WO2007055195A1

WO2007055195A1 - 溶着平ブラシ、渦巻き型円筒ブラシ及びそれらの製造方法

Info

Publication number: WO2007055195A1
Application number: PCT/JP2006/322163
Authority: WO
Inventors: Toshifumi Takeuchi; Hiroshi Umado
Original assignee: Narutoya Co., Ltd.
Priority date: 2005-11-10
Filing date: 2006-11-07
Publication date: 2007-05-18
Also published as: JPWO2007055195A1

Abstract

　金属を使用しないオール樹脂のブラシを、積み重ね作業を行うことなく簡単に製造でき、しかも中央孔の孔径、ブラシ部における糸材の密度及び糸丈等を簡単に変更でき、更には大量生産が可能で製造コスト引き下げが可能な構成の円筒ブラシを提供する。これを実現するために、ブラシを構成する多数本の溶融可能な糸材１１が横に広がって刷毛状に並び、且つ各糸材１１が一端側で溶着により一体された溶着固定型の平ブラシ１０をつくる。平ブラシ１０を、固定側に形成された帯状の溶着部１３を内側にして螺旋状に巻回加工することにより、渦巻き型円筒ブラシ２０をつくる。

Description

明細書

溶着平ブラシ、渦巻き型円筒ブラシ及びそれらの製造方法

技術分野

[0001] 本発明は、歯ブラシや各種工業用ブラシに使用される平ブラシ、この平ブラシを使用した円筒ブラシ、及びそれらの製造方法に関する。

背景技術

[0002] 工業用ブラシの一種として円筒ブラシがある。これは棒状又は筒状の芯部から多数本の糸材が放射状に突出した構造になっており、その構造は製造方法によって次の 4つに分類される。

[0003] 第 1は、榭脂からなる円筒型の芯部外周面に、榭脂糸を束ねて構成された複数の小さな糸束を、全周、全長にわたって植設した植毛型である。この円筒ブラシでは、芯部の外周面全体に、糸束が植設される複数の植設穴が設けられており、個々の糸束を中央部で二つに折り曲げて植毛穴に挿入した後、折り曲げ挿入部の上から、植毛穴よりやや大きい真鍮又はアルミニウムなどの金属片を打ち込むことにより、個々の糸束はヘッド部に固定されている（非特許文献 1参照)。

[0004] 第 2は、多数本の糸材を横に並べた集合体を中央で二つ折りし、折り曲げ部の内側に芯線を通し、折り曲げ部を外側力も金属フープで力しめ固定した平ブラシを、折り曲げ部を内側にして螺旋状に卷回加工し、両端を溶着固定したチャンネル型円筒ブラシである (非特許文献 2参照)。

[0005] 第 3は、多数本の糸材を横に並べた集合体を中央で複数本のワイヤにより挟み、そのワイヤを捩じって作製した捩じりブラシである (非特許文献 3参照)。

[0006] 第 4は歯ブラシのブラシヘッドである力厚さ 0. 5mm程度の薄いナイロン円形ブラシを 20〜25枚程度重ねたものである。ナイロン円形ブラシは、中心部に環状の溶着部を有し、その溶着部カゝら多数本のナイロン糸が放射状に突出した構成になっている。これを 20〜25枚程度重ねて柄の先端部に嵌め込み、柄の先端突出部を溶着して柄に固定することにより、円筒型歯ブラシが構成される (特許文献 1参照)。

[0007] 非特許文献 1 :「ブラシ標準規格カタログ 2006第 10頁」株式会社鳴門屋非特許文献 2：「ブラシ標準規格カタログ 2006第 8頁」株式会社鳴門屋非特許文献 3：「ブラシ標準規格カタログ 2006第 37頁」株式会社鳴門屋

特許文献 1：特許第 3646118号公報

[0008] 第 1〜第 3の円筒ブラシでは、仮に糸材がナイロン等の榭脂糸であっても、芯部やその芯部への固定に金属が使用されるために、食品関係、医療用関係、歯ブラシ等の用途にあっては金属腐食 (サビ)の問題があり、適用が困難であった。また、糸材の集合体であるブラシ部を芯部に完全に固定することが困難であり、ブラシ部の脱落が問題であった。更に、金属を使用するため、形状に対する制約があり、重量、コスト、リサイクルの面でも問題があった。

[0009] これらに対し、第 4の円筒ブラシは歯ブラシのブラシヘッドではあるけとれども、金属を排除できる利点がある。し力しながら、ナイロン円形ブラシを製造する工程が複雑であること、製造された円形ブラシを重ねる作業の自動化が困難であることから、コストダウン、大量生産に限界があった。円形ブラシにおける糸材の密度、厚さ、中央貫通孔の孔径、糸材の材質等の変更が難しぐ工業用ブラシとしての使用に多くの問題があった。

[0010] 図 10及び図 11は第 4の円筒ブラシを使用した円筒型歯ブラシの製造工程の説明図、図 12は同円筒ブラシの正面図である。

[0011] この円筒型歯ブラシは、円形ブラシ 51を 20〜25枚積層して構成された円筒ブラシ 50を、柄 30の先端部に有しており、より具体的には、その円筒ブラシ 50は、柄 30の先端小径軸部 31に円形ブラシ 51を 20〜25枚重ねて嵌め込むことにより構成されている。個々の円形ブラシ 51は、薄い環状の溶着部 52を中心部に有し、その溶着部 5 2の周囲全周から多数本の榭脂糸けィロン糸）が放射状に延出して形成されたブラシ部 53を溶着部周囲に有するディスクタイプである。そして、 20〜25枚の円形ブラシ 51の中心孔に柄 30の先端小径軸部 31を通し、軸部 31の先を高周波溶着ホーン 60により溶融し、大径ィ匕することにより、 20〜25枚の円形ブラシ 51が柄 30の先端部に積層固定されて、円筒ブラシ 50を形成している。

[0012] 円形ブラシ 51の中心孔の内径 d'、すなわち円筒ブラシ 50の円筒状芯部の内径は、円形ブラシ 51に使用される榭脂糸の束の太さによって決定され、任意に変更することができない。環状溶着部 52の外径 D'、すなわち円筒ブラシ 50の円筒状芯部の外径は、円形ブラシ 51の製法上、ある程度、大径にならざるを得ない。このため、ブラシ径を一定とすれば、ブラシ部 53における毛丈 h'、すなわち円筒ブラシにおけるブラシ部の毛丈は制限され、所定の毛丈を確保しょうとするブラシ径が大きくなる。

[0013] すなわち、円形ブラシ 51を積層して構成される第 4の円筒ブラシ 50は、設計寸法、設計仕様の自由度が小さいのである。

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0014] 本発明は従来の円筒ブラシの問題点を一挙に解決するものであり、金属を使用しないオール榭脂のブラシを、積み重ね作業を行うことなく簡単に製造でき、しかも中央孔の孔径、ブラシ部における糸材の密度及び糸丈等の設計仕様を簡単に変更でき、更には大量生産が可能で製造コスト引き下げが可能な構成の円筒ブラシを提供することを目的とする。

[0015] 本発明の別の目的は、その円筒ブラシの材料となる糸材の密度、糸丈等を簡単に変更でき、し力も大量生産が可能で製造コスト引き下げが可能な構成の平ブラシを提供することを目的とする。

[0016] 本発明の更に別の目的は、これらのブラシを効率的かつ経済的に製造できる円筒ブラシ及び平ブラシの製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0017] 本発明の平ブラシは、ブラシを構成する多数本の溶融可能な糸材が横に広がって刷毛状に並び、各糸材がー端側で溶着により一体化された溶着平ブラシである。

[0018] また、本発明の円筒ブラシは、上記溶着平ブラシが、固定側に形成された帯状の溶着部を内側にして螺旋状に卷回されることにより構成された渦巻き型円筒ブラシである。

[0019] また、本発明の平ブラシ製造方法は、ブラシを構成する多数本の溶融可能な糸材を横に広げて刷毛状に整列させる整列工程と、刷毛状に整列された多数本の糸材を一端側で溶着により一体ィ匕して溶着平ブラシとなす溶着工程とを包含している。

[0020] また、本発明の円筒ブラシ製造方法は、平ブラシ製造方法により製造された溶着平ブラシを、固定側に形成された帯状の溶着部を内側にして螺旋状に卷回加工して渦巻き型円筒ブラシとなすものである。

[0021] 本発明の円筒ブラシにおいては、平ブラシが溶融可能な糸材からなり、それらの糸材が一端側での溶着により一体化される。そして、この平ブラシが、固定側に形成された帯状の溶着部を内側にして螺旋状に卷回されることにより構成される。この構成によれば、円筒状の芯部を含めて全ての部分が糸材により形成されるため、糸材が榭脂糸であれば、オール榭脂の円筒ブラシが形成される。

[0022] 帯状の溶着部は、隙間なく螺旋状に卷回加工されるのがよい。これにより、帯状の溶着部により円筒形状の芯部が形成される。円筒状の芯部は溶着により一体化することができる。これにより機械的強度の高、芯部が形成される。

[0023] このような円筒ブラシを中心軸方向に操作される柄の先端部に取付ければ、部品点数が少なぐ製造が容易で安価な円筒型歯ブラシが提供される。

[0024] 本発明の平ブラシにおいては、固定側に形成された帯状の溶着部は、糸材が密集したブラシ部の厚みと同じ厚みでもよいが、厚み方向の少なくとも一方に突出したフランジ形状とすれば、その突出量により円筒ブラシにおける螺旋状のブラシ部の間隔 (ピッチ）が調整される。すなわち、突出量が 0であれば、円筒ブラシにおける螺旋状のブラシ部は接近しあい、突出量を大きくすれば、螺旋状のブラシ部の間隔 (ピッチ）が広がる。

発明の効果

[0025] 本発明の平ブラシは、ブラシを構成する多数本の溶融可能な糸材が横に広がって刷毛状に並び、各糸材がー端側で溶着により一体化された溶着平ブラシである。また、本発明の円筒ブラシは、上記溶着平ブラシが、固定側に形成された帯状の溶着部を内側にして螺旋状に卷回されることにより構成された渦巻き型円筒ブラシである

[0026] このため、本発明の平ブラシ及び円筒ブラシは、ブラシ材である糸材として榭脂糸を使用すれば、金属が排除された榭脂単体で同一樹脂のブラシとなる。このためリサイタルが容易である。また、ブラシ材をカシメなどで固定する方法と異なり、ブラシ材が溶着固定されるため、ブラシ材の脱落が激減し、食品、医療分野においての使用も可能となる。また、金属腐食 (サビ)、ブラシ重量の問題を解決できる。

[0027] 特に、本発明の円筒ブラシは、ナイロン円形ブラシを重ねるものと比べて円筒状の芯部の厚み、中心孔の孔径を小さくできるので、同一外径の場合はブラシ部における毛丈を長くでき、毛丈を同じとすればブラか外径を小さくできる。また、帯状溶着部の卷径変更により、芯部内側の中心孔の孔径を自由に変更することができる。ブラシ径も 1. 5〜300mm、或いはそれ以上と、広い範囲で変更することができる。ナイロン円形ブラシを積層するような積層作業が必要ないので、ブラシ長も簡単に長くでき、大量生産及びコストダウンも可能にする。

[0028] これらの利点のため、本発明の平ブラシ及び円筒ブラシは、歯ブラシだけでなぐ金属成分を一切使用しない歯間ブラシ、静電気除去ブラシ、家電用品ブラシ、工業用ブラシ、フェイスブラシ、ヘアーブラシ、家庭用品ブラシ等、広い用途に適用可能である。

[0029] なお、本発明の平ブラシ及び円筒ブラシは榭脂ブラシを基本とするが、熱溶融性物質であれば、榭脂以外の例えば金属等でも製造可能である。

発明を実施するための最良の形態

[0030] 以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図 1は本発明の一実施形態を示す平ブラシの斜視図、図 2は同平ブラシを使用した円筒ブラシの側面図、図 3 は同円筒ブラシの正面図である。

[0031] 図 1に示すように、本実施形態の平ブラシ 10は、当該ブラシを構成する糸材 11が多数本並列して形成されたブラシ部 12と、ブラシ部 12の一端側に形成された溶着部 13とからなる。糸材 11は、歯ブラシを前提としているためにナイロン系の榭脂糸である。ブラシ部 12は多数本の糸材 11が横に広く広がって並列した刷毛状である。溶着部 13は、ブラシ部 12における各糸材 11を溶着により一体ィ匕することにより形成されているため、変形自在な柔軟性を有している。この溶着部 13は、ブラシ部 12の横幅方向に長い帯状であると共に、ブラシ部 12の厚み方向両側（前後方向）に突出したフランジ状である。換言すれば、帯状の溶着部 13の奥行き方向中央部の全長から、多数本の糸材 11が直角方向に突出して刷毛状のブラシ部 12が形成されて、る。

[0032] そして、本実施形態の円筒ブラシ 20は、図 2及び図 3に示すように、上記平ブラシ 1 0が、その帯状の溶着部 13を内側にして隙間なく螺旋状に卷回加工されることにより構成されている。したがって、円筒ブラシ 20は、帯状の溶着部 13を内側にして隙間なく螺旋状に卷回されて形成された円筒状の芯部 21と、平ブラシ 10におけるブラシ部 12が、溶着部 13の側を内周側にして芯部 21の周囲を螺旋状に包囲することにより構成された円筒形状のブラシ部 22とからなる。ブラシ部 12は溶着部 13の側を内周側にして螺旋状に卷回されることによって外周側が開く。このため、円筒形状のブラシ部 22は、多数本の糸材 11が、芯部 21から放射状に延出しつつ、芯部 21の周囲にお、て螺旋状に渦を卷、た構成になる。

[0033] ここで、円筒形状のブラシ部 22を構成する螺旋状のブラシ部 12は、内周側の溶着部 13が、厚み方向両側に突出したフランジ形状になっているため、所定の隙間 Sをあけて螺旋状に渦巻いている。隙間 Sの大きさは溶着部 13の両側への突出量 sに支配され、具体的にはその突出量 sの 2倍である。この隙間 Sのために、ブラシ部 22における糸材 11の密集が回避される。また、隙間 Sの変更により、ブラシ部 22における糸材 11の密度が調整される。

[0034] 次に、上記平ブラシ及びこれを使用した円筒ブラシの製造方法について説明する。図 4は平ブラシの製造工程の説明図、図 5は製造された平ブラシから円筒ブラシを製造する工程の説明図、図 6は同円筒ブラシの仕上げ工程の説明図である。

[0035] 平ブラシの製造では、図 4に示すように、所定本数の糸材 11の束を横にさばいて広げた状態で、その糸材群 1を昇降式の糸上げチャック 2で掴む。糸上げチャック 2はパネ又はゴムの伸縮を利用して糸材群 1を先端部力若干下がった位置で厚み方向両側から掴み、その糸材群 1を上昇させる。

[0036] 糸上げチャック 2の上方には 2分割式の金型 3が配置されている。金型 3は糸材群 1 が通過する横長の貫通孔を対向面間に形成しており、横長の貫通孔の上端部は、製造すべき平ブラシ 10の溶着部 13の形状に対応した凹部 3aになっている。糸材群 1は、金型 3の貫通孔に常時挿入され、金型 3の上に僅かに突出するレベルに保持されている。金型 3からの糸材群 1の突出量は、平ブラシ 10の溶着部 13の体積に応じて決定される。すなわち、溶着部 13に対応する凹部 3a内が糸材群 1の溶融物 (溶融榭脂）で満たされるように、前記突出量は設定される。 [0037] 糸材群 1が金型 3の上に僅かに突出した状態で、金型 3の上方に設けられた横長の溶着ホーン 4が、糸材群 1の先端面の近くまで下降する。溶着ホーン 4は内部のヒ一ター 4Aにより適温に加熱され、糸材群 1の先端近傍部分を輻射熱により非接触で溶融する。この溶融により、金型 3の溶着部 13に対応する凹部 3a内が糸材群 1の溶融物 (溶融榭脂)で満たされる。溶着ホーン 4に代えて温度管理が可能な火炎によつても糸材群 1の溶融は可能である。

[0038] 溶融が終了すると、溶着ホーン 4が退避し、代わって冷却ホーン 5が金型 3の真上に移動し、下降して、その水平な下面で溶融物を上から押さえる。この工程は、溶融成形部分の強度を増すためと、その端面形状を平らにするために実施され、溶融榭脂が十分な余熱をもった時点 (ナイロン榭脂の場合は約 160°C)で行われる。力べして、製造すべき平ブラシ 10の溶着部 13が金型 3の貫通孔上部の凹部 3a内に形成される。冷却ホーン 5による冷却、整形は、製造された平ブラシ 10の卷回加工における効率向上、製品である円筒ブラシ 20の品質向上、形状安定化に寄与する。

[0039] 冷却ホーン 5による冷却、整形が終わると、冷却ホーン 5が元の位置に退避し、糸上げチャック 2が上昇する。これにより糸材群 1が先端の溶着部と共に金型 3の上に露出する。製造すべき平ブラシ 10の高さ（ブラシ丈 H)に相当する分、糸材群 1が上昇すると、上昇分が除去されるように、金型 3の僅か上方で糸材群 1が図示されないカツターにより切断される。力べして、図 1に示す平ブラシ 10が製造される。切断後は、金型 3の上方に糸材群 1が僅かに突出した図 4の状態に戻る。

[0040] これを繰り返すことにより、図 1に示す平ブラシ 10が自動で連続的に製造される。

[0041] 製造された平ブラシ 10は、図 5に示すように、丸棒状の巻き取りヒーター 6に溶着部 13を内側にして巻き付けられる。すなわち、平ブラシ 10の帯状の溶着部 13を巻き取りヒーター 6に隙間なく巻き付ける。巻き取りヒーター 6は予熱されている。その温度は平ブラシ 10を構成する糸材 11の軟ィ匕点より高ぐ融点より低い温度であり、具体的には榭脂の場合、融点にもよるが、 130〜180°C程度である。巻き付けは、平ブラシ 10 の横幅方向一端が固定チャック 7で固定され、他端を把持した回転チャック 8がヒータ一 6の周囲を回転することにより行われる。具体的には、例えば回転チャック 8が回転する時、丸棒状の巻き取りヒーター 6は固定チャック 7と共にヒーター軸方向に移動し、回転チャック 8に相対的な螺旋運動を実行させる。

[0042] この巻き付けにより、平ブラシ 10は、溶着部 13が螺旋状に成形加工され、図 2及び図 3に示す円筒ブラシ 20となる。巻き取りヒータ 6の温度と同様、回転チャック 8の速度も糸材 11の直径ゃ榭脂成分によって適宜調整される。

[0043] 以上で円筒ブラシ 20は一応完成する。完成した円筒ブラシ 20では、ブラシ部 22における糸材 11の引っ張り強度は 20N以上を示し、糸材 11自体の引っ張り強度に匹敵する。芯部 21の軸方向強度も問題ないが、平ブラシ 10における帯状の溶着部 13 の卷回成形により形成されているため、使用方法によっては伸びた状態になる。これを防ぐためには、図 6に示すように、超音波による棒状の内面溶着ホーン 9を芯部 21 に差し込み、芯部 21の内周面を溶融する。これにより、芯部 21の伸びは恒久的に防止される。

[0044] 完成した円筒ブラシ 20の設計寸法、設計仕様の自由度について、図 3及び図 12を使用して説明する。円筒ブラシ 20の中心孔、すなわち円筒状の芯部 21の内径 dは、平ブラシ 10の帯状の溶着部 13の卷き径によって決まる。すなわち、使用する巻き取りヒータ 6の外径によって決まる。したがって、他からの制約を受けることなぐこの内径 dを広範囲に自由に変更することができる。

[0045] 円筒状の芯部 21の外径 Dは、平ブラシ 10における溶着部 13の高さ kと前述した卷き径によって決定される。溶着部 13の高さ kは小さくでき、卷径も自在に変更可能である。このため、芯部 21の外径 Dを小さくでき、ブラシ径を一定すれば、ブラシ部 22 における毛丈 hを長くでき、毛丈 hを一定とすればブラシ径を小さくできる。

[0046] 図 7は上記円筒ブラシを使用して歯ブラシを製造する方法の説明図である。

[0047] 製造された円筒ブラシ 20は歯ブラシのブラシヘッドとして使用することができる。すなわち、歯ブラシの柄 30の先端部に形成された丸棒状の軸部を、円筒ブラシ 20の芯部内側の中心孔に刺し通して、その軸部に円筒ブラシ 20を固定することで、歯ブラシ 20は製造される。柄 30の軸部に円筒ブラシ 20を固定する方法としては、軸部を円筒ブラシ 20の芯部内側の中心孔に圧入し、円筒ブラシ 20の先に突き出た先端部を溶着により大径ィ匕する方法がある。この場合、円筒ブラシ 20の芯部 21を内面溶着しない場合、芯部 21が伸びるおそれがある。 [0048] 円筒ブラシ 20の芯部 21を内面溶着しないて芯部 21の伸びを防止する方法が図 7 に示した方法である。この方法では、 PPや PETからなる柄 30の先端部に、円筒ブラシ 20の中心孔より小さい外径の軸部 31を設ける。小径の軸部 31には直角方向の貫通孔 32が複数設けられている。小径の軸部 31を上に向け、円筒ブラシ 20の中心孔に挿入した状態で、その中心孔に上方の榭脂注入器 40から接着性の榭脂を注入し、この榭脂にて柄 30の先端部に円筒ブラシ 20を接着固定する。円筒ブラシ 20を接着固定することにより、芯部 21も接着固定され、その伸びが防止される。

[0049] ここで使用する接着性の榭脂としては、ダイマー酸ベースの熱可塑性ポリアミド榭脂が好ましい。この榭脂は、円筒ブラシ 20を構成するナイロン榭脂に対して接着性を示し、硬化後は柄 30に要求される機械的強度を満足する。し力も「食品衛生法 '食品 ,添加物等の規格基準 (昭和 34年厚生省告示第 370号)」に適合し、安全性も何ら問題がない。更には、軟ィヒ点が低いために比較的低温で流動状態となり、流動状態での粘度が低く流動性がよ!、ので、低圧加圧でも柄 30の先端部をモールド成形することができる。ダイマー酸ベースの熱可塑性ポリアミド榭脂の一般的な化学構造をィ匕学式 1に示す。

[0050] [化 1] ダイマー酸ジァミン

n HOOC-D- C OOH+ n H₂N-R-NH₂

一 H₅0

→ HO -EO C -D- C ONH-R-N H÷- H

n

[0051] ただし、この榭脂は、柄 30を構成する PPや PETに対してはナイロンほどの接着性を示さない。そこで、柄 30の小径の軸部に直角方向の貫通孔を複数設け、ここに榭脂を流入させることにより、円筒ブラシ 20と柄 30を機械的にも結合する。これにより、円筒ブラシ 20と柄 30の結合は完全なものとなる。

[0052] 図 8は別の歯ブラシの構造説明図である。この歯ブラシは前記した円筒型ではなく、ブラシ部における糸材がー方向を向いて密集した平ブラシである。この平ブラシでは、円筒ブラシ 20の成形素材である平ブラシ 10によりブラシ部が形成されている。

[0053] 具体的に説明すると、歯ブラシの柄 30をモールド成形し、その際に平ブラシ 10をヘッド部にインサートしておぐいわゆるインサート成形により平ブラシ 10が柄 20のへッド部に固定されている。モールド榭脂としては、平ブラシ 10に対する接着性等の点力も前述したダイマー酸ベースの熱可塑性ポリアミド榭脂が好ましい。

[0054] 平ブラシのブラシ部は、ここでは複数の平ブラシ 10を平行に配置した構成になっているが、これに限るものでないことはいうまでもない。当然のことながら、平ブラシ 10は溶着部 13の側が柄 30のヘッド部に埋設される。

[0055] 図 9 (a) (b)は本発明の別の平ブラシの斜視図である。図 9 (a)の平ブラシ 10では、平ブラシ 10の高さ方向一端部に形成される帯状の溶着部 13が、ブラシ部 12に対して、ブラシ厚み方向の片側へのみ突出した片フランジ形状になっている。ちなみに、図 1に示した平ブラシ 10では、溶着部 13がブラシ厚み方向の両側へ突出した両フランジ形状である。また、図 9 (b)の平ブラシ 10では、平ブラシ 10の高さ方向一端部に形成される帯状の溶着部 13が、ブラシ部 12と同じ厚みである。すなわち、溶着部 13 は、ブラシ部 12に対して、ブラシ厚み方向の何れの側にも突出していない。

[0056] このように、平ブラシ 10における溶着部 13は、ブラシ部 12と同じ厚みでもよいし、厚み方向の何れの側、或いは両側に突出してもよい。溶着部 13がブラシ部 12と同じ場合、これを使用した円筒ブラシ 20では、ブラシ部 12が隙間なく密に渦巻く形状となる。これに対し、溶着部 13がフランジ状の場合、片フランジでも両フランジでもその突出量に応じた隙間力中心軸方向で確保される。

図面の簡単な説明

[0057] [図 1]本発明の一実施形態を示す平ブラシの斜視図である。

[図 2]同平ブラシを使用した円筒ブラシの側面図である。

[図 3]同円筒ブラシの正面図である。

[図 4]平ブラシの製造工程の説明図である。

[図 5]製造された平ブラシ力円筒ブラシを製造する工程の説明図である。

[図 6]同円筒ブラシの仕上げ工程の説明図である。

[図 7]同円筒ブラシを使用して歯ブラシを製造する方法の説明図である。

[図 8]別の歯ブラシの構造説明図である。

[図 9] (a) (b)は本発明の別の平ブラシの斜視図である。 [図 10]従来の円筒ブラシを使用した歯ブラシの製造工程の説明図である, [図 11]同歯ブラシの製造工程の説明図である。

[図 12]従来の円筒ブラシの正面図である。

符号の説明

1 糸材群

2 糸上げチャック

3 金型

3a 凹部

4 溶着ホーン

5 冷却ホーン

6 巻き取りヒーター

7 固定チャック

8 回転チャック

9 内面溶着ホーン

10 平ブラシ

11 糸材

12 ブラシ部

13 溶着部

20 円筒ブラシ

21 芯部

22 ブラシ部

30 柄

Claims

請求の範囲

[1] ブラシを構成する多数本の溶融可能な糸材が横に広がって刷毛状に並び、各糸材が一端側で溶着により一体化された溶着平ブラシ。

[2] 固定側に形成された帯状の溶着部が、糸材が密集したブラシ部の厚み方向の一方又は両方に突出したフランジ形状である溶着平ブラシ。

[3] 請求項 1又は 2に記載の溶着平ブラシが、固定側に形成された帯状の溶着部を内側にして螺旋状に卷回されることにより構成された渦巻き型円筒ブラシ。

[4] 請求項 2に記載の渦巻き型円筒ブラシにおいて、帯状の溶着部が隙間なく螺旋状に卷回されて円筒形状に形成されている渦巻き型円筒ブラシ。

[5] 請求項 4に記載の渦巻き型円筒ブラシにおいて、帯状の溶着部が隙間なく螺旋状に卷回されて形成された円筒状の芯部が溶着により一体化されている渦巻き型円筒ブラシ。

[6] 請求項 3〜5のいずれかに記載の渦巻き型円筒ブラシが、中心軸方向に操作される柄の先端部に取付けられた歯ブラシ。

[7] ブラシを構成する多数本の溶融可能な糸材を横に広げて刷毛状に整列させる整列工程と、刷毛状に整列された多数本の糸材を一端側で溶着により一体化して溶着平ブラシとなす溶着工程とを含む平ブラシ製造方法。

[8] 請求項 7に記載の平ブラシ製造方法により製造された溶着平ブラシを、固定側に形成された帯状の溶着部を内側にして螺旋状に卷回加工して渦巻き型円筒ブラシとなす渦巻き型円筒ブラシの製造方法。

[9] 請求項 8に記載の渦巻き型円筒ブラシの製造方法において、前記溶着部を加熱された軸体に巻き付けて螺旋状に成形加工する渦巻き型円筒ブラシの製造方法。

[10] 請求項 8に記載の渦巻き型円筒ブラシの製造方法において、帯状の溶着部を隙間なく螺旋状に卷回して円筒状の芯部を形成し、その芯部を溶着により一体ィ匕する渦巻き型円筒ブラシの製造方法。