WO2006001216A1 - 回転電機の外転型回転子 - Google Patents

Abstract

　本発明は、磁石挿入孔（１２）を有する回転子鉄心（８）と、磁石挿入孔（１２）に挿入された永久磁石（１４）とを備え、樹脂のモールド材（１８）により回転子鉄心（８）に対して永久磁石（１４）を一体化すると共に回転子鉄心（８）自体を一体化するようにした回転電機の外転型回転子において、樹脂を熱可塑性樹脂としたことを特徴とする。

Description

明 細 書

回転電機の外転型回転子

技術分野

[0001] 本発明は、回転子鉄心に形成された磁石挿入孔に永久磁石を挿入して構成される 回転電機の外転型回転子に関する。

背景技術

[0002] 回転電機例えばアウターロータタイプの永久磁石式電動機 (永久磁石型モータ）は 、 日本国公開特許公報平成 8年第 182282号に開示されているように、スロットにコィ ルが収納されてほぼ円筒状に形成された固定子と、この固定子の周囲にギャップを 介して対向するように位置した回転子とから構成されている。回転子の内周面には、 該内周面に沿つて円弧状に成形された複数の磁極用永久磁石が、例えば接着によ り固定されている。これにより、回転子に磁極が形成される。磁極用永久磁石には、 成形 (形状)の自由度が高ぐ高 、強度を有するフェライト磁石が広く使用されて 、る 発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0003] ところで、家電分野をはじめ種々の分野にぉ 、て機器の高効率ィ匕が要求されてお り、これに伴ってこれらの機器で用いられる回転電機の高効率ィ匕が必要となっている 。このため、希土類を含有し磁気特性が良好な磁石例えば Nd磁石 (ネオジム磁石） を磁極用永久磁石に用いた回転電機が供されている。 Nd磁石は、一般的に成形（ 形状)の自由度が低ぐ脆いため、通常は直方体に形成されている。そして、回転子 鉄心 (積層鉄心）に、上記 Nd磁石を挿入するための矩形状の磁石挿入孔を形成し、 この磁石挿入孔に Nd磁石を挿入することにより回転子が構成されている。

[0004] このように構成された回転子は磁気特性が高くなる反面、回転子鉄心に複数の磁 石挿入孔が形成されているため全体的な強度が低くなる。そこで、回転子鉄心の補 強および回転子鉄心と Nd磁石との固定のために、磁石挿入孔に Nd磁石を挿入した 状態で各部材を榭脂（モールド材）にて一体化するようになって!/、る。

[0005] 現在、この樹脂には、安価で流動性に優れた熱硬化性榭脂が使用されて!ヽる。し かし、熱硬化性榭脂は、その種類が少なぐ物性を向上させるために用いる添加剤の 種類も少ない等、その成形条件の設定幅が狭い。このため、榭脂の物性 (例えば強 度や流動性)を変化させにくい。従って、例えば積層枚数が多く強度の低い回転子 鉄心に対して熱硬化性榭脂を用いても、十分な補強および固定を行うことができない 場合があった。その結果、回転子ひいては回転電機の特性に悪影響を与える虞があ つた o

[0006] 本発明の目的は、強度の低い回転子鉄心であっても、十分に補強および回転子鉄 心と磁石との固定ができる回転電機の外転型回転子を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0007] 本発明は、磁石挿入孔を有する回転子鉄心と、前記磁石挿入孔に挿入された永久 磁石とを備え、榭脂のモールド材により前記回転子鉄心に対して前記永久磁石を一 体化すると共に前記回転子鉄心自体を一体化するようにした回転電機の外転型回 転子にお 1ヽて、前記榭脂を熱可塑性榭脂としたことを特徴とする。

発明の効果

[0008] 本発明の回転電機の外転型回転子は、榭脂を熱可塑性榭脂としてその物性を幅 広く変化させることができるので、強度の低い回転子鉄心であっても十分に補強およ び回転子鉄心と永久磁石との固定ができ、その寸法特性ひいては電気的特性を安 定ィ匕させることができる。

図面の簡単な説明

[0009] [図 1]図 1は本発明の一実施形態を示すもので、回転子の一部を拡大して示す破断 斜視図である。

[図 2]図 2は電動機の破断斜視図である。

[図 3]図 3は打抜き板を積層した状態および磁石の挿入方法を示す斜視図である。

[図 4]図 4は型内に位置した回転子の断面図である。

[図 5]図 5は榭脂の引張強さと各引張強さを持つ榭脂を用いた場合に維持できるギヤ ップとの関係を示す図である。

[図 6]図 6は榭脂の伸び率と耐ヒートショックとの関係を示す図である。

[図 7]図 7は榭脂の曲げ弾性強さと各曲げ弾性強さを持つ榭脂を用いた場合に維持 できるギャップとの関係を示す図である。

[図 8]図 8は榭脂の衝撃強さと各衝撃強さを持つ榭脂を用いた場合に維持できるギヤ ップとの関係を示す図である。

[図 9]図 9は Nd磁石による磁気吸引力を加えた場合におけるガラス繊維比率とギヤッ プとの関係を示す図である。

符号の説明

[0010] 5は回転子 (外転型回転子）、 8は回転子鉄心、 12は磁石挿入孔、 14は Nd磁石（ 永久磁石）、 18はモールド材である。

発明を実施するための最良の形態

[0011] 以下、本発明を外転型の永久磁石式電動機（回転電機）に適用した一実施形態に ついて図面を参照しながら説明する。

図 2は、電動機の一部を破断して示す斜視図である。図 2において、固定子 1は、 多数個のティース 2を放射状に有する固定子鉄心 3と、この固定子鉄心 3を覆うように 設けられた固定子用榭脂 Xと、各ティース 2に卷回された固定子卷線 4とから構成さ れている。

[0012] 外転型の回転子 5は、上面が開口した円形容器状をなす磁性体製のフレーム 6を 有している。フレーム 6の中心部には軸支持体 7が固定されている。フレーム 6の外周 部の開口側には環状壁 6aが設けられており、その環状壁 6aの内周に沿って回転子 鉄心 8が配置されている。この回転子鉄心 8は、電磁鋼板を打ち抜くことにより打抜き 板 9を形成し、この打抜き板 9を複数枚積層することにより構成されている。この回転 子鉄心 8の製造方法の詳細は後述する。なお、図 2には、説明の便宜上、後述する 榭脂は示していない。

[0013] 図 1は、回転子の一部を破断して示す斜視図であり、図 3は、打抜き板 9を積層した 状態および磁石の挿入方法を示している。図 1と図 3は、説明の便宜上、上下方向が 逆になつている。打抜き板 9は、円環状のヨーク部 10とその内周側に位置する磁極 部 11とを有し、これらヨーク部 10と磁極部 11との間には矩形状の磁石挿入孔 12 (12 a、 12b)が形成されている。この磁石挿入孔 12 (12a、 12b)には半円状の榭脂導入 部 10aも形成されている。打抜き板 9が積層されることにより、全体として直方体の磁 石挿入孔 12が形成される。また、磁極部 11は、ギャップ Yを挟んで上記固定子 1の 固定子鉄心 3と対向している。

[0014] 積層される打抜き板 9のうち、最初（図 3中、最下段）と最後（図 3中、最上段)の打抜 き板 9aと 9bには、ヨーク部 10と磁極部 11とを繋ぐブリッジ部 13が形成されている。最 初の打抜き板 9aは、他の打抜き板 9に形成された磁石挿入孔 12bよりも幅狭な磁石 挿入孔 12aを有している（図 1および図 4参照)。説明の便宜上、最初の打抜き板 9a は、図 1では最上段、図 4では最下段に位置している。

[0015] 回転子鉄心 8の磁石挿入孔 12には、図 3に示すように、永久磁石、例えば希土類 である Nd (ネオジム）を含有する磁性粉が焼結されて矩形状に成形された Nd磁石 1 4が矢印 A方向力ゝら揷入される。

[0016] 図 4は、射出成型機の型内に位置した回転子 5の断面構成を示している。回転子 鉄心 8は、磁石揷入孔 12に Nd磁石 14が挿入された状態で、上型 15および下型 16 によって形成されたキヤビティ 17内にスぺーサ Cを介して収納される。その際、フレー ム 6のうち環状壁 6aを含む外周部もキヤビティ 17内に収納される。そして、上型 15の 射出口 15aから、熱可塑性榭脂たるポリエチレンテレフタレート（PET)のモールド材 18が射出される。

[0017] これにより、モールド材 18が、磁石挿入孔 12と Nd磁石 14との間（特には榭脂導入 部 10a)、フレーム 6と回転子鉄心 8との間、およびフレーム 6の端面 6b (図 2または図 4参照）と両型 15、 16との間に流れ込む。このように各部材の全体を覆うようにモー ルドすることにより、打抜き板 9同士、回転子鉄心 8と Nd磁石 14、フレーム 6と回転子 鉄心 8およびフレーム 6と軸支持体 7がそれぞれ固定される。

[0018] ここで、モールド材 18の基材であるポリエチレンテレフタレートは、図 5〜図 8にそれ ぞれ破線と矢印を用いて示す範囲内のものが好適であり、以下その特性を詳細に説 明する。なお、図 5〜図 8に示すポリエチレンテレフタレートには 30重力％のガラス繊 維が添カ卩されている。

[0019] 図 5は、榭脂が持っている引張強さ (MPa)と、各引張強さを持つ榭脂を用いた場 合に維持できるギャップ Yの寸法 (mm)との関係を示している。ギャップ Yの寸法は、 永久磁石式電動機の特性に影響を与え、一般的に平均 1. Omm程度がよいとされて おり、最低でも 0. 6mm程度は必要とされている。従って、本実施形態で用いるポリエ チレンテレフタレートの物性は、回転子 5の内周方向へ lOOMPa程度の引張力（磁 気吸引力による内周方向の引張力を想定)をカ卩えた場合においても、 0. 6mm程度 のギャップ Yが維持できるものがよい。 lOOMPa程度の引張力をカ卩えてギャップ Yの 寸法が 0. 6mm程度を維持できないポリエチレンテレフタレートでは、回転子 5に対し て十分な補強や固定が行えない。図 5を参照すれば、本実施形態で用いるポリェチ レンテレフタレートは、少なくとも lOOMPa以上、好ましくは 120MPa以上の引張強さ を有している必要がある。

[0020] 図 6は、榭脂の伸び率（％)と耐ヒートショック（サイクル）との関係を示している。伸び 率は、榭脂の流動性に影響を与えるものであるため、一般的には 3. 0%以上がよい とされている。従って、本実施形態におけるポリエチレンテレフタレートの物性は、例 えば 200サイクル以上のヒートショックを与えても、 3. 0%程度好ましくは 3. 0%以上 の伸び率を維持できるものがよい。 3. 0%程度の伸び率が維持できないと、榭脂が キヤビティ 17内の隅々まで行き渡ることができず、回転子 5に対する確実な補強や固 定が行えな 、上、回転子鉄心 8との熱収縮の差によってクラック等が生じてしまう。

[0021] 図 7は、榭脂が持っている曲げ弾性強さ (GPa)と、各曲げ弾性強さを持つ榭脂を用 V、た場合に維持できるギャップ Yの寸法 (mm)との関係を示して 、る。この曲げ弹性 においても、本実施形態のポリエチレンテレフタレートの物性は、例えば回転子 5の 内周方向へ 6GPa程度の曲げ応力（磁気吸引力による内周方向の曲げ応力等を想 定）をカ卩えた場合においても、 0. 6mm程度のギャップ Yが維持できるものがよい。ギ ヤップ Yの寸法が 0. 6mm程度を維持できないポリエチレンテレフタレートでは、回転 子 5に対して十分な補強や固定が行えない。図 7を参照すれば、本実施形態で用い るポリエチレンテレフタレートは、少なくとも 6GPa以上、好ましくは 7GPa以上の曲げ 弾性強さを有して 、る必要がある。

[0022] 図 8は、榭脂の衝撃強さ CiZm)と、各衝撃強さを持つ榭脂を用いた場合に維持で きるギャップ Yの寸法 (mm)との関係を示している。この衝撃強さにおいても、本実施 形態のポリエチレンテレフタレートは、例えば回転子 5の内周方向へ 120jZm程度 の衝撃応力をカ卩えた場合においても、 0. 6mm程度のギャップ Yを維持できるものが よい。ギャップ Yの寸法が 0. 6mm程度を維持できないポリエチレンテレフタレートで は、回転子 5に対して十分な補強や固定が行えない。図 8を参照すれば、本実施形 態で用いるポリエチレンテレフタレートは、少なくとも 120jZm以上の衝撃強さを有し ている必要がある。

[0023] ここで、本実施形態で用いるモールド材 18の基材であるポリエチレンテレフタレート には、添加剤例えばガラス繊維のフィラーが添加されている。このときの、モールド材 18に対するガラス繊維の添加量 (ガラス繊維比率）について図 9を参照して説明する

[0024] 図 9は、回転子 5に対し Nd磁石 14による内周方向への磁気吸引力をカ卩えた場合 のガラス繊維比率 (重量％)とギャップ Y (mm)との関係を示している。ポリエチレンテ レフタレートに 20重力％〜40重量⁰ /₀程度のガラス繊維を添カ卩すると、 Nd磁石 14の 磁気吸引力が加わっても 0. 6mm程度のギャップ Yを維持でき、十分な強度を有す るモールド材 18を得ることができる。ガラス繊維比率が 20重量％未満だと物性の改 善があまり見られない。逆に 40重量％よりも多いと適度な流動性が得られず、これに よりキヤビティ 17内に空洞が生じ、回転子 5全体の強度が低下する虞がある。 20重力 %〜40重量％程度のガラス繊維が添加されたモールド材 18により、回転子鉄心 8と Nd磁石 14はキヤビティ 17内にて一体化される。

[0025] 以上説明したように本実施形態によれば、積層された回転子鉄心 8に磁石挿入孔 1 2を形成することにより回転子鉄心 8の強度が低下する場合でも、モールド材 18を用 いて回転子鉄心 8に対して Nd磁石 14を一体ィ匕すると共に回転子鉄心 8自体を一体 化するようにしたので、その補強や各部材の固定を行うことができ、回転子 5の寸法 特性ひいては永久磁石式電動機のトルク特性、回転数特性、消費電力特性、効率 等を安定させることができる。

[0026] モールド材 18の基材である榭脂を熱可塑性榭脂であるポリエチレンテレフタレート とし、この樹脂に 20重量％〜40重量％のガラス繊維を添加することにより、この榭脂 の物性を、引張強さ lOOMPa以上、伸び率 3. 0%以上、曲げ弾性強さ 6. OGPa以 上、衝撃強さ 120jZm以上とした。これにより、モールド材 18自体の強度が高められ 、磁気吸引力が作用しても最低限必要とされる 0. 6mm程度のギャップ Yを維持でき る。

[0027] また、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性榭脂は、その種類、添加剤の種類、 量等に応じて流動性を適度に調整できるため、型の合わせ目に生じるバリを低減す ることができる。さらに、熱可塑性榭脂は、熱硬化性榭脂と比較すると硬化時間を短 縮することができる。

[0028] なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなぐ例えば次のような 変形が可能である。

回転子 5は、フレーム 6を有さない構成としてもよい。

熱可塑性榭脂としては、ポリエチレンテレフタレートの他に例えばポリブチレンテレ フタレートなど図 5〜図 8に示した範囲内の物性を有するものであればよぐ添加剤も ガラス繊維のフィラーに限らず、基材の強度を適度に向上させるものであればょ 、。 産業上の利用可能性

[0029] 以上のように、本発明に力かる回転電機の外転型回転子は、回転子鉄心に磁石挿 入孔が形成される等により強度が低下した回転電機に有用である。

Claims

請求の範囲

[1] 磁石挿入孔（12)を有する回転子鉄心 (8)と、前記磁石挿入孔（12)に挿入された 永久磁石（14)とを備え、榭脂のモールド材（18)により前記回転子鉄心（8)に対して 前記永久磁石（14)を一体化すると共に前記回転子鉄心 (8)自体を一体化するよう にした回転電機の外転型回転子において、

前記榭脂を熱可塑性榭脂としたことを特徴とする回転電機の外転型回転子。

[2] 請求項 1の回転電機の外転型回転子において、

前記永久磁石（14)は、希土類を含有する磁性粉を焼結して形成されている。

[3] 請求項 1の回転電機の外転型回転子において、

前記樹脂の物性は、引張強さ lOOMPa以上、伸び率 3. 0%以上、曲げ弾性強さ 6 . OGPa以上、衝撃強さ 120jZm以上であり、この樹脂には 20重量％〜40重量％ のガラス繊維が添加されて 、る。

[4] 請求項 2の回転電機の外転型回転子において、

前記樹脂の特性は、引張強さ lOOMPa以上、伸び率 3. 0%以上、曲げ弾性強さ 6 . OGPa以上、衝撃強さ 120jZm以上であり、この樹脂には 20重量％〜40重量％ のガラス繊維が添加されて 、る。

[5] 請求項 1の回転電機の外転型回転子において、

前記榭脂はポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートである。

[6] 請求項 2の回転電機の外転型回転子において、

前記榭脂はポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートである。

[7] 請求項 3の回転電機の外転型回転子において、

前記榭脂はポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートである。

[8] 請求項 4の回転電機の外転型回転子において、

前記榭脂はポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートである。