明 細 書
ガス精製器およびガス精製方法
技術分野
[0001] この発明は、空気中に含まれる二酸化炭素、高純度窒素中に含まれる一酸化炭素 などのガス中に含まれる不純物を除去するガス精製器およびこれを用いたガス精製 方法に関し、特に空気液化分離における原料空気中の二酸化炭素を除去する際に 好適なガス精製器とガス精製方法に関する。また、ガス精製器の小型化が可能となる ようにしたものである。
本願は、 2005年 6月 24曰に曰本国に出願された特願 2005— 185725号に基づ く優先権を主張し、その内容をここに援用する。
背景技術
[0002] 空気液化分離にあっては、原料空気中の水分、二酸化炭素、窒素酸化物、炭化水 素などの不要成分を予め除去したうえ、液化分離を行っている。近年、この不要成分 の除去に吸着法が用いられている。
この吸着法には、温度スイング吸着法 (TSA)と圧力スイング吸着法(PSA)とがあ る。
[0003] 温度スイング吸着法は、 2基以上の吸着器を設け、これを吸着工程と再生工程を切 り替えて運転するものである。吸着工程時間と再生工程時間とは対応しており、再生 工程は、さらに減圧工程、加熱工程、冷却工程、再加圧工程よりなる。
[0004] 吸着器内には、空気入口側に水分吸着剤が充填され、その後段に二酸化炭素吸 着剤が充填されており、比較的低温での吸着工程と比較的高温での再生工程とを交 互に切り替えて、連続的に空気中の上記不要成分を除去するものである。
そして、水分吸着剤には、活性アルミナ、シリカゲル、 K—A型ゼオライト、 Na-A 型ゼオライトなどが用いられ、二酸化炭素吸着剤には、 Na— X型ゼオライトなどが用 レ、られている。
[0005] ところで、このような温度スイング吸着法において、二酸化炭素の吸着に着目すると 、吸着剤層入り口での空気流速が一定範囲となるよう吸着塔断面積を決めることから
、吸着器内に充填する二酸化炭素吸着剤の量、換言すると、吸着剤層の厚さを定め ることが実用的に大きな意味を持っている。
[0006] 従来、吸着剤層の厚さを定める基本的な手法は以下のようであった。空気流速と吸 着塔断面積が定まると、吸着工程時間を決めることで、流入する原料空気中の吸着 すべき不純物量 Xが決まる。吸着平衡部分で吸着できる不純物量と物質移動帯部分 で吸着できる不純物量の合計が、不純物量 Xと等しいか、大きくなるように、吸着剤の 充填量が定められる。
[0007] すなわち、吸着剤層における吸着平衡部分の長さと物質移動帯部分の長さの和が 吸着剤層の厚さ(充填高さ)に相当するものとされている。この設計手法は、例えば、 「解説化学工学」 第 190〜: 195頁、竹内他著、培風館 1982年 1月 25日発行など に記載されている(非特許文献 1参照。)。
[0008] 図 2は、このような従来法の考え方を図示したもので、吸着剤層内を進行する吸着 成分の濃度分布の時間的な推移を表すものである。この図において、縦軸は原料空 気中の二酸化炭素の相対濃度を示す。また横軸は相対化した吸着剤層の充填高さ を示す。
[0009] 曲線 Cはそれぞれ物質移動帯を示し、 COは吸着開始直後の物質移動帯を、 C1は 吸着開始後一定時間経過した時点の物質移動帯を、 C2はさらに時間が経過した後 の物質移動帯を示す。
[0010] 二酸化炭素の吸着にあっては、一定時間経過後の物質移動帯 C1の形は、さらに 時間が経過した後の物質移動帯 C2の形と等しぐ定型を保って進行することが知ら れている。
図 2の物質移動帯 C2は、その先端が吸着剤層の出口端に到達した時点を示し、原 料空気を吸着剤層に供給し始めた時点から物質移動帯の先端が吸着剤層の先端に 達した時点までの時間が、吸着工程時間とされる。
[0011] 図 2において、吸着成分が飽和している領域 (領域 Mと表示)が吸着平衡部分であ り、吸着平衡部分の吸着剤量と、そのとき物質移動帯が存在している領域 (領域 Nと 表示)の吸着剤量との合計量が、必要な吸着剤量とされる。
[0012] このような方法で吸着剤の量を決める理由は、一般に吸着剤の有効利用率 77を高
くして吸着剤の必要量を少なくすることが経済的であるとされるためである。有効利用 率 aと物質移動帯との関係は、下記式 (2)によって表される。
?7 = 1— fZa/H · · · (2)
fは物質移動帯の形により決まる定数で、通常 1/2とされている。 Hは吸着剤の充 填高さであり、 Zaは、物質移動帯の長さである。
式(2)より、吸着剤の充填高さ Hに対して物質移動帯長さ Zaが小さい程、利用効率 が高くなることが理解される。
[0013] ところで、空気中の二酸化炭素除去においては空気流速として 0. 2mZs程度を選 定することが一般的である。これは比較的遅い空気流速とすることで物質移動帯の 長さを短くし、平衡吸着部分を増やすことで、前述の吸着剤有効利用率を高くするた めである。しかし、空気流速を一定にしたままスケールアップを行った場合、 "空気流 速 =原料空気量/吸着塔断面積"の関係から、原料空気量に比例して吸着塔断面 積が増えることになる。この結果、大型吸着器においては、吸着剤充填高さに比べて 塔径の方が大きい吸着器とならざるを得なくなる。
[0014] 一般に、吸着剤層に対し、各部均等に原料空気が流れるよう分散を考慮する必要 があるが、吸着剤の充填高さに比べて塔径が大きい吸着器形状では、均等に原料 空気を流すことが難しくなる。
また、吸着剤層の断面積が大きくなることは、吸着器の設置面積が大きくなることに なる。設置面積を小さくするために、例えば半径流吸着器等が提案されてきた。
[0015] 吸着器の設置面積を小さくすると言う要求に対して、前記"空気流速 =原料空気量 /吸着塔断面積"の関係から、原料空気流速を高速化するという解決策が考えられ る。例えば、空気中の二酸化炭素除去において従来一般的とされる空気流速 0.:!〜 0. 2m/s (加圧空気条件下)を、 0. 2〜0. 4mZsとすれば、吸着塔断面積は 1/2 に小型化される。
[0016] しかし、従来の吸着器において、空気流速をこのように単純に高速化すると、吸着 剤層において吸着剤粒子の流動化を引き起こし、吸着操作が不能になる大きな問題 力 Sある。
この吸着剤粒子の流動化は、ビーズと呼ばれる球状の吸着剤の場合、その直径を
、従来の 1 · 5〜: ί · 6mm程度から 1 · 7〜5mm程度と大きくし、 1個の粒子の重量を 増加することにより防止できる。またペレットと呼ばれる円柱状の吸着剤の場合、相当 直径を従来の 1. 5〜: 1. 6mm程度から 1. 7〜5mm程度に大きくすればよレ、。以降、 球状の直径または柱状の相当直径を粒径と呼ぶ。
[0017] しかし、吸着剤の粒径を大きくすると、吸着速度が低下し、物質移動帯の長さが延 びることになる。このため必要な吸着剤層の充填高さが大きくなり、吸着剤量も増大 する。
結局、従来の設計手法に基づいて、吸着剤層に流入する原料空気の流速を高速 化する手法では、吸着器を小型化することは困難であることが判明した。
[0018] この種の問題は、空気中の二酸化炭素の除去以外に、空気中の揮発性有機物の 除去等のガス吸着全般に共通する問題である。例えば高純度窒素中に含まれる一 酸化炭素を金属ニッケルが担持された無機多孔質物質を用いて除去する際に認め られる。
[0019] さらに、銅の酸化還元反応により不活性ガス中の酸素を除去する際など、各種ガス 中の不純物を除去する場合にも認められる。さらに、ホプカライト触媒あるいは貴金 属を無機多孔体に担持させた触媒による空気中の微量一酸化炭素の除去の際にも 認められる。
特許文献 1 :特開 2002— 346329号公報
非特許文献 1 :「解説化学工学」 第 190〜195頁、竹内他著、培風館 1982年 1月 15日発行
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0020] よって、本発明における課題は、空気中の二酸化炭素や高純度窒素中の一酸化 炭素などのガス中の不純物を温度スイング吸着法により除去する際、精製器に充填 されるガス精製剤の量を減量するとともに、精製器を小型化することにある。
課題を解決するための手段
[0021] かかる課題を解決するため、
本発明の第 1の態様は、ガス精製剤が充填された精製器を備えるガス精製器であ
つて、
前記精製器にガスを送り込み、温度スイング吸着法によりガス中の不純物を除去し 前記精製器内に充填されるガス精製剤の量 Aを以下のように定めたガス精製器で ある。
ガス精製剤の量 Aの二分の一量が有する不純物除去量力 精製すべきガス中の不 純物の総量と等しいかそれ以上となるように量 Aを定める。
ここで、精製すべきガス中の不純物の総量とは、 1つの精製工程において精製器に 送り込まれる不純物の総量をいう。
本発明の第 1の態様は、言い換えると、
ガス精製剤が充填された精製器を備えるガス精製器であって、
前記精製器にガスを送り込み、温度スイング吸着法によりガス中の不純物を除去し ガス精製剤の量 Aを、このガス精製剤の量 Aの二分の一量が有する不純物除去量 力 つの精製工程において精製すべきガス中の不純物の総量と等しくなる量に定め 前記精製器内に充填されるガス精製剤の量が、前記量 A又はそれ以上であるガス精 製器である。
[0022] 本発明のガス精製器は、前記精製器に、前記ガス精製剤量 Aを充填してガス精製 剤層を形成し、このガス精製剤層のガスの入口側または出口側に、同種のガス精製 剤をさらに 0. 4Aより大きくない量を充填したものであることが好ましい。
[0023] また、精製工程時間を T、ガス精製剤層の入口におけるガス流速を u、ガス精製剤 の平衡吸着量を q、換算係数をひとしたとき、ガス精製剤層の充填高さ Hを、下記式( 1 )によって、
H≥ a -T- u/q · · · ( 1 )と定めたものであることが好ましい。
[0024] また、前記ガス精製剤が、吸着剤であることが好ましい。
また、前記ガス精製剤が、金属を担持した無機多孔質物質であることが好ましい。 また、前記吸着剤の粒径が、 1. 7〜5mmであることが好ましい。
[0025] 本発明の第 2の態様は、本発明のガス精製器を用いて、温度スイング吸着法により
、ガス中の不純物を除去するガス精製方法である。
[0026] 本発明のガス精製方法においては、前記ガス精製剤が前記吸着剤の場合、前記 ガス精製剤層の入口におけるガスの流速力 0. 25〜0. 4m/sであることが好まし レ、。
また、前記ガス精製剤が前記吸着剤の場合、前記ガス精製剤層の入口におけるガ スの温度が、 5〜45。Cであることが好ましい。
発明の効果
[0027] 本発明によれば、ガス精製工程でガス精製剤層に流入する不純物の総量の少なく とも 2倍量を除去できるガス精製剤を精製器に充填するので、ガス精製剤層の全領 域に物質移動帯を形成することができる。そのため、ガス精製剤層に吸着平衡領域 を形成するためのガス流速の制限が緩和され、流速を大きくすることができる。よって 、ガス精製剤層の断面積を小さくできるので、ガス精製器の設置面積を小さくすること ができる。
[0028] また、本発明では、吸着平衡部分を形成する必要がなレ、ので、比較的短レ、精製ェ 程時間を選択することが可能になる。そのため精製器内に充填すべきガス精製剤の 量を削減することができるので、精製器を小型化できる。
図面の簡単な説明
[0029] [図 1]本発明における吸着剤層の厚さを算出するための考え方を説明するグラフであ る。
[図 2]従来の吸着剤層の厚さを算出するための考え方を説明するグラフである。 発明を実施するための最良の形態
[0030] (第 1の実施形態)
初めに、本発明において、空気中の二酸化炭素を吸着剤によって除去する形態に ついて、詳細に説明する。
なお、本発明において、ガス精製剤層とは、ガス精製剤が精製器に充填されて形 成されるものをいう。また、吸着剤は精製剤の 1種であり、吸着剤層とは、この吸着剤 が精製器に充填されて形成されるものをいう。
図 1は、本形態における定型の不純物濃度分布が形成されるまでの考え方を、模 擬的に示すものである。図 1の縦軸は原料空気中の二酸化炭素の相対濃度を示す。 また横軸は相対化した吸着剤層高さを示す。横軸のゼロ点は空気入口であり、 1の 点は精製された空気の出口である。
[0031] 吸着工程の開始により図 1の左方向より吸着剤層に原料空気が供給され、入り口付 近で過渡的な状態として形成された濃度分布 COは時間の経過と共に先に伸び、一 定時間後に定型の濃度分布 C1が形成される。図 1の C1は濃度分布の先端がちょう ど空気出口に達した時点を示している。このまま吸着工程を継続すると、いわゆる破 過になり精製空気中の二酸化炭素濃度が増加していくから、濃度分布の先端が出口 に達した時点で吸着工程は打ち切られる。
[0032] 図 1において、原料空気中に含まれる二酸化炭素は濃度分布 C1の曲線の下部領 域で吸着されている。濃度分布 C1の形状が中央部において点対称と考えることは吸 着分野で一般的であり、従って図 1に示す領域の吸着剤有効利用率は 1/2 (50%) となる。 (式(2)において f = 1/2とした場合である。 )
[0033] 前記図 1に示した定型の濃度分布が形成された時点と濃度分布先端が精製空気 出口端に達した時点とがー致する時点を吸着時間と定めることは、本発明の理想的 なモデルにおいて成立することであって、実用的には吸着操作条件の変動などの点 で困難である。
[0034] 例えば、吸着操作条件として、原料空気温度を取り上げると、原料空気温度は空気 圧縮機の出口に設けた冷却器により予備冷却された後、機械式冷凍機等で約 10°C に冷却されて、吸着器に供給される。前記予備冷却は水冷式が一般的であるが、冷 却水の温度は外気の影響を受けて変わるため冷凍機を出た空気温度も変動する。 吸着容量は温度依存性を持つから、物質移動帯の長さは原料空気温度の影響を受 け伸び縮みすることになる。吸着剤層には物質移動帯域のみ存在するとの本発明の 考え方をした場合、この影響は大きい。
[0035] また、ガス容積は、原料空気温度の影響を受けるから、ガス流速も温度の影響で刻 々変わる。物質移動帯の長さはこの影響を受ける。
影響を受ける吸着操作条件としては、原料空気圧力の変動も考えられるし、なによ
りも除去すべき二酸化炭素濃度も常に一定ではない。
[0036] したがって、実用的には図 1で示した理想的なモデルで求められる吸着剤量 Aに対 して 40%のマージンに相当する量 0· 4Aの吸着剤を付加することが適当である。こ の 40%のマージンは、前述の吸着操作条件の変動を考慮するものである。
[0037] 具体的には空気入口側に 40%のマージン相当量を付加した場合で、物質移動帯 の先端が空気出口に達した場合、その時の吸着剤利用率は 64. 3%となる。
また、空気入口部から伸びる物質移動帯がちょうど定型になったとき吸着工程時間 が終了する、すなわち物質移動帯の先に未使用の吸着剤が 40%存在する場合、そ の時の吸着剤利用率は 35. 7%となる。
[0038] 図 2に示すような従来の吸着器設計の考え方に対して、本発明によれば、吸着平 衡部分を考慮しない。すなわち、吸着剤層は物質移動帯のみとするから、比較的短 い吸着工程時間を選択することが可能になる。短い吸着工程時間は二酸化炭素の 負荷量を減らすことであるから、吸着剤量の削減に繋がる。
[0039] 本形態では、二酸化炭素吸着剤の量 Aの 1/2量が有する二酸化炭素吸着量が、 吸着すべきガス中の二酸化炭素の総量と等しくなるように量 Aを定め、前記精製器内 に充填される二酸化炭素吸着剤の量が、前記量 A又はそれ以上であるとして、下限 のみを規定している。実用装置において、吸着剤を過剰に充填することは吸着剤コ ストを増加させるのみでなぐ再生に要する熱量も多く必要とすることになるので上限 は自ずと定まる。
[0040] 例えば、マージンとして 50%以上を充填することは実用的ではない。また、吸着剤 量を多くし、かつ吸着工程時間を長くすることは、吸着剤層に吸着平衡部分を形成 することである力 、従来の設計法と同様になる。
[0041] 本発明では、理想的なモデルで必要とする吸着剤量よりも、 40%多く充填する。す なわち、いわゆるマージンは、吸着操作の条件に依存するから一概に言えるものもの ではないが、一般的数値として 40%としている。
[0042] 一方、 H≥ a 'T'u/qの式(1)において、吸着工程時間 Tを短くしていけば、吸着 剤層の充填高さ Hはどれだけでも短くなる。しかし、比較的早いガス流速に見合った 二酸化炭素の吸着剤層高さ Hが選定されなければ、実用的にこの関係は成り立たな
レ、。しかも、吸着剤の再生は加熱によって行われるから、限られた再生ガス量で加熱 を行い、その後、吸着時の温度まで冷却する必要があるので、たとえば再生工程時 間は 30分では短すぎる。再生は、他の吸着塔の吸着工程中に行われるから、吸着 工程時間 Tは再生工程時間と同じ方が都合よぐ実際に取りうる吸着工程時間 Tは、 1. 5時間〜 3時間が適当である。
[0043] 一方、吸着剤層には物質移動帯域のみ存在するとの本発明の考え方では、従来 の吸着器において一般的とされた比較的遅い空気流速を用いると、物質移動帯の 長さが短くなつて実用的な吸着剤層を形成できなくなる。
[0044] 具体的に説明すると、空気量が数万 m3/hの空気液化分離装置の二酸化炭素を 除去する吸着器は、吸着塔の径が数 mになる。たとえば特開 2002— 346329号公 報の表 5に、従来例の物質移動帯域長さが 132mmと示されている。 (特許文献 1参 照。)直径数 mの塔内に均一に 132mmの高さに吸着剤を充填することの困難さは容 易に想像できる。また、そのような充填ができたとしても、原料空気が均一に吸着剤 層を通過しないと部分的な破過が起こるという、他の問題もある。
[0045] 本発明では、吸着工程で吸着剤層に流入する不純物の総量の少なくとも 2倍量を 除去できる吸着剤を吸着器に充填し、物質移動帯を吸着剤層の全領域で形成でき るようにした。そのため、吸着剤層に吸着平衡部分を出現させるためのガス流速の制 限が緩和され、原料空気の流入速度を従来法より大幅に大きくすることで上述の問 題を解決できることを見出した。すなわち、原料空気の流入速度を 0. 25〜0. 4m/ sとし、併せて早い流速による吸着剤の流動化を防ぐために、吸着剤の粒径を 1 · 7〜 5. Ommとする。
[0046] このような、空気流速の高速化および大きい粒子径の採用は、ともに物質移動帯長 さを長くする方向に作用する。しかるに本発明の場合、吸着剤層内には物質移動帯 域のみを存在させることが前提となってレ、るから、適切な流速およびその流速に見合 つた粒子径を選択すれば、二酸化炭素除去が適切に行えるような吸着剤層の充填 高さを達成しうる。
[0047] 本発明ではまた、前記空気流速およびその流速に対応した吸着剤粒子径の吸着 剤が持つ物質移動帯長さが、空気流速基準で算出した二酸化炭素の吸着剤層高さ
と等しいか小さくなるような吸着剤を選定すれば、図 1に示した「吸着剤層には物質移 動帯域のみ存在するとの本発明の考え方」が成立することを見出した。
[0048] 原料空気の流入時の流速が 0. 25m/s未満では従来の吸着条件を包含し、 0. 4 mZsを越えると吸着剤粒子の流動化を防ぐために、粒子径を 5mm以上とする必要 がある。粒子径が 5mm以上の吸着剤を用いるような条件下では、その物質移動帯長 さは実用範囲を超える。
[0049] 原料空気の流速と用いるべき吸着剤粒子の径は、吸着剤の流動化防止の観点か ら Ergunの圧力損失の式によって関係づけられている。空気流速を決めたら、吸着 剤が流動化しない範囲でなるべく小さい粒子径の吸着剤を用いることが、不必要に 物質移動帯長さを長くしないために有効である。
[0050] 具体的に二酸化炭素吸着剤層の高さを算出するには、上記式(1)を用いることに なる。
すなわち、吸着工程時間を T、吸着剤層の入口における空気流速を u、二酸化炭 素吸着剤の平衡吸着量を q、換算係数を ctとしたとき、二酸化炭素吸着剤層の高さ Hを、
H≥ a -T-u/q · · · (1)で定めることができる。
[0051] ここで、各パラメータの次元は、吸着工程時間が時間、空気流速が m/s、平衡吸 着量が mol/kg、吸着剤層の高さが mである。換算係数 αは、式(1)の左右の項の 次元を整合させるとともに、空気精製処理条件への圧力、温度の換算も含む。換算 係数 αで調整すれば、各パラメータは前記次元に限られるものではない。
[0052] 式(1)における二酸化炭素の平衡吸着量 qについて説明する。通常の二酸化炭素 吸着剤としては、空気液化分離装置の二酸化炭素を除去する吸着器に汎用されて レ、る Na_X型ゼオライト(これにはバインダレス型、骨格を形成するシリカとアルミナ の比率が約 1. 0〜: 1. 15の低シリカ X型(LSX型)を含む)、 Ca_Aゼォライトなどが ある。
[0053] 式(1)における二酸化炭素の平衡吸着量 qは、圧力 550kPa (絶対圧)、吸着温度
10°Cで二酸化炭素濃度 400体積 ppmを含む空気を吸着剤層に通す実験から求め られるもので、概ね 1. 0〜: 1. 8mol/kgの範囲にある。具体的には吸着剤製造メー
力の違いによる差はあるものの、バインダを含む Na—X型ゼオライトで 1 · 0、バインダ レス Na— X型で 1 · 3、 LSX型 Na—Xゼォライトで 1 · 8である。
[0054] さらに、原料空気の二酸化炭素吸着剤層への流入時の温度は、 5〜45°C、好まし くは 10〜25°Cとする。二酸化炭素吸着剤の平衡吸着量は、承知のように温度依存 性を有する。吸着量は吸着温度が低いほど大きいので、流入温度が低いほど好まし いが、空気液化分離装置の原料空気の精製を目的とする場合では、冷凍機などで 大量の空気を冷却することは電力消費の点で好ましくない。逆に流入温度が高くなる と、吸着量は低下する。このため、 5〜45°Cの範囲とすることが好ましい。
[0055] また、本形態において用いられる二酸化炭素吸着剤は、ゼォライトであり、これには
Na_X型ゼオライト、 Ca_A型ゼオライトなどがある。
[0056] 空気液化分離装置の前段に設置される不要成分除去用の吸着器では、原料空気 の流入側から、水分吸着剤、上記二酸化炭素吸着剤の順序で積み重ねられる。この 水分吸着剤には活性アルミナ、シリカゲル、 Na— X型ゼオライト、 Ca— A型ゼオライト
、 Na— A型ゼオライト、 K— A型ゼオライトなどが用いられる。
[0057] 以上のように、本形態での操作条件をまとめると、二酸化炭素吸着剤にゼォライトを
、原料空気の吸着剤層への流入時の流速を 0. 25〜0. 4m/sに、二酸化炭素吸着 剤の粒径を 1. 7〜5mmに、原料空気の流入時の温度を 5〜45°Cとすることで、吸着 操作が成立する。
[0058] (第 2の実施形態)
次に、高純度窒素中の一酸化炭素を、ガス精製剤として金属ニッケルが担持され た無機多孔質物質力 なる反応剤を用いて除去する形態について説明する。
この反応剤は、微量の一酸化炭素と反応して、金属カルボニルに変化し、これによ り一酸化炭素を除去することができる。反応剤の再生は、これを加熱状態として、水 素を流し、還元することで行われる。
[0059] したがって、前記反応剤を充填した精製塔を 2基以上設置し、これを除去工程と再 生工程とに交互に切り替えることで、連続的に高純度窒素中の一酸化炭素を除去す ること力 Sできる。
[0060] この除去操作において、従来では、反応剤を多量に充填した精製塔を用レ、、切り
替え時間を長時間、例えば 2〜3日としていた。この従来法では、反応剤を多く使用 することになり、大型の精製塔が必要である。
このように、高純度窒素中の一酸化炭素を前記反応剤を用いて除去する際にも、 上述したような空気中の二酸化炭素を吸着剤によって除去するものと同様の問題点 があった。
[0061] そこで、本発明者は、このケースについても、先に説明した空気中の二酸化炭素を 除去するものと同様の考え方ができなレ、かを検討したところ、同様の手段により解決 できることが判明した。
[0062] 上記反応剤は化学反応によって一酸化炭素を除去するが、二酸化炭素は吸着剤 に物理的に吸着されて除去される。反応メカニズムは異なるが、現象的には同様で あり、反応剤が充填された充填層のガス入口側から順次反応が進行し、吸着平衡部 分に相当するものと物質移動帯に相当するものが存在し、これらが徐々にガス出口 側に移動するものと見なされる。
[0063] このため、反応剤の量 Aを、この量 Aの 1/2量が有する一酸化炭素除去量が処理 すべき高純度窒素中の一酸化炭素の総量と等しくなるように定め、精製層をなす反 応剤の充填量が、前記量 A又はそれ以上であればよいことになる。また、 0. 4Aに相 当するマージンの反応剤を精製層のガス入口側またはガス出口側に充填することも できる。
[0064] なお、本発明は、以上説明した 2つの実施形態以外に、上述のように、銅の酸化還 元反応により不活性ガス中の酸素を除去する際、ホプカライト触媒あるいは貴金属を 無機多孔体に担持させた触媒による空気中の微量一酸化炭素の除去の際にも、同 様に適用できる。
実施例
[0065] 以下、実施例を示す。
(実施例 1)
原料空気圧力: 550kPa (絶対圧)、空気温度: 10°C、空気量: 3万 Nm3/時間、二 酸化炭素含有量: 400ppm (体積)の空気を精製する場合を説明する。
式(1)におレ、て、 α = 1. 04、Τ= 2Β寺間、 u=0. 33m/s、q= l . 33mol/kgとす
ると、 H≥0. 52mとなる。
[0066] ここで、本発明の第 1の態様の検討を行うと、精製工程において二酸化炭素が吸着 剤層に流入する流入負荷量は、以下のようになる。
流入負荷量 =30000[Nmソ時間] X400[ppm] X10— 6X2 [時間 ]÷0. 0224[ Nm3/mol] = 1072[mol]
吸着塔の塔径= (30000 [Nmソ時間] X 101 [kPa] ÷550[kPa] X 283[K] ÷2 73[Κ] Χ4÷ π ÷0. 33[m/s] ÷3600[s/時間])0■ 5 = 2. 47 [m]
[0067] 充填密度が 650kg/m3の吸着剤を用いると、半量の吸着剤が持つ吸着容量は以 下のようになる。
半量の吸着斉' J力 S持つ吸着容量 =2. 472Χ π ÷4Χ0. 52X650X1. 33 + 2 = 10 77[mol]
よって半量の吸着剤の持つ吸着容量≥流入負荷量である。
[0068] この結果は、塔径が 2.47mの吸着塔に、吸着剤層の厚さ 0. 52mで吸着剤を充填 することを意味する。吸着剤の充填量は 2· 49m3となる。
[0069] (比較例 1)
原料空気圧力: 550kPa (絶対圧)、空気温度: 10°C、空気量: 3万 Nm3/時間、二 酸化炭素含有量: 400ppm (体積)と仮定する。
吸着平衡量 =1. 33[mol/kg]、物質移動帯長さ = 140mm、空気流速 =0. 19 m/s、吸着工程時間 =4時間とする。
[0070] 流入負荷量 =30000[Nm3/時間] X400[ppm] X10— 6X4 [時間] ÷0· 0224 = 2143[mol]
吸着塔の塔径= (30000 [Nmソ時間] X 101 [kPa] ÷550[kPa] X 283[K] ÷2 73[Κ] Χ4÷ π ÷3600÷0. 19)。·5 = 3. 26 [m]
吸着剤充填密度を 650kgZm3、物質移動帯域での吸着量は、平衡吸着量の 1/ 2であるから、
吸着斉 IJ層高さ = 2143[mol]÷l. 33[mol/kg] ÷650[kg/m3] ÷ π Χ4÷3. 2 62 + 0. 14[m]÷2 = 0. 37[m]となる。
[0071] この結果は、塔径が 3. 26mの吸着塔に、吸着剤層の高さ 0. 37mで吸着剤を充填
することを意味する。吸着剤の充填量は 3· 09m3となる。
実施例 1と比較例 1とを比較すると、比較例 1においては塔径が大きいとともに処理 している二酸化炭素量がほぼ倍であるから吸着剤量も多くなつている。この原因は、 比較例 1では吸着工程時間を 4時間としているためである。従来においてこのような 長い吸着工程時間を選定する理由は、先に記載したように遅い空気流速においては 物質移動帯長さは 132mm程度であり、平衡吸着部分を足し合わせても 2〜3時間の 吸着工程時間では十分な吸着剤充填高さとならないからである。
[0072] (実施例 2)
第 2の実施形態の実施例を以下に示す。
原料窒素中の一酸化炭素濃度: 2ppm
原料窒素圧力: 500kPa (絶対圧)
原料窒素温度: 25°C
精製塔における原料窒素流速: 0. 4m/s
反応剤: 4mm径ペレット
処理量: 100Nm3/hr
精製塔径: 0. 14mH≥ a -T-u/q · · · (1)により α = 3. 88 X 10_3、 T= 6時間、 u= 0. 4、 q = 0. 05mol/kgとして、充填高さ ti = 0. 19m
上記の条件において原料窒素を精製したところ、精製後の窒素から一酸化炭素は 検出されなかった。この時の反応剤の充填量は、 2. 2kgで済んだ。
[0073] (比較例 2)
原料窒素中の一酸化炭素濃度: 2ppm
原料窒素圧力: 500kPa (絶対圧)
原料窒素温度: 25°C精製塔における原料窒素流速: 0. 2m/s
反応剤: 2mm径ペレット
処理量: 100Nm3/hr
精製塔径: 0. 2m
(充填高さ HZ精製塔径 D)≥lから、充填高さ:0. 2m
反応剤充填量: 4. 7kg
反応工程時間: 80時間
上記の条件において原料窒素を精製したところ、精製後の窒素から一酸化炭素は 検出されなかった。
産業上の利用可能性
本発明によれば、精製器内に充填すべきガス精製剤の量を削減することができ、精 製器を小型化できる。よって、産業上有用である。