明細書
環境浄化方法および環境浄化剤 技雷分野
本発明は、 環境の浄化方法および当該方法に用いる環境浄化剤、 並びにこれら 浄化方法と環境浄化剤に使用できる細菌に関するものである。 背景技術
近年、 産業技術の発達や人工の増加に伴って、 環境に対する影響が問題とな つている。 例えば、 生活廃水や食品工場からの廃水などに含まれる窒素化合物 やリン化合物は、 河川や海において富栄養化の原因となり、 赤潮などを引き起 こす。 また、 屎尿や畜産汚水は、 河川等を汚染するのみでなく、 悪臭の原因に もなる。 さらに、 家庭などから出る生ゴミは、 水分含量が多いことから焼却に は多大なエネルギーを要するのみならず、 悪臭を発するという問題がある。 上記環境問題のうち、 生活廃水や工場などからの廃水の処理には、 大きく分 けて物理化学処理と生物処理とが用いられる。これら方法のうち、凝集,沈殿, 濾過, 吸着などの物理化学処理は処理スピードに優れる。 その一方で、 生物処 理は、 汚染物質を高濃度に含む廃水に対して処理効率が悪く、 また、 おしなべ て時間がかかるといった問題はあるものの、 穏和な条件で安価に実施でき、 省 エネルギーの観点からも優れていることから、 生物処理方法が採用される場合 が多い。
しかし、 従来、 リン化合物を分解できる細菌は見出されておらず、 生物処理 によっては、廃水中のリン化合物を低減することはできないと考えられていた。 また、 生物処理方法による廃水処理においては、 汚染物質を効率的に処理でき る細菌の探索が、 大きなテーマの一つとなっている。
また、 悪臭の発生も問題である。 特に、 下水設備がない地域での汲み取り式 便所や、 客席から近い場所に設置せざるを得ない列車内の便所では、 悪臭の原 因となるアミン系化合物や硫黄系化合物を速やかに低減する必要がある。
悪臭を低減する方法としては、 原因物質を活性炭等の多孔体に吸着する方法 や、 化学的に分解する方法がある、 しかし、 多孔体の吸着能は飽和するため、
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その脱臭能力は限定的である。 また、 化学的な分解方法は、 家庭での使用が危 険な場合がある。 そこで、 細菌を利用して悪臭を低減する方法が、 種々検討さ れている。
例えば特開平 1 1一 1 37953号公報には、 微生物を担持する担体と、 こ の担体に散水する散水設備と、 散水した水を回収する貯水タンクであって硝化 細菌を有するものとを備える脱臭装置が開示されている。 しかし、 散水設備や 貯水タンクを設けるのは設備費用の点で問題があるのみでなく、 列車内など限 られたスペースには装置を設置することが困難である。 この点に関して、 特に 脱臭作用等に優れる細菌を用いることによって、 設備の問題の解決を図ってい る技術もある。
特開平 5— 1 53971号公報には、 B a c i l l u s me g a t e r i um種に属する細菌を使った悪臭発生抑制剤が記載されている。 しかし、 この 文献の実施例に記載されている当該細菌の作用効果は、 「悪臭の発生が抑えら れた」 といった定性的なものであり、 実際にどの程度効果があるのか不明であ る。
一方、 特開 2001— 70424号公報には B a c i l l u s t hu r i n g i e n s i s種などの B a c i 1 1 u s属細菌を担持した生物脱臭剤の製 造方法が開示されており、 実施例にはアンモニア等の具体的な処理データも開 示されている。 しかし、 添付されている図を参照すれば明らかな様に、 当該技 術はあくまで空気中の揮発性化合物を処理するものであって、 悪臭の直接の原 因である物質を処理するものではない。
さらに、 特開平 6— 1 90028号公報と特開平 10— 248556号公報 には、 それぞれ、 C 1 o s t r i d u i m属と Th e r mu s属細菌を含む脱 臭剤と、 P s e u d omo n a s属細菌を含む脱臭剤が開示されており、 悪臭 原因物質である硫化メチルと二硫化メチルを処理した実験例が記載されている。 また、 身近な環境汚染例として、 台所の排水口や排水溝, 浴室の排水口, 浴 槽, 便所の水洗用タンク, 水槽などに発生する 「ヌメリ」 がある。 このヌメリ の正体は、 主に雑菌やカビ、 藻類が産生する多糖類である。 従って、 ヌメリの 抑制には殺菌作用を有する化合物等が用いられる。 し力 し、 殺菌剤では効果が 緩慢である場合があり、 また、 家庭での使用は危険な場合がある。
ところで、 Emp e d o b a c t e r b r e v i s等の Em p e d o b a c t e r属細菌は、 不飽和脂肪酸に水酸基を付加する等の生物変換反応に用い られるものとして知られている (特開平 1 5— 144186号公報)。 し力 し、 従来、 Emp e d o b a c t e r属細菌を廃水処理などの環境浄化に用いた例 はない。 発明の開示
上述したように、 細菌を用いた廃水や悪臭の処理は、 従来から行なわれてい た。 また、 ヌメリを抑制する技術も知られている。 しかし、 有害な有機化合物 や無機化合物、 特に廃水 CODの上昇の原因となる化合物や、 悪臭の原因とな るァミン系化合物や硫黄化合物、 ヌメリの原因となる多糖類の生物処理につい ては、 より効率的な技術が求められている。 特に、 河川等の富栄養化の原因と なるリン化合物を処理できる細菌は見出されていないことから、 リン化合物の 処理能力を有する細菌が切望されている。
そこで、 本発明が解決すべき課題は、 細菌により有害な有機化合物や無機化 合物を処理する環境浄化方法、 および当該方法に用いる環境浄化剤、 並びにこ れら環境浄化方法と環境浄化剤に用いることができる細菌を提供することにあ る。
本発明者らは、 上記課題を解決すべく、 環境浄化に有用な細菌を探索したと ころ、 これまで環境浄化に用いられた例のない Em p e d o b a c t e r属細 菌が、 廃水の CODや悪臭成分等のみならず、 リン化合物濃度も低減できる能 力を有することを見出して、 本発明を完成した。
即ち、 本発明の環境浄化方法は、 Emp e d o b a c t e r属細菌おょぴノ またはその培養物を被処理物と接触させることを特徴とする。
また、 本発明の環境浄化剤は、 Emp e d o b a c t e r属細菌および/ま たはその培養物を含有することを特徴とする。
さらに、 本発明に係る環境浄化方法と環境浄化剤で、 特に優れた効果を発揮 する Emp e d o b a c t e r属細菌は、 S I I D 2926— l b株 (FER M BP— 10360) である。
図面の簡単な説明
図 1 S I I D 2926— 1 b株の脂肪酸組成を示すクロマトグラフィー結 果である。
図 2 S I I D 2926— 1 b株とその近縁菌株を含む分子系統樹である。 発明を実施するための最良の形態
本発明に係る細菌である Emp e d o b a c t e r属細菌のうち、 S I I D 2926 - 1 b株は、 下記の通り寄託機関に寄託されている。
( i ) 寄託機関の名称およびあて名
名称: 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター あて名 : 日本国 茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1 中央第 6
( i i) 寄託日 : 平成 1 6年 (2004年) 6月 30日
( i i i) 寄託番号: FERM BP- 10360
なお、 S I I D 2926 - 1 b株は、 上記寄託機関に平成 1 6年 6月 30日付 で国内寄託された後 (寄託番号: FERM P— 20108)、本願出願前に国 内寄託から国際寄託へ移管されたものである。
光学顕微鏡 (ォリンパス製, U— LH1000) を用いて観察した、 S I I D 2926— 1 b株の細胞形態, グラム染色性, 胞子の有無, 鞭毛による運動 十生の有無、 および n u t r i e n t a g a r (O x o i d製) 上 30°Cで 2 4時間培養したコロニーの形態、 更には、 B a r r o w, G. I . と F e 1 t h am, R. K. A., C owa n a n d S t e e l ' s Ma nu a l f o r t h e I d e n t i f i c a t i o n o f Me d i c a l B a c t e r i a. 3 r d e d i t i o n, C amb r i d g e U n i v e r s i t y P r e s s . (1 993年)に従ったカタラーゼ反応,ォキシダー ゼ反応およびプド.ゥ糖の酸化/発酵 (O/F) の試験結果は、 表 1に示す通り である。
細胞形態 桿菌(0.5〜0.6Xl.0 m) 37 +
ipi 皿] ¾·( Cノ
グラム染色性 ― 45 ― 胞子 一 カタラーゼ + 運動性 ― ォキシダーゼ +
直径: 1.0〜 1.5mm 酸/ガス産生
—/一 色調:黄色 (グルコース)
形:円形 OZFテスト —/一
コロニー形態 隆起状態:レンズ状 (グルコース)
周縁:全縁滑らか
表面状態:スムーズ
透明度:不透明
粘稠度:バター状
また、 細菌同定検査試薬である AP Iシステム (B I OMER I EUX製) を用いて、 生化学的性状試験を行なった結果を表 2に示す。
表 2
以上の形態や性状に関して、 S I I D2926— 1 b株は F 1 a v o b a c t e r i a c e a e科に分類される菌群と類似するが、 属種の特定には至らな かった。 しかし、 後述する実施例の結果より、 S I I D 2926— 1 b株は F 1 a V o b a c t e r i a c e a e科の中で ¾>Emp e d o b a c t e r属に 分類される細菌であると結論付けられる。
S I I D 2926 - 1 b株は、 廃水の COD, BOD, 窒素化合物ゃリン化 合物の低減と共に、 悪臭の原因となるアミン系化合物や硫黄系化合物の発生抑 制、ヌメリの原因となる多糖類の抑制について、優れた作用を有する。従って、
S I I D 2926 - 1 b株の他の Emp e d o b a c t e r属細菌も、 これら 作用を有すると考えられ、 S I I D2926— 1 b株と同様に、 環境浄化のた めに用いることができる。 また、 複数の Emp e d o b a c t e r属細菌を併 用して用いてもよい。
本発明の環境浄化方法は、 Emp e d o b a c t e r属細菌おょぴ または その培養物を被処理物と接触させることを特徴とする。 本発明方法によって、 環境中における有害化合物、 特に河川等の富栄養化の原因となる有機化合物, 窒素化合物ゃリン化合物;悪臭の原因となるアミン系化合物や硫黄系化合物; ヌメリの原因となる多糖類;カビの発生を抑制することができる。
本発明方法で用いる Emp e d o b a c t e r属細菌は、 上記で説明した通 りである。 Emp e d o b a c t e r属細菌の培養物とは、 Emp e d o b a c t e r属細菌の培養に用いた培地と、 Emp e d o b a c t e r属細菌の生 育に伴って当該培地に放出された化合物や酵素等を含むものをいう。 Emp e d o b a c t e r属細菌自体が、 有害化合物を分解できるが、 細菌が産生する 酵素等が同様の作用効果を有することも考えられる。
当該培地は、 Emp e d o b a c t e r属細菌の培養に適するものであれば 特に制限されない。 例えば、 純水, 精製水, 蒸留水などの水へ、 糖類等の炭素 栄養源、 尿素やペプトン等の窒素栄養源、 酵母エキス等の微量元素源などを適 量添加したものを用いることができる。
本発明方法の被処理物は、 有害な化合物を含むもの、 或いは有害な化合物を 発生させるものであれば、 特に制限されない。 例えば、 生活廃水や食品工場廃 水など河川等の富栄養化の原因となる廃水, 悪臭源である屎尿や畜産汚水, 生 ゴミ等の食品残渣, 微生物汚泥などを挙げることができる。 また、 悪臭が問題 となるトイレ室内, 便器, 犬猫の糞尿場, 灰皿, 生ゴミ容器;ヌメリやカビが 問題となる浴室の排水口や排水溝や壁, 浴槽, 便所の水洗用タンク, 水槽, 冷 房機の室外機, 生ゴミ容器などへ、 Emp e d o b a c t e r属細菌おょぴノ またはその培養物を直接作用させてもよい。
本発明方法で用いる環境浄化剤は、 Emp e d o b a c t e r属細菌および /またはその培養物を含有することを特徴とする。 本発明の環境浄化剤によつ て、 環境中における有害化合物、 特に河川等の富栄養化の原因となる有機化合
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物, 窒素化合物やリン化合物;悪臭の原因となるアミン系化合物や硫黄系化合 物;ヌメリの原因となる多糖類を抑制することができる。 従って、 本発明の環 境浄化剤は、 廃水処理剤, 悪臭抑制剤または脱臭剤, ヌメリ抑制剤または多糖 類発生抑制剤, 力ビ発生抑制剤等として有用である。
本発明の環境浄化剤は、 Emp e d o b a c t e r属細菌および/またはそ の培養物を被処理物へ直接投与するものであってもよいが、 被処理物の種類に 応じた形態としてもよい。
例えば、 被処理物がトイレ室内や生ゴミ自体である場合には、 Emp e d o b a c t e r属細菌および/またはその培養物を溶媒中に分散させ、 これを被 処理物へ散布してもよい。 この場合に用いることができる溶媒は、 水;ェタノ ール等のアルコール;水とアルコールとの混合溶媒を挙げることができる。 斯 力る分散液の濃度は特に制限されないが、 例えば、 Emp e d o b a c t e r 属細菌に対して溶媒を 5000〜 10000質量倍程度加えたものとすること ができる。 また、 . Emp e d o b a c t e r属細菌の作用効果を著しく減ずる ものでない限り、 菌床になり得るもの及びその組成物, pH調整剤, 色素, 消 毒剤などを併用してもよい。 なお、 この分散液には、 Emp e d o b a c t e r属細菌の培養液も含むものとする。
被処理物が廃水である場合には、 浄化槽など従来の廃水処理設備へ Emp e d o b a c t e r属細菌および/またはその培養物を投入してもよい。 その際 には、 培養物を投入する場合には特にその必要はないが、 細菌自体を投与する 場合には、 炭素源, 窒素源, 微量元素源など、 上記細菌の生育に適した栄養源 を添加し、 その他の条件も上記細菌の生育条件に即したものにする。 また、 栄 養源として植物系の残渣を加えてもよい。 植物系残渣は細菌の栄養源として優 れるのみでなく、 本来廃棄されるべきものの再利用を図ることができるからで ある。 斯かる植物系残渣としては、 例えば、 米糠, おから, 鋸くず, コーヒー 粕, 油粕, 大豆粕, ヤシガラ, サトウキビバガス等を挙げることができ、 本発 明細菌に対しては、 米糠とコーヒー粕が最適である。
上述した植物系残渣中で本発明細菌を培養したものは、 そのまま廃水処理に 用いることができるものとして有用である。 その作成方法は、 例えば、 植物系 残渣に本発明細菌と他の栄養源等を添加した後、 十分に水分を与えて 37〜 3
9 °C程度でインキュベートし、 数日間発酵させる。 これをそのまま被処理物に 加えてもよいし、 或いはー且乾燥したものを被処理物に添加してもよい。
また、 本発明の環境浄化剤は、 Emp e d o b a c t e r属細菌および Zま たはその培養物を担体に担持したものであってもよい。 使用できる担体として は、 米糠, コーヒー粕, 大豆粕, 椰子ガラ, 活性炭, シリカ多孔体, ガーゼ, 不織布,布帛からなる群より選択される 1または 2以上を挙げることができる。 この環境浄化剤は、 例えば、 担体に Emp e d o b a c t e r属細菌の培養液 を加えた上で、 適度に乾燥することにより製造することができる。
本発明に係る環境浄化剤細菌の添加量は、 例えば、 廃水の COD、 悪臭の発 生度合い、 生ゴミなど固形成分の存在などに応じて適宜調整すればよい。 被処 理物が廃水である場合、 一般的には、 廃水 1 Lに対して菌体重量で◦. 3mg 程度添加すればよい。 被処理物がトイレ室内や生ゴミである場合には、 Emp e d o b a c t e r属細菌および/またはその培養物の分散液である環境浄化 剤を、 悪臭が発生しない程度に適度散布すればよい。 また、 S I I D 2926 一 1 b株は上述した通り 30°Cと 37 °Cで生育するため、 特に温度制御する必 要はなく常温で処理してもよいが、 寒冷地での実施など、 場合によっては適温 でインキュベートしてもよい。 具体的な処理条件は、 予備実験により決定すれ ばよい。
以下、 実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、 本発明はもとより 下記実施例により制限を受けるものではなく、 前 ·後記の趣旨に適合し得る範 囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、 それらはいずれも本発明 の技術的範囲に含まれる。 実施例
実施例 1 16.S r DNA塩基配列解析
S I I D 2926 - 1 b株(FERM B P_ 10360)の菌体について、 ゲノム DNAを抽出した。ゲノム DNAの抽出には、 I n s t a Ge n e M a t r i x (B I O RAD製) を使用し、 プロトコールは B I O R AD社 のものに従った。 抽出したゲノム DNAを錶型として、 PCRにより 16 S r DNAのうち 5 '末端側約 500 b pの領域を増幅した。 その後、 増幅された
塩基配列をシーケンシングし、 塩基配列を決定した。 PCRとサイクルシーク エンスには Mi c r o S e q 500 1 6 S r DNA B a c t e r i a 1 I d e n t i f i c a t i o n PGR K i t (A l i e d B i o s y s t ems製) を、 サーマルサイクラ一には Ge n e Amp PGR S y s t em 9600 (A p 1 i e d B i o s y s t erns製) を、 D NAシーケンサーには AB I PR I SM 3100 DNA S e q u e n c e r (Ap p l i e d B i o s y s t ems製) を使用した。 また、 P C Rからサイクロシークェンスまでの基本的操作は、 Ap p l i e d B i o s y s t erns社のプロトコール (PZN4346296 Re v. B) に従つ た
次に、 得られた塩基配列情報を用いて、 属種の同定を行なった。 先ず、 各属 種の基準株のデータベースである M i c r o S e q B a c t e r i a l 500 L i b r a r y v. 0023 (A p l i e d B i o s y s t e m s ) を用い、 解析ソフトウエアとして M i c r o S e q M i c r o b i a 1 I d e n t i f i c a t i o n S y s t em s o f t wa r e v. 1. 4. 1を、 アルゴリズムとして B LASTを使用して、 既知細菌との相同 率を求めた。 相同率上位 5位までの結果を表 3に示す。
表 3
相同率が 97%以下であれば、 両者は異なる種に属するといえる (参照: S t a c k e b r a n d t E, Go e t e l BM (1 994), T a o n o m i c n o t e ! a l a c e f o r DNA— DNA r e a s s o c i a t i o n a n d 1 6 S r RN A s e q u e n c e a n a l y s i s i n t h e r e s e n t s p e c i e s d e f i n i t i o n i n b a c t e r i o l o g y, I n t . J . S y s . B a c t e r i o 1. , 44, p p 846— 849)。 従って、 S I I D 2
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9 2 6 - 1 b株は、 何れの既知細菌の属種にも属さない新規なものであること が分かった。
また、 念のために国際塩基配列データベース (G e n e B a n k/DDB J E M B L )による同定も行なった。相同率上位 5位までの結果を表 4に示す。 表 4
当該結果の通り、 国際塩基配列データベースを用いた場合でも、 基準株であ る Emp e d o b a c t e r b r e v i sとの相同性は 9 5 %であり、 S I
I D 2 9 2 6 - 1 b株は Emp e d o b a c t e r b r e v i s種に属する ものではないといえる。 また、 相同率が高いものも見られたが、 これらは基準 株ではなく、 且つ、 たとえ 1 6 S r DN Aの全塩基配列の相同性が 1 00 %で あっても必ずしも同一株である証拠とはならない。
以上の結果から、 S I I D 2 9 2 6— 1 b株は Emp e d o b a c t e r属 と F l a v o b a c t e r i u m属への近縁性が示唆されるものの、 これら属 に分類される基準株への相同性は認められなかったことから属種レベルで全く 新規の細菌であり、 これら属が含まれる F l a v o b a c t e r i a c e a e 科に分類されるものであると結論付けた。 実施例 2 脂肪酸組成分析
S I I D 2 9 26— 1 b株を T r i p t i c a s e S o y (S CD) A g a r (B e e t o n D i c k i n s o n製) 平板培地に植菌し、 30°Cで
24時間培養した。 この平板 4枚分の菌体をセルスクレイパーでかき取り、 1
3 mL容のガラスバイアルの底部に擦り付けた。
この菌体に鹼化液 (水酸化ナトリウム 4 5 g, メタノール 1 5 0mL, 蒸留 水 1 5 OmLを均一混合したもの) l mLを加え、 1 00°Cのウォーターバス によってガラスパイアルを恒温状態で静置した。 反応開始 5分後にー且ウォー
ターバスから取り出し、 軽く攪拌してから戻し、 菌体の鹼化を更に 30分聞行 なった。 鹼化した試料液中にメチル化試薬 (6. OM塩酸 325mLとメタノ ール 275mLを均一混合したもの) 2mLを加え、 80°Cに設定したウォー ターバス中で 1 0分間反応させ、 鹼化により生じた脂肪酸をメチルエステル化 した。
試料液中に抽出液 (へキサン 20 OmLと t一ブチルメチルエーテル 200 mLとの混合溶液) 1. 25mLを加え、 シェーカーで 10分間攪拌した後静 置した。 二層分離した水層をパスツールピペットで除去した。 残った有機層に 洗浄液(水酸化ナトリウム 10. 8 gと蒸留水 900 m Lを均一混合したもの) 3 mLを加えてシェーカーで 5分間攪拌したところ、 ェマルジヨン状態になつ たため、 飽和食塩水を数滴滴下することによって二層分離させた。 分離した有 機層の上部 2Z3をパスツールピぺットで取り出し、 これをガスクロマトグラ フィー用サンプルバイアルに移し、 測定用試料とした。
上記試料について、 ガスクロマトグラフィーシステム HP 6890 (He w l e t t -P a c k a r d製) を用いて脂肪酸組成を測定した。 結果を図 1 に示す。また、この結果について、 S h e r l o c k M i c r o b i a l I d e n t i f i c a t i o n S y s t e mを用いて、 既知菌種との相同性検 索を行なった。 結果を表 5に示す。
表 5
上記表中、 「 S um I n F e a t u r e 3」は、 リテンションタイムが ほぼ同一である C 1 6 : l w7 cと C 1 5 : 0 i s o 2〇Hの何れかで ある。 また、 「類似度」 は、菌種間で全く同一の組成を持つ場合は 1. 000と なり、 目安として当該値が 0. 500以上であれば、 検索された菌種の脂肪酸 組成と類似しているといえ、 0. 300以下では、 類似する脂肪酸組成を有す る菌種はないと考えられる。
当該結果より、 S I I D 2926— 1 b株は、 F l a v o b a c t e r i a
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c e a e科に分類される Em p e d o b a c t e r b r e v i sとの近縁性 が示唆されるものの、 既知の菌種とは一致しないものであることが明らかとな つた。 実施例 3 分子系統樹
上記実施例 1で得られた 1 6 S r DN A塩基配列解析の結果から推定された S I I D 2926 - 1 b株の近縁菌群に含まれる基準菌株について、 データべ ース (G e n B a n kZDDB J/EMB L) から 1 6 S r D N A塩基配列の 上流側を取得し、 分子系統樹を作成した。 その際、 アラインメント (塩基配列 間の対応が最も良くなる様に配列データへ適当なギャップを揷入する処理) に は、アラインメントソフトである C 1 u s t a 1 X (Th omp s o n, J. D. ら, 「Th e C 1 u s t a 1 X w i n d ow s i n t e r i a c e : f l e x i b l e s t r a t e g i e s f o r mu l t i p l e s e q u e n c e a l i g nme n t a i d e d b y q u a l i t y a n a l y s i s t o o l s」, Nu c l e i c Ac i d s Re s e r a c h, 24, p p. 4876-4882 (1 997)) を用い、 分子系統樹の作 成には、 コンピューターソフトウェアである MEGA 2 (Kuma r, R. ら, 「MEGA 2 : Mo l e c u l a r Ev o l u t i o n a r y G e n e t i c s An a l y s i s s o f t wa r e」,B i o i n f o rma t i c s, 1 7, p p . 1 244- 1 245 (2001)) を使用した。 なお、 分子系統樹の推定には近隣結合法(S a i t o, N. ら, 「Th e n e i g h b o r— j o i n i n g me t h o d : a n e me t h o d f o r r e c o n s t r u c t i n g p h y l o g e n e t i c t r e e s」, Mo し B i o l . E v o 1 , 4, p p. 406— 425 (1987)) を用い、樹形の妥当性を示すブートストラップ(F e l s e n s t e i n, J., 「 C o n f i d e n c e l i m i t s o n p h y l o g e n i e s : a n a p p r o a c h u s i n g t h e b o o t s t r a p.」, Ev o l u t i o n, 39, p p. 783- 791 (1 985)) は 1000回発生 させた。 また、 S I I D 2926 - 1 b株を含むクラスタ一は、 ブートストラ ップ値 99 °/0と 100 %で支持された。 結果を図 2に示す。
当該結果より、 S I I D 2926 - 1 b株の 16 S r DNA塩基配列は、 E mp e d o b a c t e r b r e v i sの 16 S r DNA塩基配列が形成する クラスターに含まれることが分かる。 従って、 上記実施例 1と 2の結果も合わ せて考察すると、 S I I D 2926— l b株は、 Emp e d o b a c t e r属 に分類される新規な菌株であると結論付けることができる。 実施例 4 脱臭能力試験
先ず、 米糠に S I I D 2926— 1 b株とコーヒー粕と尿素とを加え、 地下 水を吹き付けたものを 37〜39°Cで 5日間インキュベートし、 次いで適度に 自然乾燥することによって、 S I I D 2926— 1 b株を含む植物系残渣を作 成した。 次に、 12 L容の密閉真空デシケーターに屎尿処理場原水 10 Lを取 り、 この原水 1 L当たり 10 gの割合 (合計 100 g) で当該植物系残渣を添 加した。このデシケーターを密閉し、震蕩しつつ 25°Cでィンキュベートした。 所定時間毎に、 シ'リンジにより気相部分の空気を抜出し、 J I S K0099 の規定に基づいてインドフヱノール吸光度法によって、 気相部分のアンモニア 濃度 (v/v p pm) を測定した。 結果を表 6に示す。
表 6
当該結果より、 本発明の S I I D 2926— l b株は、 一般の屎尿原水から 発生する悪臭の原因となるアンモニアの濃度を 1時間でほぼ半分まで低減する ことができ、 その後においてもアンモニゥム濃度を低いレベルに維持した。 従 つて、 本発明の S I I D 2926 - 1 b株は、 高い脱臭能力を有することが実 証された。 実施例 5 廃水処理試験
先ず、 グリストラップで処理された後に排出されている食
造工場由来の廃水(放流量: 25m3Z日)について、 pH、化学的酸素要求量、 生物化学的酸素要求量、 浮遊物質量、 全窒素含有量、 全リン含有量および n— へキサン抽出物質量 (鉱油類と動植物油脂類) を測定した。
次に、 当該グリストラップに、 上記実施例 4で用いた S I I D 2926 - 1 b株を含む植物系残渣を 1日当たり 500 g加えて攪拌する処理を 20日間連 続して行なった。 その後における廃水について、 同様の条件で pH等を測定し た。 結果を表 7に示す。
表 7
pH以外の数値の単位は、全て mg/Lである
当該結果の通り、 本発明の S I I D2926— l b株は、 化学的酸素要求量 (COD) や生物化学酸素要求量(BOD)、悪臭の原因となる窒素化合物、環 境汚染の原因とな.るリン化合物などを低減できることが実証された。 特に、 従 来、生物処理では廃水のリン化合物を低減できないと考えられていたことから、 本発明の S I I D 2926 - 1 b株は、 廃水処理のための微生物として極めて 優れているといえる。 実施例 6 廃水処理試験
先ず、 機械部品製造工場に設置されている浄化槽 (350人槽) の流入水と 放流水について、 pH、 化学的酸素要求量、 生物化学的酸素要求量、 浮遊物質 量、 窒素化合物含有量およびリン化合物含有量を、 表 7に示す方法により測定 した。 この浄化槽は、 食堂からの生活廃水と屎尿を合わせた廃水を 1日当たり 46 m3処理しているものであり、通常の活性汚泥処理方式を採用したものであ る。 しかし、 当該浄化槽の汚泥負荷と流量負荷を過小設定したことによると推
測される、 放流水中の CODと BOD等の浄化不十分などのトラブルが頻発し ていた。
上記測定後、 当 浄化槽へ上記実施例 4で用いた S I I D 2926— l b株 を含む植物系残渣を 50 k g投入し、 投入 4日後において、 同様の測定を行な つた。 さらに、 最初の投入から 1週間ごとに植物系残渣を 4 k gずつ計 16 k g投入し、 最後の投入を行なった後で再度同様の測定を行なった。 結果を表 8 に示す。
表 8
当該結果の通り、 従来の浄化槽へ本発明に係る S I I D 2926— l b株を 投入したところ、 廃水の COD、 BODおよび浮遊物質を顕著に低減すること ができた。 また、 悪臭の原因となるアンモニア性窒素、 環境汚染の原因となる 硝酸性窒素、 亜硝酸性窒素おょぴリン化合物も、 従来の浄化槽で処理された廃 水に比して、 それぞれ 0. 6%、 18. 5%、 2. 0%、 3. 7%まで低減さ れている。 これら化合物中、 アンモニア性窒素とリン化合物がいったん増加す る理由は明らかではないが、 従来の浄化槽による処理ではアンモニア性窒素と リン化合物が増加していることから、 投入した植物系残渣が S I I D 2926 一 1 b株以外の微生物により分解された結果ではないかと考えられる。 斯かる 結果からも、 従来の浄化槽では、 悪臭や環境汚染物質を必ずしも低減できない ことが分かる。 これに対して、 本発明の S I I D 2926 _ 1 b株は、 悪臭や 環境汚染物質を顕著に低減できることが証明された。
実施例 7 悪臭抑制試験
水 4000質量部に、 S I I D2926— l b株 0. 5質量部、 グルコース 10質量部、ペプトン 5質量部および酵母エキス 2. 5質量部を添加し、 30°C で 5日間培養した。 当該培養液 5 mLを水 500 mLに添加した。 これを環境 浄化剤 Aとする。 当該環境浄化剤 Aを、 猫の糞尿場所である砂場に 10日間に わたり毎朝 8時に約 2〜3mL散布し、 悪臭の発生状態を、 毎朝 7時に 3人で チェックした上での合意により判定した。 環境浄化剤 Aの散布前と散布後にお ける悪臭の発生状態を、 悪臭がある場合を X、 悪臭が少ない場合を△、 悪臭が ない場合を〇として表 9に示す。
当該結果の通り、 本発明に係る環境浄化剤 Aの使用前には悪臭が有ったにも かかわらず、 使用開始 1日後から効果が表れ始め、 2~10日においては悪臭 の発生は認められなかった。 従って、 本発明に係る環境浄化剤の悪臭抑制作用 が実証された。 実施例 8 悪臭抑制試験
上記実施例 7の環境浄化剤 Aを、 家族 3人が使用する汲み取り式便所のタン クへ、 20日間にわたり毎朝 8時に約 1 5〜 2 OmL投入し、 便器蓋を除いた 際における悪臭の発生状態を、 毎朝 7時に 3人でチェックした上での合意によ り判定した。 環境浄化剤 Aの散布前と散布後における悪臭の発生状態を、 悪臭 がある場合を X、 悪臭が少ない場合を△、 悪臭がない場合を〇として表 10に 示す。
表 10 投入 投入 投入 投入 投入 投入前
1曰後 2曰後 3曰後 4曰後 5〜20日後
X X 厶 厶 〇 〇
当該結果の通り、 本発明に係る環境浄ィ匕剤 Aの投入 1日後までは悪臭が有つ たものの、 投入後 2日目から効果が表れ始め、 4〜2 0日においては悪臭の発 生は認められなかった。 従って、 本発明に係る環境浄化剤の悪臭抑制作用が証 明された。 実施例 9 悪臭抑制試験
上記実施例 7で調製した培養液 4 0 0 0質量部に、 米糠 1 0 0 0 0質量部、 コーヒー粕 1 0 0.0質量部、 尿素 1 0 0質量部、 蜂蜜 2質量部、 砂糖 2質量部 を添加した。 培養に伴う発熱による昇温に注意し、 5 5 °Cを超えない様に時々 攪拌しつつ、 5日間静置培養した。 その後、 培養液を自然乾燥して S I I D 2 9 2 6 - 1 b株を仮死状態とし、 環境浄化剤 Bを得た。 当該環境浄化剤 Bの水 分を米穀水分計により測定したところ、 1 3 %だった。
この環境浄化剤 Bを、 上記実施例 8と同様の方法により便所タンクへ約 2 0 〜2 5 g投入し、 悪臭抑制作用を調べた。 環境浄化剤 Bの散布前と散布後にお ける悪臭の発生状態を、 悪臭がある場合を X、 悪臭が少ない場合を△、 悪臭が ない場合を〇として結果を表 1 1に示す。
当該結果の通り、 本発明に係る環境浄化剤 Aの投入 1日後までは悪臭が有つ たものの、 投入後 2日目から効果が表れ始め、 5〜2 0日においては悪臭の発 生は認められなかった。 従って、 本発明に係る環境浄化剤の悪臭抑制作用が証 明された。 実施例 1 0 悪臭抑制試験
上記実施例 9で得た環境浄化剤 Bを、 家族 3人の台所生ゴミを一時保存する 容量 1 0 0 Lの蓋付ポリバケツへ、 3 0日間にわたり毎朝 8時に約 8〜 1 0 g 散布して攪拌し、 毎日朝、 昼、 晚の 3食分の生ゴミをその上に蓄積した。 蓋を 除いた際における悪臭の発生状態を、 毎朝 7時に 3人でチェックした上での合
意により判定した。環境浄化剤 Bの散布前と散布後における悪臭の発生状態を、 悪臭がある場合を X、 悪臭が少ない場合を△、 悪臭がない場合を〇として表 1 2に示す。
当該結果の通り、 本発明に係る環境浄化剤 Aの投入 1日後までは悪臭が有つ たものの、 投入後 2日目から効果が表れ始め、 3〜3 0日においては悪臭の発 生は認められなかった。 従って、 本発明に係る環境浄化剤の悪臭抑制作用が証 明された。 実施例 1 1 悪臭抑制試験
上記実施例 7の環境浄化剤 Aを、 自家用車の灰皿に、 2 0日間にわたり毎晩 2 0時に約 5〜 7 m L散布し、 悪臭の発生状態を、 毎朝 7時に 3人でチェック した上での合意により判定した。 環境浄化剤 Aの散布前と散布後における悪臭 の発生状態を、 悪臭がある場合を X、 悪臭が少ない場合を△、 悪臭がない場合 を〇として表 1 3に示す。
当該結果の通り、 本発明に係る環境浄化剤 Aの投入前までは悪臭が有つたも のの、 投入後 1日目から効果が表れ始め、 2〜2 0日においては悪臭の発生は 認められなかった。 従って、 本発明に係る環境浄化剤の悪臭抑制作用が証明さ れた。 実施例 1 2 カビおよぴヌメリの発生抑制試験
上記実施例 7で調製した培養液 1 0質量部を、 水 1 0 0 0質量部に加えて分 散混合した。 これを環境浄化剤 Cとした。 当該環境浄化剤 Cを、 いったん洗净
した浴室の壁と浴槽へ、 6 0日にわたり 1日当たり 3〜5 m L散布した。 6 0 日後の実験後において、 浴室壁にも浴槽にも、 力ビゃヌメリは全く見られなか つた。 従って、 本発明に係る環境浄化剤のカビおよぴヌメリの発生抑制作用が 実証された。 実施例 1 3 力ビぉよびヌメリの発生抑制試験
上記実施例 1 2の環境浄化剤 Cを、 6 0日にわたつて 3日に 1回 3〜5 m L ずつ便所の水洗用タンクへ添加した。 6 0日後の実験後において、 水洗用タン クにも便器にも、 力ビゃヌメリは全く見られなかった。 従って、 本発明に係る 環境浄化剤の力ビおよびヌメリの発生抑制作用が証明された。 実施例 1 4 ヌメリ抑制試験
上記実施例 9で得た環境浄化剤 B 5 0 gを、 ポリエステル繊維不織布の袋に 入れて袋口部を封じ、 これを家族 3人が使用する台所の排水口のプラスチック 製カゴに入れた。 3力月後にわたって、 上記プラスチック製力ゴのヌメリの発 生状態を、 3人でチェックした上での合意により毎日判定したところ、 一度も ヌメリは発生しなかった。 従って、 本発明に係る環境浄化剤のヌメリ抑制作用 が証明された。 実施例 1 5 ヌメリ抑制試験
上記実施例 7で調製した培養液 1 0 0 0 0質量部に多孔性炭 (平均粒子径: 2〜5 mm) 1 0 0 0質量部を浸漬し、 3 0 °Cで時々攪拌しつつ 5日間静置し た。その後、多孔性炭のみを取り出し、 自然乾燥することによって、水分 1 2 % の環境浄化剤 Dを得た。 当該環境浄化剤 Dをポリエステル繊維不織布の袋に 1 5 0 g入れて袋口部を封じ、 2 4時間風呂のフィルタ一部に合わせて成形し、 装着して使用した。 3力月後にわたって、 フィルタ一部におけるヌメリの発生 状態を、毎朝 7時に 3人でチェックした上での合意により毎日判定したところ、 一度もヌメリは発生しなかった。 従って、 本発明に係る環境浄ィ匕剤のヌメリ抑 制作用が証明された。
実施例 1 6 ヌメリ抑制試験
上記実施例 7で調製した培養液 1 0 0 0 0質量部に活性炭素繊維 (平均繊維 径: 1 0 0 m, 平均繊維長: 5 0 mm) 3 0 0質量部を浸漬し、 3 2 °Cで時々 攪拌しつつ 5日間静置した。 その後、 活性炭素繊維のみを取り出し、 自然乾燥 することによって、 水分 1 4 %の環境浄化剤 Eを得た。 当該環境浄化剤 Eをポ リエステル繊維不織布の袋に 1 5 0 g入れて袋口部を封じ、 上記実施例 1 7と 同様に 2 4時間風呂のフィルタ一部に装着して使用した。 2力月後にわたって、 フィルタ一部におけるヌメリの発生状態を、 毎朝 7時に 3人でチェックした上 での合意により毎日判定したところ、一度もヌメリは発生しなかった。従って、 本発明に係る環境浄化剤のヌメリ抑制作用が証明された。 実施例 1 7 有機化合物分解試験
上記実施例 9で得た環境浄化剤 Bを、 ぺットの犬の糞尿を蓄積している土中 の容器に、 1力月にわたり毎日 1回 3 0 g程度を投入し、 同時に水を適量散布 し、 3〜5日に 1回攪拌した。 その間、 容器は通常通り使用し、 犬の糞尿を蓄 積した。 また、 比較のために、 別途、 環境浄化剤を用いない以外は同様の試験 を行なった。 糞尿は逐一半分とし、 実施例と比較例へそれぞれ等量ずつ蓄積し た。
試験開始後 1力月経過後、 本発明の環境浄化剤 Bを用いた場合には、 糞尿の 蓄積増加がほとんどない上に、 悪臭の発生も極めて少なかった。 一方、 環境浄 化剤 Bを用いなかった場合は、 糞尿の蓄積は数倍多く、 悪臭も発生した。 従つ て、 本発明に係る環境浄化剤は、 有害な有機化合物を分解できることが実証さ れた。 実施例 1 8 有機化合物分解試験
上記実施例 9で得た環境浄化剤 Bを、 台所の生ゴミを蓄積している土中の容 器に、 1力月にわたり毎日 1回生ゴミと共に 2 5 g程度を投入し、 同時に水を 適量散布し、 3〜5日に 1回攪拌した。 また、 比較のために、 別途、 環境浄化 剤を用いない以外は同様の試験を行なった。 生ゴミは 1日分を蓄積しておき、 それを半分にし、 実施例と比較例へそれぞれ等量ずつ蓄積した。
P2005/013443
試験開始後 1力月経過後、 本発明の環境浄化剤 Bを用いた場合には、 生ゴミ の蓄積増加がほとんどない上に、 悪臭の発生も極めて少なかった。 一方、 環境 浄化剤 Bを用いなかった場合は、 生ゴミの蓄積は数倍多く、 悪臭も発生した。 従って、 本発明に係る環境浄化剤は、 有害な有機化合物を分解できることが実 証された。 産業上の利用可能性
本発明の細菌は、 有害な化合物に対して優れた処理能力を有する。 例えば、 河川や海の富栄養化の原因となる有機化合物、窒素化合物、リン化合物の低減、 悪臭の抑制、 およびヌメリの原因物質の抑制といった極めて優れた効果を発揮 できる。 よって、 当該細菌を用いる本発明は、 環境を浄化できるものとして、 産業上極めて有用である。