高周波電磁波を用いた計測方法及び計測装置
技術分野
[0001] 本発明は、高周波電磁波(例えばテラへルツ波)を用いて、試料の物性又は試料の 形状を計測する方法に関するものである。
背景技術
[0002] テラへルツ波を用いた分光分析方法が最近提案されて!ヽる(例えば下記非特許文 献 1及び 2参照)。
[0003] テラへルツ波 (テラへルツ電磁波やテラへルツ光と呼ばれることもある)は、光と電波 の中間の周波数領域における電磁波である。この周波数域では、多くの物質が多彩 な応答を示す。また、テラへルツ波を用いると、光と同様に、非接触かつ局所的な応 答を検出できるので、 2次元計測が可能である。そこで、テラへルツ波を用いた分光 分析は、半導体工学 ·医療 ·セキュリティ一等幅広 、分野への応用が期待されて!、る
[0004] また、通常の光計測では、光強度情報のみが得られる。これに対して、テラへルツ 分光では、電磁波における時間波形を直接測定して振幅'位相を決定することがで きる。このため、試料における複素誘電応答関数を、実部 '虚部同時に決定すること ができるという利点がある。
[0005] しかし、テラへルツ分光にぉ 、て、電磁波の時間波形における位相情報を正しく捉 えるためには、試料の位置や光学系を構成する部品の位置を、極めて高い精度で決 定しておく必要がある。このような位置合わせは煩雑であり、作業効率が低下してしま う。例えば、下記非特許文献 1では、反射配置において、高ドープシリコン基板のテラ ヘルツ誘電応答を測定し、 Drudeモデルとの比較を行い、精密な位置合わせを行つ ても ± 15 /z m程度の誤差がのこるとの結果を得ている。
[0006] また、試料の位置によって位相情報が変わるということは、凹凸のある試料での計 測が難しいということを意味しており、このため、凹凸のある試料の誘電応答関数を捉 えることが難 、と 、う問題もある。
[0007] さらに、例えば、試料が不透明媒質で覆われている場合のように、試料の形状が不 明の場合も、分光分析が困難となっていた。
[0008] また、下記非特許文献 2では、反射部材の配置を調整することによって位相誤差を 除去することにより、不透明な物質 (高ドープシリコン)の誘電応答関数を決定する方 法が提案されている。この方法によれば、 0.3 mの精度で、位相誤差を補正すること ができる。しかしながら、この方法は、熟練した実験技術を要するという問題がある。 非特許文献 1 : T.- I.Jeon and D.Grischkowsky, Applied Physics Letters vol.72, 3032 -3034 (1998)
特許文献 2 : S.Nashima, O.Morikawa, K.Takata, and M.Hangyo, Applied Physics L etters vol.79, 3923-3925(2001)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] 本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、参照用の波形を得るために随 時参照試料を精密に位置合わせすることなぐ検出された反射波の時間波形のみを 用いて、反射波の位相誤差を検出することができる計測方法及び計測装置を提供し ようとするものである。
課題を解決するための手段
[0010] 前記した課題を解決する手段としての本発明は、下記の項目として表現できる。
[0011] 項目 1の、高周波電磁波を用いた計測方法は、以下のステップを備えている:
(1)高周波電磁波を試料に照射し、試料による反射波の時間波形を測定するステツ プ;
(2)前記時間波形の特徴を解析することにより、前記反射波の時間波形における位 相誤差の情報を得るステップ。
[0012] 項目 2の計測方法は、項目 1に記載のものにおいて、さらに以下のステップを備え ている:
(3)前記位相誤差の情報に基づ!、て、前記試料の表面における形状情報を得るス テツプ。
[0013] 項目 3の計測方法は、項目 2に記載のものにぉ 、て、前記形状情報が、前記試料
表面の二次元形状情報となっているものである。
[0014] 項目 4の計測方法は、項目 1に記載のものにおいて、さらに以下のステップを備え ている:
(3)前記位相誤差の情報に基づ 、て、前記試料における誘電応答を得るステップ。
[0015] 項目 5の計測方法は、項目 1に記載のものにおいて、さらに以下のステップを備え ている:
(3)前記位相誤差の情報に基づいて、前記試料の表面における形状情報と、前記 試料における誘電応答とを共に得るステップ。
[0016] 項目 6の計測方法は、項目 1〜5のいずれか 1項に記載のものにおいて、前記高周 波電磁波が、光伝導アンテナ又は非線形光学結晶を用いて発生させられたものとな つている。
[0017] 項目 7の計測方法は、項目 1〜6のいずれか 1項に記載のものにおいて、前記反射 波力 光伝導アンテナ又は非線形光学結晶を用いて検出されるものとなっている。
[0018] 項目 8の計測方法は、項目 1〜7のいずれか 1項に記載のものにおいて、前記高周 波電磁波がテラへルツ波となって 、るものである。
[0019] また、本発明に係る高周波電磁波を用いた計測装置は、高周波電磁波の発生部と 、高周波電磁波の検出部と、解析部とを備えている。前記発生部は、試料に対して 高周波電磁波を照射するものである。前記検出部は、前記試料によって反射された 前記高周波電磁波 (反射波)を検出するものである。前記解析部は、前記検出部で 検出された前記反射波の時間波形の特徴を解析することにより、前記反射波の時間 波形における位相誤差の情報を得る構成となっている。
発明の効果
[0020] 本発明によれば、検出された反射波の時間波形のみを用いて、反射波の位相誤差 の情報を検出することができる。この位相誤差の情報を用いて、試料の表面形状や 誘電応答を計測することが可能となる。また、本発明によれば、反射波の時間波形の 特徴を解析することによって、反射波の時間波形における位相誤差の情報を得て ヽ るので、精密に位置制御された参照用の試料を必要とせずに、位相誤差を検出する ことができるという効果も発揮しうる。
発明を実施するための最良の形態
[0021] 本発明の計測方法に係る実施形態を、以下の実施例によって説明する。
[0022] (実施例に用いる計測装置)
[0023] まず、後述する各実施例において用いられる計測装置の構成を、図 1に基づいて 説明する。このような計測装置自体は、従来力も知られているものと基本的に同様な ので、以下においては装置の概要を説明する。
[0024] この装置は、レーザ発生部 1と、ハーフミラー 2と、光学遅延部 3と、高周波電磁波の 発生部 4と、四つの放物面鏡 5〜8と、反射波の検出部 9と、解析部 15とを備えている
[0025] レーザ発生部 1としては、この実施形態では、チタンサファイアモード同期レーザが 用いられている。このレーザ発生部 1で発生するレーザ光 10のパルス幅は 300フエム ト秒である。
[0026] ハーフミラー 2は、レーザ発生部 1から発生したレーザ光の光路上に配置されており
、レーザ光 10をポンプ光 11とプローブ光 12とに分岐するものである。
[0027] 光学遅延部 3は、ポンプ光 11における光学遅延量を調整するものである。
[0028] 高周波電磁波の発生部 4としては、この実施形態では、レーザ光の照射によってテ ラヘルツ波 13のパルスを発生できる非線形光学結晶である、 ZnTe結晶が用いられて いる。発生部 4は、試料 14に対して高周波電磁波 (テラへルツ波)を照射するもので ある。
[0029] 四つの放物面鏡 5〜8は、内面がアルミニウムとなっており、テラへルツ波を反射し、 かつ集光できるようになって 、る。
[0030] 反射波の検出部 9は、この実施形態では、発生部 4と同様に、非線形光学結晶であ る ZnTe結晶が用いられている。検出部 9は、テラへルツ波 13の経路上に配置された 試料 14で反射された反射波の時間波形を検出できるようになって ヽる。ポンプ光 11 とプローブ光 12とを用いた、反射波の時間波形の検出方法は、既に良く知られてい るので、説明を省略する。
[0031] 解析部 15は、検出部 4で検出された反射波を受け取って、その時間波形を測定し 、かつ、時間波形の特徴を解析することにより、反射波の時間波形における位相誤
差の情報を得る構成となっている。このような解析部は、コンピュータハードウェアや ソフトウェアを用いることによって構成できる。解析部 15の詳しい動作は後述する。
[0032] (実施例 1)
まず、前記した装置を用いて、テラへルツ波の反射波を測定した例を、図 1に基づ いて説明する。
[0033] この例では、試料 14として、半導体 InAs基板を用いた。この試料は、巿販されて!/ヽ る、ノンドープの単結晶基板であり、室温でのキャリア (電子)濃度は 1( ½η3である。
[0034] まず、レーザ発生部 1で発生したレーザ光 10は、ハーフミラー 2で分岐して、その一 部がポンプ光 11となる。ポンプ光 11は、発生部 4に照射されて、発生部 4により、テラ ヘルツ波 13を生じる。発生したテラへルツ波 13は、空間的に広がって伝播する。こ れを放物面鏡 5によりいつたん平行にする。続いて次の放物面鏡 6によりテラへルツ 波を試料 14上に集光する。この際テラへルツ波 13は試料 14に対して入射角 45° で 入射する。試料 14で反射されたテラへルツ波 13 (つまり反射波)を、続いて設置され た放物面鏡 7及び 8により導波し、検出部 9に集光する。検出部 9の出力は、解析部 1 5に入力されて解析される。
[0035] これにより、反射波の時間波形を測定することができる。測定された反射波の振幅 及び位相を図 2に示す。図 2 (b)中の破線が、実験で得たデータを示し、実線が、 Dru deモデルによって得たデータを示す。特に位相には、試料 14の位置ずれや凹凸に 伴う誤差が含まれて 、ることが予想される。
[0036] 以下の実施例において、具体的な位相誤差の検出方法を説明する。これらのどれ かの方法により、試料の相対的な位置情報を検知することが可能である。また、試料 またはテラへルツビームを 2次元的に走査することで、試料の凹凸の情報を得ることも できる。さらに、同時に得られた各点での誘電応答関数から、物性パラメータや物質 分析パラメータの 2次元分布情報を得ることもできる。これらの検出処理は、特に断ら ない限り、原則として解析部 15で行われる。
[0037] まず、一般論として、反射波の時間波形 (図 2 (a)の実線)を計測した後、これをフー リエ変換し、参照波の時間波形 (図 2 (a)の破線)のフーリエ変換との比を取る事により 、物質の応答関数の振幅'位相に反射波を変換することができる (図 2 (b) )。この変換
で得た位相は、非特許文献 1に記載されているように、試料位置のずれに伴う位相誤 差を含んでいる可能性があり、このままでは正しいスペクトル力否かの判別は不可能 である。しかし後述するアルゴリズムを用いれば、この位相誤差の有無を簡単に検出 する事が出来る。
[0038] (実施例 2)
実施例 2は、試料 14の誘電応答が Drudeモデルに従って記述されることが既知で ある例である。図 3には、テラへルツ波 13の反射波の時間波形力も試料 14の位置情 報を抽出した例を示す。
[0039] この例では、実測波形の振幅データに対するフィッティングを行!、、試料等の位置 ずれによる位相誤差が無い場合の応答波形のモデルを Drudeモデルによって計算し た。フィッティングの結果を図 2 (b)において細い実線で示す。その結果から位相を数 値計算した。数値計算の結果得られたデータを、図 3において細い実線で示した。さ らに、計算で得られた位相データ(図 3において細線)と、実測された位相データ(図 3において細い破線)とを比較した。その結果、位相の差 (すなわち位相誤差)が周 波数にほぼ比例することが見いだされた。位相差と周波数との比例係数から、反射 波の位相誤差情報を取得できる。これに基づいて、テラへルツ波 13が照射された試 料 14の表面位置と基準点 (仮定した参照表面位置)とのずれを算出できる。その結 果、試料 14の表面位置のずれ量は、(20 ± 2) mであると評価された。この位置の ずれに伴う位相誤差を、実測された位相スペクトル (図 3にお ヽて細 ヽ破線)から除去 すること〖こよって、図 3において太い破線で示されるような位相スペクトルを得た。な お、誘電応答関数の算出は実施例 5において述べる。他の実験条件は実施例 1と同 様である。
[0040] (実施例 3)
最大エントロピー原理に基づき、位相誤差を抽出した例を図 4に示す。最大ェントロ ピー原理によると、有限長の時間信号においてはその情報数学的エントロピーが最 大になっている。この仮定に基づいてテラへルツ時間波形の解析を行うと、測定され た位相 θ (ω)は、試料の誘電応答に起因する成分 φ ( ω)と、実験'解析上の誤差に 起因する成分 φ (ω)とに分離される。位置のずれに伴う位相誤差は誘電応答とは無
関係であるので、 φ (ω)に含まれる。 φ (ω)は通常は極めて周波数依存性の少ない 関数でなければならな 、が、測定試料と参照試料の位置がずれて 、る場合はこの位 置のずれに起因する大きな系統誤差が生じる。この性質を利用して φ (ω)を解析す ることで位置のずれが抽出される。図 4は、この方法を用いて位相誤差の抽出を行つ た結果である。この方法により見積もられた、試料表面位置の不一致量は、(20± 2) μ mである。他の実験条件は実施例 2と同様である。
[0041] (実施例 4)
抽出的クフマース'クローニッヒ変換 (subtractive Kramers— Kronig transformation, S KK)により位相誤差を抽出した例を図 5に示す。 SKKは、ある周波数領域における r( ω Χまたは θ ( ω》といくつかの周波数 (以降参照点と記す)における θ ( ω Χまたは r( co ))を用いて、その周波数領域における θ (ω)(または r(co))を計算する数値解析法であ り、通常のクラマース'クロー-ッヒ変換と同様に、因果律を満たしている物理量に対 して適用可能である。反射波の波形から求められた複素反射率 r( co)exp(i θ (ω))は、 試料における物理現象によって決定されるので因果律を満たしており、 SKKを適用 することができる。 SKKは、通常のクラマース'クロー-ッヒ変換に比べると、周波数域 が有限であることによる数値計算精度の劣化が極めて小さい、という利点が有る反面
、参照点における Θ ( 0))ほたは1 0)》の測定が難しぃ、という難点を有している。テラ ヘルツ波形解析においては、測定した周波数域全域において電磁波の振幅'位相 が同時に得られるので、この難点を考慮する必要が無い。
[0042] 図 5は、 SKKにより位相から振幅を計算した結果である。実験で得られた位相 θ ( ω ) カゝら SKKにより得られた振幅 r (ω)は、測定された振幅 r( co)とは全く異なる振舞を示 err
している。このずれは位置ずれに起因すると考えられる。この差を最小にするために 、 θ (ω)に位置ずれによる位相の系統誤差に対応する補正をカ卩えそれに SKK変換を 施すと、得られた振幅 r (ω)は、 r(co)と極めて良い一致を示す。この過程で得られた cor
最適補正値から、試料表面と参照試料表面のずれは (20 ± 2) mであることが分か つた。他の実験条件は実施例 2と同様である。
[0043] (実地例 5)
前記した実施例 2〜4において得られた位相誤差が誘電応答関数決定に与える影
響を評価する為に、測定で得られた複素反射率と位相を補正した複素反射率とを用 いて複素屈折率を計算した。他方、本実験で用いた試料の誘電応答は Drudeモデル でよく記述されることが分かって 、るので、振幅に対して Drudeモデルでフィッティング を行い、複素屈折率を計算した。これらを同時にプロットしたものを図 6に示す。明ら 力に、位相を補正した複素反射率(図 6において太線)から求められた波形は Drude モデルによる計算とよく一致しているが、測定された複素反射率力 求められた複素 屈折率(図 6において破線)は、 Drudeモデルによる予測と全く一致していない。
[0044] したがって、実施例 2〜4にお 、て得られた位相誤差に基づ 、て、試料の誘電応答 を精度良く算出することができる。
[0045] また、本実施形態の方法によれば、例えば、不透明な基板の上に付着した試料の 表面形状と、試料本来の誘電応答と同時に取得できるという、従来のイメージング技 術にはない利点を発揮することができる。これにより、テラへルツイメージング計測の 適用範囲を大きく拡大することができ、材料開発等の広範な分野での利用が期待で きる。
[0046] さらに、前記した方法により、表面平坦性の悪い試料において、面内での不均一な 誘電応答のイメージング測定を表面形状測定と同時に行うことができる。したがって、 本発明は、半導体素子の非破壊イメージング検査 ·禁止薬物等危険物質の非接触 検出'ガン細胞検出等の、幅広い用途における活用が可能であるという利点がある。
[0047] なお、前記の例では、高周波電磁波としてテラへルツ波を例示したが、高周波電磁 波としては、テラへルツ波以外の帯域であってもよい。例えば、本発明の方法は、位 相情報を用いた分光全般に応用可能である。近年の超高速光計測技術の進歩を踏 まえると、本発明は光領域での位相解析にも応用される可能性を有し、光技術の新 たな展開にお 、て大きな寄与を果たし得る。
[0048] また、前記した例では、テラへルツ波の発生部 4および検出部 9として非線形光学 結晶を用いたが、これに限らず、これらのいずれか又は両方を光伝導アンテナとして もよい。また、非線形光学結晶の材料も適宜なものを選択することができる。
[0049] (実施例 6· ··形状を測定した例)
図 7に示される試料の形状を測定した。この試料は、ジュラルミン合金製ブロック 21
の上に、 n-InAs (キャリア密度〜1016cm— 3、易動度〜20000 cm2/Vs)の基板 22を置き 、その上カゝらステンレスの板 23を乗せた、半導体'金属合成試料である。ステンレス 板 23の中央には、穴 23aが形成されている(図 8及び図 9参照)。また、基板 22の厚 さ 1は、この実施例ではほぼ 0. 4mmとなっており、ブロック 21の上面からステンレス 板 23までの厚さ 1はほぼ 0. 5mmとなっている(図 8参照)。
2
[0050] ジュラルミン及びステンレスは、テラへルツ波をほぼ完全に反射する、と考えられる。
他方、 n-InAsに関しては、キャリア集団運動に伴うプラズマ共鳴が生じるため、反射 率が 1.8 THz前後で急激に低下する。
[0051] 上記の試料の上方から、試料上面の各点に於いてテラへルツ波を照射し、反射波 の振幅を測定する。この波形とあら力じめ測定してぉ 、た参照波形を比較する事によ り、複素反射率が得られる。
[0052] 複素反射率の振幅と位相の整合性から、位相誤差を抽出する。この位相誤差の値 はテラへルツ波反射面の位置に相当するので、試料表面における反射面位置の分 布、即ち試料表面の形状が得られる。
[0053] 本実施例においては、最大エントロピ一法を用いた解析アルゴリズムを適用して、 試料表面の形状を得た。し力し、 subtractive Kramers- Kronig法等、他のアルゴリズム でも同様の結果が得られる。
[0054] 得られた表面形状画像を図 10及び図 11に示す。図 10は、得られた表面形状画像 全体である。これを、図中の点線 A— Aに沿って切断しその断面を観察すると、図 11 のようになる。図 7〜図 9と比較する事により、試料表面の形状が正しく抽出されてい る事が確認される。詳しい計測データを図 12に示す。
[0055] 試料表面に平行な方向の分解能は、テラへルツ波の回折によって制限され、本例 では 200 /z m前後になっている。一方、断面方向の分解能は、この場合は様々な実験 条件に制限され 前後になっている。但し実験条件を整備する事により、この分 解能はアルゴリズムそのものが持つ限界 (10 m前後に達すると考えられる)まで向上 する事が可能である。
[0056] (アルゴリズムに関する補足説明)
念のため、反射波の時間波形から位相誤差の情報を取得するアルゴリズムの詳細
についての説明を以下に補足する
[0057]
入射テラヘルツ 波の時間波形を Ein (ί)、 謝から應されたテラヘル ッ電磁波の時間波形を E ί)と定義する。 また、 ある関数に 1¾^10¾換 (逆変 換)演算を適用することを FT[ ](Er— 1)と表す。 この時、 測定により得られ る複素反射率 (《)は
FT[Ein (t)] で与えられる。尚、複素反射率の時間領域に対応する表式 R(t) = E厂 ^(w)]は 、 E t) ' E。„((t)を用いて
EoM {t) = \ R(T)Ein (t - T)dr (*2)
J
で与えられる。
[0058]
測 料と参照試料の位置がずれている事により、参照波形 ( „ (り)と測定 波形 (E。 ί))が感じる光 には だけの差が生じる。 その結果、 実際の実 験結果を (* 1)式に代入して得られる複素反射率 ρ (^と正しレ、複素反射率 の間には ρ ( = «)exp (*! ') の関係がある。
[0059]
以下に、 p(fi )から ΔΙを抽出する方法について述べる。 図 1 3に、測定試 料 1 4 aと参照試料 1 4 bとの間に位置ずれ Δ Lが生じている状態を示した 。 図では、 測^料 1 4 aと参照試料 1 4 bとが並列に示されている力 実 際は、 参照謂 1 4 bの代わりに測 料 1 4 aが設置されるのが通常であ る。
[0060] (1.最大エントロピ一法:実施例 3)
根拠となる原理:エントロピー最大の原理
[0061]
Ein (t) · E t)の値が有限な時間領域においてのみ得られているので、(*2) の式により R(t)も有限時間領域においてのみ値が定められる。 この様な関数 につレ、て考える時、 値が得られてレ、なレ、時間領域での信号の振舞につ!/、ては 、 可能な限り最大限に不確定のままに留めるべきである。
[0062]
数学的にこの条件を考察すると、 は以下に示 な^?式で表現され るべきである、 という事が導力れる。
[0063]
実験で得られた と (*3)式を比較する事により、《m, 。の値が決定される 。 なお、 (*3)式中 Mの値については任意性が残っており、 実験条件等に基づ いて適切に設定する必要がある。
[0064]
(*3)式中のパラメータが決定されると、 (ω)の位相 は以下の様に分離 される。 θ ω) = φ(ω)一 arg 1 +∑"„ exp(-zmoi) (*4)
[0065]
(*4)Ϊ¾Γ辺の第二項は、 の周波数依存性を反映した成分 (MEM位相)で ある。 一方 は、 の周波数依存性とは無関係の成分であり、 一般に MEM位相に比べて変化に乏し 、。
[0066]
以上の考察を、位置のずれ に伴う位相誤差が存在するスぺクトルに応用 する。まず、位置のずれは振幅には殆ど影響を及ぼさな!/ヽと考えられるので、 (*3)式中のパラメータ am,b0は位相誤差が無い と同じである。 一方 p(<y) の位相 6»exp ( は
θακρ{ω) = θ{ώ) + ωΜΐ€
と表される。 この内 は (誤差を含まない)真の位相である。 先ほど計算し たパラメータ を (*4)式に代入しこの位相を書き直すと θ (ω) = φ{ω) + arg l +
となる。 6>exp(iy),flmは既知であるので、 、 , 、 ωΑΙ , Λ,.
φ ώ) = φ{ώ) + (*4 )
c に相当する部分を抽出する事が出来る。 これを微分すると φ'(ω) _ άφ{ω) ω ( Λ,,λ
—: =—: 1 1*4 )
αω αω c となる。 ここで^ ( は変化に乏しい関数で、 その微分は極めて小さい (Ι^ί?0)/ωΙ«1)。 従って (*4")式は事実上 (《)/ 《«^ とみなすことが でき、光^ g差の値 ΔΙ力 S抽出される。即ち、位相誤差が抽出された事になる
[0067]
図 1 4に、最大ェント口ピー法についての解説を示す。同図( a )は、 ρ( ) およ! ^幅のみから決定される MEM位相を示す。 同図 (b) は、 MEM位相 を差し引いた位相成分 から ΔΙを抽出する様子を示す。 これらの図にお いて、 実線は、 変位無し (A L=0) 、 粗い赚は、 変位あり (A L≠0) 、 細かい赚は、 MEM位相を示している。
( 2. Singly- subtractive Kramers- Kronig法:実 例 4)
根拠となる原理:因果律 (現在起こっている現象は、過去に起こった現象のみを用
いて記述されるという原理)
[0069]
(*2)式に対して因果律を適用すると、 (*2)式は以下の様に変形される。
E。 t) = R (て) Ein (t - て) dて (*2,)
[0070]
時刻て < 0における £in (t - r)の値は、現時刻 (りより先の時刻における値であ り、 即ち未来に於ける現象を表す値である。 因果律に基づけば、 これを現時 刻での現象を記述する際には用いるべきではなレ、。
[0071]
これは、 W(t)に対して、
R(t) = 0(t < 0)(*2")
という条件を課した上で (*2)式を使う事と等価である。
[0072]
(*2")の条件がある時、 ? (ω) = F7TR )]が複素数空間において滑らかな関数 である、 という条件を課すと、 その実部と虚部は Kramers-Kronigの関係式に よって互いに関連づけられる。
Re r(» =— I —— 2 ' άω
(*5)
2ムω ω r Γ∞∞Rκ&e rη(,oω') ) ,
Jo m'2 -m2
[0073]
光学領域の実験においては振幅 が得られるので、 上記の関係を振幅 と位相 θ{ω)の満たす関係に変換する方が使レ、勝手が良レ、。 そこで (*5) 式を変換することにより、 振幅の全周波数における値から位相を計算する事 が可能な (*5')式が導カゝれる。
2ω
θ{ω) = p「\ -ln 2r- ~O')」dm,' (*5,'、)
π J° ω -ω
[0074] なお、位相力も振幅への変換式は、一応導かれているものの、ほとんど使われない ο理由は
•同じ振幅に (因果律、と言う観点から)適合する位相が一意に決定できない
'実際のデータ解析に置いて、位相のみが得られる、と言うケースが殆どない からである。
[0075] なお、 Kramers-Kronigの関係式において、積分区間は全周波数に渡っているが、 実際のデータはある有限な区間に留まっている。この影響を避けるため、実際のデー タを解析する際は、様々な手法を用いて測定範囲外のデータを補間する、と言う事 が行われる。以降この問題を「データ範囲有限性の問題」と称する。
[0076]
(*5')式を導く過程において、 ある周波数 において位相の値が得られてい るとする。 この 、 (*5')式を周波数 wと の について書き下し、 差を とる事によって
という関係式が得られる。(*5")式を用いる事により、 「振幅の^!波数の値
+位相のある周波数 での値」 力ら 「位相の全周波数での値」 を計算する事 が出来る。 また、 (*5)式の場合とは異なり、 位相の全周波数での値及 Ό¾幅 のある周波数 での値から振幅の全周波数での値を計算する事も可能であ る。 (*5")式を、 Singly-subtractive Kramers-Kronig関係式、 と呼ぶ。 これは、 実施例 4で説明した subtractive Kramers-Kronigの関係と同じものである。
[0077] この式においては、標準的な Kramers- Kronigの関係式に比べて、データ範囲有限 性の問題が及ぼす影響が小さい。しかし、光学領域での実験に於いては常に振幅の みが得られるので、ある周波数に置ける位相の値を必要とするこの手法が用いられる 事はあまり無かった。他方テラへルツノルスによる分光法においては、振幅スぺタト ルと同じ周波数領域にぉ 、て位相スペクトルが得られるので、(*5")式を利用できる 可能性が飛躍的に高まる。
[0078]
以下に (*5")式を用レヽて、位置のずれに起因する位相誤差を含んだ複素反射 率 ρ( )から位相誤差を抽出する方法を述べる。 もし ΔΙ力 SOでない場合、 ρ(6>)の振幅と位相は複素空間において滑らかではなくなり、(*5")式を導く 前提条件が崩れてしまう。従って (*5")式は成り立たな 、。 この事を禾 IJ用して 、 以下の様な手段で ΔΙの値を抽出する。
[0079]
1. ρ(ω)に対し適当に ΔΙを仮定し、 Κ«) = 6 ( ) - "^の式に従って 位相誤差を補正する。 この位相を使って得られる複素反射率を ( と 置く。
2. θ人 ω、を (*5")式に代入して振幅を計算する。
3. 実 結果 I 《)|と比較し、 ずれを計算する。 尚、 ΔΙの符号によりずれる 向きが変わる事を利用して、 1.の補正後も残つている位相誤差の量を推 定する。
4. 3.の推定に基づいて を変更し、 1.~3.を繰り返す。
5. あらかじめ定めておいた基準よりも 3.における誤差が小さくなった時点 で計算を終了する。
[0080]
SSKKによる位相から振幅への変換の様子を、 図 1 5に示す。 ΔΙ = 0の時 (つまり図中で実線) 、 得られた振幅スぺクトルは本来の振幅スぺクトル ( 図 1 5 ( a ) の ^) と良い一致を示す。 しかし、 ΔΙ≠0 (図中薩) であ れば、 両者は全く一致しない。 しかもそのずれる傾向は の符号に応じて 変化する。
[0081]
(3. Smith & Manogueの方法:実施例 4に近似する別のアルゴリズム) テラへルツノ ルスを用いた分光においては、複素反射率 ( )の実部と虚部 が同時に得られる。 故に (*5)式を直接用いて、 測定した p )に ΔΖに起因す る誤差力 S含まれてレ、る力否かを検出する事が可能である。
[0082]
一般に (ω)が複素数空間にぉレ、て滑らかであれば、それをべキ乗した関数 ?" (ω) (¾¾η)も滑らかであるので、 ?" (ω)に対して Kramers-Kronigの関係式を 適用する事が出来る。 即ち、 整 ¾nに対して次式が成立する。
[0083]
データ範囲有限 の問題に関しても、 で ¾¾nの値を大きくする事に より、 その影響が緩和される事も明らかになつている。 これを Smith & Manogue ( S &M) の関係と呼ぶ。
[0084]
実際のデータ ( を する について考える。 [0085]
ΔΙく 0の場合、 ρ(«)は複素空間において滑らかでなくなり、 (*5)式を導 くのに必要な前提条件が崩れるので、 (*5)式に従って実部から虚部を計算す ると、 実験結果の虚部と一致しなレ、(逆の関係も同様に成立する)。 またこの 傾向は、 ηを大きくする事で顕著になる。
AL < 0の 、 ρ(ω)は複素空間において滑らかであり、(*5)式が成立する。 従つて (*5)式に従つて実部から虚部を計算すると、 実験結果の虚部と一致す る。 このことは、 Μ > 0の^に誤って 「位置のずれは無い」 と判定してし まう可能性がある事を示している。
L J 実際にデータ解析を行う方法について述べる(図 16)。 既に述べた様な事情 により、 人為的に ΔΙ < 0になる様に加工された^についてのみ考える。 図 1 6は、 Smith & Manogue ( S &M) の関係による、 ξ"χρ(ω)に対する解析の 様子 (η=5)を示すグラフである。 同図 (a ) 及び同図 (b ) は、 A L = 0の場 合、 同図 (c ) 及び同図 (d ) は、 A L < 0の場合を示している。 また、 図 中の実線はオリジナル (測定値) 、 碗線は S &Mのアルゴリズムによる結果 を示している。
[0087]
まず M < 0 に伴 う 位相誤差を含んだ反射率スぺク トル
(実部:(c)の実線 虚部:(d)の実線)について、 (*6) 式を用いて実部から虚部 (虚部から実部)への変換を行う。 変換の結果得られ た実部 (図 1 6 (c)の ¾fe線) ·虚部 (図 1 6 (めの のスぺクトルを変換前のス ベクトルと比較すると、 両者は非常に大きく食い違つている。 これは、 位相 誤差により(*6)式を導く際の前提条件カ«した事に起因している。
[0088] 一方、位相誤差を取り除 、た反射率スペクトルに対して、(*6)式を用いた変換を同 様に行い、実部 '虚部スペクトル各々を変換前 (図 16(a)の実線、図 16(b)の実線)と変 換後 (図 16(a)の破線、図 16(b)の破線)で比較すると、両者は極めて良く一致する。こ れは位相誤差を取り除いた結果、(*6)式を導く前提条件が満たされる様になった力 である。
そこで、以下の様な繰り返しループを行って、位相誤差 ΔΙを抽出する事が 出来る。
1 . (*6)式に従レヽ、反射率スぺクトル )の実部'虚部を変換し、 r^s&M (ω) を得る。
2 . Δ =Ι ξ &Μ ( )— p(«) lを計算する。 もし Δがあらかじめ決めておいた 基難よりも小さければ、 位相誤差を取り除レヽたと判断し、 手続きを終了す る。
3 .そうでなければ、 exp exp exp[i續 A〃c]に従って反射スぺクトルを変換 する。但し は繰り返しループを行った回数、 Δ/は補正する最小単位である。
[0090] 上記 1~3を繰り返し、 初めて Δが基準値を下回った際に、 AL = mAlとして 位相誤差が抽出される。 このようにして得た位相誤差を用いて、 試料の形状 情報を取得できる。
[0091] なお、本発明の計測方法は、上記した例に限定されるものではなぐ本発明の要旨 を逸脱しない範囲内において種々変更をカ卩ぇ得るものである。例えば、解析部 15は 、遠隔地に配置されていても良い。また、解析部 15は、ネットワークで接続された複 数のコンピュータにより構築されていても良い。さらに、解析部 15は、他のハードゥエ ァの一部であってもよい。
図面の簡単な説明
[0092] [図 1]本発明の実施例において用いられる測定装置の概略的な構成を説明するため の説明図である。
[図 2]図(a)は、実施例 1において、試料で反射された反射波の時間波形を示すダラ フである。図(a)において実線は、測定試料の計測データを示し、破線は、参照試料 の計測データを示している。図(b)は、振幅と位相の周波数スペクトルを示すグラフで ある。図(b)の破線は、測定試料のスペクトルを示し、実線は、 Drudeモデルによる、 試料の位置ずれがない場合の応答波形におけるスペクトルを示す。
[図 3]実施例 2にお ヽて、試料で反射された反射波の時間波形における振幅と位相
を示すグラフである。図中の細い破線は、実験により得られたデータ(実測値)を示し 、図中の太い破線は、 Drudeモデルへのフィッティングにより修正された実験データを 示し、図中の細線は、 Drudeモデルによる計算結果を示す。
[図 4]実施例 3において、試料で反射された反射波の位相誤差のうち、試料の誘電応 答に起因する成分 φ ( ω )と実験 ·解析上の誤差に伴う成分 φ ( ω )とをそれぞれ示す グラフである。
[図 5]実施例 4において、反射波の周波数と振幅との関係を示すグラフである。図中 太線は r ( ω)を示し、図中破線は r ( 0> )を示し、図中細線は1 0))を示す。
err cor
圆 6]実施例 5において、複素屈折率と周波数との関係を示すグラフである。図中破 線は実験によって得られたデータそのものを示し、図中太線は修正したデータを示し 、図中細線は理論値を示す。
圆 7]形状を測定した試料の概略的な斜視図である。
[図 8]図 7の試料の側面図である。
[図 9]穴を有するステンレス板の平面図である。
[図 10]測定によって得られた表面形状画像である。
[図 11]図 10における点線に沿って切断しその断面を観察した画像である。
[図 12]試料表面の計測データの一例である。
圆 13]測定試料と参照試料との間に位置ずれが生じている状態を説明するための説 明図である。
[図 14]最大エントロピ一法を説明するためのグラフである。
[図 15]SSKKによる位相力 振幅への変換の様子を示す図である。これらの図におい て、実線は、変位無し(A L = 0)、粗い破線は、変位が正(A L>0)、細かい破線は、 変位が負( Δ L< 0)を示して ヽる。
[図 16]Smith & Manogue (S&M)の関係による解析の様子 (n=5)を示すグラフである 符号の説明
1 レーザ発生部
2 ハーフミラー
光学遅延部
テラへルツ波の発生部·6·7·8 放物面鏡 反射波の検出部
レーザ光
1 ポンプ光
プローブ光
テラへルツ波
試料
a 測定試料
b 参照試料
解析部
1 ジュラルミン合金製ブロック n- InAs基板
ステンレス板