明 細 書
糖ペプチド合成用高分子プライマー
技術分野
[0001] 本発明は、糖ペプチドを製造する際のプライマーとして有用な新規ィ匕合物、および そのプライマーを使用して糖ペプチドを製造する方法に関する。
背景技術
[0002] 糖は核酸や蛋白質と並んで生体を構成する主要な成分であるが、核酸や蛋白質と 比べ、その構造あるいは機能はあまりよく理解されていない。糖は、通常糖鎖と呼ば れる重合体を形成し、さらにそれらが蛋白質や脂質と結合して糖蛋白質、糖脂質ある いはプロテオダリカンと総称される極めて複雑な複合分子を形成している。さらに、核 酸ある!/ヽは蛋白質がその構成単位であるヌクレオチドある 、はアミノ酸が直線的に結 合した高分子であるのに対して、糖鎖は分子内に複数の分岐点があるば力りでなぐ その構成単位である単糖の結合様式も多様であるため、その構造は核酸や蛋白質と 比較にならないほど複雑である。これら構造の複雑さは、この分野の研究を遅らせて V、る大きな原因の一つとなって!/、る。
[0003] しかし、近年糖鎖が細胞認識、免疫、分化、受精、老化、ガンィ匕などに関与すること が徐々にわ力つてくるにつれて、非常に注目される研究分野となってきた。このような 現状より、天然の構造を有する糖鎖や新規な糖鎖を合成する試みが盛んになされて いる。また、最近では糖鎖構造が天然には存在しない糖ペプチドや糖鎖構造は天然 に存在するものであってもペプチドとの結合様式が天然のものとは異なる糖ペプチド あるいは適当なスぺーサーを介して糖鎖とペプチドを結合させた糖ペプチドなどのよ うな非天然型の糖ペプチドを合成し、天然の糖ペプチドとは異なるあるいは天然の糖 ペプチドにはない生理活性を見出そうとする研究も盛んに行われている。例えば、非 特許文献 1の非天然型の糖ペプチドは、セレクチンとインテグリン両方に結合できる サイトを有したユニークな化合物であり、該非天然型の糖ペプチドのオリゴ糖部分で あるシァリルルイス Xよりも強く P セレクチンや L セレクチンと結合することができ、 該非天然型の糖ペプチドのペプチド部分である Arg (アルギニン) Gly (グリシン)
— Glu (グルタミン酸) Ser (セリン)よりも強くインテグリン |8 1とそのモノクローナル抗 体との結合を阻害することができることを既に報告している (非特許文献 1参照)。上 記非天然型の糖ペプチドは、ペプチド部分を液相法で有機合成化学的手法により、 オリゴ糖部分は糖転移酵素を用いた酵素法により合成しているが、反応を 1つ行うご とに分離精製を行っているため、煩雑な操作と長い時間が必要である。
[0004] 一般に糖ペプチドの合成は、 Fmoc アミノ酸(アミノ基を 9 フルォレニルメチルォ キシカルボ-ル基で保護したアミノ酸、以下 9 フルォレニルメチルォキシカルボ- ル基を Fmocと略する)とともに Fmoc グリコシルアミノ酸を用い、ペプチド自動合成 装置で基本となるペプチド部分を固相担体上に合成し、固相担体よりペプチド部分 を遊離させ、一旦精製した後、有機化学的な合成手法により一つずつ糖鎖を伸長さ せて 、くと!/、う方法が用いられ、非天然型の糖ペプチドも同様の方法が用いられる。 そのため、糖鎖の伸長には多くの時間と煩雑な操作が必要となる。そこで、ペプチド 部分のみならず、オリゴ糖鎖部分も自動合成可能になれば非常に有用である。核酸 や蛋白質については自動合成技術が確立されており、このことによりこの分野の研究 が著しく進歩したことは誰もが認めるところであり、糖鎖についてもその自動合成技術 の確立は切望されている。
[0005] これまでに糖鎖の自動合成を試みたいくつかの報告があり、その手法は大きく分け て 2つある。 1つは化学合成によるものであるが、糖残基と糖残基を立体選択的に結 合させる方法が十分確立されておらず、さらに保護基を結合させたり、あるいは脱離 させたりと工程が煩雑であるという問題がある。もう 1つは酵素合成によるものであり、 保護基を必要とせず、また糖残基と糖残基を立体選択的に結合させることができるの で化学合成に比べ、非常に有利であり、近年いくつかの方法が提案されるようになつ てきた。これには、最近各種糖転移酵素の遺伝子が単離され、遺伝子組換え技術に よる糖転移酵素の大量生産が可能になってきたという背景がある。
[0006] そのような例としては、 U. Zehaviらは、アミノエチル基あるいはァミノへキシル基を 結合させたポリアクリルアミドゲルを固相担体とした糖転移酵素による固相合成を報 告している(非特許文献 2〜5参照)。この方法は、適当な単糖を 4 カルボキシ 2 -トロベンジルグリコシドとした後、上記担体のァミノ基と直接あるいはスぺーサー
を介して結合させたものをプライマーとして、糖転移酵素により糖鎖伸長反応を行な い、その後光分解により伸長させた糖鎖を遊離させるというものである。し力しながら、 糖転移収率は 50%程度であり十分なものとは言えない。また、この方法で得られるの はオリゴ糖であって糖ペプチドではな 、。
[0007] その他の例として、 C. — H. Wongらは、アミノィ匕シリカに糖ペプチドを結合させた ものをプライマーとし、糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させた後、 ocーキモトリブシン の加水分解作用を利用し伸長させた糖鎖を糖ペプチドの形で切り出す方法を報告し ている(非特許文献 6参照)。得られる糖ペプチドのペプチド鎖は Asn (ァスパラギン) — Gly (グリシン)—Phe (フエ-ルァラニン)である。しかしながら、糖転移酵素による 糖鎖伸長反応の収率は 55〜65%であり、とても十分なものとは言えない。
[0008] また、 C. —H. Wongらは、固相担体であるアミノ化シリカに結合させる基を改良し 、糖転移酵素により糖鎖を伸長させた後、ヒドラジン分解により糖鎖を遊離させる方法 を報告しており、酵素による糖転移反応をほぼ定量的に行うことができたとも報告して いる (非特許文献 7参照)。しかしながら、この方法で得られる糖鎖化合物は糖べプチ ドではない。
[0009] また、 M. Meldalらは、ジァミノ化ポリエチレングリコールのモノおよびジァクリロイル 化体の重合体に、糖ペプチド誘導体を結合させたものをプライマーとし、糖転移酵素 を用いて糖鎖を伸長させた後、トリフロロ酢酸により糖鎖を遊離させる方法を報告して おり、糖転移反応もほぼ定量的に進行したと報告している(非特許文献 8参照)。しか し、この方法で得られる糖ペプチドのペプチド鎖は Asn (ァスパラギン)—Gly (グリシ ン)であり、糖ペプチドと呼ぶにはあまりに短い。また、 C末側のグリシン残基はグリシ ンアミド残基となっており、場合によってはグリシンアミド残基をグリシン残基へ変換す る必要がある。
[0010] さらに、 C. — H. Wongらは、アミノ化シリカを固相担体とした非特許文献 9のプライ マーに Fmoc—アミノ酸および Fmoc—Thr ( j8 GlcNAc)—OHを用いてペプチド鎖 を伸長させ、次いでペプチド鎖上の保護基を脱離させ、その後上述の N—ァセチル ダルコサミン残基に糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させ、テトラキストリフエニルホス フィンパラジウムで処理することにより固相担体上で合成した糖ペプチドを遊離させる
方法を報告している (非特許文献 9参照)。この方法で得られる糖ペプチドのペプチド 鎖はアミノ酸残基 8つ力 なっており、ペプチド鎖としては十分な長さを有しているが 、得られた糖ペプチドの最初に固相担体に導入したアミノ酸に対する収率は 10%以 下であり、十分なものとは言えない。収率が低い原因の一つとして、用いた固相担体 がペプチド自動合成にはあまり適したものでな!、ことが挙げられる。ペプチドの自動 合成は通常有機溶媒中で行われ、糖転移酵素による糖鎖合成は通常水溶液中で行 われるため、それぞれの反応で求められる担体の性質は異なり、一つの担体上でぺ プチドも糖鎖も自動合成するのは困難である。
[0011] S. Rothらは、特許文献 1に以下のような方法を開示している。まず、糖転移酵素の 糖受容体を固相担体に結合させ、これをァフィ二ティ吸着体とし、この糖受容体と結 合することのできる糖転移酵素を含む組織抽出液を接触させることにより、糖転移酵 素をァフィ二ティ吸着体に結合させる。次いで、この糖転移酵素が結合したァフィ二 ティ吸着体をこの糖転移酵素が糖供与体として利用できる糖ヌクレオチドを含む溶液 と接触させることにより、糖転移酵素をァフィ-ティ吸着体力 遊離させるとともに糖受 容体に糖残基を一つ伸長させる。さらに、この糖残基が一つ伸長した糖受容体と結 合することのできる糖転移酵素を含む組織抽出液を接触させ、同様のことを繰り返し 所望の糖鎖を固相担体上に合成するというものである。し力しながら、この方法の有 用性あるいは非天然型の糖ペプチド合成への適用を示す具体的なデータは示され ておらず、得られた糖鎖を固相担体力 遊離させる方法も開示されていない。
[0012] 西村らは、特許文献 2に糖ペプチドあるいはネオ糖ペプチド (非天然型の糖ぺプチ ド)の合成に利用できるプライマーおよびそのプライマーを利用した糖ペプチドまた はネオ糖ペプチドの製造方法、ならびにそのプライマーの合成に有用な重合性芳香 族アミノ酸誘導体を開示している。しかし、この方法は、糖鎖が伸長した糖ペプチドま たはネオ糖ペプチドを遊離させる際にプロテアーゼを用いているため、精製が煩雑 で目的物の糖ペプチドの収率が低くなるという欠点を有する。
[0013] このように、精製工程が簡易で糖ペプチドを収率良く製造するためのプライマーは いまだに存在せず、この手法特有の上記欠点を克服した新しい技術は、ポストゲノム 、ポストプロテオミクス時代において非常に重要であり、その開発は渴望されている。
特許文献 1:特表平 5 - 500905号公報
特許文献 2:特開 2001— 220399
非特許文献 l : Chem. Commun. , 1435, (1999)
非特許文献 2 : Carbohydr. Res. , 124, 23 (1983)
非特許文献 3 : Carbohydr. Res. , 228, 255 (1992)
非特許文献 4:React. Polym. , 22, 171 (1994)
非特許文献 5 : Carbohydr. Res. , 265, 161 (1994)
非特許文献 6 :J. Am. Chem. Soc. , 116, 1136 (1994)
非特許文献 7 :J. Am. Chem. Soc. , 116, 11315 (1994)
非特許文献 8 :J. Chem. Soc. , Chem. Commun. , 1849 (1994)
非特許文献 9 :J. Am. Chem. Soc. , 119, 8766 (1997)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0014] 本発明の課題は、糖ペプチドを製造する際のプライマーとして有用な新規ィ匕合物、 およびそのプライマーを使用して糖ペプチドを製造する方法を提供することにある。 課題を解決するための手段
[0015] 本発明者らは鋭意検討した結果、目的の糖ペプチドを遊離させる方法として、ぺプ チド固相合成用の光切断型リンカ一をプライマー中に導入することに着目し、その光 切断型リンカ一を糖ペプチド残基に結合した新規ィ匕合物を合成した結果、この化合 物が糖ペプチドを効率よく製造できるプライマーとして機能することを見出し、上記課 題を解決した。
[0016] 従って、本発明は以下を提供する。
(1)以下の式:
X— C ( = 0)— Α— A (I)
1 2
(式中、 Xは水素原子または C〜Cアルキルを表し、 Aは光切断型リンカ一を表し、
1 3 1
Aは光に対する曝露により切断できる部位を含まない糖アミノ酸残基、または光に対
2
する曝露により切断できる部位を含まず、任意の糖アミノ酸を含む糖ペプチド残基を 表す)で表される、化合物。
(2)上記 A力 上記 Aの N末端、 C末端または側鎖に共有結合した、項目(1)に記
1 2
載の化合物。
(3) A力 以下の式:
[化 6]
(式中、 m、 ηおよび ρはそれぞれ独立して 1〜15の整数、 R1は水素原子または 〜 Cアルキル、 R2はヒドロキシル基またはアミノ基、 Αは NHまたは Oである)
3 3
で表される基である、項目(1)に記載の化合物。
(4) A 保護されていてもよい糖アミノ酸残基または保護されていてもよい 2〜30
2
個のアミノ酸残基よりなる糖ペプチド残基である、項目(1)に記載の化合物。
(5) [X— C ( = 0) ]で表される基 (式中、 Xは水素原子または C〜Cアルキルを表す
)を有する項目( 1)に記載の化合物と、該 [X— C ( = o) ]で表される基と特異的に反 応しうる保護されていてもよいアミノォキシ基、 N アルキルアミノォキシ基、ヒドラジド 基、アジド基、チォセミカルバジド基、およびシスティン残基からなる群から選択され る官能基を含む担体と、が反応して得られる、化合物。
(6)糖ペプチドを製造するためのプライマーとして使用される、項目(5)に記載の化 合物。
(7)上記担体は、以下:
a)アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸類、メタクリル酸類、スチレン類、お よび脂肪酸ビニルエステル類;
b)シリカ担体、榭脂担体および磁性ビーズ、金属担体;ならびに
c)以下の式:
[(而 OCH C( = 0)) -Lys] Lys— NHCH CH C ( = 0)— R3、
2 2 2 2 2 2
[(NH OCH C( = 0)) -Lys] Lys— NHCH (CH SH) C ( = 0)— R3、
2 2 2 2 2
[(NH OCH C( = 0)) -Lys] —Lys— Cys— NHCH CH C( = 0)—R3、
2 2 2 2 2 2
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] Lys— NHCH[C ( = 0)— R3]CH— S} 、
2 2 2 2 2 2
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] - Lys - NHCH [C( = 0) NHCH CH C( = 0)
2 2 2 2 2 2
-R3]CH -S} 、
2 2
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] -Lys} Lys— NHCH CH C ( = 0)— R3、
2 2 2 2 2 2 2
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] -Lys} —Lys— NHCH (CH SH) C ( = 0)—R
2 2 2 2 2 2
3
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] -Lys} Lys— Cys— NHCH CH C ( = 0)—
2 2 2 2 2 2 2
R3、
[[[(NH OCH C( = 0)) -Lys] -Lys] - Lys - NHCH [C ( = O) - R3] CH
2 2 2 2 2 2 s]、
2
[[[(NH OCH C( = 0)) -Lys] -Lys] - Lys - NHCH [C( = 0) NHCH CH
2 2 2 2 2 2
C( = 0)-R3]CH S] 、
[化 7]
[ (NH2 OCH2 C (=0) ) 2 -Ly s] -NHCHC ( = 0) -R 3
[ (NHa OCH2 C (=0) ) a -L y s] -NH (CH2 ) 4
または
{ [ (NH2 OCH2 C (=0) ) 2 -Ly s] 2 -Ly s } -NHCHC (=0) -R 3
( [ (KH2 OC[i2 C ( = 0) ) 2 - Ly s] 2 し y s} — NH (CH2 )
(式中、 R3はヒドロキシル基またはアミノ基を表し、 Lysはリジンを表し、 Cysはシスティ ンを表す)
で表される化合物、力もなる群力も選択される、項目(5)に記載の化合物。
(8)上記担体は、以下の式:
[化 8]
(式中、 nは 1〜15の整数であり、 x:yは 1:0〜1:1000である)
で表される、項目(5)に記載の化合物。
(9)以下の式:
A -N = C(-X)-A -A (II)
[式中、 Xは水素原子または C〜Cアルキルを表し、 Aは、以下の式:
1 3 1
[化 9]
(式中、 m、 nおよび pはそれぞれ独立して 1〜15の整数、 R1は水素原子または C〜 Cアルキル、 R2はヒドロキシル基またはアミノ基、 Aは NHまたは Oである)で表され
3 3
る基であり、
Aは、光に対する曝露により切断できる部位を含まない糖アミノ酸残基、または光
2
に対する曝露により切断できる部位を含まず、任意の糖アミノ酸を含む糖ペプチド残 基を表し、
Aは、以下の式:
,または
(式中、 sは 1〜15の整数であり、 : は1 : 0〜1 : 1000でぁる)で表される基でぁる] で表される化合物。
(10)項目(1)〜(9)のいずれかに記載の化合物を含む糖アミノ酸または糖ペプチド を製造するためのプライマー用組成物。
(11)以下の工程:
(A)項目(5)または(9)に記載の化合物に、糖ヌクレオチドの存在下で糖転移酵素 を作用させることにより、該糖ヌクレオチドより糖残基を該化合物に転移させ、糖鎖が 伸長された化合物を得る工程;および
(B)工程 (A)で得た糖鎖が伸長された化合物に光を照射する工程、
を包含する、糖ペプチドを製造する方法。
(12)工程 (B)における光は、紫外領域の波長を有する、項目(11)に記載の方法。
(13)以下の工程:
(A)項目(5)または(9)に記載の化合物に、糖ヌクレオチドの存在下で糖転移酵素 を作用させることにより、該糖ヌクレオチドより糖残基を該化合物に転移させ、糖鎖を 伸長された化合物を得る工程;
(B)工程 (A)を 1回または 2回以上繰り返して糖鎖を伸長させる工程;
(C)必要に応じて、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去す る工程;および
(D)複数の糖残基が転移して糖鎖が伸長した化合物に光を照射する工程、 を包含する、糖ペプチドを製造する方法。
(14)以下の工程:
(A)糖ペプチド残基を得る工程;
(B)工程 (A)で得られた糖ペプチド残基に光切断型リンカ一および所望により前記 担体を反応させ、項目(1)、(5)または(9)に記載の化合物を得る工程;
(C)工程 (B)で得られたィ匕合物に、糖ヌクレオチドの存在下で糖転移酵素を作用さ せることにより、糖ヌクレオチドより、糖残基を該化合物に転移させる工程;
(D)工程 (C)を 1回または 2回以上繰り返して糖鎖を伸長させる工程;
(E)必要に応じて、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去する 工程;および
(F)複数の糖残基が転移して糖鎖が伸長した化合物に光を照射することにより糖 鎖が伸長したィ匕合物を遊離させる工程、
を包含する、糖ペプチドを製造する方法。
発明の効果
[0022] 本発明によれば、光切断型リンカ一を糖ペプチド残基に結合した新規ィ匕合物をプ ライマーとして使用することにより、糖ペプチドを効率よく製造することができる。 図面の簡単な説明
[0023] [図 1]図 1は、本発明の光切断型プライマーの合成力ゝらそのプライマーによる糖ぺプ チドの製造までの手順を示す。図 1のプライマーは、糖ペプチド残基の N末端に光切 断型リンカ一が結合して得られるタイプの化合物である。
[図 2]図 2は、糖ペプチド残基の C末端に光切断型リンカ一が結合して得られるタイプ の化合物およびその合成手順を示す。
[図 3]図 3は、糖ペプチドを製造するためのプライマーとして有用な本発明の化合物 の合成経路を示す。
[図 4]図 4は、図 3に示した本発明の化合物を高分子担体に担持する方法、および担 持して得られる高分子プライマーについてのゲル濾過カラムクロマトグラフィーのチヤ ート図および1 H— NMR ^ベクトル図を示す。
[図 5]図 5は、本発明の高分子プライマーの光切断機能について確認した結果を示 す。
[図 6]図 6は、本発明の高分子プライマーの糖転移酵素(|8 1 , 4 - GalT)による糖転 移反応経路を示す。
[図 7]図 7は、本発明の高分子プライマーの糖転移酵素( ex 2, 3 - SiaT)による糖転 移反応経路を示す。
[図 8]図 8は、糖転移反応による糖鎖伸長後の本発明の光切断型プライマーから光 照射による糖ペプチドの切り出しおよび精製方法を示す。
発明を実施するための最良の形態
[0024] 以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及 しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書 において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味 で用いられることが理解されるべきである。
[0025] (用語)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
[0026] 本明細書において「光切断型リンカ一」とは、光に対して曝露した際に結合が切断 される部位を含む連結基を意味し、このリンカ一の一方の末端力 糖ペプチド残基の N末端、 C末端、または側鎖に共有結合されて、糖ペプチドを製造するためのプライ マーを構成する。該共有結合 (具体的には、 A -Aの間の共有結合)が、光に対する
1 2
曝露で切断される。本発明の光切断型リンカ一には、従来の米国特許第 5917016 号および同第 5739386号に開示されるペプチド、核酸合成用の光切断型リンカ一 およびその誘導体が用いられる。
[0027] 本発明において「光に対する曝露」とは、上で定義した光切断型リンカ一と糖ぺプ チドとの間の共有結合を切断するのに有効な波長 (好ましくは 300〜500nmの紫外 領域、より好ましくは 350〜400nmの紫外領域)および十分なエネルギーを有する
光に、切断するのに十分な時間さらすことを意味する。
[0028] 本明細書にぉ 、て「糖アミノ酸」とは、糖残基とアミノ酸残基とが結合したものを意味 し、「糖アミノ酸残基」と互換可能に用いられる。
[0029] 本明細書において「糖ペプチド残基」とは、少なくとも 1個の糖アミノ酸を含むぺプチ ド残基を意味し、「糖ペプチド」と互換可能に用いられる。
[0030] 上記糖ペプチド残基に含まれる糖アミノ酸を構成する糖残基としては、特に制限は ないが、単糖から 3糖または単糖から 3糖の誘導体が好ましぐ単糖または単糖の誘 導体がさらに好ましく用 、られる。
[0031] 本明細書において「単糖」とは、これより簡単な分子に加水分解されず、少なくとも 1 つの水酸基および少なくとも 1つのアルデヒド基またはケトン基を含む、ポリヒドロキシ アルデヒドまたはポリヒドロキシケトンならびにその誘導体をいう。通常単糖は、一般式
C H Oで表されるがそれらに限定されず、フコース(デォキシへキソース)、 N ァ n 2n n
セチノレグノレコサミンなども含まれる。ここで、上の式【こお!ヽて、 n= 2、 3、 4、 5、 6、 7、 8、 9および 10であるものを、それぞれジオース、トリオース、テトロース、ペントース、 へキソース、ヘプトース、オタトース、ノノースおよびデコースという。一般に鎖式多価 アルコールのアルデヒドまたはケトンに相当するもので、前者をアルドース、後者をケ トースという。
[0032] 本明細書において特に言及するときは、「単糖の誘導体」は、置換されていない単 糖上の一つ以上の水酸基が別の置換基に置換され、結果生じる物質をいう。そのよ うな単糖の誘導体としては、カルボキシル基を有する糖 (例えば、 C—1位が酸化され てカルボン酸となったアルドン酸(例えば、 D—グルコースが酸化された D ダルコン 酸)、末端の C原子がカルボン酸となったゥロン酸(D グルコースが酸化された D— グルクロン酸)、アミノ基またはァミノ基の誘導体 (例えば、ァセチルイ匕されたァミノ基) を有する糖 (例えば、 N ァセチル— D—ダルコサミン、 N ァセチル— D ガラタト サミンなど)、アミノ基およびカルボキシル基を両方とも有する糖 (例えば、 N ァセチ ルノイラミン酸 (シアル酸)、 N ァセチルムラミン酸など)、デォキシィ匕された糖 (例え ば、 2—デォキシ D リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸ィ匕 糖などがあるがそれらに限定されない。本明細書では、単糖という場合は、上記誘導
体も包含する。あるいは、へミアセタール構造を形成した糖において、アルコールと 反応してァセタール構造のグリコシドもまた、単糖の範囲内にある。
[0033] 本発明の糖ペプチド残基を構成するアミノ酸残基は分子内にアミノ基とカルボキシ ル基を有するものであれば特に制限はなぐ Gly (グリシン)、 Ala (ァラニン)、 Val (バ リン)、 Leu (ロイシン)、 lie (イソロイシン)、 Tyr (チロシン)、 Trp (トリプトファン)、 Glu ( グルタミン酸)、 Asp (ァスパラギン酸)、 Lys (リジン)、 Arg (アルギニン)、 His (ヒスチ ジン)、 Cys (システィン)、 Met (メチォニン)、 Ser (セリン)、 Thr (トレオニン)、 Asn ( ァスパラギン)、 Gin (グルタミン)または Pro (プロリン)残基などの a—アミノ酸残基あ るいは j8—Ala残基のような |8—アミノ酸残基などが例示される。また、アミノ酸残基 は D体、 L体いずれでもよいが、 L体の方が好ましい。糖ペプチド残基としては、上述 したアミノ酸残基または 2〜30個力もなる糖ペプチド残基が好ま U 、。 4〜20個から なる糖ペプチド残基がさらに好まし 、。
[0034] 上で定義した本発明の糖アミノ酸は、上に列挙したアミノ酸残基と糖残基とが理論 上結合することができればその組み合わせに特に制限はな 、が、好まし 、組み合わ せとして、 Asn— (CH ) - l a GlcNAcゝ Asn— (CH ) ~ 1 β GlcNAcゝ Gin— (C
2 n 2 n
H ) - l a GlcNAc, Gin— (CH ) ~ 1 β GlcNAc, Ser- 1 a GlcNAc, Ser- 1
2 n 2 n
j8 GlcNAc, Thr- 1 a GlcNAc, Thr— 1 β GlcNAc, Asn— 1 a GlcNAc, Asn— 1 β GlcNAcゝ Ser— 1 a GalNAcゝ Ser— 1 β GalNAcゝ Thr— 1 a GalNAcゝ Thr — 1 j8 GalNAcゝ Asn— 1 a GalNAcゝ Asn— 1 β GalNAcゝ Ser— 1 a Glc、 Ser— 1 j8 Glc、 Thr- 1 a Glc、 Thr— 1 β Glc、 Asn— 1 a Glc、 Asn— 1 β Glc、 Ser— 1 a Gal、 Ser— 1 j8 Gal、 Thr— 1 a Gal、 Thr— 1 β Gal、 Asn— 1 a Gal、 Asn— 1 j8 Ga 1、 Ser— 1 Man, Ser— 1 β Man, Thr— 1 Man, Thr— 1 β Man, Asn— 1 α M anゝ Asn- 1 β Man, Ser— 1 a GalNAc3— 1 β Gal、 Ser— 1 β GalNAc3— 1 β G al、 Thr- 1 a GalNAc3 - l β Gal, Thr— 1 β GalNAc3 - l β Gal, Ser— 1 a Gal NAc (3— 1 j8 Gal) 6 - 1 β GlcNAcゝ Ser— 1 β GalNAc (3— 1 j8 Gal) 6— 1 β Glc NAcゝ Thr- 1 a GalNAc (3— 1 j8 Gal) 6— 1 j8 GlcNAcゝ Thr— 1 β GalNAc (3— 1 β Gal) 6 - 1 β GlcNAc, Ser— 1 a GalNAc3— 1 β GlcNAc, Ser— 1 β GalNA c3 - l j8 GlcNAc, Thr- 1 a GalNAc3—1 β GlcNAc, Thr- 1 β GalNAc 3 - 1
β GlcNAc, Ser- 1 a GalNAc (3— 1 j8 GlcNAc) 6— 1 β GlcNAc、 Ser- 1 j8 Ga IN Ac (3— 1 j8 GlcNAc) 6— 1 j8 GlcNAcゝ Thr— 1 a GalNAc (3— 1 j8 GlcNAc) 6— 1 β GlcNAcゝ Thr-ljS GalNAc (3~1β GlcNAc) 6~1β GlcNAcゝ Ser— 1 a GalNAc3-l a GalNAc, Ser— 1 β GalNAc3— 1 a GalNAcゝ Thr— 1 a Gal NAc3— 1 a GalNAcゝ Thr— 1 GalNAc3— 1 a GalNAcゝ Ser— 1 a GalNAc6 -1β GlcNAc, Ser-ljS GalNAc6 ~1β GlcNAcゝ Thr— 1 a GalNAc6 ~1β GlcNAcゝ Thr- 1 GalNAc6— 1 GlcNAcゝ Ser— 1 a GalNAc6— 1 a GalNA cゝ Ser— 1 β GalNAc6-l a GalNAcゝ Thr— 1 a GalNAc6— 1 a GalNAcゝ Thr -1β GalNAc6-l a GalNAc, Ser— 1 a GalNAc3-l a Gal, Ser— 1 GalN Ac3-1 a Gal、 Thr— 1 a GalNAc3-l a Gal、 Thr— 1 β GalNAc3-l a Gal、 Asn— 1 a GlcNAc4— 1 β GlcNAc、 Asn— 1 β GlcNAc4— 1 β GlcNAc、 Asn— 1 a GlcNAc4— 1 GlcNAc4— 1 Manゝ Asn— 1 GlcNAc4— 1 GlcNAc4 — 1 j8 Man, Asn— 1 a GlcNAc4-l β GlcNAc4-l β Man6— 1 a Man, Asn — 1 j8 GlcNAc4— 1 β GlcNAc4— 1 β Man6— 1 a Manゝ Asn— 1 a GlcNAc4— 1 GlcNAc4— 1 Man3-1 a Manゝ Asn— 1 GlcNAc4— 1 GlcNAc4— 1 j8Man3-l aMan, Asn— 1 a GlcNAc4— 1 j8 GlcNAc4— 1 j8 Man(3— 1 α M an) 6-1 a Manゝ Asn—1β GlcNAc4 ~1 β GlcNAc4 ~1 β Man (3-1 a Man) 6-1 a Man, Ser— 1 a Xyl、 Ser— 1 j8 Xyl、 Thr— 1 a Xyl、 Thr— 1 β Xyl、 Ser— 1 a Xyl4-1 β Gal, Ser— 1 β Xyl4— 1 β Gal, Thr— 1 a Xyl4— 1 β Gal, Thr— 1 β Xyl4-1 β Gal、 Ser— 1 aXyl4— 1 β Gal3— 1 β Gal, Ser— 1 β Xyl4— 1 β Ga 13— 1 j8 Gal, Thr— 1 «Xyl4-l β Gal3— 1 β Gal, Thr— 1 β Xyl4— 1 β Gal3— 1 β Gal、 Ser— 1 aXyl4— 1 β Gal3— 1 β Gal3— 1 β GlcA、 Ser— 1 β Xyl4— 1 β Gal3— 1 j8 Gal3— 1 j8 GlcAゝ Thr— 1 a Xyl4 1 j8 Gal3— 1 j8 Gal3 ~1β Glc A、 Thr- 1 β Xyl4-1 β Gal3— 1 β Gal3— 1 β GlcAゝ Ser— 1 aXyl4— 1 β Gal3— 1 β Gal3-1 β GlcA4— 1 a GlcNAcゝ Ser— 1 β Xyl4— 1 β Gal3— 1 β Gal3— 1 β GlcA4 -la GlcNAcゝ Thr— 1 a Xyl4 ~1β Gal3 ~1β Gal3 ~1β GlcA4 1 a GlcNAcゝ Thr— 1 j8 Xyl4— 1 β Gal3— 1 β Gal3— 1 β GlcA4— 1 a GlcNAc, Ser- la Xyl4— 1 β Gal3 ~1β Gal3 ~1β GlcA3 -la GalNAcゝ Ser— 1 j8 Xyl
4- 1 β Gal3 - 1 β Gal3— 1 β GlcA3— 1 a GalNAcゝ Thr— 1 a Xyl4— 1 β Gal3 - 1 β Gal3 - 1 β GlcA3 - l a GalNAcゝ Thr— 1 β Xyl4— 1 β Gal3— 1 β Gal3— 1 β GlcA3 - l a GalNAcゝ Ser— 1 a Xyl4 1 j8 Gal3— 1 j8 Gal3 ~ 1 β GlcA4 1 β GalNAcゝ Ser— 1 j8 Xyl4— 1 β Gal3— 1 β Gal3— 1 β GlcA4— 1 β GalNAc 、 Thr- 1 « Xyl4- l β Gal3— 1 β Gal3— 1 β GlcA4— 1 β GalNAc, Thr— Ι β Χ yl4- l j8 Gal3 - 1 β Gal3— 1 β GlcA4— 1 β GalNAcが挙げられる。ここで、 nは 1 〜10の整数を表し、 Galはガラクトースを表し、 Glcはグルコースを表し、 Manはマン ノースを表し、 Xylはキシロースを表し、 GlcNAcは N ァセチル一 D—ダルコサミン を表し、 GalNAcは N ァセチル— D ガラクトサミンを表し、
本明細書にぉ 、て「N末端」とは、ペプチド主鎖の末端に位置する置換されて!、て もよいアミノ基を意味する。
[0035] 本明細書にぉ 、て「C末端」とは、ペプチド主鎖の末端に位置する置換されて!、て もよ 、カルボキシル基を意味する。
[0036] 本明細書において「側鎖」とは、ペプチド主鎖の延びる方向と直交する方向にぺプ チド主鎖から延びた官能基またはその官能基を含む部分を意味する。
[0037] 本明細書において「プライマー」とは、酵素反応において反応開始のきっかけをつ くる作用を有する物質を意味する。
[0038] 本明細書にぉ 、て「転移酵素」とは、基転移反応を触媒する酵素の総称を 、う。本 明細書において、「転移酵素」は「トランスフェラーゼ」と互換可能に使用され得る。基 転移反応は、以下の式(1) :
X-Y+Z-H X-H + Z-Y (1)
に示すように、一つの化合物 (供与体)から基 Yが他の化合物 (受容体)に転移する 形で行われる。
[0039] 本明細書において「糖転移酵素」とは、糖 (上記式(1)の基 Yに相当;単位糖または 糖鎖)をある場所 (上記式(1)の化合物 X— Yに相当)から別の場所 (上記式( 1)の化 合物 Z— Hに相当)へと転移させるよう触媒する作用を有する酵素をいう。糖転移酵 素としては、例えば、ガラクトース転移酵素、グルコース転移酵素、シアル酸転移酵 素、マンノース転移酵素、フコース転移酵素、キシロース転移酵素、 N ァセチルダ
ルコサミン転移酵素、および N—ァセチルガラタトサミン転移酵素などが挙げられるが それらに限定されない。
[0040] 本発明にお ヽて「糖鎖伸長反応」とは、上で定義した糖転移酵素の存在下で糖鎖 の鎖長が伸長する反応をいう。
[0041] 本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。
そのような生体分子を含む試料を、本明細書にぉ 、て特に生体試料と 、うことがある 。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイ ルスなどを含むがそれらに限定されない。従って、生体分子は、生体から抽出される 分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体分 子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴぺプチ ド、ペプチド、糖ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、糖ヌク レオチド、核酸(例えば、 cDNA、ゲノム DNAのような DNA、 mRNAのような RNAを 含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子 (例えば、ホルモン、リガンド、 情報伝達物質、有機低分子など)、これらの複合分子などが包含されるがそれらに限 定されない。本明細書では、生体分子は、好ましくは、糖鎖または糖鎖を含む複合分 子 (例えば、糖タンパク質、糖脂質など)であり得る。
[0042] そのような生体分子の供給源としては、生物由来の糖鎖が結合または付属する材 料であれば特にその由来に限定はなぐ動物、植物、細菌、ウィルスを問わない。より 好ましくは動物由来生体試料が挙げられる。好ましくは、例えば、全血、血漿、血清、 汗、唾液、尿、膝液、羊水、髄液等が挙げられ、より好ましくは血漿、血清、尿が挙げ られる。生体試料には個体から予め分離されていない生体試料も含まれる。例えば 外部から試液が接触可能な粘膜組織、あるいは腺組織、好ましくは乳腺、前立腺、 脾臓に付属する管組織の上皮が含まれる。
[0043] 本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」 および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸 のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよぐ環状であって もよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよぐ改変されたァ ミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとァセンブ
ルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたァミノ 酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフイド結合形成、ダリ コシル化、脂質化、ァセチル化、リン酸ィ匕または任意の他の操作もしくは改変(例え ば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の 1または 2以上 のアナログを含むポリペプチド (例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様 化合物(例えば、ぺプトイド)および当該分野にお!、て公知の他の改変が包含される
[0044] 本明細書にぉ 、て、「糖ヌクレオチド」とは、上で定義した糖残基が結合したヌクレ ォチドを意味し、本発明で用いる糖ヌクレオチドは、上記酵素が利用できるものであ れば特に限定されない。例えば、ゥリジン 5'—ジリン酸ガラクトース、ゥリジンー5, —ジリン酸— N ァセチルダルコサミン、ゥリジン— 5,—ジリン酸— N ァセチルガラ クトサミン、ゥリジンー5,ージリン酸グルクロン酸、ゥリジンー5,ージリン酸キシロース、 グアノシン 5,ージリン酸フコース、グアノシン 5,ージリン酸マンノース、シチジン — 5,一モノリン酸一 N ァセチルノイラミン酸およびこれらのナトリウム塩などが挙げ られる。
[0045] (有機化学)
有機化学については、例えば、 Organic Chemistry, R. T. Morrison, R. N. Boyd 5th ed. (1987年)などに記載されており、これらは本明細書において関連 する部分が参考として援用される。
[0046] 本明細書においては、特に言及がない限り、「置換」は、ある有機化合物または置 換基中の 1または 2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう 。水素原子を 1つ除去して 1価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原 子を 2つ除去して 2価の置換基に置換することも可能である。
[0047] 本明細書にぉ 、て「アルキル」とは、メタン、ェタン、プロパンのような脂肪族炭化水 素(アルカン)力も水素原子が一つ失われて生ずる 1価の基をいい、一般に C H
n 2n+ l 一で表される(ここで、 nは正の整数である)。アルキルは、直鎖または分枝鎖であり得 る。本明細書において「置換されたアルキル」とは、以下に規定する置換基によって アルキルの Hが置換されたアルキルをいう。これらの具体例は、 C1〜C2アルキル、
C1〜C3アルキル、 C1〜C4アルキル、 C1〜C5アルキル、 C1〜C6アルキル、 C1 〜C7アルキル、 C1〜C8アルキル、 C1〜C9アルキル、 C1〜C10アルキル、 Cl〜 C11アルキル、 C1〜C12アルキル、 C1〜C15アルキル、 C1〜C2置換されたアル キル、 C1〜C3置換されたアルキル、 C1〜C4置換されたアルキル、 C1〜C5置換さ れたアルキル、 C1〜C6置換されたアルキル、 C1〜C7置換されたアルキル、 Cl〜 C8置換されたアルキル、 C1〜C9置換されたアルキル、 C1〜C10置換されたアル キル、 C1〜C11置換されたアルキル、 C1〜C12置換されたアルキルまたは C1〜C 15置換されたアルキルであり得る。ここで、例えば C1〜C10アルキルとは、炭素原 子を 1〜: L0個有する直鎖または分枝状のアルキルを意味し、メチル (CH―)、ェチ
3 ル(C H ―)、 n—プロピル(CH CH CH ―)、イソプロピル((CH ) CH―)、 n—
2 5 3 2 2 3 2 ブチル(CH CH CH CH 一)、 n—ペンチル(CH CH CH CH CH 一)、 n—へ
3 2 2 2 3 2 2 2 2
キシル(CH CH CH CH CH CH 一)、 n—へプチル(CH CH CH CH CH CH
3 2 2 2 2 2 3 2 2 2 2
CH— )、 n—才クチノレ(CH CH CH CH CH CH CH CH— )、 n—ノニノレ(CH
2 2 3 2 2 2 2 2 2 2 3
CH CH CH CH CH CH CH CH 一)、 n デシル(CH CH CH CH CH CH
2 2 2 2 2 2 2 2 3 2 2 2 2 2
CH CH CH CH 一)、 C (CH ) CH CH CH (CH ) 、 一 CH CH (CH )など
2 2 2 2 3 2 2 2 3 2 2 3 2 が例示される。また、例えば、 C1〜C10置換されたアルキルとは、 C1〜C10アルキ ルであって、そのうち 1または複数の水素原子が置換基により置換されているものを いう。
[0048] 本明細書にぉ 、て「保護反応」とは、 Boc (t—ブトキシカルボ-ル基)のような保護 基を、保護が所望される官能基に付加する反応をいう。保護基により官能基を保護 することによって、より反応性の高い官能基の反応を抑制し、より反応性の低い官能 基のみを反応させることができる。
[0049] 本明細書にぉ ヽて「脱保護反応」とは、 Bocのような保護基を脱離させる反応を ヽぅ 。脱保護反応としては、トリフルォロ酢酸 (TFA)による反応および PdZCを用いる還 元反応のような反応が挙げられる。
[0050] 本明細書にぉ 、て「保護基」としては、例えば、フルォレニルメトキシカルボ-ル(F moc)基、ァセチル基、ベンジル基、ベンゾィル基、 t—ブトキシカルボ-ル基、 tーブ チルジメチル基、シリル基、トリメチルシリルェチル基、 N—フタルイミジル基、トリメチ
ルシリルェチルォキシカルボ-ル基、 2— -トロー 4, 5—ジメトキシベンジル基、 2— ニトロ—4, 5—ジメトキシベンジルォキシカルボ-ル基、力ルバメート基などが代表的 な保護基として挙げられる。保護基は、例えば、アミノ基、カルボキシル基などの反応 性の官能基を保護するために用いることができる。反応の条件や目的に応じ、種々 の保護基を使 ヽ分けることができる。アミノォキシ基および N—アルキルアミノォキシ 基の保護基として、トリメチルシリルェチルォキシカルボ-ル基、 2— -トロ— 4, 5— ジメトキシベンジルォキシカルボ-ル基またはそれらの誘導体が好ましい。
[0051] 本発明の各方法において、目的とする生成物は、反応液から夾雑物 (未反応減量 、副生成物、溶媒など)を、当該分野で慣用される方法 (例えば、抽出、蒸留、洗浄、 濃縮、沈澱、濾過、乾燥など)によって除去した後に、当該分野で慣用される後処理 方法 (例えば、吸着、溶離、蒸留、沈澱、析出、クロマトグラフィーなど)を組み合わせ て処理して単離し得る。
[0052] (本明細書にぉ 、て用いられる一般技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当 該分野の技術範囲内にある、有機化学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物 学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術 は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した 文献にお!ヽても十分に説明されて!ヽる。
[0053] 本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手 法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、 Maniatis, T. e t al. (,1989) . Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその 3rd Ed. (2001); Ausubel, F. M. , et al. eds, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Inc. , NY, 101 58 (2000) ;Innis, M. A. (1990) . PCR Protocols : A Guide to Methods and Applications, Academic Press ;Innis, M. A. et al. (1995) . PCR St rategies, Academic Press ; Sninsky, J. J. et al. "999) . PCR Application s : Protocols for Functional Genomics, Academic Press ; Gait, M. J. ( 1985) . Oligonucleotide Synthesis : A Practical Approach, IRL Press ; G
ait, M. J. (1990) . Oligonucleotide Synthesis : A Practical Approach, IR L Press ; Eckstein, F. (1991) . Oligonucleotides and Analogues : A Prac tical Approac , IRL Press ; Adams, R. L. et al. (1992) . The Biochemis try of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al. (19 94) . Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim ; Blac kburn, G. M. et al. (1996) . Nucleic Acids in Chemistry and Biology , Oxford University Press; Hermanson, G. T. (1996) . Bioconjugate Te chniques, Academic Press ; Method in Enzymology 230、 242、 247、 Ac ademic Press, 1994 ;別冊実験医学「遺伝子導入 &発現解析実験法」羊土社、 1 997 ;畑中、西村ら、糖質の科学と工学、講談社サイェンティフイク、 1997 ;糖鎖分子 の設計と生理機能 日本化学会編、学会出版センター、 2001などに記載されており 、これらは本明細書において関連する部分 (全部であり得る)が参考として援用される
[0054] (好ま 、実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本 発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に 限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参 酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
[0055] 1つの局面において、本発明は、以下の式:
X— C ( = 0)— A — A (I)
1 2
(式中、 Xは水素原子または C〜Cアルキルを表し、 Aは光切断型リンカ
1 3 1 一を表し、
Aは光に対する曝露により切断できる部位を含まない糖アミノ酸残基、または光に対
2
する曝露により切断できる部位を含まず、任意の糖アミノ酸を含む糖ペプチド残基を 表す)で表される化合物を提供する。これをプライマーとして使用することにより、糖べ プチドを効率よく製造することができる。上記式 (I)の化合物は、光切断型リンカ一の 末端にアルデヒド基またはケトン基を必ず有するため、保護されて ヽてもよ ヽアミノォ キシ基を含む担体、保護されて ヽてもよ ヽ N -アルキルアミノォキシ基を含む担体、 ヒドラジド基を含む担体、アジド基を含む担体、チォセミカルバジド基を含む担体、シ
スティン残基を含む担体およびそれらの誘導体を含む担体を反応させて、上記式 (I )の化合物を担体上に担持し、高分子プライマーとして使用することができる。 Aで 表される光切断型リンカ一は、 Aで表される糖ペプチド残基の N末端、 C末端または
2
側鎖のいずれの部位に共有結合されていてもよぐ目的物の糖ペプチドの収率に有 意な差はない。
[0056] 好ましい実施形態において、本発明における光切断型リンカ一は、以下の式: [0057] [化 11]
で表される基であり、 m、 nおよび pはそれぞれ独立して 1〜15の整数、 R1は水素原 子または C〜Cアルキル、 R2はヒドロキシル基またはアミノ基、 Aは NHまたは Oで
1 3 3 ある。
さらに好ましい実施形態において、上記式 (I)の化合物の糖ペプチド残基は、保護
されて 、てもよ 、2〜30個のアミノ酸残基よりなる。
[0059] 本発明で用いることのできる高分子担体は、式 (I)で表される基を結合させることが でき、かつ結合後以下で述べるような糖転移酵素の作用により一般式 (I)で表される 基の糖残基にさらなる糖残基を転移させることのできるものであれば特に制限はなく 、例えば、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸類、メタクリル酸類、スチレン 類、脂肪酸ビニルエステル類などのビニルイヒ合物の重合体または共重合体、以下の 式:
[0060] [化 12]
(xは 1〜15の整数、好ましくは 1〜8の整数、特に好ましくは 3であり、 yは 1〜15の整 数、好ましくは 1〜8の整数、特に好ましくは 1である)で表されるシリカ担体、榭脂担 体および磁性ビーズ、金属担体 (式中、〇は、シリカ、榭脂、磁性ビーズ、金属担体 を表す)、ならびにペプチド合成で使用する Maps (Multiple Antigen peptide s ystems)法と類似した担体;例えば、以下の式:
[(而 OCH C( = 0)) -Lys] Lys— NHCH CH C ( = 0)— R3
2 2 2 2 2 2
[(NH OCH C( = 0)) -Lys] Lys— NHCH (CH SH) C ( = 0)— R3、
2 2 2 2 2
[(NH OCH C( = 0)) -Lys] —Lys— Cys— NHCH CH C( = 0)—R3、
2 2 2 2 2 2
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] Lys— NHCH[C ( = 0)— R3]CH— S} 、
2 2 2 2 2 2
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] - Lys - NHCH [C( = 0) NHCH CH C( = 0)
2 2 2 2 2 2
-R3]CH -S} 、
2 2
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] -Lys} Lys— NHCH CH C ( = 0)— R3、
2 2 2 2 2 2 2
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] -Lys} —Lys— NHCH (CH SH) C ( = 0)—R
{[(NH OCH C( = 0)) -Lys] Lys} — Lys— Cys— NHCH CH C ( = 0)—
2 2 2 2 2 2 2
R3、
[[[(NH OCH C( = 0)) -Lys] -Lys] - Lys - NHCH [C ( = O) - R3] CH
2 2 2 2 2 2 s] 、
2
[[[(NH OCH C( = 0)) -Lys] -Lys] - Lys - NHCH [C( = 0) NHCH CH
2 2 2 2 2 2
C( = 0)-R3]CH S] 、
2 2 2
[0061] [化 13]
[ (NH OCH2 C (=0) ) -Ly s ] 一 NHCHC (=0) -R 3
[ (NH2 OCH2 C (=0) ) "Ly s] — NH (CH2 )
または
I [ (NH2 OCH2 C (=0) ) 2 - Ly s] 2 — Ly s l -NHCHC ( = 0) - R3 { [ (NII2 OCH2 C (=0) ) 2 — Ly s] 2 — Ly s} — NH (CH2 )
(式中、 R3はヒドロキシル基またはアミノ基を表し、 Lysはリジンを表し、 Cysはシスティ ンを表す)
で表される化合物などが挙げられる。
[0062] アクリルアミド類としてはアクリルアミド、 N—ェチルアクリルアミドゃ N—イソプロピル アクリルアミドなどの N—アルキルアクリルアミドなどが例示される。
[0063] メタクリルアミド類としては、メタクリルアミド、 N—メチルメタクリルアミドゃ N—ェチル メタクリルアミド、 N—イソプロピルメタクリルアミドなどの N—アルキルメタクリルアミドな どが例示される。
[0064] アクリル酸類としては、アクリル酸やアクリル酸メチル、アクリル酸ェチル、アクリル酸 ヒドロキシェチル、アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアクリル酸エステルなどが例 示される。
[0065] メタクリル酸類としてはメタクリル酸ゃメタクリル酸メチル、メタクリル酸ェチル、メタタリ ル酸ヒドロキシェチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステルな どが例示される。
[0066] スチレン類としては、スチレン、 p—ヒドロキシスチレン、 p—ヒドロキシメチルスチレン などが例示される。
[0067] 脂肪酸ビュルエステルとしては、酢酸ビニル、酪酸ビニルなどが例示される。また、 本発明中の脂肪酸ビニルエステルの重合体あるいは共重合体には、重合反応後ァ ルカリなどによりエステル結合を全部あるいは一部加水分解したものも含まれる。
[0068] ここで ヽぅ高分子担体は水不溶性、水溶性!/、ずれであってもよ!/ヽが、水溶性の方が 好ましい。一般的な分子量は約 10000〜約 5000000であり、好ましくは 20000〜2 000000、より好まし <は 50000〜 1000000である。その形態は、水不溶性担体の 場合、ビーズ状、繊維状、膜状、フィルム状などが挙げられるが、特に制限されない。
[0069] さらに好ましい担体としては、以下の式:
[0070] [化 14]
は
で表される高分子担体が挙げられる。ここで、 ηは 1〜15の整数であり、好ましくは 1 〜10であり、より好ましくは 1〜5である。 x:yの比率は 1 : 0〜1 : 1000であり、好ましく は 1 : 0〜1 : 100である。高分子担体の分子量は、約 10000〜約 5000000であり、 好まし <は 20000〜2000000、より好まし <は 50000〜 1000000である。
別の好ましい実施形態において、本発明は、以下の式:
A -N = C (-X) -A -A (II)
4 1 2
[式中、 Xは水素原子または C〜Cアルキルを表し、 Aは、以下の式:
[化 15]
(式中、 m、 nおよび pはそれぞれ独立して 1〜15の整数であり、好ましくは、 1〜10で あり、より好ましくは 1〜5である。 R1は水素原子または C〜Cアルキルであり、 R2はヒ
1 3
ドロキシル基またはアミノ基であり、 Aは NHまたは Oである)で表される基であり、
3
Aは、光に対する曝露により切断できる部位を含まない糖アミノ酸残基、または光
2
に対する曝露により切断できる部位を含まず、任意の糖アミノ酸を含む糖ペプチド残 基を表し、
Aは、以下の式:
[0073] [化 16]
または
(式中、 sは 1〜15の整数であり、好ましくは 1〜10であり、より好ましくは 1〜5である。 : は1 : 0〜1: 1000であり、好ましくは 1 : 0〜1: 100である)で表される基である] で表される化合物を提供する。
[0074] 別の局面において、本発明は、上記項目(1)〜(9)のいずれかに記載の化合物を 含む糖アミノ酸または糖ペプチドを製造するためのプライマー用組成物を提供する。
[0075] 糖ペプチドを製造するためのプライマーとして有用な本発明の化合物の合成、およ びその化合物を高分子担体に担持することによる高分子プライマーの合成の一般的 手順は、図 1に示される。図 1は、糖ペプチド残基の N末端に光切断型リンカ一を結 合させる手順を示し、図 2は、糖ペプチド残基の C末端に光切断型リンカ一が結合さ せる手順を示す。
[0076] 本発明の化合物の一般的な合成および精製は、以下:
1)保護アミノ酸および予め合成した保護基を有する糖アミノ酸を原料にペプチド固 相合成を行い、得られるペプチド末端に光切断型リンカ一を反応させて、光切断型リ ンカーが結合した糖ペプチド (糖鎖'アミノ酸保護体)を合成する (必要に応じて、アミ ノ酸カップリング反応の各工程の後にキヤッビング反応、すなわちアミノ酸カップリン グ未反応物を不活化する反応を行う);
2)酸処理によって、光切断型リンカ一が結合した糖ペプチドを固相担体力 遊離さ せると同時にアミノ酸側鎖の保護基を脱保護する(酸処理によってアミノ酸側鎖の保 護基が脱離しない場合は、別途脱保護反応により該保護基を脱保護すればよい);
3)反応液、もしくはエーテル沈殿法によって得た混合物を HPLCによって精製し、光 切断型リンカ一が結合した糖ペプチド (糖鎖保護体)を単離する;
4)糖鎖の保護基の脱保護をする;
5) HPLCで精製し、光切断型リンカ一が結合した糖ペプチドを単離する
との手順で行われる。この方法は、糖アミノ酸を含まないペプチドの合成においても、 適用可能であり、その場合、 4)の工程は省かれる。
[0077] このようにして得られた光切断型リンカ一が結合した糖ペプチドから高分子プライマ 一の合成および精製は、以下:
6)上記で得られた糖ペプチド (リンカ一付加体)と高分子担体とを反応させる;
7)ゲル濾過カラムクロマトグラフィーによって精製し、高分子プライマーを得る、 との手順で行われる。
[0078] 本発明の化合物の別の一般的な合成および精製は、以下:
1)保護アミノ酸および予め合成した保護基を有する糖アミノ酸を原料にペプチド固 相合成を行い、得られるペプチド末端に光切断型リンカ一を反応させて、光切断型リ ンカーが結合した糖ペプチド (糖鎖'アミノ酸保護体)を合成する (必要に応じて、アミ ノ酸カップリング反応の各工程の後にキヤッビング反応、すなわちアミノ酸カップリン グ未反応物を不活化する反応を行う);
2)酸処理によって、光切断型リンカ一が結合した糖ペプチドを固相担体力 遊離さ せると同時にアミノ酸側鎖の保護基を脱保護する(酸処理によってアミノ酸側鎖の保 護基が脱離しない場合は、別途脱保護反応により該保護基を脱保護すればよい);
3)糖鎖の保護基の脱保護をする;
4) 3)の糖ペプチドを含む反応液に高分子担体を導入して選択的に糖ペプチドと反 応させる;
5)光切断型リンカ一を介して担体に結合した糖ペプチドをゲル濾過もしくは透析、限 外濾過等によって精製する;
6)光切断型リンカ一を介して担体に結合した糖ペプチドに光照射し、糖ペプチドを 遊離させ、担体を除き、目的の糖ペプチドを単離する、
との手順で行われる。
[0079] この手順によれば、各工程を単離せず、ワンポットで高分子プライマーまで導くこど ができる。このようにして得られた光切断型リンカ一が結合した糖ペプチドから高分子 プライマーの合成および精製は、以下:
1)保護アミノ酸および予め合成した保護基を有する糖アミノ酸を原料にペプチド固 相合成を行い、得られるペプチド末端に光切断型リンカ一を反応させて、光切断型リ ンカーが結合した糖ペプチド (糖鎖'アミノ酸保護体)を合成する (必要に応じて、アミ ノ酸カップリング反応の各工程の後にキヤッビング反応、すなわちアミノ酸カップリン グ未反応物を不活化する反応を行う);
2)酸処理によって、光切断型リンカ一が結合した糖ペプチドを固相担体力 遊離さ せると同時にアミノ酸側鎖の保護基を脱保護する(酸処理によってアミノ酸側鎖の保 護基が脱離しない場合は、別途脱保護反応により該保護基を脱保護すればよい);
3)糖鎖の保護基の脱保護をする;
4) 3)の糖ペプチドを含む反応液に高分子担体を導入して選択的に糖ペプチドと反 応させる;
5)光切断型リンカ一を介して担体に結合した糖ペプチドをゲル濾過もしくは透析、限 外濾過等によって精製し、プライマーを得る、
との手順で行われる。
[0080] 図 3および図 4は、代表的な本発明の化合物の合成を例示する、特にこれらに限定 されない。
[0081] 本発明の糖ペプチドを製造する方法は、以下の工程:
(A)上記項目(5)または(9)に記載の化合物に、糖ヌクレオチドの存在下で糖転移 酵素を作用させることにより、該糖ヌクレオチドより糖残基を該化合物に転移させ、糖 鎖が伸長されたィ匕合物を得る工程;および
(B)工程 (A)で得た糖鎖が伸長された化合物に光を照射する工程、
を包む。
[0082] 好ましい実施形態において、工程 )における光は、紫外領域の波長を有する。こ の波長領域を選択することにより、光切断型リンカ一と糖ペプチド残基との結合を効 果的に切断することができる。
[0083] 必要に応じて、工程 (A)および (B)のいずれかの工程の前または後において、ィ匕 合物の脱保護処理が行われる。
[0084] 本発明で用いる糖転移酵素は、糖ヌクレオチド類を糖供与体として利用できるもの であればよいが、好ましい例として、 β ΐ, 4 ガラクトース転移酵素、 3—ガラ クトース転移酵素、 13 1 , 4 ガラクトース転移酵素、 /3 1, 3—ガラクトース転移酵素、 β ΐ, 6 ガラクトース転移酵素、 α 2, 6 シアル酸転移酵素、 《1, 4 ガラクトース 転移酵素、セラミドガラタトース転移酵素、 ひ 1, 2 フコース転移酵素、 ひ 1, 3 フコ ース転移酵素、 α ΐ, 4 フコース転移酵素、 《1, 6 フコース転移酵素、 《1, 3— Ν ァセチルガラタトサミン転移酵素、 《1, 6— Ν—ァセチルガラタトサミン転移酵素 、 β 1, 4 Ν ァセチルガラタトサミン転移酵素、ポリペプチド Ν ァセチルガラクト サミン転移酵素、 /3 1, 4 Νァセチルダルコサミン転移酵素、 13 1, 2—Νァセチルダ ルコサミン転移酵素、 β ΐ, 3— Νァセチルダルコサミン転移酵素、 β ΐ, 6— Νァセチ ルダルコサミン転移酵素、 α ΐ, 4— Νァセチルダルコサミン転移酵素、 13 1 , 4 マン ノース転移酵素、 α 1, 2 マンノース転移酵素、 《1, 3 マンノース転移酵素、 《1 , 4 マンノース転移酵素、 α ΐ, 6 マンノース転移酵素、 α ΐ, 2 グルコース転移 酵素、 α ΐ, 3 グルコース転移酵素、 α 2, 3 シアル酸転移酵素、 α 2, 8 シアル 酸転移酵素、 α ΐ, 6—ダルコサミン転移酵素、 《1, 6 キシロース転移酵素、 βキ シロース転移酵素(プロテオダリカンコア構造合成酵素)、 13 1, 3—グルクロン酸転移 酵素、ヒアルロン酸合成酵素、他の糖ヌクレオチドを糖ドナーとして用いる糖転移酵 素およびドルコールリン酸型糖ドナーを用いる糖転移酵素が挙げられる。
[0085] 別の好ましい実施形態において、本発明の糖ペプチドを製造する方法は、以下:
(Α)上記項目(5)または(9)に記載の化合物に、糖ヌクレオチドの存在下で糖転移 酵素を作用させることにより、該糖ヌクレオチドより糖残基を該化合物に転移させ、糖 鎖を伸長されたィ匕合物を得る工程;
(Β)工程 (Α)を 1回または 2回以上繰り返して糖鎖を伸長させる工程;
(c)必要に応じて、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去す る工程;および
(D)複数の糖残基が転移して糖鎖が伸長した化合物に光を照射する工程、 を包む。
[0086] さらに別の好ましい実施形態において、本発明の糖ペプチドを製造する方法は、以 下:
(A)糖ペプチド残基を得る工程;
(B)工程 (A)で得られた糖ペプチド残基に光切断型リンカ一および Zまたは担体 を反応させ、上記項目(1)、(5)または(9)に記載の化合物を得る工程;
(C)工程 (B)で得られたィ匕合物に、糖ヌクレオチドの存在下で糖転移酵素を作用さ せることにより、糖ヌクレオチドより、糖残基を該化合物に転移させる工程;
(D)工程 (C)を 1回または 2回以上繰り返して糖鎖を伸長させる工程;
(E)必要に応じて、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去する 工程;および
(F)複数の糖残基が転移して糖鎖が伸長した化合物に光を照射する工程、 を包む。
[0087] 本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、そ の全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援 用される。
[0088] 以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきた力 本発 明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求 の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、 本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に 基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引 用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載さ れているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであるこ とが理解される。
実施例
[0089] 本明細書で用いられる略語は、以下のような意味を有する。
[0090] Z基 =ベンジルォキシカルボ-ル基
Boc基 = tert ブトキシカルボ-ル基
Fmoc基 = 9 フルォレニルメトキシカルボ-ル基
Pbf基 = 2, 2, 4, 6,
—スルホ -ル基
EEDQ = 1 エトキシカルボニル 2—エトキシ 1 , 2 ジヒドロキノンリン、 HOBt= 1ーヒドロキシベンズトリァゾール、
HBTU= 1 - (ビス(ジメチルァミノ)メチレン)一ベンゾトリアゾリゥム 3 ォキシド へキサフルォロリン酸塩。
[0091] APS =ペルォキソ二硫酸アンモ-ゥム
TEMED = N, N, Ν' , Ν,一テトラメチルエチレンジァミン
(実施例 1:末端にケトン基を含む光切断型リンカ一の合成)
(1. 1 化合物(1)の合成)
[0092] [化 17]
1—アミノープロパン一 2—オール 10gを 166gの 4. 8%水酸化ナトリウム水溶液に 溶解させ、氷冷下で冷却する。 Zクロリド 27. 3gを滴下し、 30分攪拌した。その後室 温まで昇温させ、塩酸で pH2. 5に調整し、さらに酢酸ェチルを加えた。有機層を水 洗、抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に酢酸ェチルを減圧留去した。その後シ リカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を行って目的物を得た(96%)。 'Η-Ν MR (CDC1 ) : 6 7. 45 - 7. 20 (m, 5H) , 5. 187 (br, 1H) , 5. 105 (s, 2H) , 3.
3
913 (br, 1H) , 3. 384, 3. 375, 3. 361, 3. 349, 3. 334, 3. 322, 3. 310, 3. 299 (ddd, 1H) , 3. 107, 3. 088, 3. 079, 3. 057, 3. 037, 3. 028, 3. 007 (
ddd, 1H) , 2. 220 (br, 1H) , 1. 194, 1. 170 (d, 3H)
[0093] (1. 2 化合物(2)の合成)
[0094] [化 18]
14. Ogの DMSOをジクロロメタン 90mlに溶かして一 60°C以下に冷却した。 28. 4 gのトリフルォロ酢酸無水物のジクロロメタン溶液を滴下し、約 30分攪拌した。その後 、化合物(1) 18. 8gのジクロロメタン溶液を滴下し、さらに 30分攪拌した。トリェチル ァミン 36mlを滴下し、室温までゆっくりと昇温させた。約 180mlの水をカ卩えた後、有 機層を水洗、抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に溶媒を減圧留去した。その後 シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を行って目的物を得た(91%)。 ¾ — NMR (CDC1 ) : 6 7. 45- 7. 20 (m, 5H) , 5. 459 (br, 1H) , 5. 114 (s, 2H)
3
, 4. 108, 4. 091 (d, 2H) , 2. 185 (s, 3H)。
[0095] (1. 3 化合物(3)の合成)
[0096] [化 19]
2
化合物(2) 10. 4gを約 100mlメタノールに溶解し、 15. 9gのオルトギ酸トリメチル、 0. 095gの p—トルエンスルホン酸一水和物を添カ卩した。その後 2. 5時間加熱還流し 、冷却後、メタノールを減圧留去させた。得られた残澄に酢酸ェチルおよび水を加え 、有機層を水洗、抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に酢酸ェチルを減圧留去
した。その後シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を行って目的物を得た (
96%)。 — NMR(CDQ ): δ 7. 40— 7. 20 (m, 5H), 5. 105 (s, 2H), 4. 8
3
86 (br, 1H), 3. 355, 3. 333 (d, 2H), 3. 203 (s, 6H), 1. 289 (s, 3H)。
[0097] (1. 4 化合物(4)の合成)
[0098] [化 20]
化合物(3) 1. 27gをメタノール 20ml〖こ溶解し、 10%Pd CO. 127gを加えた。攪 拌しながら約 1時間水素を導入して Z基の脱保護を行った。濾過によって Pd—C粉末 を除去し、得られた濾液に 1. 35gの 4 [4— (1—ヒドロキシ—ェチル)—2—メトキシ —5 二トロ一フエノキシ]—酢酸と 1. 85gの EEDQを加え、さらに 4N塩酸で弱酸性 (pH5〜5. 5)として約 14. 5時間室温で攪拌した。反応終了後、メタノールを減圧留 去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を行って目的物を得た( 50%)。 — NMR(CDC1 ): δ 7. 606 (s, IH) , 7. 384 (s, IH) , 6. 921 (br, 1
3
H) , 5. 630, 5. 615, 5. 606, 5. 594, 5. 583, 5. 570, 5. 546 (qd, IH) , 4. 5 65 (s, IH) , 4. 009 (s, 3H) , 3. 503, 3. 481 (d, 2H) , 3. 236 (s, 6H) , 2. 485 , 2. 472 (d, IH) , 1. 565, 1. 541 (d, 3H) , 1. 277 (s, 3H)。
[0099] (1. 5 化合物(5)の合成)
[0100] [化 21]
ィ匕合物(4) 0. 86gをジクロロメタン 20mlに溶解し、 0. 41gの 1, 1 ,一力ノレボニノレビ スジイミダゾールを添加し、室温で約 14時間攪拌した。その後水 30mlを加え、有機 層を水洗、抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に溶媒を減圧留去し、 目的物の 粗精製物を得た。これ以上の精製を行うことなく次反応へ用いた。 'H-NMRCCDC 1 ): δ 8. 166 (s, 1H) , 7. 656 (s, 1Η) , 7. 446, 7. 440, 7. 435 (dd, 1H) , 7.
3
11 - 7. 09 (dd, 1H) , 7. 048 (s, 1H) , 6. 858 (br, 1H) , 6. 754, 6. 731, 6. 7 07, 6. 683 (q, 1H) , 4. 595 (s, 2H) , 3. 964 (s, 3H) , 3. 506, 3. 485 (d, 2H ) , 3. 228 (s, 6H) , 1. 841, 1. 817 (d, 3H) , 1. 271 (s, 3H)。
[0101] (1. 6 化合物(6)、 (7)の合成:末端にケトン基を含む光切断型リンカ一のアミノ酸
(プロリン)への導入)
[0102] [化 22]
化合物(5)粗精製物 1. 46g (2. 3mmol相当量)を 80%DMF水溶液 20mlへ溶解 し、 0. 79gの L—プロリンを添カ卩した。さらに 0. 23gの N—メチルモルホリンを力卩ぇ室 温で約 46時間攪拌した。反応終了後、水を添加して 1N塩酸で pHを 2〜3へと調整 し、さらに酢酸ェチルを加えた。有機層を水洗、抽出後、水を加えて飽和炭酸水素ナ
トリウム水溶液で pH8〜9へと調節することによって目的物を水層へ転溶した。水層 を酢酸ェチルで洗浄し、酢酸ェチル層を水洗して得られた各水層を合併後、酢酸ェ チルを加え、 1N塩酸で pH2〜3へと調整することによって再び目的物を有機層へと 転溶した。その後、有機層を水洗、抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に溶媒を 減圧留去し、化合物(6)と化合物(7)の混合粗精製物を得た H—NMRより 化合 物(6):化合物(7) = 78: 22)。これ以上の精製することなく次反応へ用いた。目的物 の同定は、 — NMRおよび MALDI— TOF/MSで 536. 7および 490. 7に化合 物(6)と化合物(7)それぞれに対応する [M (average) +Na] +のピーク(理論値:化 合物(6) [M (average) +Na]
+ = 536. 5、化合物(7) [M (average) +Na] + = 49 0. 4)を確認することによって行った。化合物(6)と化合物(7)の混合物でも次反応 に影響は無ぐまた最終的にすべてケトン体へと変換するため混合物のまま用いた。
[0103] (実施例 2 :糖アミノ酸および糖ペプチドの合成)
(2. 1 化合物(9)の合成)
[0104] [化 23]
化合物(8) 2· 7gを 120mlメタノールに溶解し、 0· 27gの 10%Pd— Cをカ卩えた。攪 拌しながら約 1時間水素を導入して Z保護基の脱保護を行った。濾過によって Pd— C 粉末を除去し、溶媒を減圧留去した。得られた残澄に 80mlのエタノールをカ卩ぇ溶解 し、 2. Ogの Fmoc— Asp— OtBuと 1· 85gの EEDQをカ卩え、やく 65時間室温で攪 拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、残澄をシリカゲルカラムクロマトグラフィー
によって精製を行って目的物を得た(51.4%)。 'H-NMRCCDCl ) : 67. 719, 7
3
. 753 (d, 2H), 7. 620, 7. 602 (br, 2H), 7.417, 7. 399, 7. 380 (t, 2H) , 7. 33-7. 26 (br, 2H), 6.417(br, 1H), 6. 337, 6. 318(d, 1H), 6. 215, 6. 194(d, 1H), 5. 108, 5. 088 (d, 2H), 4. 60— 4. 20(m, 6H) , 4. 20-3. 90 (m, 4H), 3. 70— 3. 30 (m, 3H), 3. 25— 3. 00 (br, 1H), 2. 95— 2. 65 (br, 1H), 2. 15— 1. 96 (m, 14H), 1.488 (s, 9H)。
[0105] (2. 2 化合物(10)の合成)
[0106] [化 24]
1.49gの化合物(9)を 30mlの 50%TF Aジクロロメタン溶液へ溶解し、室温で約 2 時間攪拌した。その後溶媒を減圧留去し、ジェチルエーテルを加えて沈殿化させ、 生じた沈殿を濾取して目的物の粗精製物を得た。さらに粗精製物に酢酸ェチルと水 を添加し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で pH8〜9へと調節することによって目的 物を水層へ転溶した。水層を酢酸ェチルで洗浄し、酢酸ェチル層を水洗して得られ た各水層を合併後、酢酸ェチルをカ卩え、 1N塩酸で ρΗ1〜2へと調整することによつ て再び目的物を有機層へと転溶した。その後、有機層を水洗、抽出し、硫酸マグネシ ゥムで乾燥した後に溶媒を減圧留去し、 目的物を得た(75%)。 'H-NMRCde-D MSO): δ 7. 952, 7. 917 (d, 1H), 7. 901, 7. 875 (d, 2H), 7. 825 (t, 1H), 7. 710, 7. 683 (d, 2H), 7. 562, 7. 532 (d, 1H), 7.445, 7. 418, 7. 393 (d d, 2H), 7. 350, 7. 323, 7. 295 (dd, 2H), 5. 104, 5. 067, 5. 030 (t, 1H), 4. 858, 4. 821, 4. 786 (t, 1H), 4. 593, 4. 561 (d, 1H), 4.40—4. 15 (m, 6H), 4. 10-3. 90 (dd, 1H), 3. 80— 2. 80 (m, 5H), 2. 70— 2.40 (m, 2H)
, 2. 002 (s, 3H) , 1. 963 (s, 3H) , 1. 909 (s, 3H) , 1. 762 (s, 3H) 1. 603 (br , 2H) 0
[0107] (2. 3 化合物(11)の合成:糖ペプチドの合成と光切断型リンカ一の導入)
[0108] [化 25]
Rink Amide resin (0. 61mmol/ g : Novabiochem製)を担体として以下に示 す N—保護アミノ酸を FmocZHBTUZHOBt法で順次縮合し、 目的の糖ペプチド 誘導体を合成した。 Fmoc -Ala-OH, Fmoc— Thr (tBu)— OH,化合物(10) , F moc-Gly-OH, Fmoc -Pro -OH, Fmoc -Ala-OH, Fmoc -Pro -OH, F moc— Arg (Pbf)— OH, Fmoc -Pro -OH,化合物(6)と化合物(7)の混合物。 ペプチド伸長反応後、 90%TFA水溶液中、室温で 2時間反応させることによってぺ プチド残基上の保護基、光切断型リンカ一のジメチルァセタール保護基を脱離させ ると共に固相担体上力 化合物(11)を遊離させた。榭脂を濾別し、 TFAを揮発留去 した後、ジェチルエーテルを加えて沈殿を生じさせた。遠心分離機によって固液分 離し、得られた固体を逆相 HPLC (Inertsil登録標章 ODS— 3 20 X 250mmカラ ム、移動層 A: 0. 1%TFA水溶液に対する B : 0. 1%TFA含有ァセトニトリルの 10% から 50%のグラジェント)により精製して化合物(11)を得た (収量 40mg)。 目的物の 同定は、MALDI—TOFZMSで[M (average) +H] + = 1716. 5, [M (average) + Na] + = 1738. 6, [M (average) +K] + = 1754. 2 (理論値: [M (average) +H ] + = 1716. 8, [M (average) +Na] + = 1738. 6, [M (average) +K] + = 1754. 9)を確認することによって行った。
[0109] (2. 4 化合物(12)の合成)
[0110] [化 26]
化合物(11) 30mgをメタノール 10mlに溶解し、さらに 1N水酸ィ匕ナトリウム水溶液 を 150 1加えて室温で 1. 5時間攪拌した。反応終了後、 H+型陽イオン交換榭脂 D owex50WX8 (ダウケミカル社製)を加えて中和した後、濾過によって榭脂を除き、濾 液の溶媒を留去して残った残渣を逆相 HPLC (Inertsil登録標章 ODS— 3 20 X 250mmカラム、移動層 A: 0. 1%TFA水溶液に対する B : 0. 1%TFA含有ァセトニ トリルの 10%から 50%のグラジェント)により精製して目的とする光切断型リンカ一付 加糖ペプチド誘導体を得た (収量 25mg、収率 67%)。 目的物の同定は、 MALDI- TOFZMSで [M (average) +H] + = 1590. 6, [M (average) +Na] + = 1612. 6 , [M (average) +K] + = 1628. 5 (理論値: [M (average) +H] + = 1590. 7, [M (average) +Na] + = 1612. 6, [M (average) +K] + = 1628. 8)を確認することに よって行った。
[0111] (実施例 3 :アミノォキシ基含有高分子の合成)
(3. 1 化合物(13)の合成)
[0112] [化 27]
HO-NH,■ HCI ÷ (Boc)20 HO-— Boc
MeOH
13 ヒドロキシルァミン塩酸塩 2. 78gをメタノールに溶解し、 4. 55gのトリエチルァミンを 添加して氷冷下で冷却した。 4. 37gの二炭酸ジ— t—ブチルをァセトニトリルに溶解 した溶液を滴下し、 2. 5時間攪拌した後、室温まで昇温した。溶媒を留去した後に酢 酸ェチルと水を加え、有機層を水洗、抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に酢酸 ェチルを減圧留去した。その後シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を行 つて目的物を得た(72%)。 'H-NMRCCDCl ): δ 1. 473 (s, 9H) 0
3
[0113] (3. 2 化合物(14)の合成)
[0114] [化 28]
11. 7gの 6—アミノー 1—へキサノールを 200mlの水に溶解し、 50%水酸化ナトリ ゥム水溶液 12gを添加した。氷冷下で冷却後、アクリル酸クロリド 10. 8gを滴下した。 約 30分攪拌後、室温まで昇温し、さらに 30分攪拌した。反応終了後、酢酸ェチルを 加え、有機層を水洗、抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に酢酸ェチルを減圧 留去した。その後シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を行って目的物を 得た(40%)。 — NMR(CDC1 ) : 6 6. 309, 6. 303, 6. 246, 6. 239 (dd, 1H)
3
, 6. 143, 6. 106, 6. 081, 6. 043 (dd, 1Η) , 5. 853 (br, 1H) , 5. 647, 5. 64 1, 5. 611, 5. 605 (dd, 1H) , 3. 654, 3. 631, 3. 608 (br, 2H) , 3. 371, 3. 3 45, 3. 323, 3. 297 (dd, 2H) , 1. 862 (br, 1H) , 1. 62—1. 45 (m, 4H) , 1. 4
3- 1. 24 (m, 4H)。
[0115] (3. 3 化合物(15)の合成)
[0116] [化 29]
15 化合物(14) 1. Ogを 50mlのジクロロメタンに溶解し、さらにトリェチルァミン 0. 71g を添カ卩した。約 10°C前後に冷却後、メタンスルホユルクロリド 0. 74gのジクロロメタン 溶液を滴下した。 45分攪拌後、リチウムプロミド 1. 52gを投入し室温までし昇温後、 1 1時間攪拌した。さらに 5時間、 50°Cで加熱還流した後室温まで冷却した。溶媒を減 圧留去して酢酸ェチルと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、有機層を水洗、抽 出し、硫酸マグネシウムで乾燥した後に酢酸ェチルを減圧留去した。その後再結晶 によって精製を行って目的物を得た(86%)。 — NMR(CDC1 ) : 6 6. 311, 6. 3
3
05, 6. 248, 6. 242 (dd, 1H) , 6. 131, 6. 094, 6. 068, 6. 030 (dd, 1H) , 5. 655, 5. 648, 5. 617, 6. 611 (dd, br, 2H) , 3. 431, 3. 405, 3. 381 (t, 2H) , 3. 376, 3. 350, 3. 328, 3. 301 (dd, 2H) , 1. 915, 1. 889, 1. 865, 1. 836, 1. 811 (dt, 2H) , 1. 62- 1. 30 (m, 6H)。
[0117] (3. 4 化合物(16)の合成)
上
[τε^] [Oslo]
( 士 掣 9 ·ε) [6Π0] °(H6 's)08 Ί '(Η8 '^)θε Ί-ZL Ί ' (UZ ' ρρ)862 ·ε '£Ζ£ ·ε '9^ε ·ε Ίζε ·ε '(HS '¾9ΐ8 ·ε ' 8 ·ε ' 98 ·ε '(ΗΙ '
ΡΡ)069 '9 '969 '9 '929 '9 ' S9 '9 '(ΗΙ ' ) 696 '9 '(ΗΙ 'ΡΡ)Ζ10 ·9 'ΟΙΙ •9 '9SI ·9 'ZLI ·9 '(ΗΙ 'ΡΡ)9^2 ·9 '£ Ζ ·9 '60S ·9 '9IS ·99 : Πθαθ)Ή
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91
na
30g_N-OE 30g-N-OH
[οε^] [8πο]
69C800/S00Zdf/X3d ZV
MSO水溶液 15mlに溶解し、さらに N, Ν, Ν', N,一テトラメチルエチレンジァミン( TEMED) 101 μ 1を添カ卩して 50°C〜60°Cに加熱後、ペルォキソ二硫酸アンモ-ゥ ム (APS)61.2mgを投入した。 50°Cで 6時間攪拌後、室温まで冷却し、反応液を透 析チューブ(三光純薬 (株)製、 UC20— 32— 100、 Size: 20/32)に導入して水中 で低分子を除去した。その後チューブ内の水溶液を凍結乾燥して目的物を得た (収 量 539mg)。 — NMR(D O): δ 3.756, 3.740, 3.724 (t) , 3.052 (br), 2.
2
30-1.90 (br), 1.80—1.15(br), 1.350(s)。 — NMRより、共重合比は約 m:n= 1:24と見積もった。
[0121] (3.6 高分子(18)の合成)
[0122] [化 32]
高分子(17)34mgを lmlの 4N塩酸に溶解し、室温で 3.5時間攪拌した。その後 4 N水酸化ナトリウム水溶液約 lmlと 50mM酢酸 Z酢酸ナトリウム緩衝液 lmlで pH5〜 5.5に調節し、合計約 3mlの高分子(18)水溶液を得た。このうち 1.5mlを次反応に 用いた。
[0123] (実施例 4:糖ペプチド合成用水溶性高分子プライマーの合成 (高分子(19)および 化合物(20)の合成))
[0125] [化 34]
化合物(12) 8mgを咼分子(18)水溶液 1. 5mlに溶解し、室温下で 24時間攪拌し た。反応終了後、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー(Bio— Gel登録標章 P— 4Gel、 溶離液:水)によってポリマー画分を分離し、さらに凍結乾燥して目的とする高分子( 19)を得た(収量 11. 5mg)。組成比 l:m:nは仕込み比から約 l:m:n= l : 2. 44 : 58 . 5と見積もった。高分子への化合物(12)の導入は、高分子(19)の一部を水に溶解 し、 365nmの UV照射を 1時間行って化合物(20)を切り出し、限外濾過フィルター( Microcon登録標章 YM— 10、 Millipore社製)によって高分子成分を除去後、 M ALDI—TOFZMSによって化合物(20)に由来する [M (average) +H] + = 1237
. 9, [M (average) +Na] = 1260. 6, [M (average) +K] = 1276. 6 (理論値:
[M (average) +H] + = 1238. 4, [M (average) +Na] + = 1260. 4, [M (averag e) +K] + = 1276. 5)を確認することで行った。
[0126] (実施例 5 : β 1, 4 ガラクトース転移酵素による水溶性高分子プライマー(19)へ のガラクトースの転移 (高分子(21)および化合物(22)の合成) )
[0127] [化 35]
25mM HEPES緩衝液 (pH7. 5)、 0. 2U/ml人由来 j8 1, 4 ガラクトース転移 酵素(東洋紛社製)、 lOmM塩ィ匕マンガン、 5mM ゥリジン一 5,一ジリン酸ガラクトー
スニナトリウム(UDP— Gal)、 3. 2mgZmlの高分子(19)を含む lmlの反応液を 25 °Cで 3. 5時間攪拌した。反応後、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー(Bio— Gel登録 標章 P— 4Gel、溶離液:水)によってポリマー画分を分離し、さらに凍結乾燥して目 的とする高分子 (21)を得た (収量 1. 2mg) 0転移反応生成物の同定は、高分子 (21 )の一部を水に溶解し、 365nmの UV照射を 1時間行って化合物(22)を切り出し、 限外濾過フィルター(Microcon登録標章 YM— 10、 Millipore社製)によって高分 子成分を除去後、 MALDI— TOFZMSによって化合物(22)に由来する [M (aver age) +H] + = 1399. 6, [M (average) +Na] + = 1421. 6, [M (average) +K] + = 1437. 6 (理論値:[M (average) +H] + = 1400. 5, [M (average) +Na] + = 1 422. 5, [M (average) +K] + = 1438. 6)を確認することで行った。
[0129] (実施例 6 : « 2, 3—シアル酸転移酵素による水溶性高分子プライマー(21)への シアル酸の転移高分子(23)および化合物(24)の合成)
[0130] [化 37]
50mM HEPES緩衝液(pH7. 5)、 37mU/mlラット由来 α 2, 3—シアル酸転 移酵素(Calbiochem社製)、 5mM シチジン— 5,—モノリン酸— N—ァセチルノィ ラミン酸ニナトリウム(CMP— NANA)、 0. 01%Triton CF— 54 (シグマ社製) 1. OmgZmlの高分子(21)を含む 200 μ 1の反応液を 25°Cで 20時間攪拌した。反応 後、限外濾過フィルター(Microcon登録標章 YM— 10、 Millipore社製)によって ポリマー画分を分離し、さらに凍結乾燥して目的とする高分子 (23)を得た (収量 0. 6 mg) 0転移反応生成物の同定は、高分子(23)を水に溶解し、 365nmの UV照射を 1. 5時間行って化合物(24)を切り出し、限外濾過フィルター(Microcon登録標章 YM— 10、 Millipore社製)によって高分子成分を除去後、 MALDI— TOFZMS によって化合物(24)に由来する [M (average) +H] + = 1691. 2, [M (average) + Na] + = 1713. 1, [M (average) +K] + = 1730. 2 (理論値: [M (average) +H ] + = 1691. 8, [M (average) +Na] + = 1713. 7, [M (average) +K] + = 1729. 9)を確認することで行った。
産業上の利用可能性
[0132] 本発明によれば、光切断型リンカ一を糖ペプチド残基に結合した新規ィ匕合物をプ ライマーとして使用することにより、糖ペプチドを効率よく製造することができる。