明 細 書
移動性能試験装置
技術分野
[0001] 本発明は、複数の脚体の動きにより移動可能なロボットの移動性能を試験する装置 に関する。
背景技術
[0002] モータにより回転駆動されるエンドレスベルトの上で歩行または走行の訓練をして いるランナーの前後位置に応じて、当該エンドレスベルトの回転駆動速度を調節する トレッドミルが提案されている(日本国 特開平 07— 136295号公報 第 0010段落 〜第 0014段落、図 3および特開平 10— 071216号公報 第 0005段落〜第 0007 段落、図 1参照)。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0003] しかし、トレッドミルを用いて脚式移動ロボットの移動性能を試験する場合、トレッドミ ルおよびロボットのそれぞれの動作リズムまたはテンポが調和せず、満足な試験が実 施できない場合がある。
[0004] そこで、本発明は、試験装置の動作をロボットの動作に調和させながら当該ロボット の移動性能を試験しうる装置を提供することを解決課題とする。
課題を解決するための手段
[0005] 第 1発明の移動性能試験装置は、複数の脚体のそれぞれの離床および着床の繰り 返しを伴う動きによって移動可能なロボットの移動性能を試験する装置であって、ェ ンドレスベルトと、該エンドレスベルトを回転駆動するモータと、該エンドレスベルトの 駆動速度変化パターンを定めるモータ動作計画にしたがって該モータの動作を制御 するモータ制御部とを備え、該モータ制御部が、前記ロボットの移動速度変化パター ンを定めるロボット動作計画を、当該ロボット動作計画にしたがって該ロボットの動作 を制御するロボット制御部との通信によって認識する第 1処理部と、該第 1処理部によ り認識された該ロボット動作計画に基づき、当該モータ動作計画を作成する第 2処理
部とを備えてレ、ることを特徴とする。
[0006] 第 1発明の移動性能試験装置によれば、ロボット動作計画に基づいてモータ動作 計画が作成され、当該モータ動作計画にしたがってモータの動作が駆動される。こ れにより、エンドレスベルトの駆動速度変化パターンが、当該エンドレスベルトの上で 移動性能が試験されているロボットの移動速度変化パターンに応じて制御されうる。 そして、エンドレスベルトの動きのテンポがロボットの動きのテンポに歩み寄るように、 両者の動きのテンポの調和が図られ、この状態で当該ロボットの移動性能が安定に 試験されうる。なお「速度」とは向き(ベクトル)および大きさ (スカラー)の両方を包含 する概念であり、「速度変化」とは速度が有する向きまたは大きさのうち一方または両 方の変化を意味する。また「ロボットの移動速度」とは、ロボットの静的座標系における 移動速度ではなぐ回転駆動されているエンドレスベルトの上の動的座標系における 移動速度を意味する。さらに「ロボット動作計画」には、たとえば一定速度での移動、 連続的または段階的加速移動、連続的または段階的減速、ランダムウォーク等が含 よれ 。
[0007] 第 2発明の移動性能試験装置は、第 1発明の移動性能試験装置において、前記第 2処理部が前記ロボット動作計画により定められる前記ロボットの目標 ZMPおよび安 定支持領域に基づき、該目標 ZMPが該安定支持領域に収まるように当該エンドレス ベルトの駆動速度を定める前記モータ動作計画を作成することを特徴とする。
[0008] 第 2発明の移動性能試験装置によれば、ロボットの目標 ZMPが安定支持領域(口 ボットの脚体のうち接地している領域を凹にならないように囲んだ領域をいう。 )に収 まるように当該エンドレスベルトの駆動速度が制御される。したがって、ロボットの挙動 変化等によってその目標 ZMPが安定支持領域から外れてしまうことによってロボット の姿勢が不安定になる事態を回避しながら、当該ロボットの移動性能試験を実行す ること力 Sでさる。
[0009] 第 3発明の移動性能試験装置は、第 1発明の移動性能試験装置において、前記第 2処理部が前記ロボット動作計画により定められる前記ロボットの移動速度変化バタ ーンに対して位相差を有する、前記エンドレスベルトの駆動速度変化パターンを定め る前記モータ動作計画を作成することを特徴とする。
[0010] 第 3発明の移動性能試験装置によれば、エンドレスベルトの駆動速度変化パターン 力 S、エンドレスベルトの上で移動性能が試験されているロボットの移動速度変化パタ ーンと位相差を有するように制御されうる。ここで「位相差」とは、ロボットの移動速度 の変化に対するエンドレスベルトの駆動速度の変化の時間的ずれを定める因子であ る。たとえば位相差の符号により、ロボットの移動速度の変化に対して、エンドレスべ ルトの駆動速度が先んじて変化して!/、るかまたは遅れて変化して!/、るかが定められぅ る。また、位相差の大きさにより、エンドレスベルトの駆動速度の変化がロボットの移動 速度の変化に対してどの程度ずれているかが定められうる。したがって、エンドレスべ ノレトの動きのテンポとロボットの動きのテンポとが、当該位相差に応じた関係を維持す るような調和が図られる。
[0011] 第 4発明の移動性能試験装置は、第 3発明の移動性能試験装置において、前記第 2処理部が、前記ロボットの運動状態、または前記第 1処理部により認識された前記 ロボット動作計画に基づき、前記位相差を設定することを特徴とする。
[0012] 第 4発明の移動性能試験装置によれば、ロボットの動きのテンポをロボットの運動状 態または動作計画に鑑みて当該ロボットの動きのテンポに適当に調和させた状態で 、ロボットの移動性能が試験されうる。ロボットの「運動状態」としては、たとえば、歩行 状態(一部の脚体が離床している一方、他の脚体が着床している期間が連続する移 動状態)、走行状態 (すべての脚体が離床している期間が断続的に現れる移動状態 )、一定速度での移動状態、連続的または段階的加速移動状態、連続的または段階 的減速状態、水平面移動状態、傾斜面上昇移動状態、傾斜面下降状態、ランダムゥ オーク状態等が挙げられる。
[0013] 第 5発明の移動性能試験装置は、第 1発明の移動性能試験装置において、前記第 2処理部が前記ロボット制御部との通信によって、該ロボット制御部に前記モータ動 作計画を認識させ、かつ、該モータ動作計画に基づいて前記ロボットの目標 ZMPが 安定支持領域に収まるように該ロボット動作計画を作成させることを特徴とする。
[0014] 第 5発明の移動性能試験装置によれば、ロボットの目標 ZMPが安定支持領域に収 まるように、当該ロボットにその歩行動作または走行動作を制御させることができる。し たがって、エンドレスベルトの駆動速度の変化等によってその目標 ZMPが安定支持
領域から外れてしまうことによってロボットの姿勢が不安定になる事態を回避しながら 、当該ロボットの移動性能試験を実行することができる。
[0015] 第 6発明の移動性能試験装置は、第 5発明の移動性能試験装置において、前記第 2処理部が前記ロボット動作計画により定められる前記ロボットとの通信によって、該 ロボット制御部に前記モータ動作計画に応じて定まる前記エンドレスベルトの駆動速 度変化パターンを認識させ、かつ、該駆動速度変化パターンに対して位相差を有す る、前記ロボットの移動速度変化パターンを定める前記ロボット動作計画を作成させ ることを特徴とする。
[0016] 第 6発明の移動性能試験装置によれば、エンドレスベルトの駆動速度変化パターン に対して、エンドレスベルトの上で移動性能が試験されて!/、るロボットの移動速度変 化パターンが位相差を有するように、当該ロボットにその歩行動作または走行動作を 制御させること力 Sできる。これにより、エンドレスベルトの動きのテンポにロボットの動き のテンポを、当該位相差に応じた形態で調和させながら当該ロボットの移動性能が 試験されうる。
[0017] 第 7発明の移動性能試験装置は、第 6発明の移動性能試験装置において、前記第
2処理部が前記ロボット制御部に前記ロボットの運動状態または前記ロボット動作計 画に基づき、前記位相差を設定させることを特徴とする。
[0018] 第 7発明の移動性能試験装置によれば、ロボットの動きのテンポをロボットの運動状 態または動作計画に鑑みて適当にエンドレスベルトの動きのテンポに調和させながら ロボットの移動性能が試験されうる。
[0019] 第 8発明の移動性能試験装置は、第 1発明の移動性能試験装置において、複数の エンドレスベルトと、該複数のエンドレスベルトのそれぞれを回転駆動する複数のモ 一タとを備え、前記モータ制御部が当該複数のモータのそれぞれの動作を制御する ことを特徴とする。
[0020] 第 8発明の移動性能試験装置によれば、複数のエンドレスベルトのそれぞれの動き のテンポと、複数の脚体のそれぞれの動きを含むロボットの動きのテンポとの調和を 図りながら、ロボットの移動性能が試験されうる。また、ロボットの複数の脚体のそれぞ れの動きの違いに応じて複数のエンドレスベルトのそれぞれの動きが差別化されうる
。これにより、当該複数のエンドレスベルトの上でロボットの位置および向きを一定に 維持しながらロボットの左右への旋回等、前進または後退とは異なる移動性能が試 験されうる。
[0021] 第 9発明の移動性能試験装置は、複数の脚体のそれぞれの離床および着床の繰り 返しを伴う動きによって移動可能なロボットの移動性能を試験する装置であって、ェ ンドレスベルトと、該エンドレスベルトを回転駆動するモータと、該エンドレスベルトの 駆動速度変化パターンを定めるモータ動作計画にしたがって該モータの動作を制御 するモータ制御部とを備え、該モータ制御部が、前記ロボットの移動速度変化パター ンを定めるロボット動作計画にしたがって該ロボットの動作を制御するロボット制御部 との通信によって、該ロボット制御部に該モータ動作計画を認識させ、かつ、該モー タ動作計画に基づいて該ロボット動作計画を作成させることを特徴とする。
[0022] 第 9発明の移動性能試験装置によれば、モータ動作計画に基づいてロボット動作 計画が作成され、当該ロボット動作計画にしたがってロボットの動作が制御される。こ れにより、エンドレスベルトの上で移動性能が試験されているロボットの移動速度変化 パターンが、当該エンドレスベルトの駆動速度変化パターンに応じて制御されうる。そ して、ロボットの動きのテンポがエンドレスベルトの動きのテンポに歩み寄るように、両 者の動きのテンポの調和が図られ、この状態で当該ロボットの移動性能が安定に試 験されうる。
[0023] 第 10発明の移動性能試験装置は、第 9発明の移動性能試験装置において、複数 のエンドレスベルトと、該複数のエンドレスベルトのそれぞれを回転駆動する複数の モータとを備え、前記モータ制御部が当該複数のモータのそれぞれの動作を制御す ることを特徴とする。
[0024] 第 10発明の移動性能試験装置によれば、複数のエンドレスベルトのそれぞれの動 きのテンポと、複数の脚体のそれぞれの動きを含むロボットの動きのテンポとの調和 を図りながら、ロボットの移動性能が試験されうる。また、ロボットの複数の脚体のそれ ぞれの動きの違いに応じて複数のエンドレスベルトのそれぞれの動きが差別化されう る。これにより、当該複数のエンドレスベルトの上でロボットの位置および向きを一定 に維持しながらロボットの左右への旋回等、前進または後退とは異なる移動性能が試
験されうる。
図面の簡単な説明
[0025] [図 1]本発明の移動性能試験装置の構成説明図
[図 2]本発明の移動性能試験装置の構成説明図
[図 3]本発明の移動性能試験装置の機能説明図
[図 4]本発明の移動性能試験装置の機能説明図
[図 5]本発明の移動性能試験装置の機能説明図
発明を実施するための最良の形態
[0026] 本発明の移動性能試験装置の実施形態について図面を用いて説明する。まず、 移動性能試験装置の構成について図 1〜図 2を用いて説明する。以下、左右を区別 するために符号「L」および「R」を用いる力 左右各成分について表現が共通する場 合や左右両成分をまとめて指す場合には当該符号を適宜省略する。
[0027] 移動性能試験装置 1はロボット 2等の移動性能を試験するためのものであり、トレツ ドミル 10と、ロボット 2の移動性能を表示するモニタやその他計測機器 16 (図 2参照) と、モータ制御部 100とを備えている。
[0028] トレッドミル 10は一対の並列されたエンドレスベルト 11Lおよび 11Rと、一対のェン ドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれを回転駆動する 2つのモータ 12Lおよび 12 Rと、ロボット 2を吊り下げた状態で上げ下げ自在なリフタ 14とを備えている。
[0029] エンドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれは、一対のローラ 102Lおよび 104L、 ならびに一対のローラ 102Rおよび 104Rのそれぞれに掛け渡されている。ローラ 10 2Lおよび 102Rのそれぞれがモータ 12Lおよび 12Rのそれぞれにより駆動されるこ とにより、エンドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれが回転駆動される。エンドレス ベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれには当該駆動速度に応じた信号を出力するェンコ ーダ(図示略)が設けられてレ、る。
[0030] トレッドミル 10の後部には、トレッドミル 10の前部に配置された横並びの発光素子ァ レイ 111から発せられた光を検知する横並びの受光素子アレイ(第 1センサ) 112が 設けられている。第 1センサ 112の出力状態、すなわち、第 1センサ 112を構成する 各受光素子の受光状態および非受光状態の別は、ロボット 2の横方向の立ち位置に
応じて変化する。トレッドミル 10の前部左右には、トレッドミル 10の後部左右に配置さ れた反射体 113Lおよび 113Rに向けて光を発し、当該反射体 113Lおよび 113Rの それぞれによる反射光を検知する第 1リミットセンサ 114Lおよび 114Rが配置されて V、る。第 1リミットセンサ 114Lおよび 114Rはそれぞれロボット 2の一部がトレッドミル 1 0における許容エリアからその左右にはみ出したか否かに応じた信号を出力する。
[0031] トレッドミル 10の前部にはロボット 2にレーザー光を照射し、このレーザー光のロボッ ト 2からの反射光に基づき、当該ロボット 2の前後方向の立ち位置に応じた信号を出 力する第 2センサ 122が配置されている。トレッドミル 10の前部左右および後部左右 にはそれぞれ第 2リミットセンサ 1241および 1242が配置されている。第 2リミットセン サ 1241および 1242はそれぞれロボット 2の一部がトレッドミル 10における許容エリア 力、らその前後にはみ出したか否かに応じた信号を出力する。
[0032] モータ制御部 100は CPU, ROM, RAM, I/O等により構成されており、「ロボット 動作計画」に基づいて作成された「モータ動作計画」にしたがってモータ 12Lおよび 12Rのそれぞれの動作を制御する。また、モータ制御部 100は第 1センサ 111およ び 112、ならびに第 2センサ 122の出力に応じて、ロボット 2の前後左右の位置または 方向の目標位置または目標方向との偏差を測定し、当該偏差が解消されるようにモ ータ 12Lおよび 12Rのそれぞれの動作を制御することもできる。さらに、モータ制御 部 100は第 1処理部 110と第 2処理部 120とを備えている。
[0033] 第 1処理部 110はロボット 2の目標 ZMP、安定支持領域、および速度変化パターン 等を定める「ロボット動作計画」を、ロボット 2のロボット制御部 200との通信によって認 識する。 目標 ZMPはロボット 2の重心の位置、当該重心に作用する力の鉛直成分( たとえば、ロボット 2の質量に基づいて求められる。)および当該力の水平成分(たと えば、ロボット 2の水平方向の加速度に基づいて求められる。)に基づいて定められる 。安定支持領域は、ロボット 2の脚体 22Lおよび 22Rのうち接地または着床している 領域 (足裏)に基づき、当該領域を凹にならないように囲んだ領域として定められる( たとえば再表 03/057427号公幸 図 45、再表 03/061917号公幸 図 39における「 支持多角形」参照。)。
[0034] 第 2処理部 120は第 1処理部 110により認識されたロボット動作計画に基づき、ェン
ドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれの駆動制御のための「モータ動作計画」を作 成する。具体的には、ロボット 2の目標 ZMPを安定支持領域に収める観点から適当 にエンドレスベルト 11Lおよび 11Rが駆動制御されるようにモータ動作計画が作成さ れる。また、エンドレスベルト 11Lおよび 11Rの駆動速度変化パターンと、ロボット 2の 移動速度変化パターンとの位相差 δ Θを目標位相差 δ Θ に近づける観点から適当
0
にエンドレスベルト 11Lおよび 11Rが駆動制御されるようにモータ動作計画が作成さ れる。
[0035] ロボット 2は基体(胴体) 20と、基体 20の上部から左右に延設された一対の腕体 21 と、基体 20の下部から延設された左右一対の脚体 22と、基体 20の上側に設けられ た頭部 23と、脚体 22等の動作を「ロボット動作計画」にしたがって制御するロボット制 御部 200とを備えて!/、る。ロボット 2は左右の脚体 22のそれぞれの離床および着床を 伴う動きにより、歩行または走行する機能を有している。
[0036] 続いて、前記構成の移動性能試験装置 1によるロボット 2の移動性能の試験方法に ついて図 3〜図 5を用いて説明する。
[0037] まず、ロボット 2がリフタ 14によって吊り下げられたまま動力、され、静止しているエンド レスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれに左右の脚体 22Lおよび 22Rのそれぞれが つくようにその初期位置に置かれる。ロボット 2が歩行または走行を開始すると、これ に応じてモータ 12Lおよび 12Rのそれぞれが動作を開始し、エンドレスベルト 11Lお よび 11Rのそれぞれが同じ速度で回転駆動され始める。ロボット 2の動作開始は、た とえばモータ制御部 100によりロボット制御部 200との通信によってロボット 2の動作 開始が検知される。そのほか、モータ制御部 100により、第 2センサ 122の出力に基 づレ、てロボット 2の動作開始が検知されてもよ!/、。
[0038] 図 1および図 2に示されているようにロボット 2の左右両肩に付されたベルトを介して リフタ 14によってロボット 2が吊り上げられうる状態で当該ロボット 2の移動性能が試験 される。なお、ロボット 2がリフタ 14から解放された状態で当該ロボット 2の移動性能が 試験されてもよい。
[0039] 第 1処理部 110はロボット 2が動作を開始する前後において、ロボット制御部 200と の通信により、ロボット制御部 200のメモリに格納されているロボット動作計画を逐次
的に認識または受信する(図 3/S002)。
[0040] ロボット動作計画により、たとえば図 4に破線で示されているように歩行開始、速度 維持、加速、速度維持および歩行停止の順で変化するロボット 2の移動速度 Vの変 化パターンが特定されうる。
[0041] また、ロボット動作計画により、ロボット 2の挙動に応じて変化する各時点における目 標 ZMPおよび安定支持領域が認識される。 目標 ZMPは図 5に示されているように口 ボット 2の重心に作用する力 fの作用線が地面(エンドレスベルト 11L、 11R)と交わる 点として求められる。たとえば当該作用力 fの鉛直成分 f はロボット 2の質量 Mおよび 重力加速度 gを用いて f =Mgと表され、当該作用力 fの水平成分 f はロボット 2の質 量 Mおよび加速度の水平成分 αを用いて f =Μ αと表される。安定支持領域はロボ ット 2の脚体 22Lおよび 22Rのうち接地している領域を凹ができないように囲う領域と して求められる。たとえば、図 5に示されているようにロボット 2が左脚体 22Lの下端部 (足平部)において着床している場合、左脚体 22Lの足裏領域が安定支持領域とし て認識される。
[0042] 続いて、第 2処理部 120はロボット動作計画に基づき、モータ動作計画を作成する( 図 3/S004)。このモータ動作計画により、図 4に実線で示されているように加速、速 度維持、再加速、速度維持、減速および停止の順で変化することで、ロボット 2の前 後左右の位置を目標位置に維持するためのエンドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれ ぞれの移動速度 Vの変化パターンが特定されうる。エンドレスベルト 11の駆動速度 V
1 1 の変化パターンは、ロボット 2の移動速度 Vの変化パターンに対して位相差 δ Θを有 する。図 4に示されているように位相差 δ Θはロボット 2の移動速度 Vの変化に対する エンドレスベルト 11の駆動速度 Vの変化の時間ずれを表す因子であり、固定的に設
1
定されてもよいが、可変的に設定されうる。なお、位相差 δ Θがロボット 2の運動状態 に基づいて設定されてもよい。ロボット 2の運動状態としては、加速移動状態、減速移 動状態等が挙げられる。ロボット 2が安定に歩行動作または走行動作して!/、るときは 第 2センサ 122により測定されるロボット 2の前後方向の立ち位置と、エンドレスベルト 111の駆動速度 Vとに基づいてロボット 2の運動状態が認識される。また、ロボット 2の
1
歩行開始または歩行停止の前後においても、第 2センサ 122により測定されるロボッ
ト 2の前後方向の立ち位置と、エンドレスベルト 111の駆動速度 Vとに基づいてロボッ
1
ト 2の運動状態が認識される。なお、ロボット 2の歩行開始または歩行停止の前後に おいては CCDカメラ等の撮像装置(図示略)を通じて得られた画像の第 2処理部 12 0による解析に基づいて当該ロボット 2の運動状態が認識されてもよい。
[0043] さらに、ロボット 2の目標 ZMPが安定支持領域に含まれるように各時点における左 右のエンドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれの駆動速度 V および V が設定され
1 1R
る。たとえば、左脚体 (着床している脚体) 22Lが図 5に実線で示されている状態とな ることによりロボット 2の目標 ZMPが左脚体 22Lの足裏領域 (安定支持領域)から外 れな!/、ように左右のエンドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれの駆動速度 V およ
1L び V の変化パターンが設定される。すなわち、左脚体 22Lが図 5に破線で示されて
1R
いるような状態となり、ロボット 2の目標 ZMPが左脚体 22Lの足裏領域に含まれるよう にエンドレスベルト 11の駆動速度 Vの変化パターンが設定される。なお、安定支持
1
領域のうちロボット 2の姿勢安定維持の観点からさらに限定された領域に目標 ZMP が収まるように、左右のエンドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれの駆動速度 V お
1L よび V が設定されてもよい。また、ロボット 2に基体 20の動作により重心に加速度を
1R
作用させることで目標 ZMPを自律的に調節する機能がある場合、当該調節機能に 応じた範囲内で安定支持領域よりも拡張された領域に目標 ZMPが収まるように、左 右のエンドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれの駆動速度 V および V が設定され
1 1R
てもよい。
[0044] そして、モータ制御部 100は第 2処理部 120により作成されたモータ動作計画にし たがってモータ 12Lおよび 12Rのそれぞれの動作を制御する(図 3/S006)。これに より、エンドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれの駆動速度 Vが同じくモータ動作
1
計画にしたがって制御される。また、ロボット 2が回転駆動されているエンドレスベルト 11の上で、ロボット動作計画にしたがって歩行または走行し、この状態でロボット 2の 移動性能が試験される。
[0045] 図 1および図 2に示されているようにロボット 2の左右両肩に付されたベルトを介して リフタ 14によってロボット 2が吊り上げられうる状態で当該ロボット 2の移動性能が試験 される。なお、モータ制御部 100によりリフタ 14に加わる荷重またはその変動が測定
され、当該荷重またはその変動が許容範囲を超えた場合、リフタ 14によってロボット 2 が吊り上げられてもよい。これにより、ロボット 2がバランスを崩している蓋然性が高い 状態で移動性能試験が続行されることが回避されうる。また、ロボット 2がリフタ 14から 解放された状態で当該ロボット 2の移動性能が試験されてもよい。
[0046] また、第 1センサ 112、第 1リミットセンサ 114Lおよび 114Rのいずれかによりロボッ ト 2の一部(特に脚体 22Lおよび 22R)力 Sトレッドミル 10における許容範囲から左右外 側に外れたことが検知された場合、たとえばリフタ 14によってロボット 2が吊り上げら れ、あるいはモータ 12Lおよび 12Rが徐々に減速されて停止され、試験が強制的に 終了されてもよい。さらに、第 2センサ 122、第 2リミットセンサ 1241および 1242のい ずれかによりロボット 2の一部(特に脚体 22Lおよび 22R)力 Sトレッドミル 10における許 容範囲から前後外側に外れたことが検知された場合、たとえばリフタ 14によってロボ ット 2が吊り上げられ、あるいはモータ 12Lおよび 12Rが徐々に減速されて停止され、 試験が強制的に終了されてもよい。
[0047] その後、ロボット 2の移動が停止されたか否かが判定される(図 3/S008)。ロボット 2が移動中であると判定された場合(図 3/S008 ' · NO)、ロボット動作計画の認識 等、前述の処理が繰り返される(図 3/S002〜S008)。一方、ロボット 2の移動が停 止されたと判定された場合(図 3/S008 ' 'YES)、モータ制御部 100によりモータ 12 Lおよび 12Rの動作が徐々に停止される(図 3/S010)。
[0048] 前記機能を発揮する本発明の移動性能試験装置 1によれば、ロボット動作計画に 基づいてモータ動作計画が作成され、当該モータ動作計画にしたがってモータの動 作力馬区動される(図 3/S002, S004, S006参 0。これにより、エンドレスべノレト 11 の駆動速度 Vの変化パターンが、当該エンドレスベルト 11の上で移動性能が試験さ
1
れて!/、るロボット 2の移動速度 Vの変化パターンに応じて制御されうる。
[0049] また、ロボット 2の移動速度 Vの変化パターンに対して位相差 δ Θを有するような、 エンドレスベルト 11の駆動速度 Vの変化パターンを定めるモータ動作計画が作成さ
1
れる。これにより、エンドレスベルト 11Lおよび 11Rの駆動速度 V および V の変化パ
1L 1R ターンが、エンドレスベルト 11Lおよび 11Rの上で移動性能が試験されて!/、るロボット 2の移動速度 Vの変化パターンと位相差 δ Θを有するように制御されうる。
[0050] 前述の処理により、エンドレスベルト 11の動きのテンポがロボット 2の動きのテンポに 、当該位相差に応じた関係を維持しつつ歩み寄るように、両者の動きのテンポの調 和が図られ、この状態で当該ロボット 2の移動性能が安定に試験されうる。
[0051] さらに、ロボット 2の目標 ZMPが安定支持領域に収まるようにエンドレスベルト 11L および 11Rのそれぞれの駆動速度 V および V が制御される。したがって、ロボット 2
1 1R
の目標 ZMPが安定支持領域から外れてしまうことによってその姿勢が不安定になる 事態を回避しながら、当該ロボット 2の移動性能試験を実行することができる。たとえ ば、ロボット 2の左脚体 22Lが接地している間に左側のエンドレスベルト 11Lが過剰 に動かされてしまい、左脚体 22Lの姿勢が図 5に実線で示されている姿勢となること で目標 ZMPが左足裏領域から外れるような事態が回避される。これにより、図 5に示 されているようにロボット 2を前のめりにするような重心まわりのモーメント Mがロボット 2 に作用する事態、ひいてはロボット 2の姿勢が不安定になる事態を回避しながら、当 該ロボット 2の移動性能試験を実行することができる。
[0052] また、エンドレスベルト 11Lおよび 11Rのそれぞれの駆動速度 V および v が相違
1 1R するように制御されることで、ロボット 2の位置および向きを一定に維持しながらロボッ ト 2の左旋回性能および右旋回性能が試験されうる。左右のエンドレスベルト 11Lお よび 11Rのそれぞれの駆動速度 V および V の差力 S、ロボット 2の旋回半径の下限値
1 1R
に応じて制限されて!/、てもよレ、。
[0053] なお、前記実施形態では 2つの脚体 22Lおよび 22Rを有するロボット 2の移動性能 が試験された力 他の実施形態として 3つ以上の脚体を有するロボットの歩行または 走行試験が実施されてもよぐ複数のタイヤの回動により移動しうる装置の移動性能 が試験されてもよい。
[0054] 第 2処理部 120がロボット制御部 200との通信によって、ロボット制御部 200に「モ ータ動作計画」を認識させ、かつ、このモータ動作計画に基づいてロボット 2の目標 Z MPが安定支持領域に収まるように「ロボット動作計画」を作成させてもよい。これによ り、エンドレスベルト 11L, 11Rの駆動速度の変化等によってその目標 ZMPが安定 支持領域から外れてしまうことによってロボット 2の姿勢が不安定になる事態を回避し ながら、当該ロボット 2の移動性能試験を実行することができる。
[0055] また、当該通信によってロボット制御部 200に「モータ動作計画」に応じて定まるェ ンドレスベルト 11L, 11Rの駆動速度変化パターンを認識させ、かつ、この駆動速度 変化パターンに対して位相差を有する、ロボット 2の移動速度変化パターンを定める「 ロボット動作計画」を作成させてもよい。これにより、エンドレスベルト 11L, 11Rの動 きのテンポにロボット 2の動きのテンポを、当該位相差に応じた形態で調和させながら 当該ロボット 2の移動性能が試験されうる。
[0056] さらに、ロボット 2にその運動状態またはロボット動作計画に基づいて当該位相差を 設定させてもよい。これにより、ロボット 2の動きのテンポをロボット 2の運動状態または 動作計画に鑑みて適当にエンドレスベルト 11L. 11Rの動きのテンポに調和させな 力 ¾ロボット 2の移動性能が試験されうる。
[0057] 前記実施形態では独立に回転駆動される 2つのエンドレスベルト 11L, 11Rを有す るトレッドミル 10が用いられてロボット 2の移動性能が試験された力、他の実施形態と して単独のエンドレスベルトを有するトレッドミルが用いられてロボット 2の前進性能ま たは後退性能が試験されてもよい。
[0058] 前記実施形態では受光素子により構成された第 1センサ 112およびレーザー光を 用いる第 2センサ 122によりロボット 2の前後左右の立ち位置が測定された力 他の実 施形態としてスキャニング式の広域レーザー距離センサによってロボット 2の前後左 右の立ち位置が測定されてもよ!/、。