明 細 書
放電器および放電制御方法
技術分野
[0001] 本発明は、放電器および放電制御方法に関し、特に、直流電源システムとして、複 数の組電池からなる電池システムを用いる場合について、負荷に供給する直流電源 の出力を制御する放電器および放電制御方法に関する。
背景技術
[0002] 直流電源に用いられるニッケル水素蓄電池は、鉛蓄電池に比べて、エネルギー密 度が大きぐ電池寿命の長さや環境への負担が少ないことが特徴であり、さらには、 小型'軽量で、持ち運びに便利であるため、車載用バッテリーや災害対策用電源とし て、近年、急速に普及しつつある。
[0003] また、昨今の通信設備の電力需要の急速な増加に対応するためには、直流電源の 大容量化を図るベぐニッケノレ水素蓄電池などの電池系列を並列接続して、例えば 出力 30kWhなどの大容量の電源システム(電池システム)を構成することが必要とな つてきている。一般に、電源システムの高容量ィ匕ゃ長寿命化を図るためには、ニッケ ル水素蓄電池を電源として用いる場合、例えば、単セルと呼ばれる単一のニッケル 水素蓄電池(平均電圧 1. 2V、電流容量 95Ah)を k本直列に接続したものを 1単位( 以降、モジュールと称する)とし、さらに、このモジュールを m個分直列に接続したもの を組電池とし、さらに、 n個の組電池を並列接続して、大容量のニッケル水素蓄電池 システムを構成するようにしてレ、る。
[0004] このような大容量の電池システムにおいて負荷に対する電力の供給能力を管理す るための仕組みについても、種々の提案がなされている。例えば、特開 2004— 119 112号公報、特開 2004— 120856号公報、あるいは特開 2004— 120857号公報 などには、並列接続した複数の組電池と、充電制御手段と、放電制御手段と、を備え た電源システムにおける管理手法が記載されている。
[0005] 前記特開 2004— 119112号公報には、保守'点検時における組電池の寿命の推 定を容易にするために、組電池の製造日付を内部に保存して、保存した組電池の製
造日付に基づいて、所定の電力を供給可能な使用可能期間を算出して組電池交換 日付を表示することが記載されてレ、る。
[0006] また、前記特開 2004— 120856号公報には、組電池の劣化判定用に放電容量試 験を実行中に停電等が発生したとしても、負荷側への給電を可能とするために、劣 化判定対象の或る組電池の放電容量試験を実行する際に、当該組電池を満充電ま で充電させるのみならず、劣化判定対象外の組電池も満充電まで充電させた上で、 放電容量試験を実行する電池監視手段を設けることが記載されている。
[0007] また、前記特開 2004— 120857号公報には、電力需要を平準化して電力コストを 削減可能とするために、組電池の残存容量が充電開始閾値以下になったか否かを 監視し、該充電開始閾値以下になった場合には、電力の利用が少ない深夜の所定 時刻になるのを待って、当該組電池への補充電を開始させる電池監視手段を設ける ことが記載されている。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 前述のように、例えばニッケル水素蓄電池を用いて出力 30kWhの電池システムを 実現する場合においては、定格 1. 2Vのニッケル水素蓄電池セル(平均電圧 1. 2V 、電流容量 95Ah)を 10本直列接続し、これを 1モジュールとし、さらに、 4モジュール 分を直列接続して、これを 1系統の組電池(出力 5kWh)とし、さらに、図 3に示すよう に、 6系統の組電池を並列接続した形に構成する。図 3は、複数の組電池と複数の 放電器とを用いて構成する電池システムの構成図である。図 3では、組電池を充電 するための充電器も含めて示している。
[0009] すなわち、図 3に示す構成例においては、複数の組電池を用いる電池システムとし て、組電池 30— 1, 30- 2, 30- 3, 30—4, 30— 5, 30— 6の 6系統の組電池力 S並 列接続されている。さらに、 6系統の組電池それぞれから出力される電池電圧を負荷 40の許容電圧範囲内に収めるように昇降圧させるための放電器 10と、整流器 50か ら複数の組電池 30それぞれに間欠充電を行うための充電器 20と、放電器 10、充電 器 20を含む電池システム全体の動作を制御する電源制御部 60とを備えている。図 3 の場合、組電池 30— 1, 30— 2用として放電器 10— 1と充電器 20— 1が設けられ、
糸且電池 30— 3, 30— 4用として放電器 10— 2と充電器 20— 2力 S設けられ、糸且電池 30 —5, 30— 6用として放電器 10— 3と充電器 20— 3が設けられている。
[0010] 図 3の電池システムにおいては、電源制御部 60の制御に応じて、それぞれの組電 池 30 (30— 1 , 30- 2, 30— 3, 30— 4, 30— 5, 30— 6)力 対応する充電器 20 (2 0- 1 , 20 - 2, 20— 3)を介して整流器 50の出力によって充電され、それぞれの放 電器 10 (10— 1 , 10- 2, 10— 3)を介して負荷 40へ電力を供給するように構成され ている。ここで、複数の放電器 10は、その出力側で電気的に接続されて、負荷 40に 接続され、また、複数の充電器 20は、その入力側で電気的に接続され、整流器 50 に接続される。放電器 10、充電器 20および組電池 30を増設することによって、電池 システムの拡張が可能となっている。例えば、図 3に示す 30kWh電池システムを 3台 並列接続することによって、 lOOkWh級の電池システムを実現させることができる。
[0011] 放電器 10 (10— 1, 10- 2, 10— 3)は、対応する組電池 30 (30— 1, 30- 2, 30
3, 30-4, 30- 5, 30— 6)それぞれが出力する電池電圧力 S、負荷 40の許容電 圧範囲を上回るときは DC— DCコンバータによる降圧を行い(降圧モード)、負荷 40 の許容電圧範囲内でかつ動作電圧範囲の範囲内にあるときは電池出力を DC— DC コンバータ非経由でバイパスし (バイパスモード)、負荷 40の動作電圧範囲を下回る ときは DC— DCコンバータによる昇圧を行う(昇圧モード)。
[0012] つまり、図 3に示す 30kWh電池システムに搭載されている放電器 10 (10— 1 , 10 —2, 10 3)それぞれは、図 4に示すように、昇圧部 11aおよび降圧部 l ibを含む。 図 4は、放電器に搭載される昇降圧用の DC— DCコンバータの回路構成の一例を 示す回路図であり、昇降圧用の DC— DCコンバータを構成する昇圧部 11aと降圧部 l ibとの回路構成の一例を示している。図 4の放電器 10Aに示すように、昇圧部 11a と降圧部 l ibとは、それぞれ回路構成素子からなる。昇圧部 11aは、リアタトル la、ダ ィオード 2a、コンデンサ 3aおよびスイッチング素子 4aからなり、降圧部 l ibは、リアク トノレ lb、ダイオード 2b、コンデンサ 3bおよびスイッチング素子 4b力、らなっている。
[0013] 昇圧部 11aは、組電池 30から負荷 40へ供給される電圧が負荷 40の動作電圧範囲 を下回る場合に、スイッチング素子 4aを制御して昇圧動作を行うものであり、降圧部 1 lbは、組電池 30から負荷 40へ供給される電圧が負荷 40の許容電圧範囲を上回る
場合に、スイッチング素子 4bを制御して降圧動作を行うものである。
[0014] し力し、図 4のような放電器 10Aの構成では、放電動作が継続して組電池 30の電 圧が低下して過放電電圧に達した後であっても、放電動作がそのまま継続されてし まうため、電池の劣化が加速されるという問題が発生する。また、放電器 10Aの故障 等により、放電器 10Aの出力として過大な電圧が出力され、負荷 40の許容電圧範囲 を上回ってしまった場合、負荷設備を故障させてしまうという問題も発生する。さらに は、何らかの事由によって放電器 10Aの放電を停止させる必要がある場合にも、負 荷 40側への放電動作を外部から停止させるための手段がないという問題もある。
[0015] 図 4の放電器 10Aにおける前述のような問題の解決法の一つとして、放電動作を 停止させる切離し部を放電器 10Aに追加する方法がある。図 5は、放電器に搭載さ れる昇降圧用の DC— DCコンバータに切離し部を追加した場合の回路構成の一例 を示す回路図であり、昇圧部 l la、降圧部 l ibにさらに放電動作停止用の切離し部 1 lcを追加して備えてレ、る場合を示してレ、る。
[0016] 図 5の放電器 10Bにおいて、昇圧部 l la、降圧部 l ibの回路構成は、図 4の放電 器 10Aと全く同様であるが、昇圧部 11a側には切離し部 11cがさらに接続されている 。切離し部 11cは、ダイオード 2cおよび切離しスィッチ 4cによって構成される。この切 離し部 11cの切離しスィッチ 4cを制御することによって、放電器 10Bの負荷 40側へ の放電動作を継続させたり、停止させたりすることが可能である。
[0017] ただし、図 5の放電器 10Bの場合、切離し部 11cの機能として、前述したような、過 放電防止機能、過電圧防止機能、外部信号による外部からの切離し機能をすベて 具備し、かつ切離し状態から復帰するための復帰条件が成立した際に負荷 40側へ の放電動作に復帰させるという回復機能を具備する必要があるという問題が残ってい る。
[0018] また、放電器 10Bにおいて、過放電防止用の電圧値としてあらかじめ定めた閾値を 用いて過放電の発生を検出して切離し部 1 lcを動作させて切離しを行レ、、負荷 40へ の給電動作を停止させた場合、切離しを行った後においては、一般に、組電池 30の 電池電圧は自然に回復する特性を有している。このため、切離しからの復帰条件に ついても前記閾値を用レ、、該閾値のみに基づいて切離し部 11cを動作させるか復旧
させるかを決定するような場合には、切離しと復帰とを繰り返してしまって、電池の過 放電保護として機能していない状態になる。
[0019] さらに、放電器 10Bの構成では、昇圧部 11aおよび降圧部 l ibに、さらに、切離し 部 11cが追加挿入された形で、直列接続されており、それぞれの回路に、ダイオード 2a, 2c、切離しスィッチ 4cといった電圧降下をもたらす回路素子が含まれているため 、バイパスモードで動作させようとしても、放電器 10Bの入力と出力との間にさらなる 電圧差が生じ、電池システムの出力能力を低下させるとレ、う問題も弓 Iき起こす。
[0020] また、放電器 10Bの構成では、昇圧部 l la、降圧部 1 lbおよび切離し部 1 lcのそ れぞれのダイオード 2 (2a, 2b, 2c)による電圧降下が電力損失の増加を生じさせ、さ らに、放電器 10Bの発熱量を増大させる。結果として、組電池 30に蓄積された放電 可能なエネルギーの一部は損失となり、電池システム力、ら負荷 40へ給電することが できる時間が短くなり、組電池 30 (蓄電池)を余分に増設する必要性が生じてしまう。 さらに、発熱量の増加により、放電器 10Bの寸法を大きくする必要性と空調設備を増 設する必要性とが生じ、電源システムを構成する電池システムの設置スペースや構 築に要する費用を増大させるという問題も生じる。
[0021] また、切離し部 11cは、切離し動作を行った後に、放電器 10Bの回路切離し状態を 維持するために電力の消費を必要としている。電池システムが複数の放電器 10Bか ら構成されているような場合、電池システムに搭載されるすべての放電器 10Bの切離 し動作を行った後においても、それぞれの放電器 10Bの切離し状態を維持すること が必要である。このため、それぞれの切離し部 11cへ給電する電力を、切離し状態で は無電圧となる放電器 10Bの出力側から供給するわけにはいかず、放電器 10Bの 入力側の組電池 30から供給することが必要である。したがって、商用電源による給電 中であるか否かを問わず、如何なる状態にあっても、組電池 30は、常時、放電器 10 Bの切離し部 11cに対する給電動作を継続するため、組電池 30の容量低下が早くな つて、充放電サイクルが増加し、組電池 30の電池寿命の低下につながるという問題 が発生する。
[0022] なお、図 4の放電器 10Aや図 5の放電器 10Bにおける前述したような問題、すなわ ち、放電継続による組電池 30の劣化の早期化、負荷 40への過電圧の誤出力、放電
器 10Aの外部からの切離し手段がないといった問題、また、切離し部 11cの切離し 動作条件および切離しからの復帰条件に関する問題、ダイオード 2 (2a, 2c)、切離 しスィッチ 4cの挿入による電圧降下の増大に伴う設置スペースや電池システム構築 に要する費用を増大させるという問題、さらに、切離し部 11cへの電力が組電池 30か ら給電されることにより組電池 30の寿命が低下するといつた問題は、複数のニッケル 水素蓄電池を組合わせてなる組電池を複数個有し、かかる組電池が出力する電力 を、それぞれの昇降圧用の DC— DCコンバータを介して負荷に供給する電池システ ムの場合のみに限るものではない。
[0023] 例えば、リチウムイオン電池などニッケル水素蓄電池以外の二次電池を組合わせて なる組電池を複数個有し、該組電池が出力する電力を、それぞれの昇降圧用の DC _DCコンバータを介して負荷に供給する二次電池システム、さらには、一次電池を 含めて、複数の電池を組合わせてなる複数の組電池が出力する電力を、それぞれの 昇降圧用の DC— DCコンバータを介して負荷に供給する電池システム、さらには、 電力貯蔵用キャパシタを含めて、複数の直流電圧源を組合わせてなる複数の電源 が出力する電力を、それぞれの昇降圧用の DC— DCコンバータを介して負荷に供 給する電源システムにおいても生じる問題である。
[0024] 本発明は、以上のような問題、すなわち、放電の継続による組電池劣化の早期化、 負荷への過電圧の誤出力、外部からの放電切離し手段がないことなどの問題、また 、放電器を負荷から切離す切離し部の動作条件および切離しからの復帰条件に関 する問題、切離し用のダイオード挿入による電圧降下の増大により設置スペースや 電池システム構築に要する費用を増大させるという問題、さらに、前記切離し部の電 力が組電池から常時給電されることにより組電池の寿命が低下するといつた問題に 鑑みてなされたものである。
[0025] すなわち、本発明が解決しょうとする課題は、直流電源となる電池の過放電を防止 可能とし、かつ、負荷設備を過電圧から保護可能とし、かつ、外部からの切離しが可 能であり、さらに、あらかじめ定めた所定の条件により負荷に対する放電動作の切離 しの実施と切離しからの復帰とを適切に実行することが可能であり、かつ、放電器内 の電圧降下を低減可能とし、かつ、放電器への電池からの常時給電を不要とし、電
池寿命を延伸することが可能な放電器および放電制御方法を提供することにある。 課題を解決するための手段
[0026] 本発明の放電器は、直流電源と負荷への出力との間に設けられたスイッチング素 子を少なくとも含む降圧手段と、前記スイッチング素子を制御して前記負荷への出力 電圧を制御し、所定の条件が成立した場合には前記スイッチング素子を開放状態に 設定して前記負荷への電力出力を停止させる制御手段とを備えるものである。 また、本発明の放電制御方法は、直流電源と負荷への出力との間に設けられたス イッチング素子を少なくとも含む降圧手段における前記スイッチング素子を制御して 、前記負荷への出力電圧を制御する放電ステップと、所定の条件が成立した場合に 前記スイッチング素子を開放状態に設定して前記負荷への電力出力を停止させる開 放ステップとを備えるものである。
発明の効果
[0027] 以上説明したように、本発明によれば、所定の条件が成立した場合にスイッチング 素子を開放状態に設定する制御手段を放電器に設けることにより、負荷に対する放 電動作を停止させることが可能である。本発明では、降圧手段のスイッチング素子を 降圧用の DC— DCコンバータの構成要素としてだけでなぐ負荷に対する放電を停 止するための放電切離し機能を実現する素子としても兼用するため、放電器として、 従来のように専用の切離し部を新たに設ける必要はなぐ電力損失を低減することが でき、発熱量を低減することが可能である。この結果、本発明では、電池に蓄積され た電力を負荷に対して効率的に放電することができ、かつ電源システムを構成する 電池システムの構築に要するスペースや費用を抑制することができる。
[0028] また、本発明では、負荷への電力出力の停止を必要に応じて外部から指示するこ とにより、負荷に対する放電動作を停止させることが可能である。例えば、電池の過 放電状態や放電器の故障等が検出された場合、放電動作の停止を指示する外部信 号を放電器に入力して、負荷への給電動作を停止させることができるので、電池の過 放電が防止され、放電器の故障等により負荷に過電圧が印加される危険性を防止す ること力 Sできる。
[0029] さらに、本発明では、放電動作の停止状態が解除された際に、外部から入力してい
た外部信号をリセットすることにより、放電器の放電動作を容易に再開させることがで きる。
[0030] また、本発明では、直流電源からの入力電圧があら力じめ定められた第 1の設定値 以下になったことを検知したときに、負荷に対する放電動作を停止させることが可能 である。その結果、本発明では、自動的に電池の過放電を防止することができる。
[0031] また、本発明では、直流電源からの入力電圧が第 1の設定値以下となってスィッチ ング素子を開放状態に設定した後、直流電源からの入力電圧が第 1の設定値よりも 大きい第 2の設定値以上になったことを検知したときに、スイッチング素子をスィッチ ング動作状態及び短絡状態の一方に設定することにより、放電動作への復帰動作を 適切に行うことができる。
[0032] また、本発明では、負荷への出力電圧があらかじめ定められた第 1の設定値以上 になったことを検知したときに、負荷に対する放電動作を停止させることが可能である 。その結果、本発明では、放電器の故障等により放電器の出力に異常な高電圧が現 れた場合にも、 自動的に負荷への放電動作を停止することができ、負荷に過電圧が 印加される事態を防止し、負荷設備の保護に寄与することができる。
[0033] さらに、本発明では、制御手段への電力を、通常状態では電池から供給するので はなぐ放電器の出力側から供給するので、電池の余分な消耗を抑えることができる ため、電池の充放電頻度を少なくすることができ、電池寿命を延伸することが可能と なる。
[0034] また、本発明では、電源システムを構成する電池システムとして、負荷に対して並列 接続されている複数台の放電器すべてが放電停止となる場合であっても、それぞれ の放電器に入力される電池のうち、いずれか 1つ以上の電池について、電池交換を 行レ、、対応する放電器に設けられている手動スィッチを操作することによって、交換 した電池すなわち放電器の入力側から当該放電器の制御手段に対する給電を再開 することを可能としているので、負荷に対する放電動作を再開することができ、放電 動作が再開された以降は、放電器の出力側からの電力により複数台の放電器すベ ての制御手段への給電も可能となり、電池システムの負荷に対する放電動作を簡単 に始動させたり、再開させたりすることが可能となる。
[0035] さらに、本発明では、降圧手段のスイッチング素子を、制御手段への電力が供給さ れない状態にある期間中は開放状態を維持する素子とすることにより、制御手段へ の電力が供給されなくなってしまった場合に負荷に対する放電動作を停止させた状 態を維持することが可能であり、放電器の制御が不可能になって負荷の許容電圧範 囲よりも高い電池電圧が負荷側へ出力されるような事態が生じることも確実に防止す ること力 Sできる。
図面の簡単な説明
[0036] [図 1]図 1は、本発明の実施例に係る放電器の構成の一例を説明するための回路図 である。
[図 2]図 2は、本発明の実施例に係る放電器における制御部の制御動作の一例を説 明するためのフローチャートである。
[図 3]図 3は、複数の組電池と複数の放電器とを用いて構成する電池システムの構成 図である。
[図 4]図 4は、従来の放電器に搭載される昇降圧用の DC— DCコンバータの回路構 成の一例を示す回路図である。
[図 5]図 5は、従来の放電器に搭載される昇降圧用の DC— DCコンバータに切離し 部を追加した場合の回路構成の一例を示す回路図である。
発明を実施するための最良の形態
[0037] 以下、本発明に係る放電器および放電制御方法の最良の実施例について、その 一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、電源 システムとして、直流電源が複数のニッケル水素蓄電池の組合わせからなるニッケノレ 水素蓄電池システム(電池システム)によって構成する場合を例にとって説明すること とする力 本発明は力かる場合のみに限られるものではない。例えば、複数のリチウ ムイオン電池などのニッケル水素蓄電池以外の二次電池の組合わせからなる二次電 池システム、一次電池を含む複数の電池の組合わせからなる電池システム、あるい は、電力貯蔵用キャパシタを含む複数の直流電圧源の組合わせからなる電源システ ムであっても、本発明を適用することができる。
[0038] [実施例の概要]
まず、本実施例の概要について説明する。本実施例は、電源システムを構成する 放電器の放電動作に関するものであり、特にニッケル水素蓄電池システムなどを用 いた大容量'長寿命の電池システムに有効に適用可能とするものである。本実施例 は、降圧用の DC— DCコンバータとして放電器に搭載されたスイッチング素子を、負 荷へ供給する電力を降圧させるために適当なスイッチング周波数でスイッチング動作 させたり、短絡させたりするば力 でなぐ当該スイッチング素子を開放させることによ つて負荷に対する放電動作を停止させることをも可能にしている点に、その特徴があ る。
[0039] つまり、本実施例に係る放電器においては、例えば放電停止を指示する外部信号 を受信した場合や、放電器の入出力電圧があらかじめ定められた所定の放電動作 可能条件の範囲を超えたことを検知した場合に、前記スイッチング素子を開放状態 に設定し、負荷への放電動作を停止させることを可能とし、また外部信号のリセットを 検知した場合や、切離し状態から復帰するためにあらかじめ定められた所定の復帰 条件を放電器の入出力電圧が満たしたことを検知した場合に、前記スイッチング素 子をスイッチング動作状態または短絡状態に復帰させることを可能としている。これに より、本実施例では、電池の過放電や負荷への過電圧の誤出力等を効果的に防止 可能とするという効果を得ることができる。
[0040] さらに説明すれば、本実施例に係る放電器においては、負荷への放電動作を停止 して、電池の消耗や負荷への過電圧の誤出力を防止する。そして、本実施例に係る 放電器にぉレ、ては、負荷への放電動作の始動を可能とする放電切離し機能を具備 することによって、放電器へ入力される電池電圧条件、放電器から出力される出力電 圧条件、あるいは放電動作の停止や再開を外部から指示可能とする外部信号のい ずれかに基づいて、放電動作の切離しおよび放電動作への復帰を実行させることを 可能としている。ここで、本実施例では、放電器の降圧部のスイッチング素子を降圧 用の DC— DCコンバータの構成要素としてだけでなぐ該放電切離し機能を実現す る素子としても兼用するようにしている。
[0041] 放電器の降圧部のスイッチング素子を放電切離し機能を実現する素子としても使 用する場合には、放電器の昇圧部を直流電源 (例えば複数の組電池からなる電池)
の側に配置し、降圧部を負荷側に配置して、昇圧部と降圧部とを直列接続するように し、直流電源が出力する電力を昇圧部と降圧部を介して負荷へ供給するように構成 する。
[0042] このような回路構成において、放電器の制御部は、放電器の入出力電圧条件や外 部信号に基づいて、降圧部のスイッチング素子を開放状態に設定することにより、負 荷側への放電動作を停止させ、一方、スイッチング素子の開放状態からの復帰条件 が成立した際に、降圧部のスイッチング素子をスイッチング動作状態あるいは短絡状 態に設定することにより、負荷側への放電動作を再開させるように制御する。
[0043] さらに、放電器の制御部の電源用の電力は、通常時は放電器の出力側から給電さ れ、利用者からの手動スィッチの押下操作があった際には、放電器の入力側、すな わち直流電源側から給電されるように構成する。また、制御部の電源用の電力が供 給されない状況に陥った場合は、降圧部のスイッチング素子を開放状態に設定し、 負荷側への放電動作を停止するように構成する。
[0044] このように構成することにより、本実施例では、直流電源から放電器へ余分の電力 を供給する必要もなぐかつ放電器の出力側からの制御部への電力供給が停止した 場合には、放電器の入力側の直流電源から電力を供給することにより、放電器の動 作を再開させることができる。
[0045] [実施例の構成]
次に、本実施例に係る放電器の構成の一例について、図 1を用いて説明する。図 1 は、本実施例に係る放電器の構成の一例を説明するための回路図であり、昇降圧用 の DC— DCコンバータ機能と、放電動作の切離し機能および復帰機能とを兼ね備え ている回路構成の一例を示している。
[0046] 本実施例においても、複数のニッケノレ水素蓄電池からなる組電池 30と複数の放電 器 10と複数の充電器 20とを用いて構成する電池システム全体の構成は図 3と同様 である。各放電器 10は、図 4の放電器 10Aに示した回路構成の場合と同様に、直流 電源である組電池 30からの入力電圧を昇圧またはそのまま出力する昇圧手段であ る昇圧部 11aと、組電池 30からの入力電圧を降圧またはそのまま出力する降圧手段 である降圧部 l ibとの双方を介して、出力電圧値を制御して、負荷 40へ電力を供給
するように構成されている。放電器 10の昇圧部 11aは、リアタトル la、ダイオード 2a、 コンデンサ 3a、スイッチング素子 4aを少なくとも備え、降圧部 l ibは、リアクトノレ lb、ダ ィオード 2b、コンデンサ 3b、スイッチング素子 4bを少なくとも備えている。
[0047] 放電器 10全体の動作を制御する制御手段である制御部 12は、スイッチング素子 4
(4a, 4b)を適当なスイッチング周波数でスイッチング動作させることにより、組電池 3 0からの入力電圧 Vinを所望の電圧にまで昇圧または降圧して、負荷 40への出力電 圧 Voutとして出力したり、あるいはスイッチング素子 4aを開放しスイッチング素子 4b を短絡することにより、組電池 30からの入力電圧 Vinをそのまま負荷 40への出力電 圧 Voutとして出力したり、あるいはスイッチング素子 4bを開放することにより、負荷 40 に対する放電動作を停止させたりする。
[0048] 制御部 12は、負荷 40への出力電圧 Voutを負荷 40の動作電圧範囲内に収めるた めに、昇圧部 l l a、降圧部 l ibそれぞれの出力電圧を監視し、昇圧部 11aの出力電 圧があらかじめ定められた設定値 V4を下回らないように、また降圧部 l ibの出力電 圧があらかじめ定められた設定値 V5を上回らないように、スイッチング素子 4 (4a, 4b )のスイッチング周波数を制御してレ、る。
[0049] 組電池 30が出力する電圧は、昇圧部 l la、降圧部 l ibによって昇圧または降圧さ れた後に負荷 40へ供給されるか、あるいは昇圧部 11aのスイッチング素子 4aを開放 状態とし降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを短絡状態とすることによって、そのまま負 荷 40へ供給されるか、あるいは降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを開放状態とする ことによって、負荷 40への供給が停止される。
[0050] 制御部 12は、放電器 10の入力電圧 Vin (組電池 30からの入力電圧)と放電器 10 の出力電圧 Vout (負荷 40への出力電圧)を常時監視しており、放電動作停止用とし てあらかじめ設定された入出力電圧条件が成立した場合、降圧部 l ibのスィッチン グ素子 4bを開放状態に設定することによって、負荷 40側への放電動作を停止させる 。しかる後、制御部 12は、放電動作の再開用としてあらかじめ設定された入出力電 圧条件が成立した場合、降圧部 1 lbのスイッチング素子 4bをスイッチング動作状態 あるいは短絡状態に設定することによって、負荷 40側への放電動作を再開させる。
[0051] さらに、制御部 12は、負荷 40への放電動作の停止を外部の制御装置 70から指示
する外部信号の入力を常時監視しており、該外部信号が受信された場合は、降圧部
1 lbのスイッチング素子 4bを開放状態に設定することによって、負荷 40側への放電 動作を停止させる。しかる後、制御部 12は、該外部信号力 Sリセットされたことを検出し た場合には、降圧部 1 lbのスイッチング素子 4bをスイッチング動作状態あるいは短 絡状態に設定することによって、負荷 40側への放電動作を再開させる。
[0052] ここで、外部信号について説明する。図 3に示した電池システムには、通常、システ ムの各構成要素を含めて全体を制御する制御装置 70が搭載される。制御装置 70は 、各構成要素の状態を監視しながら、充電器 20に対する充電開始'終了の指令と、 放電器 10に対する放電許可'禁止の指令と、故障発生の検知とを行い、さらに図示 しない上位装置力 の指令により計測データを返信する。
[0053] 図 3の電池システムでは、制御装置 70が指令するよりも先に放電器 10が自分で入 力電圧 Vinの低下を検知して放電を止めてしまうと、制御装置 70は放電器 10が故障 したと検知して警報を発してしまう。そこで、実際の運用では、例えば放電器 10の設 定値 VIを 38V、制御装置 70が放電を停止させる電池電圧を 40Vとして、必ず先に 制御装置 70が放電を止めに行くようにする。つまり、制御装置 70は、入力電圧 Vin が 40V以下になったときに、制御部 12に対して外部信号を出力する。放電器 10の 設定値 VIによる放電停止は、制御装置 70が放電を止められなかったときの安全装 置という役割になる。
[0054] なお、制御部 12への電源電力は、通常時は、放電器 10の出力側、すなわち負荷 4 0との接続点側から供給されているが、手動スィッチ 13の押下操作時には、放電器 1 0の入力側、すなわち組電池 30から供給することが可能となっている。なお、手動ス イッチ 13は、押下操作によって、スィッチを閉成させるタイプのものに限るものではな く、回転操作させるタイプであっても良いし、如何なるタイプのものであってもかまわな レ、。
[0055] また、本実施例においては、制御部 12がハードウェアによって構成される場合を例 示している力 本発明は力、かる場合のみに限るものではなレ、。例えば、制御部 12を、 プログラム(放電制御プログラム)の実行が可能なコンピュータによって構成して、プロ グラムの実行によって放電器 10の放電動作を制御するようにしても良い。制御部 12
をコンピュータによって構成する場合は、放電器 10の放電動作を制御する放電制御 プログラムを該コンピュータによって読み取り可能な ROMやフラッシュメモリなどの記 録媒体に記録して、コンピュータの動作を行わせるようにしても良レ、。
[0056] なお、本実施例では、放電器 10の昇降圧用の DC— DCコンバータとして、昇圧部 11aと降圧部 l ibとの双方を備えている場合を示しているが、例えば降圧用の DC— DCコンバータ機能のみを提供する放電器として構成すれば良い場合には、降圧部 l ibのみを備えていても良い。
また、昇圧部 l la、降圧部 l ibは、例えば出力電圧を安定化させるための電圧安 定化回路などをさらに備えていても良い。
[0057] [実施例の動作]
次に、図 1に示す放電器 10の制御部 12の制御動作の一例を図 2のフローチャート に基づいて説明する。図 2に示すような放電器 10の放電動作の制御方法 (放電制御 方法)は、前述したように、ハードウェアだけではなぐ放電制御プログラムを実行する ことにより実施しても良いし、あるいは該放電制御プログラムを記録したプログラム記 録媒体から該放電制御プログラムを読み取って実施するようにしても良い。放電制御 プログラムを記録するプログラム記録媒体としては、制御部 12に組み込み可能な RO Mやフラッシュメモリとしても良レ、し、あるいは制御部 12に外付け可能な ROMゃフラ ッシュメモリとしても良いし、あるいは制御部 12が USBメモリやメモリカードや FDDや CDや DVDなどの可搬型記録媒体に関する読み取り機能を備えている場合には、 力かる可搬型記録媒体に記録するようにしても良い。
[0058] 制御動作の開始直後においては、放電器 10の制御部 12は、降圧部 l ibの出力電 圧 Voutの監視結果に基づレ、て、降圧部 1 lbのスイッチング素子 4bを適切なスィッチ ング周波数でスイッチング動作させる力 \または短絡させるかのいずれかにより、出力 電圧 Vout (すなわち負荷 40に給電する電源電圧)をあらかじめ定められた設定値 V 5以下の所要の電圧値に維持する(図 2ステップ S1)。
[0059] 制御部 12は、制御装置 70から放電動作の停止を指示する外部信号を受信すると( ステップ S2の YES)、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを開放状態に設定し、負荷 4 0への放電動作を停止させる(ステップ S3)。
[0060] しかる後、制御部 12は、放電動作の停止を指示する外部信号がリセットされたこと を検出すると(ステップ S4の YES)、ステップ S1に戻って、降圧部 l ibのスイッチング 素子 4bをスイッチング動作状態または短絡状態に復帰させて、負荷 40への放電動 作を再開させる。
[0061] 制御部 12は、前記外部信号を受信していない場合であって (ステップ S2の N〇)、 かつ放電器 10の入力電圧 Vin力 組電池 30の過放電防止用としてあらかじめ定め られた設定値 VI (例えば 40V)以下となったことを検出すると(ステップ S5の YES)、 降圧部 1 lbのスイッチング素子 4bを開放状態に設定し、負荷 40への放電動作を停 止させる(ステップ S6)。
[0062] しかる後、制御部 12は、組電池 30の交換等により、放電器 10の入力電圧 Vinが回 復して、前記設定値 VIよりも大きい電圧値としてあらかじめ定められた設定値 V2 (例 えば 50V)以上となったことを検出すると(ステップ S7の YES)、ステップ S1に戻って 、降圧部 1 lbのスイッチング素子 4bをスイッチング動作状態または短絡状態に復帰さ せて、負荷 40への放電動作を再開させる。
[0063] 放電動作への復帰条件として設けられた設定値 V2(例えば 50V)は、放電停止後 においては組電池 30の電池電圧が自然回復するという特性によって、放電停止と復 帰とが繰り返されることを防止することも考慮して、前述のように設定値 VI (例えば 40 V)よりも大きな値に設定されてレ、る。
[0064] また、放電器 10の入力電圧 Vin (組電池 30力 出力される電池電圧)の範囲は、あ らかじめ定められた電圧範囲であり、例えば 40V〜64Vの電圧範囲である。このため 、放電器 10は、入力電圧 Vinを昇降圧して出力、またはそのまま出力することにより、 負荷 40へ放電する出力電圧 Voutが、負荷 40の許容電圧範囲内の所望の動作電 圧範囲に収まるようにしている。しかし、放電器 10の故障等によってリアタトル lbの短 絡等が発生した場合には、放電器 10の出力電圧 Voutが異常に上昇してしまうこと があり、場合によっては負荷 40の許容電圧範囲を越えた過電圧になって、負荷設備 を故障させる恐れがある。
[0065] このため、制御部 12は、放電器 10の出力電圧 Voutが、負荷 40に対する過電圧出 力防止用としてあら力^め定められた設定値 V3 (例えば 53V)以上となったことを検
出すると(ステップ S8の YES)、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを開放状態に設定 し、負荷 40への放電を停止させる(ステップ S9)。これにより、負荷設備を過電圧から 保護する。しかる後は、過電圧を引き起こした放電器 10の故障等の原因を除去する 修復作業を実施することが必要となる。
[0066] また、制御部 12は、放電器 10の出力電圧 Voutが設定値 V3 (例えば 53V)よりも小 さい場合は(ステップ S8の NO)、正常な出力電圧 Voutが維持されている状態である ので、ステップ S2に戻って、放電動作の停止を指示する外部信号を受信していない 力、どうかをチヱックする動作 (ステップ S2)、放電器 10への入力電圧 Vinが設定値 VI 以下になっていないかどうかをチェックする動作 (ステップ S5)、放電器 10の出力電 圧 Voutが設定値 V3以上になっていないかどうかをチェックする動作 (ステップ S8)を 順次繰り返す。
[0067] なお、過電圧出力防止用として設けられた設定値 V3 (例えば 53V)は、負荷設備 の安全性を考慮に入れて、負荷 40が許容する許容電圧範囲の上限値以下に設定さ れる値である。すなわち、設定値 V3は、負荷 40の許容電圧範囲に基づいて決定さ れる値であり、組電池 30から出力される電池電圧の変動範囲には依存しない値であ る。組電池 30を構成するニッケル水素蓄電池の直列接続個数の如何によつては、電 源電圧は例えば 40〜64Vの変動範囲内となり、設定値 V3は、組電池 30の過放電 防止用の電圧値を示す設定値 VI (例えば 40V)よりも低い値、すなわち正常な組電 池 30が出力すべき電池電圧の下限値よりも低い値となる用途もあり得る。
[0068] また、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを、例えば FET (電界効果トランジスタ)を 用いて構成し、この FETのゲート端子を制御部 12の制御用出力端子に接続して、該 制御用出力端子の電圧により、 FETのゲート電位を制御するように構成した場合、該 制御用出力端子の電圧の有無により、 FETをオン'オフさせることができ、降圧部 11 bの降圧動作を制御することができる。この場合、制御部 12への電力が供給されなく なったときには、スイッチング素子 4bを構成する FETのゲート電位もゼロの状態に設 定されるので、スイッチング素子 4bは自動的に開放状態に設定される。このため、制 御部 12への電力が供給されなくなった場合には、スイッチング素子 4bは自動的に開 放となり、負荷 40への放電動作が強制的に停止される。この結果、制御部 12への電
力供給断により放電器 10が制御不可能な状態になったとしても、放電器 10から負荷 40への異常な過電圧が出力されることを防止することができる。
[0069] また、制御部 12の電源は、放電器 10の出力側から電力が供給されるように配線さ れている。したがって、図 3に示したように複数の放電器 10が並列に接続されて負荷 40に対する放電動作を行う構成であれば、ある放電器 10内の降圧部 l ibのスィッチ ング素子 4bが開放されたとしても、この放電器 10の制御部 12に対して他の放電器 1 0から給電が継続されるので、制御部 12は制御動作を継続することができる。
[0070] ただし、放電器 10が 1台のみの場合は、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bの開放と 同時に、当該放電器 10の制御部 12の電源は電力供給断の状態に陥り、動作しなく なる。このような場合であっても、スイッチング素子 4bとなる FETのような素子と制御 部 12の制御用出力端子との接続状態を、前述のような構成としておけば、降圧部 11 bのスイッチング素子 4bは開放のままの状態を維持することができる。
[0071] さらに、複数台の放電器 10を出力側で並列接続する図 3のような電池システムを使 用する用途において、すべての放電器 10について降圧部 l ibのスイッチング素子 4 bが開放となった場合は、出力電圧 Voutが無電圧となるため、すべての放電器 10の 制御部 12に、電力が供給されなくなり、すべての放電器 10の制御部 12の制御動作 が停止し、放電器 10すべての動作が完全に停止する。
[0072] このような場合に、放電器 10の制御部 12を再び起動させるためには、例えば図 3 のような電池システムにおいては、停電状態にあった商用給電が回復して、整流器 5 0が出力を再開することが必要であり、商用給電が回復することによって、放電器 10 へも整流器 50から電力が供給されるようになれば、以降、放電器 10の制御部 12の 動作は起動され、放電器 10の制御動作を行うことが可能になる。
[0073] また、停電状態にあった商用給電の回復による復旧動作ではなぐ組電池 30の電 池交換により、放電器 10の制御部 12の動作を再度起動しょうとする場合は、図 1に 備えられている手動スィッチ 13を押下操作することにより、放電器 10の負荷 40への 放電を再開させることが可能である。すなわち、手動スィッチ 13の押下操作中は、制 御部 12は、放電器 10の出力側だけでなぐ放電器 10の入力側の組電池 30からの 電力供給用の電路も形成される。このため、制御部 12は、電池交換した組電池 30か
らの電力によって起動し、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bをスイッチング動作状態 または短絡状態に復帰させて、負荷 40への放電を再開させる。
[0074] さらに、図 3のような複数の放電器 10を出力側で並列接続している電池システムの 場合、ある放電器 10が負荷 40への放電動作を再開すれば、並列で接続されている 他の放電器 10の制御部 12に対しても、放電器 10の出力線を介して給電が開始され る。したがって、正常な電池電圧を出力可能な有効な組電池 30がいずれか 1台の放 電器 10に接続されれば、負荷 40への放電が再開されるので、並列接続した複数台 の放電器 10のうち、有効な組電池 30を接続した 1台の当該放電器 10の手動スイツ チ 13のみを押下操作すれば良い。制御部 12は、組電池 30の電池電圧の変動範囲 と放電器 10の出力電圧の変動範囲とのすべての電圧値で動作可能であることを前 提としている。
[0075] 以上に詳細に説明したように、本実施例に係る放電器 10の特徴は、降圧部 l ibの スイッチング素子 4bを降圧用の DC— DCコンバータの構成要素としてだけでなぐ負 荷 40に対する放電動作の切離し機能を実現する素子としても兼用する点にある。
[0076] 例えば、放電器 10の制御部 12は、外部から放電動作の停止を指示する外部信号 を受信した場合には、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを開放させて、負荷 40への 放電を停止させ、しかる後に、該外部信号力 Sリセットされたことを検知した場合には、 降圧部 l ibのスイッチング素子 4bをスイッチング動作状態または短絡状態に復帰さ せることにより、負荷 40への電力の供給を再開させるように制御する。
[0077] また、制御部 12は、放電器 10の入力電圧 Vin力 組電池 30の過放電防止用とし てあら力じめ定められた設定値 VI以下に低下したことを検出した場合には、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを開放させて、負荷 40への放電を停止させ、しかる後に、 組電池 30の電池交換等によって、放電器 10の入力電圧 Vin力 設定値 VIよりも大 きい値としてあらかじめ定められた設定値 V2以上になったことを検出した場合には、 降圧部 l ibのスイッチング素子 4bをスイッチング動作状態または短絡状態に復帰さ せることにより、負荷 40への電力の供給を再開させるように制御する。
[0078] さらに、制御部 12は、放電器 10の出力電圧 Vout力 S、負荷 40に対する過電圧出力 防止用としてあら力^め定められた設定値 V3以上になったことを検出した場合には、
負荷設備への過電圧の印加を防ぐために、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを開放 させて、負荷 40への放電を停止させるように制御する。
[0079] また、制御部 12の電源用の電力は、手動スィッチ 13が押下操作されていない通常 時には、放電器 10の出力側から供給され、一方、手動スィッチ 13が押下操作された 場合には、放電器 10の入力側力もも供給可能とされる。さらに、制御部 12の電源用 の電力を供給することができない状態に陥っている場合には、降圧部 l ibのスィッチ ング素子 4bを開放させた状態に維持するように構成する。
[0080] なお、前述した実施例については、組電池 30を構成する電池がニッケル水素蓄電 池とした場合を例として説明したが、前述したように、本発明は力、かる場合のみに限ら れるものではない。
[0081] 以上のような特徴を具備することによって、本実施例では、放電器 10の入出力電圧 に応じて放電動作を停止して、組電池 30の過放電を防止可能とし、かつ負荷 40を 過電圧から保護可能とし、かつ外部からの制御によっても放電停止を可能とするとと もに、放電停止状態 (負荷 40の切離し状態)からの復帰も適切に行われる。
[0082] さらに、本実施例では、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを降圧用の DC— DCコ ンバータの構成要素としてだけでなぐ負荷 40に対する放電動作の切離し機能を実 現する素子として兼用することによって、切離し機能専用の新たな切離し部を給電系 統に追加して挿入する必要はない。したがって、本実施例では、新たな切離し部を 追加挿入した場合のような電圧降下の増大に伴う電力損失や発熱量の増加がない ので、設置スペースや電池システム構築に要する費用を増大させることもないし、切 離し部に組電池 30から常時給電する必要もなぐ放電器 10への常時給電により、電 池寿命が低下するという従来の問題も解消することができる。
[0083] また、本実施例では、複数の放電器 10を出力側で並列接続した電池システムの場 合に、たとえ複数の放電器 10がすべて放電停止となった後であっても、整流器を介 して復旧した商用電源を供給再開することにより、あるいは複数の組電池 30のうちい ずれかの組電池 30について電池交換して、手動スィッチ 13を操作することにより、電 池システムを始動させることが可能である。
[0084] [本発明の実施例における効果]
次に、本発明の実施例によって得られる効果について、さらに、説明する。
[0085] まず、第 1に、電池の過放電を防止し、かつ負荷設備に対する過電圧の保護を行 レ、、かつ負荷への放電動作を外部から停止させることを可能とするためには、負荷へ の放電動作を適切に停止させ、かつ復帰させる手段を放電器に備えていることが必 要である。
[0086] 本実施例においては、降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを放電動作の切離し機能 を実現する素子として兼用する構成としているので、放電器 10の入力電圧 Vinを監 視している制御部 12の制御によって、スイッチング素子 4bを開放状態に設定するこ とにより、組電池 30の過放電の防止が可能であり、かつ放電器 10の出力電圧 Vout を監視している制御部 12の制御によって、スイッチング素子 4bを開放状態に設定す ることにより、過電圧の誤出力力 負荷設備を保護することが可能であり、かつ放電 動作の停止を外部から指示する外部信号の受信を監視している制御部 12の制御に よって、スイッチング素子 4bを開放状態に設定することにより、外部から放電停止を 制御することが可能である。さらに、本実施例では、負荷 40に対する切離し状態から の復帰条件が成立した際に、力かる復帰条件を監視している制御部 12の制御によつ て、スイッチング素子 4bをスイッチング動作状態や短絡状態に復帰させることにより、 負荷 40への放電動作を適切に再開させることができる。
[0087] 第 2に、昇降圧用の DC— DCコンバータ部とは別個に、負荷を切離すための切離 し部を備えるような放電器においては、切離し部を構成するダイオードなどの回路素 子を給電線に追加挿入するために電圧降下が生じ、放電器における電力損失の増 カロとこれに伴う発熱の増加とを引き起こす。このため、放電器の寸法を大きくする必 要があること、発熱量の増加に伴う空調設備の増設が必要となること、さらには放電 器における電力損失分を補うための電池の余分な設置が必要となることにより、電池 システムの構築に要するスペースと費用とを増大させる。
[0088] 本実施例においては、前述のように降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを放電動作 の切離し機能を実現する素子として兼用する構成としてレ、るので、新たな切離し部の 追加は不要であり、放電器 10の電力損失と発熱との増加を抑制することができる。こ れに伴い、本実施例では、放電器 10の放熱対策の検討も容易になり、放電器 10の
寸法を小さくすることができ、また発熱量の増加の抑制により空調設備の増設も不要 とすることができる。さらに、本実施例では、組電池 30から出力される電力が効率良く 負荷 40へ供給されるため、余分に電池を追加する必要もなくなる。その結果、本実 施例では、電池システム(電源システム)の構築に要するスペースと費用とを節約する こと力 Sできる。
[0089] 第 3に、負荷を切離す切離し部の動作電源を電池から供給するような放電器の場 合、常時、切離し部に電池から給電を行う仕組みとなっているため、電池の消耗が加 速され、電池の充電頻度の増加をもたらし、電池の充放電サイクルを増加させ、電池 の劣化を加速する結果を招く。
[0090] 本実施例においては、前述のように降圧部 l ibのスイッチング素子 4bを放電動作 の切離し機能を実現する素子として兼用する構成としてレ、るので、スイッチング素子 4 bを含む降圧部 l ibを動作させる電源は、放電器 10の出力側(すなわち負荷 40に供 給する出力電力側)から給電されるため、電池の消耗は抑制され、その結果、電池の 充電頻度が減少し、電池寿命を延伸させることができる。
[0091] 第 4に、放電器には、一般に、制御部が備えられており、降圧部のスイッチング素子 のスイッチング動作を該制御部によって制御する力 該制御部が電源断となった場 合に降圧部のスイッチング素子が短絡状態になってしまうと、降圧されない過電圧が 負荷側に対して誤出力される場合も生じ、負荷設備に支障をもたらす恐れがある。
[0092] 本実施例においては、制御部 12に電力が供給されなくなった場合には、降圧部 1 lbのスイッチング素子 4bが開放状態に維持されるため、負荷 40に対する放電は停 止され、負荷設備を安全な状態に置くことが可能である。
[0093] 第 5に、放電器の制御部への電力を放電器の出力側から供給する場合、放電が停 止したときに、制御部への電力供給も断状態となり、放電器の放電動作を復帰させよ うとしても、放電器の出力側への放電動作が回復するまで、放電器自体は動作不能 の状態に陥ってしまう。このため、例えば停電状態から復旧した商用電源力 整流器 を介して充電器や放電器に電力を給電する形態が必須となってしまう。
[0094] 本実施例においては、手動スィッチ 13の操作により、放電器 10の出力側からではな ぐ放電器 10の入力側の組電池 30からも、制御部 12への電力を供給する電路を備
え、この組電池 30からの電力により放電動作を起動させることができるため、組電池 30の電池交換をした後、手動スィッチ 13を操作することにより、放電器 10の動作を 立ち上げることが可能であり、商用電源からの給電再開動作とは、別個の再開手段 を提供することも可能である。
産業上の利用可能性
本発明は、負荷に供給する直流電源の出力を制御する放電器に適用することがで きる。