明 細 書
低密着性材料、樹脂成形型および防汚性材料
技術分野
[0001] 本発明は、塩基性を有する物質に対して低!ヽ密着性を有する材料 (以下「低密着 性材料」という。)と、そのような低密着性材料によって少なくとも型面が構成された榭 脂成形型と、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する防汚性材料とに関 するものである。
背景技術
[0002] 従来においては、トランスファー成形、射出成形、および圧縮成形等により、次のよ うにして硬化榭脂を有する成形体を完成させている。すなわち、榭脂成形用の金型 に設けられたキヤビティを流動性榭脂によって充填された状態にし、その流動性榭脂 を硬化させて硬化榭脂を形成して、成形体を完成させている。そして、金型材料とし ては、主に工具鋼が使用されている。また、ェジェタト機構を使用して金型力も成形 体を突き出すことによって、成形体を取り出しやすくして 、る。
[0003] ここで、成形体を容易に取り出すためには、金型の表面 (型面)と硬化榭脂との間の 離型性を向上させること、言い換えれば、型面と硬化樹脂との間の密着性を低下させ ることが好ましい。このためには、例えば、流動性榭脂に対する良好な非濡れ性を有 するポリテトラフルォロエチレンやシリコーンゴム等の有機材料力 型面一硬化榭脂 間の離型性を改善する材料として有望であると考えられる。
[0004] 実際に、高離型性材料としてこのような有機材料を型面にスプレーあるいは塗布し た後に乾燥させてコーティングする方法が提案されている(例えば、特開平 7— 3290 99号公報の第 3頁〜第 4頁:特許文献 1参照)。これによれば、優れた離型性を有す る榭脂成形用の金型が、一応は実現される。
[0005] また、リードフレームやプリント基板等に装着された LSI (Large Scale Integration) チップ等のチップ状電子部品(以下「チップ」という。)を榭脂封止する場合には、流 動性榭脂として、セラミックスカゝらなるフィラーを含有する熱硬化性榭脂、例えば、塩 基性を有するエポキシ榭脂が使用される。このフイラ一は型面を摩耗させるので、型
面に耐摩耗性を有する金属系高硬度材料を形成することが行われている。
[0006] この場合には、 Cr, TiC,または CrN等の耐摩耗性に優れる金属系高硬度材料を めつさ、 PVD (Physical Vapor Deposition)、 3;た ίま CVD (Chemical Vapor Deposi tion)等により型面にコ一ティングする方法が用 、られる。
[0007] また、チップを榭脂封止する場合には、成形体から製造される完成品 (パッケージ) の信頼性を確保するために、成形体を離型する際に成形体にできるだけ外力が加わ らないことが好ましい。したがって、型面を構成する材料として、離型性に優れた材料 を提供することが望まれて 、る。
[0008] また、本出願の発明者らは、空気中にお!、て安定な焼結体である Y Oがエポキシ
2 3 榭脂に対して良好な離型性を有することを見出した。そして、本出願の発明者らによ つて、 Y Oを使用して型面を構成することが提案されている(特開 2005— 274478
2 3
号公報の第 8頁:特許文献 2参照)。ここで、エポキシ榭脂は塩基性の榭脂であり、 Y
2
Oは塩基性酸ィ匕物である。このことから、塩基性を有するエポキシ榭脂に対して Y o
3 2
3が良好な離型性を有するということは、エポキシ榭脂に対して離型性に優れた材料 としては塩基性を有する材料が適当であることを示すものと考えられる。
[0009] また、塩基性を有する物質に対するある材料の結合力は、その材料の塩基性が強 いほど小さいものと考えられる。したがって、 Y Oよりもいつそう離型性に優れた材料
2 3
、言い換えれば γ oよりも密着性がいっそう低い材料として、 Y oよりも強い塩基性
2 3 2 3
を有する塩基性酸化物が考えられる。ここで、本出願書類全体における塩基性とは、 電子対の供与性、すなわち電子対を供与する性質をいい、あるいは、プロトンを授与 される性質をいう(例えば、理ィ匕学事典 第 4版、岩波書店、 1987年、 p. 161)。
[0010] また、榭脂成形型に限らず、例えば、流動性を有するエポキシ榭脂等の塩基性を 有する物質が接触する部材の表面には、微量の硬化榭脂等が付着しやすい。そして 、それらの部材を引き続いて使用すると、それらの表面に硬化榭脂等力 なる汚れが 付着する。
特許文献 1 :特開平 7— 329099号公報 (第 3頁 第 4頁)
特許文献 2:特開 2005 - 274478号公報 (第 8頁)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0011] 上述した従来の技術によれば、次の問題がある。
第 1に、金型ゃ部材等に使用される従来の材料においては、表面に硬化榭脂等か らなる汚れが固着しやすい。したがって、この汚れを取り除くためには定期的に表面 をクリーニングする必要があるので、その作業が煩雑である。
[0012] 第 2に、従来の金型材料を使用する場合には、硬化樹脂が型面に固着しやすいの で、成形体を金型から取り出すために多数のェジェタト機構を必要としている。このこ とが、金型の大型化と複雑化とを招いている。
[0013] 第 3に、ポリテトラフルォロエチレンやシリコーンゴム等の有機材料を型面にコーティ ングする場合には、これらの有機材料が摩耗しやすい。したがって、金型の離型性を 改善する高離型性材料としてこれらの有機材料を単独で使用することは、現実的に 困難である。
[0014] 第 4に、 Cr, TiC,または CrN等の耐摩耗性に優れる金属系高硬度材料を型面に 成膜する場合には、これらの金属系高硬度材料が流動性榭脂に対して十分な非濡 れ性を有して 、な 、ので、金属系高硬度材料と型面との間の離型性が不十分になる 。特にチップを榭脂封止する場合には、信頼性の見地から、成形体を離型する際に できるだけ外力が成形体に加わらないことが要求されるので、前述の離型性が不十 分であることは大きな問題になる。
[0015] 第 5に、 Y Oよりも強い塩基性を有する塩基性酸化物の単体は、空気中に放置さ
2 3
れると空気中の水と二酸ィヒ炭素とを吸収しやすいので、水酸化物と炭酸塩とを生成 する。これにより、このような塩基性酸ィ匕物の単体力もなる焼結体は、空気中に放置さ れると崩壊や潮解に至る。このために、このような塩基性酸ィ匕物の単体は、空気中に おける化学的な安定性が低いといえる。したがって、このような塩基性酸化物の単体 は、空気中における保形性 (一定の形状を維持する特性)が低いので、榭脂成形型 の材料としては不適当である。
[0016] 本発明の目的は、塩基性を有する物質に対して Y Oよりも低い密着性を有すると
2 3
ともに優れた保形性を有する低密着性材料を提供すること、優れた離型性と保形性 とを有する榭脂成形型を提供すること、および有機物からなる汚れの付着を防止する
機能を有する防汚性材料を提供することである。
課題を解決するための手段
[0017] 本発明の低密着性材料は、塩基性を有する物質に対する低!ヽ密着性を有する低 密着性材料である。その低密着性材料は、 Y Oカゝらなる第 1の材料と第 2の材料と
2 3
力 少なくとも生成され、第 1の材料と第 2の材料との全体に対する第 2の材料の比率 が所定の値である場合には保形性、すなわち一定の形状を維持する特性を有する。 また、第 2の材料は酸ィ匕物力もなる。その酸ィ匕物は、 Y3+よりも大きなイオン半径を有 する物質を含むという条件、および、第 1の材料よりも強い塩基性を有するという条件 のうち少なくともいずれか一方を満たす。
[0018] また、本発明の低密着性材料は、第 2の材料が La Oからなり、第 1の材料と第 2の
2 3
材料とから生成された固溶体を少なくとも含んで 、ることが望まし 、。
[0019] また、本発明の低密着性材料は、第 2の材料が La Oからなり、第 1の材料と第 2の
2 3
材料とから少なくとも生成された複合酸ィ匕物を含んでいてもよい。
[0020] また、本発明の低密着性材料は、第 2の材料が La Oからなり、 Y Oと La Oとか
2 3 2 3 2 3 ら生成された固溶体と、 Y Oと La Oとから生成された複合酸化物とを少なくとも含
2 3 2 3
む混合物であってもよい。
[0021] また、本発明の低密着性材料は、第 2の材料が SrOからなり、第 1の材料と第 2の材 料とから生成された固溶体を含んで 、てもよ 、。
[0022] また、本発明の低密着性材料は、第 2の材料が SrOからなり、第 1の材料と第 2の材 料とから生成された複合酸化物を含んで 、てもよ 、。
[0023] また、本発明の低密着性材料は、第 2の材料が SrOからなり、 Y Oと SrOとから生
2 3
成された固溶体と、 Y Oと SrOとから生成された複合酸化物とを含む混合物であつ
2 3
てもよい。
[0024] また、本発明の他の局面の低密着性材料は、塩基性を有する物質に対する低!ヽ密 着性を有する低密着性材料である。その低密着性材料は、 Y O
2 3からなる第 1の材料 と該第 1の材料以外の複数の材料とから少なくとも生成される。その低密着性材料は 、第 1の材料と複数の材料との全体に対する複数の材料の各々の比率が所定の値 である場合には、保形性、すなわち一定の形状を維持する特性を有する。複数の材
料の各々は酸ィ匕物からなる。酸化物の各々は、 Y3+よりも大きなイオン半径を有する 物質を含むという条件、および、第 1の材料よりも強い塩基性を有するという条件のう ち少なくとも 1つを満たす。
[0025] また、本発明の榭脂成形型は、キヤビティが設けられ、キヤビティに充填されており 塩基性を有する流動性榭脂を硬化させて硬化榭脂を形成する場合において使用さ れるとともに、流動性榭脂が接触する面力もなる型面と硬化樹脂との間における低い 密着性を有する榭脂成形型である。また、型面の少なくとも一部が低密着性材料カゝら 構成されている。その低密着性材料は、 Υ Οカゝらなる第 1の材料と第 2の材料とから
2 3
少なくとも構成されている。また、低密着性材料は、第 1の材料と第 2の材料との全体 に対する第 2の材料の比率が所定の値である場合には保形性、すなわち一定の形 状を維持する特性を有する。第 2の材料は酸ィ匕物からなる。その酸ィ匕物は、 Υ3+より も大きなイオン半径を有する物質を含むという条件、および、第 1の材料よりも強い塩 基性を有するという条件のうち少なくとも一方を満たす。
[0026] また、本発明に係る榭脂成形型は、キヤビティが設けられ、キヤビティに充填されて おり塩基性を有する流動性榭脂を硬化させて硬化榭脂を形成する場合において使 用されるとともに、流動性榭脂が接触する面力もなる型面と硬化樹脂との間における 低 ヽ密着性を有する榭脂成形型である。
[0027] また、型面の少なくとも一部を含む部分が低密着性材料から構成されている。また 、低密着性材料は、 Υ Ο
2 3カゝらなる第 1の材料と該第 1の材料以外の複数の材料とか ら少なくとも構成されている。その低密着性材料は、第 1の材料と複数の材料との全 体に対する複数の材料の各々の比率が所定の値である場合には保形性を有する。 複数の材料の各々は酸ィ匕物力もなる。酸化物の各々は、 Υ3+よりも大きなイオン半径 を有する物質を含むという条件、および、第 1の材料よりも強い塩基性を有するという 条件のうち少なくとも一方を満たす。 発明の効果
[0028] 本発明によれば、次の 3つの効果が得られる。第 1に、低密着性材料が Υ Οよりも
2 3 強い塩基性を有する酸ィ匕物を原材料に含むことが可能になる。そして、低密着性材 料の原材料にこのような酸ィ匕物が含まれて ヽる場合には、低密着性材料と塩基性を
有する物質との間の結合力が Y ο単体の場合よりも弱いことになる。したがって、塩
2 3
基性を有する物質に対する密着性が Υ ο単体のそれよりも低い低密着性材料が得
2 3
られる。
[0029] 第 2に、低密着性材料が、 Υ3+よりも大きなイオン半径を有する物質を含む酸ィ匕物 を原材料に含むことが可能になる。そして、このような酸化物を原材料に含む場合に は、物質に対する密着性が Υ Ο単体のそれよりも低い低密着性材料が得られる。そ
2 3
の理由は次の通りであると考えられる。
[0030] 本発明にお 、ては、 Υ Οと、 Υ3+よりも大きなイオン半径を有する物質を含む酸ィ匕
2 3
物とから、低密着性材料が生成される。これにより、低密着性材料の表面においては 、 Υ ο単体の表面におけるよりも、単位面積当たりの露出するイオン数が減少する
2 3
ので、単位面積当たりのサイト数が減少する。そして、これらのサイトは、物質の分子 と低密着性材料の分子との化学結合に寄与するものである。したがって、物質に対 する密着性が Υ ο単体のそれよりも低い低密着性材料が得られると考えられる。
2 3
[0031] 第 3に、 Υ Οと第 2の材料との全体に対して、 Υ Οよりも強い塩基性を有する酸ィ匕
2 3 2 3
物からなる第 2の材料が所定の比率を有する。あるいは、 Υ Οとその Υ Ο以外の複
2 3 2 3 数の材料との全体に対して、 Υ οよりも強い塩基性を各々有する酸化物からなる複
2 3
数の材料が、各々所定の比率を有する。そして、それらの所定の比率の下において はその低密着性材料が保形性を有する。
[0032] これにより、 Υ Οよりも強い塩基性を有する酸ィ匕物を含んでいる場合、すなわち Υ
2 3 2
Οよりも空気中における安定性が低い酸ィ匕物を含んでいる場合においても、保形性
3
を有する低密着性材料が得られる。また、その酸ィ匕物の単体又はそれらの酸ィ匕物の 単体の各々よりも保形性が大きい低密着性材料が得られる。なお、本出願書類の全 体にぉ 、て、「複数の材料」とは「複数の種類の材料」を意味する。
[0033] また、本発明によれば、低密着性材料は固溶体と複合酸化物とのうちのいずれか を少なくとも含む。それらの固溶体と複合酸化物とは、 Υ Οと La Οとから、又は、 Y
2 3 2 3 2
Oと SrOと力ら、それぞれ生成される。そして、 La Oと SrOとは、いずれも Y Oより
3 2 3 2 3 も強!ヽ塩基性を有する酸化物である。
[0034] したがって、塩基性を有する物質に対する密着性につ!、て、 Y O単体よりも低 、
密着性をそれぞれ有する固溶体と複合酸化物とのいずれかを少なくとも含む低密着 性材料が得られる。更に、 Laと Srとは、いずれも Y3+よりも大きなイオン半径を有する 物質である。したがって、それぞれの物質に対する密着性が Υ Ο単体のそれよりも
2 3
低い固溶体と複合酸化物とのいずれかを少なくとも含む低密着性材料が得られる。
[0035] カロえて、それらの固溶体と複合酸ィ匕物とにおいては、物質の比率に関して次の 2つ のことがいえる。第 1に、 Υ Οと La Οとの全体に対して、 La Oが所定の比率を有
2 3 2 3 2 3
することである。第 2に、 Y Oと SrOとの全体に対して、 SrOが所定の比率を有するこ
2 3
とである。
[0036] これらのことにより、それらの固溶体と複合酸化物とは、 Y Oよりも強い塩基性を有
2 3
する酸化物、すなわち Y Oよりも保形性が劣悪である酸ィ匕物(La O又は SrO)の単
2 3 2 3
体に比較して、保形性が良好である。したがって、 Y oよりも空気中における安定性
2 3
が悪 、酸ィ匕物を含んで 、る場合にぉ 、ても、良好な保形性を有する低密着性材料 が得られる。
[0037] また、本発明によれば、低密着性材料は混合物からなる。そして、そのような混合物 は具体的には 2種類ある。 1つの混合物は、 Y Oと La Oとからそれぞれ生成された
2 3 2 3
固溶体と複合酸化物とを少なくとも含む混合物である。もう 1つの混合物は、 Y Oと S
2 3 rOとからそれぞれ生成された固溶体と複合酸ィ匕物とを少なくとも含む混合物である。
[0038] 上述したように、それらの固溶体と複合酸化物とは、物質 (特に塩基性を有する物 質)に対する密着性が Y O単体のそれよりも低いとともに、 Y Oよりも保形性が悪い
2 3 2 3
酸化物 (La O又は SrO)の単体よりも、保形性が良好である。したがって、それらの
2 3
固溶体と複合酸化物との混合物からなるとともに、 Y oよりも空気中における安定性
2 3
が悪 、酸ィ匕物を含んで 、る場合にぉ 、ても、良好な保形性を有する低密着性材料 が得られる。
[0039] また、本発明によれば、榭脂成形型にお!ヽて、塩基性を有する流動性榭脂が接触 する型面の少なくとも一部が、低密着性材料から構成される。その低密着性材料は、 Y O力もなる第 1の材料と第 2の材料とから、又は、 Y Oとその Y O以外の複数の
2 3 2 3 2 3
材料とから、少なくとも構成される。第 2の材料と、 Y O以外の複数の材料とは、各々
2 3
酸化物からなる。それらの酸ィ匕物は、 Y3+よりも大きなイオン半径を有する物質を含
むという条件、および、 Y oよりも強い塩基性を有するという条件のうち少なくとも
2 3 一 方を満たす。
[0040] これにより、低密着性材料は、硬化榭脂 (特に塩基性を有する硬化榭脂)に対する 密着性が Y O単体のそれよりも低い。したがって、この低密着性材料が高離型性材
2 3
料として機能することにより、型面における密着性、特に塩基性を有する硬化樹脂に 対する密着性が Y o単体のそれよりも低い密着性、言い換えれば高い離型性を有
2 3
する榭脂成形型が得られる。
[0041] カロえて、低密着性材料にお!、ては、 Y Oと第 2の材料との全体に対して、 Y Oより
2 3 2 3 も強 、塩基性を有する酸化物からなる第 2の材料が所定の比率を有する。ある ヽは、 Y Oとその Y O以外の複数の材料との全体に対して、 Y Oよりも強い塩基性を各
2 3 2 3 2 3
々有する酸化物からなる複数の材料が各々所定の比率を有する。そして、それらの 所定の比率の下において低密着性材料は保形性を有する。
[0042] これにより、 Y Oよりも強い塩基性を有する酸ィ匕物を含んでいる場合、すなわち Y
2 3 2
Oよりも空気中における安定性が悪い酸ィ匕物を含んでいる場合においても、良好な
3
保形性を有する低密着性材料が得られる。したがって、榭脂成形型において、良好 な保形性を有する低密着性材料によって型面の少なくとも一部が構成される。
[0043] 本発明の低密着性材料は、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有する防 汚性材料としても用いられ得るものである。
[0044] この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連し て理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
図面の簡単な説明
[0045] [図 1]本発明の実施例 1に係る低密着性材料の製造方法を示す流れ図である。
[図 2]本発明の実施例 1に係る低密着性材料の原材料における Y Oと La Oとの全
2 3 2 3 体に対する La Oの添加量と、 Y O及び La Oから生成された生成物と塩基性を有
2 3 2 3 2 3
する物質であるエポキシ榭脂との間における密着力との関係を示す関係図である。
[図 3]本発明の実施例 2に係る低密着性材料の原材料における Y Oと SrOとの全体
2 3
に対する SrOの添加量と、 Y O及び SrOから生成された生成物と塩基性を有する物
2 3
質であるエポキシ榭脂との間における密着力との関係を示す関係図である。
[図 4]本発明の実施例 3に係る榭脂成形型を示す断面図である。
[図 5]図 4に示される榭脂成形型の変形例を示す断面図である。
符号の説明
[0046] 1, 10 上型 (樹脂成形型)、 2 下型、 3 高離型性材料 (低密着性材料)、 4 樹脂 流路、 5 キヤビティ、 6 型面、 7 基板、 8 チップ、 9 ワイヤ、 11 成形型本体、 12 離型層。
発明を実施するための最良の形態
[0047] 本発明に係る榭脂成形型 1, 10は、塩基性を有する流動性榭脂を硬化させて塩基 性を有する硬化榭脂を形成する場合において使用され、流動性榭脂が接触する面 力もなる型面 6と硬化樹脂との間における低い密着性を有する。この榭脂成形型 1, 1
0は、型面 6が低密着性材料 3から構成されている。
[0048] そして、低密着性材料 3は、 Y Oと他の酸ィ匕物とから生成された固溶体である。そ
2 3
の酸ィ匕物は La Oであって、 Y3+よりも大きなイオン半径を有する物質である Laを含
2 3
むとともに、 Y Oよりも強い塩基性を有している。その低密
2 3 着性材料 3においては、 Y
Oと La Oとの全体に対して La Oが所定の比率を有し、低密着性材料 3はこの比
2 3 2 3 2 3
率の下で保形性を有して!/ヽる。
実施例 1
[0049] 本発明に係る低密着性材料は、塩基性を有する物質 (例えば、エポキシ榭脂等)に 対する低!ヽ密着性を有する低密着性材料であって、次の 2つの特徴を有する。
[0050] 第 1の特徴は以下の通りである。第 1の特徴は、 Y O力もなる第 1の材料と該第 1の
2 3
材料以外の他の材料 (単一の又は複数の種類の材料)とカゝら少なくとも生成されるこ とである。また、第 1の特徴は、他の材料が酸化物からなり、その酸化物又はそれらの 酸化物は、 Y3+よりも大きなイオン半径を有する物質を含むという条件、および、 Υ
2 ο
3よりも強い塩基性を有するという条件のうち少なくとも一方を満たすことである。
[0051] 第 2の特徴は、 Υ Οと他の材料との全体に対して他の材料が所定の比率を有し、
2 3
その所定の比率の下において低密着性材料が保形性を有することである。なお、他 の材料が複数の種類からなる場合には、それらの材料が各々所定の比率を有する。
[0052] 本発明に係る低密着性材料の実施例 1を、図 1と図 2とを参照して説明する。図 1は
、本実施例に係る低密着性材料の製造方法を示す流れ図である。図 2は、本実施例 に係る低密着性材料の原材料における Y Oと La Oとの全体に対する La Oの添
2 3 2 3 2 3 加量と、 Y O及び La O力 生成された生成物と塩基性を有する物質であるェポキ
2 3 2 3
シ榭脂との間における密着力との関係を示す関係図である。
[0053] なお、ここでいう La Oの「添カ卩量」とは、図 2のデータを得る際に使用された試料の
2 3
原材料における添加量を意味しており、それらの試料自体における La Oの比率、
2 3 すなわち試料を実際に分析して得られた比率を意味するものではない。
[0054] また、「Y Οと La Oとの全体に対する La Oの〜量」は、 Y Oと La Oとの量の
2 3 2 3 2 3 2 3 2 3 合計を 100mol%とした場合における、 La Oの量 (mol%)を意味する。用語「添カロ
2 3
量」及び「全体に対する」の意味は、以下の説明においても同様である。
[0055] 本実施例においては、実験と分析とに基づいて、低密着性材料として、第 1の材料
Y Oと第 2の材料 La Oと力ら生成された La O— Y O擬 2元系材料を採用した。
2 3 2 3 2 3 2 3
具体的には、 La O — Y O擬 2元系材料のうち、固溶体 La— Y Oと、固溶体 La—
2 3 2 3 2 3
Y Oと複合酸化物 LaYOとからなる混合物と、複合酸化物 LaYOとを、採用した。
2 3 3 3
そして、これらの低密着性材料に含まれる物質及び原材料として、次の物質及び原 材料を採用した。
[0056] まず、第 1の材料 Y Oに含まれる Yのイオンである Y3+よりも大きなイオン半径を有
2 3
する物質として、 Laを採用した。ここで、 Y3+のイオン半径は 1. 02Α (102pm)であり 、 La3+のイオン半径は 1. 16A (116pm)である(lpm= 10— 12m)。また、 Y3+より も大きなイオン半径を有する物質 (La)を含むことと、 Y Oよりも強い塩基性を有する
2 3
こととのいずれの条件をも満たす酸ィ匕物力もなる第 2の材料として、 La Oを採用した
2 3
[0057] ここで、酸化物表面の酸 ·塩基性を示す指標の一つとして、等電点(Isoelectric Poi nt of Surface: IEPS)を用いる。 IEPSが 7より大きいと塩基性であり、 7より小さいと 酸性である。 IEPSの値は、酸ィ匕物を構成するカチオン(陽イオン)の電荷とそのィォ ン半径との比で整理できる(参考文献: George A Parks, "The Isoelectric Points of Solid Oxides, Solid Hydroxides, and Aqueous Hydroxo complex systems ", 65, 177-198 (1965))。
[0058] そして、 IEPSは、次の式で表される。
IEPS=A-B[ (Z/R) +0.029C + a] · · '式 1
Z:カチオンの価数
R=r+ + 2r0 式 2
r+ :カチオン半径(A)
rO:酸素イオン半径 (A)
A, B :定数
C: M— OH結合の結晶場安定ィ匕エネルギーに関する補正係数
a:水和物の配位数に関する係数 (M— OH基の酸素イオンとプロトン間のクーロ ン引力エネルギーに関連したもの)
上記式 1,式 2に従い算出した IEPSは、 Y O = 9. 5、 La O = 9. 8であり、 La O
2 3 2 3 2 3 は Y oに比べていっそう強い塩基性を有するといえる。
2 3
[0059] 本実施例に係る低密着性材料の製造方法、例えば粉末混合法を、図 1を参照して 説明する。
[0060] まず、工程 S1で、第 1の材料である Y Oの粉末を、必要な量だけ準備する。次に、
2 3
工程 S 2で第 2の材料である La Oの粉末を所定の量だけ添加し、更に工程 S3で溶
2 3
媒を添加する。次に、工程 S4でボールミル混合を行う。次に、工程 S5で、ボールミル 混合された混合材料を乾燥させてふるいにかける。次に、工程 S6で、所定の形状を 形成するための金型を使用して、所定の圧力で混合材料を成形する。
[0061] 次に、工程 S7で、成形された成形体を所定の温度によって所定の時間だけホット プレス(Hot Press)により加圧焼成する。この場合における処理条件は、例えば、温 度が 1350°Cで時間が 1時間、プレス圧力力 0MPaである。次に、工程 S8で、加圧 焼成された焼結体について、所定の温度によって所定の時間だけ熱処理し、固溶体 化反応あるいは複合酸化物化反応を促進させる。この場合における処理条件は、例 えば、温度が 1550°Cで時間が 5時間である。
[0062] ここまでの工程 S1〜S8によって、 La O—Y O擬 2元系材料の焼結体からなり所
2 3 2 3
定の形状を有する低密着性材料が得られる。なお、製造方法としては共沈法を使用 することちでさる。
[0063] 図 2は、原材料における Y Οと La Oとの全体に対する La Oの添カ卩量と、 Y O
2 3 2 3 2 3 2 3 及び La Oから生成された生成物 (La O— Y O擬 2元系材料)と塩基性を有する
2 3 2 3 2 3
物質であるエポキシ榭脂との間における密着力との関係を示している。なお、以下の 説明では、低密着性材料の用途として、榭脂成形型に使用される場合を想定する。
[0064] 本実施例では、原材料における Y Oと La Oとの全体に対する La Oの添加量は
2 3 2 3 2 3
、 5mol%、 10mol%、 30mol%、及び、 50mol%という 4種類である。この 4種類の 添加量のそれぞれの La O— Y O擬 2元系材料力もなる試料を作製した。それらの
2 3 2 3
試料を作製する際には、上述の製造方法を使用した。
[0065] そして、各試料と、 La Oの添カ卩量が Omol%であるような材料 (Y O単体)とを使
2 3 2 3
用して実験を行い、得られたデータに基づいて密着力を算出した。その結果、図 2に 示されているように、 La Oの添加量が増すに従って密着力が低下するという結果が
2 3
得られた。また、図 2に示された密着力の値のすべてが榭脂成形型用の低密着性材 料として使用できる範囲内にあることがわ力つた。更に、それらの各試料は、いずれも 榭脂成形型として使用することができる程度の良好な保形性を有していた。
[0066] また、第 1の材料 Y Oと第 2の材料 La Oとから作製された試料である La O— Y
2 3 2 3 2 3 2
O擬 2元系材料を分析したところ、次の結果が得られた。 La Oの添加量が 5mol%
3 2 3
及び 10mol%である試料は、 Y O solid solution (Y O固溶体)、すなわち固溶体 L
2 3 2 3
a-Y Oであった。
2 3
[0067] そして、 La Oの添カ卩量が 30mol%である試料は、固溶体 La— Y Oと複合酸ィ匕
2 3 2 3
物 LaYOとからなる混合物であった。そして、 La Oの添カ卩量が 50mol%である試
3 2 3
料は、複合酸化物 LaYOであった。これら〖こより、固溶体 La— Y Oと、固溶体 La—
3 2 3
Y Oと複合酸化物 LaYOとからなる混合物と、複合酸化物 LaYOとは、いずれも、
2 3 3 3
榭脂成形型用の低密着性材料として使用できる範囲内の低い密着力を有するととも に、榭脂成形型として使用できる程度の保形性を有するといえる。
[0068] したがって、固溶体 La— Y Oと、固溶体 La— Y Oと複合酸化物 LaYOとからな
2 3 2 3 3 る混合物と、複合酸化物 LaYOとは、いずれも本発明に係る低密着性材料に相当
3
する。
[0069] ところで、図 2に示された密着力は、次のようにして測定された。まず、塩基性を有
する物質として、熱硬化性榭脂であるエポキシ榭脂を準備する。次に、そのエポキシ 榭脂と La O -Y O擬 2元系材料とを接触させ、 175°Cの雰囲気でエポキシ榭脂を
2 3 2 3
硬化させて硬化榭脂を形成する。これにより、エポキシ榭脂からなる硬化榭脂とその 擬 2元系材料とが接着する。
[0070] 次に、 175°Cの雰囲気において、接着界面に対する垂直方向に沿って硬化樹脂と その擬 2元系材料とを引っ張り、これらが剥離した時点における荷重を測定する。次 に、接着界面の面積によってその荷重を除する。これにより、その擬 2元系材料と硬 化榭脂との間の密着力を算出する。この密着力が、その擬 2元系材料力もなる榭脂 成形型カゝら硬化樹脂が離型する際に必要な単位面積当たりの力(離型力)に相当す る。
[0071] 本実施例によれば、榭脂成形型として使用できる範囲内の低い密着力と、榭脂成 形型として使用できる程度の良好な保形性とをそれぞれ有する低密着性材料が得ら れる。低い密着力を有する低密着性材料が得られることについては、イオン半径と塩 基性とに関する次の 2つの理由に起因するものと考えられる。
[0072] 第 1の理由は、「La O— Y O擬 2元系材料が、 Y3+よりも大きなイオン半径を有す
2 3 2 3
る物質である Laを含むこと」に起因していると考えられる。すなわち、 Y Oに Y3+より
2 3 も大きなイオン半径を有する La3+を含ませることにより、擬 2元系材料の表面におい て露出する単位面積当たりのカチオン数力 Y O単体の表面におけるよりも減少す
2 3
る。
[0073] その結果として、擬 2元系材料の表面にぉ 、ては、物質 (本実施例ではエポキシ榭 脂)の分子と表面カチオンとが酸素を媒介として行う化学結合に寄与するサイトの数 力 Y O単体の場合よりも減少する。したがって、物質に対する密着性が Y O単体
2 3 2 3 のそれよりも低い低密着性材料 (La O -Y O擬 2元系材料)が得られると考えられ
2 3 2 3
る。
[0074] 第 2の理由は、「La O— Y O擬 2元系材料力 Y Oよりも強い塩基性を有する酸
2 3 2 3 2 3
化物である La Oを含むこと」に起因していると考えられる。これにより、 Y O単体より
2 3 2 3 も強 、塩基性を有する擬 2元系材料が得られ、 、つそうエポキシ榭脂の塩基性に近 づいた力 であると考えられる。
[0075] したがって、その擬 2元系材料と塩基性を有する物質との間の結合力が Y Ο単体
2 3 の場合よりも弱いことになるので、 Υ Ο単体よりも優れた低密着性材料 (La O— Y
2 3 2 3 2
O擬 2元系材料)が得られると考えられる。
3
[0076] ところで、必要とされる密着力の範囲は、低密着性材料の用途によって様々である 。低密着性材料が榭脂成形型に使用される場合には、 La Oの添加量が Omol%で
2 3
あるような材料、すなわち Y o単体であっても、実用上の観点力もその低密着性材
2 3
料を使用することができる。言い換えれば、図 2における La Oの添カ卩量が Omol%
2 3
であるような 2. 57kgf/cm2 (25. 2N/cm2)程度の密着力を有する材料は、榭脂 成形型用の低密着性材料として使用可能である。
[0077] 一方、用途によっては、実用上の観点から、いっそう優れた離型性を有する材料、 すなわちいっそう小さい密着力を有する材料が求められている。ここで、図 2から明ら かなように、低密着性材料である La O -Y O擬 2元系材料と塩基性を有する物質
2 3 2 3
との間の密着力をいつそう小さくするためには、原材料における La Oの添加量を増
2 3
せばよい
[0078] し力し、第 1の材料 Y Oと第 2の材料 La Oと力ら生成される La O— Y O擬 2元
2 3 2 3 2 3 2 3 系材料において、原材料における La Oの添力卩量を更に増していくと、空気中にお
2 3
ける安定性が低くなるという問題が生じる。このことは、 La O
2 3が空気中の水蒸気、二 酸化炭素を吸収しやす 、と 、う性質を有する、言 、換えれば空気中における安定性 が低いという性質を有することに起因する(この性質については、例えば、理化学事 典 第 4版、岩波書店、 1987年、 p. 503を参照)。そして、 La O— Y O擬 2元系材
2 3 2 3 料の形状を維持できな 、、すなわち榭脂成形型の形状を維持できな 、と 、う問題が 生ずる。
[0079] したがって、保形性という観点から、 La O -Y O擬 2元系材料の原材料における
2 3 2 3
La Oの添カ卩量の上限を定める必要がある。そして、その結果として、生成された La
2 3 2
O — Y O擬 2元系材料における La Oの比率の上限を定める必要がある。なお、こ
3 2 3 2 3
こでいう La Oの比率は、生成された擬 2元系材料における第 1の材料 Y Oと第 2の
2 3 2 3 材料 La Oとの全体に対する第 2の材料 La Oの比率を意味しており、言い換えれ
2 3 2 3
ば擬 2元系材料を実際に分析して得られた比率を意味する。この「比率」の意味は、
以下の説明にお ヽても同様である。
[0080] そこで、 La O—Y O擬 2元系材料における第 1の材料 Y Oと第 2の材料 La Oと
2 3 2 3 2 3 2 3 の全体に対する第 2の材料 La Oの比率の範囲を、次の手順で定める。まず、 Y O
2 3 2 3 と La Oとの混合材料を熱処理して得られる物質を、想定する。次に、状態図に基づ
2 3
いて、想定された物質が予め定められた物質として存在することが可能である、 La O
2 の比率の範囲を見出す。
3
[0081] :でいう「予め定められた物質」とは、固溶体 La— Y Oと、固溶体 La— Y Oと複 合酸化物 LaYOとからなる混合物と、複合酸化物 LaYOとのうちのいずれかである
3 3
。次に、見出された比率の範囲を、 La Oの比率の範囲として採用する。
2 3
[0082] ここで使用する状態図は、 "Phase Diagram of the System La O - Y O at High
2 3 2 3
Temperatures"(Masao MIZUNO.et al.'Yogyo— Kyokaト Shi,84 [7] 347 (1976》と いう文献に記載されている。この状態図によれば、 La O—Y O 2
2 3 2 3擬 元系材料が、 固溶体 La— Y Oと、固溶体 La— Y Oと複合酸化物 LaYOとからなる混合物と、複
2 3 2 3 3 合酸化物 LaYOとのいずれかとして存在することが可能である La Oの比率の範囲
3 2 3
は、その下限が Omol%を超えておりかつその上限が 75mol%付近である。
[0083] このことにより、 La O -Y O擬 2元系材料において、 La Oの比率の範囲が 0%
2 3 2 3 2 3
を超えかつ約 75mol%以下という場合に、本実施例に係る低密着性材料が得られる ことがわかる。なお、 La Oの比率がほぼ 75mol%を超えると、 La O—Y O擬 2元
2 3 2 3 2 3 系材料力 SLa O solid solution (La O固溶体)になる。この場合においては、空気中
2 3 2 3
における化学的安定性が低いという性質を有する La Oを主格子とする La O固溶
2 3 2 3 体が含まれる。したがって、空気中における La 03-Y O擬 2元系材料の安定性が
2 3
低くなると考えられる。
[0084] ところで、 La Oの比率と、生成された La O— Y O擬 2元系材料の種類との関係
2 3 2 3 2 3
について、上述した状態図に示された熱処理温度が 1860°Cの場合を例にとって説 明する。状態図によれば、 La Oの比率が Omol%を超え 20mol%付近までは、固
2 3
溶体 La— Y Oが生成される。同様に、 20mol%付近力 40mol%付近までは、固
2 3
溶体 La— Y Oと複合酸化物 LaYOとからなる混合物が生成される。同様に、 40m
2 3 3
ol%付近から 75mol%付近までは、複合酸化物 LaYOが生成される。
[0085] また、熱処理されて生成された La O -Y O擬 2元系材料のうちで、固溶体 La—
2 3 2 3
Y Oと、固溶体 La— Y Oと複合酸化物 LaYOとからなる混合物と、複合酸化物 La
2 3 2 3 3
YOとは、榭脂成形型として使用される際に加熱される温度(180°C程度)において
3
も、あるいは室温においても、安定して存在する。
[0086] したがって、これらの La O— Y O擬 2元系材料は、上述した温度 (熱処理温度を
2 3 2 3
含む)において保形性を有する。以上説明したように、本実施例によれば、 La O—
2 3
Y O擬 2元系材料力 なり、室温から熱処理温度までの範囲において保形性を有す
2 3
る低密着性材料が得られる。
実施例 2
[0087] 本発明に係る低密着性材料の実施例 2を説明する。本実施例においては、実験と 分析とに基づいて、低密着性材料として、第 1の材料 Y Oと第 2の材料 SrOとから生
2 3
成された SrO— Y O擬 2元系材料を採用した。更に具体的にいうと、 SrO— Y O擬
2 3 2 3
2元系材料のうち、固溶体 Sr— Y Oと、固溶体 Sr— Y Oと複合酸化物 SrY Oとか
2 3 2 3 2 4 らなる混合物と、複合酸化物 SrY Oとを、採用した。そして、これらの低密着性材料
2 4
に含まれる物質及び原材料として、次の物質及び原材料を採用した。
[0088] まず、第 1の材料 Y Oに含まれる Yのイオンである Y3+よりも大きなイオン半径を有
2 3
する物質として、 Srを採用した。ここで、 Y3+のイオン半径は 1. 02Α (102pm)であり 、 Sr3+のイオン半径は 1. 18A (118pm)である。
[0089] また、 Y3+よりも大きなイオン半径を有する物質 (Sr)を含むことと、 Y Oよりも強 ヽ
2 3 塩基性を有することとの ヽずれの条件をも満たす酸化物からなる第 2の材料として、 S rOを採用した。塩基性については、既に説明した式 1,式 2に従って算出した IEPS は、 Y O = 9. 5、 SrO = 12. 8であり、 SrOは Y Oに比べていっそう強い塩基性を
2 3 2 3
有するといえる。
[0090] 本実施例においては、 Y Oに SrOを所定の量だけ添カ卩して、 Y Oと SrOとを含む
2 3 2 3
SrO— Y O擬 2元系材料を生成する。この擬 2元系材料の製造方法は、実施例 1の
2 3
それとほぼ同様なので、その説明は繰り返さない。
[0091] 本実施例に係る低密着性材料を、図 3を参照しながら説明する。図 3は、本実施例 に係る低密着性材料の原材料における Y Oと SrOとの全体に対する SrOの添加量
2 3
と、 Y O及び SrOから生成された生成物と塩基性を有する物質であるエポキシ榭脂
2 3
との間における密着力との関係を示す関係図である。
[0092] 図 3に示されているように、本実施例では、原材料における Y Oと SrOとの全体に
2 3
対する SrOの添カ卩量は、 10mol%及び 19mol%という 2種類である。その 2種類のそ れぞれの SrO— Y O擬 2元系材料力もなる試料を作製した。そして、各試料と、 SrO
2 3
の添力卩量カ S0mol%であるような材料 (Y O単体)とを使用して実験を行い、得られた
2 3
データに基づいて密着力を算出した。その結果、図 3に示されているように、 SrOの 添加量が増すに従って密着力が低下するという結果が得られた。
[0093] また、図 3に示された密着力の値について、それらのすべてが榭脂成形型用の低 密着性材料として使用できる範囲内にあることがわ力つた。更に、それらの各試料は 、 Vヽずれも榭脂成形型として使用することができる程度の良好な保形性を有して!/、た 。なお、図 3に示された密着力は実施例 1の場合と同様の実験を行って算出された。
[0094] また、第 1の材料 Y Oと第 2の材料 SrOとからそれぞれ作製された試料、すなわち
2 3
SrO— Y O擬 2元系材料を分析したところ、次の結果が得られた。 SrOの添カ卩量が
2 3
10mol%及び 19mol%である試料は、いずれも固溶体 Sr—Y Oと複合酸化物 SrY
2 3
Oとからなる混合物であった。
2 4
[0095] このことにより、固溶体 Sr—Y Oと複合酸化物 SrY Oとからなる混合物は、榭脂
2 3 2 4
成形型用の低密着性材料として使用できる範囲内の低い密着力を有するとともに、 榭脂成形型として使用できる程度の良好な保形性を有するといえる。したがって、固 溶体 Sr—Y Oと複合酸化物 SrY Oとからなる混合物は、本発明に係る低密着性
2 3 2 4
材料に相当する。なお、この混合物を構成する固溶体 Sr—Y Oと複合酸化物 SrY
2 3 2
Oとは、いずれも Y Oと SrOとから生成された SrO— Y O擬 2元系材料である。
4 2 3 2 3
[0096] ところで、実施例 1にお!/、て説明したように、 SrOの添カ卩量が Omol%であるような材 料、すなわち Y O単体を、実用上の観点から低密着性材料として榭脂成形型に使
2 3
用することができる。そして、実施例 1の場合と同様に、本実施例においても、いっそ う小さい密着力を有する SrO— Y O擬 2元系材料を得るためには、原材料における
2 3
SrOの添力卩量を増せばよ!、。
[0097] しかし、第 1の材料 Y Oと第 2の材料 SrOとから作製された SrO— Y O擬 2元系材
料において、原材料における SrOの添加量を更に増していくと、空気中における安 定性が低くなるという実施例 1の場合と同様の問題が生じる。このことは、 SrOが空気 中の二酸化炭素と結合して炭酸塩 (SrCO )になるという性質を有することに起因し
3
ている。
[0098] また、このことは、 SrOが水と激しく反応して水酸ィ匕物になるという性質を有すること にも起因している(この性質については、例えば、理化学事典 第 4版、岩波書店、 1 987年、 p. 496を参照)。その結果として、低密着性材料の形状を維持できない、す なわち榭脂成形型の形状を維持できな 、と 、う問題が生ずる。
[0099] したがって、保形性という観点から、 SrO— Y O擬 2元系材料の原材料における Sr
2 3
Oの添カ卩量の上限を定める必要がある。そして、その結果として、生成された SrO—
Y O擬 2元系材料における SrOの比率の上限を定める必要がある。
2 3
[0100] そこで、実施例 1の場合と同様にして、 SrO— Y O擬 2元系材料における Y Oと S
2 3 2 3 rOとの全体に対する SrOの比率の上限を、状態図に基づいて定める。本実施例で 使用する状態図は、 Phase diagrams of yttrium sesquioxide— strontium oxide an d ytteroium sesquioxide— strontium oxide systems "(S. . fresvyatskn.et al.Jzv.A kad.Nauk SSSR,Neorg.Mater.,7[10] 1808-1811 (1971))という文献に、また、同文 献についての Translation"Inorg.Mater.(Engl.Transl.),7[10] 1614- 1617(1971),,に、 それぞれ記載されている。
[0101] 既に説明したように、図 3において原材料における SrOの添カ卩量が 10mol%、 19 mol%であった試料は、生成された SrO— Y O擬 2元系材料であって、固溶体 Sr—
2 3
Y Oと複合酸化物 SrY Oとからなる混合物であった。また、これらの混合物は、こ
2 3 2 4
の状態図においては「C-Y O ss + SrY O J (Y O固溶体 +SrY Oを表す)と記
2 3 2 4 2 3 2 4
載された領域に相当し、既に説明したように本発明に係る低密着性材料に相当する [0102] また、この状態図に基づいて、 SrO— Y O擬 2元系材料の原材料において図 3に
2 3
示された状態カゝら SrOの添加量が更に増やされた場合を考える。この場合には、状 態図から、 SrOの添カ卩量がある程度の値になれば、生成された SrO— Y O擬 2元系
2 3 材料が複合酸化物 SrY Oになることがわかる。そして、状態図から、その複合酸ィ匕
物 SrY Oにおける SrOの比率は 50mol%であるといえる。
2 4
[0103] ここで、空気中における化学的安定性に劣る SrOと化学的安定性に優れる Y Oと
2 3 からなる複合酸化物 SrY Oは、 SrO単体に比べると性質や結晶構造が全く異なつ
2 4
ており、空気中においては化学的に安定である。
[0104] また、状態図によれば、試料中に含まれる複合酸化物 SrY Oの比率は、 SrOの添
2 4
加量の増加に伴い増大するといえる。更に、図 3より、 SrOの添力卩量を増加させると 密着性が向上することから、複合酸化物 SrY O単体は、 Y O単体よりも密着性に
2 4 2 3
優れるものと推察される。以上のことから、複合酸化物 SrY O単体は本発明に係る
2 4
低密着性材料に相当すると考えられる。
[0105] ところで、この状態図によれば、 SrOの添力卩量を更に増していくと、生成された SrO — Y O擬 2元系材料には SrOss (SrO固溶体)が含まれることがわかる。この場合に
2 3
は、空気中における化学的安定性が低いという性質を有する SrOが SrO— Y O擬 2
2 3 元系材料に含まれることになる。したがって、空気中における SrO— Y O擬 2元系材
2 3 料の化学的安定性が低くなると考えられる。
[0106] また、この状態図に基づいて、 SrO—Y O擬 2元系材料の原材料における SrOの
2 3
添加量が 10mol%の状態(図 3参照)から更に減らされた場合を考える。この場合に は、状態図から、 SrOの添カ卩量がある程度の値になれば、生成された SrO— Y O擬
2 3
2元系材料が、 Y O ss (Y O固溶体)、すなわち固溶体 Sr— Y Oになることがわか
2 3 2 3 2 3
る。状態図によれば、固溶体 Sr— Y Oは、熱処理温度が 1970°Cである場合に、 Sr
2 3
Oの比率が Omol%を超えかつ 1. 5mol%以下であるような SrO— Y O擬 2元系材
2 3
料として実現され得る。
[0107] 固溶体 Sr— Y Oが本発明に係る低密着性材料に求められる特性を満たすか否か
2 3
について、 SrO— Y O擬 2元系材料の状態図及び既述した実験の結果(図 3を含む
2 3
)等力 導き出される次の 3点に基づいて検討する。
[0108] 第 1の点は、状態図によれば、 SrOの比率は、 SrOの比率が Omol%である Y O単
2 3 体と、固溶体 Sr— Y Oと、固溶体 Sr— Y Oと複合酸化物 SrY Oとからなる混合物
2 3 2 3 2 4
との順に、高くなつていることである。
[0109] 第 2の点は、塩基性を有する物質に対する密着性は、 SrOの比率が Omol%である
Y O単体力 始まって SrOの比率が増すにつれて低下することである(図 3参照)。
2 3
[0110] 第 3の点は、 Y O単体と、固溶体 Sr— Y Oと複合酸ィ匕物 SrY204と力 なる混合
2 3 2 3
物とのいずれもが、密着性と保形性との観点から本発明に係る低密着性材料に求め られる特'性を備免ることである。
[0111] まず、特性のうち、塩基性を有する物質に対する密着性について検討する。この密 着性は、低いほど好ましい。 SrOの比率は、 Y O単体よりも固溶体 Sr—Y Oのほう
2 3 2 3 が高い (上述した第 1の点)。また、既述した実験の結果から、塩基性を有する物質に 対する密着性は、 SrOの比率が増すにつれて低下する(上述した第 2の点)。したが つて、固溶体 Sr—Y Oは Y O単体よりも低い密着性を有する。
2 3 2 3
[0112] 一方、固溶体 Sr—Y Oよりも高い密着性を有する Y O単体は、既述した実験の
2 3 2 3
結果から、低密着性材料に求められる低 、密着性を満たして ヽる(上述した第 3の点 )。これらにより、 Y O単体よりも低い密着性を有する固溶体 Sr—Y Oは、低密着性
2 3 2 3
材料に求められる密着性を有して 、ると 、える。
[0113] 次に、特性のうち保形性について検討する。この保形性は、良好であることが好まし い。 SrO— Y O擬 2元系材料においては、空気中における化学的安定性が低いと
2 3
いう性質を有する SrOの比率が増すほど、言い換えれば Y O単体、固溶体 Sr—Y
2 3 2
O、固溶体 Sr—Y Oと複合酸化物 SrY Oとからなる混合物の順に、保形性が劣
3 2 3 2 4
化すると考えられる。
[0114] また、固溶体 Sr—Y Oよりも保形性が低いと考えられる上述の混合物は、既述し
2 3
た実験の結果から、低密着性材料に求められる保形性を有している(上述した第 3の 点)。したがって、固溶体 Sr—Y Oは、低密着性材料に求められる高い保形性を有
2 3
するといえる。以上の検討により、固溶体 Sr—Y Oは、本発明に係る低密着性材料
2 3
に相当すると考えられる。
[0115] ところで、 SrOの比率と、生成された SrO— Y O擬 2元系材料の種類との関係につ
2 3
いて、上述した状態図に示された熱処理温度が 1970°Cの場合を例にとって説明す る。状態図によれば、 SrOの比率が Omol%を超え 1. 5mol%付近までは、固溶体 Sr -Y Oが生成される。同様に、 1. 5mol%付近から 50mol%付近までは、固溶体 Sr
2 3
— Y Oと複合酸化物 SrY Oとからなる混合物が生成される。同様に、 50mol%に
おいては、複合酸化物 SrY O単体が生成される。
2 4
[0116] また、熱処理によって生成された SrO— Y O擬 2元系材料のうちで、固溶体 Sr—
2 3
Y Oと、固溶体 Sr— Y Oと複合酸化物 SrY Oとからなる混合物と、複合酸化物 Sr
2 3 2 3 2 4
Y Oとは、榭脂成形型として使用される際に加熱される温度(180°C程度)において
2 4
も、あるいは室温においても、安定して存在する。
[0117] したがって、これらの SrO— Y O擬 2元系材料は、上述した温度 (熱処理温度を含
2 3
む)において良好な保形性を有する。以上説明したように、本実施例によれば、 SrO Y O擬 2元系材料力 なり、室温力 熱処理温度までの範囲において良好な保
2 3
形性を有する低密着性材料が得られる。
[0118] ところで、これらの SrO— Y O擬 2元系材料が低い密着力を有することについては
2 3
、実施例 1の場合と同様に、イオン半径と塩基性とに関する次の 2つの理由に起因し ていると考えられる。第 1の理由は、 SrO— Y O擬 2元系材料が、 Y3+よりも大きなィ
2 3
オン半径を有する物質である Srを含むことである。第 2の理由は、 Y Oよりも強い塩
2 3
基性を有する酸ィ匕物である SrOを含むことである。
[0119] なお、ここまで説明したように、実施例 2においては、本発明に係る低密着性材 料として次の 6つの材料を挙げた。それは、(1)固溶体 La—Y O、(2)固溶体 La—
2 3
Y Oと複合酸化物 LaYOとの混合物、(3)複合酸ィ匕物 LaYO、(4)固溶体 Sr— Y
2 3 3 3 2
O、(5)固溶体 Sr—Y Oと複合酸化物 SrY Oとの混合物、及び、(6)複合酸化物
3 2 3 2 4
SrY Oの 6つである。本発明に係る低密着性材料としては、上述した 6つの低密着
2 4
性材料のそれぞれに対して添加物として他の物質が添加されて 、てもよ 、。
[0120] また、本発明に係る低密着性材料としては、上述した 6つの低密着性材料のうち 2 つ以上が適当な組合せと適当な比率とでもって混合されることにより形成されていて もよい。この場合には、 Y Oと Laと Srとの 3つの系力もなる低密着性材料、すなわち
2 3
La O— SrO— Y O擬 3元系材料が形成されてもよい。更に、 Y Oと Laと Srとの 3
2 3 2 3 2 3
つの系に 1又は複数の別の物質が加えられた低密着性材料、すなわち、より高次の 多元系材料であっても、本発明に係る低密着性材料として使用できる。
[0121] また、低密着性材料としては、次のような混合物も用いられ得る。それは、固溶体 L a-Y O、固溶体 La—Y Oと複合酸化物 LaYOとの混合物、および、複合酸化物
LaYOのうち少なくとも 1つと、第 1の材料である Y Ο単体との混合物である。更に、
3 2 3
固溶体 Sr— Y O、固溶体 Sr— Y Oと複合酸化物 SrY Oとの混合物、および、複
2 3 2 3 2 4
合酸化物 SrY Oのうち少なくとも 1つと、第 1の材料である Y O単体との混合物も用
2 4 2 3
いられ得る。
[0122] また、第 2の材料として、第 1の材料 Y Oに含まれる Yのイオンである Y3+よりも大き
2 3
なイオン半径を有する物質を含むことと、 Υ
2 οよりも強い塩基性を有することとのい 3
ずれの条件をも満たす酸化物について説明した。し力しながら、第 2の材料は、これ に限らず、塩基性を有する物質の特性や、必要とされる低密着性の程度によっては、 第 2の材料として次のような酸ィ匕物を採用することもできる。その酸ィ匕物とは、 Υ3+より も大きなイオン半径を有する物質を含むという条件、および、 Υ Οよりも強い塩基性
2 3
を有するという条件のうち、少なくとも一方を満たす酸ィ匕物である。
[0123] また、実施例 1、 2においては、本発明に係る低密着性材料は、 Υ Οに酸化物が
2 3
添加されて生成される。そして、 Υ Οに添加される酸ィ匕物には、 Υ Οに含まれる Υ
2 3 2 3
のイオンである Υ3+よりも大きなイオン半径を有する物質が含まれ、その物質として La と Srとを説明した。本発明の低密着性材料は、これに限らず、 Y3+よりも大きなイオン 半径を有する物質として Laと Srとのいずれとも異なる物質を含む酸化物を、 Y Oに
2 3 添加したものであってもよい。そのような酸ィ匕物を使用して生成された材料も、本発明 に係る低密着性材料になり得る。
[0124] また、第 1の材料である Y Oに対する第 2の材料 (添加物)の添加量の下限につい
2 3
て、説明する。図 2及び図 3から明らかなように、 Y Oに対して添加物が添加されれ
2 3
ば、塩基性を有する物質に対する密着力が低下する。したがって、第 1の材料である Y Oに対する第 2の材料 (添加物)の添加が、密着力の低下という本発明の効果を
2 3
生じさせたことになる。言い換えれば、第 2の材料 (添加物)の比率力0mol%を超え ていることが、第 2の材料の比率の下限になり得る。
実施例 3
[0125] 本発明の実施例 3に係る榭脂成形型を、図 4および図 5を参照して説明する。図 4 は本実施例に係る榭脂成形型を、図 5は図 4の榭脂成形型の変形例を、それぞれ示 す断面図である。以下に示されるいずれの図についても、わ力りやすくするために誇
張して描かれている。
[0126] また、本実施例においては、榭脂成形方法の例としてトランスファー成形が用いら れ、基板に装着されたチップをエポキシ榭脂によって榭脂封止する場合を説明する 。この榭脂封止では、ワイヤによって配線されたチップをキヤビティに収容し、型締め した状態でキヤビティに流動性榭脂を充填し、流動性榭脂を硬化させて硬化榭脂を 形成して、基板と硬化樹脂とを有する成形体 (パッケージ)を完成させる。
[0127] 図 4および図 5に示されている上型 1と下型 2とは、併せて榭脂封止型を構成する。
また、上型 1が、本発明に係る榭脂成形型に相当する。上型 1は、本発明の例えば実 施例 1に係る低密着性材料、すなわち固溶体 La— Y Oからなる高離型性材料 3〖こ
2 3
よって構成されている。
[0128] また、上型 1には、流動性榭脂(図示なし)が流動する榭脂流路 4と、流動性榭脂が 充填されるキヤビティ 5とが、凹部状に設けられている。したがって、榭脂流路 4とキヤ ビティ 5とにおける型面 6、すなわち、榭脂成形型のうち流動性榭脂が接触する型面 6 にお 、ては、高離型性材料 3が露出して 、ることになる。
[0129] 一方、下型 2は、工具鋼等によって構成されており、その上にはリードフレーム、プリ ント基板等力もなる基板 7が載置されている。基板 7上にはチップ 8が装着され、基板 7とチップ 8との電極 (いずれも図示なし)同士がワイヤ 9によって電気的に接続されて いる。
[0130] 図 4および図 5に示された榭脂成形型の動作を説明する。まず、下型 2の上に位置 決めして基板 7を配置し、吸着等の方法によって基板 7を固定する。次に、上型 1を 下降させて下型 2との型締めを完了させる。次に、プランジャ(図示なし)を使用して 熱硬化性榭脂からなり一定の粘性を有する流動性榭脂を押圧することにより、榭脂 流路 4を経由してキヤビティ 5に流動性榭脂を充填する。
[0131] 次に、上型 1と下型 2とに設けられたヒータ(図示なし)を使用して、流動性榭脂を加 熱しこれを硬化させることによって、硬化榭脂を形成する。次に、上型 1を上昇させて 型開きを行い、硬化榭脂によって基板 7とチップ 8とワイヤ 9とが一体的に封止された 成形品を取り出す。
[0132] ここで、本実施例に係る榭脂成形型の特徴は、榭脂成形型のうち流動性榭脂に対
して接触する上型 1が、実施例 1で説明した固溶体 La— Y Oカゝらなる高離型性材料
2 3
3によって構成されていることである。これにより、上型 1のうち流動性榭脂が接触する 型面 6が、高離型性材料 3によって構成されていることになる。
[0133] また、高離型性材料 3は、流動性榭脂が硬化して形成された硬化榭脂に対する優 れた低密着性を有しているとともに、化学的に安定な物質である。この低密着性に起 因して、硬化榭脂に対する優れた離型性と、硬化樹脂からなる汚れが型面に付着し にくい特性と、型面に付着した汚れが除去されやすい特性とが生ずる。したがって、 本実施例によれば、ェジェタト機構を必要とせず長時間にわたって優れた離型性を 維持し、かつ、クリーニングの頻度を低減することができる榭脂成形型が実現される。 更に、 Cr, TiC, CrN等のような金属系材料を型面に成膜する場合に比較して、離 型性に優れる榭脂成形型が実現される。
[0134] また、 Y Oと La Oとから生成された固溶体 La— Y Oのような、酸化物から生成さ
2 3 2 3 2 3
れたセラミックス系材料は、優れた耐摩耗性を有する。したがって、有機材料を型面 にコーティングする場合に生ずるその有機材料の摩耗と 、う問題も発生しな 、。
[0135] 本実施例に係る榭脂成形型は、実施例 1において製造された、榭脂流路 4、キヤビ ティ 5等の所定の形状を有する低密着性材料(固溶体 La— Y O )に対して、取付穴
2 3
等の必要な加工を施すことによって製造される。また、更に精密な形状が必要であれ ば、ブロック状の低密着性材料、又は、焼成によって所定の形状が大まかに形成さ れた低密着性材料に対して、切削加工等による精密加工を行ってもよい。これにより 、例えば、図 4および図 5の上型 1を完成させることができる。
[0136] 図 4に示される榭脂成形型の変形例について、図 5を参照して説明する。上型 10 は、本変形例に係る榭脂成形型である。榭脂成形型 10は、上型 10において、従来 の榭脂成形型用材料 (工具鋼等)からなる成形型本体 11が使用されて!ヽるとともに、 成形型本体 11の表面において実施例 1に係る低密着性材料(固溶体 La— Y O )か
2 3 らなる層状 (膜状)の離型層 12が形成されて ヽることを特徴とする。
[0137] この離型層 12は、周知の方法、例えば、真空蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリン グ、プラズマ溶射、イオンプレーティング等の PVD (Physical Vapor Deposition)、 C VD (Chemical Vapor Deposition)、またはシート状材料の焼成等の方法のうち、適
切な方法によって形成される。型面 6においてこの離型層 12が存在することによって 、図 4に示された榭脂成形型によって得られる効果と同様の効果が得られる。ここで、 実施例 1に係る低密着性材料は、少なくとも型面 6にお 、て形成されて!、ればよ!/、。 これにより、型面 6において、硬化榭脂に対する優れた低密着性、すなわち低い離型 性が実現される。
[0138] 本変形例においては、低密着性材料力もなる離型層 12の厚さを適当に定めること ができる。低密着性だけを考慮すれば、離型層 12は、低密着性材料からなる単位格 子が形成される程度の厚さ (数 nm程度)を有していればよい。しかし、耐久性等を考 慮すれば、実際に榭脂成形型の型面 6を構成する離型層 12が所定の厚さ (例えば、 数 100 μ m程度)を有して 、ることが好まし 、。
[0139] ところで、本変形例では、工具鋼等以外の材料によって成形型本体 11を構成する こともできる。例えば、成形型本体 11を、 WC (タングステンカーバイド)を含む超硬合 金や、 3YSZ (3mol%イットリア安定ィ匕ジルコユア)等力もなるセラミックス系材料によ つて構成してもよ ヽ。
[0140] なお、本実施例 (変形例を含む)では、榭脂成形型の型面を構成する低密着性材 料として、上述した実施例 1に係る低密着性材料、すなわち固溶体 La— Y Oについ
2 3 て説明した。本発明の低密着性材料はこれに限らず、実施例 1〜2において説明さ れた低密着性材料を採用してもよい。また、実施例 1〜2において説明された低密着 性材料に対して添加物として他の物質が添加された材料を、型面を構成する低密着 性材料として採用してもよい。
[0141] また、実施例 1〜2において説明された低密着性材料のうち 2つ以上が適当な組合 せと適当な比率とでもって混合されることにより形成された材料を、型面を構成する低 密着性材料として採用してもよい。更に、 Y Oに、 Y3+よりも大きなイオン半径を有す
2 3
る物質として Laと Srとの ヽずれとも異なる物質を含む酸化物を添加した材料を、型面 を構成する低密着性材料として採用してもよい。これらの場合にも、本実施例及び変 形例によって得られる効果と同様の効果が得られる。
[0142] また、榭脂成形型の型面を低密着性材料によって構成する場合には、ブロック状 ( 直方体状)の低密着性材料を、キヤビティの底面又は天面を構成するキヤビティブ口
ックとして使用してもよい。
[0143] また、本実施例においては、基板 7に装着されたチップ 8を榭脂封止する際に使用 される榭脂成形型を例に挙げて説明した。本発明の榭脂成形型は、これに限らず、 一般的なトランスファー成形、圧縮成形、射出成形等のように、キヤビティ 5に流動性 榭脂が充填された状態で、その流動性榭脂を硬化させて成形体を製造する際に使 用される榭脂成形型に対して、本発明を適用することができる。
[0144] また、榭脂成形型のうち、流動性榭脂が接触する型面 6の全てが高離型性材料に よって構成されることとした。本発明の榭脂成形型は、これに限らず、流動性榭脂が 接触する型面 6の一部、例えば、キヤビティ 5における内底面(図 4および図 5では上 面)が高離型性材料によって構成されることとしてもょ 、。
[0145] また、本発明に係る低密着性材料を使用した榭脂成形型について説明した。本発 明の低密着性材料の用途はこれに限らず、低密着性材料を、榭脂成形型以外の用 途に、すなわち、塩基性を有する物質に対する濡れ性が低いことが要求される他の 用途に、使用することができる。具体的には、このような低密着性材料を、部材等に おける流動性榭脂が接触する部分のコーティング等に使用することができる。
[0146] 更に、本発明に係る低密着性材料は、榭脂以外の物質であって塩基性を有する物 質に対する低密着性が要求される用途に使用されることが可能である。例えば、この ような低密着性材料を、有機物カゝらなる汚れの付着を防止する機能を有する材料とし て使用することができる。具体的には、建物の外壁等に使用される建材、浴槽、衛生 陶器やこれに類する機器等の材料として使用することが考えられる。また、これらの用 途に使用される部材の表面をコーティングする材料として、本発明に係る低密着性 材料を使用してもよい。
[0147] なお、前述の低密着性材料 3は、有機物からなる汚れの付着を防止する機能を有 する防汚性材料としても用いられ得るものである。
[0148] この発明を詳細に説明し示してきた力 これは例示のためのみであって、限定ととつ てはならず、発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定されることが明らか に理解されるであろう。