WO2007102389A1

WO2007102389A1 - 過グルタル酸希釈液の製造方法

Info

Publication number: WO2007102389A1
Application number: PCT/JP2007/053886
Authority: WO
Inventors: Yasunari Kawabata; Yasushi Hiramatsu
Original assignee: Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc.
Priority date: 2006-03-08
Filing date: 2007-03-01
Publication date: 2007-09-13
Also published as: JPWO2007102389A1; TW200745009A

Abstract

　殺菌消毒剤として有用な過グルタル酸組成物において、希釈後の過グルタル酸濃度低下の遅い希釈液を製造する方法を提供することを課題とし、１０～４５重量％の過グルタル酸、１～３０重量％のグルタル酸および８～５０重量％の過酸化水素を含有するｐＨ０．５未満の平衡過グルタル酸濃厚液を水で希釈し、且つ希釈前又は希釈時にアルカリを添加して希釈後にｐＨ１．８～５．０になるよう調整することによって、過グルタル酸濃度低下の遅い過グルタル酸希釈液を得る。

Description

明細書

過グルタル酸希釈液の製造方法

技術分野

[0001] 本発明は、殺菌、消毒等に有用な過ダルタル酸希釈液の製造方法及び過グルタル酸希釈液の製造に有用な平衡過ダルタル酸組成物に関する。

背景技術

[0002] 過グルタル酸組成物は、約 8〜45重量％の過グルタル酸を含む安定な水性ペルォキシ含有濃厚液が知られている (特許文献 1参照)。また、過ダルタル酸を含む複合過ジカルボン酸含有水溶液が、殺菌、消毒、洗浄用途等に使用できることが知られている（特許文献 2参照)。しカゝしながら、これらの文献では過ダルタル酸組成物の希釈時における過ダルタル酸濃度低下にっ、てはまったく触れられて、な、。過酢酸組成物については、リン酸塩およびある種の界面活性剤の添カ卩により希釈時の過酢酸濃度低下を抑制させる方法があるが (特許文献 3参照）、過ダルタル酸組成物の希釈液の過ダルタル酸濃度低下を抑制する方法はない。

[0003] 前記 8〜45重量％の過ダルタル酸を含む過ダルタル酸含有濃厚液は、殺菌消毒薬として使用できるが、殺菌消毒に用いる場合、通常はこのような高濃度の過グルタル酸は必要ではなぐ安全性、経済性の点力も希釈して用いられる。しかしながら、過ダルタル酸濃厚液を希釈した場合、平衡移動により過ダルタル酸濃度が急速に減少するため、希釈した実用液の殺菌消毒性能が急速に失われることになる。

[0004] 10重量％以下の過グルタル酸含有組成物を平衡組成物として得ることは可能である力安全性、経済性に劣る。すなわち、過ダルタル酸濃度が低すぎると所望の濃度の過ダルタル酸を得るに際し希釈倍率が小さくなり、結果的に不経済となる。

また、 10重量％以下の過酸化水素を含む平衡組成物では、ダルタル酸の過グルタル酸への転ィ匕率が低ぐダルタル酸は高価であることから経済性に劣ることになる。特許文献 1 :特開昭 53— 81619号公報

特許文献 2：特開平 08— 067667号公報

特許文献 3 :国際公開第 OOZ22931号パンフレット発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0005] 本発明が解決しょうとする課題は、希釈した場合に過ダルタル酸濃度低下の遅い過ダルタル酸濃厚液を得ること、及び殺菌消毒剤として有用な過ダルタル酸濃度低下の遅、過ダルタル酸希釈液を得ることである。

課題を解決するための手段

[0006] 本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、少なくとも 10重量 %以上の過ダルタル酸を含有する平衡過ダルタル酸濃厚液を希釈前に又は希釈と同時に特定の値に pH調整することで、平衡移動による過ダルタル酸濃度の減少を極めて遅くでき、希釈した実用液の殺菌消毒性能を長時間維持することが可能となることを見出した。

[0007] すなわち、本発明は、以下に示す過ダルタル酸希釈液及びその製造方法、平衡過ダルタル酸組成物、それを用いた殺菌消毒剤並びに殺菌消毒方法に関するものである。

(1)以下に示す工程 (a)〜 (c)を含むことを特徴とする、過ダルタル酸希釈液の製造方法。

(a) 10〜45重量％の過グルタル酸、 1〜30重量％のグルタル酸、及び 8〜50重量 %の過酸化水素を含有する pHO. 5未満の平衡過ダルタル酸濃厚液を調製する調製工程、

(b)前記平衡過ダルタル酸濃厚液を pHO. 5以上に調整する pH調整工程、及び

(c)前記平衡過ダルタル酸濃厚液を水で希釈する希釈工程。

[0008] (2)前記調製工程 (a)が、ダルタル酸と濃度 20〜90重量％の過酸化水素とを、ダルタル酸：過酸化水素 = 15-40： 85-60 (重量比）の割合で反応させる工程である、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

(3)前記 pH調整工程 (b)が、 pH調整剤としてアルカリ成分を添加する工程である、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

(4)前記アルカリ成分が水酸ィ匕ナトリウムである、請求項 3記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。 [0009] (5) pP¾ . 8〜5. 0である過ダルタル酸希釈液を製造する方法である、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

(6) 1〜20重量％の過グルタル酸を含有し且っ 11が1. 8〜5. 0である過グルタル酸希釈液を製造する方法である、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

(7)ダルタル酸の過ダルタル酸への転ィ匕率が 60%以上である、請求項 1記載の過グルタル酸希釈液の製造方法。

(8)前記平衡過ダルタル酸濃厚液が、酸触媒を 0. 1〜5重量％含有していることを特徴とする、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

[0010] (9) 10〜45重量％の過グルタル酸、 1〜30重量％のグルタル酸、及び 8〜50重量 %の過酸化水素を含有する、 pHO. 5以上の平衡過ダルタル酸組成物。

(10)アルカリ成分を含有する、請求項 10記載の平衡過ダルタル酸組成物。

(11)前記アルカリ成分が水酸ィ匕ナトリウムである、請求項 10記載の平衡過ダルタル酸組成物。

[0011] (12)請求項 1記載の方法で得られる過ダルタル酸希釈液を用いた殺菌消毒剤。

(13)請求項 1記載の方法で得られる過ダルタル酸希釈液を被殺菌消毒物に、 10〜 60°Cで 1〜60分接触させる工程を含む、殺菌消毒方法。

発明の効果

[0012] 本発明の過ダルタル酸希釈液の製造方法によれば、ダルタル酸の過ダルタル酸への転ィヒ速度及び転ィヒ率が高ぐ且つ希釈による過ダルタル酸の濃度低下が遅いため、優れた殺菌消毒性能が長時間持続する過ダルタル酸希釈液を効率よく経済的に得ることができる。

本発明の平衡過ダルタル酸組成物は、希釈しても過ダルタル酸の濃度低下が遅ヽため、高ヽ殺菌消毒性能が長時間持続する実用性に優れた過ダルタル酸希釈液を得るための濃厚液として有用である。

発明を実施するための最良の形態

[0013] 1.過ダルタル酸希釈液の製造方法

本発明の過ダルタル酸希釈液は、以下に示す工程 (a)〜 (c)を含む方法により製造することができる。 (a) 10〜45重量％の過グルタル酸、 1〜30重量％のグルタル酸、及び 8〜50重量 %の過酸化水素を含有する pHO. 5未満の平衡過ダルタル酸濃厚液を調製する調製工程

(b)前記平衡過ダルタル酸濃厚液を pHO. 5以上に調整する pH調整工程

(c)前記平衡過ダルタル酸濃厚液を水で希釈する希釈工程

[0014] (1)調製工程 (a)

平衡過ダルタル酸濃厚液の調製工程では、ダルタル酸に過酸化水素を作用させる。ダルタル酸と過酸化水素の反応は平衡反応であり、これにより過ダルタル酸が生成する。

ダルタル酸のかわりに、無水ダルタル酸を用いてもよい。過酸ィ匕水素は、好ましくは濃度 20〜90重量％、より好ましくは 30〜60重量％の濃度の溶液を用いる。

[0015] 反応開始時のダルタル酸と過酸化水素の混合比率 (濃度）は、反応後の平衡組成物中の過ダルタル酸濃度が 10%重量以上、より好ましくは 20重量％以上となる範囲で適宜選択すれば良い。

[0016] おおむね反応開始時のダルタル酸と濃度 20〜90重量％の過酸ィ匕水素溶液との割合は、グルタル酸:過酸ィ匕水素溶液= 15〜40 : 85〜60 (重量比）、ょり好ましくはグルタル酸:過酸ィ匕水素溶液= 25〜40 : 75〜60 (重量比）でぁる。また、反応開始時のダルタル酸に対する過酸化水素のモル比率としては、好ましくは 1. 0〜10、より好ましくは 1. 5〜5である。

[0017] ダルタル酸に対する過酸化水素の比率が低すぎるとダルタル酸の過ダルタル酸への転化率が低下し、経済性に劣る場合がある。

[0018] この際、酸触媒及び Z又は安定剤を含有させてもょヽ。酸触媒としては、例えば硫酸、リン酸、縮合リン酸類等が挙げられる。酸触媒の添加量は、好ましくは 0. 1〜5重量％、より好ましくは 1〜3重量％である。酸触媒の含有量が少なすぎると平衡過ダルタル酸濃厚液の _PHが高くなり、平衡に達するのに長期間を要するため生産性が低下する場合がある。

[0019] 安定剤としては、例えばジピコリン酸、 1—ヒドロキシェタン一 1, 1—ジホスホン酸、リン酸塩等が挙げられる。安定剤の添加量は、好ましくは 0. 01〜3重量％、より好ましくは 0. 1〜2重量％である。

[0020] ダルタル酸と過酸化水素との反応温度は、 0〜60°Cの範囲で実施することができる力通常は常温付近（20〜40°C)で実施するのが好ま U、。

[0021] ダルタル酸と過酸化水素を常温で反応させた場合、約 2〜30日間で平衡に達する

。平衡に達した過ダルタル酸濃厚液の pHは 0. 5未満である。 pHを 0. 5未満とすることは、例えば前記酸触媒を添加することで容易に達成できる。 pHが 0. 5以上になると、平衡に達するのに長期間を要し製造上好ましくない。

[0022] このようにして得られる平衡過ダルタル酸濃厚液中における過ダルタル酸濃度は 1

0〜45重量％、好ましくは 20〜45重量％であり、グルタル酸濃度は 1〜30重量％、好ましくは 5〜20重量％であり、過酸化水素濃度は 8〜50重量％、好ましくは 10〜2

5重量％である。

[0023] 過ダルタル酸濃度が低すぎると、希釈後の過ダルタル酸水溶液中の過ダルタル酸濃度が低すぎて、十分な殺菌消毒性能が得られないという欠点が生じる。過酸化水素濃度が低すぎるとダルタル酸の過ダルタル酸への添加率が低下し、経済的に得策ではない。

[0024] また、前記平衡過ダルタル酸濃厚液におけるダルタル酸の過ダルタル酸への転化率は好ましくは 60%以上である。

[0025] (2) pH調整工程（b)

本発明の過ダルタル酸希釈液の製造方法における工程 (b)は、前記平衡過グルタル酸濃厚液を pHO. 5以上に調整する pH調整工程である。

[0026] 本発明の方法にぉヽては、上記工程 (a)で調製される平衡過ダルタル酸濃厚液を pHO. 5未満とし、且つ該平衡過ダルタル酸濃厚液の希釈前あるいは希釈時に pHを 0. 5以上に調整することにより、生産性の向上効果だけでなぐ驚くべきことに希釈後の過ダルタル酸希釈液中における過ダルタル酸濃度低下を抑制する効果が得られる。

[0027] pHを 0. 5以上に調整する方法としては、アルカリの pH調整剤を添加するのがよい。アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、リン酸塩 (具体的にはリン酸ナトリウム、ピ口リン酸ナトリウム等)などが挙げられる。これらのうち、水酸ィ匕ナトリウムが好ましい。 p H調整剤の添加量は特に限定されず、希釈後の過ダルタル酸希釈液の pHが 1. 8〜 5. 0になるように適宜選択することができる。

[0028] pH調整剤の添カ卩は、少なくとも平衡過ダルタル酸濃厚液の調製後であれば、すなわちダルタル酸と過酸ィヒ水素との反応による過ダルタル酸濃厚液が平衡状態に達した後であれば、希釈前であっても、希釈する際であってもよい。

[0029] (3)希釈工程 (c)

本発明の過ダルタル酸希釈液の製造方法では、上記工程で得られた平衡過ダルタル酸濃厚液を、水で希釈する (希釈工程 (c) )。希釈の割合は特に限定されず、使用目的に応じて任意の濃度に希釈することができる。好ましくは、希釈後の過グルタル酸濃度が 1〜20重量％、好ましくは 1〜： LO重量％、さらに好ましくは 1〜6重量％になるまで希釈することができる。

本発明の方法で得られる平衡過ダルタル酸濃厚液は、過ダルタル酸濃度がこのような低濃度範囲となるように希釈しても、平衡移動による過ダルタル酸濃度の減少が極めて遅!、ため、所望の過ダルタル酸希釈液濃度を長時間維持することができる。

[0030] 上記 pH調整工程 (b)と希釈工程 (c)とは、 V、ずれを先に行ってもよぐまた pH調整工程 (b)と希釈工程 (c)とを同時に行ってもよい。すなわち、例えば前記調製工程 (a )において平衡過ダルタル酸濃厚液を得た後、これに pH調整剤を添加して平衡過グルタル酸濃厚液の pHを 0. 5以上に調整し、その後これに水をカ卩えて希釈してもよい。また、前記調製工程 (a)において平衡過ダルタル酸濃厚液を得た後、これに水と p H調整剤を同時に添加して過ダルタル酸希釈液の pHが 1. 8〜5. 0になるよう調整しつつ希釈してもよい。また、前記調製工程 (a)において平衡過ダルタル酸濃厚液を得た後、これに水を加えて希釈した直後に pH調整剤を添加して平衡過ダルタル酸希釈液の pHを 1. 8〜5. 0に調整してもよい。

これらのうち、平衡過ダルタル酸濃厚液を pH調整した後希釈する（先に工程 (b)を行った後工程 (c)を行う）カゝ、あるいは平衡過ダルタル酸濃厚液を希釈する際に pH 調整する（工程 (b)と工程 (c)を同時に行う）方法が好ま、。

[0031] 本発明の方法で得られる過ダルタル酸希釈液は、 pHが 1. 8〜5. 0、好ましくは 3 〜4の水溶液である。過ダルタル酸を含む液は希釈後に過ダルタル酸濃度が急速に低下する傾向にある力本発明にお、て希釈後の過ダルタル酸含有液の pHが上記範囲内になるように調整すると、驚くべきことに前記希釈液中の過ダルタル酸濃度の低下が格段に遅くなる。

[0032] 希釈液中の各成分の濃度は使用目的に応じて任意に設定することが可能であるが、希釈直後において、過ダルタル酸濃度が 1〜20重量％、好ましくは 1〜： LO重量％、さらに好ましくは 1〜6重量％であることが望ましい。また、過酸化水素濃度は好ましくは 1〜7重量％、より好ましくは 1〜5重量％である。さらに前記過ダルタル酸希釈液には、好ましくは 0. 7〜7重量％、より好ましくは 1〜5重量％のダルタル酸が含有されている。希釈液中の過ダルタル酸濃度が低すぎると殺菌消毒効果が劣り、高すぎると皮膚刺激性が強くなる場合がある。なお、希釈液の各成分濃度は経時的に変化する場合があり、希釈直後以外では上記濃度範囲に必ずしも限定されない。

[0033] 2.平衡過ダルタル酸組成物

本発明の平衡過グルタル酸組成物は、 10〜45重量％の過グルタル酸、 1〜30重量％のグルタル酸、及び 8〜50重量％の過酸化水素を含有する pHO. 5以上のものである。

[0034] 過グルタル酸のより好ましい濃度は 20〜45重量％であり、グルタル酸のより好ましい濃度は 5〜20重量％であり、過酸ィ匕水素のより好ましい濃度は 10〜25重量％である。過酸化水素濃度が高すぎる、すなわちダルタル酸の添加量が抑えられると、十分な過ダルタル酸濃度を有する平衡過ダルタル酸組成物が得られな、ため、所定の過ダルタル酸濃度の溶液を得ようとする場合に希釈倍率を小さくせざるを得なくなる。本発明の平衡過グルタル酸組成物におけるグルタル酸の過グルタル酸への転化率は 60%以上である。

[0035] 平衡過ダルタル酸組成物は、ダルタル酸に過酸ィ匕水素を作用させることにより得られる。ダルタル酸のかわりに、無水ダルタル酸を用いてもよい。過酸ィ匕水素は、好ましくは濃度 20〜90重量％、より好ましくは 30〜60重量％の濃度の溶液を用いる。

[0036] 反応開始時のダルタル酸と過酸化水素の混合比率は、反応後の平衡組成物中の過ダルタル酸濃度が 10%重量以上なる範囲で適宜選択すれば良、。おおむね反応開始時のダルタル酸と濃度 20〜90重量％の過酸ィ匕水素溶液との割合は、グルタル酸：過酸化水素溶液 = 15〜40： 85-60 (重量比）、より好ましくはダルタル酸：過酸化水素溶液= 25〜40 : 75〜60 (重量比）でぁる。また、ダルタル酸に対する過酸化水素のモル比率としては、好ましくは 1. 0〜10、より好ましくは 1. 5〜5である。ダルタル酸に対する過酸ィ匕水素の比率が低すぎるとダルタル酸の過ダルタル酸への転化率が低下し、経済性に劣る場合がある。

[0037] 本発明の平衡過ダルタル酸組成物には、酸触媒及び,又は安定剤が含有されていてもよい。酸触媒としては、例えば硫酸、リン酸、縮合リン酸類等が挙げられる。酸触媒の添加量は、好ましくは 0. 1〜5重量％、より好ましくは 1〜3重量％である。酸触媒の含有量が少なすぎるとダルタル酸と過酸化水素との反応が平衡に達するのに長期間を要するため生産性が低下する場合がある。

安定剤としては、例えばジピコリン酸、 1ーヒドロキシェタン 1, 1ージホスホン酸、リン酸塩等が挙げられる。安定剤の添加量は、好ましくは 0. 01〜3重量％、より好ましくは 0. 1〜2重量％である。

[0038] ダルタル酸と過酸化水素との反応温度は、 0〜60°Cの範囲で実施することができる力通常は常温付近（20〜40°C)で実施するのが好ま U、。

ダルタル酸と過酸化水素を常温で反応させた場合、約 2〜30日間で平衡に達する。平衡に達した過ダルタル酸濃厚液の pHは、通常 0. 5未満であるが、本発明の平衡過ダルタル酸組成物は、これを pHO. 5以上に調整したものである。 pHを 0. 5以上にすることにより、驚くべきことに希釈後の過ダルタル酸濃度の低下を抑制することができる。 pHが 0. 5未満になると、希釈した場合に過ダルタル酸濃度の急速な低下が起こり好ましくない。

[0039] pHを 0. 5以上に調整する方法としては、アルカリの pH調整剤を添加するのがよい。アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、リン酸塩 (リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリゥム等)等が挙げられる。これらのうち、水酸ィ匕ナトリウムが好ましい。 pH調整剤の添加量は特に限定されず、希釈された過ダルタル酸水溶液の pHが 1. 8〜5. 0になるように適宜選択することができる。 pH調整剤の添カ卩は、少なくともダルタル酸と過酸化水素との反応が平衡に達した後であればょ、。

[0040] 4.殺菌消毒剤及び殺菌消毒方法本発明の方法で得られる過ダルタル酸希釈液は、殺菌消毒剤として用いることができる。殺菌消毒剤には、必要に応じて一般的な殺菌'消毒用薬剤等に使用される添加剤、例えば界面活性剤、増粘剤、香料、着色剤等が適宜配合されていてもよい。

[0041] 本発明の過ダルタル酸希釈液を用いて殺菌消毒する方法としては、被殺菌消毒物に 10〜60°Cにて 1〜60分接触させる工程を含む方法が挙げられ、これにより好適に殺菌消毒を行うことができる。被殺菌消毒物としては、高水準消毒が要求される医療器具等が挙げられる。

実施例

[0042] 以下に本発明を用いて行った実施例を示す。この実施例は本発明の範囲を限定するものではない。

まず、過酸ィ匕水素と過ダルタル酸濃度の算出方法について説明する。本発明の組成物に過マンガン酸カリウム溶液を過マンガン酸のピンク色が消えなくなるまで入れることにより、過酸ィ匕水素濃度を滴定により求める。続いてョードメトリーによりペルォキシカルボキシル基の濃度を測定する。過ダルタル酸濃度はモノペルォキシグルタル酸（HOOCCH CH CH COOOH,分子量 148)に基づき算出する。

2 2 2

[0043] <参考例 1 >

グルタル酸 25g、 35重量％過酸化水素 40ml、 95重量％硫酸 lml、ジピコリン酸 0 . lg、 60重量⁰ /₀1—ヒドロキシェタン— 1, 1—ジホスホン酸 lmlを混合溶解し、室温にて 2日間反応させることにより、 24重量％の過グルタル酸、 12重量％のダルタル酸、 16重量％の過酸化水素、 2. 4重量％の酸触媒、及び 1. 3重量％の安定剤（ジピコリン酸及び 1ーヒドロキシェタン 1, 1ージホスホン酸）を含む pH— 0. 2の平衡過グルタル酸濃厚液を得た。ダルタル酸の過ダルタル酸への転化率は 63%であった。

[0044] <参考例 2>

グルタル酸 4g、 35重量％過酸化水素 40ml、 95重量％硫酸 lml、ジピコリン酸 0. lg、 60重量⁰ /₀1—ヒドロキシェタン— 1, 1—ジホスホン酸 lmlを混合溶解し、室温にて 2日間反応させることにより、 5重量％の過グルタル酸、 3重量％のダルタル酸、 29 重量％の過酸化水素、 3. 4重量％の酸触媒、及び 1. 9重量％の安定剤を含む平衡過ダルタル酸組成物を得た。ダルタル酸の過ダルタル酸への転化率は 60%であつた。本組成物はそのまま用いる場合 (すなわち 5重量％の過グルタル酸の濃度）には平衡移動による過ダルタル酸濃度低下は生起しないが、高い過酸化水素濃度により強、腐食性を有し非常に危険である。

[0045] <参考例 3 >

グルタル酸 25g、 10重量％過酸化水素 40ml、 95重量％硫酸 lml、ジピコリン酸 0 . lg、 60重量⁰ /₀1—ヒドロキシェタン— 1, 1—ジホスホン酸 lmlを混合溶解し、室温にて 2日間反応させることにより、 6重量％の過グルタル酸、 31重量％のダルタル酸、 5重量％の過酸化水素、 2. 4重量％の酸触媒、及び 1. 3重量％の安定剤を含む平衡過ダルタル酸組成物を得た。ダルタル酸の過ダルタル酸への転化率は 15 %であつた。本組成物はそのまま用いる場合 (すなわち 6重量％の過グルタル酸の濃度）には平衡移動による過ダルタル酸濃度低下は生起しなヽが、ダルタル酸の過ダルタル酸への転化率が低!、ために経済性に劣る。

[0046] <実施例 1〜10、比較例 1〜5 >

参考例 1の組成物 2mlに精製水および 2N—NaOHを合計 8ml加え、表 1に示す希釈液を得た。この希釈液を室温にて静置し、過ダルタル酸濃度の経時変化を調べた結果も表 1に示す。

[0047] [表 1]

<実施例 11、比較例 6 >

実施例 3、比較例 1の希釈直後および希釈して力も 4、 7、 14日後の組成物 (過ダルタル酸希釈液)を用いて、以下に示す方法で枯草菌芽胞およびクロコウジ力ビに対する殺菌試験を行なった。 [0049] (1)菌液の調製

試験菌 (i) : Bacillus subtilis subsp. subtillis NBRC 3134 (枯草菌芽胞）

普通寒天培地 [栄研化学株式会社製]で 35°C± 1°C、 7日間培養した試験菌の菌体を精製水に懸濁させ、 70°C± 1°C、 20分間加熱し、栄養細胞を死滅させた。この懸濁液を遠心分離して上澄み液を除いた後、菌体を再度精製水に懸濁させ、 1ml当たりの菌数が約 10⁸となるように調製し、菌液 (芽胞液)とした。

試験菌 (ii) : Aspergillus niger IFO 6341 (クロコウジカビ）

試験菌をポテトデキストロース寒天培地 [栄研ィ匕学株式会社製]で 25°C± 1°C、 7日間培養後、得られた胞子を 0. 05%ポリソルベート 80溶液に浮遊させ、 1ml当たりの胞子数が約 10⁸となるように調製し、菌液とした。

[0050] (2)殺菌試験

予め 20°C± 1°Cに保温した試験液 5mlに菌液 0. 05mlを添加、混合後、試験菌 (0 はチォ硫酸ナトリウムを 0. 5%加えた SCDLP培地 [栄研ィ匕学株式会社製]、試験菌( ii)は GPLP培地 [栄研ィ匕学株式会社製] 10mlにそれぞれ接種した。

これらの培地を試験菌 (0は 35°C± 1°Cで 48時間培養、試験菌 (ii)は 25°C± 1°Cで 7日間培養後、培地の混濁の有無を肉眼で観察することにより菌の生死を判定した。また、添加菌液の生菌数を、試験菌 (0は標準寒天培地 [栄研ィ匕学株式会社製]を用いた混釈平板培養法（35°C± 1°C、 2日間培養）、試験菌 (ii)はポテトデキストロース寒天培地 [栄研ィ匕学株式会社製]を用いた混釈平板培養法 (25°C、 7日間）により測定した。結果を表 2に示す。

[0051] [表 2] 表 2

+ ：菌の生残あり

菌の生残なし [0052] <実施例 12 >

参考例 1で得られた組成物に 1. 4gの NaOHを加えることにより 23重量％の過グルタル酸、 11. 7重量％のグルタル酸、 15. 7重量％の過酸化水素を含む pHO. 7の平衡過ダルタル酸組成物を得た。得られた平衡過ダルタル酸組成物を過ダルタル酸濃度が 5%となるように精製水で希釈したものの過ダルタル酸濃度変化を表 3に示す。

[0053] <比較例 7 >

グルタル酸 25g、 35重量％過酸化水素 40ml、 95重量％硫酸 0. 2ml、ジピコリン酸 0. lg、 60重量⁰ /₀1—ヒドロキシェタン— 1, 1—ジホスホン酸 lmlを混合溶解し、 3 5°Cにて 5日間反応させることにより、 22. 5重量％の過グルタル酸、 14. 2重量％のグルタル酸、 16. 5重量％の過酸化水素を含む pHO. 1の平衡過グルタル酸組成物を得た。ダルタル酸の過ダルタル酸への転化率は 59%であった。得られた平衡過グルタル酸組成物を過ダルタル酸濃度が 5%となるように精製水で希釈したものの過グルタル酸濃度変化を表 3に示す。

[0054] [表 3] 表 3

産業上の利用可能性

本発明の過ダルタル酸希釈液の製造方法によれば、ダルタル酸の過ダルタル酸への転ィヒ速度及び転ィヒ率が高ぐ且つ希釈による過ダルタル酸の濃度低下が遅いため、優れた殺菌消毒性能が長時間持続する過ダルタル酸実用液を効率よく経済的に得ることができる。本発明の平衡過ダルタル酸組成物は、希釈しても過ダルタル酸の濃度低下が遅ヽため、高ヽ殺菌消毒性能が長時間持続する実用性に優れた過ダルタル酸希釈液を得るための濃厚液として有用である。

Claims

請求の範囲

[I] 以下に示す工程 (a)〜 (c)を含むことを特徴とする、過ダルタル酸希釈液の製造方法。

(c)前記平衡過ダルタル酸濃厚液を水で希釈する希釈工程。

[2] 前記調製工程 (a)力ダルタル酸と濃度 20〜90重量％の過酸ィ匕水素とを、グルタル酸：過酸化水素 = 15〜40： 85-60 (重量比）の割合で反応させる工程である、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

[3] 前記 pH調整工程 (b)が、 pH調整剤としてアルカリ成分を添加する工程である、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

[4] 前記アルカリ成分が水酸化ナトリウムである、請求項 3記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

[5] pHが 1. 8〜5. 0である過ダルタル酸希釈液を製造する方法である、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

[6] 1〜20重量％の過グルタル酸を含有し且つ pHが 1. 8〜5. 0である過グルタル酸希釈液を製造する方法である、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

[7] ダルタル酸の過ダルタル酸への転化率が 60%以上である、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

[8] 前記平衡過ダルタル酸濃厚液力酸触媒を 0. 1〜5重量％含有していることを特徴とする、請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

[9] 前記平衡過ダルタル酸濃厚液力酸触媒を 0. 1〜5重量％含有していることを特徴とする、請求項 4記載の過ダルタル酸希釈液の製造方法。

[10] 10〜45重量％の過グルタル酸、 1〜30重量％のグルタル酸、及び 8〜50重量％の過酸化水素を含有する、 pHO. 5以上の平衡過ダルタル酸組成物。

[II] アルカリ成分を含有する、請求項 10記載の平衡過ダルタル酸組成物。

[12] 前記アルカリ成分が水酸ィ匕ナトリウムである、請求項 11記載の平衡過ダルタル酸組成物。

[13] 酸触媒を 0. 1〜5重量％含有する、請求項 10記載の平衡過ダルタル酸組成物。

[14] 請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液を用いた殺菌消毒剤。

[15] 請求項 1記載の過ダルタル酸希釈液を被殺菌消毒物に、 10〜60°Cで 1〜60分接触させる工程を含む、殺菌消毒方法。