明 細 書
光学活性 3 アミノー 2, 5 ジォキソピロリジンー3 カルボキシレート類 およびその製造方法ならびに該化合物の使用
技術分野
[0001] 本発明は、糖尿病合併症治療薬等の原薬の中間体として有用な新規な光学活性
3 アミノー 2, 5—ジォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレート類およびその製造法、 ならびにその中間体を用いて糖尿病合併症治療薬として有用なラニレスタツトを製造 する方法に関する。
背景技術
[0002] 強力なアルドース還元酵素阻害作用を有する糖尿病合併症治療薬として期待され るテトラヒドロピロ口 [1, 2_a]ピラジン一 4—スピロ _ 3,一ピロリジン誘導体が文献に 開示されている (例えば、特許文献 1および非特許文献 1参照)。そして、この誘導体 の中から選ばれたラニレスタツト [Ranirestat ;AS- 3201 ; (3R) _ 2, - (4 ブロモ _ 2 —フルォロベンジル)スピロ [ピロリジン一 3, 4' (l ' H) _ピロ口 [1 , 2 _a]ピラジン]— 1,, 2, 3,, 5 (2' H)—テトラオン]が臨床開発されている。
[0003] 文献には、下記式 (XI)で表される化合物の製造方法が記載されており、該化合物
(式中、 R4はカルボキシノレ基の保護基を意味する。)の各ェナンチォマーへの分割 が、光学活性酸 [例えば(+ )—ショウノウ酸, (1S) - ( + )一又は(1R) - (一)—ショ ウノウー 10—スルホン酸, L— ( + )—又は D— (—)—酒石酸, L ピログルタミン酸, (S) (一)—又は (R) - ( + )—リンゴ酸,リン酸水素(S) - ( + )—又は (R) (一) —1 , 1 '—ビナフチル一 2, 2'—ジィル, (一)一又は( + )— 2'—ニトロタルトラニル 酸, D— ( + )—タルトラニル酸, (―)—ジベンゾィノレ— L 酒石酸, ( + )—ジベンゾ イノレー D—酒石酸, (一)ージァセチルー L—酒石酸等]を用い常法に従ってジァス テレオマー塩を形成させた後、 2種のジァステレオマー塩に分離し、次いでこれを遊 離塩基に変換させることにより行われるとの記載がある(例えば、特許文献 1参照)。
(X) (XI) (vr) しかし、式 (XI)で表される化合物(式中、 R4はカルボキシノレ基の保護基を意味する。 )のジァステレオマー塩の具体的な開示はないし、該ジァステレオマー塩を使って下 記式 (vr)の化合物を直接製造することの示唆もない。
文献には、下記のラセミィ匕合物(la)および (lb)が、光学活性アミンを用い常法に従 つてジァステレオマー塩を形成させた後、分別結晶により 2種のジァステレオマー塩 に分離し、次いでこの塩を分解することにより 2種のェナンチォマーに分割することが できるとの記載がある(例えば、特許文献 2参照)。
(la) (lb)
(式中、 R1はカルボキシノレ基の保護基を意味し、 R4は加水素分解により脱離しうる基 又は tert-ブトキシカルボ二ル基を意味する。ただし、 R4が加水素分解により脱離しう る基であるとき、 R1は加水分解により脱離しうる保護基である。 )
しかし、式 (la)において R
4が水素原子である化合物の光学分割に関する記載や示 唆はない。
文献には、 下図のラニレスタツトの製造方法が記載されている (例えば、 非特許文献 1参照) 。
(式中、 Zはべンジルォキシカルボ二ル基を意味する。 )
しかし、ェチル 3—アミノー 2, 5—ジォキソピロリジン _ 3_カルボキシレートのラセミ 体の光学分割に関する記載や示唆はない。
[0006] 文献に開示されている光学活性な 2, 5—ジォキソ— 3_ (ピロール— 1 _ィル)ピロ リジン _ 3 _カルボキシレート類の製造法は、ラセミ中間体の光学分割を行った後、 光学分割剤として使用した光学活性アミンを酸で除去する工程が必須であり、下図 に示すとおり工程数が多い(例えば、特許文献 2および非特許文献 1参照)。
(ラセミ体)
脱保護 環化反応
ミ
(ラセミ体) (ラセミ体) (光学活性体) (光学活性体)
(式中、 Raはべンジルォキシカルボニル基などのアミノ基の保護基、 はェチル基な どのカルボキシノレ基の保護基を意味する。 )
特許文献 1:特開平 5— 186472号公報
特許文献 2 :特開平 6— 192222号公報
非特許文献 1 :J. Med. Chem., 1998年, 41, p.4118〜4129
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0008] 糖尿病合併症治療薬として期待されるラニレスタツトの原薬を効率よく製造できる方 法を提供する。詳しくは、ラニレスタツトの鍵中間体のひとつである光学活性な 2, 5- ジォキソ— 3_ (ピロール _ 1 _ィル)ピロリジン _ 3 _カルボキシレート類を従来法に 比べて一層効率よく製造できる方法を提供する。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、 (1) 3 アミノー 2, 5 ージォキソピロリジン 3—カルボキシレート類 (II)の光学分割剤は(S) ( + )一力 ンファースルホン酸が最適であること、(2) 3 アミノー 2, 5 ジォキソピロリジン一 3 —カルボキシレート類 (II)を製造する工程と(S) - ( + )—カンファースルホン酸によ る光学分割の工程を連続して行って (R) _ 3—ァミノ _ 2, 5—ジォキソピロリジン一 3 —カルボキシレート類の(S) - ( + )—カンファースルホン酸塩(III)が製造できること 、および(3)該光学分割で得られる(R) _ 3—ァミノ一 2, 5—ジォキソピロリジン一 3 —カルボキシレート類の(S) - ( + )—カンファースルホン酸塩(III)力、ら直接(R) - 2 , 5 ジォキソ一 3— (ピロール一 1—ィル)ピロリジン一 3 カルボキシレート類(IV) を製造する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
(ラセミ体)
(式中、 Rは C アルキル基を意味し; Reは水素原子または置換されていてもよいべ
1 -6
ンジルォキシカルボ二ル基を意味し;但し、 Reが水素原子であるとき、 Rdは置換され
てレ、てもよレ、ベンジルォキシカルボニル基またはアミノ基を意味し; Reが置換されて レ、てもよレ、ベンジルォキシカルボニル基であるとき、 Rdは置換されてレ、てもよレ、ベン ジルォキシカルボニルァミノ基を意味し; CSAはカンファースルホン酸を意味する。 ) 即ち、本願発明によれば、以下の製造方法が提供される。
[項 1] 下記式 (III):
(式中、 Rは C アルキル基を意味する。 )
1-6
で表される化合物と 2, 5 ジメトキシテトラヒドロフランとを反応させて下記式 (IV):
(式中、 Rは前掲と同じものを意味する。 )
で表される化合物を製造する方法。
[0011] [項 2] 式 (III)で表される化合物の Rがェチル基である項 1の製造方法。
[0012] [項 3] 式 (III)で表される化合物と 2, 5—ジメトキシテトラヒドロフランの酢酸水溶液 に塩基を添加して反応を行う項 1または項 2の製造方法。
[0013] [項 4] 塩基が酢酸ナトリウムである項 3の製造方法。
[0014] [項 5] (3R)_2,_(4_ブロモ _2_フルォロベンジル)スピロ [ピロリジン一 3, 4 ,(1,H)—ピロ口 [1, 2_a]ピラジン]— 1,, 2, 3', 5 (2, H)—テトラオンの製造方法 であって、項 1〜項 4いずれか一項に記載の式 (IV)で表わされる化合物の製造工程 、および該工程で製造された式 (IV)で表わされる化合物を(3R) -2' - (4_ブロモ _2_フルォロベンジル)スピロ [ピロリジン一 3, 4' (l'H) _ピロ口 [1, 2_a]ピラジ ン]— 1', 2, 3', 5(2'H)—テトラオンへ変換する工程を含む製造方法。
[0015] [項 6] (3R)— 2'— (4 ブロモ 2 フルォロベンジル)スピロ [ピロリジン一 3, 4 ,(l'H)—ピロ口 [1, 2— a]ピラジン]— 1,, 2, 3', 5 (2, H) テトラオンの製造方法
であって;
(1)項 1〜項 4いずれか一項に記載の式 (IV)で表わされる化合物の製造工程;
(2)式(IV)で表わされる化合物の 1 ピロリル基を 2—トリクロロアセチルピロ一ルー 1 —ィル基に変換する工程;および
(3)前記工程(2)の生成物と 4_ブロモ _ 2_フルォロベンジルァミンとを反応させて (3R)—2 ' _ (4 ブロモ _ 2_フルォロベンジル)スピロ [ピロリジン一 3, 4' (l ' H) —ピロ口 [1, 2— a]ピラジン]— 1,, 2, 3 ', 5 (2, H)—テトラオンへ変換する工程を含 む製造方法。
[項 7] 下記式 (III) :
(式中、 Rは、 C アルキル基を意味する。 )
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で表される化合物。
[0017] [項 8] Rがェチル基である項 7の化合物。
[0018] [項 9] 項 7の化合物の製造方法であって、アルコール類に溶解した下記式 (II):
(式中、 Rは C アルキル基を意味する。 )
1 -6
で表される化合物と(S) ( + ) カンファースルホン酸との混合物から項 7の化合物 を結晶化させる工程、および該結晶を単離する工程を含む製造方法。
[項 10] 項 7の化合物の製造方法であって、下記式 (I):
(式中、 Rは C アルキル基を意味し; ITは水素原子または置換されていてもよいべ
1 -6
ンジルォキシカルボ二ル基を意味し; Reが水素原子であるとき、 Rdは置換されていて
もよレ、ベンジルォキシカルボニル基またはアミノ基を意味し; Reが置換されてレ、てもよ いべンジルォキシカルボニル基であるとき、 Ruは置換されていてもよいべンジルォキ シカルボニルァミノ基を意味する。 )
で表される化合物を水素化分解して下記式 (II):
(式中、 Rは前掲と同じものを意味する。 )
で表される化合物を製造する工程、前工程で生成した式 (II)の化合物を単離するこ となく(S) - ( + )—カンファースルホン酸との塩を形成させ、そしてその塩を光学分 割して項 7の化合物の結晶を製造する工程、および該結晶を単離する工程を含む製 造方法。
[0020] [項 11] (3R)— 2,一(4 ブロモ 2—フルォロベンジル)スピロ [ピロリジン一 3, 4,(1,H) ピロ口 [1, 2— a]ピラジン ]ー1,, 2, 3,, 5 (2,H)—テトラオンの合成の ための項 7または項 8に記載の化合物の使用。
[0021] [項 12] (3R)— 2,一(4—ブロモ 2 フルォロベンジル)スピロ [ピロリジン一 3, 4,(1,H)—ピロ口 [1, 2— a]ピラジン ]ー1,, 2, 3 ' , 5 (2, H)—テトラオンの製造方 法であって、項 7または項 8に記載の化合物を中間体または出発物質として用いる製 造方法。
[0022] [項 13] 項 7または項 8に記載の化合物が項 1〜項 4いずれか一項に記載の製造 方法によって製造されることを特徴とする、項 12に記載の製造方法。
発明の効果
[0023] 式 (III)の化合物は、好収率かつ高純度で得られる新規な 3 アミノー 2, 5 ジォ キソピロリジン _ 3_カルボキシレート類の光学活性酸塩であり、この塩を用いること で、公知の従来法と比べて少ない工程数でラニレスタツトを効率よく製造することがで きる。すなわち、公知の方法と比べて以下のメリットがある。 (S)一 ( + )一カンファース ルホン酸による式 (II)の化合物の光学分割は、光学活性な酸を用いる光学分割方 法の中で最も効率がよい方法であり、かつ公知の他の中間体の光学分割方法(前述
の特許文献 2および非特許文献 1に開示されている光学活性ァミンによる光学分割 法)の分割収率や光学収率と比べて遜色がない。加えて、該光学分割方法で得られ るジァステレオマー塩は 2工程前の化合物から連続操作で製造可能である。そして、 前述の公知の製法では、光学分割剤(光学活性ァミン)をジァステレオマー塩から除 去して遊離の中間体を単離する工程が必須であるのに対し、本発明の製法では、そ のような単離工程が必要でなぐ光学分割したジァステレオマー塩を直接次の中間 体へと好収率で変換することができる。ここにおいて、式 (II)の化合物は水溶性が高 いため、光学分割後のジァステレオマー塩から遊離の光学活性体を回収することは 難しレ、。したがって、本発明によりこの回収操作を回避できたことは、ラニレスタツトの 効率的な製造に大きく寄与している。
発明を実施するための最良の形態
[0024] 式 (III)の化合物は、水和物および/または溶媒和物の形で存在することもあるので
、これらの水和物および/または溶媒和物もまた本発明の化合物に包含される。
[0025] ここで本願明細書における用語について以下に説明する。
[0026] 「C アルキル基」とは、炭素数:!〜 6の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を意味し、具
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体例としてはメチル基、ェチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチ ル基、 tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基な どが挙げられる。
[0027] (S) - ( + )—カンファースルホン酸は、 (1S) - ( + ) _ 10—カンファースルホン酸、 あるいは(S) - ( + )—カンファ一一 10—スルホン酸と表記されることがあり、その化 学構造式は以下に示すとおりである。
「置換されていてもよいべンジルォキシカルボニル基」とは、ベンゼン環部分がハロ ゲン原子、 C アルキル基、 C アルコキシ基、シァノ基若しくはニトロ基で置換され
1 -4 1 -4
ていてもよいベンジル基を意味する。その具体例としては、ベンジル基、 4_クロ口べ ンジル基、 3 _ブロモベンジル基、 4_メチルベンジル基、 3_メチルベンジル基、 2
ーメトキシベンジル基、 4ーメトキシベンジル基、 4 シァノベンジル基、 4一二トロベン ジノレ基、ベンジルォキシカルボニルァミノ基などが挙げられる。
[0029] 「置換されてレ、てもよレ、ベンジルォキシカルボニルァミノ基」とは、前記の置換されて いてもよいべンジルォキシカルボニル基で置換されたアミノ基を意味する。
[0030] 次に、本発明の製造方法について以下に説明する。
[0031] 式(II)の化合物と(S) - ( + )—カンファースルホン酸との混合物をアルコール類( 例えば、メタノーノレ、エタノール、イソプロパノールなど)力 結晶化させ、析出した結 晶を濾取すると、式 (III)のジァステレオマー塩が選択的に得られる。この分別結晶 は、好ましくはエタノールを用いて、常法に従って行うことができる。通常、式 (II)の化 合物と(S) - ( + )—カンファースルホン酸との混合物をアルコール類に加熱溶解し、 該溶液を必要に応じて濃縮した後冷却すると式 (III)の化合物が結晶化する。加熱 温度は特に限定されないが、通常は、アルコール類が還流するまで加熱する。冷却 時に式 (III)の化合物の結晶を種晶として加えてもよレ、。 (S) ( + ) カンファースル ホン酸の使用量は、式 (II)の化合物に対して 1当量が好ましい(但し、厳密に 1当量 に限定されるものではない)。式 (II)の化合物 lgの分別結晶に用いるアルコール類 の量は、通常、 3〜50mlである。し力し、この光学分割で多量のアルコール類を使つ た場合は、式 (II)の化合物と(S) ( + ) カンファースルホン酸を溶解後、該溶液が 式 (II)の化合物 lgあたり 4〜6mlになるまで濃縮するのが好ましい。冷却速度は、特 に限定されないが、通常は 0.25〜2. 5°C/minである。通常、室温から 0°C程度ま で冷却を行う。結晶化が困難であるときは、アルコール類に代えて、アセトンなどのァ セトン類を用いるのも有効である。分別結晶で得られた結晶は、必要に応じて、常法 に従ってアルコール類から再結晶するとさらに光学純度の高い結晶が得られる。
[0032] 式 (II)の化合物は、前述の特許文献 1並びに特許文献 2に記載の公知の製造法、 あるいは後記参考例 1〜4に記載の新規な製造法で造法することができる。光学分 割剤として用いる(S) - ( + )—カンファースルホン酸は市販されている。
[0033] R
eが置換されてレ、てもよレ、ベンジルォキシカルボニル基であり、 R
dが置換されてレヽ てもよレ、ベンジルォキシカルボニルァミノ基である式(I)の化合物 [下記式(I _ 1 )の 化合物]は、下図に示す新規な製造法で製造することができる。
(l-D
(式中、 Rは C アルキル基を意味し、 Reは置換されていてもよいベンジル基を意味
1 -6
する。)
[0034] 式 (V)の化合物と式 (VI)の化合物との反応で使用する溶媒の具体例としては、メ タノ一ノレ、エタノール、イソプロパノール、 tert -ブタノール、酢酸ェチル、ァセトニトリノレ 、テトラヒドロフラン、 N, N—ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水などが挙 げられ、それぞれ単独でまたは 2種以上を混合して用いることができる。本工程では、 必ずしも塩基を必要とはしなレ、が、塩基を用いるとより効率よく反応が進行する。塩基 の具体例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリェチルアミ ン、ピリジン、 1, 8—ジァザビシクロ [5· 4. 0]ゥンデカー 7—ェン、ナトリウムエトキシ ド、カリウム tert-ブトキシドなどが挙げられる。塩基の使用量は、特に限定されないが 、式 (V)の化合物に対して触媒量から過剰量までの量を選択できる。反応温度は通 常 0〜: 100°Cであり、 10〜30°Cが好ましい。
[0035] 式 (V)の化合物は、特開昭 60— 16989号公報に記載の方法、或いはこれに準じ た方法により、マロン酸ジェチルと 2—クロロアセトアミドを塩基の存在下に反応させ て 1工程で製造することができる。
[0036] 式 (VI)の化合物は、市販されている力、自体公知の方法、或いはこれらに準じた 方法により製造することができる。
[0037] Reが水素原子であり、 Rdがァミノ基である式 (I)の化合物 [下記式 (1— 3)の化合物] は、下図に示す製造法で製造することができる。
、 Rは C —アルキル基を意味し、 Rfは置換されてレ、てもよレ、ベンジル基または t
ert-ブチルォキシカルボ二ル基を意味する。 )
[0038] Rfが tert-ブチルォキシカルボニル基である式(1— 2)の化合物を適当な溶媒中で 酸と反応させると式 (I 3)の化合物が生成する。この反応で用いられる溶媒の具体 例としては、酢酸ェチル、ジクロロメタン、 1, 4—ジォキサン、酢酸、水などが挙げら れ、それぞれ単独でまたは 2種以上を混合して用いることができる。反応に用いる酸 の具体例としては、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、トリフルォロ酢酸、メタン スルホン酸、トリフルォロメタンスルホン酸などが挙げられ、これらのうち、塩化水素あ るいはトリフルォロ酢酸が好ましレ、。好ましい反応温度は 0〜30°Cである。
[0039] Rfが置換されていてもよいべンジノレ基である式 (1_ 2)の化合物を適当な溶媒中で パラジウム炭素エチレンジアミン錯体などの触媒を用いて短時間で水素化分解する と式 (1 3)の化合物が生成する。溶媒の具体例としては、酢酸ェチル、メタノーノレ、 エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランなどが挙げられ、それぞれ単独でま たは 2種以上を混合して用いることができる。好ましい溶媒はエタノールである。反応 温度は通常 0〜80°Cである。好ましい反応時間は触媒の種類、反応温度、撹拌方法 などに依存するが、通常、室温で:!〜 4時間である。
[0040] 式 (I 2)の化合物は、前述の式 (I 1)の化合物の製法と同様にして製造される。
[0041] 式 (I 1)並びに式 (I 3)の化合物(これらの化合物は塩を形成してレ、てもよレ、)を 接触水素化分解または接触水素移動によって分解すると式 (II)の化合物が生成す る。接触水素化分解は、ノ ジウム炭素、白金炭素、酸化白金、ラネーニッケルなど の触媒存在下、適当な溶媒中、水素雰囲気下に常圧または加圧下で行われる。溶 媒の具体例としては、メタノーノレ、エタノール、イソプロパノール、酢酸、水などが挙げ られ、それぞれ単独でまたは 2種以上を混合して用いることができる。接触水素化分 解に中性の溶媒を用いる場合は、塩化水素、トリフルォロ酢酸などの酸をカ卩えてもよ レヽ。反応温度は通常 20〜80°Cである。接触水素移動による分解は、 J. Heterocycli c Chem. 18, 31 (1981)および Indian J. Chem. 42B, 1774 (2003)に記載の方法、ある いはこれらに準ずる方法で行うことができる。水素源としてギ酸アンモニゥム、ギ酸、 シクロへキセン、ヒドラジンなどを用い、溶媒の具体例としては、メタノーノレ、エタノー ノレ、イソプロパノール、酢酸、水などが挙げられ、それぞれ単独でまたは 2種以上を混
合して用いることができる。
[0042] 後記の実施例 3に示すとおり、式 (I 1)の化合物を水素化分解して式 (II)の化合 物を製造する工程と、式 (II)の化合物を光学分割して式 (III)の化合物を製造するェ 程を連続して実施することが可能である。
[0043] Reが水素原子であり、 Rdが置換されてレ、てもよレ、ベンジルォキシカルボニル基であ る式 (I)の化合物は、特許文献 1並びに特許文献 2に開示されている製造方法で製 造すること力 Sできる。
[0044] 式 (III)の化合物を適当な溶媒中で 2, 5—ジメトキシテトラヒドロフランと反応させる と、式 (IV)の化合物が生成する。溶媒は水と有機溶媒の混合溶媒が好ましぐ有機 溶媒の具体例としては、酢酸ェチル、メタノール、酢酸などが挙げられる。溶媒の混 合比率は用いる式 (III)の化合物の種類によって変動するが、水に対する有機溶媒 の量が 1〜90%である混合溶媒が好ましい。特に好ましい混合溶媒は水と酢酸の混 合溶媒 (酢酸水溶液)であり、更に 1〜50%の酢酸水溶液が好ましレ、。混合溶媒の 使用量は、通常、式 (III)の化合物 lgに対し 3〜20mlである。酢酸水溶液を用いる 場合、塩基 (例えば、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)を添加するとよい。塩 基の量は、式 (III)の化合物に対して約 1〜 1.2当量が好ましい。反応温度は、通常、 室温〜 100°Cである。
[0045] 前記特許文献 1、特許文献 2および非特許文献 1には、式 (IV)の化合物が、記載 の糖尿病合併症治療薬として期待されるラニレスタツトの中間体または出発物質とし て利用できると記載されている。そして、後記の実施例 4〜7に示すとおり、本願発明 の式 (III)の化合物は、式 (IV)の化合物を経由してラニレスタツトへと誘導される。ま た、特開平 8— 176105号公報には、式 (IV)の化合物を出発原料として製造するこ とができる 2—エトキシカルボニル一 2— (2—トリクロロアセチルピロール一 1—ィル) コハク酸イミドが糖尿病合併症治療薬として有用な 2_カルボキシコハク酸イミド誘導 体の中間体であることが記載されている。 2, 5—ジォキソピロリジン骨格は糖尿病関 連疾患治療薬や中枢神経系作用薬などの医薬として有用な化合物の部分構造でよ く見られる化学構造であることから、化学修飾可能な側鎖を持つ本願発明の式 (III) の化合物は新規な医薬の創製において有用な中間体あるいは出発原料となり得る。
実施例
[0046] 以下に実施例を挙げて本願発明を更に具体的に説明するが、本願発明はこれら 実施例に限定されるものではなレ、。化合物の確認は、プロトン核磁気共鳴スペクトル ('Η NMR)、炭素 13核磁気共鳴スぺクトノレ(13C NMR)、質量スぺクトノレ(MS)の解析 により行った。核磁気共鳴スペクトルには、テトラメチルシランを内部標準として用い た。フラッシュカラムクロマトグラフィーの充填剤はシリカゲルを用いた。
(実施例 1)
[0047] ェチル (R)— 3—アミノー 2, 5—ジォキソピロリジン一 3—カルボキシレートの(S) - ( + )一カンファースルホン酸塩の製造:
ェチル 3—アミノー 2, 5—ジォキソピロリジン一 3—カルボキシレート(8.00 g)と(S ) - ( + )一カンファースルホン酸(10.0 g)をエタノール(80 ml)に加温しながら溶かし た後、全量が約 45 mlになるまでこの溶液を減圧濃縮した。これを氷冷下で静置し、 生じた結晶を濾取し、エタノールで洗った。この結晶をエタノールから再結晶し、 目的 物 (4.70 g)を結晶として得た。
融点: 229-230。C (分解). [ α ] 27 +10.2° (c 1.03, MeOH). 'Η NMR (400 MHz, D
D 2
〇, 23 °C) δ : 4.43 (2H, q, J = 7.2 Hz), 3.56 (1H, d, J = 18.8 Hz), 3.28 (1H, d, J = 1 5.2 Hz), 3.22 (1H, d, J = 18.8 Hz), 2.86 (1H, d, J = 14.8 Hz), 2.46—2.37 (1H, m), 2. 16 (1H, t, J = 4.8 Hz), 2.09-2.00 (1H, m), 1.84 (1H, d, J = 18.8 Hz), 1.68-1.61 (1H , m), 1.49-1.42 (1H, m), 1.30 (3H, t, J = 7.2 Hz), 1.04 (3H, s), 0.83 (3H, s).
(実施例 2)
[0048] ェチル (R) _ 3—ァミノ _ 2, 5—ジォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレートの(S) - ( + )—カンファースルホン酸塩の光学純度:
3—アミノー 2, 5—ジォキソピロリジン一 3—カルボキシレート(4.0 g)と(S)— ( + ) - カンファースルホン酸(5.0 g)との混合物をエタノール(20 ml)から結晶化させて製造 した目的物の結晶(4.0 g、分割収率 88 %)の光学純度は 98 %eeであった。この結晶を エタノールから再結晶すると、光学純度 99. 9%eeの結晶(3.8 g、分割収率 84 %)が得 られた。
[0049] 参考例 1
ェチル 3— [N, N '—ビス(ベンジルォキシカルボニル)ヒドラジノ]—2, 5—ジォキ ソピロリジンー3—カルボキシレートの製造:
ェチル 2, 5—ジォキソピロリジンー3—カルボキシレート(3.92 g)の酢酸ェチル(6 0 ml)溶液に、ジベンジルァゾジカルボキシレート(7.27 g)次いで炭酸カリウム(317 m g)を室温で加えた。この混合物を室温で 1時間撹拌した後、セライト濾過した。濾液 を濃縮して得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(へキサン:酢酸ェチル = 2 : 1)で精製し、ェチル 3 _ [N, N'—ビス(ベンジルォキシカルボニル)ヒドラジノ ] _ 2, 5—ジォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレート(10.1 g, 94%)を非晶質として得 た。
'Η NMR (300 MHZ, DMS〇_d, 120 °C) δ : 11.4 (1H, br), 9.66 (1H, br), 7.35-7.25 (
6
10H, m), 5.15-5.02 (4H, m), 4.14 (2H, q, J = 7.1 Hz), 3.40 (1H, d, J = 18.3 Hz), 3. 17 (1H, d, J = 18.2 Hz), 1.14 (3H, t, J = 7.1 Hz).
[0050] 参考例 2
ェチル 3—ヒドラジノー 2, 5—ジォキソピロリジンー3—カルボキシレートの製造: 参考例 1の化合物(1.00 g)のエタノール(30 ml)溶液に 5%パラジウム炭素エチレン ジアミン錯体(100 mg)を加えた。これを水素雰囲気下(常圧)、室温で 2. 5時間激し く撹拌した。この間、反応の進行と共に発生する二酸化炭素を取り除くため、反応容 器中のガスを数回水素で置換した。反応混合物をセライト濾過し、エタノールでセラ イトを洗浄した。濾液と洗液を合わせて濃縮し、 目的物(432 mg,定量的)を油状物と して得た。 'Η NMR (300 MHZ, DMSO- d , 25 °C) δ : 4.16 (2H, q, J = 7.1 Hz), 2.96 (1
6
H, d, J = 17.8 Hz), 2.86 (1H, d, J = 17.9 Hz), 1.18 (3H, t, J = 7.1 Hz).
[0051] 参者例 3
ェチル 3—ヒドラジノー 2, 5—ジォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレート 一塩酸 塩の製造:
ェチル 2, 5—ジォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレート(2.96 g)の酢酸ェチル(2 5 ml)溶液に、ジ -tert-ブチルァゾジカルボキシレート(4.19 g)次いで炭酸カリウム(4. 78 g)を室温でカ卩えた。この反応混合物を室温で 15分撹拌した後、セライト濾過、濾 液を濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(へキサン:酢酸ェチル = 3:
1)で精製し、ェチル 3— [N, N,一ビス(tert-ブチルォキシカルボニル)ヒドラジノ] - 2, 5—ジォキソピロリジンー3—カルボキシレート(5.77 g, 83%)を非晶質として得た
H NMR (300 MHz, DMSO-d , 120 °C) δ : 11.3 (1Η, br), 8.80 (1Η, br), 4.20 (2Η, q,
6
J = 7. 1 Hz), 3.41 (1H, d, J = 18. 1 Hz), 3.17 (1H, d, J = 18. 1 Hz), 1.41 (9H, s), 1.40 (9H, s), 1.23 (3H, t, J = 7. 1 Hz).
ェチル 3 _ [N, N '—ビス(tert-ブチルォキシカルボニル)ヒドラジノ] _ 2, 5—ジ ォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレート(5.77 g)の酢酸ェチル(20 ml)溶液に 4mol/L 塩化水素酢酸ェチル溶液(25 ml)を加え、室温で 24時間撹拌した。析出物を濾取、 酢酸ェチルで洗浄し、 目的物(3.02 g, 76%)を粉末として得た。元素分析と結晶構造 解析の結果より目的物が一塩酸塩であることを確認した。
融点: 189-190 °C (分解). 'Η NMR (300 MHZ, DMSO-d , 25 。C) δ : 12. 1 (1H, br),
6
9.58 (3H, br), 4.23 (2H, q, J = 7.0 Hz), 3. 15 (2H, s), 1.22 (3H, t, J = 7. 1 Hz). 元素 分析計算値 C H C1N O : C, 35.38; H, 5.09; CI, 14.92; N, 17.68.実測値: C, 35.28
7 12 3 4
; H, 5.02 ; Cl, 14.83; N, 17.68.
[0052] 参考例 4
ェチル 3—アミノー 2, 5—ジォキソピロリジン一 3—カルボキシレートの製造: 参考例 3の化合物(274 mg)、酢酸(10 ml)および水(5 ml)の混合物に酸化白金(2 5.5 mg)を加え、これを水素雰囲気下(常圧)、 50°Cで 6時間激しく撹拌した。反応混 合物をセライト濾過し、少量の酢酸でセライトを洗浄した。濾液と洗液の混合溶液に 酢酸ナトリウム(164 mg)を加えて濃縮した。残留する酢酸と水を除くため残渣にトノレ ェンを加えて再度濃縮した。残渣に酢酸ェチルを加えて不溶物を濾去し、酢酸ェチ ル溶液を濃縮して得られた粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロ口ホル ム:メタノール = 30 : 1 )で精製し、 目的物(122 mg, 66%)を結晶として得た。
(実施例 3)
[0053] ェチル (R) _ 3—ァミノ一2, 5—ジォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレートの(S) - ( + )—カンファースルホン酸塩の製造:
参考例 1の化合物(2.04 g)の酢酸(30 ml)溶液に酸化白金(393 mg)を加え、これを
水素雰囲気下 (常圧)、 50°Cで 8時間激しく撹拌した。この間、反応の進行と共に発生 する二酸化炭素を取り除くため、反応容器中のガスを数回水素で置換した。反応混 合物をセライト濾過し、少量の酢酸でセライトを洗浄した。濾液と洗液を合わせて濃縮 し、残留する酢酸を除くため残渣にトルエンを加えて再度濃縮した。残渣に酢酸ェチ ルをカ卩えて不溶物を濾去し、酢酸ェチル溶液を濃縮して粗生成物(918 mg)を得た。 粗生成物と(S) - ( + )—カンファースルホン酸(1.09 g)をエタノール(40 ml)に加温 しながら溶力 た後、全量が 4-5 mlになるまでこの溶液を減圧濃縮した。これを室温 で静置し、生じた結晶を濾取し、エタノールで洗い、 目的物(356 mg, 20%)を結晶とし て得た。
(実施例 4)
[0054] ェチル (R) _ 2, 5—ジォキソ一 3 _ (ピロール _ 1 _ィル)ピロリジン _ 3 _カルボ キシレートの製造:
ェチル (R)— 3 アミノー 2, 5 ジォキソピロリジン一 3 カルボキシレートの(S) (+ ) カンファースルホン酸塩(418 mg)を 25%酢酸水溶液(4 ml)に溶かした。こ れに酢酸ナトリウム(82 mg)と 2, 5 ジメトキシテトラヒドロフラン(0.143 ml)をカロえ、 70 °Cで 1.5時間撹拌した。放冷後、この混合物に酢酸ェチル (20 ml)をカ卩え、水、続い て飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した。濾液を濃縮して油状 物を得た。これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(へキサン:酢酸ェチル = 3 : 1)で 精製し、 目的物(230 mg, 97%)を油状物として得た。この生成物の1 H NMRによる分析 値は、非特許文献 1に記載のそれと一致した。
¾ NMR (400 MHz, CDC1 , 23 °C) δ : 9.05 (1H, br), 6.94 (2H, t, J = 2.2 Hz), 6.26 (
3
2H, t, J = 2.2 Hz), 4.28 (2H, q, J = 7.2 Hz), 3.59 (1H, d, J = 17.6 Hz), 3.36 (1H, d, J = 18.0 Hz), 1.26 (3H, t, J = 7.2 Hz). 13C NMR (100 MHz, CDC1 , 24。C) δ: 172.7
3
, 170.5, 166.8, 120.0, 110.1, 68.6, 63.9, 41.9, 13.8. MS (APCI): 237(M+H).
(実施例 5)
[0055] 別法による、ェチル (R) _ 2, 5—ジォキソ一 3 _ (ピロール _ 1 _ィル)ピロリジン _ 3 _カルボキシレートの製造:
ェチル (R)— 3 ァミノ一 2, 5 ジォキソピロリジン一 3 カルボキシレートの(S)
(+ ) カンファースルホン酸塩(2.25 g)を 25%酢酸水溶液(8 ml)に溶かした。こ れに NaHCO (0.5 g)を加え、ついで 2, 5 ジメトキシテトラヒドロフラン(0.74 g)を加
3
え、 70°Cで 1.5時間撹拌した。放冷後、この混合物に水と酢酸ェチルをカ卩え、酢酸ェ チル層を分取した。酢酸ェチル層を 30%食塩水で 2回洗浄後、硫酸マグネシウムで 乾燥、濾過した。濾液を濃縮して目的物(1.2 g, 94%)を油状物として得た。
(実施例 6)
[0056] 別法による、ェチル (R) _ 2, 5—ジォキソ— 3 _ (ピロール _ 1 _ィル)ピロリジン _ 3_カルボキシレートの製造:
ェチル (R)— 3 ァミノ一 2, 5 ジォキソピロリジン一 3 カルボキシレートの(S) — ( + )—カンファースルホン酸塩(1.0 g)、 2, 5 ジメトキシテトラヒドロフラン(0.32 g) 、水(5 ml)および酢酸ェチル (8 ml)の混合物を室温でー晚撹拌した。混合物を酢酸 ェチルで抽出し、酢酸ェチル層を水、 5%NaHCO水溶液、続いて食塩水で洗浄後
3
、硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した。濾液を濃縮して約 83%の収率で約 5%の不純 物を含む目的物を得た。
(実施例 7)
[0057] (3R)— 2'— (4 ブロモ 2 フルォロベンジル)スピロ [ピロリジン一 3, 4' (l ' H) —ピロ口 [1, 2— a]ピラジン]— 1,, 2, 3,, 5 (2,H)—テトラオンの製造:
(1)ェチル (R) 2, 5 ジォキソ一 3— (ピロール一 1—ィル)ピロリジン一 3 カル ボキシレート(767 mg)の酢酸ェチル(10 ml)溶液にトリクロロアセチルクロリド(1.1 ml) を加え、この溶液を一晩加熱還流した。この反応混合物を室温まで放冷後、トリクロ口 ァセチノレクロリド(1.1 ml)を加え、この混合物を 3時間加熱還流した。この反応混合物 を室温まで水冷し、残留したトリクロロアセチルクロリドを飽和炭酸水素ナトリウム水溶 液で注意深く分解した。水層がアルカリ性であることを確認後、これを酢酸ェチル (5 ml)で 3回抽出し、合わせた抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄、硫酸マグネシウム で乾燥、ろ過、濃縮し油状の粗生成物を得た。これをフラッシュカラムクロマトグラフィ 一(n-へキサン:酢酸ェチル = 1: 1)で精製し、ェチル (R) _ 2, 5—ジォキソ— 3 _ (2 トリクロロアセチルピロール一 1—ィル)ピロリジン一 3 カルボキシレート(1.17 g 、 94%)を得た。
JH NMR (400 MHz, DMSO-d、 22 °C) δ: 12.4 (br s, 1H), 7.68 (dd, 1H, J = 1.2, 4.
6
4 Hz), 7.55 (dd, 1H, J = 1.6, 2.8 Hz), 6.44 (dd, 1H, J = 2.4, 4.4 Hz), 4.25-4.08 (m , 2H), 3.72 (d, 1H, J = 18.0 Hz), 3.06 (d, 1H, J = 18.0 Hz), 1.11 (t, 3H, 7.2 Hz).
(2) 4 ブロモ _ 2_フルォロベンジルァミン(0.93 g)とトリエチルァミン(1.3 ml)の N, N-ジメチルホルムアミド(5 ml)溶液に、ェチル (R) - 2, 5—ジォキソ一 3_ (2 トリ クロロアセチルピロール一 1—ィル)ピロリジン _ 3 _カルボキシレート(1.16 g)の N,N- ジメチルホルムアミド(3 ml)溶液を室温で滴下した。この混合物を室温で 8時間撹拌 した。この反応混合物を酢酸ェチルで希釈した後、 lmol/L塩酸(3回)、水(4回)、飽 和食塩水で順次洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し黄色油状の粗生成物 を得た。これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(n-へキサン:酢酸ェチル = 2: 1)で 精製し、 (3R)—2' _ (4—ブロモ _ 2_フルォロベンジル)スピロ [ピロリジン一 3, 4' (1,H)—ピロ口 [1, 2_a]ピラジン]— 1,, 2, 3,, 5 (2,H)—テトラオン(831 mg、 65% )を得た。更に、これを n-へキサン 酢酸ェチルから結晶化し、 目的物の結晶(385 m g)を得た。
Mp: 189-191 °C. JH NMR (400 MHz, DMSO-d、 22 °C) δ: 12.2 (br s, 1H), 7.73 (d
6
d, 1H, J = 2.0, 3.2 Hz), 7.55 (dd, 1H, J = 2.0, 9.6 Hz), 7.36 (dd, 1H, J = 2.0, 8.4 H z), 7.17-7.12 (m, 2H), 6.53 (dd, 1H, J = 2.8, 4.0 Hz), 5.04 (d, 1H, J = 15.2 Hz), 4.9 6 (d, 1H, J = 15.6 Hz), 3.57 (s, 2H).
[0058] 比較例 1.1
L— ( + )—酒石酸によるェチル 3 アミノー 2, 5 ジォキソピロリジン一 3 カル ボキシレートの光学分割:
L—( + )—酒石酸とェチル (R)— 3 ァミノ一 2, 5 ジォキソピロリジン一 3 力 ルボキシレート、および L— ( + )—酒石酸とェチル (S) _ 3—ァミノ _ 2, 5 _ジォキ ソピロリジン _ 3 _カルボキシレートとがいずれもァセトニトリル中で塩を結晶化するこ とを確認した。すなわち、ァセトニトリルを溶媒として用いる L— ( + )—酒石酸によるェ チル 3 アミノー 2, 5—ジォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレートの光学分割が困 難である可能性が高レ、ことを確認した。
[0059] J:匕較 ill.2
S— ( + )—マンデル酸によるェチル 3 アミノー 2, 5 ジォキソピロリジン一 3 力 ルボキシレートの光学分割:
3 アミノー 2, 5 ジォキソピロリジン一 3 カルボキシレート(3.0 g)と S— ( + )—マ ンデル酸(2.5 g)との塩をァセトニトリル(4 ml)中で結晶化させ、 目的物の塩(2.0 g、 分割収率 75 %、光学純度 92 %ee)を得た。この塩はァセトニトリルによく溶けるため再 結晶による更なる精製が困難であった。また、ァセトニトリルに代わる適切な結晶化溶 媒が見つからなかった。
[0060] J:匕較 ill.3
(_) _〇, O '—ジベンゾィル _L—酒石酸によるェチル 3—ァミノ一 2, 5—ジォ キソピロリジン _ 3 _カルボキシレートの光学分割:
3—ァミノ一2, 5—ジォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレート(3.0 g)と(_ ) _〇, O ,—ジベンゾィル一L—酒石酸(6.1 g)との塩をァセトニトリル(11 ml)中で結晶化させ 、 目的物の塩(3.2 g、分割収率 69 %、光学純度 97 %ee)を得た。この塩はァセトニトリ ルによく溶けるため再結晶による更なる精製が困難であった。また、ァセトニトリルに 代わる適切な結晶化溶媒が見つからなかった。
[0061] 比較例 1.4
その他の光学活性な酸によるェチル 3 アミノー 2, 5 ジォキソピロリジンー3— カルボキシレートの光学分割:
ァセトニトリルを溶媒として用い、 (+ )—ショウノウ酸、 L ピロダルタミル酸 [ (S) - ( — )—2 ピロリドン一 5 カルボン酸]、 L リンゴ酸によるェチル 3 アミノー 2, 5 ージォキソピロリジン 3—カルボキシレートの光学分割を試みた力 S、いずれも塩が 得られなかった。
[0062] 比較例 2
ェチル (R)— 3—ァミノ一 2, 5—ジォキソピロリジン一 3—カルボキシレートの(S) _ ( + )—カンファースルホン酸塩からのェチル (R) _ 3—ァミノ _ 2, 5—ジォキソピ 口リジン _ 3_力ノレボキシレートの製造:
5%NaHCO水溶液(10 ml)にェチル (R)—3—ァミノ一 2, 5—ジォキソピロリジ
3
ン一 3—カルボキシレートの(S)— ( + )—カンファースルホン酸塩(2.09 g)をカロえた。
このとき、激しく発泡した。次に NaClを加え、酢酸ェチル(30 ml)で 3回抽出した。 1 回目の抽出で目的物を 0.5 g (54 %)得た。さらに酢酸ェチル(30 ml)で 2回抽出を行 レ、、 2回目の抽出で 0.2 g、 3回目の抽出で 0.07 gの目的物を得た。総量 0.77 g (83 %) ェチル (R) _ 3—ァミノ一2, 5—ジォキソピロリジン _ 3 _カルボキシレートは水に 極めて溶けやすいため、有機溶媒による水溶液からの抽出効率が悪い。
産業上の利用可能性
本発明の式 (III)の化合物は、糖尿病合併症治療薬として有用なラニレスタツトの中 間体として工業的利用価値が高ぐこの化合物を使うことでラニレスタツトが効率よく 製造される。