明 細 書 希土類元素がドープされた二酸化チタン粒子およびその製造方法 技術分野
本発明は、 希土類元素がドーピングされた二酸化チタン粒子およびその製造方 法に関する。 より詳細には、 希土類元素が二酸化チタン格子のチタンサイトと置 換された、 二酸化チタン粒子およびその製造方法に関する。 背景技術
二酸化チタンは、 顔料、 U Vクリーム等の化粧品、 光触媒、 太陽電池などに利 用され、 広く研究されている。 特に、 二酸化チタンナノ粒子は、 種々の応用の可 能性から注目されている。 二酸化チタンの新規な技術として、 酸化チタンナノシ
—卜間にユウ口ピウ厶イオン (E u 3+) を挟み込むことによって、 E u 3+に基づく 赤い色を発光する材料がある (例えば、 非特許文献 1.を参照。)。 また、 熱プラズマ法を用いて金属化合物とアルコキシドとの混合物または反応 物から直接セラミックス粉末を製造する方法がある (例えば、特許文献 1を参照)。 図 1 フは、 従来技術によるユウ口ピウムイオンを酸化チタンナノシー.卜で挟ん だ発光材料の発光メカニズムを示す図である。 従来技術によれば、 酸化チタンナノシートに光を照射し、 価電子帯 (V B) に ある電子を伝導帯 (C B) に励起させる。 伝導帯に励起された電子は、 直接価電 子帯に緩和することなく、 欠陥準位に一時的にトラップされる。 その後、 価電子 帯のホールと再結合することなく、 E u 3+の励起準位にエネルギー移動する。 そ の結果、 E u 3+に基づく蛍光が取り出され得る。 このような酸化チタンナノシー卜から E u 3+へのエネルギー移動は、 酸化チタ ンナノシー卜の欠陥準位のエネルギーレベルが、 E u 3+の励起状態のエネルギー レベルに比べてわずかに高い場合に効果的に生じる。 希土類イオンに基づく蛍光 を取り出すために、 ホスト化合物である酸化チタンナノシートを励起させるだけ でよいので、 酸化チタンナノシ一卜で吸収の生じる波長の光を用いることができ る。 一方、特許文献 1は、 ( 1 ) 1種類以上の金属元素を有するアルコキシドを除く 金属化合物、 (Π ) 1種類以上の金属元素を有するアルコキシド、 (I ) と (Π ) との混合物、 および Zまたは、 (I ) と (Π ) との反応物を用いた熱プラズマによ るセラミックス粉末の製造方法を記載している。 このような熱プラズマ法によれ ば、焼結および粉砕工程をすることなく、セラミックス粉末を得ることができる。
特許文献 1に記載の技術は、 また、 (I) と (Π) とを混合または反応させた前駆 体を出発原料に用いることによって、 結晶性の良好なセラミックス粉末を製造す ることができる。 参考文献
特許文献 1 ;特開平 5— 9008号公報
非特許文献 1 ; X i nら、 Ap p に P h y s. Le t t. 2004, 85, 41 87 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
しかしながら、 上記非特許文献 1に記載の技術においては、 テルビウムイオン (T b3+) を酸化チタンナノシートで挟んだ場合、 酸化チタンナノシートの欠陥 準位のエネルギーレベルが、 T b3+の励起状態のエネルギーレベルに比べて低い ため、 T b3+に基づく蛍光を取り出すことはでいない。 すなわち、 酸化チタンナノシートで希土類イオンを挟み込む場合、 上述のエネ ルギー構造を満たす限られた希土類イオンに基づく蛍光しか取り出すことができ ないという欠点がある。 また、 上記特許文献 1に記載の技術においては、 多元系複合粒子を製造するに は適しているが、 不純物をドーピングした二酸化チタン粒子の製造には不向きで める。 具体的には、 (I) と (Π) とを混合する際に、 有機溶媒または水を用いるもの の、 混合溶液は、 (I) または (Π) がー部沈殿した状態であるスラリー溶液で用 いられる。 このことは、 (I) として希土類化合物を、 (Π) としてチタンアルコ キシドを採用した場合であっても、 得られる酸化チタン粒子は、 酸化チタン格子 中のチタンサイ卜に希土類元素が置換された酸化チタン粒子ではなく、 チタンと 希土類元素との複合酸化物、 または、 酸化チタンと希土類元素酸化物からなる複 合体粒子となり得る。 このような複合酸化物および複合体粒子では、 ホスト化合物から希土類元素へ のエネルギー移動は生じにくいため、 希土類元素に基づく蛍光を高効率で取り出 すことは困難である。 したがって、 本発明の目的は、 希土類元素に基づく蛍光を高効率で取り出すこ とができる、 二酸化チタン粒子、 より詳細には、 希土類元素がチタンサイ卜に置 換された二酸化チタン粒子、 および、 その製造方法を提供することである。
課題を解決するための手段
本発明による希土類元素がドーピングされた二酸化チタン粒子を製造する方法 は、 チタン源と希土類金属源と含む液体前駆体を調製する工程であって、 前記希 土類金属源中の希土類元素量は、 0 a t %より多く 5 . O a t %以下の範囲であ る、 工程と、 熱プラズマを発生させる工程と、 前記熱プラズマ中に前記液体前駆 体を提供する工程とを包含し、 これにより上記目的を達成する。 前記希土類金属中の希土類元素量は、 0 a t %より多く 0 . 5 a t %以下の範 囲であり得る。 前記チタン源はチタンアルコキシドキレート錯体であり、 前記希土類金属源は 希土類金属化合物キレート錯体であり得る。 前記チタンアルコキシドキレート錯体は、 チタンェ卜キシド、 チタンプロポキ シド、 および、 チタンブトキシドからなる群から選折されるチタンアルコキシド と、 ジエタノールァミン、 トリエタノールァミン、 および、 ァセチルアセトンか らなる群から選択される有機溶媒とを含み、 前記希土類金属化合物キレート錯体 は、 希土類硝酸塩、 希土類塩化物、 希土類硫酸塩、 および、 希土類酢酸塩からな る群から選択される希土類金属非アルコキシドと、 クェン酸またはエチレンジァ ミン四酢酸と、 アンモニアとを含むか、 または、 希土類金属エトキシド、 希土類 金属プロポキシド、 および、 希土類金属ブトキシドからなる群から選択される希 土類金属アルコキシドと、ジエタノールァミン、 トリエタノールアミン、および、 ァセチルァセトンからなる群から選択される有機溶媒とを含み得る。 前記チタン源は三塩化チタン溶液であリ、 前記希土類金属源は希土類金属アル コキシドであり得る。 前記希土類金属アルコキシドは、 希土類金属エトキシド、 希土類金属プロポキ シド、 および、 希土類金属ブトキシドからなる群から選択され得る。 前記希土類元素は、 セリウム、 プラセオジム、 ネオジム、 プロメチウム、 サマ リウ厶、 ユウ口ピウ厶、 ガドリニウム、 テルビウム、 ジスプロシウム、 ホルミゥ ム、 エルビウム、 ツリウム、 および、 イッテルビウムからなる群から選択され得 る。 前記希土類金属化合物キレート錯体が、 希土類硝酸塩、 希土類塩化物、 希土類 硫酸塩、 および、 希土類酢酸塩からなる群から選択される希土類金属非アルコキ シドと、 クェン酸またはエチレンジァミン四酢酸と、 アンモニアとを含む場合、 前記調製する工程は、 前記希土 金属非アルコキシドと前記クェン酸またはェチ レンジアミン四酢酸とを混合する工程と、 前記混合する工程に次いで、 前記アン
モニァを混合する工程と、 前記混合する工程に次いで、 前記チタンアルコキシド キレート錯体を混合する工程とをさらに包含し得る。 前記アンモニアを混合する工程は、 前記希土類金属化合物キレート錯体の p H が 9 . 0となるように混合され得る。 前記発生させる工程は、 高周波誘導プラズマ装置、 直流アークプラズマ装置、 直流高周波ハイブリッドプラズマ装置、 および、 マイクロ波誘導プラズマ装置か らなる群から選択されるプラズマ発生装置を用いて酸素ガスを含む熱プラズマを 発生させ得る。 前記提供する工程は、 前記液体前駆体を噴霧し得る。 本発明による希土類元素がドープされた二酸化チタン粒子は、 前記希土類元素 のドービング量は、 0 a t %より多く 5 . O a t %以下の範囲であり、 前記希土 類元素は、 二酸化チタンの単位格子においてチタン原子と置換されており、 前記 二酸化チタンの吸収波長を有する光を前記二酸化チタン粒子に照射することによ つて、 前記二酸化チタン粒子は前記希土類元素に基づく発光を生じ、 これにより 上記目的を達成する。 前記希土類元素のドービング量ば、 0 a t ο/οより多く 0 . 5 a t %以下の範囲 であり得る。 前記二酸化チタン粒子の粒径は、 5 n m以上 1 0 0 n m以下の範囲であり得る。 前記希土類元素は、 セリウム、 プラセオジム、 ネオジム、 プロメチウム、 サマ リウム、 ユウ口ピウム、 ガドリニウム、 テルビウム、 ジスプロシウム、 ホルミゥ ム、 エルビウム、 ツリウム、 および、 イッテルビウムからなる群から選択され得 る。 前記二酸化チタン粒子は、 アナターゼ型ニ酸化チタン粒子とルチル型二酸化チ タン粒子とを含み得る。 前記二酸化チタン粒子に対する前記アナターゼ型ニ酸化チタン粒子の含有量は、 0 w t %より多く 1 0 0 w t %未満の範囲であリ得る。 前記二酸化チタンの吸収波長を超え、 かつ、 前記希土類元素を励起させる光を 前記二酸化チタン粒子に照射することによって、 前記希土類元素に基づく発光を 生じ得る。 発明の効果
本発明による希土類元素がドープされた二酸化チタン粒子は、 希土類元素のド ―ビング量が、 0 a t %より多く 5. O a t %以下の範囲であり、 好ましくは、 0. 5 a t o/o以下の範囲である。 この範囲のドーピング量の希土類元素は、 二酸 化チタンの単位格子においてチタン原子と確実に置換されている。 二酸化チタンの吸収波長を有する光を二酸化チタン粒子に照射することによつ て、 二酸化チタンの単位格子のチタンサイ卜に希土類元素が存在するため、 高効 率で二酸化チタンから希土類元素にエネルギー移動が生じ得る。 その結果、 二酸 化チタン粒子は希土類元素に.基づく発光を生じることができる。 本発明による希土類元素がドープされた二酸化チタン粒子の製造方法は、 チタ ン源と希土類金属源と含む液体前駆体を調製する工程と、 熱プラズマを発生させ る工程と、 熱ブラズマ中に液体前駆体を提供する工程とを包含する。 チタン源および希土類金属源としていずれも液体ソースを用いることによって、 沈殿することなく互いに混合され得る。また、希土類金属源中の希土類元素量は、 0 a t %より多く 5. O a t %以下の範囲であるので、 ドーピング量を効率的に 制御するだけでなく、 チタンサイ卜に希土類元素を置換させることができる。 図面の簡単な説明
図 1 ;本発明の製造方法の工程を示す図
図 2 ;本発明の二酸化チタン粒子を製造するための装置を示す図
図 3 ;実施の形態 1による本発明の製造工程を示す図
図 4 ;実施の形態 2による本発明の製造工程を示す図
図 5 ; E x 1— 1、 E X 1— 2および E x 1— 4の X線回折パターンを示す図 図 6 ; E X 1—4の電子顕微鏡写真を示す図
図 7 ;アナターゼ型ニ酸化チタン含有量および結晶粒径の E r3+濃度依存性を 示す図
図 8 ; E x 1—4および酸化エルビウムの力ソードルミネッセンスを示す図 図 9 ; E x 2— 5、 E X 2-7, E x 2— 9、 E x 2— 1 0およびノンドープ 二酸化チタンの X線回折パターンを示す図
図 1 0 ; Ε χ 2_5、 Ε χ 2— 7、 Ε χ 2_9、 Ε χ 2— 1 0およびノンドー プニ酸化チタンの X線回折パターンを示す図 図 1 1 ; E x 2— 5について、 ルチル型二酸化チタン含有量および結晶粒径の o2流量依存性を示す図 図 1 2 ; E x 2— 1、 E X 2-2, E x 2— 4、 E x 2— 7、 E x 2— 9、 E x 2— 1 0、 および、 E u2T i 207のラマンスぺクトルを示す図
図 1 3 ; Ex 2— 1、 E x 2-5, 巳 乂 2—10、 ノンドープニ酸化チタンぉ よび E u2T ί 207の紫外一可視分散反射スぺクトルを示す図 図 1 4 ;種々の条件で励起させた Ε X 2— 5およびノンドープニ酸化チタンの 励起スぺクトルを示す図 図 1 5 ; Ε X 2 _5、 Ε X 2— 1 0、 E u203および E u2T i 207のフォトル ミネッセンススぺクトルを示す図 図 1 6 ;発光強度の E u3+濃度依存性を示す図
図 17 ;従来技術によるユウ口ピウ厶イオンを酸化チタンナノシ一卜で挟んだ 発光材料の発光メカニズムを示す図 符号の説明
200 プラズマ反応器
210 チャンバ
220 電力供給源
230 噴霧化プローブ
240 シース
250 フィルタ
260 真空ポンプ
270 熱プラズマ
280 プラズマ I ^一チ 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施の形態に先立って、 本発明の原理を説明する。
図 1は、 本発明の製造方法の工程を示す図である。
図 2は、 本発明の二酸化チタン粒子を製造するための装置を示す図である。 図 2のブラズマ反応器 200を参照しながら、 製造方法の各工程を説明する。 工程 S 1 1 0 :チタン源と希土類金属源とを含む液体前駆体を調製する。 ここで、 チタン源および希土類金属源は、 いずれも溶液である。 希土類金属源 中の希土類元素量は、 0 a t %より多く 5. O a t %以下の範囲に調整される。 このドーピング量であれば、 希土類元素は、 理論上、 二酸化チタン格子内のチタ ンサイ卜にすべて置換可能であり、 二酸化チタンの結晶構造も維持され得る。 例えば、二酸化チタンと同様の酸化物である酸化ガドリニウムに希土類元素(E u) を 1 4 a to/0までドーピングした報告、 さらに、 酸化イットリウムに希土類 元素 (T b) を 6 a t%までドーピングした報告がある。 好ましくは、 希土類金
属源中の希土類元素量は、 0 a t %より多く 0 . 5 a t %以下の範囲であり、 こ の範囲であれば、 製造時に特別な条件を設定することなく、 容易に置換可能であ リ得る。 また、 後述するように、 5 . 0 a t <½を超えて希土類元素をドーピングした場 合であっても、 希土類元素 (希土類イオン) に基づく発光強度は低下する傾向が あるため、 5 . O a t %以下が望ましい。 なお、 本明細書において用語 「希土類元素のドーピング」 とは、 二酸化チタン 格子内のチタンサイ卜の一部のチタンと希土類元素が置換されていることを意図 しておリ、 二酸化チタンと希土類元素とからなる複合粒子は含まないことに留意 されたい。 工程 S 1 2 0 : プラズマ反応器 2 0 0のチャンバ 2 1 0に熱プラズマ 2 7 0を 発生させる。 チャンバ 2 1 0の圧力は、 真空ポンプ 2 6 0にて圧力 1 0〜7 6 0 T o r rの 範囲に調整されている。 電力供給源 2 2 0は、 周波数 0 . 2〜5 0 M H zおよび R F電力 5〜5 0 0 KWでプラズマを発生させる。 熱プラズマ 2 7 0は、 02 (酸 素ガス) を含有するガスから生成され、 例えば、 シース 2 4 0から供給される A rと 02との混合ガスによる A r 02熱プラズマであり得る。 電力供給源 2 2 0 は、 高周波 (R F ) 誘導プラズマ装置に加えて、 直流アークプラズマ装置、 直流 高周波ハイブリッドプラズマ装置、 および、 マイクロ波誘導プラズマ装置からな る群から選択され得る。 ― 工程 S 1 3 0 :熱プラズマ 2 7 0に工程 S 1 1 0で調製された液体前駆体を供 給する。 液体前駆体は、 噴霧化プローブ 2 3 0を介してチャンバ 2 1 0に供給さ れ得る。 この際、 A「または 02キャリアガスとともに液体前駆体はチャンバ 2 1 0に供給されてもよい。 これにより、 液体前駆体は、 ミスト状になる。 ミスト状 液体前駆体は、 熱プラズマ 2 7 0に連続的に供給できるため、 均一性に優れた良 質な粉末を得ることができる。 噴霧化プローブ 2 3 0の先端は、 電力供給源 2 2 0によって発生された熱プラズマ 2 7 0に接するように配置されている。 当然の ことながら、 液体前駆体を直接熱プラズマ 2 7 0に晒してもよい。 熱プラズマ 2 7 0に晒されたミスト状液体前駆体は、 高温下で分解される。 分 解された液体前駆体は、 冷却時に化学反応を生じる。 その結果、 安定な二酸化チ タン粒子が生成される。 このような反応過程は、 当業者であれば容易に類推し得 る。 得られた二酸化チタン粒子は、 チャンバ 2 1 0およびフィルタ 2 5 0にて回 収される。
供給原料として液体を用い、 希土類元素のドーピング量を上述の範囲に限定す ることによって、 液体前駆体中で原料が沈殿することなく、 良好に混合される。 その結果、 希土類元素がチタンサイ卜に置換された二酸化チタン粒子を得ること ができる。 また、 熱プラズマ法を用いることによって、 得られる二酸化チタン粒 子の粒径は、 5 n m〜 1 O O n mの範囲であり得、 製造プロセスを制御すること によって所望の粒径を有した二酸化チタン粒子を得ることができる。 また、 希土類元素がチタンサイ卜に位置しているので、 図 1 7を参照して説明 した二酸化チタンのエネルギー準位と希土類イオンのエネルギー準位との関係が、 二酸化チタンから希土類元素へとエネルギー移動が高効率で生じ得るようになつ ている。 これは、 二酸化チタンと希土類元素との物理的距離が、 非特許文献 1に 記載される発光材料の酸化チタンナノシートと希土類イオンとの距離と比べて近 <十分な相互作用が生じるためである。 次に、 本発明の実施の形態を、 図面を参照して説明する。
(実施の形態 1 )
図 3は、 実施の形態 1による本発明の製造工程を示す図である。
図 3は、 工程 S 3 1 0以外は図 1と同じであるため、 工程 S 1 2 0および工程 S 1 3 0の説明を省略する。 工程 S 3 1 0 :チタン源としてチタンアルコキシドキレート錯体と、 希土類金 属源として希土類金属化合物キレート錯体とを含む混合物を調製する。 このよう なチタンアルコキシドキレート錯体および希土類金属化合物キレート錯体は、 い ずれも液体である。希土類金属化合物キレー卜錯体中の希土類元素量は、 0 a t % より多ぐ 5 . 0 a t %以下の範囲に調整される。 工程 S 3 1 0は、 より詳細には、 工程 S 3 1 O Aまたは工程 S 3 1 0 Bのいず れかであり得る。 工程 S 3 1 0 A :チタン源としてチタンアルコキシドと有機溶媒とを含むチタ ンアルコキシドキレート錯体と、 希土類金属源として希土類金属非アルコキシド とクェン酸またはエチレンジァミン四酢酸 (E D T A) と、 アンモニアとを含む 希土類金属化合物キレート錯体とを含む液体前駆体を調製する。 チタンアルコキシドは、 チタンエトキシド、 チタンプロポキシド、 および、 チ タンブトキシドからなる群から選択される。 有機溶媒は、 ジエタノールァミン、 トリエタノールァミン、 および、 ァセチルアセトンからなる群から選択される。 上述の有機溶媒は、 チタンアルコキシドが沈殿することなく溶液中で安定に保つ よう機能し得る。
希土類金属非アルコキシドは、 希土類硝酸塩、 希土類塩化物、 希土類硫酸塩、 および、 希土類酢酸塩からなる群から選択される。 クェン酸または E D T Aは、 希土類金属非アルコキシドが沈殿することなく溶液中で安定に保つよう機能し得 る。 希土類元素は、 セリウム、 プラセオジム、 ネオジム、 プロメチウム、 サマリゥ ム、 ユウ口ピウム、 ガドリニウム、 テルビウム、 ジスプロシウム、 ホルミウム、 エルビウム、 ツリウム、 および、 イッテルビウムからなる群から選択される。 こ のような希土類元素は、 原子サイズおよび電子配置の観点からみて、 二酸化チタ ン格子のチタンと置換され得、 自身が発光し得る。 アンモニアは、 酸性であるクェン酸または E D T A溶液を含む希土類金属化合 物キレ一ト錯体をアル力リ性にすることによって、 クェン酸または E D T Aがチ タンアルコキシドを加水分解するのを防ぐように機能する。 アンモニアは、 好ま しくは、希土類金属化合物キレート錯体の p Hが 9 . 0.となるように混合される。 より詳細には、 まず始めに、 希土類金属非アルコキシドと酸性のクェン酸また は E D T Aとを混合する。 これにより、 希土類金属非アルコキシドの沈殿が防が れる。 その後、 混合溶液にアンモニアを混合し、 希土類金属化合物キレート錯体 とする。 これにより、 希土類金属化合物キレート錯体の p Hが調整され、 アル力 リ性となる。 次いで、 p Hが調整された希土類金属化合物キレート錯体に、 チタ ンアルコキシドと有機溶媒とを含むチタンアルコキシドキレート錯体を混合し、 液体前駆体が調製される。 このような順番で混合することによって、 希土類金属 非アルコキシドおよびチタンアルコキシドの沈殿、 および、 チタンアルコキシド の加水分解が防がれ得る。 このようにして調製された液体前駆体は、 有機溶媒およびクェン酸または E D T Aの効果によリ沈殿することなく、 チタンアルコキシドキレート錯体と希土類 金属化合物キレ一ト錯体とが互いに良好に混合し得る。 本願発明者らは、 チタン アルコキシドおよび希土類金属非アルコキシドそれぞれを安定に保持するように 機能し、 かつ、 互いに混合する有機溶媒およびクェン酸または E D T Aの組み合 わせを創意工夫の結果見出したことに留意されたい。 工程 S 3 1 O B :チタン源としてチタンアルコキシドと有機溶媒とを含むチタ ンアルコキシドキレート錯体と、 希土類金属源として希土類金属アルコキシドと 有機溶媒とを含む希土類金属化合物キレート錯体とを含む液体前駆体を調製する。 この場合も、 チタンアルコキシドは、 工程 S 3 1 0 Aと同様に、 チタンェトキ シド、 チタンプロポキシド、 お び、 チタンブトキシドからなる群から選択され る。 有機溶媒は、 ジエタノールァミン、 トリエタノールァミン、 および、 ァセチ
ルァセトンからなる群から選択される 希土類金属アルコキシドは、希土類金属ェトキシ 希土類金属プロポキシド、 および、 希土類金属ブトキシドからなる群から選択される。 有機溶媒は、 チタン アルコキシドキレート錯体の場合と同様に、 ジエタノールァミン、 トリエタノー ルァミン、 および、 ァセチルアセトンからなる群から選択される。 この場合も、 これらから選択される有機溶媒は、 希土類金属アルコキシドが沈殿することなく 溶液中で安定に保つよう機能し得る。 希土類元素は、 セリウム、 プラセオジム、 ネオジム、 プロメチウム、 サマリゥ ム、 ユウ口ピウム、 ガドリニウム、 テルビウム、 ジスプロシウム、 ホルミウム、 エルビウム、 ツリウム、 および、 イッテルビウムからなる群から選択される。 このようにして調製された液体前駆体は、 有機溶媒の効果によリ沈殿すること なく、 チタンアルコキシドキレート錯体と希土類金属化合物キレート錯体とが互 いに良好に混合し得る。 本願発明者らは、 チタンアル'コキシドおよび希土類金属 アルコキシドそれぞれを安定に保持するように機能し、 力、つ、 互いに混合する有 機溶媒の組み合わせを創意工夫の結果見出したことに留意されたい。 なお、 工程
S 3 1 0 Bでは、 p Hの調整は不要である。 以降の工程は、 図 1を参照して説明した工程 S 1 2 0および工程 S 1 3 0と同 様であり得る。 なお、 工程 S 3 1 0において、 希土類金属化合物キレート錯体中の希土類元素 量を 0 a t %より多く 0 . 5 a t %以下の範囲で調製した場合には、 熱プラズマ 2 7 0の発生条件等の製造プロセスに制約が少なく容易に希土類元素をドーピン グした二酸化チタン粒子が得られる。
(実施の形態 2 )
図 4は、 実施の形態 2による本発明の製造工程を示す図である。
図 4は、 工程 S 4 1 0以外は図 1と同じであるため、 工程 S 1 2 0および工程 S 1 3 0の説明を省略する。 工程 S 4 1 0 :チタン源として三塩化チタン溶液と、 希土類金属源として希土 類金属アルコキシドとを含む混合物を調製する。 このような三塩化チタン溶液お よび希土類金属アルコキシドは、 いずれも液体である。 希土類金属アルコキシド 中の希土類元素量は、 0 a t %より多く 5 . O a t %以下の範囲に調整される。 希土類金属アルコキシドは、希土類金属ェトキシド、希土類金属プロポキシド、 および、 希土類金属ブトキシドからなる群から選択される。 希土類元素は、 セリ
ゥム、 プラセオジム、 ネオジム、 プロメチウム、 サマリウム、 ユウ口ピウム、 ガ ドリ二ゥム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、 および、 ィッテルビウムからなる群から選択される。 三塩化チタン溶液は、 実施の形態 1のチタンアルコキシドと比較して、 安定で あり取り扱いが簡便である。 したがって、 実施の形態 2の前駆体溶液の調製は、 実施の形態 1と比較して、 容易であるという利点がある。 以降の工程は、 図 1を参照して説明した工程 S 1 20および工程 S 1 30と同 様であり得る。 実施の形態 1と同様に、 工程 S410において、 希土類金属アルコキシド中の 希土類元素量を 0 a t 0/0より多く 0. 5 a t %以下の範囲で調製した場合には、 熱プラズマ 270の発生条件等の製造プロセスに制約が少なく容易に希土類元素 をドーピングした二酸化チタン粒子が得られる。 次に、 実施例を述べるが、 本発明は実施例に限定されるものではないことに留 意されたい。 実施例 1 ;
チタンアルコキシドとしてチタンブトキシドと、 チタンブトキシドを安定化さ せる有機溶媒としてジエタノールァミンとを含むチタンアルコキシドキレート錯 体と、 希土類金属非アルコキシドとして硝酸エルビウムと、 クェン酸とを含む希 土類金属化合物キレート錯体とを含む液体前駆体から、 種々のドーピング量のェ ルビゥムがドープされた二酸化チタン粒子(以降では、単に E r -T ί 02と称す る) を製造した。 製造装置は、 図 2を参照して、 ステンレス鋼製反応器 21 0、 高周波電源供給 システム 220、 ステンレス鋼製フィルタ 250、 および、 プラズマ I ^一チ (Μ o d e I P L— 50STEKNA P I a s m a S y s t em I n c. L t d.、 カナダ) 280を含む。 液体前駆体は、 0. 1 mo Iのチタンブトキシドと 0. 4mo lのジエタノー ルァミンとを含むチタンアルコキシドキレート錯体、 所定量 (エルビウムドーピ ング量: 0. 25 a t%、 0. 5 a t%、 1. O a t%および 3. 0 a t %) の 硝酸エルビウムとクェン酸とを含む希土類金属非アルコキシドキレート錯体、 お よび、 20m Iの蒸留水を含んだ。 クェン酸と硝酸エルビウムとは、 モル比にお いて 1 : 1となるように混合された。 このようにして得られた各液休前駆体を A rキャリアガス (5 LZ分) ととも
に噴霧プローブ 230 (図 2) を介して熱プラズマ 270 (図 2) の中心に供給 した。 液体前駆体の供給速度は、 4. 5 分であった。 熱プラズマ 270は、 A rと 02との混合ガスによって生成された。混合ガスの流量は、 90 LZ分であ つた。 熱プラズマ生成のための高周波電源供給システム 220の出力は 25 kW であり、 ステンレス鋼製反応器 2 1 0の圧力は、 500 t o r rであった。 上述 の製造条件を表 1に示す。 表 1
生成された二酸化チタン粒子をステンレス鋼製反応器 2 1 0の側壁およびフィ ルタ 250から回収した。 回収された二酸化チタン粒子は、 それぞれ、 エルビゥ ムドーピング量に応じて、 0. 25 a t %E r—T i 02 (E x 1— 1)、 0. 5 a t %E r - T i 02 (E X 1 - 2) 1. 0 a t % E r - T i 02 ( E x 1 - 3 ) および 3. 0 a t %E r - T i 02 (E x 1 -4) と称する。
X線回折装置(Mo d e l P h i I i p s PW 1 800、 P h i l i p s R e s e a r c h L a b o r a t o r i e s、 オフンダ) を用しゝて E x 1— "!〜 E x 1—4の構造解析を行った。 X線回折装置の動作条件は、 Cu— Κα線を用 いて加速電圧 40 k V、 電流 50mA、 および、 走査速度 0. 1 5° Z 2 Θ ■分 で行った。 図を簡単にするため、 Ex 1— 1、 E x 1— 2、 および、 E x 1—4 の結果を図 5に示し、 詳述する。 走査型電子顕微鏡(FE— S EM、Mo d e I S— 5000、 H i t a c h ί、 日本) を用いて、 E x 1— 4の表面観察を行った。 図 5で得られたアナタ一ゼ型を示す (1 01 ) 面およびルチル型を示す (1 1 0) 面の回折ピークを用いて、 S c h e r r e rの式から結晶のサイズ (粒径)
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差替え用紙(規則 26)
を求めた。 また S p u r rおよび My e r sの式にしたがって E x 1— 1〜E x 1一 4それぞれの二酸化チタン中のアナターゼ型ニ酸化チタンの含有量を算出し た。 結果を図 6〜図 7に示し、 詳述する。
.カソードルミネッセンスシステムを搭載した走査型電子顕微鏡(F E— S EM、 Mo t e l S— 4000S E、 H i t a c h i、 日本) を用いて、 E x 1— 4の 力ソードルミネッセンスを測定した。 力ソードルミネッセンスの測定条件は、 加速電圧 20 k V、 および、 波長範囲 1 100n m〜 1 600 η mで行った。 比較のため、 酸化エルビウムの力ソード ルミネッセンスの結果を合わせて図 8に示し、 詳述する。 図 5は、 E x 1—1、 E X 1— 2および E X 1—4の X線回折パターンを示す 図である。
X線回折パターンから 0. 5 a t %を超える E r ¾ドープした E X 1— 3 (図 示せず) および Ex 1—4では、 バイオロクロア層である E r2T i 207のピーク が検出された。 理論上、 5. 0 a t%までのドーピングが可能であるが、 製造プロセスが最適 化されていないため、 0. 5 a t %超える希土類イオンが析出したものと考えら れる。 しかしながら、 03 1 %ょリ多< 0. 5 a t %以下であれば、 特別な製造 プロセスを設けることなく、 容易に希土類元素をドーピングした二酸化チタン粒 子力得られることが分かった。 - また、 E X 1— 1〜E X 1— 4のいずれの X線回折パターンにおいても、 アナ ターゼ型ニ酸化チタンである (1 01 ) 面のピーク、 および、 ルチル型二酸化チ タンである (1 1 0) 面のピーク力《検出された。 このことから、 得られた二酸化 チタン粒子は、 アナターゼ型ニ酸化チタンとルチル型二酸化チタンとの混合物で あることが分かった。 さらに、 (1 01 ) 面のピーク強度と (1 1 0) 面のピーク強度との比は、 E r イオンのドーピング量に応じて変化していることが分かる。 詳細には、 図 7を参 照して後述する。
. 図 6は、 E X 1— 4の電子顕微鏡写真を示す図である。
図より、 得られた粒子は、 5 nm〜1 00 nmの粒径を有していることが分か つた。 一部、 100 nmを超える凝集した粒子が見られるものの、 均質に分散し ていることが分かる。 この E X 1— 4について 1 CP発光分析を行った結果、 E r含有量は、 5. 71 ± 0. 02 w t 0/0であった。 この値は、 前駆体調製時の E
r仕込み含有量 3 a t ο/ο (すなわち、 5. 85 w t %) にほぼ一致した。 このことから、 本発明の製造方法を用いた場合、 仕込み時のドーピング量が維 持されることが分かった。 図 7は、 アナターゼ型ニ酸化チタン含有量および結晶粒径の E r3+濃度依存性 を示す図である。 図より、 アナターゼ型ニ酸化チタン含有量は、 E r3+濃度が増 加するにつれて減少することが分かった。 すなわち、 E r3+濃度の増加にともな つてルチル型二酸化チタン含有量が増大した。 これは、 酸素空孔の生成に起因す る。 3価の E r3+が 4価の T i 4+の位置に入ると、 式 (1 ) にした力つて、 酸素空 孔が生成し得る。 式 (1 ) ;
E r203+ 3ノ 2 T i Ti x→2 E r'Ti + V0' +3 2 T i 02■ ' ■ - ■ ( 1 ) ここで、 T i Ti xは T iサイ卜に位置する T i を表し、 E r'Tiは T iサイ卜に位 置した E rを表し、 V0' ·は酸素空子 Lを表す。ルチル型二酸化チタンは、アナター ゼ型ニ酸化チタンに比べて酸素空孔生成の受容力があることが知られている。 す なわち、 E r3+が二酸化チタン中に溶解し、 酸素空孔を生成すると、 ルチル型二 酸化チタンが優先的に生成することを意味する。 よリ詳細には、 ルチル型二酸化チタンおよびアナターゼ型ニ酸化チタンの基本 構造はいずれも、 1個のチタン原子が 6個の酸素原子によって取り囲まれた酸素 8 S体の連なリである。 ルチル型二酸化チタンにおける稜共有した酸素 8面体の 連結数は 2であり、 アナターゼ型ニ酸化チタンにおけるその連結数は 4である。 稜共有の連結数がルチル型二酸化チタンょリ多いアナダーゼ型二酸化チタンで は、 酸素 8面体を構成する酸素が抜け、 酸素空孔が生成されると、 酸素 8面体の 中心にある陽イオン (この場合 T i 4+) .間の反発エネルギーが、 ルチル型二酸化 チタンの場合に比べて大きくなる。 その結果、 アナターゼ型ニ酸化チタンの結晶 構造が不安定となり得、ルチル型二酸化チダンが優先的に生成されることになる。 図 5を参照して上述したように、 0. 5 a t %を超える E r3+はパイロクロア 相として析出するものの、 図 7から E r3+濃度が 0. 5 a t %を超えてもアナタ 一ゼ型ニ酸化チタンは減少 (すなわち、 ルチル型二酸化チタンは増加) すること が分かった。 このことは、 二酸化チタンナノ粒子の核生成時には、 E r3+は、 ルチル型二酸 化チタンに溶解しており、 製造プロセスの最適化によって、 パイロクロア相を生 成することなく、 E r3+を、 0. 5 a t %を超えて二酸化チタン粒子へさらに置
換させることができることを示唆し得る。 具体的には、 プラズマ下流部の冷却速 度を向上させることでパイロクロア相の生成を抑制させることができ、その結果、 最大 5 a t o/oまで E r 3+をドープした二酸化チタン粒子が得られ得る。 図 7は、 また、 製造条件によってアナターゼ型ニ酸化チタンとルチル型二酸化 チタンとの量が制御できることを示唆している。 アナターゼ型ニ酸化チタンは、 光触媒として利用され得る。 一方、 ルチル型二 酸化チタンは、 アナターゼ型ニ酸化チタンに比べて高い屈折率および大きな複屈 折を有していることから、 ホス卜材料、 さらにはフォトニック結晶等の光学応用 が期待されている。 このように、 ユーザの用途に応じて、 希土類元素がドープさ れたニ酸化チタン粒子の相組成を容易に製造することができる。 得られた二酸化チタン粒子中のルチル型二酸化チタンの粒径は、 6 0 n m以 上であり、 E r 3+濃度が増加するにつれて 9 0 n mまで粒成長することが分かつ た。 また、 二酸化チタン粒子中のアナターゼ型ニ酸化チタンの粒径は、 E r 3+濃 度にかかわらず約 3 5 n mで一定であった。 以上の結果を表 2にまとめて示す。 表 2
A;アナターゼ型 Τί02粒子含有量
Β ;ルチル型 Ti02粒子含有量
図 8は、 E x 1— 4および酸化エルビウムの力ソードルミネッセンスを示す図 である。 E x 1— 4のパターンは、 酸化エルビウムのパターンとは異なることが 分かった。 E x 1— 4のパターンは、 現在知られている E r ドープニ酸化チタン のパターンに一致することを確認した。 より詳細には、 E x 1— 4のもっとも強 いピーク (半値幅 9 n m) は約 1 5 3 0 n mで見られ、 これは、 酸化エルビウム
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差替え用紙(規則 26)
のもっとも強いピーク (半値幅 22 nm) 位置約 1 534 n mとは異なることが 分かった。 このことから、 約 1530 nmで見られた発光は、 二酸化チタン粒子内で局在 して存在している自由な酸化エルビウムからの発光ではなく、 二酸化チタンのチ タンサイ卜に置換されていると E r3+からの発光であることを示す。 すなわち、 良好に置換が行われた。 実施例 2;
チタンアルコキシドとしてチタンテトラ n—ブトキシド (TTBO) と、 TT B Oを安定化させる有機溶媒としてジェタノ一ルァミンとを含むチタンアルコキ シドキレート錯体と、 希土類金属非アルコキシドとして硝酸ユウ口ピウ厶と、 ク ェン酸と、 アンモニアとを含む希土類金属化合物キレート錯体とを含む液体前駆 体から、種々のドーピング量のユウ口ピウ厶がドープされた二酸化チタン粒子 (以 降では、 単に Eu— T i 02と称する) を製造した。 液体前駆体は、 0. 1 mo lの TTBOと 0. 4 m o Iのジエタノールァミン とを含むチタンアルコキシドキレート錯体、所定量(ユウ口ピウムドーピング量: 0. 05 a t %、 0. 1 a t %、 0. 2 a t %、 0. 3 a t %、 0. 5 a t %、 0. 75 a t % 1. 0 a t %、 2. 0 a t %、 3. O a t %および 5. 0 a t %) の硝酸ユウ口ピウムと、 クェン酸と、 アンモニアを含む希土類金属化合物キレ一 ト錯体、および、 20m Iの蒸留水を含んだ。クェン酸と硝酸ユウ口ピウムとは、 モル比において 1 : 1となるように混合された。 なお、 クェン酸は、 ジエタノールァミン存在下であっても TTBOの加水分解 させ得るので、 硝酸ユウ口ピウムとクェン酸とを混合させた後、 アンモニアを加 えて、 希土類金属化合物キレート錯体の pHを約 9. 0に調整した。 ここで、 p Hの調整には、 25%アンモニア溶液 (3mL) を用いた。 次いで、 pHの調整 された希土類金属化合物キレート錯体に、 各硝酸ユウ口ピウ厶を混合し、 液体前 駆体を得た。 製造装置および製造条件は、 表 3に示す。 0. 5 a t%ユウ口ピウ厶をドープ してなる前駆体溶液における 02流量を、 10から 90 LZ分 (詳細には、 1 0、 30、 40、 50、 70ぉょぴ90し 分) へと変化させた以外は、 実施例 1と 同様であるため説明は省略する。 表 3
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差替え用紙(規則 26)
ノラメータ 数値
セン卜ラルガスおよび流量 Ar, 30L/min
シースガスおよび流量 Ar+02, 90L/min(O2;10, 30, 40, 50, 70, 90L/min) 噴射ガスおよび流量 Ar, 5L/min
前駆体供給量 4.5 g/min
誘導電力 25kW
チャンバ圧力 500torr
生成された二酸化チタン粒子をステンレス鋼製反応器 210 (図 2) の側壁お よびフィルタ 250 (図 2) から回収した。 回収された二酸化チタン粒子は、 それぞれ、 ユウ口ピウムのドーピング量に応 じて、 0. 05 a t %E u— Τ ί 02 (E X 2— 1 )、 0. 1 a t %E u-T i 02 (Ex 2-2), 0. 2 a t%Eu— T i O2 (Ex 2— 3)、 0. 3 a t % E u - T i O2 (Ex 2— 4)、 0. 5 a t%Eu— T i 02 (Ex 2— 5)、 0. 75 a t %E u-T i 02 (Ex 2— 6)、 1. O a t%Eu-T i 02 (Ex 2-7)N 2. 0 a t %E u-T i 02(Ex 2— 8)、 3. O a t % E u - T i 02(Ex 2— 9)、 および、 5. O a t%Eu-T i 02 (Ex 2-1 0) と称する。 実施例 1と同様の装置および測定条件を用いて、 Ex 2—"!〜 Ex 2— 1 0の 構造解析を行った。 図が複雑になるのを避けるため、 Ex 2— 5、 Ex 2-7, E X 2-9, および、 Ex 2—1 0の結果、 ならびに、 比較のためのノンド一プ 二酸化チタンの結果を図 9に示し、 詳述する。 図 9で得られたアナターゼ型を示す (1 01) 面およびルチル型を示す (1 1 0) 面の回折ピークを用いて、 S c h e r r e rの式から結晶のサイズ (粒径) を求めた。 実施例 1と同様に、 S p u r rおよび My e r sの式にしたがって、 得られた 二酸化チタン粒子中のアナターゼ型ニ酸化チタンおよびルチル型二酸化チタンの 含有量を算出した。結果を図 10に示し、詳述する。各 02流量で得られた Ex 2 —5について、 図 9と同様に、 構造解析を行った。 回折ピークを用いて、 結晶の サイズ (粒径) およびアナターゼ型ニ酸化チタンおよびルチル型二酸化チタンの
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差替え用紙(規則 26)
含有量を算出した。 結果を図 1 1に示し、 詳述する。 ラマン分光器 (Mo d e I NR— 1 800、 JASCO、 日本) を用いて E x 2— 1〜 E x 2— 10のラマ ン分光を行った。 測定条件は、 励起光として A レーザ (波長 51 4. 5 nm) を用い、 50m Wで 1 cm— 1の解像度で行った。 E x 2_1、 E x 2— 2、 Ex 2_4、 E x 2 —フ、 Ex 2— 9、 および、 Ex 2— 1 0、 ならびに、 比較のためパイロクロア 相である E u2T i 207の吉果を図 1 2に示し、 詳述する。 可視紫外吸光分光装置 (J a s c oV— 570、 日本分光、 日本) を用いて、 E x 2— "!〜 Ex 2— 1 0の紫外一可視領域における拡散反射スぺクトルを測定 した。 測定波長は、 200 nm〜800 nmであった。 E x 2— 1、 Ex 2— 5およ び Ex 2— 1 0、 ならびに、 比較のためにノンドープニ酸化チタンおよびパイ口 クロァ相 E u2T i 207の結果を図 1 3に示し、 詳述す'る。 分光蛍光光度計 (F— 4500、 H i t a c h i、 日本) を用いて、 E x 2_ 5の励起および発光スぺクトルを測定した。 結果を図 1 4に示し、 詳述する。 フォトルミネッセンス測定装置(R e n i s h aw p i c、 UK)を用いて、 E x 2— 1〜Ex 2_1 0のフォトルミネッセンス分光を行った。 励起光として H e - C dレーザ (波長 325 nm) を用いて、 E x 2— "!〜 E x 2— 1 0のフ オトルミネッセンスを測定した。 -
E X 2-5, Ex 2— 1 0、 および、 比較としてノンド^-プニ酸化チタン、 パ ィロクロア相 E u2T ί 207の結果を図 1 5および図 1 6に示し、 詳述する。 図 9は、 Ε χ 2— 5、 Ε X 2-7, Εχ 2_9、 Ε χ 2— 1 0およびノンドー プニ酸化チタンの X線回折パターンを示す図である。 実施例 1と同様に、 X線回折パターンから 0. 5 a t%を超える Euをドープ した E X 2— 7、 Ex 2— 9および E x 2— 1 0では、 バイオロクロア層である E u2T i 207のピーク (222) 力《検出されたが、 製造プロセスを最適化するこ とによって 5. 0 a t %までドーピング可能であり得る。 また、 実施例 1と同様に、 いずれの X線回折パターンにおいても、 アナターゼ 型二酸化チタンである (101 ) 面のピーク、 および、 ルチル型二酸化チタンで ある (1 1 0) 面のピークが検出された。 このことから、 得られた二酸化チタン 粒子は、 アナターゼ型ニ酸化チ^ンとルチル型二酸化チタンとの混合物であるこ
とが分かった。 さらに、 (1 01 ) 面のピーク強度と (1 1 0) 面のピーク強度との比は、 Eu イオンのドーピング量に応じて変化していることが分かる。 詳細には、 図 1 0を 参照して後述する。 図 1 0は、 ルチル型二酸化チタン含有量および結晶粒径の E u3+濃度依存性を 示す図である。 図より、 ルチル型二酸化チタン含有量は、 E u3+濃度が増加する につれて増加することが分かった。 より詳細には、 ノンドープニ酸化チタンにおいて、 ルチル型二酸化チタン含有 量は 22 w t %であり、 E u 3+濃度 5 a t %において、 52 w t %まで増加した。 このことは、 製造条件によってアナタ一ゼ型ニ酸化チタンとルチル型二酸化チタ ンとの量を制御することを示唆している。 また、 実施例 1と同様に、 ルチル型二酸化チタン含有量が、 E u3+濃度の増大 に伴って飽和することなく増大することからも、 製造プロセスの最適化によって さらなる E uイオンを置換させることができることが示唆される。 得られた二酸化チタン粒子中のルチル型二酸化チタンの粒径は、 60 n m以上 であり、 E u 3+濃度が増加するにつれて 90 nmまで粒成長することが分かつた。 また、 二酸化チタン粒子中のアナターゼ型ニ酸化チタンの粒径は、 Eu3+濃度に かかわらず 30 nm〜35 nmで一定であった。 図 1 1は、 E X 2— 5について、 ルチル型二酸化チタン含有量および結晶粒径 の o2流量依存性を示す図である。ルチル型二酸化チタン含有量、ルチル型二酸化 チタンの粒径およびアナターゼ型ニ酸化チタンの粒径のいずれも、 製造時の o2 流量 (すなわち、 シース 240 (図 2) に導入される 02量) に依存しないことが 分かった。 図 1 0および図 1 1から、 得られる二酸化チタンの相組成および結晶 サイズ (粒径) は、 希土類元素のドーピング量に依存していることが明らかとな つた。 以上の結果を表 4に示す。
表 4
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A:アナターゼ型 Ti02粒子含有量
B;ルチル型 Ti02粒子含有量
次に、 図 1 2は、 Ex 2— 1、 E X 2-2. Ex 2— 4、 Ex 2— 7、 E x 2 一 9、 E x 2— 1 0、および、 E u2T i 207のラマンスぺクトルを示す図である。
Eu2T i 207は、 1 00 cm―1〜 800 cm— 1の範囲において拡散した弱いラマ ン散乱を示した。 一方、 Eu3+をドープした二酸化チタン (E x 2—"!〜 E x 2 -10) は、 いずれも、 特徴的なピークを示した。 より詳細には、 1 46 cm-' (E gモード)、 200 cm— 1 (E gモード)、 40 1 cm"1 (B 1 gモード)、 51 9 cm"1 (B 1 gモード) および 641 cm"1 (E gモード)における散乱はアナターゼ型ニ酸化チタンに一致し、 449 cm-1 (E gモード) および 61 4 cm—1 (A 1 gモード) における散乱はルチル型二酸化 チタンに一致した。 ルチル型二酸化チタンの 1 43 cm—1 (B 1 gモード) における散乱は、 アナ ターゼ型ニ酸化チタンの 1 46 cm— 1 (Egモード) における散乱と重なり見ら れなかった。
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差替 え用紙 (規則 26)
E u 3+濃度の増大に伴い、 ルチル型二酸化チタンの E gモード (449 c m一1) および A 1 gモード (61 4 crrf1) のピーク強度は増大した。 このことは、 図 1 0を参照して説明した、 E u3+濃度の増大に伴いルチル型二酸化チタンの含有 量が増大することに一致する。 なお、 E X 2— 1 0においても E u2T i 207のピ —クは観察されなかった。 これは、 Ex 2— 1 0中に含有されるパイロクロア相 がごく少量であるためと考えられる。 図 1 3は、 Ex 2— 1、 E X 2-5, Ex 2— 1 0、 ノンドープニ酸化チタン および Eu2T ί 207の紫外一可視分散反射スぺクトルを示す図である。 いずれのスペクトルも、 約 405 nmに吸収帯を有しており、 この吸収帯は約 3. 06 e Vのバンドギヤップに相当し、 二酸化チタンのバンドギヤップに等し いことを確認した。
—方、 Eu2T i 207は、 395 nm、 416 n m、 467 n mおよび 538 n mにさらなる吸収を示した。これらは、 Eu3+の内殻遷移 4 f →4 f に相当する。 一方、 Ex 2— 1、 E X 2— 5および E X 2— " I 0のいずれも、 Eu3+の内殻 遷移 4 f →4 f に相当するピークは見られなかった。 これは、 いずれの試料も E u3+のピークが検出されるほど Eu3+を含んでおらず、 もっとも強度の大きな Eu 3+395 n mの吸収を与える遷移過程が、 二酸化チタンの大きな吸収 (約 405 nm) によってクェンチされたためである。 図 1 4は、 種々の条件で励起させた E X 2— 5およびノンドープニ酸化チタン の励起スぺクトルを示す図である。 スペクトル (a) は、 波長 61 7 mの光で E X 2— 5を励起させた場合の励起 スぺクトルである。 なお、 波長 61 7 nmは、 E u 3+の °D5→Q F2遷移からの放射 に相当する波長である。 スぺクトル (a) は、 360 nm, 41 6 nm, 467 nmおよび 538 nm にピークが見られた。 これら 4つのピークのうち 41 6 nm、 467 nmおよび 538 nmのピークは、 図 1 3で説明した紫外一可視吸収スぺクトルのパイロク ロア相のピークに示されるピークと一致した。 すなわち、 これら 3つのピークは、 E u3+の 7 F01→5D3、 7F01→5D2、 および、 7F01→5D1遷移に相当する。スぺクトル(a)に見られる 360 nmのピークは、 図 1 3で説明したノンドープニ酸化チタンの吸収帯に一致した。 これらから、 E u3+が二酸化チタンホスト格子を介して効率的に励起されたこ
とが示される。 なお、 360 nmのピークの右すそは、 41 6 nmのピークと一 部重なっているものの、 完全に重なっていないことに留意されたい。 スぺクトル (b) は、波長 360 nm以下の光 (ここでは波長 36 O n mの光) でノンドープニ酸化チタンを励起させた場合の励起スぺクトルである。 スぺクト ル (b) には特徴的なピークは見られなかった。 スぺクトル (d) は、 波長 360 nm以下の光 (ここでは波長 360 n mの光) で E X 2— 5を励起させた場合の励起スペクトルである。 ズベクトル (b) と異 なリ、 E u3+からの特徴的なピークを 590 n m〜 720 n mの波長範囲に示し た。 , より詳細には、 これらのピークは、 励起された Eu3+の電子の QD5→7Fj ( j = "!〜 4) への遷移に一致する。 これらのピークは、 可視にて純赤色 (p u r e r e d) と識別され、 極めて シャープであり、 またその強度も大きい。 このような、 明瞭な純赤色を示す発光 材料は、 例えば、 白色 LEDの応用に有効であり得る。 スぺクトル ( c ) は、 ノンドープニ酸化チタンの吸収端よリも長波長 (> 45 0 nm) の光 (ここでは波長 457 nmの光) で E x 2— 5を励起させた場合の 励起スぺクトルである。 この場合もスペクトル (d) と同様に、 590 nm〜720 nmの波長範囲に E u3+からの特徴的なピークが見られた。 このように、希土類元素を励起させる波長の光(ここでは波長 457 nmの光) を二酸化チタン粒子に照射することによつても、 希土類元素に基づく発光を取り 出すことができる。 しかしな力《ら、 スぺクトル (c) で見られたピーク強度は、 スぺクトル (d) のピーク強度に比べて小さく、 ピークはブロードであった。 この とから、 本発 明で得られる希土類元素がドープされた二酸化チタン粒子は、 ホストである二酸 化チタンから希土類イオンへのエネルギー移動が生じ易いことが分かった。 以上から、 本発明で得られたユウ口ピウムをドープニ酸化チタンは、 二酸化チ タンの吸収波長を有する光で容易に Eu3+を励起させ、 Eu3+に基づく光を取り出 すことができることが分かった。 図 1 5は、 Ex 2_5、 E x 2— 1 0、 E u20,および E u2T i 207のフォト
ルミネッセンススぺクトルを示す図である。 E X 2— 5および E X 2- 1 0のい ずれも、 Eu203および Eu2T i 207で見られるピークと異なるピークを示した。 また、 これらのピークは、 裸眼で明瞭に観察される赤色発光であった。 このことは、 E u 2— 5および E u 2-1 0における E u3+の局所的な環境が、 E u203および E u2T i 207の E u3+の局所的な環境とは異なることを示唆して いる。 すなわち、 E X 2— 5および E X 2— 1 0からの放射は、 Eu203および E u2T i 207によるものではなく、 二酸化チタン格子のチタンサイ卜の一部のチ タンと置換された E u3+に起因するものである。
E u 2 - 1 0のスペクトルでは、 Eu2T i 207によるピークと類似のピークが 61 2 nmに観察された。 このことは、 図 9を参照して説明したように、 過剰な E u3+によるパイロクロア相の析出に起因する。
E u 2— 5のスぺクトルは、 。D5→7Fj ( j = 1〜4 のピークを示す。 °D5→7 F,線 (599 nm、 3つのシュタルク分裂) は、磁気ダイポール遷移から生じる ことが知られている。
—方、
QD
5→
7F
2線 (61 7 nm、 5つのシュタルク分裂) は、 電気双極子遷移 から生じることが知られている。 磁気双極子遷移は、 電気双極子遷移が抑制され ている場合にのみ生じ得、 電気双極子遷移は、 E u
3+が反転中心ではなく、 格子 位置を占有している場合にのみ生じ得、 局所的な対称性に影響され得る。 図 1 5の E X 2— 5スぺクトルに示されるように、 本発明で得られた E uをド —プした二酸化チタンでは、 電気双極子遷移のピーク強度は、 磁気双極子遷移の ピーク強度よりも大きい。 このことは、 本発明の E uをドープした二酸化チタン では、 Eu
3+は T i 0
2ホスト格子内の反転中心のないチタンサイ卜に位置してい ることを示唆してし、る。
遷移と
ΰ0
5→
7Ρ
2遷移との相対強度比は、 E u
3+の局所的な対称性に極 めて敏感であることは周知である。 実施例 2では、 °D
5→
7F
2遷移 (61 7 nm) と
遷移 (599 nm) との強度比は、 E x 2— "!〜 E x 2— 1 0いず れにおいても約 9. 7と一定であった。 このことは、 E u
3+の局所的な環境は、 いずれの試料においても T i 0
2ホスト 格子内の格子位置(すなわちチタンサイ卜)に位置していることを示唆している。 図 1 6は、 発光強度の Eu
3+濃度依存性を示す図である。
図 1 5に基づいて、 Ex 2— 1〜Ex 2— 1 0それぞれの °D5→7F2遷移 (6 1 7 nm) からの発光強度を Ex 2— 5の発光強度で正規化してプロッ卜した。
輝度は、 E u3+濃度が 0. 5 a t o/oまで増大するにしたがって、 増加し、 その後 は一定になった。 これは、 図 9を参照して説明したように、 0. 5 a t %を超え る E u3+濃度では発光に寄与する E u3+ (すなわち、 T i 02ホスト格子内のチタ ンサイトに位置する E u3+) が、 いずれもパイロクロア相として析出するためで
輝度が、 チタンサイ卜と置換した E u3+濃度に比例して増加することから、 製 造プロセスを最適化することによって 5. 0 a t 0/0まで E u3+をドーピングさせ ることができれば、より望ましい輝度を有する発光材料が得られ得る。なお、 5. O a t %を超えて E u3+イオンをドーピングしても輝度の増加は見られないこと が知られている。 以上、 実施例及び図面等によって詳述したように、 本発明は、 二酸化チタン結 晶格子中のチタンサイ卜が希土類元素によって所定量置換された、 すなわち、 希 土類元素がドープしてなる二酸化チタンの創出に成功.したものであり、 これによ つて希土類元素による蛍光を高効率で取リ出しうる蛍光発光物質の創出に成功し、 その意義は、 以下述べるように、 各種分野において利用可能性の高い有用な発明 をなしたものである。 産業上の利用可能性
以上、 説明してきたように、 希土類元素をドーピングした二酸化チタン粒子に ついて詳述してきた。 0〜0. 5 a t %までの濃度範囲では、 複雑な製造プロセ スを必要とすることなく、容易に T i 02ホス卜格子内のチタンサイ卜と希土類元 素とが置換することが分かった。 さらなる製造プロセスの最適化によって、 5. 0 a t %まで置換可能であり得る。 また、 希土類元素をドーピングした二酸化チタン粒子は、 二酸化チタンの吸収 波長を有する光を照射するだけで、 希土類イオンに基づく発光を容易に取り出す ことができる。 このような発光特性を利用して、 希土類元素をドーピングした二 酸化チタン粒子は、 発光材料として利用可能であり得る。 ナノ粒子からなる発光 材料は、 白色 L ED、 プラズマディスプレイ、 光増幅器、 マイクロレーザ、 テレ ビスクリーン、 照明器具等の発光デバイスに利用され得る。