明 細 書
核酸増幅用プライマー、核酸増幅用プライマーセット及びこれを用いた癌 の検查方法
技術分野
[0001] 本発明は、癌の臨床検査の分野において用いられる、 KRAS遺伝子のコドン 12及 びコドン 13の突然変異(以下、適宜「変異」という。)の有無を一度の操作で判定する 方法、これに用いるための核酸増幅用プライマー、核酸増幅用プライマーセット、及 び KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無を判定するためのキットに関 する。
背景技術
[0002] RAS—RAF—MEK— ERK— MAPをカスケードとするリン酸化酵素の経路は、糸田 胞の分化や成長、増殖を調節する重要な経路であることが知られている。 RASタン パク質をコードする RAS遺伝子は、ヒトの様々な腫瘍で突然変異が認められている 遺伝子である。 RAS遺伝子に変異が起こると、細胞内のリン酸化が異常に亢進し、 細胞の分化や成長、増殖等の調節機能が不全となることが知られている。 RAS遺伝 子の変異は、ヒトの総ての腫瘍の 15%の頻度で起こっていることが報告されている。 このように、 RAS遺伝子の変異は、ヒトの腫瘍の形成に深い関連があることが推測さ れる。 KRAS遺伝子の変異ではコドン 12及びコドン 13の変異は合わせて 90%以上 を占めることが報告されている。従来、このコドン 12及びコドン 13の変異の検出方法 として、ダイレクトシーケンス法、 MASA法、 RFLP法等が知られている力 いずれも 、検出感度、検出に要する時間'コスト、その両方の点で問題がある。
また、近時、コドン 12の変異を再現性よぐ高感度で検出する方法として、非特許 文献 1に記載される技術が知られている。
非特許文献 1: "Oncogene" 1991 Jun, 6 (6), 1079-1083
発明の開示
[0003] しかし、上述の技術は、コドン 12の変異しか検出できず、コドン 13の変異を検出し ようとすると、もう 1回同様の検出操作が必要となり、検査の効率が低くなるという問題
力 Sある。そのため、コドン 12とコドン 13の変異を、同時に、再現性よぐ高感度で検出 する方法が求められている。
[0004] そこで、本発明の課題は、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無を 一度の操作で、簡便に、再現性よぐかつ、精度よく検出する方法を提供することで ある。
さらに、この検出方法に用いるための核酸増幅用プライマー、核酸増幅用プライマ 一セット、及び KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異検出キットを提供するこ とである。
[0005] 力、かる実情において、本発明者は、 KRAS遺伝子に作用し、塩基配列にミスマッチ を導入した核酸増幅プライマーを含む核酸増幅用プライマーセット用いて、ネステツ ド PCR法、セミネステッド PCR法、ダブル PCR法のいずれかを用いて KRAS遺伝子 を増幅することにより、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無を一度 の操作で、簡便に、再現性よぐかつ、精度よく判定することができることを見出した。
[0006] 即ち、この核酸増幅用プライマー、又はこの核酸増幅用プライマーを含む核酸増幅 用プライマーセットによれば、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異があれば、特定の第 1 の核酸増幅用プライマーセットによる KRAS遺伝子の増幅産物を当該特定の第 1の 制限酵素が認識せず、当該 KRAS遺伝子のコドン 13に変異があれば、当該特定の 第 1の核酸増幅用プライマーセットによる KRAS遺伝子の増幅産物を特定の第 2の 制限酵素が認識せず、当該 KRAS遺伝子のコドン 12にもコドン 13にも変異がなけれ ば、当該特定の第 1の核酸増幅用プライマーセットによる当該 KRAS遺伝子の増幅 産物を、当該特定の第 1の制限酵素も当該特定の第 2の制限酵素も認識する。
[0007] そうすると、当該 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無により、当該 特定の第 1の核酸増幅用プライマーセットが異なる配列の KRAS遺伝子の増幅産物 を生成することから、当該特定の第 1の制限酵素は、当該 KRAS遺伝子のコドン 12 の変異の有無に基づいて、異なる長さの制限酵素断片を生成し、当該特定の第 2の 制限酵素は、当該 KRAS遺伝子のコドン 13の変異の有無に基づいて、異なる長さ の制限酵素断片を生成する。よって、その制限酵素断片を制限酵素断片長多型を 用いて検出することで、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異を一度の操作
で検出でき、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無を一度の操作で 判定できる。
[0008] また、この核酸増幅用プライマーを用いた KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13 の変異の検出方法では、
( 1 )第 1の工程:第 1の核酸増幅用プライマーセットを用いて当該 KRAS遺伝子の核 酸増幅を行い、この KRAS遺伝子の増幅産物を前記特定の第 1の制限酵素又は前 記特定の第 2の制限酵素で処理する工程と、
(2)第 2の工程: 1 )第 1の工程にぉレ、て当該特定の第 1の制限酵素で処理した場合 には、当該特定の第 1の制限酵素で処理した反応液に対して、第 2の核酸増幅用プ ライマーセットを用いて KRAS遺伝子の核酸増幅を行レ、、その後、当該特定の第 1の 制限酵素で処理する工程と、
2)第 1の工程において当該特定の第 2の制限酵素で処理した場合には、第 3の核酸 増幅用プライマーセットを用いて KRAS遺伝子の核酸増幅を行レ、、その後、当該特 定の第 2の制限酵素で処理する工程と、
(3)第 3の工程:当該第 2の工程で得られた KRAS遺伝子の増幅産物の制限酵素断 片を、制限酵素断片長多型を用いて検出する工程とを有し、
当該第 1の工程において、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異があれば、当該第 1の 核酸増幅用プライマーセットによる増幅産物を当該特定の第 1の制限酵素が認識せ ず、当該 KRAS遺伝子のコドン 13に変異があれば、当該第 1の核酸増幅用プライマ 一セットによる増幅産物を当該特定の第 2の制限酵素が認識せず、当該 KRAS遺伝 子のコドン 12にもコドン 13にも変異がなければ、当該第 1の核酸増幅用プライマーセ ットによる増幅産物を、当該特定の第 1の制限酵素も当該特定の第 2の制限酵素も認 識することにより、当該 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無により、 異なる長さの制限酵素断片を生成し、 その制限酵素断片を制限酵素断片長多型を 用いて検出することで、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無を一度 の操作で判定することができる。
[0009] さらに、この核酸増幅プライマーセットを用いた KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の検出方法では、
前記第 2の工程において、前記第 1の工程で用いる核酸増幅用プライマーのミスマ ツチとは異なるミスマッチを導入した核酸増幅用プライマーを含む前記第 2の核酸増 幅用プライマーセットを用いることにより、当該第 2の工程においてコドン 12の変異に 有無によらず、 KRAS遺伝子のコドン 12以外の箇所を前記特定の第 1の制限酵素 が認識し、前記第 2の工程において、前記第 1の工程で用いる核酸増幅用プライマ 一のミスマッチとは異なるミスマッチを導入した核酸増幅用プライマーを含む前記第 3 の核酸増幅用プライマーセットを用いることにより、当該第 2の工程においてコドン 13 の変異に有無によらず、 KRAS遺伝子のコドン 13以外の箇所を前記特定の第 1の制 限酵素が認識する。
[0010] この第 2の工程では、当該第 1の工程で当該特定の第 1の制限酵素で処理した場 合には、 KRAS遺伝子のコドン 12の変異の有無に起因して生成される、異なる制限 酵素断片長の KRAS遺伝子の増幅産物を増幅し、前記第 1の工程で当該特定の第 2の制限酵素で処理した場合には、 KRAS遺伝子のコドン 13の変異の有無に起因 して生成される、異なる制限酵素断片長の増幅産物を増幅することになる。
[0011] この第 2の工程では、前記第 1の工程で当該特定の第 1の制限酵素で処理した場 合には、 KRAS遺伝子のコドン 12の変異の有無に起因して生成される、異なる長さ の制限酵素断片を増幅することになる。その結果、 KRAS遺伝子のコドン 12の変異 の有無に起因して、異なる長さの増幅産物が多量に生成される。
そして、第 3の工程で、この増幅産物を制限酵素で切断した制限酵素断片を制限 酵素断片長多型により検出することで、 KRAS遺伝子のコドン 12の変異の有無をさ らに高精度で判定することができる。
また、前記第 2の工程を経る場合には、第 1の工程のみ行った場合よりも、検出感 度がより高いことから、癌の細胞、組織を直接採取する以外にも、癌細胞の比率が比 較的低い、患者の血液、瞎液、血清、糞便、精液、唾液、喀痰、脳脊髄液等を由来と する細胞や組織を採取して、 KRAS遺伝子のコドン 12の変異の有無を判定すること ができる。そのため、低侵襲の(患者への負担が小さい)診断が可能になる。
[0012] また、この第 2の工程では、前記第 1の工程で当該特定の第 2の制限酵素で処理し た場合には、 KRAS遺伝子のコドン 13の変異の有無に起因して生成される、異なる
長さの制限酵素断片を増幅することになる。その結果、 KRAS遺伝子のコドン 13の 変異の有無に起因して、異なる長さの増幅産物が多量に生成される。
そして、第 3の工程で、この増幅産物を制限酵素で切断した制限酵素断片を制限 酵素断片長多型により検出することで、 KRAS遺伝子のコドン 13の変異の有無をさ らに高精度で判定することができる。
また、前記第 2の工程を経る場合には、第 1の工程のみ行った場合よりも、検出感 度がより高いことから、癌の細胞、組織を直接採取する以外にも、癌細胞の比率が比 較的低い、患者の血液、瞎液、血清、糞便、精液、唾液、喀痰、脳脊髄液等を由来と する細胞や組織を採取して、 KRAS遺伝子のコドン 13の変異の有無を判定すること ができる。そのため、低侵襲の(患者への負担が小さい)診断が可能になる。
このように、本発明では、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無を一 度の操作で、高精度で判定することができる。
[0013] 本発明では、上述の核酸増幅用プライマーセットと、制限酵素と、 DNAポリメラーゼ を含むキットにより、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無を一度の 操作で精度よく判定することができる。
[0014] 本発明の検出方法、この検出方法に用いるための核酸増幅用プライマー、核酸増 幅用プライマーセット、及び KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異検出キット によれば、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異を一度の操作で、簡便に、 再現性よぐかつ、精度よく検出することができ、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無を一度の操作で、簡便に、再現性よぐかつ、精度よく判定すること ができる。
図面の簡単な説明
[0015] [図 1]本発明に係る KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の検出方法の概要 を示す模式図である。
[図 2]本発明による KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の検出を示す図で ある。
発明を実施するための最良の形態
[0016] (検出原理)
前述の通り、本発明は、 KRAS遺伝子に作用し、塩基配列にミスマッチを導入し た核酸増幅用プライマーを含む核酸増幅用プライマーセットを用いることにより、 KR AS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異を一度の操作で検出する。
核酸増幅用プライマーにミスマッチを導入し、遺伝子の 2箇所の(コドンの)変異を 一度の操作で検出する方法の一例を示す。
元々ある遺伝子を増幅する核酸増幅用のプライマーがある場合、その塩基配列の 1又は 2以上の塩基を変換する。そして、当該核酸増幅用のプライマーを含む核酸増 幅用プライマーセット(第 1の核酸増幅用プライマーセット)を用いて当該遺伝子を増 幅したときに、当該遺伝子の特定の第 1のコドンに変異があれば、当該核酸増幅用 のプライマーセットは、その変異を伴った塩基配列に基づいて当該遺伝子を増幅す るようにする。また、当該核酸増幅用のプライマーを含む核酸増幅用プライマーセット を用いて当該遺伝子を増幅したときに、当該遺伝子の特定の第 2のコドンに変異が あれば、当該核酸増幅用のプライマーセットは、その変異を伴った塩基配列に基づ レ、て当該遺伝子を増幅するようにする。一方、当該遺伝子の当該特定の第 1のコドン にも当該特定の第 2のコドンにも変異がなければ、当該核酸増幅用のプライマーセッ トは、その変異を伴わない塩基配列に基づいて当該遺伝子を増幅するようにする。 そうすると、当該特定の第 1のコドンの変異の有無及び、当該特定の第 2のコドンの 変異の有無に基づいて、当該遺伝子の増幅産物は、塩基配列を異にするようになる
[0017] 次いで、こうして得られた当該遺伝子の増幅産物に対し、特定の第 1の制限酵素又 は特定の第 2の制限酵素を作用させる。
このとき、当該遺伝子の当該特定の第 1のコドンに変異がある場合の遺伝子の増幅 産物に対しては、ある特定の第 1の制限酵素は認識せず、当該遺伝子の当該特定 の第 1のコドンに変異がない場合の遺伝子の増幅産物に対しては、その増幅産物の 特定の第 1の 1箇所の回文構造を、当該特定の第 1の制限酵素が認識するようになる
[0018] そうすると、当該遺伝子の当該特定の第 1のコドンに変異がある場合には、その遺 伝子の増幅産物の制限酵素による断片は 1つになるが、当該遺伝子の当該第 1の特
定のコドンに変異がある場合には、その遺伝子の増幅産物の制限酵素による断片は
2つになる。このとき、この 2つの断片の合計の断片長は、上の 1つの断片長とほぼ等 しくなる。
同様に、当該遺伝子の当該特定の第 2のコドンに変異がある場合の遺伝子の増幅 産物に対しては、ある特定の第 2の制限酵素は認識せず、当該遺伝子の当該特定 の第 2のコドンに変異がない場合の遺伝子の増幅産物に対しては、その増幅産物の 特定の第 2の 1箇所の回文構造を、当該特定の第 2の制限酵素が認識するようになる
[0019] そうすると、当該遺伝子の当該特定の第 2のコドンに変異がある場合には、その遺 伝子の増幅産物の制限酵素による断片は 1つになるが、当該遺伝子の当該第 2の特 定のコドンに変異がある場合には、その遺伝子の増幅産物の制限酵素による断片は 2つになる。このとき、この 2つの断片の合計の断片長は、上の 1つの断片長とほぼ等 しくなる。
こうして、この遺伝子の特定の第 1のコドンと特定の第 2のコドンの 2箇所の変異を一 度の操作で検出でき、この遺伝子の特定の第 1のコドンと特定の第 2のコドンの 2箇 所の変異の有無を一度の操作で判定することができる。
[0020] (2次 PCR)
本発明では、上記のようにして、前記遺伝子の前記特定の第 1のコドン、又は前記 特定の第 2のコドンのコドンに変異がある場合には、 1つの長い制限酵素断片を生成 し、当該遺伝子の当該特定の第 1のコドンにも当該特定の第 2のコドンのコドンにも変 異がない場合には、 2つの短い制限酵素断片を生成するが、これらの制限酵素断片 を、別の組み合わせの核酸増幅用プライマーセットを用いて増幅する。このとき、通 常は、前記特定の第 1の制限酵素で処理した制限酵素断片を増幅するための核酸 増幅用プライマーセット(第 2の核酸増幅用プライマーセット)と、前記特定の第 2の制 限酵素で処理した制限酵素断片を増幅するための核酸増幅用プライマーセット(第 3 の核酸増幅用プライマーセット)とは、異なる核酸増幅用プライマーセットとする。
[0021] 前記第 2の核酸増幅用プライマーセットの 1の核酸増幅用プライマーにミスマッチを 導入する。今回は、その遺伝子の特定の第 1のコドンの変異の有無によらず、前記特
定の第 1の制限酵素が、その増幅産物の中の前記特定の第 1の 1箇所とは別の 1箇 所の回文構造を認識するように、ミスマッチを導入する。
同様に、前記第 3の核酸増幅用プライマーセットの 1の核酸増幅用プライマーにミス マッチを導入する。今回は、その遺伝子の特定の第 2のコドンの変異の有無によらず 、前記特定の第 2の制限酵素が、その増幅産物の中の前記特定の第 2の 1箇所とは 別の 1箇所の回文構造を認識するように、ミスマッチを導入する。
[0022] そうすると、前記遺伝子の前記特定の第 1のコドンに変異がある場合には、当該遺 伝子の増幅産物の前記特定の第 1の制限酵素による断片は 3つになるが、当該遺伝 子の当該特定の第 1のコドンに変異がない場合には、当該遺伝子の増幅産物の当 該特定の第 1の制限酵素による断片は 2つになる。このとき、この 3つの断片の合計 の断片長は、上の 2つの断片長とほぼ等しくなる。
同様に、前記遺伝子の前記特定の第 2のコドンに変異がある場合には、当該遺伝 子の増幅産物の前記特定の第 2の制限酵素による断片は 3つになるが、当該遺伝子 の当該特定の第 2のコドンに変異がない場合には、当該遺伝子の増幅産物の当該 特定の第 2の制限酵素による断片は 2つになる。このとき、この 3つの断片の合計の 断片長は、上の 2つの断片長とほぼ等しくなる。
[0023] この方法では、もとの遺伝子の特定の第 1のコドンの変異の割合、もとの遺伝子の 特定の第 2のコドンの変異の割合によらず、変異の有無に基づいて生成される、異な る制限酵素断片を多量に増幅する。
従って、もとの遺伝子の特定のコドンの変異の割合が低くても、当該遺伝子の特定 のコドンの変異の有無に基づぐ増幅産物の差異が顕著になり、当該遺伝子の特定 のコドンの変異を高感度で検出できる。
そのため、癌の細胞、組織を直接採取する以外にも、癌細胞の比率が比較的低い 、患者の血液、陴液、血清、糞便、精液、唾液、喀痰、脳脊髄液等を由来とする細胞 や組織を採取して、当該遺伝子の第 1のコドン及び第 2のコドンの変異の有無を判定 すること力 Sできる。そのため、低侵襲の(患者への負担が小さい)診断が可能になる。 さらに、これら特定の第 1のコドンの変異と、特定の第 2のコドンの変異とを一度の操 作で検出でき、これら特定の第 1のコドンの変異の有無と、特定の第 2のコドンの変異
の有無とを一度の操作で判定できる。
[0024] KRAS遺伝子のコドン 12の変異、及びコドン 13の変異を一度の操作で検出する方 法の一例を図 1に示す。
配列番号 1で表される KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13を含む領域 (KRAS 遺伝子の 454番目の塩基から 613番目の 160塩基で、コドン 1の 1番目の塩基からコ ドン 54の 1番目の塩基)を 2つの核酸増幅用プライマーからなる核酸増幅用プライマ 一セットで増幅する(図 1 (a) )。ここに、 12& 13SPは、配列番号 2で表される核酸増 幅用プライマーであり、 KRAS遺伝子の 457番目力ら 486番目に対応する部位、即 ち、配列番号 1で表される KRAS遺伝子のコドン 12とコドン 13を含む領域の 4番目か ら 33番目の配列に対応する部位(実際には配列番号 1で表される KRAS遺伝子の コドン 12とコドン 13を含む領域の 4番目から 33番目の配列の相補鎖の部位)に結合 し、 a) KRAS遺伝子のコドン 12に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 制限酵素 Mval (ェム ·ブイ ·ェ一'ワン)は認識せず、 b) KRAS遺伝子のコドン 13に 変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、制限酵素 Bgll (ビー.ジ一.エル. ワン)は認識せず、 c) KRAS遺伝子のコドン 12にもコドン 13にも変異がない場合の 遺伝子の増幅産物に対しては、その増幅産物の特定の第 1の 1箇所の回文構造 (K RAS遺伝子の 484番目力ら 488番目の CCWGG/GGWCC)を、制限酵素 Mval が認識するように設計され、その増幅産物の特定の第 2の 1箇所の回文構造 (KRAS 遺伝子の 482番目力ら 492番目の GCCNNNNNGGC/CGGNNNNNCCG)を 、制限酵素 Bgllが認識するように設計されてレ、る。
[0025] 具体的には、 12& 13SPのうち、 KRAS遺伝子の 484番目の塩基に対応する塩基 をシトシン(配列番号 2のプライマーの 28番目の塩基)に変換し、 KRAS遺伝子の 48 3番目の塩基に対応する塩基をシトシン(配列番号 2のプライマーの 27番目の塩基) に変換している。
前者の変換により、コドン 12の変異の有無に伴う増幅産物の相違を Mval (又は Bs tNl (ビー 'エス'ティー ·ェヌ 'ワン))で識別でき、後者の変換により、コドン 13の変異 の有無に伴う増幅産物の相違を Bgllで識別することができる。
また、 WildASは、配列番号 3で表される核酸増幅用プライマーであり、 KRAS遺
伝子の 549番目から 576番目の部位、即ち、配列番号 1で表される KRAS遺伝子の 96番目から 123番目の部位に結合する(実際には配列番号 1で表される KRAS遺 伝子領域の 96番目力ら 123番目の配列の部位であって、配列番号 3の 1番目の塩 基が配列番号 1で表される KRAS遺伝子領域の 123番目に結合し、配列番号 3の 2 8番目の塩基が配列番号 1で表される KRAS遺伝子領域の 96番目に結合する)。 そして、 12& 13SPによるヌクレオチド (塩基)の連結は上流から下流に向かって行 われ、、 WildASによるヌクレオチド(塩基)の連結は下流から上流に向かって行われ 、 PCR反応により KRAS遺伝子を増幅する。
[0026] そうすると、この KRAS遺伝子の増幅産物を制限酵素 Mval (又は BstNl)で処理 したときに、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対し ては、 120bpの 1つの制限酵素断片が生成され、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異が ない場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 29bpと、 91bpの 2つの制限酵素断片が 生成される(図 1 (b) )。
一方、この KRAS遺伝子の増幅産物を制限酵素 Bgllで処理したときに、 KRAS遺 伝子のコドン 13に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 120bpの 1つの 制限酵素断片が生成され、 KRAS遺伝子のコドン 13に変異がない場合の遺伝子の 増幅産物に対しては、 32bpと、 88bpの 2つの制限酵素断片が生成される(図 1 (c) )
[0027] (第 1の制限酵素による断片の増幅)
次いで、前記の工程により、制限酵素 Mval (又は BstNl)で処理したことにより生 成された、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異がある場合の 1つの制限酵素断片と、 KR AS遺伝子のコドン 12に変異がない場合の 2つの制限酵素断片を、前記の核酸増幅 用プライマーセットとは異なる核酸増幅用プライマーセット((0017)の段落の「第 2の 核酸増幅用プライマーセット」に相当)で増幅する(図 1 (d) )。ここに、 12& 13SPは、 前述の配列番号 2で表される核酸増幅用プライマーであり、 KRAS遺伝子の 457番 目力 486番目に対応する部位、即ち、配列番号 1で表される KRAS遺伝子のコド ン 12とコドン 13を含む領域の 4番目から 33番目の配列に対応する部位(実際には配 列番号 1で表される KRAS遺伝子のコドン 12とコドン 13を含む領域の 4番目力 33
番目の配列の相補鎖の部位)に結合する。
一方、 12mtASは、配列番号 4で表される核酸増幅用プライマーであり、 KRAS遺 伝子の 549番目から 576番目の部位、即ち、配列番号 1で表される KRAS遺伝子の 96番目力 123番目の部位に結合し (実際には配列番号 1で表される KRAS遺伝 子領域の 96番目力も 123番目の配列の部位であって、配列番号 3の 1番目の塩基 が配列番号 1で表される KRAS遺伝子領域の 123番目に結合し、配列番号 3の 28 番目の塩基が配列番号 1で表される KRAS遺伝子領域の 96番目に結合する)、 KR AS遺伝子のコドン 12の変異の有無によらず、 KRAS遺伝子の増幅産物に対しては 、制限酵素 Mval (又は BstNl)が前記特定の第 1の 1箇所とは違う 1箇所の回文構 造を認識するように設計されてレヽる。
[0028] 具体的には、 12mtASのうち、配列番号 1で表される KRAS遺伝子の 103番目の 塩基に対応する塩基をシトシン (配列番号 3のプライマーの 21番目の塩基)に変換し 、 KRAS遺伝子の 104番目の塩基に対応する塩基をシトシン (配列番号 3のプライマ 一の 20番目の塩基)に変換してレ、る。
そして、 12& 13SPによるヌクレオチド (塩基)の連結は上流から下流に向かって行 われ、 12mtASによるヌクレオチド(塩基)の連結は下流から上流に向かって行われ 、 PCR反応により BRAF遺伝子を増幅する。
[0029] そうすると、増幅産物を制限酵素 Mval (又は BstNl)で処理したときに、 KRAS遺 伝子のコドン 12に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 99bpと、 21bp の 2つの制限酵素断片が生成され、 KRAS遺伝子のコドン 12に変異がない場合の 遺伝子の増幅産物に対しては、 29bpと、 60bpと、 21bpの 3つの制限酵素断片が生 成される(図 1 (f) )。
これらの制限酵素断片を制限酵素長多型 (RFLP)を用レ、て検出すると、変異がな い試料においては、 60bpの制限酵素断片が検出され、変異がある試料においては 、 99bpの制限酵素断片が検出され、この相違に基づいて、 KRAS遺伝子のコドン 1 2の変異の有無を判定することができる(図 2 (a) )。
また、上記コドン 12に変異があるバンドについて塩基配列を調べると、コドン 12に 変異があるものは、コドン 12の 2番目のグァニンがアデニンに変換していることが分
かる(図 2 (b) )。
[0030] (第 2の制限酵素による断片の増幅)
次いで、前記の工程により、制限酵素 Bgllで処理したことにより生成された、 KRA S遺伝子のコドン 13に変異がある場合の 1つの制限酵素断片と、 KRAS遺伝子のコ ドン 13に変異がない場合の 2つの制限酵素断片を、前記の核酸増幅用プライマーセ ットとは異なる核酸増幅用プライマーセット((0017)の段落の「第 3の核酸増幅用プ ライマーセット」に相当)で増幅する(図 l (e) )。ここに、 12& 13SPは、前述の配列番 号 2で表される核酸増幅用プライマーでり、 KRAS遺伝子の 457番目力、ら 486番目 に対応する部位、即ち、配列番号 1で表される KRAS遺伝子のコドン 12とコドン 13を 含む領域の 4番目から 33番目の配列に対応する部位 (実際には配列番号 1で表され る KRAS遺伝子のコドン 12とコドン 13を含む領域の 4番目力 33番目の配列の相補 鎖の部位)に結合する。
一方、 13mtASは、配列番号 5で表される核酸増幅用プライマーであり、 KRAS遺 伝子の 549番目から 576番目の部位、即ち、配列番号 1で表される KRAS遺伝子の 96番目力 123番目の部位に結合し (実際には配列番号 1で表される KRAS遺伝 子領域の 96番目力ら 123番目の配列の部位であって、配列番号 3の 1番目の塩基 が配列番号 1で表される KRAS遺伝子領域の 123番目に結合し、配列番号 3の 28 番目の塩基が配列番号 1で表される KRAS遺伝子領域の 96番目に結合する)、 KR AS遺伝子のコドン 13の変異の有無によらず、 KRAS遺伝子の増幅産物に対しては 、制限酵素 Bgllが前記特定の第 2の 1箇所とは違う 1箇所の回文構造を認識するよう に設計されている。
[0031] 具体的には、 13mtASのうち、配列番号 1で表される KRAS遺伝子の 113番目の 塩基に対応する塩基をグァニン (配列番号 5のプライマーの 11番目の塩基)に変換 し、配列番号 1で表される KRAS遺伝子の 105番目の塩基に対応する塩基をグァニ ン(配列番号 5のプライマーの 19番目の塩基)に変換し、配列番号 1で表される KRA S遺伝子の 103番目の塩基に対応する塩基をシトシン(配列番号 5のプライマーの 2 1番目の塩基)に変換している。
そして、 12& 13SPによるヌクレオチド (塩基)の連結は上流から下流に向かって行
われ、 13mtASによるヌクレオチド(塩基)の連結は下流から上流に向かって行われ 、 PCR反応により KRAS遺伝子を増幅する。
[0032] そうすると、増幅産物を制限酵素 Bgllで処理したときに、 KRAS遺伝子のコドン 13 に変異がある場合の遺伝子の増幅産物に対しては、 106bpと、 14bpの 2つの制限 酵素断片が生成され、 KRAS遺伝子のコドン 13に変異がない場合の遺伝子の増幅 産物に対しては、 32bpと、 74bpと、 14bpの 3つの制限酵素断片が生成される(図 1 ( g) )。
これらの制限酵素断片を制限酵素長多型 (RFLP)を用レ、て検出すると、変異がな い試料においては、 74bpの制限酵素断片が検出され、変異がある試料においては 、 106bpの制限酵素断片が検出され、この相違に基づいて、 KRAS遺伝子のコドン 13の変異の有無を判定することができる(図 2 (c) )。
また、上記コドン 13に変異があるバンドについて塩基配列を調べると、コドン 13に 変異があるものは、コドン 132の 2番目のグァニンがアデニンに変換していることが分 かる(図 2 (d) )。
[0033] (検査方法)
本発明における検査方法は、試料の準備、 KRAS遺伝子の抽出、プライマーを用 いた遺伝子増幅、増幅産物の制限酵素による切断、 KRAS遺伝子の制限酵素断片 の検出の過程からなる。
[0034] (検査用試料'病理検体の準備)
本発明の検査方法に供される、ヒトの試料は KRASタンパク質をコードする遺伝子( KRAS遺伝子)を含むものであればよぐ特に限定されない。具体的には、生体から 採取した組織が挙げられ、手術により切除した癌の組織や、手術前の内視鏡検查等 に用いる生体検查材料等が、試料の有効利用の点で好適に用いられる。その他、血 液、膝液、血清、糞便、精液、唾液、喀痰、脳脊髄液等も試料として挙げられる。
[0035] (KRAS遺伝子の抽出)
本発明の検查方法に供される、ヒトの試料は、プレンダーを用いて組織を破砕し、 次いで、フエノール'クロロフォルム法等の公知の遺伝子抽出法により、 KRAS遺伝 子を抽出し、検查用試料として用いる。
[0036] (遺伝子'核酸増幅)
本発明において、遺伝子増幅方法としては、公知の方法を使用することができ、例 えば、 PCR法が挙げられる。
[0037] (ネステッド PCR法)
本発明において、第 1の工程と、第 2の工程において、 PCRで核酸を増幅する場合 の PCRは、ネステッド PCR法という。
ネステッド PCRでは、外側のプライマーと内側のプライマーを使って 2段階の PCR を行う方法であり、 目的とする領域から最初の PCR産物を錡型にして、最初に使用し たプライマー位置より、両方とも内側にプライマーを設定して行う。
PCRは、 2つのプライマー対が適当な間隔で向き合って存在することによる特異性 に基づいて特定の断片を増幅する手法であるが、プライマーの類似配列によってミス スプライシングがときどき起こり、標的配列の増幅とともに非特異的な増幅が起こって しまう。この非特異的断片を含む PCR生成物を铸型にしてネステッド PCRを行うと、 非特異的な断片のなかにネステッドプライマーに類似した配列が存在する確立が極 めて低くなるため、非特異的増幅の"ノイズの海"から標的配列のみをうまく拾い出し てくることが可能になる。したがって、ネステッド PCR法は、バックグラウンドが出やす レ、 PCRの場合に有効な方法である。
ネステッド PCR法において、検出したい点変異を含む PCR領域を第 1の工程で増 幅するものは、エンリッチ PCR法ともいう。
本発明においては、ネステッド PCRの他、セミネストテッド PCR、ダブル PCRを用い ても良い。
[0038] (制限酵素)
前記 KRAS遺伝子増幅による増幅産物は、コドン 12の変異の検出には制限酵素 Mval (又は BstNl)により処理する。 Mval (又は BstNl)の至適温度は 37°C付近 である。コドン 13の変異の検出には制限酵素 Bgll (又は BstNl)により処理する。 M val (又は BstNl)の至適温度は 37°C付近である。
[0039] (KRAS遺伝子の制限酵素断片の検出)
前記制限酵素で処理した断片は、制限酵素断片長多型を用いて検出する。
[0040] (変異検出試薬 ·変異検出試薬キット)
本発明はまた、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の検出のための方法 に用いられる変異検出試薬及び変異検出試薬キットを含む。変異検出試薬としては 、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13を含む領域を増幅する核酸増幅用プライマ 一、 DNAポリメラーゼ、ェキソヌクレアーゼ、核酸検出用の標識等、本発明の方法に 使用されるあらゆる試薬のレ、ずれであってもよレ、。
[0041] また、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の検出のための方法に用いら れる変異検出試薬キットは、本発明の検出方法に使用されるあらゆる試薬のうち少な くとも 2以上をキットとして使用するものであればよい。また、蛍光標識をプローブした DNAも本キットに含めてもよい。
実施例
[0042] 以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例 に限定されるものではない。
[0043] (実施例 1)
大腸癌患者の外科手術より得られた癌部及び正常粘膜部より抽出'精製したゲノム 遺伝子を準備した。
[0044] KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異を検出する 1次 PCRでは、図 1中の
12& 13SP (配列番号 2)と WildAS (配列番号 3)のプライマーを用レ、た:
12& 13SP : ACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGGCCCT
WildAS: AACAAGATTTACCTCTATTGTTGGATCA
この実施例では、 KRAS遺伝子のコドン 12より 4塩基上流に存在する A (アデニン) に対応する部分の 12& 13SPのプライマーを C (シトシン)に変換し、 KRAS遺伝子 のコドン 12より 3塩基上流に存在する G (グァニン)に対応する部分の 12 & 13SPの プライマーを C (シトシン)に変換するミスマッチを導入することにより、コドン 12に変異 がない遺伝子増幅産物の制限酵素 Mval (又は BstNl)による認識部位を作り出し、 コドン 3に変異がない遺伝子増幅産物の制限酵素 Bgllによる認識部位を作り出すこ ととした。
[0045] この 1次 PCRによる遺伝子増幅産物を、コドン 12及びコドン 13の変異検出用にそ
れぞれ 5 μ ΐ用いて、コドン 12の変異検出用には Mvalにより、最初の制限酵素処理 (1次制限酵素処理)を行い、コドン 13の変異検出用には Bgllにより、最初の制限酵 素処理(1次制限酵素処理)を行った。
[0046] 次に 2次 PCRでは、コドン 12の変異検出用には、 12& 13SP (配歹 1J番号 2)と 12mt AS (配列番号 4)のプライマーを用いた:
12& 13SP : ACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGGCCCT
12mtAS: AACAAGATTTACCTCTATTCCTGGATCA
コドン 13の変異検出用には、 12& 13SP (配列番号 2)と 13mtAS (配列番号 5)の プライマーを用いた:
12& 13SP : ACTGAATATAAACTTGTGGTAGTTGGCCCT
13mtAS: AACAAGATTTGCCTCTATGGCTGGATCA
本実施例では、セミネステッド PCR又はダブル PCRを用いた。この実施例では、コ ドン 12の変異検出用には、 12mtASの 19番目と 20番目の塩基を C (シトシン)に変 換するミスマッチを導入することにより、コドン 12の変異の有無によらず、コドン 12以 外の部位で遺伝子増幅産物の制限酵素 Mvalよる認識部位を作り出すこととした。こ れにより、 1次 PCRの増幅産物が増幅されるので、コドン 12の変異の有無がより顕著 に判定でき、かつ、制限酵素反応を確認することができる。また、この実施例では、コ ドン 13の変異検出用には、 13mtASの 11番目と 19番目の塩基を G (グァニン)に、 2 1番目の塩基を C (シトシン)に変換するミスマッチを導入することにより、コドン 13の変 異の有無によらず、コドン 13以外の部位で遺伝子増幅産物の制限酵素 Bgllよる認 識部位を作り出すこととした。これにより、 1次 PCRの増幅産物が増幅されるので、コ ドン 13の変異の有無がより顕著に判定でき、かつ、制限酵素反応を確認することが できる。
[0047] (1次 PCR)
10倍濃度の PCR緩衝溶液、 1. 5mM MgCl、 0. ImMデォキシヌクレオチド 3リ
2
ン酸、 0. 2 μ Μの 12& 13SP (酉己歹 1J番号 2)、 0. 2 μ Μの WildAS (酉己歹番号 3)、 1. 25U Taqポリメラーゼ(Ampli_TaqGold ; Perkin_Elmer, Foster City, CA)と ほぼ lOOngの KRAS遺伝子(DNA)を用レ、 PCR溶液を 25 μ 1とした。 PCRの温度条
件は 95。Cで 11分の後、 95。Cで 30秒→58。Cで 30秒→72。Cで 30秒のサイクノレを 30 回繰り返して遺伝子を増幅した。その結果、 120bpの増幅産物が得られた(図 1 (a) )
[0048] 上記 PCRにより得られた増幅産物の含まれる増幅産物液 25 μ 1のうち 5 μ 1を用い て、コドン 12の変異検出用には制限酵素 Mval (Takara社)による切断を行レ、、コド ン 13の変異検出用には制限酵素 Bgll (Takara社)による切断を行った。
[0049] (コドン 12の変異検出のための 1次制限酵素処理)
10倍濃度の NEbuffer2 μ 1、制限酵素 Mval (5U/ μ 1) 0. 5 μ 1、蒸留水 3. 5 μ 1 、 1次 PCRで得られた増幅産物の含まれる遺伝子増幅液 25 μ 1のうち 5 μ 1を用い合 計 20 μ ΐとした。切断反応は Mvalの至適温度である 37°Cで 2時間行った(図 1 (b) )
[0050] (コドン 13の変異検出のための 1次制限酵素処理)
10倍濃度の NEbuffer2 μ 1、制限酵素 Bgll (5U/ /i 1) 0. 5 /i 1、蒸留水 3· 5 /i 1、 1次 PCRで得られた増幅産物の含まれる遺伝子増幅液 25 β 1のうち 5 β 1を用い合計 20 /i lとした。切断反応は Bgllの至適温度である 37°Cで 2時間行った(図 1 (c) )。
[0051] (コドン 12の変異検出のための 2次 PCR)
コドン 12の変異検出のための 1次 PCRの増幅産物を増幅するプライマーとして、 1 2& 13SP (配列番号 2)と、 12mtAS (配列番号 4)を用レ、た。
10倍濃度の PCR緩衝溶液、 1. 5mM MgCl、 0. ImMデォキシヌクレオチド 3リ
2
ン酸、 0. 2 μ Μの 12& 13SP (酉己歹 IJ番号 2)、 0. 2 /i Μの 12mtASプライマー(酉己歹 IJ 番号 4)、 1. 25U Taqポリメラーゼ(Ampli_TaqGold ; Perkin_Elmer, Foster C ity, CA)とコドン 12の変異検出のための 1次制限酵素処理による切断された増幅産 物を錡型にして(1 β 1)、 PCR溶液を合計 25 μ 1とした。 PCRの温度条件は 95°Cで 1 1分の後、 95°Cで 30秒→53。Cで 30秒→72。Cで 30秒のサイクノレを 26 30回繰り返 して遺伝子を増幅した(図 1 (d) )。
[0052] (コドン 13の変異検出のための 2次 PCR)
コドン 13の変異検出のための 1次 PCRの増幅産物を増幅するプライマーとして、 1 2& 13SP (配列番号 2)と、 13mtAS (配列番号 5)を用レ、た。
10倍濃度の PCR緩衝溶液、 1. 5mM MgCl 、 0. ImMデォキシヌクレオチド 3リ
2
ン酸、 0. 2 μ Μの 12& 13SP (酉己歹 IJ番号 2)、 0. 2 /i Μの 13mtASプライマー(酉己歹 IJ 番号 5)、 1. 25U Taqポリメラーゼ(Ampli_TaqGold ; Perkin_Elmer, Foster C ity, CA)とコドン 12の変異検出のための 1次制限酵素処理による切断された増幅産 物を錡型にして(1 β 1)、 PCR溶液を合計 25 μ 1とした。 PCRの温度条件は 95°Cで 1 1分の後、 95°Cで 30秒→53。Cで 30秒→72。Cで 30秒のサイクノレを 26 30回繰り返 して遺伝子を増幅した(図 1 (e) )。
[0053] (コドン 12の変異検出のための 2次制限酵素処理)
10倍濃度の NEbuffer3 μ 1、制限酵素 Mval (5U/ μ 1) 1 μ 1、蒸留水 1 μ 1、 1次 Ρ CRで得られた増幅産物の含まれるコドン 12の変異検出のための 2次 PCRによる遺 伝子増幅液 25 μ 1を用い合計 30 μ 1とした。切断反応は Mvalの至適温度である 37 °Cで 6時間以上行った(図 1 (f ) )。
[0054] (コドン 13の変異検出のための 2次制限酵素処理)
10倍濃度の NEbuffer3 μ 1、制限酵素 Bgll (5U/ / 1) 1 μ 1、蒸留水 1 β 1、 1次 Ρ CRで得られた増幅産物の含まれるコドン 13の変異検出のための 2次 PCRによる遺 伝子増幅液 25 μ 1を用い合計 30 μ 1とした。切断反応は Bgllの至適温度である 37°C で 6時間以上行った(図 l (g) )。
[0055] 上記、制限酵素で処理した制限酵素断片を制限酵素断片長多型により検出した。
[0056] (KRAS遺伝子コドン 12の変異の検出)
2次制限酵素処理により、コドン 12に変異がない場合には、 60bp、 29bp、 21bpの 3種類の断片が検出される。一方、総てのコドン 12に変異がある場合は、 99bp、 21b pの 2種類の断片が検出されるが、実際には、総てのコドン 12のうちの一部に変異が あること力 S殆んどであり、この場合、 99bp、 60bp、 29bp、 21bpの 4種類の断片力 S検 出される。実際には、 120bp、 91bpの断片も認められる場合がある力 これは、制限 酵素処理が不良である力、、錡型量が過剰の場合である。
基本的に、 99bpの断片が 60bpの断片と同等力、、より強く認められた場合に、コドン 12に変異があると判定する。
結果を図 2 (a)に示す。
[0057] この例によれば、右から 2から 4番目のレーンには 99bp、 60bpの断片が検出され、 コドン 12の変異ありと判定され、最右のレーンでは 60bpの断片のみが検出され、コド ン 12の変異なしと判定された。
[0058] (KRAS遺伝子コドン 13の変異の検出)
2次制限酵素処理により、コドン 13に変異がない場合には、 74bp、 32bp、 14bpの 3種類の断片が検出される。一方、総てのコドン 13に変異がある場合は、 106bp、 14 bpの 2種類の断片が検出される力 実際には、総てのコドン 13のうちの一部に変異 力 Sあること力 S殆んどであり、この場合、 106bp、 74bp、 32bp、 14bpの 4種類の断片力 S 検出される。実際には、 120bp、 88bpの断片も認められる場合がある力 これは、制 限酵素処理が不良である力、、錡型量が過剰の場合である。
基本的に、 106bpの断片が 74bpの断片と同等力、、より強く認められた場合に、コド ン 13に変異があると判定する。
結果を図 2 (c)に示す。
[0059] この例によれば、右から 3から 4番目のレーンには 106bp、 74bpの断片が検出され 、コドン 13の変異ありと判定され、最右のレーンでは 74bpの断片のみが検出され、コ ドン 13の変異なしと判定された。
[0060] このように、本実施例によれば、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異を一 度の操作で行うことにより、 KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異の有無を一 度の操作で、再現性よぐ精度よく行うことができることが確認された。
産業上の利用可能性
[0061] 本発明の核酸増幅用プライマー、核酸増幅用プライマーセット、及び KRAS遺伝 子のコドン 12及びコドン 13の変異検出試薬キットの製造は、製薬業界、バイオテクノ ロジ一の分野などで利用することができる。本発明の KRAS遺伝子のコドン 12及び コドン 13の変異の検出方法、この検出方法に用いるための核酸増幅用プライマー、 核酸増幅用プライマーセット、及び KRAS遺伝子のコドン 12及びコドン 13の変異検 出試薬キットは、医療業において有用に利用することができる。