WO2006129719A1 - 貯水機能付き排水システム - Google Patents

Abstract

　負圧吸引排水システムにおいて、排水の開始から負圧吸引力が発生するまでの時間が長い場合であっても、排水口からの排水の逆流を防止できる排水システムを提供するものであり、一個以上の水回り器具と、排水流路の水平流路部分との間に、排水を一時的に溜める貯留部を設けたものである。

Description

明 細 書

貯水機能付き排水システム

技術分野

[0001] 本発明は、単一の、もしくは複数の水回り器具に連結されて、水平方向に延びる水 平流路部分および、垂直下方に延びる垂直流路部分を有する排水流路を具えてな る排水システムに関するものであり、水回り器具力 排水流路に流入した排水が、垂 直流路部分まで達して、そこを流下することによって水平流路部分内に存在する排 水に負圧吸引力を及ぼすに到るまでの間に生じる不具合を解決しょうとするものであ る。

背景技術

[0002] 従来より広く一般に採用されている排水システムでは、横引き排水管に下り勾配を 付けることによって排水に流動エネルギーを付与することとして 、るが、横引き排水 管に下り勾配を付与するときは、その排水管の長さが長くなると、その分だけ床下の 空間を広げることが必要であった。

従って、床下の空間が広げられないという設計上の規制のあるところでは、横引き 排水管の敷設が難 、と 、う欠点があった。

[0003] 近年、力かる排水システムの欠点を解決するために、上述したように、水回り器具か ら排水流路に流入した排水が、垂直流路部分を流下するに当って、水平流路部分 内に存在する排水に及ぼす負圧吸引力を利用した排水システムが開発された (特許 文献 1)。これによれば、排水流路の水平流路部分に下向き勾配を付与する必要が な！、ので、新し 、排水システムとして注目されて 、る。

[0004] 特許文献 1：特開平 2000— 297447号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0005] しかるに、上記の負圧吸引排水システムにあってもなお解決しなくてはならない点 が指摘されている。

それはすなわち、水回り器具力 の排水の開始から、水平流路部分内の排水に負 圧吸引力が作用するまでの間にタイムラグがある点であり、これにより、例えば、浴槽 等のように、一度に大量の排水を行う場合には、その負圧吸引力が発生するより先に 、洗い場側の排水口より排水があふれてしまうという問題があった。

また、たとえば洗面台やキッチンシンクでの流し洗 、のような少量の排水であっても 、負圧吸引力が発生するまでの間、排水口部分に排水が溜まってしまうという問題も めつに。

そのため、排水システムの設計限界が、排水の開始から、負圧吸引力が発生する までの時間によって決まることになり、排水流路の、水平流路部分の設計の自由度が 小さくなるという問題があった。

[0006] 本発明は、負圧吸引排水システムのこのような欠点を解決することを課題とするもの であり、それの目的とするところは、排水の開始から、負圧吸引力が発生するまでの 時間が長い場合であっても、排水ロカ の排水のあふれ、および排水口部分への排 水の溜まりを十分に防止できるシステムを提供するにある。

課題を解決するための手段

[0007] 本発明は、単一の、もしくは複数の水回り器具に連結されて、水平方向に延びる水 平流路部分および、垂直下方に延びる垂直流路部分を有する排水流路を具えてな る排水システムであって、水回り器具と水平流路部分との間に、排水を一時的に溜め る貯留部を設けたことを特徴とする貯水機能付き排水システムにかかるものである。

[0008] ここで好ましくは、前記貯留部に、それの内部ガス、多くは空気の排出および吸入 を許容する通気機構を設けてなる。

なお、この通気機構は、開放型通気部または閉止型通気部とすることが好ましい。 発明の効果

[0009] 本発明は、排水流路が、水平流路部分と垂直流路部分とを有する排水システムに 貯水機能を付与したものであり、これによれば、たとえば、水平流路部分の長さが長く なる場合や、一個以上の水回り器具力 一度に大量に排水される場合であっても、 垂直流路部分を排水が流下することに基いて、水平流路部分内の排水に負圧吸引 力が作用するまでの間、排水を、排水流路に設けた貯留部に一時的に溜めることに よって、それの逆流を防止することができるので、先に述べた負圧吸引排水システム の完成度をより高めることができる。

[0010] また本発明によれば、貯留部の貯水機能により、排水中に空気が巻き込まれること によって発生する、「ズーズ一」という空気吸い込み音の発生時間を短縮するとともに 、その吸い込み音を小さくすることができる。

[0011] 力かる排水システムにおいて、貯留部に、それの内部空気の、外側への排出およ び、外部空気のそこへの吸い込みを許容する通気機構を設けたときは、貯留部に封 じ込められた内部空気の圧縮なしに、水回り器具力 の排水を、そこに多量に、かつ 、円滑に貯水することができ、また、貯留部に溜められた排水を、貯留部内に負圧を 発生させることなく円滑に流下させることができ、さらには、空気の吸い込み音をより 一層低減させることちできる。

[0012] ここで、通気機構を開放型通気部とするときは、貯留部の頂部にパイプ等を取付け ることで、通気機構を簡易に構成することができ、また、その通気機構を閉止型通気 部とするときは、貯留部の頂部に袋状の可撓膜体、弾性膜体等を気密に取付けるこ とで、これもまた通気機構を簡易に構成することができる。

[0013] し力も、この後者の場合には、貯留部内の空気が外部に放出されることがないので 、特別の対策を講じるまでもなぐ排水臭気の外部放散を十分に防止することができ る。

[0014] ところで、貯留部を、水平流路部分と、水回り器具の一部としてのトラップとの間に 配設した、所望の形状および寸法を有するチャンバ一とした場合は、貯留部の構成 および敷設を、ともに簡単かつ容易にし、併せて、貯留部に、所要の機能を十分に 発揮させることができる。

図面の簡単な説明

[0015] [図 1]本発明の対象となる排水システムの概要を、階層を断面として示す側面図であ る。

[図 2]本発明の実施形態の要部を示す拡大断面図である。

[図 3]他の実施形態を示す要部拡大断面図である。

[図 4]他の実施形態を示す要部拡大断面図である。

[図 5]さらに他の実施形態を示す要部拡大断面図である。 符号の説明 1 浴槽

2 浴槽排水口

3 洗い場

4 洗い場排水口

5 卜ラップ

5a トラップ底面

6 外筒

6a 外筒の排水入口 6b 外筒の排水出口 7 内筒

7a 内筒の下端

8 流入管

9 流出管

10 チャンパ一

11 エア抜きパイプ

12 袋

21 遮音テープ

22 遮音壁

31 立管

32 排水流路

32a 水平流路部分

32b 垂直流路部分

33 浴槽

34 洗い場

35 卜ラップ

36 連結部

H 水頭差 発明を実施するための最良の形態

[0017] 本発明は、排水が、排水流路の垂直流路部分の流下を開始するまでの間、一以上 の水回り器具力 の排水が一時的に溜まるようにしたものであり、これにより、排水シ ステムの設計を、従来のような負圧吸引の開始時間によることがなぐ必要な排水処 理能力に基 、て行うことができるようにしたものである。

[0018] 図 1は、本発明が対象とする排水システムを、集合住宅などに適用した場合の概要 を、階層を断面として示す側面図であり、符号の 31は立管、 32は排水流路、 33は水 回り器具の一例である浴槽、 34は浴槽の一部としての洗い場、 35は、浴槽 33に付 属して、浴槽 33および洗い場 34からの排水を補集する、共用のトラップである。

[0019] ここで、トラップ 35に連結した、可撓管にて構成することもできる排水流路 32は、水 平方向に延びる水平流路部分 32aおよび、垂直下方に延びる垂直流路部分 32bを 有してなり、ここでは、その垂直流路部分 32bの下端部を、立管 31に、水平流路部 分 32aに対する水頭差 Hをとつて連結する。

符号 36はその連結部である。

[0020] この場合、排水流路 32は、単に床スラブ 37の表面に這わせておくだけのものであ り、排水のための勾配をとらない。

従って、ここにおける排水は、排水が水頭差 H分だけ流下することによって、水平流 路部分 2a内の排水に作用する負圧吸引力を利用することにより行うことができ、その 負圧吸引力が作用した場合には、水平流路部分 32a内の排水は、その吸引力によ つて強制的に流下されることとなる。

[0021] この図に示すところでは、浴槽 33からの排水の開始から、負圧吸引力の発生まで の間の時間遅れは、水平流路部分 32aの長さが長くなつて流路抵抗が大きい場合、 浴槽 33の高さが低い場合等に大きくなり、大量の排水に対しては、これらが組み合 わさることによって、通常は、洗い場 34の、図示しない排水口からの排水のあふれが より発生し易くなる。

[0022] そこで、本発明では、浴槽 33等の一個以上の水回り器具と、排水流路 32の水平流 路部分 32aとの間に貯留部を設け、水回り器具から、たとえば大量の排水があった場 合等にも、排水をそこに一時的に溜めるようにして、水平流路部分 32a内の排水に負 圧吸引力が作用するまでの間の、貯留部と併せた、水平流路部分内への貯水能力 を大きく高めた。

[0023] 本発明の貯留部としては特に限定することはないが、水回り器具と、排水流路の水 平流路部分との間に、たとえば、排水流路の太さよりも極太の管体や容器を設けるこ とによって構成することができる。

[0024] なお、排水システムの設計にあたっては、排水流路の管径の拡大や、複数本の排 水流路の配設によって設計限界を更に拡大することも可能であり、またこの一方で、 複数の水回り器具に共用の一の貯留部を設け、それに一本の排水流路を連結する ことも可能である。

[0025] 以下、浴槽および洗い場を単一の水回り器具とする排水システムにより、本発明の 実施形態の要部を、図 2に示す拡大断面図に基いて説明する。

図中 1は浴槽、 2はその排水口、 3は洗い場、 4はその排水口である。 5は、浴槽 1お よび洗い場 3に共通のトラップであり、図では、洗い場 3の下側に位置するこのトラッ プ 5は、外筒 6内に内筒 7が配置され、内筒 7の上端は排水口 4に連結され、内筒 7の 下端 7aはトラップ 5の底面 5aより浮き上がった状態として構成されている。

トラップ 5の外筒 6の下部には排水入り口 6aが設けられ、これに排水口 2との間をつ なぐ流入管 8が連結されている。そして、外筒 6の上部には、排水出口 6bが設けられ 、この排水出口 6bに、たとえば内径が 50mm程度の流出管 9を介して、貯留部の一 例としての、大容量のチャンバ一 10が連結される。

[0026] そして、このチャンバ一 10の下端部に、可撓管もしくは剛性管にて形成することが できる、たとえば内径が 10〜30mm程度の排水流路 32の、水平流路部分 32aの端 部が連結される。

なおここで、排水流路 32を可撓管にて形成する場合は、水平流路部分 32aは、床 スラブ 37上に敷設されることのある他の配管、配線等を跨ぐための凸部を形成するこ とちある。

[0027] 従ってこの排水システムでは、トラップ 5を経由した排水は、多くは、水平流路部分 3 2aに流入するに先だって、チャンバ一 10内にー且溜められることになり、この滞留は 、開始された排水の流下先端部分が垂直流路部分 32bに達して、そこを流れ落ちる ことによって、水平流路部分 32aに存在する排水に負圧吸引力が作用するに到るま で断続されること〖こなる。

[0028] この一方で、水平流路部分 32a内の排水に負圧吸引力が作用した後は、チャンバ 一 10内に溜められた排水は、流路寸法に応じた流量で排出されることとなるので、排 水の開始から、上述したような負圧吸引力が発生するに到るまでの間の排水をチャン バー 10に溜めることで、排水の、排水ロカもの逆流のおそれを十分に取り除くことが できる。

[0029] 図 3は、本発明の他の実施形態を示す図 2と同様の図である。

ここでは、トラップ 5に大径の流出管 9を介して連続したチャンバ一 10の頂壁に、通 気機構なかでも開放型通気部の一例としてのエア抜きパイプ 11が立設されている。 このエア抜きパイプ 11によれば、チャンバ一 10内の空気 a等が自由に出入りできる ことにより、チャンバ一 10内に排水が大量に抵抗なく貯水され、また、排出されること になる。

[0030] 図 4は他の実施形態を示す図であり、これは、内径が 50mm程度の流出管 9の延 在長さを長くとることで、その延在部分の全体をチャンバ一 10として機能させるもので ある。ここでは、このようなチャンバ一 10にエア抜きパイプ 11を設けることにより、チヤ ンバー 10のボリュームを十分有効に生力した、排水の流入出を可能ならしめている。

[0031] ここで、負圧吸引力が間欠的に作用するときは、水平流路部分 32aがチャンバ一 1 0内の空気 aを吸 、込むことによる、ズーズ一と 、う空気吸 、込み騒音が発生すること もあるが、このような騒音は、たとえば、パイプ 11を浴室の外側に配置することによつ てほとんど問題なくなることになる。

更に、チャンバ一 10に設けたノイブ 11に遮音材等を貼り付けることによって騒音を /J、さくすることち可會 となる。

図 4において符号 21はパイプ 11の外表面に巻かれた遮音テープを示す。

[0032] ところで、以上のようなエア抜きパイプ 11に関し、チャンバ一内から放散される騒音 に対しては、そのパイプ 11内に、グラスウール、発泡材その他力もなる吸音材を挿入 配置することも有効であり、また、そのノイブ 11を屋外に導出した場合および、立管 3 1に開口させた場合には、騒音および臭気のそれぞれを一層効果的に処理すること ができる。

[0033] 図 5はさらに他の実施形態を示す図であり、これは、チャンバ一 10の頂壁に、通気 機構、なかでも閉止型通気部の一例として可撓性の、または伸縮可能な袋 12を気密 に取付けたものである。

この通気機構によれば、チャンバ一 10内の空気 aを逃がすに当っては、袋 12を膨 らませ、この一方で、チャンバ一 10内への空気 aの吸い込みに当っては、袋 12を収 縮させることで対応することができるので、空気 aの系外への逃出を有効に防止する ことができる。

従ってここでは、臭気の問題を完全に解決することができ、また袋 12に固物の物性 の下で、騒音の発散をもまた有利に抑制することができる。

なお、袋 12を遮音壁 22にて囲んだ場合には、騒音の低減に一層の効果をもたら すことができる。

産業上の利用可能性

[0034] 本発明は以上の通りであり、負圧吸引排水システムの改良に好んで採用される力 力かる排水システムのみならず、横引き排水管に下り勾配を付ける従来の排水シス テムにもそのまま適用可能であり、リフォームの際にも従来の排水システムにそのまま 採用できるので、その利用範囲は広い。

また、本発明は、立管を必要としない低層の建築物にも適用することができる。

Claims

請求の範囲

[1] 単一の、もしくは複数の水回り器具に連結されて、水平方向に延びる水平流路部 分および、垂直下方に延びる垂直流路部分を有する排水流路を具えてなる排水シス テムであって、

水回り器具と水平流路部分との間に、排水を一時的に溜める貯留部を設けたことを 特徴とする貯水機能付き排水システム。

[2] 貯留部に通気機構を設けてなる請求項 1に記載の貯水機能付き排水システム。

[3] 通気機構を開放型通気部としてなる請求項 2に記載の貯水機能付き排水システム

[4] 通気機構を閉止型通気部としてなる請求項 2に記載の貯水機能付き排水システム

[5] 水平流路部分と、水回り器具の一部としてのトラップとの間に貯留部としてのチャン バーを設けてなる請求項 1〜4のいずれかに記載の貯水機能付き排水システム。