入体の構成要素であることを示唆している (図 1) 。 対照的 に、 Pn s 4および Pn s 10は、 それぞれ、 線維様構造および管状構造で検出 された (図 1) 。
本発明者らの観察を裏付けるために、 VCMを、 RDVに感染させ、 接種して
18時間後に固定し、 電子顕微鏡で調べた。 RDVに感染した VCMの超薄切片 を調べたところ、 感染した細胞の細胞質において、 顆粒状の電子密集封入体 (直 径 600〜850 nm) の存在が明らかになった (図 2) 。 RDVに感染した細 胞において形成されたこの電子密集封入体の組成を決定するために、 感染した V CMにおける RDVの Pn s 6、 P n s 1 1および P n s 12の細胞下局在を、 免疫電子顕微鏡で調べた。 これら封入体のマトリクスは、 P n s 6に対する抗体、 Pn s 11に対する抗体、 および P n s 12に対する抗体で、 密集してかつ均一 に免疫標識され (それぞれ、 図 2 a、 bおよび c) 、 そしてその標識は、 免疫蛍 光顕微鏡の結果と一致していることが分かつた。
(2. 2) コアタンパク質 P l、 ? 5ぉょび? 7、 ならびにコアキヤプシド夕
ンパク質 P 3は、 ウィルス封入体内部に局在する
ゥィルス封入体のマトリクスが、 R D Vアセンブリ複合体の形成に必要とされ るか否かを決定するために、 感染した細胞を、 接種して 18時間後に固定し、 F I TCを結合させた P 3特異的 I gGと、 ローダミンを結合させた Pn s 12特 異的 I gGとで染色し、 その後、 共焦点蛍光顕微鏡によって画像化した。 感染し た細胞において、 コアキヤプシドタンパク質 P 3は、 別個の斑状封入体として検 出可能であった。 また、 P 3は、 細胞質全体を通して拡散して分布していた (図 3) ; Pn s 12は、 別個の斑状封入体に局在していた (図 3) 。 これら画像を 重ね合わせたところ、 Pn s 12および P 3は、 感染した細胞において斑状封入 体として共に局在していた (図 3) 。 類似の結果が、 コアタンパク質 P l、 P 5 および P 7について認められた (図 3) 。
本発明者らの観察を裏付けるために、 感染した細胞を、 接種してから 18時間 後に固定し、 コアキヤプシドタンパク質 P 3特異的抗体、 ならびにコアタンパク 質 P 1特異的抗体、 P 5特異的抗体、 および P 7特異的抗体を用いて、 免疫電子 顕微鏡で調べた。 図 4に示されるように、 コアキヤプシドタンパク質 P 3は、 コ ァタンパク質 P l、 P 5および P 7とともに、 電子密集封入体のマトリクスおよ びコア様粒子 (矢印参照) に分布した。 さらに、 比較的少量のコアキヤプシドお よびコアタンパク質が、 電子密集封入体の周縁に分布していた。 本発明者らの結 果は、 RDVのコアタンパク質およびコア様粒子は、 電子密集封入体のマトリク ス中に蓄積し得ることを示唆した。
(2. 3) 外殻タンパク質 P 2、 P 8および P 9は、 ウィルス封入体の周縁 に局在する
ウィルス封入体のマトリクスが、 ウィルス複製の間に RDVの外殻タンパク質 の蓄積に必要とされるか否かを決定するために、 感染した細胞を、 接種してから 18時間後に固定し、 F I TCを結合させた P 8特異的 I gGと、 ローダミンを
結合させた Pn s 12特異的 I gGとで染色し、 共焦点蛍光顕微鏡で画像化した。 感染した細胞において、 Pn s l 2は、 別個の斑状封入体において分布してい た; P8は、 環状構造として視覚化され、 これはまた、 細胞質中に分散して見ら れた (図 3) 。 画像を重ね合わせたところ、 P 8は、 周縁に明らかに局在してお り、 Pn s l 2は、 各封入体の中心領域を占めているようであった。 これら 2つ のタンパク質はまた、 図 3において黄色で示されるように、 封入体の周縁にとも に局在していた。 類似の結果を、 外殻タンパク質 P 2および P 9についても得た (図 3) 。
本発明者らの観察を裏付けるために、 感染した細胞を、 接種してから 18時間 後に固定し、 それぞれ、 外殻タンパク質 P 2特異的抗体、 P 8特異的抗体、 およ び P 9特異的抗体を使用して、 免疫電子顕微鏡で調べた。 図 4に示されるように、 これら 3種類の外殻タンパク質 P 2、 P 8および P 9は、 ウィルス様粒子が蓄積 している電子密集封入体の周縁に分布していた。 これらの結果全てから、 外殻夕 ンパク質およびウィルス粒子が、 封入体の周縁の分布していた一方で、 これらコ ァタンパク質およびコア粒子は、 非構造タンパク質 Pn s 6、 Pn s 1 1および Pn s 12が高レベルで蓄積される電子密集封入体のマトリクス内部に局在して いたことが示された。
感染過程において、 細胞質中の成熟ウィルス粒子の数は、 顕著に増加し、 構造 タンパク質は、 これらウィルス粒子中に分布し得る。
(2. 4) Pn s 12は、 インビポでウィルス封入体様構造を形成し得る RDVの 3種類の非構造タンパク質 Pn s 6、 P n s 1 1および Pn s 12は、 RDVに感染した細胞におけるウィルス封入体の腫瘍構成要素であるようである。 ウィルス封入体のマトリクスの形成を主に担う夕ンパク質を同定するために、 S f 9細胞に、 Pn s 6、 P n s 1 1または P n s 12を発現する組換えバキュ口 ウィルスを接種し、 種々の期間にわたってインキュベートした。 SDS— PAG
Eおよびそれぞれの抗体での免疫プロッティングによって分析したところ、 これ ら 3種類のタンパク質は、 接種して 24時間後に初めて検出され、 そのレベルは 増大し、 接種して 72時間後に最大に達した。 カバ一ガラス上で増殖させた S f 9細胞において Pn s 12の免疫蛍光染色を行うと、 接種して 48時間後に、 細 胞内での別個の斑状封入体の形成が明らかになった (図 5 a) 。 これらの細胞の 薄切片を電子顕微鏡で分析したところ、 R D Vに感染させた V CMにおける電子 密集封入体に類似した、 大きな顆粒状封入体が、 Pn s 12を発現する S f 9細 胞の細胞質において同定された (図 5 b) 。 免疫金電子顕微鏡により、 これら封 入体中に Pn s 12が特異的に存在することが明らかになった (図 5 b) —方で、 P n s 6コ一ドバキュロウィルスまたは P n s 1 1コードバキュロウィルスによ る感染は、 細胞質全体を通じてそれぞれのダンパク質の拡散した分布を生じ、 封 入体は形成はないことが認められた。 本発明者らの結果は、 Pn s 12の発現の みで、 ウィルス複製プロセスがない場合ですら、 S f 9細胞においてウィルス封 入体様構造の形成に十分であるこどを明らかに示した。
(2. 5) インビトロでの RDV Pn s 12の自己会合
Pn s 12が自己会合して、 ウィルス封入体を形成することができるか否かを 決定するために、 フィルター結合アツセィを行った。 H i s— Pn s 12を発現 する E. coli細胞の溶解液を、 SDS— PAGEによって分画し、 そのタンパク 質バンドを、 膜フィルタ一に転写し、 そのフィル夕一を、 MB Pまたは MB P— Pn s 12とともにインキュベートした。 図 6に示されるように、 MBP— Pn s l 2は、 H i s— Pn s l 2に特異的に結合したが、 いずれの E. c o l i 由来タンパク質にも結合しなかった。 対照的に、 MBPは、 H i s— Pn s 12 に結合しなかった。 従って、 Pn s l 2の分子は、 互いに結合する固有の能力を 有し、 かつ Pn s 12は、 ウィルス封入体の形成のために凝集することができる ようであった。
(2. 6) Pn s 12は、 ウィルス封入体への局在化が P8より先に起こる Pn s 12が、 ウィルス封入体に局在する初期タンパク質であるか否かを調べ るために、 これらの構造への P 8および Pn s 12の局在を、 感染の時間経過に 沿って、 RDVに感染した細胞において調べた。 。!^に1 0¥を接種し、 細胞 を 2時間間隔で固定した。 細胞を、 F I TCを結合させた P 8特異的 I gGと、 ローダミンを結合させた Pn s 12特異的 I gG抗体とで染色し、 共焦点蛍光顕 微鏡で調べた。 Pn s 12は、 別個の斑状封入体において細胞質全体にわたって 散在しているとき、 接種してから 6時間で初めて検出可能であった (図 7) 。 P 8は、 接種してから 6時間後に、 細胞質において拡散して散在していた。 接種後 の初期の時点で、 封入体は非常に多くかつ小さいが、 時間が経つにつれて、 これ らの封入体は数が減少し、 大きさが増した。 P 8は、 別個の斑状封入体として観 察され、 接種してから 8時間後に、 細胞質全体にわたって拡散して分布した。 さ らに、 P 8および Pn s 12は、 斑状封入体中にともに局在した。 その後、 接種 してから 14時間後までには、 Pn s 12は、 より大きな封入体中で観察された のに対して、 P8は、 小さな環状構造に局在し、 細胞質において拡散して散在し ていた。 これらの画像を重ね合わせたところ、 P8は、 封入体の周縁において認 められた。 感染が進むにつれて、 より大きな封入体が観察されるようになり、 P 8は、 周縁に集中し、 Pn s 12は、 これら封入体の中心領域に集中していた。 これらの結果によって、 Pn s 12は、 ウィルス封入体への局在が P 8より先に 起こり、 Pn s 12が後代ウィルスが蓄積するウィルス封入体の凝集に関与する という仮定の裏付けが示された。
(2. 7) ウィルス封入体はウィルス RNAを合成する部位である ウィルス封入体が、 ウィルス RN Aを合成する部位であるか否かを決定するた めに、 RDVに感染した細胞を、 ァクチノマイシン Dで処理して、 宿主複製およ
び転写を妨げ、 次いで、 接種してから 10. 5時間後、 最初の 30分間、 B rU TPで処理した。 細胞を固定した後、 新たに作られた RNAの位置を、 抗 B r d U抗体を用いて決定し、 ウィルス封入体の位置を、 Pn s 12特異的 I gGを用 いることによって決定した。 この分析により、 8 ]"11標識1^ 八が、 B rUTP との 30分間のインキュベーション期間の間に、 別個の斑状封入体 (Pn s 12 のウィルス封入体がともに局在する) に分布することが示された (図 8) 。 この ことは、 これら封入体がウィルス RN Aを合成する部位であることを表すことを 示唆している。
(2. 8) Pn s 4は、 RDVに感染したョコバイ細胞においてリン酸化さ れる
Pn s 4が宿主細胞中でリン酸化され得るか否かを決定するために、 本発明者 らは、 ョコバイ細胞に RDVを感染させて、 [32P] —オルトリン酸で標識し た後に免疫沈降に供した。 図 9に示されるように、 RDVに感染させたョコバイ 細胞を分析すると、 Pn s 4に対する抗血清は、 84 kD aのポリペプチド (こ れは、 Pn s 4の分子量である) と免疫反応を生じたが、 非感染細胞では生じな かった (図 9、 レーン Pn s 4 (十、 -) を参照のことのこと) 。 非標識産物は、 本発明者らが免疫前血清を使用した場合に、 RDVに感染させた昆虫細胞または 非感染昆虫細胞において検出された (レー P i (十、 -) を参照のこと) 。 さ らに、 本発明者らがネガティブコントロールとして P 9特異的抗血清を使用した 場合、 何の免疫反応も検出されなかった (レーン P 9を参照のこと) 。 これらの 結果は、 Pn s 4が RDVに感染させたョコバイ細胞においてリン酸化されたこ とを示す。 感染させた宿主植物および媒介昆虫の細胞における Pn s 4の発
宿主細胞における Pn s 4の発生を特徴づけるために、 本発明者らは、 免疫電 子顕微鏡で、 罹病植物およびウィルスを運ぶョコバイの薄切片における Pn s 4 の位置を調べた。 RDVに感染させたイネ植物において、 Pn s 4は、 細胞質中 の種々の大きさおよび形状の無定形の電子密集封入体に位置した (図 10A) 。 対照的に、 ウィルスを運ぶョコバイにおいて、 Pn s 4は、 直径約 10nmの微 小管状構造の束を形成するようであった (図 10B) 。 ?11 54特異的1 §0と ともにインキュベートした後の非感染細胞においても、 免疫前ゥサギ血清ととも にィンキュベートした後の感染細胞においても、 非特異的結合は検出されなかつ た。
(2. 10) 非構造タンパク質 Pn s 4は、 微小管状構造の構成成分であり、 バイ口プラズマの周縁と会合する。
イネ植物は、 接種後約 14日間で感染徴候を表す。 その一方で、 媒介昆虫は、 徴候を示すのではなく、 ウィルスを獲得してから約 20日間でウィルスを伝播さ せ始める。 従って、 本発明者らの細胞学的観察は、 ウィルス複製の第 1段階に対 応するようであった。 従って、 本発明者らは、 VCMを使用して、 ウィルス複製 における初期段階の事象を調査した。 本発明者らは、 RDVを VCMに接種し、 2時間間隔で細胞を固定し、 F I TCを結合させた Pn s 4特異的 I gGと口一 ダミンを結合させた Pn s 12特異的 I gGとで染色し、 共焦点蛍光顕微鏡によ り画像を得た (図 1 1) 。 F I TCを結合させた Pn s 4特異的 I gGまたは口 —ダミンを結合させた Pn s 12特異的 I gGのいずれかとともにインキュベー シヨンした後の非感染細胞においても (図 1 1の最上段) 、 免疫前ゥサギ血清と ともにインキュべ一ションした後の感染細胞においても、 非特異的蛍光は検出さ れなかった。 感染細胞において、 Pn s 12は、 接種してから 6時間程度で、 別 個の斑状封入体として細胞質全体にわたって散在した。 Pn s 4は、 環状構造 (矢印で示す) として初めて検出可能であり、 接種してから 10時間後に細胞質
全体にわたって拡散して分布した; Pn s 12は、 この時点では、 大きな封入体 中に観察された。 これらの画像を重ね合わせたところ、 Pn s 4は、 封入体の周 縁において見出された;黄色の部分は、 Pn s 4および Pn s 12がともに局在 するところである。 感染が進むにつれて、 接種してから 14時間後、 Pn s 4は、 細胞質中で非常に豊富になり、 細胞質では、 Pn s 12のより大きな封入体の周 りを囲むかまたはその封入体の周縁において局在する管状構造の束を形成するよ うであった。 さらにその後、 接種してから 36時間後に、 Pn s 4は、 細胞質に おいて Pn s 12の封入体の周りを囲んでこの入体とつながるようである管状構 造の束を形成し続けた。
本発明者らの所見を確認するために、 本発明者らは、 免疫電子顕微鏡を使用し て、 感染の間の Pn s 4の細胞内での部位を調べた。 免疫電子顕微鏡によって、 接種してから 10〜 14時間後に、 Pn s 4がバイ口プラズマの周縁に分布し、 感染細胞の細胞質に拡散して分布することが明らかになった (図 12A) 。 感染 が進むにつれて、 接種してから 14〜 28時間後に、 Pn s 4は無定形構造およ び管状構造の豊富な束に局在し、 これらの構造は、 バイ口プラズマの周縁に密集 して会合していた (図 12B) 。 この段階での管状構造の束の出現は、 感染した 植物宿主において認められる Pn s 4の封入体に似ていた。 その後、 感染して から 28〜 36時間後に、 P n s 4は、 直径約 10 n mの微小管状構造の束を形 成した (図 12C) 。 この微小管状構造の寸法および外観は、 RDVに感染させ たョコバイにおいて見出されるものと似ていた。 この微小管は、 多数列の電子密 集微小管から明らかに構成されていた (図 12 C) 。 微小管の横断方向の切片を 調べると、 完全ではないが規則性の高い結晶配列が認められた (図 12D) 。 本 発明者らが免疫蛍光顕微鏡によって観察した管状構造は、 管状構造およびこのよ うな束になった微小管状構造と一致した。 非感染細胞における P n s 4特異的 I gG とのインキュベーションによる細胞構造物との反応も、 感染細胞における 免疫前ゥサギ血清とのインキュベーションによるウィルス構造物との反応も、 認
められなかった。
Pn s 4微小管の外観を詳細に理解するために、 本発明者らは、 接種して 36 時間後の感染 V CMを炭素被覆グリッドに吸着させ、 このダリッドを Pn s 4特 異的抗体とともにインキュベートした。 この抗体は、 種々の長さの管と特異的に 反応し、 これらの管は、 規則的に反復したサブユニットから構成され (図 12
E) 、 細胞内標識実験において認められたものに類似した直径によって特徴づけ られる。
(2. 1 1) Pn s 4は、 インビポで単独で封入体を形成し得る
Pn s 4が微小管構造を形成する固有の能力を有するか否かを調べるために、
S f 9細胞に組換えバキュロウィルスを接種し、 種々の期間にわたってインキュ ペートした。 Pn s 4特異的抗体で免疫プロッティングすることによって細胞を 試験したところ、 Pn s 4は、 接種して 24時間後に初めて検出され、 そのレべ ルは時間と共に増加し、 接種してから 72時間後に最大に達した。 カバーガラス 上で増殖させた細胞を免疫蛍光染色に供したところ、 接種して 48時間後に、 細 胞膜の直ぐ内側に Pn s 4の厚い層および細胞質中にいくらかの Pn s 4マトリ クスが認められた (図 13A) 。
免疫金電子顕微鏡に供したところ、 細胞質中の種々の形状および大きさの、 多 くの電子密集封入体の部位において、 Pn s 4のより具体的な位置が突き止めら れ、 感染細胞の表面と会合していることが明らかになった (図 13B) 。 形態学 的には、 この封入体は、 RDVに感染させた宿主細胞において観察された無定形 封入体 (図 10A) と似ていた。 上記の結果から、 Pn s 4自体の発現は、 ウイ ルス増殖がない場合でも、 S f 9細胞における封入体のクラスター形成に十分で あることが示された。
(2. 12) RDVの非構造タンパク質 Pn s 10は、 管状構造の構成成分
である
初期段階の研究において、 非構造タンパク質 Pn s 10は、 免疫蛍光顕微鏡に よって管状構造で検出された。 この観察を裏付けるために、 VCMに RDVを接 種し (MO I = 10) 、 接種して 18時間後に固定し、 電子顕微鏡で観察した。 本発明者らは、 ョコバイ細胞の表面から突き出て、 拡張した細胞膜によって囲ま れた直径約 85 nmの管を観察した (図 14A) 。 これらの管は、 ウィルス粒子 の大きさに対応する直径 70 nmの電子密集粒子を含んでいた。 この管の好青成 分を同定するために、 本発明者らは、 感染させた VCMにおける RDVの P n s 10の細胞下局在を免疫電子顕微鏡によって観察した。 図 14Bに示されるよう に、 この管は、 Pn s 10に対する抗体で均一に免疫標識された。 管中の電子密 集粒子は、 ウィルス粒子に対する抗体と反応した (図 14C) 。 Pn s 10特異 的 I gGまたはウィルス特異的 I gGとインキュベーションした後の非感染細胞 においても、 免疫前ゥサギ血清とィンキュベ一シヨンした後の感染細胞において も、 非特異的標識は検出されなかった。
(2. 13) インビボで管を形成するための Pn s 10の凝集
Pn s 10が管を形成する固有の能力を有するか否かを調べるために、 本発明 者らは、 S f 9細胞に、 Pn s 10をコードする組換えバキュロウィルスを接種 し、 種々の期間にわたってインキュベートした。 細胞抽出液を Pn s 10特異的 抗体でのィムノブロッテイングにより分析したところ、 Pn s 10は、 接種して 24時間後に初めて検出され、 タンパク質のレベルは、 接種して 72時間後に最 大に達した。 カバ一ガラス上で培養した S f 9細胞において Pn s 10の免疫蛍 光染色を行ったところ、 Pn s 10の蓄積が認められ、 接種して 24時間後に、 細胞内での多くの管状構造の形成が明らかになった (データは示さず。 図 15A を参照のこと) 。 後に、 接種して 48時間後には、 この Pn s 10含有管状構造 は、 輪郭がより明らかになり、 いくらかの管は、 これらの非宿主昆虫細胞の表面
から出てきた (データは示さず。 図 15Bを参照のこと) 。 さらに後になって、 接種して 72時間後には、 多くの管状構造が細胞表面からかなり遠くまで伸びた (データは示さず。 図 15Cを参照のこと) 。
免疫電子顕微鏡で調べたところ、 S f 9細胞の細胞質中の管構造における Pn s i 0の位置がより具体的に突き止められた (データは示さず。 図 14Bを参照 のこと) 。 これらの管は、 その直径および長さの分布の点で、 野生型 RDVに感 染させた VCMにおいて生成される管と似ていた。 従って、 Pn s 10単独の発 現は、 ウィルス増殖がない場合でも、 S f 9細胞における管の形成に十分であつ た。 非感染細胞における Pn s 10特異的 I gGとのインキュべ一ションによる 細胞構造との反応も、 感染細胞における免疫前ゥサギ血清とのインキュベーショ ンによるウィルス構造との反応も認められなかった。 上記で得られた、 各 RDV分節ゲノムによってコードされるタンパク質の細胞 内での動態に鑑みて、 本発明者らは、 RDV感染後に最も早く集積し、 かつウイ ルス合成工場であるバイ口プラズマの腫瘍マトリクスである Pn s 12タンパク 質の mRN Aを第 1の標的遺伝子として、 このタンパク質の発現を抑制すること で RDV抵抗性イネの作出を試みた。 一方、 P n s 4は微小管状構造の構成成分 であり、 バイ口プラズマの周縁と会合することから、 Pn s 4 mRNAを第 2 の標的遺伝子として、 RDV抵抗性イネの作出を試みた。 実施例 2 : S 4遺伝子および S 12遺伝子を用いた RNA i誘起ベクターの構築 (1) S 4遺伝子および S 12遺伝子を、 特異的なプライマーセットを用いて 増幅する:
RDV感染イネの葉から、 定法に従って総 RNAを抽出した。 総 RNAの抽出 は、 RNeasyPlantMiniKit (Qiagen) を使用して、 添付の説明書に従って行った。 総 RNA l gを用いて、 SuperScriptlll (Invitrogen) のマニュアルに従つ
て逆転写反応を行い、 cDNAを合成し、 以下のプライマーセット pANDAについてプライマーセット 1 :
プライマ一 S12- GSF1: CACCATGTTCAAGAGCGGGTCCG (配列番号 38) ;と プライマ一 S12- GSR1: TAGTGTTGTTCAACTCCGTCA (配列番号 39) 、 trigger 12Cについてプライマ一セット 2 :
プライマ一 S12-GSF2: CACCATGCTAGCGGCAACGATCTC (配列番号 40) ; と プライマ一 S12- GSR2: TCACCGTTCAAGAGAAAAGGT (配列番号 41) 、 trigger 4Nについてプライマ一セット 3 :
プライマ一 S04- GSF1: CACCATGAACCAATCTCGAAGCTTTG (配列番号 42) ; と プライマ一 S04- GSR1: GTCTCCGAGTCAGACAAATTC (配列番号 43) 、 ならびに trigger 4Cについてプライマーセット 4 :
プライマー S04-GSF2: CACCGGAACATCCTAACTTGTTCAC (配列番号 44) ; と プライマ一 S04-GSR2: CGCTTTCTCACTACCTGTCG (配列番号 45) を用いてそれぞれ PC Rを行い、 目的の領域: pANDA (配列番号 25) 、 trigger 12C (配列番号 26) 、 trigger 4N (配列番号 27) 、 および trigger 4C (配列 番号 28) の各増幅産物を得た。
(2) 制限酵素または Gateway (Invitrogen) システムなどを用いて、 形質転 換用の RNA iバイナリーベクターを作製する:
上記 (1) で得た各増幅産物を、 pENTRTM/D-T0P0 (登録商標) クローニングキ ット (Invitrogen cat. K2435-20) を用いて、 製造業者の説明書に従って pENTR/
D-TOPO (Invitrogen) にクローン化し、 エントリーベクタ一 pENTR/trigger 12N、 pENTR/t rigger 12 ENTR/t rigger 4N、 および pENTR/t rigger 4Cを得た。
このクローニングベクターを、 キットに付属の E. coli株に形質転換し、 同様 に、 製造業者の説明書に従って、 適切な条件下で、 形質転換 E. coliを 5 0 g /m 1 カナマイシンを含む LBプレート上で選択した。 単一のコロニーを単離 して、 50 gZm l カナマイシンを含む 1〜 2m 1の LB培地中に接種し、 定法に従って、 このクローニングベクターを含む形質転換 E. coliを増殖させた。 定法に従って、 形質転換体からプラスミド DNAを単離し、 配列決定することに よって、 目的の領域がクローニングされていることを確認した。
(3) RNA iを引き起こす因子を形質転換ベクターにクローニングする: 上記のようにして得られたプラスミド DNAを、 Gateway (Invitrogen) シス テムの LRクロナーゼ反応系を用いて、 pANDAベクタ一 (奈良先端大学院大学島 本教授より分譲) へクローン化した。 簡潔にいうと、 2 a I LR反応緩衝液 (5 X) 、 1 0 0〜3 00 n gの上記エントリーベクタ一、 3 0 0 n g pANDA ベクタ一、 TEを添加して総容積 8 1にした。 2 1の LRクロナ一ゼ酵素ミ ックス (Invitrogen cat.11791-019) を加えて攪拌し、 2 5 でー晚インキュ ペートした。 その後、 プロティナーゼ K溶液を 1 1添加し、 3 7t:で 1 0分間 インキュベートした。 得られたベクタ一を E. coli DH 5ひに形質転換し、 5 0 g/m 1 カナマイシンおよび 5 0 gZm 1 ハイグロマイシンを含む培 地中で増殖させた。 実施例 3 : S 1、 S 2、 S 3、 S 5、 S 6、 S 7、 S 9、 S 1 0および S I 1 を用いた RNA i誘起ベクターの構築
(1) S l、 S 2、 S 3、 S 5、 S 6、 S 7、 S 9、 S 1 0および S I 1を特 異的プライマーセットを用いて増幅する:
RDV感染イネの葉から、 定法に従って総 RNAを抽出した。 総 RNAの抽出 は、 RNeasyPlantMiniKit (Qiagen) を使用して、 添付の説明書に従って行った。 総 RNA l gを用いて、 SuperScriptlll (Invitrogen) のマニュアルに従つ て逆転写反応を行い、 1^0¥ゲノム31、 S 2、 S 3、 S 5、 S 6、 S 7、 S 9、 S 10、 および S 1 1特異的プライマ一セットを設計して、 各々 PC Rを行い、 trigger 1配列番号 29)、 trigger 2 (配列番号 30)、 trigger 3 (配列番号 31)、 tr igger 5 (配列番号 32)、 trigger 6 (配列番号 33)、 trigger 7 (配列番号 34)、 tr igger 9 (配列番号 35)、 trigger 10 (配列番号 36)、 および trigger 11 (配列番 号 37)の各領域を得る。
(2) 制限酵素または Gateway (Invitrogen) システムなどを用いて、 形質転 換用の RNA iバイナリーベクタ一を作製する:
上記 (1) で得た各増幅産物を、 pENTRTM/D-T0P0 (登録商標) クロ一ニングキ ット (Invitrogen cat. K2435-20) を用いて、 製造業者の説明書に従って pENTR/ D-T0P0 (Invitrogen) にクローン化し、 エントリーベクタ一 pENTR/trigger 1、 p ENTR/t rigger 2、 pENTR/t rigger 3、 pENTR/t rigger 5、 pENTR/t rigger 6、 pENTR /trigger 7、 pENTR/t rigger 9、 pENTR/t rigger 10、 および pENTR/t rigger 11を 得る。
このクローニングベクターを、 キットに付属の E. coli株に形質転換し、 同様 に、 製造業者の説明書に従って、 適切な条件下で、 形質転換 E. coliを 50 g / 1 カナマイシンを含む LBプレート上で選択する。 単一のコロニーを単離 して、 50 gZm l カナマイシンを含む 1〜 2m 1の LB培地中に接種し、 定法に従って、 このクローニングベクターを含む形質転換 E. coliを増殖させる。 定法に従って、 形質転換体からプラスミド DNAを単離し、 配列決定することに よって、 目的のトリガー領域がクローニングされていることを確認する。
(3) RNA iを引き起こす因子を形質転換ベクタ一にクローニングする: 上記のようにして得られたプラスミド DNAを、 Gateway (Invitrogen) シス テムの LRクロナ一ゼ反応系を用いて、 pANDAベクター (奈良先端大学院大学島 本教授より分譲) へクローン化する。 簡潔にいうと、 2 1 LR反応緩衝液 (5 X) 、 100〜 300 n gの上記エントリーベクタ一、 300 ng pANDA ベクター、 TEを添加して総容積 8 1にする。 2 1の LRクロナ一ゼ酵素ミ ックス (Invitrogen cat.11791-019) を加えて攪拌し、 25°Cでー晚インキュ ペートする。 その後、 プロティナーゼ K溶液を 1 1添加し、 37t:で 10分間 インキュベートする。 得られるベクターを E. coli DH5ひに形質転換し、 5 0 a g/m 1 カナマイシンおよび 50 gZm 1 ハイグロマイシンを含む培 地中で増殖させる。 実施例 4 : RDV抵抗性イネの作出
(1) 上記ベクターをエレクトロポレーシヨン法などによってァグロパクテリ ゥムへ導入する:
上記各ベクターを、 エレクト口ポレーシヨン法によって GenePulser (BioRad) を用いて、 製造業者の説明書に従ってァグロパクテリゥムへ導入した。 ァグロバ クテリゥムの系統は、 EHA101 (Hood, 1986, J.Bacteriol.168, 1291) を用いた。 実 施例 2で構築した発現べクタ一を、 エレクト口ポーレーシヨン法でァグロバクテ リウム EHA 1 0 1に形質転換した。 エレクト口ポーレーシヨン装置は GENE PUL SER (登録商標) II (BIO- RAD) を用い、 導入条件を 2 0 0 Ω、 2 5 F、 2. 5 kV、 0. 2 cmキュベットに設定した。 エレクトロボ一レーシヨンを行ったァ グロバクテリゥムを SOC培地に懸濁し、 28 で 2時間振盪培養した。 この培 養液を 20mgZ l カナマイシン、 l O OmgZl スぺクチノマイシンを含 む LBプレート培地 (10 gZ 1 トリプトン、 5 g/ l 酵母エキス、 10 g /\ 塩化ナトリウム) 上に拡散し、 増殖した形質転換個体を選抜した。 増殖さ
せた形質転換ァグロパクテリゥムを、 YEP培地に播種して、 一晩インキュべ一 卜し、 この培養液と等量のグリセロールを入れてポルテックスミキサ一で十分に 混合し、 — 80 で使用時までストック溶液として保存した。 (2) ァグロパクテリゥムにベクターが導入されていることを、 PCRなどによ り確認する;
ァグロパクテリゥムにべクタ一が導入されていることを、 アルカリ SDS法 (Molecular Cloning第 3版を参照のこと) によりプラスミドを抽出した後、 P CRにより確認した。
(3) カルス化したイネにァグロパクテリゥムを感染させ、 感染確認後、 再分化 させ、 RDV抵抗性イネを作出する;
RDV抵抗性イネを作出するために、 カルス化したイネを作製した。 簡潔には、 イネの完熟種子を小型籾すり機にかけ、 籾を除去した種子 100〜150粒を 5 0m 1の使い捨て遠心管に入れた。 70% エタノールを遠心管に入れて、 数秒 間種子を滅菌し、 滅菌水で種子をすすいだ。 滅菌水を吸引した後、 40mlの 2.
5 %次亜塩素酸ナトリゥム溶液を上記遠心管に入れ、 振盪機で 20分間、 150 r pmで振盪して滅菌した。 滅菌水を除去して、 蒸留水で 3回洗浄した。 ピンセ ットで種子をカルス誘導培地 (N6D培地) に 25種子 シャーレで置床し、 シ ヤーレの周りをテープでシールした。 60 mo lZm2 s、 24時間明期の条 件下で、 30〜33でにおいて 18〜21日間培養することによってカルス誘導 した。 カルス誘導の間、 培地を、 7〜10日毎に新しい N6D培地と交換した。 誘導して 3週間後の種子の胚乳とシュート部分をメスで切り取るか、 あるいは ピンセットでもぎ取り、 胚盤由来カルスのみを新しいカルス誘導培地 N 6 D培地 に 16カルス シャーレで置床し、 シャーレの周りをテープでシールして、 24 時間明期の条件下で、 25 において 3日間、 カルスを前培養した。 カルスの前
培養を始めるのと並行して、 上記 (1) において得られたァグロパクテリゥムの ストック溶液から滅菌した爪楊枝で菌体を採取し、 AB培地に塗布した。 塗布し た菌体を滅菌した白金耳で培地全体に拡げ、 3日間 28 において遮光して前培 養した。
A B培地で増殖したァグロパクテリゥムを滅菌した小さい薬さじで搔き取り、 1 Omlの水に 1 OmgZmlのァセトシリンゴンを 5 1入れ、 この溶液にァ グロバクテリゥムを OD 600 = 0. 01になるように懸濁した。 懸濁液を滅菌 シャーレに入れた。 1シャーレ分の前培養したカルスを、 一方の端をメッシュで 覆った筒状のガラス管の中に入れ、 ときどき軽く振って、 1. 5〜2分間メッシ ュ付きのガラス管ごと、 上記懸濁液中に浸漬した。 浸漬後、 メッシュ付きのガラ ス管を滅菌ペーパー夕オルの上に置いて余分な水分を除去した。 N 6 CO培地に 16カルス シャーレで置床し、 シャーレをテープでシールして、 30〜33°C において遮光して 3日間培養した。
培養後、 全てのカルスを N 6 SE培地に、 9カルスノシャーレで移植し、 30 〜 33 において 24時間明期の条件下で、 14日間培養した。 その間、 カルス を、 1回だけ新しいシャーレに移した。 選択されたカルスを RE培地に移し、 3 0〜33 において再分化してくるまで培養した。 その間、 7〜10日間毎に、 新しい培地を入れたシャーレにカルスを移した。 再分化したシュ一トおよび根を HF培地に移し、 2〜3週間培養した後、 鉢上げした。
(4) 形質転換体当代 (TO) 株における導入遺伝子の確認
上記 (3) において作出した形質転換体当代 (TO) 株において目的の遺伝子 が導入されているか否かを確認するために、 T0株から CTAB法により調製し た DNAを H i n d I I Iで消化後、 形質転換ベクター内の薬剤選抜マーカー (ハイグロマイシン耐性) 遺伝子をプローブにサザンハイブリダィゼ一シヨンす ることにより行った。 T0株における導入遺伝子の転写産物の断片化による s i
RNAの検出は、 低分子 RNAを抽出 (基本的に、 Hamilton, 1999, Science.286, 950に従った) した後、 PANDA (配列番号 25) 、 Triggerl2N (配列番号 25 ) 、 Trigger 12C (配列番号 26) 、 Trigger 4N (配列番号 27) 、 Trigger 4C (配 列番号 28) をプロ一ブとしてノーザンハイブリダィゼーシヨンすることにより 行った。 図 16に示されるように、 目的の遺伝子が TO株において導入され、 か つ導入された配列が切断されたことが明らかになった。 同様に、 trigger 1配列 番号 29)、 trigger 2 (配列番号 30)、 trigger 3 (配列番号 31)、 trigger 5 (配列 番号 32)、 trigger 6 (配列番号 33)、 trigger 7 (配列番号 34)、 trigger 9 (配列 番号 35)、 trigger 10 (配列番号 36)、 および trigger 11 (配列番号 37)をプロ一 ブとしてノーザンハイブリダィゼーシヨンを行った場合にも、 目的の遺伝子が T 0株において導入され、 かつ導入された配列が切断されると考えられる。 実施例 5 :形質転換体 T 1における導入遺伝子の有無と RDV感染との関連 (1) Triggerl2N (配列番号 25) 、 Trigger 12C (配列番号 26) 、 Trigger 4N (配列番号 27) 、 Trigger 4C (配列番号 28 ) で形質転換した T1植物へ の RDV感染;
得られた TOイネの各々を 1株とし、 それぞれの株から全ての T 1種子を回収 した。 イネへの RDVの接種は、 2〜 3葉期まで生育させた各形質転換体系統に つき T 1イネおよそ 10株に対して、 約 80 %が RDVを保毒したツマグロョコ バイの成虫を健全イネ 1株当たり 5頭以上になるように放飼、 26で程度の温室 で約 1日間イネを吸汁させて行った。 図 17および図 18は、 RDV接種してか ら 50日後の比較である。 図 17においては、 左側の鉢に野生型株 (左に健全株、 右に RDV接種株を示す) 、 右の鉢に Triggerl2N導入形質転換体 (RDV接種 株) を示している。 図 17は、 Triggerl2N導入形質転換体が RDVに対して抵抗 性を有しており、 RDVに対して耐性が付与されたことを明らかに示す。 図 18 においては、 左側の鉢に野生型株 (左に健全株、 右に RDV接種株を示す) 、 右
の鉢に Trigger4N導入形質転換体 (RDV接種株) を示している。 図 18は、 Tri gger4N導入形質転換体が RDVに対して抵抗性を有しており、 RDVに対して耐 性が付与されたことを明らかに示す。 (2) trigger 1配列番号 29)、 trigger 2 (配列番号 30)、 trigger 3 (配列番号 3
1)、 trigger 5 (配列番号 32)、 trigger 6 (配列番号 33)、 trigger 7 (配列番号 3 4)、 trigger 9 (配列番号 35)、 trigger 10 (配列番号 36)、 および trigger 11 (配列番号 37)で形質転換される T 1植物への RDV感染;
得られる TOイネの各々を 1株とし、 それぞれの株から全ての T 1種子を回収 する。 イネへの RDVの接種は、 2〜 3葉期まで生育させた各形質転換体系統に つき T 1イネおよそ 10株に対して、 約 80 %が RDVを保毒したツマグロョコ バイの成虫を健全イネ 1株当たり 5頭以上になるように放飼、 26t:程度の温室 で約 1日間イネを吸汁させて行う。 trigger 1配列番号 29)、 trigger 2 (配列番 号 30)、 trigger 3 (配列番号 31)、 trigger 5 (配列番号 32)、 trigger 6 (配列番 号 33)、 trigger 7 (配列番号 34)、 trigger 9 (配列番号 35)、 trigger 10 (配列 番号 36)、 および trigger 11 (配列番号 37)のそれぞれを形質転換した T 1植物と、 野生型株とを比較すると、 各 T 1植物が RDVに対して抵抗性を有しており、 R D Vに対して耐性が付与されたことが示される。 . (3) 感染後の Triggerl2N (配列番号 25) 、 Trigger 12C (配列番号 26) 、 T rigger 4N (配列番号 27) 、 Trigger 4C (配列番号 28) で形質転換した T 1 植物の接種検定;
Triggerl2N (配列番号 25) 、 Trigger 12C (配列番号 26) 、 Trigger 4N (配列番号 27) 、 Trigger 4C (配列番号 28) のいずれかで形質転換した T 1 植物の抵抗性検定は、 (1) で接種した植物全ての株に対して、 接種後 3週以内 に発病した個体を感受性、 接種 3〜 8週後に発病した個体を発病遅延型抵抗性、
接種 8週以後、 さらには終生に渡つて病徴が認められない個体を完全型抵抗性と してスコアリングを行った。 その結果を以下の表 1および表 2、 ならびに図 17 Bおよび図 18 Bに示す。 表 1 : Pn s 4および Pn s 12を標的とした形質転換イネ自殖第 1代 (T 1) 株の RDV接種検定
a各 10株を接種試験に供試、 非組換え体を除いたもの。
表中の数値は、 感受性と認められた株の総数である。 表 2 : S4および S 12の分節ゲノムを標的とした形質転換イネ自殖第 1代 (T 1) 株の RDV接種検定
#25 10 0 4 6
#37 10 0 5 5
#38 10 0 6 4 trigger 12N #13 10 0 0 10
#27 10 0 0 10
#45 10 0 0 10
#61 10 0 0 10 trigger 12C #30 10 0 0 10
#11 10 0 0 10
#40 10 0 0 10
#50 10 0 0 10 コントロール #02 10 10 0 0
(空ベクター) #05 10 10 0 0
#14 10 10 0 0
#29 10 10 0 0 野生型 10 10 0 0
(日本晴)
S :感受性 (接種後 3週間以内に発病)
D :発病遅延型抵抗性 (接種後 3— 8週に発病; D(8w)は、 接種後 8週間後に観察 した場合に発病していたものである)
R :抵抗性 (無病徴 接種後 8週間)
Pn s 4を標的とした形質転換イネは、 発病遅延型抵抗性 (すなわち、 感染が 遅延するもの) が得られた。 それに対して、 Pn s 12を標的とした形質転換ィ ネは、 全て RDV抵抗性であった (すなわち、 「 100 %完全抵抗性集団」 を得 た) 。 コントロールとして供した野生型イネ (日本晴) においては、 全 68株の うち 4株が感染に失敗したが、 残りの 64株は全て RDVに感染し、 病徴の発現 は一定 (通常、 3週間までには病徴が出揃う) で、 遅延することはなかった。
Pn s 4を標的とした形質転換イネは、 約 60%程度が抵抗性を示し、 約 4 0%程度が発病遅延型抵抗性を示した (すなわち、 100% 「抵抗性集団」 また は 「60%完全抵抗性集団」 を得た) 。 Pn s 4は、 おそらく感染後期に関与す るタンパク質であることから、 ウィルスの複製が進むにつれて Pn s 4 mRN Aが多量に転写される。 このことにより、 P n s 4の発現抑制効果が薄れ、 結果 的に、 遅延型抵抗性を示す株が得られたと考えられる。
Pn s 12を標的とした形質転換イネは、 感染個体集団の 100 %が完全抵抗 性を示した。 Pn s 12は、 おそらく感染の最も初期にウィルス工場の設営に関 与するタンパク質であることから、 Pn s 12の発現を抑制するとウィルス複製 の足場の構築が阻害され、 さらには、 ウィルス自身の複製も阻害され、 結果的に、 完全型抵抗性を示す株が得られたと考えられる。
(4) 感染後の trigger 1配列番号 29)、 trigger 2 (配列番号 30)、 trigger 3 (配列番号 31)、 trigger 5 (配列番号 32)、 trigger 6 (配列番号 33)、 trigger 7 (配列番号 34)、 trigger 9 (配列番号 35)、 trigger 10 (配列番号 36)、 および tr igger 11 (配列番号 37)で形質転換した T 1植物の接種検定;
trigger 1配列番号 29)、 trigger 2 (配列番号 30)、 trigger 3 (配列番号 31)、 trigger 5 (配列番号 32)、 trigger 6 (配列番号 33)、 trigger 7 (配列番号 34)、 trigger 9 (配列番号 35)、 trigger 10 (配列番号 36)、 および trigger 11 (配列 番号 37)のいずれかで形質転換した T 1植物の抵抗性検定は、 (1) で接種した
植物全ての株に対して、 接種後 3週以内に発病した個体を感受性、 接種 3〜8週 後に発病した個体を発病遅延型抵抗性、 接種 8週以後、 さらには終生に渡って病 徵が認められない個体を完全型抵抗性としてスコアリングを行う。 予想される結 果を以下の表 1. 1および表 2. 1に示す。 表 1. 1 : P 1、 P 2、 P 3、 P 5、 Pn s 6、 P 7、 P8、 P 9、 P 10およ び Pn s 1 1を標的とした形質転換イネ自殖第 1代 (T 1) 株の RDV接種検定
a各 10株を接種試験に供試、 非組換え体を除いたもの。
表中の数値は、 感受性と認められた株の総数である。
表 2. 1 :各分節ゲノムを標的とした形質転換イネ自殖第 1代 (T1) 株の RD V接種検定
S :感受性 (接種後 3週間以内に発病)
D:発病遅延型抵抗性 (接種後 3— 8週に発病; D(8w)は、 接種後 8週間後に観察 した場合に発病していたものである)
R :抵抗性 (無病徴 接種後 8週間)
P 1を標的とした形質転換イネは、 発病遅延型抵抗性 (すなわち、 感染が遅延 するもの) が得られる。 P 2を標的とした形質転換イネは、 感受性 (すなわち、 全て感染するもの) が得られる。 P 3を標的とした形質転換イネは、 発病遅延型 抵抗性 (すなわち、 感染が遅延するもの) が得られる。 P 5を標的とした形質転 換イネは、 発病遅延型抵抗性 (すなわち、 感染が遅延するもの) が得られる。 P n s 6を標的とした形質転換イネは、 発病遅延型抵抗性 (すなわち、 感染が遅延 するもの) が得られる。 P 7を標的とした形質転換イネは、 発病遅延型抵抗性 (すなわち、 感染が遅延するもの) が得られる。 P 8を標的とした形質転換イネ は、 発病遅延型抵抗性 (すなわち、 感染が遅延するもの) が得られる。 P 9を標 的とした形質転換イネは、 発病遅延型抵抗性 (すなわち、 感染が遅延するもの) が得られる。 P n s 1 0を標的とした形質転換イネは、 感受性 (すなわち、 全て 感染するもの) が得られる。 P n s 1 1を標的とした形質転換イネは、 発病遅延 型抵抗性 (すなわち、 感染が遅延するもの) が得られる。
P 1を標的とした形質転換イネは、 約 8 0 %程度が抵坊性を示し、 約 2 0 %程 度が発病遅延型抵抗性を示すと思われる。 P 1は、 おそらく感染中期に関与する タンパク質であることから、 ウィルスの複製が進むにつれて P 1 mR NAが多 量に転写される。 このことにより、 P 1の発現抑制効果が薄れ、 結果的に、 発病 遅延型抵抗性を示す株が得られると考えられる。 P 2を標的とした形質転換ィネ は、 1 0 0 %感受性を示すと思われる。 P 2は、 おそらく植物での感染に不要な タンパク質であることから、 P 2の発現抑制効果はウィルス複製に影響を与えず、 結果的に、 抵抗性を示す株は全く得られないと考えられる。 P 3を標的とした形 質転換イネは、 約 8 0 %程度が抵抗性を示し、 約 2 0 %程度が発病遅延型抵抗性 を示すと思われる。 P 3は、 おそらく感染中期に関与するタンパク質であること から、 ウィルスの複製が進むにつれて P 3 mR N Aが多量に転写される。 この ことにより、 P 3の発現抑制効果が薄れ、 結果的に、 発病遅延型抵抗性を示す株 が得られると考えられる。 P 5を標的とした形質転換イネは、 約 6 0 %程度が抵
抗性を示し、 約 40%程度が発病遅延型抵抗性を示すと思われる。 P 5は、 おそ らく感染中期に関与するタンパク質であることから、 ウィルスの複製が進むに れて P 5 mRNAが多量に転写される。 このことにより、 P 5の発現抑制効果 が薄れ、 結果的に、 発病遅延型型抵抗性を示す株が得られると考えられる。 Pn s 6を標的とした形質転換イネは、 約 70%程度が抵抗性を示し、 約 30%程度 が発病遅延型抵抗性を示すと思われる。 Pn s 6は、 おそらく感染初 ·中期に関 与するタンパク質であることから、 ウィルスの複製が進むにつれて Pn s 6 m RNAが多量に転写される。 このことにより、 P n s 6の発現抑制効果が薄れ、 結果的に、 発病遅延型抵抗性を示す株が得られると考えられる。 P 7を標的とし た形質転換イネは、 約 80%程度が抵抗性を示し、 約 20%程度が発病遅延型抵 抗性を示すと思われる。 P 7は、 おそらく感染中期に関与するタンパク質である ことから、 ウィルスの複製が進むにつれて P 7 mRNAが多量に転写される。 このことにより、 P 7の発現抑制効果が薄れ、 結果的に、 発病遅延型抵抗性を示 す株が得られると考えられる。 P 8を標的とした形質転換イネは、 約 60%程度 が抵抗性を示し、 約 40%程度が発病遅延型抵抗性を示すと思われる。 P8は、 おそらく感染中 ·後期に関与するタンパク質であることから、 ウィルスの複製が 進むにつれて P 8 mRNAが多量に転写される。 このことにより、 P 8の発現 抑制効果が薄れ、 結果的に、 発病遅延型抵抗性を示す株が得られると考えられる。 P 9を標的とした形質転換イネは、 約 60%程度が抵抗性を示し、 約 40%程度 が発病遅延型抵抗性を示すと思われる。 P 9は、 おそらく感染後期に関与する夕 ンパク質であることから、 ウィルスの複製が進むにつれて P 9 mRNAが多量 に転写される。 このことにより、 P 9の発現抑制効果が薄れ、 結果的に、 発病遅 延型抵抗性を示す株が得られると考えられる。 Pn s 10を標的とした形質転換 イネは、 100 %感受性を示すと思われる。 Pn s 10は、 おそらく植物での感 染に不要なタンパク質であることから、 Pn s 10の発現抑制効果はウィルス複 製に影響を与えず、 結果的に、 抵抗性を示す株は全く得られないと考えられる。
Pn s 1 1を標的とした形質転換イネは、 約 80%程度が抵抗性を示し、 約 2 0%程度が発病遅延型抵抗性を示すと思われる。 Pn s 1 1は、 おそらく感染 初 '中期に関与するタンパク質であることから、 ウィルスの複製が進むにつれて Pn s l l mRN Aが多量に転写される。 このことにより、 P n s 11の発現 抑制効果が薄れ、 結果的に、 発病遅延型抵抗性を示す株が得られると考えられる。
(5) S4および S 12導入遺伝子の有無と RDV抵抗性との相関;
T 1植物の抵抗性の有無と導入遺伝子の有無の関連について、 C TAB法によ り T 1植物から調製した DNAを铸型にして、 植物形質転換ベクタ一内の GUS 配列をプライマーとして用いて PCRを行った。 図 17Bおよび図 18Bから明 らかなように、 導入遺伝子が存在する株については、 抵抗性および発病遅延型抵 抗性が認められ、 導入遺伝子が存在しない株については、 全て感受性であった。 上記の結果から、 本発明の形質転換イネが、 RDVに対する発病遅延型抵抗性 ないし抵抗性を示すことが明らかになった。
(6) S l、 S 2、 S 3、 S 5、 S 6、 S 7、 S 8、 S 9、 S 10および S l l 導入遺伝子の有無と RDV抵抗性との相関;
T 1植物の抵抗性の有無と各導入遺伝子の有無の関連について、 C TAB法に より T 1植物から調製した DNAを铸型にして、 植物形質転換ベクター内の GU S配列をプライマーとして用いて P C Rを行う。 導入遺伝子が存在する株につい ては、 抵抗性および発病遅延型抵抗性が認められ、 導入遺伝子が存在しない株に ついては、 全て感受性であると考えられる。
(7) 作出された RDV抵抗性イネの後代 T 3植物における接種検定; 後代植物においても R D V抵抗性が受け継がれているか否かを確認するために、 T 1植物から T 2種子を取得して、 T 2植物を生育させる。 この T 2植物から T
3種子を得、 9葉期まで生育させて、 試験用 T 3植物を得る。 得られた T 3植物 において、 上記 (3) と同様に、 各形質転換体系統につき T1イネおよそ 10株 に対して、 約 80 %が RDVを保毒したツマグロョコバイの成虫を健全イネ 1株 当たり 5頭以上になるように放飼、 26 程度の温室で約 1日間イネを吸汁させ て行う。 上記 (3) と同様に接種検定を行うと、 T 3植物においても、 RDV抵 抗性ないし発病遅延型抵抗性が受け継がれていることが確認できる。 上記の結果から、 本発明の形質転換イネが、 RDVに対する発病遅延型抵抗性 ないし抵抗性を示すことが明らかになる。
(8) 作出された RDV抵抗性イネの後代 T 3植物における接種検定; 後代植物においても R D V抵抗性が受け継がれているか否かを確認するために、 T 1植物から T 2種子を取得して、 T 2植物を生育させる。 この T 2植物から T 3種子を得、 9葉期まで生育させて、 試験用 T 3植物を得る。 得られた T 3植物 において、 上記 (3) と同様に、 各形質転換体系統につき T 1イネおよそ 10株 に対して、 約 80 %が RDVを保毒したツマグロョコバイの成虫を健全イネ 1株 当たり 5頭以上になるように放飼、 26 :程度の温室で約 1日間イネを吸汁させ て行う。 上記 (3) と同様に接種検定を行うと、 T 3植物においても、 RDV抵 抗性ないし発病遅延型抵抗性が受け継がれていることが確認できる。 実施例 6 : RDVの複数タンパク質 (P n s 4および P n s 12) の発現抑制 イネの作出
(1) RNA i誘起ベクターの構築;
上記実施例 2 (1) で得た PC R増幅産物 trigger 12N、 および trigger 4Nを 铸型にして、 以下のプライマーセット:
trigger 12N2についてプライマーセット 5 :
プライマ一 S12- GSF1: CACCATGTTCAAGAGCGGGTCCG (配列番号 38) ; と プライマー S4S12- GSR1 : CAAAGCTTCGAGATTGGTTCATTAGTGTTGTTCAACTCCGTCA (配列番号 47) 、 および trigger 4N2についてプライマ一セット 6 :
プライマ一 S12S04- GSF1 : TGACGGAGTTGAACAACACTAATGAACCAATCTCGAAGCTTTG (配列番号 48) ; と
プライマー S04- GSR1: GTCTCCGAGTCAGACAAATTC (配列番号 43) を用いてそれぞれ PC Rを行い、 trigger 12N2 (配列番号 49) 、 trigger 4N2 (配列番号 50) を得る。 これら PCR産物を混合したのち、 上記プライマー S 1 2 -GS F 1 (配列番号 3 8) とプライマー S04- GSR1 (配列番号 43) で融合 PCRを行い、 trigger 12N4N (配列番号 5 1 ) の増幅産物を得る。
(2) 制限酵素または Gateway (I nvitrogen) システムなどを用いて、 形質転 換用の RNA iバイナリーベクターを作製する;
(1) で得た増幅産物を、 上記実施例 2 (2) に記載されるように、 pENTR™/ D-T0P0 (登録商標) クロ一ニングキッド(Invitrogen cat. K2435-20) を用いて、 製造業者の説明書に従って pENTR/D- T0P0 (Invitrogen) にクローン化し、 ェント リ一ベクタ一 pENTR/trigger 12N4Nを得る。
(3) RNA iを引き起こす因子を形質転換ベクターにクローニングする; (2) で作製した RNA iを引き起こす各因子 (trigger 12N4N) を、 上記実 施例 2 (3) に記載されるように、 Gatewayシステムの LRクロナーゼ反応系 (I nvitrogen) を用いて、 pANDAベクター (奈良先端大学院大学島本教授より分譲)
へクローン化する。
(4) 上記べクタ一をエレクトロポレーション法などによってァグロバクテリウ ムへ導入する;
上記各べクタ一を、 上記実施例 4 (1) に示されるように、 エレクト口ポレー シヨン法によって GenePulser (BioRad) を用いて、 製造業者の説明書に従ってァ グロバクテリゥムへ導入する。 ァグロパクテリゥムにベクターが導入されている ことを、 上記実施例 4 (2) に記載されるように、 アルカリ SDS法 (Molecula r Cloning 第 3版を参照のこと) によりプラスミドを抽出した後、 PCRによ り確認した。
(5) カルス化したイネにァグロパクテリゥムを感染させ、 感染確認後、 再分化 させ、 RDV抵抗性イネを作出する;
RDV抵抗性イネを作出するために、 実施例 4 (3) に記載されるように、 力 ルス化したイネを作製する。 カルスの前培養を始め、 これに並行して上記 (4) において得られたァグロパクテリゥムのストック溶液から滅菌した爪楊枝で菌体 を採取し、 前培養を行う。
前培養したカルスに、 前培養した上記ァグロパクテリゥムの懸濁液中に浸漬 · 感染させる。 その後、 カルスを N6 CO培地に 16カルス Zシャーレで置床し、 シャーレをテープでシールして、 30〜33 において遮光して 3日間培養する。 培養後、 全てのカルスを N 6 SE培地に、 9カルス シャーレで移植し、 30〜 33"Cにおいて 24時間明期の条件下で、 14日間培養し、 選択されたカルスを RE培地に移し、 30〜33 :において再分化してくるまで培養する。 再分化し たシュートおよび根を HF培地に移し、 2〜3週間培養した後、 鉢上げする。
(6) 形質転換体当代 (T0) 株における導入遺伝子の確認
上記 (5) において作出した形質転換体当代 (TO) 株において目的の遺伝子 が導入されているか否かを確認するために、 T 0株から C T A B法により調製し た DNAを H i n d I I Iで消化後、 形質転換ベクター内の薬剤選抜マーカ一 (ハイグロマイシン耐性) 遺伝子をプローブにサザンハイブリダィゼ一シヨンす ることにより行う。 TO株における導入遺伝子の転写産物の断片化による s i R N Aの検出は、 低分子 RN Aを抽出 (基本的に、 Hamilton, 1999, Science.286, 95 0に従った) した後、 Trigger 12N4Nをプローブとしてノーザンハイブリダィゼー シヨンすることにより行う。 実施例 7 :形質転換体 T 1における他の RDV株感染と RNA i誘導の確認 (1) T 1植物への RDV秋田株感染;
実施例 2において得られたベクターを使用して、 実施例 4に記載されるように RDV抵抗性イネを作出し、 T 0イネの各々を 1株とする。 それぞれの株から全 ての T1種子を回収する。 イネへの RDV秋田株、 Chinese株、 Kunming株および Yunnan株の接種は、 各形質転換体系統につき T 1イネおよそ 10株に対して、 約 80 %が RDV秋田株を保毒したツマグロョコバイの成虫を健全イネ 1株当たり 5頭以上になるように放飼、 26 程度の温室で約 1日間イネを吸汁させて行う。 これらの実験を行うことによって、 O株に基づく発現抑制剤が RDVの O株感染 に対する抵抗性のみならず、 O株以外の RDV株の感染に対する抵抗性も付与す ることを確認することができる。 実施例 8 :〇株以外の RDVのタンパク質 (Pn s 12) の発現抑制イネの作 出および RNA i誘導の確認
(秋田株)
RDV秋田株感染イネの葉から、 実施例 2に記載されるように、 配列情報とし ては、 ァクセッション番号 S 72085 (配列番号 23) を用いて、 定法に従つ
て総 RNAを抽出して、 逆転写反応を行い、 cDNAを合成し、 目的の領域 (Tr iggerl2N (Akita) ) に特異的なプライマ一セットを用いて P C Rを行い、 目的 の領域の増幅産物を得る。
上記実施例 2 (2) に記載されるように、 上記で得た増幅産物を、 pENTR™/D- T0P0 (登録商標) クローニングキット (Invitrogen cat. K2435-20) を用いて、 製造業者の説明書に従って pENTR/D-TOPO (Invitrogen) にクロ一ン化し、 ェント リ一ベクター pENTR/t rigger 12N (Akita) を得る。
このクローニングベクターを、 同様に上記実施例 2 (2) に記載されるように E. coli株に形質転換し、 形質転換 E. coliを 50^gZm l カナマイシンを含 む LBプレート上で選択する。 定法に従って、 単一のコロニーを単離してこのク ローニングベクターを含む形質転換 E. coliを増殖させる。 形質転換体からブラ スミド DNAを単離し、 配列決定することによって、 目的の領域がクローニング されていることを確認する。
上記のようにして得られたプラスミド DNAを、 上記実施例 2に記載されるよ うに、 Gateway (Invitrogen) システムの L Rクロナーゼ反応系を用いて、 pANDA ベクター (奈良先端大学院大学島本教授より分譲) へクローン化する。
実施例 4に記載されるように R D V抵抗性ィネを作出し、 T 0イネの各々を 1 株とする。 それぞれの株から全ての T 1種子を回収する。 イネへの〇株、 RDV 秋田株、 Chinese株、 Kunming株および Yunnan株の接種は、 各形質転換体系統につ き T 1イネおよそ 10株に対して、 約 80 %が RDV秋田株を保毒したツマグロ ョコバイの成虫を健全イネ 1株当たり 5頭以上になるように放飼、 26T:程度の 温室で約 1日間イネを吸汁させて行う。 これらの実験を行うことによって、 秋田 株の情報に基づいて設計した Trigger 12N (Akita) を含む発現抑制剤は、 RDV の秋田株感染に対する抵抗性のみならず、 RDVの秋田株以外の株感染に対する 抵抗性も付与することを確認することができる。
(他の株)
秋田株に基づく上記実験と同様の実験を Ch inese株、 Kunming株および Yunnan株 についても行う (Ch inese株については、 ァクセッション番号 N C_ 0 0 3 7 6 8およびァクセッション番号 U 3 6 5 6 9、 Kunming株についてァクセッション 番号 AY 3 4 0 2 3 8、 Yunnan株についてァクセッション番号 AY 5 8 9 5 7 6 を参照して作製することができる。 ) 。 これらの実験を行うことによって、 Chin ese株、 Kunming株および Yunnan株の情報に基づいて設計した Tr igger 12Nを含む 発現抑制剤は、 R D Vのそれぞれが由来する株感染に対する抵抗性のみならず、 R D Vのそれぞれが由来する株以外の株感染に対する抵抗性も付与することを確 認することができる。 以上のように、 本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、 本発明は、 請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解 される。 本明細書において引用した特許、 特許出願および文献は、 その内容自体 が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参 考として援用されるべきである。 産業上の利用可能性
本発明により、 より無病徴のレベルの高い抵抗性を示し、 抑制または安定した 抵抗性が付与されたイネ萎縮ウィルス抵抗型イネの作出方法および抵抗型品種が 提供される。