明細書 半導体製造方法及び半導体装置 技術分野 本発明は、 単結晶金属又は多結晶金属上に半導体膜が形成された半導体装置及 びその製造方法に関する。
本出願は、 日本国において 2 0 0 5年 3月 28日に出願された日本特許出願番 号 2 00 5— 9 1 7 1 0を基礎として優先権を主張するものであり、 この出願は 参照することにより、 本出願に援用される。 背景技術 従来、 半導体素子は、 S i (熱伝導率 1 50 W/mK) ゃサフアイャ (熱伝導 率 2 0W/mK) といった熱伝導率の低い基板の上に形成されている。 そのため、 放熱に制限があり、 高いパワーで動作させることが困難であった。 この問題は、 例えば Cu (熱伝導率 40 0 W/mK) 、 A g (熱伝導率 430 W/mK) 、 Au (熱伝導率 32 0 W/mK) 等の金属基板を用いれば解決する。
しかしながら、 金属と半導体とは容易に反応するので、 金属基板上に半導体を 成長させることは困難であった。
また、 近年、 FBAR (Film Bulk Acoustic Resonator) と呼ばれる金属上に A 1 Nを成長して作成するフィルタ素子の開発がされている。 しかしながら、 従 来、 金属上に A 1 Nをェピタキシャル成長させることは困難であったため、 FB ARは金属上に多結晶の A 1 Nを形成したものが用いられていた。
非特許文献 Morit Akiyama 他, Influence of metal electrodes on crystal orientation of aluminum nitride thin films, Vacuum 74 (2004) , 699- 703
非特許文献 2 Motoaki Hara 他, Surface micromachined AIN thin film 2 GHz
resona t or f or CMOS int egra t i on, Sensors and Ac tuators A 1 17 (2005) 21 1-216 発明の開示 本発明は、 以上のような課題を解決し、 単結晶金属又は多結晶金属上に結晶性 の優れた半導体膜を形成する半導体製造方法、 及び単結晶金属又は多結晶金属上 に結晶性の優れた半導体膜が形成された半導体装置を提供することを目的とする。 本発明に係る半導体製造方法は、 単結晶金属板又は多結晶金属板と I I I族金 属又は I I I —V族化合物とを所定の圧力以下に減圧されたチャンバ内に配置し、 前記単結晶金属板又は多結晶金属板を加熱し、 前記単結晶金属板上又は多結晶金 属板上に I I I 一 V族結晶をェピタキシャル成長させ、 I I I 一 V族半導体を製 造することを特徴とする。
また、 本発明に係る半導体装置は、 前記単結晶金属板又は多結晶金属板と、 前 記単結晶金属板又は多結晶金属板を所定の圧力以下に減圧されたチヤンバ内で加 熱し、 その後、 前記チャンパ内で前記単,結晶金属板又は多結晶金属板上にェピタ キシャル成長させることにより形成された半導体膜とを備えることを特徴とする。 また、 本発明に係る半導体製造方法は、 C u基板上に、 5 0 0 ^以上 5 7 5 以下の温度で A 1 Nをェピタキシャル成長させて第 1の A 1 N膜を形成すること を特徴とする。
また、 本発明に係る半導体装置は、 C u基板と、 前記 C u基板上に、 5 0 0で 以上 5 7 5 以下の温度で A 1 Nをェピタキシャル成長させることにより形成さ れた第 1の A 1 N膜とを備えることを特徴とする。
また、 本発明に係る半導体製造方法は、 金属基板上に、 第 1の半導体をェピタ キシャル成長させて第 1の半導体膜を形成し、 前記第 1の半導体膜上に、 第 2の 半導体をェピタキシャル成長させて第 2の半導体膜を形成する半導体製造方法で あって、 前記金属基板との間で界面反応層が形成されない成長温度で第 1の半導 体をェピタキシャル成長させた後に、 前記第 2の半導体膜と同一の成長温度で第 1の半導体をェピタキシャル成長をさせることにより、 上記第 1の半導体膜を形 成することを特徴とする。
さらに、 本発明に係る半導体装置は、 金属基板と、 前記金属基板上に、 第 1の 半導体をェピタキシャル成長させることにより形成された第 1の半導体膜と、 前 記第 1の半導体膜上に、 第 2の半導体をェピタキシャル成長させることにより形 成された第 2の半導体膜とを備え、 上記第 1の半導体膜は、 前記金属基板との間 で界面反応層が形成されない成長温度でェピタキシャル成長させた後に、 前記第 2の半導体膜と同一の成長温度でェピタキシャル成長をさせることにより、 形成 されていることを特徵とする。
本発明の更に他の目的、 本発明によって得られる具体的な利点は、 以下に説明 される実施の形態の説明から一層明らかにされる。 図面の簡単な説明 図 1は、 実施形態の半導体装置の模式的な断面図である。
図 2は、 P LD装置の構成を示す図である。
図 3は、 上記半導体装置の製造プロセスを示すフローチャートである。
図 4 (A) 〜図 4 (E) は、 C u基板の表面の RHE E D像を表した図である。 図 5 (A) 〜図 5 (C) は、 C u基板の XP Sによる光電子の放出の解析結果 を示した図である。
図 6 (A) 〜図 6 (C) は、 A 1 N膜の [1 1一 2 0] 回折の RHEED像を 表した図である。
図 7 (A) 〜図 7 (C) は、 A 1 N膜の [1 0— 1 0] 回折の RHEED像を 表した図である。
図 8は、 分光エリプソメトリーで測定した A 1 Nと C uとの界面反応層の厚さ のグラフを示す図である。
図 9 (A) 及び図 9 (B) は、 G a N膜の表面の RHE ED像を表した図であ る。
図 1 0は、 実施の形態の一般化した半導体装置の模式的な断面図である。
図 1 1は、 高超高真空条件下においてァニールした F e基板の表面の AFM像 を示した図である。
図 1 2は、 高超高真空条件下においてァニールした F e基板の表面の RHEE D像を示した図である。
図 1 3は、 上記 F e (1 1 0) 基板上に PL D法により A 1 Nを成膜したとき の A 1 N表面の R HEED像を示した図である。
図 14は、 上記 F e (1 0 0) 基板上に PL D法により A 1 Nを成膜したとき の A 1 N表面の RHE ED像を示した図である。
図 1 5は、 上記 F e ( 1 1 1) 基板上に P LD法により A 1 Nを成膜したとき の A 1 N表面の RHE ED像を示した図である。
図 1 6は、 基板温度 5 1 0でで成長させた A 1 N薄膜の RHE ED像を示した 図である。
図 1 7は、 基板温度 48 0°Cで成長させた A 1 N薄膜の RHE ED像を示した 図である。
図 1 8は、 基板温度 43 0°Cで成長させた A 1 N薄膜の RHE ED像を示した 図である。
図 1 9は、 基板温度 3 8 0でで成長させた A 1 N薄膜の RHE E D像を示した 図である。
図 20は、 A 1 N薄膜の 10 00 1 j方位の極点図 (投影図) である。
図 2 1は、 A 1 N薄膜の(1 0— 1 0方位の極点図 (投影図) である。
図 22は、 A 1 N薄膜の(1 0— 1 11方位の極点図 (投影図) である。
図 23は、 A 1 N薄膜のチルト分布およびツイスト分布の成長温度依存性につ いて示すグラフである。
図 24は、 A 1 N薄膜における 20 / ωスキャンを示す図である。
図 2 5は、 A 1 N薄膜における A 1 000 2回折のロッキングカーブを示す 図である。
図 2 6は、 480 °Cで成長させた A 1 Nバッファ層上の G a N薄膜の RHE E D像を示した図である。
図 2 7は、 430でで成長させた A 1 Nバッファ層上の G a N薄膜の RHE E D像を示した図である。
図 28は、 380 t:で成長させた A 1 Nバッファ層上の G a N薄膜の RHE E
D像を示した図である。
図 29は、 G a N薄膜のチルト方位分布及びツイスト方位分布における半値幅 の、 A 1 Nバッファ層成長温度依存性を示すグラフである。
図 30は、 F e (1 1 0)上に A 1 Nバッファ層を介して成長させた G a N薄膜 の 2 θ /ωスキャンを示すグラフである。
図 3 1は、 F e (1 1 0)上に A 1 Nバッファ層を介して成長させた G a N薄膜 の 000 2回折ロッキング力一ブを示すグラフである。
図 32は、 F e (1 1 0)上に A 1 Nバッファ層を介して成長させた G a N薄膜 の P Lスぺクトルを示すグラフである。
図 3 3は、 F e (1 1 0)上に A 1 Nバッファ層を介して成長させた G a N薄膜 のパンド端近傍における P Lスペクトルを示すグラフである。
図 34は、 CMP後の Mo (1 1 0)基板表面の AFM像を示した図である。 図 3 5は、 CMP後の Mo (1 0 0)基板表面の AFM像を示した図である。 図 36は、 。 後の 0 (1 1 1 )基板表面の A FM像を示した図である。 図 3 7は、 超高真空中ァニールを行った Mo (1 1 0)基板表面の AFM像を示 した図である。
図 38は、 超高真空中ァニールを行った Mo (1 0 0)基板表面の AFM像を示 した図である。
図 39は、 超高真空中ァニールを行った Mo (1 1 1)基板表面の AFM像を示 した図である。
図 40は、 各温度における Mo (1 1 0)基板表面のワイドレンジ (600 〜 0 eV) の光電子スペクトルを示した図である。
図 41は、 各温度における Mo (1 1 0)基板表面の Mo 3 dの光電子スぺク トルを示した図である。
図 42は、 各温度における Mo (1 1 0)基板表面の〇 1 sの光電子スぺクト ルを示した図である。
図 43は、 各温度における Mo (1 1 0)基板表面の C 1 sの光電子スぺクト ルを示した図である。
図 44は、 1 1 0 で 1時間超高真空中ァニールを行った場合の Mo (1 1
0)基板表面の RHE ED像を示した図である。
図 45は、 1 1 00°Cで 1時間超高真空中ァニールを行った場合の Mo (1 0
0)基板表面の RHE ED像を示した図である。
図 46は、 1 1 0 0°Cで 1時間超高真空中ァニールを行った場合の Mo (1 1
1)基板表面の RHE ED像を示した図である。
図 47は、 Mo (1 1 0)基板上 A 1 N薄膜の結晶格子モデル及び格子ミスマツ チをそれぞれ示す模式図である。
図 48は、 Mo (1 0 0)基板上 A 1 N薄膜の結晶格子モデル及び格子ミスマツ チをそれぞれ示す模式図である。
図 49は、 Mo (1 1 1)基板上 A 1 N薄膜の結晶格子モデル及び格子ミスマツ チをそれぞれ示す模式図である。
図 5 0は、 Mo (1 1 0) 基板上に 30秒間成長させた A 1 N薄膜の RHE E D像を示した図である。
図 5 1は、 Mo ( 1 1 0) 基板上に 30分間成長させた A 1 N薄膜の RHE E D像を示した図である。
図 52は、 Mo (1 0 0) 基板上に 30秒間成長させた A 1 N薄膜の RHE E D像を示した図である。
図 5 3は、 Mo (1 0 0) 基板上に 30分間成長させた A 1 N薄膜の RHE E D像を示した図である。
図 54は、 Mo (1 1 1) 基板上に 30秒間成長させた A 1 N薄膜の RHE E D像を示した図である。
図 5 5は、 M o ( 1 1 ) 基板上に 30分間成長させた A 1 N薄膜の RHE E D像を示した図である。
図 56は、 Mo ( 1 1 0) 上に成長させた A 1 N薄膜における 10 0 0 11方位 の極点図である。
図 5 7は、 Mo (1 1 0) 上に成長させた A 1 N薄膜における { 1 0— 1 0 } 方位の極点図である。
図 5 8は、 Mo (1 1 0) 上に成長させた A 1 N薄膜における { 1 0— 1 1 } 方位の極点図である。
図 59は、 各面方位の Mo基板上に成長させた A 1 N薄膜の 00 0 2回折ロッ キングカーブを示した図である。
図 6 0は、 各面方位の Mo基板上に成長させた A 1 N薄膜の 1 0— 1 0回折口 ッキングカーブを示した図である。
図 6 1は、 Mo (1 1 0)上 A l N薄膜の 20/Ωスキャンを示した図である。 図 62は、 Mo (1 0 0)上 A 1 N薄膜の 1 0— 1 0回折パターン (φスキヤ ン) を示した図である。
図 6 3は、 各面方位 Mo基板上 A 1 N薄膜の G I XRパターン及びそのフィッ ティング曲線を示した図である
図 64は、 Mo基板上 A 1 N薄膜表面の Mo 3 d光電子スペクトルを示した 図である。
図 6 5は、 Mo (1 1 0)基板上の A 1 N薄膜表面の A FM像を示した図である 図 66は、 Mo (1 00)基板上の A 1 N薄膜表面の A FM像を示した図である t 図 6 7は、 Mo (1 1 1)基板上の A 1 N薄膜表面の A FM像を示した図である c 図 6 8は、 Mo (1 1 0) 基板上に 1 1 0 0 で 5分間成長させた A 1 N薄膜 の RHEED像を示した図である。
図 6 9は、 Mo ( 1 1 0) 上 1 1 0 0°C成長 「A 1 N薄膜の G 1 X Rパターン 及びそのフィッティング曲線を、 比較のため 45 0 °C成長 A 1 N薄膜のデータと 並べて示した図である。
図 7 0は、 A 1 N薄膜表面の XP Sスペクトルを、 45 0 成長 A 1 N薄膜に おけるスペクトルと並べて示した図である。
図 7 1は、 CMP後の T a基板の (1 1 0) 面の A F M像を示した図である。 図 72は、 〇¥ 後の丁 a基板の ( 1 0 0) 面の A F M像を示した図である。 図 73は、 CMP後の T a基板の ( 1 1 1) 面の A F M像を示した図である。 図 74は、 CMP後の T a基板の (1 1 2) 面の A F M像を示した図である 図 7 5は、 1 1 0 0 、 1時間のァニール処理後の T a基板の ( 1 1 0 ) 面の
RHE E D像を示した図である。
図 76は、 1 1 00で、 1時間のァニール処理後の T a基板の ( 1 0 0 ) 面の
RHEED像を示した図である。
図 7 7は、 1 1 0 0 、 1時間のァニール処理後の T a基板の ( 1 1 1 ) 面の RHE ED像を示した図である。
図 78は、 1 1 0 0Τ、 1時間のァニール処理後の T a基板の ( 1 1 2 ) 面の RHE E D像を示した図である。
図 7 9は、 1 1 0 01:、 1時間のァニール処理後の T a基板の ( 1 1 0 ) 面の AFM像を示した図である。
図 80は、 1 1 0 0で、 1時間のァニール処理後の T a基板の ( 1 00 ) 面の A FM像を示した図である。
図 8 1は、 1 1 00°C、 1時間のァニール処理後の T a基板の ( 1 1 1 ) 面の A FM像を示した図である。
図 8 2は、 1 1 0 0"€、 1時間のァニール処理後の T a基板の ( 1 1 2 ) 面の A FM像を示した図である。
図 83は、 T a (1 1 0) 基板について測定した、 各温度におけるワイドスキ ヤンの光電子スぺクトルを示した図である。
図 84は、 T a ( 1 1 0) 基板について測定した、 各温度における T a 4 f の光電子スぺクトルを示した図である。
図 8 5は、 T a ( 1 1 0) 基板について測定した、 各温度における C I sの 光電子スぺクトルを示した図である。
図 86は、 T a ( 1 1 0) 基板について測定した、 各温度における O I sの 光電子スぺクトルを示した図である。
図 87は、 T a ( 1 1 0) 基板について測定した、 各温度における N a I s の光電子スぺクトルを示した図である。
図 88は、 T a ( 1 1 0) 面と A 1 N (0 0 0 1 )面とのアラインメント関係及 び格子ミスマッチを示す模式図である。
図 89は、 T a (1 0 0) 面と A 1 N (000 1 )面とのアラインメント関係及 び格子ミスマッチを示す模式図である。
図 90は、 T a ( 1 1 1) 面と A l N (O O O l)面とのァラインメント関係及 び格子ミスマッチを示す模式図である。
図 9 1は、 T a (1 1 2) 面と A l N (O O O l)面とのァラインメント関係及
び格子ミスマッチを示す模式図である。
図 9 2は、 T a ( 1 1 0) 基板上へ A 1 Nを成長させた 30分後の RHE ED 像を示した図である。
図 9 3は、 T a ( 1 1 0) 基板上へ A 1 Nを成長させた 3 0分後の RHEED 像を示した図である。
図 94は、 T a (1 0 0) 基板上へ A 1 Nを成長させた 3 0分後の RHE ED 像を示した図である。
図 9 5は、 T a ( 1 1 1) 基板上へ A 1 Nを成長させた 3 0分後の RHEED 像を示した図である。
図 9 6は、 T a (1 1 1) 基板上へ A 1 Nを成長させた 3 0分後の RHEED 像を示した図である。
図 9 7は、 T a ( 1 1 2) 基板上へ A 1 Nを成長させた 3 0分後の RHE ED 像を示した図である。
図 9 8は、 X線反射率の測定結果とフィッティング結果を示した図である。 図 9 9は、 3 0分間成長させた A 1 N膜について測定したワイドスキャンの光 電子スぺクトルを示した図である。
図 1 00は、 30分間成長させた A 1 N膜について測定した、 T a 4 f の光 電子スぺクトルを示した図である。
図 1 0 1は、 30分間成長させた A 1 N膜について測定した、 T a 4 dの光 電子スぺクトルを示した図である。
図 1 0 2は、 各温度における T a (1 1 0) 基板上の A I N ( 0 0 0 1 ) の X 線反射率の測定結果を示した図である。
図 1 0 3は、 各温度における T a (1 1 0) 基板上の A I N ( 00 0 1 ) の界 面層厚さを示した図である。
図 1 04は、 CMP後の AFM像を示した図である。
図 1 0 5は、 ァニール前の室温の RHE ED像を示した図である。
図 1 0 6は、 7 5 0 °Cの RHEED像を示した図である。
図 1 0 7は、 1 1 0 0°Cの RHEED像を示した図である。
図 1 0 8は、 1 1 0 0°Cで 6 0分間ァニール処理した場合の RHEED像を示
した図である。
図 1 0 9は、 W ( 1 1 2) 面基板における超高真空中ァニール後の AFM像を しめした図である。
図 1 1 0は、 W 4 f ピークの光電子スぺクトルを示した図である。
図 1 1 1は、 C 1 s ピークの光電子スペクトルを示した図である。
図 1 1 2は、 O 1 s ピークの光電子スぺクトルを示した図である。
図 1 1 3は、 W ( 1 1 2) 面と A 1 N ( 00 0 1 ) 面とのアラインメント関係 及び格子ミスマッチを示す模式図である。
図 1 14は、 T a ( 1 1 2) 基板の A 1 N成長前における R H E E D像を示し た図である。
図 1 1 5は、 T a (1 1 2) 基板上への A 1 N成長中 (30秒) における RH E E D像を示した図である。
図 1 1 6は、 T a (1 1 2) 基板上への A 1 N成長中 (1分) における RHE ED像を示した図である。
図 1 1 7は、 T a ( 1 1 2) 基板上への A 1 N成長中 (5分) における RHE ED像を示した図である。
図 1 1 8は、 T a (1 1 2) 基板上へ A 1 Nを 3 0分間成長させた後における RHE E D像を示した図である。
図 1 1 9は、 W ( 1 1 2) 面基板上に成長した A 1 N層表面の AFM像を示し た図である。
図 1 20は、 W ( 1 1 2 ) 面基板上に成長した A 1 N層表面の S EM像を示し た図である。
図 1 2 1は、 W ( 1 1 2) 基板と A 1 N膜の E B S D測定結果を示す図である。 図 1 2 2は、 W ( 1 1 2) 基板と A 1 N膜の E B S D測定結果を示す図である。 図 1 2 3は、 XRD測定結果を示す図である。
図 1 24は、 室温における A g基板の RH EE D像を示した図である。
図 1 2 5は、 40 0 における A g基板の RHE ED像を示した図である。 図 1 2 6は、 52 0 °Cにおける A g基板の RHE E D像を示した図である。 図 1 2 7は、 Ag (1 1 1) 基板について測定した、 各温度における A g 3
dの光電子スぺクトルを示した図である。
図 1 28は、 Ag (1 1 1 ) 基板について測定した、 各温度における O I s の光電子スぺクトルを示した図である。
図 1 2 9は、 Ag (1 1 1) 基板について測定した、 各温度における C 1 s の光電子スぺクトルを示した図である。
図 1 30は、 Ag (1 1 1) 面と A l N (O O O l)面とのアラインメント関係 及び格子ミスマッチを示す模式図である。
図 1 3 1は、 Ag (1 1 1) 面と A l N (O O O l)面とのァラインメント関係 及び格子ミスマッチを示す模式図である。
図 1 32は、 Ag (1 1 1)基板上に 620でで A 1 Nバッファ層を成長させた 際の RHE E D像を示した図である。
図 1 33は、 Ag (l l 1)基板上に 620°Cで A 1 Nバッファ層を成長させた 際の A FM像を示した図である。
図 1 34は、 Ag (1 1 1)基板上に 45.0 で A 1 Nバッファ層を成長させた 際の RHE ED像である。
図 1 3 5は、 Ag (1 1 1)基板上に 450°Cで A 1 Nバッファ層を成長させた 際の RHE E D像である。
図 1 36は、 Ag (l l l)基板上に 450 °Cで A 1 Nバッファ層を成長させた 際の RHE E D像である。
図 1 3 7は、 Ag (l l l)面基板上の A 1 N膜の E B S Dの極点図である。 図 1 38は、 Ag (l l 1)基板上に 450"Cで A 1 Nバッファ層を成長させた 際の A FM像である。
図 1 39は、 Ag (l l 1)基板上に 450でで A 1 Nバッファ層を成長させた 際の G I XR測定の結果を示した図である。
図 1 40は、 Ag (l l 1)基板上に 450 で A 1 Nバッファ層を成長させた 際の熱処理に対する界面層厚さを示した図である。
図 1 41は、 Ag (1 1 1)基板上に 450でで A 1 Nバッファ層を成長させた 際の XP S分析結果を示した図である。
図 1 42は、 A 1 Nバッファ層上に G a Nを 7 0 0でで成長させた際の R H E
ED像 (GaN [11-20]入射) を示した図である。
図 143は、 A 1 Nバッファ層上に G a Nを 7 0 0でで成長させた際の R H E ED像 (GaN[ll- 20]入射) を示した図である。
図 144は、 A 1 Nバッファ層上に G aNを 7 0 0 ^で成長させた際の R H E ED像 (GaN [11-20]入射) を示した図である。
図 145は、 A 1 Nパッファ層上に G a Nを 7 0 0でで成長させた際の R H E ED像 (GaN[l卜 20]入射) を示した図である。
図 146は、 A 1 Nバッファ層上に G aNを 7 0 0 °Cで成長させた際の X P S 測定結果を示した図である。 発明を実施するための最良の形態 以下、 本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。 本発明が適用された一実施形態の半導体装置 1は、 図 1に示すように、 Cu基 板 2と、 当該 Cu基板 2の ( 1 1) 面上に成膜された第 1の A 1 Nバッファ膜 3と、 第 1の A 1 Nバッファ膜 3上に成膜された第 2の A 1 Nバッファ膜 4と、 第 2の A 1 Nバッファ膜 4上に成膜された G a N膜 5とを備えている。
以下、 この半導体装置 1を製造する方法について説明をする。
(P L D装置)
まず、 本実施形態の半導体製造方法に共通して用いられる PL D装置 1 0につ いて説明をする。
図 2は、 P L D装置 1 0の構成図である。
P LD装置 1 0は、 パルスレーザ堆積法 (以下、 PLD法) により、 基板上に 半導体層をェピタキシャル成長させて堆積させる装置である。
?し0装置1 0は、 内部に充填されたガスの圧力及び温度を一定に保っために 密閉空間を形成するチャンバ 1 1を備えている。 チャンバ 1 1内には、 基板 1 2 とターゲット 1 3とが対向して配置される。 基板 1 2の例として、 例えば C u、 F e、 W、 T a、 Mo、 A g等の単結晶金属又は多結晶金属を挙げることができ る。 また、 ターゲット 1 3の例として、 例えば G a、 A 1 N焼結体等の I I I族
金属又は I I I _V族化合物を挙げることができる。
また、 PLD装置 1 0は、 波長が 248 nmの高出力のパルスレーザを出射す る K r Fエキシマレ一ザ 14を備えている。 K r Fエキシマレ一ザ 14から出射 されたパルスレ一ザ光は、 レンズ 1 5により焦点位置がターゲット 1 3の近傍と なるようにスポット調整され、 チヤンバ 1 1の側面に設けられた窓 1 1 aを介し てチャンバ 1 1内に配設された夕一ゲット 1 3の表面に対して約 30 ° の角度で 入射する。
また、 PLD装置 1 0は、 チャンバ 1 1内へ窒素ガスを注入するためのガス供 給部 1 6と、 その窒素ガスをラジカル化するラジカル源 1 7とを備えている。 窒 素ラジカル源 1 7は、 ガス供給部 1 6から排出された窒素ガスを、 高周波を用い て一旦励起することにより窒素ラジカルとし、 その窒素ラジカルをチャンバ 1 1 内に供給する。 なお、 チャンバ 1 1とガス供給部 1 6との間には、 窒素ラジカル ガス分子とパルスレーザ光の波長との関係において基板 1 2への吸着状態を制御 すべく、 ガスの濃度を制御するための調整弁 1 7 aが設けられている。
また、 P LD装置 1 0は、 チャンバ 1 1内の圧力を制御するための圧力弁 1 8 と真空ポンプ 1 9とを備えている。 チャンバ 1 1内の圧力は、 真空ポンプ 1 9に より例えば窒素雰囲気中において所定の圧力となるように制御される。 また、 チ ャンバ 1 1内は、 真空ポンプ 1 9により 1 0— 1 G t o r rを超える超高真空状態 となるようにも制御することができる。
また、 PLD装置 1 0は、 パルスレーザ光が照射されている点を移動するため に、 ターゲット 1 3を回転させる回転軸 2 0を備えている。
以上の P L D装置 1 0では、 チャンバ 1 1内に窒素ガスを充満させた状態でタ ーゲット 1 3を回転軸 20を介して回転駆動させつつ、 パルスレーザ光を断続的 に照射する。
このことにより、 ターゲット 1 3として G a金属を用いた場合、 G a金属の表 面の温度を急激に上昇させ、 G a原子若しくは分子が含まれたアブレ一シヨンプ ラズマを発生させることができる。 このアブレ一ションプラズマ中に含まれる G aは、 気相中や基板 1 2の表面で窒素と反応し、 格子整合性の最も安定な状態で 薄膜化されることになる。
また、 ターゲットとして A 1 N焼結体を用いた場合、 A 1 N焼結体の表面温度 を急激に上昇させ、 A 1 N分子が含まれたアブレーションプラズマを発生させる ことができる。 このアブレーシヨンプラズマ中に含まれる A 1 Nは、 格子整合性 の最も安定な状態で基板 1 2上に薄膜化されることになる。
(半導体装置 1の製造プロセス)
半導体装置 1の製造は、 図 4のフローチャートに示すように、 Cu基板の研磨 工程 (S I) 、 Cu基板のァニール工程 (S 2) 、 第 1の A 1 Nバッファ膜成膜 工程 (S 3) 、 第 2の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 4) 、 G aNの成膜工程
(S 5) を順次行うことにより行われる。 以下、 各ステップ S 1〜S 5までの各 処理工程について説明をする。
(C u基板の研磨工程 S 1 )
半導体装置 1の製造では、 まず、 C u基板の研磨工程 (S 1) を行う。
C u基板の研磨工程 (S 1 ) では、 C u基板 2の表面 ( (1 1 1) 面) を研磨 により平坦化する。
Cu基板の研磨工程 (S 1) では、 先ず、 Cu基板 2の表面が ( 1 1 1 ) 面と なるように切り出す。
続いて、 平坦化工程 S 1 1では、 切り出した Cu基板 2の (1 1 1) 面を例え ばダイヤモンドスラリーを使用して機械研磨する。 この機械研磨では、 使用する ダイヤモンドスラリ一の粒径を徐々に微細化してゆき、 最後に粒径約 0. 5 m のダイヤモンドスラリーで鏡面研磨する。 更に、 コロイダルシリカを用いた CM P (Chemical Mechanical Polishing) 法により研磨することにより、 表面粗さ の r m sが 2 nm程度或いはそれ以下となるまで平坦化させる。
(C u基板のァニール工程 S 2)
続いて、 Cu基板のァニール工程 (S 2) を行う。
Cu基板のァニール工程 (S 2) では、 平坦化された C u基板 2を、 P LD装 置 1 0のチャンバ 1 1内に基板 1 2として配置し、 ?し0装置1 0に設けられた オーブン機能を用いて、 超高真空条件下においてァニール処理を行う。 例えば、 真空度を 1 0— 1 ()To r rとし、 C u基板 2を 5 1 0 以上で数 1 0分間加熱す る。
このように C u基板 2をァニール処理することにより、 表面 ( (0 1 1) 面) が清浄化され、 C uの結晶性が向上する。
図 4 (A) 〜図 4 (E) は、 C u基板 2の表面を反射光速電子線回折 (RHE ED) により観察した結果得られた像を示している。
図 4 (A) は、 ァニール処理をしなかった場合 (すなわち、 室温状態のまま) の Cu基板 2の表面の RHEED像であり、 図 4 (B) は、 450 でァニール 処理をした場合の C u基板 2の表面の RHEED像であり、 図 4 (C) は、 5 1 0ででァニール処理をした場合の C u基板 2の表面の RHE ED像であり、 図 4 (B) は、 5 7 0 °Cでァニール処理をした場合の C u基板 2の表面の RHE ED 像であり、 図 4 (B) は、 6 2 0 °Cでァニール処理をした場合の C u基板 2の表 面の RHE E D像である。
なお、 図 4において、 左側の図は、 RHEED像の写真に基づく図面であり、 右側の図はその模式図である。
ァニール処理をしなかった場合 (図 4 (A) ) は、 RHEED像は円状のハロ 一パターンとなっている。 45 0ででァニールした場合 (図 4 (B) ) は、 RH E E D像は 1 X 1パターンとなっている。 従って、 450で以下でァニール処理 をした場合には、 C u基板 2の表面の結晶性はあまりよくないことがわかる。 一方、 5 1 0°C, 57 0 °C, 62 0ででァニールした場合 (図 4 (C) , 図 4 (D) , 図 4 (E) ) は、 RHEED像は 1/3次のシャープな明瞭な縞の形状 (ストリーキ一パターン) となっている。 このことから、 5 1 0 °C以上でァニ一 ル処理をすると、 C u基板 2の表面の結晶性が向上することがわかる。
図 5 (A) 〜図 5 (C) は、 X線光電子分光 (XP S) による光電子の放出の 解析結果を示した図であり、 横軸が検出された光電子の結合エネルギであり、 縦 軸が検出値である。 図 5 (A) は、 結合エネルギーが 2 7 5 e V〜 3 0 0 e Vの 範囲を示しており、 図 5 (B) は、 結合エネルギーが 52 0 e V〜 545 e Vの 範囲を示しており、 図 5 (C) は、 結合エネルギーが 92 0 e V〜 9 6 0 e Vの 範囲を示している。
図 5 (A) 〜図 5 (C) には、 ァニール処理をしなかった場合 (すなわち、 室 温状態のまま) の C U基板 2の検出値、 425 °Cでァニール処理をした場合、 5
0 でァニール処理をした場合、 6 0 0ででァニール処理をした場合、 7 00 ^でァニール処理をした場合のそれぞれの検出値が示されている。
図 5 (A) の結合エネルギ一が 2 84 e Vの近傍 (C I s ) を見ると、 ァニ —ル処理をしなかった場合には C u基板 2の表面には Cが多く含まれており、 4 5 O :以上でァニールした場合には C u基板 2の表面には Cが除去されて非常に 少なくなることがわかる。
図 5 (B) の結合エネルギーが 5 3 1 e Vの近傍 (O I s ) を見ると、 ァニ ール処理をしなかった場合には C u基板 2の表面には Oが多く含まれており、 4 5 0で以上でァニールした場合には C u基板 2の表面には Oが除去されて非常に 少なくなり、 700 °Cのァニール処理ではほぼ完全に Oが除去されることがわか る。
また、 図 5 (B) の結合エネルギーが 528 e Vの近傍 (S b 3 d 5/2) 及 び 5 3 7 e Vの近傍 (S b 3 d 3/2) を見ると、 6 00 °Cのァニール処理で S bが析出し始め、 7 0 0 tのァニール処理で S bの析出量がさらに増加している ことがわかる。
図 5 (C) の結合エネルギーが 9 3 3 e Vの近傍 (C u 2 p 3/2) 及び 9 5 2 e Vの近傍 (Cu 2 p! / 2 ) を見ると、 ァニール処理をしなかった場合から 7 00 でァニール処理をした場合まで各ァニール温度で Cuの検出値が一定で あり、 ァニール処理をしても C uは除去も増加もしないことがわかる。
以上のように C u基板のァニール工程 (S 2) を行うことにより、 C u基板 2 の表面の不純物が除去されて清浄化されるとともに、 C u基板 2の表面の結晶性 が向上する。
(第 1の A 1 Nバッファ膜成膜工程 S 3)
続いて、 第 1の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 3) を行う。
第 1の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 3) では、 C u基板のァニール工程 (S 2) に続け、 P LD装置 1 0内でエキシマレ一ザ光を A 1 N焼結体からなる夕一 ゲット 1 3に出射し、 当該夕一ゲット 1 3から発生した A 1 N分子を C u基板 2 (基板 1 2) の表面 ( ( 1 1 1) 面) 上に照射する。
具体的には、 チャンバ 1 1内の雰囲気を窒素ラジカルガス (1. 0 X 1 0一2
T o r r ) 、 ターゲット 1 3を A 1 N焼結体とし、 K r Fエキシマレ一ザ 14を 3 J / c m2, 2 0 H zという条件に設定した。
第 1の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 3) を行うことにより、 Cu基板 2上に、 A 1 Nがェピタキシャル成長して形成された第 1の A 1 Nバッファ膜 3が成膜さ れる。
ここで、 第 1の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 3) での Cu基板 2の温度条件 (すなわち、 A 1 Nの成長温度) は、 50 0 °C以上 5 7 5 =0以下に設定する。 成長温度の下限の温度条件 (50 0 以上) の理由は、 500で未満であると A 1 Nがェピタキシャル成長をせずに多結晶となり成膜がされ、 50 0 °C以上で あると A 1 Nがェピタキシャル成長をするためである。
成長温度の上限の温度条件 (5 7 5 °C以下) の理由は、 5 7 51:を超えると、 A 1 Nと Cuとの間で界面反応により界面反応層が厚くなるためであり、 5 7 5 以下であると A 1 Nと C uとの間の界面反応層が非常に薄いか又は全く存在し なくなるためである。
図 6及び図 7は、 45 0 °C、 5 50 、 60 0での各成長温度で成膜された第 1の A 1 Nバッファ膜 3の表面を反射光速電子線回折 (RHEED) により観察 した結果得られた像を示している。 図 6は、 [1 1-20] 回折の場合の RHE ED像であり、 図 7は、 [1 0-1 0] 回折の場合の: HE E D像である。 なお、 図 6及び図 7において、 左側の図は、 RHE E D像の写真に基づく図面であり、 右側の図はその模式図である。
これらの図を参照すると、 450 の成長温度で成膜された第 1の A 1 Nバッ ファ膜 3の RHEED像は小円が並んだパターンとなっており A 1 Nが多結晶と なっているが、 5 50で及び 6 0 0 °Cの成長温度で成膜された第 1の A 1 Nバッ ファ膜 3の RHEED像は縞の形状 (ストリーキーパターン) が得られており、 A 1 Nがェピタキシャル成長していることがわかる。
なお、 ェピタキシャル成長され始める成長温度は明確ではないが、 45 0でで は多結晶となっており、 5 5 0 °Cでェピタキシャル成長しているわけであるから、 50 0 程度と想定される。
図 8は、 第 1の A 1 Nバッファ膜 3と Cu基板 2との間に形成されている界面
反応層の厚さを、 分光エリプソメトリーで測定した結果を示している。
なお、 図 8の横軸は成長温度を示しており、 縦軸は界面反応層の厚さ (nm) を示している。
この図 8を見ると、 成長温度が 450 及び 5 5 Otの場合には界面反応層は ほとんど発生しておらず、 6 0 0 °Cの塲合には界面反応層が 1 0 nmとなってい る。 界面反応層が形成され始める成長温度は明確ではないが、 5 00 °Cで界面反 応層が O nmであり、 6 0 Otで界面反応層 1 0 nmであることから、 5 7 5 °C 程度と想定される。
以上の図 6〜図 8から、 第 1の A 1 Nバッファ膜 3の有効な成長温度範囲は、 500 °C以上 5 7 5 ^以下であることがわかる。
(第 2の A 1 Nバッファ膜成膜工程 S 4)
続いて、 第 2の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 4) を行う。
第 2の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 4) では、 第 1の A 1 Nバッファ膜成膜 工程 (S 4) に続け、 P L D装置 1 0内でエキシマレーザ光を A 1 N焼結体から なる夕一ゲット 1 3に出射し、 当該夕一ゲット 1 3から発生した A 1 N分子を第 1の A 1 Nバッファ膜 3の表面上に照射する。
具体的には、 チャンバ 1 1内の雰囲気を窒素ラジカルガス (1. 0 X 1 0一2 T o r r ) 、 ターゲツト 1 3を A 1 N焼結体とし、 K r Fエキシマレ一ザ 14を 3 J / cm2, 2 0 H zという条件に設定した。
第 1の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 3) を行うことにより、 第 1の A 1 Nバ ッファ膜 3上に、 A 1 Nがェピタキシャル成長して形成された第 2の A 1 Nバッ ファ膜 4が成膜される。
ここで、 第 2の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 4) での Cu基板 2の温度条件 (すなわち、 A 1 Nの成長温度) は、 G a Nの成長温度と同じ温度 (本例の場合 7 0 0 ) とする。
第 2の A 1 Nバッファ膜 4を形成する理由は、 次の通りである。
もし、 第 1の A 1 Nバッファ膜 3上に直接 G a N膜 5を成膜すると、 基板 2を 加熱して G a Nの成長温度である 7 0 0 まで上げることとなる。 しかしながら、 A 1 Nと C 1との熱膨張係数の差が大きいことから、 加熱の過程おいて第 1の A
1 Nバッファ膜 3にクラックが入る。 従って、 クラックが存在する状態でそのま ま G aNを成膜すると、 そのクラックから GaNと Cuとが反応し、 G a Nの結 晶性が悪くなる。
そこで、 G aNの成長温度 ( 70 0 °C) まで C u基板 2の温度を上げた後、 再 び A 1 Nを成膜する。 こうすると、 第 1の A 1 Nバッファ膜 3に生じたクラック が埋まる。
このため、 第 2の A 1 Nバッファ膜 4を成膜した後に、 C u基板 2の温度を保 持した状態で続けて G a Nを成長させると、 G a Nが C uと反応性せずに、 良質 な G a N結晶が得られるようになる。
(G a Nの成膜工程 S 5 )
続いて、 G aNの成膜工程 (S 5) を行う。
G aNの成膜工程 (S 5) では、 第 2の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 4) に 続けて、 C u基板 2の温度を保持した状態で、 P L D装置 1 0内でエキシマレ一 ザ光を G a金属からなるターゲット 1 3に出射し、 当該夕一ゲット 1 3から発生 した G a原子を第 2の A 1 Nバッファ膜 3の表面上に照射する。
具体的には、 基板温度を 7 0 0 °C、 チャンバ 1 1内の雰囲気を窒素ラジカルガ ス、 ターゲット 1 3を G a金属とし、 K r Fエキシマレーザ 1 4を 3 J / c m 2 , 30 H zという条件に設定した。
G aNの成膜工程 (S 5) を行うことにより、 第 2の A 1 Nバッファ膜 4上に、 G a Nがェピタキシャル成長して形成された G a N膜 5が成膜される。
以上のステップ S 1〜ステップ S 5の工程が行われることにより、 Cu基板 2 上に、 第 1の A 1 Nバッファ膜 3及び第 2の A 1 Nバッファ膜 4並びに G a N膜 5が成膜された半導体装置 1を製造することができる。
図 9は、 最終的に製造された GaN膜 5の反射光速電子線回折 (RHEED) により観察した結果得られた像を示している。 図 9 (A) は、 [1 1-2 0] 回 折の場合の RHE ED像であり、 図 9 (B) は、 [1 0-1 0] 回折の場合の R HEED像である。 なお、 図 9において、 左側の図は、 RHEED像の写真に基 づく図面であり、 右側の図はその模式図である。
この図 9を参照すると、 G a N膜 5はシャープなストリークパターンを示して
おり、 平坦なェピタキシャル成長をしていることがわかる。
(第 2の A 1 Nバッファ膜 4を設けたことによる効果)
つぎに、 第 2の A 1 Nバッファ膜 4を成膜する理由について説明をする。
下記の表 1は、 第 1の A 1 Nバッファ膜 3の上に直接 G a N層 5を設けた場合 の E B S Dの FWHMの値と、 第 2の A 1 Nバッファ膜 4を設けた場合の E B S D (電子線後方錯乱法) の FWHM (半値幅) の値を示すものである。
表 1
第 1の A 1 Nバッファ膜 3のみ場合 (第 2の A 1 Nバッファ膜 4を形成しない 場合) には、 G aN膜 5の EB SDの FWHMは、 [ 0 0 0 1 ] 回折で 0. 50 。 であり、 [1 1— 20] 回折で 1. 0 5 ° である。
これに対して、 第 2の A 1 Nバッファ膜 4を形成した場合には、 G aN膜 5の EB SDの FWHMは、 [ 0 0 0 1 ] 回折で 0. 2 6 ° であり、 [1 1一 20] 回折で 0. 49 ° である。
このことから、 第 2の A 1 Nバッファ膜 4を形成した場合には、 良質な結晶と なることがわかる。
なお、 第 2の A 1 Nバッファ膜成膜工程 (S 4) を用いて半導体結晶を良質な ものにするという原理は、 上述のような C u基板に限らず適用することができる。 例えば、 図 1 0に示すような、 金属基板 2 1と、 金属基板 2 1上に第 1の半導 体材料をェピタキシャル成長させて成膜した第 1の半導体膜 22と、 第 1の半導 体膜 22上に第 2の半導体材料をェピタキシャル成長させて成膜した第 2の半導 体膜 2 3とを備えた半導体装置 20を製造するとする。
この場合、 第 1の半導体膜 2 2及び第 2の半導体膜 2 3は、 次のように成膜さ れる。
まず、 金属基板 2 1と第 1の半導体材料との間で界面反応が生じない程度の低 温で、 金属基板 2 1上に第 1の半導体材料をェピタキシャル成長させる。 このこ とにより、 第 1の半導体の低温膜 2 4が形成される。
続いて、 金属基板 2 1の温度を、 ヒータ等により第 1の半導体膜 2 3の成長可 能温度まで上昇させる。 このとき金属基板 2 1と第 1の半導体材料との熱膨張係 数が大きいと、 第 1の半導体の低温膜 2 4にクラック等が生じる。
第 1の半導体膜 2 3の成長可能温度まで加熱すると、 続いて、 第 1の半導体の 低温膜 2 4上に、 第 1の半導体材料をェピタキシャル成長させる。 このことによ り、 第 1の半導体の高温膜 2 5が形成される。
このように第 1の半導体の高温膜 2 5が形成されると、 熱膨張係数の違いによ り生じたクラックが埋まる。
この後に、 金属基板 2 1の温度を保持したまま、 第 1の半導体の高温膜 2 5上 に第 2の半導体材料をェピタキシャル成長させる。 このことにより、 第 2の半導 体膜 2 3が形成される。
以上のように、 金属基板上に成膜される半導体バッファ層を 2段階の温度で形 成することにより、 さらにその上に成膜する半導体層の結晶性を良好にすること ができる。
以上の説明では、 本発明が適用された半導体装置 1として、 C u基板 2上に A 1 Nバッファ膜 3が成膜された例を示したが、 本発明はこのように C u基板に限 らず、 他の金属基板であってもよい。 本発明が適用される金属基板は、 例えば、 単結晶の金属基板に限らず、 熱処理や圧延処理によってグレインを巨大化させた 多結晶金属板であってもよい。
また、 金属基板上に成膜する半導体は、 A 1 Nに限らず、 どのような半導体で あってもよい。
(その他の例 1 )
図 1 1は、 F e基板の (1 1 0 ) 面を C M Pで平坦化し、 P L D装置 1 0のチ ャンバ 1 1内に基板 1 2として配置し、 P L D装置 1 0に設けられたオーブン機 能を用いて、 超高真空条件下においてァニール処理を行った場合の、 当該 F e基 板の ( 1 1 0 ) 面の原子間力顕微鏡 (A F M) の観察結果である。 また、 図 1 2
は、 同 F e基板の ( 1 1 0) 面の RHEED像である。 なお、 図 1 1及び図 1 2 において、 右側は写真に基づく図であり、 左側はその模式図である。
図 1 1を見ると、 ステップアンドテラス構造が観察されている。 ステップアン ドテラス構造が観察されているということは、 F eの原子層が一層一層に整然と 積層されていることを意味する。 また、 図 1 2を見るとストリークパターンが観 察でき、 F e基板の表面が平坦化していることがわかる。
図 1 3は、 上記の超髙真空条件下においてァニール処理を行った後の F e基板 の (1 1 0) 面上に、 卩 0装置1 0を用いて A 1 Nを成膜した場合の、 当該 A 1 N層の表面の RHE ED像である。 なお、 図 1 3において、 右側は写真に基づ く図であり、 左側はその模式図である。
この図 1 3を観察すると、 ストリーキ一パターンが得られており、 F e基板上 に A 1 Nの(0 0 0 1)面がェピタキシャル成長していることがわかる。
図 14は、 上記の超高真空条件下においてァニール処理を行った後の F e基板 の (1 0 0) 面上に、 P L D装置 1 0を用いて A 1 Nを 5分間成膜した場合の、 当該 A 1 N層の表面の RHE ED像である。
成長開始 5分後において、 A 1 Nの [1 1一 2 0]方位に相当するスポットと [1 0— 1 0]方位に相当するスポットとが同時に見られるのが分かる。 また、 薄 くリング状の回折パターンも見られることから、 5分間成長させた A 1 N薄膜は、 若干多結晶性を持っているものの、 F e (1 1 0)上と同様に A 1 Nの(00 0 1) 面が成長しているのが分かる。
図 1 5は、 上記の超高真空条件下においてァニール処理を行った後の F e基板 の ( 1 1 1) 面上に、 P LD装置 1 0を用いて A 1 Nを 5分間成膜した場合の、 当該 A 1 N層の表面の RHE ED像である。
成長 5分後の RHEED像はリングパターンを示し、 回折点についてもリング 状に伸びている。 成長 3 0分後についても、 リングパターンや回折スポットのコ ントラストがやや向上したのみで 5分後と同様のパターンであった。 これは、 F e (1 1 1)基板上に成長した A 1 N薄膜が多結晶であることを示しており、 期待 された良質な A 1 Nェピタキシャル薄膜を得ることができなかった。
このように、 A 1 N薄膜の結晶性には F e基板の面方位によって顕著な違いが
見られた。 特に F e (1 1 1)基板上では、 F e基板と A 1 N薄膜の間で生じた界 面反応により F e基板の結晶構造が反映されなかったことが原因で多結晶 A 1 N 薄膜が成長したと考えられる。
次に、 ェピタキシャル成長が実現された F e (1 1 0)上 A 1 N薄膜について、 その結晶性の成長温度依存性を調べた。 基板温度 5 1 O , 480°C、 43 0°C、 及び 38 0ででそれぞれ成長させた A 1 N薄膜の RHEED像を、 図 1 6、 図 1
7、 図 1 8、 及び図 1 9に示す。 5 1 0 で成長させた場合、 スポットパターン とともに多結晶を示すリングパターンが観察されたことから、 結晶品質が低い A 1 N薄膜が得られたことが分かった。 基板温度を 48 0°Cに下げて成長させた場 合、 そのようなリングパターンは見られなかった。 さらに 430°C、 38 0 °Cで A 1 N薄膜の成長を行った場合も同様のスポットパターンを示したことから、 4
80 °C以下で良質なェピタキシャル A 1 N薄膜が得られることが分かった。 これ らの結果から、 5 1 0°C成長では温度が高いために界面反応が促進され結晶構造 の荒れが発生したのに対して、 480 以下ではその界面反応が抑制されたため に良質な A 1 N薄膜成長が実現したものと考えられる。
これらの A 1 N薄膜の結晶性を詳しく調べるために EB SD (電子線後方散乱 回折) 測定を行った。 図 20、 図 2 1、 及び図 22に、 基板温度 380でで成長 させた A 1 N薄膜の(0 0 0 1し 0— 1 01、 及び(1 0— 1 11方位の極点図 (投影図) をそれぞれ示す。 ίθ 0 0 11方位のピークが極点図の中心に 1点のみ 見られることから、 F e (l l 0)基板上に A 1 N薄膜が 100 0 11配向している ことが分かる。 また、 ( 1 0— 1 01方位及び( 1 0— 1 11方位のピークが極点図 の円周付近に 6 0 ° 周期で並んでいることから、 その(0 0 0 11配向した A 1 N 薄膜が他の面内回転ドメインを持たないことが分かる。 5 1 0 :、 480°C及び 43 0でで成長させた A 1 N薄膜についても同様の極点図が得られ、 違いは見ら れなかった。 なお、 理想的には、 0— 1 0 I方位の極点図において、 円周上に 6個のピークが 6 0 ° 周期で現れるはずだが、 図 2 1に示す極点図では 4個のピ ークしか見られていない。 これは、 A 1 N薄膜の 10 0 0 11方位が基板表面の法 線方向から傾いているわけではなく、 EB S D測定においてサンプルを精度よく 水平にマウントできないためである。 図 2 2の 0— 1 1 I方位極点図は、 その
6 0 ° 周期性を見やすくするために示した。
10 0 0 11及び II 0— 1 01方位の極点図におけるピークは、 それぞれ A 1 N 結晶のチルト方向およびツイスト方向の結晶方位分布を表している。 図 2 3に、 それらの極点図から求めた A 1 N薄膜のチルト方位分布およびツイスト方位分布 の半値幅を、 成長温度に対して併せてプロットした。 そこから、 430 ¾ で成長 させた A 1 N薄膜においてチルト方位分布、 ッイスト方位分布とももつとも小さ い半値幅を示し、 それぞれ 0. 26 ° 、 0. 5 8 ° であった。 よって、 430^: において F e (1 1 0)基板上に最も結晶性の高い A 1 N薄膜が得られることが分 かった。 このような傾向が得られた理由には、 より高い温度で成長させた場合は RHEED像についても議論したように基板と薄膜の界面反応が促進される一方、 より低温で成長させた場合は表面における原料のマイグレーションが不十分であ るためだという可能性が考えられる。
さらに、 この 430 °Cで成長させた A 1 N薄膜について、 XRD測定による結 晶性の評価も行った。 図 24及び図 2 5は、 430 で成長させた A 1 N薄膜に おける 2 0Ζωスキャン及ぴ A 1 N 0 00 2回折のロッキングカーブをそれぞれ 示す図である。 20 スキャンにおいて、 3 5. 52 ° に Α 1 Ν 0 0 0 2、 4 4. 6 9 ° に F e l l Oの回折ピークが見られた。 このことから、 F e (1 1 0) 面に A 1 N (00 0 1 )面が成長していることが確かめられ、 RHEEDや EB S Dなどと一致する結果が得られた。 また、 チルト方向の結晶方位分布を示す A 1 N 0 0 0 2回折のロッキング力一ブ半値幅は 2. 0 6 ° と見積もられた。 この値 は、 E B S Dから求められた 10 0 0 11方位のチルト方位分布半値幅 0. 26 ° と比べて 1桁も大きい。 これはサンプルの反りが原因だと考えている。 つまり、 A 1 Nに比べて F eの熱膨張係数が大きく、 A 1 N薄膜成長後から室温まで冷却 する間に F e基板が A 1 N薄膜よりも収縮の程度が大きいため、 サンプルにわず かながら凸型に反りが生じたと考えられる。
次に、 上述のように成長させた A 1 N層の上に G a N薄膜の成長を行った結果 について説明する。 バッファ層として、 高い拡散パリア性をもち、 同じ結晶構造 で比較的格子定数も近い A 1 N薄膜を成長させることで、 それらの拡散反応を抑 制することができることから、 まず、 F e基板に界面バッファ層として A 1 N薄
膜を成長させ、 その上に G a N薄膜を成長させた。
CMP及び超高真空中ァニールにより表面を平坦化および清浄化した F e (1 1 0)基板上に、 48 0で、 4 3 0 ^、 及び 3 8 0ででそれぞれ A 1 Nバッファ 層をェピタキシャル成長させた。 A 1 Nバッファ層成長における基板温度以外の 成長条件は前述した通りである。 その後基板温度を 6 8 0 °Cに設定し、 P LD法 により G a N薄膜を成長させた。 原料ターゲットには、 G aメタル (高純度化学 製、 純度: 99.9999%) を用い、 N2圧力は 1 X 1 0— 1 T o r r、 レーザ一のェ ネルギ一密度は、 6 J cm— 2、 パルス周波数は 3 0 H z、 成長時間は 6 0分と した。 得られた G aN薄膜の膜厚はおよそ 1 0 0 nmであった。
図 2 6、 図 2 7、 及び図 2 8は、 A 1 Nパッファ層をそれぞれ 4 8 0 °C、 4 3 0^、 及び 3 8 0 °Cで成長させた場合の G a N薄膜の RH E E D像を示すもので ある。 いずれの G a N薄膜についても非常にシャープな RHE E Dストリークパ ターンを示しており、 F e基板上に A 1 N薄膜を介して高品質な G a Nェピタキ シャル薄膜が得られたことが分かった。 また、 そのェピタキシャル関係は、 A 1 N薄膜と同様に G aN [1 1 - 2 0] // A 1 N [ 1 1 - 2 0] 〃 F e [0 0 1]及 び G a N [ 1 - 1 0 0 ] 〃 A 1 N [1— 1 0 0] 〃 F e [— 1 1 0]であった。 これらの G aN薄膜についても E B S D測定により結晶性を評価した。 図 2 9 は、 G a N薄膜のチルト方位分布及びツイスト方位分布における半値幅の、 A 1 Nバッファ層成長温度依存性を示すグラフである。 4 8 0で— A 1 N上における G a N薄膜については、 チルト方位分布及びツイスト方位分布の半値幅とも比較 的大きい値を示した。 チルト方位分布及びツイスト方位分布半値幅の最小値はと もに 4 3 0°C— A 1 N上 G a N薄膜において得られ、 それぞれ 2 2 ° 及び 0. 2 9 ° であった。 3 8 0 °C— A 1 N上 G a N薄膜におけるッイスト方位分布半値 幅は、 0. 2 9 ° であり、 4 3 0 °C— A 1 N上 G a N薄膜と同程度に小さい値で あつたが、 チルト方位分布半値幅は、 0. 3 3 ° であり 4 3 0°C— A 1 N上 G a N薄膜に比べてやや大きい値を示した。 したがって、 4 3 0 X:成長 A 1 Nバッフ ァ層上において最も結晶品質の高い G a N薄膜が得られることが分かった。 また、 これらの結果は図 2 3と同様の傾向を示しており、 G a N薄膜の結晶性が下地の A 1 Nバッファ層の結晶性を強く反映していることが示された。
また、 最も結晶性の高い 43 0 成長 A 1 Nバッファ層上に成長させた G aN 薄膜について、 XRD測定による結晶性評価を行った。 図 30は、 F e (1 1 0) 上に A 1 Nバッファ層を介して成長させた G a N薄膜の 20 /ωスキヤンを示す グラフである。 ここで、 F e 1 1 0及び A 1 Ν 0 0 0 2の回折ピークに加えて、 34. 5 ° に G aN 0 0 0 2の回折ピークが見られる。 このことから、 F e (l 1 0)基板に G a N (00 0 1 )面が配向していることが確かめられた。 この結果 は、 RHE ED及び E B S Dにより決定されたェピタキシャル関係に一致する。 また、 図 3 1に示される G a N 00 0 2回折のロッキング力一プ半値幅は、 1. 45° であった。 この値は E B S D測定から求めたチルト分布半値幅 0. 2 2 ° と比較しても大きな値である。 このような傾向は A 1 N薄膜の場合においても見 られていることから、 G a N薄膜の場合についても、 先に述べたようなサンプル の反りと EB SD、 XRD間で分析領域のスケールが異なることが原因だと考え られる。
続いて、 F e (1 1 0)上に得られた G aN薄膜について、 結晶欠陥とそれに基 づく光学特性を評価する目的で、 室温における P L測定を行った。 図 3 2は、 F e (1 1 0)上に A 1 Nバッファ層を介して成長した G a N薄膜の P Lスぺクトル を示すものである。 3. 4 e V付近に明瞭な G a Nのバンド端発光ピークが観測 された。 さらに、 N空孔、 転位、 及び不純物など G aN結晶内部のさまざまな欠 陥に起因するブロードなイエロ一発光ピークも 2. 7 e V以下において強く観測 されている。
また、 3. 4 e V付近に見られる G a Nのバンド端発光ピークに注目すると、 その形状から複数のピークが存在していることが分かる。 図 33は、 この G a N のバンド端発光ピークを拡大して示すものである。 主に、 3. 45 e V及び 3 · 3 6 e Vに比較的強度の大きいピークが見られるが、 前者のピークは G a Nの室 温におけるバンドギャップ値 (3.42 eV) よりもわずかだが大きい位置に現れて いる。 これら 2つのピークは、 電磁鋼板上に A 1 Nバッファ層を介して成長させ た G a N薄膜においても同様のエネルギー位置に見られていることからも、 ノィ ズピークでないことは明らかである。
以上、 その他の例 1で示したように、 本発明を適用することにより平坦化され
た F e基板上に良質な A 1 N膜を成長させることができる。 特に、 F e ( 1 1 0) 面に単結晶性の優れた A 1 N結晶を成長させることができる。 また、 480 以下の低温で A 1 N結晶を成長させることにより、 界面反応を抑制することが できる。
(その他の例 2 )
上述のように本発明に係る半導体製造方法を適用すれば、 単結晶金属板上又は 多結晶金属板上に I I I 一 V族半導体を形成することができる。 すなわち、 図 2 に示す P LD装置において、 単結晶金属板又は多結晶金属板からなる基板 1 2と I I I族金属又は I I I 一 V族化合物からなるターゲット 1 3とを所定の圧力以 下に減圧されたチャンバ 1 1内に配置し、 基板 1 2を加熱し、 チャンバ 1 1内に V族ガスを供給し、 ターゲット 1 3にパルスレーザ光を照射することにより、 基 板 1 2上に I I I一 V族半導体を製造することができる。
次に、 単結晶金属板上又は多結晶金属板上へ I I I一 V族半導体を製造する方 法を適用した他の実施例として成長基板に M oを用いた場合について説明する。
Moは、 一般的に W、 T a、 Nbなどとともに高融点金属と言われるように、 その融点は、 26 1 7ΐ:と極めて高い。 また、 化学的にも非常に安定であり、 室 温においてはほとんどの酸やアルカリに対して不溶である。 その物性から、 主に 結晶成長装置や高温炉の部品など耐熱用途に用いられている。 また、 結晶構造は、 F eと同じく b c c (体心立方格子構造: body- centered cubic lattice) 構造 であり、 格子定数は a = 3. 1 46Aである。 単結晶 Moは、 F Z法により作製 され、 その純度は、 99. 9 9 %のものが得られている。 単結晶 Moについても 単結晶 F eと同様にバルクから切り出すため、 オフ角が制御され任意の面方位を もつ Mo基板が得られる。
Mo基板上への窒化物薄膜成長は、 デバイス応用の意味でも重要である。 金属 電極/ A 1 N薄膜 Z金属電極というサンドィツチ構造を持つ次世代通信フィルタ 素子 (Film Bulk Acoustic- wave Resonator, FBAR) が近年注目を浴びており、 実用化に向けて研究開発が活発に行われている。 その電極材料として、 比較的低 抵抗であり c軸配向性のよい A 1 N薄膜が成長できるなどさまざまな理由から、 M oが最も有望視されている。
以下、 CMPによる M o基板の平坦化、 超高真空中でのァニールによる Mo表 面の解析及び Mo基板上への A 1 N薄膜成長について説明する。 なお、 Mo基板 上の界面バッファ層の A 1 N層上へ G a Nを成長させる条件は、 F e基板上の界 面バッファ層の A 1 N層上へ G a Nを成長させる条件と同様である。
Mo基板についても、 ェピタキシャル成長を行う前ためには原子レベルで平坦 であり清浄化された表面が得られなければならない。 そこで、 F e基板と同様の CM Pを用いて Mo表面の平坦化を試みた。
基板には、 単結晶 Mo (1 1 0) 、 (1 0 0)、 及び(1 1 1)の 3種類 (SPL 社製、 純度: 99.99%、 基板サイズ: 10 匪 X 10 皿、 厚さ 2 匪) を用いた。 この Mo基板 を研磨ホルダーに装着した。 研磨プロセスは、 以下のように 3段階研磨を行った。
(1) 溝付き銅研磨盤と粒径 3. 0 mのダイヤモンドスラリーによる粗研磨
(2) ナイロン製研磨布と粒径 0. 5 mのダイヤモンドスラリーによる研磨
(3) ウレ夕ン製研磨パッドとコロイダルシリカによる C M P
このような研磨プロセスにより、 面方位によらず M o表面を平坦化させること ができた。 さらに、 原子レベルでも F e表面と同程度の平坦性が得られているか どうかを確かめるために、 A FMによる Mo基板の表面モフォロジーを観察した。 図 34、 図 3 5、 及び図 3 6は、 CM P後の Mo (1 1 0) 、 (1 00)、 及び(1 1 1)基板表面の AFM像である。 いずれの面方位基板表面においても、 F e表 面を下回る 2 A程度の RMS粗さを示し、 スクラッチフリーかつ格子定数オーダ —で平坦化された Mo表面が得られたことが分かった。 したがって、 Mo表面に ついても CM Pが非常に有用な平坦化手法であることが分かった。
次に、 Mo表面を覆った自然酸化膜や有機物などを窒化物薄膜成長の前に除去 するために超高真空中ァニール処理を行った。 CMPにより表面を平坦化した M o基板を、 モリブデン製サンプルホルダーに装着し、 P LDチャンバに導入した。 1 1 0 0で、 1時間のァニールを行った後、 Mo基板をチャンバから取り出して 大気中で A FMにより表面モフォロジ一の観察を行つた。 超高真空中ァ二一ルを 行った Mo (1 1 0) 、 (1 0 0)、 及び(1 1 1 )基板表面の A FM像をそれぞれ図 3 7、 図 38、 及び図 3 9に示す。
ァニール後の Mo (1 1 0)基板表面は、 図 3 7に示すようなステップ-テラス
構造のモフォロジ一を示した。 ステップ高さは Mo (1 1 0)面の 2〜4原子層に 相当する 5〜8Aのばらつきが見られた。 テラス幅についても 50〜 8 O n m程 度のばらつきが見られるが、 非常に平坦な面が得られていることが分かった。 し たがって、 CMPと超高真空中ァニールによって原子レベルで平坦な M o (1 1 0 )表面が得られることが分かった。
ァニール後の Mo (1 0 0)基板については、 図 3 8に示すような非常に平坦な 表面が得られた。 表面粗さを表す RMS値は 0. 46 3 nmであり、 ァニール前 と比べて増加したが平坦性にはほとんど変化は見られなかった。 R H E E D像に ついても表面再構成に起因するパターンが確認されていないことから、 ァニール による Mo原子や O原子の表面マイグレ一ションが Mo (1 0 0)面では不十分で あつたのではないかと考えられる。
さらに Mo (1 1 1)表面においては、 図 39に示すように多数の三角ピラミッ ド状のピットが敷き詰められたような特異的なモフォロジ一が得られた。 それら のピット高さは 2〜 5 nm、 幅は 40〜 7 0 n m程度であった。 ピラミッド形状 の各面方位をこの AFM像から詳しく同定することは困難であるが、 三角形の頂 点はそれぞれ [1 1— 2]、 [- 2 1 1], 及び [ 1一 2 1 ]方位を向いている。 この ことは RHEED像において(1 1 2)ファセット面が得られたという結果と一致 する。 したがって、 超高真空中にァニール後の Mo (1 1 1)基板については平坦 な表面が得られず、 (1 1 2)、 (2 1 1)、 及び(1.2 1)ファセット面からなるピ ラミツド状ピットに覆われた表面モフォロジーであることが分かった。
ここまで超高真空中ァニールの効果について述べてきたが、 酸化膜が表面から 除去されずに残留していることがあった。 また、 ァニールにより Cなどの不純物 が Mo表面に析出している可能性もあげられる。 そこで、 超高真空中ァニールに よる Mo表面の化学状態及びその変化を調べるために、 ァニールにおける M o基 板表面の in situ XP S分析を行った。
Mo (l l 0)基板表面を CMPにより平坦化した後、 加熱ヒー夕付きサンプル ホルダーに装着し、 測定チャンバに搬送した。 測定チャンバ中で目的の温度にお ける加熱及び測定を行った。
図 40、 図 41、 図 42、 及び図 43は、 各温度における Mo (1 1 0 )基板表
面のワイドレンジ (600 〜 0 eV) 、 M o 3 d、 〇 1 s、 及び C 1 sの光電子 スペクトルである。 まず、 CMP後の Mo (1 1 0)表面におけるワイドレンジの スペクトル (図 40) を見ると、 5 1 0 e V付近、 400 e V付近の 2本、 2 3 O eV付近の 2本、 60 e V付近、 及び 3 5 e V付近に、 Moに帰属されるピー ク (それぞれ Mo 3s、 3pl/2、 3p3/2、 3d3/2、 3d5/2, 4s、 及び 4pの計 7本) が 見られる。 図には示していないが、 1 26 0〜 140 0 e Vにおいても M oのォ —ジェ電子 (Mo 丽 V) による数本のピークが確認されている。 Mo以外の元素と しては 5 3 O e V付近の◦ 1 sピークおよび 2 8 5 e V付近の C I sピークが それぞれ確認され、 その他の元素は検出されなかった。
また、 図 4 1に示す Mo 3 d光電子スペクトルを見ると、 CMP後において
228. 3 e V及び 23 1. 5 e Vにそれぞれ Mo 3 d 3 / 2 , 3 d 5/2に 帰属されるメタルピークが見られる一方、 229. 2 e Vに現れると予想された Mo酸化物ピークは確認されなかった。 しかし、 図 42に示す O I s光電子ス ぺクトルからは、 5 33 e Vの有機物と考えられるプロ一ドなピークとともに 5
30. 8 e Vに有機物と金属酸化物の両ピークが重なっていると考えられるピ —クが明瞭に見られる。 Mo基板の場合は、 酸化膜の厚さが非常に薄いため、 M o 3 dスペクトルにおいて酸化物によるピークが Mo 3 d 5/2のメタルピ一 クの髙結合エネルギー側のテールに埋もれてしまったと考えられる。 このように Mo表面を覆っている酸化膜が F e表面に比べて非常に薄く、 酸化膜が非晶質や 多結晶ではなく下地の M oの結晶構造に従った結晶配向をとつたため、 いずれの 面方位の Mo基板においてもァニール前から既に RHEED像に Mo結晶のスト リークパターンが確認されたのだと考えることができる。
一方、 図 43に示す C 1 s光電子スペクトルにおいては、 2 85. 2 e V及 び 2 8 9. 4 e Vに有機物に帰属されるピークがそれぞれ見られた。 これは CM P後の Mo表面が有機物に覆われていることが分かる。 また、 2 0 0でで加熱し た後に測定した各スペクトルに変化は見られなかったが、 3 0 0 °C以上で C 1 sピーク強度が徐々に減少していき、 6 0 0 °Cにおいて消失した。 このことから、 3 0 0 °C付近から有機物が昇華し始め、 6 0 0 °Cまでに全て除去されたことが分 かる。 一方、 図 42に示す O I sスペクトルに注目すると、 5 33 e Vにおけ
るピークが徐々に減少し、 40 0°Cにおいて見られなくなった。 同時に 5 3 0. 8 e Vのピークについてもわずかに強度が減少しており、 600"Cにおいて 0. 5 e Vだけ低結合エネルギー側へシフ卜を生じた。 この〇 1 sスぺクトルの変 化は、 有機物が昇華することで除去され、 Mo酸化物によるピークが 5 30. 3 e Vに残ることにより生じたと考えられる。 一方、 Mo 3 dの 2本のピーク位 置や形状に変化は見られないが、 わずかにピーク強度が単調に増加している。 こ のことからも、 有機物が徐々に除去されていることが分かる。
6 00で以上の加熱においては M o 3 d、 〇 I s、 及び C 1 sの各スぺク トルとも変化が見られなくなつたが、 9 00 のァニールまでに若干の M o 3 dピーク強度の増加と O 1 sピーク強度の減少が確認され、 表面から Oが減少 していることが分かった。 しかし、 この温度領域においてァニールのみの効果に よる Mo酸化物の還元は期待できない。 この現象は、 おそらく Mo基板内部に不 純物としてごく微量存在する Cがァニールによって表面に拡散し、 Mo酸化物を 還元して COあるいは co2の形で脱離していつた可能性が挙げられる。 また、 RHEED像からも分かるように、 その過程において Mo ( 1 1 0) 表面におい て〇原子の存在による表面再構成が生じたり、 Mo ( 1 1 1) 表面において (1 1 2 ) ファセット面が形成されたりしたものと考えられる。
図 44、 図 45、 及び図 46は、 1 1 0 0°Cで 1時間超高真空中ァニールを行 つた場合の Mo (1 1 0)、 (1 00)、 及び(1 1 1)基板表面の RHEED像をそ れぞれ示した図である。 Mo (1 1 0)表面は、 F e (1 1 0)表面と同様に明瞭な ステップ状のモフォロジーを示した。 また、 Mo (1 0 0) においては、 そのよ うなステップ構造は見られなかったが非常に平坦な表面が得られた。 これに対し て Mo (1 1 1)表面においては、 原子レベルでの平坦性が得られなかった。 これ は、 Mo (1 1 1) 表面の原子密度が低く、 表面エネルギーが高く不安定である ためだと考えられる。
このように 1 1 0 0 °Cにおける超高真空中ァニールを 1時間行うことで、 Mo (1 1 0) 表面は、 非常にシャープな RHEEDパターンを示しており、 比較的 結晶性の良い M o表面が得られていることから、 1 1 0 0°Cのァ二一ルをもって A 1 N薄膜のェピタキシャル成長を試みることにした。
また、 各面方位 M o基板上に A 1 N (000 1 )ェピタキシャル薄膜が成長した と仮定し、 ェピタキシャル関係及びその格子ミスマッチをそれぞれ見積もった。 図 47、 図 48、 及び図 49は、 Mo (1 1 0)、 (1 00)及び(1 1 1)基板上 A 1 N薄膜の結晶格子モデル及び格子ミスマッチをそれぞれ示す模式図である。 まず、 図 47に示す Mo (1 1 0)上の A 1 N薄膜についてであるが、 結晶構造 が異なるものの M oの格子定数 (a = 3.15 A) が A 1 Nの a軸長 (a = 3.11 A) と近いため、 Aのェピタキシャル関係において A 1 N [ 1 1 - 20] // M o [0 0 1] 方位の格子ミスマッチが 1 · 1 %と非常に小さい。 その方位と直交 する A 1 N [1 - 1 0 0] // Mo [- 1 1 0] 方位における格子ミスマッチは 2 1. 1 %と比較的大きいが、 それでも F e ( 1 1 0) 上に得られたェピタキシ ャル A 1 N薄膜よりも小さい値である。 一方、 Aから 30 ° 回転させた Bのェピ タキシャル関係においては、 A 1 N [1 - 1 0 0] // Mo [0 0 1 ] 方位で 1 4. 4%、 A 1 N [1 1— 2 0] // Mo [一 1 1 0] 方位で 6. 7 %の格子ミ スマッチである。 したがって、 F e (1 1 0) 基板の場合もそうであったが、 格 子ミスマッチの観点からだけでは Aと Bのいずれのェピタキシャル関係をとるの かを予測することは困難である。
次に、 M ο ( 1 00 )上の A 1 N薄膜について考える。 図 48中の Aのェピタキ シャル関係について、 A 1 N [1 1— 20] // Mo [0 0 1] 及び A 1 N [ 1 - 1 00] // Mo [0 1 0] 方位についてそれぞれ 1. 1 %、 1 6. 8 %の格 子ミスマッチが見積もられる。 ここでも F e (1 0 0)上と同様の議論ができる。 つまり、 Mo (1 0 0) 面の 4回回転対称性と A 1 N (00 0 1)面の 6回回転対 称性との違いから、 A 1 N (0 00 1)面が成長するという前提で Aと 3 0 ° 回転 した Bのェピタキシャル関係は等価である。 よって、 F e (1 00)上と同様に M o (1 0 0) 上についてもこれらが 1 : 1で混在したダブルドメイン構造をもつ A 1 N薄膜が成長すると予測される。
Mo (1 1 1)上の A l N薄膜についても、 図 49に示すような Aと Bの 2通り のェピタキシャル関係が考えられる。 格子ミスマッチは Aについては 2 1. 1 %、 Bについては 30. 1 %といずれにしても非常に大きい値である。 一方、 対称性 の観点からは、 A 1 N (0 0 0 1)面が 6回回転対称性をもち、 基板と 3回回転対
称性を共有することから、 高品質な A 1 N薄膜の成長が期待される。 しかし、 超 高真空中ァニールを行った Mo (1 1 1) 基板は図 3 9のように表面荒れを生じ 平坦な(1 1 1 )面が得られていないことから、 Mo ( 1 1 1) 上における A 1 N 薄膜の結晶性について予測することは非常に困難である。
上述した結晶成長の予測を実証するために、 A 1 N薄膜を成長させた。 A 1 N 薄膜は、 CMP及び 1 1 0 0°C、 1時間の超高真空中ァニール処理を行った Mo ( 1 1 0) 、 (1 0 0)、 及び ( 1 1 1) 基板上に PL D法により成長させた。 基 板温度は、 F e ( 1 1 0) 上においてェピタキシャル成長が可能な 45 0°Cとし た。 原料ターゲットには、 A 1 N焼結体 (豊島製作所製、 純度: 99.9 ) を用レ 、 N2圧力は 1 X 1 0— 2 T o r r、 レーザ一のエネルギー密度は、 4 J cm一2、 パルス周波数は 30 Hz、 成長時間は 3 0分とした。 この成長条件で成長させ た A 1 N薄膜の膜厚は約 2 30 nmである。 A 1 N薄膜の R H E E D像は、 成長 前後及び成長 30秒後に成長を中断し N2を排気することで観察した。
図 5 0及び図 5 1は、 Mo (1 1 0) 基板上にそれぞれ 30秒間及び 30分間 成長させた A 1 N薄膜の RHE ED像を示した図である。 3 0秒後の A 1 N薄膜 はシャープなストリ一クパターンを示し、 A 1 N薄膜がェピタキシャル成長して いることが分かった。 そのェピタキシャル関係は F e (1 1 0) 上の場合と同様 であり、 図 47に示す A、 つまり A l N (O O O l) // Mo (1 1 0) かつ A l N [ 1 1 - 20] // Mo [0 0 1] であった。 また、 RHEED像において 3 0 ° 回転ドメインである Bのドメインは見られなかった。 成長を再開し 3 0分間 成長させた A 1 N薄膜は、 図 5 1に示すようにシャープさを増したストリークパ ターンを示した。 したがって、 Mo (1 1 0) 基板上に高品質なェピタキシャル A 1 N薄膜が得られたことが分かる。 A 1 N薄膜が Aのェピタキシャル関係をと つた原因については、 F e ( 1 1 0) 上 A 1 N薄膜成長の場合と同じような考察 ができる。 つまり、 成長初期において原子が M o表面の最も安定なサイトに入り 結合することでェピタキシャル関係が決まり、 格子ミスマッチによる寄与は小さ いと考えられる。
図 52及び図 53は、 Mo (1 0 0) 基板上にそれぞれ 30秒間及び 3 0分間 成長させた A 1 N薄膜の RHE ED像を示した図である。 3 0秒間成長を行った
時点のパターンは、 比較的ブロードなスポットパターンであるが、 それぞれ A 1 N [ 1 1 - 2 0] と [ 1 0— 1 0] 方位に相当する回折が同時に見られるのが分 かる。 さらに、 30分間成長させた A 1 N薄膜の RHEED像においてそれらの パターンコントラストは劇的に向上し、 やはり A 1 N [1 1 - 2 0] と [ 1 0— 1 0] 方位による回折パターンが明瞭に見られる。 このような RHEEDパ夕一 ンは、 Fe (1 0 0)上に成長した A 1 N薄膜においても得られている。 したがって、 Mo (1 0 0) 上に得られた A 1 N薄膜は(0 0 0 1 )面配向で成長しており、 図 48に示す結晶格子モデルにおいて予測した通り Aと 3 0 ° 回転した Bが共存し たダブルドメイン構造であることが分かった。
図 54及び図 5 5は、 Mo ( 1 1 1) 基板上にそれぞれ 30秒間及び 3 0分間 成長させた A 1 N薄膜の RHE ED像を示した図である。 Mo ( 1 1 1) 上へ A 1 N薄膜を成長させた場合、 30秒後において図 54に示すような多数のスポッ トからなる RHEEDパターンが得られた。 さらに、 3 0分間成長を行ったとこ ろ、 図 5 5に示すように A 1 N [1 1— 20] と [1 0— 1 0] 方位による回折 スポットが混在し、 それらがやや円弧状に延びたようなパターンが得られた。 ま た、 それらのダブルドメインを示すスポッ卜の他にも弱い回折点がいくつか見ら れ、 Mo (1 1 1) 上には結晶品質の低い A 1 N薄膜が得られたことが分かった。 多数の 3 0秒間成長させた A 1 N薄膜の RHE ED像において同定が困難な回折 スポットが見られるが 30分後には消失している。 この事実から、 成長初期にお いて図 49に示される A及び Bのドメインの他にも別の配向をもつドメインが形 成され、 A 1 N薄膜が成長していくうちにそれらのドメインが A及び Bのものに 埋もれてしまったと考えられる。
以上で述べたように、 Mo基板についても ( 1 1 0) 上にのみェピタキシャル A 1 N薄膜が得られ、 ( 1 0 0)や ( 1 1 1) 上には良質なェピタキシャル薄膜 が得られないという、 F e基板上 A 1 N薄膜成長と類似した傾向が示された。 し たがって、 これらの結果は b c c構造を持つ金属基板に対して一般的な傾向であ ると考えられる。
以上で成長した 3種類の Mo基板上 A 1 N薄膜について結晶性を定量的に評価 するため、 さらに E B S D及び XRD測定を行った。 まず、 EB SD測定を行つ
た結果について述べる。
図 56、 図 5 7、 及び図 58は、 Mo (1 1 0) 上に成長させた A 1 N薄膜に おける(000 1し { 1 0— 1 0 } 、 及び { 1 0— 1 1 } 方位をそれぞれ示す極 点図である。 これらの極点図から、 A 1 N薄膜が Mo (1 1 0) 基板に対して (0 0 0 11配向しており、 面内回転ドメインが存在しないェピタキシャル薄膜で あることが裏付けられる。 {000 11及び { 1 0— 1 0} 方位の極点図から求め られたチルト方位分布およびツイスト方位分布の半値幅はそれぞれ 0. 2 9 ° 及 び 0. 6 8 ° であり、 Mo基板上に高品質な A 1 N薄膜が得られたことを示して いる。 さらに、 これらの値は F e ( 1 1 0 ) 基板上に成長した A 1 N薄膜の半値 幅 (チルト方位分布: 0.26° 、 ツイスト方位分布: 0.58° ) と非常に近い値であ り、 Mo基板上に F e基板上と同程度の結晶性をもつ A 1 N薄膜が成長したこと が分かった。
一方、 Mo (1 0 0) 及び (1 1 1) 上に成長させた A 1 N薄膜についても E B SD分析を試みたが、 結晶方位が同定可能なほどの電子線回折パターンが得ら れず、 半値幅の評価は出来なかった。 これは、 Mo (1 0 0)及び (1 1 1) 上に 成長させた A 1 N薄膜中の単結晶ドメインが、 電子線のビーム径程度かそれ以下 の小さいサイズであるためだと考えられる。
次に、 XRD測定により Mo基板上 A 1 N薄膜の結晶性を評価した結果につい て述べる。 図 5 9及び図 6 0は、 各面方位の Mo基板上に成長させた A 1 N薄膜 の 0 00 2及び 1 0— 1 0回折ロッキングカーブである。 Mo (1 1 0) 上 A 1 N薄膜において、 チルト方向の結晶方位分布を示す 0 00 2回折ロッキング力一 ブの半値幅は 1. 3 1 ° 、 ツイスト方向の結晶方位分布を示す 1 0— 1 0回折口 ッキングカーブの半値幅は 2. 1 7 ° であった。 F e (1 1 0) 上 A I N薄膜の 場合も同じ傾向が見られたが、 E B S D測定と XRD測定において分析領域の大 きさが異なるために、 これらの半値幅は E B S D測定により求めた半値幅に比べ て数倍大きい値を示した。 また、 図 6 1に示す 20/Ωスキャンから、 Mo (1 1 0)上 A 1 N (0 0 0 1)薄膜が成長していることが示され、 RHEEDや EB S Dと一致する結果が得られた。
A I N/Mo構造は、 F B ARへの応用が進められているため、 A 1 N薄膜の
c軸配向性を示す 0 0 02回折半値幅については多くの報告がある。 例えば、 M o/S i 02/S i (1 0 0) 構造上に MO C VD成長させた A 1 N薄膜におい て、 0 0 0 2回折半値幅 2. 7 3 ° を得ることが報告されている。 また、 Satoh らは、 M o/A 1 /S i ( 1 1 1) 構造上にスパッ夕成長させた A 1 N薄膜にお いて 1. 6 ° という 00 0 2回折半値幅を報告している。 これらの報告において は、 A 1 NZMo構造を F BARデバイスに組み込むことを目的としており、 S i上にスパッ夕成長した多結晶 Mo薄膜を A 1 N薄膜の成長用基板として用いて おり、 面内方向に関してはランダムに向いた多結晶の c軸配向 A 1 N膜である。 本実施例において成長させた M o (1 1 0) 上 A 1 Nェピタキシャル薄膜は、 全 方向に結晶方位が固定された単結晶膜であり、 かつ c軸方向の配向性についても c軸チルト角が 0. 29 ° と極めて小さい値が得られている。
Mo (1 0 0) 上に成長した A 1 N薄膜については、 0 0 0 2回折、 1 0— 1 0回折ロッキングカーブとも Mo ( 1 1 0) 上 A 1 N薄膜に比べて明らかにブロ —ドであり、 非常に弱いピーク強度である。 それらの半値幅は、 00 0 2回折で 2. 5 7 ° 、 1 0— 1 0回折については約 5 ° であった。 これは中に 30 ° 回転 ドメインが混在しているため、 両ドメインが互いにぶつかり合うことで結晶方位 の揺らぎが大きくなつているためだと考えられる。 また、 0 0 0 2回折ピーク強 度が非常に弱いために 2 θ ΖΩスキャンにおいては検出されなかったが、 図 6 2 に示す φスキャンにおいて 1 0— 1 0回折ピークが 30 ° 周期で明瞭に観測され た。 この結果は、 Mo ( 1 0 0) 上に成長した A 1 N薄膜が 30 ° 回転ドメイン の混在したダブルドメイン構造をもっているこ.との直接的な証拠である。
Mo (1 1 1) 上に成長した A 1 N薄膜においても同様の XRD測定を試みた が、 00 02回折及び 1 0— 1 0回折ともピークが観測されなかった。 これは、 Mo (l l 1)上 A 1 N薄膜の結晶品質が低いことを示唆している。 したがって、 Mo (l l 1)上 A 1 N薄膜のロッキングカーブは図 5 9及び図 6 0とも示してい ない。
以上のように、 基板面方位による Mo上 A 1 N薄膜の結晶性の違いは、 EB S Dや XRD測定においても顕著に見られ、 RHE ED観察の結果の裏付けとなる ことが示された。
次に、 A 1 N薄膜と M o基板とのヘテロ界面における反応層の評価する目的で G I XR測定を行った。 上述した RHE EDや XRD測定のように 2 3 0 nm程 度の膜厚をもつ A 1 N薄膜では、 G I XR測定により界面の情報を得ることが非 常に困難である。 したがって、 Mo基板上に A 1 N薄膜を 5分間だけ成長させた A 1· NZMoサンプルについて G I XR測定を行った。 A 1 N薄膜の膜厚は、 4 0 nm程度であった。
図 6 3は、 各面方位 Mo基板上 A 1 N薄膜の G I XRパターン及びそのフィッ ティング曲線を示した図である。 いずれの面方位基板上 A 1 N薄膜についても比 較的高角側まで明瞭なフリンジ構造が観測された。 また、 X線反射強度の減衰に ついても互いによく類似した振る舞いを示している。 これらの G I XRパターン に対し、 層構造のシミュレーションモデルを立ててフィッティングを行ったとこ ろ、 いずれの面方位についても 1 nm未満の界面反応層厚さを示し、 G I XR測 定における検出限界を下回る結果が得られた。 これについても F e基板上 A 1 N 薄膜と同様の結果である。 A 1 N薄膜の膜厚はいずれも 40 nm程度であった。 この結果から、 A 1 N/F e、 A 1 N /M oといった材料系や基板面方位による 界面反応性の違いは見られず、 いずれの基板上 A 1 N薄膜についても界面反応が 抑制された界面を持っていることが分かった。
さらに、 A 1 N薄膜中への Mo原子の拡散が無いことを確認するために、 これ らの A 1 N薄膜表面における XP S測定を行った。 図 64は、 Mo基板上 A 1 N 薄膜表面の Mo 3d光電子スペクトルである。 いずれの面方位 Mo基板上 A 1 N薄膜についても、 表面において Mo 3 d 5/2、 3 d 3/2ピークが検出され ず、 M o原子の A 1 N薄膜中への拡散が抑制されていることが確かめられた。 また、 Mo基板上に成長させた A 1 N薄膜について、 表面モフォロジ一が基板 面方位やそれによる結晶性から受ける影響を評価するため、 A 1 N薄膜表面の A FM観察を行った。 図 6 5、 図 6 6、 及び図 6 7は、 Mo ( 1 1 0) 、 (1 00)、 及び ( 1 1 1) 基板上の A 1 N薄膜表面の AFM像をそれぞれに示すものである。 いずれの A 1 N薄膜においても F e基板上と同様に微小グレインが敷き詰まった ようなモフォロジ一を示した。 グレインサイズは直径 1 0〜 30 nm、 高さ 1〜 3 nm程度である。 ここで、 Mo (1 1 0) 上 A l N薄膜表面においてテラス〜
1 0 0 nm、 ステツプ高さ〜 1 nm程度のステツプ-テラス構造が微小グレイン に埋もれながらも確認された。 超高真空中ァニール後の Mo (1 1 0) 表面(図 37)においても同様のステップ-テラス構造が見られていることから、 A 1 N薄 膜画素の M o基板のモフォロジーを引き継ぎながら成長している可能性が考えら れる。
ここまで、 Mo基板上への A 1 N薄膜の成長は全て基板温度 450°Cで行って きた。 それは、 金属基板は原料との反応性が比較的高いということで、 基板温度 を低下させることによりその反応を抑制しながら高品質な A 1 N薄膜を成長しよ うという目的からである。 しかし、 サファイアのように原料との界面反応が無視 できる基板上では、 一般的に基板温度が 1 0 0 Ot以上で高品質な A 1 Nェピタ キシャル薄膜が成長されている。 そこで、 比較例として Mo基板上に基板温度 1 1 0 0°Cで A 1 N薄膜のェピタキシャル成長を試みた。
基板温度 1 1 0 0でにおける A 1 N薄膜の成長は、 ェピタキシャル成長可能であ ることが分かった Mo (1 1 0) 基板上に行った。 成長時間は 5分とした。 基板 温度、 成長時間以外の成長条件は前述した通りである。 すなわち、 原料ターゲッ 卜には、 A 1 N焼結体 (豊島製作所製、 純度: 99.98%) を用い、 N2圧力は I X 1 0— 2 T o r r、 レーザ一のエネルギー密度は、 4 J cm— 2、 パルス周波 数は 3 0 H zとした。
図 6 8は、 Mo (1 1 0) 基板上に 1 1 0 0 °Cで 5分間成長させた A 1 N薄膜 の RHEED像を示す。 リングパターンが見られることから、 1 1 0 0で成長 A 1 N薄膜は多結晶であることが分かった。 しかし、 A 1 N [ 1 1 - 20] 回折に よるスポットが強く見られることから、 多結晶としては配向性の高い A 1 N薄膜 であると言える。 また、 図 1 6に示す F e (1 1 0) 基板上に 5 1 0 °Cで成長さ せた A 1 N薄膜の RHEEDパターンと非常に良く似ていることから、 少し低い 80 0 °C〜 9 0 0で程度の基板温度において Mo (1 1 0) 基板上に結晶品質が 向上したェピタキシャル A 1 N薄膜を成長させることができると考えられる。 このように基板温度 1 1 0 0 °Cにおいて M o ( 1 1 0) 上に A 1 N薄膜が多結 晶成長した原因として、 やはり A 1 NZMo界面反応が促進された可能性が高い。 それを調べるために G I XR測定及び XP S測定を行った。
図 69は、 Mo (1 1 0) 上 1 1 0 0°C成長 「A 1 N薄膜の G I XRパターン 及びそのフィッティング曲線を、 比較のため 45 0で成長 A 1 N薄膜のデータと 並べて示すものである。 1 1 0 0 で A 1 N薄膜を成長した場合、 45 0で成長 A 1 N薄膜に比べて膜厚干渉によるフリンジ構造が非常に弱くなつていることが 分かる。 フィッティングの結果、 A 1 N/M o界面において 2. l nmの反応層 が形成されていることが分かつた。 この反応層が界面における結晶性を劣化させ たために、 成長膜が多結晶化したのだと考えられる。
また、 図 70は、 A 1 N薄膜表面の XP Sスペクトルを、 450 成長A l N 薄膜におけるスぺクトルと並べて示すものである。 1 1 0 Ot成長 A 1 N薄膜表 面において Mo 3 d 5/2及び 3 d 3/2が検出されたことから、 成長時に界面 反応を生じ基板から A 1 N薄膜表面にまで Mo原子が拡散していることが確かめ られた。
以上、 その他の例 2で示したように、 本発明を適用することにより、 F e基板 と同様に、 平坦化された Mo基板上に良質な A 1 N膜を成長させることができる。 特に、 Mo ( 1 1 0) 面に単結晶性の優れた A 1 N結晶を成長させることができ る。 また、 9 0 0 T以下の低温で A 1 N結晶を成長させることにより、 界面反応 を抑制することができる。
(その他の例 3 )
その他の例 3として、 成長基板に T aを用いた実施例について説明する。 T a は、 その融点が 29 9 6 °Cと極めて高く、 一般的に W、 Mo、 Nbなどとともに 高融点金属と言われている。 化学的にも非常に安定であり、 室温においてはほと んどの酸やアルカリと反応しない。 特に耐酸性が強く、 王水に不溶である。 また、 空気中で酸化皮膜をつくるので耐食性に優れている。 最もよく利用されているの はコンデンサである。 タンタルコンデンサは他種のコンデンサに比べて小型で、 漏れ電流が少ない上、 安定度がよいとされている。 パソコンや携帯電話など、 小 さなエレクトロニクス製品の基板には多量のタンタルコンデンサが実装されてい る。 耐食性を利用し、 化学装置用材料、 人工骨などにも用いられる。
また、 結晶構造は b c c構造であり、 格子定数は a = 3. 298 Aである。 単 結晶 T aは、 F Z法により作製され、 純度は、 9 9. 99 %のものを得ることが
できる。 単結晶 T a基板は、 大きな柱状バルクから X線回折により結晶方位が同 定された後に切り出されるため、 オフ角の制御が可能であり任意の表面面方位を 持つ基板を得ることができる。
以下、 CMPによる T a基板の平坦化、 超高真空中でのァニールによる T a表 面の解析及ぴ T a基板上への A 1 N薄膜成長について説明する。 なお、 T a基板 上の界面バッファ層の A 1 N層上へ G a Nを成長させる条件は、 F e基板上の界 面バッファ層の A 1 N層上へ G a Nを成長させる条件と同様である。
一般にェピタキシャル成長用基板には、 原子レベルでの平坦性が必要とされる。 したがって、 まず各面方位の金属基板を CMPによる平坦化を行った。
金属基板として T a (1 1 0) 面、 (1 0 0) 面、 (1 1 1) 面及び ( 1 1 2) 面の 4種類の基板を用い、 最適化した条件で研磨を行った。 図 7 1〜図 74 は、 C MP後の T a基板の (1 1 0) 面、 (1 0 0) 面、 (1 1 1) 面及び ( 1 1 2) 面の A FM像をそれぞれ示したものである。
図 7 1〜図 74に示す表面モフォロジ一から分かるように、 T a基板は、 どの 面方位においてもスクラッチフリ一な表面が観察された。 表面粗さを表す RMS (route-mean-SQuare) 値は、 すべて 0. 2〜0. 3 nm程度であり、 その値は 小さく、 平坦な表面が得られることが分かった。 図 7 1に見られる左上から右下 に伸びている複数のラインはステップではなく、 表面が平坦なため AFM測定の 際にノイズが入ってしまったものである。 この条件で行った研磨では、 いずれの 面方位基板においてもかなり再現性よくフラットな表面モフォロジ一が得られ、 R M S値も同程度の値が得られることが分かった。
化学的機械研磨 (CMP) 後の表面モフォロジ一は、 面方位に依存せず平坦で あることが分かった。 これらの平坦化させた T a基板を、 P LDチャンバに搬送 しその上に窒化物を成長させるのだが、 その前に表面の自然酸化膜および炭素系 の汚染を除去する目的で超高真空中ァニール処理を行った。 そのァニール中にお ける各面方位の T a基板の表面モフォロジーを RHE EDにより 観察し た。 昇温速度は、 40°C/m i n、 加熱中の圧力は 1 0— 9 T o r r程度であつ た。
その結果、 T a基板は面方位によらず、 1 1 0 0T、 1時間というァニール処
理によって表面の自然酸化膜や炭素化合物による汚染を除去することが可能で、 清浄な表面が得られることが分かった。 図 7 5〜図 7 8は、 1 1 00°C、 1時間 のァニール処理後の T a基板の ( 1 1 0 ) 面、 (1 0 0) 面、 ( 1 1 1) 面及び ( 1 1 2) 面の RHE E D像をそれぞれ示したものである。 このように 1 1 0 0 Xで 6 0分間ァニール処理することにより、 はっきりとしたストリークパターン の RHE ED像を得ることができた。 さらにその後、 室温まで温度を下げて観察 を続けたところ、 同様な R H E E Dパタ一ンが得られたことから、 1 1 0 0Tァ ニール後には、 表面酸化膜や炭素化合物が除去されていることが分かる。
また、 さらに超高真空中ァニールによる表面モフォロジ一の変化を調べるため に、 サンプルを P L Dチャンバから大気中へ取り出して A FM測定を行った。 図 7 9〜図 82は、 1 1 0 0°C、 1時間のァニ一ル処理後の T a基板の ( 1 1 0 ) 面、 (1 00) 面、 ( 1 1 1 ) 面及び ( 1 1 2 ) 面の AFM像をそれぞれ示した ものである。
T a ( 1 1 0) 基板において平坦な表面モフォロジ一が観察され、 CMP後の A FM像と比較してみると、 RMS値も 0. 29mnから 0. 2 0 nmに減少し ており、 表面の平坦性が向上していることがわかる。 また、 (1 0 0) 、 (1 1 1) 面の基板についても、 RMS値は 0. 0 5 nm程度減少していて、 ( 1 1 0 ) 面と同様、 ァニールによって平坦性が向上している。 ( 1 1 1) 面は、 その 表面エネルギーが高く、 化学的安定性が低いことから、 ァニールによって (1 1 0 ) 等の安定な面がファセット面として出てしまうことが予想されたが、 表面モ フォロジ一から T aにおいてそのようなことは起こらず、 良好な平坦性を持つ
(1 1 1) 表面が得られた。 ( 1 1 2) 面については、 RMS値は減少こそして いないが、 あまり変化しておらず、 平坦性は保たれている。 どの面についても超 高真空中ァニールによって表面荒れを起こすことはなく、 平坦で清浄な基板表面 が得られることがわかった。 このように、 AFM観察や RHEED観察によって 真空中ァニールによる基板の表面状態の変化が明らかとなり、 表面酸化膜や有機 物が除去され、 表面清浄化が実現していることが分かった。
また、 ァニール中の T a基板表面の化学状態を詳しく調べるため、 XP Sによ りさらに詳細な分析を行った。 XP S装置には、 加熱機構が備わっているため、
これによりァニール中の基板表面の i«- X P S分析を行った。 この測定にお いては、 上述した CMPにより表面研磨を行った T a ( 1 1 0) 基板を用いた。 X線源には単色化 A 1 K (hv = 1486.7 eV) を用い、 加速電圧は 1 4 k V、 出力は 3 0 0 Wである。 測定は、 ワイドスキャン (1400〜0 eV) 、 T a 4 f ピ —ク、 C I sピーク、 〇 I sピーク、 及び N a I sピークのナロ一スキャン を行った。 また、 測定する際は、 各温度に設定した後、 温度安定のために 3 0分 待ってから放冷し、 約 3 0分後、 室温に戻ってからワイドスキャン、 次いで各元 素のピークの測定を行った。
図 8 3〜 8 7は、 T a ( 1 1 0) 基板について測定した、 各温度におけるワイ ドスキヤン、 T a 4 f 、 C 1 s、 O 1 s、 及び N a 1 sの光電子スぺクトル をそれぞれ示すものである。
図 8 3に示したワイドスキャンの測定結果から、 現れているピークは T a 4 f 、 C 1 s、 O 1 s、 及び N a 1 sであることを確認したので、 それらにつ いてナロースキャンを行った。 まず、 図 8 4に示した T a 4 f では、 室温にお いて 2 7 e V、 2 9 e V付近に T a 2 O 5に由来すると考えられるピークが見ら れた。 一方、 基板からのメタル T aの T a 4 f7/2、 T a 4 f 5/ 2と考えられ るピークもそれぞれ 2 2 e V、 2 4 e Vに見られた。 昇温していくと、 次第にメ タルピークが大きくなつていつたのに対し、 T a 205のピークは、 4 0 0 ま で見られたものの 5 0 0 °C以上に昇温すると見られなくなった。 このことから、 CMP処理後の T a基板は, 室温において自然酸化膜に覆われており、 昇温とと もに徐々に表面から除去され、 5 0 0で以上で T a 205の除去が進行し、 メタ ル T aになっていることが分かった。 また、 3 1 e V、 3 3 e V付近に見られる ピ一クは、 T a基板にもともと不純物として含まれていた Wの 4 f 7/2、 4 f 5 /2によるもの考えられる。 なお、 T aと Wは、 物性が似通っていて、 取り除く のは困難である。 4 f 7/2、 4 f 5/2のピーク面積比は 4 : 3になるはずである が、 そうなつていないのは W 4 f 5/2のピークに T a 5 p 3/2のピークが重な つているためである。 さらに、 5 0 0 °Cにおいて 2 6 e Vにショルダーピークが 見られ、 昇温とともにわずかに低結合エネルギーシフトしているのが分かる。 こ のピークは、 メタルピークと T a 2〇 5によるピークの間に位置することから、
T a 2 0 5という組成をとらず、 2〜 4個の酸素原子のみと結合し + 2〜+ 4の 酸化数をとる T a原子が存在していると考えられる。
次に、 図 8 6に示す C 1 sについては、 室温及び 2 0 0でにおいて 2 8 5 e V付近に大きなピークと、 2 9 0 e V付近にわずかなショルダーが見られた。 前 者は、 C M P後から X P Sチャンバに搬送するまでの間に表面に吸着した炭素系 の汚染であり、 後者は洗浄に用いたエタノールが基板と反応して生成したェトキ シ基などの有機物であると考えられる。 4 0 0 °Cに温度を上げるとショルダーピ —クは消失し、 2 8 4 e Vに見られる原子状の Cのピークも 5 0 0でで消失した。 5 0 0で以上では、 Cのピークは全く見られなくなった。 また、 C I sのスぺ クトルにおいて、 5 0 0で及び 6 0 0 で、 有機物など一般的な炭素化合物に比 ベて低結合エネルギー側の位置にピークが見られるが、 このピークについては同 定できなかった。 しかし、 7 0 0 以上では完全に消えているので除去できたと 考えられる。
一方、 図 8 7からわかるように室温と 2 0 0 で 1 0 7 2 e V付近に N a 1 sのピークが見られた。 原因は Cと同様、 研磨中あるいは洗浄中において表面に 吸着した汚染ではないかと考えられる。 4 0 0ででわずかに高結合エネルギー側 にシフトし、 ピークが強くなつたように見えたが、 6 0 0で以上の加熱では完全 に消え、 除去された。
これらの結果から、 室温では T a 2 0 5、 及び炭素やナトリウム系の汚染が混 合物となって T a基板表面に存在していることが分かる。 昇温するにつれて徐々 に T a基板表面の清浄化が進行し、 5 0 0 °C程度で T a酸化物は、 X P Sの検出 限界以下となり、 また、 5 0 0 までに、 有機物などの汚染は、 C Oや H 2等に 分解して除去されたと考えられる。 これは、 R H E E D観察において 5 0 0 °C近 くからストリークが現れ始めたことと一致する。
7 0 0で以上において表面に吸着した炭素系の汚染や、 酸化物 T a 2 0 5は、 X P Sの検出限界以下となっているが、 0 1 sのスペクトルである図 8 6を見 ると酸素は、 9 0 0 においても残っていることが分かる。 前述したように図 8 6において 2 6 e V付近にショルダーピークが見られることと照らし合わせると、 これは T a表面に 1原子層以下の酸素原子が吸着しており、 例えば T a O i . 5と
いうような低酸化数の T a酸化層を形成しているためだと考えられる。 このよう な酸化層は、 9 0 0 °C加熱によっても完全に除去することは不可能であった。 これらの XP S測定結果から、 9 0 0での加熱によっても Wや Oが残留してい ると考えられるが、 T a基板表面から有機物自然化膜が大幅に除去されたことが 分かる。
次に、 T a (l l O) 面、 ( 1 0 0) 面、 ( 1 1 1) 面、 及び (1 1 2) 面を 用い、 それぞれの面方位について同じ条件で A 1 N層へテロェピタキシャル成長 を試みた。 図 8 8〜図 9 1は、 T a ( 1 1 0 ) 面、 ( 1 0 0 ) 面、 ( 1 1 1 ) 面、 及び ( 1 1 2) 面と A l N (O O O l)面とのァラインメント関係及び格子ミスマ ツチをそれぞれ示す模式図である。
一般的な I I I族窒化物薄膜のへテロェピタキシャル成長においては、 多くの 場合(00 0 1 )面が成長することが知られている。 したがって、 どの面方位を持 つ T a基板上へも A 1 N (0 0 0 1 )面が成長すると仮定して予想される配向関係 を 2〜 3パターン示し、 それぞれについて格子ミスマッチを計算した。 どのパタ —ンにおいてもミスマッチが大きくなつてしまう方向が存在しているが、 T a
(1 1 1) 面においてミスマッチが非常に小さい配向関係が予想される。 さらに、 T a (1 1 1) 面は 3回回転対称であるので、 対称性が六方晶ウルッ鉱構造をも つ A 1 Nの ( 0 00 1 ) 面に近く、 良質な結晶成長が期待される。 一方、 T a
( 1 00) 面は、 4回回転対称であることから、 同等の整合性を示す配向が 2パ ターン考えられ、 その 2つのドメィンが混在してしまうダブルドメイン構造が予 想される。
上述した結晶成長の予測を実証するために、 A 1 N薄膜を成長させた。 A 1 N 層成長前の T a基板の超高真空中ァニールは、 1 1 0 0°Cで 1時間行った。 A 1 N層の成長時の基板温度はパイ口メータ一 (エミシビティ 0.05) を用いて、 4
50°Cに設定した。 また、 原料ターゲットには、 A 1 N焼結体 (豊島製作所製、 純度: 99.98%) を用い、 N 2圧力は 1 0 m T o r r、 レーザ一のエネルギー密 度は、 3 J cm— 2、 パルス周波数は 30 Hzとした。 成長時間は 3 0分とし たが、 窒素圧が 1 0m T o r rと比較的高いので、 RHEED観察は成長中
(30秒 · 1分 · 5分) において一旦成長を停止して窒素を抜き、 真空にしてから
行った。 また A 1 Nの成長前後においても行った。
図 9 2及び図 9 3は、 T a (1 1 0) 基板上へ A 1 Nを成長させた 3 0分後の RHEED像である。 成長前には T a基板のシャープなストリークパターンが見 られた。 A 1 N成長開始 30秒後には、 ストリークパターンが見え、 成長を続け るにつれてスポット状に変化していった。 30分の成長後の観察でははつきりと したスポットパターンが見られ、 単結晶 A 1 Nがェピタキシャル成長しているこ とがわかった。 図 9 3は、 3 0 ° 回転させて観察した RHE ED像で、 A 1 N.
[1 0— 1 0]方向においてもスポットパターンが見られた。 多結晶を示すリング パターンやダブルドメインは見られず、 Ta基板のストリ一ク間隔と A 1 Nのス ポット間隔の比較により、 ェピタキシャル関係は A 1 N [1 1— 20 ] // T a [0 0 1]及び A 1 N [1 - 1 0 0] // T a [- 1 1 0]であると判明した。 ェピ夕 キシャル成長できた要因としては、 b c c構造において(1 1 0)面が最密面で化 学反応性が低いこと、 また、 450でという低温で成長したことにより金属基板 とプレカーサ一との界面反応が抑制され、 界面急峻性が保たれたことが考えられ る。 また、 RHE E Dパターンがスポット状に変化していったのは、 A 1 Nが三 次元成長したため、 成長とともに膜の表面形状が凸凹になり、 荒くなつたためと 考えられる。
図 94は、 T a ( 1 0 0) 基板上へ A 1 Nを成長させた 3 0分後の RHE ED 像である。 成長前には T a基板のシャープなストリークパターンが見られた。 A 1 N成長開始 30秒後は、 基板のパターンを引きずっているようなパターンが見 えており、 成長を続けるにつれてスポット状のパターンがはっきりと現れた。 3 0分成長後の観察では、 さまざまな方位からの回折パターンが観察され、 A 1 N は、 単結晶成長していないことがわかる。 また、 準安定状態である立方晶 A 1 N によるスポットパターンも見られ、 六方晶 A 1 Nの中に多数の立方晶 A 1 Nが混 在していることが分かった。 T a (1 0 0) 基板上に、 A I Nは、 ェピタキシャ ル成長しなかったが、 これは、 格子ミスマッチのところでも述べたように、 ( 1 0 0) 面においては、 基板が 4回回転対称であることから A 1 Nの 3 0 ° 回転ド メインが入りやすいく結晶の乱れが生じやすいことに起因している。
図 9 5及び図 9 6は、 T a ( 1 1 1) 基板上へ A 1 Nを成長させた 3 0分後の
RHEED像である。 ( 1 1 0) 面や (1 0 0) 面と同様、 成長前には T a基板 のシャープなストリークパターンが見られた。 A 1 N成長開始 30秒後に、 ぼん やりとしたストリークパターンが見え始め、 1分後や 5分後の成長の観察ではし だいにはっきりとしたスポット状のパターンに変化した。 3 0分後の成長の観察 では、 ダブルドメインを示すスポットパターンが見られた。 A 1 Nは、 単結晶で は成長しておらず、 30 ° 回転ドメインが含まれることがわかった。 また、 図 9 5と図 9 6の RHEED像を比較してみるとわかるように、 T a [1 1— 2]方向 では、 A 1 N [1 0— 1 0]方向を示す RHEEDパターンが強く現れているのに 対し、 3 0 ° 回転させた T a [1 0— 1]方向では、 A 1 N [1 1— 2 0]方向を示 すパターンが強く現れている。 これは、 3 0 ° ずれた 2つのドメインが完全に半 分ずつ存在しているのではなく、 片方に偏って存在しているためだと考えられる。 つまり、 A 1 N [1 1— 20]と T a [1 0— 1]、 A 1 N [1 0— 1 0]と T a [l 1— 2]が配向関係にある結晶が優性に成長していると考えられる。 また、 図 9 0に示した T a (1 1 1) と A 1 N ( 00 0 1 ) の配向関係では、 右側の関係に あたることから、 対称性が等しい場合、 結晶成長は格子不整合の小さい配向関係 が優性に進行することが分かる。
図 9 7は、 T a ( 1 1 2) 基板上へ A 1 Nを成長させた 3 0分後の RHE ED 像である。 ( 1 1 2) 面でも同じように成長前には、 ァニールによって T a基板 のシャープなストリークパターンが見えた。 A 1 N成長開始 3 0秒後には、 うつ すらとスポット状のパターンが観察された。 成長が進むにつれて、 1分後、 5分 後の観察でしだいに多結晶を示すリング状のパターンが混在し、 30分後の成長 の観察では、 c軸配向性を示すパターンが得られたが、 同時にリングパターンの 混在も明らかになった。 原因として、 T a (1 1 2) 面は結合エネルギー的に安 定な面方位ではあるが、 原子密度は高くなく、 結晶の乱れが生じやすいというこ とが考えられる。
次に、 T a基板のそれぞれの面方位上に成長させた A 1 N層の膜厚および界面 の状態を調べるため、 X線反射率 (G I XR) 測定を行った。 また、 これらの反 射率曲線に対して理論曲線によるパラメ一タフィッティングを試みた。
図 9 8は、 X線反射率の測定結果とフィッティング結果をそれぞれ示すグラフ
である。 A 1 N膜厚は、 いずれも 40 nm前後で成長レートが保たれていた。 G I XR測定の結果から界面層の厚さは、 どの面方位においても、 ~3 nm以下の 検出限界以下に抑えられていた。
各面方位の結果を比較しても、 膜厚や界面層の厚さに大きな相違は見られず、 G I XR測定結果からは面方位による違いは見いだせなかった。 つまり、 ェピタ キシャル成長するかどうかに界面層が影響しているとしても、 それは数原子層程 度のごくわずかな厚さであると考えられる。
さらに、 基板からの原子拡散反応が起きているかどうかを調べるため、 各面方 位に成長した A 1 N層の XP S分析を行い、 A 1 N層表面における T a原子の有 無を調べた。 それぞれ 30分間成長させた A 1 N膜 (〜250 nm) 、 及び 5分間成 長させた A 1 N膜 (〜40 nm) の両サンプルについて測定を行った。 ただし、 T a (1 1 0) 上へ 3 0分間成長させた A 1 N膜については、 測定の都合上 T a 4 f 、 および T a 4 dについてのスぺクトルが得られなかったため、 ワイ ドス キヤンのデ一夕のみから判断した。
図 9 9〜図 1 0 1は、 30分間成長させた A 1 N膜について測定した、 ワイド スキャン、 T a 4 f 、 及び T a 4 dの光電子スぺクトルをそれぞれ示す。 図 9 9に示すワイドスキャンにおいて、 A 1 N膜、 表面酸化物や不純物に帰属される A N、 C、 0、 Fの各ピークが見られた。 Fは、 A 1 N膜中に含まれる不純 物である。 一方、 T a 4 f や他の T a原子に帰属されるピークは見られなかつ た。 図 1 00に示す T a 4 f の光電子スぺクトルでは、 26 e V付近と 1 8 e V付近にピークが見られた。 T a 4 f は、 5 2カ 2 3. 5 e V、 7Z2が 2 1. 6 e Vであるが、 これらのピークが単体 T aや T a化合物によるものである かどうかを調べるため、 T a 4 dについてもナロースキャンを行った。 その結 果、 図 1 0 1に示すようにピークは全く見られず、 ピークは T aに帰属されるピ ークではないことが分かった。 これらのピークは、 〇 2 sピークであると考え られる。 このことから、 T a基板上に 30分間成長させた A 1 N膜 (〜250 nm) には、 基板からの T a原子拡散が起きておらず、 拡散反応が抑えられていること が確認された。
図 1 0 2及び図 1 0 3は、 各温度における T a ( 1 1 0) 基板上の A 1 N ( 0
0 0 1) の X線反射率の測定結果と界面層厚さをそれぞれ示した図である。 これ らの結果より A 1 N (0 0 0 1)/Ta(l 1 0)ヘテロ界面は、 1 00 0 までの 耐熱性を持つことが分かる。
以上、 その他の例 3で示したように、 本発明を適用することにより、 F e基板 と同様に、 平坦化された T a基板上に良質な A 1 N膜を成長させることができる。 特に、 T a ( 1 1 0) 面に単結晶性の優れた A 1 N結晶を成長させることができ る。 また、 低温で A 1 N結晶を成長させることにより、 界面反応を抑制すること ができる。 また、 製造された半導体装置の A 1 N (0 0 0 1)/T a (1 1 0)へテ 口界面は、 1 0 0 0でまでの耐熱性を有することにより、 1 00 GHz程度まで の髙マイクロ波帯フィルタ素子を実現することができる。
(その他の例 4)
その他の例 4として、 成長基板に Wを用いた実施例について説明する。 Wも T aと同様、 融点が 340 7でと極めて高く、 高融点金属と言われる。 化学的にも 安定である。 融点が高く、 金属としては比較的大きな電気抵抗を持つので、 電球 のフィラメントとして利用される。 また、 比重が大きいため、 危険性の指摘され る劣化ウランのかわりに砲弾に用いられることもある。 狩 ¾用の散弾銃の鉛弾な ど、 鉛に代わる代替品としても注目されている。
結晶構造は、 T aと同じく b e c構造であり、 格子定数は a = 3. 1 6 5 Aであ る。 単結晶 Wも F Z法により作製され、 純度は 9 9. 99 9 %のものを得ること ができる。 単結晶 Wについても単結晶 T aと同様にバルクから切り出すため、 ォ フ角が制御され任意の面方位をもつ T a基板を得ることができる。
以下、 CMPによる W基板の平坦化、 超高真空中でのァニールによる W表面の 解析及び W基板上への A 1 N薄膜成長について説明する。 なお、 W基板上の界面 バッファ層の A 1 N層上へ G a Nを成長させる条件は、 F e基板上の界面バッフ ァ層の A 1 N層上へ G a Nを成長させる条件と同様である。
その他の例 3では、 高融点金属である T a基板の上に A 1 N層を結晶成長させ たが、 同じく高融点金属であり T aと物性値が似通っている Wを成長用基板に用 いて、 T aと同じ条件によって A 1 N層の成長を試みた。 T aでは (1 1 0) 面 において単結晶 A 1 N層のェピタキシャル成長に成功したので、 Wでも ( 1 1
0) 面上での単結晶成長が期待されるが、 実験の都合上 W ( 1 1 0) 面を用いる ことが出来なかったので、 面方位は W (1 1 2) 面を用いた。
まず、 結晶成長の前処理として W ( 1 1 2) 基板を鏡面研磨し、 基板表面の平 坦化を行った。 基板の表面モフォロジ一は AFMにより観察した。 図 1 04は、 CM P後の A FM像である。
研磨後の W (1 1 2) 基板表面における RMS値は 0. 2 6 6 nmで、 T a基 板や電磁鋼鈑など、 他の金属基板のデータとの比較からも、 その値は十分に小さ く、 平坦な表面が得られることが分かった。 ノマルスキ一顕微鏡によるマクロな 観察によっても平坦な表面が観察された。 W (1 1 2) 基板においても T a基板 と同じ条件による研磨で、 表面の平坦化が可能であることが分かった。
続いて、 T a基板と同様、 表面の自然酸化膜および炭素系の汚染を除去する目 的で超高真空中ァニール処理を行った。 昇温速度は 40t Zm i n、 加熱中の圧 力は 1 0— 9 T o r r程度で、 そのァニール中における W ( 1 1 2) 基板表面モ フォロジ一の変化を RHEEDにより in-situ観察した。
図 1 0 5 ~ 1 0 8は、 それぞれァニール前の室温、 7 5 0 ^:、 1 1 0 0 の R HEED像及び 1 1 0 0°Cで 6 0分間ァニール処理した場合の R H E E D像であ る。 ァニール前の室温において基板のストリークが観察された。 基板表面の自然 酸化膜や、 炭素化合物などの付着による、 ハローパターンも見られ、 パターンは 全体的にぼやけている感じであつたが、 表面は完全な非晶質ではないことが分か つた。
昇温を開始すると、 図 1 0 6に示すように 7 50 °C付近で、 ハローパターンが 完全に見られなくなり、 はっきりとしたストリークパターンが観察された。 これ は、 T a基板の時と同様、 酸化膜や炭素化合物などがァニールによって 7 50で において基板表面から除去され、 W基板本来の平坦で清浄な表面が露出したこと を示している。 さらに昇温し続けると、 徐々にストリークはさらにシャープなも のになつていき、 昇温につれて基板表面の清浄化が進んでいることが分かった。 最終的に 1 1 0 0でに達すると、 図 1 0 7に示すような基板ストリークパターン の RHE ED像が得られた。 その後は 1 1 0 0°Cを 6 0分維持して変化をみると、 図 1 0 8に示すように、 ストリークパターンに加えて円周上に並んだシャープな
回折スポットも観察された。 これは電子線入射方向に面内で垂直な方向における 結晶構造の周期性だけでなく、 2次元的な表面構造の周期性を反映した回折スポ ットであり、 基板表面が極めて清浄であることを示している。 さらにその後室温 まで温度を下げて観察を続けたところ、 同様な RHE EDパターンが得られた。 このことから、 W ( 1 1 2) 基板においても、 1 1 0 0でァニールによって表面 酸化膜や炭素化合物による汚染は除去され、 表面清浄化が可能であることが分か つた。 これらの結果から、 W ( 1 1 2) 基板も 1 1 0 0で、 1時間というァニ一 ル処理によって表面の自然酸化膜や炭素化合物による汚染を除去することが可能 で、 清浄な表面が得られることがわかった。
また、 T a基板と同様、 さらに超髙真空中ァニールによる表面モフォロジ一の 変化を調べるために、 サンプルを P LDチャンバから大気中へ取り出して AFM 測定を行った。 図 1 0 9は、 W ( 1 1 2) 面基板における超高真空中ァニール後 の AFM像である。 図 1 0 9からわかるように、 平坦な表面モフォロジ一が観察 された。 CMP後の AFM像と比較してみると、 RMS値も 0. 2 6 11111から 0. 2 2 nmに減少しており、 表面の平坦性が向上していることがわかる。 ステップ 状の表面モフォロジ一は観察されなかったが、 W ( 1 1 2) 面においても、 加熱 によって表面荒れを起こすことはなく、 平坦で清浄な基板表面が得られることが わかった。
また、 T a基板の時と同様、 W ( 1 1 2) 基板においてもァニール中の基板表 面の化学状態を詳しく調べるため、 XP Sによりさらに詳細な分析を行った。 X 線源は単色化 A 1 K ( v = 1486.7 eV) 、 加速電圧は 1 4 kV、 出力は 3 5 0 Wである。 ァニール温度は室温から 9 0 0 °Cまで昇温させた。 温度安定の ため 3 0分待ってから放冷し、 約 3 0分後、 室温に戻ってから測定を行った。 ワイドスキャン (1400〜0 eV) を測定した結果 W、 C、 Oのピークが見られた ので、 W 4 f ピーク、 C I sピーク、 〇 I sピークについてナロースキャン を行った。 図 1 1 0〜 1 1 2は、 それぞれ W 4 f ピーク、 C 1 sピーク及び O 1 sピークの光電子スぺクトルである。
図 1 1 0に示す W 4 f について、 室温から基板のメタル Wの W 4 f 7/2、 W 4 f 5/2と考えられるピークがそれぞれ 3 2 e V、 3 4 e V付近に見られた。 ま
た、 W4 p 3/2と思われるピークも 3 8 e V付近に見られた。 昇温していくと、 次第にこれらのメタルピークはやや大きくなつていつている。 これは T a基板の 時と同様、 基板表面を覆っていた自然酸化膜が昇温とともに徐々に表面から除去 されたためと考えられる。 Wの酸化物 (wo2や W〇3など) によるピークはは つきりとは現れていないが、 W4 f 7/2、 W4 f 5/2のピークの髙結合エネルギ 一側にショルダーが見られており、 このあたりに酸化物のピークが埋もれていて ショルダーになっているのではないかと考えられる。
図 1 1 1に示す C 1 sについて見てみると、 室温および 20 0でにおいて 2 8 5 e V付近のピークと、 29 0 e V付近にわずかなショルダーが見られた。 こ れは T a基板と同じ傾向であり、 前者は、 CMP後から XPSチャンバに搬送す るまでの間に表面に吸着した炭素系の汚染で、 後者は、 洗浄に用いたエタノール が基板と反応して生成したメトキシ基などの有機物であると考えられる。 40 0 でに温度を上げるとショルダーピークは消失し、 28 5 e Vに見られる原子状の Cのピークは少し低結合エネルギー側にシフトしている。 これより後者の有機物 が分解して除去されたことが分かる。 Cのピークは 6 0 0でで消失し、 6 0 0で 以上では、 Cのピークは全く見られなくなった。 Cはァニールによって完全に除 去できることが分かった。 なお、 Cのピークが見られなくなった温度は、 T a基 板の時と比較すると少し高めであった。
図 1 1 2に示す O 1 sのスぺクトルを見てみると、 室温において 5 3 1 e V 付近の O I sのピークと、 5 33 e V付近にショルダーが見られる。 40 0 °C でショルダーピークは消失し、 O 1 sのピークはやや低結合エネルギー側にシ フトしている。 このピークは W〇3によるもので、 加熱により除去されたと考え られる。 O I sのピークは、 昇温するにつれて弱くなつているが、 9 0 0 °Cに おいても残っていることが分かる。 これは熱的に安定な酸化物 wo2によるもの であると考えられる。 W 4 f のスペクトルにおいて、 W4 f 7/2、 W4 f 5/2 のピークの高結合エネルギー側ショルダーが 9 0 0 °Cにおいても観察できること とも相関がある。
これらの結果から、 W基板も真空中ァニールによって表面清浄化が進行し、 R HE ED観察において明瞭なストリークパターンが得られていることから、 その
上に窒化物をェピタキシャル成長させるのに十分なくらい清浄な表面が得られて いると考えられる。
図 1 1 3は、 W ( 1 1 2) 面と A 1 N ( 0 0 0 1 ) 面とのアラインメント関係 及び格子ミスマッチを示す模式図である。
A 1 N層成長前の W (1 1 2) 基板の超高真空中ァニールは、 1 1 0 0でで 1 時間行った。 A 1 N層の成長時の基板温度はパイロメ一ター (エミシビティ 0.05) を用いて、 450 に設定した。 ここで、 行った A 1 N層の成長条件は T a基板上への A 1 N成長と同じで、 成長時間は 3 0分とした。 RHEED観察は T a基板の時と同様、 窒素圧が 1 0 mT o r rと比較的高いので、 成長中 (30 秒 . 1分 .5分) において一旦成長を停止して窒素を抜き、 真空にしてから行つ た。 また A 1 Nの成長前後においても行った。
図 1 14~ 1 18は、 T a (1 1 2) 基板上への、 A 1 N成長前と成長中 (30 秒 · 1分 · 5分) 及び 3 0分間成長させた後における RHEED像である。 成長 前には、 ァニールによって W ( 1 1 2) 面基板のシャープなストリークパターン が見えていた。 A 1 Ν成長開始 30秒後には、 ブロードではあるがストリ一クパ 夕一ンが観察された。 1分後、 5分後の観察によると、 成長が進み RHEED像 のコントラストはやや良くなつたが、 しだいにスポット状のパターンに変化して きた。 30分間成長させた後の観察では、 完全にスポットパターンになっていた。 また、 リング状のパターンもうつすらと現れているように見える。 W ( 1 1 2) 面では、 A 1 Nの成長初期においてはェピタキシャル成長したが、 成長膜厚を増 加すると結晶性が劣化していることが明らかになった。 これは T a (1 1 2) の ときと同様に、 (1 1 2) 面の安定性がそれほど高くなく、 不安定であるためだ と考えられる。
また、 W (1 1 2) 基板上 A 1 N層の表面形状を調べるために、 成長後チャン バから取り出し、 AFMと S EMによる表面モフォロジ一の観察を行った。 図 1 1 9及び図 1 2 0は、 それぞれ W ( 1 1 2) 面基板上に成長した A 1 N層表面の A FM像及び S EM像である。
A 1 N膜表面において、 グレインが多数観測され、 ァニール後の表面状態と比 ベてかなり凹凸のある表面モフォロジ一が得られた。 グレインサイズは、 2 0 η
mくらいである。 RMS値を見ても 1. 86 nmで、 ァニール後のモフォロジ一 と比較すると一桁大きな値になっている。 これは、 A 1 Nが三次元成長したため と考えられる。 また、 この像は、 T a ( 1 1 2) 基板上に成長したサンプルで見 られたモフォロジ一と類似していた。 また、 図 1 1 9及び図 1 2 0に示すモフォ ロジ一をよく見てみると、 どちらの像においてもグレインが図中に示した矢印の 方向に伸びているように見える。 これは、 次に述べる E B S D測定の結果から分 かったことだが、 矢印の方向に A 1 Nの c軸が傾いて成長したためであると考え られる。
また、 T a基板上の膜の評価と同様、 S EMによる表面観察とともに、 EB S D測定も同時に行つた。 S EM像の微小領域における結晶構造のマツビングによ つて、 A 1 N薄膜の結晶構造及び結晶方位、 W基板との配向関係を同定した。 図 1 2 1及び図 1 22は、 それぞれ E B S D測定した W (1 1 2) 面基板上 A 1 N 膜の極点図である。
ある既知パターンから結晶構造を同定するので、 E B S D測定が可能であつた ことからも、 W (1 1 2 ) 面上には A 1 N薄膜が配向性をもって成長していると 考えられる。
図 1 2 2の結果から、 この A 1 N膜の A 1 N [0 0 0 2]方向は W基板の面直方 向から傾いていて、 面直方向は A 1 N [1 0 - 1 3]方向であることが分かった。 つまり、 この A 1 N膜は c軸が傾いて成長している。 W (1 1 2) 面で安定なフ ァセット面が出て、 その上に A 1 Nが傾いて成長したのではないかと考えられる。 基板との配向関係は、 図 1 2 1から A 1 N [— 1 0 1 1]と W [— 1 1 0]、 A 1 N [1 - 2 1 0]と W [1 1 - 1 ]であることがわかった。
また、 この A 1 N膜の結晶構造についてさらに調べるため、 X線回折 (XR D) による評価を行った。 図 1 23は、 XRD測定結果である。 図 1 2 3に示す 結果から、 たしかに W ( 1 1 2) 基板の上に A I N ( 1 0 - 1 3) 面が成長して いる。 また、 3 6 ° 付近に A I N ( 0 0 0 2 ) のピークも現れていることから、 c 軸が面直方向に伸びている結晶も混在していることが分かった。 このことから、 異なった成長軸を持った A 1 N薄膜が存在しており、 結晶性が低下したと考えら れる。
以上、 その他の例 4として W (1 1 2) 基板へ A 1 Nを成長させたが、 F e、 Mo、 T a等と同様な結果が得られたことから、 F e、 Mo、 T a等と同様の効 果を得ることができる。 つまり、 本発明を適用することにより、 F e基板と同様 に、 平坦化された W基板上に良質な A 1 N膜を成長させることができる。 特に、 W (1 1 0) 面に単結晶性の優れた A 1 N結晶を成長させることができる。 また、 低温で A 1 N結晶を成長させることにより、 界面反応を抑制することができる。
(その他の例 5 )
その他の例 5として、 成長基板に A gを用いた実施例について説明する。 Ag は、 金属の中で最も高い熱伝導率を示すことから放熱基板として有望である。 さ らに、 鏡面状態の Agは、 可視光領域で 1 0 0 %に近い反射率を示すため、 鏡面 Ag基板は、 放熱効率の改善及び光取り出し効率の向上が期待でき、 窒化物半導 体デバイス用の成長基板として非常に有望である。 また、 結晶構造は、 C uと同 じく f c p (面心立方格子構造: face-centered cubic lattice) 構造であるた め、 Cuと同様に (1 1 1) 面において単結晶 A 1 N層をェピタキシャル成長さ せることとした。
一般にェピ夕キシャル成長用基板には、 原子レベルでの平坦性が必要とされる。 したがって、 まず各面方位の金属基板を CMPによる平坦化を行った。
化学的機械研磨 (CMP) 後の表面モフォロジ一は、 面方位に依存せず平坦で あることが分かった。 これらの平坦化させた A g基板を、 P LDチャンバに搬送 しその上に窒化物を成長させるのだが、 その前に表面の自然酸化膜および炭素系 の汚染を除去する目的で超高真空中ァニール処理を行った。 そのァニール中にお ける各面方位の Ag基板の表面モフォロジ一を RHEEDにより in- siiM観察し た。 昇温速度は、 4 O /m i n、 加熱中の圧力は 1 0— 9 T o r r程度であつ た。
図 1 24~ 1 26は、 それぞれ室温、 40 0 °C及び 520でにおける A g基板 の RHEED像 (Ag[l-10]入射) である。 図 1 24に示す研磨直後の R H E E D 像は、 ハローパターンであるが、 加熱に伴い徐々にストリークが現れ、 52 0 °C では 1 X 1のシャープなストリークを確認することができ、 平坦な表面が得られ たことが分った。
6000620
55 また、 ァニール中の A g基板表面の化学状態を詳しく調べるため、 XP Sによ りさらに詳細な分析を行った。 XP S装置には、 加熱機構が備わっているため、 これによりァニール中の基板表面の - s iM XP S分析を行った。 この測定にお いては、 上述した CMPにより表面研磨を行った A g ( 1 1 1 ) 基板を用いた。 X線源には単色化 A 1 K a (hソ = 1486.7 eV) を用い、 加速電圧は 1 4 k V、 出力は 3 0 0 Wである。 測定は、 A g 3 dピーク、 O I s ピーク、 C I sピ —クのナ口一スキャンを行った。 また、 測定する際は、 各温度に設定した後、 温 度安定のために 3 0分待ってから放冷し、 約 3 0分後、 室温に戻ってからワイド スキャン、 次いで各元素のピークの測定を行った。
図 1 2 7〜 1 2 9は、 A g ( 1 1 1 ) 基板について測定した、 各温度における A g 3 d、 O I s、 及び C 1 sの光電子スペクトルをそれぞれ示すものであ る。
図 1 2 7に示す A g 3 dスペクトルは、 加熱に伴いピークが明瞭になってい ることが分かる。 また、 図 1 2 8に示す O I sスペクトルは、 加熱に伴い表面 の 0は減少し、 6 0 0ででは大幅に表面濃度が減少していることが分かる。 また、 図 1 2 9に示す C I sスペクトルも、 Oと同様に加熱に伴い表面濃度は減少し ていることが分かる。 すなわち、 超高真空中加熱により 0、 Cともに表面濃度が 減少することが確認することができた。
ここで、 バッファ層として用いる A 1 Nと Ag (1 1 1)基板の格子不整合につ いて図 1 3 0を用いて説明する。 図 1 3 0及び図 1 3 1は、 A g ( 1 1 1 ) 面と A 1 N (0 0 0 1 )面とのァラインメント関係及び格子ミスマツチをそれぞれ示す 模式図である。 '
一般的な I I I族窒化物薄膜のへテロェピタキシャル成長においては、 多くの 場合(0 0 0 1)面が成長することが知られている。 したがって、 どの面方位を持 つ A g基板上へも A 1 N (0 0 0 1)面が成長すると仮定して予想される配向関係 を示し、 格子ミスマッチを計算した。 対称性から想定される面内のェピタキシャ ル関係は、 A 1 N [1 1 - 2 0 ] //A g [ 1 - 1 0 ] , A 1 N [ 1 0 - 1 0 ] //A g [1 1一 2]であり、 そのときの格子不整合はどちらの方向も 7. 7 %となった。 次に、 上述した Ag ( 1 1 1 ) 面上に A 1 N薄膜の成長を試みた。 上述のよう
に清浄化及び平坦化を行った A g (1 1 1)基板上に、 A 1 Nバッファ層を成長さ せた。 A 1 N層の成長時の基板温度はパイロメ一夕一 (エミシビティ 0· 05) を 用いて設定した。 また、 原料ターゲットには、 A 1 N焼結体 (豊島製作所製、 純 度: 99.98%) を用い、 N2圧力は 1 0— 2T o r r、 パルス周波数は 3 0 Hzと した。
図 1 3 2及び図 1 33は、 Ag (l l l)基板上に 6 20でで A 1 Nバッファ層 を成長させた際の RHE ED像 (A1N [11-20]入射) 及び AFM像である。 RHE EDパターンにより、 ェピタキシャル成長していることは確認されるが、 リング 成分が混じり結晶性は良くないことが分かる。 また、 A 1 Nバッファ層の AFM 像の高さ方向のスケールから分かるように、 表面には激しい凹凸が見られ、 目視 では白濁していることから、 反射機能が失われていることが分かった。 このよう に 6 20 °Cでは界面反応に起因して表面が荒れてしまったものと考えられる。 そこで成長温度を 450 に低減して、 A 1 Nバッファ層の成長を行った。 図 1 34〜 1 3 5は、 Ag (l l 1)基板上に 450でで A 1 Nバッファ層を成長さ せた際の RHEED像 (A1N[1卜 20]入射) である。 RHEEDパターンは、 62 0°C成長とは異なり、 明瞭なスポットを示し、 23 0 nm成長させても明瞭なス ポットを示した。 この時のェピタキシャル関係は、 A 1 N [1 1— 2 0]〃Ag [1一 1 0]であることが分かった。 また、 図 1 3 7に示す E B S D極点図からも 分かるように、 30度回転ドメインが存在しない良質な A 1 Nバッファ層が成長 していることが分かった。 また、 図 1 38に示す A FM像より、 非常に平坦な表 面であることが分かった。
続いて、 450°Cで成長させた A 1 Nバッファ層と A g基板との界面反応層を 評価した。 図 1 39〜 1 41は、 それぞれ G I XR測定の結果、 熱処理に対する 界面層厚さ、 及び XP S分析結果を示した図である。 界面反応層を評価したとこ ろ、 l nm以下であり、 急峻な界面が得られていることが分かった。 また、 成長 温度を低減させることで界面反応が抑制されていることが分かる。 また、 図 14 0に示すように 450でで成長させた A 1 Nバッファ層をァニールし、 そのとき の界面反応層厚の変化を確認した結果、 ァニールによって界面反応層厚が変化し ないことから、 界面の急峻性は保たれていることが分かる。 また、 図 14 1に示
2006/000620
57 す XP Sの測定結果より、 ァニールにより A gが A 1 N表面に拡散していないこ とがわかった。 また、 7 0 0 までのァニールにおいて、 界面反応層厚は変化せ ず、 Agの拡散も見られないことから、 A g上の A 1 Nは G a N成長のバッファ 層として十分機能することが分かる。
また、 450でで成長させた A 1 Nバッファ層上に 70 0 で G aNの成長を 行った。 原料ターゲットには、 G aメタル (高純度化学製、 純度: 99.9999%) を 用い、 N 2圧力は 1. 5 X 1 0 To r r、 パルス周波数は 30 H zとした。 図 142~ 145は、 A l Nバッファ層上に G a Nを 70 0 °Cで成長させた際 の RHEED像 (GaN[l卜 20]入射) である。 5、 2 3、 47、 140 nmと成長 すると共にシャープなストリークに変化していることから、 平坦な G aN薄膜が ェピタキシャル成長していることが分かる。
また、 G a N表面上への A g拡散を調べるため、 XP S測定を行った。 図 14 6は、 A 1 Nバッファ層上に G aNを 7 0 0 °Cで成長させた際の X P S測定結果 である。 図 146に示すように Agのピークは確認されず、 Agの拡散はないこ とが分かる。
以上、 その他の例 5で示したように、 本発明を適用することにより平坦化され た A g基板上に良質な A 1 N膜を成長させることができる。 特に、 Ag ( 1 1 1 ) 面に単結晶性の優れた A 1 N結晶を成長させることができる。 また、 低温で A 1 N結晶を成長させることにより、 界面反応を抑制することができる。