明 細 書
超音波診断装置
技術分野
[0001] 本発明は、組織に圧縮をカ卩えたときの組織の歪み等に基づいて組織の硬さ又は軟 らかさを示す弾性画像等の弾性情報を生成する機能を備えた超音波診断装置に関 する。特に、組織に作用する応力を計測するための圧力センサを設けなくても、関心 部位の良悪性の診断の客観性及び再現性を担保するのに好適な圧力センサレスの 超音波診断装置に関する。
背景技術
[0002] 特許文献 1の段落 [0049]では、超音波診断装置における弾性画像を用いた診断 において、圧力センサにより探触子の超音波送受信面より被検体の外皮へ加えられ る圧力を測定する技術が記載されている。前記圧力は、弾性率データを求めるため に必要であるし、弾性率画像による関心部位の良性又は悪性の鑑別においても、そ の鑑別の客観性を担保するために必要だと考えられている。例えば、非特許文献 1 では、弾性率画像による関心部位の鑑別においては、前記圧力と相関する組織の歪 み量 (以下、圧縮状態ともいう。)によって、良性組織と悪性組織の弾性率の値の大 小関係が入れ替わる例が報告されて 、る。
[0003] 本発明者らは、上記従来技術を検討した結果、以下の問題点に気が付いた。
[0004] すなわち、圧力センサによる方法は、前記圧力を直接検出できるという利点もある 力 超音波送受信面と接触する被検体の外皮よりも内側の組織内部の圧縮状態をも 測定できれば、より診断や鑑別が確実になるではな 、かと考えられて 、た。
[0005] 特許文献 1 :JP2004— 261198A
非特干文献 1 : Krouskop T, et al: Elastic Moduli of Breast and Prostate Tissues Un der Compression. Ultrasonic Imaging 20: 260—274, 1998.
発明の開示
[0006] 本発明の目的は、圧力センサ等を用いず、被検体の検査の対象とする組織の圧縮 状態を好適に評価するための手段を備え、関心部位の良悪性の客観性及び再現性
を担保するのに好適な超音波診断装置を提供することにある。
[0007] 上記の課題を解決する本発明の超音波診断装置は、被検体に加えられた圧縮状 態が変化する過程で取得した計測時刻が異なる一対の反射エコー信号のフレーム データに基づいて、複数の計測点における組織の弾性情報をそれぞれ求める弾性 演算部と、該弾性演算部で求められた前記弾性情報に基づいて弾性画像を生成し てディスプレイに表示する弾性画像生成部を備えた超音波診断装置であって、前記 計測点における組織の歪み変化の情報を基に、前記圧縮状態を評価する圧縮状態 評価部を備え、該評価した圧縮状態を前記弾性画像に対応付けて前記ディスプレイ に表示するように構成されてなることを特徴とする。
[0008] この場合にお 、て、圧縮状態評価部は、計測点における組織の歪み変化の積算 値(=∑ Δ ε )を基に前記圧縮状態を評価することができる。さらに、圧縮状態評価 部は、設定された関心領域に含まれる前記計測点の組織にっ 、て求めた前記歪み 変化 Δ εを前記弾性演算部から取り込み、該歪み変化 Δ εを前記圧縮状態がゼロ のときから積算して前記歪み εを求めることができる。また、圧縮状態評価部は、特 定の組織に設定された基準領域に含まれる前記計測点の組織について求めた歪み 変化 Δ εを前記弾性演算部から取込み、該歪み変化 Δ εに基づいて前記特定の 組織の歪み ε ( =∑ Δ ε )を求め、予め計測されて記憶されている前記特定の組織 の応力 歪み特性に基づいて前記歪み εに対応する応力 σを求め、該求めた応力 σを基に前記圧縮状態を評価することができる。
[0009] すなわち、図 3に示した乳腺及び脂肪組織の応力—歪み特性力も明らかなように、 組織の種類にかかわらず、歪み変化 Δ εの積算値である歪み ε ( =∑ Δ ε )は応力 σに一義的に対応する。したがって、微小な圧縮状態の変化の情報の 1つである歪 み変化 Δ εを積算して歪み εを求めることにより、計測時における応力 σの大きさを 評価することができる。その結果、本発明の第 1の態様によれば、微小な歪み変化 Δ εに基づいて生成した弾性画像に合わせて、歪み変化 Δ εの積算値を表示するこ とにより、圧縮状態の適否を評価できるから、関心部位の弾性を定量的に評価できる 。これにより、病変組織の良悪性の診断の客観性、再現性及び確定性を担保するこ とができる圧力センサレスの超音波診断装置を実現することができる。なお、圧縮状
態の評価は、歪み εに限られるものではなぐ例えば、変位や応力の大きさ(絶対量) によっても評価することができる。
[0010] また、組織の応力—歪み特性は組織の種類ごとに異なるが、個体差は少ないこと が知られている。また、組織に作用する応力は圧縮方向の各部において共通である 。したがって、特定の組織 (例えば、脂肪、筋、乳腺、などの正常組織)の応力—歪み 特性を求めて記憶しておき、計測時に特定の組織に対応する部位に基準領域を設 定し、その基準領域の歪み変化∑ Δ εを積算して歪み εを求めることにより、応力 歪み特性に基づいて関心部位に作用する応力 σの大きさを推定できる。これにより、 弾性演算部は、設定された関心領域について求めた歪み変化 Δ εと応力 σ及び応 力変化 Δ σに基づいて、定量的かつ客観的な弾性情報を求めることができる。ここで 、弾性情報は、弾性率、粘性率、歪み、応力、歪み比、ポアソン比などの弾性に関す る情報を示す包括的な言葉である。
[0011] また、本発明の圧縮状態評価部は、 2つの基準領域における歪み変化の比に基づ いて、圧縮状態を評価することができる。すなわち、圧縮状態評価部は、異なる 2つ の組織にそれぞれ設定された基準領域 R1、R2に対応する歪み変化 Δ ε 1 , Δ ε 2 を前記弾性演算部から取込んでそれらの比 Δ ε 2/ Δ ε 1 ( Δ ε 1/ Δ ε 2でもよい 。以下同じ。)を求め、該求めた歪み変化の比に基づいて圧縮状態を評価し、該評 価した圧縮状態を前記ディスプレイに表示される関心領域に対応付けて表示する構 成とすることができる。
[0012] すなわち、組織の応力 歪み特性は組織の種類ごとに異なる非線形特性を有し、 その非線形特性は組織の種類ごとに異なり、かつ、同一の組織であればその非線形 特性の個体差は少ない。したがって、異なる種類の 2つの特定の組織に設定された 基準領域 R1、R2における歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1は、計測時における応力 σ に応じて異なった値を示すことになる。言い換えれば、歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1 は、計測時の関心部位の応力の大きさ、すなわち圧縮状態に相関する。したがって、 歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1に基づいて、関心部位の弾性を定量的に評価できる。
[0013] ところで、基準領域 Rl、 R2における組織の非線形特性を指数関数的な挙動( σ = exp( a X ε ))として近似することができ、その近似関数の非線形パラメタを α 1、 α 2
とする。このとき、共通に作用する応力 σの下で、応力変化 Δ σの作用が加わったと 考えると、比 Δ ε 2ΖΔ ε 1= α ΐΖ α 2となる。ここで、計測する応力範囲内で α 1、 α 2が一定であれば比 Δ ε 2/ Δ ε 1が一定になるから、比 Δ ε 2ΖΔ ε 1も一定に なり、計測時における応力 σを評価できない。ところが、実際の組織による実測では、 上記 Δ ε 2ΖΔ ε 1の値は応力に応じて変化することが確認されている。これは、上 記モデルィ匕の方法が不完全であり、実際の組織の弾性応答を正確に表現できて ヽ ないことが原因である。実際の組織においては、応力—歪み特性として線形の応答 を示す圧縮状態の範囲を持った組織があることや、生体組織には圧縮の限界があり 、圧縮限界に達するに従い、大きな応力変化を与えても組織が変形せず、歪み変化 が生じに《なることなどの挙動がある。そのため、上述した指数関数的な挙動で説 明できる非線形特性は限られた局所的な圧縮状態範囲であり、比 Δ ε 2ΖΔ ε 1は 一定ではなぐ応力 σに相関するから、圧縮状態を評価することができる。このように 応力 σとの相関が得られる 2つの基準領域は、例えば、乳がんの検査の場合は、脂 肪と筋、脂肪と乳腺、乳腺と筋の部位に設定することができる。
[0014] また、第 2の態様の圧縮状態評価部は、予め計測されて記憶されて 、る前記 2つの 特定の組織の歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1と圧縮状態の関係に基づいて、前記求 めた歪み変化の比に対応する前記圧縮状態を求めるように構成することができる。こ れによれば、前述したように、同一種類の組織であれば弾性の個体差が小さいから、 予め特定の組織の種類に対応させて Δ ε 2/ Δ ε 1の大きさと応力 σの関係を計測 してメモリに記憶 (テーブル化)しておくことにより、実際の歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1の計測値から直ちに応力 σを求めることができる。
[0015] さらに、上記の課題を解決する本発明の第 3の態様は、第 2の態様の基準領域に 相当する 2つの基準領域及び関心領域を含む広域関心領域を設定し、広域関心領 域の歪み変化の平均値により、各計測点の歪み変化を規格ィヒすることを特徴とする 。すなわち、第 3の態様の圧縮状態評価部は、関心領域と異なる特定の 2つの組織 にそれぞれ設定された基準領域 R1、R2とを含む広域関心領域に対応する歪み変 ィ匕 Δ ε 1、 Δ ε 2、 Δ ε Iを前記弾性演算部力 取込み、前記広域関心領域の歪み 変化の平均値 Δ ε meanを求めて前記弾性演算部に出力し、前記弾性演算部は、前
記各計測点について求めた前記歪み変化 Δ εを前記平均値で規格化して前記弹 性情報を求めることを特徴とする。
[0016] すなわち、検者は、関心領域 ROIと異なる種類の 2つの特定の組織の基準領域 R1 、 R2を含むように広域関心領域 L—ROIを設定する。なお、対象組織が、関心領域 ROIを挟んで基準領域 Rl、 R2が画像上で層状に位置される場合などのように、関 心領域 ROIに対して基準領域 Rl、 R2が特定の位置関係になっている場合は、 Bモ ード断層像上で広域関心領域 L ROIを設定するだけで、自動で基準領域 Rl、 R2 を設定するようにプログラムすることができる。
[0017] このように設定された広域関心領域の全ての計測点 Pijの歪み変化 Δ ε ijの合計を 計測点数 Ntotで割り、広域関心領域の歪み変化の平均値 Δ ε meanを求める。そし て、各計測点 Pijの歪み変化 Δ ε ijを広域関心領域の歪み変化の平均値 Δ ε mean で除して、規格ィ匕された各計測点 Pの歪み変化 Δ ε ij/ Δ ε meanを求める。規格ィ匕 した各計測点 Pの歪み変化 Δ ε ij/ Δ ε meanに基づいて弾性画像を生成することに より、各計測点 Pijの歪み変化 Δ ε ijを指標化して表示できる。
[0018] ところで、加えられた応力 σに応じて各計測点 Pijの歪み変化 Δ ε ij/ Δ ε meanが 変動するので、各部の弾性を定量的に評価することができない。そこで、第 2の態様 と同様に、圧縮状態評価部は、基準領域 R1、R2に対応する歪み変化 Δ ε 1, Δ ε 2 の比 Δ ε 2Ζ Δ ε 1を求め、該求めた歪み変化の比に基づいて圧縮状態を評価し、 該評価した圧縮状態を前記ディスプレイに表示させることができる。
[0019] また、圧縮状態評価部は、予め計測されて記憶されて 、る特定の 2つの組織の歪 み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1と圧縮状態 (例えば、応力)の関係に基づいて、前記求め た歪み変化の比に対応する前記圧縮状態を求めることができる。
[0020] さらに、圧縮状態評価部は、歪み変化の比 Δ ε 2Ζ Δ ε 1又は規格化された歪み 変化 Δ ε 1/ Δ ε mean (又は Δ ε 2/ Δ ε mean)が急激に変化する現象を検知して 注意報を前記ディスプレイに出力することができる。すなわち、組織は圧縮力(応力) を増大させて 、くと歪み変化がほとんど生じな 、 、わゆる圧縮限界に達する。この圧 縮限界に達する圧縮力(応力)は組織の種類によって異なるから、基準領域 Rl, R2 の一方の組織が圧縮限界に達すると、歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1及び規格化され
た歪み変化 Δ ε 1/ Δ ε mean又は Δ ε 2/ Δ ε meanが急激に変化する現象が現 れる。基準領域 Rl, R2の一方の組織が圧縮限界に達すると、歪み変化 Δ ε 1と Δ ε 2の間の大きさの関係が急激に変化する。そこで、歪み変化の比 Δ ε 2Ζ Δ ε 1及 び規格化された歪み変化 Δ ε 1/ Δ ε mean (又は Δ ε 2/ Δ ε mean)が急激に変 化する現象を検知して、圧縮力(応力)を調整することにより、所定の圧縮状態におけ る弾性画像を得ることが可能となり、客観的、確定的な画像診断を行うことができる。
[0021] 上述したように、本発明によれば、弾性情報の計測時における圧縮状態の微小な 変化から、圧縮状態を評価することができ、病変組織の良悪性の診断の客観性及び 再現性を担保することができる圧力センサレスの超音波診断装置を実現することがで きる。
図面の簡単な説明
[0022] [図 1]本発明の一実施形態の超音波診断装置のブロック構成図である。
[図 2]探触子により対象組織に圧縮を加える圧縮操作の一例を説明する図である。
[図 3]乳腺、脂肪組織の応力 歪み線図の一例を示す図である。
[図 4]実施例 1の処理手順のフローチャートである。
[図 5]実施例 1の表示画像の一例を示す図である。
[図 6]実施例 2の表示画像の一例を示す図である。
[図 7]実施例 2の脂肪部における応力 歪み特性の一例を示す図である。
[図 8]実施例 3の処理手順のフローチャートである。
[図 9]実施例 3の表示画像の一例を示す図である。
[図 10]脂肪部、筋部、関心部の応力-歪み特性の一例を示す図である。
[図 11]図 10の応力 歪み特性の縦横軸を入れ替えた図である。
[図 12]組織の圧縮限界を説明する応力—歪み特性図である。
[図 13]組織の圧縮限界を説明する応力—歪み変化の比の特性図である。
[図 14]実施例 4の弾性率画像の一例を示す図である。
[図 15]実施例 5の処理手順のフローチャートである。
[図 16]実施例 5の規格ィ匕歪み画像の一例を示す図である。
[図 17]規格ィ匕歪み変化の圧縮限界の挙動を説明する図である。
圆 18]応力に対する規格ィ匕歪み変化を色相で表示するカラーマップの一例を示す 図である。
[図 19]応力に対する規格ィ匕歪み変化を色相で表示するカラーマップの他の例を示 す図である。
圆 20]規格ィ匕歪み変化の深度方向の分布を説明する図である。
圆 21]圧縮量を増やしていくと深度が深くなる方向の歪み変化分布の傾きが負から 正の方向に変化する例を説明する図である。
圆 22]ライン領域毎に応力を評価する実施例 8を説明する図である。
圆 23]広域関心領域に基準領域を設定する実施例 11の方法を説明する図である。 圆 24]テンプレートを用いて基準領域を設定する実施例 12の方法を説明する図であ る。
圆 25]自動的に基準領域を設定する実施例 13の方法を説明する図である。
圆 26-A]基準領域が圧縮により変形する組織力 外れることを説明する図である。 圆 26-B]圧縮により変形する組織に追従させて基準領域を移動及び変更する例を 説明する図である。
圆 26-C]圧縮により変形する組織に追従させて基準領域を移動及び変更する例の 詳細を説明する図である。
圆 26-D]図 26Cによる基準領域の移動及び変更の前後を示す図である。
圆 27]本発明の係る超音波診断装置により表示する弾性画像の好適な実施例 17を 説明する図である。
[図 28]関心部の関心領域 ROIにおける応力 歪みの関係のグラフをリアルタイムに プロットして表示する実施例 19を説明する図である。
[図 29]実施例 19の応力 歪み線図に組織の種類に対応するゾーンを表示する例を 説明する図である。
[図 30]応力インデックス σ indexとして歪み変化の比( Δ ε 2/ Δ ε 1)の値を用いて 弾性をインデックス化した場合、良悪性を高精度で鑑別できる実験結果を説明する 図である。
発明を実施するための最良の形態
[0023] 以下、本発明の超音波診断装置を実施形態に基づいて説明する。
[0024] 図 1に、本発明の超音波診断装置の一実施形態のブロック構成図を示す。図に示 すように、被検体 1の外皮に接触させて用いられる超音波の探触子 2は、被検体 1と の間で超音波を送信及び受信する複数の振動子が配列された超音波送受信面を有 して形成されている。探触子 2は、送信回路 3から供給される超音波パルスにより駆 動される。超音波送受信制御回路 4は、探触子 2の複数の振動子を駆動する超音波 パルスの送信タイミングを制御して、被検体 1内に設定される焦点に向けて超音波ビ ームを形成するようになっている。また、超音波送受信制御回路 4は、探触子 2の振 動子の配列方向に電子的に超音波ビームを走査するようになって!/、る。
[0025] 一方、探触子 2は、被検体 1内から発生する反射エコー信号を受信して受信回路 5 に出力する。受信回路 5は、超音波送受信制御回路 4から入力されるタイミング信号 に従って、反射エコー信号を取り込んで増幅などの受信処理を行う。受信回路 5によ り受信処理された反射エコー信号は、整相加算回路 6において複数の振動子により 受信された反射エコー信号の位相を合わせて加算することにより増幅される。整相加 算回路 6において整相加算された反射エコー信号の RF信号は、信号処理部 7に入 力され、ゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の信号処理がなさ れる。なお、整相加算回路 6において生成される RF信号は、複合復調した I、 Q信号 であっても良い。
[0026] 信号処理部 7により処理された RF信号は白黒スキャンコンバータ 8に導かれ、ここ においてディジタル信号に変換されるとともに、超音波ビームの走査面に対応した 2 次元の断層像データに変換される。これらの信号処理部 7と白黒スキャンコンバータ 8によって断層像 (Bモード像)の画像再構成手段が構成される。白黒スキャンコンパ ータ 8から出力される断層像データは、切替加算部 9を介して画像表示器 10に供給 されて Bモード像が表示されるようになって 、る。
[0027] 一方、整相加算回路 6から出力される RF信号は、 RF信号フレームデータ選択部 1 1に導かれる。 RF信号フレームデータ選択部 11は、超音波ビームの走査面(断層面 )に対応する RF信号群を、フレームデータとして複数フレーム分を取得してメモリなど に格納する。変位演算部 12は、 RF信号フレームデータ選択部 11に格納されている
取得時刻が異なる複数対のフレームデータを順次取り込み、取り込んだ一対のフレ ームデータに基づ 、て断層面における複数の計測点の変位ベクトルを求め、変位フ レームデータとして弾性演算部 13に出力するようになって 、る。
[0028] 本実施形態の弾性演算部 13は、変位フレームデータに基づいて各計測点の組織 の歪み変化を求めて歪みフレームデータを生成する機能、及び、その他の弾性情報 を演算する機能を有して構成されている。弾性データ処理部 14は、弾性演算部 13 力 出力される弾性情報のフレームデータに対して、座標平面内におけるスムージン グ処理、コントラスト最適化処理、フレーム間における時間軸方向のスムージング処 理などの様々な画像処理を施すようになつている。カラースキャンコンバータ 15は、 弾性データ処理部 14から出力される弾性情報のフレームデータを取り込み、設定さ れた弹性情報のカラーマップに従って、フレームデータの画素ごとに色調コードを付 与してカラー弾性像を生成するようになって!/、る。
[0029] カラースキャンコンバータ 15により生成されたカラー弾性画像は、切替加算部 9を 介して画像表示器 10に表示されるようになっている。また、切替加算部 9は、白黒ス キャンコンバータ 8から出力される白黒の断層像と、カラースキャンコンバータ 15から 出力されるカラー弾性画像とを入力し、両画像を切り替えていずれか一方を表示させ る機能と、両画像の一方を半透明にして加算合成して画像表示器 10に重ねて表示 させる機能と、両画像を並べて表示させる機能を有して形成されている。また、シネメ モリ部 18は、切替加算部 9から出力される画像データをメモリに格納し、制御インタ 一フェイス部 17からの指令に従って、過去の画像データを呼び出して画像表示器 1 0に表示するようになっている。さらに、選択された画像データを MOなどの記録メデ ィァへ転送することが可能になって 、る。
[0030] 圧縮状態評価部 19は、本発明の特徴部を構成するものであり、被検体に加えられ た圧縮状態を、計測時における歪みの微小な変化量に関する情報に基づいて評価 するようになつている。この圧縮状態評価部 19の詳細構成、及び弾性演算部 13と力 ラースキャンコンバータ 15との関連構成については、後述する実施例において説明 する。
[0031] このように構成される本実施形態の基本的な動作について説明する。まず、探触子
2による被検体 1への圧迫操作の一例にっ 、て、図 2 (A)〜(C)を参照して説明する 。基本的には、図 2に示すように、被検体 1に探触子 2を当てて圧力を加え、 5〜20% の絶対的な歪み εが生じた状態で 0. 2〜1 %の微小な歪み変化 Δ εを生じさせるよ うに、生体組織に加わる絶対的な応力 σを微小応力変化 Δ σだけ変化させる。そし て、微小応力変化 Δ σを繰返しながら、被検体 1に超音波ビームを走査するとともに 、走査面力 の反射エコー信号を連続的に受信する。そして、整相加算回路 6から出 力される RF信号に基づいて、信号処理部 7及び白黒スキャンコンバータ 8により断層 像 (Βモード)が再構成され、切替加算器 9を介して画像表示器 10に表示される。
[0032] 一方、 RF信号フレームデータ選択部 11は、被検体 1に加えられる圧力が変化する 過程で、 RF信号を取り込んでフレームレートに同期させてフレームデータを繰り返し 取得し、内蔵されたフレームメモリ内に時系列順に保存する。そして、取得時刻が異 なる一対の反射エコー信号力 なるフレームデータを単位として、連続的に複数対の フレームデータを選択して変位演算部 12に出力する。変位演算部 12は、選択され た一対のフレームデータを 1次元もしくは 2次元相関処理し、走査面における各計測 点の変位を計測して変位フレームデータを生成する。この変位ベクトルの検出法とし ては、例えば、画像を例えば N X Ν画素力 なるブロックに分け、現フレーム中の着 目しているブロックに最も近似しているブロックを前フレーム力 探索し、これに基づ いて計測点の変位を求める周知のブロックマッチング法を適用できる。また、一対の RF信号フレームデータの同一領域における自己相関を計算して変位を算出するこ とがでさる。
[0033] 変位演算部 12で求められた変位フレームデータは、弾性演算部 13に入力され、 各計測点の歪み変化などの、予め設定された弾性情報を演算して、必要な弾性情 報フレームデータを弾性データ処理部 14に出力する。歪み変化の演算は、周知のよ うに変位を空間微分することによって計算される。
[0034] また、弾性演算部 13は、後述する各実施例で説明するように、圧縮状態評価部 19 力 出力される圧縮状態の評価データを取込み、必要に応じて定量化された弾性情 報を求める。求めた弾性情報は、弾性情報処理部 14を介してカラースキャンコンパ ータ 15に入力されて弾性画像が生成され、画像表示器 10に表示される。
[0035] 以下に、本実施形態の特徴部である圧縮状態評価部 19の詳細構成、及び関連す る弾性演算部 13、カラースキャンコンバータ 15、制御インターフェイス部 17の構成を 、具体的な実施例に基づいて動作とともに説明する。
実施例 1
[0036] 本実施例は、関心領域の歪み変化 Δ εを圧縮状態がゼロのとき力 積算した積算 値∑ Δ ε ( =歪み ε )により、圧縮状態を評価する例である。図 4に本実施例の処理 手順のフローチャートを示す。
[0037] まず、ステップ S 1において、図 5に示すように、画像表示器 10に表示されている Β モード像もしくは弾性画像などの画像を利用して、関心を持っている腫瘍などを含む 関心領域 ROIを設定する。図 5では、弾性画像として歪み画像 20を表示しているも のとする。なお、歪み画像 20として、後に示す規格化歪み変化画像を表示するように してちよい。
[0038] 次に、ステップ S 2において、探触子を被検体の外皮に接触させて、かつ圧縮をカロ えな 、状態で、制御インターフェイス部 17から圧縮状態評価部 19に記憶されて 、る 歪み変化の積算値∑ Δ ε ijをゼロに初期化(リセット)する。なお、圧縮状態のゼロは 、反射エコー信号の入力開始で検知することができる。その後、ステップ S3において 被検体 1に初期圧縮を加え(図 2 (B) )、次 、で微小な圧力を変化しながら付与して、 超音波計測を実行する((図 2 (C) )。これにより、ステップ S4にて、弾性演算部 13に おいて関心領域 ROIを含む所定領域の各計測点における微小な歪み変化 Δ ε ijが 求められる。また、圧縮状態評価部 19は、ステップ S4と並行し、ステップ S2の圧縮状 態がゼロの状態から、関心領域 ROIにおける微小な歪み変化 Δ εの積算値∑ Δ ε ( =歪み ε )を求める(S5)。カラースキャンコンバータ 15は、弾性演算部 13から出力 される歪み変化 Δ ε ijに基づいてカラーの歪み画像 20をリアルタイムで生成し、図 5 の左図に示すように、画像表示器 10にカラー歪み画像 20を表示する。圧縮状態評 価部 19から出力される歪み εは、 ROIに対応させて数値 21で表示され(S6)。この カラー歪み画像 20の各部の硬さ及び軟らかさを示す弾性の程度は、カラーバー 26 の色調に対応付けて示される。また、計測された歪み変化 Δ εと、そのときの歪み ε (%)をプロットして、図 5の右図に示すように、歪み変化 Δ ε 歪み ε線図 22を作成
し、画像表示器 10の弾性画像に並べて表示する。ただし、歪み変化 Δ ε 歪み ε 線図は、後に示す規格化歪み変化 Δ ε norm 歪み ε線図としてプロットする方が客 観性、再現性が高ぐ望ましい。
[0039] 本実施例の歪み変化 Δ εの積算値∑ Δ εは、圧縮状態がゼロのときから積算した 歪み εであるから、 ROIの組織の応力—歪み特性に基づいて応力 σに相関する。し たがって、表示される弾性画像のカラー表示された弾性を歪み εの大きさを基準に 評価することができる。また、歪み変化 Δ ε 歪み ε線図に、適正な基準歪み範囲 を表示することにより、検者は ROIの組織の弾性について適正な応力における定量 的かつ再現性のある診断を行うことができる。
[0040] すなわち、歪み変化 Δ εはそのときにカ卩えられた外部力もの圧縮量 (探触子 2の変 位量)に依存する値であるから、これに基づいて生成した弾性画像は、組織間の異な る弾性の相対的な関係を表すだけであり、組織固有の弾性を定量的に表す弾性情 報ではない。例えば、非特許文献 1に述べられているように、組織の弾性は図 3に示 す乳腺及び脂肪組織の応力 歪み線図のように、非線形性の特性を有し、絶対的 な歪み(以下、単に歪みという。 ) εが大きくなるにつれ硬くなる性質を持っている。弹 性率は、応力 歪み線図の傾きで与えられ、その組織固有の定量的な値であるが、 絶対的な応力(以下、単に応力という。 ) σや歪み ε等で表される圧縮状態に応じて 大きさが変化する。つまり、組織固有の弾性率も、圧縮状態 (応力 σ、歪み ε )に応じ て変化するため、その弾性情報に基づいて構築される弾性画像も同様に圧縮状態 に依存して相対的に変動することになる。そこで、本実施例のように、積算値∑ Δ ε ( = ε )は応力 σに相関するから、その大きさを基準にすることにより、組織固有の弾 性を定量的に評価することができる。
[0041] また、本実施例における弾性情報は、歪み、弾性率のほか、粘性率、歪み比、ポア ソン比などの弾性情報を適用することができる。また、関心領域 ROIを複数設定し、 それらの ROIについて、本実施例の弾性画像及び弾性情報 歪み ε線図、弹性情 報一応力 σ線図をそれぞれ表すことができる。
実施例 2
[0042] 前述したように、組織の応力 歪み特性は組織の種類ごとに異なるが、個体差は
少ない。そこで、予め関心部位とは異なる特定の組織 (例えば、脂肪、筋、などの正 常組織)の応力 歪み特性を求めてメモリに記憶しておき、計測時に特定の組織に 対応する部位に基準領域 R1を設定し、その基準領域 R1の歪み積算値∑ Δ ε 1を 求めれば、その特定の組織の応力 歪み特性に基づいて関心領域と基準領域に共 通に作用する応力 σの大きさを推定できる。応力 σの大きさを推定できれば、関心 部位の弾性率 Ε等の弾性情報を確定的に求めることができる。この実施例 2について 、以下に詳細に説明する。
[0043] 生体組織は一般に、図 3の乳腺部に示すような応力 歪み特性を有し、歪みに対 して非線形な弾性特性を示す。この応答は一般に次式(1)のような指数関数を用い て解析される。
[0044] σ =exp(a X ε ) (1)
組織の応力―歪みの実測値を式(1)で近似(フィッティング)した解析結果が式(1) の aに反映される。 aの値が大きいほど非線形性が顕著であるということになり、この aは非線形パラメタと呼ばれている(非特許文献 3参照)。
[0045] 式(1)を εで微分すると、次式(2)となる。
(άσ/άε =α Χ exp a X ε ) = a X σ (2)
したがって、微小な応力変化 Δ σと、それにより生じる微小な歪み変化 Δ εは、次式 (3)の関係で結びつ!/ヽて 、る。
Δ σ = α Χ σ Χ Δ ε (3)
まず、式(3)の Δ σを関心部位とは異なる特定の組織から求める方法を図 6を用いて 説明する。同図に示すように基準領域 R1を、脂肪部に設定したものとすると、式 (3) の aは脂肪の応力 歪み特性力 既知であり、これを α 1と表記する。また、図 7に 示すように、基準領域 R1にお 、て計測される歪み変化とその積算値である歪みを、 それぞれ Δ ε 1、 ε 1=∑ Δ ε 1と表記する。このとき、式(1)から、関心領域と基準 領域に共通に作用する応力 σは、 σ =exp(al X ε 1)として求められ、また、式(3) から、このときの共通の応力変化は、 Δ σ = α1Χ σ Χ Δ ε 1として求められる。
[0046] ここで、弾性率 Εとしてヤング率を用いる場合は、一般に、応力を歪みで除すること によって得られ、関心領域のヤング率を包括的に得るとするならば、次式 (4)で求め
ることがでさる。
[0047] Ε= Δ σ / Δ ε I (4)
ここで、 Δ ε Iは関心領域において計測された歪み変化である。
[0048] この場合は、図 6の右図の線図 22を弾性率 E—応力 σ線図として表すことができ、 圧縮状態と弾性率を関連付けて表示することができる。また、いうまでもなぐ上記の 方法に従って弾性率画像を構築する場合は、各計測点 Pijにつ 、て上式 (4)の処理 を行い、 Eij= Δ σ / Δ ε ijとして演算した弾性率を画像ィ匕すればよい。
[0049] なお、図 6と図 7に示した例では、非線形パラメタ aに基づいて応力 σを求めること を説明したが、これに代えて、図 7の特性データをテーブルィ匕してメモリに格納してお けば、∑ Δ ε 1から直接、応力 σを求めることができる。これによれば、非線形パラメ タ OCが定数でない場合にも本実施例を適用できる。
[0050] また、本実施例及び実施例 1によれば、探触子を被検体の外皮に接触させて、か つ圧縮を加えな ヽ状態で、制御インターフェイス部 17から圧縮状態評価部 19に記 憶されている歪み変化の積算値∑ Δ ε ijを、ゼロに初期化(リセット)する必要がある。 このリセットは、検者により行われるから任意性があり、そのためにリセット操作が遅れ ると、積算値∑ Δ ε ijに誤差が含まれる可能性がある。そこで、以下の実施例 3, 4等 に説明するように、任意の圧縮状態下で、微小な歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1だけ を用いて圧縮状態を評価する方法に比べれば、画定性及び再現性が劣ると!ヽえる。 実施例 3
[0051] 本実施例は、関心領域とは異なる特定の組織に設定された 2つの基準領域 Rl, R 2の歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1により圧縮状態を評価する例である。図 8に、本実 施例の処理手順のフローチャートを示し、図 9に、本実施例の歪み画像 25の表示例 を示す。
[0052] すなわち、図 8に示すように、まず、ステップ S11において、図 9に示すように、 Βモ ード像もしくは歪み画像などの対象部位を撮像した画像 25を利用して、関心を持つ ている病変部などを含む関心領域 ROIを設定する。また、予め定めた異なる特定の 組織にそれぞれ基準領域 Rl, R2を設定する。図 9は乳がんの診断を行う例であり、 乳腺部等の関心部を挟んで上方に脂肪部が、下方に筋部が層状に位置されている
。関心領域 ROIは関心部に設定され、基準領域 R1は正常組織である脂肪部に、基 準領域 R2は脂肪部とは異なる別の正常組織である筋部に設定されている。その後、 ステップ S12において、探触子を被検体の外皮に接触させ、被検体 1に初期圧縮を 加え(図 2 (B) )、次 、で微小な圧力を変化しながら付与して超音波の計測を実行す る((図 2(C))。
[0053] 超音波計測が実行されると、弾性演算部 13において関心領域 ROIと基準領域 R1 , R2を含む計測範囲全領域の各計測点における微小な歪み変化 Δ ε ijが求められ る(S13)。また、圧縮状態評価部 19は、ステップ S 13と並行して基準領域 Rl, R2に おける微小な歪み変化の比 Δ ε 2/Δ ε 1を求める(S14)。カラースキャンコンパ一 タ 15は、弾性演算部 13から出力される歪み変化 Δ ε ijに基づいてカラーの歪み画 像をリアルタイムで生成し、図 9に示すように、画像表示器 10に弾性画像を表示する (ステップ S15)。なお、この歪み画像に代えて、後述する規格化歪み画像や弾性率 画像を構築して表示することが好まし 、。
[0054] 例えば、図 9に示したように、相対的に軟らかい脂肪部に基準領域 Rl、相対的に 硬い大胸筋部の筋部に基準領域 R2、関心部に関心領域 ROIを設定する。脂肪部、 筋部、関心部の組織は、それぞれ図 10に示すような応力 歪み特性を有するものと する。ここで、実施例 2でも説明した通り、基準領域 Rl、 R2の応力—歪み特性をそれ ぞれモデルィ匕して、次式(5)、(6)の指数関数で表わせるものと仮定する。同式にお いて、 al、 α 2はそれぞれ基準領域 Rl, R2における組織の非線形性を表す非線 形パラメタ(定数)である。
[0055] σ =exp(alX ε ) (5)
σ =exp(a2X ε ) (6)
実施例 2の説明と同様、基準領域 Rl、 R2における歪みをそれぞれ ε 1、 ε 2おくと 、基準領域と関心領域に共通に作用する応力 σの下における共通の応力変化は、 次式(7)により求められる。
[0056] Δ σ = α1Χ σ Χ Δ ε ΐ, Δ σ = α2Χ σ Χ Δ ε 2 (7)
これにより、歪み変化の比 Δ ε 2/Δ ε 1は次式(8)により求められる。
[0057] Δ ε 2/Δ ε 1= α1/α2 (8)
式(8)によれば、 Δ ε 2/Δ ε 1は応力 σに依存していない力ら、 Δ ε 2/Δ ε 1の 値によって圧縮状態を評価できないことになる。ところが、実際の組織による実測で は、上記 ε 2/Δ ε 1の値は応力 σに応じて変化することが確認されている。これ は、上記モデル化の方法が不完全であり、実際の組織の弾性応答を正確に表現で きて 、な 、ことが原因である。
[0058] 実際の組織においては、 Δ ε 2ΖΔ ε 1の値が応力 σと相関することを説明する。
ここでは、組織の弾性応答の内、以下の 2つの挙動を例にとり説明する。
(挙動 1): 応力 歪み特性として線形の応答を示す圧縮状態の範囲を持った組織 があること。
(挙動 2): 生体組織には圧縮の限界があり、圧縮限界に達するに従い、大きな応力 変化を与えても組織が変形せず、歪み変化が生じにくくなること。
[0059] まず、(挙動 1)について本実施例で説明し、(挙動 2)については次の実施例で説 明する。
(挙動 1)
基準領域 R1の脂肪部は、非線形性が他の組織に比較して弱ぐ図 3及び非特許 文献 1で示されるように、歪み 30%程度までの通常の計測範囲では、基準領域 R1の 応力 歪み特性は、図 11に示すように線形性を有する特性に近似できる。この脂肪 部の応力 σに対する歪み εの傾きを定数 aで表し、次式(9)で表すことができる。
[0060] σ =aX ε (9)
これらの関係を応力の関数として見ると、次式(10)、(11)に変形できる。
[0061] ε
(Δ ε /Δ σ )=(1/ α 1)Χ(1/ σ ) (10)
(10)、(11)式から、基準領域 Rl, R2の歪み変化 Δ ε 1、 Δ ε 2は、次式(12)、 (1 3)で表せる。
[0062] Δ ε l=(l/a) X Δ σ (12)
Δ ε 2=(1/α2) X (1/σ) X Δ σ (13)
これらの式(12)、(13)力 関心領域と基準領域に共通に負荷した応力変化 Δ σを 消去して、歪み変化の比 Δ ε 2/Δ ε 1と応力 σの関係は、次式(14)で表せる。
[0063] Δ ε 2/ Δ ε l = (a/ a 2) X (1/ σ )
σ = (a/ a 2) X ( Δ ε 1/ Δ ε 2) (14)
式(14)力も明らかなように、歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1は、圧縮状態の評価指 標の一つである応力 σに一義的に相関する。つまり、任意の計測時における歪み変 化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1の計測値によって、その計測時における圧縮状態を評価する ことができる。
[0064] また、実施例 2と同様、特定の組織の弾性応答の固体差は小さ!/、ので、上式(14) の a、 a 2の定数は図 3の実測データのように既知の数値としてもつておくことができる 。これらの数値を利用すれば圧縮状態を表す応力 σの値を得ることが可能となる。以 下、実施例 2の方法と同様に共通の応力変化 Δ σも求められ、最終的に関心領域の 弾性率 Εや計測点毎の弾性率 Eijを求めることが可能となる。
[0065] そこで、図 8のステップ S 15では、関心領域 ROIを含む各計測点の歪み変化 Δ ε ij の値を、その計測時の歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1に相関させてカラー階調化して 、図 9に示すように、カラー歪み画像 25を生成する。このカラー歪み画像 25の各部の 硬さ及び軟らかさを示す弾性の程度は、カラーバー 26の色調に対応付けて示される
[0066] したがって、本実施例によれば、検者は、圧縮状態に基づ!、て評価されたカラー歪 み画像とカラーバー 21を対比して、関心部の弾性を客観的に診断することができる。
[0067] ところで、上記説明にお 、ては、弾性画像として歪み画像 25を例にした力 弾性率 画像でも可能であり、歪み画像に限らない。また、上記説明においては、関心部の弹 性情報の数値情報を取得するために関心領域 ROIを設定することを前提に説明した 力 弾性率画像を含む弾性画像を構築して表示することが目的であれば、関心領域 ROIを設定しなくてもよい。
[0068] 本実施例において、歪み変化 Δ ε 1、 Δ ε 2は、基準領域 Rl, R2内における計測 点群の中の代表点の値を用いることができる。しかし、これに限らず、基準領域 R1, R2内における各計測点の平均値 Δ ε lmean、 Δ ε 2meanを用いることができる。 実施例 4
[0069] 本実施例 4は、実施例 3で説明したように、実際の組織においては、 Δ ε 2Ζ Δ ε 1
の値が応力 σと相関するが、それを説明する組織の弾性応答の内、(挙動 2)に基づ く例である。
[0070] 実際の組織の応力 ひずみ特性は、式(5)、(6)のような単純なモデルではなぐ 非線形性パラメタ α 1、 ひ 2は、応力及び歪みの大きさに関係する。つまり、組織に加 える応力 σを増大させていくと、図 12の曲線 28に示すように、大きな応力変化 Δ σ を与えても組織が容易には変形せず、十分に歪み変化 Δ εが生じなくなる現象が現 れる。図 12の曲線 28は、脂肪部の例として、上記現象が現れる前後で非線形パラメ タ α 1が α 1,に変化しているものとした。ただし、 α 1 ' > > α 1である。この現象が生 じる領域を圧縮限界領域とし、その境界応力を σ ίとし、その圧縮限界領域の境界歪 みを ε fとする。この境界応力 σ fは組織の種類によって異なり、基準領域 Rl , R2の 一方の組織が圧縮限界に達すると、図 11の曲線 29に示すように、歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1が急激に変化する現象が現れる。つまり、 Δ ε 2/ Δ ε 1は、圧縮状態 を表す応力 σに相関して変化することが理解される。
[0071] そこで、歪み変化の比 Δ ε 2Ζ Δ ε 1が急激に変化する現象を検知して、検者に 注意報を出すようにすれば、検者は圧縮力を調整することにより、基準領域 Rl , R2 の!、ずれか一方の組織が圧縮限界に達しな 、圧縮状態の範囲で計測を行うことが できる。これにより、検者は、所定の圧縮状態の範囲で、関心領域 ROIの歪み変化 Δ ε Iを計測でき、かつ所定の圧縮状態におけるカラー歪み画像により関心部位の 診断を行うことができる。
[0072] さらに、本実施例では、図 12の圧縮限界領域までを含んだ組織の応力 歪み特 性や図 13の σ Δ ε 2/ Δ ε 1の特性曲線 29を予め計測しておき、その特性デー タに基づいて、計測時の歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1に対応する応力 σを直接推 定することを特徴とする。すなわち、図 13に示すように、境界応力 σ fに達しない応力 の範囲でも、歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1が応力 σに対して変化している。したがつ て、特性曲線 29に基づいて、歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1から一義的に計測時の 応力 σを推定できる。なお、特性曲線 29の特性データとしては、 a 1 (又は、 a)及び « 2の値を予め計測してメモリなどに記憶しておき、圧縮状態評価部 19は、 Δ ε 2/ Δ ε 1から式(14)を用いて応力 σを推定するようにできる。
[0073] このようにして、歪み変化の計測時の応力 σの推定値を用いて、関心領域 ROIに おける歪み変化 Δ ε Iから、関心部位の弾性率、粘弾性率、等の弾性情報を求める ことができる。例えば、図 14に示すように、カラー弾性率画像 30を生成し、 ROIに対 応付けて弾性率 Ε及び応力 σを数値で表示することにより、検者はカラー弾性率画 像 30を観察して、関心部位の客観的な弾性を診断して、確定的な診断を行うことが できる。また、図 12の右図に示すように、例えば、 ROIについて計測したリアルタイム の応力 σと弾性率 Εの計測値を σ—Εグラフ 31にプロット(図中の黒点)して表示す ることができる。また、現在の計測時刻 tにおける応力 σ (t)をインジケータ 32により示 すことができる。さらに、検者は、予め定められた診断基準となる歪み変化の比の基 準範囲、もしくは、基準応力範囲において、関心部の弾性率 Eを取得することにより 組織鑑別を行う。
[0074] なお、実施例 3、 4において、基準領域 Rl、 R2を設定する際、 2/ 1が応 力の大きさに対して感度よく変化する組織同士に設定することが好ましい。例えば、 乳がんの検査の場合は、脂肪部と筋部、脂肪部と乳腺部、乳腺部と筋部の部位に設 定することができる。因みに、脂肪 <乳腺 <筋の順に硬い。
[0075] また、実施例 3、 4にお 、て、圧縮状態は、応力の次元 (kPa)で推定できる場合を除 き、応力に相関したインデックス(以下、応力インデックス)として、歪み変化の比(Δ ε 2/ Δ ε 1)の値をそのまま用いて、圧縮状態を評価するようにする。この場合、弾 性情報は、弾性に関係したインデックス (以下、弾性インデックス)として鑑別に適用 する。つまり、例えば弾性率の代用となる弾性率インデックス E(index)として、応力変 ィ匕 Δ σの代わりに歪み変化の比(Δ ε 2/ Δ ε 1)の値をそのまま用いて(式(14)参 照)、次式(15)を適用することができる。
E(index) = (1/ ( Δ ε 2/ Δ ε 1) ) X (1/ Δ ε I) (15)
図 30を参照して、応力インデックス σ indexとして歪み変化の比(Δ ε 2Ζ Δ ε 1)の 値をそのまま用い、弾性率インデックス EGndex)により、良悪性を高精度で鑑別できる 実験結果を説明する。実験では、基準領域 R1を脂肪部、基準領域 R2を筋部にそれ ぞれ取り、診断部位に関心領域 ROIを取り、それぞれの領域内で計測された歪み変 化を Δ ε 1、 Δ ε 2、 Δ ε Iとする。実施例 3、 4の方法に従って、
応力インデックス σ index = Δ ε 2/ Δ ε 1
とする。さらに、例えば、
弾性インデックス Eindex = Δ ε 1/ Δ ε I
と設定する。これに基づ 、て行った実際の臨床試験で取得した計測結果の一例を図 30 (A) , (B)に示す。同図 (A)は乳管内乳頭腫 (良性)の例であり、同図 (B)は浸潤 性乳管癌 (悪性)の例である。
[0076] Δ ε 1/ Δ εで弾性をインデックス化した場合、良悪性の鑑別閾値を 5と設定し、 Ein dex> 5で悪性、 Eindex≤5で良性と判定すると、比較的に高精度で鑑別できる。しか し、図 30に示したように、実際、弾性インデックスは応力インデックスに大きく依存し、 基準応力インデックスを設ける必要がある。例えば、基準応力インデックス範囲を σ in dex=0. 5あたりに設定し、そのときの弾性インデックスを読むと、 Eindex (良性) =4、 Eindex (悪性) = 10と検出されるから、鑑別の客観性を担保することが可能であること を確認できる。
[0077] また、実施例 3, 4では、被検体の深度方向の応力は発散ないし減衰しないという前 提で説明した。しかし、実際には、応力は深度方向に減衰するので、応力分布が深 度方向に一定ではな!ヽことを反映した応力分布推定法に基づ!ヽて、弾性情報を演 算することが望ましい。
[0078] なお、本実施例及び実施例 3では、歪み変化の比 Δ ε 2Z Δ ε 1を用いて圧縮状 態を評価することを説明したが、歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1に代えて、(Δ ε 2— Δ ε 1) / Δ ε 1 ,あるいは Log ( Δ ε 2/ Δ ε 1)などを用いることができる。要するに 、特定の 2つの組織の応力 σ—歪み ε特性を反映したそれぞれの Δ εと Δ σの関 係から、共通に付加する Δ σを消去できる指標を用いれば圧縮状態を評価し得る指 標となる。
実施例 5
[0079] 実施例 3, 4では、基準領域を 2つ設定して、それらの間の歪み変化の情報を利用 して、圧縮状態を評価する方法、及び応力を推定する方法を説明した。本実施例 4 は、基準領域 Rl, R2と関心領域 ROIを同時に含む一つの包括的な広域関心領域 L — ROIを設定し、 L— ROIの歪み変化によって、各計測点の歪み変化を規格化した
弾性情報を得る方法に、本発明を適用した例である。
[0080] 図 15に、本実施例の処理手順のフローチャートを示す。まず、ステップ S21におい て、図 16に示すように、カラー歪み画像 35 (Bモード像又は弾性画像などの超音波 画像であればよい。)上で、乳腺部等の関心部位を含む関心領域 ROI、正常組織で ある脂肪部を含む基準領域 R1、正常組織である筋部を含む基準領域 R2を包含す る広域関心領域 L—ROIを設定する。これらの基準領域 Rl、 R2は、実施例 3、 4と同 様に定めるものとする。なお、図 16のように、診断対象の組織力、関心領域 ROIを挟 んで基準領域 Rl、 R2が層状に位置される場合など、関心領域 ROIに対して基準領 域 Rl、 R2が特定の位置関係になっている場合は、 Bモード断層像上で広域関心領 域 L— ROIを設定するだけで、自動的に基準領域 Rl、 R2を例えば高さ 5mmに設定 するよう〖こプログラムすることがでさる。
[0081] このように設定した後、ステップ S22において、探触子を被検体の外皮に接触させ 、被検体 1に初期圧縮を加え(図 2 (B) )、次いで微小な圧力を変化しながら付与して 超音波の計測を実行する((図 2 (C) )。超音波計測が実行されると、弾性演算部 13 において広域関心領域 L—ROIを含む全計測領域の各計測点 Pijにおける微小な歪 み変化 Δ ε ijが求められる(S23)。これにより求められる基準領域 Rl、 R2と関心領 域 ROIの各計測点 Pの歪み変化を、それぞれ Δ ε 1、 Δ ε 2、 Δ ε Iとする。
[0082] 次 、で、ステップ S24で、広域関心領域 L—ROIの全ての計測点 Pijの歪み変化 Δ ε の合計を計測点数 Ntotで割り、広域関心領域 L ROIの歪み変化の平均値 Δ ε meanを求める。そして、各計測点の歪み変化 Δ ε を広域関心領域の歪み変化の平 均値 Δ ε meanで除して、規格ィ匕された各計測点の歪み変化 Δ ε / Δ ε meanを求 める(S25)。そして、カラースキャンコンバータ 15は弾性演算部 13から出力される規 格化された歪み変化 Δ ε / Δ ε meanに基づいて、カラー歪み画像 35を生成して、 画像表示器 10に表示する(S26)。これにより、各計測点 Pの歪み変化 Δ ε を指標 化して表示することができる。
[0083] しかし、この場合にも、加えられた応力 σに応じて、規格化された歪み変化 Δ ε /
Δ ε meanは変動する。したがって、関心部の弾性を確定的に評価することができな い。そこで、実施例 2と同様に、歪み変化の比 Δ ε 2/ Δ ε 1を求めて応力の大きさ
を評価し、これに基づいて生成した弾性画像における関心部位の弾性を確定的に評 価することができる。
[0084] また、実施例 4と同様に、図 13の σ— Δ ε 2Ζ Δ ε 1の特性曲線 23を予め計測し て、基準領域 Rl , R2の Δ ε 2/ Δ ε 1と応力 σの関係を予め計測してメモリに記憶 しておき、比 Δ ε 2/ Δ ε 1の計測値力も計測時の応力 σを直ちに推定することがで きる。
[0085] さらに、広域関心領域 L ROIの歪み変化の平均値で規格ィ匕する場合、基準領域 Rl , R2の一方の組織が圧縮限界に達するとその影響を受けて、歪み変化 Δ ε 1と Δ ε 2の間の大きさの関係が急激に変化する。そこで、本実施例でも、実施例 4と同 様に、規格化された歪み変化(Δ ε 2/ Δ ε mean)又は(Δ ε 1/ Δ ε mean)が急激 に変化する現象を検知して、検者に注意報を出すようにすれば、検者は圧縮力を所 定の範囲に調整することができる。これにより、検者は、所定の圧縮状態の範囲にお けるカラー歪み画像により関心部位の診断を行うことができる。
[0086] ところで、規格ィ匕歪み画像に従った組織鑑別を進めて ヽるが、その組織鑑別のひと つの方法として、応力の大きさが大きくなる方向に変化させたときに、関心部の規格 化歪み変化 Δ ε norm Iが増加する方向カゝ、減少する方向かを診断する方法を提案 する。
[0087] すなわち、悪性組織の場合は、応力増加と同時に規格ィ匕歪み変化 Δ ε norm Iも増 加することが多い。一方、良性組織の場合は逆に、応力増加と同時に規格ィ匕歪み変 化 Δ ε norm Iは減少することが多いことが分力つてきている。本実施例により圧縮状 態が評価できるようになつたので、このような規格ィ匕歪み変化 Δ ε norm Iの増加の程 度を定量的に評価することが可能になり、高精度な良悪性鑑別が可能になる。
[0088] ここで、念のため、圧縮限界によって規格化歪み変化( Δ ε 2Z Δ ε mean)又は( Δ ε 1/ Δ ε mean)が急激に変化する現象について説明する。図 14に示したように、 広域関心領域 L— ROIと基準領域 Rl , R2を設定したものとする。このとき、広域関心 領域 L—ROIの内部における計測点 Pの数を次のとおりとする。
[0089] 基準領域 R1が配置された組織を計測した計測点の数 N1個
基準領域 R2が配置された組織を計測した計測点の数 N2個
関心領域における計測点の数 N個
広域関心領域 L ROIの計測点の数 Ntot = N 1 + N2 + N個
L—ROIにおける歪み変化の平均値 Δ ε meanは、次式(16)で表すことができる。
[0090] Δ ε mean=(∑ ( Δ ε lij) +∑ (Δ ε 2ij) +∑ (Δ ε ij))/Ntot
= (Ν1Χ Δ ε 1+N2X Δ ε 2+ΝΧ Δ ε ) /Ntot
={(Nl/al+N2/a2 + N/a)/Ntot}X (Δ σ/σ) (16)
ここで、各組織領域における規格化歪み変化は、それぞれの組織領域内において 同一の値を計測したものと仮定する。つまり、 Δ ε lij= Δ ε 1、 Δ ε 2ij= Δ ε 2、 Δ ε ij= Δ εとする。
[0091] 各計測点において計測された歪み変化を式(8)の Δ ε meanで除することにより、式
(17)に示す規格化された歪み変化 (以下、規格化歪み変化 Δ ε norm)を求める。
Δ ε norm= Δ ε / Δ ε mean (11)
このように規格ィ匕すると、各計測点において得られた規格ィ匕歪み変化 Δ ε normは 、平均値の何倍の値を持っているかが指標化されて得られることになり、平均値と同 じ大きさであれば Δ ε normの値として「1」を持つことになる。ここで、基準領域 Rl, R 2における規格化歪み変化 Δ ε norml、 Δ ε norm2について、圧縮限界に達してい ない範囲と、圧縮限界に達した範囲に分けて検討する。
(1)圧縮限界に達して 、な 、範囲
基準領域 R1の脂肪部の規格化歪み変化 Δ ε normlは、式(18)で表せる。
[0092] Δ ε norml = Δ ε 1/Δ ε mean
= (Ntot/ a 1)/(N1/ a 1+N2/ α2 + Ν/α) (18) また、基準領域 R2の筋部の規格ィ匕歪み変化 Δ ε norm2は、式(19)で表せる。
[0093] Δ ε norm2= Δ ε 2/ Δ ε mean
= (Ntot/ a 2)/(Ν1/ a 1+N2/ α 2 + Ν/α) (19)
(2)圧縮限界に達して!/、る範囲
基準領域 R1の脂肪部の規格化歪み変化 Δ ε normlは、式(20)で表せる。
[0094] Δ ε norml = Δ ε 1/Δ ε mean
= (Ntot/ α )/(Ν1/ a +N2/ α2 + Ν/α) (20)
基準領域 R2の筋部の規格化歪み変化 Δ ε norm2は、式(21)で表せる。
[0095] Δ ε norm2 = Δ ε 2/ Δ ε mean
= (Ntot/ a 2)/(Ν1/ α Γ +Ν2/ α 2 + Ν/ α) (21) ここで、(α Γ》α 2, α )と仮定すると、式(20)の Δ ε normlは「0」に近づき、式 ( 21)の Δ £ norm2は、次式(22)の値に近づく。
[0096] (Ntot/ a 2)/(Ν2/ α 2 + Ν/ α ) (22)
この挙動を図 17 (A) , (Β)に示す。図 17から明らかなように、脂肪部の組織が圧縮 限界領域の境界応力 σ ί^超えると、脂肪部の規格化歪み変化 Δ ε normlは急激に 減少してゼロに近づき、筋部の規格化歪み変化 Δ ε norm2は、急激に増加して式(2 2)の一定値に収束する。実際の組織では、圧縮限界の境界において不連続的に挙 動が遷移するのではなぐ連続的に変化するものと考えられるため、同図に示すよう に連続的な応答を示す。
[0097] この挙動を利用してその値に応じて、共通に負荷している応力を推定することが可 能である。例えば、実施例 3と同様に、現在の計測時刻 tにおいて、規格化歪み変化 Δ ε norml (t)、 Δ ε norm2 (t)の比を求めれば、その規格化歪み変化の比は、圧縮 状態の指標である応力 σ (t)に一義的に相関する。応力 σを用いて関心領域の歪 み変化 Δ ε (t)から弾性率 E(t)等の弾性情報をリアルタイムで演算して、図 14と同様 に、それらの情報を数値やグラフやインジケータなどで表示する。ここで、弾性率 E(t) としてヤング率を用いる場合は、一般に、応力を歪みで除することによって得られ、関 心領域のヤング率を包括的に得るとするならば、次式(23)で求めることができる。
[0098] Ε(ΐ)= Δ σ (t) / A ε (t) (23)
規格化の方法は、上述したように平均値を利用する方法に限られるものではなぐ 例えば中央値を用いてもよい。また、正規分布とのフィッティングなど、統計情報を利 用したものでもよい。さらに、一つの広域関心領域で、その平均的な歪み変化を計測 した領域 (本実施例では、乳腺部)を自動認識し、その領域の歪み変化によって規格 化歪みを生成してもよい。
実施例 6
[0099] 本実施例は、実施例 5において得られた規格ィ匕歪み変化の情報に基づいて階調
化した規格ィ匕歪み画像により基準応力を判定するのに好適な例について説明する。 本実施例では、規格化歪みの大小に応じて、例えば図 18 (A) , (B)に示すような力 ラーマップの割り当てに従って色相を割り当て、規格化歪み変化を用いて規格化歪 み画像を構築する。例えば、
規格化歪み変化 0. 0辺り → 青色
規格化歪み変化 1. 0辺り → 緑色
規格化歪み変化 2. 0以上 → 赤色
のように色相を割り当て、それらの間は連続的なグラデーションをかけたカラーマップ を構成する。
[0100] このようにカラーマップの割り当て方を工夫することにより、脂肪部、筋部ともに境界 応力 σ ί"の近傍においては色相が急激に変化するようにできる。また、同時に、予め 決められた所定の基準応力範囲の近傍でも、色相が変化する境界を設定するように することができる。例えば、脂肪部においては、基準応力範囲の前後において赤色 力 橙色に変化するようにする。同様に、筋部では、基準応力範囲の前後において 青色から水色に変化するようにする。
[0101] また、広域関心領域の内部に分布する脂肪部、もしくは、筋部など、基準領域とし て選択した組織領域の規格化歪み画像の色相に注目し、基準領域の色相が基準応 力範囲に相当する色相に変化したときを認識し、そのタイミングでの関心領域の弾性 情報により鑑別を行う。例えば、規格化歪み画像の筋部の色相が青色から緑色に変 化する直前の圧縮状態を適当と判定し、その圧縮状態での関心領域の弾性画像を 用いて診断を行うようにすることができる。
[0102] また、応力基準となる所定の規格化歪み変化の基準範囲内で計測された時刻にお いては、基準領域内の計測点に、例えば、紫色の色相が付与されるようにすることが できる。これによれば、規格ィ匕歪み変化の基準範囲内にあることが画像でより明確に 認識できる。
[0103] 以下、具体的な条件を与えて本実施例が実現することを確認する。
[0104] 基準領域 Rl、 R2と関心領域 ROIにおける計測点の個数が同じであり、
基準領域 R1が配置された組織を計測した計測点の数 N個
基準領域 R2が配置された組織を計測した計測点の数 N個
関心領域 ROIにおける計測点の数 N個
広域関心領域 L ROIの計測点の数 Ntot = 3N個
と仮定する。更に、各組織の非線形性を表す a l、 《2、 αがそれぞれ、
α 1 = 1
« 2 = 8
a = ID
と仮定する。このとき、上記式(18)、(19)、(22)は、
(Ntot/ a 1)/(Ν1/ α 1 +Ν2/ α 2 + Ν/ α ) = 2. 5
(Ntot/ a 2)/(Nl/ a 1 +N2/ a 2 + N/ a ) = 0. 3
(Ntot/ a 2)/(N2/ α 2 + Ν/ α ) = 2. 0
となる。この場合の規格化歪み変化 Δ ε norml、 Δ ε norm2は、図 19 (A)、(B)に示 すような挙動となる。同図 (A)によれば、基準領域 R1の脂肪組織が圧縮限界に到達 しない範囲では、規格化歪み変化 Δ ε normlは 2. 5辺りの値を持ち、その領域にお ける規格化歪み画像は赤色を持つ。しかし、脂肪組織の圧縮限界の境界を与える境 界応力 σ ί^超えると、脂肪部の規格化歪み変化 Δ ε normlは急激に減少してゼロ に近づき、青色に変化することになる。一方、同図(B)に示すように、基準領域 R1の 脂肪部が圧縮限界に到達しない範囲では、基準領域 R2の筋部の領域における規 格化歪み変化 Δ £ norm2は 0. 3辺りの値を持ち、筋部の領域における規格ィ匕歪み 画像は青色を持つ。しかし、脂肪組織の圧縮限界の境界を与える境界応力 σ ί^超 えると、筋部の規格化歪み変化 Δ ε norm2は急激に増加して 2. 0に近づき、赤色に 変化することになる。
実施例 7
実施例 5で説明したように、圧縮量を増加させていくと、近傍の脂肪部の規格化歪 み変化 Δ ε normlが小さい方向に変化し、深部の筋部の規格化歪み変化 Δ ε norm 2が大きい方向に変化する。そこで、図 20に示すように、規格化歪み変化の深度方 向の分布に注目する。同図 (A)に示すように、ある注目ライン L1を設定し、そのライ ン L1上の規格ィ匕歪み変化の分布を観察する。図 21 (A)、(B)に示すように、圧縮量
を増やしていくと、深度が深くなる方向の歪み変化分布の傾き (例えば一次関数で近 似した深度方向の傾き)が、負から正の方向に変化していく。そこで、深度方向の歪 み変化分布の傾きの値を基準として、適切な歪み変化分布傾きの基準範囲を設定し て、基準応力範囲を判定するようにすることができる。
[0106] また、図 20 (B)に示したように、ある注目ライン L2を設定し、同一深度の計測点同 士で規格化歪み変化の平均値を取り、ひとつの深度方向の規格化歪み変化分布を 求めて評価するようにしてもよい。以上の傾きを数値として表示するようにすれば、大 雑把な傾向ではあるが、応力の程度を把握することができる。これによれば、特に基 準領域 Rl, R2を設定しなくてもよい分、手間がかからない。
実施例 8
[0107] 本実施例は、図 22に示すように、基準領域 Rl、 R2及び関心領域 ROIを同一の計 測ラインに基づいて複数のライン領域(1, 2、 · · ·、 M)に分け、ライン領域毎の基準 領域 Rl、 R2及び関心領域 ROIについての歪み変化を求める。そして、各ライン領 域における歪み変化の分布 (すなわち、深度方向の歪み変化の分布)を求めて、実 施例 7と同様に圧縮状態を評価する。ここで、ライン領域は、探触子から放射される 超音波ビームの実際のラインを複数束ねたものとして設定することができる。
実施例 9
[0108] 実施例 5の式(23)に、関心領域の弾性率 (ヤング率) Eを包括的に得る場合は、 E( ΐ)= Δ σ (t) / A ε (t)で求める例を示したが、同式を図 24のライン領域ごとに独立して 適用することができる。つまり、本実施例 9は、各ライン領域の座標を i、深度方向の座 標を jで表すと、各計測点における弾性率 Eij(t)は、ライン領域毎の応力変化 Δ a i(t) と、各計測点における歪み変化 Δ ε ijを用いて、次式(24)で求めることができる。
[0109] Eij(t) = A a i (t) / A ε ij(t) (24)
つまり、計測点毎の弾性率が求められる。このように関心領域の弾性率を分布として 得ることにより、本実施例によれば、ライン方向の応力分布の違いを加味して弾性画 像としてヤング率の大きさを階調化したヤング率画像を構築して表示することができ る。
[0110] なお、本実施例は、ライン領域毎に深度方向への応力が一定であるという前提で説
明したが、実際には応力分布が深度方向に一定ではない場合がある。この場合は、 周知の応力分布推定法に基づ 、て弾性情報を演算することが好ま 、。
[0111] また、筋部の深さは、筋部に設定した基準領域の位置で把握される。例えば、広域 関心領域の下辺部の座標で把握される。そして、筋部の深さに応じて、基準応力範 囲の設定を適切な範囲に変えるようすることができる。
実施例 10
[0112] 上記の各実施例では、圧力センサレスの超音波診断装置において、圧縮状態を定 量的に評価する方法について説明した。しかし、患者によっては、計測断面に基準 領域 Rl、 R2を設定する正常組織 (例えば、脂肪)の面積が十分に取れない場合が ある。その場合は、応力—歪み特性が既知の音響力ブラ (例えば、 SONAR— AID、 SONAGEL)を生体表皮と探触子間に介在させて、一方の基準領域の代用をさせ ることが可能である。このような音響力ブラとしては、特開 2005— 66041号公報に記 載されている。
実施例 11
[0113] 本実施例では、広域関心領域 L ROI、基準領域 Rl、 R2の設定の具体例を図 23 を用いて説明する。同図に示すように、広域関心領域 L—ROIの中に基準領域 Rl、 R2が配置されており、脂肪部や筋部に適当にそれらの基準領域 Rl、 R2が配置でき るよう、制御インターフェイス部 17からトラックボールなどの入力デバイスを介して検 者が調整できるようにする。例えば、脂肪部に設定された基準領域 R1の下辺を上下 に移動して調整することができるようになつている。同様に、筋部に設定された基準 領域 R2の上辺を上下に移動して調整できるようになって 、る。
実施例 12
[0114] 本実施例は、基準領域 Rl、 R2を自動で設定する例である。乳がんの検査対象部 の場合、筋部の下方に肋骨があり、その肋骨で超音波が遮断されるから、肋骨表面 力 深部は反射エコー信号が得られない無エコー領域となる。この無エコー領域と有 エコー領域の境界を閾値処理により検出することにより、筋部と肋骨表面の境界を検 出することができる。
[0115] また、特開 2005— 118152号公報に記載のように、肋骨表面よりも深部の無ェコ
一領域の弾性情報によるエラーを検出する処理を利用して、肋骨の領域を検出する ことより筋部と肋骨の境界を検出することができる。
[0116] また、図 24 (A)、 (B)に示すように、乳がんの検査対象部位の各組織の配置、形状 、超音波エコーレベル、超音波エコーレベルのパタン(例えば、繊維状パタン、スぺッ クル状パタンなど)を反映したテンプレートを作成し、そのテンプレートとのマッチング により脂肪、乳腺、腫瘍、筋、肋骨の領域を自動認識することができる。これによれば 、基準領域と関心領域を独立に自動設定することができる。また、反射エコー信号の みならず、歪み画像等の弾性分布画像を閾値処理することにより、各組織の境界、 輪郭を検出することもできる。ここで、テンプレートは、例えば、脂肪部、乳腺部、筋部 のそれぞれの層状領域を区分けして Bモード像上に半透明で表示するようにする。 そして、それぞれの領域を Bモード像上でマウスなどにより微調整して領域を確定さ せるよう〖こすることがでさる。
[0117] さらに、完全な自動認識ではないが、図 25 (A)に示すように、例えば、検者が超音 波画像上で基準領域を設定する組織 (例えば、脂肪部)の代表点を制御インターフ エイス部 17のポインタを操作してクリックして指定したとき、同図(B)に示すように、そ のクリックした箇所力も周囲に向けて、図中に点線で示した同一の組織領域を抽出し 、抽出した領域に必要な大きさの基準領域を自動設定するようにすることができる。こ れにより、基準領域の計測点数を最大限に利用することで精度が増すと同時に、基 準領域の設定も自動化されたことにより検者依存が低減し、客観性が向上する。 実施例 13
[0118] 図 26A及び図 26Bを参照して、圧縮により変形する組織に追従させて基準領域を 移動及び変更する実施例を説明する。図 26Aは、基準領域 R1が設定された脂肪部 は、圧縮を受けて変形し易いから、同図の左側から右側に向って圧縮を大きくしてい くと、脂肪部の厚みが薄くなつて基準領域 R1の一部力 脂肪部が外れて、乳腺部の 組織が混入するために計測誤差を生ずる。そこで、本実施例では、図 26Bに示すよ うに、脂肪部の変形に合わせて、基準領域 R1を移動及び変形させるようにしている。 これにより、各組織の領域力 の歪み変化の情報を最大限の計測点数で利用するこ とができるので、高精度な応力評価が可能になる。
[0119] このような基準領域の追従処理は、各計測点の変位の情報を用いて、基準領域を 追従することができる。また、実施例 12で説明した組織の自動認識を利用して、同一 組織を追従するようにして実現することができる。
[0120] 図 26Bでは、基準領域 R1を例に説明したが、同様に、基準領域 R2、関心領域 RO
I、広域関心領域 L—ROIについても、組織の変形に追従させて移動及び変形するこ とがでさる。
[0121] ここで、基準領域 R1の追従処理の具体的な実施方法を以下に示す。図 1における 変位計測部 12にお 、て、変位分布 (変位フレームデータ)を求める処理を具体的に 図 26Cを用いて説明する。例えば、横方向に y座標、深度方向に X座標を設定した座 標系を設け、ライン ylに沿った方向にある計測点
(xl,yl)、 (x2, yl)
の 2点に注目する。図示したように、時刻 t-1 (過去)から時刻 t (現在)の時間変化の 間に、対象組織が圧迫されたものとする。時刻 t- 1において、座標 (xl (t-1) , yl (t-
1) )にあった組織は、時刻 tにお 、て座標 (xl (t) , yl (t) )に移動し、同様に、時刻 t
-1にお 、て、座標 (x2 [t-1] , yl (t-1) )にあった組織は、時亥 Ijtにお 、て座標 (x2〔 t〕, yl〔t〕)に移動する。
[0122] このとき、変位計測部 12にお 、て、全計測点〔x, y]における変位 d (x, y)を演算 しており、例えば、上記時刻 t— 1から tにおけるライン ylに沿った変位の分布 d(x(t 1))は、図に示すように求められ、現時刻 tにおける上記移動後の X座標、 xl(t)、 x2(t)は、それぞれ、
xl(t) = xl(t-l) + d( xl(t-l) )
x2(t) = x2(t— 1) + d( x2(t— 1) )
として求めることができる。
[0123] 同様にして、 y座標方向の移動後の座標 yl (t) , y2(t)も求められる。
以上の方法を基づけば、例えば図 26Dに示すように、時刻 t 1において
(xl(t-l), yl(t - 1))、
(x2(t-l), yl(t-l)),
(xl(t-l), y2(t—l))、
(x2 (t- l) , y2 (t- l) )
の 4点力もなる長方形の基準領域 Rlを設定したとき、上記 4点における組織が時刻 t においてどこに移動したかを求めることができ、これにより、 R1の内部における組織 は同一の組織領域が指定されていることになる。
[0124] 上記の処理をリアルタイムに行うことができ、図 26Bに示すように、基準領域 R1とし て、同一組織領域をトラッキングして追従するようにすることができる。
[0125] 上記の説明では、基準領域 R1を指定する角に配置された 4点の座標における変 位の情報を用いて追従する処理を示したが、この方法に限らず、基準領域 R1の境 界を示す線上に沿って配置された座標における変位の情報を用いて、より多くの情 報に基づくことにより高精度に追従処理を行うようにしてもょ 、。
[0126] また、基準領域 R1の内部の座標における変位の情報を用いて、更に高精度に追 従処理を行うようにしてもょ ヽ。
実施例 14
[0127] 上記の各実施例では、各実施例の弾性画像をリアルタイムで生成することを前提に 説明した。しかし、現実問題として、リアルタイムで筋部などの基準領域を追従 (トラッ キング)する処理は、計測断面を変えると筋部の位置が大きく変わるので、基準領域 の設定をやり直すことが多ぐ面倒である。そこで、本実施例では、フリーズ後の静止 画で基準領域及び関心領域のサイズ及び位置を設定することができるようにして 、る
。あるいは、設定されている基準領域及び関心領域のサイズ及び位置を調整するこ とがでさる。
[0128] また、最初からリアルタイム計測中は基準領域、関心領域をあえて設定せず、フリー ズ後の静止画で基準領域及び関心領域を初めて設定し、そのタイミングでの圧縮状 態が適当であったかどうかを確認できるようになって!/、る。
実施例 15
[0129] 上記の実施例に基づいて求めた関心領域の弾性情報 (含む弾性インデックス)と同 時に、圧縮状態の情報として応力 (含む応力インデックス)の情報を取得することがで きる。以下に、これらの情報を用いて組織鑑別を行う具体的な方法を説明する。
[0130] まず、基準領域 Rl、 R2の一方として、少なくとも筋部を選択することが好ましい。実
際の弾性計測の場合、筋部はほぼ全ての乳腺の超音波断面に入れることができ、か つ、圧縮方向に対して垂直に配置されるから、圧縮に係る情報を正しく検出すること ができるからである。一方、脂肪部は、個人差によって脂肪部の厚みが異なり、関心 領域の上面に適当な厚みの脂肪部がない場合も多いからである。また、乳腺内の関 心領域に対して、脂肪部力もよりも筋部力もの距離が近いため、関心領域の応力をよ り高精度に推定するにあたり有利である。また、筋部の下は肋骨なので、確実な固定 端となり、その歪みの情報が周囲組織の硬さや形状の差異の影響を受けにくぐ異な る被検者間でも、共通の条件下で応力を推定することができる。つまり、応力推定の 再現性、客観性が高い。
実施例 16
[0131] ここで、本発明の実施例を用いて腫瘍等の良悪性を鑑別する場合の具体例を説明 する。まず、規格ィ匕歪み変化画像そのものは、腫瘍等の良悪性を鑑別するのに有用 であることは知られている。しかし、実施例 4, 5で説明したように、規格化歪み変化画 像に本発明を適用し、例えば、筋部の色相が青色から緑色に変化する直前の状態 で基準応力範囲を満たしたと判定し、その圧縮状態で取得された関心領域の規格ィ匕 歪み変化画像を選択することにより、関心領域の弾性を定量的に鑑別することができ る。
[0132] また、規格ィ匕歪み変化画像を用いた組織鑑別において、 Bモード像の低エコー領 域と規格化歪み変化画像の硬!ヽ領域との相対的な関係から、関心部位の弾性にス コアを付けて評価する弾性スコアリング手法を適用することもできる。なお、弾性スコ ァリングによる診断方法は、 WO2005— 025425に記載されている。
実施例 17
[0133] 図 27に、本発明の係る超音波診断装置により表示する弾性画像の好適な実施例 を説明する。実施例 5, 6において説明した規格ィ匕歪み変化画像で、基準領域 R1又 は R2における規格ィ匕歪み変化 Δ £ norml (t)又は Δ ε norm2 (t)が急激に変化する 現象を検知して、基準応力の適否を判定する方法を説明した。この場合に、図 18又 は図 19を用いて、筋部の色相が青色力 緑色に変化する直前の状態で基準応力範 囲であることを判定できるとした力 これによれば、検者の主観が入る余地がある。
[0134] そこで、本実施例では、 Δ ε norml (t)又は Δ ε norm2 (t)の急激な変化を客観的 に評価できるように、図 27に示す弾性画像のように、規格化歪み変化画像 40に対応 付けて、応力インデックスとして筋部における規格ィ匕歪み変化 Δ ε norm2 (t)の大き さで伸縮する棒ゲージ 41を画面上に表示するようにすることが好ましい。この場合、 Δ ε norm2 (t)の平均値などを数値 42で画面上に表示することができる。また、基準 領域 R2における Δ ε norm2 (t)の色相をインジケータ 43に表示することができる。さ らに、オシロスコープのように応力インデックスである Δ ε norm2 (t)の計測中の変化 をグラフ 44で表示することができる。
[0135] 本実施例によれば、現在の計測時刻における圧縮状態を視覚的に評価することが できる。なお、応力インデックスとして、実施例 2, 3に示した歪み変化の比(Δ ε 2/ Δ ε 1)を適用してもよい。さらに、応力インデックスに基づいて推定した応力 σ (t)を 適用してちょい。
実施例 18
[0136] 図 27において、本発明により推定した応力インデックスに基づいて、現在の計測時 刻における圧縮状態が所定の基準応力範囲にあるか否かを判定することができる。 さらに、本実施例では、応力インデックスが所定の基準応力範囲を超えた場合には、 警告を画面に表示し、あるいは、音声などの警告音により注意をするようにする。これ により、過大圧縮下の診断によって、誤診になることを回避することができる。
[0137] また、基準応力範囲が、現在の圧縮状態よりも加圧する方向にあるのか、減圧する 方向にあるのかをガイドする矢印の画像を表示するようにすることができる。さらに、 基準応力範囲を満たしたタイミングに、基準領域の色相が変化したり、点滅したりして 認識できるようにすることができる。さらに、応力基準範囲を満たしたときのみ、弾性画 像が表示されるようにすることができる。また、基準応力範囲に近づくほど、弾性画像 の輝度、半透明の透過度の値が大きぐもしくは小さくなるようにして、適圧に近づい ていることが画像力も把握されるようにすることができる。なお、上述した半透明の弹 性画像表示の方法については WO2004— 039262に記載されている。また、応力 基準範囲の中央の最適な圧縮状態で取得された弾性画像が自動で選出されて検者 に提供されるようにすることができる。
実施例 19
[0138] 図 14に、弾性率と応力の関係をプロットしてグラフ表示する例を示した力 関心領 域における歪みの大きさと、応力の関係をグラフ化するようになって!/、てもよ!/、。
[0139] すなわち、本実施例では、図 28に示すように、関心領域 ROIにおける応力 歪み の関係のグラフをリアルタイムにプロットして表示するようにする。これによれば、各組 織 (脂肪、乳腺、筋、繊維腺腫、乳管がん、浸潤性乳管がんなど)の応力 σ—歪み ε の関係をグラフに表示することができる。図示例では、乳管がんの σ εの関係 45、 繊維腺種の σ εの関係 46、現在の計測で得られた σ εの関係 47が表示され ている。この場合、組織ごとに例えば色分けして表示することができる。また、現在診 断中の関心領域の応力 歪みのカーブがどの組織に近いかを、リアルタイムに比較 できるようにしてもよい。同図では、計測中の応力 歪みの関係グラフは、繊維腺腫 の応力 歪みの関係により近いので、繊維腺腫として判定される。
[0140] また、図 29に示すように、それぞれの糸且織として判定できる応力 歪みの関係のゾ ーン 48, 49を設け、現時刻に計測された応力と歪みの関係 47がどのゾーンに属し ているかを判定できるようにしている。さらに、それぞれの組織のゾーン 48, 49には、 ゾーン毎に固有の情報が割り当てられており、それが例えば色相であれば、現時刻 において計測された応力 歪みの関係 47が属するゾーンに割り当てられた色相力 関心領域に色付けされる。これにより、検者に容易に把握されるようにしている。
[0141] この場合において、最も近い曲線を選別する判定は、例えば、曲線同士の相関係 数を演算して、自動で行うようにすることができる。その他、その非線形性を示す非線 形パラメタひを自動で演算し、その aの値から、その関心組織が FA (繊維腺腫)なの 力 DCIS (乳管がん)なの力 DC (浸潤性乳管がん)なのかの鑑別を自動で行うよう にしていてもよい。
[0142] 本実施例と同様に、図 14の弾性率と応力の関係の表示においても、各組織の性状 を反映した弾性率一応力の曲線やゾーンを表示して、同様の処理で判定ができるよ うにしていてもよい。
[0143] また、歪み—応力、弾性率—応力など、圧縮状態に関係した曲線を表示して鑑別 を行う本実施例は、本発明による圧縮状態の推定方法に従った場合に限るものでは
なぐ例えば、圧力センサを用いて応力を計測した場合にも適用することができる。
[0144] 以上、本発明を乳腺領域に適用した実施例に基づいて説明したが、本発明はこれ に限らず、前立腺、甲状腺など、他の組織に対しても同様に適用できることができる。 特に、前立腺の皮膜部の脂肪部や筋部などの組織を基準領域として設定し、応カイ ンジケータとして利用できる。
[0145] また、本発明に係る圧縮状態を評価する方法は、弾性画像診断に限らず、血流情 報を評価するドプラ画像診断にも適用することができる。つまり、ドプラ画像診断にお いても圧縮状態に依存して診断結果が異なることが知られている。したがって、本発 明に係る圧縮状態の評価方法を、ドプラ画像診断と同時に平行して適用することが 望ましい。