WO2006080210A1 - イオン化効率を向上させるための試薬、方法およびキット、並びにその利用 - Google Patents

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Definitions

  • the method for improving protein ion efficiency according to the present invention is characterized by including a step of introducing an organic residue derivative onto the surface of a target protein.
  • R is preferably H or quaternary ammonia
  • X is preferably Pt or Cu.
  • composition is preferably used to improve detection sensitivity in mass spectrometry.
  • the metal complex having the functional group of the present invention can be synthesized by first preparing a ligand having the functional group and then coordinating the ligand to the metal.
  • the present invention also includes a protein analysis method for determining the presence or absence of a histidine residue, an arginine residue, and / or a cysteine residue in a protein using the above metal complex or composition.
  • the metal complex has the following formula:

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Abstract

 本発明は、温和な条件下でタンパク質を修飾してタンパク質のイオン化効率を向上させる。  特定の官能基を有しかつ三座配位子を有する金属錯体を目的のタンパク質と結合させることによって、タンパク質の性質に依存することなくタンパク質を高感度で検出する。

Description

明 細 書
イオン化効率を向上させるための試薬、方法およびキット、並びにその利 用
技術分野
[0001] 本発明は、タンパク質の質量分析におけるイオン化効率を向上させるための試薬、 方法およびキットに関するものであり、具体的には、イオン化する前のタンパク質表面 に導入する試薬、該試薬を導入してタンパク質を修飾するための方法、および該試 薬を備えるキットに関するものである。
背景技術
[0002] 分析化学、特に質量分析の分野においては、多くのイオンィ匕法が開発され、ポスト ゲノムの研究において利用されている。しかし、不安定な有機化合物、ホスト分子— ゲスト分子、および Zまたは生体分子間の相互作用を質量分析によって測定するこ とは非常に困難である。質量分析では、分子のイオン化の過程において、測定する 分子に電圧、熱、レーザーなどによって一定のエネルギーをカ卩える必要がある。その 結果、溶液中の分子間に生じる水素結合などの弱い相互作用が切断されたり、分子 内結合の開裂によるフラグメント化が生じたりするので、質量分析を用いて溶液中の 本来の分子の挙動を観測することが困難であった。
[0003] 近年、より本来の分子挙動を観測するために、従来のイオン化法を改良した新しい イオン化法に基づく質量分析装置(コールドスプレーイオン化質量分析(cold spra y ionization mass spectrometry : CSI— Mass)装置)が開究された (非特許文 献 1を参照のこと)。この装置は、より安定な有機分子および/または分子間のクラス ターなどを観測するために、従来のエレクトロニクススプレーイオン化質量分析(elec trospray ionization Mass spectroscopy : ESI— Mass)装置を改良し 7こもので、 ある。
[0004] CSI— Massは、不安定な分子を分析するために非常に有効であり、特に溶液中で の分子動態の解析 (非共有結合性相互作用に基づく分子種の溶液動態解析)に現 在多用されている。 [0005] CSI— Mass装置の特徴は、従来の ESI— Massにおいてイオン化に用いられるネ ブライジングガスを 15°C〜― 80°Cという低温に制御することができ、イオンィ匕を低温 で行えることである。本来 ESI— Massでは、電圧をかけたニードル先端力らネブライ ジングガスとともに試料溶液をスプレーし、 250°C〜室温の脱溶媒室にてスプレーさ れた液滴の蒸発を行うことによって試料分子のイオン化を促進させる。一方、 CSI_ Massでは、低温にして分子の分極率を増大させ、イオン化を促進させるという新たな 方法を取り入れている。
[0006] CSI_Massの最大の利点は、イオン化の際に高温にする必要がない点であり、溶 液内の試料分子が有する弱い相互作用を観測することに適している。その証拠に、 山口らは CSI_ Massを利用して不安定な有機金属錯体および/または生体分子( アミノ酸、 DNAなど)、水の溶液構造解析を行レ、、装置の有する優位性を示している (非特許文献 1を参照のこと)。
[0007] イオン化効率を向上させるために、質量分析計の改良が試みられている(例えば、 特許文献:!〜 3を参照のこと)。また、特許文献 4には、オリゴヌクレオチド試料にトリエ チルァミンを加えることによってオリゴヌクレオチドのイオンィ匕効率を向上させて検出 効率が 20%上昇したことが記載されてレ、る。
[0008] 〔特許文献 1〕
特開 2003— 28849公報(平成 15年 1月 29日公開)
〔特許文献 2〕
特開 2003— 151486公報(平成 15年 5月 23日公開)
〔特許文献 3〕
特開 2004— 257873公報(平成 16年 9月 16日公開)
〔特許文献 4〕
特開 2003— 04704公報(平成 15年 1月 8日公開)
〔非特許文献 1〕
J. Mass Spectrometry, 38 : 473-490 (2003)
発明の開示
[0009] しかし、 CSI— Massは以下のような欠点を有する。第 1に、イオン化の際の脱溶媒 を促すために必要な加温および脱溶媒ガスを使用しないために、 ESI— Massと比 ベて試料分子の測定感度が低レ、ことである。第 2に、試料分子が溶媒分子または他 の分子との非特異的な結合をしたままイオン化されるために、試料分子の感度の低 下を招くと同時に、特異的に結合している分子の観測を妨げることである。特に、タン パク質などの高分子試料においては、試料の特性 (分子量および/またはアミノ酸 組成)に依存した影響が顕著に現れる。
[0010] したがって、 CSI_Massを用いたタンパク質の相互作用解析をより汎用性の高い ものとするためには、タンパク質の物性に依存することなく効率的にイオンィ匕する方 法を開発することが不可欠である。タンパク質を質量分析する際のイオンィ匕効率を向 上させる従来法として、タンパク質表面に化学的にアミジンまたはグァニジンを導入 する方法が知られているが、このような方法では塩基性条件にすることが必要であり、 反応制御も困難であった。
[0011] 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温および/ または中性などの温和な条件下でのタンパク質修飾を実現することにある。具体的に は、 CSI-TOF Massにおけるイオン化効率を向上させ得る試薬を提供し、本試薬 を用いる低温および中性の温和な条件下でのタンパク質修飾を実現することにある。
[0012] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法は、 目的のタンパク 質表面に有機残基誘導体を導入する工程を包含することを特徴としている。
[0013] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法において、上記有 機残基誘導体は金属錯体であることが好ましい。
[0014] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法において、上記金 属錯体の配位子は三座配位子であることが好ましい。
[0015] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法において、上記金 属錯体の配位子はテルピリジンであることが好ましい。
[0016] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法において、上記金 属錯体の金属元素は遷移元素または典型元素であることが好ましい。
[0017] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法において、上記金 属錯体の金属元素は Pt、 Pd、 Fe、 Co、 Ni、 Cu、 Cr、 Ru、 Rh、 Ag、 Au、〇sまたは I rであることが好ましい。
[0018] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法において、上記金 属錯体は 4級アンモニゥムを有することが好ましレ、。
[0019] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法において、上記金 属錯体は、以下の式
[0020] [化 4]
Figure imgf000006_0001
[0021] によって示され、
ここで、 Rは、 Hまたは 4級アンモニゥムであり、 Xは、 Ptまたは Cuであることが好まし レ、。
[0022] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法は、 目的のタンパク 質表面に存在するアミノ酸側鎖の非共有電子対と上記金属錯体とを配位させる工程 を包含することが好ましい。
[0023] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるためのキットは、三座配位子を 有する金属錯体を備えることを特徴としてレ、る。
[0024] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるためのキットにおいて、上記配 位子はテルピリジンであることが好ましい。
[0025] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるためのキットにおいて、上記金 属錯体の金属元素は遷移元素または典型元素であることが好ましい。
[0026] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるためのキットにおいて、上記金 属錯体の金属元素は Pt、 Pd、 Fe、 Co、 Ni、 Cu、 Cr、 Ru、 Rh、 Ag、 Au、〇sまたは I rであることが好ましい。
[0027] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるためのキットにおいて、上記金 属錯体は 4級アンモニゥムを有することが好ましレ、。
[0028] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるためのキットにおいて、上記金 属錯体は、以下の式
[0029] [化 5]
Figure imgf000007_0001
[0030] によって示され、
ここで、 Rは、 Hまたは 4級アンモニゥムであり、 Xは、 Ptまたは Cuであることが好まし レ、。
[0031] 本発明に係る金属錯体は、三座配位子を有することを特徴としている。
[0032] 本発明に係る金属錯体において、上記配位子はテルピリジンであることが好ましい
[0033] 本発明に係る金属錯体において、上記金属錯体の金属元素は遷移元素または典 型元素であることが好ましレ、。
[0034] 本発明に係る金属錯体において、上記金属錯体の金属元素は Pt、 Pd、 Fe、 Co、
Ni、 Cu、 Cr、 Ru、 Rh、 Ag、 Au、 Osまたは Irであることが好ましい。
[0035] 本発明に係る金属錯体は、 4級アンモニゥムを有することが好ましい。
[0036] 本発明に係る金属錯体は、以下の式
[0037] [化 6]
Figure imgf000007_0002
[0038] によって示され、
ここで、 Rは、 Hまたは 4級アンモニゥムであり、 Xは、 Ptまたは Cuであることが好まし レ、。
[0039] 本発明に係る組成物は、上記金属錯体を含み、タンパク質の質量分析におけるィ オン化効率を向上させることを特徴としている。
[0040] 上記組成物は、質量分析において、検出感度を向上させるために用いられることが 好ましい。
[0041] 本発明に係る人工タンパク質の製造方法は、上記キット、金属錯体、または組成物 を用いて、タンパク質の表面に機能性残基を導入することによって、当該タンパク質 に前記機能性残基に起因する機能を付与することを特徴としている。
[0042] また、本発明に係るタンパク質の分析方法は、上記キット、金属錯体、または組成 物を用いて、タンパク質におけるヒスチジン残基、アルギニン残基、および/またはシ スティン残基の有無を判定することを特徴としてレ、る。
[0043] 本発明に係る方法を使用すれば、導入する残基の化学構造に制限されることなくタ ンパク質への機能性残基導入を実現することができる。また、本発明に係る方法を使 用すれば、錯体形成反応を利用した温和な条件下でタンパク質表面を修飾すること ができるので、タンパク質機能を損なうことなく機能分子を導入することができる。さら に、本発明に係る方法を使用すれば、人工タンパク質創成への応用を促進すること ができる。
[0044] 本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分か るであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであ ろう。
図面の簡単な説明
[0045] [図 1]図 1は、化合物(1) (白金クロ口(2, 2,:6,, 2,, _テルピリジン))での GalTの修 飾を種々の脱溶媒室温度にて行った際の質量分析の結果を示すグラフである。
[図 2]図 2は、未修飾の GalTおよび修飾された GalTを示す図 1中のスペクトルに対し てデコンボリューシヨン処理を行った結果を示すグラフである。
[図 3]図 3は、図 2に示したグラフにおける未修飾の GalTおよび修飾された GalTのピ ーク面積について、 200°Cにて測定した値を 1とした場合の相対値を示すグラフであ る。
[図 4]図 4は、修飾された GalTのピーク面積と未修飾の GalTのピーク面積との面積 比を示すグラフである。
[図 5]図 5は、化合物(2)での GalTの修飾を種々の脱溶媒室温度にて行った際の質 量分析の結果を示すグラフである。
[図 6]図 6は、未修飾の GalTおよび修飾された GalTを示す図 5中のスペクトルに対し てデコンボリューシヨン処理を行った結果を示すグラフである。
[図 7]図 7は、図 6に示したグラフにおける未修飾の GalTおよび修飾された GalTのピ ーク面積について、 200°Cにて測定した値を 1とした場合の相対値を示すグラフであ る。
[図 8]図 8は、修飾された GalTのピーク面積と未修飾の GalTのピーク面積との面積 比を示すグラフである。
[図 9]図 9は、化合物(1)を修飾した GalT、または未修飾の GalTと UDPとの複合体 の質量分析の結果を示すグラフである。
[図 10]図 10は、図 9中のスペクトルに対してデコンボリューシヨン処理を行った結果を 示すグラフである。
[図 11]図 11は、化合物(1)を修飾した GalT、または未修飾の GalTと UDP— Galと の複合体の質量分析の結果を示すグラフである。
[図 12]図 12は、図 11中のスペクトルに対してデコンボリューシヨン処理を行った結果 を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
[0046] 本発明者らは、タンパク質表面のアミノ酸側鎖の非共有電子対に金属錯体を導入 し、錯体導入によってタンパク質機能が損なわれていないことを確認した。また、本発 明者らの作製した金属錯体は、官能基を改良することによってイオン化効率を向上さ せること力 Sできた。
[0047] 本発明は、タンパク質の質量分析におけるイオン化効率を向上させるための試薬、 方法およびキットを提供する。以下に、これらについて詳述する。 [0048] 〔1〕イオン化効率を向上させるための試薬
本発明は、タンパク質の質量分析におけるイオン化効率を向上させるための金属 錯体を提供する。本発明に係る金属錯体の有する配位子は、単座配位子または多 座配位子のいずれでもよいが、錯体の安定性の観点から、三座配位子が好ましい。 三座配位子としては、テノレピリジン、ジエチレントリァミン、シッフ塩基、トリァザシクロ アルカン、テトラキス(2'—アミノエチル)一1 , 2—ジァミノプロパン、ォクタァザビシク 口 [6. 6. 6]アイコサンなどが挙げられる力 官能基を導入しやすい配位子として、テ ルピリジンが好ましレ、。官能基としては、グァニジン(_NH_C (_NH ) =NH + )も
2 2 しくはアミジン(一 C (— NH ) =NH +)を有するもの(例えば、アルギニン)、または 4
2 2
級カチオン(_N (CH ) +)を有するものが好ましいが、質量分析におけるイオン化の
3
段階で開裂しないものであることが好ましぐ 4級アンモニゥムが特に好ましい。本発 明に係る金属錯体は、上記官能基を 1つまたは複数個有する。
[0049] 本発明に係る金属錯体において、上記金属錯体の金属元素は遷移元素または典 型元素であることが好ましぐ Pt、 Pd、 Fe、 Co、 Ni、 Cu、 Cr、 Ru、 Rh、 Ag、 Au、 Os または Irがより好ましい。
[0050] 本発明に係る金属錯体は、以下の式
[0051] [化 7]
Figure imgf000010_0001
[0052] によって示され、
ここで、 Rは、 Hまたは 4級アンモニゥムであり、 Xは、 Ptまたは Cuであることが好まし レ、。
[0053] 本発明の上記官能基を有する金属錯体は、まず、上記官能基を有する配位子を調 製し、次いで、この配位子を金属に配位させることによって合成することができる。例 えば、
[0054] [化 8]
Figure imgf000011_0001
[0055] に示される化合物(2)を合成する場合、まず、ァミンがテルピリジン骨格の 4位に導入 された化合物(3)
[0056] [化 9]
Figure imgf000011_0002
[0057] を調製し、次レ、で、化合物(3)を還元して化合物 (4)
[0058] [化 10]
Figure imgf000011_0003
[0059] を得、化合物(4)を金属塩と反応させて、 4級アンモニゥムを有するテルビリジン金属 錯体を得る。得られた金属錯体は、核磁気共鳴スペクトル、可視紫外吸収スペクトル 、質量分析等によって同定することができる。
[0060] 本発明に係る金属錯体は、タンパク質表面のアミノ酸側鎖の非共有電子対 (ヒスチ ジン、アルギニン、システィン)との配位を利用してタンパク質表面に結合するもので あり、本発明に係る金属錯体を使用すれば、タンパク質表面に任意の機能性物質( 例えば、糖鎖)を温和な条件で導入することができる。これによつて、タンパク質にタ 一ゲット能および/または加水分解抵抗性を付与することができる。
[0061] なお、本発明には、上記金属錯体の溶液のように、上記金属錯体に加えて、その 他の化合物を含み、タンパク質の質量分析におけるイオン化効率を向上させる組成 物も含まれる。当該組成物は、質量分析において、検出感度を向上させるために好 適に用いることができる。
[0062] また、上記金属錯体および組成物は、上述のように、タンパク質表面に任意の機能 性残基を温和な条件で導入することができるため、タンパク質に新たな機能を付与し た人工タンパク質を創成するために用いることができる。したがって、本発明には、上 記金属錯体または組成物を用いて、タンパク質の表面に機能性残基を導入すること により、当該タンパク質に前記機能性残基に起因する機能を付与する人工タンパク 質の製造方法も含まれる。上記機能性残基としては、例えば、糖鎖を挙げることがで きる力 本発明はこれに限定されるものではない。
[0063] さらに、上記金属錯体によれば、タンパク質のヒスチジン残基、アルギニン残基、お よび/またはシスティン残基が修飾されるので、当該タンパク質における上記アミノ 酸残基の有無を判定することができる。したがって、本発明には、上記金属錯体また は組成物を用いて、タンパク質におけるヒスチジン残基、アルギニン残基、および/ またはシスティン残基の有無を判定するタンパク質の分析方法も含まれる。
[0064] 上記アミノ酸残基の有無は、上記金属錯体または組成物とタンパク質とを反応させ 、反応後のタンパク質をそのまま、もしくは当該タンパク質を適宜プロテアーゼ等で分 解することにより得られるペプチドを質量分析することにより判定することができる。
[0065] 〔2〕イオン化効率を向上させるためのキット
本発明は、タンパク質の質量分析におけるイオン化効率を向上させるための試薬を 備えたキットを提供する。本発明に係るキットは、金属錯体を試薬として備えることが 好ましぐ上述したように、該金属錯体の有する配位子は、単座配位子または多座配 位子のいずれでもよいが、錯体の安定性の観点から、三座配位子が好ましい。三座 配位子としては、テルピリジン、ジエチレントリァミン、シッフ塩基、トリァザシクロアル力 ン、テトラキス(2'—アミノエチル) 1, 2 ジァミノプロパン、ォクタァザビシクロ [6· 6 . 6]アイコサンなどが挙げられる力 官能基を導入しやすい配位子として、テルピリジ ンが好ましレ、。官能基としては、グァニジン(一 NH— C (— NH ) =NH +)もしくはァ
2 2
ミジン(一 C (— NH ) =NH +)を有するもの(例えば、アルギニン)、または 4級カチ
2 2
オン(_N (CH ) +)を有するものが好ましいが、質量分析におけるイオン化の段階で
3
開裂しないものであることが好ましぐ 4級アンモニゥムが特に好ましい。本発明に係 るキットに備えられる試薬 (金属錯体)は、上記官能基を 1つまたは複数個有する。
[0066] 本発明に係る金属錯体において、上記金属錯体の金属元素は遷移元素または典 型元素であること力 S好ましく、 Pt、 Pd、 Fe、 Co、 Ni、 Cu、 Cr、 Ru、 Rh、 Ag、 Au、 Os または Irがより好ましい。
[0067] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるためのキットにおいて、上記金 属錯体は、以下の式
[0068] [化 11]
Figure imgf000013_0001
[0069] によって示され、
ここで、 Rは、 Hまたは 4級アンモニゥムであり、 Xは、 Ptまたは Cuであることが好まし レ、。
[0070] 本発明に係るキットは、タンパク質表面のアミノ酸側鎖の非共有電子対 (ヒスチジン 、アルギニン、システィン)と配位する金属錯体を試薬として利用してタンパク質表面 に任意の機能性物質 (例えば、糖鎖)を温和な条件で導入するためのものである。こ れによって、タンパク質にターゲット能および/または加水分解抵抗性を付与するこ とができる。
[0071] すなわち、本発明に係るキットによれば、タンパク質に新たな機能を付与した人エタ ンパク質を創成するために用いることができる。したがって、本発明には、上記キット を用いて、タンパク質表面に機能性残基を導入することにより、人工タンパク質を創 成する方法も含まれる。上記機能性残基としては、例えば、糖鎖を挙げることができる が、本発明はこれに限定されるものではない。
[0072] また、発明に係る金属錯体は、タンパク質のヒスチジン残基、アルギニン残基、およ び/またはシスティン残基を修飾するので、当該タンパク質における上記アミノ酸残 基の有無を判定することができる。したがって、本発明には、上記キットを用いて、タ ンパク質におけるヒスチジン残基、アルギニン残基、および/またはシスティン残基 の有無を判定するタンパク質の分析方法も含まれる。
[0073] 〔3〕イオン化効率を向上させるための方法
本発明は、タンパク質の質量分析におけるイオン化効率を向上させるための方法を 提供する。本発明に係る方法は、 目的のタンパク質表面に有機残基誘導体を導入す る工程を包含することが好ましぐ該有機残基誘導体は、金属錯体であることが好ま しい。すなわち、本発明に係るタンパク質イオン化効率を向上させるための方法は、 目的のタンパク質表面に存在するアミノ酸側鎖の非共有電子対と上記金属錯体とを 配位させる工程を包含することが好ましレ、。
[0074] 上述したように、該金属錯体の有する配位子は、単座配位子または多座配位子の いずれでもよいが、錯体の安定性の観点から、三座配位子が好ましい。三座配位子 としては、テルピリジン、ジエチレントリァミン、シッフ塩基、トリァザシクロアルカン、テト ラキス(2 '―アミノエチル) 1, 2 ジァミノプロパン、ォクタァザビシクロ [6· 6. 6]ァ ィコサンなどが挙げられる力 S、官能基を導入しやすい配位子として、テルピリジンが好 ましレ、。官能基としては、グァニジン(一 NH— C (— NH ) =NH +)もしくはアミジン(
2 2
-C (-NH ) =NH +)を有するもの(例えば、アルギニン)、または 4級カチオン(一
2 2
N (CH ) +)を有するものが好ましいが、質量分析におけるイオン化の段階で開裂し
3
ないものであることが好ましぐ 4級アンモニゥムが特に好ましい。本発明に係るイオン 化効率を向上させるための方法に用いる金属錯体は、上記官能基を 1つまたは複数 個有する。
[0075] 本発明に係る金属錯体において、上記金属錯体の金属元素は遷移元素または典 型元素であることが好ましぐ Pt、 Pd、 Fe、 Co、 Ni、 Cu、 Cr、 Ru、 Rh、 Ag、 Au、 Os または Irがより好ましい。
[0076] 本発明に係るタンパク質イオンィ匕効率を向上させるためのキットにおいて、上記金 属錯体は、以下の式
[0077] [化 12]
Figure imgf000015_0001
[0078] によって示され、
ここで、 Rは、 Hまたは 4級アンモニゥムであり、 Xは、 Ptまたは Cuであることが好まし レ、。
[0079] 本発明に係る方法は、タンパク質表面のアミノ酸側鎖の非共有電子対 (ヒスチジン、 アルギニン、システィン)と金属(Pt、 Cuなど)の錯体との配位を利用するものであり、 本発明に係る方法を使用すれば、タンパク質表面に任意の機能性物質 (例えば、糖 鎖)を温和な条件で導入することができる。これによつて、タンパク質にターゲット能お よび/または加水分解抵抗性を付与することができる。
[0080] 以下に、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施 例に限定されるものではなぐ請求項および上記実施形態に示した範囲で種々の変 更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合 わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
[0081] 〔実施例〕
(実施例 1:タンパク質修飾用金属錯体の合成)
[0082] [化 13]
Figure imgf000016_0001
[0083] テトラクロ口白金(II)酸カリウム lOOmgを、蒸留水 1. 6mlに溶解した後に酢酸 2. 4 mlを添加して、室温にて攪拌した。この溶液に、 1 , 5—シクロォクタジェンを 0. lml 加えた後に加熱して、 90°Cで 30分間攪拌した。その結果、白色結晶が析出した。こ の溶液を、減圧下で約 lmlになるまで濃縮した後、減圧濾過によって結晶を得た。こ の結晶を、蒸留水、エタノール、およびジェチルエーテルを用いて洗浄した後、減圧 下にて乾燥して、白金ジクロロ(1, 5—シクロォクタジェン)の結晶 59mgを得た。 白 金ジクロ口(1 , 5—シクロォクタジン) 50mgを、フラスコ中にて Ν, Ν'—ジメチルホル ムアミド 4mlに溶解した。この溶液を 50°Cに加熱した後、 2, 2' : 6 ' , 2"—テルピリジ ン 31. lmlをカ卩え、 15分間攪拌した、この溶液を室温に戻した後、減圧濾過によって 固体物質を除去した。得られた濾液を、減圧下にて濃縮した後に乾燥させて、化合 物(1) (白金クロ口(2, 2,:6,, 2' '—テルピリジン))の結晶 42· 5mgを得た。この結 晶を ESI— Massによって確認した。
[0084] (実施例 2: 4級アンモニゥムを有する白金錯体の合成)
[0085] [化 14]
Figure imgf000016_0002
[0086] 4,—クロ口— 2, 2,:6 ' , 2' '—テルピリジン lg、水酸化カリウム 280mgおよび 1— アミノー 3—プロパノール 0· 32mlを、フラスコ内にてジメチルスルホキシド約 5mlに溶 解した。この溶液を 90分間室温にて攪拌した後に加熱して、 55°Cで 40時間攪拌し た。この溶液を室温に戻し、 0°Cの蒸留水 5mlをカ卩えた。この溶液を減圧下で濃縮し 、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて化合物(3)
[0087] [化 15]
Figure imgf000017_0001
[0088] を精製した。 NMRおよび MALDI—TOF Massによって同定した。化合物(3) 422 mgおよび炭酸カリウム 300mgをフラスコ中で乾燥させた後にクロ口ホルム 15mlに溶 解させた。フラスコ内の気体を窒素に置換し、過剰量のヨウ化メチルを少量ずつ添カロ しながら室温で約 6時間攪拌した。セライトを用いてこの溶液を減圧濾過することによ つて、炭酸カリウムを除去した。得られた濾液を濃縮し、減圧下にて乾燥させて、化合 物 (4)
[0089] [化 16]
Figure imgf000017_0002
[0090] を 381mg得た。化合物(4)を、ニトロメタン 20mlに溶解した後、テトラクロ口白金 (Π) 酸カリウム 218mgおよびフッ化銀 244mgを添加した。この溶液を 110°Cに加熱した 後 21時間攪拌し、次いで減圧濾過して溶液中の固体物質を除去した。濾液を濃縮 した後、ジェチルエーテルを少量ずつ添加することによって生成物を析出させた後、 再度減圧濾過を行って化合物(2) 208mgを得た。
[0091] (実施例 3 :化合物(1)および(2)のタンパク質への導入、ならびに CSI— TOF M assによるイオンィヒ効率の比較) ガラクトース転位酵素(TO YOBO) (以下、 GalTと称する)を、 20mM酢酸アンモニ ゥム緩衝液(PH7)に置換して、 13 μ Μのタンパク質溶液を調整した。このタンパク質 溶液 100 β 1に、タンパク質に対して 1等量の化合物(1)または 2等量の化合物(2)を 添加した後、室温で 4時間攪拌した。これらの溶液を、 Microcon YM- 10 (Millip ore)を用いて限外濾過し、未反応の化合物(1)または(2)を除去した。 MS—T100 CS (日本分光)を用いて、これらのタンパク質溶液の質量分析を行った。測定条件を 以下に示す:加速電圧— 7kV、ニードル電圧 2kV、ォレフィス電圧 80V、分解能 600 0 (半値全幅)、ガス流速 31/分、脱溶媒室温度 200°C、 100°C、 80°C、 50°C、 10°C
[0092] 化合物(1)で修飾された GalTについて、脱溶媒室温度 200°C、 80°C、 10°Cの条 件下で質量分析を行った(図 1)。得られたスペクトルのデコンボリューシヨン処理を行 レ、、タンパク質の一部が化合物(1)によって修飾されていることを確認した(図 2)。得 られたデータ力 GalTおよび修飾された GalTのそれぞれのピーク面積を求めた。 2 00°Cにて測定した値を 1とした場合のグラフを図 3に示す。さらに、各温度条件下で の GalTおよび修飾された GalTの面積比のグラフを図 4に示す。
[0093] 化合物(2)で修飾された GalTについて、脱溶媒室温度 200°C、 100°C、 50°C、 10 °Cの条件下で質量分析を行った(図 5)。得られたスぺクトノレのデコンボリューシヨン処 理を行い、タンパク質の一部が化合物(2)で修飾されてレ、ることを確認した(図 6)。 得られたデータに基づレ、て、 GalTおよび修飾された GalTのそれぞれのピーク面積 を求めた。 200°Cにて測定した値を 1とした場合のグラフを図 7に示す。さらに、各温 度条件下での GalTおよび修飾された GalTの面積比のグラフを図 8に示す。
[0094] 図 2および図 6より、 GalTおよびそれぞれ 1つの化合物(1)または化合物(2)で修 飾された GalTのピークを確認した。この結果より、白金錯体またはテルピリジンを用 いることによって、タンパク質を中性条件下で修飾することができることがわかった。 すなわち、テルピリジンを有する種々の分子を用いれば、温和な条件下でのタンパク 質修飾法を提供することができる。
[0095] 図 3および図 7より、脱溶媒室温度の変化によってタンパク質のピーク面積が変化し ていること、温度低下に伴ってピーク面積が低下すること、および GalTでの修飾の有 無によって温度低下に伴うピーク面積低下の割合が異なることが確認された。
[0096] 図 4および図 8より、温度低下に伴って修飾タンパク質のピーク面積比が増大するこ とがわ力 た。この理由としては、修飾に用いた白金錯体または 4級ァミンの有する力 チオンが分子イオン化を促進していることが考えられる。
[0097] 図 10および図 12より、修飾の有無にかかわらず、 GalTが UDPまたは UDP_Gal と複合体を形成していることが確認された。この結果より、修飾された GalTもまた、タ ンパク質の酵素活性部位を保存していることがわかった。
[0098] これらの結果より、白金錯体を利用した化合物(1)および(2)は、温和な条件下に おいてタンパク質の活性を保持したまま修飾することができることがわかった。さらに、 修飾した GalTは、未修飾のものと比較して CSI_Massでのイオン化効率の低下が 軽減された。これらの化合物の修飾を利用すれば、 CSI— Mass状態でのタンパク質 —リガンド分子複合体の測定またはスクリーニングを高感度で行うことができる。
[0099] 発明を実施するための最良の形態の項においてなされた具体的な実施形態また は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような 具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなぐ本発明の精神と次に記 載する特許請求事項の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものであ る。
産業上の利用の可能性
[0100] タンパク質の質量分析におけるイオン化効率は、個々のタンパク質に固有の性質( 例えば、タンパク質の分子量および/または等電点など)に依存することが多い。ィ オン化効率を向上させ得る構造を有する化合物を本発明に係る方法によって導入す ることによって、タンパク質の性質に依存することなくタンパク質を高感度で検出する こと力 sできる。これによつて、タンパク質相互作用を高速かつ高感度で解析することが できる。また、タンパク質表面に糖鎖などの機能性残基を導入することによって、タン パク質の機能改変および/または多機能化が可能となり、人工糖タンパク質の新規 創成を実現することができる。

Claims

請求の範囲
[1] タンパク質イオンィ匕効率を向上させるための方法であって、 目的のタンパク質表面 に有機残基誘導体を導入する工程を包含することを特徴とする、方法。
[2] 前記有機残基誘導体が金属錯体であることを特徴とする、請求項 1に記載の方法。
[3] 前記金属錯体の配位子が三座配位子であることを特徴とする、請求項 2に記載の 方法。
[4] 前記金属錯体の配位子がテルピリジンであることを特徴とする、請求項 2に記載の 方法。
[5] 前記金属錯体の金属元素が遷移元素または典型元素であることを特徴とする、請 求項 2に記載の方法。
[6] 前記金属錯体の金属元素が Pt、 Pd、 Fe、 Co、 Ni、 Cu、 Cr、 Ru、 Rh、 Ag、 Au、〇 sまたは Irであることを特徴とする、請求項 2に記載の方法。
[7] 前記金属錯体力 ¾級アンモニゥムを有することを特徴とする、請求項 2に記載の方 法。
[8] 前記金属錯体が、以下の式
[化 1]
Figure imgf000020_0001
によって示され、
ここで、 Rは、 Hまたは 4級アンモニゥムであり、 Xは、 Ptまたは Cuであることを特徴と する、請求項 2に記載の方法。
[9] 目的のタンパク質表面に存在するアミノ酸側鎖の非共有電子対と前記金属錯体と を配位させる工程を包含することを特徴とする、請求項 2に記載の方法。
[10] 三座配位子を有する金属錯体を備えることを特徴とする、タンパク質イオン化効率 を向上させるためのキット。
前記配位子がテルピリジンであることを特徴とする、請求項 10に記載のキット。 前記金属錯体の金属元素が遷移元素または典型元素であることを特徴とする、請 求項 10に記載のキット。
前記金属錯体の金属元素が Pt、 Pd、 Fe、 Co、 Ni、 Cu、 Cr、 Ru、 Rh、 Ag、 Au、〇 sまたは Irであることを特徴とする、請求項 10に記載のキット。
前記金属錯体力 4級アンモニゥムを有することを特徴とする、請求項 10に記載のキ ッ卜。
前記金属錯体が、以下の式
[化 2]
Figure imgf000021_0001
によって示され、
ここで、 Rは、 Hまたは 4級アンモニゥムであり、 Xは、 Ptまたは Cuであることを特徴と する、請求項 10に記載のキット。
[16] 三座配位子を有することを特徴とする、金属錯体。
[17] 前記配位子がテルピリジンであることを特徴とする、請求項 16に記載の金属錯体。
[18] 前記金属錯体の金属元素が遷移元素または典型元素であることを特徴とする、請 求項 16に記載の金属錯体。
[19] 前記金属錯体の金属元素が Pt、 Pd、 Fe、 Co、 Ni、 Cu、 Cr、 Ru、 Rh、 Ag、 Au、〇 sまたは Irであることを特徴とする、請求項 16に記載の金属錯体。
[20] 4級アンモニゥムを有することを特徴とする、請求項 16に記載の金属錯体。
[21] 以下の式
[化 3]
Figure imgf000022_0001
によって示され、
ここで、 Rは、 Hまたは 4級アンモニゥムであり、 Xは、 Ptまたは Cuであることを特徴と する、請求項 16に記載の金属錯体。
[22] 請求項 16〜21のいずれ力 4項に記載の金属錯体を含み、タンパク質の質量分析 におけるイオンィ匕効率を向上させることを特徴とする組成物。
[23] 質量分析において、検出感度を向上させるために用レ、られることを特徴とする請求 項 22に記載の組成物。
[24] 請求項 10〜15のいずれ力 1項に記載のキット、請求項 16〜21のいずれ力、 1項に 記載の金属錯体、または請求項 22に記載の組成物を用いて、
タンパク質の表面に機能性残基を導入することによって、当該タンパク質に前記機 能性残基に起因する機能を付与することを特徴とする人工タンパク質の製造方法。
[25] 請求項 10〜: 15のいずれ力 1項に記載のキット、請求項 16〜21のいずれ力 1項に 記載の金属錯体、または請求項 22に記載の組成物を用いて、タンパク質におけるヒ スチジン残基、アルギニン残基、および/またはシスティン残基の有無を判定するこ とを特徴とするタンパク質の分析方法。
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