WO2007148609A1 - TIMP-3による造血幹細胞または造血前駆細胞のEx vivo/in vivo増殖 - Google Patents
TIMP-3による造血幹細胞または造血前駆細胞のEx vivo/in vivo増殖 Download PDFInfo
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Abstract
本発明は、造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、血球の数を増加させるための医薬組成物を提供することも目的とする。本発明の方法は、造血幹細胞および未分化造血前駆細胞の培養上清中にTIMP-3タンパク質を添加することを含む。また、本発明の方法は、造血幹細胞および未分化造血前駆細胞にTIMP-3タンパク質をコードする核酸を含むベクターを導入することを含む。さらに、本発明の医薬組成物は、TIMP-3タンパク質、あるいはTIMP-3タンパク質をコードする核酸を含む。
Description
明 細 書
TIMP— 3による造血幹細胞または造血前駆細胞の Ex vivo/in vivo 増殖
技術分野
[0001] 本発明は、造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する方 法、該方法により作成された造血幹細胞および未分化造血前駆細胞、および血球の 数を増加させるための医薬組成物に関する。
背景技術
[0002] 造血幹細胞は、骨髄中のニッチ (niche)と呼ばれる微小環境にごくわずかに存在 し、自己複製能を有すると共に、赤血球、白血球、および巨核球 (血小板)等全ての 血液細胞に分化する能力を持った細胞である。血球系の細胞にはそれぞれ固有の 寿命があるため、造血幹細胞はこれらの血球を供給し続けるために絶えず分裂-増 殖を繰り返している。
[0003] このように、造血幹細胞は全ての血球系の細胞系列に分化する特性を有することか ら、造血幹細胞移植は、再生医療における切り札として期待されている。
[0004] 造血幹細胞移植により改善することのできる疾患の 1つに、急性骨髄性白血病が挙 げられる。この疾患は、白血球が悪性腫瘍ィ匕して白血病細胞となり、血液または骨髄 の中で増殖することにより引き起こされる疾患である。この疾患の治療方法としては、 まず患者の主要組織適合性抗原 (HLA)の型と同じ HLAを有するドナーの骨髄およ び末梢血等から造血幹細胞を採取する。その後、患者は抗癌剤や放射線照射を受 けることにより、体内の白血病細胞は全て死滅する。ここで、その副作用として造血幹 細胞もまた死滅し、全身の造血が抑えられる力 先述のドナー力 採取した採取液を 患者に点滴等により導入するにより、患者の造血能力は回復される。即ち、抗癌剤や 放射線照射により患者の有して 、た白血病細胞および造血幹細胞は死滅するが、そ の後導入されたドナー由来の造血幹細胞により患者の造血が回復し症状の改善が 見られる。
[0005] このように、特定の疾患、特に白血病などの造血器腫瘍の治療のために造血幹細
胞移植は有用であるが、造血幹細胞は数万細胞に 1つ程度しか存在しな 、といわれ ており、この細胞をインビトロの系で未分ィ匕性、自己複製能および長期骨髄再建能な どを保ったまま増殖させることができれば、造血幹細胞のドナーの負担軽減や臍帯 血造血幹細胞の応用にも役立つと考えられて!/ヽる。
[0006] 造血幹細胞の複製'維持および分化'増殖に関与する因子について、これまでに いくつかの知見が得られている。例えば、 SCF (stem cell factor)は骨髄支持細 胞等から産生され、造血幹細胞の生存 ·増殖 '分ィ匕などに必須であることが、 SCFに 異常を有する変異マウスを用いた研究により明らかとなっている (非特許文献 1)。ま た、 TPO (トロンボポェチン)もまた造血幹細胞の増殖に深く関わることがこれまでに 明らかとなつて!ヽる (非特許文献 2)。
[0007] このように造血幹細胞は骨髄移植などの再生医療の重要な細胞ソースであり、イン ビトロまたはインビボで造血幹細胞を増幅する試みが多数なされてきた。例えば、ィ ンビトロにおける造血幹細胞増殖としては、上記のサイト力インと、 IL 6等の造血幹 細胞の増殖に関わるサイト力インを組み合わせることによりインビトロで造血幹細胞を 増殖させる方法や、フィーダ一細胞としてマウスストローマ細胞の HESS— 5と上記の ようなサイト力インを用いる方法 (非特許文献 3)等により、造血幹細胞を数倍まで増 幅できることが報告されて 、る。
[0008] また、これまでに血球の数を増加させる医薬組成物がいくつか知られている。例え ば、エリスロポエチン (EPO)は赤血球数を増加することが知られており、また顆粒球 コロニー刺激因子(G— CSF)は、好中球の増加促進のために用いられている。この ように 1つの特定の血球を特異的に分ィ匕させる医薬組成物はこれまでにも知られて いた力 複数の血球系列を同時に増カロさせる因子を用いた医薬組成物はこれまでに 知られていない。
非特許文献 l :Zsebo, K. M.ら Cell, 63 213— 224 (1990)
非特許文献 2 :Ku, H.ら Blood, 87 4544-4551 (1996)
非特許文献 3 :Ando, K.ら Exp. Hematol. , 28 690-699 (2000) 非特許文献 4: Gomis—Ruth F. X.ら Nature, 389, 77— 81 (1997) 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] 本発明は、造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する方 法を提供することを目的とする。また、本発明は該方法により作成された造血幹細胞 および未分化造血前駆細胞を提供することを目的とする。さらに、本発明は血球の数 を増加させるための医薬組成物を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0010] 本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究に努めた結果、 TIMP— 3タン ノ ク質またはこれをコードする核酸を使用して、生理学的性質の改善した造血幹細 胞および未分化造血前駆細胞を作成するに至り、本発明を想到した。
[0011] 具体的には、本発明者はまず、 5FU (5 フルォロウラシル)を投与し、骨髄抑制に より血球数が減少したマウス骨髄の骨梁表面上に存在する骨芽細胞において、 TIM P- 3 (Tissue inhibitor of Metalloproteinase— 3)の発現量が増加しているこ とを発見した。骨髄の骨梁表面上には造血幹細胞の存在するニッチがあることが知ら れており、この造血幹細胞-ツチにおける TIMP— 3タンパク質の濃度が上昇したこと から、 TIMP— 3の造血幹細胞に対する作用が示唆された。
[0012] 本発明者は上記発見に基づき、 FACSによりソーティングした造血幹細胞に相当 するマウス CD34— KSL (c— Kit+、 Sea— 1+、 Lineage— )細胞に、精製したヒト TIMP —3タンパク質を培養上清中に添加して培養した実験を行った。これにより、 TIMP 3タンパク質が、造血幹細胞および未分ィ匕造血前駆細胞の増殖能を有意に亢進 する活性を有することが明らかとなった。また、造血幹細胞および未分化造血前駆細 胞の自己複製能に関する実験では、 TIMP— 3タンパク質を添加した細胞では、自 己複製能が維持または亢進されることが明らかとなった。
[0013] また、 TIMP— 3タンパク質と培養したマウス CD34— KSL細胞を、致死量の放射線 照射により造血系が破壊されたマウスに移植する実験により、当該細胞が TIMP— 3 と培養していない細胞と同程度またはそれ以上の生着率を有することが明ら力となつ た。
[0014] さらに、 TIMP— 3タンパク質を発現するプラスミドをマウスに投与することにより、白 血球、赤血球および血小板数の増加が観察された。これはプラスミドにより発現した
TIMP— 3タンパク質が造血幹細胞および未分ィ匕造血前駆細胞の増殖能および生 存率の亢進を引き起こし、その結果として血球細胞の増加が観察されたものであると 思われる。
[0015] 本発明は、これらのように TIMP— 3により造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞 の生理学的性質が改善されるという知見により想到されたものである。本発明は、好 ましくは以下に記載するような態様により行われる力 これに限定されるものではない
[0016] 本発明は、造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する方 法であって、
(1)造血幹細胞または未分化造血前駆細胞を培養する培養上清中に TIMP— 3タン ノ ク質を添加する工程、および
(2)当該造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞を(1)の培養上清中にて培養する 工程、
を含む、前記方法を提供する。
[0017] 本発明の好ましい態様において、前記 TIMP— 3タンパク質は、以下の(A)野生型 TIMP - 3タンパク質および/または(B)変異型 TIMP - 3タンパク質からなる:
(A)野生型 TIMP— 3タンパク質は、以下の(a) - (g)からなる群より選択される、 T IMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性および造血幹細胞または未分化造血前駆細 胞の生理学的性質を改善する活性を有するタンパク質であり:
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列から 1つまたは数個のアミノ酸残 基の欠失、置換、および Zまたは付加を有するタンパク質;
(c)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するタ ンパク質;
(d)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列によりコードされるタンパク質;
(e)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列と高度にストリンジ ントな条件下 でノ、イブリダィズする塩基配列によりコードされるタンパク質;
(f)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列から 1つまたは数個の塩基の欠失
、置換、および zまたは付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質;並びに
(g)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核 酸配列によりコードされるタンパク質、
(B)変異型 TIMP— 3タンパク質力 TIMP 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性を欠 損し、そして造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活 性を有する以下の(a)または (b)のタンパク質である、
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211を含むアミノ酸配列、または配列番号 1のァミノ 酸 X— 211を含むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、 配列番号 1のアミノ酸 24— 27および 89— 90に相当する部分の!/、ずれか 1つのまた は複数のアミノ酸残基に欠失、置換および Zまたは付加を有するタンパク質、あるい は
(b)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列、配列番号 3の塩基 y— 633を含 む核酸配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列、または 配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核酸配列 にお 、て、配列番号 3の塩基 70— 81および塩基 265— 270に相当する部分の!/、ず れか 1つのまたは複数の塩基に欠失、置換および Zまたは付加を有する核酸配列に コードされるタンパク質、
(Xは、 1— 24から選択されるいずれか 1つの整数(1および 24を含む)であり、そし て、 yは、 1— 70から選択されるいずれか 1つの整数(1および 70を含む)である)。 さらに好ましい態様において、前記変異型 TIMP— 3タンパク質は、以下の(a)— ( g)からなる群より選択される、 TIMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性を欠損し、そ して造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有す るタンパク質である:
(a)配列番号 2のアミノ酸 X— 211を含むアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号 2のアミノ酸 X - 211を含むアミノ酸配列から 1つまたは数個のアミノ酸 残基に欠失、置換、および Zまたは付加を有するタンパク質;
(c)配列番号 2のアミノ酸 X 211を含むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有す
るタンノ ク質;
(d)配列番号 4の塩基 y— 633を含む核酸配列によりコードされるタンパク質;
(e)配列番号 4の塩基 y— 633を含む核酸配列と高度にストリンジェントな条件下で ハイブリダィズする塩基配列によりコードされるタンパク質;
(f)配列番号 4の塩基 y— 633を含む核酸配列から 1つまたは数個の塩基に欠失、 置換、および Zまたは付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質;並びに、
(g)配列番号 4の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核酸 配列によりコードされるタンパク質
(Xは、 1— 24から選択されるいずれか 1つの整数(1および 24を含む)であり、そし て、 yは、 1— 70から選択されるいずれか 1つの整数(1および 70を含む)である)。
[0019] 本発明はまた、造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善す る方法であって、
(1) TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含むベクターを準備する工程、
(2)造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞に(1)のベクターを導入する工程、およ び
(3) (2)の造血幹細胞または未分化造血前駆細胞を培養する工程、
を含む、前記方法を提供する。
[0020] 好ましい態様において、前記 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸は、以下の (A )野生型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸および Zまたは(B)変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸力もなる:
(A)野生型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸は、以下の(a) - (g)からなる群 より選択される、 TIMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性および造血幹細胞または 未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有するタンパク質をコードし
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列から 1つまたは数個のアミノ酸残 基の欠失、置換、および Zまたは付加を有するタンパク質;
(c)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するタ
ンパク質;
(d)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列によりコードされるタンパク質;
(e)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列と高度にストリンジ ントな条件下 でノ、イブリダィズする塩基配列によりコードされるタンパク質;
(f)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列から 1つまたは数個の塩基の欠失 、置換、および Zまたは付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質;並びに
(g)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核 酸配列によりコードされるタンパク質、
(B)変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸が、 TIMP— 3のメタ口プロテア ーゼ阻害活性を欠損し、そして造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的 性質を改善する活性を有する以下の(a)または (b)のタンパク質をコードする:
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211を含むアミノ酸配列、または配列番号 1のァミノ 酸 X— 211を含むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、 配列番号 1のアミノ酸 24— 27および 89— 90に相当する部分の!/、ずれか 1つのまた は複数のアミノ酸残基に欠失、置換および Zまたは付加を有するタンパク質、あるい は
(b)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列、配列番号 3の塩基 y— 633を含 む核酸配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列、または 配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核酸配列 にお 、て、配列番号 3の塩基 70— 81および塩基 265— 270に相当する部分の!/、ず れか 1つのまたは複数の塩基に欠失、置換および Zまたは付加を有する核酸配列に コードされるタンパク質、
(Xは、 1— 24から選択されるいずれか 1つの整数(1および 24を含む)であり、そし て、 yは、 1— 70から選択されるいずれか 1つの整数(1および 70を含む)である)。 さらに好ましい態様において、前記変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸 は、以下の(a)—(g)からなる群より選択される TIMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害 活性を欠損し、そして造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改
善する活性を有するタンパク質をコードする:
(a)配列番号 2のアミノ酸 X— 211を含むアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号 2のアミノ酸 X - 211を含むアミノ酸配列から 1つまたは数個のアミノ酸 残基の欠失、置換、および Zまたは付加を有するタンパク質;
(c)配列番号 2のアミノ酸 X— 211を含むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有す るタンノ ク質;
(d)配列番号 4の塩基 y— 633を含む核酸配列によりコードされるタンパク質;
(e)配列番号 4の塩基 y— 633を含む核酸配列と高度にストリンジェントな条件下で ハイブリダィズする塩基配列によりコードされるタンパク質;
(f)配列番号 4の塩基 y— 633を含む核酸配列から 1つまたは数個の塩基の欠失、 置換、および Zまたは付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質;並びに、
(g)配列番号 4の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核酸 配列によりコードされるタンパク質
(Xは、 1— 24から選択されるいずれか 1つの整数(1および 24を含む)であり、そし て、 yは、 1— 70から選択されるいずれか 1つの整数(1および 70を含む)である)。
[0022] 本発明の好ま 、態様にぉ 、て、培養期間はおよそ 1週間な 、しおよそ 2週間の間 である。
[0023] また本発明は、上述の方法により生理学的性質が改善された、造血幹細胞または 未分化造血前駆細胞を提供する。
[0024] 好ましい態様において、上述の方法により生理学的性質が改善された造血幹細胞 または未分ィ匕造血前駆細胞は、移植後の短期および長期骨髄再建能を維持若しく は亢進する、および Zまたは生着率を維持若しくは亢進する能力を有する。
[0025] また本発明は、 TIMP— 3タンパク質を含んでなる、血球の数を増加させるための 医薬組成物を提供する。
[0026] 本医薬組成物の好ましい態様において、前記 TIMP— 3タンパク質は、以下の (A) 野生型 TIMP - 3タンパク質および Zまたは(B)変異型 TIMP - 3タンパク質力 なり
、ここで (A)野生型 TIMP— 3タンパク質および(B)変異型 TIMP— 3タンパク質は上 記に記載のものと同様とする。
[0027] さらに本発明は、 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを含ん でなる、血球の数を増力!]させるための医薬組成物を提供する。
[0028] 本発明の医薬組成物の好ましい態様において、前記 TIMP— 3タンパク質をコード する核酸は、以下の (A)野生型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸および Zまた は(B)変異型 TIMP - 3タンパク質をコードする核酸力 なり、ここで (A)野生型 TIM P— 3タンパク質をコードする核酸および (B)変異型 TIMP— 3タンパク質をコードす る核酸は上記に記載のものと同様とする。
[0029] さらに、本発明の医薬組成物の好ましい態様において、前記血球は、赤血球、白 血球および血小板力 なる群の 、ずれかの血球、またはその組み合わせである。
[0030] i) ;告 rfn. 細qまたは 分化;告 rfn.流駆細qの ¾ 己 する 法
(i)TTMP— 3タンパク いる 法
本発明は、造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する方 法を提供する。本発明の方法は、
(1)造血幹細胞または未分化造血前駆細胞を培養する培養上清中に TIMP— 3タン ノ ク質を添加する工程、および
(2)当該造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞を(1)の培養上清中にて培養する 工程、
を含む。ここで、前記生理学的性質の改善は、増殖能の亢進、自己複製能の維持ま たは亢進、生存率の亢進、多分化能の維持、短期および長期骨髄再建能の維持ま たは亢進、からなる群より選択されるいずれかの性質の改善、あるいはこれらの組み 合わせ力 なる。
[0031] Lin (Lineage)とは CD2, CD3, CDl lb, CD14, CD15, CD16, CD19, CD5 6,および CD235aなどをいい、 Lin—とはこれら全ての抗原について陰性であることを いう。 Lin—細胞を選択するために、上記全ての抗原に対するピオチン標識した抗体 カクテルを造血幹細胞ある!/ヽは未分化造血前駆細胞を含む骨髄 ·末梢血 ·臍帯血細 胞の細胞表面に作用させ、洗浄後の当該細胞に抗ビォチン抗体を表面に有する磁 性マイクロビーズを添加する。その後、マイクロビーズに付着した細胞を磁性に基づ き、カラムを使用することにより取り除き、 Lin細胞のみを得ることが可能である。この
ような方法に用いる抗体カクテルおよびマイクロビーズのキットは一般に市販されて おり、例えば Miltenyi Biotecから入手可能である。
[0032] 本明細書において、「造血幹細胞」とは、自己複製能、および赤血球、白血球、お よび巨核球等全ての血液細胞に分化する多分化能を持ち、数ケ月以上の長期間に わたり造血を再構築する能力をもった細胞をいう。これまでの研究により、造血幹細 胞は、骨髄、末梢血、および臍帯血にごく微量含まれていることが明らかとなっており 、これら力 採取することが可能である。また、造血幹細胞の表面抗原は、マウスでは CD34— , c— Kit+, Sea— 1+, Lin―、ヒトでは CD34+あるいは CD34— , CD381W一, Linであるとされており、上記のような部位力 採取した細胞群から、これらに対する 抗体を用いて FACSを用いてソーティングすることが可能である。
[0033] また、「未分化造血前駆細胞」とは、造血幹細胞の分化が進み、造血幹細胞の自己 複製能を失っているが、多分ィ匕能は依然として有している細胞をいう。未分化造血前 駆細胞は、造血幹細胞力 分ィ匕する細胞ではあるが、造血幹細胞とは別の種類の細 胞であると考えられている。未分ィ匕造血前駆細胞の表面抗原はマウスでは CD34+, c Kit+, Sea— 1+, Linであるとされており、これらの抗原の発現量に基づき F ACSに よりソーティングすることが可能である。また同様に、ヒト未分化造血前駆細胞につい ても表面抗原に基づいて FACSによりソーティングすることが可能である。
[0034] FACSによるソーティングでは、マウス造血幹細胞の発現抗原は CD34—, Lin (Lin eage)", c Kit+, Sea— 1+であることから、抗 CD34抗体、抗 c Kit抗体および抗 S ca—l抗体を使用し、 CD34— , c—Kit+, Sea— 1+, Lin—の細胞分画をソーティングす ることが可能である。また、上記のように、ヒト造血幹細胞、並びにヒトおよびマウス未 分化造血前駆細胞の発現抗原は、マウス造血幹細胞のものと異なっている力 同様 の方法により FACSにてソーティングすることが可能である。このような F ACSに使用 する機器は当該技術分野では公知であり、例えば Becton Dickinsonより入手可能 である。
[0035] 本明細書において、「生理学的性質を改善する」とは特に限定されないが、(1)好 ましくは造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の増殖能を亢進すること、(2)自己 複製能を維持または亢進すること、(3)生存率を亢進すること、(4)多分化能を維持
すること、(5)短期および長期骨髄再建能を維持または亢進すること、カゝらなる群より 選択されるいずれかの性質の改善、あるいはこれらの組み合わせをいう。したがって 、造血幹細胞または未分化造血前駆細胞がこれら 1つ以上の性質の改善を有すれ ば、本発明にお ヽては生理学的性質の改善がされたと 、うことができる。
[0036] 「増殖能」とは、細胞が元の性質を失わずに細胞分裂を繰り返すことにより、細胞数 を増加する能力のことをいう。細胞の増殖能は、一定期間培養した後の細胞数を比 較することにより容易に測定することができる。細胞数の計数は、例えば細胞懸濁液 に血球計数盤を用いることによって目視により計数することができる。また、種々の細 胞計数装置および血球計算機が市販されており、これを使用することにより細胞を計 数してもよい。このような装置は、例えば Beckman Coulter等力も入手可能である
[0037] 本発明の方法により、培養上清中に野生型 TIMP— 3タンパク質および Zまたは変 異型 TIMP— 3タンパク質を添加し培養した造血幹細胞および未分化造血前駆細胞 は、このような処理をしない細胞に比べて、増殖能が亢進する。限定されるわけでは ないが、本発明の方法により作成された造血幹細胞または未分化造血前駆細胞は、 未処理の造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞に比べて、好ましくは約 1. 5倍以 上、より好ましくは約 1. 9倍以上、さらに好ましくは 2倍以上、さらにより好ましくは 2. 2 倍以上増殖能が亢進する。
[0038] 「自己複製能」とは、細胞が分裂する際に元の細胞と同じ性質を有する娘細胞を生 み出す能力をいう。造血幹細胞の自己複製能は、造血幹細胞の分裂により生じた 2 つの娘細胞が、自己複製能および全ての血球細胞に分化できる多分化能を有する 、造血幹細胞の能力のことをいう。
[0039] 自己複製能は、例えばコロニー形成アツセィにより測定可能である。コロニー形成 アツセィの方法は実施例 6に記載するようにして行われる。簡単に概説すると、 96ゥ エルプレート等の各ゥエルに造血幹細胞を 1細胞ずつソーティングし、次いで 1回分 裂をさせる。生じた 2個の娘細胞をマイクロマニピュレータ一等を用いることにより 1つ ずつに分離し、それぞれの細胞をメチルセルロース培地中に埋めこみ、 1週間から 1 0日程度培養し分化させる。培養に用いるメチルセルロース培地は、 1%程度のメチ
ルセルロースを含む、 S— Cloneまたは α MEMのような造血幹細胞の増殖に適した 培地に、 SCF、 TPO、 EPO、 IL— 3および Ζまたは IL— 6等のサイト力イン、並びに ゥシ血清アルブミンある!/、はゥシ胎児血清などを加えて調製する。培養後生じた細胞 のコロニーを解析し、 2つの娘細胞から生じたコロニーのうち少なくとも一方が白血球 (好中球、マクロファージなど)、赤血球および巨核球等の全てを有するミツクスコ口- 一であった場合には、これら娘細胞の分裂前の細胞は自己複製能を有していたこと が示唆される。一方、 2つの娘細胞のいずれもがミックスコロニーを形成しな力つた場 合は、これら娘細胞の分裂前の細胞は自己複製能を有していな力つたことが示唆さ れる。
[0040] 本発明の方法により作成された生理学的活性の改善した造血幹細胞は、 TIMP— 3タンパク質または核酸を添加せずに培養した造血幹細胞に比べて自己複製能が 維持または亢進されている。限定されるわけではないが、本発明の方法により作成さ れた生理学的活性の改善した造血幹細胞は、好ましくは約 1. 2倍以上、より好ましく は約 1. 3倍以上、さらに好ましくは 1. 5倍以上、自己複製能が亢進している。
[0041] 「生存率」とは、一定期間の培養後に生存している細胞の比率をいう。細胞集団に おける細胞の生存率は、 FACSを用いる方法、トリパンブルーを用いて染色する方法 など、当該技術分野における通常の知識を用いることによって測定可能である。また 、細胞の生存率は、実施例に記載するように目的の細胞を 1細胞ずつに分離し、そ れぞれの細胞について一定期間の培養後に細胞の生死を判定することにより行って よい。
[0042] 「多分ィ匕能」とは、造血幹細胞においては全ての血球細胞に分ィ匕することができる 細胞の分ィ匕能力をいう。多分ィ匕能は、以下のようなコロニー形成アツセィにより測定 可能である。造血幹細胞および未分化造血前駆細胞を細胞表面抗原に基づ 、て 9 6ゥエルプレートに 1細胞ずつ FACSにてソーティングする。次いで、ゥエルごとに各 種サイト力インを含むメチルセルロース等の半固形培地中で培養し形成されたコ口- 一の構成細胞を解析することにより行う。形成されたコロニーが好中球、赤血球 (赤芽 球)、マクロファージおよび巨核球力もなるミツクスコ口-一であった場合には、元とな つた 1つの細胞は多分ィ匕能を有していたということが判定できる。また、形成されたコ
口-一が好中球、赤血球 (赤芽球)、マクロファージおよび巨核球力 なる群より選択 される 3つ以下の細胞種力 なる場合には、全ての血球細胞に分ィ匕する能力は失つ ており、元となった 1つの細胞は多分ィ匕能を有していな力つたということができる。
[0043] 「骨髄再建能」とは、造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞を放射線照射などに より造血することができなくなった成体に移植したときに、移植したこれらの細胞が骨 髄に生着し、失われていた造血を回復する能力をいう。ここで、「長期骨髄再建能」と は、移植後少なくとも 3— 6ヶ月程度、好ましくは 6ヶ月程度の期間にわたり骨髄再建 能を有することをいい、また「短期骨髄再建能」とは、移植後少なくとも 1—3ヶ月程度 、好ましくは 3ヶ月程度の期間にわたり骨髄再建能を有することを!、う。
[0044] 骨髄再建能は、放射線照射または薬剤投与等により造血が失われた個体に、造血 幹細胞を投与し、その個体の造血が回復し生存することによる、簡便には測定するこ とが可能である。詳細な実験手順は実施例 8に記載した。
[0045] なお、ヒト造血幹細胞ではマウスにおける骨髄移植のような良いアツセィ系がないた め、次善の策として NOD— SCIDマウスを用いた移植系を用いることも可能である。 本アツセィ系はヒト CD34陽性細胞を NOD— SCID免疫不全マウスに移植し、数週 間後、例えば 10— 12週後の骨髄中への生着率を検討することにより行うことが可能 である。本アツセィ系の 1つの態様においては、放射線照射(240 rad)した NOD— SCIDマウスの尾静脈から PBSに浮遊した細胞を注射、さらに anti— asialo GM1 抗体を移植当日から 10日おきに計 5回腹腔内注射し、移植後 12週目にマウス大腿 骨骨髄中のヒト CD45陽性細胞の比率を F ACSにより測定することに行われる。ここ で、 NOD— SCIDマウスの骨髄に生着することができるヒト造血細胞を SRC (SCID repopulating cell)と呼び、これが現在最もヒト造血幹細胞に近い細胞と考えられ ている。そのために、本発明の方法等により、マウス大腿骨骨髄中のヒト CD45陽性 細胞が対照群に比べて増加しており SRCが維持または亢進されたと判断される場合 には、ヒト造血幹細胞 ·未分化造血前駆細胞が維持または亢進されたことと同義であ るということができる。なお、「ヒト造血幹細胞 ·未分化造血前駆細胞が維持または亢 進されたこと」には、前記用語「生理学的性質を改善する」のうち、(1)増殖能、(2)自 己複製能、(3)生存率、(4)多分化能、および (5)短期および長期骨髄再建能のい
ずれも含まれうるが、特に短期および長期骨髄再建能が維持または亢進されることが 含まれうる。
[0046] 前記用語「生理学的性質を改善する」のうち、(1)造血幹細胞または未分化造血前 駆細胞の増殖能を亢進することは、実施例 5、 9および 11— 14によって、(2)自己複 製能を維持または亢進することは、実施例 6および 8によって、(3)生存率を亢進する ことは、実施例 7および 15によって、(4)多分ィ匕能を維持することは、実施例 7によつ て、並びに、(5)短期および長期骨髄再建能を維持または亢進することは、実施例 8 および 11によってサポートされる。また、実施例 10は放射線照射マウスに TIMP— 3 をコードするプラスミドを投与し、マウスの生存延長を観察する実験であり、限定され る訳ではないが、上記(1)一(5)のいずれの作用、またはこれらを組み合わせた作用 により TIMP— 3プラスミド投与マウスの生存が延長されていると考えられる。さらに、 実施例 16についても同様に、限定される訳ではないが、 TIMP— 3による上記(1) - (5)の作用のいずれかまたは組み合わせの作用により、野生型マウスの造血回復は TIMP— 3ノックアウトマウスに比べて早まって!/、ると考えられる。
[0047] 本明細書で!/、う「添加」とは、造血幹細胞および未分化造血前駆細胞等の細胞を 培養して 、る培養上清中にタンパク質および Zまたは核酸等をカ卩えることを 、う。添 カロされるタンパク質および Zまたは核酸等は無菌であることが望ましく、これらの物質 を無菌状態にする技術は当該技術分野では公知の技術である。例えば、添加する 物質が緩衝液等に溶解している場合には、 0. 22 mフィルターを通過させることに より無菌状態にすることができる。
[0048] 「培養」とは、造血幹細胞および未分ィ匕造血前駆細胞等の細胞を培養培地中にお V、て維持 ·増殖させることを 、う。造血幹細胞および未分化造血前駆細胞等の細胞 を培養する培地および添加物、並びに培養方法は当該技術分野で公知である。しか しながら、造血幹細胞および未分化造血前駆細胞を培養する場合、好ましくはこれら の細胞の未分化状態を維持したまま培養する。このような目的のために使用される添 加物としては、 SCF (stem cell factor)および TPO (トロンボポェチン)等のサイト 力インがある。また、所望により Flt3リガンドおよび Ζまたは IL— 6等のサイト力インを 添加してもよい。また、これらのサイト力インは、それらの生理的機能を有するならば
容易に産生されるように改変された組換え体であってもよ ヽ。
[0049] 好ましい態様において、 TIMP— 3タンパク質の培養上清中における濃度は、 0. 1 — 10 gZmlであり、好ましくは 1— 5 g/m より好ましくは 1— 3 μ g/m 最も 好ましくは 3 /z gZmlである。しかしながら、これらの範囲内にない場合であっても、本 発明の効果を有すれば本発明の範囲内である。
[0050] 本発明における培養期間は、造血幹細胞および未分化造血前駆細胞等の細胞の 性質の変化が起こらない限り、どのような長さであってもよい。好ましい態様において 、造血幹細胞および未分化造血前駆細胞等の細胞の培養期間はおよそ 1週間ない しおよそ 2週間である。
[0051] 「TIMP— 3 (Tissue inhibitor of Metalloproteinase— 3)」とは、マトリックスメ タロプロテアーゼ(MMP)の抑制分子である TIMPファミリーに属する分子として発 見され、効率よく MMPのメタ口プロテアーゼ活性を阻害することが知られている。近 年になって、 TIMP— 3はメタ口プロテアーゼ阻害活性以外にも生理的活性を有する ことが明ら力となってきている。例えば、血管内皮増殖因子 (VEGF)のシグナルを抑 制し血管新生を阻害し、この活性は TIMP— 3の有する MMP抑制活性とは独立して 起こることが報告されている。し力しながら、本発明前は、 TIMP— 3が造血関係の細 胞、特に造血幹細胞および未分化造血前駆細胞に作用することは知られて ヽなかつ た。これまでに、 TIMP— 3はヒト以外にも種々の生物においても知られており、例え ば、マウス、ラット、アフリカッメガエル、ァカゲザル、 -ヮトリ、力-クイザル、ゥサギお よびゥシなどである。これら種々の生物の TIMP— 3タンパク質およびこれをコードす る核酸の配列は、例えば NCBIのようなデータベース力 入手することが可能である 。本発明は TIMP— 3タンパク質またはこれをコードする核酸を利用するものである。 本発明で使用される TIMP— 3タンパク質またはこれをコードする核酸は、ヒトまたは マウス由来のものが好ましいがこれに限定されるものではない。
[0052] 好ましい態様において、本発明の TIMP— 3は、野生型 TIMP— 3および Zまたは 変異型 TIMP— 3を含む。これら野生型 TIMP— 3および変異型 TIMP— 3の定義に ついては以下に詳述する。
[0053] 公知のヒト野生型 TIMP— 3タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号 1に示すような
配列からなる。また公知のマウス野生型 TIMP— 3タンパク質のアミノ酸配列は、配列 番号 5に示す配列からなる。いずれも 211アミノ酸力らなり、これらのアミノ酸配列のう ち、 N末端側は分泌のためのシグナルペプチドであり、実際に TIMP— 3タンパク質 の機能を有する部位はそれよりも C末端側の配列であると考えられる。
[0054] シグナルペプチドとは、分泌タンパク質の N末端領域に存在する疎水性アミノ酸領 域である。シグナルペプチドを有するタンパク質は、シグナル認識粒子(SRP)との相 互作用を介して小胞体に付着し、小胞体膜を通過する。その後、シグナルペプチド はシグナルぺプチダーゼにより切断され、実際に細胞力 分泌されるタンパク質はシ グナルペプチド領域を有さな 、。
[0055] シグナルペプチドの厳密な長さを決めることは難しい場合があり、同じタンパク質に っ ヽても報告によりその長さが異なることもある。本発明に係るヒト TIMP— 3タンパク 質は、 f列えば、 NCBIデータベース(http: ZZwww. ncbi. nlm. nih. gov/)にお 、ては、全長タンパク質 (配列番号 1)のアミノ酸 1 23がシグナルペプチドであると 記載されている(accession number :NP— 000353)。しかしながら、インターネッ ト上で使用可能なタンパク質ドメイン検索プログラムである SMARTプログラム(http: //smart, embl— heidelberg. de/)によりタンパク質ドメインを検索したところ、ヒ ト TIMP— 3タンパク質ではアミノ酸 1― 18がシグナルペプチドであると判定された。 また、他のドメイン検索プログラムを使用した場合には、シグナルペプチド領域が異な つて判定されることも予想される。このように、シグナルペプチド領域は使用するプロ グラム等によって変化しうることは、当業者が容易に理解するであろう。
[0056] 以下に詳述するように、野生型ヒトおよびマウス TIMP— 3タンパク質 (配列番号 1お よび配列番号 5)のアミノ酸 24— 27は、 TIMP— 3タンパク質の有するメタ口プロテア ーゼ活性に重要であると考えられている。したがって、 TIMP— 3タンパク質のシグナ ルペプチドの C末端は、配列番号 1または配列番号 5のアミノ酸 1 - 23より選択される いずれかのアミノ酸であることが予測される。さらに、シグナルペプチドが除去されて Vヽな 、全長の TIMP— 3タンパク質は、シグナルペプチドが除去された TIMP— 3タ ンパク質と同様の機能を有することも期待される。
[0057] 以上から、本発明の一態様において、 TIMP— 3タンパク質は、配列番号 1、配列
番号 2、配列番号 5または配列番号 6のアミノ酸 x— 211のアミノ酸配列を有するタン パク質である(Xは、 1 - 24から選択される 、ずれか 1つの整数(1および 24を含む) である)。好ましくは、 Xは、 19— 24力 選択されるいずれ力 1つの整数(19および 24 を含む)である。より好ましくは、 Xは 19または 24である。
[0058] また、本発明において、野生型 TIMP— 3タンパク質という場合、上記のような配列 番号 1または配列番号 5のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列(Xは、 1 24から選択され るいずれか 1つの整数(1および 24を含む)である)、を有するタンパク質だけを意図 するものではなぐ TIMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性および造血幹細胞およ び未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有することにより定義され る。したがって、 TIMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性および造血幹細胞および 未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有すれば、上記アミノ酸配 列に対し、 1つまたは数個の欠失、置換、および Zまたは付加を有するタンパク質、 または 80%以上の同一性を有するタンパク質もまた本発明においては、野生型 TIM P 3タンパク質の範囲内である。
[0059] 本発明においては、 TIMP— 3タンパク質のアミノ酸の 1つまたは数個の置換は、好 ましくは保存的置換により行われる。ここで保存的置換とは、あるアミノ酸残基が生物 学的に類似した特性を持つアミノ酸残基に置換されることをいう。保存的置換の例は 、 1つの脂肪族残基 (Ile、 Val、 Leu,または Ala)を別の脂肪族残基に置換すること、 1つの極性残基を別の極性残基に置換すること (例えば、 Lysと Arg; Gluと Asp;また は Ginと Asn間で置換すること)、または 1つの芳香族残基 (Phe、 Trp、または Tyr) を別の芳香族残基に置換することを含む。さらに、保存的置換の例は、活性ドメイン の外側のアミノ酸の置換、および TIMP— 3タンパク質の二次および/または三次構 造を変化させないアミノ酸の置換をも含む。当業者は、周知の遺伝子工学的手法に より、 SambrooKら, Molecular し lonmg :A Laboratory Manual, ¾¾3版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (2001)等に記載の、例えば部位特 異的突然変異誘発法を使用して、所望の欠失、挿入または置換を施すことが可能で ある。
[0060] 本発明の好ましい態様において、野生型 TIMP— 3タンパク質は、 TIMP— 3のメタ
口プロテアーゼ阻害活性および造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的 性質を改善する活性を有し、配列番号 1または配列番号 5のアミノ酸 X— 211のァミノ 酸配列 (Xは、 1 - 24から選択される 、ずれか 1つの整数( 1および 24を含む)である) 、に 80%以上の同一性を有し、さらに好ましくは 85%以上、より好ましくは 90%以上 、さらにより好ましくは 95%以上、最も好ましくは 98%以上の同一性を有する。
[0061] アミノ酸の同一性パーセントは、視覚的検査及び数学的計算により決定してもよい 。あるいは、 2つのタンパク質配列の同一性パーセントは、 Needleman, S. B.及び Wunsch, C. D. (J. Mol. Biol. , 48 :443—453, 1970)のアルゴリズムに基づき 、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能 な GAPコンピュータープログラムを用い配列情報を比較することにより、決定してもよ い。 GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(l) Henikoff, Sおよび Henikoff, J. G. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89 : 10915— 10919, 1992) に記載されるような、スコアリング 'マトリックス、 blosum62 ; (2) 12のギャップカ卩重;(3 ) 4のギャップ長加重;及び (4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。
[0062] 当業者に用いられる配列比較の他のプログラムもまた、用いてもよい。同一性のパ 一セントは、例えば Altschulら(Nucl. Acids. Res. 25. , p. 3389— 3402, 1997 )に記載されて 、る BLASTプログラムを用いて配列情報と比較し決定することが可 能である。当該プログラムは、インターネット上で National Center for Biotechn ology Information (NCBI)、あるいは DNA Data Bank of Japan (DDBJ)の ウェブサイトから利用することが可能である。 BLASTプログラムによる同一性検索の 各種条件 (パラメーター)は同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更 することが可能である力 検索は通常デフォルト値を用いて行う。
[0063] さらに、本発明の TIMP— 3タンパク質は、核酸配列により定義することも可能であ る。
[0064] 公知のヒト野生型 TIMP— 3の核酸は、配列番号 3に示す配列からなり、配列番号 1 のタンパク質をコードする。また公知のマウス野生型 TIMP— 3の核酸は、配列番号 7 に示す配列力 なり、配列番号 5のタンパク質をコードする。この核酸配列もまたシグ ナルペプチドをコードする部分を含む。配列番号 3および配列番号 7は 、ずれも 636
塩基からなり、 5'末端付近の塩基がシグナルペプチドをコードし、それよりも 3'側の 塩基が生理的機能を有する TIMP— 3タンパク質をコードし、そして 634— 636番目 の塩基が終止コドンである。
[0065] ここで、上述したように、シグナルペプチドの境界はタンパク質によって曖昧な場合 があることから、配列番号 3および配列番号 7の 5 '末端から、どの塩基までがシグナ ルペプチドをコードするのかを特定することは困難である。
[0066] 以下に詳述するように、野生型ヒトおよびマウス TIMP— 3タンパク質 (配列番号 1お よび配列番号 5)のアミノ酸 24— 27は、 TIMP— 3タンパク質の有するメタ口プロテア ーゼ活性に重要であると考えられており、このアミノ酸をコードする塩基は配列番号 および配列番号 7では塩基 70— 81である。したがって、 TIMP— 3タンパク質のシグ ナルペプチドの C末端をコードする塩基は、配列番号 3または配列番号 7の塩基 1 69より選択されるいずれかの塩基であることが予測される。さらに、シグナルペプチド が除去されて ヽな 、全長の TIMP— 3タンパク質も、シグナルペプチドが除去された TIMP— 3タンパク質と同様の機能を有することが期待される。
[0067] 以上から、本発明の一態様において、 TIMP— 3タンパク質は、配列番号 3、配列 番号 4、配列番号 7または配列番号 8の塩基 y— 633を含む核酸配列によりコードさ れる (yは、 1 - 70から選択される 、ずれか 1つの整数( 1および 70を含む)である)。 上述のように NCBIデータベースにおいては、シグナルペプチドは配列番号 1のアミ ノ酸 1 23 (配列番号 3の塩基 1 69によりコードされる)であると記載され、 SMAR Tプログラムによればアミノ酸 1― 18 (配列番号 3の塩基 1 - 54によりコードされる)で あると判定された。また、 TIMP— 3タンパク質は、シグナルペプチドを有していても、 その正常な機能を有することも期待される。したがって、好ましくは、 yは、 1および 55 - 70から選択される 、ずれか 1つの整数(55および 70を含む)である。さらに好まし く ίま、 y〖ま 1、 55また〖ま 70である。
[0068] 本発明において、野生型 TIMP— 3タンパク質は、上記のような、配列番号 3または 配列番号 7の塩基 y— 633を含む核酸配列 (yは、 1— 70から選択されるいずれか 1 つの整数(1および 70を含む)である)、によりコードされる。ここで、上記の野生型 TI MP 3タンパク質の定義にしたが!、、 TIMP 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性およ
び造血幹細胞および未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有す れば、上記核酸配列に対し、高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩 基配列、 1つまたは数個の欠失、置換、および Zまたは付加を有する核酸配列、およ び 80%以上の同一性を有する核酸配列、によりコードされるタンパク質もまた本発明 にお 、ては、野生型 TIMP— 3タンパク質の範囲内である。
[0069] 本明細書において使用される、ストリンジ工ントな条件は、例えば、 DNAの長さに基 づき、一般の技術を有する当業者により、容易に決定することが可能である。基本的 な条件は、 Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual,弟 3 版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (2001)に示されている。例え ば、中程度にストリンジェントな条件は、ニトロセルロースフィルターに関し、 5 X SSC 、 0. 5%SDS、 1. OmM EDTA (pH8. 0)の前洗浄溶液、約 40。Cないし 60。C、好 ましくは約 50°Cでの、 1 X SSC 、L6 X SSC、好ましくは 2 X SSC (または約 42°C での約 50%ホルムアミド中の、例えばスターク溶液(Stark' s solution)などの他の 同様のハイブリダィゼーシヨン溶液)のハイブリダィゼーシヨン条件、および約 60°C、 0. 5 X SSC、 0. 1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。また、例えば、ハイブリダ ィゼーシヨン溶液が約 50%ホルムアミドを含む場合、上記ハイブリダィゼーシヨン温 度は約 15°Cないし 20°C低めとなる。高度にストリンジェントな条件もまた、例えば DN Aの長さに基づき、当業者により、容易に決定することが可能である。一般に、高度に ストリンジェントな条件は、上記中程度にストリンジェントな条件よりも、より高い温度お よび Zまたはより低 、塩濃度でのハイブリダィゼーシヨン、および Zまたは洗浄条件 を含む、 f列; ま、、約 60oCな ヽし 650Cでの 0. 1 X SSCな!ヽし 0. 2 X SSCのノヽイブリ ダイゼーシヨン条件、および Zまたは約 65°Cないし 68°C、 0. 2 X SSC、 0. 1% SD Sの洗浄条件を含む。当業者は温度および洗浄溶液塩濃度は、プローブの長さなど の要因にした力 ^、、必要に応じ調整してもよいことを認識するであろう。
[0070] また、本発明における野生型 TIMP— 3タンパク質は、 TIMP— 3のメタ口プロテア ーゼ阻害活性および造血幹細胞および未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改 善する活性を有する、上記核酸配列から 1つまたは数個の欠失、置換、および Zまた は付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質を含む。好ましい態様におい
て、 lつまたは数個の欠失および Zまたは付カ卩によって、コドンの読み枠がずれフレ ームシフトすることにより、タンパク質の二次構造以上の高次構造は変化しない。しか しながら、フレームシフトの起こる部位が TIMP— 3タンパク質コード配列の 3,末端に 近ぐタンパク質全体の構造および Zまたは機能に与える影響が小さければフレーム シフトを起こす欠失および Zまたは付加も許容されうる。
[0071] さらに、本発明における野生型 TIMP— 3タンパク質は、 TIMP— 3のメタ口プロテア ーゼ阻害活性および造血幹細胞および未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改 善する活性を有し、上記核酸配列に 80%以上、さらに好ましくは 85%以上、より好ま しくは 90%以上、さらにより好ましくは 95%以上、最も好ましくは 98%以上の同一性 を有する核酸配列によりコードされるタンパク質を含む。塩基の同一性は、視覚的検 查及び数学的計算により決定してもよい。あるいは、アミノ酸の同一性パーセントにつ いて上述したように、公知のコンピュータープログラムを使用することにより測定するこ とが可能である。
[0072] メタ口プロテアーゼ阻害活性の評価方法は、当該技術分野で周知のいずれの技術 を使用してよい。例えば、メタ口プロテアーゼ活性の評価方法が当該技術分野では 公知であり、この評価系に TIMP— 3を添加することにより、メタ口プロテアーゼ阻害 活性を測定してもよい。例えば、メタ口プロテアーゼ活性を評価するザィモグラフィー 法は、以下の手順により行われる。 SDSPAGEに使用するゲルにあらかじめメタロプ 口テア一ゼの基質となるコラーゲンまたはカゼインを溶解しておく。メタ口プロテアーゼ 活性を測定しょうとする試料を電気泳動した後、試料に由来するメタ口プロテアーゼ がゲル中のコラーゲン等を分解させる。ゲルをクマシ一ブルー等で染色すると、メタ口 プロテアーゼ活性に依存して白く色の抜けたバンドを示す。 TIMP— 3タンパク質のメ タロプロテアーゼ阻害活性は、上記 SDSPAGEに供する試料に TIMP— 3タンパク 質を添加し、電気泳動後の着色量により測定することが可能である。
[0073] 本発明においては、変異型 TIMP— 3タンパク質もまた使用され得る。本明細書に おける変異型 TIMP— 3タンパク質とは、野生型 TIMP— 3タンパク質の有するメタ口 プロテアーゼ阻害活性を欠損しているが、本発明に関する造血幹細胞および未分ィ匕 造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性は欠失して 、な 、TIMP— 3タンパク
質をいう。これら変異型 TIMP— 3タンパク質の使用は、 TIMP— 3タンパク質の造血 幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性力 メタ口プロテ ァーゼ阻害活性に依存しないという本発明の発見に基づく。このような変異型 TIMP —3タンパク質は、特に後述する医薬組成物として使用する場合に、生体内の正常 な MMPのメタ口プロテアーゼ活性に影響を与えずに、造血幹細胞または未分ィ匕造 血前駆細胞の生理学的性質を改善することが可能であり、副作用が少ないことが期 待されるために好ましい。本発明の変異型 TIMP— 3タンパク質には、野生型 TIMP 3タンパク質と同じ配列を有するものであっても、例えば糖鎖修飾の有無等の原因 によりメタ口プロテアーゼ阻害活性を欠損しているタンパク質も含まれる。
[0074] これまでに、 TIMP— 3と同じ TIMPファミリーの TIMP— 1において、そのメタ口プロ テアーゼ阻害活性に重要なアミノ酸残基が研究されている。 Gomis-Ruth F. X. らは、マトリックスメタ口プロテアーゼ 3 (MMP— 3)と TIMP— 1タンパク質複合体の 結晶構造解析により TIMP— 1においては、シグナルペプチドが切断された後の、 C 51—1¾:2—じ 53—¥&14部分ぉょび36 68—¥&169部分が、 MMP— 3の触媒 活性のある亜鉛分子に結合することにより、 TIMP 1が MMP— 3のメタ口プロテア ーゼ活性を阻害することを示した (非特許文献 4)。したがって、これらのアミノ酸残基 に変異を有する TIMP— 1タンパク質は、 TIMP— 1タンパク質の通常有するメタロプ 口テアーゼ活性を欠失して 、る。
[0075] ヒト TIMP— 3タンパク質においては、配列番号 1のヒト野生型 TIMP— 3タンパク質 のアミノ酸配列で、 N末端付近のアミノ酸残基は分泌に関連するシグナルペプチドで あるために、これらの部位はヒト TIMP— 3タンパク質の機能に関することはないと思 われる。上記 TIMP— 1タンパク質の Cysl— Thr2— Cys3— Val4に対応する部分 は、ヒト TIMP - 3タンパク質では Cys— Thr— Cys - Ser (配列番号 1の 24— 27に 相当)であり、これは高度に保存されていると言える。また、 TIMP— 1タンパク質 Ser 68— Val69に対応する部分は、ヒト TIMP— 3タンパク質では Ser— Leu (配列番号 1 の 89— 90に相当)であり、これも高度に保存されている。したがって、ヒト TIMP— 3タ ンパク質においてこれらのアミノ酸残基の 1つまたは複数に欠失、置換または付加等 の変異がある場合には、これらはメタ口プロテアーゼ阻害活性を有さず、本発明にお
けるヒト変異型 TIMP— 3タンパク質の範囲内である。好ましい態様において、ヒト変 異型 TIMP— 3タンパク質は、シグナルペプチドが除去された後の 1番目の Cys (配 列番号 1の 24番目の Cys)が Serに置換している。また、マウス TIMP— 3タンパク質 にお 、ては、ヒト TIMP— 3タンパク質の有する Cys—Thr— Cys— Ser (配列番号 1 の 24— 27に相当)部分、および Ser— Leu (配列番号 1の 89— 90に相当)部分は完 全に保存されている。したがって、当該部分に変異を有するマウス TIMP— 3タンパク 質もまた、 MMPに対する結合活性が欠損している。好ましい態様において、マウス 変異型 TIMP— 3タンパク質は、シグナルペプチドが除去された後の 1番目の Cys ( 配列番号 1の 24番目の Cys)が Serに置換している。
[0076] 上記のようなアミノ酸部位は一例であり、本発明の変異型 TIMP— 3タンパク質は、 これらの部位に変異を有さなくとも、 TIMP— 3タンパク質のメタ口プロテアーゼ阻害 活性を欠損しており、そして造血幹細胞および未分化造血前駆細胞の生理学的性 質を改善する活性を有するタンパク質であればどのような変異を有するものであって もよい。したがって、配列番号 1の 24— 27または 89— 90のアミノ酸残基以外に変異 を有するタンパク質であっても、 TIMP— 3タンパク質のメタ口プロテアーゼ阻害活性 を欠損しており、そして造血幹細胞および未分化造血前駆細胞の生理学的性質を 改善する活性を有するタンパク質は、本発明の変異型 TIMP— 3タンパク質の範囲 内である。
[0077] 本発明の好ましい態様において、変異型 TIMP— 3タンパク質は、 TIMP— 3のメタ 口プロテアーゼ阻害活性を欠損し、そして造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞の 生理学的性質を改善する活性を有する、配列番号 1または配列番号 5のアミノ酸 X— 211を含むアミノ酸配列、または配列番号 1または配列番号 5のアミノ酸 X— 211を含 むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、配列番号 1の アミノ酸 24— 27および 89— 90に相当する部分から選択される!、ずれか 1つのまた は複数のアミノ酸残基に欠失、置換および Zまたは付加を有するタンパク質である(X は、 1— 24から選択されるいずれか 1つの整数(1および 24を含む)である)。置換は 好ましくは、保存的置換により行われる。
[0078] 本発明のさらに好ましい態様において、ヒト変異型 TIMP— 3タンパク質は、配列番
号 2により定義される。配列番号 2は、配列番号 1のアミノ酸配列の 24番目の Cysが S erに置換したものである。また、好ましい態様において、マウス変異型 TIMP— 3タン パク質は、配列番号 6により定義される。配列番号 6は、配列番号 5のアミノ酸配列の 24番目の Cysが Serに置換したものである。これらのタンパク質は、 TIMP— 3タンパ ク質のメタ口プロテアーゼ阻害活性を欠損して 、るが、造血幹細胞または未分化造 血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有して 、る。配列番号 2および配列番 号 6のアミノ酸配列はシグナルペプチドを有する力 シグナルペプチドを有して!/ヽても 、有していなくても、 TIMP— 3タンパク質のメタ口プロテアーゼ阻害活性を欠失し、造 血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有している 限り、本発明の変異型 TIMP - 3タンパク質の範囲内である。
[0079] 好ましい態様において、変異型 TIMP— 3タンパク質には、 TIMP— 3のメタ口プロ テアーゼ阻害活性を欠損し、そして造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理 学的性質を改善する活性を有する、配列番号 2または配列番号 6のアミノ酸 X 211 を含むアミノ酸配列を有するタンパク質、配列番号 2または配列番号 6のアミノ酸 X— 211を含むアミノ酸配列から 1つまたは数個のアミノ酸残基に欠失、置換、および/ または付カ卩を有するタンパク質、あるいは、配列番号 2または配列番号 6のアミノ酸 X — 211を含むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するタンパク質、が含まれる(X は、 1 24から選択される 、ずれか 1つの整数( 1および 24を含む)である)。
[0080] 上記同一性%で規定されるタンパク質は、好ましくは 80%以上の同一性、さらに好 ましくは 85%以上、より好ましくは 90%以上、さらにより好ましくは 95%以上、最も好 ましくは 98%以上の同一性を有するタンパク質が含まれる。
[0081] さらに本発明の変異型 TIMP— 3タンパク質は、核酸配列により定義することも可能 である。即ち、好ましくは、本発明の変異型 TIMP— 3タンパク質には、 TIMP— 3の メタ口プロテアーゼ阻害活性を欠損し、そして造血幹細胞および未分化造血前駆細 胞の生理学的性質を改善する活性を有する、上記のメタ口プロテアーゼ阻害活性に 重要なアミノ酸残基 (配列番号 1または配列番号 5の 24— 27または 89— 90の 、ず れか)をコードする塩基部分が欠失、置換または付加している核酸配列、上記核酸 配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列、上記核酸配列
力 lつまたは数個の欠失、置換、および Zまたは付加を有する核酸配列、および上 記核酸配列に 80%以上の同一性を有する核酸配列、によりコードされるタンパク質 が含まれる。
[0082] 好ましい態様において、本発明の変異型 TIMP— 3タンパク質は、 TIMP— 3のメタ 口プロテアーゼ阻害活性を欠損し、そして造血幹細胞および未分化造血前駆細胞の 生理学的性質を改善する活性を有する、配列番号 3または配列番号 7の塩基 y— 63 3を含む核酸配列、配列番号 3または配列番号 7の塩基 y— 633を含む核酸配列と 高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列、ある 、は配列番号 3 または配列番号 7の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核 酸配列において、配列番号 3または配列番号 7の塩基 70— 81および塩基 265— 27 0に相当する部分力 選択されるいずれ力 1つのまたは複数の塩基に欠失、置換お よび Zまたは付加を有する核酸配列にコードされるタンパク質である (yは、 1— 70か ら選択される 、ずれか 1つの整数(1および 70を含む)である)。
[0083] この態様は、 TIMP— 3タンパク質のメタ口プロテアーゼ阻害活性に重要なアミノ酸 残基 (配列番号 1の 24— 27または 89— 90の 、ずれか)をコードする塩基が変異を 起こしている。しかしながら、該塩基に変異を有していても、コドンの縮重により、コー ドされるアミノ酸が変化しなければ、 TIMP— 3タンパク質のメタ口プロテアーゼ阻害 活性を欠損しな ヽと考えられる。
[0084] さらに好ましい態様において、本発明の変異型 TIMP— 3タンパク質は、配列番号 4によりコードされる。配列番号 4は、野生型ヒト TIMP— 3をコードする配列番号 3の 核酸配列のうち、 24番目のシスティンを指定するコドン TGC (配列番号 3の塩基 70 — 72)が TCCに変化している。このため、配列番号 4によりコードされる TIMP— 3タ ンパク質は、 Cys (配列番号 4によりコードされるタンパク質においては 24番目の Cys )が Serに変化している。また、本発明の変異型 TIMP— 3タンパク質は、配列番号 8 によってもコードされる。配列番号 8は、野生型マウス TIMP— 3をコードする配列番 号 7の核酸配列のうち、 24番目のシスティンを指定するコドン TGC (配列番号 7の塩 基 70— 72)が TCCに変化している。このため、配列番号 8によりコードされる TIMP 3タンパク質は、 Cys (配列番号 4によりコードされるタンパク質においては 24番目
の Cys)が Serに変化して!/ヽる。
[0085] よって、さらに好ましい態様において、本発明の変異型 TIMP— 3タンパク質は、 TI MP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性を欠損し、そして造血幹細胞および未分ィ匕造 血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有する、配列番号 4または配列番号 8 の塩基 y— 633を含む核酸配列、配列番号 4または配列番号 8の塩基 y— 633を含 む核酸配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列、ある 、 は配列番号 4または配列番号 8の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一 性を有する核酸配列にお 、て、配列番号 4または配列番号 8の塩基 70 -81および 塩基 265— 270に相当する部分力も選択されるいずれか 1つのまたは複数の塩基に 欠失、置換および/または付加を有する核酸配列にコードされるタンパク質である (y は、 1 70から選択される 、ずれか 1つの整数( 1および 70を含む)である)。
[0086] 上記のような核酸の同一性%で規定される核酸は、好ましくは 80%以上の同一性 、さらに好ましくは 85%以上、より好ましくは 90%以上、さらにより好ましくは 95%以 上、最も好ましくは 98%以上の同一性を有する。
[0087] (ii)TTMP— 3タンパク皙 コード、する核酸 用いる 法
本発明はまた、造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善す る方法を提供する。本発明の方法は、
(1) TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含むベクターを準備する工程、
(2)造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞に(1)のベクターを導入する工程、およ び
(3) (2)の造血幹細胞または未分化造血前駆細胞を培養する工程、
を含む。
[0088] ここで、前記生理学的性質の改善は、増殖能の亢進、自己複製能の維持または亢 進、生存率の亢進、多分化能の維持、短期および長期骨髄再建能の維持または亢 進力 なる群より選択される 、ずれかの性質の改善、ある 、はこれらの組み合わせか らなる。
[0089] 好ましい態様において、 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸は、(A)野生型 TI MP— 3タンパク質をコードする核酸および Zまたは(B)変異型 TIMP— 3タンパク質
をコードする核酸力 なる。
[0090] 本明細書において、「野生型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸」とは、上述の ような「野生型 TIMP— 3タンパク質」をコードする核酸であればどのような塩基配列を 有するものであってもよい。アミノ酸を指定するコドンは当該技術分野では広く知られ ており、これに基づき野生型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸は容易に同定可 能である。
[0091] 同様に、本明細書において、「変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸」とは 、上述のような「変異型 TIMP— 3タンパク質」をコードする核酸であればどのような塩 基配列を有するものであってもよ 、。
[0092] 本発明における「ベクター」とは、 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸等の所望 の核酸を、造血幹細胞および未分化造血前駆細胞の細胞に導入し、その細胞に所 望の遺伝子産物を発現させるものであればどのようなものであってもよい。
[0093] 好まし 、態様にぉ 、ては、ベクターは、プラスミド、ウィルスまたはファージ等であり 、さらに好ましい態様においてはプラスミドである。プラスミドは、核酸によりコードされ て!、る TIMP— 3タンパク質を発現できるものであればどのようなものでもよ!/、。好まし い態様において、プラスミドは、構成的に発現するプロモーターまたは造血幹細胞若 しくは未分化造血前駆細胞にぉ 、てのみに発現するプロモーターを有する。
[0094] インビト口で、生理学的性質の改善した造血幹細胞または未分化造血前駆細胞を 作成する方法に適したプラスミドは、例えば pcDNA3、 pMXs— IRES— GFPおよび pMYs— IRES— GFP等があり、また適したプロモーターとしては、例えば CMVおよ び LTR等がある。このようなプラスミドを造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞にィ ンビトロで導入する方法は広く知られており、例えば、リン酸カルシウム法、リボフエタ シヨン法またはエレクト口ポレーシヨン法などがある。リポフエクシヨン法に使用される試 薬は市販されており、例えば、 Effectene (Qiagen) , Lipof ectAMINE (Invitroge n)等がある。
[0095] また、使用されるウィルスも特に限定されない。し力しながら、好ましい態様におい て、ウィルスはアデノウイルス、レトロウイルスまたはレンチウィルス等公知のウィルス が使用される。このようなウィルスの作成方法は公知である。
[0096] その他、特に明記しない限り、「造血幹細胞」等、他の用語の意義は『(i)TIMP— 3 タンパク質を用いる方法』の項目で前述した通りである。
[0097] 2) 1)の 去により )^された、; ί告 および 分化; ί告 rfn.tft,駆糸田
本発明はまた、上記 1)の方法により作成された、造血幹細胞および未分化造血前 駆細胞を提供する。本発明の好ましい態様においては、本発明の造血幹細胞およ び未分化造血前駆細胞は、移植後の短期および長期骨髄再建能を維持若しくは亢 進させる、および Zまたは生着率を維持若しくは亢進する能力を有している。
[0098] ここで、「造血幹細胞」、「未分化造血前駆細胞」、「骨髄再建能」および「生着率」の 用語は、上記の 1)の項目におけるものと同義とする。また、「短期骨髄再建能」、「長 期骨髄再建能」および「生着率」の測定方法もまた上記の 1)の項目におけるものと同 じである。
[0099] 本発明の造血幹細胞または未分化造血前駆細胞は、造血幹細胞移植を必要とす る患者に移植することができる。そのような患者は、例えば、急性骨髄性白血病、急 性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫または多発性骨髄腫などの治 療のための放射線照射または化学療法後の、血球が減少した状態を有する。あるい は本発明の造血幹細胞または未分化造血前駆細胞は、重症再生不良性貧血、先天 性代謝異常症または先天性免疫不全症の患者に投与'移植することも可能である。
[0100] 3)血球の数を増加させるための医蓉組成物
本発明は、 TIMP— 3タンパク質を含んでなる血球の数を増加させるための医薬組 成物、および TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを含んでな る血球の数を増加させるための医薬組成物を提供する。これは、 TIMP— 3タンパク 質を発現するプラスミドをマウスに投与することにより、白血球、赤血球および血小板 数の増加が観察された実験例に基づくものである。プラスミドにより発現した TIMP— 3タンパク質は造血幹細胞の増殖能および生存率の亢進を弓 Iき起こし、その結果とし て血球細胞の増加が観察されたものであると思われる。
[0101] (i)TIMP— 3タンパク質を使用する医薬組成物
本発明はまた、 TIMP— 3タンパク質を含んでなる、血球の数を増加させるための 医薬組成物を提供する。本発明の TIMP— 3タンパク質を含む医薬組成物を成体に
投与することにより、骨髄における造血幹細胞-ツチの TIMP— 3タンパク質濃度が 上昇する。上記のように野生型 TIMP— 3タンパク質および変異型 TIMP— 3タンパ ク質は、造血幹細胞および未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善することが 本発明により明ら力となっている。これらのことから、本発明の TIMP— 3タンパク質を 有する医薬糸且成物もまた、インビボで造血幹細胞および未分ィ匕造血前駆細胞の生 理学的性質を改善することが可能である。このような本発明の医薬組成物により、白 血病の治療のための放射線照射後、またはその他の疾患に対する化学療法後にお ける、血球の減少または造血の減少などに対処することが可能になる。また、本発明 の医薬組成物は、例えば、造血器腫瘍などに対する化学療法 '放射線治療後の血 球(白血球、赤血球、血小板)減少状態、再生不良性貧血 ·骨髄異形成症候群など の造血不全症等の疾患に使用可能である。
[0102] 好ましい態様において、本発明の医薬組成物に含まれる TIMP— 3タンパク質は、
(A)野生型 TIMP— 3タンパク質および Zまたは(B)変異型 TIMP— 3タンパク質か らなる。本発明の医薬組成物に使用する、「TIMP— 3タンパク質」、「野生型 TIMP - 3タンパク質」および「変異型 TIMP— 3タンパク質」の定義は、上記の「1)造血幹 細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する方法」中におけるものと 同じである。
[0103] 本発明の医薬組成物は、好ましくは 1またはそれより多くの医薬的に許容できる担 体と共に投与可能である。医薬的に許容できる担体は、投与の経路について医薬的 に許容できる希釈剤、増量剤、アジュバント、賦形剤、およびビヒクル、ならびに適し た分散剤、湿潤剤、および懸濁剤を使用して処方される、水性のまたは油性の懸濁 液であってよい。
[0104] 医薬的に許容できる担体は、一般的に無菌であり、そして発熱性剤がなぐそして 水、油、溶媒、塩、糖、および他の炭水化物、乳化剤、緩衝剤、抗菌剤、およびキレ 一ト剤を含んでよい。特定の医薬的に許容できる担体および担体に対する活性化合 物の比は、組成物の溶解度および化学特性、投与の方式、ならびに標準の医薬実 務により決定される。
[0105] 本発明における「血球」とは、血液中に存在する全ての血液細胞を含み、好まし!/ヽ
態様において、血球は赤血球、白血球および血小板(巨核球)を含む。ここで、白血 球は、好中球、好酸球および好塩基球を含む顆粒球、単球、並びに T細胞および B 細胞を含むリンパ球を含む。
[0106] (ii)TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含むベクターを使用する医薬組成物
本発明はさらに、 TIMP 3タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを含ん でなる、血球の数を増力!]させるための医薬組成物を提供する。好ましい態様におい て、本発明の医薬組成物に含まれる TIMP— 3タンパク質は、(A)野生型 TIMP— 3 タンパク質をコードする核酸および Zまたは(B)変異型 TIMP— 3タンパク質をコード する核酸力もなる。本発明の医薬組成物に使用する、「野生型 TIMP— 3タンパク質 をコードする核酸」および「変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸」の定義は、 上記の「1)造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する方法 」中におけるものと同じである。
[0107] 当該医薬糸且成物を生体内に投与することにより、造血幹細胞ニッチにおける TIMP
3タンパク質の発現が上昇し、造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学 的性質を改善することが可能である。
[0108] 本発明の TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含むベクターを使用する医薬組 成物は、「 (i) TIMP— 3タンパク質を使用する医薬組成物」の項目で記載したような 1 またはそれより多くの医薬的に許容できる担体と共に投与可能である。また、所望に より TIMP— 3タンパク質をコードする核酸のプロモーターとしては、構成的に発現す る CMVプロモーターのようなプロモーター、または造血幹細胞においてのみ特異的 に発現するプロモーターを使用することが可能である。好ましい態様において、本発 明の医薬組成物に使用可能なプロモーターとしては、 CMV、 β—actinおよび LTR 等が挙げられる。
[0109] 本発明の医薬組成物に使用する、「野生型 TIMP— 3タンパク質」および「変異型 T IMP— 3タンパク質」の定義は、上記の「1)造血幹細胞または未分化造血前駆細胞 の生理学的性質を改善する方法」中におけるものと同じである。
[0110] また本発明の好ましい態様において、 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含 むベクターはプラスミド、またはウィルスが挙げられる。好ましい態様において、ベクタ
一は、 pcDNA3, pMXs— IRES— GFP,および pMYs— IRES— GFP等が挙げら れる。
[0111] このようなベクターの投与方法は、骨髄の造血幹細胞ニッチにベクターが到達する ような方法であればどのような投与方法によってもよい。好ましい態様において、静脈 注射により投与される。
[0112] また、本発明の医薬組成物により造血幹細胞に対する遺伝子治療もまた可能にな る。遺伝子治療とは、遺伝的素因が病気の発症原因となっている場合に、特定の遺 伝子クローンを患者の体細胞に導入し、導入された遺伝子が機能を発揮すること〖こ よって治療する方法である。造血幹細胞などを 、つたん体外に取り出して遺伝子クロ ーンを導入した後、体内に導入する ex vivo法と、生体内の造血幹細胞または未分 化造血前駆細胞に遺伝子クローンを直接導入する in vivo法とがある。
[0113] ex vivo法は、上述したような、インビトロで、生理学的性質の改善した造血幹細胞 または未分化造血前駆細胞を作成する方法であって、造血幹細胞または未分化造 血前駆細胞が野生型 TIMP— 3タンパク質および Zまたは変異型 TIMP— 3タンパク 質を発現するように、造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞に野生型 TIMP— 3タ ンパク質をコードする核酸および Zまたは変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする 核酸を含むベクターを導入し、そして造血幹細胞または未分化造血前駆細胞を培養 することを含む方法により作成された造血幹細胞または未分化造血前駆細胞を生体 内に、好ましくは骨髄に移植することにより行うことができる。
[0114] また、 in vivo法は直接生体内に TIMP— 3タンパク質をコードするベクターを投与 することにより行われる。 in vivo法においては、標的とする造血幹細胞または未分 化造血前駆細胞が存在する造血幹細胞ニッチ以外の細胞に遺伝子が配送されない ように留意すべきである。あるいは、 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸のプロモ 一ターを造血幹細胞または未分化造血前駆細胞あるいはその周辺に存在する細胞 においてのみ活性を有するようなものを選択することにより、その他の部位での望ま な 、発現を抑えることができる。
[0115] 本発明の好ましい態様において、 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含むベ クタ一は pcDNA3で、好ましくは体重 lkgあたり 100— 2000 gZkg、より好ましく
«500- 1500 ^ g/kg,さらに好ましくは 800— 1200 /z g/kg 最も好ましくはおよ そ 1000 gZkgの用量で投与される。
発明の効果
[0116] 本発明により、増殖能の亢進、自己複製能の維持または亢進、生存率の亢進、多 分化能の維持、短期および長期骨髄再建能の維持または亢進等、生理学的性質の 改善した造血幹細胞および未分ィ匕造血前駆細胞を作成することが可能となった。本 発明により作成された造血幹細胞は、造血幹細胞移植により治療が見込まれる、例 えば白血病のような種々の疾患を治療するために使用可能である。
[0117] また、本発明の医薬組成物により、これまで種々のサイト力インを糸且み合わせても達 成が困難であった、血球数を増加させることが可能となった。これにより、輸血による 感染症などの合併症のリスクが軽減されるだけではなぐ輸血量の減少(赤血球輸血 •血小板輸血)にもつながると考えられ、社会問題にもなつている輸血感染症の減少 や医療費の抑制に貢献することが考えられる。
図面の簡単な説明
[0118] [図 1]図 1は、骨髄抑制による TIMP— 3の誘導を示す。マウス(C57BLZ6)に 150 mgZkgの 5FUを腹腔内に注射し、骨髄単核細胞 (BMMNC)を各時点で回収した 。 RNAを抽出し、そして半定量的 RT— PCRにより TIMP— 3および GAPDHの発 現を調べた。また、下の図は 5FU投与後の白血球数の減少を示す。
[図 2]図 2は、放射線照射による TIMP— 3の誘導を示す。マウスを致死量の放射線 照射(950R)で処理し、そして BMMNCを各時点で回収した。 TIMP— 3の発現を 図 1と同様に半定量的 RT— PCRにより試験した。
[図 3]図 3は、骨髄造血幹細胞-ツチにおける TIMP— 3の誘導を示す。 3日間 5FU で処理したマウス由来の骨髄の組織染色。ォステオボンチン (OPN)および TIMP— 3発現を茶色で示した。矢頭は骨髄の骨内膜表面での TIMP— 3発現を示す。また、 青色はへマトキシリンによる核染色である。
[図 4]図 4は、 TIMP— 3により増進された造血幹細胞の増殖を示す。 96ゥヱルプレー トのゥエルごとに 100個の CD34— KSL細胞をソートし、そして TIMP— 3 (3 μ g/ml) ありで、またはなしで、幹細胞因子(SCF, 50ngZml)およびトロンボポェチン (TPO
, 50ngZml)の存在下において培養した。左パネル:増殖曲線;三角は TIMP— 3タ ンパク質投与群、丸は対照群を示す。右パネル: 5日間培養後の細胞の写真 (倍率 xlOO)。
[図 5]図 5は、 TIMP— 3と培養した造血幹細胞の対娘細胞コロニーアツセィの結果( %)を示す。 CD34— KSL細胞を 96ゥエルプレート中へソートし、そして TIMP— 3存 在下または非存在下で、 SCFおよび TPOと共に培養した。細胞が分裂し、娘細胞対 が生成した後、マイクロマニピュレーションにより細胞を分離し、コロニーアツセィに供 した。 n;好中球、 m;マクロファージ、 E ;赤血球系細胞、 M ;巨核球。コロニー対のパ 一センテージを示す。 nmEMは多能性前駆細胞から生じたコロニーを示す。
[図 6]図 6は、 TIMP— 3と培養した造血幹細胞の増進したコロニー形成能を示す。 C D34— KSL細胞を TIMP— 3存在下または非存在下で、 SCFおよび TPOと 1週間ィ ンビトロ培養した。次いで、細胞をコロニーアツセィに供した。灰色は GEMM、黒色 は GEM、そして白色は Megを示す。 Meg :巨核球のみ生じたコロニー、 GEM :好中 球、赤血球系細胞およびマクロファージを生じたコロニー、 GEMM :好中球、赤血球 系細胞、マクロファージおよび巨核球を生じたコロニー。
[図 7]図 7は、 TIMP— 3の存在下または非存在下で培養した造血幹細胞の長期骨 髄再建能を示す。 CD34—KSL細胞をTIMP— 3の存在下または非存在下で、 SCF および TPOと 1週間培養し、そして 2xl05の競合細胞と同系統の宿主マウスに移植 した。末梢血におけるドナー細胞のパーセンテージを各時点で解析した。
[図 8]図 8は、 TIMP— 3の存在下または非存在下で培養した造血幹細胞の二次移 植における長期骨髄再建能を示す。 CD34—KSL細胞をTIMP— 3の存在下または 非存在下で、 SCFおよび TPOと 1週間または 2週間培養し、そして 2xl05の競合細 胞と同系統の宿主マウスに移植した。その後、マウス骨髄から骨髄単核球を回収し、 再び他のマウスに移植した。二次移植後 4週間または 8週間での生着率を解析した。
[図 9]図 9は、 5FUで処理後のマウス(各群で n=4)に、流体力学配送法 (hydrodyn amic delivery method)により尾の静脈から TIMP— 3または変異型 TIMP— 3 ( Cys 1 Ser)発現プラスミドを注射した後の白血球数の変化を示す。上:実験スケジ ユール。下:白血球の細胞数変化のグラフ;菱形は対照群、四角は TIMP— 3を投与
した群、三角は変異型 TIMP— 3を投与した群を示す。
[図 10]図 10は、 5FUで処理後のマウス(各群で n=4)に、流体力学配送法 (hydrod ynamic delivery method)により尾の静脈から TIMP— 3または変異型 TIMP— 3 (Cys 1 Ser)発現プラスミドを注射した後のヘモグロビン値の変化を示す。菱形 は対照群、四角は TIMP— 3を投与した群、三角は変異型 TIMP— 3を投与した群を 示す。
[図 11]図 11は、 5FUで処理後のマウス(各群で n=4)に、流体力学配送法 (hydrod ynamic delivery method)により尾の静脈からコントロールプラスミド、 TIMP— 3 発現プラスミドまたは変異型 TIMP— 3 (Cys 1 Ser)発現プラスミドを注射した後の 血小板数の変化を示す。菱形は対照群、四角は TIMP— 3を投与した群、三角は変 異型 TIMP— 3を投与した群を示す。
[図 12]図 12は、致死量放射線照射(900R)後のマウスに、流体力学配送法 (hydro dynamic delivery method)により尾の静脈からコントロールプラスミドまたは TIM P 3発現プラスミドを注射した後のマウスの生存率の変化を示す。破線は TIMP— 3 投与群を、実線は対照群を示す。
[図 13]図 13は、マウス CD34— KSL細胞を単一細胞にソートし、 TIMP— 3の存在下 または非存在下で培養したとき、細胞増殖が見られたクローンのみの平均の経時的 細胞数変化を示す。
[図 14]図 14は、マウス CD34— KSL細胞を単一細胞にソートし、 TIMP— 3の存在下 または非存在下で培養した後に、 2細胞以上に分裂した細胞の比率を%で表す。
[図 15]図 15は、 TIMP 3および MMP抑制活性を欠失した変異型 TIMP— 3の発 現ベクターある 、は空ベクターをマウス尾静脈より急速静注し、これらのタンパク質を i n vivoで過剰発現させたときの、 CD34— KSL細胞の細胞周期を示す。
[図 16]図 16は、マウス CD34— KSL細胞を単一細胞にソートし、 TIMP— 3の存在下 または非存在下で培養したときの、培養開始後 2日、 3日、 7日後における細胞が死 滅した wellのパーセントを示す。
[図 17]図 17は、 TIMP— 3ノックアウトマウスと野生型マウスにそれぞれ 5FU 150m gZkgを投与した後の末梢血白血球 ·血小板数の変化を示す。
実施例
[0119] 実施例 1 マウスにおける 5FU処理後の TIMP— 3の発現変化
5FUは抗癌剤として知られており、これを腹腔内投与することにより骨髄抑制が起 こり、血球細胞が減少することが知られている。次いで、血球細胞の減少に応答して 、造血幹細胞の分裂が盛んになることが明ら力となっている。本実施例では造血幹細 胞の分裂が盛んな 5FU投与後のマウス骨髄における TIMP— 3の発現量を検討した
[0120] C57BLZ6マウスに 150mgZkgの用量で 5FUを腹腔内へ注射により投与した。
次いで、それぞれ 0, 3, 6および 9日目において、 5FU処理マウス力 骨髄単核細胞 (BMMNC)を、実施例 4によるような FACSによるソーティングにより単離した。
[0121] 骨髄単核細胞から Micro— FastTrack 2. 0 Kit (Invitrogen)を使用して、全ポ リ A+mRNAを抽出した。得られた mRNAを Superscript II逆転写酵素(Invitroge n)を使用し、製造業者の説明書にしたがって逆転写した。得られた cDNAの PCRは 、 TIMP— 3特異的プライマー(Fr:配列番号 9、 Rev:配列番号 10)および GAPDH に特異的プライマー(Fr:配列番号 11、 Rev:配列番号 12)を使用して、また DNAポ リメラーゼとしては ExTaq— HS (Takara)を使用して実行した。
TIMP - 3 Fr 5'— TACCATGACTCCCTGGCTTG— 3'
TIMP - 3 Rev 5, 一 TGCAATTGCAACCCAGGTGG— 3'
GAPDH Fr 5' -ACCACAGTCCATGCCATCAC- 3'
GAPDH Rev 5 ' - TCC ACC ACCCTGTTGCTGTA - 3 '
PCR反応後、各試料を 1%ァガロースゲルを使用した電気泳動に供し、次いでェ チジゥムブロマイドを使用し染色した。
[0122] 結果を図 1に示す。 5FUによる骨髄抑制後の 3日目以降において TIMP— 3の mR NAの発現量が有意に増加していることが明ら力となった。これにより、造血幹細胞の 増殖に TIMP— 3が関与する可能性が示唆された。
[0123] M2 マウスにおける放射線照射後の TTMP— 3の 化
C57BL/6マウスに致死量の放射線照射(950R)をし、それぞれ 0, 3および 5日 目において、放射線照射マウス力 骨髄単核細胞 (BMMNC)を単離した。次いで、
実施例 1と同様の方法により、 TIMP - 3および GAPDHにつ 、て発現量を検討した
[0124] 結果を図 2に示す。 TIMP— 3の mRNAの発現量は、放射線照射後 3日目以降に おいて増大していた。
[0125] 実施例 3 骨髄における TIMP— 3タンパク質の発現部位
実施例 3では、実施例 1のように 5FUで処理したマウスの骨髄中での TIMP— 3タ ンパク質の発現部位をより詳細に検討するために、マウス骨髄細胞を免疫染色により 解析した。
[0126] 実施例 1と同様に 5FUで処理した後 3日後のマウスの大腿を解剖し、 4%パラホル ムアルデヒドで固定した後に 5%EDTA(pH6. 0— 6. 5)を用いて脱灰した。次いで 、試料を OCTコンパウンド (Tissue— Tek)中に包埋し、凍結し、そして 5 μ m厚で切 片を作成した。切片を 5分間メタノール Zアセトンで再固定し、ャギ血清でブロッキン グし、そしてャギ抗 TIMP— 3 (C— 20)またはォステオポンチン(OPN) (P— 18)ポリ クローナル抗体を一次抗体として使用した。緩衝液による洗浄後、二次抗体としてビ ォチン標識抗ャギ IgG抗体を使用し染色、さらに緩衝液による洗浄後、 3次抗体とし てペルォキシダーゼ標識ストレプトアビジンを使用し染色した。最後にジァミノベンチ ジンを反応させ発色を行った。
[0127] 結果を図 3に示す。ォステオボンチン (OPN)は骨芽細胞特異的なマーカーとして 知られている。上段の染色図により 5FUの投与の有無に係わらず、骨の表面におい て発現していることがわかる。また下段右に示される染色図により、 5FU投与後のマ ウスで TIMP— 3タンパク質は骨の表面に沿って発現していることが明ら力となった。 一方、 5FUを投与しなかったマウス(下段左)においては、 TIMP— 3タンパク質の発 現は見られなかった。これまでの研究により、骨の表面に造血幹細胞の存在する部 位 (造血幹細胞-ツチ)が存在することが示唆されている。 TIMP— 3タンパク質は当 該部位で発現が上昇していることから、造血幹細胞に影響を与えていることが強く示 唆される。
[0128] 実施例 4 CD34二 KSL細胞の選択
マウス造血幹細胞として知られる CD34— KSL細胞(c—Kit+ Sca—1+ Lineage")
を選択するためにマウス骨髄単核球から Lineage Cell Depletion Kit (Milteny i Biotec)を使用して、 Lineage+細胞を取り除いた。さらに、 FACS Vantage (Bee ton Dickinson)等を使用して CD34—KSL細胞をフローサイトメトリーによりソーティ ングした。使用した抗体は c— Kit (ACK2)、 Sea— 1 (E13— 161. 7)、 CD34 (RA M34)であり、これら全ては BD Pharmingenより購入した。これにより、所望の CD3 4— KSL細胞を得た。
[0129] 実施例 5 造血幹細胞の増殖に対する TIMP— 3タンパク質の影響
実施例 4のようにソーティングした CD34— KSL細胞を、 100細胞ずつ丸底 96ゥエル プレートのゥエルにカ卩えた。本発明の実験系において、細胞培養培地は S— clone SF— 03 (三光純薬)であり、該培地に 0. 5%ゥシ血清アルブミン、 50ngZml SCF および 50ngZml ΤΡΟ、50 /ζ Μ 2—メルカプトエタノールを添カ卩し使用した。これ らのゥエルに組換えヒト ΤΙΜΡ— 3タンパク質(配列番号 1の 24— 211) (R&D syst ems)を 3 μ gZml添加する群と、添加しない群に分け、その後 6日間培養を続けた。 その間、 2日に 1回の割合で培地を新たなものと交換した。
[0130] 6日間の細胞数の変化および 5日目における細胞の写真を図 4に示す。丸は対照 群を、三角は TIMP— 3添加群を示す。 6日目において、 TIMP— 3タンパク質を添 加して ヽな 、対照ゥエルでは 1200細胞程度までしか増殖して 、なかったのに対し、 TIMP— 3タンパク質を添カ卩したゥエルでは 2300細胞程度まで増殖して 、た。本実 験では、 TIMP— 3タンパク質により、 2300/1200= 1. 92倍、増殖能が亢進して いた。よって、 TIMP— 3タンパク質は、造血幹細胞の増殖能を有意に亢進する活性 を有することが明らかとなった。
[0131] 実施例 6 造血幹細胞のコロニー形成(自己複製能)に対する TIMP— 3タンパク質 の影響
実施例 6では、造血幹細胞の自己複製能を測定するために、コロニー形成アツセィ を行った。具体的には、 MethoCult M3434 (Stem Cell Technology)を使用 し、添付の説明書にしたがって行った。以下に概要を示す。
[0132] 実施例 4と同様の方法により採取した CD34— KSL細胞を、 96ゥエルプレートの各ゥ エルに 1細胞ずつソーティングし、 S- Clone SF— 03に 0. 5%ゥシ血清アルブミン
、 50ngZml SCF, 50ng/ml ΤΡΟ、50 Μ 2—メルカプトエタノールを添カロし た培地で培養した。これに ΤΙΜΡ— 3タンパク質(配列番号 1の 24— 211) (R&D s ystems)を添加する群と添加しない群に分け、それぞれの細胞を 1回分裂させた。生 じた 2個の娘細胞をマイクロマニピュレータ一により 1つずつに分離し、それぞれの細 胞をメチルセルロース培地(MethoCult M3434)中に埋めこみ、 1週間から 10日 程度培養し分化させた。
[0133] 2個の娘細胞の培養後、それぞれから生じた細胞を図 5に示す。 nmEM/nmEM は 2個の娘細胞から生じたコロニーがいずれも白血球、赤血球および巨核球等の全 てを有するミックスコロニーであることを示す。 2個の娘細胞から生じたコロニーのうち 少なくとも 1つがミックスコロニーであることは、元となった 1つの CD34— KSL細胞が、 自己複製能を有したまま分裂をしたことを示唆する。また、 2つの娘細胞のうち 1つの 細胞もミックスコロニーを形成しなかった場合には、元となった 1つの CD34— KSL細 胞は、自己複製能を有しな力つたことを示唆する。
[0134] 対照群の細胞では、 70%程度の造血幹細胞しか自己複製能を有して 、なかった のに対し、 TIMP— 3タンパク質を添カ卩した培地中で培養した群ではおよそ 90%の 造血幹細胞が自己複製能を有していた。本実験では、 90/70= 1. 3倍程度、 TIM P— 3タンパク質により自己複製能が亢進した。これにより、 TIMP— 3タンパク質の存 在下で培養することにより、造血幹細胞の自己複製能を維持したまま、あるいは亢進 させて造血幹細胞を増殖させることができることが明ら力となった。
[0135] 実施例 7 造血幹細胞のコロニー形成に対する TIMP— 3タンパク質の影響
実施例 7では、造血幹細胞の自己複製能および生存率を測定するために、実施例 5とは異なる系のコロニー形成アツセィを行った。以下に概要を示す。
[0136] 実施例 4と同様の方法により採取した CD34— KSL細胞を、 96ゥエルプレートの各ゥ エルに 1細胞ずつソーティングし、 TIMP— 3タンパク質(配列番号 1の 24— 211) (R &D systems)を添加する群および添カ卩しない群(対照群)に分け、 0. 5%ゥシ血 清アルブミン、 50ng/ml SCF、 50ngZmlTPOおよび 1%メチルセルロースを添 加した S— clone培地で 1週間培養した。次いで、培養した細胞に分化培地(10%ゥ シ胎児血清、 20ngZml IL- 3, 2U/ml Epo, 20ng/ml SCF, 50ng/ml
TPOを添カロした S— clone培地)をカ卩えてコロニー形成能を観察した。
[0137] 結果を図 6に示す。 GEMMは好中球、赤血球 (赤芽球)、マクロファージおよび巨 核球力もなるミックスコロニーを示す。対照群では、およそ 20%がミックスコロニーを 形成し、また 70%以上細胞は本アツセィを終了するまでに死滅していた。一方、 TI MP— 3タンパク質を添加した群では、ミツクスコ口-一の形成率はおよそ 33%程度と なり、対照群に比べて有意にミックスコロニー形成が増加していた。これは、 TIMP— 3タンパク質力 造血幹細胞の分ィ匕を抑えて、その多分ィ匕能を維持させているためで あると考えられる。あるいは、 TIMP— 3タンパク質は、造血幹細胞のアポトーシスを 抑えることにより、結果として、ミツクスコ口-一の形成を亢進していることも考えられる 。後者の理由は、 TIMP— 3タンパク質を添加した群は、本アツセィ終了までに死滅 する細胞の割合が 56%程度であったことからも支持される。
[0138] 施例 8 骨髄移槭
実施例 4と同様の方法により採取した C57BLZ6—Ly5. 1マウス由来の CD34— K SL細胞を、およそ 1週間またはおよそ 2週間、ヒト TIMP— 3タンパク質 (配列番号 1の 24- 211) (3 gZml)を添加する群およびしない群 (対照群)に分け、培養した。次 いで、培養した細胞を Ly5. 2マウス由来の骨髄細胞 2 X 105個ずつと混合して、致死 量の放射線(950rads)照射した C57BL/6— Ly5. 2レシピエントマウスに静脈注 射により移植した。移植後 4, 8, 12, 23週目において、末梢血中の C57BLZ6— L y5. 1マウス由来の血球細胞を、抗 Ly5. 1抗体を使用した FACSにより解析し、その 割合を調べることにより、移植細胞の生着率を測定した。それぞれの実験条件につ いて、 5個体のマウスを使用して実験を行った。
[0139] 結果を図 7に示す。ヒト TIMP— 3タンパク質と 1週間培養した群および 2週間培養し た群で、移植後 4, 8, 12, 23週目のいずれにおいても対照群と比べて有意な差を 示さなかった。このこと力ら、 TIMP— 3タンパク質で処理した造血幹細胞は、前述の ような増殖能の亢進等の生理学的性質の改善が見られるにもかかわらず、実際に移 植をした場合でも、対照群と同程度の生着率および短期'長期骨髄再建能を有する ということが明ら力となった。
[0140] また、さらに過酷な条件下での造血幹細胞の生着率および長期骨髄再建能を調べ
るために、二次移植実験を行った。上記のマウス力も移植後 24週に骨髄細胞を採取 し、 2xl06個ずつレシピエントマウスに移植した。二次移植後 4週目および 8週目の 結果を図 8に示す。ヒト TIMP— 3タンパク質と 1週間培養した細胞群では、対照群に 比べて生着率が亢進していた。これは、二次移植後 4週目および 8週目のいずれに おいても観察された。一方、ヒト TIMP— 3タンパク質と 2週間培養した細胞群では、 対照群と同程度の生着率となった。これは、 1週間培養系では TIMP— 3タンパク質 は造血幹細胞機能を保つまたは増強することができ、一方、 2週間培養系では培養 期間が長ぐそのために培養中に造血幹細胞の幹細胞機能が失われて 、つたため であると考えられる。
[0141] 実施例 9 マウスへの TIMP— 3を発現するプラスミドの投与
実施 f列 1と同様にして、 0曰目に 5FUを C57BL/6マウス(n=4)に 150mg/kg の用量を腹腔内投与した。次いで、 1日目にマウス野生型 TIMP— 3 (pcDNA3ZTI MP— 3 (配列番号 7の塩基 1— 633を含む))、またはマウス変異型 TIMP— 3を発現 するプラスミド(pcDNA3ZTIMP— 3 (Cysl to Ser:配列番号 8の塩基 1— 633 を含む))あるいはコントロールプラスミド(pcDNA3) 20 μ gを 2mlのリン酸緩衝生理 食塩水(PBS)に希釈し、尾静脈から急速静注により投与した。
[0142] その後、 2, 4, 6, 8, 10および 12日目において白血球の細胞数を、血球計算機を 使用して計数した。実験スケジュールと結果を図 9に示す。コントロールプラスミドを投 与した対照群では 6日目以降で血球数の回復が見られ、一方、野生型 TIMP— 3お よび変異型 TIMP— 3では 、ずれも対照群に比べて早!、血球の回復が観察された。 また白血球の最低値も野生型 TIMP— 3および変異型 TIMP— 3注射群で高値であ つた。このことにより、 TIMP— 3はインビトロで造血幹細胞の生理学的性質を改善す るば力りではなぐインビボにおいても、造血幹細胞の生理学的性質を改善すること により、血球数の増加を促進することが明らかとなつた。
[0143] また、同様にしてヘモグロビン値および血小板の細胞数についても計数した。結果 を図 10と 11に示す。ヘモグロビン値は、赤血球のターンオーバーがその他の血球細 胞に比べて 100日程度と長いため、 5FUによる骨髄抑制直後では差が見にくいよう である。しかしながら、 6日目以降において、野生型 TIMP— 3タンパク質または変異
型 TIMP— 3タンパク質を発現するプラスミドを投与したマウスでは、ヘモグロビンの 減少が遅くなり、 8日目には対照群と TIMP— 3群では 2gZdl程度の差が生じている 。この差は臨床的には大きなものであり、 TIMP— 3は赤血球の増殖についても作用 することが明ら力となった。また、血小板については、 TIMP— 3群では対照群に比 ベて細胞数が増加したものの、変異型 TIMP— 3群ではあまり差は見られな力つた。
[0144] これらの結果から、 TIMP— 3タンパク質を発現するプラスミドを投与することにより、 造血幹細胞の分裂が盛んになり、造血の回復が早まることが明らかとなつた。
[0145] これまでに、エリスロポエチンや G— CSFなどのように、ある特定の血球細胞系列の みを増加させる薬剤は知られていた。し力しながら、 TIMP— 3は少なくとも 3系統の 血球細胞を増殖させることが可能であり、臨床治療における有用性が期待される。
[0146] ¾施例 10 マウスの牛存延番 験
0日目に C57BLZ6マウス (各群ごとに n= 9)に致死量放射線照射(900R)を行つ た。次いで、 1日目(放射線照射の 24時間後)にマウス野生型 TIMP— 3 (pcDNA3 /TIMP - 3 (配列番号 7の塩基 1 633を含む) )、またはコントロールプラスミド (pc DNA3) 20 μ gを 2mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に希釈し、尾静脈から急速静 注により投与した。
[0147] その後の各群の生存率を図 12に示す。コントロールプラスミドを投与した対照群で は、放射線照射から 10日目で生存率が 50%となり、 15日目には全てのマウスが死 亡した。し力しながら、 TIMP— 3プラスミド投与群では放射線照射から 14日目で生 存率が 50%となり、 18日目に全てのマウスが死亡した。実験結果には、統計学的優 位差が認められた(Pく 0. 05)。このことから、 TIMP— 3はインビボにおいて造血幹 細胞の生理学的性質を改善することにより、血球数の増加を促進し、マウスの生存を 延長することが明らかとなった。
[0148] 実窗列 11 ヒト臍帯血 CD34陽件細朐に針する TIMP— 3の增幅効果
ヒト造血幹細胞'未分化造血前駆細胞に対する TIMP— 3の増幅効果を検討する ため、以下の実験を行った。
[0149] インフォームドコンセントを取得したドナーから、新鮮ヒト臍帯血の提供を受けた。臍 帯血に PBSをカ卩ぇ 4倍に希釈した後 Lymphoprepに重層し、 1500回転、 30分室温
で遠心して単核球を分離した。分離した単核球より、 MACS indirect CD34 mi crobead kit (Miltenyi Biotec)を用いてヒト CD34陽性細胞を分離した。
[0150] CD34陽性細胞(純度 97. 4%) 8 X 104個ずつを、 mouse SCF 50ng/ml + human TPO 50ng/ml + human Flt3 ligand 50ng/ml + 2mM L-Glutamine + PC/SM人りの StemPro— 34 SFM complete medium
(Gibco, Invitrogen)で human TIMP— 3 3 gZml存在下または非存在 下で培養した。 TIMP— 3添加群では、培養開始後 3日目、 5日目にそれぞれ huma n TIMP - 3 3 gZmlを培養液中に添カ卩した。
[0151] 7日間培養後の細胞数はコントロール 1. 74 X 106個、 TIMP— 3 2. 89 X 106個 であり、 FACSにより測定した CD34陽性細胞の比率はコントロール、 TIMP— 3それ ぞれ 68. 0%、 78. 5%であった。これより、 7日間培養後のヒト CD34陽性細胞数は コントロール 1. 18 X 106個、 TIMP— 3 2. 27 X 106個となり、培養前(8 X 104個)に 比べてそれぞれ 15. 2倍、 29. 1倍に増幅していた。以上より、ヒト CD34陽性細胞を 7日間培養した場合 TIMP— 3添加群では非添加群に比べて約 2倍 CD34陽性細胞 が増幅することが明らかになった。
[0152] 続いて上記の細胞を NOD— SCID免疫不全マウスに移植し、 12週後の骨髄中へ の生着率を検討した。放射線照射(240 rad)した NOD— SCIDマウスの尾静脈か ら PBSに浮遊した細胞を注射、さらに anti— asialo GM1抗体を移植当日力 10日 おきに計 5回腹腔内注射し、移植後 12週目にマウス大腿骨骨髄中のヒト CD45陽性 細胞の比率を FACSにより測定した。 1%以上のヒト CD45陽性細胞の生着を認めた 場合、有意の生着と判定した。分離直後の新鮮ヒト CD34陽性細胞 2 X 104個を移 植した場合は、移植した 4匹中 3匹に生着が認められた。 7日間培養した細胞は、培 養開始前の細胞数 2 X 104個に相当する細胞を移植に用いた。コントロール (TIMP —3非添加群)では移植した 4匹中 2匹しか生着を認めな力つたのに対し、 TIMP— 3 添加群では 4匹全てに生着を認めた。以上より、 TIMP— 3を添加した体外培養によ つてヒト CD34陽性細胞中に存在する NOD— SCIDマウスに生着可能な細胞(SCI D repopulating cell; SRC)が増幅される可能性が示唆された。
[0153] 以上、本実施例から、 TIMP— 3はヒト由来の CD34陽性細胞について、少なくとも
増殖能を亢進し、 CD34陽性細胞中に含まれる SRCを維持または亢進することが明 らかとなつた。
[0154] 実施例 12 単一細朐增殖アツセィ(Single cell proliferation assay)
FACSによりマウス CD34— KSL細胞を 96— well plateに single cellソートし、 0. 5%BSA + mouse SCF 50ng/ml + human TPO 50ng/ml + 50 μ M 2 - mercaptoethanol + 2mM L— Glutamine + PC/ SM入りの エスクロン培地(三光純薬)で human TIMP - 3 3 μ gZml存在下 ·非存在下で培 養した。細胞増殖が見られた wellのみ、細胞数を経時的にカウントした。カウントを行 つた wellの平均細胞数をグラフにプロットすると、 TIMP— 3処理群がコントロールに 比べて有意に速 、増殖を示した(図 13)。
[0155] 実施例 13 Cumulative first cell division of CD34:KSL cells
FACSによりマウス CD34— KSL細胞を 96— well plateに single cellソートし、 0. 5% BSA + mouse SCF 50 ng/ml + human TPO 50 ng/ml +
50 ^ M 2― mercaptoethanol + 2mM L— Glutamine + PC/ SM入 りのエスクロン培地 (三光純薬)で human TIMP— 3 3 gZml存在下'非存在 下で培養した。経時的に各 wellの細胞数をカウントし、培養開始後 48時間後と 68時 間後の 2細胞以上に分裂した細胞の比率を%で示した。 TIMP— 3添加群ではコント ロールに比べて細胞分裂の進行が有意に速力つた(図 14)。
[0156] mi4 TIMP— 3の;告 rfn. 糸田 に する糸田
TIMP一 3および MMP抑制活性を欠失した変異型 TIMP— 3の発現ベクターをマ ウス尾静脈より急速静注し、これらの蛋白を in vivoで過剰発現させた。注射 4日後 にマウス骨髄細胞を採取、抗 CD34, c-Kit, Sea— 1, Lineage抗体および P yronin Y, Hoechst33342にて染色をおこない、 FACSにて CD34一 KSL細胞の 細胞周期解析をおこなった。コントロールベクターを投与したマウスでは、 CD34— KS L細胞のほとんどは Pyronin Y陰性 'Hoechst陰性分画に存在し、細胞周期の静 止期(GO期)にあることが確認された。これに対し、 TIMP— 3および変異 TIMP— 3 投与群では、 CD34— KSL細胞のうち約 8— 15%が G1期に、約 1— 4%が G2ZM期 にあることが明らかとなった。このことは、 TIMP— 3あるいは変異 TIMP— 3により静
止期にある造血幹細胞が細胞周期に動員されることを示して 、る(図 15)。
[0157] 実施例 15 TIMP— 3の造血幹細胞のアポトーシス抑制効果
FACSによりマウス CD34— KSL細胞を 96— well plateに single cellソートし、 0. 5% BSA + mouse SCF 50 ng/ml + human TPO 50 ng/ml +
50 ^ M 2― mercaptoethanol + 2mM L— Glutamine + PC/ SM入 りのエスクロン培地 (三光純薬)で human TIMP— 3 3 gZml存在下'非存在 下で培養した。培養開始後 2日、 3日、 7日後における細胞が死滅した wellのパーセ ントを示す。 TIMP— 3添加群ではコントロールと比して有意にアポトーシスにより死 滅する細胞の割合が低ぐ TIMP— 3が造血幹細胞のアポトーシスを抑制することを 示唆している(図 16)。
[0158] 実施例 16 TIMP— 3ノックアウトマウスにおける诰血回街の遅延
TIMP— 3ノックアウトマウスと野生型マウスにそれぞれ 5FU 150mgZkgを投与 し、その後の末梢血白血球'血小板数を経時的に測定した。 6日目までの白血球'血 小板低下は TIMP— 3ノックアウトマウスと野生型マウスで差はみられな力つた力 6 日目以降の造血回復において TIMP— 3ノックアウトは野生型に比べて回復が有意 に遅延していた。このことは、 TIMP— 3が生理的な造血回復において重要な役割を 果たして!/、ることを示して 、る(図 17)。
Claims
(1)造血幹細胞または未分化造血前駆細胞を培養する培養上清中に TIMP— 3タン ノ ク質を添加する工程、および
(2)当該造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞を(1)の培養上清中にて培養する 工程、
を含む、前記方法。
[2] 前記 TIMP 3タンパク質力 以下の (A)野生型 TIMP 3タンパク質および Zま たは (B)変異型 TIMP— 3タンパク質力もなる、請求項 1の方法:
(A)野生型 TIMP— 3タンパク質力 以下の(a) - (g)からなる群より選択される、 T IMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性および造血幹細胞または未分化造血前駆細 胞の生理学的性質を改善する活性を有するタンパク質であり:
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列から 1つまたは数個のアミノ酸残 基の欠失、置換、および Zまたは付加を有するタンパク質;
(c)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するタ ンパク質;
(d)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列によりコードされるタンパク質;
(e)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列と高度にストリンジ ントな条件下 でノ、イブリダィズする塩基配列によりコードされるタンパク質;
(f)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列から 1つまたは数個の塩基の欠失 、置換、および Zまたは付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質;並びに
(g)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核 酸配列によりコードされるタンパク質、
(B)変異型 TIMP— 3タンパク質力 TIMP 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性を欠 損し、そして造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活
性を有する以下の(a)または (b)のタンパク質である、
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211を含むアミノ酸配列、または配列番号 1のァミノ 酸 X— 211を含むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、 配列番号 1のアミノ酸 24— 27および 89— 90に相当する部分の!/、ずれか 1つのまた は複数のアミノ酸残基に欠失、置換および Zまたは付加を有するタンパク質、あるい は
(b)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列、配列番号 3の塩基 y— 633を含 む核酸配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列、または 配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核酸配列 にお 、て、配列番号 3の塩基 70— 81および塩基 265— 270に相当する部分の!/、ず れか 1つのまたは複数の塩基に欠失、置換および Zまたは付加を有する核酸配列に コードされるタンパク質、
(Xは、 1— 24から選択されるいずれか 1つの整数(1および 24を含む)であり、そし て、 yは、 1— 70から選択されるいずれか 1つの整数(1および 70を含む)である)。
[3] TIMP— 3タンパク質の培養上清中における濃度力 0. 1— gZmlである、請 求項 1または 2の方法。
[4] 造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する方法であって
(1) TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含むベクターを準備する工程、
(2)造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞に(1)のベクターを導入する工程、およ び
(3) (2)の造血幹細胞または未分化造血前駆細胞を培養する工程、
を含む、前記方法。
[5] 前記 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸力 以下の(A)野生型 TIMP— 3タンパ ク質をコードする核酸および Zまたは (B)変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする 核酸力もなる、請求項 4の方法:
(A)野生型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸力 以下の(a) - (g)からなる群 より選択される、 TIMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性および造血幹細胞または
未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有するタンパク質をコードし
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列から 1つまたは数個のアミノ酸残 基の欠失、置換、および Zまたは付加を有するタンパク質;
(c)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するタ ンパク質;
(d)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列によりコードされるタンパク質;
(e)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列と高度にストリンジ ントな条件下 でノ、イブリダィズする塩基配列によりコードされるタンパク質;
(f)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列から 1つまたは数個の塩基の欠失 、置換、および Zまたは付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質;並びに
(g)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核 酸配列によりコードされるタンパク質、
(B)変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸が、 TIMP— 3のメタ口プロテア ーゼ阻害活性を欠損し、そして造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的 性質を改善する活性を有する以下の(a)または (b)のタンパク質をコードする:
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211を含むアミノ酸配列、または配列番号 1のァミノ 酸 X— 211を含むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、 配列番号 1のアミノ酸 24— 27および 89— 90に相当する部分の!/、ずれか 1つのまた は複数のアミノ酸残基に欠失、置換および Zまたは付加を有するタンパク質、あるい は
(b)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列、配列番号 3の塩基 y— 633を含 む核酸配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列、または 配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核酸配列 にお 、て、配列番号 3の塩基 70— 81および塩基 265— 270に相当する部分の!/、ず れか 1つのまたは複数の塩基に欠失、置換および Zまたは付加を有する核酸配列に
コードされるタンパク質、
(Xは、 1— 24から選択されるいずれか 1つの整数(1および 24を含む)であり、そし て、 yは、 1— 70から選択されるいずれか 1つの整数(1および 70を含む)である)。
[6] 培養期間がおよそ 1週間ないしおよそ 2週間の間である、請求項 1から 5のいずれか の方法。
[7] 請求項 1から 6のいずれかの方法により生理学的性質が改善された、造血幹細胞ま たは未分化造血前駆細胞。
[8] TIMP— 3タンパク質を含んでなる、血球の数を増加させるための医薬組成物。
[9] 前記 TIMP— 3タンパク質力 以下の (A)野生型 TIMP— 3タンパク質および Zま たは (B)変異型 TIMP— 3タンパク質力もなる、請求項 8の医薬組成物:
(A)野生型 TIMP— 3タンパク質力 以下の(a) - (g)からなる群より選択される、 T IMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性および造血幹細胞または未分化造血前駆細 胞の生理学的性質を改善する活性を有するタンパク質であり:
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列から 1つまたは数個のアミノ酸残 基の欠失、置換、および Zまたは付加を有するタンパク質;
(c)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するタ ンパク質;
(d)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列によりコードされるタンパク質;
(e)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列と高度にストリンジ ントな条件下 でノ、イブリダィズする塩基配列によりコードされるタンパク質;
(f)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列から 1つまたは数個の塩基の欠失 、置換、および Zまたは付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質;並びに
(g)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核 酸配列によりコードされるタンパク質、
(B)変異型 TIMP— 3タンパク質力 TIMP 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性を欠 損し、そして造血幹細胞または未分ィ匕造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活
性を有する以下の(a)または (b)のタンパク質である、
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211を含むアミノ酸配列、または配列番号 1のァミノ 酸 X— 211を含むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、 配列番号 1のアミノ酸 24— 27および 89— 90に相当する部分の!/、ずれか 1つのまた は複数のアミノ酸残基に欠失、置換および Zまたは付加を有するタンパク質、あるい は
(b)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列、配列番号 3の塩基 y— 633を含 む核酸配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列、または 配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核酸配列 にお 、て、配列番号 3の塩基 70— 81および塩基 265— 270に相当する部分の!/、ず れか 1つのまたは複数の塩基に欠失、置換および Zまたは付加を有する核酸配列に コードされるタンパク質、
(Xは、 1— 24から選択されるいずれか 1つの整数(1および 24を含む)であり、そし て、 yは、 1— 70から選択されるいずれか 1つの整数(1および 70を含む)である)。
[10] TIMP— 3タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを含んでなる、血球の 数を増加させるための医薬組成物。
[11] 前記 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸力 以下の(A)野生型 TIMP— 3タンパ ク質をコードする核酸および Zまたは (B)変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする 核酸力もなる、請求項 10の医薬組成物:
(A)野生型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸力 以下の(a) - (g)からなる群 より選択される、 TIMP— 3のメタ口プロテアーゼ阻害活性および造血幹細胞または 未分化造血前駆細胞の生理学的性質を改善する活性を有するタンパク質をコードし
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列から 1つまたは数個のアミノ酸残 基の欠失、置換、および Zまたは付加を有するタンパク質;
(c)配列番号 1のアミノ酸 X— 211のアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するタ ンパク質;
(d)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列によりコードされるタンパク質;
(e)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列と高度にストリンジ ントな条件下 でノ、イブリダィズする塩基配列によりコードされるタンパク質;
(f)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列から 1つまたは数個の塩基の欠失 、置換、および Zまたは付加を有する核酸配列によりコードされるタンパク質;並びに
(g)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核 酸配列によりコードされるタンパク質、
(B)変異型 TIMP— 3タンパク質をコードする核酸が、 TIMP— 3のメタ口プロテア ーゼ阻害活性を欠損し、そして造血幹細胞または未分化造血前駆細胞の生理学的 性質を改善する活性を有する以下の(a)または (b)のタンパク質をコードする:
(a)配列番号 1のアミノ酸 X - 211を含むアミノ酸配列、または配列番号 1のァミノ 酸 X— 211を含むアミノ酸配列に 80%以上の同一性を有するアミノ酸配列において、 配列番号 1のアミノ酸 24— 27および 89— 90に相当する部分の!/、ずれか 1つのまた は複数のアミノ酸残基に欠失、置換および Zまたは付加を有するタンパク質、あるい は
(b)配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列、配列番号 3の塩基 y— 633を含 む核酸配列と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダィズする塩基配列、または 配列番号 3の塩基 y— 633を含む核酸配列に 80%以上の同一性を有する核酸配列 にお 、て、配列番号 3の塩基 70— 81および塩基 265— 270に相当する部分の!/、ず れか 1つのまたは複数の塩基に欠失、置換および Zまたは付加を有する核酸配列に コードされるタンパク質、
(Xは、 1— 24から選択されるいずれか 1つの整数(1および 24を含む)であり、そし て、 yは、 1— 70から選択されるいずれか 1つの整数(1および 70を含む)である)。 前記血球が、赤血球、白血球および血小板からなる群のいずれかの血球、または その組み合わせである、請求項 8から 11のいずれかの医薬組成物。
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WO2011030825A1 (ja) | 2009-09-10 | 2011-03-17 | 学校法人慶應義塾 | 造血幹細胞の培養方法 |
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---|---|---|---|---|
JPH09235300A (ja) * | 1996-02-29 | 1997-09-09 | Fuji Yakuhin Kogyo Kk | ヒトtimp−3及び抗ヒトtimp−3モノクローナル抗体並びにその用途 |
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