WO2005077399A1

WO2005077399A1 - 慢性閉塞性肺疾患の予防ないし治療剤

Info

Publication number: WO2005077399A1
Application number: PCT/JP2005/002388
Authority: WO
Inventors: Junji Yodoi; Aoi Son; Hajime Nakamura
Original assignee: Redox Bioscience Inc.
Priority date: 2004-02-13
Filing date: 2005-02-09
Publication date: 2005-08-25
Also published as: EP1716860A4; EP1716860A9; EP1716860A1; JP2005060408A

Abstract

(課題)本発明は、慢性閉塞性肺疾患に対して、効果が高く、副作用の少ない予防ないし治療剤の提供を目的とする。(解決手段)チオレドキシンスーパーファミリーのポリペプチドを有効成分とする慢性閉塞性肺疾患の予防ないし治療剤を提供する。

Description

明細書

慢性閉塞性肺疾患の予防なレ、し治療剤

技術分野

[0001] 本発明は、慢性閉塞性肺疾患の予防なレ、し治療剤に関し、詳しくは、チォレドキシンス一パーファミリ一に属するポリペプチド類（以下、「TRXs」と略記する場合がある）を有効成分とする慢性閉塞性肺疾患の予防ないし治療剤に関する。

背景技術

[0002] 喫煙、又は排ガス、粉塵、煤煙等の大気汚染物質は、肺等の呼吸器組織及び細胞の炎症、線維化、壊死等の原因となり、慢性閉塞性肺疾患（chronic obstructive pulmonary disease：以下「COPD」と略記する場合がある）をはじめとする肺疾患を引き起こすと考えられている。

[0003] 前記疾患を引き起こす大気の汚染物質の内、特に、ディーゼル車から排出されるディーゼル排気微粒子（Diesel Exhaust Particle：以下「DEP」と略記する場合がある

)につレ、ては、それが肺に及ぼす影響にっレ、て様々な研究がなされてレ、る。

DEPは、ディ一ゼノレの燃焼によって生成した化学物質が炭素粒子核の周りに付着した微粒子である。この微粒子は、大気汚染の原因の 1つとされ、容易にヒト呼吸器内に吸入されることが知られてレ、る。

[0004] 喫煙又は大気汚染物質の場合と同様、 DEPの吸入は、肺等の呼吸器組織及び細胞の炎症、線維化、壊死等の原因となり、肺気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患等の大気汚染系疾病を引き起こすと考えられている。

[0005] これを受けて、前記 DEPによる肺障害のモデノレマウスを作成することにより、慢性閉塞性肺疾患の予防ないし治療剤として、有用な化合物についての探索研究がなされている。

DEP肺障害モデルの予防なレ、し治療に有用な化合物は、慢性閉塞性肺疾患をはじめ、喫煙又は大気の汚染物質 (排ガス、喫煙ガス、粉塵、煤煙等）による肺疾患に広く有効であると考えられるからである。

[0006] しかしながら、例えば慢性閉塞性肺疾患に対して、効果が高ぐ副作用の少なレ、予防ないし治療剤は、現在に至るまで報告されていない。

その為、慢性閉塞性肺疾患に対して、効果が高ぐ副作用の少ない予防ないし治療剤の開発が強く望まれていた。

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0007] 本発明は、慢性閉塞性肺疾患に対して、効果が高ぐ副作用の少ない予防ないし治療剤の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

[0008] 本発明者らは、 TRXsが好中球およびリンパ球の肺細胞への浸潤抑制作用を有し、慢性閉塞性肺疾患の予防ないし治療剤として有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。

[0009] 即ち、請求項 1に係る発明は、チォレドキシンスーパーファミリーのポリペプチドを有効成分とする慢性閉塞性肺疾患の予防ないし治療剤に関する。

請求項 2に係る発明は、前記慢性閉塞性肺疾患が、好中球およびリンパ球の肺細胞への浸潤を伴う請求の範囲第 1項記載の予防ないし治療剤に関する。

請求項 3に係る発明は、前記慢性閉塞性肺疾患が、喫煙又は大気の汚染物質によつて引き起こされるものである請求の範囲第 1項又は請求の範囲第 2項に記載の予防ないし治療剤に関する。

請求項 4に係る発明は、前記大気の汚染物質が、喫煙ガス、排ガス、粉塵、煤煙からなる群より選択される、レ、ずれか一つである請求の範囲第 3項記載の予防なレ、し治療剤に関する。

請求項 5に係る発明は、前記慢性閉塞性肺疾患の病態が、肺気腫又は慢性気管支炎である請求の範囲第 1項乃至第 4項いずれか記載の予防ないし治療剤に関する。

請求項 6に係る発明は、前記慢性閉塞性肺疾患が、組織または細胞の炎症、線維化、壊死からなる群より選択される、いずれか一つを伴う請求の範囲第 1項乃至第 5 項いずれか記載の予防ないし治療剤に関する。

請求項 7に係る発明は、チォレドキシンスーパ一ファミリ一のポリペプチドがヒトチォレドキシンである請求の範囲第 1項乃至第 6項いずれか記載の予防ないし治療剤に関する。

発明の効果

[0010] 本発明に係るチォレドキシンスーパ一ファミリーのポリペプチドを有効成分とする予防ないし治療剤は、慢性閉塞性肺疾患に対し、有効である。

[0011] 本発明に係るチォレドキシンスーパ一ファミリーのポリペプチドを有効成分とする予防ないし治療剤は、好中球およびリンパ球の肺細胞への浸潤を強く抑制することから、これを伴う慢性閉塞性肺疾患に有効である。

[0012] 本発明によれば、体内でも発現する内因性のチオールタンパクであるチォレドキシンを有効成分とするため、副作用の心配がない。

発明を実施するための最良の形態

[0013] チォレドキシン（Thioredoxin ; TRX)は、その活性部位配列の— Cys— Gly— Cys— 内にレドックス活性なジスルフイドジチオールを有する 12kDaの多機能ペプチドである (Redox regulation of cellular activation Ann. Rev. Immunol.1997; 15:3ol_369)。チォレドキシンはリボヌクレオチドリダクタ一ゼに対するハイドロゲン供与体、デォキシリボヌクレオチドの合成に重要な酵素として大腸菌力単離されて以来、多くの原核生物、真核生物から単離同定されてきた。

[0014] 成人 T細胞白血病誘導因子 (ADF)は、本発明者らが HTLV— 1に感染した Tリンパ球によって産生される Iし一 2受容体誘導因子として最初に同定したもので、ヒトチォレドキシンである。

細胞内チォレドキシンはラジカル消去や、 activator protein— 1や nuclear factor - κ Βなどのレドックスに関する転写因子の制御に重要な役割を果たしている（ΑΡ-1 transcriptional activity is regulated by a direct association between thioredoxin and Ref-1 PNAS.1997;94:3633-3638) signal regulating kinase— 1(ASK— 1)のシグナル伝達を制御する。

[0016] チォレドキシンが細胞外に放出され、サイト力インまたはケモカイン作用を示すこと（し lrculating thioredoxin suppresses lipopolysaccharide-induced neutrophil chemotaxis PNAS.2001; 98: 15143- 15148)、更には細胞外 TRXが細胞内へ移行すること (Redox-sensing release of thioredoxin from T lymphocytes with negative feedback loops J.Immunol.2004 72:442- 448)が本発明者らによって報告されてきた

[0017] 本発明において、 TRXsの新たな作用、即ち、好中球及びリンパ球の肺細胞への浸潤抑制作用について、解明し、本発明を完成するに至った。

[0018] 以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。

[0019] 本明細書において呼吸器系又は呼吸器とは、肺胞におけるガス交換に関係する全ての器官を指し、鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺等が含まれる。

[0020] 本明細書において、ヒトチォレドキシン（hTRX)とは、配列番号 1に示される 105個のアミノ酸力なるポリペプチドを指す。

[0021] 本発明の TRXsは、ヒトチォレドキシン以外に「チォレドキシンス一パーファミリー」に属するものであればよぐその活性中心に— Cys— Gly— Pro_Cys—、— Cys— Pr o— Tyr— Cys―、一 Cys— Pro— His _Cys―、一Cys— Pro— Pro— Cys— 有するポリペプチド類を有するものが例示される。

これらの中でも、活性中心に配列一 Cys - Gly - Pro - Cys -を有するチォレドキシン又はチォレドキシン 2 (ミトコンドリア特異的チォレドキシン）が好ましい。

[0022] 本発明のチォレドキシン誘導体は、配列番号 1のヒトチォレドキシンをもとにして公知の遺伝子工学的手法により誘導体を製造することができる。

該誘導体は、配列番号 1の 32位と 35位以外、好ましくは 32位〜 35位以外のァミノ酸の 1又は複数個、好ましくは 1又は数個が置換、欠失、付加、揷入され、且つ、好中球およびリンパ球の肺細胞等への浸潤抑制活性を有するものである。

なお、配列番号 2は、配列番号 1の核酸配列を表す。

[0023] 本発明者らは、チォレドキシントランスジヱニックマウスにおいて DEP (Diesel exh aust Particle :ディーゼル排気微粒子)肺傷害モデルを作製したところ、ワイノレドタイブのマウスに比べ、肺傷害が極めて軽度であることを見出した。

[0024] DEPは、ディーゼルの燃焼によって生成した化学物質が炭素粒子核の周りに付着した微粒子である。この微粒子は、大気汚染の原因の 1つとされ、容易にヒト呼吸器内に吸入されることが知られている。

DEPの吸入は、肺、気管支等の呼吸器組織及び細胞の炎症、線維化、壊死等の原因となり、気管支喘息、肺気腫、慢性気管支炎等の大気汚染系疾病を引き起こすと考えられている。

[0025] DEP肺障害モデルの予防ないし治療に有用な化合物は、大気の汚染物質 (排ガス、喫煙ガス、粉塵、煤煙等）による肺障害に広く有効であると考えられる。

[0026] 従って、本発明の予防なレ、し治療剤は、喫煙、又は排ガス、粉塵、煤煙等の大気汚染によって弓 Iき起こされる呼吸器系疾患の予防ないし治療に有効である事が示唆される。

特に、 TRXsが、後述する好中球およびリンパ球の肺細胞への浸潤抑制機能を有することにより、これを原因とする慢性閉塞性肺疾患の予防ないし治療剤としても好ましく使用でさる。

[0027] さらに、本発明者らは、 TRXsは、肥満細胞の脱顆粒抑制作用、及び肥満細胞から放出されるサイト力インの産生 (分泌)抑制作用を有し、これらのサイト力インに起因するアレルギー性疾患の予防ないし治療剤として有効であることを見出した。

[0028] 肥満細胞力、ら放出されるサイト力インとしては、ヒスタミン、 IL— 2、 IL— 4、 IL— 6、 G M— CSF、 TNF— α等が挙げられ、ヒスタミン、 IL— 2及び IL— 6は特にアレルギー性疾患との関連が深ぐこれらの産生 (分泌）を抑制することにより、アレルギ一性疾患の予防なレ、し治療効果を得ることができる。

[0029] ヒスタミン、 IL— 2、 IL— 6と関連するアレルギ一性疾患としては、アトピー型気管支喘息、花粉症等のアレルギー性鼻炎があげられる。

[0030] 本発明に係る予防ないし治療剤の投与経路としては、経口および非経口のいずれでも投与することができ、臨床医によって適宜選択される。

有効成分であるチォレドキシンを単独または通常使用される担体と共に投与すること力できる。

[0031] 本発明の予防ないし治療剤を経口投与する場合は、薬剤の形態として、錠剤、丸剤、散剤、被覆錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等の液状製剤、エアゾール剤、アトマイザ一、ネブライザ一等の吸入剤、およびリボソーム封入剤等があげられる。

[0032] 本発明に係る予防ないし治療剤は、上記の有効成分と共に薬学的に許容される製剤担体を用いて、医薬製剤の形態として実用される。

該製剤担体としては、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、滑沢剤、充填剤、増量剤、付湿剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩、緩衝剤等の希釈剤又は賦形剤を例示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。

[0033] 錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩ィ匕ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケィ酸、リン酸カリウム等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の崩壊剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸ェステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド等の界面活性剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第 4級アンモニゥム塩基、ラゥリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケィ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。

[0034] さらに錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠とすることができる。

この剤皮の層の数によって二重錠、多層錠とすることができる。

[0035] 丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。

[0036] 本発明の予防なレ、し治療剤を非経口投与する場合は、薬剤の形態として静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射および腹腔内注射などに使用される注射剤 (液剤、乳剤、懸濁剤等）、液剤（例えば、点眼剤、点鼻薬等）、懸濁剤、乳剤、点滴剤等があげられる。

[0037] 本発明薬剤が液剤、乳剤、懸濁剤等の注射剤として調製される場合、これらは殺菌され且つ血液と等張であるのが好ましぐこれらの形態に成形するに際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシェチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用できる。

なお、この場合、等張性の溶液を調整するに充分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを本発明薬剤中に含有させてもよい。

また、通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。

[0038] 本発明の予防ないし治療剤が液状製剤である場合は、凍結保存または凍結乾燥等により水分を除去して保存してもよい。

凍結乾燥製剤は、使用時に注射用蒸留水等を加え、再度溶解して使用される。

[0039] さらに、本発明に係る予防ないし治療剤中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させて調製することもできる。

[0040] TRXファミリーに属するポリペプチドの有効量は、当業者が従来の技術を参考に容易に決定することができるが、例えば、体重 lkgあたり 0. lmg— 10g程度、好ましくは l— 10mg程度、より好ましくは l _ 500mg程度である。

[0041] これを 1日あたり 1回又は数回に分けて投与することができるが、各種製剤の形態、患者の性別、年齢、疾患の程度に合わせて適宜調節することが好ましい。

[0042] 以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではなぐ本発明の技術分野における通常の変更ができることは言うまでもない。

実施例 1

[0043] C57BLZ6マウス及び TRXトランスジエニックマウス（味の素株式会社）を用いて D EP肺障害モデノレを作製した。

麻酔したマウスの気管から、 DEP気管内注入（instillation)した。その後、肺を摘出し、パラフィン包埋して切片を作製した後、へマトキシリン'ヱオシン染色をつた。

[0044] その結果、 C57BLZ6マウスの肺組織は、好中球およびリンパ球の肺細胞への浸潤が見られるのに対し、 TRXトランスジエニックマウスでは、これらの細胞の肺細胞への浸潤が極めて軽度であった（図 1 )。

実施例 2

[0045] チォレドキシンによる肥満細胞のサイト力イン産牛抑制効果

1.細胞の調製

C57BL/6マウスと TRXトランスジエニックマウス（味の素株式会社）を解剖して、大腿骨をとり、 27G針を付けた注射筒（10mlの培地 (非働化した牛胎児血清 15%、 L —グノレタミン 200mM、 ]3—メルカプトエタノール 50mM、 rmIL— 3 ΙΟΟρΜ含有 R PMI)を内部に有する）に該大腿骨由来の骨髄（5ml)を採取し、 25cm²Tフラスコに骨髄を流し入れて培養した。 1週間目に中フラスコに移し 30mlの培地を添加した後、さらに 2週間目に 175cm²T大フラスコに移し 100mlの培地で培養を継続した。培養開始から 4一 5週間目で肥満細胞を得た（図 2)。

2.肥満細胞のサイト力イン産生能

lxlO⁷個の肥満細胞を 10mlの 10%牛胎児血清含有 RPMI培地に懸濁後、 anti 一 DNP (抗ジニトロフヱニル) IgE抗体を最終濃度 1— 2 μ gZmlで添加し、 18時間培養した。細胞を回収し PBSで洗浄後、培地に最終濃度 1 X 10⁶個 Zmlで懸濁し、 96穴プレートに 200 μ ΐずつ添加し培養した。 2— 3時間後、 DNP— BSAを最終濃度 30ngZmlになるように加え、 18時間培養した（図 2)。培養上清中のサイト力イン（ IL- 2, IL一 6)を ELISA法で測定した結果、 TRX高発現肥満細胞力の IL— 2と I L— 6の産生量力コントロールマウス由来肥満細胞に比べて有意に低かった（図 3 _aおよび図 3— b)。

実施例 3

[0046] チォレドキシンによる肥満細胞の脱頼粒抑制効果

1.肥満細胞の調製と抗原感作

1 X 10⁷個の肥満細胞を 10mlの 10%牛胎児血清含有 RPMI培地に懸濁後、 anti -DNP IgE抗体を最終濃度:!〜 2 y gZmlで添加し、 18時間培養した。この細胞を回収して PBSで洗浄後、 PBSに最終濃度 1 X 10⁷個 Zmlで懸濁し、 96穴プレートに 250 μ ΐずつ添加し培養した。 10分後、 DNP— BSAを最終濃度 SOngZmlになるように加え、 20分培養した。次に、 10 1の反応停止緩衝液（4mM EDTA、 50m M HEPES pH7. 4、 1%グルコース、 1%ゼラチン）を添加し、氷上に置いた後、培養上清を回収した (図 4)。

2.ヒスタミンの定量

ホウ酸ナトリウム緩衝液（pH 9. 5)で平衡ィ匕した Shodex— Asahipak ODP— 5 0 4D (東ソ一）に肥満細胞の培養上清を注入後、流速 0. 5ml 分で緩衝液を流し、ヒスタミン量を検出（励起波長 330nm、発光波長 440nm)するクロマトグラフィーを行った。その結果、 TRX高発現肥満細胞力らのヒスタミン産生量力コントロールマウス由来肥満細胞に比較して低値であった（図 5)。

図面の簡単な説明

[図 1]DEPを気管内注入した、 TRXトランスジエニックマウス (TRX Tg)及び C57BL 6マウスにおける肺組織切片（ X 12、 X 100)を示す。

[図 2]実施例 2の実験方法を示す。

[図 3] (a)TRX高発現肥満細胞およびコントロール細胞における IL— 2の産生量の比較を表す。図中、 B6はコントロール細胞、 TRXtgは、 TRX高発現肥満細胞を表す。 (b)TRX高発現肥満細胞およびコントロール細胞における IL— 6の産生量の比較を表す。図中、 B6はコントロール細胞、 TRXtgは、 TRX高発現肥満細胞を表す。

[図 4]実施例 3の実験方法を示す。

[図 5]TRX高発現肥満細胞およびコントロール細胞におけるヒスタミン放出量を表す。図中、 B6はコントロール細胞、 TRXtgは、丁 RX高発現肥満細胞を表す。

Claims

請求の範囲

[1] チォレドキシンス一パーファミリ一のポリペプチドを有効成分とする慢性閉塞性肺疾患の予防ないし治療剤。

[2] 前記慢性閉塞性肺疾患が、好中球およびリンパ球の肺細胞への浸潤を伴う請求の範囲第 1項記載の予防なレ、し治療剤。

[3] 前記慢性閉塞性肺疾患が、喫煙又は大気の汚染物質によって引き起こされるものである請求の範囲第 1項又は請求の範囲第 2項に記載の予防ないし治療剤。

[4] 前記大気の汚染物質が、喫煙ガス、排ガス、粉塵、煤煙からなる群より選択される、レ、ずれか一つである請求の範囲第 3項記載の予防なレ、し治療剤。

[5] 前記慢性閉塞性肺疾患の病態が、肺気腫又は慢性気管支炎である請求の範囲第 1 項乃至第 4項レ、ずれか記載の予防なレ、し治療剤。

[6] 前記慢性閉塞性肺疾患が、組織または細胞の炎症、線維化、壊死力なる群より選択される、いずれか一つを伴う請求の範囲第 1項乃至第 5項いずれか記載の予防ないし治療剤。

[7] チォレドキシンスーパ一ファミリ一のポリペプチドがヒトチォレドキシンである請求の範囲第 1項乃至第 6項いずれか記載の予防ないし治療剤。